リモートで働く新入社員向けのハードウェア選択・配布を支援するFirstbaseが約60億円調達

Firstbase(ファーストベース)は米国時間3月25日、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)が主導するシリーズBラウンドの資金調達を発表した。TechCrunchが同社のシリーズAを取材したのは1年前、世の中のリモートワークシフトが本格化した頃だった。

現在、よりハイブリッドな世界で、大小の企業がオフィス内の社員と在宅勤務の社員のバランスをどのようにとるかを考えており、我々はFirstbaseがどのように将来計画を立てているかに興味があった。

このスタートアップは、遠隔地にいるスタッフの入社を支援し、必要なハードウェアを必要なときに受け取れるようにするための支援を行っている。パンデミック時に転職した人なら、テクノロジー製品を新入社員に届けるのは必ずしも簡単なプロセスではないことを知っているだろう。この問題は、オフィスと個人の物理的な距離が遠くなる程、より複雑になる。

前回話したときから、同社は機能の幅を広げている。Firstbaseは、現在も顧客の新入社員がハードウェアを選ぶのを手伝い、出荷や回収、管理を担当している。そして、その提供内容に融資が加わった。現在、Firstbaseは、顧客が通常料金で、新入社員のハードウェアや、家具など遠隔地にあるオフィス周辺機器の購入代金を支払うことができるようにしている。

ハイブリッド時代の成長

Firstbaseにとって重要なのは、部分的にオフィスに戻りつつある世の中にどう適合していくかということだ。2021年4月以降の16倍の収益成長、同様の期間での7倍の顧客増加など、最近の四半期でスタートアップ級の指標を掲げた後、市場はFirstbaseの遠隔従業員サービス製品を以前より歓迎しなくなるのだろうか。

創業者兼CEOのChris Herd(クリス・ハード)氏はTechCrunchに、ハイブリッドな労働力を持つ企業は、Firstbaseを、オフィス内の従業員だけでなく、自宅から働く従業員にもハードウェアを供給していると語った。TechCrunchは、平均的な企業がどこに向かっているのかをより良く把握するために、リモートファーストの企業とハイブリッドスタイルの企業の間の顧客分布について同社に尋ねた。ハード氏によると、Firstbaseの顧客構成はかなり均等であるが、ハイブリッド型と言われる企業の中には、依然としてリモートワークが大半を占めている企業もあるという。

仕事の未来はまだ流動的だ。

しかし、Firstbaseが構築しているものは、オフィスの世界にきちんと適合する可能性がある。このスタートアップは、米国、英国、ヨーロッパで倉庫を拡張することを計画している。この物理的なフットプリントによって、同社は従業員との間でのデバイスの流れを管理し、必要性から納品までのタイムラグを抑えることができる。世界的なチップ不足の中、重要なサプライチェーン業務を第三者に任せることは、より多くのオフィスなど現実世界での労働力を求める企業にとっても魅力的であることがわかる。

TechCrunchは、Firstbaseが現在の活動に加えて、モバイルデバイス管理(MDM)ビジネスに参入する計画があるかどうかに興味があった。Jamf(ジャムフ)のようなMDMは、現在公開されているが、デバイスの物理的な配送やケアに関わるよりも、デバイス上でより多くの仕事をする。ハード氏は、2年前、MDM機能の構築は検討事項であったと述べている。しかし、その間にFirstbaseは、顧客が既存のMDM製品やHRIS(人事情報システム)ソフトウェアシステムを置き換えるのではなく、それらのシステムにプラグインすることを望んでいることを知った、と彼はいう。

もしFirstbaseがMDMツールを持たない中小企業に十分な販売をすれば、やがて小規模な顧客向けにシンプルなものを構築できるかもしれない。

とはいえ、シリーズAやBステージのスタートアップ企業との取引を想定していた同社は、数百人、数千人の従業員を雇用する顧客へと成熟度を高めていると、ハード氏は述べている。これは、5桁の取引ではなく、6桁の取引を意味すると、彼は言った。非公開企業は通常、このような一般的な指標以上のものを共有しないが、このケースでは、会社の最近の成長率を説明するのに役立っている。

Firstbaseは、ソフトウェア、ハードウェア、金融技術を巧みに組み合わせた企業だ。そのため、粗利やその他の経済的な詳細を推測するのは困難だ。誰かがデッキをリークするか、あるいはできるだけ早く会社が公開され、我々がデータを覗き見ることができるようになることを願う。

画像クレジット:filmstudio / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Yuta Kaminishi)

中国の旅行最大手Trip.comがハイブリッドオフィスを採用

世界中で数多くのテック企業が過去2年間の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)期間中、リモートワークあるいは何らかのハイブリッドモデルに切り替えた。しかし中国では、ほとんどのテック企業が2020年夏以降オフィスに戻っている。国のゼロ・コロナ政策による感染者数減少のおかげだ。こうした通常生活の中、ある中国企業がリモートワークを続ける決断をした。

3月1日から、中国最大の航空券・ホテル予約プラットフォームTrip.com(トリップ・ドット・コム)は、従業員が許可を得れば週2日まで在宅勤務することを可能にすると2月15日に発表した。1999年に設立され、2019年にCtrip(シートリップ)からTrip.comにブランド変更した同社は、2021年6カ月間実施したリモートワークの試行に参加した従業員1600名の75%に「健康の改善」が見られたことを受け、今回の行動に至った。実験には技術、プロダクト、ビジネス、マーケティング各部門の中核スタッフおよび約400名の管理職が参加した、と広報担当者がTechCrunchに語っている。

参加者の93%が、自分の時間を「より有効に」使えたと感じ、社員の離脱率は、期間中約3分の1に減った。60%近くが、ハイブリッドワークを「強く」支持する、と試行終了後に答えた。

同社従業員は3月以降、自宅、喫茶店などあらゆる場所で働く申請ができる。各部門のマネージャーは、チームの目標、各個人の状況に基づいてリモートワークを認めるかどうかを判断する、と広報担当者はいう。またマネージャーは、自己判断で取り決めを調整することができる。

ハイブリッド方式はまずTrip.comの中国国内の事業所に適用され、海外の支店は「現地の状況と新型コロナ防衛措置に応じて」このモデルを適用する予定だ。

Trip.comは、NASDAQおよび香港証券取引所に上場しており、過去数年に海外競合他社を次々と買収して国際的に拡大している。2016年に17億400万ドルでスコットランドのSkyscanner(スカイスキャナー)を買収した。2019年には、インドのMakeMyTrip(メイクマイトリップ)の持ち株を半数近くへと増やした。そして2020年にはオランダの旅行会社グループ、Travix(トラビックス)を金額非公開で買収した。

2020年12月時点のTrip.comおよび関連会社の従業員数は約3万3400名で、うち約3万名が中国国内だ。

Trip.comの共同ファウンダー・会長のJames Liang(ジェームズ・リャン)氏は中国社会問題のコメンテーターとして頻繁に登場している。この柔軟な勤務体系を考えた際、コンピューター・サイエンティストで経済学者でもあるリャン氏は、中国の人口統計学上の課題も念頭に置いていたに違いない。

リャン氏は声明で、ハイブリッド勤務は「企業、従業員、地域社会すべてにとってのマルチ・ウインです。効率を犠牲にすることなく従業員の満足度を高めるだけでなく、交通渋滞を緩和し、環境保護にも役立ちます。住宅価格の高騰と地域格差を軽減し、家族や女性のキャリア育成と出産率の向上にも貢献します」と語った。

Trip.comによるハイブリッド・オフィス採用は、中国テック業界の過重労働カルチャーに対する懸念と批判が高まる中で生まれた。同社は、リモートワークが生産性を犠牲にしないことを示している。2021年の実験参加者の71.9%が、ハイブリッドワークは業績に影響を与えなかったと報告した。

関連記事:Bilibiliコンテンツモデレーター過労死疑惑で中国テック業界の長時間労働文化の議論が再燃

「ハイブリッドワークモデルが将来中国の主要企業全体に広まることを願っています。それは社会と経済に有益で広範囲にわたる影響を与えるでしょう」とリャン氏は語った。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

バカン、オフィス向けコミュニケーション促進サービス「Keeple」をNTT東日本の本社オフィスに提供開始

バカン、オフィス向けコミュニケーション促進サービス「Keeple」をNTT東日本の本社オフィスに提供開始

バカンは2月4日、東日本電信電話(NTT東日本)との提携を深化し、ニューノーマルな働き方に適応する共同検討の新サービス、オフィス向けコミュニケーション促進サービス「Keeple」(キープル)の提供を開始すると発表した。

また同提携の一環として、NTT東日本本社オフィスの執務スペース約300席にKeepleを2021年12月より展開。Keepleでは、VACANが提供する座席の即時予約サービス「VACAN Noline Autokeep Module」(ノーライン オートキープ モジュール)を活用することで、素早い開発およびサービス提供を実現しているという。同モジュールは、VACANが提供する座席の予約サービス「VACAN Noline Autokeep」の機能をベースとしており、導入環境に応じて必要な機能を随時カスタマイズできる仕組み。バカン、オフィス向けコミュニケーション促進サービス「Keeple」をNTT東日本の本社オフィスに提供開始

昨今、リモートワークの浸透、オフィスのフリーアドレス化、フレックス勤務などのワークスタイルの変化により、様々な課題が生じている。バカンは、これら課題を見える化し、ワークプレイスの最適化、組織と人、人と人との新たなコミュニケーションの実現に向け、今後もNTT東日本と連携してサービスをブラッシュアップし、展開を加速させるとしている。

オフィス内の空いている座席を検索・予約、座席利用データを基に席の配置や導線設計の見直しなども行える

バカンのKeepleは、オフィスの座席に設置された専用タブレットと専用ウェブサービスを活用することで、座席の予約やオフィス内での社員の現在位置を検索できるサービス。

専用サイトにスマートフォンからアクセスすることで、オフィス内の空いている座席を検索・予約できる。また座席を予約した者は、座席に設置されているQRコードやタブレットのバーコードを読み取ることで、チェックインが可能となる。

事前予約を行っていない場合は、席が空いていれば座席に設置されているタブレットから直接利用予約が可能。

座席の満空情報は、専用サイト以外にも、オフィスに設置してあるサイネージなどの情報端末からも確認できる。座席の利用率や残席数などをリアルタイムに分析することで、おすすめの座席をレコメンドし簡単に座席を選べるようにサポートするといった機能も実装しているという。バカン、オフィス向けコミュニケーション促進サービス「Keeple」をNTT東日本の本社オフィスに提供開始

また、オフィス内における社員同士のコミュニケーションを活性化させるために、「社員の位置検索」機能も提供。位置検索機能において、探したい社員の名前を専用画面に入力することで、利用している席の場所を見つけられる。これにより、フリーアドレス特有の人を見つけにくいといった課題を解決し、スムーズな対面での会話を実現している。

さらに、利用データを基に各デスクの利用状況を可視化可能。これらデータを活用することで、席の配置や導線設計の見直しなどが可能となり、オフィス運用をデータでサポートするとしている。バカン、オフィス向けコミュニケーション促進サービス「Keeple」をNTT東日本の本社オフィスに提供開始

リモートワークとクラウドの大量導入で1Passwordが約706億円の特大資金獲得、評価額約7740億円に

パスワード管理プラットフォームの1Passwordが6億2000万ドル(約705億7000万円)という巨額のシリーズCを終え、68億ドル(約7739億5000万円)の評価額となった。

この投資をリードしたのはIconiq Growthで、Tiger GlobalやLightspeed Venture Partners、Backbone Angels、そして同社の2億ドル(約227億6000万円)のシリーズA1億ドル(約113億8000万円)のシリーズBをリードしたAccelが参加した。その他の投資家としてCrowdStrikeのCEOであるGeorge Kurtz(ジョージ・カーツ)氏やGeneral MotorsのCEOであるMary Barry(メアリー・バリー)氏、そしてLinkedInの会長Jeff Weiner(ジェフ・ワイナー)氏らも参加した。また、このラウンドでは個人投資家のRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)氏やRobert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・Jr.)氏、そしてJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)氏らからの投資もあった。

この特大のラウンドは、1Passwordのこの1年間の目覚ましい成長の結果によるものだ。同社はTechCrunchに、2021年7月のシリーズB調達以来、有料ビジネス顧客ベースが9万人から10万人以上に増え、Datadog、Intercom、Snowflakeなどの大企業加入者を加え、社内従業員数を475人から570人に増えたと述べている。この背景には、リモートワークやハイブリッドワークの継続、クラウドアプリの急速な普及、仕事による燃え尽き症候群の加速という3つの要因があると同社はいう。

同社によると、後者の点は特に懸念すべきサイバーセキュリティの脅威となりつつあるという。オフィスワーカーの80%、セキュリティ専門家の84%が、パンデミックの結果、燃え尽きたと感じており、12%が結果的に職場のすべてのものに同じパスワードまたはほんの数種のパスワードを使っていることが判明しているという。

「ストレスや燃え尽き症候群があると、2つのことが起こることがわかっています。まず、人は簡単な方法を探します。過労になると、セキュリティを後回しにするようになるのです。ストレスと燃え尽き症候群のもう1つの副作用は、変化したいという願望であり、それは大量辞職が起こります。IT部門が認識していないアプリやサービスを持ち出すことになるので、セキュリティの問題につながります」と1PasswordのCEOであるJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏はいう。

1Passwordは、今回調達した資金を継続的な成長のために使用する。同社は、エンジニアリングおよびカスタマーサポートチームを3倍に増やし、サインインの成功と失敗を可視化する、ビジネスに焦点を当てたイベントAPI機能を構築し、さらに買収資金を調達する予定だという。

「戦略的買収を検討しています」とシャイナー氏はいう。「私たちは2021年にSecret Hubを買収しましたが、今後も買収を検討し、それらが私たちのミッションと目標の達成にどのように役立つかを検討していきます」。

最終的に、シリーズCの資金調達ラウンドで1Passwordにかなりの資金が提供されたが、Shiner氏は同社には「まだ」イグジットの計画はないという。

シャイナー氏にとって「資金は、これから大きなことをやろうとするときの安心材料」になるという。

関連記事:企業の秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護する1Passwordが110億円調達、約2180億円の評価額に

画像クレジット:Boris Zhitkov/Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

スマートカレンダーツールのClockwiseはAIを活用してリモートワークでの「燃え尽き」をなくす

時間管理とスマートカレンダーツールのClockwiseがシリーズCで4500万ドル(約51億6000万円)を調達した。このラウンドを主導したのはCoatueで、他にAtlassian Venturesとこれまでに投資していたAccel、Greylock Partners、Bain Capital Venturesも参加した。今回のラウンドでClockwiseの調達金額合計は7600万ドル(約87億1700万円)となった。ClockwiseはAIを活用して勤務中の時間の制約をなくし「燃え尽き」などリモートワークやハイブリッドワークに関連する問題の解決を目指す。

2016年にGary Lerhaupt(ゲイリー・ラーハウプト)氏、Matt Martin(マット・マーティン)氏、Mike Grinolds(マイク・グリノルズ)氏がClockwiseを創業した。この3人はRelateIQで働いているときに出会った。RelateIQは2014年にSalesforceに3億9000万ドル(約447億3000万円)で買収された。3人には共通のゴールがあった。それは人々が作業に集中する時間をもっと作れるようにしたいということだ。

ClockwiseのCEOであるマーティン氏はTechCrunchに対してメールで次のように述べた。「Clockwiseは現代の勤務時間のためのソリューションです。チームのスケジュールを最適化して、みんなの毎日にもっと時間を作ります。一緒に働いているときには存在感を得られ、1人で働いているときには集中できます。我々は、人々の時間を心から尊重し健康で持続可能な仕事の未来を作る、新しい働き方を実現します」。

Clockwiseのプラットフォームは2018年に公開され、これまでに400万件の会議を柔軟にリスケジュールしてきた。また邪魔されずに集中する「フォーカスタイム」を200万時間以上生み出してきた。フォーカスタイムはカレンダーを自動でブロックすることで作業に集中する時間の長さを可視化する機能だ。ClockwiseはNetflix、Twitter、Coinbase、Atlassian、Asana、Airtableなど1万以上の組織でカレンダーの最適化に使われている。

画像クレジット:Clockwise

現在、ClockwiseはCalendlyDoodleReclaimなどのスマートカレンダーやスケジューリングのツールと競合している。マーティン氏によれば、Clockwiseは同社が「タイムオーケストレーション」と呼んでいる新しいカテゴリーを作っている点が他のスマートカレンダープラットフォームとは違うという。タイムオーケストレーションとは、組織レベルでスケジュールをまとめる最新のやり方だ。

マーティン氏はこう説明する。「このカテゴリーは始まったばかりです。したがって我々の主な競合は、自分の時間を最適化しようとすると同僚の生産性にマイナスの影響を与えることがあると認識していない人々です。Clockwiseの優れている点は企業の勤務時間を調整することです。最大100万のカレンダーを並べ替えて、どんなチームでも全員にとってできるだけ最適なスケジュールを立てることができます」。

Clockwiseは今回の資金でAIテクノロジーを進化させ、同社プラットフォームを世界中のチームに導入することを目指す。全部門で人材採用を進め、現在は25のポジションを募集中で2022年中にさらに100のポジションを募集する予定だ。

マーティン氏は今後について、Clockwiseは勤務中の時間に関する制約をなくせるように引き続き成長し拡張していくと述べた。同氏は、Clockwiseは現在のところ社内会議の管理のみを対象に設計しているが将来的にはスケジュール機能が劇的に向上するだろうと説明した。

「我々は高度なAIと機械学習のモデルに投資して、フォーカスタイムの創出と質の高いミーティングの実施の両方に取り組んでいます。Clockwiseには、例えばMicrosoft 365を使っている何億人もの人たちに新しい働き方をもたらすような、魅力的な新しいプロダクトと機能拡張が今後たくさん予定されています」とマーティン氏はいう。

Clockwiseは2020年6月にBain Capital Venturesが主導するシリーズBで1800万ドル(約20億6500万円)を調達しており、今回はそれに続くシリーズCとなった。2019年6月にはGreylockとAccelが共同で主導した1100万ドル(約12億6000万円)のシリーズAを発表していた。

画像クレジット:Clockwise

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

ハイブリッドチームがSlackで各々のオフィスタイムを調整可能に、Officelyが2.3億円を調達

会社が在宅 / 通勤のハイブリッドに移行するんだって?いい話だね!たとえ管理上の決定や、あなたの役割の特殊性によって、毎日は不可能だったとしても、在宅勤務はより主流になっている。

では、誰がいつオフィスに行くかをどのように調整すればよいだろう?毎週同じ日である必要があるだろうか?ランダムに日を選んで、机が使えることを期待するだろうか?もしその日に行ったのがあなただけだったらどうだろう?本当に通勤する必要はあったのだろうか?これらすべてをスプレッドシートで追跡すべきだろうか、それとも追跡するためだけにまったく別のツールが必要だろうか?

Officely(オフィスリー)は、多くのチームがすでに使用しているツールのSlackを介して、それらをすべて上手く処理したいと考えている。彼らは成長を始めるために200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを行ったところだ。

Officelyの主な売りはデスクの予約機能だ。これにより、どのオフィスにあるデスクか、または多数のデスクがある場合は、オフィス内の「どの付近にあるか」でデスクをグルーピングすることができる。ある日に何人の人がオフィスに行くのか、使えるデスクがあるのかを確認し、もし使えるなら予約することができる。他にもいくつかのカスタマイズ項目がある。例えば誰かが犬をオフィスに連れてくる場合にフラグを立てる機能などだ。アレルギーのためにその日は家にいたい人や、私のようにオフィスに少なくとも1匹は犬がいるときに出社したい人のために役立つ。

画像クレジット: Officely

カスタマイズ可能な健康診断調査表を設定して、熱を持っていなかったり既知の接触履歴がないことを確認したり、出社予定の朝に調査表に記入するように自動的に通知することができる。もし誰かが病気になった場合には、Officelyは連絡先の追跡を支援して、同じ日にオフィスにいた従業員のリストを作成することもできる。

彼らはまた「Officeチャット」機能の実験も行っている。この機能は、1日の初めに新しいSlackルームを自動的に作成し、その日に出社が予定されているすべての人を招待し、1日の終わりにルームをアーカイブする。家にいる同僚を悩ませることなく、ランチプランを計画するのに最適だ。

Officelyのテストインスタンスを起動してみたが、非常に円滑に使うことができた。デフォルトからカスタマイズするためのUIは、少々目立たないように感じられるが、それは主にSlackアプリの範囲内で動作しているからだ。しかしその一方で彼らは私がSlackアプリでできるとは知らなかったすばらしいこともたくさんしてくれている。チームTCは現在、オフィスで多くの時間を費やしていないので、ストレステストを行うことはできなかったが、見た限りでは、この先多くの人たちがオフィスに戻ったときにも上手く機能できるだろう。

Officelyは現在、小規模チーム用は無料だ(10人までの従業員と1カ所のオフィスに限定)。より多くの従業員または複数のオフィスがある場合には、月額でオフィス従業員1人あたり2.50ドル(約280円)が請求される(「Officelyを使用してオフィスを予約する従業員に対してのみ請求します」と彼らはいう)。500人以上の従業員がいる場合には、カスタム料金プランが提供される。

ところで、なぜSlack内ですべてを構築するのだろうか。共同創業者のMax Shepherd-Cross(マックス・シェパード=クロス)氏は私に「デスク予約ツールの興味深い挑戦課題は、ソフトウェアを効果的に使用するには、社内の全員が同じソフトウェアを採用する必要があることです」と語る。だが新しいウェブアプリに参加するように全員を説得するのは困難だ。一方、Slackなら企業のチームあれこれがすでに集まっている。

Officelyはピボット(方向転換)を行った企業だ。同チームは2017年に、ホテルの部屋の予約という別の焦点でスタートした。「私たちは新型コロナに押しつぶされました。一夜にして、私たちはすべての顧客を失ったのです」とシェパード=クロス氏は語る。「数週間眠れない夜を過ごしたあと、私たちはこれからのオフィスがこれまでのホテルのように運営されることに気づきました。【略】過去4年間ホテル用に構築していた予約インフラストラクチャ全体が、今ではオフィスに必要なのです」。

今回のラウンドはTEN13が主導し、エンジェル投資家のVu Tran(ブー・トラン。学習プラットフォームGo1の共同創業者)とAdam Schwab(アダム・シュワブ、travel co. Luxury EscapesのCEO)が参加した。

画像クレジット:Officely

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(文: Greg Kumparak、翻訳:sako)

【コラム】新たなハイブリッド生活、私たちと共存するハードウェアにできること

社会におけるさまざまな場面でハイブリッドモデルが登場しているが、それらは驚くほどの柔軟性がある一方で、仕事とプライベートの境界線はますます曖昧になり、私たちが精神的に疲弊をしていることは明らかだ。

儀式というのは、常に私たちの精神的、感情的な状態を形作る強力な力を持っている。例えば、人の集まり、物理的なトーテム、衣装や空間デザインなどはすべて、その経験を生み出すために機能する。しかし、ハイブリッドで働く人々にとっては、これまで慣れ親しんできた儀式の多くがもはや手の届かないものになっているのだ。彼らの日々の仕事には、人と集まることも、場所の変更も必要なく、服装もほとんど(あったとしても)変える必要がない。

1日に7時間以上も画面を見ている若者は、うつ病や不安症にかかりやすく、仕事をこなすのが難しいという研究結果が出ているにもかかわらず、私たちはハイブリッドなバーチャル体験を増やし続けている。さらに、従業員たちは、複数のタイムゾーンにまたがって行われる会議の連続で、毎日が果てしなく続くような感覚に陥り、疲労や倦怠感を訴えている。

現在、多くの人々が仕事や学校、買い物、銀行、医療など、あらゆる場面でコンピューターデバイスに依存していることを考えると、私たちは、ハイブリッドな仮想世界での新たな儀式に備えて、これらのデバイスをどのように設計・開発しているかを、より注意して見ていかなければならない。

今日「コンピュータデバイス」とは、従来のデスクトップ型ワークステーションから超ポータブルな携帯電話まで、あらゆるシナリオを想定している。しかし、これらのデバイスのデザインが、ユーザーの仕事とプライベートの境界を明確にするのに役立つとしたらどうだろう?

例えば、画面の前にキーボードがあるデバイスは「生産性の高いツール」という印象を与えるが、タッチ式のタブレット端末では、よりカジュアルでエンターテインメントに特化した印象を与える。もし、リモートワーカーがこの2つの様式を切り替えることで「仕事」から「プライベート」への切り替えを知らせることができたらどうだろう。

また、最近注目されているのが、ビデオチャットや会議ツールだ。私たちの多くにとって、人との交流の大半は、ビデオ会議アプリを使ったバーチャルミーティングで行われている。HDウェブカムやリング型ライトの需要は高く、バーチャルな背景やエフェクトの数は日々増加している。

ただ、ハードウェアの設計に大きく依存していることもあり、ビデオ会議の体験にはまだ多くの課題や制限がある。Zoom、Google Hangouts、Teamsなどのツールは、最新のアップグレードに対応しようと競い合っているが、統合された照明源、改良されたオーディオ、さらには触覚フィードバックなどのハードウェア上のハードルに取り組まなければ、ソフトウェアができるのはここまでだ。

しかし、対面からバーチャルへのパラダイムシフトを受け入れることができれば、ユーザーが同僚と直接目を合わせているように見せるために、ディスプレイ内埋め込み型の1ピクセル以下のカメラレンズのようなハードウェアのアップグレードによって、未来の日常に向けたデザインができるようになる。他にも、温度や触覚の技術を応用することで、仮想空間を介してお互いのつながりをより深く感じることもできるだろう。また、没入型の体験が進化していく中で、嗅覚の技術を追求することで、新たな可能性が生まれるかもしれない。

しかし、このようなハードウェアの進化は、実際に生産や消費の面ではどのようなものになるだろう?テクノロジーの便利さには目を見張るものがあるが、その一方で地球への負担も大きい。

消費者は地球を酷使する存在になってしまったのだろうか?

自分が大切にしているものを考えてみると、それらに共通しているのは、どれも古くて希少なものだということだ。もちろん、これは貴重なものに共通することだが、この価値観をハイテク製品にも適用できないだろうか。私はiPhoneを1〜2年ごとに交換しているが、Ducati(ドゥカティ)のバイクはパーツを少しずつアップグレードしていくことに大きな喜びを感じている。新品に交換するために捨てようとは決して思わない。

サステイナブルなソリューションを求める消費者が増えれば、ハードウェアメーカーはサービスを調整しなければならない。Apple(アップル)のような強力なブランドは、環境再生活動の強力なリーダーとなり得るだろう。デスクトップPCを自作することは(特にハードコアゲーマーにとっては)目新しいことではないが、すべてのポータブル機器がアップグレード可能なモジュール式になった未来を想像してみて欲しい。50年後、2025年に購入したスマートフォンが、いまだに機能していて価値の高いビンテージ品になっていたとしたらどうだろう?

私たちの新しい日常の現実は、デバイスの多さが解消されない一方で、ソフトウェアの開発が飛躍的に進んでいることだ。そろそろ私たちは、自分のデバイスを、クルマや家と同じように、最新の進歩に合わせて修理したり、改造したりして、大切にしていく対象として考えていかなければならない。

編集部注:執筆者Francois Nguyen(フランソワ・グエン)氏はfrogのプロダクトデザインのエグゼクティブデザインディレクター。

画像クレジット:Peter Cade / Getty Images

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(文:Francois Nguyen、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】未来の仕事場は従業員が自身でデザインする、ハイブリッドワークの試験運用から見えたこと

なぜ私たちはオフィスに行くのか?

これは誇張した意味での質問ではない。他の人と一緒に仕事をするために行くのだろうか?オフィスに行くのは、自分の仕事に集中できる決まった場所だからだろうか?「見られる」ことが必要だから行くのだろうか?ただ、いつもそうしてきたから、仕方なく行くのだろうか?

私たちSAP(サップ)では、これらの質問に対する答えを見つけるだけでなく、社員自身がその答えに一役買うこと、そして未来のハイブリッドな仕事場を築いていくことが重要であると考えている。

この夏、私たちはパロアルトにあるオフィスで、まったく新しいハイブリッドワークの試験運用プログラムを開始した。この数カ月間、私たちはさまざまなフロアプランやセットアップ、多様な勤務体系、最も生産的なスペースの使い方、理想的なミーティングの構成などをテストしてきた。また、この新しい現実に適応するマネージャーやリーダーシップのトレーニング、仕組みづくりなど、たくさんのことを行ってきた。

では、私たちはこれらから何を学んだのか?そして、その教訓をあなたのビジネスにどう生かすことができるのだろうか?

まずはじめに:社員からの声

試験運用プログラムの開始前や開始中に寄せられた社員からのフィードバックによると、利便性が高く、エネルギー効率の高いワークスペースが求められていることがわかった。私たちはただ、必要なときだけでなく、使いたいときに使えるような空間を作る方法を見つけなければならなかった。では、人々がオフィスに来たいと思う要因は何だろう?

調査の結果、主に4つの要因が見つかった。

同僚間の学び合い:当社の社員は自分のネットワークを構築することに情熱を持っており、多くの社員が、自分のキャリアを早く向上させ、SAPがどのように自社製品を構築し、革新を生んでいるのかを学ぶ機会として「同僚からの学び」を挙げた。

入社オリエン、トレーニング、学習の機会の大部分はまだバーチャルで行われているが、社員が希望する場合は直接会う機会を与えるために、現在はハイブリッドオプションを検討している。

コラボレーション:新型コロナの状況が許す限り、多くの人は実際に会って話をしたいと思っている。ビデオ通話は機能的ではあるが、テーブルを挟んで一緒にブレインストーミングをしたり、学んだり、成長したりする効果にはかなわない。

ハイブリッドワーク試験運用プログラムに参加した社員にとって、コラボレーションは大きな推進力となっている。さまざまな社員がホワイトボードを使い、画面を共有して複雑な問題を一緒に解決している。鍵となるのは、高品質のビデオやオーディオ機器が装備されたスペースで、物理的に離れた場所にいるチームメンバーが同じように参加できるようにすることだ。

仲間意識の構築:全員参加型のミーティングやQ&Aセッション、その他のチームビルディング系の機会は全員が同じ物理的なスペースにいることでより効果的になる。私たちが調査した多くの社員は、オフィスにいることの明確な利点として、半年に一度の懇親会を挙げている。

私たちは、オフィスでの社員イベントの開催を試み始めたばかりだが、その環境は以前とは大きく異なる。小規模かつ屋外で、新型コロナ対策が施された環境だ。最初のイベントを開催する前に、私たちは自問した。「社員は来たいと思うだろうか?」その答えは、圧倒的に「イエス」だった。

申し込みを開始すると、数分後には申し込みがいっぱいになり、その倍の人数がキャンセル待ちとなった。ミーティング当日はエネルギーがみなぎっており、社員からのフィードバックも非常にポジティブなものだった。みんな、再び一緒にいられることに感激していた。

意図:多くの人が、オフィスでの当たり前の習慣が恋しいと語っていた。朝、服を着て車で出勤し、チームメンバーと一緒に机に向かうことで、生産性や集中力が格段に向上するという人もいる。

すべての社員がチームワークや仲間意識を求めてオフィスに来ているわけではない。中にはプライベートと仕事のスペースを分けたい人もいて、自分が最も生産性を発揮できる静かな場所を探している人もいる。オフィスではオープンなコラボレーションスペースは不可欠だが、無音スペースや電話ブースも同様に必要不可欠だ。

私たちがこれらの特性を実践しようとしている1つの方法が、オフィス内の「スクラムネイバーシップ」だ。この環境では15〜20のデスクが用意されており、コラボレーションとチームワークを促進するために、美しく創造的で自由なオフィススペースが設けられている。また、このスペースを有効に活用するために、モバイルアプリを開発した。チームはこのアプリを使って、一緒にオフィスに来る時間を調整したり、スペースや電話室を予約することができる。

同時に、私たちはリーダーたちがこの新しい現実の中でメンバーを管理できるように、偏見を避け、典型的なマネージャーと部下という関係を、より人間的で共感し合えるものにするための努力をしてきた。

試験運用プログラムから得られた教訓

これらはまだ始まりに過ぎない。試験運用プログラムは順調に進んでいるが、今後もハイブリッドワークを推進し、最適化するための最良の方法を研究・検証していくつもりだ。

従業員の80%が、将来的には自宅とオフィスの両方で仕事をしたいと考えていることがわかった。また、80%の社員がオフィスの比較的近くに住みたいと考えていることもわかった。

もちろん、このタイミングで戻ることに違和感を覚える人も少なくなかった。しかし、試験運用プログラムでオフィスにきた人の多くは、オフィスでの仕事環境の平穏さと静けさ、対面でのミーティングの生産性、そして無料のコーヒー、スナック、ランチなどのアメニティを、明らかな利点として挙げている。さらに、リーダーやマネージャーは、私たちが彼らとの間で培ったコミュニティの行動指針に基づくことで、この環境で指導や管理を行う準備が整っていると感じている。

これまでの「普通」が完全に戻ることはないため、私たちは何が有効で何がそうでないかを見極めるために、継続的な実験と内省を続けなければならない。なぜなら、ハイブリッドなワークモデルは、理論的に成功するだけではなく、実践的に成功しなければならないからだ。

例えば、2020年、多くの従業員が、家庭や家族の事情に合わせて早朝や深夜に働くなど、勤務時間を大幅に変更できる環境に慣れてしまっていることに気づいた。また、通勤時間やオフィスが不要になったことで、チームの一部の者にとっては大きな時間も生まれていた。一方で、これまで対面式で行っていた施策の中には、全体的な実行力と効果を向上させ、場所を問わず従業員の体験をより包括的なものにするために、再考する必要があるものもある。

私たちが自問すべきことは明らかだ。あとは、その答えを見つけるだけだ。

では次は?「なぜ」と問いて「どうやって」を見つける

同じくして、2020年には、仕事の現実において、一時停止したり、もしくは一気に進めたりしなくてはいけない状況でもあった。これは、私たちの多くがいまだになんとか管理 / 運営しようとしている矛盾でもある。私たちは、ハイブリッドワークの試験運用プログラムで得られた教訓が、未来のオフィスのあり方や生産性の向上に役立つとともに、社員やリーダーがこの変化に対応できるようになることを願っている。2022年に向けて、試験運用プログラムで得られた私たちの知見は、グローバルなフレックスワークポリシーに反映され、世界の各地域で何が最適かを判断するための基準となるだろう。

その答えを考えるのに、今が一番いい時期だ。私たちと一緒に考えてみよう。あなたの「なぜ」を「どうやって」に変え、従業員が自ら未来の仕事場を構築する力を与えよう。

編集部注:本稿の執筆者Anamarie Huerta Franc(アナマリー・ウエルタ・フラン)氏は、米国のSAP Labsのマネージングディレクター。全米の開発部門の従業員を対象とした、企業間コラボレーション、ロケーション戦略、コミュニケーション、従業員エンゲージメントのリーダー。

画像クレジット:Shannon Fagan / Getty Images

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(文:Anamarie Huerta Franc、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Tinderも導入したバーチャルコワーキングのSoWorkが17億円を調達

SoWork(ソーワーク)の共同創業者でCEOのVishal Punwani(ビシャール・プンワニ)氏は、偶然思いついた予感をもとにビジネスを構築している。

バーチャルコワーキングのスタートアップであるSoWorkは、プンワニ氏とその共同創業者が機械学習のEdTech企業を立ち上げると決めた後に始まった。その創業中のちょうど17年前、皮肉にも「World of Warcraft」をプレイしているときに出会った同氏のチームは、より良いコミュニケーションの方法を必要としていた。何かを作ることとゲームをすることが好きだった彼らは、バーチャルな世界にヒントを得て社内コミュニケーション製品を作り上げた。

彼らのチームの内部コミュニケーションツールは、外部向けのEdTechツールよりも急速に成長し始めた。このスタートアップは、最終的にSophya(ソフィア)という社名に変更し、転換した。同社は、すべての雇用主がいずれ、バーチャルな仕事体験に投資しなければならないというプレッシャーを感じるだろうという予感から始まった。従業員はそうした環境で、文化を修復したり、気候変動と戦うわけだ。

その予感は、このアーリーステージのスタートアップに投資すべきだと投資家を確信させるのに十分だった。SoWorkは現地時間10月12日、シードラウンドで1500万ドル(約17億円)を調達したと発表した。ラウンドは、英国を拠点とし、日常的にアーリーステージのスタートアップに小切手を切っているTalis Capitalがリードした。資金は採用や研究開発に使用する。SoWorkは、100社が参加するプライベートベータ版に1社の大きな顧客を迎えた。Tinder(ティンダー)だ。

Tinderは、バーチャルスペースを導入し、新旧の分散した社員に、コラボレーションルームからハッカソンなどの全社的なバーチャルイベントに至る同社のワークカルチャーを見せようとしている。オフィスのリニューアル計画が遅れたことが、同社がバーチャルスペースに興味を持つきっかけだったのかもしれないが、同社はこのテクノロジーが今後の鍵になると考えているようだ。

画像クレジット:SoWork

「従業員の働き方の未来を考える上で、Tinderのカルチャーを物理的な空間とバーチャルな空間のハイブリッドに拡張する、より永続的な方法を見つけることが非常に重要でした」とTinderのカルチャー&DE&I担当副社長であるNicole Senior(ニコル・シニア)氏は声明で述べた。

どんなバーチャルオフィスであっても、永続性は部屋の中の象のようなものだ。SoWorkは、TeamflowWithGatherといったバーチャルオフィスプラットフォームの列に加わる。バーチャルオフィスビジネスの最大の課題の1つは、雇用主、特に成長段階にある雇用主が、対面式のオフィスで十分なのに、成長中のチームをメタバースに移すことが現実的かということだ。また、Slack(スラック)が、すでに定着している同社のサービスにさらなる投資を行い、より自然な感じやハドルミーティングなどを持ち込もうとしているように、バーチャルオフィスサービスのスタートアップは、顧客が、特にゲームとともに育ったような人たちではない場合、オンラインの世界で生活や仕事をしたいと思っているのか検証する必要がある。

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「問題を認識していないのであれば構いません。しかしいずれ、SoWorkにせよ他のプラットフォームにせよ、そこに拠点を置く企業が増え、プラットフォームでのメリットが積み重なっていくでしょう。そのうち、ある日突然、雇用主にとって他では得られないメリットが現れるのです」とプンワニ氏は話す。「Twitter(ツイッター)のようなものです。最初は、『Twitterは欠かせない』という企業はありませんでした。しかし、Twitterがランダムなノイズを生む場所になると、企業は『関わりを持っておきたいから、Twitterを利用したい』というようになりました」。

Sophyaには、近接ベースのオーディオ(近くにいる人の声だけが聞こえる)や高品質のビデオ、アバターの自己表現、カスタマイズ可能なオフィス、自分の周りにいる人の視覚化など、体験を深めるための機能が数多く搭載されている。また、従業員がオフィスを飛び出してSoWorkのエコシステムに参加し、他社の従業員とネットワークを築いたり、コミュニティイベントに参加したりする方法も開発した。プンワニ氏によると、チームは週に25〜40時間、非同期のキャッチアップやリアルタイムのミーティングのために、バーチャルオフィスで仕事をしている。

画像クレジット:SoWork

それでも、このスタートアップの最大の差別化ポイントは、気候変動に対するチームの考え方かもしれない。市場に出回る多くのバーチャルオフィスとは異なり、SoWorkは、雇用主にオフィスではなくバーチャルで会社を成長させる方法を提供することで、気候変動に対処するという使命を声高に主張している。同社は、オフィスではなくSoWorkに入居した企業が、どれだけ二酸化炭素の排出量や通勤時間を削減できたかを試算して発表する予定だ。また、同社のカナダ法人では、化石燃料から100%脱却した銀行を選び、米国法人でも同じようにしようとしていると、同社の共同創業者は述べた。

「気候問題は、私たちが最も力を入れている問題です。だからこそ、私たちのキャッチフレーズは、『職場を地球からクラウドへ』です」とプンワニ氏は話す。「気候変動への影響を想像してみてください。二酸化炭素排出量、通勤、小規模な出張、そして無意味なビルや駐車場の建設が減るのです」。

また、競合他社と比較しても、チームの多様性は際立っている。プンワニ氏の他に、Emma Giles(エマ・ジャイルス氏)とMark Liu(マーク・リュー)氏という2人の共同創業者がおり、SoWorkのオペレーション、マーケティング、グロース、プロダクト、リサーチなど主要6チームのうち、5チームを女性が率いる。

SoWorkは、11月の第1週にプライベートベータ版を一般公開する。すでに1000社以上、人数にして30万人以上がウェイティングリストに登録している。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

UVC殺菌システムR-Zeroが「目と耳」となる室内の占有センサーCoWorkrを買収、「職場にとってのOS」を作る

パンデミック渦に誕生したバイオセーフティ企業のR-Zeroは2021年7月下旬、室内の占有センサーを開発する企業であるCoWorkrの買収を発表した。人々が職場に戻り、ワクチンが広がりを見せる今、新型コロナウイルスの出現によって生まれた企業たちはパンデミックの次の段階を見据えて適応し始めている。R-Zeroにとって今回の買収は、同社の焦点のシフトと言えるだろう。

2020年4月に設立されたR-Zero。同社は主に病院グレードのUVC殺菌システム、つまり特定の種類のウイルスを中和できる照明の開発に注力していきた(詳細は後述)。企業が建物内を除菌する方法を求めて奔走する中、同社は2億5650万ドル(約282億円)の評価額で合計5880万ドル(約65億円)の資金を調達。R-Zeroは現在、複数の矯正施設、Brooklyn Nets、Boston Celtics、サウスサンフランシスコ統一学区など、約1000の民間および公共部門の顧客を抱えている。

CoWorkrは2014年に設立され、Crunchbaseによると総額約20万ドル(約2200万円)のシードファンディングを調達している。

CoWorkrの買収により、R-Zeroは職場の人員と清掃の両方を管理するモノのインターネットのようなセンサーネットワーク開発を計画していると、R-Zeroの創業者であるGrant Morgan(グラント・モーガン)氏は話している。単に空気や物の表面を消毒するだけではなく、公共スペースにおける人(およびウイルスやバクテリア)の流れを管理する事に重点を置いていくようだ。

「職場のOSのようなモノです。健康と生産性を核とした室内環境の構築と維持を支援するツールを作っています」とモーガン氏はTechCrunchに話す。

CoWorkrの共同設立者であるElizabeth Redmond(エリザベス・レドモンド)氏とKeenan May(キーナン・メイ)氏は引き続きフルタイムで勤務することとなっており、企業の不動産関連の取り組みを運営し、IoT能力を開発していく予定だ。

「我々はお客様と多くの時間を過ごし、お客様の取り組みを理解できるよう努めてきました。中でも特に商業用不動産に対して注力しました」とレドモンド氏はTechCrunchに話している。

「大半の企業がハイブリッドな働き方に移行しているため、占有率情報はとても必要とされています。私たちがR-Zeroに加わったのは、ハイブリッドワークの未来、そして商業不動産の未来がどうなっていくのかという点が非常に注目されているためです」。

CoWorkr買収前のR-ZEROの主力製品はUVCライトの「Arc」というもので、これは清掃員が退社した後のオフィススペースに持ち込めるホイール付きの長方形のライトである。また、居住空間で使用可能な製品として提供されていた、同じくUVC光で除菌するエアフィルター「Arc Air」もある。

2020年半ばにUVCライトが脚光を浴びたのにはいくつかの理由がある。1つには共同スペースを消毒するための強力な手段だと考えられたこと、そしてもう1つには企業が新型コロナに対して技術的なソリューションを用いると一定のインセンティブが受けられたことなどが挙げられる。

UVCライトは何十年も前から病院で使用されており、スキャナーなどの表面を除菌したり、UVエアダクトに挿入して空気を除菌したりするために活用されてきた。研究によると、UVCは空気中のインフルエンザウイルスを不活性化することができるとされており、また限られた証拠しかないものの、UVCはウイルスの外側のタンパク質コーティングを破壊することで、SARS-CoV-2その他のコロナウイルスも不活性化できるという研究結果もある。

これらのライトは実際にパンデミック渦でも活用されていた。例えばニューヨーク都市交通局は、毎晩地下鉄車両を消毒するために100万ドル(約1億1000万円)相当のUVCライトを購入。2020年3月に可決されたCARES法は、企業や公的機関がUVライトなどの清掃サービスを購入する際に、政府の融資を利用できるようにするものだった。

しかし、消費者向けのランプの中には批判的な意見も存在した。1つは長時間照射すると目を傷つけたり、火傷をしたりする可能性があること。またUVC消毒に関するあるレビュー(UVC消毒会社と関係のある2人の科学者によって書かれたもの)では「性能に関する非科学的な主張」が広まっているとの厳しい評価がなされている。

一方で第三者機関によるテストを行なったところ、R-ZEROのArcは一般的な風邪のコロナウイルスと、表面に付着したノロウイルスの代替ウイルスの2種類のウイルスを99.99%減少させることが確認されている。また、大腸菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても99.99%の除菌効果があったという。

UVCライトの殺菌技術としての有用性については賛否両論あるものの、この業界が消え失せてしまうことはないと複数のアナリストが指摘している(例えばLGはUVベースのクリーニング分野に参入したところだ)。William Blairの商業サービス株式アナリストであるTim Mulrooney(ティム・マルルーニー)氏は、ワシントン・ポストに対し、人々の衛生に対する考え方が「パラダイムシフト」していると伝えている

2020年に行われた世論調査によると、衛生管理は従業員と顧客の両方にとって最重要事項であることが示唆されている。Deloitteが3000人を対象に実施した調査では、従業員の64%が共有スペースの定期的な清掃を重要視していると回答し、顧客の62%が毎接客ごとに表面を清掃して欲しいと回答している(新型コロナウイルスは表面接触では感染しにくいと考えられているのにも関わらずである)。

ワクチン接種の増加が、今後のオフィス衛生に対する認識にどのような影響を与えるかはまだわからない。しかしモーガン氏は、企業(および従業員)は身近な細菌の存在をパンデミック前よりも意識し、オフィス内の人の流れを管理することも含め、その蔓延を抑制する方法を模索し続けるだろうと考えている。

R-ZeroはCoWorkrを買収したことでUVC殺菌だけでなく、占有管理にも力を入れることになったわけだ。

モーガン氏はCoWorkrのセンサーをR-Zeroの「目と耳」と呼んでいる。R-Zeroは居住空間の空気清浄度に対応したUVCベースの2つの製品を発表する予定で、CoWorkrのセンサーを使って「完全な自動化」を実現していくという。

例えばCoWorkerのバッテリー式熱センサーを使えば、従業員はオフィスのどの部屋が使われているかを知ることができる。その情報をもとにUVベースのエアフィルターやその他の清掃用品を活用することができるという。

この情報をもとに、その日の晩にその部屋をより徹底的に掃除するよう清掃員に指示することができ、逆に一日中誰も触っていない部屋は掃除しなくてもよいことになる。

「お客様はすぐにROIを高めることができ、30〜40%の人件費を削減しています」とモーガン氏は話す。

パンデミックの「傷跡」が癒えることはまだなく、人々は今後も依然として衛生的な職場環境を求め続けるだろうと同社は考えている。

「ほぼ100%、お客様はこれを長期的な投資として考えています」とモーガン氏はいう。

画像クレジット:R-Zero

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

ポストコロナに向けて、分散型ワークの実現に向けPatchはコワーキングスペースを英国の小さな町や郊外に広める

パンデミックは働く環境に多大な影響を与えたといえるが、他の変化がすでに進行している中での出来事でもあった。電子商取引の拡大による街頭での買い物の減少は、さらに拍車がかかっているし、リモートワークへの移行も急速に進んでいる。人々はもはや8時から6時までの通勤を望んでいない。しかし、私たちは、在宅勤務が評判ほどいいものではないことに気づきもした。その上、もし地域に似たサービスがあれば簡単にいけるのに、WeWorkのようなところで共同作業をするためだけに大都市に通勤することに意味を見いだすこともできない。問題は、特に郊外や小さな町に、地域のコワーキングスペースがほとんどないということだ。

自宅で仕事をするのではなく、家の近くで仕事をすることができれば、よりバランスのとれたライフスタイルを手に入れることができるだけでなく、多くの人(特に家族)が望んでいる仕事と家庭の分離も実現することができるのではないだろうか。

今回、英国のスタートアップが「Decentralized workspace(分散型ワークスペース)」のアイデアを発表し、英国全土での展開を計画している。

Patchは、従来の通勤者を対象とした「Work Near Home(家の近くで働く)」という提案とともに、地元の大通りの空き店舗を「共同文化スペース」に変える。英国には600万人の知識労働者がいると推定されており、Patchはこの会員からの月額利用料で運営される。

現在、Patchは110万ドル(約1億2000万円)の創業資金を複数のエンジェル投資家から調達している。例えば、LocalGlobeの共同創業者Robin Klein(ロビン・クライン)氏、Entrepreneur Firstの共同創業者Matt Clifford(マット・クリフォード)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンハースト)氏、Episode 1のSimon Murdoch(サイモン・マードック)氏、元Jack WillsのCEOでGreat Portland EstatesのNEDであるWendy Becker(ウェンディ・ベッカー)氏、サステナブル投資家Eka Venturesの創業パートナーのCamilla Dolan(カミラ・ドラン)氏、米国投資会社SequoiaのタレントディレクターであるZoe Jervier(ゾーイ・ジャービア)氏、Grabyoの創業者でアーリーステージの投資家Will Neale(ウィル・ニール)氏などだ。

「家の近くで働く」というアイデアは、ポストコロナの「ハイブリッドワーキング」の動きに対応したもので、Patchは「起業家精神、テクノロジー、文化的なプログラムに焦点を当てた」公共の場を作ることを計画している。

Patchの各拠点では、プライベートオフィス、コワーキングスタジオ「利用しやすい低コストのオプション」、無料の学問のための場所などを提供する。

Patchの最初の拠点は、11月初旬にエセックス州チェルムスフォードにオープンする予定で、2022年にはさらに複数の拠点が計画されている。また、チェスター、セント・オールバンズ、ウィカム、シュルーズベリー、ヨービル、ベリー、キングストン・アポン・テムズの人々からも要望が寄せられているという。

Patchの創始者であるFreddie Fforde(フレディ・ファード)氏は次のように語った。「働く場所と住む場所は、伝統的に異なる環境と見なされてきた。そのため、平日の大通りは空洞化し、オフィス街も同様に廃れてしまった。私たちは、人々が家の近くで仕事をすることを可能にし、仕事、市民、文化の交流が混在する新しい環境を作り出せるテクノロジーがこの状況を根本的に変えると考えている」。

ファード氏は、Entrepreneur Firstの元創設者であり、ロンドンやサンフランシスコのアーリーステージのテック企業でさまざまな役割を担ってきた社員でもある。プロダクト部門の責任者には、2015年にターナー賞を受賞したデザインスタジオAssembleの元共同設立者であるPaloma Strelitz(パロマ・ストレリッツ)氏が就任する。

Entrepreneur FirstおよびCode First Girlsのクリフォード氏は、次のようにコメントしている。「テクノロジーは、私たちが組織化し、ともに働く方法を常に変えてきた。Patchは、住んでいる場所に制約されることなく、才能のある人たちが自分自身の能力に基づいて働く機会を解放するだろう。私たちは、高スキルの仕事がどこでもできる国にいたいと思っており、Patchはその環境の実現ための重要な部分を担っている」。

Patchは、主要都市の中心部ではなく、町や小都市の住宅地をターゲットにしており、町の中心部にある利用されていないランドマーク的な建物を探すとしている。例えば、チェルムスフォードでは、ビクトリア朝の醸造所を最初のスペースとして利用する予定だ。

Grays Yard

経済開発・中小企業担当の副内閣メンバーであり、BID委員会の代表でもあるチェルムスフォード市のSimon Goldman(サイモン・ゴールドマン)評議員は、次のように述べている。「グレイズヤードに新しいコワーキングスペースが導入されることは、この街にとって本当にポジティブな計画だ。住民に地元で働く選択肢を提供することで、通勤時間が短縮され、ワーク・ライフ・バランスの向上につながることが期待される。家の近くで働くことは、個人やその家族だけでなく、環境や地域経済にも多くのメリットをもたらす」。

また、Patchはイベントスペースのピーク時の20%を、地元や全国の「公益に役立っている」コミュニティサービスの提供者に寄付する「ギビングバック」モデルも実施するとしている。初期の国内パートナーには、技術サービスを提供するCode First Girlsや、Raspberry Pi Foundationが運営するCoder Dojoなどがある。

画像クレジット:Patch workspace

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応加速

テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応強化

ちょっとした会話・雑談も行え、自由に動いて自由に話しかけられるバーチャル空間「oVice」(オヴィス)を手がけるoViceは9月15日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による18億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のEight Roads Ventures Japan、既存株主のOne Capital、MIRAISE、DGベンチャーズおよびDGインキュベーション、新規投資家のJAFCO。ファーストクローズとなる今回は14億円を調達し、セカンドクロージングも合わせると総額18億円になる予定。調達した資金により、海外への展開を加速させるとともに、アフターコロナのハイブリッドワークでも快適にoViceを使用できるよう開発を進める。

調達の目的と今後の展開

  • 海外市場への積極的な展開:海外でのテレワークやオンラインイベントの需要の高まりから、日本以外での販売も徐々に増加していることを受け、今後はさらに積極的に海外市場に展開。特に韓国など新たな市場に参入、定着を図る
  • ハイブリッドワーク対応に向けた技術開発:アフターコロナで増加するであろうハイブリッドワークに対応するべく、技術開発や他社との提携を引き続き行う。例えば他社の開発している360度カメラとoViceを連携させ、リモートワーク・テレワークでオンラインで勤務する人と実オフィスに出社している人がシームレスにコミュニケーションができるような環境構築などを行う
  • 他ツールとの連携強化:ビデオ会議システムやチャットツールなど、様々なテレワーク関連ツールと連携することで、ユーザーがより快適にoViceを利用できる環境を構築する

2020年2月設立のoViceは、「人々の生活から物理的制約をなくす」ことをミッションに掲げ、バーチャル空間「oVice」を開発・提供。oViceは、ウェブサイト上で自分のアバターを自由に動かし、相手のアバターに近づけることで話しかけられる2次元のバーチャル空間となっており、自分のアバターに近い声は大きく、遠い声は小さく聞こえ、現実の空間で話しているような感覚を体験できる。また偶然聞こえてきた雑談・会話にも参加でき、会話する中で生まれた新たなアイデアを形にしやすい環境を整えている。テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応強化

2020年8月のサービス開始から9000件以上利用されており、テレワークにおけるバーチャルオフィスとして、また展示からネットワーキングまで自由にできるオンライン展示会、自由に席替えができるオンライン飲み会など、さまざまな場面での活用が進んでいるそうだ。

 

マイクロソフトが米国内オフィス再開の無期限延期を発表、リモートワークやハイブリッドワークの可能性と課題を提示

マイクロソフトが米国内オフィス再開を無期限延期と発表、リモートワークやハイブリッドワークの可能性と課題を提示

Stephen Brashear via Getty Images

米Microsoftは9月9日(現地時間)、従業員の米国内オフィスへの出社再開を無期限に延期すると発表しました。もともとは10月4日からの再開を予定していましたが、感染力の強いデルタ株の出現など、新型コロナウイルスの不確実性が増しているため、新しい日付は設定せず、公衆衛生上の指針に基づき安全に再開できるようになった時点で再開するとのこと。

再開を決定した際は、30日間の移行期間を設け、従業員が準備できるようにするとともに、データを確認しつつ、引き続き機敏で柔軟な対応ができるようするとしています。The New York Timesによると、米Microsoftはすべての従業員、ベンダー、ゲストがオフィスに入る際には、ワクチン接種証明書の提示が必要になります。

Microsoftによると、今年は世界中でMicrosoft社員16万人が自宅で仕事をし、2万5000人の新入社員がリモートで入社しましたが、Microsoftに仲間がいると感じるとアンケートに答えた人は過去最高の90%を記録。一緒にいると感じるために、物理的に一緒にいる必要はないことを示していると、リモートワークやハイブリッドワークの可能性を感じている様子。ただし、この前向きな傾向が継続するという保証はないともしています。従業員アンケートによると、ワークライフバランスやチームのつながりに対する満足度は、引き続き課題となっているとのことです。

なお、オフィス再開を延期したのはMicrosoftだけではなく、GoogleAmazonは2022年1月まで延期、Twitterは再開時期を未定としています。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

Google Workspaceにいつでも会話の履歴、内容などすべてを確認できるSpaces、withコロナのハイブリッドワーク環境に対応

オフィスに戻る人もいれば、リモートで働く人もいて、スタッフの勤務地は昨今、少し複雑なことになっている。このようなハイブリッド環境に対応するため、Google(グーグル)はGoogle Workspaceにさらなる変更を加え、すべてのユーザーにGoogle Chatの中でSpacesを提供開始した。

Spacesはカレンダー、ドライブ、ドキュメントなどのWorkspaceツールと統合され、ユーザーがどこにいても、会話の履歴、内容、文脈をすべて確認できる、よりハイブリッドなワークエクスペリエンスを提供する。

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Googleの製品管理担当シニアディレクターであるSanaz Ahari(サナズ・アハリ)氏は、米国時間9月8日のブログ記事で、同社の顧客はSpacesを「リアルタイムおよび非同期コラボレーションのためのセントラルハブのようなものにすることを望んでいました」と書いている。「Eメールチェーンを始めたり、ビデオ会議をスケジュールする代わりに、チームはSpacesを使い直接集まってプロジェクトやトピックを進めることができます」とも。

以下は、Spacesで使えるようになった新機能の一部だ。

  • 受信トレイ、チャット、Spaces、ミーティングなど、すべてを1つのインターフェイスで管理できる
  • Spacesとそこに含まれるコンテンツは、人々が見つけて会話に参加できるように発見可能にすることができる
  • チームのナレッジベース内での検索性が向上
  • Spaces内のすべてのメッセージに返信することができる
  • コミュニケーションをモニタリングするためのセキュリティおよび管理ツールの強化

従業員は、カレンダー上の特定の日に、バーチャルと対面のどちらでコラボレーションを行うかを指定できるようになった。また補完的にGoogle Meetでは、モバイルとデスクトップデバイスの両方で同僚と通話できる。

画像クレジット:Google

また11月には、すべてのWorkspaceユーザーがGoogle Meetのコンパニオンモードを利用して、個人デバイスからミーティングに参加し、会議室内のオーディオやビデオを利用できるようになる。また、2021年後半には、英語からフランス語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語へのライブ翻訳キャプションが利用できるようになり、今後さらに多くの言語が追加される予定だ。

さらにGoogleは、Google Meetのハードウェアポートフォリオを拡充し、2つの新しいオールインワン型ビデオ会議デバイス、サードパーティ製デバイス(Logitechのビデオバー、Appcessoriのモバイルデバイス用スピーカードック)を加え、CiscoのWebexとの相互運用性を提供する。

また、Googleはこれらのニュースにあわせ、5つの一般的なハイブリッド会議に関するベストプラクティスが掲載されているワークスペースハンドブックを発表した。

画像クレジット:Nicolas Economou / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

ラクスルが第4の新規事業発表、ITデバイスとSaaSを統合管理し情シスを支援する「ジョーシス」

ネット印刷で有名なラクスルだが、他にも事業を展開していることをご存知だろうか。同社は「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げて、デジタル化が進んでいない伝統的産業の構造を変え続けている。

同社は印刷系事業の「ラクスル」の他に、物流のプラットフォーム「ハコベル」、広告のプラットフォーム「ノバセル」(タクシー内などでこちらのCMを目にする人も多いだろう)を展開しているが、本日9月1日、4つ目の事業として、ITデバイス&SaaSの統合管理クラウド「ジョーシス」の正式リリースを発表した。コロナ禍でテレワークが進み、負担が増える情報システム部門を支援すべく、パソコンなどの備品購入から、キッティング(購入端末の初期設定)、入退社にともなうSaaSアカウント管理などを自動化するプラットフォームを提供する。

ラクスル自身が感じた課題をサービス化

本質的な業務が存在するのにも関わらず、突発的な事象の対応に追われ、業務推進が滞るのはどこの部署でもあること。ラクスル代表取締役社長の松本恭攝氏によれば、ジョーシスは、ラクスル自身の悩みから生まれたという。「新型コロナウイルス影響でクライアントのマーケティングコスト削減が起こり、ラクスルの売上は減少。他方、自社においてもテレワークやSaaSの導入が急速に進み、制度設計からライセンス管理まで、情報システム部門の業務は肥大化しました。他社も同様の状況になっているのではと調査したところ、IT管理業務関与者は相対的に離職率が高く、結果的に外注への依存度が高まっていることがわかり、ジョーシスの立ち上げを決めました」と語る。開発には、シリコンバレーでの活躍も目覚ましいインドを主体としたグローバルチーム体制を敷いている。

人事系SaaSと連携し、従業員ごとにデバイスとSaaSを一元管理

ジョーシスでは、人事労務サービスと連携し、従業員ごとにITデバイスやSaaSの登録状況が管理できる。テレワーク推進以降、退職者のアカウント解除が甘かったことが原因で情報漏洩する事例などもあり、これを防ぐため、人事にともなうアカウントの管理漏れ防止機能も整備。接続サービスは現在約40程度、年内で100を目指すという。オンプレシステムについても、項目を追加し管理していく機能により、ジョーシスでの管理一本化を図っていく。

また、オンラインストアでは、創業から100年以上、B2B市場におけるデバイス販売とアフターサービスでは約40年という長い歴史を持つTooと提携しており、業界最安値クラスでITデバイスの購入が可能だ。その後の納品、倉庫保管までフォローされ、ジョーシス以外で購入したデバイスについてもクラウドで管理することができる。

本サービスは、社員100名以上の管理コストが高いレイヤーをターゲットにしている。一方で、多くの企業に取り入れてもらえるようにと、スタンダードプランでは従業員50名以下であれば無料で使えるとのこと。アドバンスプランでは基本機能に加えてオンライン棚卸しとチケット管理(ヘルプデスク)を追加。スタンダードプラン、アドバンスプランともに料金はいずれも個別見積もりとなっている。キッティングは1台あたり5000円から、保管は1日1台あたり20円からとのこと。

「ウィズコロナにおいても出勤とリモートワークのハイブリッド勤務は継続するでしょう。デバイス管理の必要性はますます増えていくと考えられ、ジョーシスも普及していくと思います」と松本氏は語る。コロナ時代のDXに奔走する情シスたちの、救世主になるか。

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Otter.aiの自動文字起こし機能がMicrosoft Teams、Google Meet、Cisco Webexにも対応

AIを利用して音声の書き起こしをするサービスOtter.aiが、そのOtter Assistantプロダクトの機能をMicrosoft TeamsとGoogle Meet、そしてCisco Webex向けに拡張する。当初、5月にはZoomのユーザー向けのプロダクトだったが、今後はいろいろなプラットフォームに参加して会議の書き起こしができる。会議にOtterのユーザーがいなくてもよい。

関連記事:Zoomの会議を自動で文字起こしできるOtter.aiの新しいアシスタント機能

Otter Assistantはカレンダー上の会議に自動的に参加して書き起こしを行い、会議の参加者に共有する。会議に出られなかった人も、後でその内容がわかる。複数の会議が重なっているときや、長い会議のごく一部を知りたいときなどにも、Otter Assistantは便利だ。

この最新のツールを利用するためには、まず自分のカレンダーとOtter Assistantのサービスを同期させる。そうするとAssistantは自動的に今後のすべての会議に参加する。透明性を確保するために、会議ではAssistantも1人の参加者として記録される。

Otter.aiの共同創業者でCEOのSam Liang(サム・リャン)氏が声明で「自宅やモバイルなどのリモートを併用するハイブリッドの仕事スタイルがますます普及しているため、Otterはチームのコミュニケーションとコラボレーションを改善するツールとして重宝されています。しかもこれからは、いろいろな人がいろいろなやり方で会議に参加していてもOtterは簡単確実に対応できるため、すごく便利になったと思います」と述べている。

今回の統合により、1つの会議にいろいろな人がさまざまなプラットフォームから参加していても、Otter Assistantは1カ所で十分に内容を記録できる。Otter Assistantを使えるのは、Otter.ai Businessのユーザーだ。その料金は月額20ドル(約2200円)からで、二要素認証や高度な検索、音声のインポート、ボキャブラリーのカスタム化、共有している発話者の識別などの機能がある。

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画像クレジット:Otter

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アフターコロナでもバーチャルオフィス業界で独自の地位を確立しようとするNooks

分散したチームをターゲットにしたバーチャルワークスペースの空間を提供するNooksは、1年間のベータ運用を経て、数千人のユーザーを魅了し、ベンチャーキャピタルから数百万ドル(約数億円)の資金を引き寄せてきた。スタンフォード大学の学生が率いるこの有望なスタートアップがこのたび、シードラウンドでの500万ドル(約5億5000万円)を調達している。ラウンドを主導したのはTola Capitalで、出資者にはFloodgateの他、EventbriteのCEOであるJulia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏と同会長のKevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏、Awesome People Venturesの創業者Julia Lipton(ジュリア・リプトン)氏が名を連ねている。

この資金調達は「バーチャルオフィス」の領域で事業展開する企業に賭ける投資家のさらなる中核グループの兆候を示している。つまり、分散した従業員たちがZoomを卒業し、生産性とゲーミフィケーションを念頭に置いて作られた「メタバース」へと進む準備ができていると考える、スタートアップ数十社を含むコホートだ。ケヴィン・ハーツ氏が仮想HQ事業に投資したのは今回が2度目で、最初はGatherへの投資だった。現時点では、Sequoia Capital、Andreessen Horowitz、Menlo、Battery Ventures、Index Ventures、Y Combinator、Homebrew、Floodgateの各社が、それぞれ別のバーチャルオフィススタートアップに出資している。

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言い換えれば、投資家が資金を投入していてもなお、Nooksは資金調達に対して難しい仕事を抱えているということだ。

Nooksは2020年5月、スタンフォード大学の学生Daniel Lee(ダニエル・リー)氏、Rohan Suri(ローハン・スーリ)氏、Nikhil Cheerla(ニキル・チェルラ)氏、そしてRensselaer Polytechnic Institute(レンセラー工科大学)のAndrew Qu(アンドリュー・クー)氏によって設立された。予期せずにリモートワークの世界に飛び込んできた他の大半の人々と同様に、スタンフォードの学生3人組は学校や授業でZoomがもたらす疲労を体験した。彼らはほどなく、よりパフォーマンスの高いチームや同じ考えを持つコミュニティが一緒に仕事を楽しむことができる空間を作る必要性を感じた。

共同創業者たちは最初に、Nooksをスタンフォード大学内で試験運用し、夏のバーチャル授業の魅力的なレイヤーとして教員支援用に提供した。Nooksの初期のユースケースは、オフィスでの時間や宿題パーティーの様相を呈していた、とリー氏は語っている。学校で試験運用を行っていたNooksはその後、分散したチームの業務支援に注力するようになったが、その精神は一貫している。

「会議のような束の間の空間ではなく、より自然発生的なつながりを作ることができる場所を提供する、永続的な空間が必要です」とリー氏は語る。

Nooksの求心力の要素

ユーザーがNooksにアクセスすると、Slack風のインターフェイスが表示される。ただし、左側にあるチャンネルのパネルの代わりに、従業員は「スペース」への参加に招待される。各スペースの用途は、デスク周りのモックアップからビーチでのくつろぎ、企画や考案のハドルにいたるまで、さまざまだ。また、コードに現れるバグを取り除くための専用スペースが設けられている。プラットフォームへの最初の参入時点で、NooksのUXは他の競合他社とは一線を画していた。BranchやGatherのような企業は、生産性要素を備えたビデオゲームのような印象だが、Nooksはアバターのような雰囲気をまったく感じさせず、TeamflowTandemに近づいている。同社はビデオAPIを利用して、各ユーザーが小さなスペースを利用できるようにしている他、Googleドキュメント、YouTube、Asana、GitHubなどのプラットフォームとの統合も追加している。

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画像クレジット:Nooks

共同創業者であるスーリ氏によると、同社は会話の促進を図るために、クリック数を増やすことなく、よりシンプルな美意識を追求するようにしたという。

「誰かと話をするにあたって、ビデオゲーマーになる必要があるとは、私たちは考えていません。自分のアバターが周囲に存在し、会話をする相手に歩み寄るようなものです」とスーリ氏はいう。「部屋の中にいる彼らを見つけて、その部屋に入るのと同じくらい簡単であるべきです」。

画像クレジット:Nooks

当然のことながら、同社はそのシンプルさと魅力的な環境のバランスを取ることに力を入れており、スペースやBGMのカスタマイズもその一環だ。プレゼンテーションの最中に仲間同士が会話できる「ささやき機能」や、Nooksがトップセラーのリーダーボードを作成するバーチャルセールスフロア、アイデアの相互交流を促進するコワーキングスペースなどがある。

シンプルさは、自発性を犠牲にしてしまうこともある。他のバーチャルオフィスプラットフォームが空間的広がりのあるオーディオを使って「一過性」の感覚(他の同僚の近くにいるときは主張の声が大きくなり、離れているときは寡黙になる)を作り出しているのに対して、Nooksは、そのシンプルさを常に「ワンクリックで誰とでも話ができる」という目的で創出することで、即興のコラボレーションとカジュアルな会話を促進している、とリー氏はいう。

摩擦のないコミュニケーションは重要な機能だが、Nooksの唯一の求心力要素ではないようだ。SlackやHangouts、さらにはTwitterのDMのようなプラットフォームでは、ユーザーが誰かとコミュニケーションするのに必要なのはワンクリック(最大でも2クリック)だけである。いうまでもなく、Slackは自発性とライブコミュニケーションを中心とした一連のコミュニケーションツールをリリースしている。

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それでもNooksには現在、スタンフォード、Embroker、Workatoなどのチームや組織による、毎週何千人ものアクティブユーザーが存在する。同社によると、Nooksを利用するチームは1日平均6時間をNooksのプラットフォームに費やしているという。

ハイブリッドワークのバーチャル成長の難しさ

世界各地でパンデミックが収束するにつれ、Nooksのようなスタートアップは、リモートワーク中心の長い期間に及ぶ対応を経て、ハイブリッドチームの復帰に適応する方法を見つける必要があるだろう。これらのスタートアップにとっての新たな課題は、新しい仕事の文化にうまく組み込むためにどのように自らを位置づけるかである。

そして、近接性バイアスによってそれが難しくなる可能性もある

近接性バイアスとは、バーチャルで働く従業員よりも、対面で働く従業員の方が高く評価されるという考え方だ。ハイブリッドが大規模に成功するのを難しくしている現実の1つは、従業員のグループがオフィスに出向くことができるという理由だけで、より重要な存在として位置づけられたり、高く評価されたりすると、公平性が損なわれることだ。

バーチャルワークスペースのスタートアップ、特に職場の文化をオンライン化したいスタートアップは、在宅勤務者とオンサイト勤務者を誤って分断してしまう可能性がある。分断化は、少数民族や女性を含む、歴史的に見過ごされてきた個人に不相応な影響を与えてしまう。顕著なことに、現在のバーチャルオフィスのほとんどが男性によって構築、運営、資金提供されている。

近接性バイアスへの対処方法について尋ねると、リー氏は「リモートの従業員とより頻繁に、流動的でカジュアルな会話をすることで、チームの他のメンバーとより強い絆を築くことができます」と説明した。当然のことながら、バーチャルオフィススタートアップの多くは、オフィスにいる全員を同じデジタル世界に連れてくることを通して近接性バイアスの解消に乗り出したものだ、という主張もあるだろう。

最終的には、プレイフィールドを平等にするには積極的な意図が必要になる。スタートアップはどうすれば、会議室Aでの自然発生的な対面でのスタンドアップミーティングにバーチャルオフィスの従業員がアクセスできるようにすることができるだろうか。プラットフォームはどのようにして従業員に、場所に関係なく、意見を出したり、反対意見を述べたり、会議後の冗談を共有したりする機会を与えるだろうか。アバターは、拍手や親指を立てる以外にも、物理的なヒントを与え始めることができるだろうか。

私はこれらの機能が、長期的に見てバーチャルオフィススタートアップのムーンショットであり、サバイバルハックであると確信している。

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトが新リモートデスクトップサービス「Windows 365」リリース、Azure Virtual Desktopがあるのに

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間7月14日、Windows 365提供を開始した。これは、企業の従業員がクラウドからWindows 10のデスクトップに簡単にアクセスできるようにするためのサービスだ(Windows 11は一般公開後に利用可能)。本サービスは、ゲームのストリーミングのようなもので、デスクトップ向け。2021年8月2日にビジネスユーザー向けに提供される。

いささか不可解なプレスリリースで発表されたWindows 365は、長い間期待されていたもので、実際のところ既存のリモートデスクトップサービスを進化させたものにすぎない。

Microsoftはすでに従業員がクラウド上のWindows PCにアクセスできるオプションである「Azure Virtual Desktop」を提供しているではないか、と思うかもしれない。しかしながらWindows 365は、はるかに使いやすく、Azureクラウドで完全なAzure仮想デスクトップ環境を構築するような複雑さはないという違いがあるようだ。

Microsoftは、新たな仮想デスクトップサービスを提供するのではなく、Azure Virtual Desktopをより使いやすくすることはできなかったのだろうか?Azure Virtual Desktopはエンタープライズ向けのサービスであり、デフォルトで企業の既存の複雑なインフラにうまく対応しなければならない。パンデミックの影響で、代替手段が少なかった中小企業はAzure Virtual Desktopを利用するようになったが、今回の発表により、Microsoftは多くの点においてAzure Virtual Desktopの管理があまりにも困難だったと認めたことになる。一方、Windows 365は、ある意味でフラッシュな製品であり、ベーシックなサブスクリプションサービスでも利用できる。

「Microsoftは、豊富な仮想化の経験を持ち、より多くのカスタマイズと柔軟性を求める組織のために、Azure Virtual Desktopの革新も続けています」と同社はいう。少なくとも、同社が「Windows Virtual Desktop」を「Azure Virtual Desktop」に改名した理由はわかっている。これは非常に混乱を招くものだった。

画像クレジット:Microsoft

またSatya Nadella(サティア・ナデラ)CEOが「Cloud PC」と呼ぶ「新しいハイブリッド・パーソナル・コンピューティング・カテゴリー」について語っている。これが具体的に何を意味するのかは不明だが、新しいカテゴリーであることは間違いない。

「アプリケーションがSaaSによってクラウド化されたように、私たちは今、OSをクラウド化することで、企業のみなさんにより高い柔軟性と安全な方法を提供し、場所を問わず、従業員の生産性と接続性を向上させます」とナデラCEOは本日のプレスリリースで説明している。

それってただのシンクライアントじゃないのか?そうかもしれない。しかし、ここではハードウェアの話をしているのではない。どこからでもアクセスできるクラウド上の仮想化されたOSの話をしている。これは以前からあるカテゴリーだ。

「Microsoft 365のコーポレートバイスプレジデントであるJared Spataro(ジャレド・スパタロ)氏は「ハイブリッドワークは、今日の組織におけるテクノロジーの役割を根本的に変えました。従業員たちがこれまで以上に分散しているため、企業は多様性、シンプルさ、セキュリティを向上させた優れた生産性体験を提供する新しい方法を必要としています」という。「クラウドPCは、あらゆるデバイスをパーソナライズされた生産性の高い安全なデジタルワークスペースに変えるエキサイティングな新しいカテゴリーのハイブリッドパーソナルコンピューティングです。本日発表されたWindows 365は、デバイスとクラウドの境界線を曖昧にすることで可能になることの始まりに過ぎません」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:MicrosoftAzure Virtual DesktopリモートワークハイブリッドワークWindows 365

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Dropboxが作ったポストコロナの新たな仕事環境「Dropbox Studios」

パンデミックは、個人にとっても企業にとっても多くの反省点があるものだった。テクノロジー企業は特に、オフィスでのフルタイムの仕事に今後戻るのかを検討している。リモートとのハイブリッド方式を考えている企業もあれば、ビルの一室には戻らないだろうという企業もある。このような状況の中、Dropboxは今週発表するDropbox Studiosという新たなコンセプトでオフィスを再構築することを決定した。

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DropboxのCEOで共同創業者のDrew Houston(ドリュー・ハウストン)氏は、今回のパンデミックを、企業が分散というレンズを使って仕事のあり方を見直すきっかけとなる強制的な出来事だと考えていり。彼は、多くの企業が単純に昔の仕事のやり方に戻るとは考えていない。そのため、ハウストン氏は自分の会社のオフィスデザインを見直し、仕切られた小部屋が集まったような風景を止めようと考えた。その代わりに、彼は人々は必ずしも建物の中の一定の場所にずっといる必要はないとことを考慮した新しいアプローチに注目した。

「今週、サンフランシスコをはじめとした米国でDropbox Studiosをソフトローンチまたはオープンしました。この機会に、オフィスをスタジオと呼ばれるコラボレーションスペースに再構築することに重点を置きました」とハウストン氏は語る。「私たちは本当にすばらしい個人的な経験ができることに焦点を当てました。その中には会社レベルで調整するものもあれば、もっと多くのコラボレーションをサポートするために改装されたスタジオに行くこともできます」とハウストン氏はいう。

Dropbox Studiosのコーヒーショップ(画像クレジット:Dropbox)

そのために同社は、カジュアルな雰囲気を醸し出すコーヒーショップ、ハウストン氏が「オンサイトとオフサイト」と呼ぶチームのための会議室、組織的なグループ学習のための教室など、多くのソフトスペースを設けている。その基本的な考え方は、オフィスとしての利点を活かすために、目的に合わせてスペースを自由自在に編成できる可能だ。家での仕事に欠けていた人との出会いも可能にしながら、自宅で個人的な仕事の効率を上げることができたようにもしている。

同社は、サンフランシスコ、シアトル、東京、テルアビブなどの主要都市に専用スタジオを設置し、その他の地域ではWeWorkなどのパートナーが運営する小規模なオンデマンドスペースを利用する。

Dropbox Studiosのクラスルームスペース(画像クレジット:Dropbox)

2020年のTechCrunch Disruptでハウストン氏は、Dropboxはこの機会を前向きに捉えて、分散型労働の最先端に立ちたい。そしてその実例を提供し、他社の導入を誘導したいと語っていた。

「『分散型ワーク』への移行の影響をより広く考えると、オフィスに戻ったとき以外にも影響が出てきます。つまり、私たちは一方通行のドアを通過したのです。これはおそらく、ナレッジワークという言葉が1959年に生まれて以来、最も大きな変化の1つだと思います」とハウストン氏は2020年に語っている。

彼は会社がプロダクトを繰り返し開発するのと同じく、どのように機能するかを評価し、必要に応じてデザインを繰り返していかなければならないと認識しており、新しいスペースやコラボレーションワークへの影響を評価し、必要に応じて調整していく予定だ。他者を支援するためにDropboxはVirtual First Toolkitと呼ばれるオープンソースのプロジェクトプランを公開している。

新しい働き方に移行し、必要なスペースが劇的に変化する中で、Dropboxはこのアプローチに全面的に取り組んでおり、既存のオフィススペースの多くを再利用する予定だ。大胆な一歩だが、ハウストン氏は自分の会社がユニークな立場にあると捉えて、Dropboxが他社にとって働き方を再構築する方法の模範になることを望んでいる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Dropboxオフィスハイブリッドワーク

画像クレジット:Dropbox

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ハイブリッドワークに適したホワイトボード重視のカプセル風会議室をKlaxoonが発表

フランスのスタートアップ「Klaxoon」がホワイトボードコラボレーションプラットフォームのアップデートと新しいハードウェア製品を発表した。同社がこれから販売するハードウェア製品は「Hybridity」で、オフィスにいる人と別の場所にいる人の間で実施するハイブリッド会議に最適化された、すぐに使える会議室だ。

ソフトウェアのアップデートから紹介しよう。Klaxoonは2020年にビデオ会議中に共同作業ができるビジュアルインターフェイスの「Board」を公開した。ホワイトボードのインターフェイスでアイデアを共有したりコラボレーションしたりすることができる。付箋の作成、テキストの追加、画像の挿入、アイテムの移動、ホワイトボードからのビデオ会議の開始といった機能がある。

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会議の参加者は小さいサムネイルで表示されるため、デジタルホワイトボードに集中できる。Boardを既存のビデオ会議ツールに接続することもできる。

6月14日の週にBoardのアップデートが実施され、名称が「Board Hybrid」と変更された。創業者でCEOのMatthieu Beucher(マシュー・ボイカー)氏は記者会見で「Boardの新バージョンはリモートワークだけでなくハイブリッドワークにも使えるように設計したものです」と述べた。

Board Hybridではあらゆる種類のファイルをホワイトボードに追加できる。このため、ファイルを共有ドライブにアップロードし、リンクを作成してホワイトボードにペーストする手間が省ける。PowerPointのプレゼン、Wordの書類、ExcelのスプレッドシートなどをKlaxoonのインターフェイスから直接表示できる。

コネクタなど新しい描画ツールもいくつかあり、例えばマインドマップの作成に使える。Klaxoonのビデオ会議ソリューションから画面を共有することもできるようになった。

画像クレジット:Klaxoon

新製品は、既存の製品とはだいぶ異なる。会議室のHybridityだ。六角形の宇宙カプセルのようだ。窓はなく、外から見るとブラックボックスのように見える。

内部にはイス、画面、カメラ、Klaxoon Boxデバイスが3つずつある。ボイカー氏は「全員が全員をしっかり見て、1人ひとりがコンテンツに集中できます」と説明した。

自宅からハイブリッド会議に参加したことがあるなら、会議の状況に関わる問題点はよくご存じだろう。自分以外のメンバー数人がオフィスにいて同じ部屋から参加していると、そのメンバーたちは小さいアクションフィギュアのようで、誰がしゃべっているのかわからない。

Klaxoonはオフィスにいる人と家にいる人との会議を簡単にすることを目指している。Klaxoon Hybridity会議室の設置には5平方メートルの床面積が必要だ。ある場所に設置して、数年後に別の場所に移動できる。床に固定されていない。

予約注文はまもなく開始される。1カ月2000ユーロ(約27万円)からのサブスクリプションモデルでの販売を予定している。Klaxoonの新しい収入源になるか、単なる楽しい試みか、注目したい。ただ、オフィスに置かれている小さな電話用ブースの代わりにはなるかもしれない。

画像クレジット:Klaxoon

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Klaxoonハイブリッドワーク会議室フランスビデオ会議デジタルホワイトボードリモートワーク

画像クレジット:Klaxoon

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)