SorareがJリーグ全選手をブロックチェーン基盤のトレーディングカード化し発行

SorareがJリーグ全選手をブロックチェーン基盤のトレーディングカード化として発行

Sorareは8月18日、Jリーグ全選手をブロックチェーン(イーサリアム)基盤のトレーディングカード化すると発表した。Sorareのグローバル・ファンタジー・フットボール・ゲームでデジタルカードとして利用できるようになる。

ファンタジー・フットボールとは、プレイヤー自身が選んだ選手でオリジナルチームを作ってトーナメントに出場し、他プレイヤーとスコアを競い合うというゲーム。各プレイヤーのチームのスコアは、(各週末の)実際の試合における選手の戦績により上下する。自分のチームのスコアが上位にランクされると、報酬を獲得できる。

SorareがJリーグ全選手をブロックチェーン基盤のトレーディングカード化として発行

JリーグとSorareは、ブロックチェーン技術(イーサリアム)を用いた同社プラットフォーム上でJリーグ全選手のデジタルカードを発行するパートナーシップを締結。Sorareを通して、Jリーグは世界中のゲーマー、デジタルアイテムのコレクターにブランドを展開できる。またSorareのシステムは、ブロックチェーンを利用しデジタルカードを売買可能にしており、Jリーグにとって新たな収益源になるとしている。

スポーツの楽しみ方のひとつとして、スポーツファンは、様々な選手のトレーディングカードを収集し交換してきた。同様にSorareは、ブロックチェーン技術を利用することで、公式にライセンスされたデジタルカードという、新しいジャンルのコレクションカードを生み出したとしている。ブロックチェーン技術のひとつ、イーサリアムを利用しており、カードの所有者は自由に自分が保有するカードを売買、譲渡可能となっている。

Sorare開発チームのビジョンは、実際の試合を見にいく楽しみを増すような体験を作り出すこととしている。

Sorareは、ブロックチェーン技術をスポーツゲームに応用することにビジネスチャンスを見いだした連続起業家、ニコラ・ジュリア氏とアドリアン・モンフォール氏によって、2019年3月に設立。同社は、12ヵ月間で50カ国を対象に120万ドル(約1億2600万円)以上のデジタルカードを販売し、すでに収益を上げているという。

月次のカードのユーザー間取引のボリュームは、2019年12月の3万ドル(約317万円)から2020年6月には55万ドル(約5812万円)へと約10倍のボリュームになったとしている。

クーガーがイーサリアム財団の支援でコミュニティ「ETH Terakoya」を展開

AI、IoT、VR/AR、ブロックチェーンなどの技術を組み合わせた人型AIエージェントの開発を行うクーガーは、5月25日、イーサリアム財団(Ethereum Foundation)の援助を受け、日本のエンタープライズブロックチェーン活性化のための活動を開始すると発表した。コミュニティ「ETH Terakoya(イーサテラコヤ)」を展開し、ワーキンググループの開催、アウトプット共有やノウハウ・スキルの提供を、オンライン・オフラインの双方で行っていくという。

エンタープライズユースで注目高まるEthereum

クーガーはホンダへのAI学習シミュレータ提供や、Amazonが主催するロボットコンテストAmazon Robotics Challenge(ARC)上位チームへの技術支援、NEDO次世代AIプロジェクトでのクラウドロボティクス開発統括などで知られ、ゲームAI、画像認識AI、ブロックチェーンの分野に強みがある企業。現在は、これらのテクノロジーを統合する形で、人型AIアシスタント「Connectome(コネクトーム)」の開発を進めている。

ブロックチェーンの領域では、クーガーはこれまでにも大企業との連携による実証実験を行ってきた(関連記事:KDDIとクーガーがブロックチェーン技術Enterprise Ethereumを修理業務に適用する実証実験を開始)。

また2018年には米国のブロックチェーン企業ConsenSysと共催で、日本の大手企業も協賛・後援する形で、インバウンド向けブロックチェーンサービスのハッカソンを実施している。

同社ではほかにも、チーフブロックチェーンアーキテクトの石黒一明氏が2018年、ワールドワイドでブロックチェーンの社会実装を目指す企業連合、Enterprise Ethereum Alliance(EEA)の日本支部代表に就くなど、企業のブロックチェーン活用につながる活動を続けている。

「こうした流れもあり、今回、イーサリアム財団の支援を得て、日本のエンタープライズブロックチェーンの活性化を進めていくことになった」とクーガー代表取締役CEOの石井敦氏は話している。

イーサリアム財団は、Ethereumと関連テクノロジーのサポートに特化した非営利団体だ。非中央集権、分散型のEthereumエコシステムを支える取り組みに対して、助成金などの財政面で支援するほか、エコシステム成立に必要と考えられるアクションへの助言、サポートも行っている。

イーサリアム財団エグゼクティブディレクターの宮口あや氏は、「Ethereumは、企業ではスケーラビリティやプライバシーの面で課題があり、使いやすい状態ではなかった。それが最近では、Etereumプロトコル上で利用できるツールなどの研究・開発が進んだことで、企業でもメインネット、パブリックチェーンを使いやすい環境になり、エンタープライズユースへの注目、ニーズが高まっている」と語る。

「当初は開発に力を入れていた財団メンバーだが、現在はコミュニティのコーディネートや助成金でEthereumをサポートするようになっており、研究・開発支援のほか、教育にはより力を入れるようになっている。日本では特に事業者側が『勉強してからしっかり取り組む』という傾向があるため、教育の仕組みはあった方がいいと考えていた。クーガーのメンバーとは、これまでにもブロックチェーン社会実装への取り組みで面識があった。Ethereumコミュニティとしても、企業のニーズが増える中で、クーガーが日本での教育、勉強する場を展開してくれるというのは、ありがたい」(宮口氏)

技術だけでなくビジネス、法律面でも課題を洗い出し

企業のブロックチェーン活用といえば、暗号通貨取引や証券取引など、フィンテック領域での浸透が最も進んでいるが、GA technologiesが不動産取引にブロックチェーン技術を取り入れるなど、他業種からも注目されるようになっているのが現状だ。日本では、ブロックチェーンを物流やサプライチェーンに織り込む流れも出てきている。

クーガー自身も人型AIエージェントの開発において、エージェントが扱う情報の信頼性を担保し、安全にデータを扱うためにブロックチェーン技術を活用している。また、KDDIとはEnterprise Ethereumを活用したスマートコントラクトの実証実験を実施。携帯電話の修理業務を対象に、ショップでの修理申し込みから修理完了までの情報共有とオペレーション効率化や、他事業とのシステム連携の可能性について、検証を行っている。

石井氏は「企業のブロックチェーン活用においては、技術、ビジネス、法律のそれぞれの面で課題がある。しかも産業によって、その課題は変わる」と述べている。

「ETH Terakoyaでは毎回、テーマを決めてワーキンググループで協議した結果をワークショップで発表していく予定だ。そこで技術的な面だけでなく、ビジネスとして成立するのか、法律的に問題がないのかといったフィードバックが数多く得られるだろうと考えている。場合によってはテーマをさらに深掘りして、続きを協議していくこともあるだろう」(石井氏)

日本の場合は「大企業が集まっており、特に自動車、家電、ゲームやアニメなどのコンテンツ分野では競争力の高い企業も多い」と石井氏。「産業ごとに連携して、業界内で『意味のある課題』を見つけることができるのではないか。また、日本からスタートして世界へ広げていくこともできるのではないかと思う」と期待を寄せている。「イーサリアム財団やコア開発者からのフィードバックや連携も受けながら、ガラパゴス化しないような取り組みも並行していく考えだ」(石井氏)

中国ではBATと呼ばれる3大IT企業、Baidu、Alibaba、Tencentの各社が独自のブロックチェーンサービスを提供し、自らもバックエンド技術として取り入れるという動きがある。

石井氏は「物流やサプライチェーンなど、同じ課題に対して別々の取り組みをするのは効率が悪いと考えている」と話す。「日本では文化的にブロックチェーン技術を取り入れるのは難しいという論もあるが、Linuxの例もある。初めはオープンソース由来のシステムを企業サーバで利用することに躊躇があった日本でも、今やほとんどの大企業でLinuxが使われている。標準化されたものを使った方がよいという流れはあり、今は活用を検討するのには、よいタイミングだと思う」(石井氏)

また、これまで企業ユースではEthereumのようなパブリックチェーンではなく、プライベートチェーンを利用する動きが強かったが、先の宮口氏の発言のとおり、企業でもパブリックチェーンを使いやすい環境が整ってきている。今年3月には大手会計事務所EYと、Consensys、Microsoftが提携し、Ethereumのパブリックメインネットを安全かつプライベートに活用できるプロトコル「Baseline」を発表するなど、メインネット、パブリックチェーンへの大きなトレンドが出てきているところだ。

宮口氏はこの流れを「イントラネットからインターネットへの流れと同じようなことが起きている」として、こう述べている。「(ブロックチェーン活用に際して)長い目で見なければ、ビジネスチャンスとして限界があるのではないかと考える企業が出てきている。Ethereumに限らず、(安全性、スケーラビリティといった)課題さえ解決されれば、パブリックチェーンを使えた方がビジネスチャンスは大きいとして、大企業も早めに取り組もうとしている。現実には(コンソーシアムチェーンなどパブリックとプライベートの)ハイブリッド型が多いし、私もいきなり大きなビジネスコンソーシアムが100%Ethereumでやると言ったら現時点では勧めないと思うが、インターネットの爆発的普及を見てきた事業者なら、誰しも長期的にはパブリックチェーンを取り入れたいと考えるのではないだろうか」(宮口氏)

石井氏は「日本が独自システムでやってこられたのは、企業買収・売却や人が辞めることが少なかったから。開発した人がそのままメンテナンスできてきたので、仕組みとして信頼性が維持されることへの価値にピンと来ていなかったのだろう」と述べ、「今後の人口減少や海外人材の活用、転職者の入れ替わりなどは避けられない。(運用でカバーするだけでなく)仕組みとして安定していることや信頼性は必要になってくる。使う技術やツールも個人に依存しない形にしなければならない」と標準化されたテクノロジーを重視する理由を語る。同時に「ほかの事業者といかに連携するかについても、考えざるを得ないだろう」とも話している。

ワーキンググループ最初のテーマはマイナンバー活用

石井氏は、ETH Terakoya展開に当たって「クーガーとしてのメリットは、あまり考えていない」と話している。

「クーガーでは、もともとAIの信頼性を生み出す手段としてブロックチェーンを使えると考えてきた。このため、ほかの事業者よりは中立的な立場にあると思う。Industry 2.0といわれる流れの中で、今後さまざまなものが自動化していくということが起きていくだろう。コロナ禍でも明確になったが、情報源の信頼性や、その情報を使って自動化したものが信用できるかといった考え方はより加速するだろう。クーガーでは、ブロックチェーンとAIの両方が分かっているチームも抱えており、中立性とあわせて、コミュニティに貢献できるのではないかと考えている」(石井氏)

石黒氏も「クーガーがハブとなってコア開発者による支援やレビューを受け、メインネット、パブリックチェーンを目標に、長期的目線でブロックチェーン活性化につながる活動をETH Terakoyaでは行っていきたい」と述べている。

ワーキンググループが最初にテーマとするのは、ブロックチェーンによるマイナンバー活用だ。「コロナの影響もあり、情報の信頼性や個人が行った行動を証明すること、複製防止などの文脈を考えると、マイナンバーのID特定やブロックチェーンでそれを生かす具体的な課題解決といったテーマも出てきている」と石井氏はいう。

「まず技術的にどう解決するのかを議論した上で、ビジネスにマイナンバーを生かしたときにインパクトがどれくらいあり、何が解決できるのか、今は気づかれていない価値を探る。それらとセットで、技術的に解決できても法律が追いついていないという部分を洗い出し、解決の道筋を考えていく」(石井氏)

ETH Terakoyaのコミュニティ運営を担当する、クーガー プロダクトマーケティングディレクターの田中滋之氏は「新型コロナ感染拡大で話題となっている例では、健康保険証とマイナンバーの関連付けといったものがある」とテーマに関連したトピックを挙げる。

「シンガポールなどの例でも、国は感染者を特定したいはずで、今後日本でも同じ議論が出てくる可能性があるが、一方でプライバシーの問題がある。マイナンバーを活用するときにプライバシーをどうコントロールするのか、これをブロックチェーンを活用することで『いかに個人を特定せず、IDをオープンに活用することができるか』といった、面白い議論ができるのではないかと考えている」(田中氏)

石井氏も「秘匿化と行為の証明を両立することは、これまでは矛盾するものと考えられてきたが、ブロックチェーンを使うことによって両立できる可能性がある。ここを深掘りしたい」と述べている。

また石黒氏は「テーマに関連することでは、ほかにも給付金申請の仕組みなど『どこが問題か分からない』のが問題となっているものがある。ワーキンググループ内の議論でこうした課題も洗い出せるのではないかと考えている。マイナンバーは日本特有のものだが、マイナンバーだけでなく、他の国や似たようなシステムでも使えるよう、議論を続けたい」と話している。

ブロックチェーンでゲーム内アイテムを管理するHorizonが5.1億円を調達

オンラインゲームのプレイヤーがゲーム内でアイテムをゲットしたとき、そのアイテムの保有者は誰だろう? プレイヤー? それともゲームを作った会社?

ほとんどの場合、その答えはおそらく後者だろう。アイテムはプレイヤーのデジタル目録に入るだろうが、会社はアイテムを取り上げたり、プレイヤーが売ったり誰かにあげたりするのを阻止したりすることができる。

Horizon Blockchain Gamesは、まず自社のタイトルから、ゲームにおける所有権の問題に取り組んでいる。これを実現するために、同社は追加で500万ドル(約5億1000万円)を調達した。

Horizonは2つの事業に並行して取り組んでいる。ひとつ目は「Arcadeum」というイーサリアムベースのプラットフォームを構築してゲーム内のアイテムを扱うことだ。アイテムのインスタンスを取得したら、そのアイテムを実証できるかたちでプレイヤー間で交換、販売、贈与できるようにする。プレイヤーが所有したアイテムはそのプレイヤーのもので、使用、交換、販売をすることができる。Horizonが取り上げることはできない。ゆくゆくはこのプラットフォームをほかのデベロッパーが利用できるように公開する計画だ。

もうひとつは、自社でのゲーム開発だ。「SkyWeaver」というデジタルトレーディングカードゲームは、同社を成長させるものであるのと同時にプラットフォームの見本でもある。

SkyWeaverはファンタジー系のトレーディングカードゲームで、Blizzardの「Hearthstone」に似ているといえばわかりやすいだろう。Windows、macOS、Linux、iOS、Android版があり、無料でプレイできる。

SkyWeaverのプレイヤーは購入、取得、交換で得たカードでバトルをする。現在は約500種類のカードがあり、それぞれのカードに「銀」と「金」がある。

ゲーム内のカードはすべて、基本の「銀」を2ドル(約205円)で購入できる。同社によれば、数ドルあれば誰もが最も強いと思われるカードを獲得できるようにしており、フィールドを公平にしているという。一方、「金」カードは、見た目だけが違うもので能力や使い勝手に変わりはないが、戦って手に入れるか、オープンなマーケットでほかのプレイヤーから購入する必要がある。「銀」のカードは常に2ドル(約205円)で買えるが、「金」カードの価値はレア度や需要によって激しく変化する。

SkyWeaverのカードは、ブロックチェーンを利用したプレイヤーのArcadeumウォレットに保管される。ただしシンプルにするために、ブロックチェーンの複雑な部分は表面的には見えない。プレイヤーが自分で扱いたいと思えば、カードをイーサリアムベースの別のウォレットに送ることができる。

SkyWeaverは2019年7月ごろからプライベートベータが運用されている。HorizonのチーフアーキテクトのPeter Kieltyka(ピーター・キルティカ)氏はTechCrunchに対して、このゲームのプレイヤーは現在1万2000人ほどで、ウェイトリストには9万2000人が登録されていると語った。

Horizonは2019年のシードラウンドで375万ドル(約3億8000万円)を調達した。同社は今回の調達を、最初のラウンドの拡張と位置づけている。今回のラウンドは前回も投資したInitialized Capitalが主導し、Golden Ventures、DCG、Polychain、CMT Digital、Regah Ventures、ConsenSysも支援した。

Horizonは、SkyWeaverのパブリックベータを2020年後半に公開する予定だとしている。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

最近、暗号通貨疲れを感じる

暗号通貨に奇妙な事態が起きている。サトシ氏がBitcoin(ビットコイン)という福音を我々に授けて以後、この奇妙かつ刺激的な分野が、なんと言ったらいいかある種の懸念を抱かせるものになってきた。

もちろん暗号通貨の真の擁護者は「暗号通貨は大股で前進を続けている。メインストリームになるのは目前だ」と言うだろう。こういう主張はずいぶん前から繰り返されているので、そろそろ「本当にオオカミは来るのか」という疑問を抱いてもいい頃だと思う。

いや、落ち着いていただきたい。中国では習近平主席、米国ではFacebookのCEOがともにブロックチェーンの信奉者になったときにこんなことを言い出すのはタイミングがまずいかもしれない。

しかしもう少し詳しく観察してみれば、中国の暗号通貨は(もし実現するなら)国民を監視するパノプティコン(全展望監視システム)を目指していることがわかる。本来、暗号通貨というエコシステムは国家権力による追跡が難しいので、権力の分散化を図れる。中国が目指す暗号通貨システムは、共産党による中央集権的支配をさらに強化するツールにしようとするもので本来の目的とは正反対だ。

一方、FacebookのLibraはテクノロジー面では順調に進歩を続けている一方、有力パートナー多数を失い、敵は増えている。

暗号通貨コミュニティはDeFi、つまり非中央集権的金融(Decentralized Finance)というコンセプトに興奮している。簡単にいえば、暗号通貨を単に検閲に強い通貨から検閲に強い金融システムへと発展させようというものだ。例えばら分散的なピア・ツー・ピア・ローン、デリバティブやオプションでない実態のある投資やステーキングなどが挙げられる。

ステーキングは暗号通貨をロックすることにより発生した手数料の分配を受けることで、正確にいえばDeFiではないが、その一種とみなされることが多い。暗号通貨の世界ではこうしたDeFiが金融革命の主役となりいつかウォールストリートに取って代わるだろうと期待されている。しかし暗号通貨の外の世界では「針の頭で何人の天使が踊れるか」というスコラ哲学の議論のように思われている。つまり修道院の外では誰もそんな議論は気に留めていない。

さらに外の世界では暗号通貨コミュニティは金融工学のために本来のエンジニアリングを犠牲にしたという印象を受けている。「口座を持てない人々に金融サービスを」という当初の称賛すべき目的が忘れられ、「口座を持てない人々」とはそもそも無縁な「高度のテクノロジーを利用した金融サービス」が発明されている、というわけだ。残念ながらこういう見方が完全に見当外れだとは言い切れない。

もちろん本来のエンジニアリングにおいても進歩は見られる。ただしスピードは遅く、ほとんどの場合、外に出てこない。その代わりDeFiの世界では野次馬とソシオパスばかりが目につくことになる。

目に見える進歩もなくはない。ZCashは本来の暗号通貨テクノロジーのインフラでブレークスルーを達成している。Tezosは暗号通貨ガバナンスのアルゴリズムの改良で成果を挙げている。

アプリでいえば、Vault12にも興味がある。 これは「暗号通貨のパーソナル金庫」で、家族や親しい友だちとで作るネットワークに暗号通貨を保管することでセキュリティリスクに備えようというものだ。暗号通貨をコントロールする鍵を交換所その他のサードパーティにあずけてしまうのは金を銀行に預けるのとさして変わりない。

これに対してVault21ではカギを個人的に信頼できる人々に分散して預け、「シャミアの秘密分散法」と呼ばれるアルゴリズムで回復できるようにしておく。たとえば秘密鍵を10人で分散保有し、そのうちの7つの分散鍵を回収できれば秘密鍵が復元できるという仕組みだ。この方式はしばらく前からVitalik ButerinChristopher Allenなどのビジョナリーが「ソーシャル・リカバリー・システム」と呼んでいる。これがシリコンバレーのスタートアップらしいスマートなデザインのアプリで使えるようになったのは興味深い。

しかし現在進行中なのははるかに根本的な変化だ。これはブロックチェーンを利用したトランザクションを現在とはケタ違いに増やそうとする試みだ。例えば現在、規模として2位の暗号通貨であるEthereum(イーサリアム)はEthereum 2.0になるために完全な変貌を遂げた。Bitcoinはもっと保守的で安定しているものの、エコシステムにはまったく新しいLightning Networkが付加されている。正直、こうした動きに私は懸念を感じる。

【略】

懸念の理由の1つはセキュリティだ。LightningであれPlasmaであれ、ブロックチェーンを大規模にスケールさせようとする試みはブロックチェーンテクノロジーの根本的な部分を改変する。これによってセキュリティは従来の堅固で受動的なもの(ハッシュのチェック、巨大なコンピューティグパワーを必要とする台帳への取引の記錄など)からwatchtowersfraud proofsなどの能動的セキュリティが導入されている。このような変更は攻撃にさらされる側面を大きく増やすものというのが私の受ける印象だ。

これらの課題は解決途上にある。なるほど、暗号通貨バブルについてコミュニティの内側からと世間一般の認識のズレはかつてないほど大きくなっている。その間、
Tetherという黒い影がコミュニティの頭上に垂れ込めている。OK、疑いは状況証拠に過ぎず、そうした薄弱な根拠で高貴な目的を台なしにすべきではないのだろう。しかし状況証拠の数が多すぎる気がしないだろうか?

以前私は「暗号通貨コミュニティには詐欺や不祥事が続発し、怪しげな薬売りが万能薬を売ると称している。しかしこれらは個々のスタートアップには逆風であっても、全体としてみれば暗号通貨コミュニティの弱さでなく、強さから派生したものだと分かるかもしれない」と主張したことがある

しかし、暗号通貨はある時点でコミュニティを出て普通の人が使うようにならねばならない。それができなければ、所詮はカルトのまま消えていくことになる。そのティッピングポイントはいつ起きるのだろうか?というより、それは起きるのだろうか?その答えは、5年前と同様、はっきりと見えない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ブロックチェーンは著作権やライセンス分野でも使えるのか?

誰に言わせても、ブロックチェーン技術の応用については、典型的な「ハイプ・サイクル(新技術に対する類型的な社会的反応の推移)」の初期段階にあるようだ。慎重なアナリストなら、そうしたノイズをフィルターで除去する必要があるが、すべてのテクノロジーバブルと同様に、ブロックチェーンに対して懐疑的な人もいれば、信奉している人もいる。

私はその真中あたりにいる。私に言わせれば、通貨投機は大規模な娯楽に過ぎないが、それによって私が興味を持っている情報サービスが進化していることは確かだ。そして、私が最も興味を惹かれるのは、著作権とライセンス供与の世界の正確さと効率を高めることのできる技術なのだ。

そこで、ブロックチェーンの技術は、実社会の著作権とライセンス供与の分野で、有意義な貢献ができるのかどうか、じっくりと検討してみよう。

ブロックチェーンとは何か、どうして気にする必要があるのか?

ブロックチェーンとは何か? どうしてこれほど多くのスタートアップや、専門家が追い求め続けているのか? それによって、どのような問題を解決することができるのか、そしてそうした問題を抱えているのは誰なのか? そしてもっと重要なのは、それが何の役に立つのか、ということ。

簡単に、かつ現実的に言えば、ブロックチェーンの1つのブロックは、計算によって数学的に導き出される固有の数字だ。この数字は1つのものについて1回だけ適用される。これを、さまざまな種類のデジタル著作物のルート識別子として使うことが可能だろう。このようなブロックチェーンによって保護される著作物の例としては、ドキュメント(PDF)、プログラムのソースコード、デジタル画像、その他1と0で表現される固定的な形式のものが挙げられる。

いったんルート識別子として確立されると、デジタル著作物への変更はすべてブロックチェーンに数字を追加するかたちで書き込まれる。すると、そのブロックチェーンはネットワークを介して、このブロックに関わっているすべての当事者に配布される。そして、「この著作物に関わる他人」を含む(それだけに限定されるわけではないが)サードパーティは、それぞれの「場所」で、該当する更新情報を見ることができる。このような更新情報の配布のしくみのため、ブロックチェーンは「分散型デジタル台帳」と位置づけられている。つまり、ブロックチェーンが付加されている限り、どんなアイテムについても、すべてのトランザクションの履歴が、論理的には、常に更新され、いつでも精査できる状態になっているわけだ。

この記事では、私が「ブロックチェーン」と言うとき、それはいつも分散型デジタル台帳の技術を指すものとする。それはすでに存在するものである場合もあり、近い将来に発明されるものであることもある。ここでは、特定の実装を意図しているわけではない。ブロックチェーンについての最近の記事の氾濫は、よく名も知られ、物議を醸すことも多いビットコインのような暗号通貨によって掻き立られたものだろう。ただし、Ethereum以降の実装は、元の概念に対する改善を示しているように見える。いずれにせよ、取引可能な通貨は、それがどんな種類のものであれ、ブロックチェーンの実装にとって不可欠な要素というわけではない、ということに留意することが重要だと私は考える。

極端な話、遊園地内や、漫画本の収集のような、さまざまな取引において、固有のトークンを使用することは常に可能だが、それはブロックチェーンの技術を使用することが必然だからではなく、不可避であるからでもない。暗号通貨はブロックチェーンの理論と実践に、トークンという1つの要素を追加したに過ぎない。それは、ここでの議論には関係のない要素だ。

将来有望で、破壊的な力を秘めた技術はみんなそうだが、ブロックチェーンも、現実の問題に対処することでこそ実証可能な有用性の上に成り立っている

もちろん、ブロックチェーンには適していない応用例も数多くある。批判的な読者なら、ブロックチェーンが有望な技術であるとして担ぎ上げる大騒ぎを、ガマの油のようなまやかしだと批判する多くの論文を、容易に見つけることができるはずだ。

とりあえず、こうした制限も、今後3〜5年以内に克服可能であり、実際に克服されるものと仮定しよう。それでは、著作権や、他のさまざまな知的財産権のライセンス供与に関する重要な問題を解決するという目的を考えたとき、ブロックチェーン技術の実用化の可能性という点で、我々は今どのあたりにいるのだろうか?

1つの考え方としては、まず著作権を登録する人、または法人が、グローバルなレジストリとして機能するブロックチェーンを作成する。それから重要な利害関係者や消費者をノードとして招待する。これは、ブロックチェーンの信奉者の「個人信用不要」の考え方と適合するものだろう。私は、これが既存のシステムを補完するものと見ている。おそらく比較的早期に実現されるのではないか。

ブロックチェーンから派生したコンテンツ識別子は、作者やその作品の管理に使用すれば、すでに利用されている固有の識別子、たとえばISBN、ORCID、DOI、ISNI、ISRCなどと同様に機能するだろう。ISCC(International Standard Content Code=国際標準コンテンツコード)は、まさにこの分野の実験だ。

単純なブロックチェーンによって可能な、最もシンプルで容易な著作権問題の解消の例としては、古くからある(そしてもうほとんど役にたたない)「貧乏人の著作権」の手法が挙げられる。これは、自分の作品のコピーを自分自身に郵送することで、消印という単純なタイムスタンプを付けるというもの。Right Chainを運営する人たちは、この古い手法を格上げすることをもくろんでいる。ただし、規模の拡大にともなってコストも増大するため、広範囲での実現性には限界があるだろう。

これも注意すべき点だが、ブロックチェーンは、一般的な著作権の侵害対策としては、あまり役に立たない。クロップ、スクリーンスクレーピング、あるいはダンプダウンといった手法によって、海賊版としては十分通用する品質のコピーを作成することは、今でも非常に簡単なのだ。そして、これは今後しばらくの間、そのままだろう。

カスタムなライセンス供与におけるグレーゾーンに伴う重大な困難は予測でき、合法的なフェアユースに関しては役に立たないという懸念もあるものの、商取引や、より日常的なライセンス条項を記録するのには、ブロックチェーンがかなり適していると考えられる。たとえば、電子書籍の作成と配布には最適だ。このようなコンテキストでは、台帳にあるエントリに限定された自己実行契約が、かなり有効だろう。基本的に、ライセンス契約に権利の転売を含める(あるいは除外する)ことができ、台帳がその施行を確実なものにする。

もう少し高度な領域の話だが、著作権の記録、消失、および譲渡といったことについては、ブロックチェーンが非常に有用であることが容易に想像できる。作者への権利の復帰、新しい代理人への譲渡、またはその他同様の記録された権利のやりとり、といった状態の更新を公衆に告知することができるからだ。

将来有望で、破壊的な力を秘めた技術はみんなそうだが、ブロックチェーンも、現実の人が答えを求めている現実の問題に対処することでこそ実証可能な有用性の上に成り立っている。もし、その代償があるとすれば、もちろんある程度の代償は避けられないわけだが、新しい価値の創造を明確に納得できる人が、それを負担する必要があるだろう。

これで納得していただけただろうか? 実は私自身も懐疑的なままだ。それでも結局のところ、著作権とライセンス供与に依存している業界が、すでに日常的に対処しなければならない現実のコンテンツと権利の問題を抱えていることを考えれば、有望な技術の将来に対する批判的な見解が正当化されうるものかどうか、疑問に思わざるを得ない。

読者はどう思われるだろう?

【告知】私は現在暗号通貨を所有していない。これまでに所有したことはなく、今後も所有するつもりはない。私がここで言及したどの会社とも、財務上の利害関係を持っていない。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

マイクロソフトがフルマネージドブロックチェーンサービスを開始

Microsoft(マイクロソフト)は、ブロックチェーンテクノロジのAzureクラウドコンピューティングプラットフォームへの取り込みを急いではいなかった。しかしここ1年ほどの間に同社は、ブロックチェーン開発キットAzure Blockchain Workbenchを立ち上げ、そのペースを加速してきた。そして米国時間5月2日、開発者会議のBuildに先立ち、同社はAzure Blockchain Servicesを立ち上げることでさらに一歩前へと踏み出した。このサービスは、コンソーシアム型ブロックチェーンネットワークの形成、管理、そしてガバナンスを可能にするフルマネージドサービスだ。

ただし、ここで語られているのは暗号通貨の話題ではない。これは、企業たちがブロックチェーンテクノロジーの上に、アプリケーションを構築するのを支援することを目的とした、エンタープライズサービスなのだ。これはAzure Active Directoryと統合されており、新しいメンバーの追加、権限の設定、およびネットワークの正常性とアクティビティの監視を行うためのツールを提供している。

最初にサポートされる元帳はJ.P. Morgan(JPモルガン)のQuorum(クォーラム)である。「Quorumは世界最大のブロックチェーン開発者コミュニティを擁する、人気の高いEthereum(イーサリアム)プロトコルの上に構築されているので、それを選択するのは自然な選択でした」と本日の発表で述べたのは、AzureのCTOであるマーク・ルシノビッチ(Mark Russinovich)氏である。「これは、企業の顧客が要求している機密トランザクションもサポートしながら、豊富なオープンソースツールのセットと統合されているのです」。この統合を提供するために、MicrosoftはJ.P. Morganと緊密に連携を行った。

ただし、マネージドサービスはこのパッケージの一部に過ぎない。本日Microsoftはまた、開発者のスマートコントラクト開発を支援するVisual Studio Codeの拡張機能の提供も開始した。この拡張機能を使うことで、Visual Studio Codeユーザーは、Etheriumスマートコントラクトを作成およびコンパイルして、それらをパブリックチェーンまたはAzure Blockchain Service上のコンソーシアム型ネットワークに展開することが可能になる。そしてコードはAzure DevOpsによって管理される。

Microsoftの2つのワークフロー統合サービスであるLogic AppsFlowや、イベント駆動型開発用のAzure Functionsとの統合によって、これらのスマートコントラクト用のアプリケーション開発もさらに容易になる予定だ。

もちろんMicrosoftは、このゲームに参入する最初の大企業ではない。特にIBMは、近年ブロックチェーンの採用を強く推進しているし、AWSもまたこれまではこの技術をほぼ無視していたものの、いまやゲームに参加しようとしている。実際に、AWSはわずか2日前に、独自のマネージドブロックチェーンサービスを開始したばかりである。

Coinbase、仮想通貨のVISAデビットカードをUKで開始

Coinbaseで仮想通貨を手に入れても、それらをどう利用するべきかわからないユーザーも多く存在するだろう。だが、英国のCoinbase利用者たちに朗報だ。今後はプラスチックのカードを手に入れ、店内やオンラインショップで仮想通貨を使うことができる。

このカードはVisaカードなので、Visaネットワーク上のどの店舗でも機能する。そして同社は、仮想通貨残高を管理するために、「Coinbase Card」と呼ばれるモバイルアプリを立ち上げた。例えば、カードでBitcoin、Ethereum、Litecoinのどれを使うかを選ぶことができるようになる。

同アプリでは現在Coinbaseで利用可能な仮想通貨を全てサポート。既存のCoinbaseアプリからCoinbaseCardアプリに仮想通貨を移す必要はない。カードはCoinbaseアカウントから直接、仮想通貨を取得する。

そして、このカードは、非接触型決済、ならびに、ATMからの引き出しもサポート。取引の情報は、為替レートの詳細と一緒にアプリに即座に表示される。

では、コストについて話そう。カードを注文するには4.95ポンド(6.50ドル)かかるが、最初の1000人は無料。各取引の手数料は2.49%、変換手数料は1.49%、取引手数料は1%。英国の外のヨーロッパ諸国で使うなら、2.69パーセントの料金が発生する。ヨーロッパ以外では、1トランザクションあたり5.49%の費用がかかるので、そのような状況では別のカードを使用することを検討するべきなのでは。

チャージバックの処理の手数料は20ポンド(26.20ドル)と同様にかなり高価だ。 1ヵ月あたり200ポンド未満の引き出しであれば、メンテナンス料やATM引き出しのための追加費用はない。

背景についても説明しよう。カードの発行はPaysafe、 以前はShift Paymentsとして知られていたApto PaymentsがCoinbase Cardアプリを開発している。もしかすると、以前、CoinbaseがShift Paymentsと提携して米国でカードを発行したことを覚えているかもしれないが、米国ではもうCoinbaseカードを入手することはできない。

コインベースはCoinbase Cardを他のヨーロッパ諸国でも展開する予定だ。

(本稿は米国版TechCrunchの記事を翻訳・編集したものです)

[US版TechCrunchの記事はこちら]

Coinbaseで暗号通貨同士の交換が可能に

信じられないことに、現在CoinbaseでETHを買うためには、BTCを一旦USドルに変えなくてはならない。同社はようやく暗号通貨同士の直接交換機能を追加する。

同機能は、Bitcoin(BTC)、Ethereum(ETH)、Ethereum Classic(ETC)、Litecoin(LTC)、0x(ZRX)、およびBitcin Cash(BCH)で利用できる。今は米国ユーザーのみ利用可能だが、他の国々にも展開する予定だと同社は言っている。

手数料を詳しく見てみよう。ヨーロッパまたは米国に住んでいる人は、USドルまたはユーロで暗号通貨を売買するたびに、スプレッド(買値と売値の差)に加えて1.49%以上の手数料を支払う。クレジットカードやデビットカードを使うと手数料はさらに高くなる。

Coinbaseは、不換通貨と暗号通貨のスプレッドは0.5%前後だが通貨の組み合わせや注文待ち行列によって変わると言っている。

取引高が200 USドル(または相当)以下だと手数料はずっと高くなる。たとえば、10ドルの売買では手数料が0.99ドルすなわち9.9%になる。100ドルの手数料は3%だ。

しかし良いニュースは、これがトークンとトークンの取引ではまったく別の話になることだ。Coinbaseは手数料を取らない——スプレッドは避けられない。そして、特殊な組み合わせ(ZRXをBCHと交換するなど)では、スプレッドに1%前後支払うことにもなる。それでも、Coinbaseで取引したいだけの人にとっては、ずっと良いユーザー体験だ。

他の交換所の話を持ち出すまでもなく、Coinbase Proのユーザーは遠い昔から暗号化同士の取引が可能だ。しかし多くの新しい暗号通貨ユーザーにとっては今もCoinbaseが入り口だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ベトナムのICOで6.6億ドルと首謀者7人が消えた――愚か者とその金は…?

ベトナムに本拠を置くスタートアップ、Modern TechはPincoinというトークンを売り出してICOを行い、3万2000人から6億6000万ドルを集めた。Modern TechはPincoin ICOの後、投資に対する継続的利益を約束しつつ、続いてiFan(セレブ向けソーシャルネットワーク・トークンとやらいうもの))を売り出した。Picoinの出資者は当初、キャッシュで配当を受けるが、その後iFanのトークンが利益として支払われるはずだった。

その後、連中は姿を消した。

こういう手口はエグジット・スカムと呼ばれるが、その中でも今回の事件は近年稀に見る規模だ。またICO市場の今後を考える上でも大いに示唆するものがあった。ベトナム国籍の7人組は、騙されたと知った大勢の投資家が本社に押しかける中、密かに国を脱出していたという。

Tuoi Treの報道によれば、

この事件の首謀者はベトナム国籍の7人で、チームはハノイやホーチミン市、さらに地方都市でもカンファレンスを開き、投資家を釣り寄せていた

7人組は投資家に対して最初の出資に対して月48%の利益が得られるとし、4ヶ月後には投資元本が回収できると説明していた。また新たな投資家を紹介できた場合、その投資額の8%がコミッションとして与えられると約束した。

この「新たなメンバーを引き込むとボーナスが支払われる」というPincoinの仕組みはどこかで聞いたことがある人も多いだろう。スカム屋どもはこの1月までは約束どおりキャッシュで支払っていたが、その後は支払をiFanトークンに変えた。そして先月、洒落たオフィスはもぬけの殻になった。後に残ったのは作りかけではあるが妙に出来のよいウェブサイトだけだった。

そのサイトを詳しく観察すると、ビジネスモデルが巧みなごまかしの上に成り立っていたことがよくわかる。「PINプロジェクトの使命は、共有経済の原則の上に世界のコミュニティーのために共同消費のプラットフォームを構築することであり、これにはブロックチェーン・テクノロジーによる暗号通貨が用いられる…」といった空中のパイ〔絵に描いた餅〕の羅列だけで、どこを探してもファウンダーやアドバイザーについての言及がない。しかも多国語の洒落たホワイトペーパーにさえファウンダーの身元をはっっきりさせるような情報がない。簡単にいえば7人組が力を入れたのはもっともらしいウェブサイトを作ることで、これによって大勢にちゃんとした会社であると信じ込ませることに成功した。

Viet Baoによればチームは以下の7人だという。Bui Thi My Ngoc、Ho Phu Ty、Ho Xuan Van、Luong Huynh Quoc Huy、Luu Trong Tuan、 Nguyen Duc Trong、Nguyen Trung Hieu、Vu Huu Loi。彼らはPincoinとiFanをゼロから立ち上げて数ヶ月で数千万ドルの規模にした。【略】

口先巧みに人を丸め込もうとした興味ある例がiFanのページに見出される。ページの中ほどに彼らのトークンは「Ethereumプラットフォームを利用している」とあり、続いてEthereumの値動きやビジネスの規模が紹介されている。つまりiFanトークンの価値がEthereumと直接連動しているかのように思い込ませようとした表現だ。

このくだりは7人組のホワイトペーパーの中にも出てくる。

現在のような規制のないICOビジネスは「愚か者とその金はすぐに別れる」ということわざの興味深い実例となる雲行きだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

CryptoKitties、1200万ドルを調達してスピンアウト―Andreessen Horowitz他が大人気の暗号化ゲームに投資

バーチャル世界でブロックチェーン・テクノロジーを用いてネコを集めるゲーム、CryptoKittiesがバイラルな旋風を巻き起こしていることを報じたが、同社が1200万ドルの資金調達に成功していることが判明した。これによりCryptoKittiesはAxiom Zenからスピンアウトして独自の企業となる。ゲームを開発したAxiom Zenはバンクーバーとサンフランシスコにオフィスを持つデザインスタジオだ。

資金調達ラウンドはAndreessen HorowitzとUnion Square Venturesがリードした。両社はCoinbaseのような急速に成長しつつある暗号通貨スタートアップを支援することで注目をあつめている。またラウンドにはNaval Ravikant(AngelListのCEO、ファウンダー)、Mark Pincus(Zyngaのファウンダー)、Fred Ehrsam(Coinbaseのファウンダー)など多数の著名なエンジェル投資家が参加している。

簡単にいえば、CryptoKittiesとはポケモンカードのような仕組みでネコを集めるゲームだ。Ethereumブロックチェーンを利用しているため、それぞれのネコは「世界でそれ一匹」というユニークさを備える。いわばビーニーベイビーズのデジタル版だ。ユーザーはバーチャル・ネコを購入するために大金を投じている。もっとも人気の高いネコは10万ドルを集めたという。

同社は将来の計画について明らかにすることを避けているため、調達した資金を何に使うのかも今のところ不明だが、プロダクトをバーチャル・ネコ以外のグッズの収集に拡大するつもりなのは間違いない。この場合にもEthereum ERC-721コレクティブル規格が利用されるだろう。同社のゲームは暗号通貨に詳しくない一般ユーザーでもプレイしやすいことが特長だ。

Union Square VenturesのFred WilsonはCryptokittiesに投資した狙いを説明し「ブロックチェーン・テクノロジーの各種の応用の中でもデジタル・コレクティブル・ゲームはきわめて重要な分野だと考えている。このテクノロジーが普及しつつあることで以前は不可能だった数々の機能が実現した。われわれはデジタル・コレクティブル・ゲームは、ブロックチェーンのマスマーケットへの適用として、唯一ではないにせよ最初の大型プロダクトの一つになると考えている」と述べた

CryptoKittiesについては冒頭のリンク先のTechCrunchのこの記事が詳しく紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebook、暗号通貨、ICO、バイナリーオプションの広告を禁止

Facebookは新しい広告規約を発表し、暗号通貨、バイナリーオプション、ICOの広告を禁止した。今日(米国時間1/30)投稿されたFacebookのプロダクト・マネジメント・ディレクター、Rob Leathernのブログ記事によれば、この禁止について新規約は「このようなプロダクトやサービスは誤解を招き、あるいは虚偽を含む行為と頻繁に関連している」と明示している。

Bitcoin、Litecoin、Ethereumのような暗号通貨、また暗号通貨を利用したICOは休息にメインストリームの地位を獲得したが、同時に多数のインチキや詐欺行為も生んでいる。Leathernはブログに「〔暗号通貨に関連した〕各種のプロダクトやサービスを人々が発見し、学ぶことを望む」としながら、「しかし現在、暗号通貨、バイナリーオプション、ICOに関連して運用が不誠実なプロダクトのプロモーションが存在する」と書いている。

Leathernはこの禁止が非常に広汎であることを認め、これはそのように意図したたものだと説明した。Facebookでは引き続き暗号通貨、バイナリーオプション、ICOに関連して誤解を招くおそれのある広告を選り分けるアルゴリズムを開発していくという。

Facebookは将来全般的な状況が改善されれば、全面禁止と強制のための方策を再検討する。しかし当面Facebookは「違反広告を発見したら通報して欲しい」としている。

Leathernによれば「新規約は、広告の誠実性とセキュリティーを改善するための努力の一環であり、悪事を企む者がFaebookを利用して利益を得ることを防止するのが目的だ」という。

画像:Bryce Durbin/TechCrunch

〔日本版〕上記の広告はすでに日本のFacebookの広告規約でも禁止されている。ただし現時点では表記は英語のまま(「4 禁止されているコンテンツ」の末尾、29項)。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

手数料ゼロの仮想通貨取引アプリRobinhood Crypto、米国でサービス開始。まずBitcoinとEthereumから

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手数料不要の株売買サービス Robinhood が、仮想通貨の取扱をはじめると発表しました。銘柄はBitcoinとEthereumで、取引手数料はもちろんゼロです。

他の取引所に比べて、手数料がゼロというのはRobinhoodがもつ明らかな強みです。米国で最も大きな仮想通貨取引所のCoinbaseは1.5~4%の手数料がかかります。

「我々は今すぐ収益を上げるつもりはありません。しばらくは損益分岐点上でも、新規顧客獲得と既存の顧客へのサービス向上に務めます」とRobinhoodは説明します。

仮想通貨取引用に用意されるアプリRobinhood Cryptoでは、相場価格そのものではなくまず銘柄の見積もり価格をユーザーに提示します。そして、ユーザーが売り買い注文を出せば、それら銘柄の取引所、販売所を横断検索し、最も好条件での売買を探し出します。もちろん仮想通貨は価格変動が大きいため、取引にはある程度のマージンが取られており、その幅を超えるような場合はユーザーにその注文を実行するか判断を委ねます。

取り扱う仮想通貨は、まずはBitcoinとEthereumだけではあるものの順次拡大予定で、対応予定リストにはBitcoin CashやEthereum Classic、Litecoin、Ropple、Dash、Zcash、Monero、Qtum、Bitcoin Gold、OmiseGo、NEO、Lisk、Dogecoinなどが並んでいます。

なお、Robinhood Cryptoアプリはすぐにどこでも使えるようになるわけではなく、まずはカリフォルニア、マサチューセッツ、ミズーリ、モンタナ、ニューハンプシャーの各州で2月から開始の予定。

仮想通貨はその価格変動の激しさから物を買ったりする”通貨”としての実用性は損なわれつつあるものの、Robinhoodのような株取引サービスの目線からはまだまだ魅力的なようです。

Engadget 日本版からの転載。

暗号通貨バブルはイノベーションを絞め殺している

以前からバブルかもしれない、バブルっぽい、と言われてきたが、いや間違いなくバブルだ。しかしこれは良いことでもあると擁護する声もある。これまでバブルは必要な分野に注目と資金を集めるために役だってきた。バブル投資がインフラを作り、それが結局イノベーションの基礎となった、というのだ。

たとえばドットコムバブルだ。大勢の投資家が金を失ったが、これによって全世界がファイバー回線で結ばれ、安価なデジタル通信が可能になった。AmazonやGoogleが登場したのも結局はドットコムバブルの遺産だ。最近の暗号通貨バブルも同じようなものだ…というのだが。

しかし私の意見ではこうした合理化の試みは脆いものだ。なるほど部分的には正しいが、それ以上のものではない。暗号通貨の現状をみると、投機的利用法が他のあらゆる利用法を押しのけてスポットライトを浴びている。現在の暗号通貨の価値上昇はもっぱら投機によるものだ。

ほとんどの「暗号通貨トークン」は大げさに飾りたてられているものの、Ethereumのブロックチェーンに格納されたハッシュ値にすぎない。実際の内容は「アドレスA:10,000、アドレスB: 20,000」といった数字の列で、標準的な規格( ファンジブル・トークンならERC20、非ファンジブル・トークンならERC721)でコード化されて取引の容易化が図られている。

つまりEthereumブロックチェーンで実行されるあらゆる取引はその時価に比例した手数料がかかる。時価がロケットのように急上昇しているので(この記事を書いている時点で1000ドル)、これに歩調を合わせてEthereum上の取引の手数料は平均して2.50ドルにまでアップしている。

ハッシュ値生成に必要な計算量に比例してgas(手数料)を決定するメカニズムも実際にはあまり助けにならない。手数料は需要と供給によって決定される。これはEthereumだけではなく、BlockstackのDNSもBitcoinブロックチェーンに依存している。Bitcoinの取引に必要なコストもBitcoin価格と共に青天井で上昇中だ。

ともかく相場で一儲けを狙って何千ドルか何万ドルかの価値のトークンを取引しているなら手数料が高騰しても構わないかもしれない。しかしブロックチェーンのメカニズムを使って投機以外の目的のアプリケーションを書こうとすると事情は変わってくる。

もしブロックチェーンを利用して分散的な身元認証のようなサービスを作ろうとしても、そのコストは禁止的に高くなる。業者からブラウザが自動的に処理してくれるインターネット・ドメインを買うよりはるかに高いものになる。ユーザーが何らかのバーチャル資産を保有していることを証明するサービス、あるいは分散的ストレージへのアクセス・サービス等々を考えてみよう。トークンの取引はおろか、トークンを利用するという点だけで、そのコストは懲罰的から不可能までのさまざまな価格となるだろう。

つまりEthereumトークンを使って少しでも処理件数が多いサービスを作るという考えは忘れたほうがいい。そんなビジネスモデルはトークン価格の高騰により破滅的な結果をもたらす。Ethereumの場合、コストは常に送り手が負担するモデルであることもことをいっそう困難にする(ただしこの点については近く変更があるかもしれない)。逆に処理件数は極めて少なく、1件ごとの価値が極めて高いようなサービスなら可能だ。つまり現在のような投機だ。

Ethereumがトークン化のコストを劇的に下げる方法を考え出せば別だ。もちろん実験的サービスは多数作られてはいる。しかしほどんど誰も利用しない。こうしたサービスには好奇心の強いユーザーが近づいてみるものの、一回限りの実験にしても高すぎる手数料に驚かされている。まして日常利用するようなことにはならない。結果として、暗号通貨テクノロジーを利用する実験もイノベーションも投機バブルが破裂するまでは一時停止状態だ。

デベロッパーはブロックチェーン・テクノロジーを使ってアプリを書いても現実のユーザーが得られず、したがって現実のフィードバックも得られない。したがって新しい有望な応用分野を発見することもできない。ブロックチェーン・エコシステムの大陸は厚い氷河に覆われて活動を停止しているのが実情だ。

長期的にみて現状より桁違いに低い手数料が可能かどうかということも不明だ。 たとえばマイクロペイメント場合、普及にあたって最大の障害は手数料やインフラそのものより、むしろマイクロペイメント・サービスを利用しようというインセンティブの不足にある。AngelListのParker Thompsonはマス市場で成功する唯一の方法は手数料ゼロの分散的アプリが登場することだと論じている。この主張は正しいと思うが、手数料がゼロになった場合、ブロックチェーンを利用したスパム取引を判別したり防止したりできるのかという別の疑問が生じる。

しかし現状ではこれはあまり現実的な意味が議論だ。誤解しないでいただきたいが、私は手数料アポカリプスによって暗号通貨テクノロジーは永遠に呪われているなどと主張しているわけではない。現に、sharding, Raiden, PlasmaなどEthereumをスケールさせるための興味深い研究や開発が数多く行われている。こうした研究に対する期待は十分に高い。

しかしそうした新しいEthereumがロールアウトするまでは、暗号通貨に対してはきわめて注意深くあるべきだろう。株の値動きについて「市場は最初は投票だが最後は秤りになる」という言葉がある。つまり最初は人気投票のように動くがやがって実質を見るようになるという意味だ。現在、投機以外の暗号通貨トークン・プロジェクトは無期限の冬眠を強制されている。 本当にイノベーティブなサービスを作ろうとしているチームにとって、現在の暗号通貨バブルが弾けることは冬ではなく、むしろ春の到来を告げるものだ。

画像: Bitterbug/Wikimedia Commons UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Ethereumブロックチェーン上で仮想仔猫の売買が流行、わずか数日で100万ドル以上の取引が行われた

わずか数日前にリリースされたCryptoKitties(暗号仔猫)は、基本的にはポケモンカードのデジタル版のようなものだが、Ethereumブロックチェーン上に構築されていることが特徴だ。ハイテク世界でよく見られるバイラル拡散のように、極めて急速に拡大している。

バンクーバーとサンフランシスコに拠点を置く、デザインスタジオAxiomZenによって開発されたこのゲームは、暗号通貨(仮想通貨)世界の最新の流行であり、おそらく近い将来には一般的な技術となるだろう。

人びとは途方もない額のリアルマネーを、このゲームに投入している。これまでに、およそ130万ドルが取引されているが、何匹もの仔猫がおよそ50ETH(約2万3000ドル)で取引され、そして「始祖の仔猫」は約246ETH(約11万3000ドル)で販売されている。このサードパーティのサイトが、このゲームでこれまでに行われた最大の取引を追跡している。そして、良いバイラル流行の常のように、取引価格は上昇しており、急激に変動している。現時点では、ゲームで最も安価な仔猫の価格は0.03 ETH(約12ドル)である。

ということで、おそらくわずかな現実的な価値しかもたないEtherを使って、疑いなく全く現実的価値のない資産を購入する人びとが現れたわけだ。2017年のインターネットへようこそ。

真面目な話、これは人びとがぬいぐるみの動物に対して、狂ったような金額を注ぎ込んでいたビーニーベイビーズの流行を少し思い起こさせる。しかし、この先もし人気が上がり続けるならば、現在買っている人たちは、転売したり、希少な仔猫を繁殖させたりすることで、収益を得ることができるかもしれない。もしくはビーニーベイビーズの末期に起きたように、程なく市場が崩壊し仮想的なレア仔猫に対する大量の暗号鍵を抱えることになるのかもしれない。

それでもゲームそのものについては、いくつかクールな点がある。そして価格の馬鹿さ加減を脇に置くことができるなら、これは実際初心者がEthereumブロックチェーンとやりとりをするためのクールな手段なのである。

まず、Ethereumブロックチェーン上でプレイしているので、ゲームを管理している中心的な存在はないことを理解することが重要だ。これは、ユーザーが文字通り自分の仔猫を所有していることを意味する。すべてが中央データベースに保存されていて、会社が倒産したときにはペットが削除されるようなNeopetsをプレイするのとは異なり、CryptoKittiesは分散されていて、Ethereumブロックチェーンの上で永遠に生き続ける。

このゲームは、AxiomZenによって書かれた5つのEthereumスマートコントラクトのセットを経て実行され、ユーザは自分自身のEthereumアドレスを使ってインタラクションを行う。現時点での最も簡単な方法は、Chrome拡張機能のMetaMaskを使うことである。これによってブラウザから直接Ethereumを送受信することができるようになる。そしてCryptoKittiesサイトに移動する。このサイトは基本的に彼らのスマートコントラクトと取引をする場所であり、仔猫たちを売買したり、繁殖させたりすることができる。

現時点ではEthereumネットワークの全トラフィックの約15%がこのゲームに利用されており、ネットワーク上で最も人気のあるスマートコントラクトとなっている。参考までに、ネットワークトランザクションの約8%を占める第2位は、人気のある分散型トークン取引所であるEtherDeltaのものだ。

このトラフィック量のために、CryptoKittiesで遊ぶことは難しくなっている。そして多くのトランザクション(仔猫の売買)が、通常の取引よりも長時間かかったり、複数のリトライが必要となっている状況だ。

このスケーリングの問題は、ゲームをすることを難しくしているだけでなく、Ethereumネットワーク一般の、真の懸念事項なのだ。ハイテク世界の中で流行っているだけの、たった1つのバイラルゲームがネットワークを遅くしてしまうとしたら、もしブロックチェーンは実世界アプリに広がったらどうなってしまうのだろうか?

ともあれ、ゲームそのものの話に戻ろう。まだわけがわからないって?私たちもそうだ。以下にそれがどのようなものかを説明しよう:

遊び方

ゲームは100匹の “Founder Kitties”(始祖仔猫)たちで始められた。そして15分おきに新しい”Gen 0″(世代0)の仔猫が生み出されている。それには最後に売れた5匹の仔猫の平均価格プラス50%の価格が付けられる。しかし販売価格誰かがその仔猫を買うまで、24時間に渡って下がり続ける。

そして誰でもオークションで仔猫を売ることができる。オークションに際しては、開始価格と終了価格を選ぶが、誰かが購入するまでやはり価格は下がり続ける。たとえば、私が1匹の仔猫をある日オークションに出すとする。開始価格は1ETH、終了価格は0ETHとしよう。もし誰かがオークション開始後12時間の時点で購入した場合、私は0.5ETHを手にすることになる。

仔猫は繁殖によって生み出すこともできる、これはゲームの中ではSiring(親になること)と呼ばれる。自分の仔猫を繁殖のために提示することができる。他の誰かがその仔猫を繁殖に使うことで、彼らは新しい仔猫を得て、こちらは手数料(ether)を手にする。あるいは、逆に自分の仔猫と誰かの仔猫を掛け合わせるために支払いを行うことも可能で、この場合にはetherを支払い、仔猫を得ることになる。

新しい仔猫を繁殖させるには、「クールダウンタイム」に従って1時間から最大1週間ほど時間が掛かる可能性がある。この時間は短ければ短いほど良い。なぜなら仔猫をすぐに売ってまた繁殖を行うことができるからだ。これは、これは「クールダウンタイム」が短い仔猫ほど、一般的に高く売れることを意味する。

それぞれの仔猫には、仔猫たちが持つことのできる違いの組み合わせを表現するための、256ビットのゲノムシーケンスが与えられている。それらが表しているのは、背景色、クールダウンタイム、鼻の横のヒゲ、顔の毛、縞模様などが含まれる。これらの遺伝子のいくつかは劣性である。すなわちストライプのない仔猫でもストライプを持つ仔猫を生み出すことができるということだ。

大事なことは、ゲーム側では遺伝シーケンスに希少価値を割り当てる、「希少度」は規定していないということだ。つまり、コミュニティは独自にどのような形質が希少なものであるかを、それに対して支払うプレミア価格によって決定しているのだ。たとえば、金色の背景を持つ仔猫は、その他の背景色の子猫よりも高く販売されている。

ユーザーが自分でカスタマイズすることができるのは、自分の仔猫の名前だけだ。しばしばその名前の部分が、珍しい属性(色とか世代とか)を宣伝するために使われている。

現時点では、あるCryptoKittiesサイト上の仔猫の実際の遺伝子シーケンスを知るための手段は存在しない。とはいえ、それはEthereumコントラクトの中にある完全にオープンなコードなので、誰かが仔猫の遺伝シーケンスを「読む」手段を発見して、それに基づいて繁殖の推奨をするようになるのは時間の問題だろう。またある程度のランダム性も加味されている。これによってあまり希少でない仔猫を持つ人でも、レアな仔猫を得るチャンスが出てくるので面白みが増す。

猫は繁殖するたびに世代が1つ増える。したがって、Gen 0(世代0)の子孫はGen 1(世代1)となり…以下同様だ。早い世代の仔猫たちは、単純に希少であるという無形の価値と、早い世代の方が一般にクールダウン時間が短いという有形の特性によって、より高額で取引されているように見える。

Axiomは、最初の100匹の仔猫を売ったことで回収したetherと、15分ごとに新しく生まれて売られる仔猫によって収益を得ている。また彼らは、すべてのオークションまたはSiring取引で、3.75%の手数料を徴収している。CryptoKittiesのウェブサイトを経由せず、スマートコントラクトと直接インタラクションして仔猫を売った場合には、3.75%の料金を支払う必要はない。

次は何だろう?

他の多くのバイラルプロジェクトとは異なり、CryptoKittiesのチームは、この大騒ぎには振り回されずに、このプロダクトを育てていくつもりだ。このゲームを主導するMack Flavelleは、チームは少なくとも1年分の改善プランを抱えていると私に説明した。その中で直近のものはウェブプラットフォームのUIの改善である。

彼らはまた、参加プロセスをより簡単なものにしたいと考えている。なぜなら、結局のところ、現在でも平均的な人にとってはMetaMaskをセットアップして、etherを売買し、そしてそれをネットワーク上で使用することは簡単ではないからだ。

このプロジェクトには、ゲームの現在の仕組みと、もう少し詳しい将来の計画についての説明を行う素敵なFAQが用意されている。

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(翻訳:sako)

ParityのEthereumウォレットに深刻な脆弱性――巨額の暗号通貨が凍結中

今日(米国時間11/7)、ポピュラーな暗号通貨、Ethereumを悪いニュースが襲った。今回発見された脆弱性は何億ドルものEthereum資産に影響を与えるという。この問題はEthereumにとってここ数か月で2度目の深刻な打撃だ。

有力なウォレット・サービス、Parityを提供しているParity Technologiesは今日、ウォレットを消してしまう可能性のある問題を公開した。

この脆弱性は7月20日以降にリリースされたマルチシグ(セキュリティーを強化するため複数が合意して署名することが必要な)ウォレットで発見された。つまりそれ以降のICO〔Initial Coin Offering=暗号通貨によるクラウド資本調達〕はこの脆弱性の影響を受けている可能性がある。

これがここ数か月でParityに発見された2度目の重大なバグなのは大きな問題だ。時価総額270億ドルという暗号通貨として世界2位の価値を持つEthereumだけに影響も巨額に上るおそれがある。

7月に入ってParityのマルチシグ・ウォレットに発見されたバグのために15万 ETH(その時点の価値で3000万ドル前後)が盗難にあった。このバグは7月19日に修正された。これが7月20日という日付が重要となる理由だ。 前回の脆弱性の発見にポジティブな要素があるとするなら、Ethereumに興味を示していた多くの企業が恐れをなしてICOから遠ざかったことかもしれない。Parityを利用してICOを行った企業もマルチシグ方式を取らなかった可能性が高い。

そうではあっても、これはセキュリティー上、深刻な問題だ。Parityの説明によれば、これはあるユーザーのウォレットが消失したことによって発見されたという。

〔バグを修正した新しいウォレット〕は7月20日にリリースされたが、そのコードに別のバグが含まれていた。 これはinitWallet関数をコールすることによってParityウォレットを通常のマルチシグ・ウォレットに変えてそのオーナーとなることができるというものだった。2017年11月6日、 02:33:47 PM +UTCに偶然このコールが実行され、その結果、あるユーザーはウォレットのライブラリーを新たなウォレット中に入れてしまい、ライブラリーを自爆させた。つまりウォレットを開くために必要なコード自身がウォレット中にあることになった(ウォレットの現状を変更するには署名が必要だというロジックであるにもかかわらず、それに必要なコードがウォレット中にあって〔取り出せなくなった〕)。

Parityウォレットがスマートコントラクトであるという点にすべての問題の原因があるようだ。

Parityはそのウォレットを通常のコントラクトとは考えていないだろう。Parityのコードはライブラリーにあり、Parityはこれをdelegatecallによって直接実行する。

現在のところ、このバグによって盗難、消失などの被害を受けた事例は報告されていない。しかし巨額のEthereum通貨が危険な状態にあることは間違いない。

UCL〔ユニバーシティー・カレッジ・オブ・ロンドン〕の暗号通貨研究者、 Patrick McCorryの推計によれば、少なくとも60万ETH(1億5000万ドル)がロックされたという。McCorryはTechCrunchに対して「Parityの利用範囲やウォレットの額などの情報が詳しく判明すればこの数字ははるかに高くなるだろう」と語った。

影響を受けた有名企業にはPolkadotが含まれる。TechCrunchでも報じたように、このプロジェクトはプライベート・ブロックチェーンとパブリック・ブロックチェーンをリンクさせるもので、ICOにより1億4000万ドルを調達している。ファウンダーはParityの共同ファウンダーでもあるGavin Woodだ。Polkadotはそのウォレットが凍結中であることを確認した。PolkadotのICO総額の60%が影響を受けているとTechCrunchでは考えている。

Parityでは現在この問題を調査中だ。同社のツイートによれば影響を受けたウォレットは凍結(ロック)されたと考える一方、影響を受けたETH総額についての情報は「推測だ」としている。

アップデート:われわれが知る限り、〔資金は〕凍結されており、移動は一切不可能だ。ETH総額についてのメディアの情報は推測にすぎない。

Ethereumの価格は脆弱性のニュースを受けて305ドルから291ドルに下落した。この2週間での新安値だ。今後の値動きは脆弱性の深刻さと影響の及ぶ範囲によるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

暗号化通貨のイーサリアム、「数年」以内にVisaの規模になるとファウンダーが発言

Ethereumの共同ファウンダー、Vitalik Buterinの頭の中は、暗号化でいっぱいだ。つまるところ彼は、インタビュアーのNavl Ravikantが「脳ウィルス」と呼ぶものが、セキュリティーと経済の真の未来出ある信じている。そして適切なインセンティブがあれば、Ethereumはクレジットカード・ネットワークや、ゲームサーバーまでも置き換えることができるという。

Buteriは世界を2種類の人々に分けている。

「bitconのことを聞いたことのある普通の人と、聞いたことのないふつうの人」だと彼は言う。Buteriのプロジェクトもそれを基本に、ブロックチェーンに実用性を付加することで、誰もが知りたがるものを作ろうとしている。

「Ethereumの基本的な考え方は、暗号化経済のアイデアと、bitcoinのように多くのアプリケーションのためのメモリーをもつ分散ネットワークを支える経済インセンティブとを組み合わせたものだ。優れたブロックチェーン・アプリケーションは、分散化と何らかの共有メモリーを必要としている」とButeriは言う。

それが彼の作ろうとしているものであり、Ethereumネットワーク上に他者が作ってくれることも願っている。

Vitalik Buterin (Ethereum Foundation) とNaval Ravikant/TechCrunch Disrupt SF 2017にて

たった今のネットワークは、多くの主流アプリケーションにとって、少々遅すぎる。

「bitcoinは1秒間に3件をほんの少し下回る数の取引を処理している。Ethereumは1秒間に5件だ。Uberは1秒間に12回利用されている。ブロックチェーンがVisaに取って代わるまでには数年かかるだろう」

Buterinは、何もかもがブロックチェーン上で動く必要はないが、多くの物が利用できるはずだと考えている。テクノロジーが進歩すれば、並列化(同時に多くのプログラムが走る)を必要とする多くのサービスを置き換えるまでに成長するだろう

「StarCraftをブロックチェーンの上で動かすこともできる。その種のことが可能だ。高いレベルのセキュリティーとスケーラビリティーによって、ほかにもさまざまなものをブロックチェーン上に構築することができる。Ethereumは、あまり多くの機能をもたない安全な基本レイヤーだ」。

「暗号化通貨の鍵は、さまざまなレベルのインセンティブにある。ブロックチェーンの合意プロトコルのセキュリティーは、インセンティブ抜きには説明できない」

アップデート:Buteriが自身の意図を明らかにした:

[念のため:私はEthereum(+plasma等)が〈Visa並みの取引規模をもつ〉と言ったのであって、「Visaに取って代わる」とは言っていない]

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

暗号化通貨は先週末の暴落からすでに立ち直っている

数日前に暗号化通貨市場が20%暴落したとき、私は「1日2日もすれば、これが一時的な現象か次の大変革の始まりかがわかるだろう」と 書いた

さて、その1、2日がすぎた。そしてあの一時的急落は一過性であったらしいことがわかった。今日(米国時間9/6)、暗号化通貨全体の時価総額は、昨日の1350億ドルから16%アップの1620億ドルになった。

Bitcoinも再び4600ドルを超え、前日より13%上がった。Ethereumは333ドル前後で取引されていて、今週初めの底値から16%アップだ。

下のチャートを見ると、全般的によく似た傾向であることがわかる。ほとんどの通貨がこの24時間に2桁値上がりし、週末の暴落前にほぼ戻っている。

例外が1つある。中国拠点のICO/暗号化通貨のNEOは、先週の39%ダウンから復活していない。しかしこれは理にかなっている。暴落の原因は中国のICO全面禁止で、その影響を直接被ったのがNEOだからだ。

もちろん、極端な乱高下は暗号化通貨の世界では当たり前だ ―― BitcoinやEthereumなどの主要通貨では2桁の変動も珍しくない。しかし、先週末のようにあらゆるデジタル通貨が影響を受ける市場全体規模の暴落は、ほぼ間違いなく外部からの影響の兆候であり、日々の変動ではない。今回のケースでは中国のICO禁止が原因だ。

今日の回復は、暗号化通貨市場(および付随する評価額)は、一部の人が思うよりも復元力が強いことを示している。

これは暗号化通貨投資家が公には認めたがらないことだが、過去数か月の急騰はバブル崩壊の前兆だと多くの人が思っている。一方その同じ投資家の中に、上昇を続ける評価額が少し下がることを期待する人もいる。市場全体が一息つく時間が欲しいからだ。

結局のところこの復調は、暗号化通貨市場が政府の規制によるショックに耐えるだけの回復力を持っていることを示すものであり、これは安定した価値の上昇が続くことを意味している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

暗号通貨、2日で20%急落――踊り場か調整局面か注目

暗号通貨は調整局面に入ったのかもしれない。

過去数ヶ月、前例のない値上がりを続けてきた暗号通貨のほとんどすべてはこの48時間で2桁の値下がりに直撃された。coinmarketcap.comによる上の表をざっと眺めただけで、事態が深刻なのが分かる。最大の暗号通貨であるBitcoinはここ数日で16.5%ダウンした。Ethereumは23.5%のダウンだ。

土曜には1800億ドルだった時価総額が1420億ドルへと縮小し、暗号通貨市場全体がたった2日で20%の価値を失った。この急落は暗号通貨の時価総額の歴史にはっきりした傷跡を残すほど大きい。つまり簡単に忘れられような軽易な出来事ではない。

もちろんこれまでの経緯を見ておくことは必要だ。「暴落」したとはいえ、 Bitcoinの価値は4ヶ月前と比べてさえ2倍だ。しかし今回の値動きは暗号通貨への投資には並々ならぬ度胸がいることを改めて示した。

何ヶ月も暗号通貨の値動きを研究し、価格が2倍になったのを見て48時間前に大金を投資したとしよう。それが今や2割の損失を出している。愉快ではあるまい。アメリカの株式市場でいえば、20%の下落は数年分の利益に相当する。最近暗号通貨に投資したとすると、その額がこの週末で消し飛んだわけだ。

ではこの暴落が起きた原因は何だったのか? いくつか考えられる。

今朝(米国時間9/4)、中国政府は暗号通貨によるクラウドファンディングを「経済および金融の秩序を著しく乱す活動」と非難し、ICOを禁止した。政府の規制措置が実施されるたびにbitcoinその他の暗号通貨は打撃を被ってきたが、今回は特にアメリカのSEC〔証券取引委員会〕がICOの合法性に関して強い警告を発した直後だっただけに影響は一層深刻になったのだろう。

中国政府がすべてのICOについて調達した資金を投資家に返却するよう命じたことは有力暗号通貨であるBitcoinやEthereum自身の価格に対する不透明さを増すこととなった。つまりICOで購入されたトークンは再び通常の通貨に戻さねばならない。たとえば中国のICO/暗号通貨、NEO(以前のAntShares)はここ数日で50%も値下がりした。

暗号通貨の急落の原因としてもう一つの可能性は、要するに市場が過熱していたというものだ。急落はBitcoinが5000ドル弱という新高値をつけた時期に起きた。つまり自然の調整局面に入ったという考え方だ。Bitcoinの値動きを歴史的に追うと、急上昇の後に急降下することを繰り返している。通常の株式市場の値動きのパターンと同じだ。

向こう数日のうちに今回の下落が一時的な踊り場なのか本格的な調整局面に入ったことを意味するのかはっきりするはずだ。今のところ誰にも予測はできない。答えを出すのは市場だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

BitcoinウォレットのBlockchainがEthereumにも対応

Blockchainは世界で一番人気の高いbitcoinウォレットだ。そして今日からBlockchainユーザーは、Ethereumウォレットを作ってetherを保管できるようになった。

Blockchainは、CoinbaseやKrakenのような中央集権型取引所ではない。単なるウォレットでありユーザーは自分の所有する暗号化通貨を安全に保管できる。多くのサービスと比べてBlockchainは堅牢でハックされにくい。

ウェブまたはモバイルアプリを使ってBlockchainのウォレットを作る。ただし運営会社はユーザーの残高や取引内容を見ることができない。ウォレットのバックアップはBlockchainのサーバーに置かれるが、ウォレットの鍵はユーザーが自分で管理する。

この方法はかなり人気が高く、現在1400万件のBlockchainウォレットが作られている。また同スタートアップは、最近4000万ドルの資金調達を完了した。

bitcoinやetherを買いたいときは、Blockchainがいくつかの取引所と提携しているので、スムーズに手続きができる。米ドル、ユーロなどあらゆる通貨を送金して、bitcoinを受け取りBlockchainウォレットの中にいれることができる。

新たに加わったEthereumウォレットは、bitcoinウォレットとまったく同じように使えるようだ。同社は ShapeShiftと提携しており、Blockchainユーザーはbitcoinとetherを相互に両替できる。

これまでbitcoinウォレットに特化してきたBlockchainが、Ethereumを採用したのは興味深い動きだ。世界唯一の暗号化通貨などないことの証しとも言える。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

コードで定義された“ほぼ”自律的で民主化されたベンチャーファンド、The DAOが1.3億ドルを集めて始動

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ブロックチェーンと仮想通貨という議論が多い分野で、巨額の資金と注目を集めて新しい実験が始まった。その名をThe DAOという。ドイツのスタートアップSlock.itが始めたこの取り組みは、プログラムコードで定義された“ほぼ”非集権的で自律的で民主的なベンチャーファンドとしての活動を開始しようとしている(どこが“ほぼ”かは後述する)。2016年5月28日までにTHe DAOは1億3232万ドル相当の資金を集めた。これはクラウドファンディングのプロジェクトとして現時点での史上最高額となる(Wikipediaによる)。

The DAOについてはUS版TechCrunchの記事(日本版では未訳)も出ているが、ここでは最新情報も入れて、日本の読者向けに最初から説明することにする。

DAOはコードで定義された非集権で自律型の組織

今回取り上げる「The DAO」の前に、定冠詞TheがつかないDAO(Decentralized Autonomous Organization)の話をしておきたい。これは、その略語から分かるように非集権で自律型の組織といった意味の造語だ。「ビットコインのエコシステムは最初のDAOである」という「ものの言い方」もある。例えばビットコインのエコシステムは、「マイニングによるビットコインネットワークの維持と、それに対する報酬(マイニングで得られるビットコイン)の受け取り」という仕組みで回っている。人間の経営者、管理者や明文化されたルールがなくても、ビットコインのプログラムコードに内在する決まり事と、そして人間を動かすための経済的インセンティブによって事業が進んでいる。このような事業の自律化、非集権化の枠組みを指す言葉がDAOだ。最近の文脈では、主にブロックチェーン技術Ethereumのスマートコントラクトを活用したDAOに関する議論が中心だ。

今回の記事で取り上げるのは定冠詞が付く “The DAO” は、定冠詞が付かないDAOとは違い、ドイツのスタートアップ企業Slock.itが作り上げた非集権的で“ほぼ”自律的に機能するベンチャーファンドを指す言葉だ。“ほぼ”が付くのは、後述するように人間のスタッフであるキュレーターが一部の管理を担うからだ。

The DAOの開発元であるSlock.itのもともとの事業は、Ethereumで制御するスマートロックによりシェアリングエコノミーを実現するというものだ。この事業は、今ではThe DAOの「プロポーザル」の一つだ。

Slock.itは、自社の事業資金を直接クラウドファンディングで集めることもできたが、そうではなくThe DAOを開発した。ベンチャーファンドを立ち上げて、そのベンチャーファンドの投資対象として自社の事業を提案する形をとった。風呂敷が大きい方が、より大きな資金を集めることに結びつくと考えたのかもしれない。

Slock.itが書いたThe DAOのコード “Standard DAO Framework” はGitHub上でLGPLライセンスにより公開されている。つまりオープンソースソフトウェアである。このコードを参考に新しいDAOのコードを書いて提案する可能性が誰にでも開かれている。ここは素晴らしい構想だと思う。

投資案件の提案が続々と集まる

記事執筆時点で “Under development” の段階のプロポーザルが13種類あった。その中でもっとも賛成意見が多いプロポーザルは、オライリーの書籍 Mastering Bitcoin の著者Andreas Antonopoulos氏が提案した “Decentralized Arbitration and Mediation Network” だ。最も反対意見が多いプロポーザルは、皮肉なことにThe DAO開発元であるSlock.it自身が提案した “Slock.it Universal Sharing Network / Ethereum Computer proposal v0.1” である。

この記事を書いている間にも、新しいプロポーザルがどんどんプロポーザルパイプラインに登録されつつある(ここを参照)。これは面白い見物だ。アイデア投票のソーシャルサービスのようでもあるが、過去のサービスとの大きな違いは総額1.3億ドル相当の資金をどのプロポーザルがどれだけ獲得するかという競争の要素があることだ。

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仮想通貨のテクノロジーでベンチャーファンドを小口化、証券化

The DAOの仕組みを説明するために、少しだけ「株式会社」の話をさせてほしい。株式会社は、事業を遂行する会社の資本金、リスクとリターン、ガバナンスを「株式」の形で証券化し、多くの人々に分割する仕組みだった。株主はマネーを払い込んで株式を受け取り、会社のガバナンスに関与する権利を得る。株式を売却してキャピタルゲインを得ることもでき、株式を持ち続けて配当を受け取ることもできる。そしてベンチャーファンドは複数のスタートアップの株式に分散投資するものだ。

株式会社が成立する根拠は、法と契約、つまり自然言語で書かれた人間のためのルールだ。一方、The DAOが成立する根拠は、Ethereumのブロックチェーン上で自動執行される改ざんできないプログラムコード──スマートコントラクトである。

The DAOは、Ethereumのスマートコントラクトで記述した「DAOトークン」としてマネー、リスク、リターン、ガバナンスを小口に分割した。ビットコインは採掘にコストがかかり発行量が限られるという点でよく「金貨」に例えられるが、DAOトークンは複数のスタートアップ企業に分散投資するベンチャーファンドを小口化した証券に例えることができるだろう。

この2016年4月30日から5月28日まで続いた「DAOクリエーション」と呼ぶプロセスにより、多くの人々がEthereumの仮想通貨Ether(ETH、関連記事)建てでマネーを振り込み、引き替えにDAOトークンが発行されている(私も参加してみた)。集めた金額はEther建てで1207万ETH、米ドルに換算すると1億3232万ドル(5月28日時点)となる。発行されたDAOトークンの総数は11億7278万となる。

DAOトークンホルダーは、投資案件の投票に参加する

誰もがDAOトークンホルダーになり、DAOの推進するプロジェクトに投票し、投資し、リターンを受け取ることができる。

DAOトークンホルダーは、新たなThe DAOに寄せられたプロジェクトの提案(プロポーザル)への投票権をもつ。投票により認められたプロジェクトには資金が集まり、そのリターンの一部はDAOトークン所有者に配分される。株式会社との大きな違いは、一連のプロセスに対する人間の関与を最小限に留めていることだ。The DAOではキュレーターと呼ばれる人々がプロポーザルの管理に関与する。キュレーターの役割は「DAOトークンの51%を買い占めて100%のトークンを引き出す攻撃を防ぐため」と説明されている。Ethereumの提唱者であるVitalik Buterinを筆頭に、Ethereum Foundationのメンバーらがキュレーターに名を連ねている。人間が関与することから、The DAOは“ほぼ”自律的なDAOだといえる。

日本からもいち早くDAOトークンを扱う取引所が

DAOトークンは、仮想通貨取引所で売買することができる。日本で活動している取引所としては、ビットコイン取引所のKrakenがDAOトークンの取引を開始し、そしてレジュプレスが運営するビットコイン取引所/販売所coincheckもDAOトークン売買ができるようにした(発表文)。DAOトークンの売買ができるようになった5月28日18:00(日本時間)から数時間で取引や売買の機能追加を施したスピード感はすばらしい。

記事を書くにあたり、手持ちのDAOトークンをそれぞれの取引所に送ってみた。使い勝手は仮想通貨Etherの送金とだいたい同じだ。Ethereumアドレスを指定して送金すると、10分間ほどで確認の手続きが終わる。ビットコインの送金では6回の確認を待つのに約1時間か要するが、それよりずっと短い時間で送金が終了する。

The DAOは不完全かもしれないが、ガバナンスに参加することは可能だ

前述したように、ビットコインが仮想通貨版の「金貨」だとすれば、DAOトークンはベンチャーファンドを小口化したものだ。値上がりを期待してホールドしてもよく、売却してお金に換えてもいい。これから名乗りを上げる「プロポーザル」への投票権を得ることができ、利益が上がるなら配当に預かることもできる。DAOトークンホルダーはプロポーザルへの投票により、The DAOのガバナンスに参加することができる。

The DAOは、見方によっては、新興の投資ファンドが、仮想通貨による資金調達により、IPOもM&Aもなしに1億3232万ドルを手にした事例といえる。ガバナンスという観点では、The DAOの運営はDAOトークンホルダーの総意を反映した民主的な枠組みに基づく(ここが素晴らしいと思う人もいれば、不安を覚える人もいるだろう)。The DAOが今後も成長を続けていくならば、ひょっとするとスタートアップやベンチャーキャピタルのエコシステムが様変わりするかもしれない。

The DAOのコードはオープンソースとして開示されてはいる。だが、The DAOの仕掛けになんらかの欠陥──例えば法的な不備や、キュレーターを含むプロセス上の不備など──があるのかないのか、ここは議論の余地があるし、部外者からはなかなか分からない部分だ。The DAOが自分の資金を託すに足りる相手なのかどうかという判断材料は、株式や投資信託のような慣れ親しんだ投資商品に比べると乏しい。新しい試みなので過去の実績から判断する訳にもいかない。

将来へのヒントとなりそうな話もある。The DAOへのプロポーザルの一覧には、セキュリティやガバナンスに関する提案がある。The DAOはベンチャーファンドである以前に、DAOトークンホルダーの合意形成およびThe DAO自身の完成度を高めるためのソフトウェア開発のための機関であることを求められているのかもしれない。

いろいろな議論はあるが、コードを根拠に1カ月で1.3億ドルを集めた頭がいい人々がいて、そこにアイデア(プロポーザル)を提案する人々も現れている。この連中が次に何をやらかしてくれるのか気になる。The DAOの運営が今後の仮想通貨やブロックチェーンの動向に大きな影響を与える可能性もある。注目しつつ見守りたい。

最後に大事な話を。今回の記事はDAOトークンへの投資を薦めるものではない。本文を読めばお分かりのように、非開示のリスクが存在する可能性もあるし、投資案件の情報もまだまだ不十分だ。現時点でのDAOトークンは、The DAOのビジョンに賛同し、投票によりガバナンスに参加したいと考える人にとって価値があるものだと考えている。