アーティスト向けデジタルカード発行・管理のユートニックが6000万円を調達

ユートニック utoniq core

デジタルカード発行サービス「utoniq」を運営するユートニックは7月1日、6000万円の資金調達を発表した。引受先は、i-nest capital(i-nest1号投資事業有限責任組合)および複数の投資家。また、デジタルトークン発行管理プラットフォーム「utoniq core」(ユートニック コア)のリリースおよび利用受け付けを開始した。

ユートニックは「アートの価値をテクノロジーで解き放つ」ことをミッションに、アートやエンターテインメント領域のデジタルシフトを担うべく2018年に創業。

utoniq coreは、アーティストやクリエイター向けのデジタルトークン発行プラットフォーム。すでに木梨憲武氏(iOS版Android版)といった著名人はじめ、インディーズアーティストまで200名超のアーティストが利用しているという。調達した資金は、utoniq coreの企画・開発・デザインに用い、アーティストの世界観をさらに反映した企画を実現できるプラットフォームに成長させるとしている。

ユートニック utoniq core

同プラットフォーム上において、アーティストは、オリジナルデザインのデジタルトークンを数量限定で発行でき、ファンはこれらをコレクションとして集め楽しめる。デジタルトークンには、動画・音源・写真などのコンテンツを収録可能で、シリアル番号管理により複製や不正な二次流通を防止できる。

ユートニック utoniq core

また、デジタルトークンのシリアル番号に1対1で対応する、ユニーク・ワンタイム二次元バーコードを発行することで、リアルのグッズとデジタルトークンを紐付けることが可能。デジタルトークン連動のグッズや、デジタルトークンと紐付けた(紙製などの)記念チケットなどの企画に利用できる。この他、アーティストごとの独自アプリ化、月額制のメンバーシップ、ファン同士が交流できるコミュニティスペースの作成も行える。

Googleスプレッドシートがデータのオートコンプリート機能を追加へ

米国時間6月30日、Google(グーグル)は、Googleスプレッドシートを改訂し、表の作成とデータ分析をちょっと便利にした。

中でも興味深い新機能がSmart Fill(スマートフィル)だ。Gメールで文章を自動的に補完してくれるSmart Compose(スマート・コンポーズ)のスプレッドシート版と思えばよい。Smart Fillは2020年中に公開される。

「例えばフルネームが入った列があり、ファーストネームとラストネームの2列に分けたいとする」とグーグルは発表で話し「新しい列にファーストネームをタイプすると、Googleスプレッドシートが自動的にパターンを検出し、列内の残りのセルをオートコンプリートする」と説明した(下の画像参照)。

なかなか気の利いた機能だが、Microsoft(マイクロソフト)はすでにML(機械学習)ベースの機能をExcelに多数導入しており、例えばスプレッドシートの内容に応じて新しい列の作成まで自動でしてくれる。先日開催されたデベロッパーカンファレンスのMicrosoft Buildでは、こうしたAIに基づくデータタイプを100種類以上に増やしたことを発表した。使う場面は少々異なるが、両社とも似たような技術を使ってスプレッドシートの作成を簡単にしようとしている。

グーグルの新機能で優れているのは、単に魔法のように列を埋めるのではなく、数式を作って埋め込むことで、必要に応じてデータを修正できる柔軟性があるところだ。

もう1つ、近々加わる新機能がSmart Cleanup(スマートクリーンアップ)で、重複データや書式の問題を見つけて、名前の通りデータをクリーンアップしてくれる。スプレッドシートが修正を提案するので、ユーザーは採用するかどうかを決めればよい。

グーグルは同時に、Connected Sheets(コネクテッドシート)の一般公開も発表した。BigQuery(ビッグクエリ)とスプレッドシートをつなぎ、シート内のペタバイト単位の大量データをSQLやプログラミング言語を知らなくても分析することができる。この機能はスプレッドシートの使い方さえ知っていれば、会社内の誰でもビッグデータを分析してグラフを作れるようになる、というデータの民主化を目的としている。

現在Connected Sheetsは、G Suite Entereprise、G Suite Enterprise for EducationおよびG Suite Enterprise Essentialsのユーザー向けに公開されている。

画像クレジット:Alex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヘッドレス電子商取引プラットフォームのNacelleが約5.2億円を調達

eコマース企業が自宅隔離にともなうオンライン買い物ブームを活用し、物理的な小売店舗が再開することで盛り上がりを見せる中、より多くの企業が注目しているのが、オンライン店舗の機能性を高め、買い物客の体験を向上させるにはどうすればよいのかということだ。そこに登場したのが、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップのNacelle(ナセル)だ。同社は急成長している「ヘッドレス」eコマーススペースに参入する。

このスタートアップは自分自身をeコマースのためのJAMstack(JavaScript、API、Markupを組み合わせた新しいウェブアプリケーションアーキテクチャ)と呼び、オンラインストアフロントに対して優れたパフォーマンスとスケーラビリティを提供する開発者プラットフォームを開発している。Nacelleは、これまでにIndex VenturesとAccompliceの主導で約480万ドル(約5億2000万円)を調達した。同社の他のエンジェル投資家には、Shopify(ショッピファイ)のJamie Sutton(ジェイミー・サットン)氏、Klaviyo(クラビヨ)のCEOであるAndrew Bialecki(アンドリュー・ビアレッキ)氏そしてAttentiveのCEOであるBrian Long(ブライアン・ロング)氏などが含まれている。

Nacelleはヘッドレス構造を採用したいeコマースブランドのための、より簡単な方法を構築した。ヘッドレスウェブアプリとは、本質的にはサイトのフロントエンドがバックエンドインフラストラクチャから切り離されていることを意味している。そのため、コンテンツをユーザーに届けるためには、専用のフレームワークに完全に頼ることになる。サイトをヘッドレス化することには、パフォーマンスの向上、スケーラビリティの向上、ホスティングコストの削減、開発者エクスペリエンスの合理化などの、いくつかの顕著な利点がある。eコマースサイトの場合、ストアフロントの動作やヘッドレスCMSが動的な在庫やユーザーのショッピングカートの取り扱いに対応する必要があるため、注意すべき複雑さもある程度含まれている。

「私たちは、非常に動的な要件を、JAMstackが提供する通常は静的なシステムとどのように組み合わせるかを自問しました。そうして出来上がったのがNacelleだったのです」とTechCrunchに語ったのはCEOのBrian Anderson(ブライアン・アンダーソン)氏だ。

アンダーソン氏は以前、カスタムストアフロントを開発するShopify Plusの顧客向けの技術代理店を経営していた。このベンチャーが現在の会社の初期顧客の多くになった。Nacelleは最近、同スタートアップの初のマーケティング担当副社長としてKelsey Burnes(ケルシー・バーンズ)氏を採用した。彼女はeコマースプラグインプラットフォームのNosto(ノスト)からやってきた人物だ。

アンダーソン氏はNacelleのプラットフォームの利点を立て続けに説明したが、多くはレイテンシ(待ち時間)の削減の結果であり、その結果でより多くのユーザーが購入を行い、より多くの支払いをするのだと語った。このスタートアップは特にモバイルストアフロントに重点を置いている。アンダーソン氏によれば、ほとんどのデスクトップストアフロントがモバイル版のストアフロントを大幅に上回る性能を提供しているが、モバイル上でNacelleがロード時間を高速化することで、この問題を克服することができると述べている。

画像クレジット:Nacelle

ヘッドレス構造を採用するブランドが増える中で、Nacelleはエクスペリエンスの管理を目指している。NacelleはShopifyユーザーならば、最も迅速に準備して運用できるように最適化されている。ユーザーは、システムをContentful(コンテントフル)やSanity(サニティ)などの一般的なCMSと簡単に統合することもできる。全体として決済プラットフォーム、SMSマーケティングプラットフォーム、分析プラットフォームなど、30を超えるサービスをNacelleは統合している。目標はユーザーがデータを移行したり、新しいワークフローを学習したりする必要性を最小限に抑えることだ。

同社は当然のことながら、D2Cブランドをかなり重視している。Nacelleの初期の顧客には、D2C寝具のスタートアップであるBoll & Branch(ボール&ブランチ)、心地良いものマーケットプレイスであるBarefoot Dreams(ベアフット・ドリームス)、ファッションブランドのSomething Navy(サムシング・ネイビー)などがある。Nacelleの全体機能のほとんどは、この夏の後半にリリースされる。2020年5月にNacelleを使った男性用トイレタリーのスタートアップであるBallsy(ボルジー)の運用が始まり、コンバージョン数が28%増加したといわれている。

Nacelleだけが、このスペースの新参者というわけではない。2020年5月にCommerce Layer(コマース・レイヤー)が、Benchmarkから600万ドル(約6億5000万円)の資金を調達したと発表した(未訳記事)。

関連記事:Italy’s Commerce Layer raises $6M led by Benchmark for its headless e-commerce platform(未訳記事)

画像クレジット:John Lamb / Getty Images

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(翻訳:sako)

人の顔を入れ替えた映画で使える高解像動画が作れるディスニー・リサーチのニューラルフェイススワッピング技術

ディズニー・リサーチがチューリッヒ工科大学(ETH Zurich)と共同で発表した新しい論文で、写真やビデオの顔を入れ替えるための完全に自動化されたニューラルネットワークベースの方法について述べられている。研究者たちによれば、それはメガピクセルレベルの高解像度で最終結果を生み出す初の手法だという。現実世界の出来事だと視聴者を納得させるのに高解像度であることが鍵となる映画やテレビでの使用に、最終結果は適している可能性がある。

研究者はこの技術を使って、既存の俳優が演技している顔を置き換えることを考えている。例えば若返らせたり老化させたり、あるいは亡くなった俳優を描写したりするといった用途だ。彼らはまた、シーンによってはスタントマンの顔を置き換えることにも利用できると示唆している。

この新しい方法は、様々な点で既存の手法とは異なっている。例えば記録されたパフォーマンス中の顔を自由に入れ替えることで、必要に応じて比較的簡単に俳優のイメージを入れ替えることができる。また、俳優が実際にシーンと同じ条件の場所にいたように、合成ステップでコントラストと光の条件を調整することができる。

以下のビデオで成果を確認することができる(研究者が指摘しているように、静止画よりも動画の中の方が、はるかに優れた結果を得られている)。まだ「不気味な谷」の雰囲気が残っているものの、研究者たちはそれを認めた上で、これを「不気味の谷にうまく橋をかけてくれるフォトリアルフェイススワッピングへの大きな1歩」だという。基本的に、これまでの手法よりも「悪夢度」ははるかに少ない。特に他の手法で生成された動画と並べて比較してみると、それははっきりする。最も注目すべき点は、それがはるかに高い解像度で動作するということだ。これは実際のエンターテインメント業界採用されるための鍵である。

提示されている例は非常に小さなサンプルに過ぎないので、これがどれだけ広く適用できるかはまだ不明だ。例えば使用されている被写体は主に白いように見える。また特にビデオの場合、フェイススワッピング技術の使用は倫理的影響があるという懸念が常につきまとう。これは、実際には起こらなかった何かに対する、ビデオまたは写真の「証拠」を捏造するために使用できるからだ。

とはいえ、こうした技術が今や多方面から開発されていることを考えると、技術の研究と探究の倫理に対して議論する段階は基本的に過ぎている。その代わりに、ディズニー・リサーチのような組織が学術的な道筋をたどり、彼らの仕事の結果を共有することは歓迎される。そうすることで、悪意のある使用の可能性を懸念している他の人たちが、悪意のある利用者にフラグを立て、特定し、対抗する方法を決定できるからだ。

画像クレジット:Disney Research

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(翻訳:sako)

AWSのAIによるコードレビューとパフォーマンスツールのCodeGuruが一般公開へ

AWSは米国時間6月29日に、コードレビューツールであるCodeGuru一般公開を発表した(Amazonリリース)。2019年12月に開催されたAWS re:Inventでプレビューをローンチした(未訳記事)。このツールセットは、機械学習を利用してバグを見つけ、また最適化のアドバイスを行う。

CodeGuruを構成する2つのツールであるReviewerとProfilerは、その名のとおりのツールだ。AWSのチームはReviewerを作るために、GitHub上の1万あまりのオープンソースプロジェクトのコードと、Amazon(アマゾン)自身の内部的なコードベースのレビューでアルゴリズムを訓練した。

今回の発表で同社は「アマゾンのような大きな企業でも、毎日書かれるコードの量は膨大であり、コードレビューに十分な時間を割ける経験豊富な開発者を確保することは難しい。しかも経験を積んだレビュアーでも問題を見逃すことがあり、アプリケーションが顧客の目の前で動き出してからバグやパフォーマンスの問題が現れることもある」と述べている。

CodeGuruを使う開発者は自分のリポジトリに継続的にコードをコミットするが、そのリポジトリはGitHubやBitbucket Cloud、AWS自身のCodeCommitなど何でもよい。CodeGuru Reviewerはそのコードを分析してバグを見つけ、見つかったらバグフィックスを提案する。この過程はすべてコードリポジトリに対して行われるため、例えばCodeGuruはGitHubのプルリクエストを作り、それにバグやフィックスに関する情報をコメントとして付けたりする。

機械学習のモデルを訓練するためにユーザーはCodeGuruにフィードバックを送れるが、それは主に「よい(thumbs up)」と「だめ(thumbs down)」だけだ。

CodeGuru Application Profilerは、目的がやや違う。それはコード中の非効率と思われる部分や、無駄なコードを探し出す。このツールはAWSのLambdaやFargateのようなサーバーレスのプラットフォームもサポートする。

最初に発表されたCodeGuruに後から加わった機能の1つとして、Profilerは最適化されていないコードに対して、その損失をUSドルの金額で表示する。

Amazon Machine Learningの副社長であるSwami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は、発表で次のように述べている。「顧客は常に大量のアプリケーションを開発して動かしており、それらには何百万行ものコードが含まれている。それらのコードの品質と効率性を確保することは極めて重要だ。バグやほんの数行の非効率なコードでも、とても高くつくことがある。しかし今日ではコードの品質を見分ける方法には時間もかかり、手作業で行われているため大規模で行うとエラーも多くなる。CodeGuruは、Amazonの長年のアプリケーション開発とデプロイの経験に機械学習の専門的能力を組み合わせて、ソフトウェアの品質を改善しアプリケーションのパフォーマンスの向上と、無駄なコードの排除でお客様に喜んでいただけるだろう」。

AWSによると、すでに多くの企業がプレビューの期間にCodeGuruを使い始めている。AtlassianやEagleDream、DevFactoryなどの企業も含まれている。

Atlassianのエンジニアリング、テックチームのトップであるZak Islam(ザック・イスラム)氏は、次のように語っている。 「私たちの開発チームが行うコードレビューは、バグの未然の発見では良い仕事をしているが、強いストレスがあるときや、複雑な構造のデータを管理するときのシステムの振る舞いの予見をいつでもできるとは限らない。私たちのように毎日複数のデプロイが行われているところでは、なおさらだ。しかし完成コードに異変が生じたときでも、Amazon CodeGuruの継続的プロファイリング機能があれば、調査に要する時間を数日から数時間へ、数分へ減らすこともできる。現在では弊社のデベロッパーたちはエネルギーを、他社製品との差別化に注ぎ込むことができ、問題の調査に費やす時間をかなり減らすことができた」。

画像クレジット:AWS

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Apple Watchの手洗い機能は新型コロナの流行前から準備されていた

先週末のWWDC基調講演では、新型コロナウイルス(COVID-19)関連としてマスクをしたミー文字とともに、Apple Watch(アップルウォッチ)の手洗い機能が追加されるという嬉しい発表があった。手洗いは、誰もが1日何度か行う当たり前の行動だ。しかしこの5カ月の間に、それは私たちの日常生活において非常に重要な位置を占めるようになった。精神を集中して、取り憑かれたように励む行為となっている。

私たちはみな、WHOや米疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインを読んだり、ウイルス感染を防ぐための適切な手洗いの時間の目安となる無数の替え歌(ときには自作曲)をシェアしたりしてきた。また、洗面所の蛇口の前に立ったとき、20秒という長さを痛いほど身に染みてわかるようにもなった。

間もなく登場するApple Watch用の手洗いアプリは、新型コロナウイルス禍に見舞われて以降、Apple(アップル)が慌てて実行したその他の即席の取り組みとは違う。テクノロジー担当副社長であるKevin Lynch(ケビン・リンチ)氏がTechCrunchに話したところによると、その機能は「長年の仕事」の成果だという。アップルならではの流儀に従い、数年間の試行錯誤の末に生み出された製品なのだと同氏は話す。

画像クレジット:Apple

このありふれた行動に取り組んだスマートウォッチは、Apple Watchが初めてではない。Samsung(サムスン)は、所定の時間、ユーザーが手を洗えるようにするGalaxy Watch(ギャラクシーウォッチ)用アプリをすぐさま市場投入した。アップルのアプリは、Noise(ノイズ)アプリなどのヘルスケア機能に属し、ウォッチの内蔵センサー類を駆使して利用者の全体的な健康状態の管理に貢献するスマートなものとなっている。

watchOSの次期バージョンに直接組み込まれるこの機能は、いろいろな仕組みでフィットネス用のトラッキング的な働きをする。まずは、有効にしておくと手洗い動作を検知したときに自動的にアプリが起動し、20秒のカウントダウンタイマーがスタートする。ハードウェアの鍵となるのが加速度センサーだ。これが手洗い特有の動作パターンを監視する。もちろん実際に手をゴシゴシする人に合わせて、他にもいろいろな手法が併用される。

関連記事:Apple’s software updates give a glimpse of software in a COVID-19 era(未訳記事)

このシステムでは、複数の方式の管理に機械学習モデルが使われているが、ウォッチのマイクからの信号も追加的に利用される。動きの感知に加えて、アプリは水が流れる音も聞き分ける。だがそれでも十分ではない。近ごろでは水の音が静かで聞き取りにくいエコ洗面台が増えているからだ。最後の頼みは、石けんを握る音だ。石けんは独特な音を発するため、手を洗っていることを確認できるという。

この機能は、石けんの泡の画像を点滅させたり、振動を伝えたりして最後までしっかり洗うよう促してくれる。手を止めると「丁寧な励まし」が示される。フィットネスのトラッキングのように、その情報はアップルのヘルスケアアプリに記録される。つくづく思うが、今回のことさえなければ少しふざけたようなこのささやかな機能は、私たちがにわかにウイルスや細菌感染対策を真剣に考えるようになったことで、突然、非常に重要な意味を持つようになったわけだ。

これはアップルがこの数カ月間に発表した新型コロナ関連の他の取り組みに、思いかけず加えられる形になった。同社はマスクやフェイスシールドを寄付したり、接触追跡の取り組みでは主導的な立場を取ってきた。

画像クレジット:Apple

特にApple Watchに限って見てみると、医師がウォッチ装着者の心電図を、双方にウイルス感染のリスクを与えないよう、遠隔で監視できる機能が解禁された。だが、新型コロナウイルス感染を診断する可能性については、今のところアップルは何も語っていない。「Apple Watchで新型コロナを追跡する方法は、まだ特別に研究はしていませんが、医療分野での研究は喜んでお手伝いしたいと考えています。アップルの人材を医療分野に派遣できるようにして、彼らの取り組みを強力に支援します。そこで何が得られるか、とても楽しみです」と同社のヘルス担当副社長であるSumbul Ahmad Desai(サンブル・アーマド・デサイ)氏はTechCrunchに話した。

現時点ではまだ、アップルはその点に関して具体的な動きは見せていないが、研究者たちがこの広く普及したウェアラブルの応用に興味を示すであろうことは容易に想像できる。2020年5月にFitbit(フィットビット)は、まさにその方面で研究者たちとの取り組みの初期段階にあると発表している。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:金井哲夫)

アップルが2020年のAppleデザインアワード受賞者を発表

先週行われたApple(アップル)のワールドワイド・デベロッパー・カンファレンス(WWDC)のバーチャルバージョンで、1つ欠けていたのがApple Design Award(デザインアワード)の表彰式だ。米国時間6月29日にアップルは2020年の受賞者を発表し、際立ったアイデアに命を吹き込み、Appleテクノロジーに精通していることを示した各製品に光を当てた。

このデザインアワードは、デベロッパーコミュニティー全体にとって、アップルがどんな種類のアプリとゲームを見たがっているかを知るための指標になっている。例えば2019年に同社は、Apple Pencil(アップルペンシル)、CoreML、Metal 2などのAppleテクノロジーを引き立てた製品を称賛した。

アップルは2020年もiPad向けアプリ、中でもフォトエディターやその他のデザインツールなどクリエイティブツールとしてのiPadを目立たせる製品に焦点を当てた。一方、いくつかのゲームは他のテクノロジーやデザインの選択に加えて、スペーシャルオーディオの利用に注目されて選ばれた。アップルがWWDCで、AirPods Proのスペーシャルオーディオ対応を発表したのは偶然ではないだろう。

Begen Co.の写真・ビデオ編集アプリであるDarkroomは、プロでもカジュアルユーザーでも簡単に使えるという理由で、2020年の受賞アプリに選ばれた。このアプリは写真やカメラのAPI、ホーム画面のクイックアクション、コンテキストメニュー、触覚フィードバックなどのAppleテクノロジーも活用している。

画像クレジット:Bergen Co.

iorama.studioが開発したアニメーションアプリであるLooomは、遊び心と創造性のあるインターフェースと新しいカスタムコントロールに加えて、Apple PencilとダークモードなどのAppleテクノロジーへの対応を認められた。

画像クレジット:iorama.studio

Shapr3D Zartkoruen Mukodo ReszvenytarsasagのCADエディターであるShapr3DはiPadで動作し、テクニカルデザイナーがApple Pencilを使って3Dモデルを制作することができる。ARKitとドラッグアンドドロップを使用しているほか、LiDARスキャナーを使って3D写真から2Dの間取り図をつくる機能が近々追加される。

画像クレジット:Shapr3D Zartkoruen Mukodo Reszvenytarsasag

StaffPad Ltd.のStaffPadは、Apple Pencilとドラッグアンドドロップ、機械学習フレームワークのCore MLを使って手書きの楽譜をデジタル化する。

画像クレジット:StaffPad Ltd.

デベロッパーのSimogoとパブリッシャーのAnnapurna InteractiveによるSayonara Wild Heartsは、すでに2019年のApple App Storeベストゲームの1つに選ばれている。このたび活気ある景観、ビジュアル、モーションのほか、Metal、Game Center、スペーシャルオーディオ、ゲームコントローラーなど広くAppleテクノロジーを利用していることでDesign Awardに選ばれた。

画像クレジット:Simogo / Annapurna Interactive

thatgamecompanyのSky: Children of the Light(Sky 星を紡ぐ子どもたち)も2019年のアップルの「ベスト」ランキング入りし、2020年のデザインアワードではマルチプレーヤー、ソーシャルクエストゲーム部門で受賞した。カスタムMetalエンジン、触覚、ゲームセンター、スペーシャルオーディオなどのAppleテクノロジーを使用している。

画像クレジット:thatgamecompany

Song of Bloomは、インディーデベロッパーのPhilipp Stollenmayer(フィリップ・ストレンマイヤー)氏が開発した脱出ゲームで、すばやく変化するアートスタイルでストーリーが語られる。アップルはこのiPadアプリのハンドクラフトのゲームプレイとデザインを評価した。

画像クレジット:Philipp Stollenmayer

デベロッパーのThe Game BandとパブリッシャーのSnowmanによるアドベンチャーゲーム「Where Cards Fall」は、カードで家を作って記憶を蘇らせる。このゲームはMetal、触覚、ゲームセンター、iCloudなどのテクノロジーを使用している。

画像クレジット:The Game Band / Snowman

2020年のDesign Award受賞者にはAppleデザインチーム作のApple Design Awardトロフィーに加えて、27インチiMac Pro、16インチMacBook Pro、iPhone 11 Pro Max、12.9インチMagic Keyboard for iPad Pro、Apple Pencil第2世代、Apple TV 4K、Apple Watch Series 5 44mm、AirPods Proが贈られる。

「毎年多くのアプリとゲームのデベロッパーが卓越した職人技を披露し、我々はベストの中のベストの栄誉を称える」とアップルのワールドワイドデベロッパーリレーションズ担当副社長であるRon Okamoto(ロン・オカモト)氏が発表文で語っている(Appleリリース)。「Apple Design Awardの受賞は特別な、称賛に値する成果だ。過去の受賞者には歴史に残る著名なアプリとゲームを作った人たちもいる。受賞したデベロッパーたちはそのビジョン、決断、厳格な基準を通じて、Appleデベロッパーコミュニティーの仲間たちだけでなく、我々アップルの全員にもひらめきを与えてくれる」。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表

インド政府は現地時間6月29日夜に、「インドの国家安全と防衛を脅かす行為を行い、最終的にはインドの主権と倫理を侵害している」として中国企業が開発した59のアプリを禁止すると発表した(インド政府リリース)。インドと中国という世界で最も大きな人口を抱える2つの国の最新の睨み合いとなる。

インドの電子・情報大臣が禁止を命じたアプリには、インドが最大の海外マーケットとなっているByteDanceのTikTokインドで最も売れているスマホメーカーXiaomi(未訳記事)のコミュニティビデオコールアプリ、Alibaba Groupの2つのアプリ(UC BrowserとUC News)、Shareit、CM Browser、インドで3番目に大きなeコマース企業とうたうClub Factory(未訳記事)、ES File Explorerなどが含まれる。

人口13億人の半分近くがネットを利用する世界第2位のインターマーケットであるインドがこれほど多くの外国アプリを禁止するのは今回が初めてだ。インド政府は、多くの「治安問題に影響を与えるデータセキュリティとプライバシーの流出について市民からの抗議」がコンピューター緊急対応チームに寄せられていたと述べた。

「こうしたデータの編集では、インドの国家安全と防衛にとって敵対的な要素を持ってマイニングプロファイリングが行われている」と説明した。

インド政府が禁止するアプリ

調査会社CounterpointのアナリストであるTarun Pathak(タルン・パサク)氏は、今回の禁止措置はインドのスマホユーザーのおおよそ3分の1に影響するだろうと話した。同社の分析によると、TikTokやClub Factory、UC Browser、その他のアプリの5月の月間アクティブユーザー数は計5億人だった。

そして業界筋がTechCrunchに明らかにしたデータでは、59のうち27のアプリが、インドにおける5月のトップ1000アンドロイドアプリに入っていた。

「禁止」が具体的には何を意味するのか、モバイルOSメーカーとインターネットサービスプロバイダーがどのように従わなければならないのかは不明だ。本記事執筆時点では、名前の挙がったアプリはインドのGoogle Play StoreとApple(アップル)のApp Storeでダウンロード可能だった。

Google(グーグル)はインド政府からの禁止の通達はまだ受け取っていないと話している。アップルは命令を検討していると述べた。2社は慣例としてそうしたアプリ削除要求には従っている(未訳記事)。

インド政府は「 ユーザーのデータを、認可されていない方法で盗んでインド国外にあるサーバーに密かに送っているAndroidとiOSプラットフォームで入手可能なモバイルアプリの悪用について、いくつかのレポートを含めさまざまなソースから多くの苦情」を受け取った、という。

6月29日夜の発表は、隣国同士のインドと中国の間でかつてなく緊張が高まることになった2020年6月初めの国境での死者が出た軍事衝突に続く最新の睨み合いとなる。ここ数週間、インドの主要な港・空港の税関は中国からの工業用貨物の通関手続きを停止していた。

調査会社Convergence CatalystのアナリストであるJayanth Kolla(ジャヤント・コラ)氏はTechCrunchに対して、今回の動きは驚くべきもので中国企業に大きな影響を及ぼすと話した。そうした企業の多くにとってインドは最大のマーケットだ。アプリの禁止は、対象となる企業のために直接的あるいは間接的に働いているインド人の暮らしにも悪影響を与えるとも同氏は指摘した。

6月初めにヒマラヤでの軍事衝突でインド兵20人超が殺害されて以来(The New York Times記事)、インドでは反中国の感情が高まっている。中国製のスマホやテレビ、他の製品を破壊する様子を収めたビデオを投稿する人が増え続け、「中国ボイコット」とそれに近い言葉がインドのTwitter(ツイッター)でトレンドとなっている。

中国のスマホメーカーは、世界第2位であるインドのスマホ市場の80%超を牛耳っている。ソフトバンクが出資するTikTokは、インドに2億人超の月間アクティブユーザーを抱え、インド政府の措置は同社にとって新たな頭痛の種となる。TikTokは欧州や米国でもここ数四半期、厳しい調査を受けてきた。

TikTokは、ユーザーが5月下旬に家庭内暴力や動物虐待、人種差別、児童虐待、女性のモノ化を促進するかのようなおびただしい数の最近のTikTokビデオをTwitter上で共有して以降、インド国内で批判を浴びてきた。インドの多くのTikTokユーザーが嫌悪感を示すために、競うようにしてGoogle Play StoreのTikTokアプリに最低評価をつけた。その結果、グーグルは何百万というコメントを削除するといった干渉を余儀なくされる事態となった。

その後「Remove China Apps(中国のアプリを削除)」というアプリが一部のインドの人の間で人気になった。グーグルはその後、ガイドラインに反しているとしてPlay Storeからこのアプリを削除した。TikTokの広報担当は、コメントに即座には応じなかった。

4月にインドは、中国を含む国境を接するすべての国からのインドへの投資に政府の許可を義務付けることを目的に海外直接投資規制を改めた。産業内貿易振興局は「新型コロナウイルス(COVID-19)危機の困難に取り組んでいるインド企業を「どさくさに紛れて乗っ取ろうとする動きを抑制する」ための措置だと説明した。

TikTokアプリが2019年に1週間、インドで停止されたとき、ByteDanceは裁判所に提出した書類の中で「インドで1日あたり50万ドル(約5400万円)を失っている」と記している(Reuters記事)。

画像クレジット:TikTok

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(翻訳:Mizoguchi

最新のモバイルアプリには変革が必要だ

1週間の振り返りニュースへようこそ。先週、私はApple(アップル)のApp Storeに対する論争について取り上げたが、今週はアプリが将来は基本的にどのように見えるかについて、アップルのWWDCの発表が投げかけた材料をもとに再び議論したい。

大いなる変革

今月アップルのApp Storeに関しては、開発者たちがアプリの収益化方法の変更を要求するという論争が起きていた。一方先週アップルがWWDCでそのオペレーティングシステムの次のバージョンを詳しく説明したことによって、サードパーティのアプリ自身が根本的に変革される余地があることを、同社が確信していることが明らかとなった。

先週のWWDCで、アップルはApp Clips(アップ・クリップス)を発表した。これはサードパーティアプリのアイデアをわずか1つまたは2つの機能にさくっとスケールダウンするというコンセプトだ。ユーザーは、URL、NFCタグ、またはビジュアルコードを介して、App Clipsを素早く呼び出すことが可能で、適切なコンテキストが発生したときにダウンロードされる。多くの点で、これは開発者により多くの制限を課すことになる、また別の通知タイプに過ぎないが、その背後に横たわるのは、オペレーティングシステム自体の内部へ、サードパーティ統合を推進するというアップルの継続的な関心に従う考えだ。

私たちは個々に独立したアプリのパラダイムを長い間使って来たものの、アップルがARグラスなどの将来のプラットフォームについて考えている中で、グリッドに並べられたアプリがあまり効率的でないことが明らかになった。同社はこのことを、Apple Watchを通してかなりゆっくりと学習したが、サードパーティのエクスペリエンスが専用の独立したプラットフォームとして与えられるよりも、定番アプリを補助するもののように感じられたほうがずっと良い場合がある。Apple Watchにとって、コンプリケーション(時計フェイス上にアプリを配置する機能)は極めて重要なものだが、このことが改めて明らかにしたのは、スクリーンの大きさが限られているデバイスの上で、アプリ開発者がデバイスメーカーと競い合うのは不利だという事実だ。

アップルは、アプリの販売方法や発見方法だけでなく、アプリの基本的な動作方法を決定する、大きな裁量の余地を持っている。同社がiOSの内で、コンテキストにより柔軟に対応したサードパーティエクスペリエンスに興味を持っていることは明らかだ。iOS 10のiMessage内に埋め込まれた内部アプリストアの登場は、これを最も積極的な形で実装したものだったが、その動きに対するフォローアップは、極めて軽いままだった。これを他の定番アプリに拡張して、サードパーティの調整によって製品を強化することもできたはずだが、そうするためには同社は自分が十分満足していないエクスペリエンスを出荷することに対する抵抗を乗り越えなければならなかっただろう。

ホーム画面上にグリッド状に並べられたアプリケーションのアイデアは、ユーザーにとって必ずしも効率的であるとは限らない。App Storeが同社にとっての莫大な収益である一方で、アップルはそのエクスペリエンスを合理化する方法について、ずっと考え続けていることは明らかだ。Widgets(ウィジェット)とApp Clipsは、ユーザーをアプリの実際の機能に集中させることになる。そして、私はそれが開発者にとって本当に良いことなのかどうかに興味がある。私の想像では、ユーザーがこうしたひと口サイズのエクスペリエンスの利用に費やす時間が長くなるほど、ユーザーがこれらのアプリを本当にクリックする時間は短くなり、持続可能なプラットフォームを構築する開発者の機会を減らすことになるのではないかと思う。

こうしたミニチュア体験は、中国で長年支配的だった手法に対して、アップルが開発者を促すことになる。WeChatのミニプログラムネットワークは、米国に存在するものとはまったく異なっている。その意味でWeChatは長い間、欧米の企業に影響を与え、その興味を引きつけてきた。モバイルにおけるサードパーティ統合の形式を再考する努力は、何年にもわたって行われてきたものの、アプリストアからダウンロードされたアプリのコア機能を置き換えることに成功したものはほとんど存在していない。

アップルがこの道を進もうとしたときに、大いなる脅威に晒されるかどうかは不明だ。Facebookの場合は、Cambridge Analyticaの余波で開発者プラットフォームの野望を大幅に縮小してしまい、おかげで開発者が大きな被害を被ってしまったので、何かをすぐに始めるには、Facebookは不利な立場にいるようだ。例外はFacebook Messengerだが、そのチームは数年前の失敗したチャットボットの取り組みを乗り越える必要がある。今月初めに、SnapはSnapchatのチャットセクションに軽量アプリを統合することを発表した。この機能は、ほんのひと握りのサードパーティのエクスペリエンスで開始され、Snapchatがミニゲームのランチャーを提供する場所と同じセクションに統合された。

App Clips、Widgets、Siriサジェスチョン、さらに多くのより細かい機能は、アプリのエクスペリエンスを、デバイスの中心に近付け、アプリグリッドの外に引き出して利便性の核に近付けるための、より積極的な取り組みのビジョンを描き出している。アップルが、サードパーティの統合へのアクセス方法の最前線のコンテキストを支配する中で、同社はどれくらい開発者たちを遠ざけることなく、将来のビジョンへと駆り立てることができるだろうか?

関連記事:アプリの一部機能をオンデマンドで提供するiOS 14のApp Clipsはダウンロードという高いハードルを取り去る

amazon zoox

トレンド

AmazonがZooxを買収
Amazon(アマゾン)は自動運転自動車業界に参入した技術大手の最新企業だ。同社は米国時間6月26日に、自動運転車のスタートアップZooxを買収することを発表した。同社はこれまでに約10億ドル(約1070億円)を調達しており、Financial TimesによればAmazonは同社を12億ドル(約1290億円)で手に入れたと報じられている。

MicrosoftがMixerを閉鎖(未訳記事)
アマゾンのTwitchを打ち倒す競争は、今週Microsoft(マイクロソフト)がゲームストリーミングレースから身を引き、TwitchのライバルであるMixerを閉鎖したことを発表したために、ますます興味深いものとなった。このサービスは後発ではあったが、同社が世界のトップゲーマーの独占ストリーミング権利を取得することで、遅れを挽回することを目指していた。どうやら、それだけでは不十分だったようだ。

FacebookがOculus Goを殺す
先週私は、Facebookが自身で販売している、最も安価なVRデバイスである149ドル(約1万6000円)のOculus Goヘッドセットを、どのように殺そうとしているかについて書いた。このデバイスはすでに数週間売切れ状態だが、Facebookがこの先アップデートがあることを以前の声明の中でほのめかしていたことを思うと、この2歳のデバイスを廃止したことは驚きだ。

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(翻訳:sako)

次期macOS Big SurでUI/UXはどう変わるのか?細かすぎて伝わりにくい部分も解説

WWDC20の基調講演から、早くも1週間近くが経過した。なんだか、もうずいぶん昔のことのような気がする。今回の基調講演の中で、最も印象的だったApple Siliconに関する発表ですら、もう何年も前からわかっていた既定路線だったように感じられる。

とはいえ、今回のMacに関する発表が、インテルからARMベースのアップルオリジナルCPU、Apple Siliconへのスイッチだけだったかと言うと、もちろんそんなことはない。基調講演前半のiOSやiPadOS、その他のデバイス用の新しいOSバージョンの発表に続いて、macOSの新バージョ「Big Sur」についても、しっかりと紹介されていた。その際には、基調講演の後半に登場するApple Siliconについては、当然ながらまだひと言も触れられておらず、CPUの種類にはまったく関係のない純粋なソフトウェアとして、次期バージョンのmacOS 11を紹介している。

次期バージョンでは、いろいろな意味でiPadOSとmacOSの距離は縮まるだろう。「iPadOS 14ではアプリの操作性がmacOSのようになる」の記事は、iPadOS 14がmacOSライクになるという趣旨のものだった。しかし実際には、それよりもmacOSがiPadOSライクになる傾向のほうが、ずっと顕著だと思える。操作性については、実際にリリースされたものを使ってみるまではわからない部分が多いものの、少なくとも見た目に関しては、macOSのほうからかなりiPadOSに歩み寄っているように思える。

基調講演でも、Mac OS Xの登場以来「デザイン」は最も大きく変化すると説明された。その発表では、アプリや通知センター、ウィジェットの話が中心で、細かいデザインの違いまでははっきりとはわからなかった。ここでは、その後にアップルが公開したHuman Interface Guidelinesの「What’s New in macOS」というページを参照しながら、必要に応じて新旧を比較しつつ、macOSのユーザーインターフェースの個々の要素についてルック&フィールを細かく見ていこう。

アイコンは基本的にiPad風に統一

これまでのmacOSでは、特にアプリのアイコンの基本形状がかなり不統一なものとなっていた。比較的新しい伝統としては外形が円になっているものが多いが、正方形に近いものも珍しくはない。もっと古い伝統に則ったものは、長方形をちょっと左に傾けて、その上にツールを載せたようなものとなっていた。さらには、Mac Catalistを使って作成した、iPadOSと共通のアプリアイコンは、正方形や長方形をちょっと左に傾けたものが多かった。

新しいmacOSでは、アプリアイコンは基本的にiPadOS風になる。つまり正立した角の丸い正方形を基調としたものだ。好き嫌いはともかくとして、はっきりアプリのアイコンだと認識しやすいものに統一されるのは良いことだろう。

一方、iPadOSでは、ドキュメントのアイコンを目にする機会は少ない。必要に迫られて「ファイル」アプリを開いたときくらいだろう。そこで目にするのは、これまでのmacOSと同様に正立する長方形の右上の角が内側に折れ曲がったもの。macOSよりも折れている部分の面積が若干広く、折れ方も直線的に見える。新しいmacOSのドキュメントのアイコンは、やはりiPadOS風になる。

もう1つ、macOSには機能を表す「フィーチャー」アイコンというものがある。これはツールバーなどのボタンとして使われている。これについても、アプリのアイコンと同様、統一感に欠けていたものが、基本的に角の丸い正方形を基調とするものに統一される。

また、このアイコンのバックグラウンドのグラデーションも色の変化の小さいものとなり、これまでよりフラットな印象のものとなるようだ。

アプリごとに指定可能な「アクセントカラー」

あまり耳慣れない言葉かもしれないが、macOSには「アクセントカラー」という色の設定がある。これまではシステム環境設定の「一般」で、8色の中から選択することができた。これによって、ラジオボタンやポップアップメニューなど、ユーザーインターフェースの基本となる色を設定できる。設定がここにあることからわかるように、これはシステム全体に関わるもの。ここで選んだ色が、基本的にすべてのアプリにも適用されるものだった。

新しいmacOSでは、このアクセントカラーをアプリごとに指定できるようになった。その色は、アプリのデベロッパーが決める。ただし、そのアプリごとのアクセントカラーが有効となるのは、ユーザーがシステム環境設定で「アクセントカラー」の設定として「マルチカラー」(Multicolor)を選んでいる場合だけ。ユーザーの好みで特定の色を選んだ場合には、これまでどおり、その色がシステム全体に渡って使われる。

タイトルバーとツールバー

アイコンの意匠やユーザーインターフェースの色の設定は、慣れればなんとも思わなくなるものがほとんどかもしれない。しかし、ウィンドウ内部のバーやボタン類の配置は、なかなか新しいものに慣れにくいような気がする。確かにそうした部分のデザインも、これまでで最も大きく変化しそうだ。それには古くからのMacユーザーほど、強い抵抗を感じる可能性があり、議論を呼びそうだ。まずは、ウィンドウ最上部のタイトルバーとその下のツールバーの変化を確認する。

言葉による説明は不要かもしれないが、これまで2段に分かれていたタイトルとツールの各バーが、太めの1本に統合されるのが、まず目につく。

また、ツールバーに並ぶボタン類のデザインも趣向が変わる。これまでは、ラジオボタンのような一択のボタンは隙間なく並べられてわかりやすかった。新しいデザインでは、ボタンの間隔だけが異なるので、他の独立したボタンと区別が付きにくい。

アプリの環境設定に見られるような、1つのウィンドウの中身を切り替えて使えるようにする一種のタブバーも、そのアイコンともども、大きくデザインが変更されそうだ。

サイドバー

同じバーでも、サイドバーの変化は比較的小さなものになりそうだ。これまでは、選択肢として表示される際も、どれかを選択した後も、モノクロで味気ない感じのものだった。新しいインターフェースでは、サイドバーの選択肢のアイコンがアクセントカラーで表示され、わずかながらにぎやかな感じになる。

選択したアイテムのハイライトは、サイドバーの左端から右端に届く長方形ではなく、左右に余白を残した角の丸い長方形になる。これは、次に述べるメニューの選択表示と同じだ。

メニュー

デザイン要素の変更としては、それほど大きくないにも関わらず、比較的大きく印象の変わるのはメニューだろう。

まず、メニューバーやメニュー自体の透明度が増しているように見える。フォントサイズは13ポイントになり、微妙に小さくなっているようだ。逆にメニューの項目の行間は微妙に広くなり、なんとなく余裕が感じられる。そして、もう1つの変化が、心理的には最も大きな変化として感じられる。これまでは、選択した項目がメニュー左端から右端まで、長方形に反転されていたのに対し、新しいメニューでは、左右に余白を残して角の丸い長方形として選択される。

こうして、これまでのmacOSと比較しながら新しいmacOS 11のルック&フィールを確認してみると、確かにこれまでのものが古臭く感じられるかもしれない。慣れれば新しいものが当たり前に感じられるようになり、何とも思わなくなるものが大半だろう。しかし、新しいものが何でも良いとは限らない。実際に使ってみるまでは予断を許さないが、ここに挙げたもの以外の要素も含め、いつまで経っても違和感が消えないような変更が施されないことを願うばかりだ。

アップルの次期「マップ」ではビルの形状をiPhoneでスキャンして場所を絞り込める

iOS 14でApple(アップル)は、純正の「マップ」アプリに重要な新機能を加える予定だ。例えば、自転車のための経路指示、電気自動車(EV)のための経路案内、そしてキュレーションガイドといったものが含まれる。だがアプリにはさらに賢い機能も追加される。

正確な位置を取得できない密集した地域で「マップ」アプリは、ユーザーにiPhoneで通りの向こうのビルをカメラでスキャンするように促す。これにより現在地をより詳細に特定するのだ。

ご想像のとおり、この機能はGoogleストリートビューにインスパイアされた「マップ」アプリの機能である、Look Around(ルックアラウンド)に基づいている。Look Aroundは、通りを歩いていく際に、周囲の景色を見せてくれる機能だ。すべてが3Dで前景と背景を区別できるので、「マップ」アプリはストリートビューよりも多少洗練されている。

Look Aroundは現在のところ、サンフランシスコ、ニューヨーク、シカゴ、ワシントンDC、ラスベガスなど、ごく一部の米国の都市でのみ利用できる。だがアップルは今でも拡張を続けていて、6月29日にはシアトルへ、そして今秋には日本の主要都市への拡大が予定されている。徒歩でのみアクセスできるエリアの一部も、将来的には利用可能になる。ビルの形をスキャンして位置を調整しても、アップルはもちろんサーバーにデータを送信しない。マッチングはデバイス上で行われる。

キュレーションガイド機能に関しては同社は、AllTrails、Lonely Planet、The Infatuation、Washington Post、Louis Vuittonなどと提携して、キュレーションされた場所のリストをアプリに追加している。

検索バーをタップして検索カードを下にスクロールすると、近隣の場所に関するガイドが表示される。ガイドを開くと、地図上ですべての場所を表示したり、ガイド自体の中でそれらの場所をリストビューで表示したりすることができる。場所を共有してユーザー自身が作成したガイドに保存することも可能だ。同社は現在のバージョンの「マップ」ではそうした自作ガイドをコレクションと呼んでいる。

頻繁にチェックしたい場合には、キュレートされたガイドもまとめて保存しておくことができる。場所は自動的に更新される。

画像クレジット:Apple

EV経路案内については、ユーザーは「マップ」に自分の車のを追加し、名前をつけて、充電装置のタイプを選ぶことができる。現段階ではBMWならびにフォードと提携している。ルートを計画する際に、利用する車を選択できるようになった。電気自動車を選択すれば、「マップ」が途中の充電スポットを追加する。スポットをタップすれば、それが無料か有料かやコネクタのタイプを確認できる。

またWazeユーザーは、制限速度を超えている場合に「マップ」が警告できるようになることを知って喜んでいる。地図上に速度監視カメラと赤信号監視カメラの場所を表示することもできる。

渋滞ゾーンとナンバープレートによるアクセス規制がある一部の都市では、ナンバープレートを追加することができる。情報はデバイス上に保持される。そうした都市向けの経路指示も調整される。

画像クレジット:Apple

最後になるが、私のお気に入りの新機能は自転車向け経路指示だ。当初は、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、上海、北京でのみ利用できるようになる。アップルは、サイクリングパスや標高差といった、すべての適切なパラメーターを考慮に入れている。分岐点ごとの経路指示は、運転用の経路指示と比べるとフレーミングやより縦長のビューという点が異なっている。

Googleマップにも自転車用ルートが表示されるが、これは使い物にならない。「マップ」の自転車向け経路指示が実際に使い物になるのかどうかを試す日が待ち遠しい。「マップ」の新しいバージョンは今秋にiOS 14とともに出荷される。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:sako)

iOS 14は犬の鳴き声を認識して聴覚障害者に通知するアクセシビリティ機能などを強化

iOSの最新バージョンには、聴覚や視覚の不自由な人たちのための機能がいくつか追加されているが、誰にとっても役に立つものもある。

おそらく最も感動的な新機能は、Sound Recognition(音認識)だろう。ユーザーが気づきたい音(ノイズ)のリストに載っている音を検出すると、iPhoneがユーザーに通知する。サイレン、犬の鳴き声、煙検知器、車のクラクション、ドアチャイム、水の流れる音、家電のブザー、などなどリストは非常に長い。Furenexoという会社がこれを実現するデバイスを数年前に作っているが、iOSに内蔵されるのはうれしい。

Apple Watchに通知を送ることもできて、オーブンが設定温度になったのを知るためにiPhoneをチェックしたくない人には便利だ。アップルは人間や動物の音を追加する作業を進めているので、システムはまだ成長するようだ。

これが聴覚障害者の役にたつのは当然だが、音楽やポッドキャストに聞き入っていて、犬の散歩や荷物を届くことを忘れがちの人にもうれしい機能だ。

オーディオ部門の新機能はほかにも、同社が「personal audiogram」と呼ぶものがあり、異なる周波数をどのくらい聞き分けられるかに基づいてEQ(イコライザー)をカスタマイズする。これは医療機器ではなく難聴などを診断するものでもないが、さまざまなオーディオテストによって、特定の周波数を強めたり弱めたりする必要があるかどうかを判断できる。残念なことにこの機能は、アップルブランドのヘッドフォンでしか利用できない。

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Real Time Text(リアルタイムテキスト)による会話は、アクセシビリティ標準のひとつで、基本的にテキストによるチャットをビデオ通話プロトコルに乗せて送ることによって、スムーズな会話や緊急サービスの利用を非言語的な方法で可能にする。iPhoneでは以前からサポートされているが、これからはそのためにアプリを開く必要がなくなる。ゲームをしたりビデオを見ている最中に通話すれば会話がテキストで通知される。

最後に紹介する聴覚障害者向け機能は、グループFaceTime通話の隠れた変更だ。ふつうビデオは話している人に自動的に切り替わるが、手話は当然音を出さないので、話者はハイライトされない。iOS 14では、動きを手話である程度認識して(ただし内容は認識しない)その参加者のビデオ表示がハイライトされる。

Voice Overの大改造

アップルの視覚障害者向けのアクセシビリティ機能は充実しているが、改善の余地は常にある。Voice Overは10年以上使われているスマート画面読み上げシステムだが、これまで以上のUI操作を認識する機械学習モデルを採用したことで、適切なラベルのついていない項目や、サードパーティ製アプリやコンテンツも認識するようになった。これはデスクトップでも採用されるが、まだ十分ではない。

iOSの分類能力もアップグレードされ、写真の被写体を分析して高度な関係づけを行うようになった。例えば「two people sitting」(二人の人が座っている)の代わりに「two people sitting at a bar having a drink」(二人の人がバーで飲んでいる)と言ったり、「dog in a field」(広場に犬がいる)ではなく「a golden retriever playing in field on a sunny day」(晴れた日にゴールデンリトリバーが広場で遊んでいる)などと言うようになる。まあ100%正しく犬種を言い当てるかどうかはわからないが雰囲気はわかる。

拡大鏡とローターも拡張され、広い範囲の点字は自動でスクロールするようになった。

視覚障害のあるデベロッパーは、Swift(スウィフト)とXcodeに多くのVoice Over機能が追加され、コード補完やナビゲーションなどのよく使う作業の確認もアクセシビリティ対応になった。

バックタップ

「back tap」(バックタップ)は、アップルデバイスでは初めてだが、Google PixelなどのAndroid端末ユーザーにとってはなじみのある機能だ。端末の裏側を2、3回タップすることでショートカットを起動できるもので、犬のリードや紅茶のカップを持っている時に、もう片方の手で画面読み上げを起動するのにすごく便利だ。

容易に想像できるようにこれはどんな人にとっても便利で、あらゆるショートカットやタスクを実行するようにカスタマイズできる。残念ながら、この機能は今のところFace ID(顔認識機能)のある機種に限られるため、iPhone 8やSEなどのユーザーはおいてきぼりだ。秘密のタップ検出ハードウェアが使われているとは考えにくいので、iPhoneに当初から内蔵されている加速度センサーを利用していることはほぼ間違いない。

アップルが特定の機能をさしたる理由もなく人質にとるのは珍しいことではない。例えば、拡張された通知機能は、iPhone SEのような最新機種でも利用できない。しかし、アクセシビリティ機能でこれをやるのは普通ではない。アップルはボタンを有する端末でバックタップが利用できるようになる可能性を排除しなかったが、約束もしていない。この便利な機能がもっと広く利用できるようになることを願うばかりだが、時を待つほかはない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Chromeなどのウェブ拡張機能のSafariへの移植が容易に、アップルが開発環境を整備

Apple(アップル)は米国6月22日にmacOS 11 Big Surを発表し、Safariに加える改良についても言及した。ネイティブ拡張に加え、同社はウェブ拡張機能のサポートも追加する。Chrome、Firefox、Edgeブラウザの拡張機能を簡単に移植できるようになる見込みだ。

それがどのように機能するのか、アップルはWWDCセッションの中で詳細を明らかにした。Safariはすでに拡張機能をサポートしているが、もしあなたがSafariユーザーなら、それほど多くには対応していないことを知っているだろう。

iOSとmacOSでは、コンテンツブロッカーやシェア拡張機能に対応するアプリをインストールできる。コンテンツブロッカーでは、ウェブページが読み込まれる際に、トラッカーや広告などのブロックすべきコンテンツのリスト作成をできる。

シェア拡張機能では、Safariの共有メニューで機能を追加できる。例えば、「あとで読む」系のPocketやInstapaperはウェブページ上でJavaScriptを実行するためにシェア拡張機能を活用し、その結果をアプリに戻すといった具合だ。

macOSでは、デベロッパーはアプリ拡張機能も利用できる。パスワード管理ツールの1PasswordはSafariと統合するためにこの拡張機能を使っている。

「もしあなたが、すでにSwiftやObjective-Cになじんでいるネイティブアプリのデベロッパーなら、アプリ拡張機能かなり素晴らしいものです」とSafariエンジニアのEllie Epskamp-Hunt(エリー・エプスカンプ-ハント)氏は話した。

Safari以外のブラウザは異なるアプローチで各種機能を拡張している。具体的には、 JavaScript、HTML、そしてCSSのようなウェブ技術を活用してきた。だからこそアップルは、Safariのウェブ拡張機能に別のタイプの拡張機能を追加している。

ほかのSafari拡張機能のように、Safari用のウェブ拡張機能にはネイティブアプリが詰め込まれている。つまりこれは、デベロッパーがApp Store上で拡張機能を提供可能になることを意味する。ユーザーは拡張機能付きのアプリをダウンロードすることになるわけだ。

同社は、拡張機能を素早く移植できる拡張機能コンバーターも用意している。これを活用すると、予想したとおりにすべてが順調にいくかどうかが示される。その後、Xcodeプロジェクトに詰め込んでで署名したあとApp Storeに提出することができる。

一部の拡張機能はかなりの数のパーミッションを要する。これらはアクセスするすべてのウェブページを閲覧できる。だからこそアップルは一部のウェブサイトやアクティブなタブへの拡張機能を制限しているのだ。ユーザーはまた、ずっとではなく1日だけ拡張機能を起動させることも選べる。

拡張機能が初めてサイトにアクセスしようとすると警告が表示され、ユーザーのすべてのブラウジングデータにアクセスできる拡張機能がアクティベートされる前にはSafariの設定に大きな警告のバナーが表示される。

この変更は、将来多くのSafari用拡張機能が登場するかもしれないことを意味する。多くのChromeユーザーはChromeを離れたくない。同じような拡張機能がほかに見つからないからだ。もしデベロッパーが拡張機能をSafariに移植することを選べば、アップルはより多くのユーザーをSafariに引き込めるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi

AWSのノーコードツール「Amazon Honeycode」はなぜ生まれたのか?

米国時間6月24日、AWSはAmazon Honeycode(アマゾン・ハニーコード)を リリースした。これはAmazon(アマゾン)クラウドサービスへのちょっとした迂回路を提供する、スプレッドシートのようなインターフェースを中心に構築されたノーコード環境だ。

結局のところAWSの目的は、開発者にアプリケーションを構築するために必要なすべてのツールを提供することだが、最終的には開発者がすべての要素を組み合わせなければならない。

一方でHoneycodeは、基本的な業務アプリケーションを開発したい非プログラマーにアピールすることを目的としている。もしスプレッドシートの操作方法を知っていて、それをアプリにしたい場合には、Honeycodeが要求に応えてくれるだろう。

このサービスの背後にあるAWSの動機を理解するために、AWSのVPであるLarry Augustin(ラリー・オーガスティン)氏とAWSのゼネラルマネージャーであるMeera Vaidyanathan(ミラ・ベイディアネイサン)氏に話を聞いた

「私たちにとって、これはAWSのパワーをお客さまの中のより多くのユーザー方々に拡大することなのです」とオーガスティン氏は説明する。「私たちはお客様から、常に解決したい課題があるのだという声を聞いています。そうしたお客様は、ご自身のITチームや、アウトソーシングを含む他のチームに対して、その課題を解決するアプリケーションの開発を任せたいとお考えです。しかし、問題はそれを解決できる開発者の数よりも、カスタムアプリケーションへの要求数の方が、とにかく上回っているということなのです」と続ける。

画像クレジット:Amazon

そうした点ではHoneycodeの背後にある動機は、Microsoft(マイクロソフト)がPowerAppsローコードツールで行っていることとそれほど異なっているわけではない。PowerAppsも結局のところ、Azureプラットフォームを必ずしもフルタイムの開発者ではないユーザーに開放するものなのだ。しかし、AWSはここでは少しだけ異なるアプローチをとっていてHoneycodeのノーコードの部分を強調している。

「Honeycodeに対する私たちの目標は、ビジネスの中心で基幹業務に関わる人、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャー、プログラムマネージャーといった人たちが、自分たちの問題を解決できるカスタムアプリケーションを、コードを書く必要なく、簡単に作成できるようにすることでした」とオーガスティン氏は語る。「それが重要な要素でした。コーディングは必要とされていないのです。そこで私たちは、出発点として多くの人々がなじみのあるスプレッドシートのようなインターフェースを提供することで、それを実現することを選択しました」。

多くのローコード、ノーコードツールたちは、開発者に「コードに逃げ込む」(オーガスティンの言葉)ことも許すが、それはここでは意図されていない、例えばHoneycodeからコードをエクスポートして他の場所に移動するためのメカニズムは存在していない。

「Honeycodeを開発しているときに、私たちの心をよぎったのは、ああ、もし人々にやりたいことがあって、私たちが彼らにコードに逃げ込むことを許すことでそれ実現できるようになるのならという考えでした。私たちは何度も振り出しに戻って『うーん、じゃあどうやってコードに逃げ込むことを強制せずにそれを可能にできるのだろう』という問に答えようと努力し続けたのです。そこで私たちは、コードに逃げ込むことなく、大きな力を人びとに与えたいというマインドセットへと、自分たちを真剣に追い込んだのです」と彼は述べた。

画像クレジット:Amazon

とはいえ、経験豊富な開発者が他の場所からデータを取り込むためのAPIは用意されている。オーガスティン氏とベイディアネイサン氏は、企業たちがプラットフォーム上のユーザーのためにこれを行うか、AWSパートナーがこれらのインテグレーションを作成することも期待している。

ただし、こうした制限があったとしても、かなり複雑なアプリケーションを作成できるとチームは主張している。

「私たちはAmazon内で、さまざまなアプリを構築している多くの人々と話し合ってきました。そして私たちのチームの中でさえ、私は正直に言えば、まだ不可能だと思える事例に出会ったことはありません」とベイディアネイサン氏は言う。

「複雑さのレベルは、あなたがビルダー(構築者)としてどれくらいの専門家であるかどうかに本当に依存していると思います。アプリの中でデータを特定の形式で表示しようとすると、(スプレッドシートの中に)非常に複雑な式が現れることがあります。そして、決して作り話ではありませんが、入れ子に入れ子がひたすら重なって30行にも及ぶ複雑な式を書く人を見たこともあります。ですから、それはビルダーのスキルに依存していると私は本当に思っています。また、一度Honeycodeでビルドを開始すると、私自身もそうですが、単純なものから始めてだんだんと野心的になって、このレイヤーを追加したい、そしてあんなこともしたい、という具合になることに気が付きました。それは本当に私が目にしてきた、ビルダーたちの進歩の旅なのです。たった1つのテーブルと2、3の画面から始めて、意識しないうちに、ニーズに合わせて進化し続けるはるかに堅牢なアプリが得られるのです」。

Honeycodeを際立たせるもう1つの機能は、スプレッドシートがユーザーインターフェイスの中央に配置されることだ。そうした点からは、このサービスはAirtableのように見えるかも知れないが、その先それぞれのスプレッドシートがまったく異なる方向へ向かっていくことを考えると、見かけ上の比較は意味がないと思う。Retoolも比較の観点からも眺めてみた。こちらの方がより意味のある比較だと思う。しかしRetoolが相手にしているのはもっと高度な開発者であり、コードを隠すこともしない。とはいえ、これらのサービスがスプレッドシートを中心に構築されたのには理由がある。それは、誰もがそれらの使用方法に精通しているからだ。

「人びとは何十年もの間スプレッドシートを使用してきました」とオーガスティン氏は語る。「誰でも良く知っています。また、非常に複雑で、深く、非常に強力な式を記述して、とても強力なスプレッドシートを作成することができます。Honeycodeでも同じことができるのです。人びとがその比喩に十分に精通していることを私たちは感じたので、それをアプリに変える能力とともに、そのフルパワーを彼らに与えることができたのです」。

チーム自身もHoneycodeのリリースを管理するために、そのサービスを利用しているということを、ベイディアネイサン氏は強調した。そして製品名を投票するためにも用いたことも(ベイディアネイサン氏とオーガスティン氏は他にどんな候補があったのかは明かしてくれなかったが)。

「AWSの力を引き出し、それをプログラマーではない人びとの手に渡せるという点で、私たちはある意味、本当に革新的な製品を手に入れたのだと思います」とオーガスティン氏は語った。

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(翻訳:sako)

アップルが自社デバイスのリモート管理を支援するFleetsmithを買収

IT部門が従業員のデバイスの設定や管理をリモートで支援しなければならない時代には、プロセスを簡素化するサービスが役立つことは間違いない。Apple(アップル)はそれを認識しており、米国時間6月24日に企業がアップル製デバイスの設定や管理を支援するスタートアップであるFleetsmith(フリートスミス)を買収した。

アップルは買収を公表していなかったが、TechCrunchが取引を確認し、またFleetsmithも会社のブログ記事で取引を発表した。なお、どちらの企業も買収価格を公表していない。

このスタートアップは、アップルのDevice Enrollment Programを活用した技術を構築しており、従業員がデバイスを箱から出して電源を入れると、すぐにIT部門がオンラインで確認できるようにしている。

昨年の3000万ドル(約32億円)のシリーズB資金調達時に、CEOのZack Blum(ザック・ブラム)氏は同社の中核的な価値について「顧客は従業員に直接デバイスを配給できる。箱を開封してWi-Fiに接続すると、デバイスは自動的にFleetsmithに登録される」と説明していた。

Fleetsmithはデバイス登録の自動化以外にも、OSやセキュリティアップデートでデバイスを自動的に更新したり、IT部門が管理下にあるすべてのデバイスのステータスをダッシュボードで見られるようにしたりするなど、便利な機能を洗練されたインターフェイスとともに追加してきた。

アップルはおそらく、同社のデバイス管理部門をリードするJamfと協力を続けるだろうが、多くの従業員が自宅で仕事をしなければならない今、今回の買収はアップルにリモート管理の選択肢を与えることになる。

ブログ記事によるとFleetsmithは、Menlo Ventures、Tiger Global Management、Upfront Ventures、Harrison Metalなどの投資家から4000万ドル(約43億円)以上の資金を調達しており、今後も同社のウェブサイトを通じて製品を販売していくという。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

AWSがコードを書かずにウェブとモバイルのアプリが作れるAmazon Honeycodeを発表

米国時間6月24日、AWSはAmazon Honeycodeのベータ版をリリースしたことを発表した。これはコードをほんのわずか、もしくはまったく書かかずにアプリを作れるオンラインマネージド開発環境で、企業内で専用アプリを必要とするが自分で開発するリソースやスキルを持っていない人々の要望に答えるものだ。これを可能にしたのは自身の巨大データベースを誰でもドラッグ&ドロップで利用できるようにしたAWSのインターフェイス作成ノウハウの蓄積だという。

デベロッパーは、ユーザー20人までのアプリなら無料で開発できる。これを超えるときはユーザーの人数とアプリ使用するストレージに応じて課金される仕組みだ。

 AWSのバイスプレジデントを務めるLarry Augutin(ラリー・オーガスティン)氏は発表の際に「開発者のキャパシティはカスタムアプリのニーズにまったく追いつけないとカスタマーから言われている。そこでAmazon Honeycodeを使えば、ほとんどの人がコードを書く必要なしに強力なカスタム・モバイルアプリやウェブアプリを開発できる」と述べている。

この種のツールの常としてHoneycodeはTo-Doリスト、顧客追跡、調査、スケジュール、在庫管理などの一般的な業務のテンプレートを提供する。AWSによれば、従来多くの企業はスプレッドシートの共有でこうした業務を実行してきたという。

AWSは次のように指摘している。「スプレッドシートは本質的に固定的な表現力しかできないので、カスタマーはメールのやり取りでこの点を補おうとしてきた。しかしメールはスピードが遅く、メンバーが増えると加速度的に非効率化する。またバージョン管理やデータ同期で頻繁に誤りが起きる。このためメールの利用はかえって効率を低下させる場合が多かった。こういう場合、専用アプリケーションが必要となるが、特定業務のためのプログラミングのニーズは担当部署のエンジニアのキャパシティを上回ることが多かった。そこでIT部門が開発に取りかかれるようになるのを待つか、高価な料金を支払って外部の専門家にアプリケーションを開発させるか選ばねばならなかった」。

AWSは当然ながらHoneycodeによるアプリケーションのコアインターフェイスにスプレッドシートを選んでいる。これはカスタマーや実際にアプリを使うユーザーのほとんどがスプレッドシートの概念に馴染んでいるためだ。

ユーザーはデータを操作するためにカスタムプログラミングで制作されるアプリに最も近いと思われるスプレッドシートスタイルのテンプレートを使ったソフトウェアを選ぶ。ビルダー(HoneycodeのユーザーをAWSはビルダーと呼んでいる)ははサービスの所定の位置に通知、リマインダー、承認などのワークフローを設定できる。

 

AWSによればこうしたスプレッドシートタイプのアプリはワークブックごとに10万行まで簡単に拡張できるという。スプレッドシートはAWSのサーバーで作動するためビルダーはインフラの能力を考える必要がなく、アプリケーションの構築に集中できるという。

今のところHoneycodeに外部のデータソースをインポートすることはできないように思える。しかしインポート機能の追加もAWSのロードマップにあるかもしれない。逆に、外部サービスとの統合はアプリ構築を複雑化するので、AWSは今のところHoneycodeをできるかぎりシンプルなものにしようとしているとも考えられる。

Honeycodeはオレゴン州取材のAWS US Westリージョンでのみ作動するが、サポートは他のリージョンにも拡大されるはずだ。

Honeycodeの最初のカスタマーはSmugMugとSlackだという。Slackのビジネス及びコーポレート事業開発担当バイスプレジデントのBrad Armstrong(ブラッド・アームストロング)氏はプレスリリースで以下のように述べている。

「現在の常に変化するビジネス環境にあって、Slackのメンバーがその先頭に立ち適応していくためのアプリを構築する機会をAmazon Honeycodeが提供してくれると考えて大いに期待している。Amazon HoneycodeはSlackの事情に補完し拡張するための優れた手段と考えている。我々はこれまで以上にデータの活用を進め、業務をさらに効率化するための方法をカスタマーとともに構築していけるものと考えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

InstagramがTikTokクローン「Reels」を新市場へと拡大

Instagram(インスタグラム)は、昨年のブラジルでの開始に続き、「Reels」(リール)として知られるTikTok(ティクトック)のライバル(未訳記事)を、新しい市場へと拡大している。米国時間6月24日から、InstagramはフランスとドイツでのReelsの提供を始めた、これによってユーザーは15秒の短いビデオを録画し、音楽やその他の音を添えて、Instagramプラットフォーム上で共有してバイラルを狙うことができる。

Reelsの機能はTikTokに似ていて、クリエイティブなビデオを撮影することを容易にする編集ツールを各種提供している。たとえば、提供開始時にReelsは、カウントダウンタイマー、ビデオ速度を調整する機能、その他の効果を提供していた。

同社はブラジルで行った初期のテストから学び、それ以来Reels体験のキーとなる側面を再考してきた。

以前は、ReelsはInstagramのストーリー内のみで共有されることが意図されていた。しかし、Instagramコミュニティからは、より永続的な方法でReelsをフォロワーや友人と共有する機能が必要であり、必要に応じてその配布をより広く行なう機会も必要だとする反応が返された。

さらには、コミュニティからは簡単にReelsを編集たり他の人のReelsを見ることができたりする専用スペースが必要だという希望も寄せられている。

同社の広報担当者がTechCrunchに語ったところでは、ドイツとフランスでの拡大に伴い、InstagramはReelsをユーザープロフィールや検索ページ(後者は公開アカウント用)の専用スペースへと移動し たので、ユーザーは新しい視聴者と共有したり、Instagramフィード上で共有したりすることができる。

これらの変更により、Reelsがアプリの目的地の1つになるにつれて、Reelsとそのクリエイターたちにさらに多くの露出のチャンスが生み出されるだろう。例えば、現在のストーリーのように。

ところでReelsは、TikTokの人気の高まりに挑戦したFacebook(フェイスブック)の最初の試みではない。

Instagramの親会社であるFacebookは、以前に短い形式のビデオアプリLasso(ラッソー)を立ち上げていたが、これまでのところ大きな牽引力を発揮できていない。これに対して、Reelsでは、Instagramは既存のクリエイターベースを利用し、ユーザーのビデオ編集ツールへの慣れを活用することができる。

Reelsの課題は、Instagramユーザーが現在フィードへの投稿やストーリーで現在行っているものとは異なるタイプのコンテンツを、作成してもらうようにすることだ。そうしたビデオは、例えば誰かの日常のクリップやVlogのように、どうしてもより個人的なものになる傾向がある。その一方で、より専門的なクリエーターコンテンツはIGTVへと移動されてきた。

これに対してTikTokビデオでは、リハーサルや振り付けが行われる傾向がある。ユーザーたちはダンスを学び、トリックを実行し、ジョークを語り、曲やオーディオにリップシンクしたり、人気のミームを独自の方法で再現したりしている。こうしたビデオは通常、Instagramで見られるような即興的なものではない。こうしたコンテンツの作成を奨励するには、Reelsが現在提供しているものとは別の種類の編集ツールセットとワークフローが必要だ。

Instagramは、Reelsをグローバルに展開する予定の時期や、米国に持ち込む予定の時期は明らかにしなかったが、さらなる拡大によって、同社は既存の経験を基に引き続き製品を進化させることができると語っている。

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(翻訳:sako)

SuseがCloud FoundryベースのCloud Application Platform v2をリリース

ドイツの有名なオープンソース企業であるSuseは、数え切れないほど何度もオーナー企業が変わったが、2019年に再度独立企業になった。同社は、オープンソースのPaaSプロジェクト「Cloud Foundry」の長年の擁護者だ。SuseというとLinuxのディストリビューションを思い浮かべる人が多い思われるが、現在の同社はさまざまなサービスを提供している。コンテナプラットホーム、DevOpsツール、そしてCloud FoundryをベースとするSuse Cloud Application Platformなどだ。米国時間6月24日にSuseは、2年に一度の、そしていまやバーチャルのCloud Foundry Summitにおいて、Cloud Application Platformのバージョン2のローンチを発表した。

Application Platform、むしろCloud Foundryのメリットは、アプリケーションのワンステップデプロイと、それらサービスをホストするエンタープライズ級のプラットホームにある。

バージョン2の目玉機能は、Kubernetes Operatorだ。コンテナベースのアプリケーションをパッケージし、デプロイし、管理していくための標準的な方法で、これにより、Kubernetesのインフラ上でCloud Foundryをデプロイし、管理することが容易になる。

Suseのエンジニアリングとイノベーション担当プレジデントを務めるThomas Di Giacomo(トーマス・ディ・ジャコモ)氏によると、オンプレミスでもパブリッククラウドでも、Kubernetesのプラットホームがどこにあっても、その上でのインストール、運用、そしてメンテナンスが容易になり、既存のCloud Foundryユーザーにとっては、コンテナベースのモダンなアーキテクチャへの移行の道が開ける。というより、ここ数年はCloud FoundryにKubernetesのサポートを導入し、またCloud FoundryをKubernetesに持ち込むことの両方においてSuseは欠かせない存在だ。

なおCloud Foundryは長年、まだ誰もKubernetesの名前を聞いたことがないころから、コミュニティが開発した自社製のコンテナオーケストレーションツールを使っていた。しかし最近では、Kubernetesがコンテナ管理のデファクトスタンダードになり、そして現在では、Cloud Foundryは自社のDiegoツールとKubernetesの両方をサポートしている。

同氏は「Suse Cloud Application Platform 2.0は、これらの努力の上に構築され、それをさらに前進させる。そして最近SuseがCloud Foundry Communityに寄贈したいくつかのアップストリームの技術も取り入れている。例えば、KubeCFは、Cloud Foundry Application Runtimeのコンテナ化バージョンであり、Kubernetesの上で動く。またProject Quarksは、Kubernetes上のCloud Foundryのデプロイと管理を自動化するKubernetesオペレーターだ」と語る。

関連記事:SUSEがエンタープライズサービス好調で再び独立企業に

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(翻訳:iwatani、a.k.a.hiwa

メルセデス・ベンツとNVIDIAのタッグが「ソフトウェアを中心に据えた」自動車を2024年に市場投入

2020年版メルセデス・ベンツ(もしくはほぼすべての最新の高級車)の中身を詳しく見てみよう。そこには何十個という電子制御ユニット(ECU)が登場する。従来の自動車メーカーは、これまでも多くの技術の追加にともなって、ECUを追加してきた。これは限界があるだけではく、複雑さとコストをもたらしてきた(こうした問題をテスラのような新しいライバルたちはうまく回避している)。

米国時間6月23日、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)とNVIDIA(エヌビディア)は、新世代車両のパフォーマンスと自動運転機能を向上させながら、複雑さの解消を目的としたパートナーシップを組むことを発表した。

その成果が、NVIDIAのDrive AGX Orin SoC(システムオンチップ)に基いた、ソフトウェアを中心としたコンピューティングアーキテクチャである。Daimler AG(ダイムラーAG)の会長でメルセデス・ベンツAGの社長でもあるOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏は発表のライブストリーミングの中で、この基礎アーキテクチャーは2024年末までに発売されるメルセデスの次世代車両の標準となる予定だと語った。

NVIDIAのOrin SoCは、最近発表されたNVIDIA Ampere(アンペア)スーパーコンピューティングアーキテクチャに基いている。NVIDIA Driveプラットフォームには、自動運転AIアプリケーション用に設計された完全なソフトウェアスタックが含まれる予定だ。両社は共同で、レベル2並び3のドライバー支援機能を持つAIと自動運転車アプリケーションを開発する。同様に最高レベル4に達する自動駐車機能も開発する予定だ。ちなみに、自動車技術者協会(SAE)は自動化に5つのレベルを指定している。レベル2システムは、2つの主要な機能が自動化されていることを意味するが、依然として常に人間の運転手が運転に関与する。またレベル4は車両が特定の条件下で、人間の介入なしに運転のすべての局面を処理できることを意味する。

NVIDIA Orin SoCは、毎秒200兆回の演算を提供する。(画像クレジット: NVIDIA)

この新しい車載コンピューティングアーキテクチャは、無線による(OTA)ソフトウェアのアップデートもサポートする。これは、テスラが電気自動車の機能を継続的にアップグレードするために長年採用してきた技術戦略だ。これが意味するのは、メルセデスの2024年モデルのオーナーは、購入後何カ月さらには何年経っても、その先進ドライバー支援システムが改良されていくところを目撃することになるということだ。

ケレニウス氏は米国時間6月23日に、この新しいコンピューティングプラットフォームへの移行は、自社のビジネスモデルにとって重要であると述べている。

「多くの人が現在の自動車、最新の自動車のことを、車輪付きのスマートフォンのようなものだと話しています。もしそのアプローチを採用したい場合には、全体的な観点からソフトウェアアーキテクチャの根底を見直す必要があります」と彼は述べている。「ここで最も重要なドメインの1つは、ドライバーアシスタントドメインです。それは、私たちがソフトウェア駆動型アーキテクチャと呼んでいるものにうまく組み込まれ、(高い計算能力で)顧客のユースケースを追加できるようになっている必要があります。この場合は、自動運転に向けたドライバー支援という意味です」。

ケレニウス氏は、このことはビジネスに継続的な収入源を加える役に立つ、と付け加えた。この新しい車載コンピューティングプラットフォームは、メルセデスの車両をソフトウェアアプリベースのシステムへと移行させる。これにより、理論的にはメルセデスがサードパーティのアプリを車両に導入できるようになる。ケレニウス氏が新しい収入源について言及したときに意識していたものがこれである可能性が高い。ソフトウェアベースのアプリシステムを使うことで、車のユーザーは、車両の利用を続ける中で、機能やソフトウェアアプリケーションそしてサブスクリプションサービスを無線ソフトウェアアップデートを使って、購入し追加するこができる。

これは、1回限りものでも単なる試行でもない。このソフトウェア中心のコンピューティングシステムは、メルセデスの次世代車両全体の標準となる。そして、もしメルセデスがMBUXと呼ばれる次世代インフォテインメントシステムと同じ戦略に従うとするなら、最初にこのアーキテクチャが採用されるのは、フラッグシップのSクラスではなく、Aクラスになるだろう。

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(翻訳:sako)

ParallelsがARMアーキテクチャ搭載Macに仮想環境を提供へ、ARM on ARMのWin環境が現実的か

macOS上でx64(x86)版のWindowsやLinuxなど利用可能にするホスト型の仮想環境「Parallels Desktop」などを開発・販売しているParallelsは、WWDC20のアップルの発表を受け、アップルと協力してARMアーキテクチャを採用するApple Silicon搭載Macにも仮想環境を提供する計画であることを明らかにした。

同社のエンジニアリング・サポート担当シニアバイスプレジデントであるニック・ドブロボルスキー氏はプレスリリースで「Parallelsはこの移行時に、アップルと緊密に連携しており、Apple Siliconを搭載した将来のMacへサポートを提供していくことを楽しみにしています」と述べている。

プレスリリースでは、なんの仮想環境を開発していくのかは明らかにされていないが、常識的に考えればWindowsが動く仮想PC環境を指すと考えられる。となるとWindowsには、インテルやAMDのプロセッサーで動作する64ビットのx64版と32ビットのx86版、ARMアーキテクチャ上で動くARM版があり、ARM版のWindows環境であれば元は同じARMアーキテクチャのApple Silicon搭載Mac、つまりARM on ARMを実現するのはハードルが低いと考えられる。

ARM版Windowsは、マイクロソフトの2 in 1 PCであるSurface Pro Xなどに搭載されているOSだ。x86アプリのエミュレーション機能を備えているので、ARM版Windows用アプリはもちろん、32ビットのx86版Windows用(Win32)アプリもエミューレションで動くため、Apple Silicon搭載Macでも十分な処理速度になるだろう。古いWindowsアプリをMacで動かしたいというニーズにも応えられる。

一方で、64ビットのx64版Windowsで動作する最近のアプリをApple Silicon搭載Macで使いたいというニーズを実現するのはハードルが高い。Parallelsがホスト型の仮想環境の開発を計画している場合、ARMアーキテクチャ上で動くmacOS上に、プロセッサのアーキテクチャが異なるx64版のPC環境を構築する必要があるからだ。Parallels Desktopなどのx64 on x64のホスト型仮想環境に比べて処理速度の低下は避けられない。

WWDC20の基調講演のデモでは、Apple Silicon対応のプロトタイプのParallels DesktopDebian Linuxを稼働させ、その上でApacheサーバを稼働させていたが、DebianARM版もあるのでプロトタイプがx64ベースなのか、ARMベースなのかは判別できない。

MacがPowerPCを搭載していたころ、マイクロソフトに買収される前のConnectix(コネクティクス)が開発したVirtual PCというホスト型仮想環境上のWindowsをものすごく遅いながらも頑張って使っていた1ユーザーとしては、技術的ロマンを感じるのはもちろんx64 on ARMの仮想環境だ。もちろん私だけでなく、当時はVirtual PCのアップデータが配布されると日本からのアクセスが集中してFTPサーバーが落ちたことがあるほど、日本のユーザーの関心は高かった。とはいえ、早期の市場投入と実用性を考えるとARM on ARMに落ち着くのではないか。

ちなみにVirtual PCはマイクロソフトに買収されたあとの「Microsoft Virtual PC for Mac Version 7」シリーズでPower Mac G5対応を果たし、CPUのアーキテクチャーだけでなくリトルエンディアンとビックエンディアンのバイトオーダーの壁も乗り越えていた(ものすごく遅かったけど)。

詳細はParallelsに問い合わせ中で、追って記事を更新する予定だ。