3Dプリントとロボットアームで住宅建設の工期を短縮するDiamond Age

ベイエリアのDiamond Ageが今週、800万ドル(約8億8000万円)の資金調達を発表した。このシードラウンドをリードしたのはPrime Movers LabとAlpaca VCで、Dolby Family Ventures、Calm Ventures、Gaingels、Towerview Ventures、GFA Venture Partners、そしてSuffolk Constructionなど参加した投資家はとても多い。

同社の売りは、複数の最新技術を組み合わせて利用し、工期と工数を大幅に減らすことだ。Diamond Ageの主張では、同社のその技術が完全に実現すると、手作業を担当する人間労働者を55%減らし、一世帯住宅の建設工期を9カ月から30日に短縮できるという。今回の資金調達の一部は、コンセプトを実証するために、1100平方フィート(約102.2平方メートル)の「デモハウス」を建設するためのプロセスを整えることに使われる。

共同創業者でCEOのJack Oslan(ジャック・オスラン)氏は「私たちはアメリカンドリームを追う次世代のために、高品質で手頃なお値段の一世帯住宅を作る必要があります。それを実現する唯一の方法はオートメーションです」とプレスリリースで述べている。

具体的に同社が利用するのは、ロボットと3Dプリントだ。ロボットについては、26種類のロボットアームアタッチメントを用いて建設をサポートする。また、ガントリーを使った3Dプリンティング技術で、構造物の内壁や外壁を作る。

なぜベイエリアかというと、サンフランシスコのベイエリアは極めて住宅事情が逼迫しているからだ。一般の建設会社も、RaaS(Robotics as a Service)と呼ばれるレンタル方式で同社の技術を利用できる。料金の情報は、今回得られなかった。

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画像クレジット:Diamond Age

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

住宅建築の技能をビデオで学べるプラットフォーム「Copeland」

職業専門学校は目新しいものではない。しかしCopeland(コープランド)という新しいスタートアップは、配管や塗装、家具製作などについての教育を、業界のプロや専門性を持つ教育者が登場する高品質の事前収録されたオンライン授業で提供することで大きな事業を構築できると考えている。

建設関係のMasterClassと感じたら、それは偶然ではない。CopelandはMasterClass(企業価値はいまや25億ドル[約2740億円]と報じられている)に最初に小切手を切った有名な投資家Michael Dearing(マイケル・ディアリング)氏のアイデアで、技能などが十分に生かされていない米国人を、十分な働き手を確保できない住宅建築業者と結びつけることにチャンスを見出した。一方、Copelandの共同創業者でCEOのGabe Jewell(ゲイブ・ジュウェル)氏は創業前、クリエイティブディレクターとしてMasterClassで約4年間過ごした。

コンテンツに料金を課しているCopelandは、職業専門学校に加えて建築や解体に関する数限りないハウツービデオを無料で閲覧できるYouTubeビデオとも競合している。それでもベイエリアで設立されたばかりの6人の会社であるCopelandはこれまでに9つの異なるコンテンツを制作した。同社の見通しに胸躍らせている投資家もいる。実際、ディアリング氏による初期の投資に加え、同社はシードラウンドでDefy.vcとCollaborative Fundから500万ドル(約5億5000万円)を調達し、累計調達額は700万ドル(約7億7000万円)となった。

米国時間6月3日午後に筆者はCopelandが何をしようとしているのか、住宅所有者や野心的な技能職の人がターゲット顧客なのかどうか、ジュウェル氏に話を聞いた。Copelandはある教育者にちなんだ名称だ。ジュウェル氏との会話は以下の通り。

TC:技能職の人や建築・建設分野で働く意欲がある人を教育しようとしています。この分野は労働力が不足し、ノウハウを持っている人を必要としています。あなたの顧客がトレーニングを受けたことを雇用主が認められるよう、証明書を付与する計画ですか。

GJ:適正証明あるいは、アセスメントをしっかりパスした場合の修了証明書を検討しています。ライセンスの方はというと、(一括請負建設業者の)ライセンスは地域で発行されるため複雑です。誰かの家を燃やしてダメにしてしまわないよう、認可された電気工事業者である必要がありますが、通常そのライセンス取得には4年かかります。ですので当社は現在、一般的な教育とサポートに注力しています。

TC:好奇心からお聞きしたいのですが、1カ所で多くの人に対応するプラットフォームであることを考えたとき、どうやってユーザーをテストするのですか。

GJ:建設の数学をテストすることが考えられます。角度や面積などをどう計算するのかを知っていることを確認するアセスメントを通じて行います。他のテストは一般的な知識についてとなるかもしれません。オンラインテストではあなたがすばらしい家具を作ることを確かめることはできませんが、他にもテストの方法は簡単に考えられます。

TC:MasterClassはセレブやそれぞれの分野のスターに頼っています。話題となるために、DIYタイプの番組からセレブ的な建築業者や技能職の人を先生として引っ張ってきますか。

GJ:それについても協議しています。やっていることをシェアするプロの建築業者による健全なオンラインコミュニティがあり、彼らは当社を温かく迎えてくれました。当社にとって最も重要なことはインストラクションの質を本当に高くすることです。

TC:私は昨日、煉瓦の壁をどのように解体するかについてのビデオを観ました。それで、ふと思ったのですが、Copelandのプラットフォームに住宅所有者向けのコンテンツは登場するのでしょうか。

GJ:DIY初挑戦という人にもコンテンツを提供するつもりです。例えばデッキ作りは雇用につながるスキルで、プロの作り方として学べるものを教えることができます。と同時に、もしあなたが自分のデッキを作ることを真剣に考えているなら、教え方を知っているプロ以外の誰から学ぶのでしょうか。

当社はまた、そうしたオーディエンスが集える方法を考えています。そこで壁を解体する方法を学ぶことができるかもしれませんが、信頼できるリソースとしてチェックできるプロの改造業者を見つけるためにCopelandを利用することもできます。

TC:プログラミングの各ピースをつくるのにどれくらいの時間がかかるのですか。

GJ:コースを合体させるのに数カ月かかります。各コースは大体が1〜2時間ですが、今後はもっと幅が出てくるでしょう。

TC:建築業者や、現在追い詰められている商業不動産デベロッパーとの提携はありますか。

GJ:住宅建築業者との提携を確立しているところです。いくつか進行中で、さらにコンテンツを制作してライブラリーに追加するとともに、そうした面を成長させることについてワクワクしています。

TC:コンテンツを制作するなかでサブスクも視野に入れていますか。

GJ:はい。現在は1コースあたり75ドル(約8200円)で、無期限にアクセスできます。また企業は人数分や回数で購入することもできます。ライブラリーを拡大するにつれ、価格体系はよりフレキシブルになるでしょう。

TC:どのようなタイプのコンテンツが今後登場しますか。

GJ:現在、大工仕事や家具製作、設計図読みのような実践的な技能をともなう住宅建築にフォーカスしていますが、配管や塗装、そして契約やリスク管理など一般的な請負業者のスキルなどを加えることでコンテンツを引き続き拡大していきます。当社はまた、現場とオフィスの中間のスキルを主に扱う、大学の教授による商業建築管理のライブラリーも制作しています。経験のある職人でリーダーシップスキルを学ぶ必要があったり、小売から建設の分野に移ってきた、あるいはオフィスの収容能力に取り組んでいどうやって結論を導き出すかを学ぶ必要がある、という人向けです。

カテゴリー:EdTech
タグ:Copelandオンライン学習住宅建築

画像クレジット:Copeland

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

ストレスなく付き合えるリノベ業者を探せるネットワークのEanoが6.5億円を調達、コロナ需要が追い風に

住宅のリノベーションは楽しいが、緊張と努力をともなう。

そのリノベーションプロセスの管理をサポートすることで、プロセスをずっとシンプルでリーズナブル価格のものに、そしてストレスを少なくしようとしている、とあるスタートアップが成長を加速させようと600万ドル(約6億5000万円)を調達した。Builders VCがラウンドをリードし、Celtic、Newfund、そしてWishの共同創業者Danny Zhang(ダニー・チャン)氏が参加した。チャン氏はEanoの取締役会にも加わる。

Wishの元グロースプロダクトマネジャーStella Wu(ステラ・ウー)氏は2017年に自分の家を買ったとき、リノベのプロセスにある課題を直に体験した。

「リノベ分野、特に個人の業者に関して多くの細々とした問題があることに気づきました。個人業者は頼りなく、やり取りも満足にできませんでした」と振り返る。

そしてウー氏は2019年にEanoを創業した。リノベを通じて家の所有者とともに歩み、個人の業者と新たな顧客を結びつけるのをサポートするサンフランシスコ拠点のスタートアップだ。EanoはADU住宅(小さな住宅)のようなプロジェクトにも取り組む。

新型コロナウイルスパンデミックの影響で2020年は多くの人がそれまでよりも家で過ごすようになり、Eanoの契約売上高は5倍に増えた、とウー氏は話す。20201年第1四半期の売上高は前年同期比70%増となった。

EanoのCEOで創業者のステラ・ウー氏(画像クレジット:Eano)

Eanoは家の所有者が改造計画が進む過程で驚くことがないよう、競争力がありかつ透明性のある価格体系を提供している、とウー氏は話した。

同社の自動化されたプロセスが1カ所ですべてのやり取りと進捗状況を追跡していて、ライセンスを持ち、精査され、そしてプロジェクトを抱える家の所有者の紹介が保証された「経験豊富な地元のプロのネットワーク」と同社が表現するものを拡大してきた。

「こうした個人の業者はそこらじゅうにいて、料金もかなり良心的ですが、彼らはリソースをあまり持たず、家の所有者にアクセスするのはかなり困難です」と中国からの移民であるウー氏はTechCrunchに語った。「ですので業者は当社にやって来ます。そして基本的には彼らが抱える問題の面倒をみます」。目下、Eanoはベイエリアとロサンゼルスで事業を展開していて、2021年シアトルとヒューストンに進出する計画だ。

顧客となった家の所有者はEanoで特定の改造パッケージを選ぶことができ、その後はプロジェクトの進捗をチェックしたり、チームと連絡を取ったり、ビデオで進捗具合を確認したりすらできる。

「当社は、業者がはるかに簡単に連絡を取ったり支払いを受けたりするのもサポートしています」とウー氏は話した。「こうした個人業者がブランドを増やすのもサポートしていて、当社のソフトウェアで業者の管理や顧客サポートを手伝っています」。

Builders VCのJim Kim(ジム・キム)氏は、ウー氏とユング氏がWishにいたときに、彼らと知り合ったと話した。

「当社は人に投資します。興した企業を成功に導き、それでもさらに成功したいという意欲があるかなり才能のある起業家を探すことができたとき、小切手を持ってすぐさま飛び込みます」とキム氏は話した。「時代遅れの建設業界のすべての構成要素により良いエクスペリエンスをもたらすために、Wishと同じようなプロダクト供給戦略にテクノロジーを組み合わせるというEanoのミッションを気に入っています」。

キム氏はまた、ウー氏が「建設に意義ある影響をもたらすために安全靴を履いた55歳の男性である必要はない」ことを証明しようとしているという事実にも感銘を受けている。

「その精神を気に入っています。ステレオタイプに馴染まない起業家を支援するという当社の考えと合っています」とキム氏は述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Eano資金調達住宅リノベーション

画像クレジット:Eano

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

アルゴリズムを利用して賃貸住宅の特定や管理を支援し大家の頭痛を解消するKnox Financialが10.8億円調達

賃貸物件を所有して収入を得る方法を表す「受動的所得」という言葉は、誰もが知っているだろう。受動的に収入が得られたらいいなと思う米国人は多いが、大家になるための手続きは恐ろしいほどに厄介で複雑なものだ。

つまり、土地を売った途端に地価が上がって、売ったことを後悔する人がどれほど多いことか、という話だ。

すでに大家であっても、不動産管理の複雑さには押し潰されそうになる。

アルゴリズムを利用したプラットフォームで賃貸住宅の特定や管理を支援するボストンのスタートアップKnox Financial(ノックス・ファイナンシャル)は、1000万ドル(約10億8000万円)のシリーズA投資を調達し、目標をさらに拡大した。ボストンを拠点とするG20 Venturesがこのラウンドを主導し、Greycroft、Pillar VC、2LVC、Gaingelsなどが参加している。

この投資により、2018年創設以来のKnoxの合計調達額は1470万ドル(約16億円)となった。同社は2020年1月、Greycroft主導によるシード投資ラウンドで300万ドル(約3億2500万円)を調達している。

Knoxの共同創設者でCEOのDavid Friedman(デイビッド・フリードマン)氏は、スタートアップ初心者ではない。同氏は2004年、不動産会社や代理店のための総合マーケティングプラットフォームとオンラインマーケティングサービスBoston Logic(ボストン・ロジック)を創設している。2016年、フリードマン氏は、現在はPropertybase(プロパティーベース)と呼ばれるその会社を、非公開の価格でProvidence Equity(プロビデンス・エクイティー)に売却した。

Knoxは2019年5月にプラットフォームをローンチしている。その目標は、今住んでいる家から退去して投資不動産に変更しようと決意した住宅の所有者に「完全にお任せ」の移行を提供することだ。また、賃貸物件の管理をより簡単に効率的にする手助けもするという。

2020年初めのシード投資ラウンドでは、同社の事業はボストンに限られ、プラットフォーム上の物件は50件しかなかった。現在では7つの州に展開され「数百件」の投資不動産がプラットフォーム上にあり、1億ドル(約108億円)を超えるポートフォリオを監督している。

では、どんな仕組みなのだろうか?物件がKnoxのFrictionless Ownership Platform(フリクションレス・オーナーシップ・プラットフォーム)に登録されると、この物件の財務、税金、保険、賃貸と法務、賃借人と土地建物の管理、銀行口座管理と請求書の支払いといった処理を自動化し監督する。

Knoxではまた、その物件から長期的に得られる投資収益率を計算する、賃貸料と予測のモデルも開発した。

画像クレジット:Knox Financial

「投資家のための大幅な節約を行い、ほぼ確実にポートフォリオの収益性を高めます」とフリードマン氏はいう。「大きな家に引っ越す人がいれば、私たちはその物件を信じられないほどのROI発生器、つまり収入源に生まれ変わらせます」。

同社の収益モデルは単純だ。

「賃貸料が1ドル、このシステムを通過するごとに、私たちは10セントもらいます」とフリードマン氏はTechCrunchに話した。私たちは、顧客の状況に合わせて利益を調整します。賃貸料がまったく入らないときは、私たちも売上げはありません」。

Knoxでは、今回の新しい資金でサービス対象地域を広げ、もっと多くの人たちに知ってもらおう計画している。

G20 Venturesの共同創設者でパートナーのBob Hower(ボブ・ハワー)氏は、大学を卒業して数週間後に、母親の援助でボロ家を購入したことを話してくれた。改修を終えた1週間後に、彼はその家を売りに出した。それから5カ月の間、市場が軟調になるにつれて価格を次第に下げざるを得なくなり、とうとうわずかな儲けで売却してしまった。

「あの家は、今では私が出資した数倍の値がついています」とハワー氏は振り返る。「今思うと、敗因は、そもそも家を売ろうと決めてしまったことにあります」。

その経験からハワー氏は、Knoxのビジネスモデルにある、彼がいうところの「思考の明確さ」を大切にするようになった。

「Knoxが数十年前にあれば、大学卒業後に買ったあのボロ家を、今でも持っていたはずです」と彼はいう。「Betterment(ベターメント)などの投資プラットフォームは、いくつものアドバイスと最適化のための作業を、シングルサインオンの簡単なサービスに凝縮しています。Knoxは、この手のモデルを住宅不動産投資に持ち込んだ、最初の企業なのです」。

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タグ:Knox Financial資金調達不動産住宅賃貸アルゴリズムボストン

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:金井哲夫)

Amazon Alexaの頭脳構築に貢献したチームを擁する住宅関連サービスのHomeXが約98億円調達

家の所有者とサービスプロバイダー向けのホームサービスプラットフォームを提供するHomeXは、このたびNew Mountain Capital(ニューマウンテンキャピタル)が主導する資金調達ラウンドで9000万ドル(約98億円)を調達した。

ニューヨークを拠点とするNew Mountain Capitalは、300億ドル(約3兆2600億円)以上の資産を運用する投資会社で、今回のラウンドでは、同社の幹部と一緒に投資を行った唯一の機関投資家である。HomeXは、2019年の5000万ドル(約54億円)超の負債による資金調達まで、外部からの投資を受けずに運営されていた。

HomeXはシカゴを拠点として2017年に設立された。業者と住宅所有者をバーチャルおよび対面でマッチングして、住宅関連サービスを「根本的に改善」することを目指している。また、ソフトウェアを構築し、請負業者が需要を「より効率的に」掘り起こし、管理できるようにすることを目的としたサービスも提供している。

注目すべきは、HomeXの共同創業者の1人であるCTOのSimon Weaver(サイモン・ウィーバー)氏をはじめとする複数のチームメンバーが、Evi(イービー)の開発チームに在籍していたことだ。Eviは2012年にAmazonに買収されたスタートアップで、アプリを介して自然言語でコミュニケーションできるAIプログラムを開発。その技術は実質的に、アマゾンの仮想アシスタント「Alexa」の頭脳となっている。

HomeXは、人工知能を活用し、業者が家に出向く前に住宅の不具合をバーチャルで診断し、事前に必要な機材を準備するなど問題をより早く解決できるようにして、顧客のエクスペリエンス向上につなげることを目的としている。

同社の共同創業者で社長のVincent Payen(ヴィンセント・ペイヤン)氏は次のように話す。「私たちは、機械が生成したコンテンツを使用して、住宅所有者の問題に応じたソリューションを作成しています。機械を使って不具合や質問を理解し、実際に診断や提案、解決策を導き出すことは、AIが絶対的に優れているところであり、3年前、5年前には不可能だったことが可能になっています」。

5000億ドル(約54兆円)規模のサービス業界で長年勤務していた創業者でCEOのMichael Werner(マイケル・ワーナー)氏は、住宅関連サービスがいかに断片的であるかを認識していた。特に特定の市場では「需要が非常に高いのに、その仕事をする業者が足りないという不均衡、とんでもない労働力不足がある」と話す(彼の家族はWerner Ladders(ワーナー・ラダーズ)を設立している)。

HomeX Remote Assist(ホームエックスリモートアシスト)は、バーチャル(電話や動画、チャットなど)で住宅所有者とHomeXのライセンスを持つ技術者をマッチングし、住宅の一般的な不具合を診断・修理する。ワーナー氏によると、このビジネス部門は1年足らずで400%以上の成長を遂げ、2020年、同社はプラットフォーム上の請負業者の数を「約5倍」に増やした。収益の数字は明らかにしていない。

画像クレジット:HomeX

「私たちは住宅所有者が家のメンテナンスにかける手間を軽減しています」とワーナー氏。「それと同時に、私たちは請負業者の成功を支援したいと考えています。遠隔医療で医療の提供方法が変化したように、HomeX Remote Assistは住宅のメンテナンスサービスの在り方を変えようとしています」。

HomeXのビジネスではB2Bサービスの分野も急速に成長している。住宅保証会社や保険会社は、リモートサービスを「より効率的なビジネスのための付加価値」と考えているとペイヤン氏は指摘する。

「現在、資本金の一部を使って、パイロットプログラムやさまざまなビジネス開発に取り組んでいます」とペイヤン氏は話す。

ワーナー氏によると、今のところ会社全体では赤字だが、サービス面では利益が出ているとのこと。同社は過去12カ月間だけでも、バーチャルと対面でのやり取りで構成されたプラットフォームで「何十万」もの顧客にサービスを提供してきた。

New Mountain CapitalのマネージングディレクターであるHarris Kealey(ハリス・キーリー)氏は、書面による声明で、HomeXは住宅・商業サービス業界を再構築することができるだろうとしている。

同氏は「この市場は巨大で、変化と革新の必要性は相当なもの」という。

この分野では、最近Thumbtack(サムタック)が動画による住宅診断サービスを開始している。Thumbtackは、改修や修繕などのサービスを地元の業者に依頼できるマーケットプレイスで、2020年12月には、スタートアップのSetter(セッター)買収した。Setterは専門家による動画での住宅診断サービスを提供し、不具合の改善方法を個別に提案していた。

Thumbtackは、主要市場で取引が激減し、2020年3月末に250名の従業員を解雇した。しかしその後、CEOのMarco Zappacosta(マルコ・ザッパコスタ)氏はTechCrunchに対し「住宅に再び焦点を当て、デジタル導入を加速させる」と語っている。

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タグ:HomeX住宅不動産資金調達

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

近隣の小売り店舗の回帰など、意外な2021年の米不動産業界のトレンド

パンデミックにより、誰もが予想していたよりも早く、リモートワークやオンデマンドデリバリーが日常的なことになった。世界がパンデミックから抜け出そうとしている今、「場所」は1年前ほど重要ではなくなった。

現代社会は、超高層のオフィスビルや高級マンションが立ち並ぶ洗練された大都市を生み出した。そして今、これらの都市の中心で活躍していた人々は、ポストパンデミックの世界での都市のあり方を考えている。

ここでは取材を元に、不動産のプロパティテクノロジーに注目する10人のトップ投資家がどのように未来を見据えているかを探る。

投資家らは総じて楽観的だ。というのも、本来なら氷河期にあるはずの不動産業界では、不動産テックが将来不可欠なものになると考えているからだ。しかし、少なくともパンデミック以前の戦略を知る者からすれば、オフィス分野は最も見通しが難しいようだ。

投資家らは、リモートワークが将来的に重要な役割を担うと考えており、郊外や比較的小さな都市での住宅需要が引き続き高いと予測している。そして、一戸建て住宅の販売や賃貸などの分野に焦点を当てたフィンテックやSaaS製品を特に高く評価している。多くの投資家は大都市への投資を続けているが、代替住居(敷地を共有する付属住宅ユニット)や気候関連のコンセプトを中核に据えている。

最も意外だったことは、一部の投資家が小売りのリアル店舗に期待していることだ。最新のデータを見れば、それも納得できる。大げさに聞こえるかもしれないが、地方の小規模ビジネスにとっては、より良い時代を迎えているのかもしれない。詳細は後にしよう。

オフィスがより贅沢品となるとき

パンデミックと既存のトレンドが相まって、オフィスの賃借人は「より高級品の消費者に近くなった」と、Bain Capital Ventures(ベインキャピタル・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであり、古くからの不動産テック投資家および不動産事業者であるClelia Warburg Peters(クレリア・ウォーバーグ・ピーターズ)氏はいう。

「1950年代以降、優位な立場にいた」家主は、これからはテナントを第一に考えなければならないと同氏は言い「賢明な家主は、単に物理的なスペースを提供していれば良かったものが、テナントにマルチチャネルのワークエクスペリエンスを提供していかなければならないというプレッシャを感じているだろう」と続ける。

それには、複数のオフィスを行き来する従業員を管理するためのソフトウェアやハードウェアなど、具体的な付加サービスが含まれる。しかし、今日の市場では、新たな姿勢が求められている。同氏は「これらの資産は、テナントのニーズに応えることを重視した、より人間的な関係の中で提供される必要がある」とし「リース期間は必然的に短くなるため、テナントに対してこれまで以上に積極的に売り込み、サポートしていく必要があるだろう」という。

こういったオフィス環境の変化は、郊外では供給側に有利に働く可能性がある。

MetaProp(メタプロップ)のZach Aarons(ザック・アーロンズ)氏は「都市部に本社のある企業は、従業員にスペースを提供しなければならなくなるだろう」と語る(同氏の会社は、この分野に関して非常にポジティブなレポートを発表したばかりだ)。しかし、多くの企業は「時折、従業員が家を出て働く必要が生じたとしても、電車で1時間もかからないよう、郊外に何らかの代替オフィスも提供したいだろう」という。

そして「メタプロップチームの多くのメンバーが前職で行っていたように、今でも(資金提供ではなく)実際に不動産の購入をしていたとしたら、郊外のオフィスの購入を積極的に検討していただろう」と付け加えた。

ほとんどの人が、リモートワークは今後根づいていき、将来的にオフィススペースのあり方に影響を与えると考えている。

Wilshire Lane Partners(ウィルシャー・レーン・パートナーズ)の共同設立者でマネージングディレクターのAdam Demuyakor(アダム・デムヤコール)氏は、概して大都市には強気だが、スタートアップ企業自身がすでに特定の場所から移転しつつあると指摘する。これは重要な先行指標であるとTechCrunchは考えている。

「この1年を振り返って興味深かったのは、パンデミックによって地理的な柔軟性を得たことで、スタートアップ自身がどのように進化し始めたかということだ」と同氏は語り「以前は、スタートアップ(特に不動産関連のスタートアップ)は、顧客や見込みのある資金源、人材の集まる場所の近くに「本社」を置かなければならないというプレッシャーを感じていた。しかし、ここ数カ月でこうした変化が見られるようになった」と述べる。

実際、筆者の元同僚で、現在はInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)のパートナーであるKim-Mai Cutler(キム-マイ・カトラー)氏は、同社のポートフォリオ企業に対して定期的に行っている最近の調査で、こうした傾向を明らかにしている。パンデミックが始まった頃、創設者が会社を設立したい場所の1位はまだベイエリアだった。今では、リモートファーストが1位になっている。一方、投資先の企業では、リモートファーストか、本社を小さくして遠くにオフィスを置くハブ&スポークモデルのどちらかに移りつつある。何らかのオフィスを維持している企業は、週5日よりも大幅に少ない日数しか使われていないと答え、また、3分の2近くの企業が、勤務地による給与調整は行わないと回答している。

これは小さなサンプルだが「スタートアップは(a)効果的なリモートワークに必要なテクノロジーの活用に長けていることが多く、(b)同時に、人材獲得のための激しい競争にさらされている。そのため、パンデミックが過ぎ去った後、スタートアップの動向を観察することで、『仕事の未来』がどのようなものになるか推測できるだろう」とデムヤコール氏はいう。

一部の(大きな融資を受けている)家主や(大きな予算を持っている)大都市は、オフィスの再配置を早急に進めており、一部の大企業はオフィススペースを増設したり、現在の所在地へのコミットメントを改めて明確にしたりしている。

そういった努力に加え、直にネットワークを築きたいという自然な欲求が、産業クラスターを元に戻し、人々を以前の場所に引き戻すことになるのかもしれない。ともすれば、以前の100%近くまで戻るかもしれない。その場合、それはどういったものになるのだろうか。

RET Ventures(RETベンチャーズ)のパートナー兼マネージングディレクターであるChristopher Yip(クリストファー・イップ)氏は、このようなシナリオでは、パンデミック時のような傾向が持続するだろうという。そして「公衆衛生への配慮に敏感になった人々は、大量輸送機関より自動車や自転車などの単独の交通手段を好んで使うようになり、駐車場関連やバイクシェアリングのテックツールが伸びる可能性がある。また、不動産管理の観点からも、タッチレステクノロジーやセルフリースを可能にするツールに消費者の関心が高まり、密集した環境での生活をより快適に、より健康的にするテクノロジーが増えていくだろう」と同氏は続ける。

もう1つのシナリオとして「多くの仕事が完全なリモートであり続ける場合」を挙げる。

同氏は「理論的には、小売店やオフィスビルは、経済的構造上苦しい状況が続く可能性があり、ある地域の政府関係者からは、オフィスビルを手頃な価格の住宅に転換するという話も出ている」と実情を話し「都市の市場の空室率が高いままであれば、住宅に対する需要が高くない市場でも家主がホテルタイプの滞在から収益を得ることができるAirbnb(エアビーアンドビー)Kasa(カーサ)のような短期賃貸プラットフォームへの需要が高まるだろう」と語る。

Fifth Wall(フィフスウォール)のパートナーであるVik Chawla(ヴィック・チャウラ)氏は、中間的なシナリオを描いている。「大都市はパンデミック後も知識労働者や優秀な人材を惹きつけると思うが、リモートワークが労働経済にとってますます重要な要素となり、オフィスとそれ以外の場所で過ごす時間の中で柔軟性が増すと予想している」。

これはやはり、ある種の長期的な価格の下落を意味する。「都市レベルでは、需要の減少により、パンデミック前の水準に比べて賃料は右肩下がりになるはずだ」と同氏は主張する。「そうは言っても、パンデミックを通して成長を遂げた都市の不動産エコシステムは、イノベーションの時期を迎え、それに伴い、住宅密度、ADU、モジュラービルディング技術の増加が見られるだろう」。

DreamIt Ventures(ドリームイット・ベンチャーズ)で都市開発テック部門のマネージングディレクターを務めるAndrew Ackerman(アンドリュー・アッカーマン)氏も、商業オフィスの価格はそのうち緩やかに下落し、その後、スペース管理に関する複雑な問題が発生すると見ている。

「仕事が平常に戻ることは、オフィスの終焉ではなく、より柔軟なワークアレンジメントをもたらすだろう。しかしそのことで、今後5年から10年で賃貸契約が更新されていく間に、オフィススペースの需要は壊滅的ではないものの、徐々に減少していくことになる。問題は、その後、余ったオフィススペースをどうするかということだ」。

「オフィスを住居へ転換することはなかなか厄介だ」と同氏は言い「レイアウトが一番の制約だ。最近のオフィスの多くは、窓がなく内部に深い空間を持っており、再利用することを難しくしている。たとえ、狭いレイアウトであっても、構造的な要素が住居には適さない場所にあることが多い。水道管やガス管を適切な場所へ移すために、建物のコンクリートに何千もの穴を開けるのは大変な作業だ」と説明する。

これは、まだ価値のある物件の新しいタイプの利用法につながりそうか、と問うと「共同生活やマイクロユニットがより魅力的な転用方法かどうかというのは、今調査している分野の1つだ。オフィスの休憩室やビル内側の大部屋を、共有のキッチンやダイニングエリア、そしてレクリエーションや仕事のためのフレックススペースに変えれば、多額の費用をかけて改装しなくても、ビル内部の深いスペースを再利用できるかもしれない。また、配管のルートをあまり変更する必要がないのであれば、時間とともに変動するオフィスや住居スペースに対する市場の需要に応じて、個々のフロアを転換することも(さらには元に戻すことも)可能かもしれない」と同氏は答えた。

投資家10人全員が、オフィス自体に対する見通しが強気か弱気かは別にして、(当然のことながら)不動産テックは次の時代の大都市の中核をなすものだと考えている。

住宅の新たな均衡

パンデミックの間、ほとんどの場所で住宅の供給は大幅に制限され、購入を希望する人が増え、売却を希望する人は減った。今まで注目を集めていた都市で、賃貸価格が大きく下落していることとは裏腹だ。

住宅問題とそのソリューションの1つとして共同生活に注目しているウィルシャー・レーンのデムヤコール氏は「パンデミックにもかかわらず、ミレニアル世代やZ世代にとって、現在の賃金水準では、物件の価格が最も高い都市(ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど)は依然として高嶺の花だ」という。そして「そのため、大都市での生活のコスト負担を軽減するための物件やソリューションに対する需要は、今後も継続すると考えている。例えば、その中核として、共同生活は経済的に1つの判断となるだろう。住みたい場所に住むことをより容易にするソリューション(ADUもその一例だ)は、今後も発展していくだろう」と続ける。

Camber Creek(キャンバー・クリーク)のマネージングディレクター兼ゼネラルパートナーであるCasey Berman(ケイシー・バーマン)氏は「都市がより充実した生活、仕事、遊びを求める人々を惹きつけ続けるのは、そういった体験を実現する住宅密度と機会を提供しているからだ。このような事実がある限り、その欲求を満たす都市空間と不動産に対する新たな需要が生まれるだろう」と主張する。

また同氏は、密度の高い生活をより安全に、より便利にする製品やサービスに投資しており「そのためのソリューションがますます普及していくことを期待している。Flex(フレックス)は、オンラインによる分割払いでテナントの賃料の管理と支払いを容易にし、それに伴い、家主にとっては期日通りに支払いを受ける可能性が高まる。Latch(ラッチ)の入退室管理システムは、新築の集合住宅の10棟に1棟の割合で導入されている。また、この1年で多くの人がペットを購入した。PetScreening(ペットスクリーニング)は、ペットが介助動物や支援動物の場合、ペットの記録の管理と確認を容易にする」と述べる。

Picus Capital(ピカス・キャピタル)のパートナーであるRobin Godenrath(ロビン・ゴーデンラス)氏とJulian Roeoes(ジュリアン・ルーエス)氏は、おおむねこの視点を共有しており、都市での新しい生活スタイルが、人々の暮らし方により根本的な変化をもたらす可能性があると述べている。

「柔軟な生活ソリューションにより、リモートワーカーは短期か長期かにかかわらず、都市生活のために完全に管理された手頃な価格の安全な賃貸オプションを使って、さまざまな都市で時間を過ごすことができる」と両氏はいう。そして「一方で、商業施設から住宅への転換は、単位面積あたりの価格を下げる効果があり、長期的に戻ってくる居住者がよりゆとりのある空間を購入できるようになる。共同生活は集合住宅を高密度化するが、リモートワークへの移行が進むことによる仕事での社会的交流の希薄化を考慮すると、私生活におけるコミュニティの重要性が増すため、今後も興味深い分野だと考えている」と述べる。

しかし、現代の不動産テックは、長期的には郊外やその他の地域も魅力的にしていると多くの人がいう。生活の役に立つすばらしい新技術は、あらゆる場所に導入することができる。

不動産テックは、新たな郊外ブームの火付け役にもなっている。「都市部への回帰の傾向が続いており、郊外型の生活への需要が高まっている」と両氏はいう。「不動産テック企業は、特に住宅の売買や賃貸の取引プロセスをデジタル化することで、このシフトを可能にする重要な役割を果たしている(iBuyer、代替融資モデル、テクノロジー対応仲介業者など)。さらに、不動産テック企業は、遠隔鑑定、3D / VR映像、デジタルコミュニケーションなどにより、物理的なやり取りの低減にも関与しており、パンデミックの間も住宅の購入者と販売者の効率的かつ安全な取引に大きく貢献している」。

最終的には、都市部の価格帯をより手頃にするテクノロジーが、郊外でも同様に役立つだろう。「当社は、住宅売買プロセスのデジタル化が加速していることに加え、郊外型住宅への需要が大幅に増加していることや、買い手のプロファイル(テクノロジーに精通したミレニアル世代など)が進化していることから、建設、交通の便、ライフスタイルなどの面で、不動産テックが郊外の生活に大きな影響を与える多くの機会が広がっていると確信している。これには、賃貸専用住宅の建設、モジュール型住宅の建設、低価格住宅、コミュニティの構築、デジタルアメニティなどに注力する企業が含まれる」と両氏は述べる。

インタビューを行った投資家の多くは、一戸建ての賃貸市場のトレンドを重視していた。再びRETのクリストファー・イップ氏の見解に戻る。

同氏は「過去10年間注目されなかったトレンドの1つに、一戸建て賃貸(Single-Family Rental、SFR)市場の成長がある」とし「多くの大手投資家がこのアセットクラスに参入している。SFR市場は都市部からの移住の恩恵を受けることができ、SFRを支えるテクノロジーは業界全体にポジティブな波及効果をもたらすだろう」という。

また「SFRの物件は、効率的かつ大規模に運営することが特に難しい。多世帯住宅と比較して、多種多様なレイアウトのユニットがあり、地理的にも分散している」と同氏は説明する。そして「テクノロジーによって、SFRの運営者はオペレーションとメンテナンスを合理化できるようになった。SmartRent(スマートレント)のようなスマートホームツールを使えば、分散した物件をリモートで監視し管理することができる。当社はこの分野を有望視しており、この市場で効果を上げる不動産テックツールに注目している」と述べる。

ドリームイットのアンドリュー・アッカーマン氏も同意見だ。「一戸建て市場は軽んじられてきたが、ここしばらく、資産と不動産テックの両方の観点から、徐々に関心を集め始めている。例えば、パンデミック前には、NestEgg(ネストエッグ)Abode(アバウド)など、この業界のエコシステムにサービスを提供するスタートアップに投資していた。新型コロナウイルス感染症はこれらのスタートアップにとって良い方に働き、概して一戸建て住宅の物件が注目を集めた」と同氏はいう。

Urban.us(アーバン・ユーエス)の共同設立者であるStonly Baptiste(ストンリー・バティスト)氏とShaun Abrahamson(シャーン・エイブラハムソン)氏は、共同生活や短期賃貸などの選択肢により人々が新しいライフスタイルを見つけることができ、地理的な自由度が増した世界が広がっていると考えている。「共同生活はコスト面だけでなく、コミュニティとのつながりという見過ごされてきた重要な問題を解決してくれるので、Starcity(スターシティ)のようなポートフォリオ企業は非常に成長している。また、ノマド的なライフスタイルが生まれる余地もある。マイアミについて話されることの多くは、移住についてだが、多くの場所にとって関心の高い問題は、人々が1年のうち何カ月をそこで過ごすかということだろう。つまり、リモートワーカーから見れば、例えばマウンテンバイク、サーフィン、スノーボードなど、特定のアクティビティにアクセスしやすい場所になるかもしれない。スターシティは都市間の移動を容易にし、Kibbo(キボ)はバンライフを中心としたコミュニティを構築することで、都市を超越したサービスを提供している」と両氏は語る。

ベインキャピタル・ベンチャーズのクレリア・ウォーバーグ・ピーターズ氏は、こういった変化が郊外不動産市場に与える影響を次のようにまとめている。

「住宅取引の混乱は、現在、iBuyers(インスタントバイヤー、売主から直接住宅を購入し、最終的には売主として物件を再販する)、ネオブローカー(一般的にエージェントを雇用し、権原ローンや権原保険などの二次サービスを利用して収益を上げる)、エリートエージェントツール(トップエージェントに焦点を当てたプラットフォームやツール)の3つのコアカテゴリーに落ち着いている」。

こういったイノベーションの組み合わせは、今までの住宅用不動産を変えつつある。「消費者は、ホームエクイティーベースの融資モデル(自宅を株式化して販売したり、自宅の完全な所有権を時間をかけて購入したりする)など、代替的な金融手段の活用にますます積極的になっている。このような新しいモデルの成長と普及により、住宅市場全体が統合され、仲介業者の販売手数料や、住宅ローン、権原保険、住宅保険の販売による手数料が、機能的に1つの大きな、そして絡み合った複雑な市場となっている」と同氏は語る。

近隣の小売店の驚くべき復活

人は、にぎやかで歩きやすい地元の店が並ぶ昔ながらのメインストリートのような雰囲気が好きなようだ。しかし、独立した小売店をやりくりしようとしている人々には難しい状況が続いている。

Amazon(アマゾン)をはじめとする90年代に登場した「Eテイラー(電子小売業者)」などの電子商取引は、薄利の従来型小売業に打撃を与えた。さらに最近では、アートギャラリーや高級レストラン、ブティックなどが多くの都市でジェントリフィケーション(富裕化)の前兆となっている。そういった場所ではより高い賃料を払える借り手が増えたため、小売業店舗の家主が積極的に賃料を値上げし、結果的に一等地では家賃が払えない店舗が続出することになった。

パンデミックの影響で地元の店が閉まっている間に、得意客さえもオンラインで注文するようになり、決定打となったようだ。

しかし、複数の投資家が妙に楽観的な見方をしている。パンデミックは1年以上にわたって社会・経済活動に大混乱をもたらしたが、ほとんどの人が、実生活において小売店の存在は現代生活に欠かせないものだと認めている。

「人間は基本的に社会的な動物であり、安全に人と会えるようになれば、誰もが直接対面での交流を求めるようになると考えている。さらに、週5日のオフィスワークからの解放は、自宅でも規律正しいオフィス環境でもない、『第3の空間』への欲求を高めることになるだろう」とピーターズ氏はいう。

「商品を販売することよりも、顧客が実際に商品を手に取りウェブサイト以上にブランドコンセプトを体感できる環境を整えることに重点を置く、『Apple Store』のような小売店が今後も増えていくだろう。パンデミックが終わる頃には小売店の賃料が大幅に下がっていると予想されるため、新型コロナウイルス感染症以前よりもさらに実験的な試みが行われると考えられる。小売業にとっては非常に興味深い時代になるだろう」。

小売関連のテクノロジーを専門に投資しているか、第3の空間のアイデアに広く投資しているかにかかわらず、他にも、複数の投資家がこの視点で見解を述べている。

「小売業が10年以上前から変化しているのは事実だ。eコマースで普通に買えるものは、書籍や衣料品だったものが今では惣菜や食料品にまで拡大している。また、パンデミックがeコマースの成長を加速させ、リアル店舗の小売業が損失を被っているのも事実だ」とRETのイップ氏はいう。そして「しかし、人はやはり人間であり、直接会って交流することを求めている。たとえ都市の完全な立ち直りまで時間がかかっても、大都市にはかなりの数の小売店を支える客足があり、ポップアップショップのような革新的なモデルを導入することで、空き店舗の問題に対処できるだろう。また、大衆市場では、小売業に対する信頼がまだあることも留意する必要がある。主要なREITは2020年初頭から半ばにかけて苦戦したものの、多くは大幅に回復しており、いくつかは実際にパンデミック前の数値を上回っている。小売業にとってはひどい10年であり、この1年は最悪の年だったが、このセクターの幕を引くにはまだ早すぎる」と述べる。

ピカスのゴーデンラス氏とルーエス氏によると、映画館は、パンデミック後に一般市民の生活が一斉に再開された場合の成功を待ち構える小売セクターの一例に過ぎないとのことだ。

「ショッピングセンターの目玉テナントである映画館は、予約席、4DX映像、劇場内のレストラン、カフェ、バーなど、より総合的な体験型ソリューションの提供により、すでに従来型の営業スタイルを刷新しており、さらにパンデミックをきっかけに、プライベートシアターのレンタルやイベントなどのサービスを拡大している。こうした傾向は、レストラン(実体験のように感じる料理エクスペリエンス)から伝統的な小売業(オンラインとオフラインを統合したショッピングエクスペリエンス)まで、小売不動産業界全体に拡大していくだろうと見ている。また、小売不動産オーナーが見込みのあるテナントを特定して物件を売り込んだり、小売業者が店舗内での顧客エンゲージメントを促進し、カスタマージャーニーに関する重要なインサイトを得たりする時にも、不動産テックが決定的な役割を果たすと考えている」。

意外なことに、最近ではインターネットも味方になっている。「また、オンラインとオフラインの体験を巧みに融合したハイブリッドモデルにも大きな可能性があると考えている」と両氏はいう。「フィットネス分野を例にとると、スタジオでのコースを配信してより多くの参加者を募ったり、スタジオでのレッスンや自宅でのワークアウトを通じてトレーニングや健康状態の推移をアプリでトラッキングしたりするという新しいスタイルが考えられる」。

インタビューで投資家から聞いたものではないが、小売業の未来を信じる理由は他にもいくつかある。

また、小売業が、投資家が出資している他の多くのソリューション、特に都市の魅力を高め、気候変動などのマクロな問題を解決するためのソリューションとどのように関わっているかもわかるだろう。

バティスト氏とエイブラハムソン氏は「都市には活用されていない多くの資産があるが、最大のものは自動車に割り当てられている公共スペースだろう」とし「永続的に変っていくだろうと思われることは、駐車スペースを自家用車からマイクロモビリティ(自転車、スクーター、キックボード用のレーンや駐輪場など)に再配分することだ。Coord(コード、スマートゾーンという技術を使い商用車などの縁石スペース利用を管理)、Qucit(キューシット、多くの大都市で自転車やスクーターのシェア事業を管理)、Oonee(ウーニー、安全な自転車、スクーター、ボード用の駐車場)などのポートフォリオ企業に多くの需要があると考えている」と述べる。

これは、両氏が予見する好循環の始まりに過ぎない。

「(自動車の排除)が起こると、物流のようなユースケースはマイクロEVにシフトできる。同様に、パークレット(車道の一部を転用して人のための空間を生み出す取り組み)やシーティングエリアによって公共のスペースが増える。EUでは自動車使用の禁止を推進しているが、全体的に道路で自動車の往来が減れば、大きな変化が起きるだろう。確かに個人の生活の空間を明け渡すことになるが、共有スペースや社会的なスペースが増え、都市を魅力的なものにする可能性がある。こうしたことにより、共同生活が促進され、都市で生活するためのコストを下げることができるとともに、低密度のコミュニティでは比較にならないほど共有スペースから多くのものを得ることができる」と両氏は話す。

ウィルシャー・レーンのデムヤコール氏も同様の見方をしている。

同氏は「当社の全体的な戦略を立てる上での原則の1つは、常にスペースの活用に焦点を当て、有効に活用されていないスペースを、テクノロジーによって収益化する最良の方法を見つけ出すことだ。このことは、StufNeighbor(スタッフ、ネイバー、地下室、駐車場、その他の空きスペースの収益化)MealCo(ミールコ、空きキッチンの収益化)WorkChew(ワークチュウ、レストランのシーティングエリア、ホテルのロビー、会議室の収益化)Saltbox(ソルトボックス、空き倉庫の収益化)など、当社の直近の投資案件の多くに明確に表れている。家主は、このようなタイプの戦略を適切に利用すれば、今日の不動産業界で見られる空室の増加を中期的に緩和できる」と述べる。

この主張が正しければ、小売業は、より共有スペースのような存在になるかもしれない。「特に、先に資金調達を発表したばかりのワークチュウの製品は、需要側と供給側の両方で多くの需要がある。ホテルやレストランは、あまり利用されていないスペースやインフラを収益化するために、同社との提携に対する関心は極めて高い」とデムヤコール氏は述べる。そして「もちろん、雇用主や企業は、本社のオフィス以外で過ごす時間を増やしたいと考えているハイブリッドな従業員に提供できる簡単なアメニティとして、この共有スペースに満足している」と付け加える。

インタビューした投資家らから明確に聞いたわけではないが、小売業の将来を信じる理由がいくつかある。

  • まず、経済学者や政策立案者さえも驚くほど、パンデミックの間に何百万もの新しいビジネスが生まれている。その大部分は、非常に地域に根ざしたもので、食品の宅配(カップケーキ)やサービス(出張ヘアカット)、地域で強い支持を得ているインターネットファーストの製品(Etsyの多く)などが挙げられる。これらの起業家らは、インターネットで事業を始め、商業施設の賃料が下がった今、実店舗を構えるに十分な収益を上げている。
  • 第2に、新型コロナウイルス感染症の期間を耐え抜いた地元企業の多くは、インターネットで成功する方法を見つけ出した。近隣でどの企業が嵐を乗り切っているかは、好みのオンデマンドデリバリーやサービスのアプリを開いて注文すればわかる。
  • 第3に、投資家の回答や入手可能なデータが示すように、家主はすでに賃料を下げ始めており、数十年ぶりに借り手市場が形成されている。
  • 第4に、従来のビジネスでも新しいタイプの資金調達が可能となり、オンラインでの副業や趣味(あるいはより大規模なプロジェクト)で成功を収めている企業は、拡大のための資金を得ることができるようになる。(この理由はおそらくかなり推測的なものだが、著者らは、ここTechCrunchで未来を見極めようとしている)。例えば、Shopify(ショッピファイ)は、新しい「定期収入を取引するためのプラットフォーム」のcom(パイプ・ドット・コム)に資金提供をしたばかりだ。両社はこの関係について今は多くを語っていないが、ショッピファイで成功している多くの小規模ビジネスが、リアル店舗の採算の目処が立ったときに速やかに新しい種類の資本注入を受けることの想像はできる。

こういったすべてのことを、都市の密度や自転車レーンの設置による気候変動への配慮など、都市に対する考え方の他の広範な変化も含めて考慮すると、パンデミック以前の世界というよりも、ニューアーバニストの空想といわれそうな世界が見えてくる。

同時に、これらのコンセプトは小規模な都市、郊外、そして町にも展開されている。産業クラスターの古いネットワーク効果が奇跡的な復活を遂げない限り、すべての都市が最高の生活の質を提供するために競争することになる。

仮に、産業クラスターがかつてのように集結しないとしよう。そうすると、多くの家主や金融業者、市の予算はすぐに支出を削減せざるを得なくなり、魅力的な都市の経済の足を引っ張ることになるかもしれない。

そのような場合でも、ニューヨークやサンフランシスコのように、住宅や小売店、アメニティを中心に据える都市が再生することは想像に難くない。もしかしたらいつの日かこの数十年を、パンデミックで全世界が底を打ち長期的に正しい答えを決める必要が生じる前の古き悪し時代だったと振り返る日が来るかもしれない。

ということで、読者には、著者がインタビューした投資家らの回答全文を紹介したい。各投資家の回答は、このすでに十分に長い記事より更に濃い内容であり、詳細を読む価値はある。このような変化に関する継続的な記事の支援のため、Extra Crunchを購読して欲しい。

不動産テックと都市の未来については、近々さらに掘り下げる予定だ。この件について他に考えがあればeldon@techcrunch.comにメールして欲しい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:新型コロナウイルス不動産リモートワーク住宅アメリカeコマース店舗小売

画像クレジット:Boston Globe / Getty Images

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(文:Eric Eldon、翻訳:Dragonfly)

移住者が急増するテキサス州オースティンの住宅問題を解決するスタートアップ「Homebound」

莫大な数の人々が米国全土からテキサス州オースティンに移住している。中でもサンフランシスコ・ベイエリアからの移住が最近見出しを賑わしている。

続いている移住の結果、起きていることの1つが住宅費の急騰であり、需要の増加と2021年になってほぼゼロに近くなっている空き物件の少なさが原因だ。そこへやってきたのが、カリフォルニア州サンタローザ拠点のテック系住宅建設のスタートアップHomebound(ホームバウンド)だ。既存住宅購入の代替手段を提供して、この街の悩みを解決すべくオースティン市場に参入した。

Homeboundはここ数年に約7300万ドル(約79億5000万円)の資金を、Google Ventures、Fifth Wall、Khosla、Sound Ventures、Atomic、Thrive Capitalなどから調達している。2020年4月に3500万ドル(約38億1000万円)のシリーズBを完了し、2020年末には2000万ドル(約21億8000万円)の転換社債を発行した。CEOのNikki Pechet(ニッキ・ペシェ)氏とAtomicのマネージングパートナーであるJack Abraham(ジャック・アブラハム)氏が2017年に同社を設立した。アブラハム氏が山火事で自宅を失った後のことだった。

Homeboundは、実質的に仮想ゼネコンの役割を果たし、IT技術と「厳選された」資格のある建築「専門家」のネットワークを組み合わせて、新しいかたちの住宅建築を設計から完成まで管理する。同スタートアップは住宅建築に関わる数百にわたる作業項目を追跡・管理するツールを開発した。

これまでHomeboundは、カリフォルニアの山火事の後にホームオーナーが住宅を立て直す際の課題や複雑さを支援することに焦点を当ててきた。しかし2021年4月、Homeboundは自身初の非災害地市場であるオースティンに進出した。住宅再建で培ったカスタム住宅建築のための「テクノロジーを駆使した合理的なプロセス」を、選択肢の1つとして地域のホームオーナーに提供することを狙いとしている。

HomeboundのCEO・共同ファウンダーであるニッキ・ペシェ氏に詳しく話を聞いた。

Homeboundは「次世代」の住宅建築業者として「誰もがどこにでも家を建てられる」ようになるための会社だと、彼女はいう。

オースティンの住宅市場は間違いなく過熱しており、住宅価格は10~30%値上がりしている例もある(私にはわかる、ここに住んでいるから)。

「ホームオーナーは全米から私たちに連絡をしてきて、自分たちの地域に来てくれと頼みます」とペシェ氏は言った。「すでにオースティンは、かつての当社の市場よりも早く成長しています。当社にとって巨大な市場になりつつあります」。

これは、ペシェ氏がマイアミ、タンパ、レイリー、シャーロットなど同じような住宅供給問題を抱える他の都市でも再現しようと考えているモデルだ。

「これは始まりにすぎません」とペシェ氏は言った。「私たちはこのプラットフォームを全米の市場に広げて、この同じ問題を解決するお手伝いをします」。

同社はまず、住宅希望者が自分で家を建てる土地を選ぶのを助けたり、Homeboundがすでに準備した在庫から探すのを手伝う。そこから、建築計画から設計、実際の工事にいたるまですべてを同社のプラットフォームが支援する。Homeboundは、いくつかの用意したプランから客に選ばせ、さまざまなレベルのカスタマイズを行う。

オースティンの典型的一家族用住宅の建築費用は30万ドル(約3270万円)程度からで、大きさ、家の複雑さ、ロットサイズ、地域によって異なる。土地の価格は含まれていない。既存の持ち家の土地に2軒目を建てる人もいる。

「現状多くの場合、既存の住宅を買うよりも安く新しい家を建てることができます」とペシェ氏はいう。

カテゴリー:その他
タグ:Homebound住宅不動産テキサスオースティン

画像クレジット:Homebound

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

オンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」が6.5億円を追加調達、累計調達額は23.6億円

オンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」が6.5億円を追加調達、累計調達額は23.6億円

オンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」を運営するMFSは3月31日、第三者割当増資および社債発行により、総額6億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、あおぞら企業投資。

MFSは、2021年2月15日、ベンチャーキャピタルおよび事業会社の数社を引受先として、総額6.3億円の第三者割当増資および融資を実施している。これにより、今回のラウンドの資金調達額は総額12億8000万円、これまでの累計資金調達額は約23億6000万円となった。

今回調達した資金により、「住宅ローン審査に通る確率を上げるために個人の信用力をいかに向上させるか」に関連する提案機能や、人工知能の開発およびエンジニア採用を拡大する予定。

今後MFSでは、JICベンチャー・グロース・インベストメンツの他の投資先企業との様々な連携などを通じ、日本社会における住宅ローンのさらなる最適化を目指すとともに、引き続きユーザー目線に立ったサービスを追求する。また、あおぞら銀行グループが培ってきた地銀とのネットワークを軸に、オンラインで住宅ローンが比較・申込ができる「モゲチェック」の地域金融機関への導入をさらに加速させ、住宅ローン業務のオンライン化を進めるとともに、日本における住宅ローンプラットフォームの定着を図る。

2015年8月提供開始のモゲチェックは、オンライン上でユーザー属性に応じた最適な住宅ローンを紹介する無料のオンライン住宅ローンサービス。12項目を入力するだけで、自分が住宅ローン審査に通る確率が高い金融機関がランキング化され、自分の条件に合う住宅ローンを簡単に選んで申し込んだり、住宅ローンのプロから提案を受けたりできる。過去5000件以上の審査結果データを分析して構築した独自のロジックで、住宅ローン選びを最適化しているという。2021年3月にサービス利用者が5万人を突破、また1年間では3万人以上増加した。

オンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」が6.5億円を追加調達、累計調達額は23.6億円

コロナ禍により、2020年2月からは家計の見直しを図るため住宅ローン借り換えの需要が高まり、12カ月連続で前年同月比の2倍以上の申し込みがあり、現在も前年を上回る水準で利用されているという。また、在宅勤務が普及したことによる住環境の見直しや、低金利がつづく住宅ローンが要因となり、2020年9月からは新規借り入れの申し込みが増加し、前年同月比2倍以上のお申し込みが現在まで続いているとした。

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タグ:MFS(企業)資金調達(用語)住宅(用語)不動産 / 不動産テック(用語)モゲチェック(製品・サービス)
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家庭の冷暖房に特化した垂直型SaaSのServiceTitanは年間定額収益270億円、評価額9000億円以上に

家庭の冷暖房に特化した垂直型Software as a Serviceツールキットを開発することで、83億ドル(約9090億円)の価値が生まれるとは誰が想像できただろうか?

これは、わずか8年前に設立されたロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業であるServiceTitan(サービスタイタン)の現在の価値を表している。銀行関係者によると、住宅建設やエネルギー効率化などの大きな追い風が同社の収益を押し上げ、垂直型ソフトウェア企業としては前例のない評価額になっているとのことだ。

ServiceTitanの巨額の資金は、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)のGlobal Equities(グローバル・エクイティ)ファンドと、Tiger Global Management.(タイガー・グローバル・マネジメント)が主導する5億ドル(約550億円)の資金調達ラウンドで得たものだ。

ServiceTitanの出資者は、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)、Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャーズ・パートナーズ)、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)といった長年の投資家に加え、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)、Dragoneer Investment Group(ドラゴニア・インベストメント・グループ)、ICONIQ Growth(アイコニック・グロース)といった後期ステージからの投資ファンドなど、ベンチャー業界のさまざまな顔ぶれが並ぶ。

同社は今回の5億ドルの資金調達により、市場環境が整えば、2021年後半から2022年末までに株式を公開することが可能になるだろう。

ServiceTitanは現在、7500社以上の顧客が10万人以上の技術者を雇用し、配管工事、空調工事、電気工事、煙突工事、害虫駆除、芝生の手入れなど、200億ドル(約2兆2000億円)相当のサービスを提供している。

Angi(アンジ)やThumbtack(サムタック)が、住宅所有者がサービスや技術者を探しに行くところなら、ServiceTitanは、それらの技術者が自分のビジネスを管理したり組織化したりするところだ。

カリフォルニア州グレンデールを拠点とし、アトランタとアルメニアにサテライトオフィスを持つServiceTitanは、HVAC(冷暖房空調)事業に従事していた両親を持つ共同創業者たちが、身近に感じていた問題を解決するために立ち上げた事業だ。

ホームサービス市場は、米国で500万人以上が働く1兆ドル(約110兆円)規模の世界市場となっている。

グローバルな展開という言葉は魅力的に響くものの、ServiceTitanにとって米国だけでも成長する余地は十分にある。

米国では、リモートワークの増加や新型コロナウイルス流行の影響を受けた大都市からの人口流出により、住宅所有率が10年ぶりの高水準に達しているからだ。

エネルギー効率を重視し、温室効果ガスの排出量を削減しようとする動きは、住宅や商業施設の改修を急増させ、それが新たなビジネスを後押しすることにもなるだろう。実際にこのような傾向は、2020年に経済全体が3.5%縮小したにもかかわらず、ホームセンターへの支出は3%増加したという統計にも表れている。

「私たちは、水道、暖房、空調、電力といった生命維持システムを保持するために、これらの専門業者の人々に依存しています」と、ServiceTitanの共同設立者でCEOを務めるAra Mahdessian(アラ・マフデシアン)氏は語る。「今日、住宅所有率と在宅時間がともに過去最高を記録する中、これらの必要不可欠なサービス提供者は、ますます増加している現代テクノロジーに精通した住宅所有者からの需要の高まりに直面しています。ServiceTitanは、これらの業者の方々に、すばらしい顧客体験の実現とビジネスを容易に成長させるために必要なツールを提供することで、勤勉なこの業界の人々が、相応の成功レベルに到達することを可能にします」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:ServiceTitanSaaS住宅

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

契約から完成まで30日、Aboduの「裏庭ミニ住宅」をLA当局が承認

カリフォルニア州の住宅不足は深刻だ。そこで裏庭に「離れ」や簡易オフィスを提供するサービスが多数生まれている。Aboduもそうしたスタートアップだが、契約から竣工までまで30日という超特急のQuickshipプログラムがロサンゼルス市から認可を受けた。

このスピードを可能にしたのは「一括事前承認」システムで当初サンタフェに導入されたが、今回LAでも認められた。

サンノゼ市は付随的簡易住宅(ADU)の開発者に対し事前に一括認可を与えるプログラムを2019年に開始した。Aboduはこの事前認可プロセスを利用して同市で住宅の建設を開始した。

この承認プロセスが適用される場合、AboduのようなADUデベロッパーは1時間で建築許可を得られる。サンノゼで事前承認されているADUデベロッパーには他にActon ADU、ベンチャー企業のConnect Homes、J. Kretschmer Architect、Mayberry Workshop、Open Remodel、prefabADUなどがある。ロサンゼルスではLa Mas、IT House、Design、Bitches、Connect Homes、Welcome Projects、First Officeなどが事前承認による住宅建設許可の対象となっている。

AdobuはADUによる事前承認を受けた建設以外にもパロアルト、ミルブレー、オレンジカウンティ、ロサンゼルス、オークランドなどカリフォルニア全域で各種の建設を行っている。同社の資料によれば、サンフランシスコ周辺のベイエリアではADU同等住宅の販売価格は18万9000ドル(約2100万円)からとなる。中層マンションでは65万〜85万ドル(約7100万〜9300万円)、鉄筋の高層ビルでは1戸あたり100万ドル(約1億900万円)かかるという。

AboduのCEOであるJohn Geary(ジョン・ギアリー)氏は次のように述べている。

個人が住宅を増設しようとする場合、当社のQuickshipプログラムが最速です。子供が成長したなど家族構成の変化や賃貸による投資収益を期待するなど住宅増設のニーズがある戸建て住宅所有者は大勢います。Aboduはロサンゼルス市で最短4週間でADUプロジェクトを完了できるようになりました。Aboduが最も重要だと考える使命は、人々や自治体に真の変化をもたらすために必要な青写真を提供しながら、州の住宅不足に深刻な打撃を与えることです。

Kim-Mai Cutler(キム-マイ・カトラー)氏は元TechCrunchのライターだが現在はAboduの取締役に就任している。同氏は「建設開始から30日以内に引き渡しという大きな目標を達成できたことで夢が現実になりました」と語った。カトラー氏はカリフォルニア、特にサンフランシスコからシリコンバレーで深刻化している住宅危機についての本を出版している。

この本(ないしそれに相当する文章)をきっかけにカトラー氏はホームレス解消のための公的対策に積極的に関与するようになった。同氏はAboduサイトのブログ記事に「私は米政府のホームレス対策支出や自治体による手頃な価格の住宅を調達するための地方債の発行、運営を監督する委員などの組織に参加するようになりました」という。

画像クレジット:Abodu

カトラー氏がAdobuを支援するのは、以前から住宅に関する問題に関する関心と知識を持っていたためだとしてこう続けた。

カリフォルニア北部は今や世界で最も不動産価格が高くまた予測不可能な動きを示す土地となっています。これ非常に大きな問題を引き起こしています。住宅建設は許可手続きから資材調達まですべてに透明性が欠けているため何年もかかるのが普通です。この1年間、Aboduの共同ファウンダーであるジョン・ギアリー氏、Eric McInerney(エリック・マキナニー)氏は、子持ちの大学生カップルのためにその両親宅の裏庭に家を建てました。またミルブレーでは母親と息子のためにそれぞれ独立した家を、サンノゼでは夫婦の家の裏庭に祖母を住まわせるための家を建設しています。

Aboduの特色は裏庭に建設する「お祖母さん用の離れ」や「勉強部屋」「ミニハウス」に焦点を絞っているところにある。カトラー氏はこう説明する。

サクラメント(のカリフォルニア州議会)では中層階住宅建設の促進に関する審議が行き詰まっている一方、裏庭のミニハウスに関しては州議会でも太平岸州北西部の議会でも、Phil Ting(フィル・ティン)氏のAB68、Bob Wieckowski(ボブ・ウィエコウスキー)氏のSB1069など、裏庭に小住宅を簡単に設置できるようにする法案が次々と成立しました。これは郊外居住者が待望ん望んできた変化です。これは人々に有益であると同時に政治的にも実行実行が用意なオプションなのです。

カトラー氏はAdobuが30日以内に家を建設できることは人々の認識を大きく変えるきっかけになると考えている。このスケジュールは基礎の建設に2週間、プレハブ住宅をクレーンで基礎の上に載せるのは1日というテクノロジーのおかげだ。またこの方式は驚異的な低コストを実現する。これにより住宅の建設数自体が大幅に上昇するはだ。しかし絶対的にみれば住宅の供給は依然として危機的なまでに低い水準だ。「ミレニアル世代が家族形成の最盛期を迎えている時期だというのに米国全土での住宅売買の数は1年前のわずか半分なのです」とカトラー氏は指摘する。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Aboduカリフォルニア住宅建設

画像クレジット:Abodu

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:滑川海彦@Facebook

部屋の模様替えのデザイン検討や家具の購入もできるプラットフォーム「The Landing」

ムードボードの収益化は当たれば大きいアイデアに見えるが、よく考えてみればそれはすでにインターネットのあちらこちらで非公式に行われている。若い世代は、コミュニティを念頭に買い物をしている。大好きなインフルエンサーから商品を買ったり、Instagram(インスタグラム)の広告グリッドで長い時間を過ごした挙げ句に根負けする場合もある。

買い物は、ソーシャルなデジタルファーストの活動だと考える人が増える中、これまで事業を外部に公表してこなかったシードステージのスタートアップThe Landing(ザ・ランディング)は、住宅や空間の内装デザインに興味のある人たちを取り込もうと考えている。The Landingでは、利用者は部屋の模様替えのためのデザインや買い物が行える。

画像クレジット:The Landing

「ここでは、さまざまな文脈からビジュアルショッピングのサイトに飛ばされるようなことはありません。デザインの創造も発見も共有も買い物も、すべて1カ所でできます」と共同創設者のMiri Buckland(ミリ・バックランド)氏はいう。The Landingは、その飛んだ先になることを望んでいるのだ。

バックランド氏とEllie Buckingham(エリー・バッキンガム)氏が創設したThe Landingは、Cowboy VenturesのAileen Lee(エイリーン・リーン)氏が率いる投資ラウンドで調達した250万ドル(約2億6500万円)を使い、間もなくサービスをローンチする。リー氏は同社の取締役会に参加する。その他、Peloton(ペロトン)のCMOであるDara Treseder(ダラ・トレセダー)氏、Poshmark(ポシュマーク)の創設者Manish Chandra(マニッシュ・チャンドラ)氏とTracy Sun(トレーシー・サン)氏、Unshackled Ventures、Designer Fund、Progression Fundが参加している。

The Landingは、パンデミックによって転換期を迎えた。常日頃、そこに住む人にとってコンテクスチュアルな(深い意味のある)内装デザインの問題点を解決したいと考えてきたバックランド氏とバッキンガム氏は、まず、実際にアパートに人を派遣して、いろいろな家具を設置する手伝いをすることから開始した。そこへパンデミックが襲いかかり、人間的な触れあいを大切にしたサービスの提供が難しくなってしまった。バッキンガム氏は、パンデミックが、The Landingで本当にやりたかったことに集中する「最高の原動力になった」と話す。

「私が、長イスを持ってアパートを訪ねる必要はありません」と彼女はいう。「大切なのは創造性をかき立てることであり、デジタルに物理的に空間を創造する力を個人に与えることです」。そして家具の搬入サービスを取り止め、コンテクスチュアルeコマースとソーシャルeコマースの問題点を内装デザインの力で解決することにした。

これは懸命な考えだ。そこに目をつけた企業は他にもあった。Houzz(ハウズ)は、Sequoiaが支援する住宅の改修スタートアップだが、利用者をサードパーティーの小売店の製品や建築家、デザイナー、建設会社などのサービスと結びつけている。現在までに7000万ドル(約74億円)を調達したModsy(モジー)もそうだ。家の模様替えをバーチャルに手伝ってくれる。

バッキンガム氏はビジネススクール時代にModsyで働いていたのだが、そのスタートアップの柱となっている考え方とは反りが合わないと、早々に感じるようになった。

「Modsyのモットーは、基本的に人による既存のサービスをデジタル化するというものでした」と彼女は話す。「そのサービスモデルがスケーラブルで、デザインの入口をカスタマイズする未来への回答だと確信することができず、そこを去りました」。若い世代はセルフサービスのカスタマイズ可能な答えを求めていると、彼女は気づいていた。

The Landingの共同創設者ミミ・バックランド氏とエリー・バッキンガム氏(画像クレジット:The Landing)

The Landingには、利用者がそのプラットフォーム上で空間を作りデザインできるツール一式が用意される。これからの数カ月は、デザインツールの上にプロフィール、発見、フィード、コメントなどの機能を備えたソーシャルレイヤーを追加する作業に専念する。

現在、The LandingのSlack(スラック)チャンネルで、これらの機能や初期利用者からの強い要望などが話し合われている。

創設者たちは、需要の不足や一生のうちに何度かしか行わない模様替えのためのプラットフォームになってしまうことを恐れてはいない。バックランド氏が指摘するように、人々は不動産テックのZillow(ジロウ)のサイトをいつも見ているし、Reddit(レディット)の夢の家に関するチャンネルではデザインを楽しんだりもしている。同スタートアップは、そうした人たち、つまり現実主義者だけではく、夢見る人たちにもサービスを広げたいと考えている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:The Landing住宅インテリア

画像クレジット:The Landing

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:金井哲夫)

自分で住宅をリフォームする人をサポートするスタートアップOutfit

自宅のリフォームを自分で行えば、業者に依頼するよりも費用対効果が高くなることがある。だが、何から始めればよいのかわからない人も多いだろう。DIY住宅リフォームのスタートアップとしてOutfit(アウトフィット)を創業したIan Janicki(イアン・ジャニッキ)CEOは、建築やデザインを人々がもっと気軽に楽しめるものにしたいと常に考えていた。

「器用な自分の知識を活用して、量産化することができると気づいたのです」と、同氏はTechCrunchに語った。

Outfitのプロセスを希望する人が最初にやることは、サイズや写真などリフォームを検討している空間に関する情報と、最大でいくら払えるかという予算を提出することだ。Outfitはその後、プロジェクトの予想コストや、プロジェクトを完成させるために必要な技術レベルなど、作業を完了するために必要となるすべての情報を提供する。

「私たちは透明性が高い情報を提供し、作業に必要な時間の総量を理解してもらうようにしています」と、ジャニッキ氏はいう。

顧客がプロジェクトを進めることを決定すると、Outfitは必要な道具や材料をすべて送り、アプリを通じてプロジェクトを完成させるためのガイドを順番に提供する。作業中に行きづまったら、ジャニッキ氏や同社のチームからチャットでサポートを受けることもできる。

画像クレジット:Outfit

Outfitはこれまで、少数の試験的な顧客を持ったが、そのうち何人かはプロジェクトを完了させ、何人かは現在も進行中だ。

「今、ミレニアル世代で住宅を購入する人が増えており、リモートワークと新型コロナウイルスの影響がその勢いを加速させています」と、ジャニッキ氏は言っている。「彼らはIKEA(イケア)に親しんでいる世代であり、本棚を組み立てることができ、デジタル体験に慣れています。そして今ではこのデジタルソリューションを求めています」。

これまでのところ、プロジェクトの費用は1000ドル(約10万6000円)から1万5000ドル(約160万円)だが、実際にはリフォームをどこまでやるか、どのくらいの広さかなどによって異なると、ジャニッキ氏はいう。下に掲載した写真の「After」まで仕上げるためには、おそらく9000ドル(約95万円)ほど費用がかかるだろう。Outfitは基本的に、材料や道具の実費(たとえばパワードリル、レンチ、キャビネット、タイルなど)を顧客に請求し、それから一定の割合を合計額に加算する。

画像クレジット:Outfit

将来的には工具をレンタルすることもOutfitは視野に入れているが、初期の段階ではすべてを簡略化したかったとジャニッキ氏は語った。

「リバースロジスティクスは複雑なので、現時点では我々は一歩ずつ進めようとしています」と、同氏はいう。

EanoやRennoなど、自宅リフォームのためのスタートアップはいくつかあるが、Outfitと直接競合する他社は聞いたことがないと、ジャニッキ氏はいう。彼はまた、必要なものをすべて自分で購入し、YouTube(ユーチューブ)の動画を見て完成させることが十分に可能な人もいることを認識しているという。その一方で、住宅所有者の中には、作業のために人を雇う余裕がある人もいる。しかし、Outfitはその中間に位置するとジャニッキ氏は考えている。彼はそれを「DIYプラス」と呼んでいる。

「器用であるということは、みんなに評価される稀有な特質です」と、ジャニッキ氏はいう。「もし、人々の器用さのレベルを上げることができたら、私は超ハッピーです。実際にそれを成し遂げることができたら誇らしく思います」。

Outfitは現在、全米で利用可能だ。現在まで、同社はY Combinator(Yコンビネーター)から支援を受けており、過去には、GitHub(ギットハブ)のNat Friedman(ナット・フリードマン)CEOや、B Capital Group(Bキャピタル・グループ)のCrissy Cost(クリッシー・コスタ)氏、Gumroad(ガムロード)のSahil Lavingia(サヒル・ラヴィングア)CEOなどの投資家から、約70万ドル(約7400万円)の資金を調達している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Outfit住宅DIYリフォーム

画像クレジット:Outfit

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

3Dプリント、ロボッティクス、自動化で手頃な価格の家を建てるMighty Buildingsが約42億円調達

その昔、家を3DプリントするというのはSFだった。

近年住宅は、どんどん高価になっている。特にサンフランシスコ周辺の値上がりは極端だ。そこでもっと手頃な価格の住宅を建設しようとテククノロジーの活用に創造的努力を振り向ける企業が出てきた。

オークランドに本拠を置くスタートアップMighty Buildingsは、3Dプリント、ロボッティクス、自動化を利用して「美しく持続可能で手頃な価格」の住宅を建設しようと試みている。同社はシリーズBのラウンドで4000万ドル(約42億円)を調達した。この資金によ、従来の建設よりも「労働時間を95%削減し、廃棄物は10分の1、スピードは2倍」という3Dプリントによる住宅建設が可能だとしている。たとえば350平方フィートのワンルームならわずか24時間で3Dプリントできるという。

創立後4年になるMighty Buildingsの取り組みはKhosla Venturesの目に止まり、今回のラウンドはKhoslaとZeno Venturesが共同でリードした。

Mighty Buildingsは2020年8月にステルスモードから抜け出した。Khoslaの運営パートナーであるRyno Blignaut(リノ・ブリノー)氏は「このスタートアップは住宅建設のコストと二酸化炭素排出量の両方を50%以上削減できる可能性がある」と考えている。

共同ファウンダーであるCOOのAlexey Dubov(アレクセイ・ドゥボフ)氏によれば、同社は3Dプリントとプレハブを組み合わせたハイブリッドアプローチで住宅建設を行っている。現在の住宅建設業界はコンクリートとスチールに大きく依存しているが、Mighty社はLSM(ライトストーンマテリアル)と呼ばれる独自の熱硬化性複合材料を発明した。

同社によれば、この素材は3Dプリンティングに利用可能で、即座に硬化し、積層間の強度も高く、強固なモノリシック構造を作ることができる。つまりコンクリート型枠の工事のようにオーバーハングや天井などの部分にサポート型枠を必要とせず、一挙に3Dプリントできる。つまり建築の壁だけでなく全な躯体を出力できる。

また複合材の後処理に同社はロボットアームを利用する。これにより、断熱材の必要な箇所への注入が自動化される。3Dプリンティングとロボット機能を組み合わせると建設プロセスの最大80%を自動化できるという。

KhoslaはMighty Buildingsのこうした革新的な建設アプローチに強く惹かれた。

ブリノー氏は「Mighty Buildingsは建物を素材の制約から解き放ち、セメントや鋼材の使用量を劇的に削減することでコストを低下させ、手頃な価格の住宅の供給を増やすとともに、全体として資源やエネルギー持続可能性を向上させることができると考えています」とメールで述べている。

同社は創立以後、多数のADU(追加居住ユニット)を出力・設置しており、現在も注文を受け付けている。ユニットの面積は864平方フィート(80平米)から1440平方フィート(134平米)で、価格は30万4000ドル(約3200万円)から42万500ドル(約4420万円)と見積もられている。サンフランシスコ周辺ではこの規模の住宅は100万ドル(約1億500万円)以上することが珍しくない。

ADUは3Dプリントされたがパネルが外殻をなし、浴室などの要素はオークランドにある同社の8万平方フィートの生産施設でプレハブ生産されている。

現在、同社はカリフォルニアでのみ住宅建設を行っているが、ドゥボフ氏は「同様の施設を作るのは簡単であり、他の地域にも進出したい」としている。

2021年、Mighty Buildingsは住宅デベロッパー向けに計画しているB2Bプラットフォームの一部として、Mighty Kit Systemと多層階の建物をプリントできる新しい繊維強化材料を販売する予定だ。同社はすでに一戸建て住宅とのデベロッパーとの契約を確保してる。今回調達した資金の一部はさらなる自動化によって生産能力を増強するため利用される。

Mighty Buildingの中長期のビジョンは建築家が独自のプランを設計者ンしデベロッパーがMighty Factoryを使用してそうした住宅を低価格で大規模に生産することだ。住宅建設のサービス化、つまりPaaS(プロダクション・アズ・ア・サービス)の実現を目指している。

3Dプリントで住宅を建設しているスタートアップは他にもある。2020年8月、オースティンを拠点とするICONは、シリーズAラウンドで3500万ドル(約36億8000万円)の資金を調達した。同社も3Dプリンター、ロボティクス、先端材料を使用して手頃な価格の家を建てることを目指している。ドゥボフ氏によると、両社における最大の違いは、ICONが建設の大部分を現場で行うのに対し、Mighty Buildingsがあらかじめ工場で製造した材料によるプレハブ工法とのハイブリッドだという点だ。

Mighty Buildingの今回のラウンドには、シリーズAの投資家、Bold Capital Partners、Giant Ventures、Core Innovation Capital、Foundamentalに加えて、ArcTern Ventures、Abies Ventures、Modern Venture Partners、MicroVentures、One Way Ventures、Polyvalentなどの新規投資家を含め12社以上の投資家が参加した。Mighty Buildingsは、Y Combinatorのトップ企業リストにも選ばれており、会社評価額は1億5000万ドル(約15億4000万円)を超えている。ただし同社は現在の評価額を明らかにすることを避けた。

Khoslaのブリノー氏は、「建築は都市景観を作る主要な部分であるだけでなく、リソースの消費も巨大です。米国の炭素排出量では建設、建築は運輸交通や一般産業よりも大きい部分を占めています」と述べた。

KhoslaはOri Living、Vicarious、Katerra、Arevoなどこのような課題に取り組む他の企業にも投資している。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Mighty Buildings3Dプリント建築資金調達住宅

画像クレジット:MightyBuildings

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:滑川海彦@Facebook

「住‌宅‌ロー‌ン‌選‌び」‌の‌常‌識‌を‌変‌え‌る‌モ‌ゲ‌チェッ‌ク‌が‌6.3‌億‌円‌を‌調‌達‌

「家を買う」という経験は、ほとんどの人にとって人生の一大イベントだ。それに付随する住宅ローンは、その後数十年の自分の人生に影響を与えかねない。この「重要な選択」をサポートするサービスが、今年さらに勢いを増しそうだ。

「住宅ローンマッチングサービス」を提供するMFSは、新生企業投資をはじめとする5社からの第三者割当増資と、三井住友銀行からの融資を合わせ、総額6億3000万円の資金調達を実施した。同社はこれまでにも、YJキャピタルなどから資金調達を実施しており、累計調達額は約17億円になったと発表した。

MFSが運営する「モゲチェック」は、ユーザーに最適な住宅ローンを案内するオンラインサービスだ。「最適な住宅ローン」とは、ただ表面金利が低いものではない。同社が「No.1金利」と称する、ローンに付帯する団体信用生命保険のメリットを加味した、実質金利が最も低いローンである。つまり、ユーザーにとって最も経済的にメリットがある住宅ローンをピックアップして、モゲチェックが提案してくれるというわけだ。

仲介サービスといえば「紹介手数料が高い商品が優先されるのでは」と思われがちだが、同社によるとローン推奨のベースとなるロジックは定量的にも明快で、恣意的な判断が入り込む余地はない。「中立性」が担保されているからこそ、ユーザーは安心してサービスを利用しているという。

注目すべきは、モゲチェックが「ユーザーが借りられる金融機関」を薦めてくれるという点だ。住宅ローン選びは、ただ条件が良いものに申し込めばいいという単純なものではない。自身の属性や条件を鑑み、「審査に通る」金融機関に申し込む必要がある。モゲチェックは、同社が過去に扱った約4000件の審査データと、12項目のユーザー情報をもとに、金融機関ごとの「融資承認確率」を推定。ユーザーにとって審査が通る可能性が高い金融機関を案内し、スムーズに借入ができるようにサポートを行うのだ。

同サービスは無料で利用できるため、心理的ハードルも低い。同社によると、住宅ローンの新規・借り換え申し込み数は毎月約1000名にのぼる。サービス開始から約6年で、これまで4万8000名を超えるユーザーが利用したという。

モゲチェックを運営するMFS設立のきっかけは、CEOの中山田明氏の「日本の住宅ローン選びに対する違和感」だった。米国では、不動産会社や銀行とは別に、住宅購入者に対してローンの紹介などをする「住宅ローンマッチング産業」が存在する。しかし、日本ではそのようなサービスがなく、住宅購入者は不慣れな金融知識の中、不動産会社の営業担当者の紹介に頼るか、自分で住宅ローンを見つけなくてはならないのが通常だ。

同氏は「現在、多くの人が自分にとってベストな住宅ローンが選べていない状況が起きています。 このような状況を打破し、住宅ローンを必要とするすべての人が、最も有利な証券で借り入れ・借り換えができる世界を実現するために、株式会社MFSを設立しました」と想いを語る。

設立当初、同社のビジネスモデルは顧客の住宅ローン借り換えにともなう成功報酬型だった。例えば、300万円分のローン削減に成功したら、その1割の30万円を手数料として貰い受ける。この時につちかったノウハウや審査データが、現在の大きな付加価値になっているものの、決して安くはない手数料ゆえ大規模な集客は難しかったという。

転機は2020年初頭だった。各銀行がネット経由での集客に力を入れるようになるなか、オンライン広告代理店を経由し間接的に広告料を得ることで、ユーザーへ無料でサービスを提供開始。モゲチェックは現在の強力なビジネスモデルへと変革を遂げた。

「今年はアクセルを踏む年になりそうだ」と中山田氏はいう。単純な住宅ローン金利の比較サイトは複数存在する一方で、モゲチェックのように、融資承認確率を試算して顧客に最適な住宅ローンを案内するサービスは、市場ではユニークな存在だ。今回調達した資金を元にマーケティングを推進し、潜在ユーザーへの認知度向上を目指す。明確な競合が存在しないなか、需要を一気に取り込める可能性もある。

また、人工知能に精通するエンジニアの採用にも力を入れる。サービスのキモとなる融資承認確率の試算ベースを人工知能へと置き換えることで、申し込みから住宅ローン提案までのプロセス自動化を目指すという。

「十人十色」といえども、住宅ローンを適当に選ぶ人はいないだろう。中立的な立場でユーザーに最適な選択肢を与えるモゲチェックは、日本の住宅ローン選びの常識を変える存在になるかもしれない。

関連記事:住宅ローン借り換え支援のMFSが3.3億円調達、BtoBtoC型サービス開始でユーザーリーチ拡大めざす

カテゴリー:フィンテック
タグ:住宅MFS

住宅関連サービスプラットフォームのPorchが4社を買収

先日SPAC(特別買収目的会社)でのIPO(新規株式公開)を実施したPorch(ポーチ)が、総額1億2200万ドル(約126億円)で4社を買収したことを米国時間1月15日に発表した。最大の注目は1億ドル(約103億円)で買収したHomeowners of America(ホームオーナーズ・オブ・アメリカ)だ。今後、ポーチは家財保険業界にさらに進出するだろう。加えて、引越し関連事業向けのデータプラットフォームを扱うV12を2200万ドル(約22億円)で買収し、住宅診断サービスのPalm-Tech(パームテック)と屋根業者向けのSaaSアプリを販売するiRoofing(アイルーフィング)も合わせて買収した。パームテックとアイルーフィングの買収価格は公表されていない。

ポーチといえば、住宅のリフォームや修繕関連のサービスを7年前の2013年から提供している企業、というイメージかもしれない。もちろん今でも変わらずそれらのサービスを提供しているが、実は、同社は起業から数年後に「住宅関連の包括的なソフトウェアプラットフォーム」の構築に主軸を移している。買収を重ねた結果、現在では、Porch.com、HireAHelper(ハイヤーエーヘルパー)などのサービス、住宅診断のInspection Support Network(インスペクション・サポート・ネットワーク)、引越し関連サービスのKandela(カンデラ)、保険仲介業者のElite Insurance Group(エリート・インシュアランス・グループ)がポーチグループの傘下となっている。米国では、住宅購入者3人のうち2人が毎月、ポーチのツールを直接的または間接的な方法で利用している。

ポーチの創業者でCEOのマット・アーリックマン氏、画像クレジット:Porch

ポーチの創業者でCEOのMatt Ehrlichman(マット・アーリックマン)氏は、当初は従来型のIPOで上場する予定だったが、最近急増している特別買収目的会社を活用したIPOによって予定を1年早めることが可能となり、本日の買収発表に至った、とTechCrunchに語った。

アーリックマン氏によると、「3億2300万ドル(約335億円)の資金を調達できたため、株式を公開して上場することに加えて十分な増資も可能となった。これにより、予定を1年早めて、ポーチと非常に相性がよいと思われる企業の買収を今年のうちに進めることができた」という。ポーチの2021年の収益予測は当初1億2000万ドル(約124億円)だったが、今回の買収により1億7000万ドル(約176億円)に上方修正された。前年度(2020年)比で134 %の成長となる。

これまでに公表された文書を見ると、ポーチは、2021年に保険業界に進出することを以前から計画していたことが分かる。アーリックマン氏が述べるように、ポーチは最近、自ら包括的なソフトウェア企業として位置づけるようになっており、提供するサービスにインシュアテックが追加されることで継続的な収益を見込んでいる。加えて、ポーチは既に多種多様なサービスを提供しているため、追加されるサービスの顧客獲得にかかるコストは限りなくゼロに近い。

ポーチは既に保険仲介業務の認可を取得している。ホームオーナーズ・オブ・アメリカを買収したということは、保険会社でもあり総代理店でもある企業を買収したということだ。

アーリックマン氏は次のように述べている。「消費者の経済価値をすべて獲得することが可能だ。新居のオーナーが家財保険に申し込むのをサポートし、オーナーが満足できるようにその保険を当社で管理する。当社が投資したテクノロジーを駆使することにより、新居のニーズに合わせた家財保険を納得のいく価格ですぐに見つけられる。住宅の検査によって屋根が古いかどうかを確認し、水回りやその他の機器の不具合を発見するといった、他の企業にはない住宅関連の豊富なデータが、家財保険を取り扱う際に大きなメリットとなる」。

確かに、このようなデータがあるからこそ、数多くの買収が意味あるものとなる。ポーチは幅広い顧客層についてよく理解しているため、買収した企業に対して必要なデータを提供でき、それが、サービスの追加や、より的確な意思決定へとつながる。

ホームオーナーズ・オブ・アメリカは現在、テキサス、アリゾナ、ノースカロライナ、サウスカロライナ、バージニア、ジョージアの6州で営業しており、31州で認可を受けている。既に800を超える代理店が加盟するネットワークを形成しているが、ポーチは今後数か月でそのネットワークと営業地域をさらに拡大する予定だ。アーリックマン氏は「全国で顧客を獲得するためのコストがかからないので、事業の拡大に注力できる」と説明する。

ポーチがV12を買収した狙いは、V12の引越し関連事業とそのデータプラットフォームだ。今回の買収により、この分野での収益2億ドル(約207億円)という中期的目標の達成に近づくだろう。自動車業界など多岐にわたるV12のサービスは今後も提供されていく予定だ。V12プラットフォームの主な目的は、ブランドが特定の消費者にアプローチする適切なタイミングを把握することである。例えば、新車を買ったり引越したりする前のタイミングだ。ポーチは、自社が既に保有しているデータとV12の強みを活用してこの分野での拡大を図ることにより、アーリックマン氏いわく「真の」引越し業者となり、同業者との差別化を目指す。

「当社のマーケティングソフトウェア部門の基盤はV12であり、V12は引越し関連事業に強い。V12プラットフォームにより、長期的に見て非常に大きな差別化を図ることができる。成長を見込める分野はほかにもいくつかあり、それらの分野でもV12プラットフォームを展開していく予定だ」とアーリックマン氏は語る。

アイルーフィングとパームテックの買収の目的は、ポーチがこれまでに買収した企業や住宅診断会社と同じように、ポーチグループの関連製品全体と統合することによって企業の成長を促進することである。

ポーチのCFOであるMarty Heimbigner(マーティ・ハインビグナー)氏は次のように語っている。「当社のビジネスは、今回新たに買収した事業も含めて、ほぼ全体的に継続的な収益を見込めるし、予測可能だ。このようなリピート収益は収益コストが20 %未満で利益率が高く、当社プラットフォームで年間30 %以上の成長が期待できる。そのため、今回の買収は株主にとって非常に大きなメリットとなると確信している」。

関連記事:Evincedはウェブのアクセシビリティー検査の迅速化に18億ドルを調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:買収 住宅

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Dragonfly)

モバイルファーストの住宅ローンサービスプラットフォームValonが約52.5億円調達

あなたが住宅ローンを申し込んだことがあるなら、それが最も苦痛をともなう手続きの1つであることは知っているはずだ。ローンの間、遅延することなく支払いし、顧客サービスに対応することはいずれもピクニックのようなものではない。

なのでこのプロセスをより簡単なものに、そしてデジタル化して透明性のあるものにするという目標の下に、この分野に大金が注ぎ込まれるのは驚きではない。

そのためにテックを駆使した住宅ローンサービスのValon Mortgage(バロン・モーゲッジ)は米国時間2月2日にシリーズAラウンドで5000万ドル(約52億5000万円)を調達したと発表した。今日の基準においてこのステージでの規模としては大きい。

以前Peach Streetという社名だったニューヨーク拠点のValonの本ラウンドはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がリードした。既存投資家の中からJefferies Financial Group、Fortress Investment Group LLC傘下のNew Residential Investment Corporation 、166 2nd LLC(WeWorkの共同創業者Adam Neumann[アダム・ニューマン]氏のファミリーオフィス)もラウンドに参加した。

Valonはこれまでに連続起業家Kevin Ryan(ケビン・ライアン)氏のAlley Corp、Soros、Kairos、Zigg Capitalといったシード投資家から320万ドル(約3億4000万円)を調達していている。

Andrew Wang(アンドリュー・ワン)氏、Eric Chiang(エリック・チャン)氏、Jon Hsu(ジョン・スー)氏は、米国の住宅ローンの半分以上を支配している「最大のローンサービスソフトウェア企業」による「マーケットの寡占」なるものを打破しようと、2019年6月にValonを創業した。

「我々は、2008年に匹敵する住宅ローン差し押さえ危機の境界線にいます。そしてローンの支払いに苦しんでいる住宅所有者の大半は、自身が持つ選択肢に気づいていません」とValonのCEOであるワン氏は話した。「この締め付けは過去10年で250%近くのサービスコストアップにつながりました。そして手数料は直接借り手に跳ね返ってきます」。

資金調達と時期を同じくして、 Valonは最近、Fannie Mae(ファニーメイ、連邦住宅抵当公庫)から政府支援の住宅ローン扱いの許可を受けた(知らない人のために説明すると、ローンの提供は貸し手に代わって支払いを回収するようなことを意味する)。ワン氏によると、許可はValonが引き続き急成長するのに貢献する。

「1年で契約ゼロから100億ドル(約1兆500億円)の住宅ローンを扱うまでに成長しました」とワン氏はTechCrunchに話した。

Valonは49州でサービスを提供しており、2021年ニュヨークにも進出する。

住宅ローンサービス業界の元投資家として、ワン氏は他のローン回収業者が提供する「サービスの欠如」が不満だった。そして同氏はValonを立ち上げるために、Google(グーグル)、Twilio(トゥイリオ)でプロダクトとエンジニアリングの経験があったチャン氏、スー氏とチームを組んだ。

Valonのクラウドネイティブのプラットフォームは借り手志向のエクスペリエンスと表するものを提供するのが目的だ。貸し手もまた借り手のパフォーマンスを閲覧したりトランザクションデータを照合したりするのにリアルタイムのAPIデータフィードへのアクセスを要望できる。

借り手に金を貸すローン原債権者と異なり、ローン回収業者は15年から30年の間となるローン期間について借り手と話し合う。

「貸し手の代理としてのローン回収、そしてストレスのかかるときに借り手へのサポートとガイダンスの提供のようなものも含まれます」とワン氏は述べた。「従来の住宅ローン回収業者は時代遅れのテクノロジーを使っていて、借り手にそれほど良くないサービスを提供しています。Valonは住宅所有者に透明性とフルサービス能力を提供することでその点を大幅に変えようとしています」。

同社のテクノロジーは全プロセスの垂直統合によりローンサービスコストを最大50%削減する可能性がある、と同社は主張する。同社のプラットフォームは、暗号のデフォルトや侵入感知などの機能を備えるなどセキュリティを「第一原則」としてGoogle Cloud上で構築されている、と同社は述べた。

何百万という米国人が2020年に新型コロナウイルスパンデミックの経済負担のために住宅ローン支払いを停止した。これは支払猶予の要望と抵当物件差し押さえの一時停止につながった。

「パンデミックはマーケットにあるストレスを際立たせ、新時代のローン回収業者の必要性を大幅に加速させました」とワン氏は述べた。「住宅所有者はかなりの経済ストレスに直面し、正しい選択と既存サービスからのサポートを得るのに苦労しました。既存サービスの時代遅れのテクノロジーとリクエスト処理能力のなさのためです。2021年に支払猶予と差し押さえ免除が終わると、ニーズはより差し迫ったものになります」。

2020年半ばにValonの役員会に加わったAndreessen HorowitzのゼネラルパートナーであるAngela Strange(アンジェラ・ストランジ)氏は、Valonがモバイルファーストのローン回収サービスをゼロから立ち上げたと話す。

「住宅所有者は騒々しいウェブサイト、コールセンター、そして往々にして誤情報に直面します。Valonはクリアで透明性のある法規制に則った情報を提供できるソフトウェア駆動の信頼できるアドバイザーを抱えています。電話をかける必要はありません」と同氏は声明文で述べた。

ファニーメイの許可は、Valonが構築したプラットフォームにお墨付きを与えた、と同氏は付け加えた。

Valonは調達した資金を従業員の増加にあて、年末までに3倍の100人にするつもりだ。また、より多くのサービシング権利(MSR)契約を獲得するのにも資金を注入する。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Valon Mortgage住宅ローン資金調達

画像クレジット:Valon Mortgage

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi)

お手頃価格で住宅提供するConnect Homes、新たな資金調達と元Apple幹部の起用

Greg Leung(グレッグ・レオン)氏はApple(アップル社)での長年の勤務の後、スマートロック会社であるOtto(オット社)に所属していたが、Connect Homes(コネクトホームズ社)からの話が持ち上がったときにはすでに退職をしていた。

市場に出回っているプレハブ工法の住宅よりもずっと安い費用で、都心部へのアクセスが良好な場所にスターターホーム、つまり初めて住宅を購入する人のためのお手頃価格の住宅を建設する、というConnect Homesの売り込みは彼の心を捉えた。

「これは美しい製品でありながら、従来の住宅建設の概念を覆し変革するような方法で作られています」とレオン氏は語る。

住宅は14の標準化された構成で成り立ち、460平方フィート(約42.7m²)から3200平方フィート(約297m²)まで拡張可能だ。Connect Homesが競合他社とは決定的に違うのは、6日間で完全な住宅を建設できるスピードだとレオン氏は言う。

さらに、住宅は通常の配送ネットワークで輸送可能で、列車で国内のどの場所でも持ち運べるという。「輸送コンテナに合うサイズのモジュールを建設しているので、輸送のためにユニットを組み変える必要がなく、通常のインターモーダル輸送ネットワークが使えるのです。」と同氏は説明する。

Connect Homes製のプレハブ住宅の内装。画像クレジット:コネクト・ホームズ社

Connect Homes製の小さい方の住宅は、すべて込みで17万4000ドル(約1800万円)、297m²の住宅は82万5000ドル(約8600万円)だ。これは現在の注文住宅の費用の約半額に相当する。

「きれいでモダンな住宅を従来の注文住宅の半額で提供しています。」と同氏は言う。

「現在は、新しいトラクトハウス(同じ業者が作った住宅団地)、集合住宅そして高層ビルの3種類の新築住宅を建設しています。ベイエリアやLAにある70%の建物は70年代に建てられたものです。つまり小さすぎて時代遅れかつ、エネルギー効率が悪い住宅が大多数であるので、既存の土地を利用して開発を行うインフィル開発の機会はあります。住宅建設には、100万ドル(約1億円)から150万ドル(約1臆5千万円)かかるため、私たちを除き、誰も都市のインフィル市場に手を付けていません。」と続けた。

レオン氏の関心は、新規住宅所有者のために竣工した88のプロジェクト以外にも向けられている。カリフォルニア州のサンバーナーディーノ市に工場を持ち、ロサンゼルスに本社を構える同社は、地方自治体や政府の一時シェルターや住む家がない人に向けた暮らしの場に対する考え方を変えようとしている。

建築家であるJared Levy(ジャレッド・レヴィ)氏と Gordon Stoddard(ゴードン・ストダード)氏は、Marmol Radziner(マモールラドジナー社)のプレハブ建築部で勤務していた。Connect Homesは、彼らによって設立され、プレハブの未来のビジョンを作るため2700万ドル(約28億円)の資金を調達した。

その資本には、最近確保した500万ドル(約5億2千万円)ラウンドが含まれ、会社の再建、住宅工事と平行して展開型シェルターを建設できる建設技術の見直しに充てられる。これは北カリフォルニアでの経験によって国が住宅問題に直面している事実を敏感に理解していたレオン氏にとってもう一つの魅力となった。

同社が開発したシングルモジュールシェルターは、輸送可能で、1日で現場に設置することができる。自社開発の12メートル×2.4メートルのモジュールに発電機を追加するわけだが、これはそのシェルターがトレイラーのような柔軟性を備えていることを意味する。それでも住居としての準備は24時間で完了する。

「私たちは、地方自治体や第三者のサービスプロバイダーにこれを販売して、消費者に入居してもらうよう設計しました。」と同氏は言う。

新製品の顧客には、オーハイ市のタチャー高校やLife Moves(ライフムーブズ社)との提携で実現したカリフォルニアのマウンテンビューのプロジェクトが挙げられる。

シェルターの価格帯は、1ベッドルームあたり2万ドル(約208万円)から3万ドル(約312万円)またはモジュールあたり(約834万円)だ。この価格は、恒久的支援住居の1ベッドルームに地域が支払う50万ドルから100万ドル(約5千200万円から1億400万円)と比べて信じられないほど有利だとレオン氏は述べる。

しかし、仮設住宅に対する同社の豪華な代替住宅をもってしても、依然として、国内の都市が抱える住宅問題を解決できているわけではない。

「私たちは注文住宅を問題の一部と認識しており、この対極を行こうとしています。シェルターは緊急のニーズに対してとった対応でした。私たちには問題を解決するための革新的な能力があったのです。私はこの問題に対して素晴らしい人材や新しい工夫が適用されているとは思いません。そしてそれは多くの人の幸せと健康に影響を及ぼしています。この問題に一生取り組んでいくことになるかもしれません。」とレオン氏は述べる。

接地されたコネクト・ホームズ社製住宅の外観。画像クレジット:Connect Homes社

Brick and Mortar Ventures(ブリック&モーター ベンチャーズ社)の創設者兼経営者であるDarren Bechtel(ダレン・ベクテル)氏によると、建設業界の再建のための新しい成功例を作ろうとするこの試みこそが、Brick and Mortar Venturesの関心をひきつけ、同社が現金500万ドル(約5.2億円)でConnect Homesの資本増強を行うための交渉の席につく要因となったとのことだ(この500万ドルは最近Connect Homesが確保したものだ)。

Bechtelエンジニアリングおよび建設グループの跡継ぎであるベクテル氏は、業界に関して深い知識を有しており、Connect Homesを従来の建設概念を壊すことができる最高の賭けだと認識している。

ベクテル氏は、建設業界についてこう語る。「現在は、既存のものよりも安い費用で住宅を建設することはできません。しかし建設を製造として再考することにより、費用を効果的に削減できる環境が生み出されると考えています」。

「建設は長い間、原始的な製造方法にのっとっていました。従来の製造や自動車製造との違いは、住宅がある程度の規模に達したら、その住宅を効率的に製造場所から最終目的地の現場に輸送することが難しいことです。」と同氏は続ける。

同氏はこれを主要な問題として認識する一方で、これこそConnect Homesが解決できる問題だと期待している。「使用できる道路は限られており、インターモーダル輸送を利用できるよう標準化するか、走行許可を得る必要があります。輸送問題を解決できるよう本物の部品キットを作成しているのであれば、現場で仕上げるための技術者が必要となるでしょう。」と同氏は語る。

多くの場合、住宅建築業者は垂直的な統合を目指している。しかしベクテル氏によると、Connect Homesは、製品のライフサイクルと顧客体験を監視するAppleのようなアプローチを取っているという。「これが製品を世界規模で届け、住宅界のVWやアウディを製作するやり方です。住宅は最も高価な買い物です。ですがほとんどのケースが注文住宅であるというのは理にかなっていません。」と同氏は言う。

ベクテル氏は、主にカリフォルニアのアクセサリー住居ユニット(Accessory Dwelling Unit:ADU)市場をターゲットにしている企業と、より大きな志を持つConnect Homesを違うものととらえている。

「ADUの売買を行っている多くの人は、もう一軒ゲストハウスを持っています。彼らは自分自身のためにより広いスペースを欲しいと思っているのです。」と彼は述べた。「中密度または高密度エリアにある敷地面積の広い古い物件の区画を取得でき、そこに新しく2つまたは3つの住宅ユニットを作成できれば、はるかに大きな規模で住宅の品質と数量の両方を劇的に改善することができます。」とベクテル氏は述べる。

同氏は、これがConnect Homesの最終的な目標で、市場が回復する準備ができているのと同じように、同社も市場に戻ってくるだろうと述べた。

さらに同氏は「住宅のニーズが大きく回復すると確信しています。また1世帯の家族向けの住宅市場も回復します。」と続けた。これが現実のものとなったら、Connect Homesは新しい需要を満たすためのスケールアップに取り組む予定だ。

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カテゴリー:その他
タグ:住宅 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)