スタートアップと大企業の協業増やし市場活性化へ、「FUNDBOARD」運営が日経と資本業務提携

写真左からケップル代表取締役社長の神先孝裕氏、日本経済新聞社常務取締役の渡辺洋之氏(日本経済新聞社提供)

投資家向けに未上場株の管理ツール「FUNDBOARD」を提供するケップルは12月4日、日本経済新聞社と資本業務提携を結んだことを明らかにした。

ケップルでは11月に日経新聞社と複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資を実施。今回のラウンドではトータルで2.7億円を調達していて、そのうち2.5億円が日経からの出資となる。ケップルにとっては4月に個人投資家から約3000万円を調達して以来の資金調達だ。

今後両社はFUNDBOARDを軸に、スタートアップ関連分野のサービス開発・運営に力を入れていく計画。具体的にはイベントの開催やFUNDBOARDの機能拡充、コンテンツの制作や配信面などで協業を進める。

一見そこまで関連性がないようにも見えるFUNDBOARDと日経はなぜタッグを組むことになったのか。今回はケップル代表取締役社長の神先孝裕氏と日本経済新聞社常務取締役の渡辺洋之氏に、協業の背景から今後の展望について話を聞いた。

スタートアップと大企業のコラボ促進で市場活性化目指す

最初にケップルのプロダクトについて簡単にだけ紹介しておこう。同社が提供するFUNDBOARDはVCや事業会社の担当者が日々行なっている、投資先の情報管理やそれに関連するコミュニケーションを円滑にするためのサービスだ(機能面などの特徴は前回の記事が詳しい)。

エクセルやドロップボックスなど複数のツールやファイルに散らばっていた投資先に関する情報を、一元管理できることが特徴。面談の内容やレポートは全て投資先ごとに紐づいて管理されるので、毎回時間をかけてファイルを探す手間なくすぐにアクセスできる。

ケップル創業者の神先氏はあずさ監査法人を経て、自身で会計事務所を設立。スタートアップの経理業務やバックオフィスの支援を手がける中で感じた「スタートアップと投資家のコミュニケーションに関する課題」を解決するべく開発したのが、FUNDBOARDというわけだ。

そんなFUNDBOARDを運営するケップルと日経がコラボした先には一体何があるのか。端的に言ってしまえば、両社が協業の先に目指すものは「スタートアップ市場の活性化と拡大」だと言えるだろう。

ケップル代表の神先氏はそのために「スタートアップと大企業の関係性を近づけること」が重要であり、それが今回日経とタッグを組むに至った理由だという。

「今後市場を広げていく上では、スタートアップに興味がある事業会社やそこで働く人たちとスタートアップの距離をもっと近づける必要がある。今まではVCが間に入って双方の関係性を支えてきた側面があるが、直接取引をしたり、コミュニケーションを取ったりできるようにしたい。そのためにはお互いの文化を理解する機会と、双方を交わらせていく役割が不可欠だ」(神先氏)

近年は大企業がオープンイノベーションの文脈でスタートアップとタッグを組んだり、CVCを通じて出資をしたり、もしくはスタートアップを買収したりと言ったニュースも頻繁に目にするようになった。神先氏によるとFUNDBOARDも大企業からの引合いが増えているそうだ。

そのような流れを加速させていくためにも、大企業とスタートアップを繋ぐ“場”が必要。「日本で最大規模の経済メディアであり、大企業とのネットワークも強く社会的な信頼性もある」(神先氏)日経は、パートナーとしてうってつけの存在だった。

日経がFUNDBOARDとタッグを組んだ理由

一方の日経にも、新しい成長を生み出すスタートアップとの関係性をより強固にしたいという思いがあったという。

「経団連銘柄ばかりを扱っているようなイメージがあるかもしれないが、日経新聞としてはスタートアップ関連の報道や事業面での連携にも力を入れていく。ただ現状ではスタートアップやVCのエコシステムまでは距離が遠く、その中にもっと踏み込んでいきたいと考えていた」(渡辺氏)

現在日経でデジタル事業をリードする渡辺氏は以前シリコンバレー特派員を務めていた経験もある人物。近年スタートアップ業界に若くて優秀な人材がどんどん流れ込む様子を受けて「今度はブームではなく、新しい流れ。だからこそ事業サイドとしてもこの中に入り込まないといけないという“危機感”もある」と話す。

同社にとってスタートアップやVCとの繋がりがあるケップルと資本業務提携を結ぶことは、そのとっかかりとなるだろう。

少し余談になるけれど、日経とスタートアップの取り組みと言えば、8月に発表されたコンテンツプラットフォーム「note」を運営するピースオブケイクとの資本業務提携が記憶に新しい。noteの場合は日経とのシナジーもイメージしやすいけれど、未上場株の管理ツールであるFUNDBOARDと日経がタッグを組むと聞いて、個人的には少し意外だった。

渡辺氏にそんなことを話してみると、C(コンシューマー)向けかB(ビジネス)向けかの違いはあれど「根本にやりたいこと自体はどちらも近しい」という答えが返ってきた。

「noteとの協業は個人がメディア化して、世に出ていく動きを支援したいという思いがあった。イメージとしてはインディーズのヒーローが出てきた時に、メジャーレコードへ後押しするようなものだ。今回もそれと近しく、良いものを早く見つけてきて(次のステージへと)押し上げる、触媒のような存在を目指したい。それがデジタル時代のメディアの役割だと考えている」(渡辺氏)

実力やポテンシャルがあるものの、まだ世に広まっていない人や企業に対して、より活躍できるような“場”を作り支援する。noteの場合はそれが個人であり、今回の場合はスタートアップ。対象の違いはあるけれど、担いたい役割自体は共通しているようだ。

ファンドの利害関係者の実務を効率化するマネジメントツールへ

そんな両社は今後、具体的にどのようなことに取り組むのか。

最初はスタートアップ関連のイベント開催を通じてコミュニティを活性化することから始め、ゆくゆくはFUNDBOARDのサービス拡充やコンテンツの制作・配信面での協業も検討していきたいという。

FUNDBOARD単体では年明けを目処にコンバーティブル・ノートやコンバーティブル・エクイティといった近年増加している資金調達手段にも対応していく予定。19年春にはスタートアップ版もローンチする計画だ。

もともとはスタートアップと投資家双方が抱える情報共有や情報管理、コミュニケーションに関する「小さな課題を解決するためのもの」としてFUNDBOARDの構想が生まれた。

そこから約2年、実際にユーザーに使ってもらう中で描く未来が大きくなり、今は「ファンドの全ての利害関係者の実務を効率化する『ファンドマネジメントツール』」への拡張を目指しているという。

「長期的には日本でスタートアップに入社をしたり、スタートアップと仕事をすることを当たり前にしていきたい。その上でスタートアップの株主管理が簡単になり、投資を受けやすくなり、事業がよりグロースする。ケップルではそのような世界観の実現を目指したい」(神先氏)

新社名は「Dynabook株式会社」、“シャープのPC”が復活

eng-logo-201512月3日、「dynabook」ブランドでPCを展開する東芝クライアントソリューション(TCS)は、シャープによる買収後はじめての記者会見を実施。2019年1月1日より新社名を「Dynabook株式会社」に名称変更すると発表しました。

TCSは2016年4月に東芝のPC事業を引き続ぐ形で発足した企業です。今年2018年10月、東芝はシャープに同社株式の80.1%を譲渡。会長にシャープの石田副社長が就任し、シャープグループ入りにしました。

関連記事:
シャープ、東芝PC事業買収を正式発表。商品・ブランドは継承

2018年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2018」では、シャープブースの中で製品を展示するなど、TCSは東芝ブランドを冠しながらも、シャープの一部として経営されています。

Engadget 日本版からの転載。

Shopify:ブラックフライデー・サイバーマンデーの売上が1.7千億円超で過去最高

カナダ発ECプラットフォームShopifyの日本法人

Shopifyによると「売り上げの18.54%は越境ECによるもので、 インターナショナルで販売するサイトへの影響が伺える」とのこと。約175ヵ国の60万以上の企業をサポートし「国内外に関わらずにオンライン販売を手軽に始められる」ことをウリにしているShopifyならではの結果となっているのではないだろうか。

ちなみに、最も売れカテゴリはファッション・アクセサリー関連で、 60万点近くのトップス、 30万点近くのコートとジャケット、 そして20万点の靴がブラックフライデーの金曜日だけで購入された。 今年の傾向として、特に人気が上がったアイテムはブレスレットで、 14万点が購入されたそうだ。

なお、昨年と同様にモバイルでの買い物が大半を占めており、約66%はモバイルによる購入だった。

Shopifyは2017年末に日本市場への参入を果たし、この国でも徐々に存在感を高めつつある。今年の8月にShopify Japan Country Managerのマーク・ワング氏を取材した際には「ドメスティック・グローバルのどちらの販売においても最も優れたプラットフォームになることを目標にしている」と話していた。今後、国内ショップの越境ECがさらに加速することを期待したい。

建設職人向け情報サイト「職人さんドットコム」が1.45億円を資金調達

IT活用が遅れているといわれ続けてきた建設業界だが、多くの人・モノ・金がかかわる業界だけあってこの数年、仕事の受発注マッチングアプリ「助太刀」や写真管理アプリ「Photoruction」など、スタートアップの動きが活発になった分野でもある。

そんな中で、建設職人向けの情報サイト「職人さんドットコム」を運営する職人さんドットコムは、2006年3月設立と界隈の中では“老舗”と言える企業だろう(何しろTwitterと同じ年の設立だ)。同社は12月3日、大和企業投資、サムライインキュベート、三菱UFJキャピタル、みなとキャピタルを引受先として、総額1.45億円の第三者割当増資を実施したと発表した。

2006年の創業当初は、建築業界向けにホームページ作成サービスを提供していた職人さんドットコムだが、2013年4月に職人のスマートフォン向け情報発信サービスとして、自社サイト運営を開始。創業者で代表取締役の猪澤幸男氏が、職人として働いていた時代に建設現場で感じた「情報不足」「情報化の遅れ」を解消し、職人が働きやすい現場を実現したい、という思いから、情報流通の場として運営してきた。

2018年5月にサイトをリニューアルし、現在は求人情報や、プロ向け資材・工具のショップ検索、工具・資材のメーカー検索などのサービスを、職人向けに無料で提供。また、2017年からスタートした「工具防犯登録」では、電動ドリルやレーザー測定器など、高額なプロ工具の盗難を防ぐための防犯登録システムを提供する。

同社では資金調達により、工具防犯登録システム、サービスの拡充に向けた社内体制の強化や、職人向けSNSなどの新事業展開のため、マーケティングや人材採用、セキュリティ強化などへ投資を行うとしている。

オープンソースの貢献者が報われる文化を——報賞金サービス「IssueHunt」運営が1億円を資金調達

オープンソースプロジェクトの多くは、コードの改良(メンテナンス)を行うメンテナーの無償の働きにより維持されている。世界中のIT企業がオープンソースを利用して開発を行っているにもかかわらず、そのことは称賛されるどころか、あまり意識されることもない。なんなら「いいコードが“無料”で“落ちていた”」という扱いを受けていることさえある。

「世の中へ素晴らしい貢献をしてくれている彼・彼女らに、何か恩返しができないだろうか」オープンソースプロジェクトの貢献者へのこうした思いから、報賞金サービス「IssueHunt(イシューハント)」がリリースされたのは、今年6月20日のことだ。

そのIssueHuntを運営するBoostIO(ブーストアイオー)が12月3日、総額約1億円の資金調達を実施したと発表した。第三者割当増資の引受先は、ベンチャーキャピタルのANRINOWと以下の個人投資家たちだ。

  • LayerX CEO 福島良典氏(Gunosy 元CEO)
  • DMM.com CTO 松本勇気氏
  • Increments 代表取締役 海野弘成氏
  • 中川綾太郎氏
  • 古川健介氏
  • メルカリ 木下慶氏
  • Progate 代表取締役 加藤將倫氏
  • Cryptoeconomics Lab Co-founder CTO 落合渉悟氏
  • 非公開1名

IssueHuntは、GitHubのリポジトリ(プロジェクトのデータベース)に上げられたイシュー(課題、バグ報告など)に対して、誰でも好きな額を報賞金として「投げ銭」できるサービスだ。リポジトリのオーナーは自分が管理するリポジトリを指定することで、IssueHunt上にイシューを自動的にインポートすることが可能。ソースを利用するユーザーに投げ銭を依頼したり、コード改良などの貢献を求めたりできる。

報賞金付きのイシューに対して改良を行ったユーザー(コントリビューター)がプルリクエスト(レビュー・反映依頼)を行い、コードレビューを経て反映が完了すると報賞金がもらえる。金額のうち10%をBoostIOが手数料として、20%をリポジトリのオーナーが受け取り、残りの額をコントリビューターが受け取ることができる。

リリース後半年ほどだが、既に150カ国以上のユーザーがIssueHuntを利用。Alibabaの有志が開発するAnt Designや、もとはIntelで開発されていたNW.js(node-webkit)、Googleのマテリアルデザイン実装のためのReactコンポーネントを提供するMATERIAL-UIといった有名なオープンソースプロジェクトも参加している。

BoostIO代表取締役CEOの横溝一将氏は「有名プロジェクトの参加が信用の担保になっている」と好調の理由を分析。現在、約90%が国外のユーザーであり、また自分でオープンソースソフトウェアを開発するような、レベルの高いユーザーが多いそうだ。

オープンソースの世界でも開発者の貢献に応える文化を作る

“オープンソースのメンテナーたちは疲れ果てて、支払いを受けることも稀である。新世代にむけて経済を変えていこう。”
TechCrunch Japan記事「オープンソースの持続可能性」より

横溝氏はこの記事の内容に触れ、「共感しかない」とコメント。「オープンソースの環境は持続可能性に欠ける。無償ボランティアを超えて、貢献者に報酬が行き渡らないと続いていかない」と述べている。

「オープンソースソフトウェアの多くが無償のボランティアで作られている。でもそれらのソフトウェアは、いつの間にかあった、とか、機械が自動的に作っている、というわけではなくて、誰かが時間を使って、クリエイティビティや労働力をつぎ込んでいるんです」(横溝氏)

横溝氏は2014年、大学在学中に福岡で起業した。当初は受託でシステム開発を行っていたが、2016年4月にプログラマ向けのEvernoteライクな開発アプリ「Boostnote(ブーストノート)」を公開。このBoostnoteを2年ほど、オープンソースで運用したことが、IssueHunt誕生のきっかけとなった。

Boostnoteはプログラマのためのノートアプリであり、200以上の国と地域で使われているが、そのプロダクトは開発者コミュニティに支えられている。「コミュニティでイシューを上げて改修してもらうことで、とてもよいプロダクトになった」と横溝氏は言う。

今ではコアチームが開発に関わることはほとんどなく、コミュニティ主体で運営が行われているBoostnote。その体験から「貢献者にお返しができていないことを、心苦しく思っていた」と横溝氏はいう。そのBoostnoteの貢献者のために作られた報賞金プログラムが、IssueHuntの原型だった。

報賞金プログラムを開始して1週間で、レビューが追いつかないほどのプルリクエストが届くようになったというBoostnote。「これはオープンソースのエコシステムが抱える課題を解決できるのでは」との考えから、IssueHuntがスタートすることになった。

IssueHuntに登録されているプロジェクト数は、今は数百程度で、横溝氏は「まだまだ」とさらなるサービス浸透を狙う。

「IssueHuntは、オープンソースソフトウェア開発者の貢献に応える、という文化を作っていくプロダクト。だからそう簡単には利用は拡大しないとは思っているけれども、どんどん参加を増やしていきたい。1年半後には、オープンソースの開発者なら誰でも聞いたことがあるサービスに、3年後には、みんなが使っているという状況を目指したい」(横溝氏)

横溝氏は、日本のオープンソース環境についても課題感を持っている。「オープンソースプロジェクトに貢献する開発者が少ない。その理由のひとつは英語力。でも意外と壁は高くないんです。それを開発者に伝えるのも我々の務め。ミートアップや学校と連携したハッカソンなどを開催していこうと考えています」(横溝氏)

オープンソースへの貢献が少ない、もうひとつの理由として横溝氏は「隠したがること」とプログラミング文化、意識の違いを挙げる。「組織に所属するエンジニアなどは特にそうだが、隠しておく方が自分や組織のためになる、得をする、という考えが強い。これについてもオープンソースのメリットを啓蒙して、IssueHuntが先駆者となる開発者を作る土台になれば、と思っています」(横溝氏)

そうした啓蒙の取り組みの一つとして、12月1日からスタートしたのが、オンラインイベント「IssueHunt Fest 2018」だ。世界中のオープンソースプロジェクトを対象に、IssueHuntを通じてスポンサードを12月25日までの約1カ月間行う。

「企業のオープンソースに対する寄付貢献を一般化したい」ということで、今回初めて開催されるイベントだが、Microsoft、LINE、メルカリ、Framgia、Cryptoeconomics Labをはじめとした企業がスポンサーとして参加。今後、毎年12月・4月の約1カ月、それぞれ定期的に実施していく予定だという。

参加した開発者には、貢献度に応じて、例えば「プルリク3件以上でステッカーを送付」とか「上位10人にはTシャツをプレゼント」といった特典も予定されているそうだ。

海外では、オープンソースであっても商用ユーザー向けにはライセンスが発行できるというサービス「License Zero」や、プロジェクト支援のプラットフォーム「Open Collective」などが既に提供されている。「企業がオープンソースに寄付をするという文化がある。それを日本にも根付かせたい」と横溝氏は話している。

さらに横溝氏は、JavaScriptコンパイラのBabelなど、現在は世界中でも片手ほどしかいない専業のオープンソース開発者を「1万人ぐらいにしたい」と意気込みを語る。「開発者が、オープンソースへの貢献だけでも生活が担保されるようなきっかけを作りたい」と述べている。

「BoostIOのミッションは“才能だけで正当な評価が行われるようにする”こと」そう話す横溝氏。今回の調達資金は「マーケティングなどへの投資ではなく、オープンソースを持続可能にするためのチャレンジに使う」という。

「投資というよりは、コミュニティに還元したい。世界中でカンファレンスを開くことも考えていて、2019年4月にも開催を予定している。またBoostIOのチームは世界中に散らばっているので、世界で採用を進めるつもり。例えばオープンソース専業の開発者を企業として雇用する、といったことも考えている」(横溝氏)

「日本企業がオープンソースを支えるためにお金で貢献できるような文化を作る。オープンソースに貢献する会社がクールだと思われ、それが当たり前だと思われるような文化にしたい」と横溝氏は語る。

BoostIO代表取締役CEOの横溝一将氏

1日70円の傘シェアリング「アイカサ」が正式公開、渋谷中心に約50箇所からスタート

1日70円で傘を使用できる“傘のシェアリング”サービス「アイカサ」。約1ヶ月前に詳しく紹介したこのサービスが、本日12月3日に正式リリースを迎えた。

まずは渋谷を中心とした約50箇所のアイカサスポット(傘を借りたり返したりするスポット)からスタート。このスポットであれば今日から70円で傘シェアを試すことができる。

アイカサはiOSやAndroidのアプリではなく、LINEを通じてスポットの検索や傘のレンタル、決済などを行えるサービスだ(いわゆる“ミニアプリ”)。ユーザーはまずLINEでアイカサのアカウントを友達に追加し、トーク画面の「傘を借りる」ボタンを押して最寄りのアイカサスポットを探す。

マップ上に表示されるアイカサスポットをタップすると、傘シェアの利用可能時間のほか、定休日や現在設置されている傘の本数などを確認することが可能。お気に入りのスポットを見つけたら現地に向かい、傘のダイヤルロックを解錠して使用する。

傘の解錠や返却にはアプリに表示されるQRスキャナーを活用。解錠時は傘のQRコードを読み取り鍵の番号をチェックし、返却時にはスポットに設置された傘立て本体などに記載されたQRコードを読み込んで返却処理を行う。

利用料金は1日70円。返却しない場合は1日ごとに70円が加算される仕組みだ。ただし1ヶ月の上限が420円になっていて、それ以上は追加で加算される心配もない。なお同日中であれば2回目以降も追加料金なしで何度でも利用OK。決済にはアプリに事前登録したクレジットカードを用いる。

11月1日にプロダクトの情報を正式に公開し、11月30日時点で事前登録者数が1000人を突破。アイカサスポットも日々増えていっているようで、サービスリリース時点では渋谷を中心とした約50箇所が登録されている。

具体的にはカラオケの鉄人(渋谷センター街店や道玄坂店のほか、恵比寿や新宿など6店舗)や映画館HUMAX渋谷店、世界で2番めに美味しいメロンパンアイスなどの店舗に加えて、いちご株式会社ビル(渋谷周辺5棟)やアットビジネスセンター(渋谷駅周辺2店舗)といった場所も加わった。

今回オフィスビルもいくつか含まれているが、これとは別にコワーキングスペースやオフィスへの導入についても話が進んでいるそう。社名は非公開ながら、ある企業とは試験的に法人向けプランに取り組む計画だ。

法人プランの場合は社員数などに応じて企業が月額で固定の料金を支払い、従業員は自由にアイカサを使える。通常のアイカサスポットに加えて自社オフィスでも傘のレンタルができる仕組みを考えているという(自社オフィスは一般ユーザーには表示されない)。

また新たな取り組みとして、今後「アイカサクーポン」や「アイカサスコア」といった機能もリリースする計画だ。

アイカサクーポンは商業施設がシェア傘を「既存顧客の利便性を高めるツールとしてだけでなく、新たな顧客にリーチするきっかけ」として活用できる仕掛け。同サービスのユーザー限定で提携店舗のディスカウントを受けられるクーポンをアイカサ上で配信していく。

もうひとつのアイカサスコアは、近年注目を集める“クレジットスコア(信用スコア)”のような機能だ。アイカサを綺麗に返す、傘の不具合を報告するなどアイカサに関する行動をアイカサスコアに反映。スコアに応じてお得にアイカサを利用できる仕組みを取り入れる予定だという。

誰もが簡単に輸出入できる世界を目指す「Shippio」正式版リリース、1.9億円の調達も

B2B国際物流のクラウドサービス「Shippio」は12月3日、第二種貨物利用運送事業者の許可を取得し、サービスを正式版としてリリースしたことを発表した。これにより、既存のウェブ上の見積もりと輸送管理機能に加え、物流事業者として輸出入の荷主から「荷物を預かって運べる」サービスとなる。

またShippioはプロダクトの正式リリース発表と同時に、プレシリーズAラウンドで1.9億円の資金調達を完了したことも明らかにしている。

2016年6月設立のShippio(旧社名サークルイン)は同年8月にアクセラレータープログラム「Code Republic」に採択され、YJキャピタル、East Venturesからの出資を受けた。その後、500 Startups Japan、YJキャピタル、East Venturesを引受先として、2017年5月に数千万円規模の資金調達を実施

今回の資金調達はそれに続くもので、500 Startups Japanグロービス・キャピタル・パートナーズDBJキャピタルYJキャピタルEast Venturesのほか、個人投資家2名が第三者割当増資の引受先となっている。

Shippioは設立以来「輸出入の取引をもっと身近に」することを目指して、国際物流手配の自動化、クラウド化に取り組んできた。

Shippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏は「物流はサプライチェーンが長く、関わるプレイヤーが多い業界」といい、前回調達からの動きについて「デジタルによる効率化をどこからスタートする(のがより効果的)か、検討してきた」と振り返る。

国際物流のプレイヤーは、出荷を行うシッパー(荷送人・荷主)、実際の運送を行うキャリア(運送事業者)、そして荷主から荷物を預かり、キャリアを手配して、シッパーとキャリアの間で運送を取り次ぐフォワーダー(貨物利用運送事業者)の大きく3つに分かれる。

Shippioは2017年8月、フォワーダー向けにオープンベータ版を公開。2018年6月には輸出入の荷主向けにも「WEB取次サービス」をリリースし、見積取得・依頼機能の提供を開始した。

ベータ版ユーザーは、中国、東南アジア、ヨーロッパとの間で、EC商品や家具、加工食品、日本酒、ワインなどさまざまな商品の輸出入取引を、海上・航空貨物の両方で行っている。深圳の工場から部品を指定の倉庫へ運送したり、フランスからワインを輸入したり、といった例があるそうだ。

ベータ版運用の感触について、佐藤氏は「利用者にはスタートアップも多い。すると小口貨物での利用が多いので『航空貨物だと高そう』といって船便にすることも多いのだが、比べてそうしているわけではなかったりする。船便会社も航空便のレートを知らないし、航空便の会社も船便のレートは知らない。Shippioは両方の数字を持っているので、本当に最適な輸送ルートの提案ができた」と話している。

また「国をまたぐ輸送を誰に頼めばいいのか、わからないというユーザーも多く、間口を広く持つのは重要だなと感じた」とも述べている。

このベータ版から、「間口を広く」して、誰もが輸出入の運送を頼める正式版サービスができるまでに、Shippioにはひとつ壁があった。Shippioを各国との輸出入手続きをドア・ツー・ドアで行えるサービス、すなわち「荷物を預かって運べる」サービスとするためには、フォワーダー(貨物利用運送事業者)としての許可を国土交通省から得る必要があったのだ。

佐藤氏によれば「スタートアップに外航運送の領域で免許を与えるという事例が、国土交通省にとっても新しいものだった」とのこと。「いろいろとヒアリングや交渉、調整を進めてきた」結果、第一種貨物利用運送事業者の登録と第二種貨物利用運送事業者の許可取得ができたという。

既存の見積もり取得、輸送管理のプラットフォームとしてだけでなく、物流事業者として実際に輸出入貨物が扱えるようになったことで、ユーザーはShippioに輸送依頼の発注ができ、また同じプラットフォーム上で輸出入の煩雑な手続きや管理を一元化することが可能になった。

輸送手段(船舶・航空など)の選択画面。

ステータス管理画面。

海外では、テクノロジーを活用した国際物流「デジタルフレートフォワーディング」のサービスとして、Flexportなどが既にあるが、今回の許可取得で「日本でも、見積もりからオペレーションまで一貫して、デジタルフレートフォワーディングのサービスを提供することができるようになった」と佐藤氏は話す。

調達資金の使途について、佐藤氏はその「オペレーション」の強化を進めると述べている。「物流事業にはオペレーションが必要。例えば船便やトラックの手配、輸出入業務に不慣れな顧客への対応など、数多くの業務がある。デジタルフレートフォワーディングの初期立ち上がりに必要な体制を作っていく」(佐藤氏)

また、プロダクトとしてのShippioについてもさらに機能を拡充していく、と佐藤氏。「安心してウェブで法人向けの貨物を国際輸送できる仕組みづくりを行う」と話している。「物流は建築業などと似ていて、大マーケットである一方、関係者が多いためにデジタル化が進まなかった分野だ。人手不足が進んでいる中で、やり方を変えていかなければ」(佐藤氏)

Shippioのメンバーと投資家。前列左から3人目がShippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏。

ムーミン谷を彩るチームラボのテクノロジー

チームラボ森と湖の光の祭

本日12月1日(土)から2019年3月3日(日)の約3カ月間、埼玉県飯能市にあるメッツアビレッジにて「チームラボ森と湖の光の祭」が開催されている。開催時間は、2月11日(月)までは17時30分~21時(最終入場20時)、2月12日(火)~3月3日(日)までは18時~21時(最終入場20時)の時間帯となる。

期間は12月1日(土)から2019年3月3日(日)の約3カ月間

メッツアビレッジは、周囲約2kmの宮沢湖を囲む埼玉県立奥武蔵自然公園の一部で、11月9日にオープンしたばかりの北欧をテーマにした施設。西武池袋線飯能駅北口からバスで約12分、JR八高線・東飯能駅からバスで約10分の場所にある。なお一部のバスではSuicaやPASMOなどの交通系ICカードや高額紙幣が使えないので1000円札や小銭の用意が必要だ。

飯能駅北口からは直通バスが出ている。料金は200円。武蔵高萩駅行きはメッツアを経由するがICカードが使えないバスが多いので注意

入場は無料で、北欧雑貨のほか、地元の野菜が販売されているほか、ワークショップやイベントなども随時開催されている。レストランエリアもあり、都内でも有名な「らーめんAFURI」や埼玉県内で有名な食品加工メーカーである「サイボク」(埼玉種畜牧場)の直営店もある。フィンランドのコーヒーチェーン店で関東初展開となる「ロバーツコーヒー」も出店している。

アート展示に合わせた特別メニューも用意されている

チームラボ森と湖の光の祭は、このメッツアビレッジを中心に展開されるインタラクティブな光のアート空間。入場料は、中学生以上が平日1000円/土日祝1200円、4歳以上で小学生以下はそれぞれ半額、3歳以下は無料だ。チケットは、ローソンやミニストップのほか、西武沿線の主要駅で購入できる。12月14日からは西武沿線各駅の駅ナカコンビニ「トモニー」での入手可能だ。なお、前述のようにメッツアビレッジ自体への入場は無料なので、建物内のレストランなどから光の流れを眺める場合は無料で楽しめる。

浮遊する、呼応する球

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エリアは主に3つに分かれており、カフェなどが併設されている宮沢湖湖畔のエリアが「浮遊する、呼応する球体」。ここにはヘリウムが充填されたバルーンが浮遊しており、それぞれがさまざまな色の光で輝いている。このバルーンを少し強く手で叩くと、音とともに発光色が変わり、そのバルーンを起点にほかのバルーンにも同じ色が伝播していく。

自立しつつも、呼応する生命

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メッツアビレッジの中心エリアから宮沢湖畔を半周回ったところのエリアが「自立しつつも、呼応する生命」。発光色が変化する仕組みは「浮遊する、呼応する球体」と同じだが、このエリアのバルーンは一部が湖上に浮いているのが特徴。バルーンは湖畔から湖上に向けて扇状に配されているいるので、扇の手元部分にあたるバルーンを強く叩くと、瞬く間に湖上のバルーンの色が変わる様が圧巻だった。

たちつづけるものたちと森

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さらに湖畔を進むと「たちつづけるものたちと森」がある。ここにはさまざまな大きさのバルーンが密集しており、まるで迷路にようにバルーンや書き分けながら奥へと進めるようになっている。奥には大人の身長よりも大きなバルーンも設置されていた。バルーンの密集度が高いので、複数人でバルーンを叩くとさまざまな色が混じった幻想的な雰囲気になるのが印象的だった。

チームラボの猪子寿之氏(左)と、ムーミン物語の渡邊基樹社長(右)

ムーミン物語の渡邊基樹社長によると、メッツアビレッジには11月9日からのオープン2日間で1万人程度が入場するなど、想定以上の来場者を集めたとのこと。そして12月1日からは、チームラボさんのアート作品の展示によってより多くの来場者が訪れることを期待したいとのことだ。なお、原作者であるトーベ・ヤンソンが描くムーミン物語の世界感

またチームラボの猪子寿之氏は、素晴らしい森と湖と調和したアート作品に仕上げたいと思った。球体だけでなく森の木々などの色も変わっている様に注目していほしいとのこと。宮沢湖の湖畔は2キロ以上あり、チームラボとしては最長のアート作品とのこと。さらに、チームラボが湖を使ったアート作品を手がけるのは初めてだそうだ。

Toyotaの人型ロボットT-HR3はDocomoの5Gで遅延のないリモコンができる

ToyotaがT-HR3を世界に披露したのは、昨年のちょうど今ごろだ。このヒューマノイドロボット(人型ロボット)は、“Pacific Rim”など、いろんなSFシリーズに出てくる半電動の人の動きを模倣できる。このロボットはこれまでの1年間でいくつかの新しい芸を学んだが、中でもすごいのは、コントローラーをケーブルでつながずに、5Gからコントロールできることだ。

その次世代ワイヤレス技術を使って操縦者は、最大10キロメートルの遠距離からロボットをリモコンできる。ただしプレスリリースとその画像ではそうだが、デモはケーブルを付けたロボットで行われた。しかし日本のキャリアDocomoの5Gを使うと、遠距離からこのロボットを、低いレイテンシでコントロールできる。

でもこんなロボットが、小さな怪獣をやっつけること以外の、何の役に立つのだろうか? Toyotaがねらっているのは、家庭用とヘルスケアだ。同社は、“モビリティによってより豊かになる社会”をビジョンしている。

しかしこれは、ロボット本体だけでなく、次世代ワイヤレス技術‘5Gで何ができるか’のデモとしても優れている。今や世界中のネットワーキング企業が、スマートフォンやコンピューターを超える、5Gならではの新しい技術機会を探している。来年初めに東京で行われるDocomoのイベントには、このロボットも当然‘出演’する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

利回り平均値5%の貸付型クラウドファンディング運営、クラウドクレジットが7.5億調達

貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)を運営するクラウドクレジットは11月30日、マネックスベンチャーズ、YJキャピタル、ソニーフィナンシャルベンチャーズ、グローバル・ブレイン、SBIインベストメントなどを引受先とする第三者割当増資により7億5000万円を調達した。同社は2018年9月にも資金調達を発表しており、それと合わせた調達金額は8億8000万円となる。

クラウドクレジットは、日本の一般ユーザーから資金を募り、その資金を海外の事業者に貸し付ける貸付型クラウドファンディングを運営するスタートアップだ。クラウドクレジットは「シンガポール広告代理店ベンチャー企業支援ファンド」、「メキシコ女性起業家支援ファンド」などのミニファンドを企画し、そこに資金を拠出する投資家を日本の個人ユーザーから募集。投資家は1口1万円からファンドに応募でき、事業者への貸付けによって得られる金利分をリターンとして受け取る。

クラウドクレジットのファンドはロシアルーブル、メキシコペソ、ブラジルレアルなどの新興国通貨で運用されることが多く(為替ヘッジ付きのコースもある)、ユーザーは比較的高い為替リスクを負う分、高い利回りを見込むことができる。クラウドクレジットが発表している統計によれば、2014年6月から2018年8月までに運用したファンドの利回りの平均値は5%程度だったという。

クラウドクレジットはこれまでに3万1000人のユーザーを獲得し、累計出資金額は148億円以上、運用残高は106億円にのぼるという。同社は今回調達した資金を利用して、マーケティング施策、システムセキュリティ、コーポレートガバナンスの強化を図り、新機能の開発にも取り組む。また、今回のラウンドに参加したマネックスグループを始めとする投資家との協業の可能性についても検討する。

2024年、動画広告の国内市場規模は約2.6倍の4957億円にーーサイバーエージェント発表

サイバーエージェントは11月30日、インターネット広告業界に特化した研究機関のオンラインビデオ総研とデジタルインファクトと共同で、国内動画広告市場の動向をまとめた調査結果を発表した。

同レポートによれば、2018年の動画広告市場は昨年対比134%の1843億円に達する見込みだ。デバイス別でみると、その成長を牽引しているのはスマートフォン上の動画広告。スマートフォン向け単体の市場規模は1563億円と昨年対比143%の成長を遂げ、市場全体の85%を担う。一方のPC向けは280億円と推計されている。

動画興国市場の市場規模は今後も順調に成長すると見られており、2020年には2900億円、2022年には4187億円、2024年には4957億円に達する見込みだ。サイバーエージェントは同レポートにおいて「大手広告主を中心に自社製品・サービスのブランディングを目的にした動画広告の出稿が定着、その需要は引き続き増加傾向が見られる」とコメントしている。

次に広告フォーマット別の市場規模を見てみよう。同レポートによれば、2018年の市場規模全体に占める割合が一番大きいのは756億円の市場規模をもつインストリーム広告(動画プレイヤー内で配信されるタイプ)だった。次に大きいのはインフィード広告(コンテンツ間に表示される動画広告)で703億円だ。今後も市場規模全体は成長していくものの、この傾向は変わらず、2024年におけるインストリーム広告とインフィード広告の市場規模は、それぞれ2083億円、1784億円になる見通しだ。

同レポートでは、インストリーム動画広告の動向について「縦型フォーマットの提供が本格的に検討されるなど、ユーザーの動画視聴行動に最適なフォーマット提供に向けた研究や商品の開発が進んだ。また、ゲームやコミックなどのアプリケーション内で提供される動画リワードなどの広告フォーマットの需要も拡大した」とコメントしている。

ITで“牛群管理”をスマートにするファームノートが4億円を調達

酪農・畜産向けのIoTソリューションを提供するファームノートホールディングスは11月30日、リアルテックファンドなど複数の投資家より総額4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社では今回の調達を踏まえてクラウド牛群管理システム「Farmnote」や牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」の拡大を目指す方針。特に北海道・九州エリアにおける顧客基盤の強化を進めるほか、獣医学分野での研究開発を加速させる計画だ。

ファームノートについては2017年3月に産業革新機構や全国農業協同組合連合会らから5億円を調達した際にも紹介しているけれど、その前後で複数回の資金調達を実施。今回も含めると累計の調達額は17億円になる。

なお今回ファームノートに出資した投資家陣は以下のファンド、個人投資家などだ。

  • リアルテックファンド(1号ファンド、2号ファンド双方)
  • 北海道成長企業応援ファンド
  • 北洋SDGs推進ファンド
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ
  • みやぎん地方創生2号ファンド
  • かごしまバリューアップファンド
  • DGインキュベーション
  • D2 Garage
  • リバネス
  • 小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)
  • 長沼真太郎氏(BAKE創業者)
  • 千葉功太郎氏

ファームノートが展開するFarmnoteは、PCやタブレット、スマートフォンを通じてどこからでも牛群の情報を管理・記録・分析できるクラウドサービスだ。

牧場スタッフは従来のメモ帳では無くFarmnoteのノート上で「発情」や「種付」など個体情報を記録。すると記載された活動を基に発情などの繁殖予定や牛群の移動履歴、預託状況などが個体ごとに自動で整理される仕組みになっている。

牛の一生がストーリーとしてタイムライン形式で記録されていくため、過去の履歴を振り返るのもスムーズ。ノートに入力されたデータから種付後の妊娠鑑定や分娩予定日のカレンダーを自動で作成する機能なども搭載されている。

2017年からはリアルタイムに牛の活動情報を収集できるウェアラブルデバイスFarmnote Colorの提供もスタート。Farmnoteと連携することでより高い精度で個体情報を管理し、異常検知できる仕組みを整えた。

現在ファームノートの売上成長率は過去3年で約30倍に伸びていて、同社のサービスを2700件の農家が導入。契約頭数は27万頭に上る(日本の飼養頭数は390万頭とのこと)。

同社では今回の資金調達を機にさらなる成長を目指す方針。特に顧客層が集中する北海道・九州エリアで地銀と協業し、IoTソリューションの普及を促進する。

また2016年8月に設立した農業への人工知能とIoT活用の研究組織「Farmnote Lab」の活動も加速させる計画。リアルテックファンドとリバネスからの支援を受け、獣医学分野での研究開発に力を入れるという。

LayerXと日本マイクロソフトがブロックチェーン分野で協業へ、導入コンサルから実装までをサポート

ブロックチェーン関連事業を展開するLayerX(レイヤーエックス)と日本マイクロソフトは11月30日、ブロックチェーン分野において協業を開始することを明らかにした。まずは共同で企業へのブロックチェーン導入コンサルティングや開発支援などのサポートを行う計画だ。

日本マイクロソフトではMicrosoft Azureベースのブロックチェーンプラットフォームの提供や、エンタープライズ市場におけるブロックチェーン導入企業の開拓を支援。一方のLayerXはブロックチェーン技術を導入するためのコンサルティングや設計、開発など技術面のサポートを担当する。

近頃はTechCrunch Japanでもブロックチェーンに関連するニュースやコラムを紹介する機会が増えてきたけれど、企業のブロックチェーン技術の活用や導入に対する関心度も徐々に高まってきている。

そのニーズに応えるべく日本マイクロソフトでは2016年よりMicrosoft Azure上でブロックチェーンインフラの構築支援をするBaaS (Blockchain as a Service)の提供をスタート。NasdaqのNasdaq Financial Framework (NFF)など、すでに国内外で多くの利用実績がある。

一方のLayerXはGunosyとAnypayのジョイントベンチャーとして8月に設立されたスタートアップだ。同社の代表取締役社長を務めるのはGunosy創業者でもある福島良典氏。ブロックチェーン領域に特化して複数の事業を展開し、ブロックチェーン技術の研究やシステムの開発、導入コンサルティングなどを手がけてきた。

今回の協業は国内でブロックチェーン技術の社会実装が加速している状況を踏まえた取り組み。日本マイクロソフトのインフラ基盤とLayerXの技術開発力を掛け合わせることで、企業がブロックチェーン技術を導入する際のプロセスをトータルでサポートする。

「(ブロックチェーンを)どのような領域でどのように活用したらいいか分からない」という企業も多い中で、顧客の事業ドメインやサービスの特性を考慮してブロックチェーンに向いている領域を見つけるところから、BaaSを活用した開発の技術支援まで行う予定だ。

これに限らず、今後両社ではブロックチェーン技術の普及に向けた施策を検討していく方針。「様々な業種でのブロックチェーン技術の実装を推進することで、人々の生活や働き方のトランスフォーメーション実現に向けて取り組みます」としている。

駐車場予約アプリ「akkipa」、他ユーザーよりも早く予約可能な有料会員プラン開始

駐車場予約アプリ「akippa(あきっぱ)」を運営するakippaは11月30日、会員向けサービスとして、駐車場を通常ユーザーよりも1〜3時間早く予約できる新サービス「先行予約オプション」を開始すると発表した。

akippaは、ユーザー間で駐車場を貸し借りするシェアリングエコノミー型のサービスだ。使っていない自宅駐車場やちょっとした空き地など、遊休スペースを保有する個人や事業所は、そのスペースを駐車場として貸し出すことで収益を得ることができる。一方、駐車場を探しているユーザーは、アプリから自分の目的地に近い駐車場を検索して15分単位で予約することが可能だ。

TechCrunch Japanが2018年11月に取材したところによれば、akippaの無料会員数はサービスリリースから約4年半で100万人を超えた。サービスに掲載されている駐車場の数も順調に増え、全国24000箇所となった。akippaは駐車場料金の50%を手数料として受け取り、残りの50%は遊休スペースオーナーの取り分となる。

今回発表した先行予約オプションでは、1ヶ月プラン、3ヶ月プラン、6ヶ月プラン、12ヶ月プランの4種類を用意。それぞれ月額換算で300円の値段設定となっている。このプランに申し込むと、1ヶ月プランのユーザーは通常ユーザーよりも1時間早く、3ヶ月以上のプランに申し込んだユーザーは通常より3時間早く予約できるようになる。

akippaによれば、スポーツの試合やアーティストのコンサートなどの周辺では需要が極端に高くなり、駐車場がすぐに満車になってしまうという。そういったシチュエーションでは便利なオプションとなる。

ただ、一見するとakippaが新しいマネタイズ手段として月額課金を初めたかのように思うニュースだけれど、実はそうじゃない。akippaによれば、この課金プランはマネタイズのための施策ではないと話す。

その証拠に、akippaは先行予約オプションに加入するユーザーに対し、プランの月額換算料金である300円以上のクーポンを渡す。だから、ユーザーは実質無料で利用でき、akippaの実入りもない。akippaは「休日やイベントの際など、限られたシチュエーションだけ使うユーザーも多い」と話し、そういったユーザーに先行予約というメリットを提供してプランに加入してもらい、彼らにクーポンも渡すことで日常的な利用も促したい構えだ。

AIが1秒で契約書をレビューする「LegalForce」が5億円を調達、β版は約3ヶ月で70社が導入

AIを搭載した契約書レビュー支援サービス「LegalForce」を提供するLegalForceは11月30日、ジャフコ、京都大学イノベーションキャピタル、ドリームインキュベータを引受先とした第三者割当増資により約5億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達は8000万円を調達した4月のシードラウンドに続く、シリーズAラウンドという位置付け。同社では開発体制や人材採用を強化し、正式版のリリースに向けてプロダクトの拡充に力を入れてる。

AI活用のレビュー支援と契約書データベースで法務の負担を削減

以前紹介した通りLegalForceは森・濱田松本法律事務所出身の2人の弁護士が2017年に創業したスタートアップだ。弁護士としての経験に、京都大学と共同で研究開発を進める自然言語処理技術、万単位の契約書を分析することで得た知見を統合。法務担当者の契約書レビュー業務を支援するソフトウェアを開発してきた。

メインの機能は、サービス上にアップロードされたWordの契約書を瞬時にレビューする「レビュー支援」と、契約書データベース内での「キーワードによる条文検索」の2つ。これらによって契約書に潜むリスクの判定から、条文例のリサーチまでを一括でサポートする。

実際に使う際はLegalForce上に契約書をアップロードした後に、契約書の類型や自社の立場などレビュー条件を指定する。その上でレビューを実行すると自社に「不利な条文がないか」「欠落している条項がないか」を約1秒でチェック。リスクや抜け漏れのある部分が検出されるとともに、該当する箇所の修正文例が提示される。

8月のオープンβ版リリース時には秘密保持契約(NDA)のみが対象で、レビュー結果もCSVでダウンロードする必要があったけれど、現在は業務委託契約など5類型に対応。結果もブラウザ上ですぐに確認できるようになった。

また代表取締役CEOの角田望氏の話ではレビューの精度もリリース時より向上しているそう。たとえば初期から提供していたNDAの場合、8割ぐらいだった精度が今では9割5分くらいまで上がってきているという(精度は類型によっても異なる)。

LegalForceには類型ごとにチェックリストが搭載されていて、アップロードした契約書が各項目にヒットするかどうかをAIが判定する構造。精度が8割の場合だと10個コメントが表示された時、そのうち2つが間違えているようなイメージだ。

「自分自身もレビュー業務で使ったりするが、8割の精度では『まぁまぁ間違えているな』という感覚だった。これが9割5分まであがると『基本的には大丈夫』に変わる。実際に使ってもらっている現場のユーザーからも、かなり業務が楽になったという声が多い」(角田氏)

同サービスはそもそも支援ソリューションであり、法務担当者を完全に代替するわけではなく「単純な繰り返し業務をサポートする」もの。人間のチェックとAIのチェックを合わせることで、効率的かつ抜け漏れのない契約書レビューを実現するサービスだ。

そのためAIだけでレビューが完結するわけではないけれど、精度があがることでレビュー業務全体のスピードも上がり、法務担当者がより多くの時間を他の業務に使えるような効果が生まれている。

もうひとつのキーワードによる条文検索機能は、あらかじめ過去の契約書や自社のひな形をアップローしておくことで「社内に蓄積されてきた契約書のナレッジ」を有効活用できる仕組みだ。

たとえば損害賠償に関する条項を検討している際に「損賠賠償」で検索すると、データベース内のそ雲外賠償に関連する条文を一覧で表示することが可能。従来は過去のファイルをひとつひとつ開きながら実施していたリサーチ業務の工数を大幅に削減できる点が特徴だ。

3ヶ月で大手企業や法律事務所など約70社が導入

オープンβ版の提供を始めてから約3ヶ月で大手企業や法律事務所を含む約70社が導入(2018年11月時点)。業界問わず、特に上場企業など法務部の専任スタッフが複数名いる規模の企業での活用が進んでいるという。

「特に大企業の法務部ではグローバル展開に向けた海外のリーガルサポートや、ガバナンスに関する難易度の高い仕事が増え、法務の仕事がどんどん拡大している。その一方で日常的な契約書関連の業務も疎かにはできず、各担当者の負担を軽減する仕組みが必要だ。人口減少などもあり法務部の人材を簡単には採用できないような状況だからこそ、LegalForceでは『法務部をどれだけ楽にさせられるか』をテーマにプロダクトを開発してきた」(角田氏)

β版のリリース以降も現場の担当者の負担を少しでも減らすという視点で随時プロダクトのアップデートを実施。新たに追加されたWordのアドイン機能も、その考え方から生まれたものだ。

これは簡単に言ってしまうとLegalForceの機能をWord上でそのまま使えるというもの。裏側ではクラウドと紐づいているので、Wordのアドイン機能を通じてレビューした履歴がクラウド上に残るほか、クラウド版と同じようにWord上でデータベースを活用した条文検索もできる。

実際に顧客にプロダクトを試してもらう中で、1台のPCを使ってブラウザとWordの契約書ファイルを何度も行ったり来たりする担当者の様子を見ていて「単にリスクをAIで判定するだけでは足りないと感じた」(角田氏)ことが背景にあるそう。

法務部の業務フローにギリギリまで寄り添いながら、一方でテクノロジーの恩恵もしっかりと受けられる形を考えた結果として、Wordのアドイン機能というアイデアが生まれたのだという。

今回調達した資金もプロダクトのさらなるアップデートに向けた開発体制や人材採用の強化に用いる方針。レビュー精度の向上のほか、対応類型の拡充や多言語対応、カスタマイズオプションの追加などに取り組む。

現在のβ版は無料で提供しているけれど、2019年の上旬にはいよいよ有料の正式版をローンチする予定。まずはスタートアップ向けのプランを先行で提供した後、大企業の法務部に対応したプランも整えていく計画だ。

AnyPayのわりかんアプリ「paymo」がサービス終了、わりかん代金の請求は12月13日まで

決済領域やブロックチェーン領域で複数のビジネスを展開するAnyPayは11月29日、同社が2017年1月より提供していた、わりかんアプリ「paymo」のサービス提供を終了すると発表した。本日より段階的に各機能が停止し、2019年5月30日に正式終了となる見通し。

paymoは、居酒屋やレストランでの食事などを参加メンバーで“わりかん”するときに便利なわりかんアプリ。ユーザーはアプリをダウンロードしてユーザー登録を済ませれば、本人確認なしでサービスを利用できることが特徴だ。paymoについての詳しい説明はサービスリリース時に僕たちが公開したこちらの記事を参考にしてほしい。

AnyPayはこれまでに、決済事業やブロックチェーンをはじめ、2017年に立ち上げた投資事業を通してモビリティ領域を中心とする国内外のシェアリング市場への投資を行ってきた。同社は今後、決済事業のリソースを法人向けURL・QRコード決済サービスの「paymo biz」に集約し、投資事業や新規事業創出へのコミットメントを増やす構えだ。

paymoは本日15時より新規会員登録を停止。続いて12月6日に他のユーザーにわりかん代金を請求する新規取引を停止し、12月13日には全取引を停止して請求・支払いリクエストの作成ができなくなる。この日までに割り勘代金を回収できていないリクエストはキャンセルされるので注意が必要だ。アプリに溜まったお金を引き出しできるのは2019年4月25日までとなっており、5月30日には正式にサービスが終了する。

タウンWiFiが成果報酬型集客ツール「WiFiチラシ」をリリース——企業へWiFi設置メリットを提供

通信キャリア各社が大容量のデータ通信プランの提供を始めて2年ほど経つが、月額料金はまだまだ高め。リーズナブルな通信プランを選び、月末になる度に通信キャリアの速度制限を受けるユーザーにとっては、スマートフォンのデータ通信量節約は、いまだに悩みの種だ。

タウンWiFi」は、そうした悩みを解決するためのWiFi自動接続アプリ。接続可能な無料の公衆WiFiを探して、自分でいちいち設定しなくても自動で接続・認証してくれる。2016年5月にリリースされ、2018年10月末時点でアプリ利用者は450万以上。日本以外にも34カ国でサービスを提供し、国内外のWiFiスポットにログインが可能となっている。

TechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトルで審査員特別賞を受賞した、タウンWiFi代表取締役の荻田剛大氏は、「どこでも無料でWiFiに接続できる世界を実現したい」としてサービスを展開してきた。

だがそこでネックとなるのが「小売店などのオーナーにWiFi設置への意欲が湧かないこと」。

「これまでタウンWiFiは『WiFi利用者が利用しやすいように』ということを前提に開発を進めてきた」という荻田氏。今年に入って、コンビニやカフェのオーナーなど、WiFiを提供する側の人たちと会う機会が増え、話を聞いていて「WiFiオーナーがWiFi設置の利益を享受できていない」と感じるようになったそうだ。

「WiFiオーナーは、自店のWiFiがどれぐらい使われているのか、どれくらい集客と収益につながっているのかを把握できていない。WiFi接続のために月々5000円とか1万円とかを負担しているのに、その効果が分からない状況だ。ユーザーだけでなく、『WiFiを入れて良かった』とオーナーにも思ってもらいたい。そうすることがWiFi設置数が増えることにつながる」(荻田氏)

そこでタウンWiFiが打ち出したのが、11月29日にリリースされた成果報酬型集客ツール「WiFiチラシ」だ。

WiFiで集客、来店検知で効果測定も

タウンWiFiでは、7月に「WiFiパーソナライズ接続機能」を追加。これまでに蓄積してきたWiFiの混雑状況や接続速度とユーザーの利用状況に関するビッグデータを掛け合わせ、ユーザーの属性や時間帯により接続を自動判定することで、より快適なWiFi環境を提供する仕組みを基本機能として搭載した。また、8月には自動ログインの対象地域を世界34カ国へ拡大。これらは、「ユーザーに不便な体験をさせない」という、いわば“守り”の施策だ。

これに対して今回リリースした「WiFiチラシ」は“攻め”の施策、と荻田氏はいう。

WiFiチラシは、WiFi設置店舗がタウンWiFiのユーザーを対象に、スマートフォンのプッシュ通知の形で来店を促すメッセージ、すなわち「デジタルチラシ」を配信する機能だ。メッセージは、ユーザーの性別・年齢以外に、店舗からの距離や来店経験の有無・頻度を設定して配信することができる。

冒頭にも挙げたが「WiFiオーナーはWiFi設置のメリットを感じ切れていない」と荻田氏は話している。これまでにWiFiオーナーがユーザーにアピールできていたことは「認証完了ページにPRページを表示すること」ぐらい。だが楽天インサイト(旧・楽天リサーチ)が2018年に行った「フリーWiFi広告効果に関する調査」によれば、フリーWiFiを利用するユーザーの約9割は、PRページについて「記憶に残らない・役に⽴たない」と答えていて、この方法はあまり有効ではないことが分かっている。

「WiFiを導入し、タウンWiFiでユーザーが接続することで集客につながった、という実感がWiFiオーナーにできれば、WiFiがどこでも使える世界がより近づく」(荻田氏)

WiFiチラシの利用料金は、初期費用・固定費は無料、来店数に応じた金額のみがカウントされる成果報酬型だ。自動的にABテストを行うことで、来店した人の中からメッセージを見なくても来た人の数を引いて、集客効果を算出するという。

「観光協会やカフェのオーナーと話していると『紙のチラシでは費用対効果が分からない』と言う声が挙がる。WiFiチラシなら、リアルタイムにリーチが分かり、来店状況も分かる」(荻田氏)

テスト導入を行った企業・団体からは「初めて効果が分かる集客手法を手に入れた」「非会員の潜在客が来店客に変わったという効果を実感した」「完全成果報酬型で費用対効果が明確。新規顧客も来場し、手ごたえを感じた」といったコメントが寄せられているそうだ。

荻田氏は「WiFiを入れるだけで集客効果が分かるとなれば、タウンWiFiを使う動機になる。『WiFiを入れる店なら、必ずタウンWiFiを使う』というようなツールとしていきたい」と語っている。

「WiFiを使いたいユーザーは今後、2020年のオリンピックに向け、インバウンドで伸びると思う。旅行者は店でゆっくりしているときにWiFiを使いたいはず。でも日本では個店でWiFiを提供していないところが多い。これはメリットが分からないからではないか。このサービスの提供でメリットが分かるようになれば、より『どこでもWiFiが使える世界』を実現できる。そういう使命感を持ってやっている」(荻田氏)

「タウンWiFiは今後も提携先の電通や国際興業との連携で、新しいサービスやツール開発を進める」と荻田氏は話す。「WiFiチラシによる集客情報以外でも、ユーザーの導線や、ほかにどういう店を利用しているかが分かる。個人を特定しない範囲で提携先に提供し、分析した結果をWiFiオーナーにも提供していく」(荻田氏)

“波動”を打ち合う対戦型ARスポーツ「HADO」運営が7.2億円を調達、プロリーグ立ち上げ目指す

突然だけど「一度でいいから漫画や小説のキャラクターのように『ビーム』を放ったり『魔法』を使ってみたい」と思ったことはないだろうか?

僕自身は小学生の時に、ドラゴンボールや仮面ライダーの必殺技をかけ合って友達と遊んだり、ハリーポッターの影響から呪文を唱えあったりしていた思い出がある。

当時は実際にビームや魔法を使えるわけではなかったので、あくまで頭の中でイメージするしかだけだったけれど、今はテクノロジーの活用によって条件さえ満たせば誰もがビームを出せる時代になった。

ユーザーが“波動”を出し合って対戦するARスポーツ「HADO」がまさにその世界観を体験できるサービス。開発元であるmeleapは11月29日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額で7.2億円を調達したことを明らかにしている。

今回meleapに出資したのはアイ・マーキュリーキャピタル、DBJキャピタル、インキュベイトファンド、キャナルベンチャーズ、秀インター、SMBCベンチャーキャピタル。同社については2017年11月に3億円の資金調達を実施した際にも紹介しているけれど、今回を含めると累計の調達額は11.1億円になるという。

HADOは頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着して楽しむ、AR技術を使ったスポーツだ。3対3のチームに分かれてユーザーは「エナジーボール」や「シールド」などの技を駆使して対戦し、80秒間の試合時間内に取り合った点数で競う。

meleapではこのHADOシリーズを国内外で店舗展開していて、現時点で店舗数は世界23ヶ国52箇所まで拡大。延べ130万人以上が同シリーズを体験している。

この1年間でプロダクト面もアップデートされ、HADOのスタッツを管理できる「HADO CONNECT」やカートを運転しながら火の玉を撃ち合って戦うコンテンツ「HADO KART GHOST BATTLE」が新たに登場。アトラクションが増えただけでなく、プレーヤーの成績管理やチーム作成などが可能になった。

同社CEOの福田浩士氏によると、前回調達時から国内外で店舗数が増加したことに加えて大会数や大会規模も拡大しているそう。12月8日には第三回となる世界大会「HADO WORLD CUP 2018」を開催する予定だが、そのほか国内で年間80大会を開催するまでに広がっている。

それに伴い自らスポンサーや運営会社をつけるHADOチームも出てきているそうで、今後はこの大会事業を進化させプロリーグを立ち上げていく計画だ。

今回調達した資金はHADOの店舗拡大と観戦事業立ち上げのために用いる方針。具体的には競技開発、観戦プラットフォーム開発、番組制作が主な投資ポイントになるという。すでに放送事業の施策の1つとして、2019年1月にHADOのバトル番組「HADO BEAST COLOSSEUM」をスタートすることも決定している。

「まずは2019年でHADO観戦番組の成功モデルを作り、視聴ファンを拡大する。2020年にはプレーヤーがHADOで継続的に稼げる状態(プロ化)を作りたい」(福田氏)

meleap経営メンバーと投資家

AIで求職者の人柄と社風の“相性診断”、「mitsucari」が1.5億円を調達

写真左からウィルグループの森雅和氏、ミライセルフ代表取締役会⾧の井上真大氏、同社代表取締役社長の表孝憲氏、ウィルグループの坂本竜氏

AIが企業の社風と応募者の相性を診断する「mitsucari適性検査」や、自分に合った社風の企業がレコメンドされる求人サービス「mitsucari」を運営するミライセルフ。同社は11月29日、ウィルグループのCVCファンド、京都大学イノベーションキャピタル、ハックベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により、総額1.5億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達はミライセルフにとってシリーズBラウンドにあたるもの。同社はこれまで2015年7月に日本ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家から5000万円、2016年12月に京都大学イノベーションキャピタルから7000万円を調達している。

ミライセルフでは調達した資金を活用してmitsucariのプロモーションや機能改善を進めるほか、これまで適性検査サービスを通じて蓄積してきたデータなどを活用し、企業向けの新規事業にも取り組む計画だ。

適性検査を通じてカルチャーフィットを実現

ミライセルフが現在展開する2つのサービスは“適性検査”という仕組みと、そこから得られるデータを活用することで「カルチャーフィット」を重視した採用や転職をサポートするものだ。

2016年から提供するmitsucari適性検査は企業が「会社や部署に合った人材を見極めるための採用支援サービス」であり、2018年6月からスタートしているmitsucariは求職者が「自分の人柄にあった社風の会社を探せる求人サービス」という位置付け。どちらも適正検査の結果から企業と求職者の相性(マッチ度)を算出するマッチングアルゴリズムが軸になっている。

ミライセルフはモルガン・スタンレーMUFG証券出身の表孝憲氏(代表取締役社⾧)とGoogle出身のエンジニア井上真大氏(代表取締役会⾧)が2015年に設立したスタートアップ。もともと表氏が前職で約7年間に渡って面接官を担当する中で「面接で自社に合うと思って採用した人材が、いざ入社すると会社にフィットせずに早期退職してしまった経験」などから、面接の数値化やカルチャーフィットを見極める仕組みに興味を持ったことが背景にあるという。

2015年の資金調達時にTechCrunchでも一度紹介しているように、当初は転職マッチングサービスのmitsucariを主力事業としてスタートした。ところが実際に企業と話をしてみたところ適性検査のシーンで使いたいという要望が予想以上に多かったこともあり、企業向けのサービスから先に本格化する方向に転換。2016年2月にmitsucari適性検査を始めている。

独自のアルゴリズムで企業と求職者の相性をスコア化

mitsucari適性検査では導入企業の社員と応募者の双方が独自の適性検査を受験。これを通じて企業の社風や応募者の人柄を可視化した上で、双方の相性を診断する。適性検査の内容は企業文化論や社会心理学を軸としてもので、全72問5択の選択形式。回答時間の目安は10分程度、スマホやタブレットでも受験できる。

ポイントは応募者だけでなく企業の社員も実際に同じ検査を受けること。これによって応募者の人柄や価値観のみで適正を診断する従来の適性検査とは異なり、あらかじめデータ化した社風と各応募者の人柄を照らし合わせることができる。つまり適性検査を展開する既存のプレイヤーが持っていないデータを集め、そこから独自の相性診断ができるということだ。

受験結果は「面接用シート」としてすぐに出力。マッチ度が数値化されるほか、人物像を類似している社員に例えながら表現する機能や、面接で優先的に聞くべき質問事項と質問例を提示する機能も備える。

企業と求職者という大きな枠組みだけでなく部署や職種ごとの判定も行うので、配属先や人間関係のミスマッチを防ぐことができる点も特徴だ。

2018年1月に導入社数が1000社、11月には2000社を突破。パナソニックや日本たばこ産業、毎日放送といった大企業への導入も進んでいて、業種もITやWeb系だけでなくメーカーや人材・教育、サービス業など幅広い。

導入企業としては入社後の配属も含めてミスマッチを防ぐことで離職率を減らしたいというニーズはもちろん、リクルーターやメンターとして適切な人を紹介したいという目的や、社内で活躍している人材の傾向を分析したいという用途で使われることも増えてきているそうだ。

「(カルチャーフィットの度合いを診断することで)採用を成功・効率化したいというだけでなく、離職率や内定辞退率の高さを課題に感じて導入に至るケースが増えてきている。たとえばメンターやリクルーターを決める際やサービス業などで配属店舗を決める際に、算出したデータを基に価値観や人柄の合ったメンター・店長をマッチングするようなことも可能だ。離職率に関しては新卒の離職が半分近くまで減った事例や、25%から5%まで削減したような事例も出てきている」(表氏)

初期費用および社員の受験費用は無料で、社外の応募者1人ごとに800円の受験料金が発生するシステム。ミライセルフとしては適性検査の受験料金のほか、取得したデータの活用をサポートするスポットのコンサルティングと、後述する求人マッチングサービスの成功報酬が主な収益源となっている。

適性検査のシステムを軸に、求人マッチングサービスも本格展開へ

ここまで紹介してきたmitsucari適性検査のノウハウやマッチングアルゴリズムを求人サービスの形に落とし込んだのが、6月に正式ローンチしたmitsucariだ。

同サービスでは人材を採用したい企業と求職者がそれぞれ事前に適性検査を実施。その結果と求職者が入力した勤務地や職種などの希望条件を基に、各求職者に合った求人情報だけがレコメンドされる。

「スキルフィットに着目した求人サービスは多いが、カルチャーフィットに着目したものはまだ少ない状況。かつそれを主観的な判断や根拠のないデータではなく、適性検査の結果を基に算出したマッチ度合いを通じて実現しようというのがmitsucariのアプローチだ」(表氏)

現時点ではmitsucari適性検査を活用している企業の一部などが導入している状況。基本となる機能の開発や検証を済ませ、これから本格的にプロモーションなどを実施していく予定だ。

そのほか調達した資金を用いてセールスや開発など組織体制の強化を進める方針。同社の事業にとってコアとなるマッチングアルゴリズムの精度向上に取り組むことに加え、適性検査を通じて蓄積してきたデータやノウハウなども活かした企業向けの新規事業も準備していくという。

遠隔地のロボットを自分の“分身”にできるTelexistenceが十数億円を調達——エアバスやKDDI系のファンドから

遠隔地にいるロボットをまるで自分の分身のようにコントロールする技術によって、人間を時空の制約から開放する——。

いきなり何を言っているのかと思われるかもしれないけれど、これは1980年に東京大学の舘暲(たちすすむ)名誉教授が提唱し、それから長年に渡って研究され続けてきた「テレイグジスタンス(遠隔存在)」と呼ばれる概念だ。

今回紹介するのは40年近くも前に生まれたこの技術の社会実装を進めている日本発のスタートアップ。Telexistence(テレイグジスタンス)というストレートな社名が付けられたそのチームは11月28日、Airbus Venturesらを引受先とした第三者割当増資と三菱UFJ銀行からの融資による資金調達を実施したことを明らかにした。

シリーズAとなる今回のラウンドにはAirbus Venturesに加えてKDDI Open Innovation Fund、東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)、ディープコア、モノフル、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、JTB、前田建設工業、みずほキャピタルが参加。具体的な調達金額は非公開ながら、十数億円規模になるという。

視覚や聴覚だけでなく“触覚”までも再現

Telexistenceは2017年1月の設立。会長を務める舘教授を始め、三菱商事出身でジオデシック・キャピタルに在籍していた経験もある代表取締役CEOの富岡仁氏、舘教授の元でコアとなる技術を研究していた代表取締役CTOのチャリスフェルナンド氏、以前FOVEで技術担当を担っていたCPOの佐野元紀氏らが共同で創業した。

同社が開発するプロダクトのベースになっているのが、冒頭でも紹介したテレイグジスタンス技術。遠隔地にあるロボットのセンサー情報をオペレーター(ユーザー)が受け取り、ロボットを自分の分身のように操作できるため、その場所にいるかのような臨場感を味わえるのが特徴だ。

この技術を実際にプロダクトに落とし込んだのが「MODEL H」というロボット。5月には量産型のプロトタイプが発表されている。

MODEL Hの世界観は動画を見ていただくとイメージしやすいけれど、オペレーターはVRゴーグルや指の動きをセンシングするグローブなどを装着。ゴーグル越しに遠隔にいるロボットが見ている景色を見たり、ロボットが触れたものを実際に感じたりすることができる。

振動、圧力、温度という3つのデータを取得することで、視覚や聴覚だけでなく“触覚”までも再現してしまえるのがおもしろいポイントだ。

Telexistenceでは2017年5月にKDDI Open Innovation Fund、グローバルブレイン 、JSTからシードラウンドの資金調達を実施。富岡氏によるとその資金をもとにプロトタイプの開発を進めつつ、さまざまな企業へのヒアリングを通じてプロダクトがフィットする領域(PMF)を探ってきたという。

「技術ドリブンで始まっているからこそ、どの領域に合わせてプロダクトを展開するかが非常に重要。実際に102社と話をしてきた中で、最初は主に2つの領域に絞って重点的に開発を進めることに決めた。今回調達した資金はその取り組みを加速させるために、基盤となるハードとソフト、通信、クラウド面などの開発に用いる」(富岡氏)

前列中央がTelexistence代表取締役の2人。左がCEOの富岡仁氏、右がCTOのチャリスフェルナンド氏

「宇宙」と「肉体労働の自動化」を軸に事業を加速

その2つの領域というのがざっくり言うと「遠隔制御の世界」と「オートメーションの世界」だ。

遠隔制御についてはまさに動画にもあったような“宇宙領域”を中心に、ロボットを通じて離れた場所から旅行を楽しんだり、働いてしまおうというもの。具体的に言えば地球にいながら低コストで宇宙旅行を楽しむ、もしくは宇宙でやっていたような労働を地球にいながら実行してしまう。そんな構想になる。

Telexistenceは8月にKDDIやJTBと共同で「MODEL H」を活用して遠隔旅行体験イベントを開催した。これは東京の竹芝桟橋にいながら小笠原諸島の父島を観光できるというものだけれど、この体験を宇宙にまで広げる考えだ。

富岡氏の話では「ロボットと人件費の双方が発生するため、事業として成り立つものが限られる」そう。ものすごく距離のある場所で莫大な移動コストがかかる、そしてその先での労働コスト(時給)が高い分野だと事業化がしやすく、その典型例が宇宙なのだという。

もうひとつのオートメーションに関しては、ロボットを通じて人間の肉体労働を自動化する取り組みだ。特に同社が目指すのが小売業における陳列業務や物流倉庫での業務など「不定形な業務」を自動化すること。

ロボットによるオートメーションと言えば産業用ロボットなどすでに世に出ているものもあるが、既存のものとは異なるテレイグジスタンスを用いたアプローチでこの領域にチャレンジしていくという。

なお富岡氏によると現段階ではオープンにできないものの、すでに具体的な取り組みも進行しているそう。この点についてはまた詳細が明らかになった際に紹介したい。