コーディングは口述で行う時代へ、Serenadeが2.2億円のシード投資を調達

数年前、Serenade(セレネード)の共同創設者Matt Wiethoff(マット・ウィートホフ)氏がQuora(クオーラ)の開発者だったころ、手が反復性のストレス障害と診断され、プログラムコードのタイピングができなくなった。そこで彼ともう1人の共同創設者Tommy MacMilliam(トミー・マクミリアム)氏は、AIを使って手を使わずに口述でコードが書けるツールを開発しようと決意。そうしてSerenadeが誕生した。

米国時間11月24日、同社はAmplify PartnersとNeoの主導による210万ドル(約2億2000万円)のシード投資を発表した。同時に、初の市販版製品となるSerenade Pro(セレネード・プロ)の発表も行なった。

「Serenadeは、コンピューターにダウンロードして使用するアプリです。Visual Studio CodeやIntelliJといった既存のエディターに統合すれば、あとは口でコードをいうだけです」と共同創設者のマクミリアム氏は私に話した。そこからは同スタートアップのAIエンジンが主導権を握り、口でいったことを文法上正しいコードに変換してくれる。

汎用の音声テキスト変換エンジンはすでに数多く出回っているが、コード入力の必要性に的を絞ってチューンされたものは見たことがないと彼は話す。非常に狭い市場を狙った製品に見えるかもしれないが、この使用事例は、そうしたテクノロジーを怪我を負っていない開発者も利用する時代の出発点に過ぎないと創設者たちは語る。

「私たちのビジョンでは、これがまさにプログラミングの未来なのです。機械学習によって、コーディングはこれまでになく早く簡単になりました。そして私たちのAIは、プログラミングに付き物の機械的な手作業を大幅に減らします。キーボードのショートカットや言語の細かい文法を覚える手間もなく、アイデアを自然な形で表現することに専念できます。それを私たちの機械学習が、あなたに代わって実際のコードに仕上げるのです」とマクミリアム氏は説明してくれた。

このスタートアップの従業員は現在5人だが、新製品の発売と新規の資金調達の力を借りて、2021年中には15〜20人に増やしたいと考えている。この会社を立ち上げるとき、彼らは多様性を大変に重視したとマクミリアム氏はいう。

「私たちの多様化戦略は、起業プロセス全体に行き渡っています。多様性がまず第一にあるのだと私は思っています。そのため、外へ出て、素晴らしい人たちと会うよう心がけています。世間には、素晴らしい人たちがたくさんいます。私たちの仕事は、Serenadeで働くことの素晴しさを彼らにわかってもらうことです」と彼は話す。彼らは、個人的な人脈を超えたさまざまな人材源に働きかけて多様な候補者グループを掘り出す。その後、多様性の高い従業員構成を築くという目標に沿った候補者との面接方法やスキルセットの審査方法を考える。

同社は、自分たちがコーディングをキーボードから口述に移行させるための手段だと自認している。今回の投資は、ユーザーのためのコミュニティを構築しつつ製品の開発を続ける資金となる。「私たちは、声でコーディングすることの価値を、どうしたらうまく説明できるか、どのようにデモをまとめ、どのようにこの製品に長けた人たちのコミュニティを構築して、それ(声のほうが早くコーディングできること)を示すべきかを、これから考えていきます」と彼は話していた。

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(翻訳:金井哲夫)

ソースコードをオートコンプリートするAIプラットフォームCodotaが13億円を調達

スマートフォンとその小さなキーボードのおかげで、今や私たちが文章を書く際には、オートコンプリートがほぼ常識になっている。言いたいことをキーボードが提案してくれるので、作業が少しだけ楽になって、文章を書いて(少なくとも親指が太い私の場合)言葉を修正することで食われる貴重な時間を節約してくれる。だが、人工知能とセマンティック(意味論)分析がこうした形で利用されているのは、電子メールやメッセージを書くときだけではない。本日、コンピューター・プログラムのコーディングの世界にこのコンセプトを採り入れたプラットフォームを開発したスタートアップが、事業拡大のための投資を獲得したと発表した。

Codota(コドタ)は、作業の時間短縮(「生産性が25パーセントまで向上」と同社は主張)と文法と「スペル」の修正を目的に、記述中のコードを行ごとにオートコンプリートしてくれるAIツールを開発したイスラエルのスタートアップだが、e.venturesから1200万ドル(約13億万円)のシリーズA投資を獲得した。このラウンドには、前回の投資会社Khosla VenturesのほかTPY CapitalとHetz Venturesが新規に加わった。同社はこれまでに合計で1600万ドル(約17億万円)を調達したが、企業評価は公表していない。

この資金調達は2018年末(発表は3月になってから)で、Codotaが自社よりも大きな競合相手であるカナダのTabNine買収した直後に確定した。買収の目的は対応するプログラミング言語を増やすためだ。現在のところPython、JavaScript、Java、C、HTMなどを含むすべての主要言語に対応していると同社は話している。またVSCode、Eclipse、IntelliJといった主要な統合開発環境にも横断的に対応しているという。

この資金は、現在の範囲からさらにリーチを広げ、より多くの顧客を獲得するために使われる。今日、Codotaのツールをすでに利用している顧客はそうそうたる顔ぶれだ。Google、AmazonをはじめNetflix、Alibaba、Airbnb、Atlassianなどなど数多くの企業の開発者が顧客リストには含まれている。2019年は顧客ベースが1000パーセント以上に拡大し、月に100万人の開発者が利用しているという。

今回の資金調達のニュースは、Codotaのセマンティック技術とTabNineのテキスト技術を融合させたJavaScript用オートコンプリートの新バージョンをCodotaがローンチした時期と一致していた。

上に示した顧客リストの筆頭であるGoogleとAmazonは特に驚くべき存在だが、Codotaは狙いが定まっていて、現在の行動は正しいようだと彼らも明言している。この2つの企業は、それ自身が巨大AI企業であり、どちらも開発者向けに非常に強力なツールセットを提供している。特にGoogleは、Gmailのために同社が開発したツール群によってオートコンプリートの代名詞ともなっている。

2015年創立のCodotaが注目を集める理由は、共同創設者でCTOのEran Yahav(エラン・ヤハブ)氏によると、他の言語では進歩している意味論の専門家にとってすら、コーディングはそれまで難物だったからだという。

「数年前まで、それは実現不可能なものでした」と彼は話す。さらに、コーディングのオートコンプリートを可能にしたのは、次の4つの技術的な流れが合致したためだという。アルゴリズムに供給できる高品質なオープンソースのソースコードが入手可能になったこと。セマンティック分析が、洞察の抽出を大規模にできるまでに発達したこと。機械学習が発達して機械学習のコストが本質的に下がったこと。すべてをクラウドで処理できる計算資源が、誰でも、どこにいても利用できるようになったことだ。オープンソースが非常に活況となり、その他のすべてのものが一緒に付いてきた。他にも同じ研究をしている企業はあるが、Codotaはこの理想的な嵐をつかんだのだ。

「成功の度合いに違いはあれ、他社でもやっています」ともう1人の共同創設者でCEOのDror Weiss(ドロール・ワイス)氏はいう。「私は推測していますし、実際に知ってもいますが、他の企業も同じことをしています」。その他の企業とはKiteUbisoft、Mozillaなど数多い。

Codotaが構築してきたものの中でも、今、特にタイムリーな一面により正確なコーディング支援を開発者にもたらすと同時に、特定の環境や職場でのベストプラクティスは何かを「学習」する能力がある(個人向けコースと企業向けコースの両方があるが、この機能が提供されるのは企業コースだ)。あらゆる状況で便利に機能するが、とりわけ今の、開発者が家で1人で作業する場面では、あたかも同じ場所で仕事をしているかのように、即座に手助けをしてくれる。

非常に多くのAIが自律システムの考え方に傾いているが、ワイス氏は短期的にもましてや長期的にも、それは目標としていないと強調する。

「開発者に置き換わるものを作れるとは思いませんし、作りたいとも思いません。私たちの目標は、ありふれた繰り返しの側面を取り出して、そこを肩代わりすることです」と彼は言う。その点でいえば、バックオフィス機能におけるロボティック・プロセス・オートメーションと変わらない。「文法やベストプラクティスを覚えることには、それほど高い価値はありません。Smart Composeを使えば、(カスタマーサービスの)例文の提案はしてくれるでしょうが、あなたの心を読んで、あなたの言いたいことを察してまではくれません。なので、あなた自身に置き換わったり、あなたの意図を汲んで応答するといった方向に進む可能性はとても低いのです。そんなことは、私たちは長期目標にすらしていません」。

2019年にe.venturesは、アーリーステージの投資のための4億ドル(約430億円)のファンドを発表した。今回の投資はそこからのもののようだ。このラウンドにともない、e.venturesのジェネラルパートナーTom Gieselman(トム・ギーゼルマン)氏がCodotaの役員に加わった。

「私は開発者用ツールの市場を20年間見てきましたが、Codotaはコミュニティー、製品、テクノロジーの面において独占的なプレイヤーの地位を確立したと信じています」と彼は声明の中で述べている。「ソフトウエア開発を変革して、コーディングを楽にして、企業内のチームを構成する個人開発者の効率を高めるというドロールとエランの使命を支援できることを、私は誇りに思います」。

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(翻訳:金井哲夫)

子ども専用ラズパイ開発の英国スタートアップがマイクロソフトと組んで300ドルPC販売へ

Kano(カノ)は、英国ロンドンに拠点を置き、子ども向けのコンピューティングおよびコーディング教育のためのハードウェアを製造するスタートアップ。米現地時間6月19日、大きな成長への一歩を踏み出した。同社はMicrosoft(マイクロソフト)と提携し、Kano PCを発売する。このマシンは、11.6インチのタッチパネル式ディスプレイ、Intel Atomプロセッサーを搭載し、同社製品として初めてWindows(厳密にはWindows10 S)が走る。今回の提携の一環として、マイクロソフトはKanoに非公開の投資も行う。

Kano PCは、現在、Kano.meおよびMicrosoft Storeで予約受付中。価格は299ドル99セントまたは299ポンド99ペンス。10月に出荷が始まる。2019年10月21日からは、英国、カナダ、英国の特定の小売業者からも販売される。Windows対応デバイスへの移行はKanoにとって非常に意味深い。

このスタートアップは、Raspberry Piを中核にしたデバイスを開発し、Kickstarterキャンペーンで人気を博したことで名を挙げた。これまでの数年間は、同社が標榜するDIY精神により形作られてきた。

Kanoの創設者でCEOのAlex Klein(アレックス・クライン)氏によれば、KanoはRaspberry Piベースのデバイスを今後もサポートしていくが、新たにRaspberry Piベースのハードウェアを開発するかどうか、まだそのロードマップは定まっていないという。

「Raspberry Piデバイスも、低価格帯のポートフォリオで存続しますが、このマシンは、より幅広い年齢層に向けてデザインされました。これは正式なWindows PCなのです」とクライン氏は言う。

Kanoのラインアップは、現在、6歳から13歳の子どもたちの間で広く使われ人気を集めている。クライン氏の説明によればKano PCはK-12(幼稚園年長から高校卒業まで)デバイスだが、現在の対象年齢層の前後に幅を広げるには「ブランディングに時間がかかるかも知れない」とも彼は認めている。
それを実現するために、マイクロソフトとの提携により提供される以下のソフトウェアがある。

Make Art
Coffeescriptで高品質な画像のコーディングを学ぶ。
Kano App
簡単な手順とプログラムを使って魔法の効果から冒険の世界まで、ほぼあらゆるものを作り出す。
Paint 3D
3Dモデルの製作、シェアができ、3Dプリンターに送ることもできる。
Minecraft: Education Edition
いくつもの賞に輝く創造的なゲームをベースにした学習プラットフォーム。
Microsoft Team
新しいプロジェクトやコンテンツの入手や、自分の作品をシェアができる(子ども向けのSlackみたいなものだ)。
Live Tiles
自分だけの創造的なプログラムを自分のダッシュボードに直接表示できる。

これまで中核的ユーザー層(コンピューターやコーディングに興味のある子どもたちと、コンピューターとコーディングへの興味を子どもたちに持たせたいと願う親たち)を惹きつけてきたKanoは、その人気に応えるべく、同社のシンプルなコンピューターと連動して使えるアクセサリーを数多く発売してきた。また、ユーザー層に応じたスマートなテクノロジーおもちゃも作っている。昨年、同社はハリー・ポッターの魔法の杖を販売した。自分で作って、プログラムして、遊べるというものだ。CEOのクライン氏はインタビューのなかで、この種の新製品が、Kanoから間もなく続々と発表されることをほのめかしていた。

マイクロソフトとの提携により、同社は当初の顧客層を超える幅広い人々の間にも、Kanoの高い評価を広めることになるだろう。またこれは、すでにマイクロソフトが大きく力を入れている教育環境に参入するための、新たな入口を開くことにもなりそうだ。

それは、今回の提携のもうひとつの興味深い側面でもある。マイクロソフトは教育環境にソフトウェアとハードウェアを販売してきた長い歴史を誇るが、これは、背後に控えた新たなブランド、つまり子どもに特化したブランドとしてその持ち札に多様性をもたらす。大人向けのブランドの機能を縮小して(でも値段はそのまま)子ども向けとしたようなものとはわけが違う。

「Kanoと提携してKano PCを販売できることで、私たちは大変に興奮しています。私たちはKanoと目標を共にして、教室での体験を、教師も生徒も同じく楽しめるものにして、未来を、想像するだけでなく、実際に作り上げる力を与えたいと思っています」とマイクロソフト教育担当副社長を務めるAnthony Salcito(アンソニー・サルチート)氏は声明の中で述べていた。

これまで、地味ながら大きな成功を遂げてきたKanoは、数多くの支援者から5000万ドル(約54億ドル)ほどの投資を集めてきた。そこには、Marc Benioff、Index Ventures、Breyer Capital、Troyをはじめとする投資家が名を連ねている。クライン氏は、近い将来、新しいエクイティ投資を検討する可能性があると話しているが、それ以上のコメントは聞けなかった。

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(翻訳:金井哲夫)

Apple TV+の「セサミストリート」っぽい番組は子供たちにコーディングを教育する

「セサミストリート」は未就学児たちに数字や文字を教えてきたが、アップルのセサミストリートっぽい新たな番組では子供達にコーディングの基礎を教育する。アップルの発表会で人気キャラクターのビッグバードが発表した。

セサミワークショップが制作を担当するこの番組はアップルが発表した、Netflixのライバルとなる「Apple TV+」のコンテンツのうちの一つだ。

なぜコーディングに特化した番組を制作するに至ったのか。アップルはCodyと名付けられたPRクサいセリフを言う人形を通し「コーディングは共同作業を促進し、批判的思考を育む、子供達も学べる重要な言語なんだ」と話した。

「未就学児たちにコーディングを教える事で、彼らに世界を帰るチャンスを与えることができる!」(Cody)

Codyいわく、同番組では「カッコいい音楽」や「ファンキーなダンス」も期待できるそうだ。

もちろんのこと、次世代コーダーを育てるのはアップルにとって大きな利益となる。数十億ドルもの利益を生む同社のアプリのエコシステムには膨大な人数のサード・パーティー開発者が貢献しているからだ。

アップルはこれまで、Apple Storeでの教育セッション学校NPOの支援、教育者への資料提供、そしてSwiftを学べるアプリなどを通じて、自社の言語Swiftを推進してきた。だが、この新たな番組では更に幼い子供たちをターゲットとしている。

アップルは発表会にて同番組のトレイラーを公開しなかった。そのため、コーディングのチュートリアルがどのような形で放送されるのかは定かではない。

アップルとセサミワークショップのパートナーシップは2018年に発表されていた。当時の発表によると、両社は実写およびアニメコンテンツの制作に合意している。しかし、これまで作品は発表されてこなかった。

加えて、その契約に「セサミストリート」自体は含まれていない。HBOが2015年に、セサミワークショップと同タイトルの利用に関して5年契約を結んでいるからだ。

(本稿は米国版TechCrunchの記事を翻訳・編集したものです)

[米国版TechCrunchの記事はこちら]

Duolingo風にスマホでコーディングを学べるアプリPy――YCの2017年夏季プログラム参加企業が開発

Pyは細かく区切られたゲーム性のあるコンテンツを使い、モバイル端末上でプログラミングを学べるような環境を提供しようとしている。この生まれて間もないスタートアップを設立したのは、コンピューターサイエンスを学ぶ2人の友人同士だ。彼らは過去に何度も知り合いからプログラミングの習得についてアドバイスを求められてきたという。

「どうやってプログラミングを学べばいいのか、どんな教材を使えばいいのかといったことを色んな人から聞かれました」と共同ファウンダーのDerek Loは説明する。「そこでさまざまな教材について教えるのですが、最後までやり通せる人はほぼいませんでした。難しすぎるか、つまらないと感じる人が多かったようです。時間がないという人もいましたね。このような経験からPyのアイディアを思いついたんです。携帯電話向けにどこでも楽しくコーディングを学べるようなサービスを自分たちで作ればいいんじゃないかと」

最近App Storeで取り上げられてからアプリのダウンロード数は一気に伸び、現在では10万回以上を記録している。しかも、特別なマーケティング戦略なしでだ(Product Huntには昨年9月から登録されているので、初期のユーザーはシリコンバレーもしくはカリフォルニア州の人が多い)。もともとはAndroid版のアプリも配信されておらず、今週に入ってからようやくリリースされた。

また、Pyの共同ファウンダーであるふたりは、Loの卒業を待ってからY Combinatorの2017年夏季プログラムに参加した。

彼らは2016年5月からiOSアプリの開発にとりかかり、その後すぐにベータ版をリリースした。当時はかなり幅広い分野をカバーしようとしており、TechCrunchに対するピッチの中では、Pythonをはじめとするプログラミング言語だけでなく、人文科学や自然科学、さらには英語文法といった内容も含めていくと話していた。

当初、私は彼らが大風呂敷を広げてしまっているように感じていたが、結局ふたりはプログラミングというもともとの狙いにプロダクトの的を絞ることにした。さらにより実用性を高めるため、ウェブサイトやアプリといった具体的な何かをつくるためのスキルを身につけられるような仕組みを構築することにしたのだ。Pyは個々の目的に応じてカスタマイズされた、モジュール式の実践的な教材を提供しようとしているとLoは語る。そのため、面接時に行われるプログラミングテストのコツに関する教材も準備されている。

「私たちはプログラミング用の教材を開発するのに注力してきましたが、単にプログラミングと言っても、その内容はiOSアプリやウェブサイト、データサイエンスなど多岐にわたります」とLoは話す。「そのため、PyにはSwiftやPythonをはじめとするさまざまな言語の基礎的なコースが準備されているほか、間もなくプロジェクトベースのコースも公開される予定です。Swiftの知識を使っていかにiPhoneアプリをつくるかといった内容のものです。このように、各言語の知識を活かしてユーザーが実際に何かを作れるようなコースを提供できることをとても楽しみにしています」

現在Pyでは10種類の無料”コース”が提供されており、ユーザーはJavascriptやSwift、Python、HTML・CSSなどについて学ぶことができる。教材の大部分は共同ファウンダーのふたりが作っているが、彼らいわく「クオリティを高く保つため」に外部の大学教授やエンジニア、研究者とも協力している。

プログラミング学習サービスは最近かなり増えてきており、各社クリエイティブな方法で幅広い年代の人をひきつけようとしている。具体的にはボードゲーム型のものや、プログラムを使って動かせるロボット、ゲーム要素が盛り込まれた学習プラットフォーム(逆にプログラミング要素が含まれたゲーム)などがある。Pyは競争の激しいこの分野でどのように戦っていこうとしているのか?

彼らは(コンピューターとは関係ない)言語学習アプリを参考に、タッチスクリーンを使ったインタラクティブでユーザーの興味をかき立てるような仕組みを考案した。ちなみに、言語学習アプリの分野でもDuolingoやBabbel、Verblingなど最近さまざまなサービスが誕生している。

「他社サービスとの違いについては、とても具体的なものが何点かあります」とLoはTechCrunchに対して語った。「そのうちのひとつが出題方法で、私たちはこれまでに4、もしくは5種類の出題方法を開発しました。まず選択式の問題があって、ほかにも『このプログラムからはどんなアウトプットが得られるか?』といった質問に答える記述式の問題もあります」

「さらに、解体したプログラムを一行ずつ組み立てていくタイプの問題では、ユーザーがプログラムの流れを理解しているのかを確かめることができます。中でも気に入っているのが、私たちが『ワードバンクス』と呼んでいる穴埋め問題で、これは準備された単語を使って穴が空いたプログラムを完成させていくというものです。繰り返しになりますが、Pyはインタラクティブで楽しく、ゲーム要素を兼ね備えた、Duolingoのような学習アプリなんです」

さらに彼らは、現在「コードレスポンス」と呼ばれるタイプの問題も開発中だという。これは、携帯電話では面倒な入力作業を簡素化するために開発されたキーボード(Pyオリジナル)を使って、実際にコーディングを行うものだ。

「キーの中にはプログラミングに使わないものもあるため、本当に必要な単語や文字、記号だけで構成されたキーボードを作ったんです」とLoは話す。「このカスタムキーボードを使えば、かなり楽にコードを書くことができるので、通勤中でも携帯電話上でコードを書いて、実行することができるんです」

学習内容の定着率を高める仕組みとして、他にもPyには言語学習アプリ(そしてモバイルゲーム)を参考に、ダイナミックレビューやゲーム的な要素が組み込まれている。例えば、各コースを修了したユーザーには星が与えられるようになっているほか、復習ボタンを押すとユーザーが上手く答えられなかった問題が優先的に表示されるようになる。

「アングリーバードでスコアに応じて1〜3つの星が獲得できるように、Pyでも問題の正答率に応じて星が与えられるようになっています。正答率が100%だと星3個で、50%だと1.5個といった具合です。こうすることで、単に学習するだけでなく細かなところまでしっかり覚えようというインセンティブが生まれます」とLoは続ける。

「他にも、レッスンやクイズを終えるごとに経験値が貯まるようになっていたり、何日連続で学習を行ったかが表示されるようになっていたりと、ユーザーの継続的な学習をサポートする機能を実装しています。後者の機能はDuolingoやSnapchatにも導入されていますね。プッシュ通知機能も備えていて、良いタイミングでユーザーに通知を送ることでリテンション率が上がることが分かっています」

各要素が綺麗に並べられたエレガントなインターフェースからは、Pyのチームがデザインにも力を入れている様子が伝わってくる。もともとグラフィックデザインに興味があり、大学でもいくつかの関連コースをとっていたLo自身がアプリのデザインも手がけているとのこと。

既にPyにはさまざまな種類の無料コンテンツが準備されているが、共同ファウンダーのふたりはマネタイズ戦略についても既に考え始めているようだ。Pyのプレミアムサービス(アプリのアップデートに合わせてリリース予定)では、無料版にはないコンテンツが準備されるほか、ユーザーは「ライブ指導機能」を利用して経験豊富なソフトウェアエンジニアとリアルタイムで相談ができるようになる予定だ。

これまでのところ、基本的にPyは初心者や新人プログラマー(=そこまで知識を持ち合わせてない人)をターゲットにしていたが、Loは同様の仕組みを活用して、今後もっと経験を持った人たちに対してもサービスを提供しようとしている。イエール大学もその可能性を感じてPyに興味を持ったようだ。

「(イェール大学は)テクノロジーが日々変化する中、私たちのコースのモジュール性に興味を持ってくれました」とLoは語る。「さらに初期の投資家の1人は、将来的には高度な内容のコースもモジュール式に提供できるのではと期待してくれていました。きっとそれは上手くいくでしょうし、経験豊富なディベロッパーはそういう学習方法を好むと私は考えています」

Pyは昨年の10月にDorm Room Fundから2万ドルのプレシード資金を調達し、Yale Venture Creation Programからも10万ドルの投資を受けることが決まっている(現在契約内容を調整中)。ここにY Combinatorからの投資を含めると、これまでの合計調達額は14万ドルに達する。

さらに、シリコンバレーの有名投資家からは100万ドルの投資話を持ちかけられたようだが、現状そこまでの大金は必要ないということで断ったとLoは語った。しかしYCのプログラムを卒業した後には、100〜300万ドルのシード資金の獲得を目指すとも彼は話している。

彼らがYCで学ぼうとしているのは、どのようにPyのアプリをグローバルビジネスへと成長させられるかということだ。彼らは一案として、コーディングスクールを運営している団体とパートナーシップを結び、生徒にアプリを使ってもらうことでユーザーベースを拡大できるのではと考えている。

「私たちには起業経験がありません。私はいくつかアプリを作ったことがありますし、ふたりともソフトウェア開発の経験はありますが、実際に会社を立ち上げるというのは初めてのことなので、プロから指導を仰ぐというのはとても大切なことだと考えています」とYCでの狙いについてLoは語った。「さらにYCはソフトウェアプロダクトをスケールさせるのがうまいということでよく知られていて、私たちにはそれがとても魅力的に映っています。彼らのネットワークに入り込んで指導者を見つけ、事業をスケールさせて世界中の何百万人という人たちにプロダクトに触れてもらう。この展望こそ私たちを興奮させ、私たちが毎朝目をさまし、YCプログラムへの参加を楽しみにしている理由なのです」

誰でもコーディングは学べるものなのだろうか? 「そう思います」とLoは少しためらいがちに言った。「文字が読めないとなると難しいかもしれませんが、子どもでも文章さえ読めればコーディングができるようになると思いますよ」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

無料のオンラインプログラミングスクールCodecademyが3000万ドルを新たに資金調達

Codecademy  the free online coding school  raises another  30M led by Naspers   TechCrunch

Codecademyは1600万人の登録ユーザーを持つオンラインのコーディングスクールだ。これまでサービスを利用するのに生徒に一銭も課金しないという経緯を辿ってきた。今、Codecademyがいつ、どのようにサービスをマネタイズするかと疑念が湧く中、3000万ドルの新たな資金調達をCodecademyが発表した。これは同社が次にどうするかを示す出来事かもしれない。

南アフリカに拠点を置く(営利目的の)巨大メディア企業、NaspersがシリーズCラウンドを率いる。CodecademyはシリーズCラウンドで調達した資金を、引き続きCodecademyのサービスを世界に普及させ、モバイルなどなプラットフォームでも使えるよう開発に充てると語っている。

ラウンドに参加する投資家には以前のラウンドにも参加したUnion Square Ventures、Flybridge Capital Partners、Index Ventures、Sir Richard Bransonを含む。Codecademyは評価額を開示していないが、私たちは探り出そうとしている。Codecademyが調達した資金は合計で4250万ドルだ。

Codecademyの共同創業者でCEOのZach Sims氏はインタビューにおいてCodecademyは有料の「プロフェッショナル」サービス(月額約20ドル)からすでにいくらかの収益を生んでいると語った。プロフェッショナルサービスではコーディングの独習コンテンツにプラスしてメンターへの相談、成績の評価が可能だ。

しかし、Sims氏は今年度初頭のインタビューでTechCrunchに対し、Codecademyには1600万人の登録ユーザーベースをマネタイズできる他の手段があると示唆した。

「プロシューマー(製品の開発にも携わる消費者)層、追加コンテンツ、メンターへの相談、さらにはユーザーがゼロから仕事を得るまでの支援とそれに対する課金」が今年度初頭にフィリピン・ダバオで開かれたWorld Economic Forumでのインタビューの中でSims氏が言及したすべての手段だ。

コーディングトレーニングプログラムにとって問題となってきた仕事斡旋の領域にCodecademyの長期的なビジョンがある。他の高額な競合サービスは多くのことを約束するが、学習が終わった後、最終的に仕事まで提供できるところはほとんどない。

オンラインのトレーニングプログラムを通してCodecademyはユーザーに関するすべてのデータを収集する。そして、そのデータの活用で、長期的にはCodecademyは他のスクールよりも卒業生を有望な仕事とつなげることが可能だとSims氏は考えている。そしてSims氏はそれでマネタイズができればと期待している。

実際に、Codecademyはカリキュラムの卒業生をアドバイザーとして雇い、Codecademyの主張通りのことをすでに実践している。現在、アドバイザーはプロフェッショナルサービスの料金を払っている人のためのメンターとして従事している。

「私たちは自社のことを経済的な機会への入り口として捉えています」とSims氏は語った。採用候補者の能力に関して十分に理解していない担当者が門番を務める業界において、Codecademyのようなサービスは、必要とする企業が選りすぐりの人材を見つけるための助けとなるとSims氏は言う。

26歳の共同創業者Sims氏はCodecademyの成長につれて、そのオンライントレーニング・プラットフォームを別のデジタル分野に拡げていくことを望んでいる。

コーディングの時代の波に乗る

ニューヨークに本社を置き、2011年のY Combinatorに参加したCodeacademyが本腰を入れて着手している市場は巨大だ。

クラスで教えている内容、仕事の現場で理解している内容、そしてどの職に人材を充てるべきか(あるいはどのようなビジネスを構築するか)においてそれぞれテクノロジーギャップが存在する。現在、テクノロジーはいたるところに存在している。それが意味するのは私たちはすべての産業、すべての段階の仕事がテクノロジースキルを必要としているいうことだ。

これに加え、今では30億人以上の人がオンライン上にいる。対象となる大きな市場が存在するのだ(Codecademyには現在1600万人の登録ユーザーしかいないことを思い出してほしい)。

現在、CodecademyはHTML/CSS、Javascript/jQuery、Python、Ruby、PHP、APIなどのプログラミング言語やコンポーネントに重点を置いている。Codecademyの前提は単にレッスンを習うだけではなく、書いたコード、成果物へのフィードバックをプラットフォーム上で他のユーザーから受けることができる教室のような環境を再現していることだ。

人々がコードを習うのを支援しているオンライン・プラットフォームはCodecademyだけではない。同じ分野で展開するサービスは他にもLinkedInが所有するLynda.com、Thinkfuk、Code.org、Coursera、Udacity、Pluralsight、Khan Academy、Treehouseなどがある。

さらに教育が専業の企業からAmazonのような企業まで、オンライン学習ツールを開発している企業は数多く存在する。これらの企業もCodecademyが解決することを目指すスキルギャップの解消を目的にしたコンテンツを開発準備中だ。

競争の渦中にいるCodecademyのユニークな売りの1つは無料で使用できることだ。ある人たちは、Codecademyの教育では十分には学べず、よりプログラミング学習に真剣な生徒は最終的には別のオンラインプラットフォームを見つけなければならないと指摘している。しかし、Codecademyは何か試してみたいという好奇心のために入門の敷居を低くしているのだ(深い専門性やレベルの高いスキルを学ぶ教育コンテンツにおいては、マネタイズが確実にできるだろうとSims氏も述べている)。

端的に言えば、多くの競合が出てきたということは、コンピューター・プログラミングの機能を学ぶことへの関心の高まりにCodecademyが乗ってきたことを示している。

「2011年にCodecademyを設立して以来、21世紀の教育の鍵となる科目としてコード学習への関心が爆発的に高まっている様を見てきました」とCodecademyのZach Sims氏は声明において語った。「数百万の月間ユーザー、米国外に50%以上のユーザーがいるので、Naspersとパートナーを結ぶことは最高の機会です。幅広い学習コースを多くの言語で、新たな地域に提供していくことでビジネスを拡大させ、誰もが経済的な機会にアクセスできる教育を創造していきます」。

ラウンドの一環として、Naspers VenturesのCEOのLarry Illg氏がCodecademyの取締役に就任した。

「従来の大学は、テクノロジーを学ぶ生徒や雇用者の要求の変化に対応するには不十分な備えしかありません。Codecademyは市場において重要で埋める価値のあるギャップを解消させることができるでしょう」とLarry Illg氏は語った。「Codecademyの製品の質とチームの実行力で海外展開を進め、今後の拡大に向け、確固たる地位を築くことができています」。

Naspersは米国の教育界に長いこと関わってきた。NaspersのCodecademyへの投資は米国のEdTech(教育テクノロジー)において3回目の投資となる。Naspersの投資先にはBrainlyやUdemyが含まれる。

今年度初頭のSims氏へのインタビューはこちら

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)