PFNが技術提供、キャラ配信の「IRIAM」が表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」をスマホで実用化

PFNが技術提供、キャラ配信の「IRIAM」が表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」をスマホで実用化1枚のイラストと1台のスマホで気軽にキャラ配信が行えるアプリ「IRIAM」(イリアム。Android版iOS版)を運営するIRIAMは6月18日、表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」のサービス提供(βテスト)を開始した。約10秒の生成速度(キャラクター生成に限る。同社調べ)・描画データ約1MBとしており、表情の生成も含める体裁でスマホ上での実用化を行ったという点で世界初の事例としている(2021年6月時点。同社調べ)。

同サービスは、Preferred Networks(PFN)による技術提供のもと、1枚のイラストを用意するだけでAIによりキャラクターを表情豊かに動かし、IRIAM上で配信できるようになったという。

手作業でのモデリングに関するコスト課題から、「AIによる自動キャラモデリング技術」の実現への注目度は高く、これまでにも数多くのアプローチが試みられてきたという。しかしその多くは生成に数時間がかかり、データ量の大きいキャラデータを扱うことになるため、スマホでのサービスの実用化水準には程遠い状態だったそうだ。

そこでIRIAMは、動画データではなくモーションデータを用いるIRIAMのキャラ配信システムの特徴を活かした独自アプローチを採用。PFNの深層学習技術によるキャラクターの自動パーツ分けと、IRIAM独自開発の表情表現用モデリング・表情表現エンジンを組み合わせることで、端末内でのシームレスなアニメーション描画が可能となった。

今回開発された手法と従来のアプローチとの違いは、「高速かつ軽量」にある。IRIAMによると、生成速度は約10秒、描画データ約1MBという(キャラクター生成に限る。同社調べ)。豊かな表情の生成も含めたかたちでスマホ上での実用化を行ったという点で、今回の取り組みは世界初の事例となる(2021年6月時点。同社調べ)。

PFNが技術提供、キャラ配信の「IRIAM」が表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」をスマホで実用化

2020年5月設立のIRIAMは、より感情豊かなキャラ表現を実現するために、AIによる自動キャラモデリングの改善を続けていく。社内の50%以上が開発メンバーで構成された自社開発型の体制で、スタートアップならではのスピード感を重視しているという。

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カテゴリー:人工知能・AI
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「音声認識AIの競争に対する懸念が高まっている」とEUが発表

欧州連合はおよそ1年にわたり、AIを使用した音声アシスタントおよびテクノロジーと連携したモノのインターネット(IoT)に関連する競争の影響を調査してきた。今回紹介する1回目の報告では、EU委員会の立案者が表明する潜在的な懸念が、今後の幅広いデジタル法案決定への情報提供に役立つかどうかという点が扱われる。

2020年末に提出されたEUの法案の大部分は、その地域で実行中のいわゆる「ゲートキーパー」プラットフォームに対する法規の事前適用に向けて、すでに準備が整っている。EU全土に適用されるデジタルサービス法にまとめられた、仲介を行う強力なプラットフォームに当てはまるビジネス規範「命令事項および禁止事項」のリストも含まれている。

しかしもちろん、テクノロジーを活用する流れが止まることはない。競争政策を担当するMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステガー)氏はこれまで、音声認識AIテクノロジーに注目してきた。自分の部門で「データへのアクセスがどのようにマーケットプレイスを変えるのか探っている」と彼女が述べた2019年には、ユーザーの選択に対して引き起こされる課題に関する懸念を表明していた。

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委員会は2020年の7月に、IoT関連の競争に関する懸念について精査するため、セクターごとの調査を発表し、確かな一歩を踏み出した。

これは、コンシューマー向けのIoT製品やサービスに関連する市場で(ヨーロッパ、アジア、米国で)事業を展開する200以上の企業を対象とした調査に基づき、現在、暫定報告書として公開されている。さらに、最終報告が来年の前期に発表される前に、(9月1日までの)調査結果に対するさらなるフィードバックを要請している。

競争に関して明らかになった潜在的な懸念のうち、主な分野には、同じスマートデバイスで異なる音声アシスタントを使用しにくくする音声アシスタントおよび手法に関連した、独占行為または結託行為がある。また、ユーザー、さまざまなデバイス、サービスの市場との間で、音声アシスタントおよびモバイルOSが担う仲介的な役割も懸念となっている。この場合の懸念は、プラットフォーム音声AIのオーナーが、ユーザーの関係性を管理することで、競合他社のIoTサービスが発見される可能性や可視性に影響を与える可能性があるという点である。

データへの(不平等な)アクセスに関連した懸念もある。調査の参加者は、プラットフォームと音声アシスタントのオペレーターが、ユーザーのデータに対して広範囲にアクセスできると述べた。これには、サードパーティーのスマートデバイスやコンシューマー向けのIoTサービスと通信した内容が、仲介的な音声AIを使用することで取得されてしまう可能性も含まれる。

委員会のプレスリリースには「セクター調査に協力した人々は、データへのアクセスと集積された膨大なデータにより、音声アシスタントを提供する側は、汎用音声アシスタントの改善や市場優位性に関連した利点を得られるだけでなく、関連する業界にも容易に応用することが可能になると考えている」と記されている。

第三者の業者が保有するデータを、Amazonが使用しているという点に関するEU独占禁止法の調査(現在進行中)にも、同じような懸念が表れている。このデータとは、Amazonが電子商取引マーケットプレイスから取得できるデータ(委員会によると、オンライン取引市場で競争を妨害する違法行為になり得ると考えられている)のことである。

その報告で注意が喚起されている別の懸念は、コンシューマー向けのIoTセクターにおける相互運用性の欠如である。「特に、音声アシスタントとOSを提供するひと握りのプロバイダーが、一方的に相互運用性と統合プロセスを管理しているため、自社のサービスと比較して、サードパーティーのスマートデバイスおよびコンシューマー向けのIoTサービスの機能を制限することが可能である」とのことである。

上記の点は特に驚くことではないだろう。しかし、該当する地域で音声アシスタントAIの普及率が低い現段階で、委員会が競争上のリスクに対処しようと努めており、採用できそうな対策を思案し始めているのは注目に値する。

委員会はこのプレスリリースで、音声アシスタントテクノロジーの使用率は世界的に高まっており、2020年から2024年で2倍になる(音声AIの数が42~84億個になる)との予想を発表している。とはいえ、Eurostat data(ユーロスタット・データ)の引用によれば、2020年の調査対象で、すでに音声アシスタントを使用したことがあるEU市民は11%のみであった。

EU委員会の立案者は、デジタル開発の現状に精通し、巨大テック企業の最初の波を抑制する上で、競争政策に関連する最近の失敗から学んだはずである。これらの巨大テック企業は、Amazon Alexa(アマゾンアレクサ)、Googleアシスタント、Apple(アップル)のSiri(シリ)を使って、現在の音声AI市場を間違いなく独占し続けるであろう。競争が脅かされていることは明白であり、過去の間違いを繰り返すことがないように、委員会は目を光らせている。

しかし、ユーザーが利用しやすいウェブサイト、プッシュボタン、ブランド化された利便性をUSPとしている音声AIに対して、政策立案者が競争に関する法整備にどう取り組んでいくのか、これから明らかになっていく点も多いだろう。

相互運用性を強制すると複雑になる可能性があるため、使いやすさという点では好ましくない。また、ユーザーデータのプライバシーなど、他の懸念が浮上する可能性もある。

コンシューマー向けのテクノロジーについてユーザーが意見を述べ、テクノロジーを管理できるようにするのは良いアイデアだが、少なくともまず、選択できるプラットフォームの在り方そのものが操作されるまた搾取されるものであってはならない。

IoTと競争に関する問題が数多くあるのは確かだか、独占プラットフォームがすべての基準をもう一度定めることがないように規制措置を事前に講じることができれば、スタートアップや小規模企業にもチャンスが訪れる可能性がある。

ベステガー氏は声明に対するコメントとして「このセクター調査を開始した時点では、このセクターでのゲートキーパーのリスクが新たに高まっているのではないかと懸念していました。大企業の持つ影響力により、新興ビジネスやコンシューマーに損害をもたらすほど競争が妨げられることを心配していました。現在発表されている最初の報告から、セクター内の多くの関係者が同じ懸念を抱いていることは明らかです。コンシューマーの毎日の生活において、モノのインターネットのすばらしい可能性を最大限に引き出すには、公平な競争が必要です。この分析結果は、今後の法案施行と規制措置に役立ちます。関係する利害関係者すべてから、今後何カ月間でさらにフィードバックを受け取ることを楽しみにしています」と述べた。

セクターごとの報告は、ここからすべて閲覧できる。

【更新】ベステガー氏は調査結果に関するスピーチで、いくつかの行為については、将来的に新たな競争防止違反の訴訟につながる可能性もあると述べた。しかし、そうなるのはまだ先のことであると彼女は強調し、委員会には「懸念の範囲を的確に把握する」必要があるとも述べた。

「これまでのセクター調査の結果により、異なるスマートデバイスとサービスをつなぐオペレーティングシステムと音声アシスタントの主な役割がはっきりしました。この役割により、オペレーティングシステムおよび音声アシスタントのプロバイダーが、競争にマイナスとなる影響を与える可能性があると、回答者は注意を喚起しています。EUでは、Googleアシスタント、Amazon Alexa、AppleのSiriが音声アシスタントの分野で優位に立っています。加えて、グーグル、アマゾン、アップルには、 スマートホームやウェアラブルデバイスのオペレーティングシステムがあり、それぞれデジタルサービスを提供し、スマートデバイスを生産しています」とも語った。

「異なるデバイスとサービスでの通信や相互運用性はほとんどの場合、このような企業に依存しています。加えて、音声アシスタントはユーザーについて多くのことを学習します。スマートデバイスとモノのインターネットサービスは、家にいる時のユーザーの活動に関する大量のデータを生成します」。

「データへのアクセス、ユーザーへのアクセス、切り替えの難しさなど、現時点で明らかになった課題の多くは、デジタルマーケットで法を施行する場合と同じような課題です。実際、デジタルマーケット法に関連して委員会が提案する命令事項および禁止事項について、調査機能によって数多くのケースが報告されています。現段階での事前調査結果と、今後何カ月かの取り組みにより、デジタルマーケット法の対象に関する討議に、セクター調査が寄与することは間違いありません」と付け加えた。

「競争の強化と補完的法的措置によって、すべての人が恩恵を受けられるデジタル経済を作り上げることが目標です。その目標を実現するには、コンシューマー向けのモノのインターネットを含むデジタルマーケットが、どんな規模のビジネスでも参入して成長できる場となり、コンシューマーにとってオープンかつ公平であるかどうかを確かめていく必要があります」。

【更新】委員会の報告に対して、Amazonから送られた声明は以下のとおりである。

スマートホーム分野においては、多くの企業による競争が激化しています。1社だけが勝者となることはなく、勝者となるべきでもありません。弊社では当初からのこの認識に基づいて、アレクサを設計しました。現時点で、アレクサには14万個以上のスマートホーム製品と互換性があるため、デバイスを生産する企業が独自の商品とアレクサを簡単に統合できます。また、1台のデバイスから複数の音声サービスにアクセスできるように、お客様が柔軟に選択できる取り組みとして、音声相互運用イニシアチブ(現在80社が参加中)にも出資しています。

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画像クレジット:Joby Sessions/T3 Magazine / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

UsideUのアバター採用遠隔接客ツール「TimeRep」がNTTドコモの5Gソリューションとして採択

UsideU(ユーサイドユー)は6月16日、遠隔接客ツール「TimeRep」(タイムレップ)がNTTドコモの法人顧客向け5Gソリューションとして採択されたと発表した。5G環境においてTimeRepを利用することで、低遅延でのアバター対話や高精細な動画共有機能による円滑なコミュニケーションが実現できるという。オリジナルのアバターを作成可能で、顧客に覚えてもらいやすいブランドを構築することも可能。

TimeRepとは、リアルな店舗とウェブの垣根を超えて、ヒトとAIアバターの協働による非対面・非接触・リモート案内を可能にする事業者様向けクラウドサービスだ。店舗での接客に加えて、購買や会員登録などの促進のために必要なウェブサービスへの導入対応もしており、接客販売のオムニチャネル化を実現できる。

販売業務では、店舗スタッフが常時現場をモニタリング・遠隔操作することで、顧客の動きに合わせ適切なタイミングで声かけができ、対面接客と変わらない販促効果が期待できるという。これは、実店舗・ウェブ接客いずれでも利用可能だ。受付業務では、自動シナリオ機能による無人案内で受付業務を効率化できるほか、必要に応じてスタッフを呼び出しての有人案内も行えるため、臨機応変に質の高い接客を実現できるという。アバターと生顔モードの切り替えも行える。

どちらの業務についてもTimeRepのアバター機能を活用することによって、オペレーターの採用効率を上げ、遠隔地での労働環境に幅を広げられるとしている。

また在宅など接客現場以外の遠隔地から、1スタッフが複数拠点の接客を行ったり、あるいは販売業務を行ったりできるという。顧客の問い合わせ内容に応じ対応スタッフを事前に振り分けたり、サイネージの前に立ったユーザーを確認しオペレーターから声をかけたりすることも可能。

さらに、店舗・時間・スタッフごとに稼働率の可視化による最適な人員配置を可能にしており、従来見える化されていなかった対話データの可視化・分析により、接客の質および顧客の分析も行える。

UsideUは今後の展望として、NTTドコモの法人顧客を通じ、より多くの消費者にTimeRepによるまったく新しい、安心快適な接客体験を提供し、売上拡大・業務効率化に貢献したいとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)UsideU(企業)日本(国・地域)

NTTSportictがアマチュアスポーツの自動撮影・自動配信が可能な「Stadium Tube Lite」を発表

NTTSportictがアマチュアスポーツの自動撮影・自動配信が可能な「Stadium Tube Lite」を発表

「あなたの頑張る姿を、あなたの誰かに届ける」をミッションとするNTTSportict(エヌティーティー・スポルティクト)は6月16日、アマチュアスポーツの自動撮影と自動配信を行うAIソリューション「Stadium Tube Lite」(スタジアム・チューブ・ライト)を7月16日より提供開始すると発表した。

NTTSportictは、ローカルスポーツの映像化・事業化を目指して、NTT西日本と朝日放送グループホールディングスの共同出資により2020年に設立された企業。先に「Stadium Tube Pro」(スタジアム・チューブ・プロ)をリリースしており、一部体育館や競技場において、特に新型コロナ禍での無観客試合の中継などに活用されている。

「Lite」は、イスラエルのAIカメラメーカー「Pixellot」(ピクセロット)と、メディア向けソフトウェアソリューションを提供する米国「Twizted design」(トゥイステッド・デザイン)との包括契約によって共同開発された。「Pro」の廉価版であり、「世界トップクラスのスポーツチームで使われるAIアルゴリズム」により、誰にでもスポーツ試合の映像化、録画配信の事業化などが行える。試合中継のみならず、アマチュアスポーツや学校スポーツの資金不足やDXの遅れで滞っている、練習やチーム強化に関する映像・データ活用、オンライン化にも貢献する。対応するスポーツは、サッカー、バスケットボール、野球、バレーボール、フットサル、アイスホッケー、ビーチバレーボールの7種目。

利用料金は月額2万9678円(税込)。7月16日より提供開始予定。6月16日から事前予約を受け付けている。200台限定で最大3カ月間月額料金無料キャンペーンも実施される。

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AIで心を癒すあなただけのアロマを調合、コードミーが「香りのトータルコーディネート」など新展開

AI技術を駆使してパーソナライズされた香りを届ける「CODE Meee ONE」が人気だ。同サービスを提供するコードミーは2017年4月に創業。BtoC向けにフレグランス関連商品の企画・開発・販売を、BtoB向けに香りの空間デザインなどを展開している。2020年度はBtoC、BtoB合わせて、売上ベースで対前年比約400%増になったという。コードミーの太田健司代表に、事業内容や新たな展開について話を聞いた。

コードミーが扱う「香り」とは

誰でも、ある香りを嗅いだ瞬間、その香りにまつわる記憶が一瞬でよみがえるといった経験があるのではないだろうか。国内最大手の香料会社で10年間フレグランス開発などを行ってきた太田氏は「人間の五感で唯一、嗅覚は感情と記憶に直接結び付いています」と説明する。

脳には、喜怒哀楽などの感情や記憶をつかさどる器官を持つ大脳辺縁系がある。大脳辺縁系には、匂いだけがダイレクトに伝達される。このため、香りを嗅げば無意識のうちに、過去の情景が呼び起こされるといった現象が起きるのだという。

太田氏は「香りはパワフルなツールですが、まだ完全には解明されていない部分も多いものです。例えば、人が亡くなるとき、最後に残っている感覚は嗅覚だといわれています。原始的で神秘的な香りの可能性は、とても大きいと思っています」と話す。

ストレス課題の解消を狙う「CODE Meee ONE」

CODE Meee ONEは、毎月アロマが届くサービスだ。サブスク型で1カ月税込1800円。年齢や性別の他、睡眠不足・疲労・二日酔いといった自身のストレス課題、香りの好みなどをウェブ診断で答えれば、3000パターン以上の中からパーソナライズされた3つのアロマが提案される。

サービス利用中は香りの再診断もできる。「季節や自身のライフステージに合わせ、抱えるストレス課題や、香りの好み、香りに期待する機能性などは変化するという前提です。その時々の診断結果に合わせて『今のあなたに最適な香りが作られる』ことになります」と太田氏はいう。なお、お試しとして単発でも購入可能で、その場合は税込2800円となる。

CODE Meee ONEでのウェブ診断後、パーソナライズされたアロマの代表的な素材3つがユーザーに表示されるようになっているが、それぞれの配合比なども個人によって変わる。

太田氏は「CODE Meee ONEで出来上がるアロマは、その人にしかない香りになります。素材の配合比や濃度など細かく分けていけば、実質的にそのパターンは無限に近くなります」と語った。

また、パーソナライズのためにサービスをTwitterと連携することもできる。直近の投稿データ200件分をAIが解析し、現在の精神状態をグラフでビジュアル化。この結果に基づいてさらにアロマをもう1つ提案している。

太田氏は「Twitterによる分析は、IBMの人工知能『Watson』と連携しています。直近の投稿データ200件分に出てくる単語ごとに分析しています。『Twitterは本心ではなく、建前も多い』とよく言われますが、人は使う単語にクセが出ます。本人も意識していない、しっかりとしたインサイトが単語から分析できるのです」と説明する。

CODE Meee ONEはサービスローンチから2年近く経つが、新型コロナが蔓延する中、顧客の幅が一気に広がったという。「コロナ禍で『自分の心身を労わろう』という考えが広がり、家の中でより豊かな時間を感じたいと、新たに香りに着目している人が増えました」と太田氏はみる。現在、数千人がサービス利用している。

CODE Meee ONEで蓄積したユーザーデータはパーソナライズの精度を上げることはもちろんだが、BtoB事業にも活かしている。

「BtoB向けの空間デザインでは、ターゲット層に対して、香りによって『集中力を上げる』『リラックスする』などの機能を期待したいといったとき、蓄積したデータを活用しながら、香りを開発しています」と太田氏。

BtoB向けの空間デザインも基本的にはサブスク型で提供し、価格は企業や案件によりその都度カスタマイズする。コードミーは東急不動産ホールディングスなど、すでに数十カ所以上で空間デザインを行っている。

科学に裏打ちされたデータに基づく香り

コロナ禍において、コードミーはマスク専用のプレミアムアロマスプレーの販売も始めた。

太田氏は「マスクに吹きかけるアロマスプレー自体はすでに世の中にありました。ただ、それらは単にいい香りがするというものが多いです。我々は、脳波を測定し、感性科学的に『快適度の向上』『ストレス値の軽減』といった結果が出たオリジナルの調合香料を開発しました。科学に裏打ちされたアロマスプレーとして人気が集まり、売上向上にもつながりました」と説明する。

コードミーでは2017年の創業時から、バイタルデータと香りの相関性を重要視し、研究を進めてきた。バイタルデータの中でも特に着目しているのが脳波だ。2019年には電通サイエンスジャムとの連携により、脳波による感性把握技術に基づく香りで、快適な職場環境をデザインする実証実験も行った。

さらに2020年には、東京・江戸川病院と連携し、臨床研究も始めた。医療・介護施設には、疾患や薬剤などに関連する医療現場特有の匂いがある。特にがん医療の現場では、がん組織に由来する特有の腫瘍関連の匂いが日常生活に関わる問題となっていながらも、いまだに根本的な解決策は確立されていないという。

コードミーではコロナ渦の過酷な状況で働く医師、看護師、介護士らを対象に、マスク専用プレミアムアロマスプレーを提供して効果検証を行った。

太田氏は「結果として、総合的な快適度が上がり、医療施設特有の匂いに対するネガティブな感覚も改善傾向が見られたことが、定性と定量の両データで示されました。今後はデータに基づくソリューションフレグランスを、医療施設内の空間デザインへと展開し、患者様、ご家族などのQOL(生活の質)向上に対する取り組みを計画中です」と述べた。

新たな「香りのトータルコーディネート」

コードミーは新たな展開として、生活のあらゆるシーンにパーソナライズした香りで寄り添う「香りのトータルコーディネート」を展開する。2021年内にはファーストプロダクトも出す予定だという。

シャンプーや石鹸、洗剤、柔軟剤、ルームフレグランス、ハンドクリームなど、日々の暮らしの中で香りを感じる場面は多くある。これらの商材をパーソナライズして提案し、好みの香りを1日を通して楽しめるようにするのだ。

現在はウェブ診断などの質問項目や販売方法なども検討段階だ。入浴剤などはサブスク型でも良いが、香水はそれほど利用率が高くないため、プロダクトにあったカタチで販売方法を検討する必要があるとする。

太田氏は「ウェブ診断でも、例えば香水なら『どんな自分を表現したいか』といったように、設問も大きく変えていく必要があります。このサービスは、完成形に至るまで時間がかかるかもしれません。ただ、年末にはまず新しいプロダクトを、また来年以降にもいくつか出せるよう動いていきます」と語った。

その上で「香料会社で培ったスキルと経験がある私だからこそできることがしたいと考えています。パーソナライズされた香りのトータルコーディネートが実現すれば、日本初のサービスになると思います」と太田氏は自信を見せる。

カテゴリー:その他
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画像クレジット:コードミー

生命保険の約款や学校教材における漢字の誤読を低減、正確なイントネーションで音声合成を自動生成するAIシステム

生命保険の約款や学校教材における漢字の誤読を低減、正確なイントネーションで音声合成を自動生成するAIシステム

大日本印刷(DNP)とグループ会社のDNPコミュニケーションデザイン(DCP)は6月15日、人間の音声を人工的に作り出す「音声合成」の制作時に起きる読み間違いを減らし、人が読むナレーションのイントネーションやアクセント、間合いに近い自然な音声を自動生成できるAI(人工知能)活用音声合成システムを開発したと発表した。

今回開発したシステムは、音声合成の制作時に起きる漢字の「誤読」や、「橋/箸/端」(はし)など同じ読み仮名で異なる「イントネーションの違い」に関し、読み間違いを約50~70%削減したという(従来のDNPの音声合成の制作と比較)。これにより、高齢者や身体障がいの有無に関わらず、誰でも必要な情報に簡単にたどり着けるアクセシビリティの向上が期待される。また、音声合成が利用されている学校教材や電子書籍、生命保険・損害保険の約款や契約書、e-Learningや研修教材などへも広く活用できるとしている。

現在、多様な人々にわかりやすく情報を伝達する機器やサービスの開発が進み、その利用が拡大している。例えば、文字などを読むことが困難な人のための国際標準規格DAISY(デイジー。Digital Accessible Information System)に準拠したデジタル録音図書をはじめ、様々な手法で人間の音声を人工的に作り出す音声合成は、交通情報や施設のナビゲーション、電話の自動音声ガイダンスなどで幅広く利用されている。

ただ、音声合成の精度は年々向上しているものの、漢字の誤読や発音・イントネーションの間違いが依然として発生していることが課題となっているという。この課題に対してDNPとDCDは、多くの企業のマニュアルや約款、研修用コンテンツなどで音声合成を制作してきた技術・ノウハウを活かし、「単語の読みや発音で、間違いのない音声データ」を機械学習させて、誤読が少なくスムーズな発音の音声合成を自動生成できるDNP独自のAIシステムを開発した。

具体的には、DCDが保有する読み間違いのない音声データをAIに機械学習させることで、正確な読みを自動付与できるようになった。これにより、約款や契約書、自治体・行政機関等の公式文書、製品の解説書といった正しい情報提示が必要でテキスト量が多いものへの利用に適しているという。

また、イントネーションとアクセントについて文章の文脈を加味して自動生成するため、従来の方法と比較して、人が読むナレーションに近い自然な音声を生成できる。両社は、特に正しい読みやナレーションを重視する学校教材や電子書籍などに最適としている。

さらに、既存音声データに加え、追加学習によってデータを増やすほど、読みの正確性やイントネーション・アクセントの精度が向上するという。複数の生命保険会社の約款で汎用性の検証を実施したところ、「読み」「アクセント」「間」について約85%以上の正確性を確認したそうだ。

DNPとDCDは今後、AIの精度向上と適応分野の拡大に努めるとともに、AIを活用した音声合成の付加価値を高め、幅広い分野に向けてサービスを提供するとしている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:インクルージョン(用語)AI / 人工知能(用語)大日本印刷 / DNP(企業)ダイバーシティ / 多様性(用語)日本(国・地域)

群衆カウント技術のセキュアが既存監視カメラで人数計測可能な混雑状況配信サービスをALSOKと共同開発

セキュアは6月14日、綜合警備保障(ALSOK)とライセンス契約を締結し、AI画像解析により混雑度のリアルタイム計測が可能な「SECURE群衆カウントソリューション」(群衆カウント)の技術を提供し、「ALSOK混雑状況配信サービス」の共同開発を行なったと発表した。

セキュアの群衆カウントとは、既存の監視カメラで人物のカウント計測を可能にし、エリアの混雑度を可視化するクラウド型ソリューションだ。

従来のカウントシステムは、専用の人数計測器の設置、あるいは専用の解析サーバーの現地設置といった必要があったため、導入コストが課題となっていた。これに対して群衆カウントでは、先進のAI画像解析技術、および世界最速級Deep Learning推論エンジンをクラウドに実装することで、既存監視カメラの設置角度で人物をカウントすることを実現。サブスクリプションサービスとしての提供を可能とした。

そして今回、群衆カウントの技術をベースにALSOKと共同開発を行い、「ALSOK混雑状況配信サービス」として6月11日よりサービスの提供を開始した。

ALSOK混雑状況配信サービスでは、事務所から総合施設・イベント会場まで小規模から大規模の環境をサポート。撮影映像から人数をカウントし、あらかじめ設定した設定値に従い混雑状況を5段階で配信する。また1カメラあたり最大4エリアまで分割可能となっており、必要な場所を測定することも可能だ。映像解析はクラウド側で実装しており、カメラ映像をセキュアクラウドサーバーに送信することで、サービスを利用可能となる。

なお2020年6月30日から、イベント時最大収容人数約2000人の新宿住友ビル 三角公園において、ALSOK混雑状況配信サービスを利用しイベントの混雑状況モニタリング実証実験を実施中だ。広場に対して検知エリアを複数箇所設定しており、密を検知すると係員に即時アラームを発する。管理担当者は、リアルタイムでの混雑状況の把握と、係員の業務負荷の軽減を評価しているという。

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カテゴリー:セキュリティ
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AI搭載した遠隔操作ロボットのTelexistenceが22億円のシリーズA2調達、製品開発チームを拡大

AI搭載した遠隔操作ロボットのTelexistenceが22億円のシリーズA2調達、製品開発チームを拡大

AI(人工知能)搭載の遠隔操作ロボットを開発するTelexistence(テレイグジスタンス)は6月16日、シリーズA2ラウンドにおいて、約22億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のモノフルのグループ会社(モノフル)はじめ、Airbus Ventures、KDDI Open Innovation Fund、DEEPCORE、東大IPC、複数の新規投資家(非公開)など。2017年創業以来の資金調達総額は約45億円となった。

調達した資金は、製品開発チームの拡大や、オフラインの小売店舗・物流分野で広がる顧客層への製品開発・展開の加速に活用する。

またTelexistenceとモノフルは、物流施設業務向けの拡張労働基盤(AWP。Augmented Workforce Platform)の開発、商用運用や社会実装をさらに進めるため、パートナーシップを強化した。

遠隔操作ロボット技術を核とするAWPは、物流施設内の業務に携わる労働者が倉庫に物理的に立ち会うことなく労働力を提供できるプラットフォーム。倉庫内に設置されたロボットをインターネット経由で操作できるほか、在宅のままパレタイズ(パレットへの積みつけ)やデパレタイズ(パレットからの荷下ろし)などの作業に参加可能という。Telexistenceは、AWPの構築により労働者により安全に、より低コストで、より便利に世界の労働市場に参加できる基盤を提供するとしている。

今回のパートナーシップはその一環となっており、国内最大級の物流業者をパートナーとし、物流分野向けに開発した遠隔操作ロボットのトライアル導入の準備と製品試作を進める。

現在、ロボット(主に産業用ロボット)は、主に自動車・総合電気メーカーの工場内でしか普及していないという状況にある。Telexistenceは、ロボットの活躍の場を工場の外にまで広げ、社会の基本的なあり方を変革することを目指しているという。最終的には、人間が複数の空間的・時間的スケールのネットワーク構造を介してつながり、相互作用し、進化していく社会の創造を目指す。

モノフルは、先進的物流施設のリーディングプロバイダーである日本GLPのグループ会社の出資により2017年11月に設立。社名には、「物(mono)であふれている(full)」という物流の現状を表す意味に加え、同社が目指す未来の物流の姿である「単一の(mono)プラットフォームで遂行させる・実行する(fulfill)」という意味を込めている。

2017年設立のTelexistenceは、「ロボットを変え、構造を変え、世界を変える」をミッションとし、遠隔操作・人工知能ロボットの開発およびそれらを使用した事業を展開するロボティクス企業。世界中から高い専門性をもつ人材が集まり、従業員の国籍は10を超え、ハードウェア、ソフトウェア、自動化技術を一貫して自社で開発している。半自律型遠隔操作ロボットとAWPを通じて、人々が場所を問わず労働参加できる基盤構築を目指す。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:AI / 人工知能(用語)遠隔操作 / リモートコントロール(用語)Telexistence(企業)ロボット(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

デジタルギフトカードや航空券、ゲームなどのオンライン取引での詐欺を防ぐイスラエルのnSure AI

詐欺防止プラットフォームを手がけるスタートアップ企業のnSure AI(エヌシュアAI)は、DisruptiveAI(ディスラプティブAI)、Phoenix Insurance(フェニックス・インシュアランス)、AXA(アクサ)が支援するベンチャービルダーのKamet(カメット)、Moneta Seeds(モネタ・シーズ)、および複数の個人投資家から、シード資金として680万ドル(約7億5000万円)を調達した。

今回の投資ラウンドで得た資金は、nSure AIによる「世界初」の詐欺防止プラットフォームを支える予測型AIと機械学習アルゴリズムを強化するために使われる予定だ。このラウンドに先立ち、同社は2019年3月にKametからプレシード資金として55万ドル(約6000万円)を調達している。

テルアビブに本社を置くこのスタートアップは、現在16名の従業員を擁し、デジタルギフトカード、航空券、ソフトウェア、ゲームなど、リスクの高いデジタル商品を販売する小売業者に不正検知機能を提供している。ほとんどの不正検知ツールは、それぞれのオンライン取引ごとに分析を行い、どの購入を承認してどの購入を拒否するかを決定しようとするが、nSure AIのリスクエンジンは、深層学習技術を活用し、不正取引を正確に特定する。

保険会社のAXAが支援するnSure AIは、購入時の平均承認率が98%と、業界平均の80%に比べてかなり高いため、小売業者はこれまで正当な顧客を減少させることで失われていた年間1000億ドル(約11兆円)近い収益を取り戻すことができると述べている。同社は自社の技術に自信を持っており、そのプラットフォームで承認されてしまった不正取引については、すべて責任を負うとしている。

nSure AIの創業者であるAlex Zeltcer(アレックス・ゼルサー)氏とZiv Isaiah(ジブ・アイザイア)氏は、デジタル資産の小売業者が直面する独特の問題を経験した後、同社を起ち上げた。彼らのオンラインギフトカード事業は、最初の週に売上の40%が不正取引で、チャージバックが発生することが判明した。しかし、他の不正検知サービスではニーズを満たすものがなかったため、創業者たちはリスクの高いデジタル商品の販売をサポートする独自のプラットフォームの開発に着手した。

同社の共同創業者で最高経営責任者を務めるゼルサー氏は、今回の資金調達によって「詐欺を事業に不可避​なものとして受け入れることなく、よりリスクの高いデジタル商品を安心して販売できる数千の新規加盟店を登録することができる」と述べている。

現在、毎月数百万件の取引を監視・管理しているnSure AIは、2019年に稼働して以来、総額10億ドル(約1100億円)近い取引を承認してきた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:nSure AI詐欺人工知能機械学習深層学習資金調達eコマースイスラエル

画像クレジット:Jason Alden / Bloomberg / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

名古屋市がイノベーターのための人材育成プログラム「NAGOYA BOOST 10000 2021」参加者を募集

名古屋市がイノベーターのための人材育成プログラム「NAGOYA BOOST 10000 2021」参加者を募集

愛知県名古屋市は6月14日、イノベーションの担い手となる起業家や新規事業の開発を目指す人材を育成するプログラム「NAGOYA BOOST 10000 2021」(ナゴヤ・ブースト・テンサウザンド 2021)を、2020年に引き続き開催すると発表した。また2021年度からは、起業家(アントレプレナー)向けと新規事業担当者(イントレプレナー)向けの「AI・IoT人材BOOSTプログラム」をそれぞれ1コースずつ実施することを決め、参加者を募集している。募集期間は2021年7月18日まで。

またオンライン事前説明会が、7月1日午後6時から行われる予定。参加方法などの詳細は、Peatixイベントページ「NAGOYA BOOST 10000 2021 オンライン事前説明会」にまとめられている。

「NAGOYA BOOST 10000」は、名古屋発のイノベーション創出を目標とする「名古屋の看板事業」。2017年度開催のNAGOYA HACKATHON(ナゴヤ・ハッカソン)、若手人材育成のための「AI・IoT人材BOOSTプログラム」、それらの成果を発表してビジネスマッチングを行う「NAGOYA BOOST DAY」(ナゴヤ・ブースト・デイ)を追加し成長してきたものという。

2021年度からこのNAGOYA BOOST 10000は、「AI・IoT人材BOOSTプログラム for アントレプレナー」と「AI・IoT人材BOOSTプログラム for イントレプレナー」、そしてNAGOYA BOOST DAYの3本立てとなる。

募集概要(両コース共通)

  • 募集期間:2021年7月18日まで
  • 募集者数:各コース25名程度
  • 実施期間:2021年8月〜2022年2月
  • 参加費用:無料
  • 会場:NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE(一部オンラインの場合もあり)

AI・IoT人材BOOSTプログラム for アントレプレナー

AIやIoTの最新プロトタイピング技術、それを使った事業開発に必要なスキルや知識を学ぶ。「インプットとアウトプットを繰り返しながら、アウトプットに対するユーザー評価を通じ短期間でその精度を上げていく『アウトプット型 新規事業創出・学習プログラム』」とのこと。

参加対象

  • 起業、スタートアップにチャレンジしてみたい方
  • AI・IoTなど最新テクノロジーを使ったアイデアで起業にチャレンジしてみたい方
  • 起業に向けて仲間を集めていて、アイデアを形にしたい方
  • 将来的に起業家を目指している方
  • ゼロから自分で作り出したい、ビジネスを生み出したい方

AI・IoT人材BOOSTプログラム for イントレプレナー

AI、IoT、ロボティクス、クラウドなどの最新テクノロジーを、業界をリードするスタートアップの事例などとともに幅広く学ぶ。「豊かな知識をフルに活用し社内事業を牽引できるリーダー人材を育成」するという。

参加対象者

  • 最新の技術トレンドを学びたい新規事業担当者、エンジニアの方
  • 最新の技術トレンドを活用した開発にチャレンジしたいエンジニアの方
  • 最新の技術トレンドで新しいアイデアを創出したい新規事業担当者
  • 社内起業予定、もしくは社内起業にチャレンジしてみたい方
  • 社内新規事業創出・創造にチャレンジしてみたい方
  • AI・IoTなど最新テクノロジーを使った新しい取組みにチャレンジしてみたい方

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カテゴリー:EdTech
タグ:IoT(用語)AI / 人工知能(用語)日本(国・地域)

都議会議員選挙で空き情報配信サービス「VACAN」を練馬区が導入、期日前投票所の混雑情報をリアルタイムに可視化

AIとIoTによる空き情報を配信するVACAN(バカン)は6月14日、東京都議会議員選挙において、東京都練馬区が期日前投票所に混雑可視化サービスを導入すると発表した。

昨今のコロナ禍においては、感染拡大防止のために人と人との間に距離を確保する社会的距離(ソーシャルディスタンス)などが求められており、投票所でも人が集中することを避けた分散投票が重要となっている。2021年1月22日には、総務省から各自治体に対して「投票所などの混雑情報の積極的な提供を求める」通達が新たに出されたという。

VACANは、マップ上で近くの施設などの空き・混雑状況を一覧できる「VACAN Maps」という機能を備えており、期日前投票する人はこのVACAN MapsにPCやスマートフォン等でアクセスすることで、投票所の位置や混み具合を「空いています」「やや混雑」「混雑」の3段階で確認できるようになる。​混み具合の情報は、期日前投票所の職員がインターネット上の管理画面から操作することで更新する。

また、投票所の混雑可視化はカメラなどによる解析でも行えるものの、一時的な利用である中でカメラなどのハードウェアなどを購入・設置するのは導入コストが高いといった課題があったという。一方VACANの場合は、職員が手元のスマートフォンおよびPCから入力するだけで可視化が可能なため、導入にかかるコストが低く、すぐに利用が可能としている。都議会議員選挙で空き情報配信サービス「VACAN」を練馬区が導入、期日前投票所の混雑情報をリアルタイムに可視化

さらにVACANでは、混雑状況だけでなく、地図上で場所や投票日といった選挙に関する情報を一括で確認できるため、利用者がよりスムーズに投票しやすくなるなどの効果も期待できる。なお、この投票所向け混雑可視化サービスはすでに板橋区や館林市、藤枝市など複数の自治体でも導入されているそうだ。

VACANは、混雑を可視化し住民が自主的に密を避けやすくすることで、少しでも投票しやすい環境の整備をサポートし、投票率の向上を目指すとしている。

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カテゴリー:IoT
タグ:AI / 人工知能(用語)バカン / VACAN(企業・サービス)日本(国・地域)

ヘッドレスのコンテンツ管理システムContentstackはAIを導入しトレンドに乗る

ヘッドレスのコンテンツ管理システム(CMS)、マーケティング用語でいう「コンテンツ・エクスペリエンス・プラットフォーム」を提供するContentstackが米国時間6月9日、シリーズBで5750万ドル(約62億9000万円)を調達したことを発表した。参加投資家の数が予定を超えたと同社がいうそのラウンドは、同社のシリーズAをリードしたInsight Partnersがリードし、新たな投資家のGeorgianと、これまでの投資家であるIlluminate VenturesGingerBread Capitalが参加した。これで、同社の総調達額は8900万ドル(約97億4000万円)になる。

Contentstackの創業者でCEOのNeha Sampat(ネハ・サンパット)氏は、次のように述べている。「2020年はリテールや金融サービス、ゲーム、旅行などの業種の指導的な企業を支援して、彼らの顧客のための個人化された体験を作って収益を増進し、顧客の満足度を高め、ブランドロイヤルティを育てました。今回の資金調達ラウンドは、私たちの戦略が有効だったことを示しており、特に平等性と顧客への配慮およびプロダクトのイノベーションの3点が弊社の革新的な信念です。2021年は稀に見る困難な年ですが、弊社のチームは人たちの心に残るほどの結果を届け、また、デジタルファーストの世界のために最良のアジャイルなCMSプラットフォームを提供してきた成長の軌跡を継続できることは 非常にありがたいことです」。

同社によると、2019年10月の3150万ドル(約34億5000万円)のシリーズA以降、顧客ベースは150%増加した。新たな顧客の中にはBroadcom、Chico’s FAS、HP、La Perla、Leesa Sleep、McDonald’s、NBCなどがいる。

Contentstackは数カ月前に、これらの顧客のためにユーザーインタフェイスを一新し、AIと機械学習へのGeorgianの注力により、これらの新しい技術を同社も導入できると主張している。

そのGeorgianのリードインベスターEmily Walsh(エミリー・ウォルシュ)氏は次のように述べている。「Contentstackとその経営陣は非常に優れています。いくつかのグローバルブランドとの会話からは、彼らの企業にとってContentstackが極めて重要であることが伝わってきます。そのプロダクトは企業において、ビジネスと技術の両方のユーザーに愛されています。弊社のテクノロジープラットフォームにアクセスできるようになったContenstackは、同社自身の効率がアップするだけでなく、顧客とパートナーに提供するイノベーションと体験とサポートを充実できます。私たちは、Contentstackの顧客がAIを利用して新たな洞察と自動化を達成し、ビジネスのアドバンテージを得ていくことにも喜びを覚えます」。

同社は新たな資金で投資と技術を加速し、その国際的な成長とパートナーのエコシステムの拡張に当てる計画だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ContentstackヘッドレスCMSAI資金調達

画像クレジット:Contentstack

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働し伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行開始

レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働で伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行を開始

ITや情報デザインを手がける「総合ソリューション企業」TRIART(トライアート)とトヨタ自動車九州は6月9日、トヨタ九州宮田工場のレクサス製造ラインにおいて、「熟練工が感覚的に発見するような超微細な不良を、人とAIとの協働で未然に検出」する不良予兆感知システムの試行を開始すると発表した。

今回の取り組みは、鋼板のプレス加工によりパネルを作る際に、ごくわずかな形状のズレや鋼板の伸長度の差を、プレス機内部に設置したサーモカメラの画像から検出するというもの。成型後のヒビ割れやその他の不具合を招きかねないこうした不良の発見は、これまで熟練工の感覚と経験に依存してきた。

TRIARTは、同社が開発し実績を積んできた、画像データを基にした感性情報処理技術「コンポジットAI『4CAS』」を使い、サーモカメラの画像からパネルの基準形状となるマスター画像を生成して、生産されたパネルとマスター画像との差異を算出することで、5秒に1枚作り出されるすべてのパネルの評価を行えるようにした。これにより、「どのような事例が現れると次に不良が発生するか」という法則性が得られ、「熟練工の精度」での不良予兆感知が可能になるという。

このシステムの最大の特徴は、「画像を生成するタスクをAIの学習のみに依存せず、途中で作業員が大まかな形状指定を行い、再びAIの演算に戻す」というフローだ。AIで全自動化するのではなく、作業員の技能や人の判断のほうが優れている場面では、人の力を活用してAIが補完という考えだ。こうしたフローをデザインすることが「多くの課題解決を迅速化させる」と同社は信じている。

TRIARTのコンポジットAI「4CAS」は、前後の文脈から画像や音声などの情報の意図を読み取る人の脳と同じように、複数のAIの相互作用、相互制御によって対象データの中から意味や性質の「まとまり」を抽出し、高精度の結果を得るというユニークなシステム。コンポジットは「複合」を意味し、4CADSは「認識と知覚のための」という意味を持つ。

トヨタと共同開発した今回のシステムは、コンポジットAI「4CAS」のAIプロセスをブラックボックス化しない構成を活かし、「製造業というフィジカルな現場で人とAIが台頭に協働する好例」だという。

この試行は、トヨタ九州宮田工場で行われる。ここはレクサスの製造拠点であり、各工程に世界トップレベルの熟練工が揃っている(アメリカの調査会社J.D.パワーの2016年「日本自動車初期品質調査」で1位など)。「今回のような新しい生産技術が熟練工にさらなる技能とセンスを磨く余力を作り出し、より魅力的な製品をご提供する糧となることを期待しています」とTRIARTは話している。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)画像解析(用語)トヨタ自動車九州(企業)TRIART(企業)日本(国・地域)

コーンテックがAIカメラで養豚の体重・体格・肉質を計測する実証実験を開始

コーンテックがAIカメラで養豚の体重・体格・肉質を計測する実証実験を開始

IoT技術とAIを活用し養豚の「地産地消エコシステム」確立を目指すコーンテックは、NTT東日本神奈川事業部、神奈川県の養豚場臼井農産と共同で、AIカメラを使った養豚の体重、体格、肉質測定の実証実験を行うと発表した。実施期間は2021年6月7日から2022年3月末まで(予定)。

神奈川県の調べでは、養豚業者が減少する一方で、業者1戸あたりの飼育頭数は2019年には1300頭を超えており、飼育の効率化が求められているという。そこでNTT東日本は、2019年より神奈川県養豚協会、神奈川県畜産技術センターと連携して、既存設備に導入可能なIoTを活用した「養豚環境の見える化」、つまり温湿度データや豚の衛生環境などの監視システムの構築に取り組んできた。また2021年4月からは、臼井農産と連携し、品質と生産性向上のための適切なCO2濃度の維持管理方法を見極める実証実験を行っている。そして今回、コーンテックの深度センサー付きAIカメラを用いた実証実験を開始することになった。

コーンテックのAIカメラは、最大で50頭の体重、体格、肉質を同時に計測・推定算出できる。実証実験では、豚舎管理用の温湿度、CO2濃度の計測も行う。計測したデータはクラウド上のサーバーに蓄積され、飼育や出荷の判断などに活用する。また、計測データと、飼育出荷判断のデータの相関性を導くことで、熟練作業員のノウハウを可視化し、その知見の継承にも役立てるという。

今後、臼井農産では最高品質の豚肉の提供を、NTT東日本とコーンテックは、神奈川県内の養豚行へのIoTサービス導入のサポート、各種連携による養豚業の発展に向けた仕組み作りをそれぞれ目指してゆくとのことだ。

各社の役割

  • コーンテック:AIカメラによるデータ収集・蓄積、体重・体格・肉質の解析・精度向上、実体重との差異確認および教師データ化、機器検証情報の提供
  • NTT東日本:通信機器の設置・管理、実証実験の遂行における総合的な支援
  • 臼井農産:実験フィールドの提供、豚衡機計測による肥育豚体重情報提供、AIカメラ利用評価、体格(肉質)に関する評価・アドバイス

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カテゴリー:フードテック
タグ:IoT(用語)臼井農産AI / 人工知能(用語)コーンテック(企業)東日本電信電話 / NTT東日本(企業)養豚(用語)日本(国・地域)

服を着たまま全身採寸が可能なBodygram、スマホ写真2枚で体脂肪率や筋肉量の計測実現

体組成データの推定計測機能やUI向上など、アップデートを実施

Bodygram Japanは6月7日、自社開発のAI採寸テクノロジーでユーザーの身体サイズを計測する無料アプリ「Bodygram」(Android版iOS版)」の大幅なアップデートを完了したと発表した。独自開発したAI技術により、スマホ1つで体脂肪率と筋肉量の体組成データを推定計測できるようになった。さらに、UIの向上や目指す体型に合わせた目標設定ができる「ボディゴール」機能も追加している。

AIで全身採寸だけでなく体組成データも推定計測に

これまでのBodygramアプリでは、スマホで撮影した正面・側面の写真2枚と、身長・体重・性別・年齢を入力すれば、服を着たままボディラインを自動で検出し、腹囲・肩幅・手足の長さなど全身24カ所のサイズを推定採寸していた。

今回のアップデートによって、スマホ写真2枚と基礎情報の入力といった同様の手順で、身体のサイズに関するデータだけでなく、体脂肪率や筋肉量といった身体の内部に関するデータの計測を実現した。より踏み込んだ日々のヘルスケアマネジメントにチャレンジしやすくなっている。

Bodygramアプリの技術的な根幹を担うAIは、収集した学習用の人体データで構築した独自アルゴリズムによるものだ。採寸データ算出時に画像からボディラインの推定検出を行い、さらにそのデータから各部位のサイズを推定分析している。

また、従来の仕組みに加えて、アプリは体組成と相関関係にあることが判明している顔の構造分析を行うことで、スマホ写真2枚で体組成データまで推定計測できるようになった。機能実装に向けて数千人分のデータ学習を重ねたという。

6月4日に開かれたオンライン会見で、BodygramのJin Koh(ジン・コー)CEOは「現在、AIによる体組成データの測定精度は体脂肪率がプラスマイナス2.5%、筋肉量はプラスマイナス1kgとなっています。四半期に1度、ユーザー情報をアップデートしています。Bodygramのユーザーは増えているので、この精度はより高まっていきます」と説明した。

UI向上と「ボディゴール」機能も追加

利用傾向から、ユーザーは1度だけ自身の身体を計測するではなく、複数回に確認していることもわかったため、アップデートではUIも見直した。ウエストやヒップなど各ボディーパーツをイラスト付きで細かくわかるようにし、前回の計測時における数値との増減も表示するようにしている。

さらに、計測した体型データや体組成データを元に、自身が目指す体型に合わせてゴール設定を行える「ボディゴール」機能も追加している。目指す体型に合わせて、ボディーパーツごとにゴール設定が可能。設定した目標や過去の体型と、現在の体型を簡単に比較できる。自身の身体が3Dアバターとして表示されるため、数値だけで目標を追いかけるよりも、達成度をよりビジュアル的に理解できる。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Bodygram Japan人工知能アップデート日本アプリ

AIサイバーセキュリティ企業SentinelOneが110億円のIPOを申請

AIと機械学習を利用して企業などのデータ保護を支援する後期段階のセキュリティスタートアップSentinelOneが、ニューヨーク証券取引所(NYSE)にIPOを申請した。

このセキュリティ企業は、米国時間6月3日に提出されたS-1文書で4月30日に終わる3カ月で売上が3740万ドル(約41億円)で前年比108%増加し、顧客ベースは前年の2700社から4700社に増加したことを明らかにした。パンデミックがもたらした成長にもかかわらずSentinelOneの純損失は2020年の2660万ドル(約29億1000万円)から6260万ドル(約68億6000万円)へと倍以上に増加した。

SentinelOneは同文書で「今後も成長のための投資が継続するため、弊社の営業費用の増加も予想される。主な増加要因は、弊社プラットフォームのさらなる開発を進めるための研究開発の拡大と営業およびマーケティング活動の拡張、隣接市場に拡大していくための機能性の開発、そして新たな国や地域における顧客獲得のための費用だ」と述べている。

マウンテンビューに拠点を置く同社によると、同社はそのクラスAの普通株をティッカーシンボル「S」で発行する意図であるが、IPOのために用意する普通株の発行数や価格範囲については未定だ。S−1文書が挙げている主な引受人は、Morgan Stanley、Goldman Sachs、Bank of America Securities、Barclays and Wells Fargo Securitiesとなる。

SentinelOneは2020年11月に2億7600万ドル(約302億4000万円)を調達して、評価額は2021年2月の10億ドル(約1095億5000万円)から30億ドル(約3286億6000万円)へと3倍になった。当時、CEOで創業者のTomer Weingarten(トメル・ヴァインガルテン)氏はTechCrunchに、同社にとってIPOは「次の論理的なステップだろう」と語った。

SentinelOneは2013年に創業され、これまで8回の資金調達ラウンドで計6億9650万ドル(約763億円)を調達した。IPOによる調達額は最大で1億ドル(約110億円)を目指しており、この資金を利用してサイバーセキュリティのマーケットプレイスにおける企業の知名度を上げ、また製品開発など「一般的な企業プロセス」にも資金を投じたい、と述べている。

そしてさらに「資金の一部は弊社のビジネスを補完する技術やソリューションや事業の買収に当てるかもしれない」という。同社のこれまでで唯一の買収は2021年2月に行った高速ロギングのスタートアップScalyrの1億5500万ドル(約169億8000万円)の買収だ。

SentinelOneが上場を目指すこの時期は、サイバーセキュリティへの一般的な関心が高まっている時期でもある。パンデミックの間には著名な企業に波のように押し寄せるサイバー攻撃があり、ハッカーたちはリモートワークの広範な必然化に乗じている。

最大の攻撃の1つがロシアのハッカーによるIT企業SolarWindsのネットワークの侵犯で、それにより政府機関や複数の企業へのアクセスを彼らは得てしまった。SentinelOneのエンドポイント保護ソリューションは、関連する悪質なペイロードを検出および停止でき、顧客企業を護った。

ヴァインガルテン氏はSECへの提出文書の中で次のように述べている。「世界は犯罪者や国家犯やその他の悪質な行為者で満ちており、彼らはデータの窃盗や悪用の機会を探して、私たちの生活を破壊しようとしている。弊社のミッションは、情報を保存し処理し共有するデータとシステムという現代社会のインフラストラクチャの大黒柱を、保護しその安全を確保することにより、世界を正常に動かし続けることだ。犯人たちは、経営と操業を破壊、データを侵犯、利潤を転覆し、ダメージを与える彼らのクエストを急速に進化させているため、これは終わりなきミッションである」。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:SentinelOne新規上場機械学習人工知能

画像クレジット:Tero Vesalainen/Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始システム・IoTデバイス・AI・ロボティクスなどの技術導入のコンサルティング、開発から量産までを行うASTINA(アスティナ)は6月2日、AIを活用した外観検査装置の提供を開始した。化粧品などの不規則な模様のある製品でも傷の有無を確認できる。

2017年創業のASTINAは、作業現場の自動化のための装置開発・設置・運用・保守までを一貫してサポートする自動化パッケージ「OKIKAE」(オキカエ)を提供している。これまで同社は、中小工場向けDXサービス「自動バラ積みロボットOKIKAE」、工場のケーブルやコネクターの挿入を自動化する「OKIKAE for ケーブル挿入作業」をリリースしており、第3弾として「OKIKAE for AI外観検査」という外観検査の自動化を行うパッケージを用意した。

製造現場における製品の不良品を検出する外観検査は、作業時間がかかり、高度な知見が要求される作業だが、人員不足が問題になっている。画像認識による外観検査の自動化は以前から行われてきたが、ラベルの有無など、あらかじめ設定された対象物を判別するものがほとんどで、「傷、髪の毛、糸くずなどのランダム性があるもの」の検査は自動化が困難だった。また、「ランダムな模様に対応しきれず、正常な模様でも傷や異物と判断してしまう」問題もあったという。ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始

「OKIKAE for AI外観検査」は、AIを活用することで、ランダムな模様に惑わされることのない、傷や穴や欠けなどの検出を可能にした。たとえば、化粧品のグラデーションの生地にある傷の判別や、ラメ入りや多くの色が混じる製品での異物検出、さらに360度全方位の検査も行える。「ランダム性のあるベース+傷や髪の毛などのランダム性のある異物」も見逃さないとのことだ。もちろん、検査対象は化粧品に限らない。

「OKIKAE for AI外観検査」の特徴として、ASTINAは次の5つを揚げている。

  • 加工装置や組立て装置とともにAI外観検査を組み込める
  • AIで種別判定可能なので、種類別の排出が可能に
  • 多種多様な業界の顧客のワークに対応
  • 現状の設備にAI外観検査、NG機構を設けることが可能
  • 多品種少量生産に適したシステムの設定が可能

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:ASTINA(企業)AI / 人工知能(用語)画像認識(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)ロボット(用語)日本(国・地域)

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始システム・IoTデバイス・AI・ロボティクスなどの技術導入のコンサルティング、開発から量産までを行うASTINA(アスティナ)は6月2日、AIを活用した外観検査装置の提供を開始した。化粧品などの不規則な模様のある製品でも傷の有無を確認できる。

2017年創業のASTINAは、作業現場の自動化のための装置開発・設置・運用・保守までを一貫してサポートする自動化パッケージ「OKIKAE」(オキカエ)を提供している。これまで同社は、中小工場向けDXサービス「自動バラ積みロボットOKIKAE」、工場のケーブルやコネクターの挿入を自動化する「OKIKAE for ケーブル挿入作業」をリリースしており、第3弾として「OKIKAE for AI外観検査」という外観検査の自動化を行うパッケージを用意した。

製造現場における製品の不良品を検出する外観検査は、作業時間がかかり、高度な知見が要求される作業だが、人員不足が問題になっている。画像認識による外観検査の自動化は以前から行われてきたが、ラベルの有無など、あらかじめ設定された対象物を判別するものがほとんどで、「傷、髪の毛、糸くずなどのランダム性があるもの」の検査は自動化が困難だった。また、「ランダムな模様に対応しきれず、正常な模様でも傷や異物と判断してしまう」問題もあったという。ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始

「OKIKAE for AI外観検査」は、AIを活用することで、ランダムな模様に惑わされることのない、傷や穴や欠けなどの検出を可能にした。たとえば、化粧品のグラデーションの生地にある傷の判別や、ラメ入りや多くの色が混じる製品での異物検出、さらに360度全方位の検査も行える。「ランダム性のあるベース+傷や髪の毛などのランダム性のある異物」も見逃さないとのことだ。もちろん、検査対象は化粧品に限らない。

「OKIKAE for AI外観検査」の特徴として、ASTINAは次の5つを揚げている。

  • 加工装置や組立て装置とともにAI外観検査を組み込める
  • AIで種別判定可能なので、種類別の排出が可能に
  • 多種多様な業界の顧客のワークに対応
  • 現状の設備にAI外観検査、NG機構を設けることが可能
  • 多品種少量生産に適したシステムの設定が可能

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オンライン診断で身長や立ち姿勢など答えれば自分に合ったマットレスが作られ家に届く、SleepTechのyuniが5.5万円から販売へ

人は、人生の3分の1を寝て過ごしている。睡眠を支えるマットレスは重要なプロダクトだ。しかし、マットレスに対して「選ぶのが難しい」「実際に寝てみないと良し悪しがわからない」「捨てるのが面倒」といった悩みを持つ人は多いのではないだろうか。

2019年に設立したyuniはこれらの悩みや睡眠課題を解決し、1人ひとりに最適な眠りの提供を目指すSleepTechのスタートアップだ。yuniは2021年6月末から、AI技術を活用した無料のオンライン診断で、パーソナライズされたマットレスをつくることができるサービス「xSleep(クロススリープ)」の一般販売を始める。

利用者はxSleepのサイトで、身長や年齢から、立ち姿勢、寝姿勢、肩幅、筋肉量などについての質問に答えるだけで、診断結果から自分にパーソナライズされたマットレスが1週間程度で自宅に届く。これまで自分に合ったマットレスを探すためには、実際に売り場まで足を運び、試す必要があったマットレス選びをyuniはオンラインで完結できるようにした。

さらに2021年夏からは、パーソナライズされたマットレスをただ購入するのではなく、自宅で実際に試すことができるサブスク型のサービスも全国で始める予定だ。yuniの内橋堅志代表に話を聞いた。気に入れば買い取りもでき、物足りなければ再度パーソナライズしてもらうこともできる。

エンジニア×実家の寝具メーカーにおける経験

実家の寝具メーカーの風景、内橋氏の遊び場だったという

yuniの内橋堅志代表の実家は寝具メーカーであり、幼いころから寝具作りは身近なものだった。高校生になってからは新規事業にも関わるようになり、素材から製造、運送、リサイクルに至るまで、寝具に関する幅広い知識を得た。大学では機械学習などを専攻し、卒業後はエンジニアとして企業に就職。その後はフリーのエンジニアとしても働いていた。

「私自身が機械学習エンジニアであり、データ分析に強みがあります。また、実家が寝具メーカーだったからこそ、寝具業界における人脈もノウハウもあります。このため、オンライン完結型のパーソナライズマットレスの開発・提供ができたのです」と内橋氏は話す。

マットレスのオンライン完結型パーソナライズに向け研究を行ってきた

寝具業界はレガシーな業界であり、マットレスなどのプロダクトは30年近く見た目も製法も変わっていないという。

内橋氏は「事業を始める前に、私は曖昧な感覚論ではなくデータドリブンな手法で、日本人に合ったマットレスを提案しようと考えました。研究を重ねる中で、『日本人』で一括りにするのではなく、1人ひとりにパーソナライズされたモデルを提供したほうが良いのではないかと考え直し、xSleepの開発に至ったのです」と振り返る。

オンライン診断でマットレスをパーソナライズ

質問を重ねて、パーソナライズしていく

xSleepの最大の特徴は、マットレスのパーソナライズがオンラインで完結する点だ。これまで業界内では、マットレスを個人に合わせて作るには「オフラインでの計測データが必要だ」と先入観があったという。

例えば、寝具のオーダーメイド企業がオフラインで取る代表的なデータは体圧分散とだ。体圧分散は簡単に言えば、マットレス上で体のどこにどれだけ圧力がかかっているのかということ。一般的にこのバランスが良いほど優れたマットレスだと言われている。

yuniはこれまでオフラインで計測していた体圧分散などのデータを、オンラインの質問で得た情報から予測するAI技術を独自開発した。年齢性別といった基本情報やライフスタイルなどから睡眠の傾向も予測できるようにしている。

この技術を活用したオンライン診断では現状、理学療法士と考案した質問などを含めて10個以上の質問を用意している。

「当たり前ですが男女でマットレスの構造は変わります。背骨の曲がり具合や寝姿勢、筋肉量などについても大きく影響します。これらに対する質問を重ねていくことで、1人ひとりのデータに基づくパーソナライズドマットレスの提供を可能にしています」と内橋氏は述べた。

xSleepのマットレスは組み立てを一本化

画像下部にある筒状のものがポケットコイル、上部の3×3に分かれているものがトッパー

xSleepでは自宅にあるマットレスに重ねて使えるトッパーのマットレスと、トッパーとポケットコイルのマットレスがセットになった2パターンを販売していく。

価格はそれぞれ税込み・送料込み・シングルサイズで、トッパーが5万5000円、セットが12万円を想定している。支払い方法はクレジットカード以外にAmazon Payなどにも対応する予定だ。

xSleepのトッパーは頭と腰、足の3つパーツに分かれている。さらに2段構造となっているため、1枚で計6カ所の素材や硬さなどを個人に合わせて変えることができる。

内橋氏は「自宅に届いたxSleepのマットレスは、数多の組み合わせの中から生まれた、その人しか持っていない製品になる可能性もあります」と説明する。

xSleepはマットレスの高い品質を実現するため、素材や組み立て、オーダーメイドなど寝具作りを専門とする国内外のパートナー企業10社以上と連携して生産している。内橋氏はこう説明する。

「我々はxSleepの組み立てを一本化している上、中間業者を排して『各メーカーが得意な領域に絞って発注する』ことを徹底しているので、高品質ながらも一般的なオーダーメイドマットレスより安価に提供することができるのです」。

サブスクで試せるマットレス

xSleepのトッパーを試せるサブスクサービスは現状、月々税込4000円ほどを想定しているという。具体的には利用者がオンライン診断をした後、パーソナライズされたマットレスが自宅に届き、それを数カ月単位で使うことができるというもの。自分に合っているか実際に寝て試すことができるのだ。

自分に合わないと感じれば、既存のトッパーを回収してもらい、再パーソナライズしたものでまた試せる。最終的には製品に納得してもらうことで、トッパーとポケットコイルのマットレスのセットを購入してもらう狙いだ。

内橋氏は「サービスとしてToo Muchな部分もあるかもしれません。ただ、マットレスの買い替えの判断ができない人のためにやっていきたいです」と話した。

内橋氏の実家の寝具メーカーは寝具リサイクルの特許を持ち、20年近くにわたり寝具のリサイクルを行ってきた。yuniは実家の寝具メーカーと業務提携をしており、その特許の使用権も得ている。これにより、通常の寝具は返品されれば廃棄するしかないが、yuniはサブスクサービスで回収したトッパーでもリサイクルできるようになっている。

さらにyuniでは、現在使っている自宅のマットレスを引き取って、新しいxSleepのマットレスと交換するプランも構想中だという。内橋氏は「xSleepは素材もリサイクル前提で作られており、SDGsにも配慮したブランドとして認知を拡大していきたいです」と力を込める。

しかし、内橋氏はマットレスを一方的にパーソナライズしていくことに躊躇もしているという。一般的に仰向けが正しい寝姿勢とされているが、うつ伏せや横向きで寝る人もいる。オンライン診断による結果は、あくまで現在の寝方に合わせたものになるため、正しい寝姿勢へと導くことはできない。

内橋氏は「今後は継続的に睡眠データを取得できるデバイスを開発し、そのデータから正しい睡眠に導きつつ、変化に合わせて最適なマットレスを提供できるブランドを目指して研究を続けていきます」と語った。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:yuniスリープテック日本人工知能サブスクリプション

オンライン診断で身長や立ち姿勢など答えれば自分に合ったマットレスが作られ家に届く、SleepTechのyuniが5.5万円から販売へ

人は、人生の3分の1を寝て過ごしている。睡眠を支えるマットレスは重要なプロダクトだ。しかし、マットレスに対して「選ぶのが難しい」「実際に寝てみないと良し悪しがわからない」「捨てるのが面倒」といった悩みを持つ人は多いのではないだろうか。

2019年に設立したyuniはこれらの悩みや睡眠課題を解決し、1人ひとりに最適な眠りの提供を目指すSleepTechのスタートアップだ。yuniは2021年6月末から、AI技術を活用した無料のオンライン診断で、パーソナライズされたマットレスをつくることができるサービス「xSleep(クロススリープ)」の一般販売を始める。

利用者はxSleepのサイトで、身長や年齢から、立ち姿勢、寝姿勢、肩幅、筋肉量などについての質問に答えるだけで、診断結果から自分にパーソナライズされたマットレスが1週間程度で自宅に届く。これまで自分に合ったマットレスを探すためには、実際に売り場まで足を運び、試す必要があったマットレス選びをyuniはオンラインで完結できるようにした。

さらに2021年夏からは、パーソナライズされたマットレスをただ購入するのではなく、自宅で実際に試すことができるサブスク型のサービスも全国で始める予定だ。yuniの内橋堅志代表に話を聞いた。気に入れば買い取りもでき、物足りなければ再度パーソナライズしてもらうこともできる。

エンジニア×実家の寝具メーカーにおける経験

実家の寝具メーカーの風景、内橋氏の遊び場だったという

yuniの内橋堅志代表の実家は寝具メーカーであり、幼いころから寝具作りは身近なものだった。高校生になってからは新規事業にも関わるようになり、素材から製造、運送、リサイクルに至るまで、寝具に関する幅広い知識を得た。大学では機械学習などを専攻し、卒業後はエンジニアとして企業に就職。その後はフリーのエンジニアとしても働いていた。

「私自身が機械学習エンジニアであり、データ分析に強みがあります。また、実家が寝具メーカーだったからこそ、寝具業界における人脈もノウハウもあります。このため、オンライン完結型のパーソナライズマットレスの開発・提供ができたのです」と内橋氏は話す。

マットレスのオンライン完結型パーソナライズに向け研究を行ってきた

寝具業界はレガシーな業界であり、マットレスなどのプロダクトは30年近く見た目も製法も変わっていないという。

内橋氏は「事業を始める前に、私は曖昧な感覚論ではなくデータドリブンな手法で、日本人に合ったマットレスを提案しようと考えました。研究を重ねる中で、『日本人』で一括りにするのではなく、1人ひとりにパーソナライズされたモデルを提供したほうが良いのではないかと考え直し、xSleepの開発に至ったのです」と振り返る。

オンライン診断でマットレスをパーソナライズ

質問を重ねて、パーソナライズしていく

xSleepの最大の特徴は、マットレスのパーソナライズがオンラインで完結する点だ。これまで業界内では、マットレスを個人に合わせて作るには「オフラインでの計測データが必要だ」と先入観があったという。

例えば、寝具のオーダーメイド企業がオフラインで取る代表的なデータは体圧分散とだ。体圧分散は簡単に言えば、マットレス上で体のどこにどれだけ圧力がかかっているのかということ。一般的にこのバランスが良いほど優れたマットレスだと言われている。

yuniはこれまでオフラインで計測していた体圧分散などのデータを、オンラインの質問で得た情報から予測するAI技術を独自開発した。年齢性別といった基本情報やライフスタイルなどから睡眠の傾向も予測できるようにしている。

この技術を活用したオンライン診断では現状、理学療法士と考案した質問などを含めて10個以上の質問を用意している。

「当たり前ですが男女でマットレスの構造は変わります。背骨の曲がり具合や寝姿勢、筋肉量などについても大きく影響します。これらに対する質問を重ねていくことで、1人ひとりのデータに基づくパーソナライズドマットレスの提供を可能にしています」と内橋氏は述べた。

xSleepのマットレスは組み立てを一本化

画像下部にある筒状のものがポケットコイル、上部の3×3に分かれているものがトッパー

xSleepでは自宅にあるマットレスに重ねて使えるトッパーのマットレスと、トッパーとポケットコイルのマットレスがセットになった2パターンを販売していく。

価格はそれぞれ税込み・送料込み・シングルサイズで、トッパーが5万5000円、セットが12万円を想定している。支払い方法はクレジットカード以外にAmazon Payなどにも対応する予定だ。

xSleepのトッパーは頭と腰、足の3つパーツに分かれている。さらに2段構造となっているため、1枚で計6カ所の素材や硬さなどを個人に合わせて変えることができる。

内橋氏は「自宅に届いたxSleepのマットレスは、数多の組み合わせの中から生まれた、その人しか持っていない製品になる可能性もあります」と説明する。

xSleepはマットレスの高い品質を実現するため、素材や組み立て、オーダーメイドなど寝具作りを専門とする国内外のパートナー企業10社以上と連携して生産している。内橋氏はこう説明する。

「我々はxSleepの組み立てを一本化している上、中間業者を排して『各メーカーが得意な領域に絞って発注する』ことを徹底しているので、高品質ながらも一般的なオーダーメイドマットレスより安価に提供することができるのです」。

サブスクで試せるマットレス

xSleepのトッパーを試せるサブスクサービスは現状、月々税込4000円ほどを想定しているという。具体的には利用者がオンライン診断をした後、パーソナライズされたマットレスが自宅に届き、それを数カ月単位で使うことができるというもの。自分に合っているか実際に寝て試すことができるのだ。

自分に合わないと感じれば、既存のトッパーを回収してもらい、再パーソナライズしたものでまた試せる。最終的には製品に納得してもらうことで、トッパーとポケットコイルのマットレスのセットを購入してもらう狙いだ。

内橋氏は「サービスとしてToo Muchな部分もあるかもしれません。ただ、マットレスの買い替えの判断ができない人のためにやっていきたいです」と話した。

内橋氏の実家の寝具メーカーは寝具リサイクルの特許を持ち、20年近くにわたり寝具のリサイクルを行ってきた。yuniは実家の寝具メーカーと業務提携をしており、その特許の使用権も得ている。これにより、通常の寝具は返品されれば廃棄するしかないが、yuniはサブスクサービスで回収したトッパーでもリサイクルできるようになっている。

さらにyuniでは、現在使っている自宅のマットレスを引き取って、新しいxSleepのマットレスと交換するプランも構想中だという。内橋氏は「xSleepは素材もリサイクル前提で作られており、SDGsにも配慮したブランドとして認知を拡大していきたいです」と力を込める。

しかし、内橋氏はマットレスを一方的にパーソナライズしていくことに躊躇もしているという。一般的に仰向けが正しい寝姿勢とされているが、うつ伏せや横向きで寝る人もいる。オンライン診断による結果は、あくまで現在の寝方に合わせたものになるため、正しい寝姿勢へと導くことはできない。

内橋氏は「今後は継続的に睡眠データを取得できるデバイスを開発し、そのデータから正しい睡眠に導きつつ、変化に合わせて最適なマットレスを提供できるブランドを目指して研究を続けていきます」と語った。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:yuniスリープテック日本人工知能サブスクリプション