NASAでもリモートワーク、Curiosityチームが自宅から火星探査機を運用中

何百万マイルも離れた惑星に存在する、天文学的に高価なローバーを運転するのは、そもそも極めて困難だ。しかしNASAのCuriosityチームはそれを成し遂げている。

NASAは米国時間4月15日、数百人が参加する重要かつ現在進行系のミッションを直接会わずに管理しなければならないという前例のない状況に、チームがどのように適応してきたかについて投稿した。

「通常、我々は全員が1つの部屋で画面や画像、データを共有する」と、チームリーダーのAlicia Allbaugh(アリシア・オールボー)氏は語る。「今では別々の部屋にいるだけでなく、スケジュールやコンピュータのセットアップも異なる。「私は15ほどのチャットチャンネルを常時監視している。通常よりも複雑な状況だ」。

もちろんビデオ通話も利用され、ときには数ストリームが同時進行する。一方、これまで高性能ワークステーションで行われていた処理は、現在はラップトップとウェブサービスで処理される。複雑さが増したことでプロセスの効率は低下しているが結果は出ている。

3月中旬には、カリフォルニア州パサデナにあるジェット推進研究所(JPL)のオフィスは空となり、別の場所での作業は中断していた。しかし、Curiosityはまだ稼働している。探査者は岩まで走り、サンプルを採取し、チームに確認のメールを送った。そして今も作業は続いている。

「火星は我々を待っておらず、また我々も探査を続ける」とオールボー氏は語る。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

民間初の月面貨物輸送を行うIntuitive Machinesがその着地点と打ち上げ日を決定

民間企業として初めて、NASAに代わって月への科学機器輸送を担当するIntuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)が、着地点とミッションの目標日付を決定した。同社の月面着陸機、Nova-C(ノヴァC)は、Vallis Schröteri(シュレーター谷)と呼ばれる月面最大の谷への着地を目指している。そこは比較的平坦で十分な太陽光が当たり、着地を妨げる大きなクレーターや岩石はない。

Intuitive Machinesは2021年10月21日の打ち上げを目指しており、不可能だった場合のための予備日も決められている。同社はSpaceXと契約し、Nova-CをFalcon 9(ファルコン9)ロケットでNASAのフロリダ州ケネディ宇宙センターから発射する。このミッションではNASAの科学実験機器(有人月面探査を目指すアルテミス計画準備のための情報収集に使用される)だけでなく、商業貨物もいくつか運搬する。

Intuitive Machinsが本ミッションを与えられた商業月面輸送サービス(CLPS)プログラムの主目的は、NASAがアルテミス計画のための準備を行ったり資材を運ぶパートナーを民間企業の中から探すことにあり、そのパートナーがミッションの費用を負担してくれる他の民間組織を集めてくれることにも期待している。現在NASAは、Jim Breidenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官の下、公民連携を積極的に推進する方針を打ち立てており、宇宙の商業化を通じて費用対効果を追求している。

Nova-Cに積載される主要貨物の1つは、高精度自動着陸システムで、着陸機が月面の障害物を回避するために設計されている。これは2024年(NASAのアルテミス計画が延期されなければ)に人間が再び月面に降りるときにも利用される極めて重要なシステムだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAは月面ロボット探査車隊に搭載する超小型科学装置のアイデアを募集

NASAのジェット推進研究所(JPL)は、アルテミス計画やその他の月面ミッションで使用する超小型月面探査車に搭載できる科学装置のアイデアの一般公募を開始した。このアイデアチャレンジは、クラウドソーシング・プラットフォームであるHeroX(ヒーローエックス)にて「Honey, I Shrunk the NASA Payload」(ねえ、NASAのペイロードを縮めちゃったよ)と、31年前の映画「ミクロキッズ」(原題「Honey, I Shrunk the Kids」)のタイトルを現代風にもじった見出しで公開されている。求めているのは、最大で100×100×50mm、または「新しい石けんぐらいの大きさ」の装置だ。

なぜこんなに小さくする必要があるのか?NASAは、かつて大型ロケットと大型オービターと大型着陸船でのみ実現できた科学調査を以前では不可能だった短い周期で、ずっと低コストで行いたいと考えているのだ。人類の月着陸とその後の居住までの長い道のりを整備し、補給ミッションの費用を賄うために「月の資源を利用する実用的で経済的な方法」が必要になるとNASAは話している。地球の周回軌道を回る国際宇宙ステーションへの輸送ですら、すでに高額な経費が掛かっているが、はるか遠いまでとなるとそれは天文学的な数字に膨らんでしまう。

目標は、超小型探査車を早急に運用可能にして、1年から4年以内に月に送り込むことだ。JPLは、国際的コミュニティーの専門知識や経験を借りて、既存の材料と技術でどこまで可能かを探りたいと考えている。今回のアイデアチャレンジは、あくまでコンセプト段階のデザインを募集するものだが(賞金として準備されているのは16万ドル=約1700万円)、長期的にはそれを出発点として実際の技術的パイプラインを構築し、月面探査車にその技術を採り入れ、月に送り込む計画だ。

チャレンジには簡単に参加できる。応募した内容の権利、つまり知的所有権はすべて応募本人に帰属する。ただし、最終選考まで残った際には、アメリカ政府が適切と判断したいかなる目的にもそのアイデアを使えるよう許諾する事実上永久的なロイヤリティーフリーのライセンス契約を、新たに米政府と結ぶことが条件となっている。

もし、宇宙のルンバに搭載できるミニサイズの環境センサーとデータ収集装置のアイデアをお持ちなら、このJPLのアルバイトを除いて、NASAの深宇宙探査計画に貢献できる道はない。もし、そのアイデアが本当に優れている場合だが。

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(翻訳:金井哲夫)

長期間の隔離を終え次期クルーが国際宇宙ステーションに到着

在宅勤務は楽な人もいれば難しい人もいるが、まったく不可能なのが国際宇宙ステーションだ。パンデミックがあろうとなかろうと、次のクルーはそこへ行くしかない。最新ミッションの宇宙飛行士たちは無事に打上げに成功して到着した、ただし、長期の隔離期間の後に。

念のために言うと、ISS乗組員はどのミッションでも、インフルエンザを持ち込むことがないように隔離されている。しかし、新型コロナ流行の中、いまは特別な状況だ。隔離は3月から始まり、乗組員の家族でさえ一緒に過ごすことはできなかった。打上げ時には必要最小限の関係者のみ立ち会いが許された。

私はNASA(米航空宇宙局)に、今回および将来のミッションについて、新型コロナに関連する特別な措置の詳細を尋ねている。

今回のミッション、Expedition 63は現行クルーと約一週間同時に滞在した後に交代する。その間のISSがかなり混雑することは間違いない。

本クルーには通常任務以外に、最初の商用有人飛行ミッションでやってくる宇宙飛行士たちを出迎えるという特別なしごとがある。彼らはSpaceX(スペースエックス)のCrew Dragon(クルードラゴン)カプセルに乗り、Falcon 9(ファルコンナイン)ロケットに打ち上げられてやってくる。このミッションもパンデミックの中、5月打上げに向けて計画通り進んでいる。

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ここ数年のミッションでは常に、ロシアの由緒あるソユーズ宇宙船が使われていた。ソユーズは何十年にもわたって改修され続けてきたが、「繰り返し飛行した実績」のあるテクノロジーであること以上のものはほとんどない。

有人ミッションのために最先端技術の宇宙船を作る取組みは何年も続いたあと、SpaceXとライバルのBoeing(ボーイング)がゴールに向かってホームストレッチを走っている。両社とも再度の遅延に悩まされてきたが、Boeingはほかにもいくつかのトラブルを抱え、打上げ時期は年末かそれ以降になりそうだ。一方のSpaceXは準備完了だ。

この商用有人ミッションは、来月であれ少々遅れるにせよ、何年にもわたる競争の集大成であり、アメリカ製宇宙船で宇宙飛行士が軌道に行くのはスペースシャトル引退以来初めてのことだ(民間宇宙旅行会社のVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は自社の宇宙船を宇宙の端まで飛ばしたが、この有人宇宙船は軌道周回機ではない)。

すべてがうまくいけば、NASAのChris Cassidy(クリス・カシディー)氏、Rscosmos(ロスコスモス)のAnatoly Ivanishin(アナトリー・イワニシン)氏とIvan Vagner(イワン・ワグナー)氏の各宇宙飛行士は、近々ISSで歴史的ミッションを出迎えることになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAが月での採鉱や太陽レンズなど奇抜な研究開発に7億円超の助成金

NASAのInnovative Advanced Concepts(NIAC、革新的で高度なコンセプト)事業は、宇宙探検と観測のための、リスクとそれから得られるリターンがてつもなく大きいユニークなアイデアを求めている。今年の助成金は総額700万ドル(約7億6000万円)で、中にはとても現実的なプロジェクトもある。実際に作れそうなほどの!

そのための助成金はフェーズ1、2、そして3の3段階があり、フェーズ1は助成金の額が12万5000ドル(約]1360万円)、そのコンセプトがデタラメでないことを9か月かけて証明しなければならない。2のフェーズは50万ドル(約5440万円)もらって2年間で概念実証を示す。そして最後のフェーズ3は、200万ドル(2億1760万円)でコンセプトを本物のプロジェクトとして開発する。

その長い歴史の中でも、フェーズ3の助成金をもらったコンセプトがこれまで2つしかなかったことは、NIACの心の広さを物語っている。そのほかのフェーズ3申請コンセプトはどれも、実現性がない、あるいは理論的におかしいとして却下された。今年は3つ目の助成金の合格例で、NASAのJet Propulsion Laboratory(ジェット推進研究所)のプロジェクトであり、2018年に選ばれたときにTechCrunchでも取り上げた

関連記事:From fungal architecture to shape-shifting robo-swarms, here are NASA’s latest moonshots(キノコで家を作ったり形を変えるロボットの大群などNASAの最新珍アイデア集、未訳)

アーティストが模擬的に描いた結果の画像の姿

その「Solar Gravitational Lens」(太陽重力レンズ)プロジェクトは、遠方の外惑星から来る光が、太陽の近くで曲がることをレンズに利用する。チームが2年かけて理論化に努めたその結果は、ものすごく遠方の暗いオブジェクトの高精度の画像を作る。それにより、我々が住む銀河系の隣にある銀河系の惑星を、わずか1画素か2画素の画像で示すのではなくて、100万画素の素晴らしい高精細画像で示せるのだ。

研究者は「このミッションは、居住可能性のある外惑星を詳細に見る唯一の方法なので、すでに一般からの大きな関心と熱気が集まっている。それが、必要な資金を政府や民間が出す動機になるだろう」と書いている

フェーズ2のプロジェクトにも、面白いものがある。例えば、月の恒久的に暗い部分にある氷土を恒久的に明るい部分の高さ数百mの塔で作った電力で採鉱する。あるいは土星の水のある衛星エンケラドスに穴を探すコンセプトカー。そして2018年に見たのは、宇宙服の重い生命維持装置を友達ロボットに移して宇宙飛行士に常時同行させる。

フェーズ1のプロジェクトはかなり多様でバラツキがあり、反物質推進や太陽風航行の最大化などは、まだ科学とは呼べない非現実的なアイデアのようだった。

NIACが助成する事業の完全なリストは公開されている。突飛なアイデアでも、読み物としては面白い。どれも一応、本物のエキスパートの作品なのだ。

画像クレジット: NASA

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAが2022年の月への貨物輸送にMasten Space Systemを指名、同社の月着陸船XL-1と連携

NASAは月面探査プロジェクトのパートナーとして、Commercial Lunar Payload Services(商用月輸送サービス、CLPS)参加企業の中から、カリフォルニア州モハベを拠点とするMasten Space System(マステン・スペース・システム)を指名した。同社はNASAの依頼を受けて、科学以外および技術機器など8つの積載物を2022年に月の南極に運ぶ。

Mastenは、CLPSプログラムの下で月輸送契約を結んだ4番目の会社であり、NASAは2019年5月に、Astrobotic(アストロボティック)、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)、Orbit Beyond(オービット・ビヨンド)の3企業が月への積載物輸送を担当すると発表した。その後Orbit Beyondは契約を取り下げたが、AstroboticとIntuitive Machinesは今も、各社が製作した着陸船を使って来年それぞれの貨物を運ぶことを目標にしている。

今回のMastenとの契約は、CLPSプログラムの他の企業と同じく、月面に再び人間を送り込むNASAのプログラムであるアルテミス計画の一環だ。同プログラムでは恒久的な科学調査基地を設置し、究極的にはそれを火星やその先へと人間を送り込む足場として利用する。NASAはCLPSプログラムを通じて行っているような官民提携によって、月や火星のミッションを可能にするとともに、旅客輸送への商業的関心を引くことに焦点を合わせている。

Mastenの契約金額は7590万ドル(約82億7264万円)で、そこには積載物運搬作業すべてと、同社の月着陸船であるXL-1との連携が含まれている。月に着陸した後も最低12日間作業を続ける必要がある。XL-1が運ぶ貨物の中には、月面温度や放射能の測定とマッピング、水素その他水の存在を示す気体を検知するための機器がある。

Mastenが開発したXL-1は、その革命的デザインで2009年にNASAの100周年記念ノースロップ・グラマン月着陸船 Xプライズ・チャレンジに参加して優勝した。さらにMastenは、何種類もの垂直離着陸(VTVL)ロケットをNASAに代わって開発・飛行させており、テスト機のXaeroもその一つだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXの初期型Dragonカプセルが最後となる20回目のミッションを完了

SpaceX(スペースX)は2012年にNASAに代わって貨物輸送ミッションを開始し、それ以来国際宇宙ステーション(ISS)への補給を続けてきた。そして現在、最初のミッションから使用されているバージョンのDragonカプセルが、米国時間4月7日の火曜日午後に予定どおりISSから帰還して大西洋に着水、引退した。

これはCRS-20こと、スペースXによるNASAのための20回目となる商用補給ミッションが完了したことを意味する。Dragonは3月7日にケープ・カナベラルから打ち上げられた後、3月9日からISSにドッキングしていた。またこれは、ISSの宇宙飛行士が操作するロボットアームの補助によりDragonがドッキングした最後の機会となった。Crew Dragonを含む新しいDragonでは、ISSへのドッキングに自動プロセスが採用される。

今回使用されたDragonは帰還に先立ち、地上の研究者が調査するための実験材料や結果を積み込んでいた。このカプセルは以前にもCRS-10とCRS-16の2回のISSへの飛行ミッションを経験しており、今回の引退飛行は補給船にとってハットトリックとなっている。

スペースXの次のミッションは5月中旬から下旬に予定されている、初となる乗員を乗せたDragonによるISSへの飛行となるDemo-2だ。もちろん貨物輸送ミッションも継続され、次回は2020年10月に暫定的に予定されている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ホワイトハウスが新たな「国際月協定」推進を示唆

国際社会は宇宙や月の資源を収集、利用することに関する規則の制定で何十年も苦闘を続けている。米国をはじめとする宇宙開発国はすべて、最もよく知られた試みである1979年の「月協定」を却下したが、月探査の新たな競争によって、ホワイトハウスは新しい国際協定を受け入れる意志があることを発表するにいたった。

米国時間4月6日に発行された大統領命令でトランプ政権は 、これを「宇宙資源の国および民間による回収と利用の国際的支援の促進」を進める政策であることを示唆した。

命令は何かを強制するものではなく単なる政策の表明なので、第一歩にすぎない。しかしこれは、米国が宇宙資源の利用に関する新たな枠組みづくりを進める意思を示すものだ。

関連記事:NASA details how it plans to establish a sustained human presence on the Moon

ひとたび地球を離れた後、どの法律(財産法、国境協定など)が適用されるかは複雑な問題だ。そうでなくても、この件に関して数多くの法律や規則が、大きく異る宇宙時代とさまざまな形態の冷戦の中で検討、想像されてきた。現在の宇宙ビジネスのブームや、月あるいは小惑星などの近地球天体の差し迫る植民地化を考えると、新たな規則が必要であることは明らかだ。

現状はといえば、月で収集された物、月に持ち込んだ物、他の国と分けあった物などに関する正式な法的見解はないも同然だ。いったい地球のどの機関が論争を仲裁するのか? 商業採掘によって月面の表土が軌道に吹き飛ばされ月の外見が損なわれることをどうやって防ぐのか?

通信衛星が空を埋め尽くすことを巡る規則がないために世界中で怒号が飛び交っているのと同じように、何か手を打つ必要があることは明らかだ。しかし、ルールの範囲さえ問題なる。月における財産権のようなものを検討する必要はあるのか? 問題の複雑さを踏まえると、その規則が目的としている紛争の解決に間に合うのか? 必要ないというならそれはなぜか? だったらいつ考えるのか?

想像できるように、米国が始めようとしていることは恐ろしく複雑な解決困難な問題であるが、遅かれ早かれやらなくてはならない。

そのために、米国は「宇宙資源の国および民間による回収および利用の安全で継続可能な運用に関して、諸外国との共同声明と二国間、多国間の合意を目標に努力」すると、大統領命令に記している。

高官レベルの話し合いがすでに進んでいることは間違いない。さもなければ、宇宙規制への新たなアプローチ指示を公に宣言するという手段を政権が選ぶはずはない。宇宙の商業利用を計画している各国が参加することは間違いないだろう。だがそれは、交渉が単純で簡単であるという意味ではない。

画像クレジット:NASA

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAのレトロなワームロゴが初の有人ミッション用Falcon 9に入る

NASAとSpaceX(スペースX)は、宇宙飛行士を米国の民間ロケットで初めて宇宙へ運ぶため、Crew Dragon宇宙船によるDemo-2の打ち上げにむけ注力している。そしてCrew Dragonを宇宙へと打ち上げるFalcon 9ロケットには、1992年から退役していたNASAのロゴが入った。

1970年代に誕生した「ワーム」ロゴは20年以上もの間、NASAの記念品でしか確認することができなかった。キャップやトレーナー、ステッカー、その他のグッズで見たことがあるかもしれないが、NASAの宇宙船が退役してからは、打ち上げミッションには使用されていない。NASAが現在使用している「ミートボール」ロゴは、実はワームよりも前の1950年代後半にデザインされたものだが、ワームのほうがレトロな感じがする。

このワームロゴは、現在5月上旬から中旬に打ち上げが予定されている、NASAのDoug Hurley(ダグ・ハーレー)飛行士とBob Behnken(ボブ・ベンケン)飛行士を宇宙空間の国際宇宙ステーション(ISS)へと運ぶSpaceXのDemo-2ミッションで、再び大々的に使用される。これは、宇宙飛行士の輸送ミッションでCrew Dragonを定期的に運航するための認定の最後のステップだ。

NASAはフロリダでミッションを準備中しているFalcon 9ロケットの側面に描かれた、赤いワームロゴの画像を共有し、さらに公式ミッションでロゴが使用されるのはこれが最後にはならないだろうと述べている。ただし、ミートボールロゴのファンも心配する必要はない。NASAによると、たとえワームロゴが復活したとしても、ミートボールロゴはまだその主要なシンボルだとしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAが新型コロナ対策のアイデアを全局員からクラウドソーシングで募集

NASAの局内でクラウドソーシングが行われる。世界で最も賢く創造的で才能に恵まれた問題解決集団が、業務の一環として日々現実世界のさまざまな課題を解決している場所だ。だからこそ、進行する新型コロナパンデミックとの戦いにNASAとそのリソースが貢献できる方法を考えるよう、NASAが全局員に呼びかけたことはわれわれにとって大きな励みになる。

NASAは、内部で問題解決に使っているクラウドソーシング・プラットフォームであるNASA@WORKを使用して、新型コロナ危機やそこから生まれるさまざまな問題に対処する新しい方法の創造的アイデアを募集する。すでにNASAはいくつかの方法に取組んでおり、スーパーコンピューターを使った治療方法の研究や、ウイルスを巡って進行中の重要な科学研究の見通しを立てるためのAIソリューションの開発などを行っている。

NASAが局員に向けて行っている公募は、ある程度選択的だ。解決策が最も緊急に必要とされる重要分野を特定し、ホワイトハウスその他のウイルス対策に関わる政府機関と協力して、個人防護具、人工呼吸器、新型コロナウイルスの拡散と伝染を追跡監視する方法などの不足や欠落を補うためにNASA局員の取り組みを集中させるかどうかを判断する。これは、NASAがその他の新型コロナ問題の解決策を聞こうとしないという意味ではない。最も緊急に必要だと判断したのが上記分野だというだけだ

この試みに生産的な時間制約を加えるべく、NASAは上記分野に関するアイデアをNASA @ WORKを通じて4月15日までに提出するよう求めている。その後、何が最も実現可能かを評価し、実現に必要な資源を割り当てるプロセスがある。結果としてつくられる製品やデザインはすべて「オープンソース化してどの企業も国も利用できる」ようにすると同局は言っている。ただし、そこで使われるテクノロジーによっては誰にでも利用可能とは限らない。

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXの有人運用1号機にJAXAの野口聡一宇宙飛行士が搭乗

SpaceXは宇宙飛行士が搭乗する最初のフライトDemo-2の準備に取り組んでいる。厳密にいうと、これはCrew Dragonカプセルが正規ミッションとして飛行開始することが正式に認可される前に必要とされる最後のデモミッションとなる。

画像クレジット:SpaceX

Demo-2ミッションの範囲は多少調整され、宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンキン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏が、国際宇宙ステーションで実際にシフト任務を行うことになった。それでもCrew-1が、SpaceXの有人型宇宙船の公式な最初の運用ミッションであることに違いはない。今回、そこに誰が搭乗することになるのか、さらに詳しい情報を得ることができた。

日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、JAXA所属の宇宙飛行士、野口聡一氏がCrew Dragonミッションが正式に運用を開始し次第、その1号機に搭乗すると発表した。またJAXAは3月31日に、野口氏がISSに向かうためのトレーニングを開始したことも明らかにしている。同氏はこれまでに2回、別のミッションでISSに滞在した経験を持つ。最近ではロシアのソユーズで宇宙に向かい、2009年から2010年にかけて滞在した。それ以前にも2005年にはスペースシャトル・ディスカバリーに搭乗し、宇宙ステーションの組み立てに携わっている。

SpaceXとNASAは現在、Demo-1を準備している。すでに報じられているようにDemo-1には、2人のNASAの宇宙飛行士が搭乗する。現在の計画からスケジュールに変更がなければ、5月中旬から下旬には発射される予定だ。それが成功すれば、乗組員4人を運ぶことができるCrew-1のミッションが、2020年の後半には開始される予定となっている。

Crew-1には野口さんのほか、NASAの宇宙飛行士としてMike Hopkins(マイク・ホプキンス)、Victor Glover(ビクター・グローバー)の両氏、そしてNASAが米国時間3月31日にチームの新メンバーとして発表したShannon Walker(シャノン・ウォーカー)氏が搭乗することになる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAのルナ・ゲートウェイ宇宙ステーションへSpaceXの新型DragonXL宇宙船が物資を輸送

NASAは3月27日、ルナ・ゲートウェイへの機器の材料、貨物、補給品の輸送を請け負う初の宇宙物流企業としてSpaceX(スペースエックス)を選定したことを発表した。つまりSpaceXは、月軌道を周回して、将来の有人月面ミッションの基地となるプラットフォームと地球との間を往復して物資を輸送する必要が生じたときに、NASAが業務を発注する企業のひとつに加えられたわけだ。

今回の契約により、SpaceXは事実上、月に人類を常駐させる科学調査基地の設置を目指すNASAのアルテミス計画で重要な役割を果たすだけでなく、さらに火星へと足を伸ばそうとするNASAの計画にも参加できることになった。ゲートウェイの建設はこれからだが、NASAでは新しい専用の宇宙船でゲートウェイに貨物を運搬し、6カ月から12カ月滞在するというミッションを複数計画している。

トータルの契約金は、契約全体で最大70億ドル(約7500億円)に達し、1つの企業につき少なくとも2つのミッションが保証される。他の企業もこれから指名されるはずだが、SpaceXは契約に基づいて選定された最初の企業となった。なお同社は、地球の軌道を回る国際宇宙ステーションへ同社のDragon(ドラゴン)輸送船を使った通常の物資の輸送については契約済みだ。

SpaceXは、このミッションに使用する予定のDragon宇宙船の派生型DragonXLを打ち上げることにしている。DragonXLは、月の軌道を回るゲートウェイ宇宙ステーションに5トン以上の物資を輸送できる。打ち上げには、SpaceXが保有しているFalcon Heavy(ファルコン・ヘビー)ロケットが使われる。

実際に最初のミッションが打ち上げられるまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。最初のゲートウェイ用モジュールを載せて打ち上げられるのが早ければ2022年となっているものの、ゲートウェイがある程度のかたちになり定期的な貨物輸送が始まるのは、そこからほんの数年後だろう。

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(翻訳:金井哲夫)

NASAとSpaceXは新型コロナに屈せず、5月中旬から下旬に初の有人打ち上げを予定

NASAとSpaceXは3月18日、商用有人打ち上げDemonstration Mission 2(Demo2、デモンストレーション・ミッション2)のメディア認定招待状を発送した。商用有人計画で初めて、人を宇宙に送り込むミッションだ。この招待状には現在公表されているスケジュールが記されているが「5月中旬から下旬より早くなることない」という。

今年の初め、打ち上げウィンドウは5月に決定したが、宇宙船と乗員の準備の進捗に応じてSpaceXとNASAは、早ければ4月、遅ければ6月下旬に変更する可能性があると伝えていた。SpaceXは、このミッションで使用するCrew Dragon(クルー・ドラゴン)の準備を早々と整えているとのことだが、NASAはこのデモミッションで国際宇宙ステーションに送られる飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏の宇宙滞在期間を延長するなど、ミッションの内容を変更した。

SpaceXの宇宙船で宇宙飛行士が打ち上げられるのは今回が初めてであり、商用有人計画で人を乗せて飛行するのも初めてとなる。これを通じてNASAは、民間のロケット打ち上げ企業と協力して、人を宇宙に送り込む能力を再び米国の国土に取り戻そうと頑張っている。現在、国際宇宙ステーションの行き帰りは、ロシア連邦宇宙局ロスコスモスとの協力関係により、すべてロシアのソユーズ宇宙船で行われている。

今のところNASAもSpaceXも、Crew Dragonによる初の有人ミッションの予定が、新型コロナウイルスのパンデミックによって変更される心配はしていないようだ。今回のNASAからの招待状は、現時点でミッションが健在であることがもっとも詳細にわかる確認証であり、打ち上げウィンドウまでの日程は、COVID-19の感染が米国で拡大し厳しい社会的距離の確保や隔離措置が実施される以前のものから変わっていない。

最近になってNASAは、すべての施設の有事対応段階を「ステージ3」に引き上げた。これにより、ミッション関連の仕事のために実際にオフィスに出向く必要のある人間を除き、すべての従業員がテレワークを要請される。NASAのエイムズ研究センターは、すでにステージ4にまで引き上げられた。同センターが位置するカリフォルニア州の郡政府から、自宅待機命令が出されているためだ。この命令により、施設は閉鎖されテレワークのみが許可される。

3月18日にメディア向けに発送された招待状でNASAは「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の状況を積極的に監視」し、「ミッションの進行やメディアの取材に影響する事態が発生した際には準備ができ次第、最新情報をお伝えします」と書かれている。さらにNASAは、ハーレー氏とベンケン氏の健康を維持するため、打ち上げ前に規定されている自宅隔離措置を実施しているが、それに加えて体調を崩さないよう特別な予防対策も講じているとも伝えている。

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(翻訳:金井哲夫)

NASAも新型コロナウイルスを考慮して宇宙飛行士の健康管理対策を強化

NASAは標準的なプロトコルとプロセスを補強して、最初の民間乗員宇宙飛行プログラムに参加する宇宙飛行士の健康管理を徹底しようとしている。COVID-19の可能性から保護するように設計された追加の対策を実施すると、Business Insiderが報じた。NASAの標準的な慣行では、すべての宇宙飛行士に対して、地上でのあらゆる病原体に感染する可能性を下げるよう、飛行に先立って対策が施されることになっている。そして現在、特に新型コロナウイルスのリスクに対処するため、特別な措置が講じられている。

Business Insiderのレポートによれば、民間の乗務ミッションに先立つ標準的な2週間の検疫に加えて、追加の対策が実施される。今のところ4月、5月、6月のいずれかに予定されているSpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船への乗船に際して行われることになっている。そこには、表面洗浄と消毒、社会からの隔離、手洗いなどの方策について、さらなる強化が盛り込まれている。これらはすべて、CDC(米疾病予防管理センター)が推奨する一般向けの予防策に沿ったものとなっている。

またNASAは、宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏やBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏がフライトに先立って訓練を受けている施設の見学ツアー開催を止めている。さらに、潜在的なウイルスへの曝露を制限するため、NASAのスタッフに対しても、何らかの病気の可能性に気づいたら、自宅待機するよう指導している。

宇宙に旅立ったり、そこで仕事をする人の健康は間違いなく最も重要だ。NASAの手順には、実際のフライトに至るまでの広範な検査と監視が含まれており、ウイルスなどの招かれざる客を宇宙空間に連れて行かないようにするという点において優れた実績を誇っている。新型コロナウイルスは、こうしたNASAの予防策に対して新たな課題となる可能性もある。とはいえ、COVID-19はミッションに参加する宇宙飛行士がこれまでどおり回避しようとしている一般的なウイルス性の疾患に対する健康管理と、機能的に大きく異なるものにはならないだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAの月ロケット打ち上げは計画から2年遅れで予算オーバーとの内部報告

2024年に人類を月に立たせるというNASAの意欲的な計画は間近に迫ってきた。と同時に、同局の監察総監室が報告した現在の予算超過と遅延から察するに実現性が遠のいている。

「SLS(Space Launch System、大型打ち上げロケットシステム)計画のコストとスケジュールの管理に苦戦を続けるNASAの状況は、同局の(有人月飛行計画である)アルテミス計画の意欲的な目標に影響する恐れがある」と米国時間3月10日に公開された報告書には書かれている。「アルテミス1号のSLS(ロケット本体、ICPS、ブースター、RS-25アダプテーション、RS-25リスタート)の開発建造における主要な契約のそれぞれが、数々の技術的困難、性能の問題、仕様変更に直面し、20億ドル(約2070億円)の予算超過と少なくとも2年のスケジュールの先送りという結果を招いた」とのことだ。

とはいえ、もちろん、2024年の予定が2026年にずれ込むわけではない。遅れているのは、NASAがアルテミスの有人ミッションに使おうと計画している次世代型の重量級ロケットSLSの最初の試験機だ。最初の打ち上げは、今のところ2021年の春の予定になっている。当初の予定からは2年以上が経過している。

関連記事:NASAのSLSロケットが月探査ミッションのマイルストーンを通過

こうした遅延を考慮して、SLS計画は2010年にスタートし、2014年には設計段階を終え、その後にテストと建造のための契約が交わされた。SLSの完成時期は早ければ2016年というスケジュールが浮上したが、実際にNASAが公式に発表したのは2018年後半という日程だった。だがそれも何度か後ろにずれ込み、直近では、今年の11月の打ち上げはもはや約束できないと1月にNASAが発表している。

しかもこうした、NASA、契約業者、孫請け業者のそれぞれに存在する遅延と難しい問題は財政を複雑化し、当初の予算はとっくに突破してしまった。報告の手法にもよるだろうが、これまで達成されたものの経費は当初の予測を超えていたとも言える。

報告書には「全体で、2020会計年度末までに、NASAはSLS計画に170億ドル(約1兆8000億円)以上を費やすことになる。その中には、60億ドル(6300億円)近い使途不明金やABCの一部だと説明されるものがあった」と記載されている。ABCとはAgency Baseline Commitment(局の最低基準契約)のことで、基本的に予算を確保するために用いるとNASAが米国議会に伝えていたものだ。

関連記事:NASAの2021年予算要求は有人月面着陸に約3625億円、月面資源開発に約472億円

月着陸計画を進めるといった大きな冒険は、最初に考えていたよりも難しく費用もかかるなどということは、意外でもなんでもない。アルテミス計画の最終目標は、米国が再び安全に適切な時期に月に立って、James Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)局長が好んで言うように「そこに居住する」ことにある。2024年の目標はあくまで希望であって、エンジニアも宇宙飛行士も、政治的な日程を満足させるために急ぐべきではない。なにより命が大切だ。

監察総監室は、NASAと契約業者が時間と経費に責任が持てるよう、出費をより正確に記録する方法について新しい提案をしている。だが遅延が再三にわたり警告されるということは、言葉には出さないまでも、2024年に月に着陸するという目標がほんの数カ月遅れるだけであって、計画が破綻したわけでもなんでもないことを示しているように思える。

像クレジット:NASA

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(翻訳:金井哲夫)

スペースXがDragon貨物船を使った最後のISSへの打ち上げをライブ配信

SpaceX(スペースX)は米国時間3月6日の夜、国際宇宙ステーション(ISS)への20回目の補給ミッションを打ち上げる。今回のミッションは、これまでのNASA向けミッションのすべてで使われてきたDragon貨物船を使用する最後のミッションとなる。2020年夏からは、その後継機が登場する。

今夜のミッションでは、これまでどおりISSにさまざまな物資や実験機器、新しいコンポーネントを輸送する。打ち上げは太平洋時間の午後8:50に予定されており、上の動画でその様子を確認できる。

Dragon貨物船とFalcon 9の第1ステージは、どちらも以前のミッションで使用されたもので、Dragon貨物船は今回が3回目の打ち上げで、今回が最後となる。

Dragon貨物船はCrew DragonとCargo Dragon(名称に2がつくこともある)という2機種の後継機を生み出し、当然ながら前者は最大の注目を集めている。しかし、改良されたドラゴン貨物船はより多くの利用を見込んでいる。

新旧のDragon貨物船の正確な違いは完全には明らかになっていないが、アビオニクス、電力システム、搭載ソフトウェアそして全体的な形状に大きな変更があることが判明している。当然のことながら、貨物船には生命維持装置や脱出システムは搭載されておらず、人員の輸送は意図されていない。

新しく改良されたCargo Dragonでは、最初の商用ミッションが2020年8月に予定されており、姉妹機のCrew Dragonもすべてが計画どおりに進めば、その前に打ち上げられるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAがスタートアップを含む民間17社と都市空域交通の変革に取り組む

NASA(米航空宇宙局)は、スタートアップ企業や一般企業17社と共同で、Urban Air Mobility Grand Challengeを(アーバン・エア・モビリティ・グランドチャレンジ)企画し、都市部の移動手段を変える計画を推進する。

「すべて実現した暁には、この新しいUrban Air Mobility(都市空域交通)システムによって、不便な地域や遠隔地域への宅配、タクシー、先端航空医療サービス、貨物輸送などが可能になる」とNASAは声明で語った。

「Grand Challengeシリーズには、新しい交通手段や空間管理技術を開発する企業が集結する」とNASAは説明する。「この一歩と共に取り組みを続けることで、小型無人航空機が都市や郊外を飛び回ってさまざまなサービスを提供するという長年期待されてきた光景を早く実現できると期待している」とNASAの航空学副長官であるRobert Pearce(ロバート・ピアース)氏が声明で語った。

企業を集めて共同作業するだけでなく、規制当局にも技術情報を提供し、協力して早期に空域交通を大衆化する方法を探ろうとしている。同氏は声明で「FAA(連邦航空局)との提携は、今後数年間に予定されている一連のグランドチャレンジを通じて、業界にとって有効かつ安全な結果が生まれるために不可欠だ」と語った。

契約の締結は、2022年に行われるチャレンジ企画の公式コンペに向けての最初の一歩だ。今年中には、予備的な技術テストが行われる。「これはグランドチャレンジ1に向けてリスクを軽減するための1手段とわれわれは考えている」とNASAのグランドチャレンジ責任者、Starr Ginn氏は言う。「技術テストでは、米国の航空機会社と空域管理サービス会社が経験を積むために、NASAも飛行テストに使っているシミュレーション環境で自社のシステムを実地運用できる」と同氏。

チャレンジのための提携には以下の3つのカテゴリーがある。

  • 開発用飛行テスト:チャレンジで飛行する航空機を提供する産業パートナー。
  • 開発用空域シミュレーション:NASAが設計した都市交通用空域シミュレーション環境で交通管理サービスをテストする企業。
  • 航空機メーカーとの情報交換:このカテゴリーのパートナーは、自社の航空機に関する情報を提供して、NASAが2022年のグランドチャレンジで実施される飛行活動に向けて準備ができるよう、密に共同作業を行う。

グランドチャレンジの管理は、都市空域交通を管理するためにNASAの航空研究ミッション局(ARMD)内に設立されたAdvanced Air Mobilityプロジェクトを通じて行われる。チャレンジ企画に参加する企業は以下のとおり。

  • Joby Aviation(ジョビー・アビエーション、カリフォルニア州サンタクルズ)
  • AirMap(エアマップ、カリフォルニア州サンタモニカ)
  • AiRXOS(バージニア州シャンティリー)
  • ANRA Technologies(アンラ・テクノロジーズ、バージニア州シャンティリー)
  • ARINC(エーアールインク、アイオワ州シーダーラピッズ)
  • Avision(エービジョン、カリフォルニア州サンタモニカ)
  • Ellis & Associates(エリス&アソシエーツ、カリフォルニア州ロサンゼルス。同州パロアルトのLacuna Technologiesの完全子会社)
  • GeoRq(ユタ州ホラデイ)
  • Metron Aviation(メトロン・アビエーション、バージニア州ハーンドン)
  • OneSky Systems(ワンスカイ・システムズ、ペンシルベニア州エクストン)
  • Uber Technologies(ウーバー・テクノロジー、カリフォルニア州サンフランシスコ)
  • The University of North Texas(ノース・テキサス大学、テキサス州デントン)
  • Bell Textron(ベル・テクストロン、テキサス州フォートワース)
  • The Boeing Company(ザ・ボーイング・カンパニー、バージニア州シャンティリー)
  • NFT(カリフォルニア州マウンテンビュー)
  • Prodentity(プロデンティティー、ニューメキシコ州コラレス)
  • Zeva(ゼバ、ワシントン州スパナウェイ)

画像クレジット:CurvaBezi

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXが謎の金属小惑星「プシケ」探索ミッションの打ち上げを126億円で受注

SpaceXは、NASAが2022年に計画しているPsyche(プシケ、サイキ)と呼ばれる鉱物資源豊富な小惑星の探索ミッションの打ち上げ契約を勝ち取った。米国時間3月1日、NASAは打ち上げ作業を含む同ミッション関連業務を1億1700万ドルドルで契約したことを発表した。この規模のミッションとしては異例の低価格だ。

PsycheミッションはFalcon Heavyロケットを使用し、ケープカナベラル空軍基地の発射施設39Aから打ち上げられる。火星と木星の間に位置する小惑星Psycheは、原始惑星のニッケル・鉄のコアからなり、太陽系最初期の構成要素の断片であると見られている。

NASAはこのミッションによって、Psycheの原始惑星物質の分析を通じて地球型惑星創成の歴史を解明するヒントを得られることを期待している。

関連記事:NASA moves to final planning stages for mission to explore 16 Psyche’s full-metal asteroid

NASAのPsycheミッションには、2つの二次ミッションがある。大気流出・プラズマ加速・力学探査機であるThe Escape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers(EscaPADE、エスカペイド)は、火星の大気を研究し、ミッションJanus(ヤヌス)は二重小惑星を研究する。

NASAによると、フロリダ州の同局ケネディ宇宙センターの打ち上げサービスプログラムがSpaceXの打ち上げを管理し、ミッションはアリゾナ州立大学が指揮する。

「この新しいミッションフェーズに移行することで、我々はPsycheの秘密解明に近づく大きな一歩を踏み出すことになる。この謎にみちた巨大金属小惑星はわれわれにとって世界を意味している」とアリゾナ州立大学テンピ校の主任研究員であるLindy Elkins-Tanton(リンディ・エルキンス・タントン)氏が、NASAが本ミッションを承認した発表の声明で語った。

カリフォルニア州パサディナのジェット推進研究所が、システムエンジニアリング、統合、テスト、ミッション運用を含むミッション全体の管理を担当する。宇宙船の推進筐体は強力なソーラー電気装置で、Maxar Space Solutionsが提供している。

この発表は、PsycheミッションのフェーズD、E、および発射前のフェーズであるフェーズFに向かう道を開くものだ。昨年TechCrunchは以下のような記事を書いている。

フェーズDは2021年初期に始まり、2022年初期の打ち上げ計画に向けた宇宙船の最終制作およびテストが行われる。

フェーズEは、Psycheの実験機体が宇宙空間に到達した時点で開始される、とNASAは言った。ここでは同ミッションの深宇宙探索および科学研究のためのデータ収集が行われる。NASAはPsycheが2023年(Elon Musk氏が最初に人間宇宙飛行士が到達すると予言した年の2年前)に火星をかすめ飛んだあと、2026年1月31日にミッションの名を冠した小惑星に到達すると予測している。

Psyche宇宙船に搭載する機器には、小惑星に残された磁界を検出、測定するための磁力計も入っている。多重スペクトル画像装置は、高解像度画像を撮影して小惑星の組成を決定する(どれだけが金属でどれだけがケイ酸塩か)。宇宙船にはガンマ線および中性子線分光計も搭載され、小惑星の元素組成の検出、測定、マッピングを行うほか、深宇宙通信のために作られた新しいレーザー装置もある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

映画「ドリーム」のモデル、NASAの数学者キャサリン・ジョンソン氏が101歳で死去

Katherine Johnson(キャサリン・ジョンソン)氏。1950~60年代に人類を初めて月に送ろうとしていたNASAにおいて、偏見と戦いながら貢献した数学者が101歳で死去した。ごく最近、彼女と同僚たちの功績を描いた映画 「Hidden Figures(邦題ドリーム)」で有名になったが、ジョンソン氏は最後までひたすら「自分の仕事をしていた」。

ジョンソン氏の物語を知らない人には、Margot Lee Shetterly(マーゴット・リー・シェタリー)氏の本を読むか、映画を見るのが一番だろう。出来事や人物の描写に現実と異なる部分はあるが、三人の主人公を多面的に描いたすばらしい作品だ。NASAも特設の追悼ページを作って数々の歴史的記録や物語を紹介している。

ジョンソン氏と2人の同僚は、半世紀後の現在も白人男性支配が残る業界に乗り込もうとする有色人種の女性として、人種差別と性差別との苦闘を常に強いられていた。ジョンソン氏は、NASAの同僚は親切でプロ意識を持っていたと常に語っていたが、組織的で根深い偏見があらゆる場面で彼女たちを襲った。

映画が公開され称賛を得ると、ジョンソン氏は突如として名声と困惑に見舞われ、有名になることはうれしいが自分は与えられた仕事をしてきただけだと言い続けた。2015年にObama(オバマ)大統領による自由勲章の受章は誰もが待ち望んだ祝福だった。

しかしジョンソン氏は自分だけが大きく取り上げられることを懸念していたのかもしれない。似た環境にいながら必ずしも成功せず人目を引くこともなかった人たちがいたことを、彼女は誰よりもよく知っていただろう。それでも、John Glenn(ジョン・グレン)宇宙飛行士が飛行の前に、機械式コンピューターの計算結果を「the girl(あの子)」、すなわちジョンソン氏が手計算で確認するよう要求したエピソードが示すように、彼女たちの仕事は不可欠であり、かつ表にでなかった。

ジョンソン氏の当時の同僚、Mary Jackson(メアリー・ジャクソン)氏とDorothy Vaughn(ドロシー・ヴォーン)氏をはじめとする女性たちは、人種差別と性差別の時代精神と戦っただけでなく、米国におけるおそらく歴史上最大の業績であるアポロ計画を純粋に手助けするとともに、ほかの産業でも発明や問題提起に力を発揮した。

ジョンソン氏の卓越した才能と人物像はあまりにも長い間知られることがなかった。もし彼女が大衆文化に注目されることがなければ、その功績はごくわずかな歴史家の間にしか知られることはなく、我々にとって大きな損失だった。現代の 「hidden figrures(隠された人物)」は誰で、どこにいるのか? もし目にしたら、我々は見分けることができるのだろうか?

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

JAXAの火星衛星の砂持ち帰り計画に青信号、NASAも今年火星ミッションを予定

JAXA(Japan Aerospace Exploration Agency )の火星探査ミッションに青信号が出た。このプロジェクトは火星の衛星に探査機を着陸させサンプルを採取して地球に持ち帰るという大胆なものだ。所管の文科省の承認を受けので、プロジェクトはいよいよ開発段階に進む。

画像提供:JAXA

MMX(Martian Moons eXploration) と名付けられたこの火星探査プロジェクトでは三菱重工が開発中のH 3ロケットにより2024年に探査機を打ち上げる計画だ。H-3ロケットは2022年の後半に最初のテスト打ち上げが予定されている。 断裁機は火星の2個の衛星フォボスとダイモスの双方を観察するこれらの衛星はどちらも地球の月に比べてはるかに小さく、表面の形状も不規則だ。

The MMXでは火星の衛星双方を観測するが、Mars Landerはフォボスに着陸する。探査車を火星の衛星に着陸させる計画はこれが世界で最初だ。 探査車はJAXAがドイツ(DLR)とフランス(CNES)宇宙開発機関と協力して開発する。

この計画が世界的に注目されているのは、フォボスの表面で資料を採取し、地球に持ち帰るという部分だろう。つまり火星往復のミッションであり、地球帰還は2029年が予定されている。

一方、米国ではNASAも火星からサンプルを持ち帰る計画を進めている。TechCrunchが昨年報じたMars 2020プロジェクトでは6輪のローバー探査車を火星本体に着陸せる計画で、打ち上げは今年の後半になる。

 

画像提供:NASA

これらの計画は来たるべき有人火星探査や植民化のために欠かせない重要な段階となる。フォボスは火星に近い低軌道を周回しているうえに重力が極めて小さく離陸が容易だ。このため本格的な火星探査のために優れた基地となると期待されている。NASAのArtemis(アルテミス)計画の最終目的は有人火星探査だが、その準備としてまず地球の月に恒久的施設を設置する考えだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook