米雇用統計の不振を受け、ハイテク株は小幅な上昇を続ける

更新:この記事を掲載してから、ハイテク株は上昇を止め、NASDAQと我々が追跡しているソフトウェア銘柄はともに下落した。少し遅れて、完全雇用への懸念とそれによる金利上昇が市場でのセンチメントバトルに勝利したようだ。

ここ数カ月、経済ニュースとテクノロジー銘柄の価値の関係は、楽しいパズルだった。

例えば、雇用統計が好調であれば、一般的に経済が楽観的になり、その結果、テクノロジー株も上昇すると考えるかもしれない。また、経済指標が悪いと、一般的な景気悲観論につながり、その結果、テクノロジー株は下落すると思うかもしれない。なぜなら、テクノロジーは現在の経済の大きな部分を占めているからだ。

ハハ、違う。まあ、部分的にはそうだが、そうでもない。

米国時間1月7日の雇用統計に向けて、市場にはある恐ろしい空気が漂っていた。つまり、米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年に、おそらく債券買い入れプログラムの終了、バランスシートの圧縮、金利引き上げなどを通じて金融引き締めに乗り出すというものだ。FRBが金利を引き下げる結果、債券やその他の低リスク資産の魅力が増すことになる。同時に、リスク調整後のリターンで考えると、金利上昇により、高価なハイテク株の魅力が薄れると予想される。

このような力学からして、力強い雇用統計ではハイテク株は下がり、雇用統計が冴えなければハイテク株は上がると予想できるかもしれない。それはほとんど現実のもとなった。1月7日に発表された2021年12月雇用統計は予想を下回り(19万9000人の新規雇用、予想の約半分)、ハイテク株は当初売られた。しかし、取引が始まると、NASDAQは0.34%上昇し、ダウ平均はわずかに下落したが、ソフトウェア株は約0.8%上昇した。

なぜハイテク株の価値が下がり、そして跳ね返ったのか。

事実上、完全雇用に達したという懸念がある。つまり、12月の雇用者数が伸び悩んだのは、雇用側の需要不足だけでなく、労働者不足も一因だったということだろう(もちろん、世界的なパンデミックが続いていることも、この動きの一因だ)。

そして、雇用統計の悪化は、経済が予想以上に好調(完全雇用に近い)であることを示すという奇妙な状況に陥っていて、賃金と物価が上昇し続け、FRBが利上げに踏み切ることを示唆している。そうなると、前述のように、高リスクの資産が売られ、低リスクの資産がより魅力的になることを意味する。にもかかわらずテック株が少し上がっているのは、ここ数週間で急激に売られたハイテク株にとって、この低調な統計がプラスに働くと市場が判断しているからだろう。あるいは、冴えない雇用統計は、強い雇用統計よりもFRBを刺激しない、と判断しているのかもしれない。

というわけで、今日のハイテク株は高く、この業界で働く人はみんな、ちょっとした富を手に入れたことになる。

画像クレジット:Jorg Greuel

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルは新チップでテック業界を湧かせるが、ウォール街はあくびをする

Apple(アップル)がイベントで何かを発表しても、マーケットはほぼ反応しないことについてのおなじみの連載記事に、2021年もようこそ。

いやむしろ、Appleの株価は、同社自身が発表するものよりももっとずっと外部のイベントに対して敏感なようだ。同社による記者たちに愛想がいい長時間の発表の間、株価がNASDAQ総合よりも上がるとしたら、それはレアケースとなる。

そのことは今でも私たちにとってやや驚きだが、Appleのイベントは当日までに情報が十分リークしてしまうため、その日が来る前に新製品発表などは株価に織り込み済みになるのかもしれない。

そんな議論もおそらく必要なのだろうが、マーケットに関しては十分ではない。手は出すけど本格的ではない、なまぬるいというところか。本日のAppleは、PC用チップまで発表したのに、そのすごさは反映されなかった。そう、Appleは新製品M1 Proを詳しく紹介したし、M1 Maxチップだって驚異的だ。たしかに、これらの名前はいかにもベビーブーム世代らしい安っぽさだが、チップそのものは感動的な偉業ではないか。そしてAppleはその新チップを、一連の予想よりも高額なコンピューターに搭載している。

こんな考えもある。ハードウェアはすごい。しかしコンピューターの価格に対して高すぎる?この説は、どうだろう?しかもAppleの株は午後1時から2時までのイベントの間にNASDAQをかなり追っていた。下図のように。

この図における唯一の注目ポイントは、午後1時以降、Appleの最初の下降がNASDAQのもっと大きなテクノロジーコレクションの下降よりも急激であることだ。しかし、その後Appleはさらに急激に回復している。その結果、取引の全時間がまるで仮装だ。Appleも、他のテクノロジー株と同様に前進した。やれやれ。

私がAppleのエンジニアだったら、頭に来ただろう。おい、みんな見てくれ、すごいチップだぞ。長年インテルは、汚物を垂れ流して市場を食い物にしてきた。それができたからね!しかもそれなのに、ウォール街がまったく全然、感動しないなんて。

画像クレジット:Apple

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ハイテク株の下落が続く、被害はソフトウェアやインシュアテックも含む広範囲に

米国時間3月5日、これまで高値を維持していたソフトウェア会社の株さえもが下落し、ハイテク株がさらに打撃を受けた。

1年間太陽の下で楽しんできたセクターにとって、最近の取引は市場の崇拝期間に穴を開けるものだ。市場がハイテク株の評価を見直しているというのは早計だが、今回の下落は重要なポイントに達しており、注意しなければならない。

関連記事:再び上昇するSaaSの評価額に何が起きているのか?

この記事を書いている時点で、ハイテク株の多いNASDAQ総合指数は、前回の下落に続いてこの日も1.2%下落している。今や有名になったアークイノベーションETF(上場投資信託)は6.5%下落しており、テックセクターで注目すべき下落銘柄のリストは非常に長くなっている。

市場心理の変化は、最近の結果を見ても明らかだ。ここでは、テック系のNASDAQ総合指数を見てみよう。

NASDAQ総合指数の52週高値:14,175.12
米国時間3月5日のNASDAQ総合指数:12,561.13
変動率:-11.4%

そしてSaaSやクラウド株だけで考えると被害は激化する。この分野を追跡しているBessemer cloud index(ベッセマー・クラウドインデックス)を見てみよう。

ベッセマー・クラウド・インデックスの52週高値:2,884.23
米国時間3月5日のベッセマー・クラウド・インデックス:2,185.62
変動率:-24.2%

簡単に言えば、NASDAQは玉整理に入っており、SaaS株は弱気相場の領域に達しているということだ。両者とも最近の高値維持から大きく転換した。

ソフトウェアだけではない

米国時間3月4日のTechCrunch編集室では、もう1つのネオ保険会社であるHippo(ヒッポ)の株式公開を前に、インシュアテック(保険テクノロジー)株の価値が急落していることを指摘した記事が書かれていた。

SPAC主導によるHippoの株式上場は、ウォームマーケットに着地しないだろう。米国時間3月5日の同時代の企業は以下のようになっている。

Lemonade(レモネード)の52週高値:188.30ドル
Lemonadeの現在の株価:84.72ドル
変動率:-55.0%

Root Insurance(ルートインシュアランス)52週高値:29.48ドル
Root Insuranceの現在の株価:12.38ドル
変動率:-58.0%

MetroMile(メトロマイル)の52週高値:20.39ドル
MetroMileの現在の株価:10.04ドル
変動率:-50.8%

被害は広範囲に及ぶ。最近のIPOの成功事例であるSnowflake(スノーフレーク)は米国時間3月4日、収益が前年同期の8800万ドル(約95億5000万円)から、直近の四半期では1億9000万ドル(約206億円)に成長したと発表した。そして、その株式は翌日、7%以上下がっている。

この評価の変化がほんの一過性のものなのか、それとも風向きが落ち着いた変化なのか、その判断は読者におまかせする。しかし、外部ではまた違った反応が見られる。

スタートアップ企業にとって、これらはすべて悪いニュースだ。2020年には好調だった企業価値が、2021年にその輝きが失われると、後期ステージの価値が圧縮される可能性があり、シリーズAやBラウンドでは成長を続けたスタートアップの上昇傾向が制限されることになるかもしれない。しかし、そのような影響は市場には及ばないため、まだ状況が変わると判断するのは早いだろう。

それでも、すべての個人投資家は、自分たちの案件についてはイグジットに目を向けている。そのイグジットが突然縮小した場合、次の投資では非常に多くの利益を得ることに関心が向く可能性が高くなる。

カテゴリー:その他
タグ:インシュアテック株式市場SaaS

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

世界的ハイテク株急落の原因について諸説を紹介

米国時間2月23日、テクノロジー株の比重が高いNASDAQ総合指数が前日から 2.34%ダウンした。Tesla株は6%以上下がっている。Teslaは2021年初めに史上最高値を更新した後、弱気相場による修正局面に入っている。Appleも122.02ドルと、145ドル以上だった最近の高値からダウンしている。

ハイテク株ばかりが買われていると感じられる期間が長く続いたが、最近の修正には実質的なものがありそうだ。

売りの程度を測定する方法として、 たとえばBessemerのクラウド指数は米国時間2月22日、5%を下げた後、続いて今日4.5%ダウンした。多くの投資家が急成長テクノロジー株投資の目安としてきたARKのETF(上場投資信託)、ARKK(ARKイノベーションETF)も同日5.9%下落し、さらに23日には6.6%下がった。

なんと、最近無敵の値上がりを見せていたBitcoinでさえここ数日打撃を受けている。

テクノロジー企業、またテクノロジーに特化した各種指数、また暗号通貨のような隣接分野の市況を突然逆転させた理由は何だろう?もちろん、世界の株式市場のように途方もなく複雑な環境では単に1つの要因だけでものごとが起きることはない。しかし、いくつか検討すべき説明が登場している。

「『金余り、債権安でみんなが株を買う』という主張が勢いを失った」とする説明には聞くべきものがある。債権利回りが上昇するにつれ、債券投資の魅力が増している。同時に新型コロナワクチンの大量接種が開始されたことで、株式投資家も、景気回復をにらんで資金をハイテク以外のカテゴリーに振り向き始めた。

ものの見方がシフトするにつれて、テクノロジー企業の背中を押していた順風が少なくとも今のところ弱まった。この天気の変化がテクノロジー株価が新たな均衡点に達するまで続くならば、新規株式公開(IPO)への意欲は減退するだろう。スタートアップの会社評価額が下落するといった事態が発生する可能性もある。

以下は2月23日の「何が変わったのか」を説明するCNBCの説明だ。

金利の上昇とパンデミック後の景気回復に連動した銘柄への転換が進んだことを受けて、火曜日(2月23日)にもハイテク株の下落が続きました

同じテーマについて2月22日のWall Street Journalはこう書いている。

利回りの上昇は景気回復が堅調に進むという投資家の期待を強く反映している。しかし、投資家やアナリストらによると、企業の借り入れコストの上昇、株式に代わる選択肢がほとんどない投資家の選択肢の増加、一部のハイテク株の評価モデルの悪化などが、担保としてのダメージにつながる可能性がある。

こちらは2月23日のBarronsの記事だが、今見ている現象は米国株式市場だけの問題ではないとしている。

米財務省証券10年債の利回りが上昇したことでTesla、Facebook、AppleなどNYSE FANG+指数のメンバー各社の株価は急落している。これは外国市場でも同様の傾向だ。

もちろん市場は反発するかもしれないし、しないかもしれない。今後数日間、株式市場の動きを注視する必要がある。

カテゴリー:その他
タグ:株式市場

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:滑川海彦@Facebook

RedditとRobinhood問題、気候変動、Zoom関連ほか先週の株式市場とスタートアップまとめ

RobinhoodとDeFi

Robinhoodはすべての人々が金融市場にアクセスできるようにすることを約束するスタートアップだが、最近、GameStop、AMCなどいくつかのミーム株(急騰している人気株)の取引を一時制限した。多数の個人投資家はフィンテックの「期待の星」がその名にふさわしくない措置を取ったとして非難した。理由は短期的かつ市場取引の技術的側面に由来したのかもしれないが、一般の個人投資家は「この選択は腐敗している」と感じた。

理由はこうだ。Robinhoodが取引を制限したのは主要なパートナーである大型ヘッジファンドが株価の値下がりを予測してショートポジション(空売り)を狙ったのに対して、株価のさらなる値上げを図っていたRobinhoodのユーザーが利益に反すると感じたからだ。この利益相反は明白であり、「金融の民主化」が実現にあたって多くの皮肉を含むキャッチフレーズであることを示している。 個人投資家は現在PublicやWebullなどRobinhoodのライバルに移動し、多くのショート筋を攻撃している。

他のスタートアップはいくつかの教訓を学べるはずだ

つまりシステムの非集権化が強まるにつれて暗号通貨とDeFi(分散型金融)分野におけるスタートアップの位置が高まる。Redditの共同創設者であるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏は、TwitchでAlexandria Ocasio-Cortez(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)下院議員にGameStop問題とRedditの立場について説明した。同氏はこう述べた。

朝起きて「1週間前の状態に戻ろう」と考える人間はいません。全体として、人々がいったん見てしまったことを見なかった状態に戻すことはできません。今後、分散型金融に対してますますエネルギーが注がれるでしょう。ゲームの結果をあらかじめ操作することができないような仕組みを探す試みが強まります。Bitcoinが高値の新記録なを更新している現在、Robinhoodの失墜は分散型金融の価値をさらにアップさせる意味しかありません。

私が重要だと思う2つ目のポイントは、個人投資家をユーザーとするフィンテックスタートアップが制度的規制の圧力をこれまでなかったほど意識していることだ。 今回は1つのスタートアップが規制に屈したかもしれないが、これは他のスタートアップも安全でないということだ。またオープンかつ自由な市場は簡単に実現を約束できるものではない。アーリーステージのフィンテックスタートアップにとって最大の課題は、創造的破壊の混乱の中でイノベーションを確保する方法だ。

今のところ、私に言えるのはこの程度だ。興味があれば私のポッドキャストを聞いていただきたい。いずれにせよウォールストリートにとって激動の1週間だった。これはスタートアップに長期的にどんな影響を与えるだろうか?読者に意見があれば、natasha.m@techcrunch.com にメールするか、Twitterで @nmasc_ にDMを送っていただきたい。

気候テックという雑草

画像クレジット:James A. Guilliam/Taxi/Getty Images

気候テクノロジースタートアップに対するアーリーステージの資金調達はいまいち盛り上がりに欠けている。しかしこのカテゴリーのスタートアップは維持可能な規模に成長するために資金調達を必要としている(地球を温暖化にの運命から救わねばならない)。TechCrunchのJonathan Shieber(ジョナサン・シーバー)記者は今週、ベンチャー投資家のうち誰が気候テクノロジーの重要性を認識しているかについての記事をいくつかアップした。

その他にも、1人のベンチャーキャピタリストが、SPACがクリーンテックの新興企業にとっての道だと考える理由。 またアーリーステージのアクセラレーターが持続可能性を重視するスタートアップのクラスをスタートさせた。

Zoom以外のリモート教育

1年足らずの間にEdTechがブームとなり、それに続きスタートアップが統合を目の当たりにしたのは注目に値する出来事だ。パンデミックという否応ない力に押されたリモート学習の進展に支えられこのセクターでは、忙しい日々が続いた。

ポイントは以下のとおり。生涯学習がEdTechの主流になってきたと13人の投資家が考えている。これまでも教育機関が概して新たな支出を渋るのに対して、子供たちの親のほうが熱心であるため、一般向EdTechのほうがセールスが容易だった。パンデミック後、学校での学習を代替するような学習サービスに需要が急増した。投資家に対する我々の調査では、この分野でチャンスが失われたのはどの分野か、アーリーステージのスタートアップにとって最大のハードルは何なのかなどの詳細などが明らかにされている。

その他にも、科学教育におけるMinecraft級の成功を目指すスタートアップが投資家からのシード資金の獲得をスタートさせている。一方、2011年に創立されたEdTech企業は8年間後に黒字化した。現在では数十万の有料加入者を得ている。ちなみに赤字と規模拡大を続けているEdTechがSPACを介して上場される。

SPAC=特別買収目的会社がブレーク

SPACは庭の雑草のようなもので、1カ所抜いても別のところにすぐ生えてくる。正確には300カ所だ。

記憶すべき点はこうだ。今週、Chamath Palihapitiya(チャマト・パリハピティヤ)氏はLatchとSunlight Financialの2つのSPAC設立を発表した。

2015年10月8日にサンフランシスコで開催されたBloomberg West TelevisionでインタビューされるSocial + Capital Partnershipのファウンダー、マネージングパートナーのパリハピティヤ氏。同氏はベンチャーキャピタルの多様性を増進する方法について語った(画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images)

Coinbaseは直接上場で株式公開する。Squarespaceは非公開で株式公開を申請。WeWorkは企業分割で株式公開するかもしれない。

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カテゴリー:その他
タグ:RobinhoodRedditGameStop教育株式市場

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:滑川海彦@Facebook

米下院はGameStop問題でオンライン株取引サービスの公聴会実施へ

米国時間1月29日にGameStop株をめぐるショートスクイズ問題は議会の注目するところとなった。すでにこの問題に関する公聴会が計画されている。

米下院の金融サービス委員長で民主党、カリフォルニア州選出のMaxine Waters(マクシーン・ウォーターズ)議員は、ヘッジファンドによるこれまでの略奪的経済行為を指摘し、状況を調査する必要があるとした。

ウォーターズ議員は、Robinhoodといった金融サービスを名指ししなかったものの、将来のヒアリングでは、ショート(空売り)の「ゲーミフィケーション」だけでなく、オンライン取引プラットフォーム全体の経済的影響について体系的に調査すると述べた。ただし公聴会のスケジュールはまだ決定されていない。

ウォーターズ議員は「略奪的かつ市場操縦的な行為に対処することは議会と証券規制当局の義務です。我々には投資家を保護し、資本市場が公正かつ秩序をもって効率的に運営されるようにする責任があります」と述べている。

一方、米上院では、銀行委員会の次期委員長のSherrod Brown(シェロッド・ブラウン)上院議員が「最近の株式市場の現状」を明らかにする公聴会開催計画を発表した。「ウォールストリートの証券ビジネスの人々は、自分たちが損害を受けたとき以外は規則など無視しがちです」とブラウン議員は述べた。

民主党選出のRashida Tlaib(ラシダ・タリーブ)、Alexandria Ocasio-Cortez(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)、Ro Khanna(ロ・カーンナ)の各議員は、Redditに集まった個人投資家が主導した株価の急騰の最中にそうした株の売買を停止したとしてRobinhoodを非難した。なおMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)が所有するE-TradeもRobinhoodに続いた。

共和党テキサス州選出のTed Cruz(テッド・クリーズ)上院議員は、 民主党の主張に同調するかたちでRobinhoodの行動に懸念を示した。パンデミックへの対応や大統領弾劾をめぐる争いの最中であっても、両党の議員はテクノロジー企業に対して厳しい質問を用意する点では同調していることを示すものだろう。

この態度は議会だけのものではない。ニューヨーク州司法長官のLetitia James(レティシア・ジェームズ)氏も短い声明を発表し、「我々はRobinhoodの活動に関して多くの懸念が提起されたことを認識している」と述べ、状況をさらに検討すると述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Robinhood株式市場

画像クレジット:AaronP/Bauer-Griffin/GC Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker 翻訳:滑川海彦@Facebook

中国政府のAnt、Alibabaへの規制強化を受けて世界の投資家は中国のハイテク株から脱出中

ジャック・マー(馬雲)氏が設立したAntとAlibabaは最近まで中国のテクノロジー・エリートの最高の達成点として歓迎されていた。しかしこの世界的企業グループが中国政府から厳しい取り締まりを受けたことで世界の投資家は中国のテクノロジー株から脱出し始めている。

中国の主要テクノロジー企業の株価は急激に下落している。Alibaba、Tencent、JD.com、Meituanは数日で時価総額2000億ドル(20.7兆円)を失ったとBloombergは推計している。

中国を代表するフィンテック企業であるAntグループの株式上場が土壇場で政府から中止を命ぜられたことで関連企業である電子商取引の巨人も大きく動揺していた。中国政府の市場監視機構は反競争的行為の疑いでAlibabaの捜査を始めたと伝えられる。

Antグループ自身は12月26日に政府の召喚を受け、ビジネス慣行を「修正」する計画を提出することを余儀なくされた。

Alibabaの株価は、10月下旬の直近の高値から約30%下落している。さらに中国国内市場におけるテクノロジー株も広範囲に下落している。 中国のテクノロジーに焦点を当てた上場株投資信託の1つは、今日の取引による1.5%の下落を含めて直近高値から約8%ダウンした。

投資家がAlibaba株式に投資するために利用した米国預託証券(ADR)はニューヨーク証券取引所での12月23日の取引終了時の1株あたり256ドルからわずか1日で約222ドルに下落した。 同社は今日、さらに0.5ポイント下落している。 今四半期当初には1株あたり319ドル以上だった。

中国でハイテク企業と中国共産党との間で緊張が高まっていることは明らかでこれまでも投資家を強く懸念させていた。しかしジャック・マー氏の中国政府との関係は他の有名起業家の場合と比べても一層険悪化なものとなった。Tencentのファウンダー、ポニー・マー(馬華騰)氏、百度の共同ファウンダー、エリック・ヨン(徐永)氏とロビン・リー(李延紅)氏はジャック・マー氏とくらべて脚光を浴びまいとしている。

Bloombergは現在の市場の状態を簡明にまとめている。それによれば、最も直接的に政府の標的となっているのはジャック・マー氏のように見えるが、別の機会に中国の規制当局はTencentのゲームにおける影響力を減殺しようと焦点を当てている。

特にAlibabaの事態は悪化の一途をたどっており、大規模な自社株買いプログラムによっても出血を止めることができなかった。

今回の新たな規制は、単発的、一過的なのか、それとも中国政府がハイテク企業を国益に従属させようする努力の表れなのかはまだはっきりと見極められない。アメリカと中国の間でテクノロジー上の対立が激化しする中、これまで政治を避けて成長を遂げてきた多くの企業が外交と国家安全保障の十字砲火にさらされることになるかもしれない。

一方、新たに中国政府から後押しされて幸運が微笑んでいる企業もある。

これはCPU分野では以前から明白で、中国がテクノロジーの自立化を推進する中で新たな事業と新たな富豪が生まれつつある。Liu FengFeng(刘峰峰)氏は国内に新しい半導体メーカーを建設しようとするTsinghon(清鸿光科)を設立してすぐに500万ドルを調達することができた。機械学習アプリケーションに特化したチップセットを製造すIntellifusion社は、4月に1億4100万ドルを追加調達している。

非政府投資家は、中国政府の規制の風向き次第で危機に直面するリスクがある中国のテクノロジー・スタートアップを支援することに意欲を失うかもしれない。 この地域の他のスタートアップ市場(とりわけインド、日本)が中国の規制強化から恩恵を受けるかどうかは、2021年に津注目すべきトピックの一つとなるだろう。
画像:Getty Images

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滑川海彦@Facebook

有望な新型コロナワクチン開発のニュースを受けZoomやPelotonの株価が急落

新型コロナウイルスのワクチン候補に90%の予防効果が認められ、数カ月もしないうちにワクチン接種が始まるかもしれないというニュースを受け、世界の株式市場は反発している。相場はひっくり返り、先物も取引開始前で急上昇した。新型コロナによって打撃を受けた産業にとってはいいニュースだ。しかし、すべての企業が上昇気流に乗っているわけではない。

実際、米国時間11月9日に航空会社やクルーズ会社の株価はラザロのように復活している一方で、これまでもてはやされていたZoom(ズーム)やPeloton(ペロトン)のような企業の株価は急落している。

Pelotonのエクササイズマシーンは外出がままならなくなった運動習慣のある人に愛用されたため、同社の株価は急成長していた。しかし、ワクチンのニュースを受けて同社株は13%近く下げている。企業に活用されている人気のビデオチャットサービスZoomの株価も13%下げている。またEtsy(エッツィー)やWayfair(ウェイフェア)といったオンライン小売も影響を受けていて、2桁の下げ幅となっている。Amazon(アマゾン)すら取引開始前で2.3%下げている。

11月9日の朝は、これまでのトレンドの反転となっている。今夏、テック株は投資家のお気に入りだったが、いまは明らかにテック株から金が逃げ、さほど高くない他の株へと移っている。

時期尚早ではあるが、投資家がいまや大幅に広がった成長投資に資金を注ぐにつれ、ソフトウェア業界の株価も大幅に下げそうだ。そうなれば、テック業界はぱっとしない公開企業のバリュエーションを受け入れざるをえなくなるだろう。

そうした動きはスタートアップ、特に上場に向けてバリュエーションを気にかけているレイターステージのスタートアップに影響をおよぼすかもしれない。レイターステージスタートアップ投資は2020年、投資家がIPOや他のメカニズムを流動性オプションととらえたためか活発だった。そうした投資額が少なくなれば、テックスタートアップは資金確保が厳しくなるかもしれない。

もちろん語るにはまだ早く、状況は変わりうる。実際の経済活動に影響をおよぼすには数カ月かかるニュースに、投資家はあまりにもアグレッシブに反応しているのかもしれない。しかし11月9日に、2020年の株式市場における新章が始まったようだ。

カテゴリー:その他
タグ:新型コロナウイルス株式市場

画像クレジット:MarsYu / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

トランプ米大統領の新型コロナ感染を受けて米株価が下落

トランプ大統領とその家族、主要スタッフのメンバーが新型コロナウイルスの陽性反応を受けたことを受け、米国株が売られている。このニュースは一夜にして出てきたもので、すべての主要な米国kの指数に重くのしかかっており、テック株も例外ではない。この記事を書いている時点で、この混乱の状況は以下のとおりだ。

  • ダウ工業株平均:先物は1.5%下落
  • S&P 500:先物は1.63%下落
  • ナスダック総合指数:先物は2.32%下落

ベッセマー・クラウド・インデックスのような小規模でより特定のバスケットの株式は市場前に同様の数字を発表しないため、このニュースとそれがもたらす可能性のある政治的不安定化が、最も高く飛んだハイテク産業の株式に与える正確な影響を見ることはできない。

周辺の関連情報を集めると、Datadogはマイナス2.9%。Salesforce(セールスフォース)はマイナス1.8%。Zoomはマイナス1.7%。Crowdstrikeはマイナス3.2%など。要するに、SaaSやクラウド株はテック株に比べてあまりいい結果にはなっていないようだ。

最近の直接上場銘柄であるPalantirはマイナス3.8%、Aasanaはマイナス3.4%となっている。そのほか最近のIPO銘柄も同様に下落しており、その中ではJFrogは取引開始前にマイナス5.8%、Snowflakeは市場前取引にマイナス4.6%だ。

トランプ大統領の診断を受けて株式市場が苦しんでいる理由は想像に難くない。すでに不安定な選挙が間近に迫っており、複雑な要因が投資家の信頼に悪影響を与えている。それは株にとって悪いことだ。完全に健康な大統領が 景気刺激策を実行に移すには絶好の機会となる。景気刺激策は、現在の混乱によって弱体化する可能性があるし、まだまだ続くかもしれない。

TechCrunchは日が続くにつれて市場に目を光らせるが、あなたの個人口座が日の初めよりも日の終わりのほうが良く見えることを期待しないでほしい。

カテゴリー:パブリック・ダイバーシティ
タグ:株式市場新型コロナウイルスドナルド・トランプ

画像クレジット:MarsYu / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

アップルの時価総額が2兆ドルの大台に

株式市場全般が壊滅的な影響を受けている(Investopedia記事)ことが、かえってアップルの時価総額を新記録にまで押し上げることになった。8月20日朝の時間内取引でFAAMGの一員である同社の時価総額が一瞬2兆ドル(212兆円)を記録した。ただしその後下落して大台をわずかに割っている(Yahoo!ファイナンス記事)。

アップルの株価は2020年に入って59%も上昇した。最近の四半期決算(アップルリリース)によれば収入は対前年度11%という控えめな伸びだった。同期の一株あたり利益は18%アップとずっと良好な数字ではあるが株価の上昇に比べればはるかに小さい。

新型コロナウイルスによるパンデミックの初期に世界中で厳しい措置が取られたため、株式市場は急激な下落を示した。しかしテクノロジー企業の多くはその後株価を大きく戻している。世界経済が常態に復帰したとき、テクノロジー企業が占める位置は現在よりもはるかに強力になっているだろうというのが投資家の全般的な期待のようだ。この期待はアップルのようなデジタルサービスビジネス(未訳記事)において特に強い。

今年、テクノロジー分野の株価は軒並み新高値をつけており、最近のNasdaq総合指数は1万1000ポイント(ドル)台という高い水準だ。

3年前に、FAAMG(Facebook、Apple、Amazon、 Microsoft、Alphabet)などと呼ばれる大型テクノロジー企業の時価総額は合計3兆ドル(318兆円)前後だった。これは当時大ニュースだった(Crunchbase記事)。ところが現在ではアップルとマイクロソフトの2社の時価総額合計が3.6兆ドル(382兆円)だ。

巨大テクノロジー企業の株価上昇はこの10年間話題となってきたし、この一年の最大の話題でもある。テクノロジー企業群の株価を決めるのは投資家の判断によるものではあるが、この株価水準は行き過ぎではないか(未訳記事)という警告のサインはいたるところに見出される。

しかし多くのスタートアップにとっては大変いいニュースだ。投資家一般が興奮して公開株が上がれば非公開株の価値も上がる。投資家の熱狂は株式上場に追い風となり企業買収も活発となる。アップルは今やギリシャ神話に出てくる大富豪であるクローサスも恥じるほどの巨額の資金を溜め込んでいる。つまりスタートアップは次の資金調達ラウンドで時価評価額を好きなように決めることができるだろう。

画像:Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

コロナ後の世界、7つのシナリオ

編集部注:本稿はJon Evans氏による寄稿記事だ。Jon Evans氏はHappyFunCorpのエンジニアリング担当CTO。グラフィックノベル、紀行本など6作品を発表し、受賞歴もある著述家。2010年よりTechCrunchの週末コラムを担当。

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世界は大恐慌以来の深刻な経済危機に直面したのにもかかわらず、米国株式市場は昨年の同時期よりも高値で推移している。AirBNB、Lyft、Uberなどの米テクノロジー大手が従業員の20%をリストラする一方で、ビッグファイブと呼ばれる米IT大手5社が米国株式市場の時価総額の20%という記録的な割合を占めている。一体、何が起きているのか。

確かに、上記3社は新型コロナウィルス感染症のパンデミックによる直接的な打撃を受けている。しかしそれは他の業界も同じだ。いくつか例を挙げるだけでも、旅行、小売、接客、エンターテインメント、イベント、不動産、ビジネスサービスなどの業界が直接的な影響を受けているし、これ以外の業界も例外なく間接的な影響を受けている。

それでは、市場は全体として、その無限の英知に基づいて、どのような未来を予測しているのだろうか。「市場は、短期的に見れば投票機のようで、長期的に見れば計量器のようだ」という古い名言がある。その計量器で今、測り出されているのはどんな未来なのか。

筆者には、時代の行く末を示す大いなる抽選器の中でガラガラと回るくじ玉が7つ見える。

「V字型」シナリオ

未来のシナリオ:想定される未来の中で最善かつ最も苦労が少ないシナリオ。人間は新型コロナウィルスに勝利し、手洗い、マスク着用、物の表面の消毒などの簡単な対策により、その後の感染者激増を防ぐ。都市封鎖が終わると、人々は一斉に以前と同じ活動に戻る。一部の業界では数か月余分に時間がかかるかもしれないが、秋になれば学校やフライトが再開され、生活はおおむね通常どおりになる。それに続いて経済と雇用も通常に戻り、今回のパンデミックによる短期間かつ急激な不況は、11月になればV字回復する。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:40%ということにしておく。

現実的な可能性:これは途方もなく無知な妄想である。厳重な都市封鎖を実施しても感染者数は良くて横ばいという国が多い。マスク着用や手洗いは効果的で重要な対策ではあるが、それだけでは不十分だ。米国では、マスク着用が嫌で殺人事件が起こるという事態も発生した。最も重要な点は、人々が一斉に以前と同じ活動に戻ることは絶対にあり得ないということだ。実は、以前と同じように活動することを、都市封鎖が始まる前からすでにあきらめていた人々がいたことを示すデータがある。新型コロナウィルスが依然として流行する中では(当然ながら)外出が自粛されるため、都市封鎖の有無に関わらず、個人消費の低迷が続き、それに引きずられて雇用や経済の低迷も続く。

「赤と緑」シナリオ

未来のシナリオ:世界はグリーンゾーンとレッドゾーンに分かれる。グリーンゾーンでは、新規感染者数がゼロに近い状態が維持され、検査1回あたり50ドルを被検者に支給して貧困層の検査を徹底することにより検査の範囲と頻度が向上し、詳細な接触者追跡や自宅外隔離が強制されることにより、集団発生が追跡される。レッドゾーンからグリーンゾーンに移動する人は、グリーンゾーンに入る前にバッファ区域での隔離が課せられる。グリーンゾーンでは経済活動が非常に活発になるが、レッドゾーンでは新型コロナウィルスとの戦いが続き、経済は引き続き半昏睡状態となる。レッドゾーンとグリーンゾーンはほぼ半々であるため、全世界がレッドゾーンになる状態と比較すれば、世界経済へのダメージは半分だけで済む。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:おそらく7%程度では?

現実的な可能性:世界はすでにこのシナリオのような状態である。台湾、韓国、ニュージーランド、(建前では)中国、ベトナムはグリーンゾーンだ。欧州と米国までグリーンゾーンが拡大するかどうかは、わからない。カリフォルニア州は初動が速く、その後の州政府の対応も的確だったが、今では同州だけで中国全土の(報告されている)感染者数と同程度になっている。爆発してキノコ雲になったウランを元の爆弾の形に戻すことは難しい。しかし、十分な検査と追跡ができれば不可能ではない。一方で、政府がパンデミックの現実から目をそらしている州は、グリーンゾーンに転じるために必要なリソースを投じないだろう。こう考えると、不可能ではないとはいえ、筆者の私見では、米国や欧州が実際にグリーンゾーンになる可能性は低く、南米やサハラ以南のアフリカ諸国となるとさらに可能性は低くなると考えている。筆者の母国であるカナダはグリーンゾーンに転じる可能性が高いと考えたいが、分裂して機能不全に陥っている米国との関係があまりにも緊密であることを考えると、何とも言えない。

「ハンマーとダンス」シナリオ

未来のシナリオ:Tomas Pueyo(トマス・プエヨ)氏が数か月前に発表して話題になった非常に秀逸な記事がある。その中で同氏は、現在実施されている都市封鎖(「ハンマー」)の後も、感染者の増減が周期的にずっと続くと書いている。ふと思い出したかのような不定期なタイミングで感染者が急に増え、より厳重な都市封鎖が行われるなど、局地的に抑制策が強化される。しかし、医療崩壊に至ることはなく、ついにワクチンが開発されて普及するまで十分な時間を稼ぐことができる。その時点で集団免疫の実現からはまだほど遠いため、結果的により多くの人命が救われることになる。経済も周期的な波を経験する。勢いよく正常に戻った後に大々的に後退するというサイクルが2020年末まで続き、少なくともそのまま2021年に突入する。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:10%程度。

現実的な可能性:筆者はこのシナリオが実現する可能性は割と高いのではないかと考えている。都市封鎖によって感染者数が横ばいになり、ウィルスを減らせることはわかっている。怖いのは、機能不全と強硬姿勢が広まって、前述の「赤と緑」シナリオが実現不可能になってしまうことだ。少なくとも米国ではそうなる可能性がある。国民も政治家も「組織」と「独裁」の区別がつかず、都市封鎖のような原始的手段を好むからだ。そのような状況を考えると、「ハンマーとダンス」は一番ましな戦略だと思う。しかし、「ダンス」段階でオーバーシュートするリスクがあり、それがおそらく不可避であることが心配だ。とはいえ、経済の観点から考えると、これは良策とは言えない。人々は不安感を抱き続け、経済は(現在よりは緩和されるとはいえ)「ハンマー」対策による打撃を受け続けるからだ。

「特効薬」シナリオ

未来のシナリオ:ヒト感染試験によってワクチン開発が加速して、7種類のワクチンの生産工場が同時に建設されたとしても、実際に普及するのは、最大の期待を込めつつ慎重に見積もって、早くとも2021年に入ってしばらくしてから、あるいはそれより先になるだろう。しかし、ワクチンが唯一の治療方法というわけではない。もし単独あるいは他の方法と組み合わせて使うことで新型コロナウィルス感染症の危険性を緩和できる予防薬や治療方法を発見できれば、非常に良い効果がもたらされるだけでなく、この長引く戦いの流れが一気に好転する。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:少なくとも35%。医師や科学者が「もっと早くワクチンを開発しろ!」と急かされる声が今にも聞こえてきそうだ。

現実的な可能性:「幸せ探しをする少女ポリアンナ」のようだと言われてしまうかもしれないが、筆者はこのシナリオが実現する可能性はかなり高いのではないかと考えている。結論を下すにはまだ早いが、効果が期待できる治療法がひとつふたつと言わずいくつもあることを示す(非常に初期段階の)研究結果がすでに発表されている。ただし、「非常に初期段階の」研究であり、ヒドロキシクロロキンの場合のように、追加研究データによって治療薬候補から外される可能性があることは再度、強調しておきたい。とはいえ、この感染症に関する知識が深まるほど、より良い治療法にたどり着けるだろう。問題はどの程度良い治療法をどの程度早く発見できるかということだが、「かなり良い治療法を割と早く」発見できるというのは、少なくともあり得る答えだと思う。

「集団免疫」シナリオ

未来のシナリオ:引き続き医療崩壊を防ぎ、高齢者、免疫不全患者、糖尿病患者などを、最善を尽くして保護しつつ、いわゆる「集団免疫」を目指す。したがって、ウィルスと戦うことは基本的にやめる。残念なことに、集団免疫が実現する前に、それよりも多くの人がこの感染症の犠牲になることはほぼ間違いなく、高齢者を守ることも不可能に近い(「高度に訓練されたテナガザルが老人介護施設で働いているとでも思っているのか?」と発言した人がいた)ため、このシナリオでは、不要な犠牲者が多数出ることがほぼ確実であるばかりでなく、経済面でもほとんど効果がない。新型コロナウィルス感染症にかかるという、死ぬことはなくても、それまでの人生の中で最悪の経験をするリスクを冒してまで外出したがる人はいないからだ。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:せいぜい10%といったところだろう。一般市民が納得するシナリオでないことは彼らもわかっているし、経済面でも特段の効果は見込めないためだ。

現実的な可能性:これは「ハンマーとダンス」シナリオの中でも最悪のバージョンである。医療崩壊ギリギリのところで何とか持ちこたえるだけだからだ。人々はこれを「スウェーデンモデル」と呼ぶ。スウェーデンが今後どうなるのかはこれから見守るしかないが、スウェーデンの人口がニューヨーク市の人口とほぼ同数であることに注目してほしい。この同じシナリオを「ニューヨークモデル」と呼んだ途端に、その魅力は半減する。ニューヨーク市やイタリアのロンバルディ州の教訓があるため、西側諸国のほとんどの国は意図的に集団免疫を目指すことはないだろう。

「第二波」シナリオ

未来のシナリオ:現在の都市封鎖が緩和されると、すべてが元通りになったように見える。ときどき局地的に流行したり、引き続き多少の感染者が発見されたりするが、基本的には今にも消えそうな小さな炎のようなものになる。しかし、季節性化し、秋が到来すると、だれも予測せず兆候も見えていなかった予想外の第2波が突然襲ってくる。そう、あのスペイン風邪のときと同じだ。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:0%。

現実的な可能性:筆者もこのシナリオが現実になる可能性は非常に低いと思う。第一に、新型コロナウィルスが熱や湿気に弱いのであれば、エクアドルやブラジルで大流行している理由の説明がつかない。第二に、さらに重要な点として、スペイン風邪のときとは異なり、私たちにはスペイン風邪大流行から得た教訓がある。秋、そして冬になっても、世界の半分はアンテナを張り巡らしてあらゆるデータを注意深く観察することだろう。その全員がそろいもそろって前兆に気づかずに、第二波の奇襲攻撃を受けてしまうということはないと思う…ないと願いたい。

「連鎖」シナリオ

未来のシナリオ:これは、まったく別のシナリオというよりも、上記のシナリオの二次効果だ。「連鎖」シナリオでは、新型コロナウィルス感染症が引き金となって、まだ最初の危機に対処している間に、連鎖的に別の重大な危機が発生する。例えば、米国で今年11月の大統領選を延期しようとして、憲法の危機が引き起こされ、米軍の介入が必要になるといったことが想定される。他にも、食料価格が世界中で高騰した結果、多くの国々で食糧不足、暴動、革命が起こる可能性もある。あるいはブラジル、ロシア、インドなど、新型コロナウィルスの被害が特にひどかった国が崩壊するかもしれない。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:0%。二次効果はそもそも市場や政治家が制御できるものではない。

現実的な可能性:非常に低い…でもゼロではない。だから心配だ。

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(翻訳:Dragonfly)
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