NVIDIAを攻撃のハッキンググループLapsus$、「イーサリアムのマイニング制限回避ツールを1億円以上で買い取れ」と脅迫か

NVIDIAを攻撃のハッキンググループLapsus$、「マイニング制限回避ツールを1億円以上で買い取れ」と脅迫か

NVIDIA

大手半導体メーカーのNVIDIAは、ここ数日南米のハッキンググループ「Lapsus$」の攻撃を受けており、企業機密の塊であるソースコードなどを盗み出されたとされています。その中には、任天堂の次期ゲーム機に関する技術情報も漏れているとの推測もありました

この犯罪グループがNVIDIAに対して、盗み出した情報の1つである「RTX3000系GPUに掛けられたイーサリアム(暗号資産)の採掘効率制限を回避するソフトウェアツール」を100万ドル(約1億1600万円)以上で買い取るように持ちかけ、従わない場合は競売に出して最高額入札者に売り払うと脅していることが報じられています。

GeForce RTX 3080や3070、3060 TiなどのNVIDIA製GPUの一部は、出荷時に暗号資産マイニングにおけるハッシュレート(=性能)が制限されています

なぜこのようなリミッターを掛けているのかといえば、暗号資産マイナー達の買い占めと半導体不足によって、GPUを買いたくても買えない人達があふれていたことから、あえて「ゲーマー以外に売れすぎないように」という狙いです。この制限は箱に書かれた文字から「NVIDIA LHR(Lite Hash Rate)」と呼ばれています。

Lapsus$が売りさばこうとしているのは、NVIDIA LHRバイパス(回避)ツールとでも呼ぶべきものです。彼らはRTX 3000シリーズのファームウェアを「フラッシュ」またはアップデートすることなく制限を回避できると主張しているとのこと。

彼らは今週初めにも公開チャットルームで「フラッシュなし=どのマイナーにとっても大金になる」と宣伝したとのスクリーンショットもあります。

NVIDIAを攻撃のハッキンググループLapsus$、「マイニング制限回避ツールを1億円以上で買い取れ」と脅迫か

しかしNVIDIA LHRは、採掘効率を本来の100%から50%に下げるにすぎず、マイナーらのコミュニティは50%から70%に引き上げる方法も考え出したとのこと。

またNVIDIAはLHRを今年(2022年)後半にかけて段階的に廃止する準備中ともいわれており、もしもNVIDIAが脅迫に屈せずツールが競売にかけられたとしても、100万ドルを出してまで飛びつく人がいるとは考えにくそうです。

むしろより大きな問題は、すでに盗み出したデータのうち19GB分を公開しているLapsus$が、さらに250GBが含まれたフォルダを公開すると脅していることです。世界はロシアのウクライナ侵攻で大変な事態となっていますが、こちらでもまだ一波乱あるのかもしれません。

(Source:PC Magazine。Via WccftechEngadget日本版より転載)

テスラ取締役のキンバル・マスク氏、同社がビットコインを購入した際の環境影響について「無知だった」と発言

Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏の弟で、同社取締役のKimbal Musk(キンバル・マスク)氏は、イーサリアム会議のステージ上でのTechCrunchとのインタビューで、Teslaが2021年に暗号資産のBitcoinを15億ドル(約1725億円)分購入し、この通貨で同社の車両を購入できるようにする予定だと発表したとき、同社は環境への影響について「非常に無知だった」と述べた。

「Bitcoinに投資したとき、我々ちはとても無知でした。環境への影響も知らず、文字通り何も知らず、良い価値の貯蔵庫で、資産を分散させる良い方法のようだ、といった感じでした。もちろん、我々が環境に何をしているかを伝える100万通の、冗談ではなくおそらく100万通のメッセージを受け取るのにそれほど時間はかかりませんでした」と、キンバル・マスク氏は筆者に語った。「もちろん、Teslaは代替エネルギーの未来を創造する会社です。その決断をしたときには、本当に十分な情報がなかったのです」。

キンバル・マスク氏は、TeslaがBitcoinの購入を「必ずしも後悔していない」一方で、ブロックチェーン業界がより環境に優しいインフラに移行できることを望んでおり、自身の慈善団体Big Greenが、さほどエネルギー集約型ではないブロックチェーン上で動作する暗号資産ネイティブのDAOガバナンス構造を採用したことに言及した。

テスラ取締役のキンバル・マスク氏は、イーサリアム2022カンファレンスにおいて、TechCrunchのルーカス・マトニーとのインタビューで慈善活動の将来について議論した(画像クレジット:Jesse Morgan / ETH Denver)

「私は本当に暗号資産の環境への影響には同意しませんが、暗号資産がしていることが大好きです」とキンバル・マスク氏は壇上で語った。「ですので、我々は、環境に影響を与えることなく行う方法を考えなければなりません。それは、この環境への影響を持つという選択肢ではありません」。

Bitcoinを購入するというTeslaの2021年の決定により、暗号資産に大きな追い風が吹いた。しかしその数カ月後、同社がBitcoinをすぐに売却する予定はないが、車両購入の支払いでBitcoinを受け入れないと発表したことで、事態が逆転したのは有名な話だ。

イーロン・マスク氏は2021年5月のツイートの中で「暗号資産はさまざまな面で良いアイデアであり、将来性があると信じていますが、しかしそのために環境を犠牲にするわけにはいきません」と述べている。「TeslaはBitcoinを一切売却せず、マイニングがより持続可能なエネルギーに移行し次第、取引に使用する予定です」。

Bitcoinのマイニングのネットワークがどれだけ再生可能エネルギーに依存しているかについては、まだデータがかなり不足しているが、ネットワークのエネルギー使用がいかに大きいかは明らかだ。Digiconomistのエネルギートラッカーによる試算では、2021年5月のイーロン・マスク氏のツイート以来、Bitcoinの採掘作業の年換算エネルギーの二酸化炭素排出量はほぼ倍増している。同サイトの推定では、Bitcoinのネットワークは、クウェートが1年間に排出するのと同程度の炭素を大気中に排出している。

キンバル・マスク氏は2004年からTeslaの取締役を務めている。

画像クレジット:Kevin Jones / ETH Denver

原文へ

(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】暗号資産の処理量に応じた課金モデルは再考の時期にきている

処理量に応じた課金モデルは、常に、暗号資産の世界においてほとんど疑う余地のない主要技術であった。デジタル資産が登場して以来、投資家、開発者、マニアたちは、実際に購入したトークンの価格に加えて処理料(採掘手数料)を支払ってきた。

2021年4月、Bitcoin(ビットコイン)の平均送金手数料がこれまでで最高の59ドル(約6800円)に達した。平均取引料は2017年12月に52ドル(約6000円)にまで跳ね上がり最高値に達したが、今回はそれを超えた形だ。そして、Eithereum(イーサリアム)とそのガス手数料も跳ね上がった。2021年、イーサリアムのブロックチェーンでは、多くの暗号資産ネットワークがイーサリアムを離れ、競合ブロックチェーンSolana(ソラーナ)など、よりサステナブルな選択肢に移行した。

いうまでもなく、暗号資産への投資はますます高価になっている。現在、暗号資産エコシステムに参加している大半の人たちが暗号資産の法外なコストと使用ケースに腹を立ている。とりわけ、ビットコインとイーサリアムのネットワークの手数料は高過ぎる。

にもかかわらず、マニアと投機家たちは、この現状をお金に革命を起こすはずの技術に関わることにともなう厄介なトレードオフとして受け入れ、歯を食いしばって耐えている。

しかし、大多数の人が熱意を失い、お金の取引と移動を行う別の方法を追求したらどうなるだろう。実際すでに、Binance Smart Chain(バイナンススマートチェーン)などの「集中化」サービスが、低い料金設定を引っ提げて、イーサリアムなどの分散システムに取って代わり始めている。

真の分散化暗号資産エコシステムを実現するという夢はどうなってしまうのだろう。取引料金という観点から考えると、分散化ネットワークが集中化ネットワークと競争するのは本当に不可能なのだろうか。

市場経済型アプローチを採用する時期がきている

現時点では、現在上場しているすべての暗号資産とブロックチェーンのネットワーク経済では、利用価値ベースの価格設定ニーズを無視している。つまり、ブロックチェーン上での取引料金が、顧客の考えるその取引の実用価値と一致していない。

言い換えると、取引料金の範囲は利用者が考えているニーズによっても、市場勢力図によっても決まらない。実際「処理量に応じた課金」モデルは取引に課される料金に上限がないため、利用者にとってほとんど利点がない。料金が取引しようとしている価値の大部分を占めるようになったら、そのようなネットワークを使って取引するのは非効率的かつ非現実的だ。

多くの人たちは、こうしたネットワークはユーザーに与えられる実用価値から利益を得ていると思っている(あるいはそうあって欲しいと思っている)が、実際には「処理量に応じた課金」モデルは暗号資産のマイナー(採掘者)または通貨保有者など、ネットワークの利害関係者にのみ利益をもたらし、ユーザーには何の利益ももたらさない。

例えばビットコインでは、承認済み暗号資産取引のブロックを完成させた報酬はマイナーに支払われ、すべての料金はマイナーに分配される。こうした取引が処理される際の「ブロックサイズ」は人為的に小さい状態に維持されており、マイナーはこれまでこのブロックサイズを増やすことを拒否してきた。

その代わり、取引をブロックに含めるためにより高い料金を要求し続けている。YChart(ワイチャート)によると、ビットコインのマイナーの1日あたりの平均収入は約4700万ドル(約54億2000万円)で、2021年初めの2900万ドル(約33億4000万円)から62%も上昇している。

暗号資産取引を長期的に持続可能にするには、そろそろ実用価値ベースの料金設定を導入して暗号資産取引をユーザーに利益をもたらすものにするべきだ。デジタル資産の世界はもはや通常の市場経済型アプローチ、つまり利用者が王様となる方式を採用すべき時が来ている。

高額な取引料金は暗号資産ネットワーク拡大の妨げとなる

最終的にはマニアとアーリーアダプターたちの気持ちは覚めてしまうだろう。そうなったら「処理量に応じた課金」モデルで運営されるこれらのネットワークの使用ケースは、利用者が高額な料金を支払うことをいとわない取引(頻度の低い高額決済)のみに縮小してしまう可能性が非常に高い。

これが現実になってしまうと、高価値の使用ケースが安く値切られてネットワーク利害関係者にとっての価値が失われ、同時に、低価値だが大量にある使用ケースによって得られるネットワークの収益も失われることになるだろう。

筆者はこの差し迫ったシナリオを実用性の不適正価格設定と呼んでいる。このシナリオは、ネットワーク利害関係者(すなわちマイナー、マスターノード所有者、通貨保有者)に報酬を与えるために「処理量に応じた課金」のみに依存している暗号資産ネットワークにとって避けられない運命だ。実用性の不適正価格設定が行われると、新規利用者数が増大しているときでもネットワークの収益と採用が低下する。

最終的には、利用者からの信頼が薄れ、結果としてブランド資産価値が失われることになる。これはメディアの否定的な報道によってあおられることになるだろう(実際今、法外な手数料に関連して、暗号資産最大手2社が否定的に報道されている)。

ネットワーク収益モデルの根本的な見直しを行い同意を得ることを強制でもされない限り、大手暗号資産ネットワークがこの問題をエレガントかつ効率的な方法で解決できるかどうかはまだわからない。

ネットワークの収益維持には代替ビジネスモデルが鍵

最善のシナリオは、細事にこだわり大事を逸するのを避けることだが、まったく新しいネットワーク収益モデルを採用することが解決策となる可能性はある。暗号資産における実用価値ベースの価格設定モデルがユーザーに最も利益をもたらす代替モデルであることは間違いない。このモデルなら低料金または手数料ゼロの取引を実現することも可能だ。

これを実現するには、すべての利害関係者を取り込んだ運営を介して価格設定を行うことで、ブロックチェーン内外の双方の利害関係者が価格設定パラメーターに発言権を持てるようにする必要がある。

例として、オープンな代表投票を使用した手数料ゼロの暗号資産ネットワークNano(ナノ)がある。ナノでは票がノード間で共有および中継され、集計されて、オンラインの投票加重と比較される。ブロックが十分な数の票を受け取って定足数に達したことをノードが確認すると、そのブロックは1分以内に確認される。

ナノネットワークでは、ノードに直接的な金銭的動機がないため、急速に集中化に向かう動きが排除され、長期的な分散化トレンドに向かうことになるが、参加者の利他主義が失われたときこのモデルがどのようなスケールのかという問題は未解決のままだ。

「処理量に応じた課金」モデルを回避する方法を探しているもう1つの例としてKoinos(コイノス)がある。コイノスの目的は「mana(マナ)」と呼ばれるシステムを介して、ブロックチェーン上で消費者市場向けのユーザー体験を実現することだ。ビデオゲームに登場するマナを操作するようなイメージだ。

ネットワーク上の個々のトークンには一定量のマナに割り当てられる。データが事前ロードされているモバイルデバイスを購入するのと同じだ。この「燃料」はユーザーがネットワークリソースを使うと消費される。このようにして、手数料ゼロの取引によって流動性のあるトークン所有者が増えていく。

このアプローチはhold-to-play(使用料に応じて保有する)方式と呼ぶこともできるだろう。つまり、ユーザーがトークンを流動性のある状態に維持することで、利益を生むアクティビティにトークンを参加させないようにするというものだ。トークンに割り当てられたマナが少しでも消費されると、そのトークンは一定期間ロックされる。これはリアルタイムの金銭的費用の代わりに機会費用を発生させて無価値の取引を実行する動機を失わせる役目を果たす。このように、マナの手数料メカニズムは、明示的な取引手数料を請求するよりもダイナミックで拡張性の高いものになっている。

ユーザーの満足度に基づくモデルに従うネットワークは他にもいくつか出現しているが、大手の暗号資産がこのモデルを採用するかどうかはまだ分からない。

大手暗号資産の拡張性問題は依然として未解決

現在のところ大手暗号資産は、ユーザーの利他主義と強い関心によって実際的な価値を維持しており「取引料に応じて支払う」という既存の枠組みを取り払って考える必要には迫られていない。しかし、時が経過し、パフォーマンスおよび代替手段との競争力の低下が指摘されるようになるにつれて、ネットワークは処理量に応じた課金モデルを考え直し、ユーザーだけでなくネットワーク自体にも有益な解決策を見つける必要がある。

どのような企業でも、製品の価値と重要性を判断するのは顧客である。現在、暗号資産各社は、この考え方を自分たちは固守する必要はないという錯覚に陥っている。しかし、やがてこのような姿勢を改める必要が出てくる。

暗号資産プロジェクトが長期的に存続するには、集中型サービスに匹敵する分散型ネットワーク上でユーザーに真の価値を提供するしかない。

既存の暗号資産エコシステムはユーザーも利害関係者であるという事実を認識し適応する必要がある。ネットワークのビジネスモデルによって、対象となるすべての使用ケースに適切な価格設定が行われるようにし、ネットワークの収益を十分に獲得および分配して、プロジェクトを投資家たちにとって魅力的なものにすることが必要不可欠だ。

編集部注:本稿の執筆者Andreiko Kerdemelidis(アンドレイコ・ケルデメリディス)氏はKuvaのCTO兼共同設立者。

画像クレジット:gremlin / Getty Images

原文へ

(文:Andreiko Kerdemelidis、翻訳:Dragonfly)

ボーダーレス暗号資産ネットワークは国家による制裁と戦う、曖昧なガイドラインでWeb3企業はイランなどのユーザーを置き去りに

イランのような国に対する米国の金融制裁は、暗号資産スタートアップがその戦いを慎重に選ばなければならない厄介な規制環境を作り出している。これまでのところ、これらの企業が選んでいない戦いはユーザーに実質的な影響を与えており、時には企業が主張する分散化の哲学と相反することもある。

「誰かに何かが降りかかってくるでしょう。こうした規制がどこで、いつテストされるのか、私たちにはわかりません」と、テクノロジーに精通した共同体の「自律分散型組織(DAO、Decentralized Autonomous Organization)」の実現に注力するSyndicate(シンジケート)のゼネラルカウンセル、Larry Florio(ラリー・フロリオ)氏は述べている。

以前の例では、暗号資産カストディスタートアップのBitGo(ビットゴー)が、制裁対象国のユーザーとのインタラクションの発生を「防ぐように設計された制御を実装」しなかったとして、2020年に外国資産管理室(OFAC、Office of Foreign Assets Control)から罰則を科された。BitGoは基本的に暗号資産銀行のようなものである。クライアントの資産を安全な金庫室に保管することを支援している。この法的な罰則は、そのようなクライアントの一部が制裁対象国の個人から暗号資産を受け取った可能性がある場合に生じた。OFACはこうしたことが米国の制裁下では許容されないことを示したのである。同様の流れで、暗号資産取引所のBinance(バイナンス)は、イラン人とキューバ人が所有するアカウントを定常的に無効化していることで知られている。

業界をリードするEthereum(イーサリアム)主体教育機関の1つであるConsenSys Academy(コンセンシス・アカデミー)が、2021年11月に自社のオンラインプラットフォームから約50人のイラン人学生を締め出したのも、それが理由であろう。「当社の記録の最近のレビューに基づき、米国の法律で商品やサービスの提供が禁じられている国にあなたが所在していることが示されました」と主張するものだった。

このコンプライアンスレビューは、同プログラムが無料であり、取引は含まれていないことから、疑問を提起している。ConsenSys Academyの開発者リレーションヘッドであるCoogan Brennan(コーガン・ブレナン)氏は、イラン人学生と彼らが直面する課題に関するインタビューを2021年2月にCoinDesk(コインデスク)へ提供していた。このプログラムに参加していたSalman Sadeghi(サルマン・サデギ)氏は、TechCrunchに対し「イラン人はWeb3で二流市民のように扱われている」と語った。

「彼らは私たちがイラン出身であることを最初から知っていました」とサデギ氏。「このように制裁は、政府ではなく罪のない人々に害を与えていると思います。公正ではありません【略】イランにおいて、Ethereumマイニングはまだ一般大衆に普及しています。しかし、暗号資産マイニングのほとんどは政府によって行われているのが実情です」。

さらに、@Alireza__28と名乗る別の学生は、自分はアカデミーで勉強するためにテヘランでの仕事を辞めており、何カ月も参加した後で修了証なしにプログラムから追い出され、キャリアプランを台無しにしたと語っている。

「本当に屈辱的でした」と同氏は話す。「暗号資産で報酬が得られるリモートブロックチェーンの仕事のオポチュニティは数多くあります。どこに住んでいるかは関係ありません。私は1つの希望として、ビザのスポンサーシップで(イランを去って)仕事のオファーを受けることを期待していました。そしてもう1つの大きな展望は、私自身で、この地から分散型のアプリを作り上げることでした」。

この教育プログラムに制裁が実際に適用されるかどうかも不明だ。教育プラットフォームのCoursera(コーセラ)は、米国政府から直接許可を得てイランの学生を受け入れている。金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN、Financial Crimes Enforcement Network)の元ディレクター代理のMichael Mosier(マイケル・モシエ)氏によると、バイデン政権はイランとの関係を緩和しようとしており、OFACはこうしたユーザーへのサービス提供の許可をConsenSysに与えた可能性がある。別の認可国の例として、OFACは2020年に、ベネズエラでの人道支援を目的としたStableCoin(ステーブルコイン)流通キャンペーン承認している。

「ConsenSysのような事例から見えてくる大きな要点は、OFAC領域の経験豊富な弁護士と話す価値があるということです」とモシエ氏は語る。「ConsenSysにこれができないのは信じ難いことです。人々は往々にして、リスクに対処するのではなく、逃げ道のようなものを自ら選んでしまうことがあります」。

一方、フロリオ氏は、こうした制裁に保守的な姿勢を取っている企業を責めることは難しいと反論した。

「免除を求めようとするだけでも、自分たちの注目度を高め、規制当局のさらなる監視を引きつけることがあります」とフロリオ氏。「最近の業界のやり方の多くは、問わない、話さない、というものです」。

イランのEthereumファンにはまだ希望があるかもしれない。ConsenSysのグローバルPRリードであるElo Gimenez(イーロ・ギメネス)氏はTechCrunchに対し、同社は「明日のデジタルエコノミーを構築するという自らの使命に全面的に専心しており、国際的なエンゲージメントが困難な地域を含め、世界中で合法的に共有し教育する方法を模索しています」と語った。

その一方で、依然としてイラン人たちにとっては、Gitcoin(ギットコイン)やMetaMask(メタマスク)といったEthereumの共同創設者Joe Lubin(ジョー・ルービン)氏のポートフォリオ企業が提供する集中型NFTプラットフォームやツールを使う上で、通常はVPNサービスと組み合わせて、自分たちのロケーションを隠すことが常套的になっている。例えばクラウドファンディングプラットフォームのGitcoinは、ペルシア語を話す学生のためのキャンペーンをホストしており、同キャンペーンは2021年3月から12月までアクティブになっていた。

GitcoinのCOOであるKyle Weiss(カイル・ワイス)氏がTechCrunchに語ったところによると、2021年12月8日現在、同氏の資金調達プラットフォームは「米国の法律を順守するために細心の注意を払い、この助成金を非アクティブ化している」という。

しかし、暗号資産取引所のKraken(クラーケン)でビジネス組織のための判決ガイドライン策定に貢献した元顧問弁護士のMary Beth Buchanan(メアリー・ベス・ブキャナン)氏はTechCrunchに対し、GitcoinやConsenSys Academyのような企業が制裁対象国のユーザーを必然的に禁止する必要があるという考えには同意しないと語った。

「彼らが携わることを望んでいた活動は、制裁の対象外になる可能性も十分にあります。おそらく、企業が適切な問いを発しなかったのでしょう」とブキャナン氏は語っている。「多くの活動が制裁体制から完全に免除されており、その他の活動は一般認可を受けることができます。また、OFACに個別に申請して、行っていることに問題がないかを確認することも可能です。一般の人々でも、OFACに電話して活動が制裁から免除されるかについて相談できるように、問い合わせ窓口が用意されています」。

端的にいえば、暗号資産企業は、社会から取り残されたコミュニティを取り込む戦略的な方法を考案するのではなく、コミュニティを回避することを選択しているのかもしれない。ブキャナン氏によると、特に芸術や教育に関するケースでは、ほとんどのビジネスオーナーが予想する以上に、コンプライアンスに従うコストははるかに低いという。一方、イラン、キューバ、その他の制裁対象国の一部の人々は、暗号資産業界が事実上のカースト制度で運営されていると感じている。オンラインコミュニティに参加するために自分のアイデンティティを隠す必要があることは、コミュニティがボーダーレスで包括的であることと同一ではない。

「確かに、私たちは独自のユーザーインターフェイスとWeb3ウェブサイトを開発することができます」と、閉鎖されたGitcoinキャンペーンに関わった女性の1人であるAysha Amin(アイシャ・アミン)氏は述べ、EthereumプロジェクトやSolana(ソラナ)のようなアルトコインの競合相手を語る際に人々が言及する、Web3あるいは「メタバース」という深遠なコンセプトについて次のように言い表した。「この種の孤立は良くないように思います」。

Gitcoin以外では、アミン氏は現在、Secureum(セキュリアム)と呼ばれるEthereum Foundation(イーサリアム財団)が支援する教育プログラムに参加している他、テヘランを拠点とするテック企業でも働いている。この記事で紹介している多くのイラン人同様、同氏もMetaMaskのユーザーで、特定のプラットフォームでの差別的な禁制にもかかわらずこの分野で働き続ける意向である。

「このグループ(ブロックチェーン愛好家のためのファルシ語[ペルシア語]言語グループ)を始めたのは(別の)ConsenSysブロックチェーン開発者ブートキャンプを終えた後でした」とアミン氏は続けた。「自分のプライベートキーさえあれば、心配する必要はありません。MetaMaskは自分の情報をローカルに保存します」。

少し背景を説明すると、同氏が所属するイラン人グループには、2019年のDevCon Ethereumカンファレンスの際に日本で出会ったメンバーも含まれている。アミン氏は、2021年にこのイラン人女性5人のグループに加わった。米国を拠点とする同氏らのGitcoinキャンペーンのパートナーであるThessy Mehrain(テッシー・メヘライン)氏は、Gitcoinキャンペーンについて次のように説明した。

私は多様性イニシアティブでConsenSys Academyと協働してきました。その一環としてマイノリティコミュニティのための奨学金を提示され、それをWeb3に関する教育を目的としたアムステルダムに拠点を置くCoinIran(コインイラン)に供与したのです。私は彼ら(CoinIranのブロガー)と大阪で開催されたEthereumカンファレンスで会いました。2020年にある女性開発者グループがSolidity(ソリディティ)ブートキャンプに参加して【略】そしてWomen in Blockchain(ウーマン・イン・ブロックチェーン)の支部がテヘランで結成され、ニューヨーク、ボストン、ブリスベン、ラゴスなど世界中で行われているのと同じように【略】ローカルに、完全に独立して運営されており、テクノロジーとそのオポチュニティに関する教育を行っています。

すべてを考慮すると、これらのイニシアティブは金融取引よりも教育に重点を置いているようだ。

「教育は、個人が情報に基づいた決定を自ら行うのを助け、社会と国家の発展に貢献します」とメヘライン氏。「こうした女性たちは国際社会の一員であり、教育によって有意義な貢献を行う権限を与えられるべきです」。

また、この最近のGitcoinにまつわる禁止措置は、Ethereum Foundationの創設者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏やConsenSysの主要投資家であるルービン氏のようなEthereumの共同創設者が資金提供した世界的なイニシアティブの中では突出しているようだ。その理由の一端には、フロリオ氏が指摘したように、メタバース全体を識別することは不可能だということがある。

「主権国家が外交政策を放棄するとは思えません【略】しかし、何らかのファイアウォールをイラン全土に適用しなければイラン人は何にも参加できないと主張するのは、法的強制力のないことです。そうしたインターネット封鎖のようなことを行う技術は存在しないと思います」とフロリオ氏は語っている。「制裁法を課すことは容易ではなく、創造的な解釈を必要とするでしょう【略】執行がそこにどのようにもたらされるのか、あるいはこのコンテキストで完全に遵守する方法が既知ではないことが考慮に入れられるのかどうかはわかりません」。

今のところ、一部の暗号資産企業は、イランなど制裁対象国の人々を含めて法的に対応する戦略を求めるよりも、アクセスを禁止する方を選んでいる。

「常時のフルアクセスを私たちは有していません。Web3では簡単に排除したりアクセスを禁止したりできます」とアミン氏。「ここイランでは、ブロックチェーン技術を扱う人々、マイニングを行う人々、トレーダー、開発者は常にWeb3へのアクセスについて不安を抱いています。そして私たちは間違いなく、この『二級市民』扱いを感じているのです」。

画像クレジット:cokada / Getty Images

原文へ

(文:Leigh Cuen、翻訳:Dragonfly)

ノートン 360、暗号資産イーサリアムの採掘機能を強制インストールする上に削除が困難と批判が相次ぐ

ノートン 360、暗号資産の採掘機能を強制インストールする上に削除が困難と批判が相次ぐ、15%の手数料も徴収

NortonLifeLock

NortonLifeLock社がPC環境に高度なセキュリティ環境を提供する「ノートン 360」につき、暗号資産の採掘機能「Norton Crypto」が強制インストールされ、簡単に削除できないとの苦情が相次いでいます。

Norton Cryptoは人気の高い暗号資産Ethereum(イーサリアム)を、PCがアイドル状態のときに自動的に採掘する機能です。昨年(2021年)6月に今後は追加されていく方針が発表されており、ひそかに忍び込まされていたわけではありません。

しかしノートン 360のユーザーはマルウェア対策やVPN、保護者機能などを求めて購入したはずであり、暗号資産を採掘したくて導入したとは考えがたいことです。当初、Norton Cryptoはアーリーアダプタプログラムに参加しているユーザーのみに提供されていましたが、現在ではより幅広いユーザー向けに展開されている模様で、物議を醸しているしだいです。

公式FAQによると、暗号資産の採掘はユーザーがオン/オフできるとのこと。しかし本機能のンストールは強制的に行われる上に、いったん有効にすると簡単にはオフにできないことが、複数のユーザーから報告されています。

そしてPCからNorton Cryptoを完全に除去したい場合は実行ファイルの「Ncrypt.exe」を手動で削除する必要があり、しかもアップデートで再び復活したり、第三者が利用できる脆弱性が残っていない保証はないとの声もあります。

またNcrypt.exeを削除することも非常に難しく、一部ユーザーは管理者権限でも無理だったと報告しています。さらにNorton Cryptoがレジストリに自らを埋め込んでおり、削除プロセスをややこしくしているとの分析もあります。

ほかNorton Cryptoが暗号資産を採掘するたびに、NortonLifeLock社が15%の手数料を徴収することも批判を強める要因となっています。また同社のソフトウェアが透明性が低く、過去にもアンインストール時にファイルを完全に削除していなくて揉め事が起きたとの指摘もあります

この暗号資産採掘機能に関しては、記事執筆時点では「アンインストールが限りなく難しく、一度オンにすると無効にしにくい」以外のセキュリティ問題は特に報告されていません。とはいえ、PCのアイドル時に採掘されたくない、そもそも暗号資産と関わりたくないノートン 360ユーザーは、インストール時にオンにしないよう気をつけたいところです。

(Source:WccftechEngadget日本版より転載)

北京の裁判所がビットコインのマイニング契約を「無効」と判決

暗号資産投資家ならよく知っているように、中国はすべての暗号資産取引を違法とし、暗号資産マイニング活動も違法行為だと宣言している。最近出された、裁判所の判決は、ビットコインマイニング活動を可能な限り抑制するという政府の姿勢を改めて示したものだ。

関連記事:中国が暗号資産の取引は「違法」として全面禁止、海外取引所やマイニング企業も規制へ

裁判所からの通達によれば、中国時間12月15日、北京の朝陽区の裁判所は、ビットコインマイニングからの支払いの遅延をめぐる契約紛争を審理し、サービス契約は「無効」であるとの判決を下した。

原告は、被告である契約したマイニング会社が、中国時間12月15日時点で約1800万ドル(約20億5000万円)相当の278.1654976ビットコインを支払わなかったために、法廷へ持ち込んだのだ。

告示によると、北京の裁判所がビットコインのマイニング契約を無効と宣言したのはこれが初めてだという。判決に続いて、裁判所は、事件で言及されたマイニングが行われたエネルギーの豊富な四川省の関係当局に、似たような他の活動を「パージ」するよう要請した。

裁判所の判決は、驚くことではないが、海外企業に中国の暗号資産会社との取引を思いとどまらせる可能性がある。中国はすべての暗号資産の取引、交換、投資を違法と見なしているが、多くの暗号資産会社は、海外の顧客にサービスを売り込みながら、依然として国内でエンジニアリングと運用を継続している。

中国は2019年という早い時期に暗号資産のマイニング禁止を検討し始め、2021年にはその実施を本格的に強化し始めた。9月には、中国の国家計画立案者である国家発展改革委員会から、暗号資産のマイニングは「エネルギーを大量に消費し、大量の炭素排出を生み出し、経済にほとんど貢献しない」との通達があり、そのような活動は「排除されるべきである」と述べられている。

問題となった署名済の契約は「社会および公共の利益を損なうため、無効である」と北京裁判所は述べている。そのため、それに関連する権利と利益は「法律によって保護されるべきではなく」、関係する当事者は彼らの行動の「結果を負うべきである」ということなのだ。

関連記事:中国が暗号資産の取引は「違法」として全面禁止、海外取引所やマイニング企業も規制へ

画像クレジット:Sapphire / Getty Images

原文へ

(文: Rita Liao、翻訳:sako)

【コラム】マイニング業界の転換で訪れる、暗号資産のグリーンな夜明け

気候変動は現代における主要な問題だ。政策立案者から個人まで、誰もが持続可能性とグリーンな行動が社会に浸透するために自らの役割を全うする責任を持っている。

事実、米国から中国まで世界中の政府が気候変動に積極的に取り組んでおり、最近行われた2021年国連気候変動会議、COP26は、 パリ協定の目標に向けた気候変動対策の推進力となっている。

企業もまた大きな責任を負うべく前進を続けており、今や多くの投資家が、財務実績だけでは成功の指標に足り得ないと考え始めている。ESG(環境・社会・ガバナンス)指標、即ち負の外部性(negative externalities)が、社会に役立つ事業活動の真の価値を決めるためにいっそう考慮されるようになった。

その中で、金融インフラを再活性化させるプロセスがますます注目を集めている。Bitcoin(ビットコイン)をはじめとするデジタル資産は、ESG基準をどの程度満たしているのだろうか?この疑問は暗号資産の利用がいっそう幅広い層に行き渡るにつれ、これまでになく重要になってきている。米国では複数のBitcoin先物ETF(上場投資信託)が取引されおり、機関投資家の関与も最高水準に達し、 Standard Chartered(スタンダードチャータード)、 State Street(ステート・ストリート)、Citibank(シティバンク)をはじめとする多くの世界最大級の金融機関が、静かにこの分野で準備を進めている。

規制の明確化も世界でさまざまな人々の参加を可能にし、それぞれのデジタル資産戦略を加速させている。EUの広範囲にわたるMarket in Crypto-assets(暗号資産市場、MiCA)規制フレームワークは、欧州議会で法制化手続きが進められている。一方米国でも、Gary Gensler(ゲイリー・ジェンスラー)氏率いる証券取引委員会が、ステーブルコインと分散型金融(DeFi)のためのフレームワークを明確化する意志を表明している。

デジタル資産が真に主流となり、全世界の投資家のポートフォリオで地位を固めるためには、各国政府と企業が従うべきものと同じ厳格なESG基準の対象にならなくてはいけない。業界が徐々にこの要件を受け入れ、高まる受け入れに呼応して環境自主規制のプロセスを強化していることは特筆すべきだろう。

Bitcoin Mining Council(ビットコイン・マイニング協議会)などの組織は、報告基準を高めることで業界の透明性向上に取り組んでいる。多くの暗号資産ネイティブ組織も、Crypto Climate Accord(暗号資産気候協定)に参加して、暗号資産関連活動にともなう電力消費の2030年までの排出量実質ゼロを誓約している。

しかし、こうしたあらゆる活動にとって、おそらくデジタル資産のエネルギー効率化における唯一最大の貢献は、業界の制御がまったく届かないところで決定されている。2021年5月、中国国務院は暗号資産のマイニングおよび取引を全面的に禁止した。かつて全世界Bitcoinマイニングハッシュレートの44%を占めていた暗号マイニング(採掘)の世界拠点でのこの決定は、採掘者の他の司法権の下への大量脱出を呼び起こした。

これはBitcoinマイニング業界のエネルギー効率化にとって極めて大きな意味をもつ動きだ。電力の石炭依存が高い中国経済を離れ、再生可能なエネルギー形態の多い他の地域へ移動することを意味しているからだ。

北米はこの動きの大きな受益者であり、マイニングハッシュレートの米国シェアは、 4月の17%から8月は35%へと上昇した。カナダのマイニングハッシュレート、9.5%を加えて、今や北米は世界供給の50%近くを占め、全世界マイニングハッシュレートを支配している。

米国のエネルギー生産は全州に分散しているが、この転換はBitcoinマイニングの持続可能性にとって朗報だ。米国は再生可能エネルギーが豊富であることに加えて、大規模なマイニング会社は薄利な業界で競争しており、主要な変動コストはエネルギーであることから、インセンティブは最安値のエネルギー源に移行することであり、その大部分が再生可能エネルギーだという事実がある。

たとえばニューヨーク州はBitcoinハッシュレートで最大級のシェアをもつ州の1つであり、Foundry USAのデータによると、州内エネルギー生成の3分の1が再生可能資源によるものだ。同じくBitcoinマイニングハッシュレートで高いシェアをもつテキサス州も再生可能エネルギー生産の割合を高めており、2019年には電力の20%が風力によるものだった。

さらに、Bitcoinマイニング業界には、電力網にまだつながっていない孤立した再生可能エネルギー源を使用することにインセンティブを与えるという独自の仕組みがある。再生可能エネルギー生成の収益化手段となることで、Bitcoinマイニングが再生可能エネルギー構築をいっそう加速する可能性を秘めている。

こうした再生可能エネルギー源への転換は、反対派に対して、Bitcoinを含むデジタル資産業界全体が持続可能性の精神と一致しながら成功できることを示し始めている。ただしそのような変遷はただちに起きるものではなく、大規模のマイニング事業が新たな地域で再構築するためには長い時間がかかるだろう。

つまるところ、暗号資産の提供する価値がそのエネルギー消費に見合っていることを世に知らしめられるかどうかは、デジタル資産サービスプロバイダーにかかっている。2021年だけでも、デジタル資産の炭素排出量削減は大きな進展を見せており、今後も暗号資産が持続可能性の旅を続けていけば、企業や機関投資家の参入も後に続くだろう。

編集部注:本稿の執筆者Seamus Donoghue(シーマス・ドノヒュー)氏は METACO(メタコ)の戦略的アライアンス担当副社長。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

原文へ

(文:Seamus Donoghue、翻訳:Nob Takahashi / facebook

M1 Pro / M1 Max搭載MacBook Proを使った暗号資産イーサリアムのマイニングは効率的!? ただし元を取るまで17年かかる

M1 Pro / M1 Max搭載MacBook Proを使った暗号資産イーサリアムのマイニングは効率的!? ただし元を取るまで17年かかる

UFD Tech

新型MacBook Proに採用されたM1 ProおよびM1 Maxは大幅な性能アップを実現していることから、暗号資産のマイニング(採掘)に使えないかと脳裏をよぎった人も少なくはないはず。それを実際に試してみた結果が報告されています。

海外掲示板Redditにも、同じ疑問を抱いた人たちがスレッドに集まっています。最初の「M1 Maxは55MH/sでETH(イーサリアム)を採掘できる?メモリの帯域幅はRX 6700 XTとRTX 3060 Tiの間だ」というお題をきっかけに「M1 Maxが40以上のMH/sを出せるなら、M1 ProではなくM1 Max MacBook Proを注文するよ」などの話題が盛り上がっています。

ちなみに「MH/s」とは暗号資産を採掘する速度であるハッシュレートの単位であり、1秒間の計算が100万回ということです。

さらに「考慮すべき事実は、最も効率的なSoCであり、専用GPUよりも電力消費がずっとずっと少ない。MacBookのリセールバリュー(買取や下取り価格)は基本的に市場で最も優れています(中略) SoCには、画面出力、超高速ビデオエンコーディング、暗号化、非常に強力なニューラルエンジンなど、特定の処理に特化した複数の専用プロセッサが搭載されています(中略)基本的には最も効率的な汎用CPUであると同時に、最も効率的なプログラマブルASICでもあるんだ」といったレスポンスもあり。

また「私は64GBのM1 Max 16(インチ)を持っていますが、ハイパワーモードで動作させたところ、ストックのethminer-m1バイナリで約10.25MH/が出ています。決して高速ではありませんが、非常に効率的で、1Wあたりのハッシュレートはおそらくとても良いでしょう」との声もあります。

そして実際にテストをして、数字を出している人もいます。YouTuberのUFD Tech氏はM1 Pro搭載Macで採掘をして、その電力効率の良さに驚いています。すでにM1 Mac向けに暗号採掘用のコンパイル済みバイナリソースコード)が配布されており、本動画ではそのインストール方法と使い方(今回はイーサリアム)が説明されています。

まず注意すべきは、バックグラウンドでのマイニングはしない方がいいということ。ちょっとしたWebブラウズでもマシンのパフォーマンスを落としてしまうので、Macを使わないときのみ実行したほうがよさそうです。

そうした注意を払った結果、M1 Proでは5MH/s以上の速度が出ており、総消費電力はわずか17W。Windows PCで同じ結果を出すためにははるかに多くの消費電力を必要とすることからも、十分にいい結果と言えそうです。

ただし電気代を差し引いた後の利益は、1か月あたりわずか12.82ドル、1日あたり約42セントにすぎません。もしも暗号資産マイニングのためだけにMacBook Proを買うとすれば、元を取るのに17年はかかる計算となります。購入から4~5年で下取りに出すとすれば利益はもう少し改善しそうですが、いずれにせよ小遣い稼ぎの域を出ることはなさそうです。

すでに購入している人は、Macを使っていないときにマイニングをしても害はなさそうではありますが、一攫千金は望むべくもないと思われます。4Kや8K動画編集などでM1 Max MacBook Proを24時間フル操業させている人は、今まで通り本来の業務に専念させておくのが賢明かもしれません。

(Source:RedditUFD Tech。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

次期ニューヨーク市長エリック・アダムズ氏が最初の3回の給与をビットコインで受け取ると表明、マイアミ市長に対抗か

次期ニューヨーク市長エリック・アダムズ氏が最初の3回の給与をビットコインで受け取ると表明、マイアミ市長に対抗か

ThaiMyNguyen via Getty Images

次期ニューヨーク市長エリック・アダムズ氏が、Twitterで市長としての最初の3回の給与をBitcoinで受け取りたいと発言しました。これはおそらく、11月2日にマイアミ市長のフランシス・スアレス氏が次の給与はBitcoinで受け取ると述べたことに対して「ならば自分は向こう3か月分を」とばかりに意気込んだ発言と考えられます。

なぜ両市長がこれほどまでにBitcoin推しなのかといえば、両市はいま、米国における暗号資産のメッカとしての地位を得ようとしているから。

マイアミ市は今年8月、米国の市として初の独自暗号資産「MiamiCoin」を創設しました。MiamiCoinは採掘されるとその70%が採掘者に、30%がマイアミ市に収められるしくみで、Washington Postによればマイアミ市はこれまでに710万ドル(約8億円)を超える金額をMiamiCoin採掘から得たとされます。

また今年はじめには、スアレス市長がBitcoinでの税金の支払いや、暗号資産による市職員の給与引き出しを推進する計画を発表、さらに暗号資産に関するカンファレンス「Bitcoin 2021」を開催するなどして業界の注目を集めており、こうした動きに対する期待感からか、暗号資産取引所やスタートアップ/ベンチャー企業のいくつかがマイアミにオフィスを構えたり移転をし始めています。

一方、ニューヨーク市はといえば、これまではBitcoinや暗号資産に対しては消極的な姿勢を示していました。今年はじめの段階では、ニューヨークは市内でのBitcoin採掘を3年間禁止することで温室効果ガス排出の変化を確認する環境アセスメント実施法案を議会で揉んでいたほどです。

しかしこのほど次期ニューヨーク市長に選出されたアダムス氏は、6月に市長選における民主党からの指名を得たときには、ニューヨーク市を「Bitcoinの中心」、また「すべての技術の中心」にしたいと抱負を語り、新たなビジネスの育成を公約に掲げました。そしてBitcoinや暗号資産への政策についてもマイアミを追撃したいとの考えを述べています。

ただ、世界最大の金融都市として知られるニューヨーク市とはいえ、暗号資産でその覇権を握るには先行しているマイアミ市よりも強力に暗号資産の推進をしていく必要があります。アダムズ氏はBloomberg Radioでスアレス氏とともに「切磋琢磨」して行きたいと述べたものの、市長が3回分の給与をBitcoinで受け取ったところで、それほど大きな影響を及ぼすとは考え難そう。またニューヨークに帝国(エンパイアステート)を築いてきた金融企業たちとも、どのように折り合っていくのかが気になるところです。

ちなみに、米国以外では、たとえばエルサルバドルなどはすでにBitcoinを法定通貨として定めています。また中国は国家として独自の暗号資産「デジタル人民元」を推進するためか、全てのBitcoin取り引きを違法とする措置を講じています。

(Source:CNBC。Via The VergeEngadget日本版より転載)

【コラム】ウクライナの暗号資産法は正しい方向への第一歩である

現地時間9月8日にウクライナ議会が可決した法案にVolodymyr Zelensky(ウォロディミル・ゼレンスキー)大統領が署名することで、暗号資産がまもなくウクライナで合法的に使用されるようになる見通しだ。

この法律は仮想資産の所有者や取引のためのプラットフォームを詐欺から保護するためのものであり、ウクライナが完全デジタル化経済への移行に向け、ビットコインを法定通貨とみなす準備を進めているという噂が飛び交っている。この法律からウクライナがどのように今後暗号資産市場を規制しようとしているかを判断することができる。またこの法律によりウクライナでビットコイン事業を行うことが正式に許可される。

2009年にBitcoin(ビットコイン)が作られた当初、暗号資産は取るに足らないものという扱いであり、ほとんど注目されることのないテクノロジーであったが、現在では富を生み出す金融商品として人々を刺激し、グルーバル経済の変革に大きな役割を担うまでに成長した。暗号資産経済は次なる1兆ドル産業と目されているが、そのイノベーションは始まったばかりの段階である。

ウクライナ政府、またはそれ以上にウクライナ国民はこのことを理解しており、この法律により、経済成長に参加するために必要な措置を講じられるよう社会の進歩を促している。ウクライナの代表者たちは、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にした後、その導入の詳細を知るため同国の担当官に会いに赴いたとされている

暗号資産はデジタルワールド内でのみ取引される通貨の形態で、本来政府からは完全に切り離された存在だ。ユーザーはブロックチェーン(分散型の公的台帳の役割を果たすリストのことで、記録は増え続け、変更することができない)で取引を監視したり承認したりすることが可能である。オンライン上で公開された台帳があることから、取引に銀行などの金融機関の介在を必要としない。

暗号資産経済が活況を呈しているのはウクライナ国民の民意を反映したもので、暗号資産を支持する法律の起草は、この産業にとって重要なステップである。暗号資産はウクライナ国内で人気があり、支払いプラットフォームTriple Aによると、総人口の12.7%にあたる550万人強が現在何らかの形で暗号資産を所持していると推定されている。  ブロックチェーンデータ会社Chainalysisは、2020年9月にウクライナを世界で最も暗号資産の受け入れに積極的な国の1つとするランク付け を行った。

ウクライナでは、電力の半分近くが15基の原子炉によって発電されているのだが、暗号資産のマイニングスペースはウクライナのエネルギー業界に興味深い影響を及ぼしている。ウクライナのエネルギー相は「暗号資産マイニングは余剰エネルギーを消費するための現代的で効率のよい方法だ」と述べた。エネルギー相はこれまでエネルギー浪費の問題を解決し、効率を改善するための革新的な解決策を探し求めてきた。

ビットコインマイニング業界は、余剰電力を引き取り、それを暗号資産マイニングに使用することで原子炉からの余剰電力を利用する理想的なパートナーになっている。これは、エネルギー生産要件を維持しながら、ウクライナの原子力発電所への新しい投資資金を引き付けるのに役立つはずだ。

これにより、ウクライナ政府はマイニングネットワーク全体の強力なサポートノードとなっている。このことは、クリーンで持続可能なビットコインマイニングを提供し、同時にエネルギー部門の非効率性に対し自由市場的解決策を提供するのに役立つだろう。

経済的影響は非常に大きい。ウクライナの原子力発電所の運営にあたっている国営企業NAEC Energoatomは、2020年、1億7000万米ドル(約189億円)を超える損失を計上した。これがウクライナのエネルギー部門がブラックホールから浮上する契機となった。Energoatomが「電力をBitfuryの暗号マイニング部門のマイニングオペレーターに供給する契約に合意した」ことにより、そのプロジェクトがすでに始まっている。ウクライナ政府はビットコインをマイニングし、それを手元に保管しておくことも、マイニングされたビットコインを市民の口座に振り込むことも、または国民総生産を高めるためにビットコインを売却することもできる。

さらに、ウクライナは2019年7月から2020年6月までに80億ドル以上(約8886億円)の暗号資産を受信した。ウクライナはWeld Money、Hacken、Propyなど、暗号資産スタートアップの発祥地であり、また堅牢な暗号資産やブロックチェーン業界も有している。ウクライナには暗号資産分野にすでに100を優に超す数の企業が存在しているのだ。

ウクライナは2020年ビットコインへの投資から約4億ドル(約444億円)を稼ぎ、ウクライナの暗号資産投資家は世界でも有数の金持ちになっている。ウクライナの暗号資産は、市民の間だけではなく、公務員や政府の広い範囲で流行している。2021年初頭、ウクライナの公務員全体で26億ドル(約2888億円)を超えるビットコインを所有していると公表し、その報告書の中で「これまでで最大数の暗号資産所有者が市議会、国防省、国家警察で働いている」と述べた。

世界銀行によると、ウクライナのGDPの10%近くがウクライナへ送られた個人送金によるものだ。多くのウクライナ人は他国へ移民した後もウクライナに残してきた家族に送金するのだが、従来の銀行を通した送金に法外な料金を支払い続けてきた。しかし暗号資産がすべてを変えた。暗号資産により、ウクライナの人々は銀行や金融サービス業者が介在しない形で迅速で安く国際送金することが可能になったのだ。

ビットコイン以前、銀行や金融サービス業者はお金を変換し、受取人の国にそれを送金し、さらに現地通貨に変換し直すということをしていた。しかし、世界銀行の調査によると、平均の送金料は送金額の約6.38%にのぼるという。

この送金料よりさらに悪いのが、ウクライナ国民は深刻な汚職のため銀行システムをほとんど信用していないことである。いくつかの大手銀行が崩壊し、ウクライナ政府は90以上の銀行が破産したことを宣言した。また多くの人が打ち続く銀行スキャンダルによりお金を失った。2016年、ウクライナの銀行部門の20%を占めるPrivatBankの元帳から50億ドル以上(約5554億ドル)が紛失したことが明らかになり、政府が介入してPrivatBankを国営化する事態となった。銀行部門は機能しておらず、腐敗した財閥に支配されていると多くの人が信じている。

2014年にロシアがウクライナに侵攻して以降、ウクライナ経済は急激に落ち込み、ウクライナの通貨であるフリヴニャのドルに対する価値は70%下落した。これが国民の貯金能力や購買能力をさらに弱体化させた。蓄えが少額の人の場合、家にお金を隠す事が多く、敢えて銀行に預け入れることはない。

ソ連崩壊以後ウクライナの銀行業界は、不埒な習慣が横行するようになる以前でさえ、西側諸国と同じようには発展することができなかった。送金プロセスはインフラの不備のため問題が多く、そのためバウチャーや両替といった金融商品を通し悪辣な方法が開発され、大規模なマネーロンダリングや胡乱な商習慣の素地となった。

政府、企業、銀行部門に深く根付いた腐敗、悪徳政治家に摂取された不法な資産、ウクライナのいくつかの著名な銀行の崩壊のため、分散化された性質を持ったビットコインが国民に受け入れられたのはうなづける。ウクライナ人は自らの資産を守るために暗号資産を受け入れ、若く革新的な世代の人々は将来に熱心に目を向け、崩壊したスキャンダルにまみれたシステムとおさらばしようとしている。ウクライナ人が変化を望む気持ちは大きく、彼らが暗号資産に寄せる期待は大きい。

暗号資産の受容率は高まるばかりであり、政府がサポートする枠組みにより、この領域で成長する企業が増え、国家に税金を納め、さらなるイノベーションを促進することが可能になるだろう。暗号資産の受容率が高いという事実や、国が推進する暗号資産に有利な法律の存在を通し、ウクライナは暗号資産の世界的中心地の1つになるチャンスを手にしているのであり、この機会を無駄にしてはならないのである。

編集部注:本稿の執筆者David Kirichenko(デビッド・キリチェンコ)氏はEuromaidan Pressの編集者。サイバースペース、デジタル通貨、経済、テクノロジーについて執筆している。

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

原文へ

(文:David Kirichenko、翻訳:Dragonfly)

中国が暗号資産の取引は「違法」として全面禁止、海外取引所やマイニング企業も規制へ

中国人民銀行(中央銀行)は現地時間9月24日、国家安全保障と「国民の資産の安全」に関する懸念を理由に、すべての暗号資産(仮想通貨)関連の取引は国内では違法であり、全面的に禁止すると発表した。また、世界一の人口を抱える同国は、海外の取引所が国内のユーザーにサービスを提供することも禁止すると表明した。

中国の10の政府機関は、共同声明の中で、国内での暗号資産の取引を「高圧的に」取り締まるために緊密に協力する意向を表明。また人民銀は、インターネット企業、金融企業、決済企業に対し別途、自社プラットフォーム上で暗号通貨取引を促進しないよう命じた。

人民銀は、Bitcoin(ビットコイン)やTether(テザー)を含む暗号資産は不換紙幣ではないため、市場に流通させることはできないとしている。暗号資産の利用が急増したことで、「経済・金融秩序」が乱れ、「マネーロンダリング、違法な資金調達、詐欺、ネズミ講、その他の違法・犯罪行為」が急増しているという。

違反者は「法律に基づいて刑事責任を追及される」と人民銀は警告している。

中国政府は「国民の財産を保護し、経済・金融・社会の秩序を維持するために、仮想通貨の投機、および関連する金融活動、不正行為を断固として取り締まる」と人民銀は声明で述べた。

この動きは、すでに一部の暗号資産トレーダーの間でパニックを引き起こし始めており、Bitcoinをはじめとするいくつかの通貨の価格を下落させている。Bitcoinは記事公開時点で5.5%下落していた。

世界最大級の暗号マイニングサービスが複数ある中国は、それらのビジネスも追いかけていく。国家発展改革委員会は、暗号資産マイニングの全国的な一掃に着手すると表明し、これは「必須」の作業だとしている。

中国が暗号資産関連の活動の取り締まりを宣言したのは今回が初めてではないが、これまでは多くの政府機関がこのような取り組みに協力姿勢を示していなかった。

中国の規制当局は、数年前から暗号マイニングの禁止を検討してきた。しかし、最近の四半期では、いくつかの地元企業が暗号資産を採用し始めている。中国のアプリメーカーであるMeitu(メイツ、美图)は、3月に4000万ドル(約44億3000万円)相当のBitcoinとEthereum(イーサリアム)を購入した。

楽観的な意見もある。シンガポールの暗号資産取引所Luno(ルノ)でアジア太平洋地域の事業責任者を務めるVijay Ayyar(ビジェイ・アイヤー)氏は、こうツイートしている。「中国はこれまで数え切れないほど、暗号資産の禁止を叫んできた」。

関連記事
中国はビットコインのマイニングを禁止か
中国の写真加工アプリ「Meitu」が43.4億円相当の仮想通貨を購入

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

セキュリティソフト「ノートン360」が暗号資産イーサリアムのマイニング機能「Norton Crypto」を追加

セキュリティソフト「ノートン360」が暗号資産マイニング機能「Norton Crypto」を追加

24K-Production via Getty Images

NortonLifeLock(旧:Symantec)は、PC環境に高度なセキュリティ環境を提供する「ノートン360」でマルウェア対策だけでなく、VPNや保護者機能、25GBのクラウドバックアップ機能といった総合的なサポートを提供しています。そしてノートンは、このソフトウェアに数週間以内に新機能「Norton Crypto」を追加することを明らかにしました。

「Norton Crypto」という名前から推測できるようにこれは暗号資産の採掘(マイニング)機能で、数ある暗号資産の中でも人気の高いEthereum(イーサリアム)を、PCがアイドル状態のときに自動的に採掘します。

ノートンは、このマイニング機能を「顧客の進化し続けるデジタルライフを守る」ための機能として宣伝しています。通常ならセキュリティソフトはマイニングソフトをブロックしますが、Norton Cryptoの場合はノートン自らが追加した機能なので、ウイルス対策と暗号資産の採掘機能両方を同時に扱うことが可能です。

具体的には、この機能はユーザーのPCのがアイドル状態のときに作動し、GPUリソースを使用してEthereumを採掘します。採掘できたコインはハード的な故障で失われたりしないよう、クラウド上に保管されたウォレットに転送することができます。

NortonLifeLockの最高製品責任者Gagan Singh氏は「Norton Cryptoを使えば、お客様は数回クリックするだけで暗号資産を採掘でき、そのエコシステムにおける多くの参入障壁を回避することができます」と述べています。

Norton Cryptoはまず、6月3日にアーリーアダプタープログラムに参加しているユーザーから提供され、数週間後に全ユーザーに展開されるとのこと。

セキュリティソフト「ノートン360」が暗号資産マイニング機能「Norton Crypto」を追加

NortonLifelock

(Source: BleepingComputerEngadget日本版より転載)

関連記事
【コラム】暗号資産とブロックチェーンは問題を受け入れてサステナビリティを牽引するべきだ
【コラム】暗号資産とエネルギー消費をめぐる議論
初代ゲームボーイでビットコインを採掘する勇者現る、1コインあたり数兆年のマイニング速度
NVIDIAがGeForce RTX 3060での暗号資産マイニング効率を半分に制限、採掘専用GPU発表

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)Ethereum / イーサリアム(製品・サービス)ブロックチェーン(用語)マイニング(用語)

【コラム】暗号資産とエネルギー消費をめぐる議論

暗号資産(仮想通貨)に関して昨今、エネルギー消費が議論の的となっている。批評家たちは暗号資産がエネルギーを大量に消費していると主張し、推進派は現在の世界経済に比べ、エネルギー消費量は少ないと評価している。

そんな批評家の1人であるDigiEconomist(デジエコノミスト)創業者のAlex de Vries(アレックス・ド・フリース)氏は「Bitcoin(ビットコイン)ほど非効率的なものは見たことがない」と話す。

一方、ARK Investment Management(アークインベストメントマネジメント)の調査によると、Bitcoinのエコシステムが消費するエネルギーは、従来の銀行システムに必要なエネルギーの10%以下であることがわかった。銀行システムの方がはるかに多くの人々にサービスを提供しているのは事実である一方、暗号資産はまだ発展途上にあり、他の産業と同様、インフラの初期段階では特にエネルギー消費量が多くなる。

2021年2月だけで14億ドル(約1520億円)近くを稼いだ暗号資産マイニング業界は、工業化した現代社会におけるその他の問題と比較すれば、環境にとって特別にひどい影響はまだもたらしていない。ド・フリース氏もTechCrunchに対し、環境に配慮した規制当局が「Bitcoinに対してありとあらゆる行動をとったとしても、すべての政府がそういったマイニング規制に賛同するとは思えない」という。

「理想的なのは、内部から変化が起こることだ」とド・フリース氏は話し、Bitcoin Core(Bitcoinコア)の開発者が、コンピューティングの消費エネルギーが少ないソフトウェアに変更することを期待しているとして、こう付け加えた。「Bitcoinは現在、世界中にあるデータセンター半分に相当するエネルギーを消費していると思われる」。

ケンブリッジ大学のBitcoin電力消費指数によると、Bitcoinのマイナーは約130テラワット時のエネルギーを消費していると予想されており、世界の電力消費量の約0.6%に相当する。これは、Bitcoin経済がスリランカやヨルダンのような小さな発展途上国の二酸化炭素排出量と同等であることを意味する。とりわけ、ヨルダンの人口は約1000万人だ。毎月何人の人がBitcoinを使っているのかはわからないし、アンマンの住民がヨルダンディナールを使うよりも、Bitcoinを使う頻度の方が少ないのは確かだ。しかし、CoinMetrics(コインメトリックス)のデータによると、100万以上のBitcoinアドレスが日常的にアクティブであることが示されている。暗号資産取引所Crypto.com(クリプトドットコム)の記録では、過去10年間のアクティブアカウントは最大1億600万である。

関連記事:ビットコイン購入がテスラの環境重視の評判と収益に悪影響をおよぼす可能性

「当社は上場している取引所のアドレス総数を数え、同じユーザーが複数の取引所で所有しているアドレスを差し引いて、Bitcoin(BTC)とEthereum(ETH)のユニークユーザー総数を算出している。その後、ETHとBTCの両方を所有するユーザーを考慮して、この総数をさらに減らしている」とクリプトドットコムの広報担当者は話す。

これにより、多くの人々がこれらの金融ネットワークを利用していることがわかる。さらに、Bitcoinマイニング事業の多くは、水力発電や油田から漏れ出る天然ガスなど、環境に配慮したエネルギー源を利用している。マイニング業界で経験豊富なCompass Mining(コンパスマイニング)のCOO(最高執行責任者)、Thomas Heller(トーマス・ヘラー)氏は、四川省や雲南省にある中国の水力発電所では、雨季になると電気料金が安くなると話す。乾季には採算が取れなくなるが、水力発電を1年中使い続けているという。

「5月から10月『雨季』以外の電気料金はずっと高くなるが、雨季以外で水を供給している発電所もある」とヘラー氏はいう。

基本的に、コンピューターはあらゆる供給源からの電力を利用できるため、暗号資産マイニングは本来、余分な二酸化炭素を排出しない。2019年、デジタル資産運用会社のCoinShares(コインシェアーズ)は、Bitcoinマイナーの最大73%が、少なくとも何らかの再生可能エネルギーを電力供給の一部として使用しているとする調査結果を発表した。そこには中国の巨大ダムによる水力発電も含まれている。Bitcoinのマイニングプール(マイナーが協力して利益を上げるための共同体)の上位5社は、いずれも水力発電を多く利用している。ド・フリース氏がこの調査結果に驚くことはない。同氏は、マイナーが消費する全エネルギーの39%は再生可能エネルギーであることを、ケンブリッジ大学の研究者が確認していると指摘した。

「私の発電所にはソーラーパネルを1台設置していますし、再生可能エネルギーを組み合わせて利用しています」とド・フリース氏はいう。

地域別でみると、中国のBitcoinマイニング作業が、ハッシュレートと呼ばれるネットワーク計算能力の約65%を占めていることが、ケンブリッジ大学のデータから明らかになっている。中国の新疆ウイグル自治区のような一部の地域では、Bitcoinマイナーたちが石炭を燃やして電気を供給することもある。同自治区は、暗号資産マイニング以外にも、ウイグル人に対する人権侵害で知られている。中国はこの地域にある天然資源を利用しようとさまざまな攻撃を仕かけており、その一環として、ウイグル人を激しく弾圧している。批評家が暗号資産マイニングとエネルギー消費に警鐘を鳴らすとき、彼らが懸念しているのはこの点である場合が多い。

一方、世界のハッシュレートの約8%は北米のマイナーが占め、ロシア、カザフスタン、マレーシア、イランのマイナーが僅差でそれに続く。イランのHassan Rouhani(ハッサン・ローハニ)大統領は、2020年に国家的なBitcoinマイニング戦略を策定することを呼びかけた。米国による銀行を対象とした制裁の下においても、この金融システムにおけるイスラム国家の影響力を強めることが目的だ。

自分たちに最も有利になるようなマイニング規制を加えている国や組織では、Bitcoinマイニングが盛んになっていく。これまで中国が優位であったのは、少なくとも部分的には、政府によるマイニング事業への補助金に依るところがあった。中国やノルウェーなどでは、Bitcoinマイナーが地元の水力発電所を利用することを奨励する補助金を出している。

ノルウェーに本社を置く60億ドル(約6500億円)規模の上場企業Aker ASA(アケル)が設立したSeetee(シーティー)の調査報告書には、こう書かれている。「マイニング事業の財務管理者は、最も安価なエネルギーの利用にこだわるであろうから、当然、その電気の利用は経済的にそれほど大きな意味がないだろう」

暗号資産マイニングをより環境に配慮したものにするためには、エネルギー源がすでに十分に活用されていない地域でマイニングを推進しようとする政治家を支援するのが一番だ。

北米に関していえば、Blockstream(ブロックストリーム)のCEOであるAdam Back(アダム・バック)氏は、300メガワットのマイニング能力を持つ同社のマイニング施設は水力発電などの産業用電源を組み合わせて利用していると話す。また、ブロックストリームは、古くなったマシンの「リタイヤメントホーム」のようなものとして、太陽光発電によるBitcoinマイニングを検討しているという。

バック氏は「太陽光発電を利用する場合、もし50%の時間しか稼働しないのであれば、コストを分析して検討する必要がある。機器のコストをすでに回収した後であれば、これは古いマシンの良い利用方法となる」という。

暗号資産の価格高騰により、今、Bitcoinのマイニング機器が世界的に不足している。需要が供給を上回っており、マシンの製造には1台あたり最大6カ月を要しているとバック氏は付け加えた。コンサルタント会社MMH Blockchain Group(MMHブロックチェーングループ)の創設者であるEmma Todd(エマ・トッド)氏によれば、この不足によりマイニングマシンの価格が押し上げられているという。

「例えば、2020年7月に中古市場で35~55ドル(約3800〜6000円)だったマイニングマシンのBitmain Antminer S9(ビットメインアントマイナーS9)が、今や275~300ドル(約3万〜3万3000円)ほどになっている」とトッド氏は言い、こう付け加えた。「つまり、新品機器や中古機器の購入を検討しているマイニング企業は、すべてではないにせよ、多くが同じような課題を抱えているということだ。世界的なチップ不足で、今後数カ月のうちに発売予定だった新しいマイニング機器のほとんどが、ほぼ確実に発売延期となるであろう」。

ド・フリース氏のような批評家は、効率的な新しいマシンを使っても、市場原理により、マイ二ング業者は電力消費量を減らすことはできないだろうと指摘する。

「より効率的なマシンがあっても、稼ぎ出す額が同じであれば、1台だけでなく2台のマシンを動かすことになるだろう」とド・フリース氏はいう。

それでも、暗号資産の価格は新しいマイニング機器を製造するよりも早いスピードで上昇しているため、再生可能エネルギーを利用する「引退した」古いマシンを使う方が、単に新しいマシンと入れ替えるよりも利益が大きくなると、バック氏は述べている。また、Bitcoinの強固なマイニングインフラは、電力を使い果たすといったことはなく、むしろコミュニティを支えることができると同氏は話す。Bitcoinのマイニング機器は、エネルギーを蓄え、売買で利益を出すことに役立つからである。

「価格が高騰する状況になればマイニング機器をオンにしたりオフにしたりできるし、緊急性や収益性が高ければ、人々のために電力を使って家を暖めることもできる。Bitcoinは事実上、電力網を支えることができる」とバック氏はいう。

一方、カナダ国境のすぐ北にあるUpstream Data(アップストリームデータ)の代表取締役Steve Barbour(スティーブ・バーバー)氏によると、伝統的な石油・ガス会社の中には、独自のBitcoinマイニング事業を密かに強化しているところが増えているという。

これは、Bitcoin経済が、スリランカやヨルダンのような小さな発展途上国の二酸化炭素排出量と同等であることを意味する。

バーバー氏は「現在大規模なマイニング事業の大半を占めているのは水力と石炭である。しかし、世界規模でみれば、天然ガスのような安価な電力にどんどんシフトしていくだろう。油田には、排出されるフレアや廃ガスを利用した安価なエネルギーがすでに存在しており、2021年は約160ギガワット(の採掘電力)が得られる可能性がある」という。

アップストリームデータは、石油会社がこれまで売却することができなかった廃棄物や低品質のガスを回収するという方法でBitcoinのマイニング機器の設置・運用を支援しており、北米で合計100件の導入実績がある。これらの企業のほとんどは、Bitcoinの批評家から否定的な意見を受けることを懸念し、マイニング事業について公表していないとバーバー氏はいう。

「確かに彼らは自社の評判に傷がつくことを懸念している。しかし、Tesla(テスラ)のような信頼できる大企業がBitcoinに関わっているのだから、そうした考えは間もなく変わるであろう」と同氏は付け加えた。

暗号資産業界においても、Bitcoinマイニングによる電力の大量消費が懸念され、さまざまなマイニング方法があちこちで試されている。例えば、Ethereum(イーサリアム)のコミュニティは、Bitcoinのエネルギー集約型のPoW(プルーフ・オブ・ワーク)モデルではなく、保有コインの割合によってネットワークを動かすPoS(プルーフ・オブ・ステーク)のマイニングモデルに切り替えようとしている。

その名が示す通り、PoWは多くの計算「作業」を必要とする。それがマイナーの行う仕事だ。難しい数学の問題を大量に解くため、コンピューターは大量の電力を必要とする。Ethereumに関して言えば、現在はPoWで運用されており、数年後に原理的にはPoSで運用されることになるのだが、日常的にアクティブなアドレス数十万で、Bitcoinの半分ほどになることもある。Bitcoinと同様、中国に施設を持つ少数のマイニング事業のプロジェクトが、Ethereumネットワークの電力の半分以上を生み出している。Ethereumの1回の取引は、米国の家庭2軒が1日に使用するエネルギーとほぼ同量のエネルギーを必要とする。

ド・フリース氏は「Ethereumのコミュニティで気に入っているのは、少なくとも彼らが問題を解決する方法を考えているということだ。気に入らないのは、彼らが数年前からそのことについて語っているのに、実際には実行できていないことである」という。

Ethereumのエコシステムは、毎年、パナマの国全体に電力を供給できるほどのエネルギーを消費している。Bitcoinと同様、Ethereumの各取引にはおいしいランチを買えるほどの電気料金がかかる。Ethereumの1日の利用者数はBitcoinの利用者数100万人の半分以下だが、両ネットワークはいずれも小さな国を動かすのに十分な電力を必要とする。暗号資産の取引はVISA(ビザ)の取引よりも多くの電力を必要とすることは明らかだ。しかし、暗号資産は単なる決済会社ではない。それは、通貨システムそのものなのだ。

Bitcoinの時価総額を、通貨供給量の値を使い、1つの国としてランク付けした場合、Bitcoinは日本に次いで5位となる。これはEthereumのようなそれに次ぐエコシステムについては考慮すらされていない。つまり、世界のBitcoin経済における電力消費量は、他のいくつかの産業化された金融システムのそれに匹敵するものなのだ。新興経済国で使われている多くのシステムと同様、ド・フリース氏が指摘するように、これは非効率的である。何百万人ものユーザーがいる中、世界中何千人ものユーザーが収入源として暗号資産に依存しているが、彼らは暗号資産のエコシステムについて概して楽観的で、技術が成熟するにつれ今より効率的になると信じている。

カナダのビジネスコンサルタントの1人Magdalena Gronowska(マグダレーナ・グロノフスカ)氏は「クリーンで進歩的な、より分散化されたエネルギーシステムへの移行において、Bitcoinマイニングはますます重要な役割を果たすと考える。マイナーは、バランスのとれた電力網や柔軟なデマンドレスポンス(需要応答)サービスを提供し、再生可能エネルギーの統合を強化することができる」と話す。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産BitcoinEthereum電力マイニング

画像クレジット:Visual China Group(Image has been modified)

原文へ

(文:Leigh Cuen、翻訳:Dragonfly)