スマート畜産の普及を目指すNTT東日本の通信環境実証実験にAI家畜管理サービスPIGIが協力、IEEE802.11ah活用

養豚プラントの設計施工や畜産のDXを推進するコーンテックは2月9日、AI家畜管理サービス「PIGI」(ピギ)について、NTT東日本による「スマート畜産」普及に向けた通信環境実証実験に提供することを発表した。

この実証実験は、NTT東日本が、NTTアクセスサービス研究所と連携し、神奈川県の畜産業者臼井農産の養豚場を実験場として行われるもの。畜産現場でのプラチナバンド(700〜900MHzの周波数帯域)のIoT向けWi-Fi「IEEE802.11ah」が活用可能かどうかを確かめことを目的としている。同通信規格を試す理由は、従来のWi-Fiに比べてカバーエリアが広く、中継器や無線LANの親機を減らすことができ、カメラやセンサーの台数を増やせるなどのメリットがあるためだ。

ここで、コーンテックのPIGIがデータを提供することになる。PIGIは、豚の頭数・体重をカメラで撮影した画像から解析するというシステム。通常は、大人の男性2名が3分間以上をかけて行う作業を10秒程度で済ませられるという。勘と経験に頼らず、人の介在も減らして、効率的に管理が行えるだけでなく、最適な体重での出荷を可能にし、収益率を上げられるとしている。

コーンテックは2021年、NTT東日本、臼井農産とPIGIを使って、豚の体重・体格・肉質を計測する実証実験を行っている。今後もこの取り組みで蓄積されたデータを活用して、臼井農産は「最高品質の豚肉の提供」を目指し、NTT東日本とコーンテックは、神奈川県内の養豚業へのIoTサービス導入の支援と、養豚業の発展に向けた新たな仕組み作りを検討してゆくとしている。

Metaの低価格通信サービスExpress Wi-Fi停止、サハラ以南の国々への影響大

サハラ以南のアフリカ諸国は、Meta(メタ)が5年前に開始した、サービスが行き届いていない地域での接続を促進するための低価格のExpress Wi-Fiインターネットの廃止計画による影響を最も大きく受けている。

Meta(旧Facebook)は、2022年後半にこのプログラムを終了する予定であることを静かに通告した。しかし、ケニアなどの国では、2020年12月中旬からサービスを停止している。

Metaが人工衛星通信事業者のEutelsat Konnect(ユーテルサットコネクト)と提携し、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、ケニア、コートジボワール、ザンビア、カメルーン、ガーナ、ジンバブエ、マダガスカル、ガーナ、南アフリカ、ウガンダの一部へと低コストのインターネットサービスを拡大してからようやく1年というところでのサービス停止だ。

その他、マラウイ、ブルキナファソ、ギニア、セネガルなど、アフリカ、アジア、南米の30カ国以上でExpress Wi-Fiは展開された。

「5年以上の運営を経て、Express Wi-Fiプログラムは終了を予定しています。パートナー企業とともに、Express Wi-Fiプラットフォームを通じて、30カ国以上で公衆Wi-Fiアクセスの拡大を支援しました。当社は、他のプロジェクトの開発に集中するために、このプログラムの作業を終了しますが、より良い接続性を提供するために、通信エコシステム全体のパートナーと協業することに引き続き尽力します」とMetaは通知で述べている。

「2022年後半にこのプログラムに関する作業を終了する際、Express Wi-Fiパートナーと密接に連携して、パートナーのビジネスと顧客の接続性への影響を最小限に抑えるようサポートします」。

ソーシャルメディアの巨人Metaは、ISPやモバイルネットワーク事業者などのパートナーと協力し、地方や都市部の市場などの公共の場や学校などの施設で、Wi-Fiホットスポットを通じて、人々がネットに接続できるようにしてきた。パートナーが小売店や代理店が販売するインターネットセット商品の価格を設定する。

このプログラムは、世界で最も接続性が低いアフリカなどの新興市場におけるインターネット格差を埋めるという構想のもとに展開された。2021年のGSMAモバイル経済レポートによると、現在サハラ以南のアフリカでモバイルインターネットに接続しているのは人口の約28%だ。これに対し、ヨーロッパなど他の地域の接続率は80%を超えている。Metaの野心的なExpress-Wifiプロジェクトは、このインターネット格差を埋めることを意図していた。Metaは、低コストインターネット戦略の一環として、4万5000キロメートルの2Africa海底ケーブルをアフリカ、ヨーロッパ、アジアに延長している。

Google(グーグル)も南アフリカ、ナミビア、ナイジェリア、セントヘレナにまたがる海底ケーブルEquianoを敷設中で、これはアフリカとヨーロッパを結ぶものだ。インターネットインフラの整備が進めば、接続性も高まることが予想される。

国際金融公社(IFC)は、アフリカのインターネット経済は、デジタル消費の拡大、都市化の進展、スマートフォンの急速な普及などにより、2025年までに1800億ドル(約20兆7200億円)に達し、アフリカ全体のGDPの5.2%を占める可能性があると推定している。

画像クレジット:Meta

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

数百のホテルで提供されるゲスト用Wi-Fiシステムにセキュリティ上の欠陥発見

あるセキュリティ研究者によると、世界の何百ものホテルがゲストにWi-Fiネットワークを提供し、管理するために利用しているインターネットゲートウェイには脆弱性があり、ゲストの個人情報を危険にさらしている。

Etizaz Mohsin(エティザズ・モーシン)氏が語ったところによると、Airangel製のHSMX Gatewayにはプレーンテキストなどハードコードのパスワードがあり、それらは極めて簡単に推測できるものだ。そのパスワードをここでご紹介することはできないが、攻撃者はそれらを使ってゲートウェイの設定と、Wi-Fiを使っているゲストの記録があるデータベースにリモートでアクセスしている。それによりゲストの記録を盗んだり、ゲートウェイのネットワーキングの設定を変えて知らぬ間にゲストを悪質なウェブページへリダイレクトしたりするという。

2018年、モーシン氏は彼が泊まっていたホテルのネットワークが使っているゲートウェイの一部でそれを発見した。そのゲートウェイは、インターネットを介してファイルを別のサーバーと同期するために使われており、モーシン氏によると世界中の有名高級ホテルの一部が数百ものゲートウェイのバックアップファイルをそこに置いていた。またそのサーバーには「数百万」のゲストの名前やメールアドレス、到着と出発の日付が保存されていた。

モーシン氏はそのバグを報告し、サーバーは保護されたが、そこからある考えが浮かぶ「このたまたま1つのゲートウェイに、何百もの他のホテルを危険にさらす、その他の脆弱性はなかったのか?」

そしてそのセキュリティ研究者は、顧客情報の窃盗行為などゲートウェイの侵犯に使われる可能性がある他の5つの脆弱性を見つけた。彼が見せてくれたスクリーンショットでは、あるホテルの脆弱なゲートウェイの管理インターフェースが、ゲストの名前やルームナンバーやメールアドレスを暴露していた。

モーシン氏は新たに発見した欠陥のキャッシュをAirangelに報告したが、それから数カ月が過ぎても英国のネットワーキング機器メーカーはバグを修正していない。同社代表者は、その機種は2018年以降販売しておらず、すでにサポートしていない、とモーシン氏に告げた。

しかしモーシン氏によると、その機器は世界中のホテルやモール、コンベンションセンターなどで今でも広く使われている。インターネットをスキャンしてみると600以上のゲートウェイがインターネットだけからアクセスできる状態だが、本当の脆弱なデバイスの数はもっと多いだろう。被害を受けたホテルの多くが英国、ドイツ、ロシア、そして中東全域にある。

「この脆弱性の連鎖が攻撃者に提供するアクセスのレベルを見るかぎり、彼らにできることの限界はないようです」とモーシン氏はいう。

モーシン氏は彼の発見を、2021年11月にサウジアラビアで行われた@Hackカンファレンスで提示した。Airangelにコメントを求めているが応じていない。

画像クレジット:Jeff Greenberg/Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

名古屋大学が約1ナノミリのカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、Wi-Fiにも対応

名古屋大学がカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、電磁波を機械的な振動に変えてさらに電気信号に変換名古屋大学は11月17日、大規模なデジタルデータを受信可能なカーボンナノチューブ1本からなる極微小アンテナの開発を発表した。ナノスケールでありながら、安定した高精度のデータ伝送を実現できる。なおカーボンナノチューブとは、六角形の炭素ネットワークが直径約1nm(10億分の1m)の円筒状になったもの。

これは、名古屋大学未来材料・システム研究所の大野雄高教授と豊田中央研究所の舟山啓太研究員らによる共同研究。IoTやAIの利用拡大により、様々な情報を同時に高精度で検知するために、1つのシステムに多数のセンサーを設置する必要が生じてきた。そのため、センサーの小型化が求められている。それがこの研究の背景となっている。

通常のアンテナは、拾った電磁波を電気的な信号に直接変換する。だが、受信したい電波の波長によってその大きさが決まるため、どうしても数ミリから数センチの大きさになる。それに対してこの超微小アンテナは、電磁波を機械的な振動に変え、それを電気信号に変換するというもの。高い機械強度と優れた電気特性を持つカーボンナノチューブを使うことで、ナノスケールにまで小型化が可能になった。

名古屋大学がカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、電磁波を機械的な振動に変えてさらに電気信号に変換

原理はこうだ。1本のカーボンナノチューブの一端を固定し、その先端からわずかに離れた場所に微小電極を配置する。ここに直流電圧をかけると、カーボンナノチューブの先端から微小電極に電子が飛び出して電流が流れる。そこに外部から信号(電磁波)が照射されると、カーボンナノチューブの中の電子に静電力が働き、信号に合わせてカーボンナノチューブが振動する。カーボンナノチューブと微小電極との間に流れる電流の大きさは、その距離によって変化するので、カーボンナノチューブが振動することで電流も増減する。これを信号として受け取る。

名古屋大学がカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、電磁波を機械的な振動に変えてさらに電気信号に変換

アンテナが非常に小さく、信号から受け取るエネルギーも小さいためにノイズを受けやすいが、符号誤り訂正などのデジタル通信技術を組み合わせば、通信速度は現在主流のWi-Fi環境(80MHzの帯域幅)にも対応でき、通信速度は70Mbpsという十分な性能を発揮する。そのため、画像データやビデオ通話のような大容量データ通信への応用の可能性もあるという。また、さまざまな信号検出にも応用が可能で、生体内や大気中の情報などを直接検出できる可能性も秘めていると、同研究グループは話している。

農村部や遠隔地の何十億人たちにラストワンマイルのインターネット接続を提供するMesh++が約5.6億円調達

もしあなたがサンフランシスコ湾の水際に立って眺めたとしたら、おそらく6つほどの高速インターネットプロバイダーがあなたにギガビットのインターネットを提供しようと躍起になっていることを知ることになる。しかし、世界の農村地域に住む何十億もの人たちは、もしあるとしても、それ以下のサービスしか受けられないことが多い。その市場こそがMesh++(メッシュプラスプラス)が狙う場所で、同社はこのたびその構想を実現するための資金を獲得した。シカゴとナイロビに本拠地を置くこのチームは、農村や十分なサービスを受けていないコミュニティにインターネット接続を提供することに注力している。

計画されているソリューションはエレガントだ。利用者が無線LANルーターを電源に接続すると、そのルーターは近くにある他のMesh++ルーターを探す。そしてメッシュネットワーク上で利用可能なインターネット接続が共有されるのだ。それぞれのルーターがノードとなって、Wi-Fiの恵みをその土地に広げていくということだ。同社は、1つのノードで10エーカー(約4万500平方メートル)の広さのWi-Fi接続を実現し、最大100人をサポートできるとしている。接続性の問題や停電などで局所的にインターネット接続がダウンしても、ネットワークの他の部分がそれを補うことができる。また、インターネット接続が完全にダウンした場合でも、ネットワーク内のメッセージングやニュースのアラートなどを使った内部のコミュニケーションに利用することができる。

インターネットへの接続は、イーサネット、携帯電話モデム、複数のポイントなど、さまざまな場所を経由して行うことができる。イーサネットや携帯電話モデムのセットをネットワークに配置し、すべてのソースからの帯域を集約することができる。そのため、そのうち1つが故障しても他が補うことができる冗長なネットワークを構成することになる。このやり方が、別途接続を確保する分離したネットワークに比べて賢いのは、とても信頼性の高いネットワークを構成できることだ。例えばファイバーのインフラがすでに故障し始めているような古い街にファイバーネットワークを敷設する場合などにも使うことができる。また、ソースを集約できるこのようなネットワークを持つことで、通常は信頼できないようなソースでも、失敗しても大ごとにはならないので、信頼して使うことができる。このようにして、非常に弾力性のあるネットワークを作ることができるのだ。

すべてが計画どおりに動いている日常的な接続性はもちろん、ネットワークは災害時にも耐えられるものでなければならない。これは2年前に実証されることになった、当時ハリケーン・アイダによってニューオリンズの広大な範囲で接続性が失われた事象が発生したが、同社のネットワークはダウンタイムなしに継続したと主張されている。

もちろん、農村部や遠隔地でのインターネット接続にはさまざまな課題があるが、Mesh++のソリューションは、アクセスと平等の観点から課題に取り組んでいる点が印象的だ。Elon Musk(イーロン・マスク)氏のStarlink(スターリンク)に比べれば、こちらの方がより平等性が高いのは確かだが、同時にインターネットのゲートウェイとして宇宙とつなぐStarlinkと、農村部のインターネット接続のローカル配信のためのMesh++の組み合わせも容易に想像することができる。

Mesh++のCEOであるDanny Gardner(ダニー・ガードナー)氏は「世界中のどこでもギガビットのインターネット接続を提供できる企業はいくつもあります」と語り、Starlinkが実際良い組み合わせであることを示唆している。「そうなれば理想的なパートナーシップですね。そうした企業の多くが直面している課題は、理論上は衛星1基につき数百人の人々にサービスを提供することができるものの、ラストマイルのインターネット接続が課題となっているのです。彼らにとっては、どこへでも接続できる私たちのような技術とパートナーを組むことで、世界に残る30億人の人びとをつなぐことができるでしょう」。

Mesh++は、大手携帯電話事業者さえ凌駕することができると考えていて、LTEや5Gネットワークとの競争にもまったく臆することがない。

「いいですか、T-Mobile(Tモバイル)は6GHz以下の5G接続で米国の大半をカバーすると約束したのです。しかし実際には、4Gでも経済的に見合わないまだカバーが終わっていないとすれば、当然5Gでもそうはならないでしょう」とガードナー氏はいう。

同社は米国の数多くの都市にテストネットワークを構築している他、ナイロビにも5人の子会社を設立している。

「最初に会社を設立したときは、主にインターネットへのアクセスを必要としている新興市場を対象としていました」とガードナー氏はいう。「最初のころ、この問題が米国内でどれほど大きな問題であるかを認識していませんでした。しかし時間の経過とともに、私たちは自分の家の周辺の接続性の問題を解決することにシフトして行ったのです」。

Mesh++は、インパクトインベスターであるWorld Withinが主導する490万ドル(約5億6000万円)の資金調達を行い、新規投資家であるLateral Capital、Anorak Ventures、First Leaf Capital、既存投資家であるSOSV、GAN Ventures、TechNexus、Illinois Venturesが参加した。

「今回の資金調達は、過去数年間の純粋な研究開発主導型の会社から、より販売に注力し、より成熟した組織に変えるという、会社の大きな転換を意味します」とガードナー氏はいう。「資金調達により、お客様や販売店と提携して、できるだけ多くの人とつながり、製品を世に送り出すことができるようになりました」。

同社は、米国のすべての家庭をインターネット接続でカバーできるようにするという、大きな経済の流れに乗っている。特に米国では、ラストマイルネットワークに多くの資金が投入されており、ここ数年では800億ドル(約9兆1000億円)を超えている。しかしそれでもすべての家庭に光ファイバーを届けるには十分ではない。そうしたやりかたは経済的にも物流的にも、人口密度の高い地域でなければうまくいかないのだ。そこで、鍵を握るのはメッシュネットワークになるかもしれない。Mesh++は、同社の技術によって、1世帯あたり400ドル以上かかっていたインフラ設置コストを29ドル程度に削減できるとしている。節約されるのは、オンサイトに設置する必要のあるハードウェアのコストではなく、主に設置のしやすさによる人件費だ。

画像クレジット:Mesh++

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

Plumeがブロードバンドプロバイダー向けにスマートホーム用Wi-Fiを強化、評価額1420億円で285億円調達

2020年は世界中がパンデミックに見舞われるという特別な年となり、家で仕事をする人の数が激増したが、その生活様式の移行により、私たちのブロードバンドネットワークの質がいまひとつであることが露呈した。米国時間2月22日、ブロードバンド接続を最適化するメッシュWi-Fiプラットフォームを構築し、世界の2200万世帯に幅広いスマートホームサービスを提供するスタートアップPlume Design(プルーム)が、2億7000万ドル(約285億円)という大型ラウンドによる資金調達を発表した。Wi-Fi環境のさらなる改善が期待される。

「私たちは家庭内のWi-Fi接続の最適化に長けていますが、それが目標ではありません」とPlumeの共同創設者でありCEOのFahri Diner(ファリ・ダイナー)氏はTechCrunchのインタビューで話した。「私たちはこれを基礎と考えています。そこで経験を積んできたわけですが、さらに大きく進歩して、高度なペアレンタルコントロールや、どのデバイスがネット接続ができて、どのパスワードを使うかを管理する安全なアクセスコントロールといったサービスも提供するようになりました。私たちは、消費者が関心を高めつつあり、次の大きな市場分野になると目される洗練されたセキュリティに重点を置いています」。

「Plumeの究極の製品は、顧客がキュレーション、管理、サービスの提供を行える、総合的なクラウド駆動型プラットフォームです。それがこの会社の目的なのです」。

今回のシリーズE投資は、投資会社Insight Partners(インサイト・パートナーズ)の単独の出資によるもので、現在のPlumeの評価額は13億5000万ドル(約1420億円)とされた。これは大変な成長だ。ちょうど1年前、同社はエクイティとデットの組み合わせで8500万ドル(約90億円)を調達したが、そのときの評価額は5億1000万ドル(約538億ドル)だった。

家庭用ブロードバンドネットワーク業界の人間でない限り、Plumeという社名に馴染みはないだろう。だが、それを利用したことがない人でも、同社の技術を使ったサービスの宣伝を聞いたことならあるかも知れない。または、間もなく耳にするようになるだろう。

パロアルトを拠点とする同社は、家庭向けブロードバンドサービスの提供と、家庭でのWi-Fi接続の性能を高めるPlumeのメッシュ技術を販売する世界170社あまりのキャリアと契約している。この技術は、古くて大きな家や、大勢の人が住んでいてブロードバンドネットワークの負担が大きい家では特に重要だ。ネットワークセキュリティ、ペアレンタル接続コントロール、モーション認識といったPlume独自のサービスもこれに加わる。

Plumeは、これらの付加サービスをHomePass(ホームパス)というブランド名で提供しているが、さらにキャリア向けにクラウドベースの運用ツールHaystack(ヘイスタック)とHarvest(ハーベスト)も用意されている。これらは、キャリアのカスタマーサポートとネットワーク管理の支援、より良いパフォーマンス分析データの収集、利用者の使用と乗り換えに関する状況報告などを行う。

Plumeはまた、大手ながらあまり知られていないハードウェアメーカーとも提携し、同社の事業を支えるルーターやプロセッサー、関連ソフトウェアの開発も行っている。

顧客の一部であるComcast(コムキャスト)、Charter(チャーター)、Qualcomm(クアルコム)、Belkin(ベルキン)、Cablevision(ケーブルビジョン)、Liberty Global(リバティー・グローバル)、Shaw Communications(ショウ・コミュニケーションズ)は、長年の戦略的投資者にもなっているが、これが市場のビッグプレイヤーを引き寄せている証拠だ。同社はこれまでに、総額で3億9700万ドル(約420億円)を調達した。

家庭のWi-Fi環境改善には、高速ネットワークから高性能なルーターやWi-Fi中継器など、何年間にもわたる数々の努力があった。

Plumeの技術は、その中の1つのテクノロジーであるメッシュアーキテクチャに基づいている。これはGoogle(グーグル)のNest(ネスト)Wi-Fiシステムにも使われているものだ。1台のルーターと複数のノードで構成され、それらがネットワーク上の単一のデバイスであるかのように振る舞う(これに対して中継器はそれぞれ独自のSSIDとパスワードを持つ)。

このメッシュアーキテクチャの上に、Plumeはソフトウェア定義のネットワークを構築し、トラフィックを正確に測定できる。そのためオートメーション機能が、例えばネットワークに新しいデバイスが追加され、正常に機能させるためにはもっとパワーが必要だと判断すると、自動的に対処する。

Plumeには、取得したものと申請中のものを合わせて170ほどの特許技術があり、それらが製品を支えてる。

注目すべきは、Plumeが一時期、メッシュベースのWi-FiルーターのスタートアップEero(エーロ)と比較されていたことだ。Eeroは後にAmazon(アマゾン)に買収され、Amazonは現在、同社独自のメッシュWi-Fiソリューションの一部としてそのルーターを販売している。

関連記事:Amazonが家庭用メッシュルーターのEeroを買収してEcho製品拡販のベースに

だがこの2つの企業には、決定的な違いがある。それは主に双方の基礎となっている事業の前提だ。ダイナー氏が指摘するように、Plumeのサービススタックは、ルーターを中心としたものではない(Eeroはルーター中心だった)。むしろ、ハードウェアとクラウドを結ぶオープンソースのフレームワークプラットフォームを利用したメッシュ技術を主体として、OpenSync(オープンシンク)と呼ばれるメッシュネットワーク上で利用できるサービスを構築することが主軸になっている。これにより、サービスプロバイダーは、Plumeのメッシュアーキテクチャの上に独自のサービスを構築できる。

ちなみに、ダイナー氏は、キャリアーが何を求めているか、実際に何を使い、何を考えているかを、長期的な視点で深く理解している。彼自身は工学の教育を受け、いくつものベンダーに勤め出世の道を歩んできた。ちょうど、キャリアが従来の銅線から光通信のファイバーへと移行していった時期だ。電気通信事業社の資本支出が最高潮だったころ、彼は自分で立ち上げた長距離光通信ネットワークのパイオニア企業Qtera(キューテラ)を、今はすでに廃業したNortel(ノーテル)に32億ドル(約3380億円)で売却している。彼自身もまた長期的な視野を持つ投資家であり、数々の大手次世代型通信ベンダーの役員にも就いている。

電気通信の世界は共食いされないか、いわゆる「ダムパイプ」の役割に追いやられないかと、長い間心配し続けていたのだが、そんなキャリアに、PlumeはWi-Fi接続で使えるサービス、つまりアプリの開発という道を提示した。

だが、音声、ブロードバンド、映像の3つのサービスを提供するというキャリアの「トリプルプレー」の約束が、特に固定電話回線の利用と維持に関心を持つ利用者が減ったことで果たせなくなり、キャリアの存在の危機はさらに高まった。コンテンツでは、テック企業やメディア企業が大量に送り込んでくる、より魅力的で新鮮な独自制作作品に完全に負けてしまった。

あとはブロードバンドに目を向けるしかなかったのだが、それは一定の価格で商品化されたため、どのキャリアも同じような速度と信頼性を提供することになった。

「どう差別化するか」が全員の疑問となったと、ダイナー氏はいう。Plumeの答えは「新しいサービス一式によって家の中で差別化を図る」ことだった。

ところが現実には、最大手級のキャリア(それもすべてではない)にしか、そのためのリソースも意欲もないかも知れなとダイナー氏は話す。現在170社を数える顧客の中でも、そのプラットフォーム上に独自のサービスを構築している企業は5社だけだという。

だからこそPlumeは、サービスを開発してそれをキャリアにホワイトラベルとして提供し、利用者に販売できるようにしている。このサービスがサービスプロバイダーの間で大きな関心を集めているのも、そのためだ。OpenSyncは、現在2600万カ所のアクセスポイントをカバーしているが、家庭に導入されるデバイスが増え、1日中使用されるようになるにつれ、その数は急増している。

そうした家庭向けサービスも、いずれは各社とも似通ったものになっていくのではないかと思われるかも知れない。しかし、オープンプラットフォームは、やがて多くの企業やサービスに革新を引き起こすようになると、単純に期待できる。

当面は、PlumeにとってWin-Winの状態が続く。

「スマートホーム分野は爆発的に成長していますが、消費者のエクスペリエンスの質は低下しています」とInsight Partnersの業務執行取締役Ryan Hinkle(ライアン・ヒンクル)氏は声明の中で述べている。「私たちは、Plumeが、そのスケーラブルなクラウドデータプラットフォームのアプローチ、高効率な市場開拓戦略、大きな勢い、全SaaS KPI中でトップ4に入る業績(収益、成長率、粗利益、効率性、顧客維持率など)、世界クラスのチームによって、この分野に変革をもたらすと確信しています。このエキサイティングな旅に参加し、支援できることを心からうれしく思っています」。今回のラウンドから、ヒンクル氏はPlumeの取締役会に参加する。

関連記事:Bridgefyが抗議行動や災害時にエンド・ツー・エンドで暗号化メッセージをやりとりできるアプリを公開

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:PlumeWi-Fiメッシュネットワークブロードバンド

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:金井哲夫)

アマゾンが低帯域近隣ネットワークSidewalkの詳細を公開、EchoとTileが対応デバイスに

Amazon(アマゾン)は昨年、家の中や外(おそらくこちらの方が重要)のスマートデバイスの接続に使用される、独自に開発した低帯域幅の新しい長距離無線プロトコルSidewalkネットワークを発表した。そのSidewalkサービスの提供開始が近づいてきた。Sidewalkは、メッシュネットワークに似ているが、十分な数のアクセスポイントがあれば、近隣全体を簡単にカバーできる。

米国時間9月21日のアマゾンの発表によると、年内にはEcho互換デバイスがSidewalkネットワークのBluetoothブリッジとなり、Ringの防犯カメラFloodlightとSpotlightも同ネットワークの一部になるという。アマゾンは、こうした低帯域幅接続によって、帯域幅のごく一部を隣人と共有することになってもユーザーは気にしないだろうと考えている。

また、Tileが近日中にリリース予定のSidewalk互換トラッカーがサードパーティー製の最初のSidewalkネットワーク対応デバイスになることも発表した。

アマゾンが最初にSidewalkを発表した際、Sidewalkネットワークの仕組みについての詳しい説明はなかった。今回の発表では、この共有型ネットワークでプライバシーとセキュリティがどのように確保されるのかに関するホワイトペーパーも公開された。以上すべての点に加え、アマゾンが描いているSidewalkに関するビジョンについて、SidewalkのジェネラルマネージャーであるManolo Arana(マノロ・アラナ)氏に話を聞いた。

Image Credits: Amazon

同氏は、SidewalkをThreadやその他のメッシュネットワークプロトコルの競合サービスととらえるのは間違いであることを強調する。「まずはっきりさせておきたいのは、SidewalkはThreadなどのメッシュネットワークとは競合しないという点だ」と同氏は述べた。「ZigBeeやZ-Waveなどのアプリケーションを思い浮かべて欲しい。Sidewalkにも同じようにして接続できる」同氏によると、開発チームは既存のプロトコルを置き換えるのではなく、別の新たな転送メカニズム、およびデバイスを接続する無線の管理方法を作成したいという。

Sidewalkネットワークを開始し、例えば、各家庭で敷地の端に設置されたスマート照明が接続されるようになるくらいその認知度を上げるには、Echoファミリーのデバイスを利用してもらうことがアマゾンにとって最善の策であることは間違いない。

「Echoデバイスは、ブリッジとして機能するようになる。これは我々にとって大きなことである」とアラナ氏はいう。「この機能のメリットを享受する顧客が多数いることは容易に想像できる。我々には、この種のサービスを実現できるようになることが何よりも重要だ。Tileは最初のSidewalk対応エッジデバイスとなり、貴重品、財布など、大切なものを何でも追跡できるようになる」。

多くの意味で、これこそがSidewalkの将来性を示している。隣人と帯域幅を少し共有するだけで、例えば、本来であれば自宅ネットワークの外側になる庭のスマート照明などに接続できるようになる。また、自宅のWi-Fiがオフになっている場合でもモーションセンサーのアラートを鳴らすことや、スマートペットファインダーを付けている迷子になった犬を探し出すことができる(これはアマゾンがSidewalkを最初に発表したときに紹介した使用例だ)。

Image Credits: Amazon

今回公開されたホワイトペーパーでは、共有帯域幅に制限があることを明確に示したうえで、ユーザーがネットワークへの参加/不参加を選択できるように互換デバイスのシンプルなオン/オフの制御スイッチを用意することが明記されている。デバイスが利用できる帯域幅は最大500MBで、クラウド内のSidewalkサーバーとブリッジの間の帯域幅は80Kbps以下に制限されている。

Sidewalkサービス全体のアーキテクチャは実にシンプルだ。エンドポイント、例えば、接続された庭の照明がブリッジ(アマゾンのドキュメントではゲートウェイと呼ばれている)にパケットを送信する。ゲートウェイは、Bluetooth Low Energy(BLE)、Frequency Shift Keying(FSK)、および900MHz帯域のLoRaを利用して、ネットワークの一方の端にデバイスを接続し、もう一方の端でクラウド上のSidewalkネットワークサーバーにパケットを送信する。

ネットワークサーバー(アマゾンが運用)は着信したパケットが、認証済みのデバイスおよびサービスから送信されたものであることを確認する。サーバーは、アマゾンまたはサードパーティーベンダーが管理するアプリケーションサーバーとやり取りする。

Image Credits: Amazon

この通信はすべて複数回にわたって暗号化されるため、アマゾンでさえ、ネットワークを通過するコマンドやメッセージの内容を知ることはできないという。暗号化は3つのレイヤーで実現される。まず、アプリケーションサーバーとエンドポイントの間の通信を可能にするアプリケーションレイヤー。次に、無線パケットを保護するSidewalkのネットワークレイヤー。そして、ゲートウェイによって追加されるいわゆるFlexレイヤーだ。これは、ネットワークサーバーに「信頼できるメッセージ受信時刻の参照を提供し、パケットの機密性を実現するレイヤーを追加する」ものだという。

さらに、アマゾンが受信するルーティング情報はすべて24時間ごとに削除され、デバイスIDは定期的に更新されてデータが特定の顧客に関連付けられないようになっている。また、一方向のハッシュキーやその他の暗号化技術も使用されている。

アラナ氏によると、開発チームは、広範な侵入テストを終え、強制停止スイッチや高度なセキュリティ機能の追加が完了するまではこのプロジェクトを公開しないことにしたという。またチームは、ネットワーク内にデバイスを安全にプロビジョニングする新しい技術も開発した。

Image Credits: Amazon

同氏はまた、自社製品をSidewalk対応にするチップベンダーも広範なテスト手順にパスする必要があると語った。

「Sidewalkに参加するチップベンダーに求められるセキュリティレベルを見ればわかるが、多くのベンダーは要件を満たしていない。まったく新しいチップにする必要があり、セキュアなブート機能などを組み込む必要があるからだ。このように、IoTが確実に進化しており、きわめて高いレベルに到達しようとしていることを知って、皆驚いている。しかし、まだやるべきことは山積みになっており、これはそのごく一部に過ぎない。我々は最高レベルのセキュリティが必要になることを受け入れ真正面から取り組んでいる。ベンダー側もきわめて積極的に協力してくれている」。

現在アマゾンと協力して開発を進めているチップベンダーは、Silicon Labs(シリコン・ラボラトリーズ)、Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)、Semtech(セムテック)、Nordic Semiconductor(ノルディック・セミコンダクタ-)の各社だ。

アマゾンは、Sidewalkをテストするため、赤十字社と協力して、配送センターと献血所の間で血液採取と供給を追跡する概念実証を実施した。

「我々が行っているのはきわめて単純な追跡だ」とアラナ氏はいう。「赤十字社が必要としているのは、輸血用の血液が発送されたか、発送先のビルに到着したかといったことだ。Sidewalkを利用すれば、ロジスティクスが大幅に簡素化され、輸血用血液の配送効率が向上する」。

これは明らかに消費者の使用事例ではないが、Sidewalkの潜在性を示すには十分であり、これによって産業界での使用事例が増えていくことになるだろう。アマゾンは、現時点では、使用事例を増やすことに主眼を置いてはいないが、広帯域を必要としないセンサーやその他の小型エッジデバイスをSidewalkネットワークでIoT接続することにより工場などの通信ネットワークを置き換えることができる使用事例は多数存在するとアラナ氏はいう。同氏はまた、通信接続機能を組み込むとデバイスの製造コストが高くなるという点も指摘する。

アマゾンはEchoデバイスやRingのデバイスを取り込んでSidewalkネットワークの普及を一気に進めようとしている。おそらく近い将来、Sidewalkの話題をよく耳にするようになるだろう。

関連記事:自宅のシステムをアップグレードしてくれる、最強のWi-Fi 6ホームネットワーク

カテゴリー:IoT

タグ:アマゾン WiFi

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(翻訳:Dragonfly)

自宅のシステムをアップグレードしてくれる、最強のWi-Fi 6ホームネットワーク

Wi-Fi 6が登場した。昨年の主力製品iPhone 11シリーズで採用されたことで注目されたこのWi-Fi 6は、ますます多くのデバイスに搭載されるようになっている。この次世代Wi-Fiテクノロジーによりデバイス間のデータ転送がより迅速に行えるようになる。しかしより重要なのは、システムが、減速や中断なく、接続された複数のWi-Fiデバイスの処理を一度にしやすくなる点だ。モバイルデバイスのバッテリーの消耗を低減することさえできる。

iPhone 11の発売以降、Wi-Fi 6ルーターやメッシュシステムの数は劇的に増え、今や様々な価格帯のあらゆるオプションが揃っている。しかし、Wi-Fi 6を最大限に活用したいと思っている読者には、2つのシステムがお薦めである。異なるアプローチで異なるニーズに応え、ユーザーに必要なあらゆる性能を提供するこれらのシステムをご紹介したい。

Orbi AX6000 Mesh Wi-Fi システム(699.99ドル / 約7万5千円より)

Image Credits: Netgear

Netgear(ネットギア)社製のOrbiラインナップは人気のメッシュオプションである。最新のAX6000シリーズは2または3パック構成でWi-Fi 6ネットワークを提供する。Netgearによると、2パックでも5000スクエアフィート(約460平米)をカバーし、さらにイーサネット接続のモデムから最大2.5Gのインターネット接続をサポートすることが可能だ。

Orbi AX6000には、最高のパフォーマンスを得るためストリーミングやメディア接続を最適化することが可能なNetgearのXテクノロジーが搭載されている。ベースユニットとサテライトの両方に直結用の4ギガビットイーサネットLANポートが備えられているため、すべてのギアを接続するのにイーサネットスイッチが必要になる可能性が低くなる。

実際のテストにおいて、AX6000は極めて信頼のおける、カバー範囲の広いメッシュシステムであることが証明された。著者はベースユニット1台とサテラライト1台を用いた2デバイス構成でテストを行ったが、実際にカバー範囲が広いことを確認できた。AX6000を用いたこのテストでは、屋外で500フィート(約150メートル)もしくはそれ以上の範囲で安定した強力なWi-Fi接続を利用することが可能であった。私の場合、これを湖畔の別荘で設置し、湖に突き出た桟橋までWi-Fiが届くようにしたかったのだが、そういった状況では便利なオプションである。

Orbiのシステムはモバイルアプリで管理することができ、接続された各デバイスの概況が詳細な情報とともに提供される。アプリから接続された各デバイスへのアクセスを一時停止および再開することや、専用ゲストネットワークなどの機能を有効にすることが可能だ。

またNetgearは、ネットワーク上のリアルタイムの脅威を検出し保護するArmorと呼ばれるサービスを提供している。これは別途契約が必要なサブスクリプションサービスだが、Orbiシステムを最初に設置する際に期間限定の無料体験を利用できる。実際に試してみたところ、フィッシングやマルウェアの接続を効果的に検出してブロックするようである。これは継続的な有料アドオンのオプションである。

私が感じたOrbiシステムの真の強みは、比較的リモートな設定で携帯電話ベースのネットワーク接続でシステムを利用した際、パフォーマンスが劇的に改善した点であった。これは、1.5Gbpsネットワークであるホームファイバー接続で使用した場合も同様であったが、信頼性がはるかに低い50Mbpsのモバイル接続が大幅に改善されたため、やや低かった信頼性が、完全に信頼できるものとなった。

またNetgearの製品はアプリやネットワーク管理の点でシンプルである。これにはメリットもデメリットもあるが、ライトユーザーや非技術系ユーザーにとっては利点と言えるのではないだろうか。私が欲しかった高度なオプションの1つとして、例えば2.4Ghzネットワークと5Ghzネットワークを別々のネットワークSSIDで分離して、いくつかのスマートホームデバイスをより簡単に接続できるようにする機能などが欠けていることが分かったが、おそらくほとんどのユーザーはそうした機能を必要としていないだろう。

AmpliFi Alien Wi-Fi 6ルーター(379ドル / 約4万円より)

Image Credits: AmpliFi

一方、AmpliFi(アンプリファイ)社製のAmpliFi Alienルーターは、コマーシャルネットワーク大手Ubiquiti(ユビキティ)による一般消費者向け製品であり、上級ユーザーが望むすべてのカスタマイゼーション機能を提供する。デバイスは379ドル(約4万円)で、スタンドアロンのトライバンドルーターとして機能するが、他のAlienベースステーションと組み合わせてより広い範囲をカバーするメッシュネットワークを形成することもできる。2パックの場合は699ドル(約7万5千円)となる。Orbiとは異なり、AmpliFiのハードウェアには専用のベースステーションやサテライトユニットが存在しない。つまりメッシュ機能が必要なければ、必要に応じて交換し別のネットワークを設定することができるのだ。

AmpliFiのAlienをテストしたところ、これもカバー範囲が大変広く1.5Gbpsの光ファイバー接続機能に最大限アクセスすることができ、極めてよく動作した。長期に渡るテストでは、ネットワークのアップタイムの点で信頼性が申し分がなく、またAmpliFiは性能を向上させるため、継続的にアップデートを行っている。

Ubiquitiを通じ最高の高度ネットワークを提供するという評価を築いているAmpliFiだが、 Alienにも素晴らしいハードウェアスペックを搭載している。これにはカスタムアンテナアレーや、各ベースステーションに装備された2.2GHz 64-bitの専用クアッドコアCPUが含まれる。これは、一部のミッドレンジAndroidスマートフォンよりも優れた処理能力であり、こうしたハードウェアのすべてが、最大のパフォーマンスを実現するため、常にネットワークとデバイスの接続を最適化する作業を行っている。

しかし、こうした機能が搭載されているからといって操作が複雑だということはない 。AmpliFiはUbiquitiによるより身近な一般消費者向けブランドであり、そのことは、シンプルなアプリベースの設定や制御からも見て取れる。AmpliFiアプリは極めて使い勝手がよく、設計も優れており、個々のデバイスビューや制御、ルールの作成、完全な統計レポートなどユーザーがメッシュネットワークシステムに求める全ての機能を備えている。また、ゲストネットワークを設定したり、さまざまな周波数ネットワーク用の個別のSSIDなどより高度な機能を構成したりすることもできる。

またAmplifFi Alienはカラフルな高解像度ディスプレイを備えており、現在のネットワークパフォーマンス、信号の強度、接続されたデバイスの一覧などの情報を一目で確認できる。これらのメニュー、そしてアプリ内メニューは共にOrbiなどの他のオプションに比べ情報密度がやや高いため、テクノロジー全般、特にネットワークテクノロジーに慣れているユーザーには大変適したオプションだと思われる。

1つにつきわずか379ドル(約4万円)という価格で、Alienシステムスは優れた拡張性と柔軟性、および素晴らしいカスタム制御機能を備えている。高度な家庭用Wi-Fi 6ネットワークという観点から見ると、間違いなく他のソリューションより優れたオプションと言える。

まとめ

Wi-Fi 6テクノロジーが一般消費者向けのデバイスに搭載されるようになるにつれ、より多くのWi-Fi 6オプションが市場に登場している。前述のように、価格も次第に手頃になってきている。しかしWi-Fi 6はこの先何年にもわたってネットワーク上のアドバンテージをユーザーにもたらしてくれる投資対象であり、時間とともにベネフィットが増すため、将来を見据えた性能を提供するトップレベルのシステムに投資する価値があるだろう。

Netgear OrbiシステムやAmpliFi Alienは、共に素晴らしい性能と多くの優れた機能を備えており、設定も簡単だ。OrbiのAX6000は一度設定したらそれ以降は手を加えないというユーザーや、継続的な脅威検出を設定するオプションを望むユーザーに向いているだろう。Alienはテクノロジーに精通したパワーユーザーや、複数の場所で使用するためネットワークハードウェアを分割するなど構成を変える機能を必要とするユーザーに向いていると考えられる。

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カテゴリー:ハードウェア

タグ:ガジェット レビュー Wi-Fi

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(翻訳:Dragonfly)