新型コロナ時代に企業はいかにオフィスを再開させるのか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がパンデミックとなって数カ月が経つ。規模を問わず企業はオフィスを再開するのか、そうだとしたらそれはいつになるのか、再開に向けどのような措置が必要になるのか、など多くの疑問がある。今後の見通しはかなり不透明で、不動産業界の人間でもすべてには答えられない。しかし彼らは、次に何が起こるか知識や経験に基づいて推測し始めている。

商業用不動産サービス大手のCBREが5月15日に発表した新たなデータでは、従業員が直面すると思われる決断しにくい状況が示されている。これまで通りオフィスで業務を行うと答えた世界の200社を対象としたCBREの調査によると、59%が従業員にフェイスカバーを用意すると答え、28%がフェイスカバーの常時使用を必須とする計画だ。そして21%がオフィス再開初期にオフィスへの訪問者を許可するとし、13%が全施設で従業員のスクリーニング検査を行うと答えた。

だが、ソーシャルディスタンス(社会的距離)策をいかに正しく導入するかというのは、全体の一部にすぎない。新型コロナウイルスを根絶させることができるワクチンが開発されるまで、従業員の安全と平常維持のバランスをとらなければならない企業にとって、オフィスでの業務再開は難しいものとなる。実際、管理部門にとって唯一確かなことは、変更を加える必要があるということだ。調査でCBREが尋ねた多くの質問の中で「はい」の答えが最も多かったのが、ソーシャルディスタンスを反映させたスペース使用ポリシーを設ける計画か(80%)と、オフィスのレイアウトを再設計する計画か(60%)というものだった。

おそらく多くが、休憩室やカフェテリアすらも廃止する。従業員同士が少なくとも6フィート(約1.8メートル)離れて座るようにし、シフト制で出社させる企業も出てくるだろう。しかし他にも多くの変更が予想される、と不動産と建設テックを専門とし、今後数カ月あるいは数年にわたって最も需要が見込まれるテックを現在見出そうとしているベンチャー投資家2人は指摘する。

2人ともプロの投資家で、彼ら自身もまだリモートワークをしている。まずBrick and Mortar Ventures(ブリック・アンド・モーター・ベンチャーズ)の創業者Darren Bechtel(ダレン・ベクテル)氏から。同社は主に建設テックにフォーカスしており、最初のファンドは9750万ドル(約104億円)で9カ月前にクローズしたばかりだ。ベクテル氏は、自身と妻、幼い子供が住んでいる賃貸物件のドライブウェイに停めたAirstream社製トレーラーで働いている。自身も妻も、仕事の電話が1日中あるからだ。トレーラーに入ったり出たりするのは理想的ではない。しかし、カリフォルニア州が徐々に経済を再開させているものの、ベクテル氏はベイエリアにあるオフィスをすぐに再開させる準備はしていない。「我々は急いでいない。私はかなり保守的だ」。

不動産技術にフォーカスしているロサンゼルス拠点のFifth Wall(フィフス・ウォール)の共同創業者Brendan Wallace(ブレンダン・ワラス)氏もまた、従業員をすぐにオフィスに戻すことを躊躇している。「チームがリモートワークの環境でかなり生産的であることはうれしくも驚かされている」とも付け加えた。

もちろん2社とも従業員に負担をかけたくない。しかし他の多くの企業と同様、彼らもオフィスのデザインを再設計すべきかを現在考えており、異なるテクノロジーの活用も真剣に検討している。

例えば、ワラス氏もベクテル氏もそれぞれの電話で、暖房や換気、空調の一環で空気をきれいにして循環させるのに使用される高度な空気清浄機やエアハンドリングユニットに言及した。ビルオーナーやデベロッパーが関心を寄せるものになるだろう、と2人は口をそろえる。

ワラス氏はまた、他のスマートテクノロジーを積極的に採用する動きが出てくるとみる。部屋の最適人数や回転式扉で何人通すかを決めることができるセンサーや、身体接触を最小限に抑えるのに役立つ顔認証技術などを挙げる。そしてこれまでより多くの企業が建物内のパトロールに、そしておそらく清掃にもロボットを活用するかもしれない、と想像している。

事業者は現在、「これまでになかった責任をテナントに対して持たなければならない」とワラス氏は話す。事業者は(スペースを)より大胆に改変しようとしていて、「我々はそうした動きに先駆けたい」という。

一方のベクテル氏は、業界に個々のプライベートオフィスの需要が出てくるかもしれないとみている。同氏はまた、例えば抗菌のテキスタイルを生産する材料の企業に光が当たるかもしれないと考える。「このところ環境に優しい材料を開発する動きがあったが、需要はなかった」とベクテル氏は指摘する。

Brick and Mortar Venturesは主に建設テクノロジーに注力しているため、建設会社が建設現場の安全を向上させ、生産性を改善する方法を熱心に模索している。これは、接触追跡から、写真やレーザースキャンをもとに3Dモデルを作り出す「現実キャプチャソフトウェア」と呼ばれるものまですべてを意味する。

オフサイトのプレハブ建設需要の高まりがあるかもしれない、ともベクテル氏は話す。「エリアの中で働ける人数に制限があり、働いている人同士が重ならないようにあなたが管理しなければならないとする。すると、次世代HVACシステムが空気を清浄し、フロアにマーキングされるなど、よりコントロールされた環境にどうやったらできるかという疑問がわいてくる」。

ベクテル氏は「人々はいまこう口にしている。我々はどれくらいオフサイトを準備できるだろう」という。

こうしたテックの出現やその浸透は、効果的なワクチンが出てくるまでにどれくらいの時間を要するかにもよる。予想しているよりも早くワクチンが実用化すれば、事業者は物理的スペースへの大きな変更はさほど優先することではないと考えるかもしれない。すぐに忘れるのは人間の性だ。

それでも、経済再開に伴い、事業者や大学、さまざまな機関はウイルス拡散を阻止するための計画を立てるより他はなく、これはおそらく永久的な変更につながる。

投資家らはそう願っている。現在では「建物は役立たずだ。ほとんどは暖房と冷房を保つためだけに存在している」とワラス氏は話す。

いまこの現状から何かいいものが生み出されるとしたら、それは長期的によりスマートで安全に作られた、そして今回のような健康リスクに対応できる建物かもしれない、と同氏は期待している。

画像クレジット:Hero Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

財務分析を応用して企業の炭素排出量削減を助けるYC卒のSINAI

企業にとって、気候変動と戦うための第一歩は、自分たちがそれにどれだけ貢献しているかを知ることだ。Y Combinatorを最近卒業したSINAI Technologiesは、その理解を助けてくれる企業だ。

創業者のMaria Fujihara(マリア・フジハラ)氏は持続可能性産業と16年つき合ってきたベテランで、最近では企業のLEED認証への適合を促進するための一連のツールを作ってきた。SINAIは認証ツールを国際市場に適合させるための長年の取り組みの成果であり、またこの5年間はSingularity University(シンギュラリティ・ユニバーシティ)で炭素排出プロファイルに関する研究を行っている。

フジハラ氏は「会社を起ち上げたときに、カーボンオフセットを始めた。最近の3年ぐらいで企業も政府も炭素排出量を計算しており、自らの炭素排出量と炭素インベントリを知り、自分の炭素インベントリを使って炭素クレジットを買うようになった」と語る。

そして彼女によると、その市場は成熟して多くの企業が参加するようになっているという。「それでも排出量は、過去6年間増える一方でまったく減らない。減らすためのソリューションを考えなかったからだ」と彼女は言う。企業は炭素排出量の測定にばかり集中して、さまざまなポリシーによる削減方法を見出さなかった。ビジネスのどの部分をターゲットにすべきかについても考えなかった。しかし「それぞれのビジネスをユーザーシナリオとして理解すれば、彼らのヴァリューチェーンの中で排出量を減らせる」という。

SINAIのサービスは企業における排出量関連のさまざまな報告書作成やデータ取得を自動化して、わかりやすいかたちでモニタできるようにすることだ。「財務分析と似ているが、対象はお金ではなくて環境分析だ。しかも四半期ごとではなくて、年に1回行う」とフジハラ氏は言う。

現在同社は製造業、運輸業、アパレルとリテール、食品と飲料、そして不動産という5つの業界にフォーカスしている。同社の声明によると「炭素循環の構成要素は、炭素排出インベントリ(フットプリント)の作成、オプションの適切な選択により低炭素シナリオを作る、カーボン削減のターゲットを設定する(科学的でない視点も含む)、炭素予算を計算する、今後可能性がある炭素税を分析する、最適最善の炭素価格を定義する、そして外部的シナリオ(国内的国際的政策へのコンプライアンスに基づくもの)を分析することだ。

フジハラ氏の共同創業者であるAlain Rodriguez(アラン・ロドリゲス)氏は、現在、気候問題に取り組んでいるUberの20名の技術者の1人だ。SINAIの声明によると「基本的に我々は気候問題に財務分析の方法論を結びつけて、排出の削減と低炭素技術の実装に伴うコストの管理を行う。そのコストは企業の炭素価格のベースになる。この方法ではさまざまな要素が互いに依存し合っており、炭素循環のどの段階にある企業でも分析でき、その一歩一歩における価値を提供する」という。

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Airbnb、カリフォルニア山火事の避難民に無料宿泊を提供

カリフォルニアの相次ぐ破壊的山火事が家屋を焼失させ多くの人命を奪うなか、 Airbnbは、住む場所を失った同社故郷の州民のために避難場所を提供している。今週同社は、ロサンゼルス郊外の山火事、“Hill” と “Woolsey 、および北カリフォルニアの“Camp Fire”の被害にあった避難民のための無料宿泊リストを追加した。

現在Airbnbの無料宿泊は2018年11月29日まで有効で、住居をなくした住民および復旧を支援する救済ワーカーのいずれもが利用できる。Camp Firfeエリアには約700ヶ所の宿泊場所が掲載されており、HillとWoolseyエリアには1400ヶ所以上が掲載されている。

Airbnb disaster housing

Airbnb災害救済宿泊地

Airbnbが災害救済宿泊を提供するのはカリフォルニアの山火事が初めてではない。同社には災害救済ハブがあり、今どこで災害が起きていてどれだけの人々が住まいを探しているかを明らかにしている。現在Airbnbは、今月ビル倒壊が起きたフランス・マルセイユ付近のホストによる無料宿泊の取りまとめも行っている。2ヶ月前Airbnbは、ハリケーン・フローレンス前に避難した住民を受け入れるホストの登録を募集した。

上記の地域で緊急宿泊提供の登録をするには、Airbnbの緊急避難場所ポータルの「登録する」ボタンをクリックして指示に従えばよい。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Airbnbが巨大アパート企業からの訴訟にカリフォルニアで勝訴…Webサイトにコンテンツ責任なし

【抄訳】
カリフォルニアの判事は、Airbnbに対するアパート管理会社Apartment Investment & Management Company(Aimco)の訴えを棄却した。昨年の2月に、約50000件の不動産物件の保有者ないし管理代行者であるAimcoは、Airbnbが、同社の賃貸物件の不法使用を意図的に奨励しているとして同社を訴訟した。

Aimcoはこの訴訟をカリフォルニアとフロリダ両州で起こしており、損害賠償と、同社賃貸物件の不法使用の奨励をAirbnbにさせない裁判所命令を求めていた。Aimcoの訴えの主旨は、AirbnbがAimcoの建物に、“平和な地域社会を維持することに関心のない”、しかも“身元不詳で履歴審査もない”人びとを連れ込んだことにある。

10月にAimcoは、南カリフォルニアの4つの物件におけるAirbnbの操業に対する仮差し止め命令を裁判所に求めた。しかしAirbnbは、カリフォルニアの法律は物件の転貸(また貸し)を禁じていない、と反論した。

Airbnbはさらに、この問題の責任はAmicoの物件のテナント(店(たな)子)とそのゲストにある、と主張した。同社は、Communications Decency Act(通信適正法)が、人びとがWebサイトにポストしたコンテンツに関する法的責任はそのWebサイトの運用者にはない、と定めている条項を挙げて、この訴訟の却下を求めた。

しかしAimcoは、Airbnbは情報コンテンツのプロバイダーであるから、そのサイト上のコンテンツに関して法的責任がある、と主張した。しかし今回カリフォルニアの裁判所は、Airbnbは情報コンテンツのプロバイダーではない、と判定し、Airbnbはコンテンツをホストしているだけであり、それを作ってはいない、とした。

地裁判事Dolly M. Geeは判決文でこう述べている: “この行いは、Airbnbを情報コンテンツのプロバイダーにしない。上述のように、情報コンテンツのプロバイダーの法的定義は、インターネットやそのほかの何らかの対話的コンピューターサービスによって提供される情報の、全体的ないし部分的な作成や開発に責任のある個人や法主体である”。

Airbnbはもちろん、この裁定を歓迎し、次のような声明を発表した:

“弊社と家主とのパートナーシップは、ホームシェアリングが全員にとってウィンウィンの状況であることを明らかにしている。Airbnb Friendly Buildings Programによってテナントは彼らの最大の出費対象〔借りてる部屋〕を有効利用して副収入を作り出し、それが家主にとっても新たな経済的機会を作り出す。このようなパートナーシップが数多く成立していることは大きな喜びであり、弊社は今後とも継続的に、ホームシェアリングに関して前向きの家主からの大いなるご関心をいただき、とくに、歴史に残るほどの大きな負債を抱えている現代のミレニアル世代への、ソリューションを提供していきたい”。

【後略】
〔訳注: フロリダはまだ未決。Aimcoは控訴の構え。この記事からは、(1)Airbnbと家主(Aimco)の当初の契約ないし合意内容、(2)転貸(また貸し)に関する家主(Aimco)と店子(借り手)との当初の契約ないし約束内容、以上二点が不明である。〕

原文末尾に、判決文の全文があります。—

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

リアルエステートテック専門のアクセラレーターMetaPropの今年のクラスに集まった8社を紹介

三年目になる今年も、MetaProp NYCにはリアルエステートテックを志向するスタートアップたちが集まった。今年の主な話題は、グリーンビルディングや、アパートのエントリー(入り口〜玄関)と駐車場などだった。多くがニューヨークのスタートアップだが、中には遠くシンガポールからの企業もいた。

MetaProp NYCの協同ファウンダーでマネージングディレクターのAaron Blackが、声明文の中でこう述べている: “われわれのようなRE系アクセラレーターがこのところ増えているのは、不動産産業のヴァリューチェーンの全域にわたって、テクノロジーによるソリューションの需要が全世界的に急速に伸びていることの証(あかし)である”。

同アクセラレーターへの参加者は、オフィススペースとメンターシップ(個人指導)のほかに、25万ドルの資金を受け取る。

MetaPropはメインの事業であるアクセラレーターのほかに、最近は8週間のプレ・アクセラレーター事業を開始した。どちらの事業も、コロンビア大学が協力している。またCushman and Wakefieldとのパートナーシップにより、不動産企業をスタートアップと新しいテクノロジーに結びつける事業も開始している。

以下は、今年のアクセラレータークラスに参加したスタートアップたちだ:

BlocPower(ニューヨーク)は、‘都市内へき地’の建設プロジェクトに投資家を結びつける。都心部における炭素排出量を減らし、グリーンな雇用を作り出す、と期待されている。

Doorport(ニューヨーク)は、来客を室内からチェックできるビデオ・インターコムを、スマートフォンのアプリとして作った。同社はこのアプリを、大きなビルの管理プラットホームに拡張したいと考えている。

Hoozip(ニューヨーク)は、不動産のホールセーラーと投資家たちのためのツールとオンラインコミュニティを提供する。

Irene(ニューヨーク)は、高齢者にホームエクイティーローン(逆モーゲージ)を提供する。

OnSiteIQ(ニューヨーク)は、360度画像による建設工事の検査および文書化システムを建設企業に提供する。

Streamline(サンフランシスコ)は、機械学習を利用して不動産企業とその顧客たちが位置データを理解できるようにする。

Travtus(シンガポール/ロンドン)は、テナントが電話でメンテナンスをリクエストとして、必要なメンテナンス工事/作業の遅れを防止するシステムを提供する。

WeSmartPark(バルセロナ)は、“Airbnbの駐車場バージョン、ただし完全に自動化されている”、だそうだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

不動産代理店の住宅販売案件をGmailのアシスタントで顧客ごとに管理するAmitreeが$7Mを新たに調達

リアルエステートテックのスタートアップAmitreeは、不動産代理店の仕事を楽にして、さらにその結果として、そのお店を利用する住宅購入者の人生をもっと楽にすることをねらっている。同社は、そのためのプロダクトFolioのためにこのほど、700万ドルを調達した。

Amitreeはここまで来るために、長くて奇妙な旅路を経験した。同社が最初に(2013年)ローンチしたのは、住宅購入者の権原移転手続きを一歩々々ガイドする消費者向けのツールだった。そのClosing Timeと名付けたプロダクトは、消費者が家の購入の完了までにやるべきすべてのことを順番に羅列した、トゥドゥリスト(to-do list)のようなものだった。

でも、誰もが知ってるように、人が家を買うサイクルは短くても10年に一度ぐらいだ。だからそのプロダクトは、消費者ビジネスに不可欠なリピーターを獲得できない。そこでAmitreeは振り出しに戻り、不動産代理店をターゲットとするFolioという新しいプロダクトを作った。

AmitreeのCEO Jonathan Aizenは曰く、“消費者が良質な住宅購入経験を得るために何よりも重要なのは、不動産代理店が有能であることだ”。しかし少なくともこれまでは、不動産市場におけるイノベーションといえばもっぱら、代理店とバイヤーの関係をディスラプトすることだった。それに対してAmitreeがねらうのは、不動産代理店の仕事を楽にするツールを作ることだ。

住宅購入者の場合と同じく不動産代理店にも、お客を商談の完結に向けて一歩々々導いていくためのトゥドゥリストがある。ただし住宅購入者と違って代理店は多くの場合、複数の商談を抱えている。顧客ごとの条件や商談の進捗状況などがさまざまに異なる購入案件を、ひとつひとつ正しく進めることは、ものすごく難しい仕事である。

そこでAmitreeのFolioが役に立つ。FolioはGoogle Chromeのエクステンションで、不動産代理店のメールアカウントに接続してスマートアシスタントになり、大量のメールを処理して、彼らが管理しているひとつひとつの商談が今どうなってるかを理解する手助けをする。

このツールは商談ごとにフォルダを作って、代理店のワークフロー管理を助ける。ひとつのフォルダーの中に、そのお客さんとのメールのやり取り、文書のファイル、関係先のコンタクト情報などをすべて入れておく。これにより、お客さんごとに毎回いちいち関連文書を探す手間がなくなる。また、商談の次の段階へ行くためにはどんなリマインダーをメールすべきかも、すぐに分かる。

約1年前に立ち上げたFolioは、不動産業界に根付きつつある。このChromeエクステンションは3万回あまりダウンロードされ、これまでに20万件あまりの商談を管理した。Amitreeの推計では、これはアメリカの不動産商談の総件数の約5%に相当する。

この成長ペースを維持したい同社は、Vertical Venture Partnersがリードするラウンドで710万ドルを調達した。これにはAccel PartnersやSeven Peaks Venturesなど既存の投資家も参加し、同社の総調達額は1300万ドルになった。

Aizenによると、今回得た資金の主な用途は、エンジニアリングとデータサイエンス方面の人材獲得だ。最初の三年半は7名の社員でやってきた同社も、おかげで今ではその倍になっている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Naborlyは、家主のためにテナントを自動的に評価してくれるサービス

img_8675

想像してみてほしい。あなたはサンフランシスコにいい物件を持っていて、善良な人々にあまり高くない家賃で貸したいと思っている。果たして新しいテナントが一文なしの怠け者でないことをどうすれば確認できるだろうか?Naborlyには、アイデアがあるらしい。

ブリティッシュコロンビア大学のDylan Lenz、Zeke Kan、Anastasia Foxの3人が設立したこのスタートアップは、カスタム版入居申し込みフォームを作って、家主にとって重要なテナント情報を集めてくれる。システムはこれを元にテナントの総合的調査書類を作り、このテナントに貸すことにリスクがあるかどうかを家主に伝える。

同社はこれまでに50万ドルの資金を集め、シード資金200万ドルの調達を目指している。

現在、1日当たり2000ドル程度の売上があり、毎日20~50人の新規家主が登録しているという。API経由のサービスも提供している。信用調査会社の協力を得て、同社のシステムにデータを追加しテナント評価方法の改善も行っている。

「信用の良し悪しは(ほとんどの場合)テナントの質に影響を与えないので、われわれは他の要素に注目している」とLenzは語った。「機械学習と人工知能がわれわれのサービスの核を成している。他のサービスは、人間の勘に頼っているものが多い。たとえ誤っていても」

「われわれのシステムは各テナントについて500以上のデータポイントを瞬時に分析する。ソーシャルメディア、信用情報、賃貸履歴、Google、等々。今や、ミクロ経済的事象に基づいて賃料支払いの遅れを予測したり、財務状態、業種等に基づいてルームメイト間の争いを予測することもできる」

3人がNaboryを設立したきっかけは、Lenzが担当した企業テナントから、未払い家賃2万2000ドルと家屋損壊の被害を受けたときだった。

「そのテナントは自宅や職場で私を脅すことさえあった。その時、こうしたハイリスクのテナントを家主が見分け、他の家主に知らせるためのツールがないことに気付いた」とLenzは言った。

Screen Shot 2016-08-15 at 3.33.46 PM

サービスは既に運用中で、テナント1件の基本プランは59ドル、年間最大5件までのプランは149ドルで利用できる。システムは信用調査と借用調査を自動的に行い、家主にテナント毎の「スコア」を提供する。これでミッション通りにあるあなたの家賃500ドルの2ベッドルームを、堅実で信用ある労働階級の家族に貸すことができそうだ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

不動産スタートアップのiettyが東大とチャットAIの共同研究、人材会社との資本業務提携も

ietty代表取締役の小川泰平氏

ietty代表取締役の小川泰平氏

「最近チャットボットやチャットUIに関する話題が多いが、チャットを用いたサービスでもっとも実績のあるスタートアップは我々ではないだろうか」——そう語るのは不動産スタートアップのiettyだ。同社は5月13日、東京大学大学院 情報理工学系研究科電子情報学専攻・山崎研究室(山崎研究室)と共同での研究・サービス開発と、総合人材サービスを手がけるプロスとの資本業務提携を発表した。

iettyが提供するのは、オンライン接客型不動産仲介サービスの「ietty」だ。会員登録をし、希望の部屋の条件を登録すると、チャットを介してiettyから条件にマッチする物件の情報が送られてくる。ユーザーはその物件情報に興味を持ったかどうかを評価し、別の物件情報の提供を求めたり、内見の予約をしたりできる。

2015年10月に資金調達を発表した際、ietty代表取締役の小川泰平氏は「AIを使った物件紹介を試験的に開始している」と話していた。現状ではユーザーが希望する賃料や間取り、最寄り駅などの条件をフックにして物件を提案するようなものだそうだが、これを今回の山崎研究室との取り組みで本格化させる。「年内にも何かしらの結果を発表したい」(小川氏)

iettyでは提供された物件情報を評価できる

iettyでは提供された物件情報を評価できる

iettyでは現在、1日約5万件の物件情報をユーザーに配信しており、その半数にユーザーからの評価が付けられているのだという。ユーザー属性、物件情報、物件の評価情報、これらのデータを掛け合わせて分析することで、ビッグデータからユーザーに最適な物件を提案する仕組みを作れないか、という話だ。「今までの不動産仲介業は、ユーザーの希望条件に合わせて営業マンが『プロの勘』で物件情報を提供してきたが、データをもとにより最適な物件情報を提供できるようにしたい」(小川氏)

この施策の背景には、最近のチャットUI、チャットボットというトレンドへの警戒心があるようだ。もちろん店舗型の不動産仲介業者がいきなりチャット形式でオンライン仲介に参入、という話ではないかも知れないが、FacebookやLINEがプラットフォームを開放すれば、仲介業者は極論誰でもオンライン接客を行うことができるようになる。それに対して先行者としてサービスを展開するiettyでは、AIを使って業務を自動化しつつ、少ないリソースで多くの顧客に対応できる仕組みを作ろうとしている。

またこれに加えて、今回資本業務提携(資金調達については金額非公開だが、業務提携の意味合いが強く、少額だとしている)したプロスから内見対応を行う営業マンを派遣することで、リアルなオペレーション部分のリソースを確保する。不動産業界は繁忙期と閑散期の差が大きい。営業リソースを固定費にするのではなく、人材派遣で変動費化することにより、閑散期のコストを削減する狙いだ。

screenshot_555

同社は繁忙期である3月に単月黒字化を達成。ユーザー登録も月間6000〜7000人ペースで増えているという。「2年後にもネットでの不動産仲介が解禁される動きがあるが、まずはそこでナンバーワンになりたい。ただし賃貸不動産は入り口に過ぎない。管理や売買の市場を見ると60兆円の世界。不動産デベロッパー出身なので、その領域でビジネスを描いていきたい」(小川氏)

今後はLINEやFacebookなど各種メッセンジャープラットフォームにもサービスを対応させるほか(LINEについてはLINE@でサービスを試験運用しているが、実はアクセスの4分の1がLINE経由だそう)、大阪や神奈川でのサービスも開始する予定。

リノベーション特化のマーケットプレイスを運営するツクルバ、グロービスなどから数億円の資金調達

左からツクルバの高野慎一氏、中村真広氏、村上浩輝氏、GCPの上村康太氏、高宮慎一氏

左からツクルバの高野慎一氏、中村真広氏、村上浩輝氏、GCPの上村康太氏、高宮慎一氏

リノベーション住宅特化のオンラインマーケット「cowcamo」等を運営するツクルバは1月27日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)を引受先とした第三者割当増資および金融機関からの借入による資金調達を実施したことを明らかにした。金額等は非公開だが、数億円規模になるという。また調達にあわせて、GCPの上村康太氏が社外取締役に就任する。

リーマンショックからの起業

ツクルバの創業は2011年。信用金庫から数百万円の借入を行い、渋谷にコワーキングスペース「co-ba」を設立するところからスタートした。代表取締役CEOの村上浩輝氏と代表取締役CCO・クリエイティブディレクターの中村真広氏の2人は新卒でコスモスイニシア(旧:リクルートコスモス)に入社。しかしリーマンショックのあおりを受け、1年も経たずに会社を辞めることになる。

その後村上氏はネクストで不動産関連のビジネスに、中村氏は大学時代に学んだ建築学を武器にデザイン事務所に入社。それぞれキャリアを積んだ後にツクルバを立ち上げた。なお冒頭の写真にいる高野慎一氏はリクルートコスモスの元役員。2人がコスモスイニシアに入社するきっかけになった人物だ。2015年10月にツクルバに参画した。

受託から自社事業への転換

コワーキングスペースの運営からスタートした同社だが、その後は2人のキャリアを生かして空間プロデュースに乗り出す。最近では、六本木ヒルズに移転したメルカリのオフィスなんかも彼らのプロデュースだ。そんな同社だったが、2015年に入ってcowcamoを立ち上げ。社内にエンジニアを置き、自社でウェブサービスを開発するに至った。これにあわせて、2015年2月には、East Venturesとアカツキを引受先とした第三者割当増資も実施した。

 

tsukuruba02

「デザインの会社が(資金を調達して)ITの会社になったのは、突然変異ではなくこれまでの延長線上。思いつきで『メディアを作る、アプリを作る』と考えたわけではなく、どんなベンチャーでもテクノロジーを活用することが必須になったと考えたから」——村上氏はこう語る。

ツクルバ創業時から代表2人には「大量生産大量消費でない、『先進衰退国』となった今の日本だからこそできる事業で成長していく」という思いがあったそうだ。もちろんそんなことを言ってもまずは自分たちの食い扶持を稼がないといけない。「『会社を経営する』ということも最初は手探りで、受託もやってとにかく必死でやってきた。3期で黒字になって、より急角度に成長するために受託から自社事業に切り替えようとなった。会社の知見や信用、ノウハウを考えれば、cowcamoのモデルだった」(村上氏)

不動産全体では縮小しているが中古住宅だけは伸びつつあるという市場環境(政策としても2020年に中古住宅流通・リフォーム市場の規模倍増(20兆円)を掲げている)、オフィスの空間プロデュースに加えて住宅リノベーションなども手がけていたことでできた仕入れルート。起業前に不動産仲介を手がけていたノウハウ——これらがあってcowcamoというサービスは生まれたという。最近では360度動画によるバーチャル内覧機能なども実装。月間流通額もサービス正式ローンチから半年で数億円規模に成長した。ツクルバでは今回の資金調達をもとに、開発体制強化や営業人員拡大を進めるほか、各種プロモーション施策も展開していく。

また冒頭に書いた通り、今回の調達にあわせて、GCPの上村康太氏が社外取締役に就任する。このほか公認会計士の服部景子氏が常勤監査役に、同じく公認会計士の小池良平氏が監査役に、GCPの高宮慎一氏がアドバイザーにそれぞれ就任する。

実は上村氏と村上氏は同年代の起業家(上村氏はかつて「ソーシャルランチ」を運営するシンクランチを起業。Donutsに売却している)としても数年来の親交があるということ。両者はビジネスに関する相談はしていたが、もちろん資金調達は私情ではなく「VCとして素晴らしかったのでGCPに引受をお願いした」(村上氏)、「チームだけでなくプロダクトや数値を厳しく判断して、半年ほどかけて投資決定に至った」(上村氏)とのこと。

人工知能を使って不動産の成約価格を高精度で推定する「VALUE」——イタンジが新サービス

11717001_868003469947010_1205949794_n

「人工知能を使って○○をする」なんてスタートアップのニュースが増えているが、今度は人工知能を使って不動産の成約価格を推定するというサービスが登場した。仲介手数料無料のネット専業不動産仲介サービス「ヘヤジンプライム」を提供するイタンジは7月8日、人工知能を活用した不動産投資家向けサービス「VALUE」の提供を開始した。

VALUEでは、同社が開発した人工知能を用いて、REINS(不動産業者向けの物件情報データベース)に掲載されている物件の価格を解析し、相場価格から乖離した裁定取引(アービトラージ、利ざやで稼ぐこと)の可能性がある物件を抽出して、ユーザーに情報配信するサービス。転売益などを狙った国内外の不動産投資家をユーザーと想定している。利用料は月額5000円。

今後は不動産投資の分析ツールなども利用できる上位版サービスも提供する予定。また不動産仲介業者をターゲットにした広告での収益化も検討している。「不動産仲介業者は1人の顧客を連れてくるCPAが5万〜10万円かかっている。VALUEのユーザーを仲介会社に送客できれば価値は高い。今後はアジア圏の投資家もターゲットにしていきたい」(イタンジ代表取締役CEOの伊藤嘉盛氏)

伊藤氏は、不動産の価格設定について、「これまでは不動産業者の勘や経験——周辺、もしくは同様の条件の不動産価格、同じ物件の過去の数字など——をもとにざっくりとした数字を出していた」と語る。では正確な数字を出す場合にはどうしたかというと、「ヘドニック・アプローチ(マンション価格を専有面積や間取り、築年数などから回帰的に説明する方法)を用いていた。しかしその決定係数(回帰式の当てはまり具合、ざっくり言えば予測の精度)は0.8〜0.85(80〜85%の精度)。高いモノでも0.9(同様に90%)程度だった」(伊藤氏)のだそう。

これに対してVALUEでは人工知能でディープラーニング技術を用いて過去25年間の東京都内における不動産取引情報や金利、公示地価などを学習。その結果、決定係数は0.94、また実際の成約価格との誤差で見ると、±5%以内が35%、±10%以内が64%という高い予測精度を実現したという。ちなみに米国では不動産データベースサービスのZillowが2006年からサービスを提供しているが、同社でも誤差±5%となるのは30%程度だという。またこれ以上の精度に関しては「専有面積などに関わらず、何かしらの理由で相場価格より高い、もしくは低い価格でも売買される物件もある」(伊藤氏)ということで、高めるにも限界があるようだ。

最近では不動産仲介業社による物件の「囲い込み」の実情が報道されているが、「価格がブラックボックス化されており、売り手も正しい価格を理解していないために、最終的に値下げして売らざるを得ないケースもある」(伊藤氏)のだそう。こういった問題を解決するためにも正しい不動産価格を知ることは重要だという。VALUEはこの人工知能による価格推定の技術を用いた第1弾のサービスという扱い。同社では今後もこの価格推定技術をコアに「不動産×人工知能」のサービスを提供していくという。

 

SQFTは、安い手数料で家を売買できる不動産アプリ

sqft-1024x768

家を買ったり売ったりしたことのある人なら、不動産業者の6%手数料がいかに高いか知っているだろう。SQFTは、この手数料を減らし、不動産屋の手を借りることなく家を売買できるアプリだ。

アプリをダウンロードして、自分の家を掲載すると決めたら、登録に必要な手順はSQFTが全部案内してくれる。ソフトウェアは、プロが撮った家の写真や特徴を載せたり、理想的な販売価格を決めるのも手伝ってくれる。

SQFTは、ユーザーの物件をTrulia、Zillow、MLSを始めとする450以上の不動産サイトに掲載する。アプリは、内見日程を決めたり、申し込みに返信したり、契約の署名をするところまで手助けしてくれる。つまり、SQFTを使えば家を買ったり売ったりするために、不動産業者と一度も顔を合わせる必要がない。

所有者に手続きをすべて委ねることで、SQFTは業界標準6%の手数料を2%以下に下げることを目標にしている。

SQFTの共同ファウンダー・CEO、James Simpsonは、SQFTのようなアプリにとって今は最高の時期だと言う。従来売り手は不動産業者にしかわからない家の価値に依存していたが、現在この情報は住宅所有者全員が自由に見ることができるので、業者に頼る必要はなくなった、とSimpsonは言う。

SQFTは iOS AppStore今すぐダウンロードできる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

リアル店舗でおもてなし、アプリで住まいのサポート–お部屋探されサイトiettyの新展開

東京・恵比寿のリアル店舗

 

ユーザーが希望条件をあらかじめ入力しておけば、不動産会社のスタッフから条件に合う賃貸情報がチャット形式で提供される、お部屋“探され”サイトの「ietty」。サービスを手がけるiettyがリアル店舗を軸にさまざまなサービスの展開をはじめた。

店舗は2月26日には東京・恵比寿に正式オープン。ウェブサイトやスマートフォンアプリ同様に賃貸情報を提供するだけでなく、不動産業経験者を中心にしたiettyスタッフがオフィス賃貸や不動産売買、リフォームといった賃貸以外のニーズにも対応していく。

「リアル店舗は『オフラインの相談窓口』という意味合いが大きい。我々は不動産のプラットフォーマーになりたいと思っている。例えば単身で賃貸に住んでいた人が結婚して広い賃貸に移り、さらに戸建てを買うといったように、ライフステージが変化していくユーザーのニーズに対して、継続的に応えていける事業者はあまりいない」(ietty代表取締役の小川泰平氏)。

「ietty トータルサポート」のイメージ

 

そうは言っても、ライフタイムイベントなんて数年に一度あるかないかというペースなのが普通だし、ユーザーと継続的な関係性を持つことができないのではないかとも思う。そこでiettyでは、「今後は例えばユーザーが引っ越しすれば、それに付随するような作業やトラブル対応の支援をしていく」(小川氏)のだという。

それが3月5日に発表された「ietty トータルサポート」だ。ietty経由で物件への入居を決めたユーザーに対して、スマホアプリ上で家賃や初期費用の相談から、設備トラブル、退去時の引っ越し手配までをチャットでサポートするという。

また店舗では、3月4日より月額15 万円以上の賃貸物件のほか、住宅売買やオフィス賃貸を希望するユーザーに対して特別なプランを提供する「ietty 大人の部屋探し」をスタートした。

このサービスでは、完全個室での接客、ウェルカムドリンクの提供、50インチのモニタを使った物件紹介、店舗から帰る際には同社負担でUberを配車(都内23区限定)といった、ちょっとゴージャスなおもてなしを提供するのだとか。


「キャッシュバック賃貸」運営の賃貸情報が電通グループなどから1億円調達

賃貸住宅情報サイト「キャッシュバック賃貸」を運営する賃貸情報は2月4日、電通デジタル・ホールディングス(DDH)、SMBC ベンチャーキャピタルを引受先とする総額約1 億円の第三者割当増資を実施したことをあきらかにした。

キャッシュバック賃貸は、賃貸借契約が成立した際に、入居者にあらかじめ指定された金額のキャッシュバックが受けられる賃貸情報サイト。一般的な賃貸住宅情報サイトでは、掲載課金が一般的だったが、キャッシュバック賃貸では成約課金のモデルを採用している。現在物件数は180万件を超えるという。賃貸情報取締役副社長の遠藤彰二氏はリブセンスの出身。リブセンスの手がけるアルバイト情報サイト「ジョブセンス」でも採用者にお祝い金としてキャッシュバックを実施しているが、これを賃貸住宅情報サイトに当てはめたかたちだ。

遠藤氏に今回の調達の目的を聞いたところ「資金ニーズより戦略を重視している」とのこと。先日開催されたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループのインキュベーションプログラムである「T-Venture Program」にも採択されている同社だが、電通グループや事業会社との接点の多い銀行系VCの資本を入れることで、広く事業会社との連携を狙っていくのだという。「キャッシュバック賃貸の強みは(キャッシュバックの手続きを行うために)『引っ越しが決定したユーザー』が分かるということ。他のサイトはで『引っ越しを予定するユーザー』しか分からない。引っ越しの際は利用する美容室もスーパーも変わるし、家電も買い換える。さらには就職や進学、出産というイベントに関わることも多い。さまざまな業態と連携ができる」(遠藤氏)。また同社では、今回の調達を機にマーケティングにも注力していく。


お部屋”探され”サイト運営のietty、YJキャピタルとインキュベイトファンドから約2億円の資金調達

不動産ポータルサイト「ietty」を運営するiettyが、YJキャピタルとインキュベイトキャンプから総額約2億円の資金調達を実施した。また今回の調達にあわせて、YJキャピタル代表取締役の小澤隆生氏とインキュベイトファンド代表パートナーの和田圭祐氏が社外取締役に就任している。同社はインキュベイトファンドのインキュベーションプログラムでの最優秀賞獲得を契機にサービスをスタートした。2013年10月にはアイ・マーキュリーキャピタルから約5000万円の資金調達を行っている。

iettyは“お部屋探されサイト”をうたう不動産ポータルサイトだ。賃貸物件を探すユーザーがFacebookアカウントでログインし、引っ越しの希望条件を入力すると、その条件に合わせてiettyのパートナーである不動産業者がユーザーに物件を提案してくれるというもの。ユーザーはサイト上のチャットでやりとりしながら物件を探して、内覧の予約や業者への来店の調整ができる。

これまでの不動産ポータルサイトではユーザーが自ら物件を探す必要があったが、iettyでは不動産業者が提案をしてくれる。まさに「お部屋探し」でなく「お部屋探され」なのだ。またietty代表取締役社長の小川泰平氏いわく、業者が自ら物件を紹介してくれるということで、釣り物件——すなわち好条件なためにユーザーの集客に使われるが、実際には存在しない、もしくは契約が埋まっているような物件——が存在しない。今すぐ内覧できる物件だけを紹介してもらえるというメリットがある。現在会員登録は月次1000人ペースで増加。1人が4〜5人ほどの業者から物件の紹介を受けており、20〜30%が実際に来店するという。

また最近では、5月にリリースした法人向けサービス「ietty Biz」が好調だそうだ。このietty Bizは、法人の福利厚生サービスとして提供しているもので、サービスを導入する法人の従業員であれば、ietty経由で部屋を契約した際に仲介手数料の半額保証(0.5ヶ月分以下)をしてくれるというもの。

法人には費用が一切発生しないことに加えて、iettyがサービスを展開する東京都内には、「オフィスから2駅以内に住む場合に家賃を補助する」といったルールを持つ、比較的若いIT企業が多いことから非常にウケがいいそうだ。福利厚生サービスの一環として法人に提案するため、導入時には総務担当者などを通じて一度に数百人〜数千人の従業員に情報が共有されることもあってか成約率も高い。現在このサービスは約40社が導入している。手数料半額保証ということで1件あたりの売上は落ちるが、広告出稿などもせずに良質な見込み客が獲得できているということか。

こういった状況もあって、iettyでは2015年はじめにも黒字化が見えている。「レバレッジの効く事業でもないので泥臭いことをやってきたが、既存事業についてはこのまま突っ走っていけばいい様な状況が見えてきた」(小川氏)。そして更なる飛躍に向けて、今回の資金調達をふまえて新機能の開発を進めるという。その詳細については取材では明らかにされなかったが、2015年初にもサイトリニューアルし、新機能もお披露目される予定だ。加えて、政令指定都市を中心に、サービスエリアを拡大するとしている。

なおiettyは2013年11月に開催した「TechCrunch Tokyo 2013」内で行われたスタートアップ向けのプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」にも登壇してくれた。TechCrunch Tokyoは2014年も開催予定なので、同社のような元気なスタートアップとの出会いに興味がある方は是非とも遊びに来て欲しい。


球場やお寺だって借りられる「スペースマーケット」はビジネス向けのAirbnbだ

最近、スタートアップと話すときに聞くのが「Airbnbを(ときにはUberも)を徹底的に研究した」という言葉だ。特に聞くのはCtoCの領域だろうか。フリマ、旅行・アクティビティをはじめとしてあらゆるところでそういった声を聞く。

その中でもっとしっくりきたのが、4月28日にオープンしたスペースマーケットの「スペースマーケット」ではないだろうか。このサービスは、いわば“BtoB向けのAirbnb”だ。企業の持つ遊休スペースや利用時間外のスペースを、会議や株主総会、研修、イベントなど向けに貸し出すためのマーケットプレイスとなる。

当初利用できるのは、都内を中心にした100スペースほど。提供されるスペースは貸し会議室やオフィススペースにとどまらない、青山迎賓館(結婚式場)、ユナイテッド・シネマ豊洲(映画館)、門間箪笥店(古民家)、正蓮寺(お寺)、オバケン(お化け屋敷)、Coca-Cola Park(野球場)など、ユニークスペースが並ぶ。なんと現在は「お城」などもそのラインアップに入れるべく営業活動中だそうだ。

価格はスペースの性質にもよるが、「ホテルなどで会議をすると、平均で20万円程度かかるという資料があったがそれより安価になる」(スペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏)とのことだ。 実際僕がサイトを見たところ、VOYAGE GROUPのオフィス入り口にあるバースペース「AJITO」やフォトクリエイトセミナールームが利用無料で提供されているのにはじまり、1時間数千円の会議スペース、1日利用45万円の「代官山TSUTAYA」、さらには詳細は問い合わせとなっているスペースまでバラエティに富んでいる。なお、利用は最低3時間(スペースによっては1日)からになるという。

当初は、会場の性質や稼働率、運用をどこまでサポートするかなどの条件によって、20〜50%の手数料を取る。今後は広告でのマネタイズなども検討する。年内1000スペース、3年後5000スペースまでの拡大を狙う。また今後はスペース管理やセキュリティ、イベントへのケータリングなど、パートナーと組んでの派生事業も検討する。

“披露宴会場の課題”が起業のきっかけに

代表の重松氏は、NTT東日本に新卒で入社した後、同社の同期でフォトクリエイト代表取締役社長の白砂晃氏に誘われて同社へ。こそで新規事業のほか、広報、人事を担当。新規事業で立ち上げたウェディング事業は、全国で年間約3万組の結婚披露宴(日本全体では25万組程度らしい)で導入されるに至ったという。

実はここに、スペースマーケット創業のきっかけがある。重松氏はウェディング事業を通じて知ったそうだが、披露宴会場は優秀なスタッフがいるものの、披露宴がない場合、特に平日などは遊休スペースとなる。だが本業とは異なる分野で営業をかけ、スペースの利用を促すことは難しい。

また一方で、フォトクリエイトは各種イベントの写真を撮影し、オンラインで販売する事業を展開していたため、スペースの情報にも詳しく、同時にイベントなどで利用するスペース探しに広告代理店などが苦労している様をずっと見てきた。起業自体は以前から考えていたということだが、この2つの点から重松氏はスペースマーケットの企画を始めたのだという。余談だが同氏の妻はサイバーエージェント・ベンチャーズのキャピタリストとして活躍する佐藤真紀子氏。家庭内の会話で事業計画をブラッシュアップしていったそうだ。

「最初はオフィスの『間借り』のマッチングを考えたが、それではマーケットが小さい。Airbnbから発想したが、受け入れられるのは大きいハコではないかと考えた。イベントだけでなく、株主総会や採用説明会などでイベントスペースは求められている。需要が顕在化しているビジネス領域からまずはやっていこうとなった」(重松氏)。海外でも、「Liqudspace」「eventup」といった、スペースを貸し出すマーケットプレイスには注目が集まっている。また国内でも、サムライインキュベートが投資する「軒先.com」などがある。

 


“リブセンス仕込み”のキャッシュバック付き賃貸情報サイト、運営会社が1億円調達

賃貸情報は4月22日、グローバル・ブレインが運営するグローバル・ブレイン5号投資事業有限責任組合を割当先とする1億円の第三者割当増資を実施した。

賃貸情報は2012年9月の設立。賃貸情報代表取締役の金氏一真氏は、司法書士からジャスダック上場のアスコットに入社し、不動産ビジネスを手がけていた人物。取締役副社長の遠藤彰二氏はリブセンスの創業メンバーで、祝い金(キャッシュバック)付きアルバイト情報サイト「ジョブセンス」の事業部長などを務めた後に独立。その後ブルームの共同創業者となり「ドリパス」をヤフーに売却するなどしている。

同社が2013年11月から展開している賃貸情報サイト「キャッシュバック賃貸」は、賃貸情報の掲載料を無料にし、成約時に情報掲載者に課金するという「成約課金」型のサービスだ。借り主であるユーザーは、成約時にお祝い金として1万円以上のキャッシュバックを受けられる。このキャッシュバックの仕組みを導入することで、運営側で成約情報を把握できるようになっている。またキャッシュバック金額は掲載者が設定することが可能で、金額が大きい物件情報ほど検索結果の上位に表示するようにしている。

掲載物件数は現在98万5000件。今後は仲介会社のシステムとのつなぎ込みを完了すれば常時200万件程度まで物件情報は増える見込み。

”リブセンス仕込み”のビジネスモデル

賃貸情報サイトとといえば、ネクストの「HOME’S」、リクルート住まいカンパニーの「SUUMO」などが大手だが、それぞれ課金の方式が違う。SUUMOでは、掲載自体に課金する「掲載課金」、HOME’Sも以前は掲載課金だったが、現在は掲載自体は無料だが問い合わせがあった場合に課金する「反響課金」という課金モデルを採用している。

掲載課金であれば予算によって掲載できる物件数に限りがあり、その効果を計測することも難しい。そこでHOME’Sが採用したのが反響課金。だが反響課金で掲載数が増えたとしても一部の物件に問い合わせが集中するなどの不都合が起きる。それに対して成約課金は実際に成約した場合にのみ費用がかかるため、もっとも効率がいいという。ただしキャッシュバック金額によって表出順位が変わるため、どういった物件の注目度を上げるかなどは考えないといけないだろう。

「不動産は成功報酬でやっている世界なのに、広告は先払い。先払いの広告を排除するのは、不動産仲介業の悲願」とまで金氏氏は語るが、実際のところ、既存の事業者は相当数の営業マンを抱えていることもあってすぐにビジネスモデルを変更できないこともあり、成約課金にするのは難しいようだ。このあたりはジョブセンスを開始した当時のリブセンスとリクルートの関係にも通じるところがある。

なおこのキャッシュバック賃貸、現在6割のアクセスがモバイルからということもあり、今後はスマートフォン版の開発に注力していくそうだ。


不動産売買(まだディスラプトされてない業界)のUberやAirbnbがそろそろ現れてもよい頃合いだ

80年代には家を探すことがどれだけ大変だったか、今の人には想像すらできないだろう。ここ数年間で、ZillowやTrulia、Redfinなどのサイトが登場し、家を買いたい人や売りたい人に大量の情報を提供してくれるようになった。条件に合った物件が出ると、携帯に通知がくる。それはたぶん、不動産屋さんがその物件を教えてくれるよりも早いだろう。競争の激しい市場で情報が早くアクセス性が良いことは、技術にあまり詳しくない買い手にとってとくに有利だ。比較も簡単にできるから、その物件が高すぎることや、どれぐらい値引きしてくれそうかなども、しろうとに分かるようになった。

以上はとてもすばらしいことであり、今ではRedfinのモバイルアプリなしで家を探すことなど、とても考えられない。でも、不動産スタートアップにできることは、ここまでなのか? ZillowやTruliaがIPOしたということは、不動産情報の世界でスタートアップが大成功できることを示している…ただし両社とも今は、賃貸を重視しているが。しかしいずれにしても現状では、不動産スタートアップのやることは、ユーザにより多くの情報を提供し、不動産屋に見込み客を提供することに、もっぱら限られている。でも本当なら、今よりももっと多くのスタートアップが存在して、不動産市場に大改革をもたらしているべきではなかったのか。

シアトルのRedfinもIPOするという噂があるが、でも多くの競合他社と違って同社は、“テクノロジを活用した不動産仲介企業”を自称している。そこで同社には、不動産屋が地域のMultiple Listing Service(マルチリスティングサービス)から得るのと同じ種類の情報をユーザに提供できる、というアドバンテージがある。ユーザの多くは、RedfinはZillowと横並びで競争していると見ているようだが、実際には同社は各地の不動産屋と組んで、ユーザの物件下見をスケジュールしたり、購入プロセスの一部始終を介助したりしている。しかしそれでも、結局のところ、RedfinのWebサイトは要するに不動産屋さんのための高度な見込み客生成ツールであり、ごく限られた市場で人気はあっても、各地のCentury 21やPrudential、Windermereなどの事業所を近いうちに廃業に追い込むほどの、強力な業態を確立してはいない。

では、不動産における本当のディスラプションとは何か? スタートアップたちはこれまで、商用物件と賃貸アパートだけを扱ってきたが、しかし非商用の私的物件となると、今でも60年代に家を買った人たちが経験したのと同じ売り方しかない。不動産屋さんに頼んで手数料を払う(売り手は小額を直接、買い手は買値に含まれて)。でも、その家や近隣については、自分の方がよく知っているのだ。しかしその家の鍵は不動産屋が持っていて、オープンハウスでないかぎり、不動産屋を介するしかその家の中を見る方法はない。

不動産の売買は相当複雑だ。それを取り仕切る不動産屋の言動が、なお一層、それを大仕事のように思わせる。でも、それをもっと軽く易しく透明にしてくれるスタートアップはどこにいるのだ? たしかに規制の多い業界で、奇妙な慣習もある。でもタクシーは(規制と慣習だらけの業界だが)Uberなどのスタートアップによって見事に変わりつつある。また、一時的な貸し家や貸間は、Airbnbががんばっている。Lockitronみたいなものがあり、またネットからの監視も可能な現代において、少なくとも物件の下見ぐらいは、もっと簡単にできてもおかしくない。

もちろん、良質な不動産屋さんはたくさんおられる。でも長期的に見ると、不動産屋は旅行代理店と同じ道をたどるだろう。特殊な状況向けには高度なプロフェッショナルが残るだろうし、また、ネットを使って自分でやるより専門家に任せたい、という人もいる。でも、意欲的なスタートアップたちによって旅の予約の仕方ががらっと変わったように、不動産もいずれは、変わるに違いない。

しかも、ここには大きな機会がある。誰かが、旧態依然たる業界に変革の大地震をもたらすことを、ぼくは期待してやまない。

写真クレジット: Images_of_Money

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))