【コラム】ドイツのベンチャーキャピタルが離陸するには政府がブレーキを解除する必要がある

編集部注:本稿の著者Uwe Horstmann(ウーヴェ・ホルストマン)氏は、ベルリンを拠点とするベンチャーキャピタルProject A Venturesの共同設立者兼パートナー。

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現在ドイツは、世界的な競争力を持つベンチャーキャピタル市場の構築において、ヨーロッパの近隣諸国に遅れを取っていると言える。しかし、今後の5年間はドイツのベンチャーキャピタルセクターにとって大変に大きな影響をもつと予想され、その将来は非常に明るいと筆者は考える。

ドイツのスタートアップが2020年に調達した金額は64億ユーロ(約8400億円)にのぼり、これはフランスの57億ユーロ(約7500億円)を上回っている。もう1つの好ましい点は、初期段階の市場に対する国内からの投資と国外からの投資のバランスが健全であることである。シードおよびシリーズAの段階では、ドイツのファンドがドイツのスタートアップへの投資のほとんどを占める。企業が成長すると、海外からの投資重要な役割を担う。5000万ドル(約55億円)以上の資金調達ラウンドの半分は完全に外国人投資家が主導しており、ドイツの投資家によるものはわずか5%で、残りの45%は外国人投資家と国内投資家の混合による投資となる。

筆者はこれをドイツVC市場にとって理想的な状態と考える。優れたイノベーションは、国内のファンドから資金を得、支援を受けている。これらの企業が成長して頭角を表すと、最高の投資家を世界中から引き付けるようになり、ドイツのローカル企業という立場から国際化への道が開かれる。これにより初期段階のスタートアップに投資を行うVCは報酬を獲得し、引き続きドイツ国内のスタートアップに投資する。今後市場が成熟していけば、初期段階だけでなく、成長段階に対しより多くのドイツのVC資金が投資されると筆者は確信している。

見通しは良好である。ドイツ市場は現在大変活発に発展しており、パンデミックでさえ、テクノロジーセクターの根本的上昇傾向にほとんど影響を与えなかった。

ドイツ市場は現在大変活発に発展しており、パンデミックでさえ、テクノロジーセクターの根本的上昇傾向にほとんど影響を与えなかった。

ドイツテックに対する国内外からの投資レベルの高まりに加え、政策立案者はドイツでスタートアップやVCファンドが発展できるような好条件を作り出している。

ドイツ連邦政府は100億ユーロ(約1兆3000億円)の未来基金を立ち上げ、ディープテック未来基金に追加で資金を投入した。これにより、ただちに成長段階の市場により多くの資本が投資されるだけでなく、このような政策はドイツが「ビジネスにオープンであることを示してもいる。イノベーションが社会における具体的な改善につながる、ということをドイツが理解していることを世界に伝える明確なシグナルになるのである。これは、世界中のファンドにとって力強い、歓迎すべきシグナルである。

ドイツは投資家にとってだけではなく、技術者にとっても大変魅力的な国である。ドイツが未来のモデルを提示する中、ますます多くの技術者がドイツへの移住を望むようになっている。

長期的視点からみても状況は良好である。ドイツは製造およびエンジニアリング部門で世界的に有名であり、国内生産を通じて貿易黒字を生み出している数少ない国の1つである。製造およびエンジニアリング部門はイノベーションを通した大々的な飛躍をまだ遂げていない。従って、ドイツのスタートアップは高まりを見せる「インダストリー4.0」イノベーションの活動から、メリットを享受できる大変有利な立場にあり、ドイツの製造業の中心地で生まれたスタートアップが、ベルリンとミュンヘンで増え続ける技術者のプールと融合する準備が整いつつある。

シェアオプションとスピンオフはドイツのスタートアップにとってのアキレス腱だ

ドイツのVCとテック市場は新たな飛躍を遂げる準備が整っている。しかし、大幅な改善が求められる領域が2つある。それは社員株オプションとスピンオフをめぐる規制である。

ドイツは官僚主義に陥っており、それはイノベーションにとっては脅威である。テルサの新しいギガファクトリーの例は、煩雑な行政プロセスがいかにあらゆることをスローダウンさせるかの最新の例である。

ドイツのスタートアップにとって、スタートアップで働く社員が会社の成功から利益を得、またスタートアップエコシステムが自力で発展していくためにも、従業員ストックオプションプラン(ESOP)の 改革は今すぐにも実行する必要がある。

税制上の優遇措置に関する現行法案は、業界のニーズを反映しているとは言えない。例えば、免税措置が適用されるのは設立から10年未満の会社の従業員のみである。従業員が別の会社に移る場合、事前に会社の株式に対する税金を払う必要があり、これは重大な破産のリスクをともなう。これは10年以上が経過していても利益をだすことができないでいるスタートアップが多いからであり、税金は従業員が持ち株から実際に利益を上げたとき、つまり株式を売却したときにのみ支払う形にすべきである。こうしたこともあり、スタートアップは従業員に対し新たなESOPを提供しない。

もう1つの問題はスピンオフである。ドイツはヨーロッパで最も特許出願数が多い国である。しかし、スタートアップが革新的テクノロジーを製品市場に適合させることができない場合が多い。ドイツの大手研究機関からのスピンオフを実行する場合、高額の機関固定費とライセンス料が課されるため、足場を固めるには非常な困難をともなうのだ。ドイツはもっと柔軟に対応し、スタートアップが必要とするスペースと資金を与えるべきである。

スピンオフ時に創設者が直面する固定費や膨大な行政手続きを削減すべきであるし、また投資家は、研究者から創設者に転向した人々に対して、より多くの運営上のサポートや組織上のサポートを提供する必要がある。さらに、VCは、成功するまでに多少時間がかかると目される革新的なアイデアやテクノロジーにもっと投資する勇気を持つべきである。BioNTechは、そうした長期間にわたるサポートが報われた最良の例といえる。

ドイツのユニコーン企業について

現状では、2021年にはすでにドイツで多数の新しいユニコーン企業が登場しておりPersonioMambuSennderGorillasTrade Republicは数十億ドル(数千億円)の評価を得ている。そしてこうしたユニコーン企業の数は今後も増える見通しである。

規制当局が最終的にストックオプションとスピンオフにまつわる官僚的形式主義を取り払うことができれば、ドイツの技術とVC業界は新たな高みに到達することができるだろう。筆者は今後数年間で前向きな変化が起きることを期待し、ドイツにたくさんのユニコーン企業が生まれることを楽しみにしている。

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(文:Uwe Horstmann、翻訳:Dragonfly)

U25起業家と起業家予備軍対象に創業前後の支援を行うコミュニティ「TORYUMON ZERO」が第3期メンバーの募集開始

U25起業家と起業家予備軍対象に創業前後の支援を行うコミュニティ「TORYUMON ZERO」が第3期メンバーの募集開始

プレシード期・シード期のスタートアップを支援する独立系ベンチャーキャピタル「F Ventures」は7月29日、25歳以下の資金調達前の起業家と起業予定者を対象に創業前後の支援を行うコミュニティー「TORYUMON ZERO」(トウリュウモン・ゼロ)の第3期メンバー募集の開始を発表した。参加者には、プログラム期間中限定で、渋谷のレンタルオフィス利用の権利と、アマゾンのクラウドプラットフォーム「AWS」の無料クレジットとテクニカルサポートが提供される。

TORYUMON ZEROは、数多くのエンジェル投資家や起業家をアンバサダーに招いて「将来の日本を支えるような経営者の輩出」を目指す、オンラインメインのコミュニティ。これまで2回募集を実施しており、ここから初めての資金調達につなげたメンバーも複数あった。第3期となる今回は、次のような活動が予定されている。

「TORYUMON ZERO」第3期・提供特典および活動内容

  • TORYUMON SEMINAR
  • 事業の「壁打ち」をはじめとしたVCメンバーによるメンタリング
  • 外部のキャピタリストの方々によるオフィスアワー
  • 創業支援・資金調達支援
  • TORYUMONでのピッチ機会
  • 事業を作る上で役立つ情報やノウハウの共有
  • オフライン含む交流会などを通じた横と斜めのつながり提供
  • AWSで使える無料クレジット、テクニカルサポート、トレーニングなどの提供

U25起業家と起業家予備軍対象に創業前後の支援を行うコミュニティ「TORYUMON ZERO」が第3期メンバーの募集開始

また活動は、9月初旬から開始される。利用できるオフィス(9月以降利用開始)は、レンタルオフィス「H¹O 渋谷三丁目」(東京都渋谷区渋谷3丁目1-1 PMO渋谷Ⅱ内)。ただ活動自体は完全オンラインで行われるため、日本全国から応募できる。

募集対象は、応募時点で調達前の25歳以下の起業家(登記前でも可能)。募集開始は7月29日、締め切りは8月20日午後11時59分。応募は「TORYUMON ZERO3期生応募フォーム」から行える。書類審査による一次選考と、オンライン面談による二次選考がある。一次選考の結果は1週間以内にメールで知らされる。二次選考通過者は順次コミュニティーのSlackに招待される。

詳細はこちらから

「TORYUMON ZERO」3期生募集概要

  • 募集人数:30名程度
  • 募集期間:2021年7月29日〜8月29日23時59分
  • 活動開始:2021年9月初旬始動
  • 対象:応募時点で調達前のU25起業家(登記前・エンジェルラウンド調達済でも可)。起業する予定のある学生・社会人。成長に貪欲な人。積極的にコミュニティの環境を活用できる人
  • 応募フォームTORYUMON ZERO3期生応募フォーム

募集スケジュール

  • 2021年7月29日:募集開始
  • 8月20日:募集締切、順次選考
  • 9月初旬:コミュニティ活動開始

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【コラム】世界中のエコシステムでエグジットの効果を最大化するためにVCが行うべき4つのこと

多くのベンチャーキャピタル企業(VC)にとって、エグジット、すなわち現金化によって投資を回収して次に進むことは、その投資案件の終わりを意味する。しかし、知っての通り、スタートアップの世界は進化している。つまり、投資によってもたらされるインパクトを左右する要素は今や投資金額の大小だけではないということだ。

VC企業は、投資家として、各投資案件が人類にとって何を意味するのか、VCの使命と資本をどう連携させていくか、という点について掘り下げて考えている。長期に及ぶインパクトにつながる強力な機運を生み出すきっかけの1つは、ポートフォリオ企業のエグジット成功だ。しかし、そのエグジットの効果が最大限に生かされていない。

エグジットは、適切に活用すれば、本当の意味で影響力を持つ企業を誕生させることにつながる。すべての創業者に平等にチャンスを与えて優れたアイデアに力を与えようとする場合はなおさらだ。米国以外の国々で生まれた製品が世界を席巻し、国際的な取引が当たり前になっている今、投資業界は「アメリカファースト」のアプローチからゆっくりと離れつつある。

投資家は、非常に高いポテンシャルを持つ企業が、その所在地に左右されずに、世界中で重宝されるような製品を生み出すことを可能にする原動力になる。そのような企業の手法には、業界を刷新し、海外の創業者でも国内の創業者と同じチャンスを与えられる場所へと変える力がある。

我々は、資本を使ってその手法を実践する基本的な方法ならすでに知っている。まず必要なのは、レプリゼンテーションが低い創業者に投資することだ。しかし、この記事では、多様性に富んだ創業者が戦える場を整える点でエグジットが持つ力について語りたいと思う。そのためには、他の起業家の事業が高額で買収されるのを見ることから生まれる心理的なモチベーションや、エグジットを終えたスタートアップのチームが次に取り組むこと、また、一市民の功績が一国家の評判にどれほどの影響を及ぼすのかという点について検討する必要がある。

2020年、ベンチャー投資を受けた41の企業が10億ドル(約1100億円)規模のエグジットを達成し、そのエグジット総額は1000億ドル(約11兆円)を超えた。これは10年ぶりの最高記録だ。VC企業は今、そのようなエグジットに関してかつてないほどの影響力を持っている。そして、大型エグジットを連鎖的に引き起こしていくためにVC企業にできることが4つある。

1. 競争心を引き出す

外国人の起業家が米国企業から資金を調達し、その事業を別の米国企業に売却すれば、当然それは移民の目に留まる。その外国人起業家の製品がどれほど画期的なアイデアに基づいたものだとしても、米国に住む移民たちは、少なくともベンチャー投資用資金の93%が白人男性にコントロールされている限りは、その外国人起業家にすべての希望を託したいとは思わないだろう。

米国人の発明家よりも移民の方が40%も多くイノベーションに貢献していることが研究によって証明されているのにも関わらず、このような状況なのである。

そのような外国人起業家が最も必要としているものは自信とロールモデル、そして、同じような立場の人々が同じような業界で色々と波風を立てながらも成功していることを示すサクセスストーリーである。

したがって、あるエグジットが大きな話題になると、業界内の他の外国人創業者は、自分の事業にテコ入れをして次の段階に進めようとする。それだけなく、彼らはより自信を持って資金調達に臨むようになる。そして、その自信を投資家は高く評価する。

筆者がこの記事を書こうと思い立ったのは、自分と同じくスペインからサンフランシスコに移住した移民創業者が起業したフィンテック企業Returnly(リターンリー)がAffirm(アファーム)によって3億ドル(約329億円)で買収されたことがきっかけだった。ちなみに、完全な透明性を期すために書いておくが、筆者はリターンリーにエンジェル投資、およびシリーズBとC段階での投資を行ってきた。

個人的に金銭的な利益を享受した筆者には、それだけでもこのエグジットに対して賛辞を送る十分な理由がある。しかし、シリコンバレーという競争の激しい環境の中で、その不利な立場に負けず、米国を拠点とする投資家から多額の資金を調達し、最終的には米国企業による買収を達成した外国人創業者の成功は、世界中の多様性豊かな創業者にインスピレーションを与えた。このエグジットはスペインの主要メディアやビジネスメディアで大きく報じられ、LinkedInアカウントには「つながり」リクエストやお祝いメッセージが殺到した。

外国人起業家のスタートアップにも資金調達の機会を平等に与えようとするグローバルな視点を持つ組織の存在を、エグジットを通して外国人起業家に示すことができれば、そのエグジットがもたらすインパクトはさらに強くなる。つまりそれは、世界各国の起業家に注目し、世界各地のエキスパートを結びつけるネットワークを築くVC企業が存在することを意味するからだ。

投資家は、エグジットを進める際に創業者が外国人であることを大いに宣伝し、その創業者がこれまでに乗り越えてきた課題や獲得してきたチャンスについて語ることによって、そのエグジットが業界にもたらすインパクトを最大化できる。さらに、そのようなサクセスストーリーに注目することにより、多様性が豊かな外国人起業家に投資することの価値が過小評価されているという事実を米国人投資家たちに納得させることができる。このようなエグジットを達成することにより、ニッチな外国人起業家に投資するVC企業としてのブランド力を強化し、資金調達を打診するスタートアップを引きつけて、この好循環をさらに強化することも可能だ。

2. 富を生み出す好循環を作る

大型エグジットが成功すると、関係する全投資家は多額の富を手にする。そして、その富が使われないまま投資家の手元にとどまる可能性は低い。投資家はその富を投資するために、高いポテンシャルを持つ別の企業、恐らくは大型エグジットを達成した直前の企業と同じような企業を探すことだろう。

しかし、そのような投資家は、自社のポートフォリオにおいて前述のような好循環を促進するだけでなく、同じようにするよう他の投資家にも働きかけるようになる。

どのエグジットも、成功例であれ失敗例であれ、外国人起業家とそのスタートアップにとって「前例」となる。高い利益を見込んであるスタートアップに出資する投資企業が1つでもあると、それを嗅ぎつけた他の投資家がそれに続く。なぜなら、スタートアップ投資の世界では外国人創業者や少数派民族の創業者は依然として過小評価されており、非常に高いポテンシャルを秘めていながらも、積極的に投資する企業がまだ少ないからだ。無比のチャンスを探す目を持つVC企業であれば、従来の形にとらわれないスタートアップに出資して大きな利益を手にした投資企業が1社でもあれば、それを見逃さない。その投資企業が同じ業界の別の企業に継続して投資している場合はなおさらだ。

この流れをサポートするために、最近エグジットを成功させ、類似する創業者に再投資してきたエンジェル投資家やVC企業は、そのような成功例の連鎖について大いに宣伝し、1つの成功例が同業界の別のスタートアップへの投資へとつながってきた経緯を説明するべきだ。さらに、成功した前例に基づいて特定の起業家を育てる決断をしたことを、自社のネットワーク内の企業にきちんと伝えることもできるだろう。

リターンリーの創業者は最近、自分が手にした利益の一部を当社のファンドに戻すことを申し出た。彼と同じ立場の外国人起業家が1人でも多く資金を調達できるようにするためだ。投資企業が創業者と意義深い関係を育み、多様性豊かな起業家に力を与えることに真剣に取り組めば、富の増大という投資企業としての使命もよりよく果たせるだろう。

3. 再投資を促進する

「ペイパルマフィア」はPayPal(ペイパル)の元幹部や元社員で構成される起業家集団である。そのメンバーには、南アフリカ共和国出身のElon Musk(イーロン・マスク)氏やドイツ系米国人のPeter Thiel(ピーター・ティール)氏など、1つの業界だけでなく、テクノロジーに関する複数の業界で大きな革新を生み出してきた起業家たちが名を連ねる。ペイパルマフィアの中には、YouTube(ユーチューブ)、LinkedIn(リンクトイン)、Yelp(イェルプ)、Tesla(テスラ)などの創業者や、米国大使になった者もいる。1つの企業だけでこれだけの効果を生み出せたのであれば、多様性が豊かで意欲にあふれた他のスタートアップのチームが大型エグジットに成功して資金とインスピレーションを手にしたら、チームメンバーは自分たちを信じてくれた人たちの成功に感化されて、1人また1人と、それぞれ自分で再投資を行うようになるだろう。

そのようにして設立されたベンチャーは、出自に関係なく平等なチャンスを与えるという特性を「次世代に引き継ぎ」、その使命によってより多くの雇用を創出していく可能性が高い。例えば、ペイパルマフィアのティール氏はこれまでに欧州だけで40以上の企業に投資してきた。

VC企業は、スピンオフするベンチャーに目をつけて、可能であればサポートする(出資しない場合でも、これまで積み上げてきた知識や人脈を使ってサポートする)ことにより、このチーム効果を活用できる。しかし、それだけでなく、投資の世界に参入するよう、そのようなベンチャー創業者の背中を押すことも検討できる。自社のポートフォリオ企業から始めるよう勧めてもよいだろう。成功したスタートアップの創業者や幹部社員の多くは投資家に転身する。例えばペイパルマフィアのメンバーは、現在最も有名なファンドのいくつかに出資してきた。成功したスタートアップのチームメンバーたちは、出自に関して自分たちもさまざまなことを経験してきたがゆえに、過小評価されている創業者たちを投資によって支援したいと、より強く思うようになる。そして、新しい起業家たちは自分たちの体験からさらなる価値を引き出せるようになるのだ。

4. 評判を次につなげる

前述したリターンリーの本社はサンフランシスコにあるが、同社の創業者はスペイン人で、従業員の多くがスペインを拠点としている。

つまり、リターンリーのエグジットによってもたらされるインパクトは大西洋の反対側にあるスペインでも、米国に入るスペイン人移民たちの間でも感じられるということだ。同じことは他のエグジット売却にも当てはまる。例えば、スペインで創業し、スペイン国内に複数のオフィスを持つAlienVault(エイリアンボルト)だ。同社は米国の通信大手AT&Tに9億ドル(約987億円)で買収された。または、IPO(新規株式公開)の例もある。今月初め、スペイン発の決済サービス企業Flywire(フライワイヤー)がIPOを申請した。IPO価格は30億ドル(約3289億円)になると予想されている。1つのスタートアップが成功すると、そのスタートアップに関わったチームメンバー全員の評判が上がり、ひいては、彼らと同じ国の出身で、同じ背景、教育、目標を持つ他の創業者や人材の評判も上がる。

その結果として、投資家や他のステークホルダーは、成功した創業者と出身国を同じくする別の創業者を支援したいという気持ちになる。その国の出身であることが、スタートアップのミッション、専門知識、文化に寄与していると考えるからだ。

同時に、成長中のスタートアップは、明白な成功実績を持つチームから人材を採用したいと感じる。これは、米国でより多くの外国人専門家を採用することだけでなく、米国以外の国へアウトソースする道を探ることも意味している。我々はすでに、リモートチームと働くことに非常に慣れており、チームの半分が眠っている時間帯にもう半分が働くというように時差を利用した方が資金を効率よく使える。しかし、創業者たちは常に、地元の人材とイノベーションがすでに活発に生まれている国に引きつけられる。VC企業はそのような話をポートフォリオ企業と始めるとよいだろう。

VC企業には、業界を永久に変え、大陸を超えてスタートアップエコシステムをつなげて、スタートアップが世界中に拡大していくのをサポートする力がある。しかし、その力を発揮するには、投資家として関わり続けるだけでなく、スタートアップがエグジットを達成した後に迎える次のステージがポジティブなものになるよう尽力する必要がある。

スタートアップの未来が本質的にグローバルで多様なものになることを認識していない投資家は、絶好のチャンスにめぐり合えないし、最良の創業者から選ばれることもないだろう。遅れを取り戻すことよりも、グローバルで多様なエコシステムを構築することに力を尽くすべきだ。

編集部注:Laura González-Estéfani(ローラ・ゴンザレス-エステファニ)氏は、TheVentureCityの創設者兼CEO。TheVentureCityは、グローバルな起業家のエコシステムをより多様に、国際的にそして公正な資本にアクセスできるように設計された、事業者主導の国際的なベンチャーアクセラレーションモデル。

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(文:Laura González-Estéfani、翻訳:Dragonfly)

基礎研究を応援するANRIが給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ」第4期生募集開始

基礎研究を応援するANRIが給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ」第4期生募集開始

「未来を創る」起業家の支援を行うANRIは、特に研究開発型の大学発スタートアップを支援する中で、すぐに利益を生むことはないものの科学技術の発展には欠かせない基礎研究に資金が集まりづらく、学生には厳しい環境が続いていると感じていた。そこで、給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」を立ち上げることにしたという。第4期となる今回は、奨学金受給希望者を最大10名募集している。

ANRIのジェネラル・パートナー、鮫島昌弘氏はこう話す。
「基礎研究すぎる? 成果が出るまで時間がかかる? 誰のためになってるの? そんな批判はもういいじゃない。自分がやりたい研究をトコトンやってほしい。もし君が周りからなかなか評価されずに暗闇の中でもがいているなら、僕らが小さなロウソクになれれば嬉しいなと思います」

「ANRI基礎科学スカラーシップ」の主な内容

  • 支給金額:1人あたり50万円(採択より1年間)
  • 募集対象:数学や物理学、生物学、化学などの分野において優秀な成績を収めた学生(年齢制限なし)
  • 募集人数:10名まで
  • 選定方法:書類選考。必要に応じて面接も実施
  • 応募締め切り:2021年8月31日
  • 発表:10月末ごろ
  • 応募注意事項:ANRIが提供可能な資料は「ANRI学生向け研究費支給通知書」「寄附金申込書」「研究費使用規定」の3点のみ

応募はANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」第4期生 応募フォーム」から。

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スタートアップ向け株主総会電子化ツールや投資家向け未上場株式管理クラウドのケップルが約4.7億円を調達

スタートアップ向け株主総会電子化ツールや投資家向け未上場株式管理クラウドのケップルが約4.7億円を調達

起業家と投資家を支援し「世界に新たな産業を創造する」を理念に、VC・事業会社向け未上場株式管理クラウド「FUNDBOARD」、スタートアップ・中小企業向け株主総会電子化ツール「株主総会クラウド」などを提供するケップルは7月14日、第三者割当増資による約4億7000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先には、SuMi TRUSTイノベーションファンド(三井住友信託銀行CVC)をリード投資家に、SBIインベストメント、SMBCベンチャーキャピタル、ストライク、辻・本郷ビジネスコンサルティングが参加している。

ケップルは、FUNDBOARD、株主総会クラウドの他に、スタートアップの適正な企業価値の算定やファンドの決算を支援するサービス、CVCの立ち上げ・運営の支援なども行っている。2018年12月には日本経済新聞社と資本業務提携を結び、共同でスタートアップのデータベースを運営。2021年1月には、三井住友信託銀行と資本業務提携を結び、同行のノウハウやネットワークを活かした企業のオープンイノベーション支援を行ってきた。

今回調達した資金は、既存事業の拡大と新規事業の創出に使われる。

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ANOBAKAが事業会社対象に急成長スタートアップ100社への出向型留学サービス「CROSS WORK」を開始

ANOBAKAが事業会社対象に急成長スタートアップ100社への出向型留学サービス「CROSS WORK」を開始

シードおよびアーリーステージの起業家を支援する独立系ベンチャーキャピタルANOBAKA(アノバカ)は7月6日、HR支援事業を核とする戦略的子会社ANOBAKA Human Capital(ヒューマンキャピタル)を設立し、第1弾事業となる出向型留学サービス「CROSS WORK」を開始した。

出向型留学とは、大手企業の社員が籍を置いたまま、別の企業に一定期間出向して研鑽を積む制度。「CROSS WORK」は、おもに新規事業の立ち上げやDX人材の育成に取り組む企業を対象に、ANOBAKAが成長目覚ましいスタートアップ100社を厳選し、希望者をそこへ1年間ほど「留学」させるというもの。投資企業にハンズオン支援を提供するANOBAKAは、それぞれのスタートアップの経営状況を熟知しているため、優良な企業を留学先として紹介できるという優位性がある。また、環境が変わることで負荷がかかる留学者には、事前研修や定期的なメンタリングも提供される。

出向型留学については、経済産業省も「越境学習によるVUCA時代の企業人材の育成」や「出向起業等創出支援事業」といった職場留学を推進する事業を行うなど、その効果には期待が高まっている。ANOBAKAは、これまでの事業会社とスタートアップの人材交流を通じて、「スタートアップ留学」で大きく成長し、会社に戻った後に活躍する人たちを多く見てきた経験があるという。今後は、それを「CROSS WORK」として幅広い事業会社に提供してゆくとのこと。サービス開始記念として、7月15日までに問い合わせをすると、初月無料割引が受けられる。

ANOBAKAは、「夢見るバカを信じつづけるバカでいたい」との理念のもと、「ときには無謀ともいえるような夢の原石」を見いだし支えることを目指している。

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起業家と投資家が自分の時間の都合に合わせてつながれる非同期ピッチ動画プラットフォーム「GoToPitch」がリリース

起業家と投資家が自分の時間の都合に合わせてつながれる非同期ピッチ動画プラットフォーム「GoToPitch」をScientistPageがリリース

「アカデミックの隠れた情報を可視化する」研究成果専門の動画プラットフォーム「ScientistPage」(サイエンティストペイジ)を展開するScientistPageは6月24日、スタートアップの投資活性化を目指したピッチ動画プラットフォーム「GoToPitch」(ゴートゥーピッチ)のリリースを発表した。

同サービスは、ピッチ動画の作成と録画機能にマッチング機能を組み合わせたもの。登録制のクローズド動画プラットフォームで、全世界の起業家と投資家を対象にしている。大きな特徴は次の3つ。

動画で伝える
スタートアップが投資家に初めて連絡する際は、テキストと添付資料を送るのが一般的だが、動画をメインに使うことで「起業家のリアルな声や表情を通して、テキストだけでは伝わりきらない人柄や熱量をそのまま伝える」ことができる。

ピッチ動画に特化した独自の録画機能
余計なものや音が入り込まないよう、決められたフォーマットで「起業家本人とピッチ資料のみを同時に映しながら、自身の声と合わせて簡単に録画」できるため、録画後の編集の手間も省ける。

マッチング機能
起業家はピッチ動画を公開し、目指す投資家にアポイント申請を行える。投資家は、スタートアップのピッチ動画を検索・視聴し、気になったスタートアップに個別にメッセージを出せる。

スタートアップが資金調達を行うには、多くの投資家と面談する必要があり、その都度、時間調整・アポイントメント・資料の提示、そしてピッチを各投資家の前で行わなければならなず、その時間と労力は本業を圧迫しかねない。GoToPitchを使えば時間的・金銭的コストを大幅に効率化でき、投資家も投資先を探し回る労力を削減できるとしている。

ScientistPageは、大学などの研究機関にも積極的に展開し、大学発スタートアップを支援したいと話している。

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湘南アイパークがVC・CVC・製薬会社の連携の場「日本VCコンソーシアム」の第2期会員企業を募集

湘南アイパークがVC・CVC・製薬会社の連携の場「日本VCコンソーシアム」の第2期会員企業を募集

湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)は6月22日、「日本VCコンソーシアム」の第2期会員企業の募集開始を発表した。募集期間は6月22日から7月21日まで。同コンソーシアムは、日本のライフサイエンス業界の投資を活性化させるため、ベンチャーキャピタル(VC)、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、製薬会社の研究または事業開発部門が連携し投資促進に向けた議論の場として発足したもの。

2020年、米国の製薬およびバイオ企業へのVC投資は総額約232億ドル(約2兆5600億円)に上り、コロナ禍で大幅に増加した。IPO件数も過去最大となり、資金調達総額は97億円(約1兆710億円)を記録したという。これに対して日本のヘルスケアVC市場は、湘南アイパークの分析によれば、2020年時点で約1360億円と、アメリカ市場の約2.5%にすぎない。

「個々のVC、CVCの活動規模が小さく、また横のつながりが希薄なために、大胆なリスク投資を行えない」という日本の現状を踏まえて活動を行う日本VCコンソーシアムは、2020年の第1期ではVC・CVCが10社参加し、「デジタル医療」「オリゴ核酸のデリバリー技術」などをテーマに、今後の投資トレンドなどを議論した。2021年は「最前線のBio-Informatics活用」と「New Chemical Spaceを実現してきたBiotech」をテーマに、さらに実践的な議論を行うという。

湘南アイパークのジェネラルマネジャー藤本利夫氏は、こう述べている。
「欧米や中国で加熱するバイオテク投資に比べて、日本での投資規模はまだまだ小さいことに危機感を覚えています。本コンソーシアムにおいて参加各社が研究開発の最前線の情報を共有し、日本の技術開発およびその投資への意識を高めていくことで、イノベーションを加速し、国際競争力を高めていく1つの原動力になればと期待しています」

日本VCコンソーシアム第2期募集概要

  • 名称:日本VCコンソーシアム(英語名:Japan VC Consortium)
  • 募集対象企業:VCまたはCVC、Pharmaなど(1年ごとに更新)
  • 募集期間:2021年6月22日~7月21日
  • 第2期開始日:2021年7月27日
  • 会費:22万円(税込)
  • 応募・問い合わせ:shonan-health-innovation-park@takeda.com (担当:中川)

日本VCコンソーシアム活動内容概要

  • 活動内容:各領域における最先端の情報をもとに会員間で実践的なディスカッションすることで、会員企業がそれぞれ投資・ライセンシングのケイパビリティを向上させる
  • 上期テーマ(2021年7月~12月):最前線のBio-Informatics活用
  • 下期テーマ(2022年1月~6月):New Chemical Spaceを実現してきたBiotech
  • 毎月、「Biotech最先端の講演を聴講・議論」「個別企業間の面談」「運営事務局と個別企業の面談」といった活動を行う

カテゴリー:VC / エンジェル

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技術シーズ向けアクセラレータープログラム「BRAVE2021 Autumn」が参加スタートアップ募集開始

技術シーズ向けアクセラレータープログラム「BRAVE2021 Autumn」が参加スタートアップ募集開始主にシード、アーリー期のディープテック・スタートアップへの出資や支援を行う独立系ベンチャーキャピタル(VC)Beyond Next Venturesは6月9日、アクセラレータープログラム「BRAVE」(ブレイブ)の2021年秋コース参加者の募集を開始すると発表した。

高度な技術シーズを事業化し成長させることを目標に、2016年にスタートした「BRAVE」は、これまで6回開催され、102チームが参加し、うち45%が起業に成功。卒業後の累計資金調達額は121億円にのぼる日本最大級のプログラム。

デモデイで優秀な成績を収めたチームには、最大200万円の賞金か、金額相当の事業化支援が贈られる。さらに、パートナー企業からの特別賞のほか、総額1億円規模の助成金への推薦、Beyond Next Venturesからの出資が受けられる。

プログラム概要およびエントリー方法

  • 応募期間:2021日8月27日午後11時59分まで
  • 応募資格:高度な科学技術シーズを持つ研究チーム・スタートアップ・カーブアウトを狙うチーム(学生、社会人、国籍、起業の有無は問わない)
  • 募集領域:アグリ・フード、AI、環境・エネルギー、メディカル・デジタルヘルス、バイオ・創薬
  • プログラム期間:2021年10月2日から11月20日までの約2カ月間。デモデイは12月22日に予定
  • BRAVE2021 Demo Day開催日:2021年12月22日
  • BRAVE2021 Demo Day開催場所:日本橋ライフサイエンスビルディング(オンラインで開催に変更する可能性がある)
  • 参加費:無料
  • 申し込み方法BRAVE公式サイトの「APPLY」ボタンより応募

賞金・特典

  • 最大200万円の賞金または金額相当の事業化支援を授与
  • 総額1億円規模の助成金への推薦。Beyond Next Venturesがプロモーターを務める助成金「START:研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム」(JST START)、NEDO STSなど
  • パートナー企業からの特別賞
  • Beyond Next Venturesからの出資

またBRAVEの特徴としては、同社が保有する2000名以上の経営人材プールを活用した経営幹部候補人材とのマッチング、ビジネス・技術・知財・法律などのスペシャリストによる事業プラン・事業計画作成サポート・ピッチ大会/Demo Dayに向けたプレゼンのアドバイスなどの実戦的メンタリングなどがある。BRAVEの卒業生(BRAVE Alumni)だけが参加するコミュニティへのアクセスも可能となるほか、BRAVEのコンセプトに共感しスタートアップとの連携機会を模索しているパートナー企業とのマッチングも実施される。

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ベンチャーキャピタルの民主化とは?

あるベンチャーキャピタリストが私にこう言った。テック企業のマーケティング資料に「民主化」という言葉を見つけたら危険信号だと思え。一般に、民主主義には皮肉な落とし穴がついてまわる。白人の男性が不均衡に利益を得る。ふだん私はこんなわびしい話で書き始めることはないのたが、これはテック起業家のLolita Taub(ロリータ・タウブ)氏とJosh Taub(ジョシュ・タウブ)氏夫妻が作った新しいツールが、真に革新的な何かを生み出す可能性があると私が考える理由だ。

タウブ夫妻は、GP-LP(ゼネラル・パートナー[GP]とリミテッドパートナー[LP])を立ち上げた。過小評価されているファンドマネージャーがファンドの立ち上げに必要な資金を手に入れるための マッチングツールだ。このマッチメーキングは、ファンドを立ち上げようとする人たち(GP!)と小切手を書く人たち(LP!)を結びつける役割を果たす。これは、彼らの作ったファウンダー、投資家のマッチングツールから1000回以上の出会いと27件の投資が生まれ、総額400万ドル近い金額が動いたことを受けて作られた仕組みだ。

そし、LPとGPをつなぐことは技術的にもコンセプト的にも比較的単純だ。そしてこれは比較的単純な実験でもある。しかし、5年前はもちろん10年前には決してあり得なかった。Zoom投資は人々が出会い、入念に検討する手段を大きく変えた。このGP-LPツールは、新たに生まれてくるファンドマネージャーが彼らの資金調達プロセスの幅を広げる上で鍵になる場所になると私は考える。

資金調達と言えば、

このツールが、過小評価されている人たちを手助けすることだけに特化している点は、他の多くのツールと異なる部分だ。伝統的シリコンバレーの型にはまらない、女性、LGBTQ+たち、非アイビー卒(あるいは非エリート企業出身者)、裕福でない人たちを対象としている。AngelList(エンジェルリスト)などのサービスが資金を動かしていることはすばらしいが、現在行われている公開の資金調達の恩恵に預かっているのは、そもそもそこに参加するためのネットワークを持っている人たちがほとんどだ。AngelListで資金獲得した人のリストがここにある。

つまりはこういうことだ。今、ファウンダーや投資家が自分たちのコミュニティを活用して小切手に結びつけるためのツールはたくさんある。しかし欠けているのは、コミュニティやネットワークを持たず過小評価されている人たちがチャンスを見つけるためのツールだ。新参のマネージャーが2回目3回目のファンドを立ち上げることに躊躇するLPはまだまだいるが、これは正しい方向への大きな一歩だ。そして今後どこまでうまくいくか、見守っていくつもりだ。

先週は、黒人その他の評価されることの少ないファウンダーにとって大きな1週間だった。

本稿の後半は、防災テック、Airbnb(エアービーアンドビー)、およびヘルスケア・コミュニケーションのS-1申請を取り上げる。私はいつでもTwitter(ツイッター)のここ@nmasc_.で見つけられる。

防災テックは転換点に来ている

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

防災テック、例えばデータを使って山火事を消火したり、衝撃的な出来事の後、脳波を分析してPTSTを分析するスタートアップは、重要な時を迎えている。驚いただろうか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や進行中の気候危機は、起業家たちに、文字どおりの災害と戦う先を見越したソリューションを開発するエネルギーを与えた。TechCrunchのDanny Crichton(ダニー・クライトン)が、4回にわたって状況を伝えている。

Airbnbの次の旅

画像クレジット:Getty Images

2020年3月以来、Airbnbに注目が集まっている。世界的に名の通っている旅行と短期宿泊サービスだ。ほぼ1年前に同社は、売上が減少し、従業員の約25%にあたる1900人弱を解雇したことを報告した。そして、デジタル・ノマド・ライフスタイルと長期旅行が復活した今、この会社には一読の価値のある成長ストーリーが生まれた。

要点はここだ:AirbnbのCEO Brian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏はTechCrunchのJordan Crook(ジョーダン・クルック)と、1日も早いポスト・パンデミックに備えて彼の会社がやっていることについて話した。Airbnbのスタンスが良い結果につながるかどうかはまだわからないが、パンデミックに打ちのめされ、その後復活した会社の共同ファウンダーの考えを知ることは、他のファウンダーが困難と戦う上でも参考になるだろう。

ブライアン・チェスキー:パンデミック中の旅行会社が、赤の他人が一緒に寝泊まりすることに基づく会社を立ち上げるより狂気の沙汰であることはわかっていませんでした。私は今、39歳から49歳になろうとしているように感じています。これまででいちばんクレイジーな一年であったことは間違いありません。

会社は当初、8週間で80%落ち込みました。私は車にたとえて話しています。時速80マイルで飛ばして、急ブレーキをかけ、何も悪いことが起きない、などということはありえません。今は、時速80マイルで走っていて、急ブレーキを踏んだあと、走りながらクルマを修理して、IPO目指して加速しているところを想像してみてください。全部Zoomの上で。

未来の生活が未来の仕事と融合するとき:

1週間の出来事

TechCrunch

Extra Crunch

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タグ:VC

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アプリコットベンチャーズとTLM、総額30億円を目標とした新ファンド「mint」設立

アプリコット・ベンチャーズとTLMがプレシード期に特化した30億円規模の新ファンド「mint」設立

ベンチャーキャピタル事業を展開するアプリコット・ベンチャーズTLMは5月26日、新ファンド「mint」を設立したと発表した。引き続き出資者を募集しており、最終的なファンド総額は30億円を予定している。

アプリコット・ベンチャーズおよびTLMはそれぞれプレシード期に特化したファンドを運営していたが、より多くの「0→1」起業を応援したいとの思いから、両者の知見を活かし、創業期における投資先企業の支援体制を拡大するためにmintを設立した。

mintの主な投資対象は、国内を中心とするプレシード期のIT系スタートアップ企業で、追加投資を含め1000万円~3億円程度の出資を行うとしている(すでに6社に出資)。

また、起業を検討・予定している人向けに、起業家コミュニティに参加できる6カ月間無料のオフィス支援プログラム「FLAP」の利用、EIR(客員起業家。Entrepreneur In Residence)制度、社会人向け起業支援プログラム「Springboard」を通じた創業支援を行う。

また、次の分野での支援体制も整えている。

  • コミュニティ:コワーキング・オフィス「GUILD SHIBUYA」「Hatch」勉強会&Slackグループ「Mint Community」の運営
  • エンジニア:創業期の悩みの種であるエンジニア採用・開発組織づくりに注力した支援、勉強会などを通じて交流可能な投資先CTOコミュニティ「PROP」、投資先共同でのLT大会などを実施
  • 専門家ネットワーク:CI、BI、UI/UXデザイン、プロダクトデザイン、ディレクションまで幅広くブランドを支援するクリエイティブチーム「Unthem」(アンセム。GUILD SHIBUYAに入居)といった専門家とのネットワークを構築。GUILD SHIBUYA入居者はUnthemへの相談が可能

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セゾン・ベンチャーズとライトアップが中小企業DXを促進するスタートアップに出資・営業支援

ライトアップと、クレディセゾンのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)セゾン・ベンチャーズは5月24日、中小企業のDXを促進するスタートアップ企業に対する出資や営業支援、経営支援で連携すると発表した。また、6月からはピッチイベントも定期開催する。

両社は有望なスタートアップへの出資に加えて、数十万の法人顧客データベースを活用した「出資後の営業支援」を協力して実施する。またセゾン・ベンチャーズは、クレディセゾンがペイメントビジネス、ファイナンスビジネスなどで培ってきた経営資源を通して、中小企業の事業活動によるキャッシュフローの改善を図る。

また6月からは、DXピッチイベントの定期開催を予定しており、ピッチイベント優秀者への出資や出資企業への営業支援を行う(ライトアップとセゾン・ベンチャーズあわせて年間20〜30社程度の出資・営業支援を想定)。ピッチイベントへ申込みはこちらのGoogleフォームから可能だ。

ライトアップは「全国、全ての中小企業を黒字にする」というビジョンのもと、「世の中が望むサービスをできるだけ多く、できるだけ低コストで提供し続けていく」をモットーに、様々なネット系新規事業を手がけている。セゾン・ベンチャーズは、国内カード業界初のCVCとして、シード・アーリーステージのスタートアップ企業との取り組み強化を目的に設立されたクレディセゾン子会社だ。

両社によると、スタートアップ企業を資金面で支援するVCおよび上場企業は数多く存在するものの、出資後の営業支援を継続的に受けるのは難しいという。

有望なサービスであっても、営業力が不足することで契約数が増加せず継続が困難になってしまうことは起こりうる。これは、サービス提供側のスタートアップ企業にとっても、そのサービスを利用するはずだった中小企業にとっても「大きな損失」となるとしている。

今回の取り組みでは、両社合計で数十万の法人顧客データベースを活用した「出資後の営業支援」を行うことで、中小企業にとって有益なサービスを全国に広めていけるのではないかと考えているという。

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独立系ベンチャーキャピタル「One Capital」が1号ファンドを160億円でクローズ

独立系ベンチャーキャピタル(VC)のOne Capitalは5月18日、One Capital 1号ファンド(1号ファンド)の運用総額が同日の追加募集により160億円に達し、クローズしたと発表した。

One CapitalはSaaSスタートアップへの出資および支援だけでなく、出資者のイノベーション支援ならびにプロダクト(SaaS)開発も行うVCだ。出資者のイノベーション支援では、デジタルトランスフォーメーション(DX)のアドバイザリーを行なっている。

今回の追加募集には、中小企業基盤整備機構や海外投資家(機関投資家、ファミリーオフィス、個人)が参加。4月15日にリリースしたセカンドクローズより、さらに45億円増加している。これにより運用総額は160億円となり、国内独立系VCの1号ファンドとしては過去最大となった。また、海外投資家比率も4割を超えており、日本のSaaS市場に対する期待が高まっているとしている。

2020年4月に元Salesforce Venturesの浅田氏が設立し、従業員コンディションを解析する「Well」などへの出資を実施してきたOne Capital。SaaS市場の拡大とともに、その活動に注目が集まりそうだ。

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「日本版StartX」目指す東大1stROUNDが東京工業大など4大学共催の国内初インキュベーションプログラムに

スタンフォード大学の卒業生が運営するStartXをご存知だろうか。これまで700社以上のスタートアップを生み出したこの非営利アクセラレータプログラムは、同大学出身者からなる強力なスタートアップエコシステムの形成に寄与している。

このStartXの「日本版」を目指し誕生した、東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)主催のインキュベーションプログラム「1stROUND」は、新たに筑波大学、東京医科歯科大学、東京工業大学の参画を発表。国内初の4大学共催のインキュベーションプログラムとして始動する。

「株を取得しない」インキュベーションプログラム

1stROUNDは、ベンチャー起業を目指す上記4大学の学生や卒業生を主な対象として、最大1000万円の資金援助と事業開発環境を6カ月間提供するインキュベーションプログラムだ。その目標は、設立後間もないベンチャーの「最初の資金調達(ファーストラウンド)」の達成までをサポートするということ。実際に、1stROUNDの採択企業34社のうち90%が、VCからの資金調達に成功しているという。

1stROUNDの大きな特徴は、最大1000万円の資金提供をするにも関わらず「株を取得しない」ということだろう。これは、採択したベンチャーが後に大成功を収めることになったとしても、1stROUONDとしては直接的な利益を享受しないことを意味する。また同プログラムには、パートナー企業としてトヨタ自動車、日本生命、三井不動産など業界を代表する大企業が名を連ねているが、これらの企業も「無償」で同プログラムに資金を提供している。

画像クレジット:東大IPC

一見したところ「1stROUNDには投資家として参加するインセンティブがないのでは」と考えてしまうが、東大IPCやパートナー企業にも大きなメリットが存在する。それをわかりやすく示す例が、2020年4月に設立されたアーバンエックステクノロジーズだ。スマートフォンカメラを活用して道路の損傷箇所を検知するシステムを開発していた同社は、1stROUNDに応募して採択された企業の1社である。

当時、創業約5カ月にすぎなかったアーバンエックスに起こったことは、1stROUNDのパートナー企業である三井住友海上火災保険との戦略的提携だった。日本最大級の損害保険会社である同社は「ドラレコ型保険」を展開しており、約300万台のドライブレコーダーを保有する。これにアーバンエックスのAI画像分析技術を搭載することで、ドラレコ付き自動車が日本全国の道路を点検できるようになった。同プログラムを創設した水本尚宏氏は「1stROUNDのネットワークがなければ、まず実現し得なかったことだと思います」と話す。

その後、アーバンエックスはVCからの資金調達を成功させるが、そのリード投資家となったのは東大IPCの「AOI(アオイ)1号ファンド」だった。同ファンドは、1stROUNDと同じく水本氏が2020年に設立し、パートナーとして運営している。つまり、1stROUNDでは採択したベンチャーの株を取得することはないものの、のちにAOIファンドで出資を行い株を取得することができるので、東大IPCとしても将来的に利益を確保することが可能になる。

1stROUNDで支援を受けるベンチャーは、無償での資金提供に加えて大企業とのネットワーク支援を受けられる。一方でパートナー企業は「誰の手にもついていない」ベンチャー企業の情報収集や、戦略的提携の可能性がある。そして、東大IPCにとっても後のファンド投資につながる可能性がある。1stROUNDは、三者にとってメリットがある見事な仕組みといえるだろう。

画像クレジット:東大IPC

AOI 1号ファンドは240億円超に増資

これまで主に東大の学生や卒業生などを対象として運営してきた1stROUNDは、今後東京工業大学・筑波大学・東京医科歯科大学を含めた4大学に門戸を広げる。また、企業の一事業や部門を新法人として独立させる「カーブアウト」を主に扱うAOIファンドも、設立時の28億円から241億円への増資を発表し、さらに勢いに乗りそうだ。

1stROUND、AOIファンドの運営を行う水本氏はこう語る。「私達は『ファンドとしてきちんとリターンを出す』ことを目指しています。当たり前と思われるかもしれませんが、上から『儲からない案件をやれ』と言われがちな官民ファンドは、この基本的な部分が緩みがちなのです。しかし私は、1stROUNDのプレシードや、AOIファンドのカーブアウトといった、一般的に難しいとされる分野で成果を出したい。『こういう投資が儲かる』ことを証明し、民間VCや企業が参入してきた結果、エコシステムが大きくなると思うからです。私たちが民間VCと同じくらい、もしくはそれ以上にきちんと儲けることが、ゆくゆくは日本のためになると信じています」。

成功事例に乏しい分野にあえて挑戦し、国益に資することを目標とする東大IPC。数年後、ここから世界を驚かせるベンチャーがいったい何社出てくるか、楽しみだ。

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カテゴリー:VC / エンジェル
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米国のVC業界に急増するアジア人差別と戦う動き

長年のベンチャーキャピタリストであるHans Tung(ハン・トゥン)氏は体格が大きい。これが命を救ってきたかもしれない。

トゥン氏は1984年に米国ロサンゼルスにやって来た台湾系米国人第1世代で、14歳だった同氏にとって当時は大変な時代だった。その2年前には中国系米国人Vincent Chin(ビンセント・チン)という名の27歳の製図工がデトロイトでChrysler(クライスラー)工場の監督と、その義理の息子によって殴り殺された。自動車メーカーに解雇されたその義理の息子は、日本の自動車産業の勢いある発展に怒っていて、チンが日本人の子孫だと信じていた。チンは自身のバチェラー・パーティー(結婚前の男性が男友達と開くパーティー)の夜に殺された。

それから数十年の間、反アジア人の感情は減っていたかもしれない。しかしまだ一定残っていた。そしてトゥン氏はその反アジア人の感情を受ける側だった、と話す。「大人になり、挑発に直面しました。カリフォルニアだろうがボストンだろうが、あるいはニューヨークだろうが、人種的差別的な言葉での挑発です。私の身長が193cm、体重は90kg超あるのは幸いでした」。もしかすると身体的なことで嫌がらせを受けたことがあるかもしれない。

トゥン氏は今ほど自身の体格について注意深くなったことはない。反アジア人の感情は2020年、新型コロナウイルスに関する政治的なレトリックを元に突然悪化した。「新型コロナが中国で発生したとき、アジア系米国人が非難されるだろうとわかっていました」とトゥン氏は話した。同氏はクロスボーダーの投資会社GGV Capitalのマネージングディレクターとして仕事で定期的に米国と中国を行ったり来たりしていた。「我々は同じようなことをSARS(重症急性呼吸器症候群)のときも体験しましたが、それは大きなパンデミックではなく、アジア人は嫌がらせを受けましたが殺されはしませんでした」。

友人や家族との会話、そして特に高齢者がサンフランシスコオークランドニューヨークの地下鉄、タイムズスクエアの近くで殴られるという気がかりなニュースからして、米国のアジア人にとって現在は危険な状況だとはトゥン氏は確信している。米国時間3月29日には65歳の女性がひどい暴行を受け、その様子を見物人が撮影していた事件は国民の怒りを引き起こした。

数字がトゥン氏の主張を裏づけている。最初にNBCが報じたように、2019年から2020年にかけて、全体のヘイトクライム(増悪犯罪)率は減少している一方で、アジア人を標的にしたヘイトクライムは増えている。このニュースはカリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校のヘイト・過激主義研究センターが発表した分析に基づいている。研究では、そうした犯罪は2020年7%減った一方、アジア人を標的にした犯罪は150%近く増えていて、ニューヨークで最も急増していることが明らかになった。ニューヨークではアジア人に対するヘイトクライムが2019年に3件だったのが、2020年は28件と833%増加した。

そうした数字は2021年に増え続けていて、トゥン氏とGGV Capitalのパートナーは2週間前に自分たちが力を発揮できるところですばやく行動を起こすことを決めた。資金力とネットワークでもって増える暴力に対応するというものだ。最初のステップはAAPI(アジア系米国人と太平洋諸国出身者)のコミュニティをサポートしている組織への10万ドル(約1110万円)の寄付先を公募するというものだった。GGVの動きに、何か手伝いたいと思っていた他の投資家や創業者らもすぐさま呼応した。ここにはLightspeed Venture PartnersのJeremy Liew(ジェレミー・リュー)氏、Goodwater CapitalのEric Kim(エリック・キム)氏とChi-Hua Chien(チフア・チエン)氏らも含まれ、彼らもまた10万ドルの寄付をマッチングしている。

話を早送りすると、GGVの事実上のTwitterキャンペーン11日間で創業者175人超、Jen Rubio(ジェン・ルビオ)氏、Stewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏、Eric Yuan(エリック・ユアン)氏を含む、と「VCコミュニティで目にするのは稀」とトゥン氏が指摘するパートナーシップのようなもので30超のベンチャーファームから約500万ドル(約5億5350万円)の寄付が集まっていると同氏は話す。

すばらしいスタートだと話すトゥン氏は、全国ベンチャーキャピタル協会の統計によると米国のベンチャーファームでパートナーを務める15%のアジア・太平洋諸島出身者の1人だ。

と同時に、トゥン氏は問題は続いており、より多くのリソースが必要だと指摘する。そのリソースとは、増大する差別とそれをほのめかすものに対処するさまざまなアジア系米国人コミュニティにみんなが直接送っているものだ。実際、寄付者の関心を正しい方向へと送り込むのをサポートするために、GGVは少なくとも影響を与える取り組みをしていると確信している5つの組織を推薦している。これらの組織はAsian Americans Advancing JusticeRed Canary SongGoFundMe Support the AAPI CommunityStop AAPI HateCompassion in Oaklandだ。

トゥン氏は、GGVが投資会社や役員室に男女平等をもたらそうと取り組んでいる組織AllRaiseを含む他のキャンペーンでも積極的に動いてきたとわざわざ断った。同氏のパートナーたちは2020年春のBlack Lives Matter(黒人の命も大事だ)運動にも大きく心を動かされ、NAACP Legal Defense FundやSouthern Poverty Law Centerなどに寄付をしたと同氏は指摘する。

Redpointの投資家Ryan Sarver(ライアン・サーバー)氏が2020年、シェフが作った食事を買って病院のスタッフに提供するという寄付の方法を考案してフロントラインワーカーやレストラン従業員をサポートした取り組みを含め、先の動きから学ぶものがあったとトゥン氏は話す。

そうしたレッスンの1つが、誰かの心に通じるものがあるとき、それが針を動かすのであれば「見せびらかしているVC」として見られるリスクを冒す価値がある、というものだ。

今回の場合「こうした犯罪の多くが個人の問題として扱われていて、ヘイトクライムとして扱われていません」とトゥン氏は話す。ヘイトクライムにはより厳しい罰則がある。そして同氏はこの問題を啓発することを決めた。たとえこれが、愉快なものではなく自身を脆弱な立場に置く体験になることを意味していてもだ。

「アジア人ヘイトは、私自身の問題です」と同氏は話している。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

Tiger Globalが同社最大のベンチャーファンドを約7351億円でクローズ

我々と同じように、資金調達の発表に目を通している人なら、2021年はあることに気づいたかもしれない。多数のメガラウンドが行われている中、Tiger Global(タイガー・グローバル)という投資会社が、その多くに共同リードとして参加しているのだ。

今週だけでも半ダースほどの企業の資金調達で、このニューヨークを本拠とする大手投資会社はリードまたは共同リードを務め、あるいは小切手を切っている。それらの中には、D1 Capital(D1キャピタル)と共同で主導し3億ドル(約332億円)のシリーズCラウンドを行ったHighRadius(ハイラディウス)や、Tiger Globalが主導した延長シリーズCで1億9200万ドル(約212億円)を調達したCityblock Health(シティブロック・ヘルス)、1億2500万ドル(約138億円)のシリーズDラウンドでTiger Globalからフォローオンチェックを受けた6sense(シックスセンス)などがある。さらにTiger Globalは、創業5年目のAIチップメーカーであるGroq(グロック)の3億ドルの資金調達ラウンドを共同リードする交渉を行っているとも報じられている。

関連記事:AI搭載フィンテックソフトウェアのHighRadiusが約340億円調達、評価額を3倍の約3400億円に

その資金がどこから来ているのかと不思議に思う人もいるかも知れない。Tiger Globalは2020年1月に、13番目のベンチャーファンド(迷信的な理由から「XIV」と名付けられた)のために37億5000万ドル(約4146億円)を調達するという手紙を投資家に送ったのだが、新たに米国証券取引委員会に提出された書類によると、この新しいファンドはその2倍近い金額、66億5000万ドル(約7351億円)でクローズしたばかりであることがわかる。

この金額はこの市場においても、またTiger Globalにとっても莫大な数字だ。同社は2020年、12番目のファンドを37億5000万ドルの資本コミットメントでクローズしたばかりだ。

さらなる情報を求め、我々は1月に同社の資金調達計画を取材したが、その際にも記したように、Tiger Globalは潜在的なリミテッドパートナーに対して強力な提案をしているように見えた。

その直近の成果としては、ポートフォリオ企業であるStripe(ストライプ)が2021月3月に6億ドル(約663億円)の資金調達を完了し、評価額を950億ドル(約1兆502億円)に伸ばした。また、Tiger Globalが株式の10%を保有していたゲーム会社のRoblox(ロブロックス)は、直接上場して上場企業となった。同社の時価総額は現在380億ドル(約4兆2050億円)だ。

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2020年には、ポートフォリオ企業の多くが上場するか買収されており、その中には中国の大手化粧品ブランド「Perfect Diary(完美日記)」の親会社で、設立5年を迎えるYatsen Holding(逸仙控股)や、クラウドベースのデータウェアハウス企業であるSnowflake(スノーフレイク)、オハイオ州コロンバスに本社を置く保険会社で6年近く前に設立されたRoot insurance(ルート・インシュアランス)などがある。

M&Aに関しては、2020年はTiger Globalが出資する少なくとも3つの企業が大手ハイテク企業に吸収された。Postmates(ポストメイツ)はUberに26億5000万ドル(約2932億円)で全株式売却。Credit Karma(クレジット・カーマ)はIntuit(インテュイット)へ現金と株式による70億ドル(約7745億円)で売却された。顧客サービスプラットフォームとチャットボットに注力するKustomer(カスタマー)はFacebook(フェイスブック)に10億ドル(約1106億円)で買収されている。

ヘッジファンド運用をルーツとするTiger Globalは、ヘッジファンドのパイオニアであるJulian Robertson(ジュリアン・ロバートソン)氏の下でTiger Management(タイガー・マネジメント)に勤務していたChase Coleman(チェイス・コールマン)氏と、Blackstone Group(ブラックストーン・グループ)に3年間勤務した後、2002年に入社したScott Shleifer(スコット・シュライファー)氏が中心となり、2003年にプライベートエクイティ事業を開始。後にビジネスに大きく貢献することになるLee Fixel(リー・フィクセル)氏が2006年に加わった。

シュライファー氏は中国を、フィクセル氏はインドを担当し、その他のサポートチーム(現在、22名の投資プロフェッショナルが在籍)は、ブラジルやロシアでの案件発掘を支援していたが、その後は米国におけるチャンスをより積極的に狙うようになった。

すべての投資判断は、最終的に3人それぞれが行っていた。フィクセル氏は2019年に退社し、自身の投資会社、Addition(アディション)を起ち上げた。現在はシュライファー氏とコールマン氏のみが会社の意思決定者を務めている。

Tiger Globalの投資家には、政府系ファンド、財団、基金、年金、そして自社の従業員が混在しており、現時点では従業員がまとめて同社の最大の投資家であると考えられている。

Tiger Globalのこれまでの最大の成功例としては、電子商取引大手のJD.comに2億ドル(約221億円)を賭けて50億ドル(約5530億万円)の利益を生み出したことなどが挙げられる。WSJによると、2018年に上場した中国のオンラインサービス・プラットフォーム、Meituan(美団)でも10億ドル(約1106億円)以上の利益を上げている。

また、Tiger GlobalはコネクテッドフィットネスのPeloton(ペロトン)への投資を通じて巨額の利益を得ており、Pelotonが2019年にIPOした時にはその20%を保有していた。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ゼンリンがCVC子会社ゼンリンフューチャーパートナーズ設立、25億円規模のファンドを立ち上げ予定

ゼンリンがCVC子会社ゼンリンフューチャーパートナーズ設立、25億円規模のファンドを立ち上げ予定

ゼンリンは3月11日、スタートアップ企業への投資を通じた既存事業の成長と新規事業の創出を目的に、コーポレートベンチャーキャピタル子会社「ゼンリンフューチャーパートナーズ」を設立したと発表した。今後、総額25億円のファンドを立ち上げ、スタートアップへの投資を行う。

ゼンリングループは、これまでもM&Aおよび協業・資本提携により事業領域を拡大してきた。しかし、近年の位置情報ニーズの多様化や飛躍的な技術革新に対応し、既存事業の成長と新規事業の創出を加速するには、より広範・多岐にわたる分野・業種のスタートアップ企業との協業や資本提携が有効と判断したという。迅速な意思決定や投資実行を可能とするCVC子会社として、ゼンリンフューチャーパートナーズを設立し、CVC事業に進出することとした。

今後は、CVCを通じて、ゼンリングループとの事業シナジーが認められる企業への投資を行う。また、最先端技術や独自サービスを有するスタートアップ企業に対し同グループ経営資源の提供することで、新規事業の共創を実施するなど、柔軟かつスピーディーに実行できる体制を構築する。

ゼンリンがCVC子会社ゼンリンフューチャーパートナーズ設立、25億円規模のファンドを立ち上げ予定

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XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

ベンチャーキャピタルのXTech Ventures(XTV)は2月22日、2本目となるXTech2号投資事業有限責任組合(2号ファンド)の組成を発表した。1stクローズ時点で53億円を集めており、ファンド総額最大100億円規模を想定し今後もファンドLP(有限責任組合員)の募集を行う。1号ファンドと合わせた累計での運用総額は100億円以上となった。運用金額と投資件数の増加に伴い、メンバーの拡充による投資体制の強化を図るという。

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesは、IT業界での経営経験と投資経験を兼ね備えた共同創業者の手嶋浩己氏、西條晋一氏を中心に2018年に設立。「テクノロジーの力を信じ、投資活動を通じて、起業家と共により良い未来を創造する」をビジョンに掲げ、ミドル層を中心とした起業を促し、良質なスタートアップを数多く生み出すことで、起業家と共により良い未来を創造する世界を目指している。

また同社は、2018年6月に組成したXTech1号ファンドのインフォグラフィックスを公開した。

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:XTech / クロステック(企業)VC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」のメンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」メンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

「若い才能が活躍する入り口となる」ことを目指すシードVCの「THE SEED」は2月18日、上場企業経営の実績を持つエグゼクティブが「インターン」のメンターとして参画するプログラム「#THESEEDハウス」を開始したと発表した。Clubhouseにおいて、毎週月・水・金11時から30分間開催している。

THE SEEDは、次世代を担う才能が集う場をオンラインで設けるために、「#THESEEDハウス」を開始したという。オープンなチャネルとして開催し、質問や話が気軽にできる場としていくそうだ。

#THESEEDハウスには、上場企業の経営実績や士業としての実績を持つ方が「インターン」のメンターとして参画。フラッと立ち寄って、「VCやエンジェル投資家との投資面談」「同世代起業家との接点」「創業者探し」「メンター発見」などが起こる機会を提供していくとしている。

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」メンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

  • 須田仁之氏(弁護士ドットコム、グッドパッチ監査役。毎回参加予定)
  • 中林紀彦氏(ヤマトホールディングス執行役員)
  • 西尾公伸氏(第二東京弁護士会)
  • 原田明典氏(DeNA 常務執行役員)

THE SEEDは、廣澤太紀氏が前職East Venturesから独立し、シードラウンド向けとして2018年に立ち上げたファンド。若い才能が活躍する入り口となり、大きな挑戦の後押しをするとしている。1000万円前後の出資を行い、その後シリーズAで資金調達を達成するための支援として、同世代起業家のネットワーク提供や、ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家の紹介などを行っている。

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タグ:Clubhouse(製品・サービス)THE SEEDVC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

ダブリンのVC「Frontline Ventures」がB2Bスタートアップ向けファンドに89億円調達

ダブリン拠点のFrontline Ventures(フロントラインベンチャーズ)が欧州のB2Bスタートアップを対象とする7000万ユーロ(約89億円)のFrontline Seed Fund IIIの詳細を明らかにした。新ファンドによりFrontlineが管理するファンド総額は2億5000万ユーロ(約317億円)になる。同社はロンドン、ダブリン、サンフランシスコにオフィスを構えている。ファンドへの出資者は欧州と米国にまたがり、European Investment Fund(EIF)、Ireland Strategic Investment Fund(ISIF)、アイルランドの大手銀行AIB、そのほか主にエグジットした起業家など10人のテックエンジェル投資家だ。

新規ファンドはすでにアーリーステージの企業への投資を開始し、今後4年間で45社への投資を目指す。投資額は25万〜250万ユーロ(約3200万〜約3億2000万円)だ。新規ファンドはFrontlineの米国拠点のグロースステージファンドFrontline Xに続くもので、アイルランドがEUのメンバーであること、そしてブレグジットの予期せぬ結果の恩恵を受ける立場であることを踏まえている。Frontline Xは欧州やEU地域に進出したい米国のスタートアップ向けのものだ。

パートナーのWilliam McQuillan(ウィリアム・マクキラン)氏は新しいファンドが資金の約50%を新たなアーリーステージ企業に投資すると述べた。残りの資金はすでにポートフォリオにある企業への後の投資に振り向ける。

マクキラン氏の見立てでは、グローバルのB2Bソフトウェアマーケットの26%を欧州が占め、そして米国が50〜55%と欧州は成長する余地がかなりある。

2020年、ロンドンにオフィスを開設したSequoia、そして直近ではGeneral Catalystなど米国のVCファームが欧州に根づきつつある中での新しいシードファンドの立ち上げとなる。2020年5月にFrontlineはKleiner Perkins、Index、Sequoiaとともにアイルランドに本社を置くEvervaultに投資した。

Frontlineのポートフォリオにあるシード期の企業の70%が2012年以降に米国のVCから資金を調達した。そしてFrontlineのパートナーはGoogle、Twitter、SurveyMonkey、Airtable、Yammerなどの企業と協業した。

声明の中で、マクキラン氏は「Frontlineスタート時の2012年のデータをみると、欧州の起業家が欧州外での事業を立ち上げるためのインフラやサポートが欠けていたのは痛々しいほど明らかでした。本日、欧州は当然のことながら米国の投資家のターゲットリストの上位にきます。チームとして、当社は大西洋を超えて創業者たちのサポートに注ぐ経験とリソースを蓄積してきました。Seed Fund IIIは創業者たちが離陸し、世界に進出するのをサポートする我々の取り組みのエクステンションになります」。

Frontlineの投資で目を引くものには、Linked Finance、Clearbanc、Currencyfairが含まれる。Frontline XグロースファンドはTripActionsのシリーズB、People.aiの1億ドル(約105億円)のシリーズC、Clearbancの5000万ドル(約53億円)のシリーズBなどに投資した。

注目すべきエグジットにはRapid7に買収されたLogentries、CenturyLinkに買収されたOrchestrate、2020年にGoogleに買収されたPointyがある。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi