家賃支払いを代行、借り手に支払いの柔軟性をもたらすJettyが約25億円調達

家賃を支払う際に賃借人に柔軟性を与えることを目的としたフィンテック企業であるJetty(ジェッティー)は、Citi(シティ)とFlourish Ventures(フローリッシュ・ベンチャーズ)が共同で行う資金調達ラウンドで2300万ドル(約25億3700万円)を調達した。

今回の資金調達により、Jettyの2016年の創業以来の調達額は7800万ドル(約86億500万円)となった。今回の成長ラウンドに参加した他の投資家には、Credit Ease(クレジット・イーズ)とK5が含まれる。これまでの支援者には、Farmers Insurance Group(ファーマーズ・インシュアランス・グループ)、Khosla(コスラ)、Ribbit Capital(リビット・キャピタル)などがいる。

ニューヨークを拠点とする従業員100名のこのスタートアップは、消費者がオンラインや店頭で利用する機会が増えている「今買って、後で払う」(BNPL)モデルに似たサービスを提供することで、賃借人が家賃を滞納しないようにする方法を考え出した。

簡単にいうと、借り手は家賃の支払い期限が来たら家賃を支払うことができ、その月の24日までに、一括または分割でJettyに借りたお金を返すことができるというものだ。その際、金利や遅延金は発生せず、借り手のリスクプロファイルに応じて15〜25ドル(約1650〜2750円)の月額利用料を支払うことになる。借り手が決められた期間内に返済できなかった場合、翌月の借り増しはできない仕組みになっている。

この月額料金は、家賃が期限内に支払われなかった場合に発生する可能性のある遅延金よりも「はるかに低い」と、共同創業者兼CEOのMike Rudoy(マイク・ルドイ)氏は語っている。

「平均的な賃借人の給料の約50%は家賃に充てられています。つまり、家賃は賃借人にとって最大の支出なのです。だからこそ、ペナルティを受けないように、期日までにお金を用意できるような柔軟性を提供する、何らかの金融サービス商品があると期待されているのです」と彼はいう。

この商品は、実際のBNPLというよりも、従来のBNPLの従兄弟のようなものだと彼は語っている。

ルドイ氏は「当社が賃借人に代わって月初に家賃を全額支払うことで、不動産管理者は必要なときに必要な資金を得ることができます。賃借人は24日間、自分のニーズに合ったスケジュールで返済することができます」と説明してくれた。

Jetty Rentを立ち上げるために、同社は大手不動産投資・開発・管理会社であるCortland(コートランド)と提携し、複数の物件の居住者を対象にベータ版を提供してきた。

そして今回、一般向けに提供を開始したということだ。Jetty Rentは、同社のプラットフォームの中で最も新しい製品で「低コスト」の賃借人保険や敷金返還サービスも提供している。

「この会社のミッションは、賃貸住宅をより手頃で柔軟なものにすることです。また、当社は金融サービスのプラットフォームであり、当社が提供するすべての製品は、不動産管理者と賃借人の両方に価値を提供することを目的としています」とルドイ氏はいう。

Jettyは、今回の動きにより、Insurtech(インシュアテック)から金賃業者へと進化しているとルドイ氏はいう。同社は、Cross River Bank(クロス・リバー銀行)を通じてローンを提供している。

ルドイ氏はTechCrunchに対し「Jettyはこれまでインシュアテック企業と考えられてきましたが、私たちはこのビジネスにさらなる信用力と融資力をもたらすために取り組んでいます」と述べている。

ルドイ氏によると、同社が3つの商品すべてを不動産管理会社に提供していることが、同社の競争力の源泉になっているという。

「これは、同じ空間や問題をターゲットにしている他の金融サービス企業とは異なるものです。敷金の代替商品とフレキシブルな家賃商品の両方を同じ屋根の下に持っているのは、当社だけです。そのため、不動産管理者にとっては、統合や導入の観点からも当社を選択することが非常に容易になります。またそれは、賃借人にとっては、複数の異なるサービスを目にしなくてすむということでもあります」と彼はTechCrunchに語っている。

賃借人はすべての製品の代金を支払い、物件管理者は製品の展開におけるパートナーとなる。

現在、同社は全国で220万戸以上の賃貸住宅を運営する不動産オーナーや管理者と契約している。同社のマーケティング担当副社長のAlex Vlasto(アレックス・ブラスト)氏によると、2017年に不動産パートナーネットワークの構築を開始して以来、Jettyは契約戸数が前年比で平均193%の伸びを示しているという。Cortlandの他にも、AMLI Residential(AMLIレジデンシャル)などとも提携している。

Flourish VenturesのマネージングパートナーであるEmmalyn Shaw(エマリン・ショウ)氏は、米国人の70%以上がその日暮らしな生活をしていると指摘している。

「安定した住宅は、彼らが経済的な安定を得るための重要な要素です」と彼女はいう。

ショー氏は「単一のソリューションに留まらず、賃貸保険や敷金の代替、さらには家賃の柔軟性など、豊富で差別化された金融サービスを提供しているのはJettyだけです」と付け加えた。

「独自の消費者インサイト、差別化された価格設定、消費者のロイヤルティ向上により、Jettyは大きな競争優位性を獲得しています。さらに、Cortlandのような一流の不動産管理会社を通じた消費者へのアプローチは、他に類を見ないものです」とショー氏はメールで述べている。

最近になって、賃借人の生活を楽にするための新しい技術を考え出した他のスタートアップも資金を調達している。アパートを「インタラクティブなコミュニティ」に変えることを目指しているスタートアップSugar(シュガー)は、最近250万ドル(約2億7500万円)のシード資金を調達した。また、自動物件検査プラットフォームを構築しているスタートアップのRentCheck(レントチェック)も、先日260万ドル(約2億8600万円)のシードマネーを調達した。

画像クレジット:Indysystem / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

問題があると見做される商品のみを扱う「リスクの高い顧客」に特化した本人認証プラットフォーム「A.ID」

リスクの高い顧客向けに特化したアイデンティティとコンプライアンスのプラットフォームを提供するA.IDは、RobinHood(ロビンフッド)、Square(スクエア)、Snap(スナップ)の元従業員を含むエンジェル投資家から50万ドル(約5500万円)の資金を調達したプレシード投資ラウンドを終了した。

このスタートアップ企業は、従来のフィンテック企業や銀行が対応できない市場、すなわち、問題があると見做される商品のみを扱っている「リスクの高い」顧客の増加に対応しているという。例えば、合法的な大麻産業は毎年67%、暗号資産は46%以上の成長を遂げている。その一方で、銀行口座を持たない人や持てない人の数は日々増加しているが、既存の金融機関はこれらの爆発的な市場に応えられていないように思われる。

A.IDは、金融とコンシューマーテック製品の両方で起業した経験を持ち、これが3度目の起業となるEkaterina Romanovskaya(エカテリーナ・ロマノフスカヤ)氏と、欧州でコンプライアンス・プロダクトを立ち上げた経験を持つ(Justinas Kaminskasジャスティナス・カミンスカス)氏によって設立されたB2B2Cプラットフォームだ。

ロマノフスカヤ氏は次のように述べている。「私たちの最終目標は、信頼を築くことです。エンドユーザーは企業を信頼して個人の機密データを託し、企業はユーザーが違法な行為をしないことを信頼します。私たちはこのような信頼が不可欠であると固く信じており、あらゆる場所で強く待ち望まれていると考えています」。

A.IDによれば、同社のソリューションを利用するクライアントは、顧客の身元確認とオンボーディング、標準的および強化されたデューデリジェンスの実行、ウォッチリストに対する個人や企業のスクリーニング、支払いの監視、コンプライアンスケースの作成と解決、疑わしい活動の規制当局への報告などを行うことができるという。同社のクライアントは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介して統合することもできるし、ウェブアプリケーションとして利用したり、SDKを使用したりすることも可能だ。

現在までに、新興産業向けのデジタルバンクであるArival(アライヴァル)や、クリエイター向けのソーシャルネットワークであるClos(クロス)などがユーザー認証に採用している。

「私は2017年に米国に永住しました。しかし、VCから適切な注目を集めるのに苦労しました。私は女性の創業者であること、移民の創業者であること、技術的な専門知識を持たない創業者であることなど、ベンチャー投資家に不人気ないくつかのカテゴリーに同時に当てはまりました。私が自力で起業した会社は、新型コロナウイルスの影響を受けて倒産するまで有機的に成長しました。私は2020年のロックダウン時を利用してデータサイエンスを勉強し、コードを学び、データエンジニアになりました。そして2020年9月にA.IDを設立しました」と、ロマノフスカヤ氏はTechCrunchに語った。

ロマノフスカヤ氏は、Twitter(ツイッター)でクレムリンを批判する風刺的な政治アカウントを共同設立し、ピーク時には200万人のフォロワーを獲得したことで、ロシアではTwitter有名人となった。2016年には、女性向けにパニックボタンを内蔵したファッショナブルなスマートリング「Nimb(ニム)」で知られる企業を共同設立している。

A.IDの本社は米国カリフォルニア州ロサンゼルスにある。欧州支社はリトアニアにオフィスを構え、EUで事業を行っている。

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画像クレジット:A-id.co

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

企業が「自分で作る」給与計算プロダクトのインフラを提供するZealが約14.3億円調達

Zealの共同創業者であるプラナブ・クリシュナン氏とキルティ・シェノイ氏(画像クレジット:Zeal)

組み込み型フィンテック企業であるZealは、個別化された給与計算製品を構築することができるプラットフォームの開発を継続するために、シリーズAで1300万ドル(約14億3000万円)の資金を確保した。

今回のシリーズAには、Spark Capitalが主導し、Commerce Venturesの他、MarqetaのCEOであるJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏とCROのOmri Dahan(オムリ・ダーハン)氏、Robinhoodの創業者であるVlad Tenev(ウラジミール・テネフ)氏、UltimateSoftwareの役員であるMitch Dauerman(ミッチ・ダウアーマン)氏とBob Manne(ボブ・マンネ)氏、Namelyの創業者であるMatt Straz(マット・ストラズ)氏などの個人投資家が参加した。今回のラウンドにより、同社は2020年の160万ドル(約1億7500万円)のシードラウンドを含め、総額1460万ドル(約16億400万円)の資金調達を行ったことになると、CEOのKirti Shenoy(キルティ・シェノイ)氏はTechCrunchに語っている。

ベイエリアに拠点をかまえる同社の原点は、シェノイ氏とCTOのPranab Krishnan(プラナブ・クリシュナン)氏が2018年に設立したギグエコノミー向けの決済処理スタートアップPuzzlだった。PuzzlはY Combinatorの2019年のグループに参加していた。2人は、何千人もの1099型契約社員(米国の契約労働者の種類)の一部をW2従業員(雇用契約にある一般的な従業員)契約へ移行させたのち、会社の方向を大きく変更する必要があった。

ADPやPaycorなど、大量の給与を自動で処理してくれる給与計算ソフトを探したが、どれもシェノイ氏とクリシュナン氏が求めていた、労働者への日払いや収入の構成要素の細かなカスタマイズなどの機能に対応していないことがわかった。

他の企業が同じ問題に直面しないように、彼らは顧客企業が独自の給与計算製品を構築し、従業員に毎日給与を支払うことができるような給与計算向けAPIを開発することを決めた。従来、企業は時代遅れの他社製給与計算ツールを重ね合わせ、そのための相談・使用料に数百万ドル(数億円)を費やしていた。ZealのAPIツールは、バックエンドの支払いロジスティックを管理すると同時に、給与計算のプロセスをより現代風にわかりやすくし、給与計算の責任を引き受けてくれる」とシェノイは述べている。

現在、企業はZealを利用して大量の従業員に給与を支払い、支払いデータを自社のネイティブシステムに保管している。その上、BtoBのサービスを販売するソフトウェアプラットフォームを提供する企業は、Zealを利用して独自の給与計算製品を構築し、顧客に販売している。

クリシュナン氏は「私たちの使命は、当社の税務・決済技術を米国のすべての給与明細に適用し、米国の従業員が正確、かつ効率的に給与を受け取れるようにすることだ」と語る。

米国には2億人の従業員がおり、年間8兆8000億ドル(約967兆3900億円)以上の給与が処理され、1万1000の税務管轄区では年間2万5000件以上の税法変更が行われている。

一方、シェノイ氏はIRS(米国内国歳入庁)のデータを引用し、中小企業の40%以上が年に1回以上の給与支払いのペナルティを支払っていることを示している。これが、Zealの最新プロダクトであるAbacusグロス / ネット計算ツールの原動力の1つとなった。Abacusは、給与計算の会社が所得税の支払いを遵守しているかどうかを確認するために使用できる。

同氏らは今回の資金調達により、チームを強化し、企業との取引実績を確保するためのコンプライアンス対策を強化したいと考えている。

「当社は、より多くの企業との契約を獲得し始めており、毎日数百万ドル(数億円)を動かしている。この分野は長い間手つかずであったため、多くの企業が迅速に対応できるプロバイダーと仕事をしたいと考えている」とシェノイ氏は述べている。

シェノイ氏は、今後5年から10年の間に、より多くの企業が事細かくカスタマイズできるユーザー体験を提供するモデルへ移行すると予測している。従来はADPのような企業が主流だったが、企業は自社のデータを管理し、顧客が1つのプラットフォームですべての給与関連業務を行えるようなプロダクトを作りたいと考えるようになるだろう。

今回の投資の一環として、Spark CapitalのパートナーであるNatalie Sandman(ナタリー・サンドマン)氏がZealの取締役会に参加した。同社は以前、AffirmやMarqetaといった他の組み込み型フィンテック企業に投資しており、彼女はこの分野にはAPIが切り開くことができる新しい体験があると考えている。

サンドマン氏は、Zenefitsで働いていたときに、給与計算を構築する痛みを自分でも感じていた。当時、同社は同じようなことをやろうとしていたが、接続するためのAPIがなかったのだ。データを転送するためのスプレッドシートは存在したが、1つでも間違った控除があると、それが結果的に税金のペナルティに繋がってしまう。

シェノイ氏とクリシュナン氏はともに「顧客にこだわり」、顧客がどのように給与計算製品を作りたいのかを理解するために、スピードと思慮深さのバランスを保っているとサンドマン氏はいう。

彼女は、新入社員をオンライン型にすることは、従来のスプレッドシートよりも価値をもつ製品に新入社員を組み込むことを意味するような、オーディエンス主導の人事へのマクロ的な変化を見ている。

「APIが賃金や控除の方法に柔軟性を与えることは至極当然のことだと思う。従業員が雇用主への信頼を失うこともある。給与計算は、雇用主と従業員の関係において最も信頼度に影響を与えるエリアであり、人はそのニーズを解決するために透明性と堅牢なソリューションを求めている」とサンドマン氏は語る。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

グラミン日本・SAPジャパン・MAIAがシングルマザーなど女性対象の就労支援・デジタル人材育成プログラムを提供開始

グラミン日本・SAPジャパン・MAIAがシングルマザーなど女性の就労支援・デジタル人材育成プログラム「でじたる女子」を提供開始

グラミン日本SAPジャパンMAIAは8月25日、生活困窮者への経済的自立支援を目的として、デジタルプラットフォームを活用し雇用機会をマッチングさせる就労支援およびデジタル人材育成のためのプログラム「でじたる女子」を開始した。

コロナ禍において、職を失った非正規雇用労働者は2021年7月時点で5万人を超え2020年12月時点より約35%増加(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」)。その中でもシングルマザーの7割が雇用や収入へのマイナス影響を経験しているという(新型コロナウイルス 深刻化する母子世帯の暮らし―1800人の実態調査・速報)。また、就労機会の減少に伴い、実務を通じたスキルアップやキャリアアップのチャンスが失われつつある。

このような社会的な背景のもと、2021年4月より運用を始めた「ソーシャル・リクルーティング・プラットフォーム「SAP Fieldglass」(エスエーピー・フィールドグラス)を活用し、女性のITスキル向上に特化したMAIAのデジタル人材育成プログラム「でじたる女子」を新たに提供することとなった。

同プログラムは、シングルマザーを含む女性を対象に、MAIAが提供するeラーニングを通じて「RPA」「AI-OCR」「CAD」「デジタルマーケティング」などIT関連スキルの習得機会を提供する。その後、グラミン日本とSAPジャパンが提供するSAP Fieldglassを活用し、対象となる女性と提携企業との雇用機会のマッチングを実施する。グラミン日本は、同プログラムを利用する女性向けに、無担保での少額融資、金融教育を提供する。

グラミン日本・SAPジャパン・MAIAがシングルマザーなど女性の就労支援・デジタル人材育成プログラム「でじたる女子」を提供開始

グラミン日本は、バングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス博士が設立した、貧困層に無担保で小口融資を行うグラミン銀行の日本版として2018年設立。「貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会へ」をビジョンに掲げ、貧困や生活困窮の状態にある方に低利・無担保で少額の融資を行い、こうした方が起業・就労によって貧困や生活困窮から脱却し自立するのを支援するマイクロファイナンス機関となっている。

これまでの金融ではカバーされなかった人、例えば働く意欲はあっても今は生活が苦しい母子家庭や若者に、生活資金ではなく、「起業や就労の準備のためのお金」を融資するとしている。

MAIAは、「人生100年時代に、『自分らしく生きる』未来を、共に創造する」をビジョンに掲げ、RPAなどIT人材教育や女性の働き方改革に尽力。ITツールの専門スキルを持つ女性が、様々なIT導入から開発・運用、最終的には企業内での自走化までをトータルでサポートするという。

地方創生事業では、地産地消モデルとしてDX化の推進を図り、地域における女性の雇用創出、地域企業の生産性向上の実現を目指している。

日本のチャレンジャーバンクを目指すナッジが資金調達、次世代型クレジットカード「Nudge」今夏発行予定

日本のチャレンジャーバンクを目指すナッジが資金調達、次世代型クレジットカード「Nudge」今夏発行予定

日本におけるチャレンジャーバンク(新規に銀行免許を取得し金融サービスを提供する企業)を目指すナッジは8月11日、第三者割当増資による資金調達を行うと発表した。引受先は、共同リード投資家のSpiral CapitalとHeadline Asia、既存投資家のジェネシアベンチャーズなど。2月発表の第三者割当増資と合わせて、累計調達額は10億円超となった。また2021年秋ごろの最終クローズに向けて、国内外の投資家や事業提携先との協議を継続する。

2020年2月設立のナッジは、「ひとりひとりのアクションで、未来の金融体験を創る」をミッションとしており、サービス第1弾となる次世代型クレジットカード「Nudge」の発行を2021年夏開始予定という。これは、Android・iOSアプリから簡単に申し込める、使いすぎ防止機能などを備えた提携カード。提携企業や団体が開設する「クラブ」を選んで、カードを使うごとに好きなチームやアーティストを応援できる「クラブ機能」もある。AIを活用した独自の審査手法により。学生や非正規社員、兼業・副業、フリーランスなどでもカード発行が可能になるとのこと。また、利用金額の返済は月に1度の口座引き落としではなく、好きなタイミングでセブン銀行ATM(全国2万5000台以上)から実施可能。

「新たな価値観と行動様式をもつ金融機関のあり方」を模索しつつ、未来の金融体験を作り上げると語るナッジは、現在、チャレンジャーバンクになるために必要な各種事業者登録の準備を進めている。今回の資金調達には、一般向けサービス開始を見据えた関係者向けのクローズドベータサービスの開始と、体制強化を図る目的がある。また、サービス運用体制、顧客ニーズに合わせた機動的な機能増強、サービス開発、人員採用に継続的に取り組んでゆくという。さらに、社外取締役2名を増員して「金融機関に相応しいガバナンスの強化」も行うとしている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:クレジットカード(用語)チャレンジャーバンク(用語)ナッジ(企業・サービス)FinTech / フィンテック(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

パンデミック後のアフリカのモバイルアプリ市場と急上昇するモバイルゲームアプリ利用率を読み解く

パンデミックは世界のアプリ市場に大きな影響を与えている。モバイルアプリに対する消費者の支出は2021年第1四半期および上半期にそれぞれ320億ドル(約3兆5200億円)、649億ドル(約7兆1700億円)となり、新記録を樹立した。

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アフリカの状況は世界のアプリ市場に関するレポートでもあまり言及されないので、正確な消費者支出を求めるのは難しい。それでも、Google(グーグル)とAppsFlyer(アップスフライヤー)が共同で発表した最新のレポートでは、2020年のパンデミック発生以降のアフリカにおけるアプリ市場の状況について、いくつかの重要な情報を読み取ることができる。

このレポートは、アフリカの3大アプリ市場(ケニア、ナイジェリア、南アフリカ)における、2020年第1四半期~2021年第1四半期のモバイルアプリのアクティビティを追跡している。

この3大市場における6000のアプリと20億のインストール数を分析したところ、2020年上半期から2021年上半期にかけて、アフリカのモバイルアプリ業界(主にAndroid)全体でインストール数が41%増加した。ナイジェリアは最も多く43%増、南アフリカ、ケニアではそれぞれ37%増、29%増となった。

ロックダウン期間の数字

アフリカでは2020年3月22日にルワンダが初めてロックダウンを実施。続いて、ケニア(3月25日)、南アフリカ(3月27日)、ナイジェリア(3月30日)でロックダウンが開始された。

2020年第2四半期からは自宅で過ごす人が増え、アプリのインストール数は3か国で20%増加。南アフリカではロックダウンの影響が最も早く表れ、インストール数は2020年第1四半期と比較して17%増加した。

一方、ナイジェリアとケニアにおける同時期のインストール数の増加は、それぞれ2%と9%だった。レポートによると、このような差は、各国の規制レベルの違いにより生じたものだという。南アフリカは規制レベルが最も厳しく、ロックダウンの頻度も高かった。

2020年第1四半期~第2四半期ではゲームアプリが好調に推移し、非ゲーム系アプリの販売が8%増であったのに対し、ゲーム系アプリは50%増となっている。これは、全世界で2020年第2四半期にゲームアプリのダウンロード数が急増(140億ダウンロード)し、過去最高を記録したトレンドと一致する。

アプリ内課金による収益と前年同期と比較した増加率

AppsFlyerによると、最も大きなトレンドとして注目されるのはアプリ内課金による収益だ。2020年第3四半期におけるアプリ内課金による収益の数字は、2020年第2四半期と比較して136%という驚異的な伸びを示し、2020年の総収入の33%を占めた。レポートによれば「アフリカの消費者が小売店での購入からゲームのアップグレードまで、アプリ内でどれだけ消費しているかがはっきりした」という。

アプリ内課金による収益は南アフリカで213%増加、ナイジェリアとケニアではそれぞれ141%、74%増加した。

スマートフォンの利用時間が増えたことから、アプリ内広告収入も前年同期比で大幅に増加し、2020年第2四半期から2021年第1四半期にかけて167%増加した。

先ほど2020年第1四半期~第2四半期で比較したゲームアプリと非ゲームアプリについては、2020年第2四半期と2021年第1四半期との比較では、それぞれ44%、40%増加している。

フィンテックとスーパーアプリ

過去5年間、アフリカのスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資は、フィンテック分野が圧倒的に多いが、それも当然である。フィンテックは、主にモバイルを利用する、大多数の銀行口座を持たない消費者、銀行口座を使いにくい消費者のみならず、銀行口座を持つ消費者にも多くの価値をもたらす。アフリカにおける10億ドル(約1100億円)規模のスタートアップのうち、1社を除いてすべてがフィンテックであるのは、この価値を踏まえてのことだ。

Disrupt Africa(ディスラプトアフリカ)のレポートによると、アフリカのフィンテックは、2017年から2021年の間に89.4%の成長を遂げ、現在、大陸全体で570社以上のスタートアップ企業が存在する。多くのフィンテックはモバイルベースで、アフリカの消費者が毎日利用するフィンテックアプリの数が反映されている。南アフリカとナイジェリアの消費者によるフィンテックアプリのインストール数は、前年比でそれぞれ116%、60%増加した。

AppsFlyerは、フィンテックアプリと同様に、スーパーアプリも増加していると報告している。スーパーアプリ、すなわち「オールインワン」アプリは、銀行業務、メッセージング、ショッピング、ライドヘイリングなど、さまざまな機能をユーザーに提供する。このようなアプリの増加は、大陸ではデバイスが限られることにも起因するが、フィンテックアプリの急増と同様、システム的な銀行口座の使いにくさも一因である。

レポートは「スーパーアプリは、ユーザーが直面する課題を解消し、顧客情報の取得や従来の銀行では実現できないレベルの利便性の提供を可能とする」と報告している。

AppsFlyerのEMEA & Strategic Projects担当リージョナルバイスプレジデント、Daniel Junowicz(ダニエル・ジュノヴィッチ)氏は、本レポートで取り上げられているトレンドについて次のように話す。「2020年来の(パンデミックによる)混乱にもかかわらず、アフリカのモバイルアプリ市場は盛況で、インストール数は増加し、消費者は今まで以上に多くのお金を費やしています。企業が収益を上げる上で、モバイルがいかに重要であるかがわかります」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アフリカアプリケニアナイジェリア南アフリカフィンテックスーパーアプリ

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)