Laplockは、離席中にノートパソコンの電源ケーブルが抜かれると通知を送るアプリ

Laplockは、TechCrunch Disrupt Londonのハッカソンで生まれたばかりの小さなアプリだ。Martin Saint-MacaryとIvan Maederのふたりが、24時間休みなく働いてMacをロックするための誰にでも使えるアプリを作った。しくみはこうだ。

LaplockはMacのメニューバーに置かれる。インストールして、自分の携帯電話番号かYoアカウントを入力すれば準備完了だ。それ以降、あなたがノートパソコンのふたを閉じて席を外している間に、誰かが電源ケーブルを抜くと、スピーカーからアラーム音が鳴り響き、携帯電話に通知が送られてくる。
通知は、短いテキストメッセージまたはYoで送られる。うまく届かない場合、アプリは電話をかける。この通知を送るために、ハッカーたちはNexmo APIを使用した。

Saint-Macaryは、ベルリンのDisruptハッカソンで次点に入ったチームのメンバーだが、Maederにとっては初めてのハッカソンだった。ふたりは昨日会場で出会い、すぐにこのプロジェクトを開始した。

「2日間フルタイムで何かをやり通すのはすばらしいことだ。普段そんな機会はない」とMaederは言った。

私は彼に少しは寝られたのか尋ねた。椅子をふたつ並べて何時間か眠ったそうだ。「このハッカソンは、10日間にも感じられた」と彼は言った。

結果を見る限り、その努力は報われたようだ ― 私はこの後すぐインストールするつもりだ。アプリはLaplockのウェブサイトで今すぐダウンロード可能で、Mac App Storeにも申請中。

良い仕事をしたふたりには、昼寝を楽しんでほしい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


WhatWineはレストランのワインリストをスキャンして料理に合うワインを教えてくれる

私のワインに関する知識ときては貧弱極まるもので、14歳のときに安ワインをがぶ飲みしてひどい二日酔いになったときからほとんど進歩していない。AllPeersを創業者た連続起業家のCedric MalouxとMatthew Gertnerが開発した新しいアプリ、WhatWine私がソムリエを呆れさせる度合いを減らしてくれるらしい。このiOSアプリはOCRでレストランのワインリストをスキャンし、ワインデータベースのSnoothと対照して、ユーザーが選んだメインの料理に合うワインを選び出してくれる。

「世の中には膨大な種類のワインがある。ワインリストを見て即座にそれに合う料理を判断するのはワインの専門家でないかぎり無理だ。プロのソムリエは資格を取るのに1年勉強しなければならないし、的確なアドバイスができるようになるにはその後何年もの経験が必要だ。ところがたいていのレストランではウェイターが50種類ものワインが載ったリストをテーブルに置いていき、客が悩むにまかせている。われわれのアプリはこの問題を解決しようとするものだ」と私のインタビューに答えてMalouxは言う。

Malouxによれば、このアプリのアイディアを思いついたのは5年前だが、ありとあらゆるフォントで印刷されたワインリストを正しくスキャンする方法を考え出せずにそのまま温めていたのだという。ところが1年ほど前にSalsita SoftwareのCEOで共同ファウンダーでのGertnerにSalsitaを利用すればこの問題が解決できると説得された。

iOSアプリ自体はこの上なくシンプルだ。ユーザーはどのレストランを訪れているかをアプリに(FoursquareのAPIを通じて)教える。もしそのレストランのワインリストをすでに他のWhatWineユーザーがスキャンしていればワンタッチでそのリストが表示される。もし初めてなら、ユーザーはスマートフォンのカメラでワインリストを撮影する。するとWhatWineが解読してデータベースに加える。次にユーザーは料理の種類を13種類の中から選ぶ。WhatWineはリストの中からそれにいちばんよく合うワインを推薦してくれる。

Malouxは、Vivivo、Drync、Hello Vino、Delectableなどライバルのワインアプリの多くが、ユーザーがワインのラベルを撮影する必要があるという点を指摘した。つまりすでにワインを選び、瓶がテーブルに運ばれてきてからでないと情報が得られない。こうしたアプリはユーザーがどんなワインを飲んだか記録するのが主な目的だ。「これに対してわれわれのアプリは料理とワインの相性を判断してユーザーがワインリストからワインを選ぶのを助ける。こういうアプリはWhatwineだけだ」とMalouxは主張する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Facebookに対するヨーロッパのプライバシー集団訴訟が1万1000人を集める

先週の金曜日にヨーロッパ対Facebookというキャンペーン・グループがFacebookを標的とした新たな法廷闘争を開始した。このグループはアメリカとカナダ以外の地域に居住する成人の非商用Facebookユーザーに対し、集団訴訟に参加するよう呼びかけた。

今日、グループがTechCrunchに提供してきた情報によると、この集団訴訟にはすでに1万1000人が参加したという。国別にみると、約半数はドイツ語圏で、これにオランダ、フィンランド、イギリスが続く。

このグループは特に以下のような点をFacebookによる不法行為だと主張している。

  • Facebookのデータ利用約款はEU法に照らして無効
  • 多くのデータ再利用について実質的な同意を得ていない
  • NSAのPRISM監視プログラムに協力した
  • (「いいね!」ボタンなどのツールにより)Facebookサイト外でユーザーの行動を追跡している
  • ビッグデータ処理によりユーザー行動を監視し、解析している
  • 「グラフ検索」の導入は不法
  • 同意を得ずにユーザーデータを外部アプリに引き渡している

この訴訟はFacebookのアイルランド子会社を被告としてオーストリアのウィーンの商事裁判所に起こされた。原告は「ヨーロッパ対Facebook」グループの代表であり、ウィーンを本拠にする弁護士、プライバシー活動家のMax Schremsだ。実際の訴訟活動を行うのはSchremsだけで、他の訴訟参加者はなんら義務を負わない。訴訟のコストはオーストリアの法律事務所、ROLAND ProzessFinanz AGが負担している(勝訴した場合、賠償額の20%を得る)。

賠償金額は1ユーザーあたり500ユーロと意図的に少額に抑えられている。しかし訴訟参加者の数が増えれば巨額になり得る。現在の1万1000人の参加者でも総額は550万ユーロ(7億5671万円)だ。

訴訟に参加するためにはFacebookのアカウントを持っていることと同時に住所、氏名、生年月日(成人であること)などかなりの個人情報が必要だ。また身元を証明するためにパスポートなど政府発行の身分証明書をアップロードする必要がある。こうした面倒な手続が必要であるにもかかわらず、わずか数日で1万1000人もの訴訟参加者が集まったのには驚かされる。

Schremsは訴訟の場所としてFacebookのヨーロッパ本部が置かれているアイルランドではなくオーストリアを選んだことについて「アイルランドはIT産業振興の点からFacebookに過剰に肩入れしているからだ」と述べた。

【後略】

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


漏洩文書は語る:Yelpは「Googleにコケにされている」と思っている

Yelp内部からTechCrunchにリークされた文書によると、Googleは検索結果を操作してYelpよりGoogle+のコンテンツを優先している疑いがある。Googleは米国内で行われた検索でのみ自社サービスを目立たせることで、Googleの反トラスト問題を審議中のEU規制当局の怒りをかわそうとしているとも、同文書は言っている。

情報筋によると、Yelp社内では以下ののスクリーンショットおよび調査結果が、Googleのやり方がフェアでないことを示すために出回っている。Yelpは最近、Googleに対するEUの反トラスト裁定案が甘いことを不服とする正式な異議申し立てに加わったと、New York Timesが報じており、私の情報源によると、これらの文書がその行動を引き起こした。

EU競争政策委員長、Joaquín Almunia

2013年の初めにGoogleは、同様の反トラスト問題で米国FTC[連邦取引委員会]と軽微な和解を成立させ、批判していた人々を失望させた。Google+等の自社サービスにトラフィックを誘導することは、違法と考えられていた。Yelpを含む原告団は、Googleがヨーロッパで容易に解放されることを望んでいない。

現在のEU反トラスト調停案は、ヨーロッパ競争政策委員長、Joaquin Almuniaが推している。これはGoogleが検索エンジンを使って、地元店舗紹介やショッピング情報サービスのライバルを妨げることに対する処罰や罰金を強制しないものだ。罰金は数十億ドルに上る可能性もあった。私はGoogle、Yelp双方からの、問題の文書に関する見解を待っている。

しかし、Googleが具体的にどう検索結果を操作して、ライバルを埋もれさせたのかは全くわかっていなかった。

以下の文書は、それを明らかにしようとしている。

米国からGoogle.comで “hotels sf” を検索した結果

サムネイルをクリックした時、検索結果の右下に表示されるGoogleカード.

まず、同じ検索(”hotels sf”)を、米国内のIPアドレスからGoogle.comで行ったものと、ベルギー国内からGoogle.beで行った2枚のスクリーンショットがある。ベルギーは、EUの反トラスト規制の拠点だ。上の米国Google.comの結果には、画面上方にGoogle+のレビューを含む黒いサムネールリストが目立つように置かれている。

リンクをクリックすると、右下の地図がある位置に、大きなGoogleコンテンツカードが開く。これが画面幅の約半分を占め、Google経由のホテル予約、Google Mapsによる道順案内、店舗のフォローやレビュー、および関連Google検索クエリ等へのリンクが書かれている。サムネールやGoogleコンテンツウィンドウ、Googleキーワード広告等の間に、画面サイズにもよるが、通常のオーガニック検索結果は殆ど表示されない。サムネイルリストは、Googleが調停に応じてから6ヵ月後に米国で登場した。

しかし、同じ検索をGoogle.bg(ベルギー)で行うと、サムネイルも大きなGoogleコンテンツカードも見ることがなく、ピンが何本か立てられたGoogle Mapsくらいだけで、オーガニック検索を邪魔するものは少ない。

米国からgoogle.be(ベルギーのサイト)、あるいはヨーロッパからgoogle.comで、 “hotels sf” を検索した結果

米国内にいる人なら、https://www.google.com/search?q=hotels+sfをクリックすれば米国の結果が、https://www.google.co.uk/search?q=hotels+sfをクリックすればヨーロッパの結果を見ることができる。

私の情報筋によると、Yelpはこれを、GoogleがEUの緩い調停が通過するまでの間、当局の前で検索結果を操作する様子を見せたくないためだと信じている。同筋によると、時にはヨーロッパのIPアドレスからGoogle.comで検索した場合でも、Google+等の自社サービスの売り込みが控え目になることもあり、Googleはヨーロッパで新しい表示フォーマットを意図的に隠そうとしていることが伺える。

「極秘」と書かれた第2の文書には、Googleの検索結果ページでユーザーがクリックした位置に関する、Yelpが実施したユーザー行動調査の結果が報告されている。

これによると、ユーザーがレビューを見ようとして、レストラン名と “yelp” という単語を一緒に検索した時、Googleが最初に返すのは、レストランのウェブページに、Google Placesのレビュー等のコンテンツが付加されたページ、「レビューを書く」ボタン、Google+ぺージへのリンク、およびGoogle Mapsのリンクだったというケースもある。ユーザーが探していたと想定される、そのレストランのYelpページは、2番目に表示された。

Yelp’s study findings

調査によると、サンフランシスコのレストランを探すために、”Gary Danko Yelp” を検索した人の約20%は、レストランウェブサイトのGoogle+が注入された検索結果をクリックしている。これは本来Yelpが得るべきものだと彼らは考えてている。

もちろん、少人数(故に信頼性の低い)の調査における40クリックのうちいくつかは、結果の順番にかかわらずGary Dankoのウェブサイトに飛ぼう決めた人であり、だまされわけではない。Googleがどのように、Google+注入済ウェブサイトをYelpの前に表示していているかを見るには、“Samovar Tea Loung Yelp”を検索すればよい(米国内のみ)。

Yelp’s conclusions and allegations based on the study

Googleの典型的抗弁は、ユーザーが欲しがっている情報を早く渡すためにリンクではなく答えを提供している、というものだ。EU規制当局にとっての問題は、Googleが自社サービスの検索結果をライバルのオーガニック検索結果より優先することが、果たしてユーザーへ親切なサービスなのか、反トラスト法違反なのかである。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


StepUpは、YouTubeビデオを一口サイズに切り貼りするサービス

オンラインで見られているビデオの数は膨大だ。例えばこのデータには驚かされるだろう:ComScoreによると、アメリカでは今年の1月だけで、500億本近くのビデオが見られた。しかし、実はあなたは何も見ていない。

あらゆるデバイスにカメラが付いている今、ビデオを「発見する」ことが、益々難しくなっている。デジタルビデオは増え続け、リミックスに適した時期が来ている。

そこで、英国拠点のスタートアップ、StepUpは、既存ビデオコンテンツを短い断片にして、ループさせたり次々と再生したりするプラットフォームを作った。

ファウンダーのMakoto Inoueは、自らの作品を「YouTubeのためのVine」と呼ぶ。基本となるアイデアは、平均的ネット利用者に、タグや注釈の付いたビデオの断片をつなぎ合わせる機能を提供することだ。長いオリジナルビデオを短縮してハイライト版を作る。あるいは、複数のハイライトをまとめて、消化しやすいサイズにして学習に役立てる。

「オンラインビデオ自身は巨大な市場だが、多くの人たちはさらに多くのビデオを作らせることに集中している。しかし、人々がビデオを消費する方法を手助けしようとする会社は少ない。だから、ビデオが多く作られるほど、われわれが人々にビデオを消費しやすくする方法の範囲は広がる」とInoueは話す。

プロ向けのビデオ編集ツールは既にあるが、Inoueは平均的ビデオ視聴者が使える手段を提供したい。彼はStepUpを「ビデオを一口サイズにするサービス」だと説明する。Vineを思い浮かべるかもしれないが、あれは短いビデオを新たに撮るためのサービスであり、StepUpは、既存のコンテンツを新しいやり方でリミックスさせる。

「Vineはビデオのクリエーションのため。StepUpはキュレーションのため。Vineのおかげで便利なこともある。私が『YouTubeのためのVine』と言えば、小さなサイズに意味がある理由をわかってもらえる」

GIFアニメツールと比較すべきかもしれないが、StepUpはGIFのような一芸ツールではなく、より幅広いプラットフォームだと彼は言う。

StepUpは、便利なビデオ編集ツールとしてだけでなく、自身がビデオコンテンツプラットフォームになることも狙っている。人々が集めたハイライトビデオを検索して閲覧するサイトだ(類似のスタートアップにCoursmosがあり、短編ビデオをモバイルEラーニング用フォーマットとして利用している)。

Inoueは、ビデオの中からおいしい部分を取り出すために特別な訓練はいらないと言う。「特別なスキルもデザインスキルもいらない。必要なのは、どこが重要かを知ってることだけ。だから私はそこに集中した」と彼は本誌に語った。

「そして、われわれの最大の利点は、ダウンロードやアップロードに時間がかからないことだ」

StepUpのビデオセグメントに長さ制限はない(ただしデフォルトはVine風の6秒に設定されている)。ユーザーは元のビデオをStepUpに登録し、”clip” ボタンを押して目的のセグメントを選び、カテゴリー、タグ、メモなどを追加してリミックス版をStepUpプラットフォームにアップロードする。

切り貼りするためのソースビデオは、YouTubeまたはStepUpから取ってこられる。StepUpの閲覧者は、セグメント毎にいいね!をつけたり、ビデオ全体に対してコメントを書いたりできる。StepUpビデオは他サイトへの埋め込みも可能。

直接のライバルとして、Inoueはロシアのスタートアップ、Coubが一番近いとして名前を挙げたが、Coubのビデオが10秒間に制限されているのに対して、StepUpは長さ制限がないので、より充実した内容をユーザーに届けられると話した。

他者のコンテンツを使うことに関する著作権問題は、オリジナルへのリンクを貼ることで回避している ― Pinterestがネット上の既存写真を「ピン」するのと同様。Inoueは、これがStepUpのセールスポイントになると信じており、オンラインニュースやコミュニティーサイトがGIFアニメを埋め込んでいるやり方は、著作権的にグレイであると指摘する。

「そうした目的には私のツールを使う方がずっと簡単だ。GIFアニメと殆ど同じで、サウンドもあり、ワンクリックでオリジナルのビデオに戻れる。記事への埋め込みは、StepUpを使ってもらいたい分野の一つだ」と彼は付け加えs

長いトークやミュージックビデオは、StepUpに特におすすめだと言う。

もっと広く、Eラーニングやエンターテイメントにも利用場面はある。自社で十分多くのユーザーを集めることができたら、発見プラットフォームになる。YouTubeダイジェストのようなものだ。

StepUpの元になったInoueのアイデアはBenkyo Playerと呼ばれ、今も別のラーニングツールとして、大規模公開オンライン講座(MOOC)のビデオライブラリの字幕検索などを提供している。

このEラーニングへの取組みにより、InoueとBenkyo Playerは、アクセラレーター、Bethnal Green Ventures(BGV)の支援を受けた。BGVは、Eラーニング専門から、StepUpというより広いビデオプラットフォームへと会社が転換した後も、支持を続けている。

StepUpという名前は、同名の映画から取ったもので、そこではヒップホップダンサーとクラシックバレーのダンサーがそれぞれのダンスの動きを教えあう ― そのステップ・バイ・ステップの学習プロセスが、StepUpの目指すものだとInoueは言う。

StepUpは今年4月にスタートし、現在月間ページビューは平均1~3万。
BGVからの1万5000ポンドに加え、InoueはNominetからも資金と助言を受け、これまでに計6万5000ドルの早期資金を調達している。現在Inoueは、事業拡大のために10~50万ポンドのシード資金調達を目論んでいる。

Inoueの優先課題はモバイル版StepUpの開発だ。今はブラウザーの制約により、モバイルでは正しく動作しない。その修正が、重要課題だと彼は言う。

ビジネスモデルに関しては、十分なユーザー数を確保できたら、Pinterestスタイルのモデルを考えている ― 断片ビデオにネイティブ広告を挿入することによって、より効果的で邪魔にならない広告手段をブランドに与えられるかもしれない。

他の収益化アイデアとしては、StepUpツールのフリーミアムモデルがある。例えば、一般公開されていないビデオコンテンツの編集や、高度なタグ付けを可能にする。クリップ作業やキャプション付けの自動化も候補の一つだ。

さらにInoueは、ブランドにビデオ分析を提供する可能性も考えている ― StepUpはヒデオコンテンツの中から視聴者が特に好きな部分を識別するのにも使える(セグメントをループさせる回数や、いいね!をつけられた数等)

しかし、どのアイデアも今は構想にすぎない。InoueはStepUpを動かしている単身のファウンダーであり、現在のデスクトップ専用サービスを、モバイル対応にステップアップするための資金を調達する必要がある。しかし、少なくとも核となるアイデアは堅牢な基盤の上にあるので、金はついてくる彼は願っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


ヨーロッパ人の検索結果削除リクエストのためにGoogleが入力フォームページを立ちあげ

EUに住んで、自分に関する古い不適切な情報を検索結果から消してもらいたい、とあなたなら思う? Googleはこのほど、ヨーロッパに住んでいて、自分に関する、自分に削除する権利があると思える情報をGoogleがインデクスした、と信ずる者からの削除リクエストを受け付ける仕組みを実装した。

今朝(米国時間5/30)からあるその、ユーザがデータの削除をリクエストするための入力フォームページは、今月初めにヨーロッパ司法裁判所が下した、Googleは“忘れられる権利”を尊重すべし、という裁定に従うものだ。裁定は、個人からのリクエストに応じてGoogleは、個人データの処理に関するEUのプライバシー指針に違反している“不適切で”古い情報を削除すべし、と言っている。

この裁定は、自分の名前と資産喪失に関する検索結果を検索エンジンから削除したいという、あるスペイン人の訴えが契機となって下(くだ)された。

今月初めには、司法裁判所の裁定に続いて、Googleには検索コンテンツの削除リクエストがいくつか寄せられていることが明らかになった。ただしそこに挙げられていた例は、古典的な三大醜聞ネタともいうべき、再選を目指す元政治家がオフィスにおけるお行儀の悪い行為を報じた記事のリンクの削除を求める; 医師が患者からのネガティブなリビューの消去を求める; 有罪となった児童性愛者が児童虐待写真を保有していたとする判決文の取り下げを求める、といったものだった。

それらは、司法裁判所の裁定の社会的評価を下げるために、Googleが意図的に放ったリークか、とも思われた。

たしかにその裁定は、議論を招(よ)んでいる。とりわけ、Open Rights GroupやWikipediaのJimmy Walesなど、言論と表現の自由を主張する人びとからの反論が多かった。

Walesはそれを、“滑稽”で“異様”と形容し、これでは今後ほとんどの新聞記事が検索にかからなくなる、と指摘した。あるいは、ヨーロッパでは、名もないマイナーな検索エンジンだけが、Googleなどの大手検索エンジンで見つからない情報を表示するかもしれない。裁定に対する批判が示唆しているものは、ヨーロッパではとっくに姿を消したと思われている、検閲という名の悪霊の復活だ。

議論のもう一方の側には、個人のプライバシー権利が座っている。こちらはこのところ、ネットビジネスの繁盛のために大量のユーザデータを収集し利用する企業から、足蹴にされる機会が多くなっている。

昨今の高度に発達した情報技術とそのツールは、データを自動的かつ機械的にふるいにかけるだけなので、人間だけから成る社会では自然に過去という名の背景に溶け込み、消え去ってしまうような情報、たとえば昔々の新聞記事なども、必要以上の長期にわたって公共の目にさらされてしまう。‘忘れられる権利’というおかしな言葉が生まれたのも、このような状況からだ。

裁判所は今のところ、後者の側についている。しかも裁定には即時の強制力があるので、この裁定を根拠に今後為されるリクエストに対応する処理を、Googleは迅速に実装しなければならない。

Googleによると、同社はすでにそういうリクエストを“数千件”受け取っているそうだから、ヨーロッパ人のあいだにGoogleの検索履歴を自分でエディットしたい、という願望があることも事実だ。

裁定に対するGoogleのコンプライアンスは、EUのユーザがEuropean Data Protection Lawに基づいて削除する権利が自分にあると思われる情報を詳細に指定するための、フォームページとして実装されている。

そのフォームには、リクエストの適法性はGoogleが判断する、と書かれている:

この決定の実装においては、弊社が個々のリクエストを評価し、個人のプライバシー権利と、情報の接受と配布にかかわる公共の権利の均衡に努めるものとする。リクエストの評価において弊社は、情報の時代的な古さと、情報に対する公共的関心の有無を独自に判断する。この検討の対象となる情報は、たとえば、金融詐欺、専門的職業人が犯した過失、犯罪に対する有罪判決、公務員の不正な公的行為、などである。

Googleは、上の‘公共的関心の有無’という言葉にも見られるように、裁定に逆らう面も見せている。すなわち、詐欺や過失、公務員の不正行為の記事などは、古い情報であっても、必要があれば見られるという状態の方が適切である、とGoogleは主張しているのだ。

しかしこのような評価はとても難しいから、今後情報取り去りリクエストが増えれば、Googleにとって、手に負えない作業になる可能性もある。おそらく、処理の一部は自動化せざるをえない、と思われる。

なお、情報の削除をリクエストする者は、運転免許証や国民番号証などによって本人性を証明する必要がある。

また、本人の本人性を公的に代理する機関、たとえば本人との正式の契約のある弁護士事務所などが、検索結果からの情報の取り去りをリクエストすることもできる。顧客の某氏のために検索履歴を仔細に調べて、複数の、必要十分な数だけの、削除リクエストをGoogleに提出することが、法律事務所などの手頃な副収入源になってしまうかもしれない。

Googleは本誌TechCrunch宛のメールで、同社はヨーロッパ各国のデータ保護当局と密接に協働していくことのほかに、専門家集団によるGoogle独自の諮問委員会を立ちあげて、評価判断過程の適正化を図る、と言っている。おぉ、これまた、プライバシー専門の弁護士たちの、格好の副収入源になるね。

この件について、Googleは次のように述べている:

“ヨーロッパの裁判所の最近の裁定に従うために弊社は、弊社の検索エンジンからの結果の削除をリクエストするヨーロッパ人のためのフォームページを提供する。裁判所の裁定によりGoogleは、個人の忘れられる権利と公共の知る権利に関して、難しい判断をしなければならない。弊社は専門家による諮問委員会を作って、これらの問題を綿密に検討していきたい。またこの裁定の実装にあたっては、各国のデータ保護当局等とも協働していく”。

アップデート: Googleは、諮問委員会の当面のメンバーの氏名を公表した:

  • Frank La Rue (意見と発言の自由に対する権利の普及と保護に関わる国連特別報告人)
  • Peggy Valcke (University of Leuvenロースクール理事)
  • Jose Luis Piñar (元スペインのDPA, 現在は教授職)
  • Jimmy Wales (Wikipedia)
  • Luciano Floridi (Oxford Internet Instituteで情報倫理哲学を担当)

このメンバーは全員、Googleが選出した人たちなので、かなり‘Google好み’であるかもしれない。

Twitter上には、こんな皮肉っぽい批判も:

[このメンバーは一見多彩だけど、裁判所が言ってる‘均衡’にはあまり配慮してないようね。]

アップデート2: ヨーロッパ司法裁判所の裁定に対するGoogleの今回のコンプライアンスは、データ保護法自体は1995年からあることを考えると遅すぎる、とECの部長Viviane Redingがコメントしている:

“Googleがやっとヨーロッパの法律を尊重するために必要な措置をとったことは、良い展開である。ヨーロッパのデータ保護法は1995年から存在しているから、やっとという形容がふさわしい。Googleにそれをわからせるために、ヨーロッパ司法裁判所の出番が必要だった。忘れられる権利と自由な情報の権利は敵同士ではなく友だちである”。

“この動きは、それまでの実践不可能というおそれが、根拠のないものであったことを示している”。

データの保護は未来のビジネスモデルである。

— Viviane Reding

[pullquote author="Viviane Reding"]Data protection is the business model of the future.[/pullquote]

“法律は、表現の自由とデータの保護とのあいだで正しい均衡を図るためにある”。

“どちらかを優先して他方を犠牲にするのではなく、両方を立てるための正しい均衡が重要である。ヨーロッパ司法裁判所は、二つの権利が矛盾・衝突しないことを明らかにし、その均衡の見つけ方と、忘れられる権利の限界が那辺にあるかを、明確に指示した。また裁判所は、ジャーナリストの仕事はそのまま保護すべきであることも、明らかにした”。

“真のデータ保護を社会に提供していくことに、今後のスタートアップの強力で革新的なビジネス機会がある。法律による保護や、データに関して消費者の力を強くしていくことに、安定的な売上と利益の機会がある。データの保護は未来のビジネスモデルである。この機会をつかもうとする企業の前には、広大なビジネスの未来が開けている”。

[Image by Nana B Agyei; Flickr]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Google検索に個人情報リンク削除リクエストが殺到, EU司法裁判所は藪をつついて巨大怪獣を出した

ヨーロッパの司法裁判所があるスペイン人からの苦情を受理して、彼の名前と資産喪失に関する記事のリンクを検索結果から取り去るよう裁定して以来、この、“デジタルの世界で忘れられたい”という要望がGoogleに殺到し始めている。これらのリクエストすべてにまともに対応することは、Googleにとってたいへんな負荷になるから、もちろん嬉しいことではない。ことの発端となったスペイン人からのささやかなリクエストは、その後起きることの、いわば先例となってしまったのだ。

削除要求の例としては、たとえば、再選を望んでいる元政治家が、オフィスにおける彼の悪行に関する記事のリンクが、彼の名前による検索では出てこないことを求めている。またある医師は、患者からのネガティブなリビューが、やはり彼の名前では現れないことを求めている。児童性愛で有罪になった人が、彼が児童虐待の画像を保有していたなどの詳細判決文の、取り下げを求めている。

これらはすべてBBCがほじくりだした例だが、どれも裁判所が最初の訴訟を持ち込んだスペイン人に有利な裁定を下して以降、寄せられたものだという。WikipediaのファウンダJimmy Walesをはじめ、多くの反検閲団体や言論の自由を守ろうとする団体が、この裁定を批判している。これが判例になった場合、濫用されるおそれがあることと、情報の公開を拒む人たちを一方的に有利にしてしまうことが、批判の根拠だ。

裁判所は、有名人や公的人物の場合はプライバシーの基準が違う、という説を掲げるが、有名人・公的人物の厳密な定義が難しい。しかも、情報の抑圧が公共の福祉に反することも大いにありえる。事実が歴然とした事実で、信頼できる否定情報がない場合は、とくにそうだ。

この裁定に関してGoogleは、ドイツのプライバシー保護当局に対して、一般大衆がそういうリクエストをできるための仕組みを今後2週間以内に実装する、と言っている。つまりGoogleとしては、裁定には不満だがEU各国の暗黙の意思には従わざるをえない、というところだ。

これでもって、Googleに大きな頭痛のタネが増えることは確実だ。すでに、著作権侵犯を理由にリンクの削除を求めるリクエストは毎週数百万件舞い込んでいる。EUだけに限るとしても、すべての個人に苦情申し立てのために手段を与えることは、選別、確認、応答など、ものすごい量の作業負荷としてGoogleに返ってくるだろう。しかもGoogleが大量の訴訟を絶対的に避けようとするなら、事前に大量の検閲を行うだろうから、少なくとも世界最大のWeb発見ポータル(Google)をインタフェイスとするインターネットは、“厳しく検閲されたバージョンの”インターネットになってしまう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Facebookの金融サービス参入が噂される中、TransferWiseが送金10億ポンドを達成

100万ポンドはクールじゃない、だったら何がクールなのか。

Facebookが近々金融サービスに乗り出すかもしれないという報道のさなか、交渉されたと噂されるスタートアップの一つ、ヨーロッパのP2P送金サービス、TransferWiseが、今日大きな里標を通過した。同プラットフォームは、顧客の資金10億ポンドを処理した。これは昨年5月に同社が、シリーズAラウンドでPeter ThielのValar Venturesから600万ドルを調達した時から8倍 ― 1.25億から10億ポンド ― に増えたことになる。

そして、もっと良い物差しは実際の〈売上〉ではあろうが、これがロンドン拠点企業の著しい勢いを示していることは間違いない。これはまた送金の分野が過熱状態にあることの証明でもある。特にヨーロッパでは、無数のスタートアップが銀行や伝統的プレーヤーWestern Union等を破壊しようと狙っている ― だからFacebookが興味を持ったのだ。

つい先月、ダブリン拠点のCurrencyFairが送金10億ドル ― ポンドではなくドル ― の壁を越え、P2P送金サービスのトップだと主張したが、恐らくTransferWiseは異論があるだろう。その同じ月、英語のAzimo ― Facebookの買収先候補で30るとFinancial Timesが報じた ― がシリーズAラウンドで1000万ドル調達し、WorldRemitは、Accel Partnersから4000万ドルの出資を受けた

会話中、TransferWiseの会長・共同ファウンダー、Taavet Hinrikusは、Facebookからアプローチがあったどうかの話題を避けたが、もしFacebookが送金事業に参入すれば、金融サービスがより透明性であるべきことの証になるだろうと語った。

これは、TransferWiseのやり方を示すものでもある。銀行で海外送金する際の隠れた費用を暴露することだ。P2Pモデルを導入することにより、同社のプラットフォームは仲介業者を回避することができる ― これまでに顧客は計4500万ポンド節約していると彼は言っている。

「Facebookのような大物がこの分野に参入することは、全員にとって利益になるのみだ」と彼は言う。

Hinrikusは、そのビジネス可能性全体について熱弁を奮い、TransferWiseはまだ始まったばかりであることを強調した。「たった今世界を見渡しても…送金ビジネスはとてつもなく大きい市場だ。当社はこれまでに10億ポンドを取扱ったが、まだ表面に触れただけにすぎない」と彼は言った。「今は作って大きくすることに集中している。毎日山ほど楽しいことがある」

これは、「売却を考えるにはまだ全く早すぎる」を暗号化したトークかもしれないし、あらゆるTransferWise/Facebook憶測に冷水をかける方法でもある。そして、どのファウンダーも概してこういう話をするものだが、Hinrikusが可能性とスタートアップ人生全体について語る情熱から判断するに、私は彼の言葉を額面通り受け取っている。

この10億ドルの里標に合わせるように、同社はiOSアプリに続いて、Androidアプリを今日公開した。Hinrikusは、モバイルはもう一つの ― かつ異なる ― 機会であると言い、TransferWiseは「モバイルでもっと何ができるか?」を考えているという。

「携帯電話は常にポケットに入っているものであることを考えれば、モバイルでお金を扱えることにはより大きな意味があり、使い方もいろいろある。これまでと違うユーザー体験を与えることができる」と彼は言う。

最後に私は、Hinrikus ― 最近Bitcoin交換所のCoinfloorに投資した ― に、TransferWiseがこの暗号通貨を取扱うことがあるのか、あるならいつなのかを尋ねた。「Bitcoinが何かの役に立つ時が来れば」と彼は言い、エンジニアとしての自分は今もそのテクノロジーに興奮しているが、「まだ本格的応用は考えていない」と語った。

「誰かがBitcoinのキラーアプリを作ることに期待している。もしそうなれば、もちろんわれわれもサポートするつもりだ」とHinrukusは付け加えた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook