ウォルマートがホームサービスの提供を拡大、Angiとの新たなパートナーシップ

Walmart(ウォルマート)はホームサービスを拡大している。同社は米国時間1月31日、Angi(アンジー、Angie’s List)との新たな提携を発表した。全米50州の約4000店舗でWalmartの顧客がサービスのプロを利用できるようにする。Walmartの顧客が店頭やオンラインで買い物をする際、床張りや塗装、フェンス設置、さらには家具の組み立てや大型テレビの取り付けといった細々とした作業など、150種の一般的なホームプロジェクトでAngiのプロを予約できるというものだ。

Walmartは2018年にHandy(ハンディ)と提携し、2000超の店舗で家庭内の設置・組み立てサービスを販売し始め、その後オンラインにも拡大してホームサービス市場への最初の一歩を踏み出した。これは、顧客が家具などのアイテム購入時に、新アイテムを自宅に設置するための設置作業の予約もすぐに入れられるというものだった。この動きは、ライバルのAmazon(アマゾン)が2015年に小売サイト上にホームサービス専用のハブを立ち上げてホームサービスに参入したことに続くものだった。

WalmartがHandyとの提携を発表した直後、同社はAngi Homeservicesに買収された。そして2021年、Handyの共同創業者であるOisin Hanrahan (オイシン・ハンラハン)氏が、統合会社のCEOに就任した。潜在的な市場を踏まえ、後に自らの契約を拡大し、どこかの時点でHandyのホームサービス全般を含めることで、Walmartはこの買収を利用することもできると予想されていた。

同社は1月31日、HandyではなくAngiがホームサービスのパートナーになると説明した。これにより、Walmartは自社の顧客と25万人を超えるAngiの専門家のネットワークとを結びつけることができるようになる。HandyのブランドがWalmartのウェブサイトで紹介されることはなくなる、とWalmartはTechCrunchに語った。代わりに、Angiのブランドだけが店舗とオンラインの両方で見られるようになる。これはまた、Angiが2021年にリブランドしたことによるものでもある。同社はその際、もはや「Angie’s List」が単なる「リスト」ではなく、顧客がサービスのプロやその他の住宅建設業者を調べて予約し、予定を組んで支払いもできるサイトとして、ブランド名が自社のサービスを正確に表現できないと判断した。

画像クレジット:Walmart

Handyとの提携と比較すると、WalmartとAngiの新しい契約では、提供するサービスの数が増えることと相関して、以前の統合よりもはるかに幅広いSKU数となる。Handyとの提携は主にテレビや家具の設置など、小規模なプロジェクトにおける家庭内での設置・組み立てサービスが中心で、テレビ設置が45ドル(約5200円)、家具の設置が79ドル(約9000円)〜だった。しかし、Angiとの提携ではさらに踏み込んでいて、塗装、床張り、フェンス設置などより複雑なサービスも新たに提供するようになった。Walmartによると、さらに複雑なサービスにも手を広げていく予定だという。

この提携の財務的な内容や収益への影響についてWalmartに尋ねたところ、同社は詳細を明らかにすることを却下した。例えば、同社のサイトを通じて予約されたAngiのサービスに対して、どれくらい仲介料を取る可能性があるかなどは明らかにしていない。ただし、WalmartはAngiのサービスを提供する最初の期間限定独占小売店となる。

画像クレジット:Walmart

顧客は、オンラインおよび店舗で対象商品と一緒にAngiのサービスを予約するか、2月中旬に公開されるWalmart.comのAngi専用ランディングページから予約できるようになる(URLはまだ最終決定されていないとのことだ)。購入後、Angiが予約の調整を行う。大規模なサービスについては、専任のプロジェクトアドバイザーが顧客にカスタムメイドの見積もりを提供し、プロフェッショナルを探し、プロジェクトが成功するよう作業を管理する。

AngiのCEO、Oisin Hanrahan(オイシン・ハンラハン)氏は、今回のサービス開始について次のように述べた。「当社初の小売との統合として、世界有数の小売企業であるWalmartと立ち上げることができ、これに勝る喜びはありません。パンデミックが始まって以来、家庭が注目され、全米の人々はこれまで以上に住まいの改良やメンテナンス、修理を行っており、そうしたプロジェクトを始めるのに必要なツールや材料を探すためにしばしばWalmartを利用しています。新しいスマートTVを設置してエンターテインメント空間を華やかにしたり、増えた家族のために子ども部屋にペンキを塗ったり、屋外スペースを改造してパティオを設けたりといったことは、今やWalmartの顧客がWalmartでのショッピング体験の一部として、Angiのプロの助けを借りてシームレスに行えるプロジェクトになっています」と述べた。

Walmartの小売サービス部門シニアディレクターであるDarryl Spinks(ダリル・スピンクス)氏は「Angiは経験豊富で高い評価を得ているプロを顧客に案内し、家庭内の作業を支援します。Angiの便利で簡単なサービスをお客様に提供することに胸躍らせています」と述べた。

画像クレジット:Nicholas Kamm/AFP / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Just Verticalのエレガントな家具で家庭でも水耕栽培ができる

屋内栽培産業は拡大傾向にある。水耕栽培(通常大きな倉庫で土壌を使わずに作物を栽培する)と伝統的な温室を利用する農園は、主にレタス、ホウレンソウ、ルッコラなどの葉物野菜向けに、私たちの食物サプライチェーンの不可欠な一部となり始めている。

垂直水耕栽培は、伝統的な栽培に代わる持続可能な選択肢として捉えられている。水の使用量は95%少なく、土壌への環境負荷を抑えることができ、都市部の農園は食の砂漠エリアや食料品店の近くに設置することで輸送コストを削減できる。しかし、屋内農場の照明への大量のエネルギー使用は、農業からの炭素排出量の抑制を妨げてきた。

この業界のリーダーAeroFarmsは2021年中に上場することを発表した。サンフランシスコを拠点とする垂直農園企業Plentyは、カリフォルニア州北部のSavewayの17店舗への進出を果たした。東海岸の都市農業企業Gotham Greensは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による景気後退を乗り切り、コロラド州カリフォルニア州などの地域に屋内農園の建設を進めている。全体として、世界の垂直農法市場は2026年までに58億ドル(約6400億円)に達し、年平均成長率は14%になると予想されている。

一方、カナダを拠点とするスタートアップJust Verticalは、屋内栽培のムーブメントに家庭菜園を組み込もうとしている。同社の2つの製品AevaとEveは、水耕技術を利用して月に8〜10ポンド(約3.6〜4.5Kg)の作物を栽培できるエレガントな家具として販売されている。

これらの製品は木製のキャビネットをベースにしており、成長機構は約5フィート(約1.5m)上方に伸びている。AevaとEveは葉物野菜、ズッキーニ、イチゴ、ハーブ、ピーマン、キュウリの栽培が可能だ。同社は現在、花の分野にも進出しており、マイクロブルワリー向けのホップの栽培にも対応する。またハードウェアの販売以外にも、種やピートモスのポッドのサブスクリプションモデルを提供している。

「1年中栽培に専念することが難しい人や、裏庭やバルコニーがない人などの利用を想定しています」と共同創業者のKevin Jakiela(ケヴィン・ジャキーラ)氏は語る。「ただのカウンタートップバージョンになることは意図しませんでした」。

競合にはClick and GrowAerogardensなどがあり、主にハーブ向けの製品を手がけている。一方で、Tower GardenZipGrowといった大規模な競合も存在する。だがJust Verticalは、他社のバージョンとは異なる方向性に目を向けており、装飾と菜園の両立を目指している。

ジャキーラ氏によると、Just Verticalの最大の市場はマンションなどの住居で、レストラン、学校、カフェ、バーがそれに続く。また同社は、オフィス空間への関心についても、純粋に食を重視するというよりはインテリアとして捉えている。

「マンションや住宅内のアメニティのような、ビルド済み製品の一部になりたいと思っています。食洗機や洗濯機を選ぶように人々が選択する、電子レンジに準ずるような存在です」とジャキーラ氏はいう。「IKEAのような大型小売店への参入も考えています」。

同社はこれまでに1500台を売り上げ、District Venturesからシード投資を受けた。同ファンドはArlene Dickinson(アーリーン・ディッキンソン)氏が設立し、ジェネラルパートナーを務める。(同氏はShark Tank[アメリカ版「¥マネーの虎」]のカナダバージョンの番組Dragon’s Denに、Shark TankではShark[サメ]と呼ばれる投資家として出演している。)Just Verticalは現在、9月のシリーズAを目指している。

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ただ、Verticalの600〜1000ドル(約6万6千~11万円)という価格の高さを考えると、食料安全保障や環境問題への大きなインパクトに直面している家庭に対して、実際に変化をもたらす可能性は低いとも言えるかもしれない。

現在Just Verticalがターゲットとしている消費者は「Whole Foods(アメリカの高級スーパー)の買い物客」であることをジャキーラ氏は認めている。それでも同社のウェブサイトでは、人々が自分たちの食料を栽培することにより、1億1200万マイル(約1億8024km)超の食料輸送が節約されたことや、200万リットルを超える水が節約されたことなど、製品の環境上の利点を示唆するデータを取り上げて、自社のミッションを強調している。会社が規模を拡大するにつれて、社会的、ビジネス的なインパクトが生み出されていくことをジャキーラ氏は期待する。

「ホビイストから脱却し、より大きなインパクトを求めていきたいと思っています」と同氏は語る。「Aevaを使うことでコストのオフセットを可能にしたレストランでの実績に追随する形で、食料品店の前線に立ちたいと考えています。社会的な要素に照準を合わせた、小売ネットワークと分散型ネットワークの構築を進めていきます」。

Just Verticalは、ハイエンドの消費者側から始めて市場への適合性を証明し、実証済みの成功を携えて食料品店に向かうことで、真にインパクトを与えることができると判断した。

「特にスタートアップにとって、食料品店のドアをノックして『こんにちは、アイデアがあります』と切り出すことにはかなりの困難がともないます」とジャキーラ氏。「実績と適合証明を持って出直すように言われるか、8カ月から12カ月のプロセスを保証もなく繰り返すことになるかでしょう。何度も繰り返すことになります。食料品店側としては、自ら新機軸に着手するという危ない橋は渡りたくないものの、同時に後れを取ることは避けたいと思っているのです」。

画像クレジット:leungchopan / Shutterstock

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(文:Jesse Klein、翻訳:Dragonfly)

所有する家具を活用しプロが部屋をバーチャルでデザインしてくれるPancakeが約3800万円調達

すでに家にある家具を活用し、デザイナーの新鮮な目で空間をデザインするホームデザインプラットフォームを開発するPancake(パンケーキ)が、35万ドル(約3800万円)のシードラウンドを獲得した。

コスタリカ出身のMaria Jose Castro(マリア・ホセ・カストロ)氏、Roberto Meza(ロベルト・メザ)氏、Alfred Enciso(アルフレド・エンシソ)の3人は、在宅勤務に移行して部屋の空間を飾る必要に迫られた自分たちの経験をもとに、2020年に会社を立ち上げた。デザインサービスは高額であるため、誰もが利用できるものではなかった。

Pancakeは、部屋をデザインするインテリアデザイナーとユーザーの関わり方を再構築しており、ユーザーは自分の部屋のスペースのレンダリング画像を手に入れることができる。ユーザーは、ウェブサイト上でデザイナーとのオンラインセッションを予約し、部屋の寸法と写真を提供する。

 

次にデザイナーが、空間のレンダリングと、デザインとその方法を説明する資料を用意する。また、持っていない塗料や家具が必要な場合は、Pancakeがユーザーに購入できる場所を教えてくれる。このサイトの将来的な機能として、家具販売業者との連携も予定していると、カストロ氏はTechCrunchに語っている。

メザ氏はこの会社を「ファニチャー・アズ・ア・サービス(サービスとしての家具)」と呼び、すでにあるものを再利用して、そこで働き、住み、楽しむことができるような健康的で持続可能な空間づくりを主眼としている。それは一見難しいことのように思えるかもしれないが、世界的なパンデミックでみんなが突然同じ空間で一緒に過ごすようになると、人間関係というのは、好きな空間にいるときの方がより良くなるものだと彼はいう。

「私は建築におけるウェルネスを仕事にしていますが、Pancakeではそれを実現したかったのです。些細なことが余裕を生み、気分を良くしたり、もしくは悪くしたりすることがあるのです」。と彼は付け加えた。

Pancakeは今回の資金調達により、プラットフォームをさらに発展させ、エコロジカルフットプリント計算機などの新機能を追加して、顧客が自分のデザインがどれだけサスティナブルなのかを確認できるようにする予定だ。また、同社は透明性の高い価格設定を誇りとしている。デザイナーとの平均的な2時間のセッションは199ドル(約2万1800円)で、ペンキや新しい家具などのアイテムが必要な場合は、デザイナーがそこに予算を追加する。

今回のシードラウンドでは、OkCupid(オーケーキューピッド)の共同設立者であるChristian Rudder(クリスチャン・ラダー)氏がリードインベスターを務めている。同氏は、通常、シード段階での投資は行わないが、Pancakeが短期間で成し遂げた進歩に感銘を受けたと述べている。この中には、ソーシャルメディアプラットフォームでのマーケティングテストも含まれており、立派な投資効果が得られたと付け加えた。

一方、Pancakeはこれまでに100回以上のデザイナーセッションを行い、紹介や家の中の別の部屋のデザインも希望するリピーターが増えてきているという。パンデミックで4カ月間中断したにもかかわらず、前月比で平均200%の収益増を達成したとメザ氏はいう。今後は、2022年のシリーズAラウンドに向けて、ブランドと収益モデルの構築を進めていく予定だ。

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画像クレジット:Pancake

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

韓国の3D空間データツールスタートアップで日本の三菱地所、ニトリなどとも取引のあるUrbanbaseが約12億円調達

米国時間8月29日、ソウルに拠点を置きインテリアプランニングやインテリアデザインのための3D空間データプラットフォームを開発するUrbanbaseが、成長にともなうシリーズB+ラウンドで130億ウォン(約12億円)を調達したと発表した。

このラウンドは、韓国コングロマリットのHanwha Corporationの子会社であるHanwha Hotel & Resortが主導した。

Urbanbaseは、もともと建築家で同社のCEOであるJinu Ha(ハ・ジヌ)氏が2013年に創業した。これまでに合計で230億ウォン(約21億6000万円)を調達している。

既存の投資家は今回のラウンドには参加しなかった。Urbanbaseは2017年のシリーズAで180万ドル(約2億円)、同年中に追加で120万ドル(約1億3000万円)、2020年4月にはシリーズBラウンドを実施した。ハ氏によれば、既存の投資家には韓国を拠点とするShinsegae Information & Communication、Woomi Construction、SL Investment、KDB Capital、Shinhan Capital、Enlight Ventures、CKD Venture Capital、Breeze Investmentなどがある。

同社は今回の資金でB2BのSaaSを拡大する。また、ハ氏が新規ビジネスとして今後参入する計画であると語るメタバースのコアテクノロジーになると思われる高度なVR、AR、3Dツールの研究開発も進める。Strategy Analyticsの調査によると、世界のメタバースの市場規模は2021年の307億ドル(約3兆3678億円)から2025年までに2800億ドル(約30兆7200億円)に成長すると予測されている。

VRやAR、そのためのハードウェアやソフトウェア、新しいテクノロジーといった領域で有望なビジネスモデルを構築するための次世代のアプローチの1つとして、いわゆる「メタバース」における成功を目指す企業が増えている。FacebookからIntel、Microsoftまでさまざまな大手テック企業がこの分野への参入を狙っている。AppleもハイエンドのVRヘッドセットを開発中と報じられている

関連記事:アップルがAR機能も搭載した高価格VRヘッドセット開発中と報道、発売は2022年か

Urbanbaseも家庭用インテリアのソフトウェアプラットフォームであるUrbanbase Studioをアップグレードしようとしている。Urbanbase Studioには2Dの室内空間イメージを3D表示に変換する機能があり、これには同社が特許を取得しているアルゴリズム、ARでのインテリア製品の視覚化、AIテクノロジーをベースにした空間イメージ分析が使われている。

Urbanbaseは、登録しているB2Cユーザーは7万人、月間アクティブユーザーは5万人であるとしている。B2Bのクライアントはおよそ50社ある。

ハ氏は「当社のB2Bクライアントの大半は韓国と日本の大手企業です。例えばLG Electronicsの他、日本の三菱地所、ニトリホールディングス、電通、ソフトバンクなどが挙げられます。しかしシリーズB+の資金調達完了後は、中小規模のB2Bクライアントにも拡大しB2Cユーザーも増やしたいと考えています」と述べた。

ハ氏はTechCrunchに対し、Urbanbaseは不動産テックや建設テクノロジーの分野で買収対象を探していると語った。韓国と日本では70〜80%の世帯が集合住宅に住んでいることから、同社は現在集合住宅向けインテリアのツールの開発に力を入れているという。ハ氏は、今後は別のタイプの住宅を得意とするスタートアップを買収して事業を多角化したいと付け加えた。

ハ氏によれば、同社のプラットフォームは現在韓国語と日本語で運営しているが、2021年末にシンガポールに進出する前に英語にも対応する予定だという。

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国内外の美景を映すデジタル窓のLandSkipがBtoCに注力、郷愁を誘う風景も提供予定
LandSkipが空の8K動画映像を映し出すデジタル天窓「Window Sky」を発売
拡張現実を販売に利用するD2C家具のTylkoがPitangoとEvliが率いるシリーズCラウンドで約28億円調達

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(文:Kate Park、翻訳:Kaori Koyama)

建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億円調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億金調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

建築業界向けの建材・家具検索プラットフォーム「TECTURE」を手がけるtecture(テクチャー)は8月24日、総額約1億2000万円の資金調達を発表した。引受先は、Coral Capital、個人投資家を含めた8社。2019年創業からの累計調達額は1.9億円となった。調達した資金により開発体制およびデータベース構築体制を強化し、さらなる事業拡大にむけて組織基盤を強化する。また、TECTUREの検索機能アップデートを実施した。

今後の計画として、2022年春には、複数の主要専門誌5年分に相当する3500事例(約7万枚の写真)をデータベース化する予定。今後は「BtoB」の検索領域を拡大し、建物・家具・建材・設計図書・3Dデータなど空間に関するあらゆる検索・データ管理を可能にするという。またコンシューマー「toC」へ向けたマーケットプレイスの展開を予定しており、2023年には日本最大級の空間デザイン検索プラットフォームとなることを目指す。

tectureは、「空間デザインの未来をつくる」をミッションに掲げ、建築家の谷尻誠氏、編集者の佐渡島庸平氏、開発者の川田十夢氏、同社代表の山根脩平氏が、2019年2月に立ち上げた、建築デザイン領域のDX化を目指すスタートアップ企業。デザイナーの作品事例に家具・建材の商品情報を埋め込むことで、作品事例(メディア)から商品情報(カタログ)までワンストップで検索できる設計・メーカー向けプラットフォーム「TECTURE」を展開している。これまで大量の紙で検索していた家具・建材カタログや設計図書をオンライン上で効率的に管理できることから、サービス利用者数は1万5000人を超え、サービス導入設計事務所数は約200社に達しているという。

建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億金調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

TECTUREのアップデートでは、デジタルカタログとしての機能を大幅に強化し、プロユースの検索性に対応した。「建築をさがす」「家具・建材をさがす」の2つのタブで絞り込み検索を実装している。事例や家具・建材の検索性を高め、詳細検索では「防火」「防煙」「ホルムアルデヒド」など建築基準法に対応した建材を絞り込める。

また、メーカー各社の販促ならびに空間デザインや設計業務を強力にサポートするだけでなく、これから家を建てよう、リノベーションをしようと計画中のユーザーにとっても、利用価値の高いサービスアップデートとなっているという。建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億金調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

国内外の美景を映すデジタル窓のLandSkipがBtoCに注力、郷愁を誘う風景も提供予定

風景配信サービス「LandSkip」や風景を映し出す「バーチャル・ウィンドウ」による「風景の流通」を目指し、国内外の風景を集めてデジタルサイネージ向けにコンテンツとして提供するランドスキップ(LandSkip)は、これまでメインだったBtoB事業に加え、BtoC事業にも力を入れる。

LandSkipは日鉄興和不動産と連携し、個人向けデジタル窓「Lifestyle Window」を2021年9月から、同社のマンションの一部でオプションとして販売する予定だ。LandSkipの下村一樹代表に話を聞いた。

窓の向こうに広がる「風景」を追求

LandSkipは2015年6月1日(景観の日)に創業し、現在は北海道札幌市に本社を構える。保有する風景コンテンツは、4Kのものが4000本以上、8Kは300本以上、12Kは50本以上ある。

しかし、初めから上手くコンテンツを集められた訳ではない。下村氏は「そもそもLandSkipを創業したのは私自身が『窓の向こうに広がる風景』を欲しかったからです。しかし当時存在していた風景映像は『人に見せる』主張が強いものばかりで、満足できませんでした」と振り返る。

どうすれば「窓の向こうに広がる風景」を撮ることができるかを試行錯誤し、その手順のガイドライン化に成功。基本的に8K以上は自社で撮影をし、4Kの場合は「風景ハンター」として外部のカメラマン、ビデオグラファーらと契約して風景を仕入れている。

下村氏は「国内では47都道府県の風景コンテンツを網羅しています。私たちのビジネスの肝はやはり風景などのコンテンツなので、そのクオリティとバラエティには自信を持っています」と胸を張る。

LandSkipは自ら集めた国内外の風景をコンテンツとして配信するだけでなく、金具とフレーム込みで1.5cmの薄型デジタル窓「Window Air」などのハードも提供している。

また、風景コンテンツなどによる「空間演出」、店舗メニューなどの「情報発信」をアプリ1つで操作可能にするデジタルサイネージ向けアプリ「LOOOK」や、その機能が組み込まれた薄型軽量のデジタルサイネージ製品「LOOOK SquAir」なども提供してきた。これら「LOOOK」シリーズは現在、商業施設などの店舗を中心に500カ所以上に設置・契約されているという。

直近では2021年6月1日に、室内の天井に空の8K映像を配信するデジタル天窓「Window Sky」の販売も始めている。

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さらにLandSkipでは、2021年3月に北海道千歳市らと連携し、道内有数の観光地「支笏湖(しこつこ)」の高画質ライブ配信を「Window Air」で提供を開始。365日リアルタイムに変化するバーチャル風景「Window Live」として展開している。

下村氏は「日本中のキレイな風景をライブ配信していきたい。2021年度は10地域に限定し、ライブ配信に必要なカメラやネット環境などの下準備をすべて無料で私たちが行い、ライブ配信コンテンツを増やしていく考えです。景勝地を有する自治体などとの連携を強め、ライブ配信をすることで、これまで以上に観光地のPRや、観光地への誘客などビジネスにも繋げていきます」と語った。

1人ひとりの心にささる「風景」を

これまでLandSkipはBtoB事業が中心だったが、2021年9月から個人向けサービスとして「Lifestyle Window」を展開していく。

「Lifestyle Window」は「365日、風景の変わる家」をコンセプトに、季節や時刻、生活シーンに合わせて風景を切り替え、新たなライフスタイルを実現するデジタル窓となる。日鉄興和不動産との連携事業で、同社のマンションブランド「リビオレゾン」の物件オプションとして展開する。なお、LandSkipが協業スキーム「WINDOW ALLIANCE」を発足したことで、他の不動産ディベロッパーや他業種からも声がかかり「Lifestyle Window」の販路は今後増えていく予定だ。

「Lifestyle Window」は、初期費用は取らず、製品と風景コンテンツ込みのサブスク型サービスとして提供する考えだ。現時点では月々1万円を切る価格帯を想定しているという。LandSkipが保有する4000以上の風景コンテンツはもちろん、高画質ライブ配信なども見放題にする。下村氏は「現在はスマホからの画像を映し出す仕組みなども開発中です」と語った。

さらに法人向けサービスでは行ってこなかった、日替わりでの風景コンテンツの配信を行う。毎日その日に合った風景を届けることで、季節感などを「Lifestyle Window」から感じて取ってもらうことが狙いだ。

風景コンテンツについては、これまでとは異なるタイプも用意しているという。「法人向けのコンテンツは最大公約数的に、誰が見ても『良い景色』というものを選んできました。しかし、個人向けの市場を狙う以上、1人ひとりの心にささる風景を大事にしていきたい」と下村氏は語る。

1人ひとりの心にささる風景とは何か。下村氏は「例えば、伝統工芸の現場を撮影するなど、自然をただ映すのではなく、人の営みが作り出す風景も価値があると思っています。また、さまざまな思い出の場所と紐づいた風景、例えば『あの日見た校庭の風景』『懐かしき地元の商店街』『住んでいた家からの景色』など、その人個人が持つ心の風景といったものも揃えていきます。LandSkipとして、これまでの自然が織りなす『風景』という枠組みの境界線を、現在、引き延ばしているところです」と説明した。

自立した組織として

スタートアップにとって、個人向けにハード込みでサービスを展開することはハードルが高いものだ。大量生産の壁といったコスト面が事業運営に大きくのしかかるのもその理由の1つだ。

LandSkipは2017年の創業から7年が経つが、これまで外部からの出資を受けたことがない。自社コンテンツを武器に、事業連携という方向性でNTT東日本や、NTT西日本、Sonyなどとさまざまな企業との協業を進めながら、新たなコンテンツの創出、販路を拡大してきた。

「外部の出資を受ければビジネスの力学が優先されてしまいます。それは本当に良いサービスを求めている人に、本当に良いサービスを届けることが難しくなってしまう可能性が高いものです。私たちは自立した組織でありたいと考えています。個人向けサービスを展開したことも、現在のLandSkipの資金力、体力であれば十分にやっていけると判断したからです。私たちは一歩一歩確実に、ユーザーに満足してもらえるサービスを提供していきます」と下村氏は語った。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:LandSkipインテリア / 家具デジタル窓風景日本

画像クレジット:LandSkip

LandSkipが空の8K動画映像を映し出すデジタル天窓「Window Sky」を発売

LandSkipが空の8K動画映像を映し出すデジタル天窓「Window Sky」を発売

「風景の流通」を目指し、風景配信サービス「LandSkip」(ランドスキップ)やバーチャルウィンドウ「Window Air」(ウィンドウ・エアー)を提供するLandSkipは6月1日、室内の天井に設置したデジタル天窓に空の8K映像を配信するデジタル天窓「Window Sky」(ウィンドウ・スカイ)の発売を開始した。

バーチャルウィンドウの新ラインナップとして6月1日の「景観の日」に発売開始となった「Window Air」は、1枚あたりのサイズ約49インチ、重さ約12kgのパネルを最大16枚まで連結して大きな天窓を構成できる。電源とWi-Fi環境さえあれば取り付けが可能。新築のみならず、既存の建造物にも設置可能な専用の治具があり、施工はLandSkip一社がワンストップで行う。

そこへ、毎月新しい空の8K風景コンテンツがオンラインで届けられる。内容は、季節や時刻に合わせて変化する青空、木漏れ日、星空など。音声付きの動画なので、流れる雲を眺めたり、小鳥のさえずりを聞くといったこともできる。

LandSkipでは、2018年10月より、バーチャルウィンドウ「Window Air」の販売を開始し、オフィス、病院、ホテルなどに展開してきた。「Window Sky」は、「Window Air」と組み合わせれば、窓と天窓に同期した映像を楽しめるようになる。今後は、医療機関や介護福祉施設を中心に展開してゆくという。

「Window Air」と「Window Sky」を導入した日機装の研究研修施設「M.ReT宮崎」。

またLandSkipでは、「ニューノーマル時代の新しいライフスタイルの提案を行う」ための「WINDOW ALLIANCE」(ウィンドウ・アライアンス)を発足し、風景配信やデジタルウィンドウを活用したコラボレーションを実現するパートナー企業や団体を募集している。パートナーには、デジタルウィンドウの優先納品、先行販売といった特典に加え、デモコンテンツ、限定コンテンツ、技術支援などが提供される。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IoT(用語)インテリア / 家具(用語)LandSkip(企業・サービス)日本(国・地域)

拡張現実を販売に利用するD2C家具のTylkoがPitangoとEvliが率いるシリーズCラウンドで約28億円調達

拡張現実(AR)を販売手法の一部として採用するポーランドのスタートアップ新興家具メーカーであるTylkoは、TDJ PitangoとExperior Venture Fundに続き、イスラエルのPitango GrowthとフィンランドのEvli Growth PartnersがリードするシリーズCの投資ラウンドで2200万ユーロ(約28億円)を調達した。さらにHermann Miller(ハーマン・ミラー)の元CEOであるBrian Walker(ブライン・ウォーカー)氏と、米国のMasterClassのCOOであるMark Williamson氏(マーク・ウィリアムソン)氏が新たな投資家として加わっている。Tylkoは2015年の設立以来、現在までに合計3300万ユーロ(約43億円)を調達している。

Tylkoは現在、140人のチームを倍以上に増やすとともに、新たな市場でのローンチを計画しており、現在の限定されているポートフォリオを拡大する予定だ。

Tylkoは、消費者向け家具市場をある程度開拓したmade.comと似ている。Madeと同じく、Tylkoの背後にあるアイデアは、消費者による直接の「オンデマンド設計」 である。同社によるとパンデミックの最中、人々が家に閉じこもってオンラインで注文をしていた時期により、2020年の売上高は前年比で132%増加したという。

Tylkoの共同創業者かつ共同CEOであるJacek Majewski(ヤツェク・マジェフスキー)氏は、声明の中で次のようにコメントしている。「Tylkoのビジョンは、完璧なデザイン、高品質で持続可能な製品を作るために、ユーザーエクスペリエンスを第一に考えることです。この巨大な産業に持続可能性をもたらすためには、証明書ではなくその機能によって顧客を獲得できるような、非常に魅力的な製品を作る必要があると考えています」。

Tylkoによると、同社の家具は 「パラメトリックデザイン」 をベースにしており、それぞれのアイテムは非常に個性的だ。Tylkoのプラットフォームは、生産パートナーのための製造プロセスを自動化している。

Evli Growth PartnersのグロースパートナーであるMikko Kuitunen(ミッコ・クイトゥネン)氏は「私たちはTylkoの並外れた成長と、家具市場のリーダーとして会社を拡張する能力に感銘を受けています。Tylkoの強力なインパクト主導のビジョンとオーダーメイドのビジネスモデルは、市場をより持続可能なソリューションへと移行させます」。と付け加えた。

Pitango Venture CapitalのGeneral Managing Partner&Co-FounderであるRami Kalish(ラミ・ケイリッシュ)氏は、「Tylkoは家具業界を破壊する大きなビジョンを持っています」 とコメントした。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Tylko家具AR

画像クレジット:Tylko

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

リモート従業員が選ぶデスクや機器に毎月の予算を割り当て備品管理するのを支援するFleex

Fleexはフランスのスタートアップで、もともと公式にはFlexlabという社名だった。この会社は、デスク、外付けモニター、PC周辺機器、快適なオフィスチェアなどを買うお金を従業員により簡単に与えられるようにすることを目指している。つまり、Fleexはリモートワークでの仕事がはかどる状況をつくる手助けをしたいと考えている。

もしあなたが大企業で働いていて、自宅で仕事ができるのであれば、パンデミックの間に仕事がしやすくなるように、外付けモニターやオフィスチェアをリクエストできる旨のメールが雇用主から送られてきた可能性は高いだろう。そして小さな会社に勤めている場合、おそらく雇用主によりけりだったのではないだろうか。

いずれにせよ、企業のIT・ファシリティ部門によっては、スタッフの自宅に散在している膨大なデバイスや家具の在庫に対応しなければならないところも出てきた。ポリシーや発注ポータルの設定、在庫管理なども、非常に難しくなることがある。

Fleexは基本的に、そのような状況を手助けしたいと考えている。同社のサービスを使い、雇用主は従業員のために毎月の予算を割り当てることができる。そして従業員は、その予算をいくつかのカテゴリーの製品やサービスに使うことができる。

Fleexはサプライヤーと直接連携して製品カタログを作成しており、今のところ、IT製品と家具からスタートしている。

Fleexは注文後、あなたのために備品を購入し、あなたの家に品物を送り、製品の完全なライフサイクルをサポートする。従業員が退職する際には、機器をFleexに送り返さなければならない。

これを読んで分かるように、Fleexは一般的なソフトウェアのスタートアップとは異なるビジネスモデルを持っている。企業はデスク、椅子、モニター、プリンターなどを購入するために資金を割り当てなければならない。そして従業員が効率的に予算を使うのか、それともFleexの口座にお金が残っているのかを見いだす必要がある。

購入された製品が使用できなくなるまでにどれほど持ちこたえるのかも、見極める必要がある。言い換えれば、Fleexの背後にあるユニットエコノミクスを把握するには、少し時間がかかりそうだ。

同社はまだスタートしたばかりで、いくつかの企業と協力してサービスを試している。これまでのところ、Swile、Back Market、そしてShineがFleexを利用している。これらの企業は従業員一人当たり平均55ユーロ(約7000円)の予算を毎月配分しているという。

Fleexは200万ドル(170万ユーロ、約2億2000万円)のシードラウンドを調達しており、SaaS企業に焦点を当てたヨーロッパのスタートアップスタジオであるeFoundersに参加している。

Image Credits: Fleex

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タグ:ヨーロッパ 家具

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)