オーロラ観測ロケット「LAMP」が高速に明滅する「脈動オーロラ」に突入、電子・光・磁場の詳細な観測に成功

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

名古屋大学は3月29日、名古屋大学宇宙地球環境研究所をはじめとする研究グループが、アメリカのアラスカ州よりNASAのオーロラ観測ロケット「LAMP」を明滅するオーロラに向けて打ち上げ、オーロラの中の電子、光、磁場の詳細な観測に3月5日(現地時間)に成功したと発表した。

これは、名古屋大学(三好由純教授、能勢正仁准教授)、宇宙航空研究開発機構(JAXA。浅村和史准教授)、東北大学(坂野井健准教授)、東京大学電気通信大学(細川敬祐教授)、九州大学からなる共同研究によるもの。ロケット実験にはこの他に、NASA、ニューハンプシャー大学、ドートマス大学、アイオワ大学の研究者も参加している。

オーロラは、宇宙から降り込んだ電子が地球の超高層大気と衝突して発光する現象だが、その中に、高速に明滅する「脈動オーロラ」というものがある。近年では日本の人工衛星「れいめい」「あらせ」による観測などで脈動オーロラの研究が進んでいるが、その発光層の広がりや、明滅と電子との関係、脈動オーロラにともなって降ってくる電子の上限エネルギーについては解明されていない。

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

研究グループは2020年、脈動オーロラが起きているときは「キラー電子」と呼ばれる数百キロ電子ボルトの超高エネルギー電子が降り注ぐ現象(マイクロバースト)も同時に起きているという仮説を示したが、脈動オーロラとキラー電子を同時に観測した例はなかった。そこで研究グループは、アメリカの研究者とともに「LAMP」(Loss through Aurora Microburst Pulsation)計画をNASAに提案。採択されると、日米の研究機関でロケットに搭載する観測装置の開発を行った。日本側は、名古屋大学が磁力計、東北大学が光学観測系、JAXAが電子観測系を担当した。

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

2022年2月24日、アラスカ州ポーカーフラットリサーチレンジの射場にロケットをセットし、同時に、アラスカ北方のベネタイとフォートユーコンにもオーロラ高速撮像用のカメラ群を展開すると、脈動オーロラの出現を待った。そして待機すること10日目の3月5日、大きなオーロラ爆発が起こり、それに続いて脈動オーロラが発生すると、ロケットが打ち上げられた。LAMPロケットは脈動オーロラに突入。すべての機器が順調に作動し、「理想的な状態」で観測が行われ、観測データの取得が確認された。今後の詳細な解析により、脈動オーロラの変調機構、キラー電子との関係が明らかになることが期待されている。

現在研究グループは、スウェーデンの次世代型三次元大型大気レーダー「EISCAT-3D」が2023年に稼働を開始するのに合わせて、その視野内に観測ロケットを打ち上げる「LAMP-2」の検討を進めている。


画像クレジット:©脈動オーロラプロジェクト

毎秒1.7ペタビット、既存技術の7倍の容量を可能にするマルチコアファイバーによる光海底ケーブルの5つの基盤技術を確立

毎秒1.7ペタビット、既存技術の7倍の容量を可能にするマルチコアファイバーによる光海底ケーブルの5つの基盤技術を確立

KDDI総合研究所は3月28日、1本の光ファイバーの中に複数のコアを持つマルチコアファイバーで大容量化した光海底ケーブルの実用化に向けた各種技術の開発と実証を行い、基盤技術を確立したことを発表した。これにより、アジア域をカバーする3000km級の光海底ケーブルを、既存システムの7倍(毎秒1.7ペタビット程度)に容量を拡大できるという。2020年代半ばの実用化を目指す。

KDDI総合研究所、東北大学住友電気工業古河電気工業日本電気(NEC)、オプトクエストの6機関は、総務省の委託研究として大容量光海底ケーブルの研究開発を行っている。5Gサービスの普及に伴うモバイルデータ通信の増加やデータセンター間の通信需要の増大などを背景に、国際通信の回線需要が増大しているが、それに対応するためには海底ケーブルにより多くの光ファイバーを通す必要がある。しかし、光ファイバーの本数を増やせばケーブルの外径が大きくなり、敷設が困難になる。そこで、1本のファイバーで複数の通信が可能となるマルチコア(多芯)ファイバーを使い、外径はそのままで容量を増やす技術が求められてきた。上記の6機関は、世界に先駆けてその基盤技術を確立し、実証を行った。

このシステムは、5つの基盤技術で構成されている。その第1が4つのコアを持つ光ファイバーだ。2020年11月に古河電気工業とKDDI総合研究所が開発した技術で、コア間の信号干渉を抑えることで損失は世界最小級となる1kmあたり0.155dB(デシベル)を実現し、クロストーク(混線)は100kmでマイナス60dBを達成。毎秒109Tbit(テラビット)の信号を3120km以上伝送でき、毎秒56Tbitの信号を1万2000km以上伝送できることを実証した。

第2の技術は、このマルチコアファイバーを収容した光海底ケーブルだ。2021年10月、NEC、OCC、住友電気工業は、マルチコアファイバーを32芯収容した海底ケーブルを開発し、水中で長距離の伝送試験を行った。ケーブルにした状態でも、マルチコアファイバーの光学的特性に大きな変化はなく、良好な伝送性能を得ることができた。

第3は、マルチコアファイバーの統制評価技術。マルチコアファイバーの依存損失とクロスオーバーの評価を行う波長掃引法と、損失、クロストークの長手分布を評価するOTDR法という2つの技術を開発した。

第4は、空間多重型高密度光デバイス。4コアファイバー用アイソレーター内蔵Fan-in/Fan-out(ファンイン/ファンアウト)デバイス、4コアファイバー用Fan-out付きTAPモニターデバイス、4コアファイバー用O/E変換器付きTAPモニターデバイスの3種類の光増幅装置を開発し、1つの複合機能デバイスに集約した。これにより、世界最高水準の低損失と小型化を実現させた。

第5は、マルチコア光増幅中継方式。シングルコア光増幅器をベースに作られた従来のマルチコア光増幅器は、コアの数だけ増幅装置が必要であり、コア数が増えればそれだけ大型化するという課題があった。新しく開発されたマルチコア光増幅器は、1つの増幅装置で複数のコアを一括して増幅できるクラッド励起方式を採用し、体積を従来の半分程度に収めることに成功した。

これらを統合することで、既存システムの7倍となる毎秒1.7ペタビットほどの容量拡大が可能になることが確認されている。今後は、マルチコアファイバーの量産化技術の開発、長期信頼性の検証、運用保守技術の開発を進め、2020年代半ばの実用化を目指すとしている。

ダイヤモンドを放熱材とする窒化ガリウム・トランジスターの製作に成功、温度上昇を約3分の1に抑え特性を改善

ダイヤモンドを放熱材とする窒化ガリウム・トランジスターの製作に成功、温度上昇を大幅に抑え特性を改善大阪市立大学は3月18日、ダイヤモンドと窒化ガリウム(GaN)の直接接合技術を活かして、ダイヤモンドをベースとした窒化ガリウム・トランジスターの製作に成功したと発表した。次世代トランジスターの素材として期待される窒化ガリウムに高い放熱性を持たせることで、レーダーやインバーターなどの高出力、大電力用途に使用範囲が広がると期待される。

次世代トランジスターとされる窒化ガリウムを材料としたトランジスターは、従来のシリコン(Si)ベースのトランジスターに比べて高周波で駆動し、高出力に対応できる利点があるため携帯電話の基地局などで使われているが、大量の熱を発生することにより性能が制限されてしまう欠点がある。現在、放熱性に優れたダイヤモンドに窒化ガリウムを接合し熱問題に対処する技術が方々で研究されているが、トランジスター製作後にダイヤモンドと接合する方式のため、大面積化が困難という弱点がある。

大阪市立大学大学院工学研究科の梁剣波准教授、重川直輝教授は、東北大学金属材料研究所 大野裕特任准教授、永井 康介教授、物質・材料研究機構(NIMS) 清水康雄博士、エア・ウォーター 川村啓介博士らからなる共同研究グループで、窒化ガリウムとダイヤモンドを接合してからトランジスターを作る技術を開発した。同研究グループは、2021年9月に窒化ガリウムとダイヤモンドの直接接合に成功し、摂氏1000度の熱処理に耐えることを実証していたが、今回はその技術を使って、ダイヤモンドに接合した窒化ガリウムを摂氏800度で熱処理し、放熱性に優れたトランジスターを製作した。

(a)(b)窒化ガリウムとダイヤモンドを接合させた試料。(c)ダイヤモンド上に作られた窒化ガリウム・トランジスターの光学顕微鏡写真。(d)ゲート電極断面の走査型電子顕微鏡像

まずはシリコン基板上に堆積させた窒化ガリウム層と炭化ケイ素バッファ層をシリコンから分離し、表面活性化接合法(真空中でアルゴン原子ビームを照射し試料同士を密着させて荷重をかける方法)でダイヤモンドに接合させた。摂氏800度の熱処理などの工程を経た後に、それを使ってトランジスターを製作。高品質な炭化ケイ素バッファ層により、トランジスターに加工した後も膜剥がれは起こらず、良好な接合が実現した。

確認のため、シリコン基板上に作られたまったく同じ窒化ガリウム・トランジスターと特性を比較したところ、同じ電力を投入したときの温度上昇は、ダイヤモンドはシリコンの約1/3であり、それによりトランジスター特性が改善することが実証された。

窒化ガリウムとダイヤモンドを接合した後にトランジスターを作る方式なので大面積化が可能になり、集積化した際の放熱特性が改善される。そのため、レーダーやインバーターなどの高出力、大電力の用途に利用範囲が拡大するとのことだ。「本研究の成果が早期に実用化され、窒化ガリウム素子、集積回路の放熱性向上、SDGs達成につながることを期待します」と梁准教授は話している。

安価に大量生産が可能な6G通信の電波制御のための新規材料「三次元バルクメタマテリアル」を開発

安価に大量生産が可能な6G通信の電波制御のための新規テラヘルツ光学材料「三次元バルクメタマテリアル」を開発

東北大学は3月10日、6G通信を見据えたテラヘルツ光学材料「三次元バルクメタマテリアル」を開発し、液状樹脂に混合して任意の形に加工できる粉末状での提供を可能にしたと発表した。テラヘルツ領域での「光学特性をオーダーメイドで設計できる革新的な新素材」の基盤技術になるという。

2030年代の実用化を目指す6G通信では、ミリ波と赤外線の中間の、波長が非常に短いテラヘルツ波が使われることになっている。しかし現状では、テラヘルツの電波を自在に制御できるレンズ、プリズム、フィルターといった光学素子の材料が限られているため、加工が容易で、幅広い屈折率特性を有する新規素材が求められている。そこで注目されているのが、制御対象の電磁波の波長よりも小さな単位構造で構成される人工光学物質「メタマテリアル」だ。これは、「これまでの電磁波操作技術の限界を打ち破る革新的な人工構造体」として期待されている。東北大学大学院工学研究科の金森義明教授、岡谷泰佑助教らによる研究グループは、このメタマテリアルを含み、成形が自由で任意の屈折率特性を持たせられる「三次元バルクメタマテリアル」を安価に大量に提供できる製造技術の開発について、世界で初めて成功した。

これまでも、メタマテリアル単位構造を形成した立体的なメタマテリアルはあったが、厚みや構造の向きに制約があった。それに対して同研究グループが開発したものは、製造上の厚みの制約がなく、方向性の制限もない、どんな形にしても「三次元的に等方分散した真の三次元バルクメタマテリアル」とのこと。

研究グループが開発したメタマテリアルは、テラヘルツ波の波長よりも小さい数十から数百μm(マイクロメートル)ほどのメタマテリアルを含む樹脂製粉末だ。これを液状樹脂に入れて攪拌し、型に入れて固めることで、任意の形で、設計に応じた屈折率特性を持つ「三次元バルクメタマテリアル」ができあがる。実際に、直径12mm、厚さ1.6mmの三次元バルクメタマテリアルの製作を成功させている。これは、代表的なメタマテリアル単位構造であるスプリットリング共振器を内包した1辺100μmの立方体の粉末から作られている。マテリアルはランダムに分散配置されていて、周波数0.7THz付近で、屈折率を0.135変化させることができたという。

(a)三次元バルクメタマテリアル、(b)内包されているスプリットリング共振器

これまでメタマテリアルは平面的に形成されたものが多く、自由に加工できなかった。また、メタマテリアルを部材として入手することが困難で、メタマテリアル光学素子を作る際には、高度な微細加工技術が必要だった。それらが社会実装を妨げていたのだが、個体の粉末材料として提供される研究グループのメタマテリアルは、「自由に加工してテラヘルツ光学素子を実現できる点が画期的」と研究グループは話す。またこの技術は、医療、バイオ、農業、食品、環境、セキュリティーなど幅広い分野での応用が期待できるという。

国際宇宙ステーションに代わる宇宙環境利用プラットフォームを開発するElevationSpaceが3.1億円のシード調達

国際宇宙ステーションに代わる宇宙環境利用プラットフォームを開発するElevationSpaceが3.1億円のシード調達

国際宇宙ステーション(ISS)に代わって宇宙での実験や製造が行える宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」を開発する宇宙スタートアップElevationSpace(エレベーションスペース)は3月9日、シードラウンドとして、第三者割当増資による約3億1000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Genesia Venture Fund 3号投資事業有限責任組合(ジェネシア・ベンチャーズ)をはじめとする6社。これにより補助金なども含めた累積調達額は3億5000万円となった。また、新たな社外取締役に、ジェネシア・ベンチャーズのPartnerおよびChief ESG Officerの河合将文氏が就任した。

国際宇宙ステーションに代わる宇宙環境利用プラットフォームを開発するElevationSpaceが3.1億円のシード調達ElevationSpaceは、東北大学吉田・桒原研究室で10基以上の小型人工衛星を開発してきた技術を基に、2021年2月に設立した東北大学発の宇宙領域スタートアップ。宇宙空間での実験・研究・製造などが行える小型宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」の開発を行っている。2023年後半には技術実証機「ELS-R100」を打ち上げ、2026年にはサービス提供機「ELS-R1000」を打ち上げる予定だ。

ELS-Rでは、宇宙の微小重力環境を活かした研究、試験、製造が行える。実験などを行ったペイロードは地球に帰還させ、回収することができる。何かと利用が難しく、2030年には退役が予定されているISSに代わって、安価に素早く利用できるのが特徴だ。想定される利用例としては、基礎研究フェーズの他、創薬分野の高品質なたんぱく質結晶の生成といった応用研究フェーズから、宇宙旅行を見据えた化粧品・食品・家電品などの開発に関連する実証や試験フェーズ、地上では作れない新素材の宇宙製造といった量産フェーズなどが考えられている。技術実証機では、ユーグレナが、宇宙での食糧やエネルギー源となるミドリムシの培養実験を行うことが決まっている。

今回調達した資金は、ELS-R100の開発促進、さらにELS-R1000の研究開発と事業開発に向けた組織体制の構築に使われるとのこと。また今回、科学技術分野の企画、研究、コンサルティングを行うリバネスグループとの業務提携も発表された。同社が持つビジネスと科学領域の知見と産官学のネットワークを活かして、宇宙での新規材料製造マーケットの創出に取り組むという。

引受先6社は、ジェネシア・ベンチャーズ、みらい創造機構、既存投資家のMAKOTOキャピタル、リバネスキャピタル、東北大学ベンチャーパートナーズ、Plug and Play Japanとなっている。

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学(杉本諭教授)と東芝の研究グループは2月24日、電気自動車などに使用する小型モーター向けとして、高性能で安価に生産が可能な等方性ボンド磁石を開発したと発表した。レアアースの使用量はネオジムボンド磁石の約半分でありながら、性能は同等。耐熱性はネオジムボンド磁石よりも高い。

等方性とは、全方位に磁力が均一な磁石のこと。ボンド磁石とは、磁石粉末を樹脂やゴムに混ぜて成形した磁石のことをいう。そのため等方性ボンド磁石は、着磁方向が自由に選べ、形状の自由度や寸法精度が高く、製造工程が簡略で生産性が高いといった特徴を持つ。研究グループが開発した磁石も、これらの利点を備えている。

日本の総消費電力の過半数は、モーターが占めているといわれている(産総研「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」)。一般にモーターの効率は、磁石の性能が上がれば高くなる。その要になるのがレアアースを使用した強力な磁石だ。現在、そのレアアースとして使われているのはネオジムが圧倒的に多いのだが、それは特定国からの輸入依存度が高く、資源リスクが心配されている。そこで研究グループは、ネオジムを採掘する際の副産物であり、余剰資源となっているサマリウムに着目し、ネオジムへの依存度を減らす研究に取り組んだ。

研究グループが開発したサマリウムを使った等方性ボンド磁石の製造方法は、サマリウムと鉄に、適正な量のコバルト、ニオブ、ホウ素を加えた合金を溶解した後、急冷凝固させ、適切な熱処理を行うことで「高鉄濃度な化合物結晶の境目にニオブとホウ素を濃縮させる」というものだ。これにより、従来のネオジム合金に含まれるネオジムの量が13原子%なのに対して、このサマリウム鉄系合金に含まれるサマリウムは6原子%と、レアアースの量は約半分となった。永久磁石の単位体積あたりの磁気エネルギーを示す磁束密度と磁界の積の最大値、最大エネルギー積は、摂氏20度で98kJ/m3と、ネオジムボンド磁石と同等だった。永久磁石の強度を示す残留磁束密度も摂氏20度で0.82テスラと、これもネオジムボンド磁石と同等だった。さらに、摂氏1度あたりの残留磁束密度の低下率は0.06%とネオジムボンド磁石の半分で、高い耐熱性が示された。

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

余剰資源として今後も増え続けるであろうサマリウムを利用することに加え、使用するレアアースの量を半分にできるこの技術は、「資源リスクの低減と各種モーターのサプライチェーンの強靭化に貢献します」と研究グループは話す。今後は、磁石メーカーと連携し、量産化を見据えた低コストで安定した生産技術の開発を進め、さらなる性能向上を目指すとしている。また同磁石を各種モーター製品に適用していくためのモーター設計の最適化についても検討する予定。

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学(杉本諭教授)と東芝の研究グループは2月24日、電気自動車などに使用する小型モーター向けとして、高性能で安価に生産が可能な等方性ボンド磁石を開発したと発表した。レアアースの使用量はネオジムボンド磁石の約半分でありながら、性能は同等。耐熱性はネオジムボンド磁石よりも高い。

等方性とは、全方位に磁力が均一な磁石のこと。ボンド磁石とは、磁石粉末を樹脂やゴムに混ぜて成形した磁石のことをいう。そのため等方性ボンド磁石は、着磁方向が自由に選べ、形状の自由度や寸法精度が高く、製造工程が簡略で生産性が高いといった特徴を持つ。研究グループが開発した磁石も、これらの利点を備えている。

日本の総消費電力の過半数は、モーターが占めているといわれている(産総研「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」)。一般にモーターの効率は、磁石の性能が上がれば高くなる。その要になるのがレアアースを使用した強力な磁石だ。現在、そのレアアースとして使われているのはネオジムが圧倒的に多いのだが、それは特定国からの輸入依存度が高く、資源リスクが心配されている。そこで研究グループは、ネオジムを採掘する際の副産物であり、余剰資源となっているサマリウムに着目し、ネオジムへの依存度を減らす研究に取り組んだ。

研究グループが開発したサマリウムを使った等方性ボンド磁石の製造方法は、サマリウムと鉄に、適正な量のコバルト、ニオブ、ホウ素を加えた合金を溶解した後、急冷凝固させ、適切な熱処理を行うことで「高鉄濃度な化合物結晶の境目にニオブとホウ素を濃縮させる」というものだ。これにより、従来のネオジム合金に含まれるネオジムの量が13原子%なのに対して、このサマリウム鉄系合金に含まれるサマリウムは6原子%と、レアアースの量は約半分となった。永久磁石の単位体積あたりの磁気エネルギーを示す磁束密度と磁界の積の最大値、最大エネルギー積は、摂氏20度で98kJ/m3と、ネオジムボンド磁石と同等だった。永久磁石の強度を示す残留磁束密度も摂氏20度で0.82テスラと、これもネオジムボンド磁石と同等だった。さらに、摂氏1度あたりの残留磁束密度の低下率は0.06%とネオジムボンド磁石の半分で、高い耐熱性が示された。

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

余剰資源として今後も増え続けるであろうサマリウムを利用することに加え、使用するレアアースの量を半分にできるこの技術は、「資源リスクの低減と各種モーターのサプライチェーンの強靭化に貢献します」と研究グループは話す。今後は、磁石メーカーと連携し、量産化を見据えた低コストで安定した生産技術の開発を進め、さらなる性能向上を目指すとしている。また同磁石を各種モーター製品に適用していくためのモーター設計の最適化についても検討する予定。

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功

展開した膜型ダストセンサーをオンボードカメラで撮影した自撮り画像。センサーが固定されたパドル面には、千葉 工業大学の校章とPERCのロゴが印字されている

展開した膜型ダストセンサーをオンボードカメラで撮影した自撮り画像。センサーが固定されたパドル面には、千葉
工業大学の校章とPERCのロゴが印字されている

千葉工業大学惑星探査研究センター(PERC)は2月15日、宇宙塵探査実証衛星「ASTARISC」(アスタリスク)がJAXAのイプシロンロケット5号機で高度約570kmの地球周回軌道に打ち上げられ、初期運用に移行したことを発表した。

ASTARISCは、宇宙塵や微小なスペースデブリを観測するための、サイズが30×10×10cmというU3超小型衛星。世界初の方式による、展開すると30×30cmになる膜状の粒子観測装置(ダストセンサー)を搭載している。ダストセンサーは、ポリイミド製の膜に圧電素子を接着したもの。この膜に宇宙塵やスペースデブリが衝突すると、そのとき発生する弾性波を電気信号としてとらえ、独自の信号処理によりリアルタイムで粒子を観測できる。粒子が膜に衝突しさえすれば検出できるので「膜の面積を大きくするだけで大面積のセンサーを容易に実現できる画期的な技術」とのことだ。

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功

ASTERISC外観写真。写真左は、展開前の衛星外観。写真右は、30×30cmの膜型ダストセンサー(左方向に広げられたオレンジ色の膜)展開後の衛星外観。膜型ダストセンサーの膜面には、受信用の8個の圧電素子と2個の試験信号用の圧電素子が接着されている

 

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功ダストセンサーは、センサーの健全性と展開実施の要件を確認したあと、ニュージーランド上空付近で展開された。タイマーコマンドにより自律的に展開されたが、オンボードカメラの映像などによって、設計通りの形状で展開されたことが確認できた。すでに「真の粒子観測イベント」と判定できるデータが得られているとのこと。観測された粒子は、0.1〜1μm(マイクロメートル)程度のサイズと推定され、センサーが設計通りの感度を有していることも実証された。今後は、長期的な観測により、軌道上の粒子の量・飛来方向・運動量などを明らかにできるとしている。

宇宙塵は、太陽系の形成に大きく関わる重要な微粒子で、原始の地球に降り注いだ宇宙塵由来の有機物が生命の起源ともいわれている。また、スペースデブリの定量的な観測と評価も、今後の宇宙開発において重要な意味を持つ。しかし、宇宙塵や微小なスペースデブリを地上から観察することはきわめて難しく、その分布や量などの特性を調べるには、直接宇宙で観測しなければならない。

ただ、宇宙空間での宇宙塵や微小スペースデブリは存在が大変に希薄であるため、それらを観測するには大きな検出面積を持つダストセンサーが必要となるが、これまでの方式ではコストの面などで大型化が困難だった。そこで惑星探査研究センターは、容易に大面積化できるこのダストセンサーを開発した。

ASTARISCは、惑星探査研究センターと東北大学が共同で開発したもの。今回は同時に、将来のミッションを視野に入れた国産の衛星バス技術(電源系、通信系、データ処理制御系、姿勢系)の軌道実証も行い、成功している。

東北大学、2050年の超高齢化社会を見据えた次世代介護ロボット研究開発拠点「青葉山リビングラボ」をオープン

東北大学、2050年の超高齢化社会を見据えた次世代介護ロボット研究開発拠点「青葉山リビングラボ」をオープン

東北大学は2月14日、超高齢化社会を担う介護ロボット機器やシステムの研究開発拠点となる「青葉山リビングラボ」を、東北大学青葉山キャンパスに開設したことを発表した。ここでは、2050年の未来を想定した画期的なアプローチと、近い将来に適用できる現実的なソリューションの両方を見据えた研究が行われる。2月21日にオンライン開催される第1回「東北Kaigo-Tech実践研究会」で正式公開される予定。

「リビングラボ」とは、厚生労働省の「介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム事業」に参画する研究所のことで、現在青葉山リビングラボを含めて全国に8カ所が存在している。実際の生活空間を再現し、利用者が参加する形で新しい技術やサービスの開発を行う施設のことをいう。

青葉山リビングラボでは、250m2のスペースに介護施設と在宅介護の模擬環境を作り、3次元モーションキャプチャーシステム、床反力計測用フォースプレート、6軸力学センサー、環境認識用センサーなどの計測機器に、転倒衝撃を軽減する寄り添いロボット、ロボットアシストウォーカー、移乗サポートロボットなどの介護ロボットや介護装をが配備している。

東北大学、2050年の超高齢化社会を見据えた次世代介護ロボット研究開発拠点「青葉山リビングラボ」をオープン

これは、東北大学大学院工学研究科の平田泰久教授がプロジェクトマネージャーを務める科学技術振興機構「ムーンショット型研究開発事業」のうち、目標3の研究開発プロジェクト「活力ある社会を創る適応自在AIロボット群」が2050年に実現を目指す、誰もが積極的に社会参画できる社会の構築を支援するものだ。また同時に、2030年をめどとして、AIロボット群が人に寄り添う支援やサービスの介護現場での実証も目指している。

青葉山リビングラボでは、2050年に活用が期待される画期的なアプローチと、近い将来の実用化、市販化を見据えた研究開発、またそのスピンアウトや開発企業の支援とを両輪として、超高齢者社会の課題解決に取り組んでゆくとしている。

仙台市と東北大学がKaggleを用いAI・データサイエンスの実践スキルの習得を目指す講座を開講、受講者募集開始

仙台市と東北大学がKaggleを用いAI・データサイエンスの実践スキルの習得を目指す講座を開講、受講者募集開始

宮城県・仙台X-TECH推進事務局は、東北大学大学院情報科学研究科と連携し「データサイエンス・トレーニングキャンプ」をオンライン開催(Zoom)すると発表。受講者の募集を開始した。受講者募集期間は2月14日12:00まで。開講日程は、2月24日から3月12日。修了時には、東北大学大学院情報科学研究科による修了証が授与される。

これは、AIを用いたデータ分析の手法とデータサイエンスの実践スキルを学ぶための講座だ。仙台X-TECH推進事務局は、仙台市をフィールドに、最先端IT技術と様々な産業を掛け合わせたX-TECH(クロステック)による新事業創出を推進しており、AI関連ビジネスが持続的に生まれるエコシステム「AI-Ready都市・仙台」を目指す「仙台 X-TECHイノベーションプロジェクト2021」の一環として開催する。

募集対象者は、仙台または東北に本社や事業拠点を置く企業や団体に所属する個人で、これまでに仙台X-TECHイノベーションプロジェクトのプログラムやワークショップに参加したことのある人、AIやデータサイエンスに関心の高いエンジニア(経験はスキルは不問)、またはAIビジネス創出を支援するITベンダーのエンジニア(プログラミング未経験でも可)のいずれかに該当する者となっている。

講師は、東北大学大学院情報科学研究科教授の中尾光之氏と、同研究科准教授の山田和範氏。

AIコンペティション・プラットフォームKaggleから厳選したプロジェクト2つにおいて、参加者間で3名程度のチームを組成の上、前半(Day 1〜5)、後半(Day 5〜9)それぞれハンズオン講義+チーム活動にてビッグデータ分析を通した課題解決に取り組む。

概要

  • 開講日程:2月24日〜3月12日
  • 会場:Zoomによるオンライン開催
  • 受講者募集期間:2022年2月14日12:00まで
  • 募集人数:20名(応募多数の場合は抽選)
  • 参加費:無料

申し込みは、特設サイト「東北大学 x 仙台市 データサイエンス・トレーニングキャンプ」より行う。

東北大学とNTT社会情報研究所、量子コンピューターでも解読できない次世代暗号方式を安全に実装するための技術を開発

開発した対策技術による安全性実証実験の様子。物理的に観測されても「PQC」(Post Quantum Cryptography:耐量子計算機暗号) の動作中に秘密が漏えいしないことを実証した

開発した対策技術による安全性実証実験の様子。物理的に観測されても「PQC」(Post Quantum Cryptography:耐量子計算機暗号) の動作中に秘密が漏えいしないことを実証した

東北大学は2月2日、量子コンピューターでも解読できない次世代暗号方式をソフトウェアやハードウェアで実装した際の、攻撃の脅威を払拭する技術を開発したと発表した。現在進められている国際標準化に貢献するものと期待される。

大規模な量子コンピューターが普及すると、現在の暗号化技術は簡単に解読されてしまう恐れがある。そこで、量子コンピューターでも解読できない次世代の暗号方式「PQC」(Post Quantum Cryptography:耐量子計算機暗号)の研究が世界で行われ、現在、米国立標準技術研究所(NIST)ではPQCの国際標準化が進められており、2024年までに標準暗号方式が選定される予定だ。そこでは、暗号の数学的な安全性に加えて、物理的な攻撃への耐性も求められる。

東北大学電気通信研究所環境調和型セキュア情報システム研究室(本間尚文教授、上野嶺助教)とNTT社会情報研究所(草川恵太主任研究員、高橋順子主任研究員)による研究グループは、そうした数学的、物理的安全性を実現するための技術開発を行ってきたが、このほど、それらの攻撃を防ぎつつ、PQCを実行するシステムを安全に実現する対策を開発し、実機による実験でその有効性を実証した。

現在NISTは、PQCの国際標準として9つの方式を候補に挙げているが、研究グループが実証した対策は、そのうち8つの候補に有効であることがわかった。もしこの対策をしなければ、外部から動作を観察して暗号を読み取るサイドチャネル攻撃や、誤った出力をさせること暗号を解読する故障注入攻撃など、システムの物理的な脆弱性を突く攻撃に晒されてしまう恐れがある。

これは、「今後PQCを搭載・実行するシステムを実現する場合の基盤技術になると期待されます」と研究グループは話す。今後は、PQCをさまざまなシステムに搭載して実証実験を進めるとのことだ。

東大・京大・東北大ら研究グループが1個の水分子の量子回転運動の検出に成功、量子情報処理の基盤技術への発展に期待

1個の水分子の量子回転運動の検出に成功、量子情報処理の基盤技術への発展に期待

(a)1nm以下のギャップを有する電極を単一H2O@C60分子に形成し、さらにゲート電極も備えた単一分子トランジスタ構造(single molecule transistor。SMT)の概念図。(b)水分子の模式図。2個の水素原子が持つ核スピンの向きにより、オルソ水分子(左)とパラ水分子(右)の2つの核スピン異性体がある

東京大学京都大学東北大学からなる研究グループは、1個の水分子を流れる電流を計測することで、水分子の量子力学的な回転運動を検出することに成功した。これは、1個の原子が持つ量子状態を情報の媒体とする、つまり1個の原子や分子に量子情報を担わせる、量子情報処理の基盤技術につながるものと期待される。

水分子(H2O)は、その単純な構造から量子技術への応用に適しているとされている。しかし、水分子同士の強い水素結合により、単一の分子の量子状態を測定するのが困難だった。そこで研究グループは、フラーレン(炭素原子が球状構造になったカゴ状の化合物)分子に水分子を1個だけ封じ込めたH2O@C60分子を使用し、分子1個分の隙間をあけた電極にこのH2O@C60を挟み、「H2O@C60単一分子トランジスタ構造」を形成した。そして、そこを流れるトンネル電流を計測すると、1個の水分子の量子力学的な回転運動を検出することができた。

水分子に含まれる2つの水素原子の回転運動(核スピン)には、同じ方向に回転する平行状態(オルソ)と、違う方向に回転する反平行状態(パラ)とがある。H2O@C60単一分子トランジスタ構造で、水分子を経由して流れる電流を測定したところ、オルソのときに2meV(ミリ電子ボルト)と7meVで励起が生じ、パラとのきに5meVの励起が生じた。また、オルソとパラは、測定中の短い時間内にも入れ替われることがわかり、それは伝導電子と水分子の相互作用によるものと考えられるという。つまり、単一分子を経由して流れる電流を計測することで、水分子の水素原子の核スピンに関する情報を読み出すことができたということだ。

これを利用すれば、1個の水分子に量子情報を担わせることが可能になり、量子情報処理の基盤技術の形成につながる。このことは「原子や分子を用いた量子情報処理技術に大きな進展をもたらすとともに、物理、化学、生物学、薬学などの基礎から応用に関わる広い分野に大きな発展をもたらすと期待されます」と研究グループは話している。

脳ドック用ソフトウェアBrainSuiteを手がけるCogSmartが3.5億円のシリーズA調達、事業拡⼤・国内外での研究開発推進

脳ドック用ソフトウェアBrainSuiteを手がけるCogSmartが3.5億円のシリーズA調達、事業拡⼤・国内外での研究開発推進

脳ドック用ソフトウェア「BrainSuite」(ブレーン スイート。受信者向け医療機関向け)を手がけるCogSmart(コグスマート)は1月6日、シリーズAラウンドにおいて、総額3億5000万円の資⾦調達を実施したと発表した。引受先は、オムロンベンチャーズ、アイロムグループ各社、DG Daiwa Ventures、アイティーファーム、MAKOTOキャピタルが運営・関与するファンド、個⼈投資家。累計調達額は4億1000万円となった。調達した資⾦により、国内外でのさらなる研究開発の推進や事業拡⼤に取り組み、社会課題の解決に挑み続けるとしている。

2019年設⽴のCogSmartは、「早期段階からの認知症予防」の普及を目指す東北大学発の医療テクノロジー系スタートアップ。「脳医学とテクノロジーの⼒で、⼀⼈ひとりがいつまでも健やかに、⼼豊かに暮らすことができる社会を作る」をビジョンに掲げ、認知症の早期段階からの予防や、認知機能の改善・維持のための医療・ヘルスケア機器の製造販売事業、またこれらに関する解析・データサイエンス事業を手がけている。

同社が手がけるサービスの1つがBrainSuiteで、首都圏の病院・健診施設を中心に提供。さらに、東北や⻄⽇本エリアの病院でも提供を開始しており、今後全国各地での展開を予定している。

同サービスは、30代から70代までを対象に、頭部MR画像のAI解析技術などを利用することで、海馬の体積や萎縮程度を測定・評価し、同性・同世代と比較した脳の健康状態を可視化するものという。これにより行動変容のための「気づき」を提示し、脳の健康状態の維持・改善方法について受診者に合ったアドバイスを提供することで、「認知症にならない生涯健康脳」の実現を脳医学の観点から支援する。脳ドック用ソフトウェアBrainSuiteを手がけるCogSmartが3.5億円のシリーズA調達、事業拡⼤・国内外での研究開発推進

またCogSmartは、⼤規模頭部MRIデータベースを⽤いた医⽤画像分析に関する研究にて⻑い蓄積を持つ東北⼤学医学研究所 瀧研究室をはじめ東北大学と密に連携し、画像解析ソフトウェアなどの開発を実施。⼈⼯知能技術を活⽤した頭部MR画像解析プラットフォームを構築していることから、企業・医療機関様などの要望に応じて、認知症分野以外にも脳疾患・症状などに関する画像解析ソフトウェアの受託開発、またそのデータ分析を柔軟に⾏うことが可能という。

東北大学が電子のスピンをナノモーターの駆動力として提案、アインシュタインらによる実験で発見された磁気回転効果利用

東北大学が電子の「スピン」をナノモーターの駆動力として提案、アインシュタインが唯一かかわった実験で発見した磁気回転効果利用

東北大学は1月5日、アインシュタインが生涯で唯一かかわった実験で発見された磁気回転効果が、ナノモーターの動作原理に利用できることを量子論によって解明したと発表した。カーボンナノチューブと強磁性電極のハイブリッド構造で、ナノモーターの実現を目指すとしている。

ナノモーター(ナノ回転子)とは、電気モーターのように軸が回転するナノサイズの機構のこと。2層のカーボンナノチューブの外側のナノチューブを軸受けに、内側のナノチューブを軸にして回転させることでナノモーターを作る方法は以前から提案されていたが、その駆動方法については研究が進んでいなかった。そこで東北大学大学院理学研究科の泉田渉助教らによる研究グループは、磁気回転効果に着目した。

磁気回転効果は、20世紀初頭アインシュタインらにより検証・発見されたもので、磁石の磁気量を変えると、その変化量に応じて回転運動が生じるという現象。古典物理学では説明がつかず、後に量子論によって解明され、さらにそこから、電子には「スピン」という角運動量(回転の方向と大きさを表す量)があることがわかった。つまり電子は自転ができるということだ。量子力学的には、磁気回転効果は「電子の持つミクロな角運動量であるスピンと、マクロな物体の回転運動が相互変換される現象」となる。研究グループが提案したのは、2層構造のカーボンナノチューブと強磁性金属の電極を組み合わせ、電流を使ってスピンを回転運動に連続的に変換するという構造だ。

この機構は、ナノスケールの電気機械を回転駆動させるものだが、カーボンナノチューブだけでなく、小さな物体を回転させる技術に広く応用できるという。研究グループには、明治大学理工学部の奥山倫助教、仙台高等専門学校総合工学科の佐藤健太郎准教授、東京大学物性研究所の加藤岳生准教授、中国科学院大学カブリ理論科学研究所の松尾衛准教授が参加している。

宇宙で発生した電磁波が地上に伝わる5万キロにおよぶ「通り道」が世界で初めて解明される

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

金沢大学理工研究域電子情報通信学系松田昇也准教授らからなる国際研究チームは12月10日、複数の科学衛星と地上観測拠点で同時観測された電磁波とプラズマ粒子データなどから、電磁波の通り道の存在を世界で初めて突き止め、電磁波が地上へ伝わる仕組みを解明したと発表した

地球周辺の宇宙空間では、自然発生した電磁波が地球を取り巻く放射線帯を形成したりオーロラを光らせるなどの物理現象を引き起こしているが、1つの衛星や観測地点からの観測では、電磁波の伝搬経路全体を三次元的に捉えることができなかった。そこで研究グループは、日本のジオスペース探査衛星「あらせ」、アメリカの科学衛星「Van Allen Probes」、そして日本が世界に展開する地上観測拠点「PWING 誘導磁力計ネットワーク」とカナダが北米に展開する「CARISMA 誘導磁力計ネットワーク」を連携させて、同時に観測を行った。

それにより、宇宙空間の特定の場所で電磁波(イオン波)が生まれ、その一部だけが宇宙の遠く離れた場所や地上に届いていることがわかり、そのおよそ5万キロの旅の途中で宇宙のプラズマ環境変動を引き起こし、やがて地上に到達していることを解明した。

宇宙空間には冷たいプラズマが存在し、それが電磁波によって温められると、地上の大気の寒暖の変化のように、宇宙の環境が変化する。特に大規模な太陽フレアによる宇宙嵐が起きると大量の電磁波が発生し、人工衛星の故障、宇宙飛行士の放射線被曝、地上の送電網の障害など、多くの影響をもたらす。電磁波の通り道がわかれば、プラズマ環境変化が様々な場所で同時に発生する仕組みもわかる。

イオン波を4つの拠点で同時に捉えた観測結果

だがそれを解明するには、イオン波が発生している時間帯の、2つの科学衛星と2つの地上観測拠点の位置関係が大変に重要になる。研究グループは、そのタイミングを予測しつつイオン波の観測を続けたところ、2019年4月18日に4つの拠点でのイオン波の同時観測が達成され、同一のイオン波が地磁気赤道から地上に伝搬する「電磁波の通り道」が同定された。それによると、イオン波は5万キロの距離を移動するが、経路の断面はその1/1000ほどと小さい、細長いストロー状であり、広い宇宙空間で、きわめて局所的に伝搬経路が形成されていることもわかった。

あらせ、Van Allen Probesの衛星軌道と地上観測拠点の位置関係

「電磁波の通り道」が解明され、電磁波がどこで発生し、どう伝わるかがわかったことで、安全な宇宙利用に向けた「宇宙天気予報」の精度向上が期待されるという。同研究グループは「地球以外の惑星でも電磁波が発生し伝わっていく仕組みを解明し、宇宙環境変動の網羅的な理解と普遍性の解明へと歩みを進めていきたい」と話している。

この研究には、金沢大学の他、名古屋大学、東北大学、コロラド大学、ミネソタ大学、JAXA宇宙科学研究所、京都大学、九州工業大学、ロスアラモス国立研究所、ニューハンプシャー大学、情報通信研究機構、国立極地研究所、アルバータ大学などが参加している。

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学は11月17日、国際宇宙ステーション(ISS)に1カ月滞在したマウスを解析し、宇宙旅行の際には、腎臓が中心となって血圧や骨の厚さなどを変化させることを発見した。また1カ月の宇宙旅行では血中の脂質が増え、腎臓で余った脂質の代謝や排泄に関わる遺伝子が活性化していることもわかった。

東北大学大学院医学系研究科の鈴木教郎准教授と山本雅之教授らの研究グループは、JAXA筑波大学と共同でこの実験を実施した。同グループは、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在した12匹のマウスの腎臓を解析したところ、血圧と骨量の調整に関わる遺伝子群の発現量が変化していることを突き止めた。また、血液中の脂質が増加していて、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加していることもわかった。

地上では、重力に逆らって姿勢を保ったり血液を体中に押し出す必要があるが、それらを必要としない微小重力環境では、体の基礎的なエネルギー消費量が低下する。これまで、宇宙では重力の変化により、血圧と骨の厚さに変化が起きることはわかっていたが、その仕組みは明らかになっていなかった。今回の研究で、そこに腎臓の遺伝子群が関わっていることが判明したわけだ。

この結果から、宇宙旅行の際には、腎臓の健康状態を確認したり、薬剤などで腎臓の機能を調整するなどの腎臓の管理が重要になるとことが示された。今回得られたデータは、東北メディカル・メガバンク機構とJAXAが共同で整備する公開データベースに登録され、世界中の研究者がアクセスできるようになっている。

東北大学が擬似固体リチウムイオン電池の光造形3Dプリント製造技術を開発、室温・短時間でオンデマンド製造

東北大学が擬似固体リチウムイオン電池の光造形3Dプリント製造技術を開発、様々な基板上に室温・短時間でオンデマンド製造

東北大学は11月11日、インク化した正極、電解質、負極を光造形方式3Dプリンターで成型して固体リチウムイオン電池を製造する方法を開発した。燃えにくい擬似固体電解質膜を室温で、数分間で作れるため、車載用から体内埋め込み用まで、応用の幅が大きく広がる。

東北大学多元物質科学研究所の小林弘明助教と本間格教授らの研究グループが開発した方法は、擬似固体電解質材料となるリチウムイオン伝導性イオン液体と酸化物ナノ粒子の比率を調整し、ゲル状にしたものを紫外線効果樹脂に混ぜ、光造形3Dプリントで成型するというもの。これにより、室温でごく短時間で製造可能な、難燃性の電解質膜が生成できる。正極はコバルト酸リチウム、負極はチタン酸リチウムをそれぞれインク化してプリントする。

室温でプリントできることから、ポリマーなどの熱に弱い基板上にも直接プリントできるため、ウェアラブルデバイスへの応用も可能となる。また3Dプリントで製造できるため、医療用インプラント機器、生体適合性マイクロ電池のような小さなものから、車載用電池や設置型の電源などの大型のものまでオンデマンドで対応できる。

今後は、素材のインク化技術を活かして、マグネシウム蓄電池などの次世代、次々世代の二次電池への応用も期待されるとのことだ。

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の永富良一教授らの研究グループは、荷重センサーを装着したオフィスチェア(スマートチェア)と人工知能解析技術で、日々の腰痛悪化を高い精度で予測することを可能にした。

研究グループは、22人のオフィスワーカーの協力で、3カ月間にわたり4個の荷重センサーを座面下に装着したスマートチェアで仕事をしてもらい、データを収集した。また被験者には、1日3回、タブレットで主観的な腰痛の程度を記録してもらった。

その結果、同じ姿勢を保つこと(姿勢の固定化)を避けるために、人は細かく体を動かしており、それには共通する特定のパターンがあることが発見された。そして、そのパターンが見られなくなると、腰痛が高い確率で悪化することがわかった。このことから、腰痛の発生が予測でき、ストレッチやエクササイズを促すことが可能となる。

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

これまでは、「実生活におけるさまざまな規則性に乏しい時系列信号の数理モデル化」が難しかった。つまり、座っているときの短時間の不規則な姿勢の変化などを数式化することが困難であったため、「主観的腰痛」の予測はできなかった。その点において、それを可能にした今回の研究は大変に重要だと、同グループは話している。

こうした姿勢の固定化を防ぐ細かい体の動きの発見により、腰痛の他にも、肩こり、頭痛、関節痛などの不定愁訴の要因の解明と対処法の開発が進むとのことだ。

チームが極度の集中状態「ゾーン」に入り高パフォーマンスを発揮する「チームフロー」の脳活動を豊橋技術科学大学が解明

チームが極度の集中状態「ゾーン」に入り高いパフォーマンスを発揮する「チームフロー」状態の脳の活動を豊橋技術科学大学が解明

チームフロー時の中側頭皮質のベータ、ガンマ帯域の脳波。脳波解析の結果、チームフロー時に左側頭葉が特異的に活性化することがわかった

豊橋技術科学大学は10月6日、スポーツチームなど、複数の人間が協調して「ゾーン」(極度の集中状態)に入り、チームとして特別に高いパフォーマンスを発揮する「チームフロー」に関係する脳波と脳の領域を発見したことを発表した。チームフロー時の心理状態を客観的に研究する世界初の試みということだ。

これは、豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究所モハンマド・シェハタ(Mohammad Shehata)准教授が率いる研究チームと、カリフォルニア工科大学、東北大学の研究者との共同研究によるもの。チームフロー状態を調べるには、その状態を研究室で再現し、客観的に測定する必要があるが、それが長年の課題だった。研究チームは、それを可能にする方法を発見し、世界で初めてチームフローの神経科学的な証拠を明らかにした。

研究では、チームフローの状態を測定するために、チームフローではない状態も再現して、これらと比較した。被験者に2人1組で音楽ゲームをプレイしてもらい、通常のチームフローの状態、仕切りで互いの顔を見えなくしたソロフローの状態、音楽を編集してランダムな音列にしてフローになれないようにしたチームワークの状態をそれぞれ再現し、実験後、被験者に質問に答えてもらってフロー状態のレベルを評価した。

その結果、チームフロー状態のとき、中側頭皮質でベータ波とガンマ波が増加していることがわかった。またチームフロー状態では、通常のチームワーク状態に比べて、チームメイトの脳活動がより強く同期することもわかった。

研究チームは、この研究を「ビジネス、スポーツ、音楽、舞台芸術、ゲーム、エンターテインメントなど、人のパフォーマンスや喜びが重要な分野において、脳神経モデルに基づいたより効果的なチームビルディング戦略に活用できる方法論を提供するもの」だとしている。

今後は政府機関や産業界と協力して、チームのパフォーマンスのモニターや強化、効果的なチーム構築に、この研究を役立ててゆくという。また、「楽しさを維持しながらパフォーマンスを向上させることは、うつ病やパニック障害、不安症の発生率を低減するなど、生活の質の向上につながる可能性があります」とも話している。

東北大学がコバルトを使わないリチウムイオン電池の高電圧動作を実証

東北大学がコバルトを使わないリチウムイオン電池の高電圧動作を実証東北大学多元物質科学研究所は、9月27日、コバルトを使わないリチウムイオン電池の正極「LiNi0.5Mn1.5O4」(リチウムニッケルマンガン酸化物:LNMO)の高電圧動作に成功したことを発表した。政治的にもリスクの高いコバルトのサプライチェーンの回避や、5ボルト級リチウムイオン電池、全固体電池の高エネルギー密度化などが期待される。

リチウムイオン電池の電極にはコバルトが使われている。しかし、世界のコバルト鉱石生産量のうち半分以上を、政情不安定なコンゴ民主共和国1国が占めている。また、コバルト冶金の生産は世界の6割以上を中国が占めている。そのため、将来EVの生産量が急増したり、国際情勢が変化したときなどに、コバルトの供給が不安定になる危険性がある。

そこで、東北大学多元物質科学研究所の小林弘明助教、本間格教授らは、コバルトを含まないコバルトフリー正極の技術開発を進めてきた。これまで、スピネル型結晶構造のLNMOが高電圧、高エネルギー密度の正極活物質として期待されていたが、従来のリチウムイオン電池の動作電圧が3.7ボルトなのに対してLNMOは4.7ボルトと高く、そのため電解液の分解などにより充放電サイクルが困難になるという問題があった。そこで小林助教らは、耐電圧性の高いフッ化物固体電解質Li3AlF6を開発し、これを薄膜コーティングしてコアシェル構造正極を作ることで、安定した高電圧動作を実証した。

コーティングしていない正極は、高電圧動作で生じた電解液の分解物が堆積して電気抵抗が増加し劣化したが、コーティングしたものは電解液の分解が抑えられ、高いサイクル特性が示されたという。

これは、5ボルト級のリチウムイオン電池、コバルトフリー正極材料、全固体電池といった「ポストリチウムイオン電池」への応用が期待される。さらに、フッ化物固体電解質のリチウムイオン伝導度を高めることで、「車載電池の本命である全固体電池の高エネルギー密度化」も期待できるとのことだ。