クラウドソーシングでアニメ動画を制作するCrevo、実写映像にも対応——独自の管理ツールで差別化を図る

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

クラウド動画制作プラットフォームのCrevoは9月5日、実写映像制作サービスの提供を開始した。

Crevoは2014年3月にサービスを開始して以来、アニメーションに特化したクラウド動画制作プラットフォームを提供してきた。これまでに500社が利用。登録クリエイターは3000人以上にのぼる。

今後はこのプラットフォーム上で実写映像制作サービスを提供する。顧客の顔や現場の雰囲気を直接伝えることができるインタビュー動画や店舗紹介動画など、実写撮影が必要である映像制作の需要に応えるため、サービスプランの拡充、システムの改善を進める。

映像制作全般をシステムで効率化

Crevo(当時の社名はPurpleCow)の設立は2012年6月。は2014年3月に「動画制作に特化したクラウドソーシング」とうたってサービスを開始した。2015年2月には1億円の調達を実施し、サービス名にあわせるかたちで社名をCrevoに変更した。2015年8月にはクラウドでの動画制作支援システム「Crevo Basecamp」の提供を開始し、動画制作を依頼するクライアントと動画を制作するクリエイターの間で発生する作業の工数削減を促進してきた。アニメーション動画制作の効率化、工数削減にはすでに成功し、安価なパッケージプランの提供が可能となっている。

一方で、クライアントからの需要が高いと感じていた実写映像制作のパッケージ化も2015年秋頃より着手。パッケージプラン、動画制作支援システムの最適化を行い、今後はアニメーション動画、実写映像の二軸でクライアントの需要に応えていくことになる。

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

ディレクターの負担を激減

実写映像制作は通常、企画完成後、スタッフ集めや機材準備、撮影地の確保からキャスティングまで、すべてをディレクターが担当する。手配が完了した後、撮影を実施、映像の納品を完了する。Crevoの実写映像制作サービスでは、ディレクターが属人的に行う工程をツール上のシステムで解決し、効率化していくことを目指すという。

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

従来は試写会や対面でのコミュニケーションを通じて行うことが多かった制作中の映像へのフィードバックを、システムでオンライン化。さらに、ロケーション探しの工数、負担を減らすためにレンタルスペースを運営するYuinchuと事業提携を実施。Crevoでの実写映像制作時にはYuinchuが運営するレンタルスペースをディスカウント料金、特別な支払いサイクルで利用することができる。

「従来の実写映像制作では、スタッフィング(カメラマンなどのスタッフ集め)、ロケーション決め(撮影地の確保)、キャスティング(モデル、出演者確保)は、ディレクターが検索して確保する。もしくは知り合いを通じて見つけるなど、かなりアナログな方法で作業をしている部分が多いことが分かった。そのアナログな工程を効率化できればと思っている」(Crevo広報)

2016年秋には、ディレクターが担当することが多いストーリー構成もテンプレート化するなど、実写映像制作の工程もアニメーションと同様、効率化を図っていく予定だという。

少人数の制作チームでスケールを目指す

今後も動画制作事業を中心に事業を展開していく。だが一方で「普通の制作会社」にならないよう、動画制作支援システムの開発に力を入れてきたというCrevo。インターン、バイトを入れて25人いる従業員のうち、制作チームは半数以下。営業とエンジニアの採用は強化していく一方で、制作チームは業務効率化を進めることで、少人数体制のままでのスケールを目指していくという。

「企業から受けている映像制作案件は1年前に比べるとかなり増えているが、制作チームの人数はほとんど変わっていない。通常の映像制作会社の場合は従業員の大半が制作担当者。我々はインターネット企業としての立場を大切にして、働き方やツールでの効率化も大切にして、成長していきたいと考えている」(Crevo広報)

クラウド家事代行の「CaSy」、最短3時間前の予約が可能に

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2014年6月に正式スタートしたクラウド家事代行サービス「CaSy(カジー)」が、当日3時間前までの予約に対応する「直前リクエスト」機能をリリースした。これまでCaSyでは予約の締め切りを「2日前の18時」としていたが、ユーザーから要望の多かった直前利用に対応する。

現在、関東圏一都三県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)と大阪府および兵庫県でサービスを展開するCaSy。各地域にてクラウドソーシングで家事代行スタッフをネットワーク化、現在月数千件の予約を受けている状況だという。売上高は非公開だが前年同月比で10倍になった。「例えメディアに露出して、登録までしても使ってもらえない。そこからユーザーにヒアリングを行ってプロダクトを磨いてきた。本当にコツコツしたことの積み上げだ」(サービスを提供するCaSy代表取締役CEOの胡桃沢精一氏)

1年半以上サービスを続けて、ユーザーとスタッフの相性も見えてきた。例えば子どものいるユーザーであれば、育児経験のあるスタッフが好まれるといった具合だ。「このビジネスはユーザーの『最初の印象』が重要。そのためには、最初にいいスタッフとマッチングする意味は大きい」(胡桃沢氏)。直近ではエンジニアも強化し、マッチングの最適化も進めている。

このマッチングの最適化が今回の3時間前までの予約の実現にも繋がった。「これまでであれば、週末に家事代行の依頼をしようと思っても、実際に家事をやってもらえるのは週明けになってしまっていた。だが前日や当日に申し込みをしたいという声は大きかった」(胡桃沢氏)

直前リクエストの利用は1時間3000円。通常は1時間2500円(スポット利用の場合。定期利用の場合は1時間2190円から)なので、料金的には500円追加でのオプションと考えていいだろう。ただし地域や時間帯によっては、マッチングできない可能性もある。同社では今後マッチング精度の向上、スタッフの拡大により、直前リクエストへの対応も強化していくとしている。

クラウドソーシングでマンガ制作——フーモアがデジガレなどから2億円の資金調達

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クラウドソーシングでマンガ制作を行うスタートアップのフーモアは12月16日、デジタルガレージ傘下のDGインキュベーションおよびDK Gate(講談社との合弁。今回が初の投資となる)、アドウェイズを引受先とした合計約2億円資金調達を実施したことを明らかにした。

フーモアは2011年11月の設立。クラウドソーシングの仕組みを利用してゲーム向けのイラストや3DCGなどを制作してきた。競合サービスであるMUGENUPなども詳細は違えど同様のスキームを採用しているとも聞くが、制作工程を分業する独自のスキームを採用、さらに、国内外で約3000人のクリエイターをネットワーク化することで、短期間で高品質な制作物の量産を実現しているとしている。売上高は非公開だが、2年目以降、前年比500%、230%、140%というペースで成長しており、現在は売上高数億円という規模になっているという。

このノウハウを元に、2015年1月からはマンガ制作の新規事業を開始。漫画制作の工程についてもイラスト同様に分業することで、スマートフォンに特化したマンガの制作を行っている。ディー・エヌ・エー(DeNA)の「マンガボックス」をはじめとしたスマホ向けのマンガアプリが登場しているが、そこに配信するマンガ——スマホ向けゲームのコミカライズや「マンガ広告」、すなわちネイティブアドなど——をこれまで1年弱で150本以制作してきたという。

以前、とあるスタートアップがマンガ広告を作成して漫画アプリ上で配信したが、コンバージョンは「通常広告と比較しても厳しい結果が出た」なんていう話を聞いたことがあった。通常の広告と同じように、マンガ広告も演出や構成が重要だし、なによりコンバージョンまで導かないといけない。またフーモアのように制作に特化しているのであれば短期間に漫画を量産し、品質を落とさないことも求められる。このあたりの課題を解決するために、分業型のクラウドソーシングのスキームが有効だと説明する。

フーモアでは今回の出資もとに、マンガを使った広告素材の制作、オリジナル作品の制作を進めていく予定。

職人が適切な所得を得られるように——縫製マッチングプラットフォーム「nutte」の挑戦

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「10年縫製をやっていたが貧乏で嫁にも逃げられて…でも何かこのビジネスを変えるいい方法がないかと考えていた」——招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2015 Fall Kyoto」のプレゼンバトル「LaunchPad」で第2位となった縫製特化のクラウドソーシングサービス「nutte」。サービスを提供するステイト・オブ・マインド代表取締役社長の伊藤悠平氏との会話は、こんな話から始まった。

縫製職人の厳しい環境

大学生の頃からファッションブランドを立ち上げることを目標にしていた伊藤氏。大学卒業後にまず広告デザインの会社で働き、資金を貯めて縫製の専門学校に入学。専門学校の卒業後に晴れて縫製職人となるが、同氏を待っていたのは厳しいビジネス環境だった。

伊藤氏に聞いたところだと、一般的に縫製職人は個人が自宅で、もしくは少人数が小さなアトリエで作業するのだという。そして取引先から発注される仕事を受けることで生計を立てている。だが職人側から積極的に取引先たるメーカーなどに直接取引の提案を行うことはあまりないのだそう。

ステイト・オブ・マインド代表取締役社長の伊藤悠平氏

ステイト・オブ・マインド代表取締役社長の伊藤悠平氏

さまざまなケースがあるのであくまでざっくりとした話になるのだが、「振り屋」と呼ばれるエージェント的な業者(これはOEMメーカーだったり、商社だったり、エージェント専業だったりと状況によって異なる)がメーカーからの生産依頼を受けて縫製職人に仕事をアサインすることが多い。

これはメーカー側、工場や職人側の手間を減らす構造とも言えるが、一方で中間業者ありきの構造とも言える。職人が新規の取引先を自力で開拓することは難しいし、安価な海外への発注が増えるなどして価格競争に陥り、職人に支払われる金額は下がる一方なのだそう。

その結果、著名ブランドのサンプルを作っているような技術を持った職人であっても、1枚2000円のシャツまでを縫製しないと生活が難しいという状況もある。振り屋側もビジネス。注文量や注文額大きくないと自分たちの事業が成り立たないため、サンプル縫製など小ロットの注文を受けることは難しいという。

クラウドソーシングの仕組みで職人を支援

伊藤氏はこの小ロットの注文と縫製職人を直接繋ぐことで、縫製業者の収入を確保する道を模索していたのだそう。そんなときランサーズのサイトを知る。そこからクラウドソーシングの仕組みを使うことで、この課題を解決できないかと考えるようになった。

そこからの動きは速かった。東京都が2014年に開催したビジネスプランコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」に参加。それと並行してエンジニアを口説き、開発体制を整えた。そしてビジコンで出会ったメンバーも巻き込むかたちでチームを組成。2015年2月にnutteを公開した。

nutteは縫製を依頼したいユーザーと、登録した縫製職人をマッチングするサービス。ユーザーが制作物の詳細や金額、納期などを設定して案件を登録すると、興味を持った縫製職人がユーザーに連絡、条件が折り合えば案件成立となる。職人は期限内に縫製を終えて納品(一度nutteに送付し、検品した後ユーザーに送付することになる)。ユーザーが支払いを行う。料金の20%が手数料としてnutteに支払われる。商品は1点から発注可能。作り手を検索してメッセージを送ることもできる。近いサービスとしては、縫製工場のクラウドソーシングサービスである「シタテル」がある。

当初は100人程度の職人をネットワークし、ノンプロモーションでサービスをスタート。展示会用のサンプルなど、小ロットの発注を積み重ねていった。現在は1800ユーザー(発注者)、登録する職人は数百人にまで拡大した。3000万円のシードマネーを調達した11月以降、広告の配信も始めた。10月比で売上数は4倍に伸びた。

法人向けの発注を中心にしつつも、CtoCコマースのような個人発注も拡大中だ。例えばコスプレ衣装の縫製などはニーズの高い案件となっている。案件は発注者側が登録するが、その成約率は約90%。「よほど安い、納期が短いという案件でない限りは成約している」(伊藤氏)。最近ではセミプロクラスの職人の登録にも積極的だ。ドレスやジャケットのような本格的な縫製ニーズだけでなく、ぞうきんや巾着袋といったちょっとした縫製のニーズも高いためだという。

今後は一級和裁技能士の登録も促し、本格的な着物の縫製までに対応できる仕組みを作るほか、技術力の高い職人がほかの職人の品質テストをするような組みも導入する予定だ。「これまで誰も儲からないで幸せにならない状況。縫製職人が適切な所得を得られるのが最大の目的。それを実現できる状態をつくるのがまず最初の目標」(伊藤氏)

11月に3000万円の資金を調達

ステイト・オブ・マインドは11月にみずほキャピタル、ガイアックスグループのほか、元クックパッドCFOでミューゼオ代表取締役の成松淳氏、ピクスタ代表取締役社長の古俣大介氏、公認会計士で元みんなのウェディング社外監査役、エルテス社外監査役の本橋広行氏などから合計約3000万円の資本調達を実施。このほかにも著名なスタートアップ企業家複数人がエンジェルとして同社を支援している。

中でも古俣氏はビジコン時代に出会って以来のメンター的な起業家だという。「1年前まではガラケーを使って、デットとエクイティの違いも分からなかったが、ITや起業に強い人たちが支援をしてくれている」(伊藤氏)。同社では、2016年12月までにユーザー数3万人、累計取引件数5000件、流通額2億円を目指す。

ランサーズとアイレップが提携、クラウドソーシングを使ったコンテンツマーケ支援事業

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クラウドソーシングサービスを展開するランサーズとマーケティングエージェンシーのアイレップは6月8日、コンテンツマーケティング領域での業務提携を締結した。2社は共同でコンテンツマーケティング支援サービス「ONE CUSHION(ワンクッション)」を提供する。

ONE CUSHIONは、ランサーズに登録するライターに対して試験を実施して、人材を選抜。試験に合格したライターに限定してクライアントワークを発注することで、クライアントは品質の高いコンテンツをもとにしたコンテンツマーケティングを実現できるというもの。ライターのアサインやディレクションをランサーズが、クライアントとのコミュニケーションや最終的な校正等をアイレップが担当する。

このONE CUSHION、もともとランサーズ、アイレップがそれぞれ今まで提供してきたサービスの強みを組み合わせたモノだという。

企業がオウンドメディアを立ち上げるなどして、コンテンツ(記事など)をフックに、消費者や顧客との関係性を築くことを指すコンテンツマーケティング。ランサーズ上にはこれまでもコンテンツマーケティングに向けた記事作成——1記事数十円〜数百円という、価格重視で品質を問わないモノかから、特定分野に特化したライターでないと書けないような比較的高単価のものまで——の依頼は数多くあったし、例えば「金融」といったテーマに特化した記事作成に特化したメディアにライターのリソースを提供するといった法人向けのビジネスも行ってきているのだそうだ。

またこれまでSEMや広告運用などを通じて企業のマーケティング支援をしてきたアイレップでは、2年ほど前から編集プロダクション(編プロ)などライターを束ねる企業と組み、コンテンツマーケティング事業を進めてきた。

アイレップが事業を進める中で課題を感じていたのは、コンテンツの品質。例えば著名な編集プロダクションと組んでも、その品質は実際に記事を書くライター個人の能力によって左右されるため、「ライターのアサイン状況次第では満足できない結果になっていた。ライターの高度な標準化が必要になった」(アイレップ取締役の下山哲平氏)という。その解決策として、同社では社内で編集・校正の機能を持つようになったのだという。

だが最終的な品質のチェックを社内でするのであれば、編集機能のある組織と組むよりも、クラウドソーシングようにライターが集まるプラットフォームと組む方が安価なわけだ。そんなことから複数の事業者と話し合いを進め、今回のランサーズとの提携に至ったのだそう。「(クライアントから来た)案件をそのままプラットフォームに投げるのではなく、間に入ってクライアント、ライターの両方とコミュニケーションをとるディレクターが必要。そこに投資をし、注力しているのがランサーズだった」(下山氏)。

 

動画制作クラウドのViibarがヤフーと資本業務提携、既存株主含め7億円の資金調達

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「動画元年」なんて言われていたのは去年か一昨年のことだっただろうか。ともかく動画に関するビジネスが急速に拡大しているのは事実だ。十代のカップルが自らの動画をアップする「MixChannel」は女子中高生の2人に1人が利用しているそうだし、動画広告のプラットフォームも複数スタートしている。UUUMのようなYouTuberのマネジメント会社も登場してきたし、動画制作向けのクラウドソーシングサービスもある。

そんな動画制作特化型クラウドソーシングサービスの1つ、「Viibar」を運営するのがViibarだ。同社は5月18日、ヤフーと資本業務提携を行うことを明らかにした。

資本提携では、ヤフーに加えて既存株主であるグロービス・キャピタル・パートナーズおよびグリーベンチャーズが出資。総額約7億円の第三者割当増資を実施した。あわせて、ヤフー執行役員 マーケティングソリューションカンパニー長の荒波修氏が社外取締役に就任する。なお、業務提携の詳細については、6月後半にも詳細を発表するとしている。

動画広告が成長。売上は前年比30倍に

Viibarは動画制作に特化したクラウドソーシングサービスだ。現在国内を中心に約2000人のクリエーターがユーザー登録。動画制作はスタッフが進行管理や制作スタッフのマッチングを担当。クライアントとクリエーターはオンライン上でコミュニケーションを取りながら動画を制作していく。

Viibar代表取締役の上坂優太氏

Viibar代表取締役の上坂優太氏

これまで、動画広告や商品説明動画などウェブで利用される動画をはじめ、テレビCMやOOH(交通広告や屋外広告)などに向けた動画を制作してきた。売上高は非公開ということだったが、「2013年度から2014年度で30倍成長」(Viibar代表取締役の上坂優太氏)なのだそう。

初年度ということでベースとなる売上が決して大きいとは思わないが、それでも30倍というのはすごい数字だ。この成長の背景にあるのは、急増する動画広告のニーズ。「テレビCMやOOHなど、利用の幅も広がっているが、そこはあくまで一次関数的な成長でしかない。当初から明確にあったウェブの動画広告が大きく成長している。市場ではクリエイティブ不足が明確な課題になってきた」(上坂氏)

制作だけでなく、“成果”に結びつく機能の提供へ

上坂氏は、「安かろう悪かろうではない」と、Viibarで作成する「動画」そのものの品質が評価されていると説明するが、同時に「動画広告」としての品質を高めているところだと語る。

動画広告は、単純に動画としてのクオリティだけでなく、動画を閲覧した人がそのサービスを利用したり、商品を購入するといった“成果”が求められるもの。そのため、どれだけイケてる動画を作るかということではなく、動画広告をユーザーに配信するという一連のフロー——企画、制作者のマッチング、動画制作、動画の配信、効果測定、そして効果測定を元にしたPDCAを回す——を通じて、成果を出していかなければならない。

だがこれまでのクラウドソーシングが担当していたのは「制作者のマッチング」「動画制作」といったパート程度だ。Viibarでは現在、動画広告にまつわる一連のフローを自社でまかなえるよう、各種開発を進めているのだそうだ。「動画広告はクリエイティブの要素が大きいが、そのクリエイティブを評価して、次の企画に落とし込むというところまでをデータドリブンでやっていく」(上坂氏)

具体的な内容については聞けなかったが、動画制作に加えて動画配信やアナリティクスの機能も提供していくということだろう。実際、今回の調達を機に、データアナリストなどの採用も始めていると聞いた。

ヤフー本体が出資するも「基本的にはIPO目指す」

ヤフー本体によるスタートアップへの出資というのは、それほど多いケースではない。Facebookを使った懸賞サービスを提供していたクロコスや、映画チケットの共同購入サービスを提供していたブルームなど、買収案件が比較的目立っている印象だ。

ヤフーによる買収の可能性について上坂氏に尋ねたところ、「基本的にはIPOを目指している。動画広告は急速に伸びており、特にBtoB、BtoBtoCでレバレッジを書けてサービスを展開するには、以下にジャイアントと組むかというのは重要になると思っている。ただし我々はYouTubeやFacebookなどともすでに取引もあるし、基本的に独立した存在」としている。

「赤字上場でもしっかりした成績が残せた」2Q決算でクラウドワークス吉田社長

20年後にクラウドソーシングで年間総契約額3兆円の仕事を提供する——クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は、5月15日に開催された決算説明会兼事業戦略発表会でこのように語った。

事業は成長、「しっかりした成績が残せた」

すでに昨日発表済みではあるが、クラウドワークスの2015年9月期第2四半期(第1〜2四半期累計)の営業収益で3億6500万円(前年同期比で307.8%増)、営業利益は2億8300万円の赤字(前年同期は1億700万円の赤字)、経常利益は2億8700万円の赤字(同1億700万円の赤字)、純利益は2億9500億円の赤字(同1億800万円の赤字)。

事前見通しの通り利益を見ると赤字ではあるものの(ただし、質疑応答以外、プレゼンで利益のことに全く触れなかったのはちょっと気になったのだが)、総契約額では前年同期比で97%となる6億5600万円。クラウドワーカー(登録ユーザー数)は年間257%増の58万人(4月末時点の数字、5月に60万人を突破したそう)。営業収益は四半期ベースで見ると前四半期比229%となる218億円。会見でクラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は「『赤字上場で大丈夫か』と言われたが、しっかりした成績が残せたのではないか」と語る。

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2015年9月期は総契約額はプラットフォームサービスで25億円(上半期実績で8億4000万円)、エンタープライズサービスで9億円(上半期実績で3億円)を目指す。2014年にスタートしたエンタープライズ向けの事業も好調とのことで、継続利用に加えて、大手企業の新規獲得も好調だったとした。

会見で吉田氏が繰り返したのは「総契約額」というKPI。同社では2017年9月期に総計約100億円という計画を掲げていたが、今後体制強化と新サービスで2016年度での達成を目指すという。ただし黒字化の時期については明言せず、事業への投資の可能性も挙げつつ、「(総契約額)100億円での黒字か赤字についてもまだ考えているところ」と説明するにとどまった。

さらに20年後の目標として、年間総契約額3兆円という数字を掲げた。吉田氏は—名前こそ出さないものの、ソフトバンク代表の孫正義氏を暗に例に挙げつつ——「僕らの世代でも夢を持っていい。今は『何を言っているんだ』と言われるかもしれないが、温かく見守って頂きたい」「上場市場の末端に立った以上、投資家のみなさまに精一杯答えたい」と語った。

新サービス「クラウドワークスBPO」を展開

4月には、最長6カ月程度のクライアント企業でのオフィスワークを経てリモートワークへ移行することで企業の不安を取り除き、長期のリモートワークを実現する「クラウドワークステクノロジーズ」を発表していたが、同社は今回新たに「クラウドワークスBPO」なるサービスを開始した。

BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシング、つまり作業ではなく業務そのもののアウトソーシングだ。クラウドワークスBPOでは、同社のスタッフがクライアント企業に常駐。クラウドソーシング事業の「クラウドワークス」や前述のクラウドワークステクノロジーズを使ってアウトソーシングの組織体制を設計するというもの。

このサービスでターゲットとするのは、電力関連事業。2016年4月に電力小売が完全自由化されるが、「関する業務が大量に発生する。その課題に対応する」(吉田氏)のだという。具体的には補助金申請や電力会社向けの接続申請、電力需給管理といった業務に向け、リサーチ・マーケティング・経理・コールセンター・原稿制作・書類作成・監視などを行う。同社ではこの事業で2018年内に10億円規模の業務をクラウドソーシング化するとしている。

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日本参入の99designsの差別化は「ブリーフィングツール」、来日中のCEOに聞いた

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photo01東京・台場で開催中の「Slush Asia」の場で、初来日という99designsのCEO、Patrick Llewellyn氏に話を聞くことができた。99designsは2008年創業の世界最大規模のグラフィックデザイン特化型のクラウドソーシングのプラットフォームで、コンペ型のクラウドソーシングの先駆者だ。発注者は99designsにデザインを発注し、応募が集まった中から一番良いデザインを採用することができる。

先駆者とはいえ、今やクラウドソースのプラットフォームは多くある。日本市場で見てもランサーズやクラウドワークスがある。何が違っていて、どう差別化していくのか。

「ブリーフィングツールと呼んでいますが、デザイナ向けツールが充実していることが大きな違いですね」

99designsでは発注元のクライアントが、名刺やロゴ、Webページ、アプリデザインなどを選択して、ウィザード形式で質問に答えていくことでデザインの発注ができるというテンプレートが豊富に用意されている。好みのデザインをマウスで選ぶなど直感的にできる。これはデザイナが発注元へと出向いて要件ヒアリングをするようなプロセスをオンライン化したイメージだ。以下の画面の通り。ちなみに、これは国内だとランサーズが最近事業譲渡を受けたdesignclueが似ている。

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99desingsは2008年にアメリカでサービスをスタートしているが、その後はヨーロッパへ市場を拡大してきた。これまでアジア市場には進出していなかったが、それは何故なのか?

「リクルートから投資を受けることになったのが最大の理由ですね(同社は2015年4月にリクルートからの出資を含むシリーズBの1000万ドルの資金調達と日本進出を発表している)。リクルートとは2年前から接触していましたが、当時はまだ早すぎたということです。99designsは地域ごとのコミュニティ、特にテック・コミュニティを取り込んでいくことが重要で、そのパートナーが必要でした。ヨーロッパは、ベルリンを皮切りに各国ごとに合計12人のカントリーマネージャーがいて、対応言語もドイツ語、フランス語、イタリア語などと増やしてきました。今回、日本市場参入にあたってサポート言語として日本語も追加した形です。中国や東南アジアでなく日本からスタートする理由は、日本ではブロードバンドが普及していてデザインが大きな市場だからです」

コンペ型のクラウドソーシングでは、コンペで負けたデザイナは時間コストを失うことになる。アンフェアさはないのか?

「いえ、もし不採用となって対価が得られないとしても、デザイナは経験とフィードバックが得られます。それに、99designsには非常に多くの大企業が参加していて、すでに仕事も大量にあります。われわれのプラットフォームが仕事を探してきている状態です。デザイナはすぐにクライアントに話すことができるわけです。デザイナの中には仕事探しが好きでない人も少なくないのです。それにリモートで仕事ができるので、デザイナは各国を旅行しながら仕事ができます。しばらく暮らした国や地域でクライアント企業と新たな関係を築くこともできるんです」

ヨーロッパであれば数カ月単位で住む国を変えて顧客を開拓していくような、デザイナにとっては、そんな働き方もあるようだ。

家事代行サービスのCaSyは不要なブランド品の買取もしてくれる

家事代行サービス「CaSy」を手がけるCaSy。同社は3月16日、古着やブランド品の買取を手がけるスタンディングポイントと連携してブランド品の買取サービスを開始した。ようは家事をやってもらう流れで服も捨てるんだったら、値段のつくブランド品はお金に換えてもらおう、というサービスだ。

CaSyはクラウドソーシングを使った家事代行サービス。クラウドソーシングとは言っても、スタッフには審査を実施の上、合格者に対してトレーニング(同社のオフィスは都内のマンション、そこで実習をしているのだとか)を行うことでサービスの品質を担保しているのだそうだ。実際、スタッフの合格率は「志望者の半分を落とすというと言い過ぎだが、かなり厳選している」(同社)だそう。

料金は都度利用で1時間2500円。現在は都内と神奈川県の一部でサービスを展開しており、売上高等は非公開だが、現在月次2倍ペースで利用が増加しているとのことだ。

今回の買取サービスは、冒頭に触れたとおりで「いらない衣服を捨てて欲しい」といったユーザーのニーズが増えてきたことからスタートしたんだそう。家事代行の申込時に中古買取をあわせて申し込むと、自宅に段ボールなどの買取梱包セットが送られてくる。

その段ボールにブランド品を詰めれば、あとは家事代行スタッフの訪問時に引き取りを依頼する、もしくは指定した時間に引き取りを依頼すればいい。その後スタンディングポイントが査定を実施、金額に納得すれば代金が振り込まれる。ユーザーの手数料は無料となっている。


クラウド翻訳「Conyac」のエニドア、外国語での記事執筆やリサーチが可能に

クラウド翻訳サービス「Conyac」を展開するエニドアは2月12日、新サービスを「Conyac Market(コニャックマーケット)」の提供を開始した。

Conyac MarketはConyacに所属する4万5000人のバイリンガルユーザーに対して翻訳だけでなく様々な仕事を発注できるアウトソーシングプラットフォームだ。

以前エニドア代表取締役の山田尚貴氏にも聞いたのだが、翻訳サービスを提供してきた同社に対して、最近ではネイティブスピーカーによる文章のチェック、書類の書き起こし、海外向けのプレスリリース作成、配信といった単純な「翻訳」にとどまらない仕事のニーズが増えていたのだそうだ。そんなニーズを受けて、2014年12月には、バリュープレスと提携して英文プレスリリースの作成・配信サービスを展開するなどしている。

Conyac Marketはこの取り組みをさらに拡張するもの。Conyacに翻訳者として登録する4万5000人のバイリンガルに対して、外国語でのコピーライティングや製品のキャッチフレーズの作成、記事執筆、リサーチ、原稿のネイティブチェックといった仕事を依頼できる。対応する言語数は70カ国語以上。利用手数料は、10万円までの場合料金の10%、10万円〜50万円までの場合料金の5%、50万円以上の場合は料金の2%となっている。


マイクロファクトリー:製造業へのインターネット適用は第三の産業革命を起こす

編集部: John B. Rogersはマイクロファクトリー方式で自動車を3Dプリントして製造販売するLocal Motorsの共同ファウンダー、CEO。同社はアリゾナ州チャンドラー、テネシー州 ノックスビル、ネバダ州ラスベガスに所在する。

アメリカの製造業に新たな未来を開く動きが始まっている。

MakerBotTechShopKickstarterのようや会社は、伝統的な産業化による製造業と雇用のモデルと、現在広まりつつあるフラットでネットワーク化した世界における製造と雇用モデルとの乖離を埋めるための重要な架け橋の役割を果たそうとしている。

先進国における製造業の未来を考えるにはその財務、資金調達と実際の製造プロセス、双方の新たなモデルを必要とする。その一つがマイクロファクトリーだ。

われわれの会社、Local Motorsでは、「ローカル企業がビッグになるにはそのローカルをビッグにしなければならない」と言い習わしている。世界でもっとも人口密度が高く、購買力も高い地域で大型のハードウェア製造(家電製品や自動車など)を開始すれば、意味のあるレベルの雇用を提供すると同時に、そのコミュニティーのニーズに迅速に反応しつつ、プロダクトの開発速度を大幅にアップできる。

私は中国で3年過ごし、Foxconnが作り上げた巨大工場について詳しくまなんだ。それ自体が都市であるFoxconn工場では靴箱に入る程度の大きさのものであれば、文字通りありとあらゆる電子製品を製造することができる。製造、保管、出荷のプロセスすべてが簡単だ。しかし、靴箱サイズよりずっと大きいプロダクトを大量生産しようとすると、Foxconnのような便利な施設は少ない。ましてそれに必要な資金を得るチャンネルはほとんどないといってよい。製造に必要なツールも部品も高価であり、流通も難しい。すべてが高いコストがかかり、一つのjミスが命取りとなりかねない。

しかし未来に向けて明るい展望も存在する。われわれは「第三の産業革命」ともいうべき新たなエコシステムの確立に向けて起業家の努力が実を結び始めている.

歴史を振り返る

ジェニー紡績機が蒸気機関と結びついて最初の産業革命が始まった。ジェームズ・ハーグリーブズが紡績機械を発明しなかったら衣類の大量生産は不可能だった。20世紀に入るとヘンリー・フォードが流れ作業による製造ラインを備えた巨大工場を完成させ、複雑な機械の大量生産に道を開いた。.蒸気機関はやがて石油を燃料とする内燃機関に置換えられた。この第二の産業革命はトヨタ自動車のカイゼン・プロセス、つまり組織的かつ絶え間ない品質改善の努力によって完成の域に達した。そしてリーン・マニュファクチャーやシックス・シグマなどの高度な品質管理手法を産みだしている。

われわれが第三の産業革命と呼ぶのは、最近登場し始めた「インターネットを適用されたプロダクト」を指している(いささか使い古された感のある「モノのインターネット」より広い概念だ)。ここで「インターネットの適用」と呼ぶのは、「リアルタイムでの情報へのアクセス」、「産業用製造ツールの低価格化」、「有効な法的保護の提供」の3つの側面を意味している。

ローカルの起業家がグルーバルな巨大企業と同じ土俵で戦えるフラットで分散的な経済が第三の産業革命の特長だ。これを可能にするのは、伝統、慣例にとらわれない柔軟な発想と、そうしたイディアを即時に世界的に共有できるプラットフォームの存在だ。

即時かつ広汎な情報へのアクセス

たとえば私がMakerbotのクラウドソース・ライブラリ、ThingiverseからドアのグロメットのSTLファイルをダウンロードすれば、数時間後には3Dプリンターからその実物が出力され、われわれの自動車のドアに組み付けることができる。われわれのコミュニティーでは常に誰かが新しいアイディアを出して、それが共有されている。GE AppliancesはFirstBuildというマイクロファクトリーを建設した。目的は世界中の才能ある人々のアイディアに対して開かれたハードウェア工場だ。

製造ツールの低価格化

マイクロファクトリー方式のメーカーは高価な産業用ツールを低コストで利用できるようになった。TechShopなどを通じて強力なコンピュータ・パワーと産業用3D プリンターを時間借りできる。Cathedral Leasingなどを通じてリースも可能だ。

またアメリカ・エネルギー省のオークリッジ国立研究所ではORNL Manufacturing Demonstration Facilityという野心的プロジェクトで、研究者と民間企業が共同してスーパーコンピュータにアクセスし、最先端の製造でくのロジーを開発、実証する試みが進んでいる。

製造プロセスのクラウドソース化、資金調達のクラウドファンディング化によって、ハードウェア、ソフトウェアを問わず、製造業にに必要な当初資金は大幅に低下しつつある。

有効な法的保護

現在、アメリカではユーザーが生んだ知的所有権に対するさまざまな保護と調整の仕組みが整備されている。Creative CommonsMITGNU のようなオープンソース・ライセンスはマイクロ・ファクトリーが安心して広汎な既存の知的財産を利用し、改良してさらに共有する道を開いた。

マイクロファクトリー

マイクロファクトリーは、その小さいサイズ、高いアクセス性、必要な資金の少なさという重要な意義を備えている。

靴箱より大きいハードウェアをマイクロファクトリー方式で製造するなら、その成功の可能性は高い。なぜならデザインのクラウドソースと3Dプリンターを駆使するマイクロファクトリーはアイディアを形にするスピードが伝統的メーカーより格段に速いからだ。

クラウドソースは、即座に世界中の能力ある人々の知恵を借りることを可能にする。クラウドソーシングを理由すればエンジニアリング上のどんな難問でもきわめて短時間で解決可能だ。3Dプリンターは製造過程を高速化するだけでなく素材の利用効率が高く、結果的に無駄を出さない。これよって製造に必要なスペース、原材料が大幅に削減され、事業立ち上げのための資金も少なくてすむ。

マイクロファクトリーは伝統的製造業に比べて効率的なので環境負荷も低く抑えられる。消費地に接近しているため輸送、流通のコストも小さく、消費者の反応を即座に感じとって製品改良に活かすことができる。.

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


ペアプロの有無まで紹介するITエンジニア特化の人材サービス「Forkwell Jobs」運営のgroovesが2.2億円調達

TechCrunchで2年半前に紹介したエンジニア向けのソーシャルサービス「Forkwell」を手がけるgrooves(当時はforkwell事業のために新会社garbsを設立していたが、合併)が総額2億2000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。既存株主の日本ベンチャーキャピタルと三井住友海上キャピタルからの第三者割当増資に加え、一部は日本政策金融公庫の資本性ローンでの調達となっている。

最近では10億円前後をエクイティで調達するスタートアップも多いが、grooves代表取締役の池見幸浩氏は、「株式を希薄化しても問題ないという起業家もいるが、僕はデット(融資などの他人資本)で資金を獲得できるならそれがいいと思っている」と語っている。実際今回の調達は日本政策金融公庫の本店(3000万円超、3億円以内の案件を担当)が担当しているとのことで、億単位でデットファイナンスを実施していると見て間違いなさそうだ。

さて前述のforkwellは登録ユーザー1万人で、109万人いると言われている日本のエンジニアの1%も取れていないのでまだまだこれからというところだが、これと連携するエンジニア採用支援サービスの「Forkwell Jobs」、中小規模の人材エージェントをクラウド化(同社は「クラウド化」と呼んでいるが、「ネットワーク化」のほうが分かりやすいかもしれない)して、最適な人材の採用を効率化する中途採用支援サービスの「クラウドエージェント」が好調だそうだ。今回の調達では、各種サービス開発に向けた人材確保などを進める。

前者のForkwell Jobsは、例えばペアプログラミングをするしないといった「コード品質への取り組み」や「使用するバージョン管理ツール」「使用するプロジェクト管理ツール」などなど、その会社の開発環境をこと細かに紹介するエンジニア特化の採用支援サービス。採用する側にもエンジニアとしての高いレベルが求められることもあって、「人材募集案件の4割はお断りしている状況」(池見氏)なのだそうだ。後者は特にエンジニアに特化しているわけではないが、複数のエージェントから最適な人材を一括で探すことができるため、ユーザーのニーズは高い。金額に関しては非公開ということだったのだけれども、すでにかなりの売上を達成して事業の黒字化を達成しているそうだ。


クラウドソーシングの基盤をオープン化するランサーズの狙い、そして課題

既報のとおりクラウドソーシングサービス「Lancers」を手がけるランサーズが8月12日に新事業戦略発表会を開催した。この発表会でランサーズは、2014年第1四半期(4-6月期)の流通総額が49億円、契約金額が4億5000万円、さらに会員数は36万6000人、クライアント社数は9万1000社と実績を公開した。また同時に、パートナー企業が同社のクラウドソーシングサービスのプラットフォームを利用できるようになる新サービス「Lancers Open Platform」を発表した。

Lancers Open Platformでは、ランサーズが保有する36万6000人(2014年8月時点)の会員データを外部のパートナー企業に公開する。パートナー企業はランサーズの会員をディレクションして、独自にクラウドソーシングを活用したサービスを提供できる。

当初はイノーバ、サイバーバズ、ByThink、サムライト、KoLabo International、八楽、BIJIN&Co.、LOCUS、インフォテリア、ファストメディア、デジタルステージ、オルトプラス、サテライトプラスの計13社がパートナーとなり、コンテンツライティングや翻訳、動画制作といった事業を展開する。

またパートナーのうちサイバーバスやBIJIN&Co.、KoLabo Internationalなどは、自社が抱える会員に対して、ランサーズ経由での発注ができるようなスキームも作るとしている。

ランサーズでは2014年内に100社までパートナーを拡大する予定。また2015年以降にはパートナー数の制限を取り払い、すべての企業にAPIを提供するとしている。

ランサーズ代表取締役社長の秋好陽介氏は、2008年にスタートしたLancersは日本初のクラウドソーシングサービスであると説明(追記 8月13日11時15分:記事公開後に「サイトエンジン(当時はアルカーナが運営)のアポロンのほうがサービスとしては先ではないか?」というツッコミが入った。ランサーズは2008年12月、アポロンは2008年9月の開始だ。ただしアポロンはすでにサービスを停止している。ちなみにKAIZEN Platform CEOの須藤憲司氏がリクルート在籍時に手がけていたC-teamも2008年9月の開始なので、厳密には「サービスが現在も提供されており、かつさまざまな仕事に対応するクラウドソーシングのプラットフォーム」という意味では日本初ということになる)。登録するユーザーがチームを組むことで大型案件にも対応する「Lancers マイチーム」を2013年末から提供しているが、現在「(月額で)500%成長」と好調ぶりをアピールした。

ランサーズの期待、そして課題

秋好氏は自社の好調ぶりを語ったが、クラウドソーシング市場全体の成長も間違いないものだろう。説明会でも、矢野経済研究所の資料をもとに「2018年には1800億円超の市場規模に成長する」という予想が紹介された。だがランサーズに課題がないわけではない。

秋好氏によると、直近の月額契約金額は2億円を超える見込みとのことだが、流通金額(仕事の案件総額。4-6月で49億円)に対する契約金額(実際の成約金額。4-6月で4.5億円)は決して高いとは言えない。

説明会ではその点について記者からの質問がなされており、オープン化の詳細を説明した取締役COO事業開発部長の足立和久氏も、課題として認識している旨を答えている。ただこれはLancersに限らず、オンラインで要件定義からディレクションまでを完結するクラウドソーシングサービスそのものの課題でもある。今回のオープン化で提携企業がきっちりとディレクションに入るのであれば、解決できることもあるはずだ。

また社外を見てみると、競合と言われるクラウドワークスも急速に成長している。直近ではリクルートグループとの資本業務提携を発表した同社だが、流通総額(ややこしいのだけれど、クラウドワークスの言うところの流通総額とは実際の成約金額のことだ)は年間20億円規模とも5月に報じられている。僕が直近に複数の関係者から聞いたところでは、すでに月額の成約金額ベースでランサーズとほぼ同等だという話も聞く。

秋好氏は説明会で「2008年からビジョンは変わらない。時間と場所にとらわれない新しい働き方をつくる」と語った。ランサーズでは、Lancersを2020年に1000万人が利用するプラットフォームに成長させるという目標を掲げている。


ランサーズ、2014年第1四半期の契約金額は4.5億円

クラウドソーシングサービスのランサーズが8月12日に自社の戦略説明会を開催した。同社はその中でクラウドソーシングのプラットフォームをオープン化する「Lancers Open Platform」を発表した。
プラットフォームの詳細は後ほど紹介するとして、同社が公開した数字をまず紹介したい。
同社の2014年第1四半期(4-6月期)の流通総額は49億円、契約金額(実際に発注者と受注者との間で仕事が成約した金額)は4億5000万円だという。
同社が契約金額を公式に発表したのは今回が初めて。直近では月額2億円規模になる見込みだそうだ。また会員数は36万6000人、クライアント企業数は9万1000社となる。


スマートロックとクラウドソーシングが連携するとどうなる?エニタイムズとAKERUNが試験サービス


先日インキュベイトファンドとディー・エヌ・エーからの資金調達を発表した生活密着型クラウドソーシングサービス「Any+Times」運営のエニタイ ムズ。同社がスマートロックシステムの開発を手がけるAKERUN(アケルン:現在法人化準備中)と連携したサービスを9月から試験的に提供することを明らかにした。

Any+Timesは家事代行を中心としたクラウドソーシングサービス。これに、AKERUNが開発するスマートロックシステムを組み合わせることで、家事代行の際のセキュリティの向上や入退室管理、鍵共有の効率化を図るという。

AKERUNが手がけるスマートロックシステムの中核となる「鍵ロボット」は、あらかじめスマートフォンとBluetoothでペアリングしておけば、スマートフォンが扉(というかロック)に近づくだけで自動で鍵を開けることができるというもの。他者のスマートフォンへの開錠権限を付与したり、時間を設定して開錠するといった機能も備える。単三電池1本で1年間利用できるそうだ(電池の残量についてはスマートフォン経由で知らせてくれるらしい)。現時点では詳細を聞けなかったが、特許申請中の新技術でセキュリティも強化しているということだ。

この鍵ロボットを持つAny+Timesユーザーは、家事代行を依頼する際、サポーターズ(Any+Timesで家事代行を請け負うユーザー)のスマートフォンに対して開錠権限を付与できるようになる。これによって、サポーターズは直接依頼人と会う必要なく、スマートフォン1つ持って家事を代行できるようになるというわけだ。以前エニタイムズ代表取締役社長兼CEOの角田千佳氏に聞いたところ、「最近ではAirbnb向けに提供している部屋の掃除などでAny+Timesを利用するユーザーもいる」と話していたのだけれど、そんな場合でもサポーターズ向けに合い鍵を作ることは少しためらわれる。その点、この仕組みがあれば、いらぬトラブルを避けることができる。

AKERUNはハードウェアエンジニアやソフトウェアエンジニアなど9人からなるチーム。エニタイムズのウェブディレクターである小林奨氏もそのメンバーだったことから、今回の連携が実現したという。まずは数人のAny+Timesユーザーに鍵ロボットを無料貸与して、Any+Timesのスマートフォンアプリの提供に合わせて試験的にサービスを開始する。年内にも正式に鍵ロボットを販売するよう準備中とのことで、今後はクラウドファンディングなどを通じて資金を集める予定だという。価格は現時点では未定だが、2万円程度での販売を目指すそうだ。また、Any+Timesで利用する場合は割引購入できるプログラムも用意するとのこと。

これまでにも、「Kevo」や「Lockitron」(現在プレオーダーとなっている)、「Goji」といったスマートロックシステムが海外ではあったようだが、日本発のスマートロックはクラウドソーシングと連携してどのようなイノベーションを起こしてくれるのだろうか。


生活密着型クラウドソーシングのエニタイムス、インキュベイトとDeNAから5100万円を調達

先日、クラウドソーシングを利用した家事代行サービス「CaSy」がサービスを本格始動したと紹介した。このサービスは、家事代行の専門スタッフをネットワーク化して、クラウドソーシングで提供するというモノだった。

今回紹介するエニタイムスの「Any+Times(エニタイムス)」は、CaSyとは少しアプローチが違う。クラウドソーシングで仕事を引き受けてくれる人材「サポーターズ」に対して、ハウスクリーニングやペットシッター、害虫駆除といった、生活に密着したさまざまな仕事を依頼できるのだ。

Any+Timesは2013年10月に始まったサービス。現在サポーターズは300人程度と少ないが、東京23区内を中心にしてハウスクリーニングやIKEAで購入した家具の組み立てといった仕事のマッチングがなされているという。Airbnbで貸し出されている部屋のクリーニングといった案件もあるそうだ。エニタイムスが創業間もない頃に聞いた話だと、米国の「TaskRabbit」を意識していたそうだ。

Any+Timesでは、依頼内容と報酬を設定してサポーターズを募集できるほか、サポーターズを検索して直接仕事を依頼できる。報酬は1回平均7000円程度。ただし15%が手数料として引かれる。最近では「認定サポーターズ制度」を開始しているそう。面接に受かったサポーターズに対しては、「認定サポーターズ」であることをサイト上で表示し、信頼性を高めているという。

そのエニタイムスが6月25日、インキュベイトファンドとディー・エヌ・エー(DeNA)を割当先とした5100万円の第三者割当増資を実施した。今後は調達した資金をもとに、システムを改善するほか、サポーターズの拡大を進める。

またあわせて、地方でのマッチング率向上に向けた施策も打ちたいとしている。「ある東北の商店街では、高齢化している住民に買い物代行のニーズがあると聞いた。自治体などとも組んでサービスを展開したい」(代表取締役社長兼CEOの角田千佳氏)


クラウドワークスがDeNAショッピングと提携–出店者の「ご用聞き」をクラウドソーシングで実現

ランサーズがKDDIとの共同事業でリアルビジネスのクラウドソーシング「ランサーズプレイス」を開始したと発表していたのが昨日。今日4月8日には、クラウドワークスがディー・エヌ・エーが手がけるショッピングサイト「DeNAショッピング」との業務提携を発表した。

今回の提携により、DeNAショッピングへ出店する店舗事業者に対してクラウドソーシングによるロゴ作成や商品画像加工、バナーなどの販促用素材の制作をサポートするという。 具体的にはDeNAショッピングの管理画面上にクラウドワークスのバナーを掲載。クラウドソーシングの利用方法などを紹介するほか、先着50店舗に限定して、クラウドワークスの有料オプションを無料で提供する。詳細は未定だが、今後もユーザーのニーズに合わせて施策を用意するという。

クラウドソーシングは非IT企業の「御用聞き」となるか

今回のクラウドワークスの発表と、昨日のランサーズの発表、いずれの取材でも出てきたキーワードは「御用聞き」だ。 ITリテラシーの高い個人、企業など、いわゆるアーリーアダプター層にはアウトソーシングの手法として認知されてきたクラウドソーシング。今後の課題はより広い層への認知、利用拡大にある。

そういった観点からクラウドワークスは「ECはやっているが、専業ではなくモールに出店する程度」という潜在的なユーザー層に対してリーチすることを狙ったと言えるだろう。 ECモールに出店する中小企業であれば、「今までは自社で画像加工などをしてきたが、アルバイトを1人追加して雇えない。そのためこれ以上の規模の拡大はできない」というケースもある。クラウドワークスは、そんなときにこそクラウドソーシングを使ってみて欲しいと提案しているのだ。狙うユーザー層にこそ違いはあるが、昨日のランサーズも同様の考えがあるようだ。


ランサーズがKDDIと手がけるのは「IT」と「非IT」をつなぐクラウドソーシング

オンラインで不特定多数の人に業務を発注できるクラウドソーシング。その多くはデザインやプログラミング、ライティングなどオンラインに閉じた業務がほとんどだ。

その取り組みをオフラインの業務まで拡大するのが、4月7日よりランサーズとKDDIが取り組む「ランサーズプレイス」だ。

このランサーズプレイスでは、工事や引っ越し、印刷など、リアル領域の業務をクラウドソーシングで展開する。すでに、KDDIの法人向けプログラム「KDDIまとめてオフィス」を展開する営業部隊が、顧客企業向けにランサー(受注者)としての登録を案内。ランサーズにてその申し込みをアクティブ化しているという。また同時に、発注者としてのニーズをヒアリングしている。今後は個人、法人を問わずに受注者の登録を拡大していく。当面はベータ版として運用し、10月にも本サービスを開始する。2014年度10万件の案件掲載を目指す。

「クラウドソーシングの本質的な価値はネットで完結すること。つまりITありきだった。そのため非ITの領域にはリーチできなかったが、そこにリーチできるようになるのが強み」——ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏は今回の取り組みについてこのように語る。

KDDIの法人営業としては、顧客企業からの細かなニーズのすべてをサービスとして自社で提供することが難しい。そんな課題に対して顧客同士をクラウドソーシングでマッチングすることで解決したいというニーズもあったそうだ。

また同時にランサーズでも「たとえばこれまでランサーズでデザインを作っても、それをプリントする印刷会社までをつなげることができなかった」(秋好氏)というように、ITと非ITをつなぐソリューションがないままで、この溝を埋めたいという思いがあったという。

「リアル」ゆえの課題も

ただ一方で課題もある。KDDIまとめてオフィスの顧客企業には、ITリテラシーのあまり高くない中小企業も少なくない。秋好氏からは、KDDIの営業部隊に対して「クラウドソーシングとは何か」というところを理解してもらうまでにも時間がかかったという話も聞いた。そういう環境で、果たしてクラウドソーシングをどこまで利用してもらえるのだろうか。実際、KDDIの営業部隊が顧客からもらった紙の申し込み資料をランサーズがアクティベーションする時点でも説明が必要なケースが多々あるという話も聞いた。

しかしランサーズビジネス開発部の小口展永氏によると、クローズドベータ版の段階で、都市部については比較的ユーザーが集まっており、地方でも徐々に成功事例が出てきているという。「中小企業ではアウトソーシングができないと思っていた人が多い」(小口氏)とのことなので、潜在的なニーズをいかに顕在化できるかという点こそが成長の課題になってきそうだ。