映画製作者が直接、作品をAmazonプライムビデオやApple TVなどのチャンネルで配信可能にするFilmhub

ストリーミング市場の成長にともない、コンテンツに対する需要も高まっている。だが映画製作者にとっては、従来よりコンテンツ作成が容易になったとはいえ、配給は依然として伝統的なシステムに支配されていることが多い。つまり、多くの映画製作者は、適切なコネがなければハリウッドから締め出されているのが現状だ。Filmhub(フィルムハブ)という企業は、この問題を解決するために、テクノロジーを利用して流通の簡素化と効率化に取り組んでいる。このプラットフォームにより、映画製作者は、Amazonプライムビデオ、Apple TV、IMDb TV、TCL、Tubi、Plexなどの大手を含む100を超えるストリーミングチャンネルに直接配信することが可能になる。

Filmhubは米国時間1月20日、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)がリードしたシードラウンドで680万ドル(約7億7000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、他に8VC、FundersClub(ファウンダーズクラブ)、Eleven Prime(イレブン・プライム)、Tara Viswanathan(タラ・ビスワナタン)氏(Rupa Health[ルパ・ヘルス]のCEO)、Nick Greenfield(ニック・グリーンフィールド)氏(Candid[キャンディッド]のCEO)、David Fraga(デビッド・フラガ)氏(InVision[インビジョン]の元COO)、Jerrod Engelberg(ジェロッド・エンゲルバーグ)氏(Codecov[コードコヴ]のCEO)が参加した。

Filmhubは、ロサンゼルスを拠点に活動する映画作曲家Klaus Badelt(クラウス・バデルト)氏のサイドプロジェクトとして2016年にスタートした。バデルト氏は「Thin Red Lin(シン・レッド・ライン)」「Gladiator(グラディエーター)」「Pirates of the Caribbean:The Curse of the Black Pearl(パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち)」の他、これまでに100本を超える作品を手がけている。製作費が下がり、より多くの映画が作られるようになる中で、同氏はこの作品ストリーミングの分野に機会を見出したが、強力な配給を得ることはできなかった。バデルト氏はその後、テック業界のベテランで、Square(スクエア)、Mint.com(ミント・ドットコム)、Google(グーグル)などで働いた経験のあるAlan d’Escragnolle(アラン・デスクラニョール)氏とチームを組み、2020年からフルタイムでプロジェクトに取り組むようになった。

Filmhubはそれ以来、ビジネスを成長させ、パートナーとしてストリーミングチャンネルを追加し、権利を放棄せずに作品を視聴者に見つけてもらう簡単な方法を望む映画製作者を増やしていくことにフォーカスしてきた。

画像クレジット:Filmhub

Filmhubはまず、映画製作者にインタビューを行い、彼らのコンテンツが同社と協働するストリーマーの技術仕様を満たしていることを確認する。同社はその後、自動化された技術と自社のセールスチームを活用して、可能な限り多くのストリーミングサービスにコンテンツを提供する。社名は「Filmhub」であるが、デスクラニョール氏は、そのコンテンツは必ずしも長編映画である必要はないと明言している。テレビ番組や短編映画など、プロが作成したコンテンツをシリーズ化することも可能である。ただ、同社の焦点は映画製作者と直接仕事をすることにある、と同氏は語る。

「伝統的なスタジオシステムが映画製作者にとって最良の環境になるとは考えていません。例えば、映画製作者としてスタジオ映画を製作する場合、通常は前払いです」とデスクラニョール氏は説明する。しかし、その映画が公開されれば、映画製作者たちは自分の作品が生み出す収入を共有できなくなるかもしれない、と同氏は指摘する。「クリエイター、そしてオリジナルの映画製作者に力を取り戻し、彼ら自身のライブラリを構築する機会があると信じています」とデスクラニョール氏は付け加えた。

ある意味で、Filmhubが行なっていることは、DistroKid(ディストロキッド)のような他の配信プラットフォームが音楽業界に対して成し遂げてきたことに類似している。これらのプラットフォームは、アーティストたちがレーベルと契約を結ぶことなく、自分たちの作品をトップストリーミングサービスに直接アップロードできる場となっている。

最近のパートナーシップの1つとして、小規模な動画サービスのコンテンツを独自のサブスクリプションで集約するClassPass(クラスパス)風のストリーミングサービス、Struum(ストゥルーム)との協業がある。FilmhubはStruumと協力して、Slamdance Film Festival(スラムダンス映画祭)に参加している映画製作者が作品を配信できるよう支援している。Struumは、スラムダンス映画祭の各タイトルを3カ月間独占的に提供する。そして契約の一環として、映画製作者は最初の1年間、FilmHubとStruum上の利益の100%を受け取ることになる。

Filmhubは通常、配信する映画のロイヤリティ収入の20%を得ている。ただし、各ストリーミングサービスがFilmhubに支払う料金はさまざまである。

画像クレジット:Filmhub

同社は収益の数字を公表していないが、デスクラニョール氏によると、収益は対前年比で3倍に成長し、配信数は数千タイトルから1万タイトルに増加したという。コンテンツは100を超えるストリーミングチャンネルに配信されている。同社はまた、手元にあるデータを活用して、ストリーミングパートナーがFilmhubのサービスでどのようなコンテンツが最適かを判断するのを支援することもできる。これはひいては取引の成立に貢献するであろう。

Filmhubが配信するコンテンツのすべてが新しいわけではない。例えば、Torsten Hoffmann(トーステン・ホフマン)氏が2020年に製作したドキュメンタリー映画「Cryptopia — Bitcoin, Blockchains, and The Future of the Internet」のように、現代的な映画もあるかもしれない。一方で、2014年に公開された、マジシャンのJames Randi(ジェームズ・ランディ)氏を描いた「An Honest Liar」などの古いコンテンツも、ストリーミングプラットフォームでの配信が実現すれば、堅調な第2の人生を迎える可能性がある。デスクラニョール氏によると、Filmhubは50年代、60年代、70年代のクラッシックな作品も配信しており、それらを「エバーグリーン」なものだと考えている。この種の映画やテレビ番組は、今のところテレビではあまり注目されていないかもしれないが、さまざまな視聴者とつながることができるストリーミングサービスに進出する可能性を秘めている。

将来的には、Filmhubは独自の消費者向けストリーミングサービスを立ち上げ、映画製作者のコンテンツをフィーチャーすることを目指していく。同社はこのサービスをデバイスを越えて利用できるようにしたいと考えており、他社の既存のストリーミングプラットフォーム内におけるアドオンとしての利用も視野に入れている。同社は今回の資金調達を受けて、このプロジェクトのためにエンジニアリング、技術オペレーション、セールスなどの人材採用を進めており、現在35名のチームを成長させていく計画である。

「今日の市場では、定評のある映画製作者でない限り、作品が世に出てくるのは非常に困難です。これはストリーミングサービスにとっても消費者にとっても、機会を逸しています。特に、より多様で国際的なコンテンツのポテンシャルがあることを考えると、なおさらです」とa16zのゼネラルパートナーであるAndrew Chen(アンドリュー・チェン)氏は自身の投資について語っている。「業界の流通モデルを前進させることを通して、Filmhubは世界中のクリエイター、プラットフォーム、視聴者にWin-Win-Winの関係を構築しています」と同氏は付け加えた。

画像クレジット:Niklas Storm / EyeEm / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

ネットフリックスのTV向けアプリで「視聴中コンテンツ」削除機能が利用可能に

ネットフリックスのTV向けアプリで「視聴中コンテンツ」削除機能が利用可能に

Marvin Samuel Tolentino Pineda via Getty Images

Netflixは、「視聴中コンテンツ」に表示される作品を削除する機能がテレビを含むすべてのデバイスで利用可能になったと発表しました。

Netflixのホーム画面に表示される「視聴中コンテンツ」は、途中まで観ていた映画や、テレビ番組を継続して視聴するには便利な機能です。その反面、観始めたものの興味を無くした、あるいは間違えて再生してしまった作品などがいつまでも残り続けて目障りといったこともあります。こうした作品が、簡単に削除可能となりました。

ネットフリックスのTV向けアプリで「視聴中コンテンツ」削除機能が利用可能に

Netflix

削除するには、視聴中コンテンツにある削除したい作品にカーソルを合わせ、ページのオプションから「リストから削除する」を選ぶだけです。この削除機能、これまでもウェブやモバイル向けアプリでは提供されていましたが、あらたにApple TVやFire TVなどテレビ向けアプリでも利用可能となり、Netflixを利用できるすべてのデバイスで削除可能となっています。ネットフリックスのTV向けアプリで「視聴中コンテンツ」削除機能が利用可能に

(Source:Netflix。Via the VergeEngadget日本版より転載)

HBO Maxが3月にサービス提供地域をさらに15カ国追加

米国時間2月1日、WarnerMedia(ワーナーメディア)は同社の動画配信サービスであるHBO Max(エイチビーオーマックス)を2022年3月8日からさらに15カ国で展開すると発表した。追加される15カ国は、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、ハンガリー、モルドバ、モンテネグロ、オランダ、北マケドニア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スロバキア、スロベニア。さらに2022年後半には、ギリシャやトルコなどさらにヨーロッパの6カ国を追加する予定だ。

HBO Max Internationalの責任者であるJohannes Larcher(ヨハネス・ラルヒャー)氏は発表の中で「HBO Maxはグローバルでの展開を進め、ヨーロッパの15カ国でプラットフォームを提供することで世界の61の地域での展開となります。我々は世界中でD2Cの戦略を実行し、すばらしいコンテンツともあいまって、世界最大級のストリーミングプラットフォームに必要な成長がもたらされるでしょう」と述べた。

親会社であるAT&Tの1月の発表によれば、HBO Maxを含めたHBOは2021年末時点でサブスクリプション契約者数が全世界で7380万人に達した。HBO Maxは2020年5月に米国でサービスを開始、2021年夏にはラテンアメリカとカリブ海地域で海外展開を開始した。その後、ヨーロッパでは初となる北欧とスペインにも展開した。現在サービスを提供しているのは46カ国で、WarnerMediaは2022年にHBO Maxをさらに拡大していく計画だ。

今回HBO Maxが拡大計画を発表する数日前には、ディズニーがDisney+(ディズニープラス)を2022年夏に欧州、中東、アフリカの42の国と11の地域で新たに開始することを発表していた。新たに追加される国に南アフリカ、トルコ、ポーランド、アラブ首長国連邦が含まれるのが目を引く。Disney+は現在、64カ国で利用できる。

HBO MaxとDisney+はここ数年、Netflix(ネットフリックス)やAmazon(アマゾン)プライム・ビデオなどのストリーミングサービスと競争している。世界展開に関していうと、NetflixとAmazonプライム・ビデオは数カ国の例外を除いて世界中で利用できる。Netflixは中国、クリミア、北朝鮮、シリアで利用できない。Amazonプライム・ビデオは中国大陸、イラン、北朝鮮、シリアで利用できない。

画像クレジット:Presley Ann/Getty Images for WarnerMedia

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

Disney+は今夏、新たに42カ国と11の地域でサービス開始

Disney+(ディズニープラス)は2022年夏、欧州、中東、アフリカの42の国と11の地域で新たにサービスを開始する。その中には、南アフリカ、トルコ、ポーランド、アラブ首長国連邦などが含まれる。このディズニー公式動画配信サービスは現在、米国、カナダ、英国、日本を含む64カ国で提供されている。ディズニーは、新たな国でサービスを開始する正確な日付や、地域別の価格設定に関する情報を明らかにしていないが、今後数カ月以内に発表される見込みだ。

新たにサービスが開始される国は、アルバニア、アルジェリア、アンドラ、バーレーン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、エジプト、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、イラク、イスラエル、ヨルダン、コソボ、クウェート、ラトビア、レバノン、リビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、マルタ、モンテネグロ、モロッコ、北マケドニア、オマーン、パレスチナ、ポーランド、カタール、ルーマニア、サンマリノ、サウジアラビア、セルビア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、チュニジア、トルコ、アラブ首長国連邦、バチカン市国、イエメンの42カ国。

そして新たに展開される地域には、フェロー諸島、フランス領ポリネシア、フランス領南方地域、サンピエール島・ミクロン島海外集団、オーランド諸島、シント・マールテン島、スバールバル諸島・ヤンマイエン島、英領インド洋地域、ジブラルタル、ピトケアン諸島、セントヘレナ島が含まれている。

ディズニーは先日、2023年度までにDisney+を展開する国の数を2倍以上の160カ国以上に増やす計画を明らかにした。今回の拡大のニュースはその一環だ。同社は、D2C(消費者直接取引)の動画配信ビジネスを、より多くのグローバル市場に拡大することを計画しており、この推進を支援するために、新たにインターナショナル・コンテンツ&オペレーション部門を設置した。このグループを率いるのは、ディズニー勤続25年のベテラン、Rebecca Campbell(レベッカ・キャンベル)氏だ。同氏はディズニーの動画配信サービスのための現地および地域向けコンテンツの制作に注力するとともに、ディズニーの国際チームを統括する。

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ディズニーによると、2021年度末時点で、Disney+、ESPN+(イーエスピーエヌ・プラス)、Hulu(フールー)の加入者数は合計1億7900万人だったという。同社はDisney+の加入者が、2021年第4四半期に全世界で1億1800万人に達したと述べている。

2019年後半に開始されたDisney+はこの数年、Netflix(ネットフリックス)やAmazon Prime Video(アマゾン・プライム・ビデオ)他複数の動画配信サービスと競合してきた。ちなみにNetflixとAmazon Prime Videoは、いくつかの例外を除いて全世界で提供されている。Netflixは中国、クリミア、北朝鮮、シリアでは利用できず、Amazon Prime Videoは中国本土、イラン、北朝鮮、シリアで利用できない。

画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ネットフリックスの加入者数の伸びは2015年以来の低水準

2021年に「イカゲーム」のような世界的なヒット作を生み出したにもかかわらず、Netflix(ネットフリックス)の第4四半期の収益は、競合他社に対するリードを維持に苦労していることを示している。今四半期の新規加入者数(830万人)は同社の予測(850万人)を下回った。また、2022年第1四半期の加入者数は、2021年の400万人からわずか250万人に減少すると予測しされている(同社によれば、今四半期は「後半になって盛り上がるコンテンツが増えたからだ」からだという)。全体的に見て、2022年は加入者数の増加率が減少傾向にあるが、2015年以降で最も低い増加率となり、パンデミックで急成長した2020年の数字からは約半減している。

画像クレジット:Netflix

同社は株主への書面に「消費者はエンターテインメントに使う時間にいつでも多くの選択肢を持っていました。世界のエンターテインメント企業が独自のストリーミングサービスを開発しているために、ここ24カ月の競争は激化の一途をたどっています」と書き「この競争が(同社の)芳しくない成長に影響を与えているかもしれない」ことを認めた。

Netflixの総加入者数は約2億2200万人だが、(HuluやESPNも所有している)ディズニーのような大規模なコングロマリットは、より積極的なペースで拡大を続けている。ディズニーは2021年末に、Hulu、Disney+(ディズニープラス)、ESPN+の合計加入者数が1億7900万人となり、2023年度までにはDisney+が利用できる国の数を倍増させる予定だ。ディズニーはまた、消費者直販のストリーミングを国際的に展開するために、 International Content and Operations (インターナショナル・コンテンツ&オペレーション)グループの設立を発表した。HBO Max(HBOマックス)も伸びている。同社によると、2020年5月のサービス開始以来、2021年12月が最も視聴された月だったという。

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Netflixは先週、米国とカナダでの利用料金を引き上げることを発表したが、一方で巨大なエンターテインメント市場で6年間にわたり低迷していたインドでは、利用者を増やすために、利用料金を引き下げた。Netflixは、もう1つの新しい収益源であるゲームにも挑戦している。同社は最近、ゲームスタジオNight School(ナイト・スクール)を買収し、大ヒット番組である「Stranger Things(ストレンジャー・シングス 未知の世界)」のような自社IPをベースにしたゲームを開発している。今週の最大のテック記事が物語るものは、ゲームは非常に儲かるということだ。予想どおり、Netflixは2022年にゲームのポートフォリオを拡大すると言っている。

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Netflixが会員を拡大するためのもう1つの新しい戦略は、コンテンツマーケティングだ。同社は2021年12月にTudum(トゥダム)という名のウェブサイトを立ち上げ、Netflixオリジナル作品に関する独占コンテンツを共有するために、Allure(アルーア)、Vanity Fair(バニティ・フェア)、Bitch Media(ビッチ・メディア)などのエンターテインメントジャーナリストや編集者を採用している。

画像クレジット:Chesnot/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

ディズニーが動画配信事業を再編、国際的戦略のハブとなる新グループを設立

Disney(ディズニー)は米国時間1月19日、D2C(消費者直接取引)の動画配信事業を、よりグローバルな市場に拡大する計画を発表した。そのために新たにインターナショナルコンテンツ&オペレーション部門を設立する。このグループを率いるのは、約25年前からディズニーで働くベテラン、Rebecca Campbell(レベッカ・キャンベル)氏で、ディズニーの動画配信サービスのための現地および地域向けコンテンツの制作に注力するとともに、ディズニーの国際チームを統括する。この新しい役職は、ディズニーのBob Chapek(ボブ・チャペック)CEO直属となる。同社は今回、現在の動画配信サービスの展開状況とDisney+(ディズニープラス)の2023年の見通しについても最新の情報を発表した。

ディズニーによると、2021年度末時点で、Disney+、ESPN+(イーエスピーエヌ・プラス)、Hulu(フールー)の加入者数は合計1億7900万人だったという。同社は2023年度までにDisney+の配信国数を2倍以上の160カ国以上に増やすことを計画している。

インターナショナルコンテンツ部は新たに設立されたものだが、ディズニーによると、同社の動画配信サービスのために制作・開発されている現地・地域向けタイトルは、すでに340以上にのぼるという。この数は時間とともに増えていく予定であり、これまでインターナショナルオペレーションおよびD2C担当のトップを務めていたキャンベル氏は、同時にインターナショナルコンテンツのパイプラインの拡大に注力していく。拡大した役割の中でも、キャンベル氏は引き続きアジア太平洋地域、欧州・中東・アフリカ地域、インド、ラテンアメリカの海外チームにも参加する。

インターナショナルコンテンツ&オペレーショングループの設立により、ディズニーは、スタジオコンテンツ、ジェネラルエンターテインメントコンテンツ、スポーツコンテンツの各グループに加え、コンテンツ制作のための第4の拠点を持つことになる。この新グループの追加は、Netflix(ネットフリックス)などライバルに対抗するために、動画配信分野でグローバルな事業基盤を確立することの重要性を示している。Netflixはインドなど一部の市場で加入者を獲得する方法を模索していて、最近では値下げを余儀なくされている。HBO Max(エイチビーオー マックス)も国際的な事業展開に目を向けており、最近は欧州の一部でサービスを開始した。

国際的なコンテンツハブの新設に加えて、ディズニーは動画配信事業の他の部分も再編成した。

Huluの新社長には、Disney+のマーケティング&オペレーション担当EVPだったJoe Earley(ジョー・アーリー)氏が就任した。同氏は、Disney+、Hulu、ESPN+、Star+をグローバルに担当するDisney Streaming(ディズニー・ストリーミング)の新社長に昇格したMichael Paull(マイケル・ポール)氏の直属となる。ポール氏の前職であるDisney+の社長はまだ任命されていない。新しい役職では、ポール氏はDisney Media & Entertainment Distribution(ディズニーメディア&エンタテインメントディストリビューション、DMED)の会長であるKareem Daniel(カリーム・ダニエル)氏の直属となる。

「ディズニーの消費者直接取引の取り組みは、わずか数年の間に驚異的なペースで進展しており、我々の組織は野心的なグローバルストリーミング戦略を支えるために成長と進化を続けてきました」と、チャペック氏は今回の組織変更を発表した声明の中で述べている。「レベッカは、当社のグローバルプラットフォームの拡大を指揮する重要な役割を果たしてきました。今回、新たにインターナショナルコンテンツグループを率いることになった彼女は、その専門知識と才能を活かして、当社の動画配信サービスに増加する現地・地域向けオリジナルコンテンツのパイプラインを監督するとともに、引き続き当社の国際的な事業を先導してくれるものと期待しています。同様に、消費者へのサービスに絶え間なく注力しているカリームは、当社の動画配信事業をディズニーの次の世紀に向けて展開していくための比類ない能力を備えた、業界をリードする経験豊富な経営陣を育成しています」。

画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ライブツイートされたで発表されるゴールデングローブ賞、Netflixが作品賞を初受賞

今回のゴールデングローブ賞は見逃せなかった、そもそも放送されていないからだ。しかし、あなたはツイートを見たかもしれない。NBCは2021年5月、L.A.Timesの調査により、毎年イベントを開催しているハリウッド外国人記者協会(HFPA)内の多様性の欠如や、一部の会員が賄賂に相当する贈り物を受け取っていた証拠が明らかになったことをうけ、2022年の授賞式を放送しないことを発表した。HFPAは改革を進めており、イベントは、テレビ放送はもちろん、ライブストリーミングも行われず、個人的に開催された。

その代わり、イベントの受賞者は、奇妙な方法でライブツイートされた。

HFPAは、間違いのあるツイートを取り消すことができるTwitterのサブスクサービスを利用したほうがよかったようだ。HFPAのゴールデングローブ賞Twitterアカウントは、ソーシャルメディア上で受賞者を発表する際、グローブ賞受賞者がどのTVや映画の企画で受賞したのか、例えばAndrew Garfield(アンドリュー・ガーフィールド)の受賞が「tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!」だったように、定期的に書き忘れていた。また「ウエスト・サイド・ストーリー」の笑い(?)を「最高の薬」と称したツイートは、後に削除され、音楽が最高の薬であることを伝えるために再び投稿されるという奇妙なものだった。それは「笑いは百薬の長」の諺とは異なっている。

とはいえ、イベントは続行された。

HFPAが論争の後に組織を改革しようとしているため、全体的に静かな年であることに加え、受賞したネットワークも、いくつかの注目すべき初受賞や逆転劇があったにもかかわらず、いつものように、その勝利を宣伝していない。

例年であれば、HBOはライバルを一掃したことを喜んで宣伝しているだろう。このネットワークは、HBOの4勝とHBO Maxの2勝を含む、6勝でこの夜をリードした。同ネットワークのテレビシリーズ「キング・オブ・メディア」は、作品賞、テレビドラマ男優賞(Jeremy Strong[ジェレミー・ストロング])、助演女優賞(Sarah Snook[サラ・スヌーク])を受賞した。HBO Maxのコメディ「Hacks」は、エミー賞受賞作「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」(Apple TV+)を抑えて作品賞(コメディ)を受賞し、主演のJean Smart(ジーン・スマート)が女優賞(コメディ)を受賞した。そして、Kate Winslet(ケイト・ウィンスレット)がHBOの「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」でリミテッドシリーズ部門の女優賞を受賞した。

一方、Netflixは、ドラマ映画賞「パワー・オブ・ザ・ドッグ」やドラマシリーズ「イカゲーム」を含むノミネーションでリードしたものの、HFPAが改革を終えるまで同イベントには参加しないとしていた。この決定は、賞での注目すべき初めての出来事についても、自慢しないことを意味している。

Netflixは、オリジナル作品「パワー・オブ・ザ・ドッグ」で、ゴールデングローブ賞の作品賞(ドラマ部門)を受賞し、ストリーミング配信会社として初の快挙を達成した。この作品は、監督賞(Jane Campion[ジェーン・カンピオン])と助演男優賞(Kodi Smit-McPhee[コディ・スミット=マクフィー])にも輝いている。

また、Netflixの大ヒットTVシリーズ「イカゲーム」が2022年は3部門にノミネートされ、韓国人俳優O Yeong-su(オ・ヨンス)が「キング・オブ・メディア」のKien Culkin(キーラン・カルキン、HBO)と「ザ・モーニングショー」のBily Crudup(ビリー・クラダップ、Apple TV+)を抑えて受賞し、韓国にとって初の受賞につながった。

Netflixも、ツイートではプロジェクト名をクレジットし忘れていたものの「tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!」で、アンドリュー・ガーフィールドが映画(ミュージカル&コメディ)の主演男優賞のトロフィーを手にした。

Apple TV+は「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」のJason Sudeikis(ジェイソン・スデイキス)がTVシリーズ(コメディ)部門の男優賞を受賞し、1勝を挙げている。Amazon Prime Videoの「地下鉄道 ~自由への旅路~」が同部門の作品賞を制したものの、Huluも「DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機」のMichael Keaton(マイケル・キートン)がテレビ向けリミティッド・シリーズまたは映画で男優賞を受賞し、グローブ賞を1つ獲得した。Amazon Prime Videoの「愛すべき夫妻の秘密」は、Nicole Kidman(ニコール・キッドマン)が映画部門の主演女優賞を受賞し、注目を集めた。

また、トランス系女優として初めてゴールデン・グローブ賞を受賞したFXの「POSE」のMichaela Jaé Rodriguez(ミカエラ・ジャエ・ロドリゲス)は、ドラマ部門の女優賞のトロフィーを手にした。

20センチュリースタジオ / ディズニーの「ウエスト・サイド・ストーリー」は最優秀作品賞(ミュージカル&コメディ)を受賞し、主演のRachel Zegler(レイチェル・ツェグラー)とAriana DeBose(アリアナ・デボース)はそれぞれ主演女優賞と助演女優賞を獲得した。劇場公開からわずか1カ月でDisney+で配信されたディズニーの「ミラベルと魔法だらけの家」は、アニメーション部門での作品賞を受賞した。

ワーナー・ブラザースの「DUNE/デューン 砂の惑星」では、Hans Zimmer(ハンス・ジマー)が音楽賞のトロフィーを獲得し、Will Smith(ウィル・スミス)が「ドリームプラン」で映画(ドラマ)部門の主演男優賞に選ばれた。非英語圏の作品賞は、日本映画の「ドライブ・マイ・カー」に贈られた。

全受賞者リストはこちら

画像クレジット:Netflix

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

かつて人気を博した海賊版の映画・ドラマ配信サービス「Popcorn Time」が閉鎖

海賊版の映画やテレビシリーズをNetflix(ネットフリックス)を利用するのと同じくらい簡単に視聴できるアプリとして、かつて人気を博した「Popcorn Time」が閉鎖された。当初の開発者たちは、2014年にサービスを開始してからわずか数日で停止し、プロジェクトを放棄した。しかし、このプロジェクトはオープンソースであったため、他の開発者が彼らが残したものを引き継ぐことができ、それ以来、何度か打ち切られたり復活したりしていた。Popcorn Timeがこれで永久に消えたかどうかはまだわからないが、直近の終焉の最大の要因は、アプリへの関心が薄れてきていることのようだ。

同アプリのウェブサイトには、過去7年間「Popcorn Time」が検索された回数のグラフが掲載されている。グラフを見ると、2015年のローンチ後数カ月間は大量の検索数を誇っていたが、2016年には関心が急激に低下している。その人気は衰え続け、少なくともGoogleトレンドに基づくと、その後回復することはなかった。

Bloombergによると、Popcorn Timeを運営していたグループは、メディア関係者に向けたメールでアプリの終了を発表したという。今回のアプリ閉鎖の決定に法執行機関の動きが関係しているかどうかについては言及していないが、Popcorn Timeは過去に法に触れたことがある。オリジナル版は当局の関与を受けて閉鎖された可能性があり、ハリウッドのスタジオ各社は、映画の海賊版コピーを違法にダウンロードして共有したとされる個々のユーザーを訴えたこともあった。

Popcorn Timeに関連する開発者たちは以前Bloombergに、同サービスは実際にはコンテンツを自らホストしていないため、著作権侵害の責任はないと語っていた。Popcorn Timeは、ピア・ツー・ピア(P2P)のBitTorrentファイル共有システムに依存しており、ユーザーが他人のコンピュータでホストされているコンテンツにアクセスする手段を提供しているに過ぎないからだ、と当時は語っていた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:LightField Studios / Getty Images

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

KDDI、最新の映像符号化方式H.266|VVC対応リアルタイムコーデックを用いた4Kおよび60fpsの映像伝送に成功

KDDI、最新の映像符号化方式H.266|VVC対応リアルタイムコーデックを用いた4Kおよび60fpsの映像伝送に成功

KDDI総合研究所は12月23日、今もっとも新しい映像符号化方式の国際標準であるH.266|VVCに対応したリアルタイムコーデックシステムを使った、12Mbps、60fpsでの4K映像の伝送実験を成功させた。現行のビットレートの半分以下のビットレートに圧縮しても、安定した映像品質が維持できることが確認されたという。現在の4K放送は60fpsというフレームレートで行われているが、このシステムでは、それに匹敵する映像の伝送も可能であることがわかった。

VVCは、2020年7月に国際標準化機関であるITU-TとISO/IECによって規格化されたばかりの技術。総務省は、地上デジタルテレビジョン放送高度化のための映像符号化方式のひとつとして採用を検討している。現在、インターネットの動画配信で広く使われているH.265|HEVCの2倍の映像圧縮性能があり、低いビットレートでも高画質が楽しめるようになる。また60fpsというフレームレートが実現するため、スポーツ番組のような高速なシーンの再現性も高くなる。

今回の実証実験では、2021年12月21日、大阪の関西テレビ放送から東京のKDDI research atelierへネットワーク回線を経由して映像を伝送した。そこで、ビットレート12Mbps、フレームレート60fpsでの4K映像伝送に成功。ここでは、高速化処理と並列化処理の改善を施したマルチコアCPUプラットフォーム上でVVCエコーダーを実現し、さらに入力映像に応じた適切な分割サイズと形状を、フレームレートを含む入力映像の事前解析で決定し、符号化処理を最適な1種類のみで完了させるという工夫が加えられた。

実験に協力した関西テレビ放送放送推進部の並川巌氏は、なめらかな動きが再現され、4K解像感とともに被写体がより自然な動きになっていると評している。さらに「とくに動きの良さがわかりやすい映像素材を提供しており、60fpsならではの顕著な効果」があったとも話している。今後は8Kも含めた、120fpsなどの高いフレームレートの映像への対応を視野に、処理速度の改善を進めるとのことだ。

フェアリーデバイセズが首掛け型ウェアラブル機器THINKLETの指向性集音機能をNTTテクノクロスと共同開発

フェアリーデバイセズが首掛け型ウェアラブル機器THINKLETの指向性集音機能をNTTテクノクロスと共同開発

産業用の音声認識技術やエッジAIデバイスの開発提供を行うフェアリーデバイセズは1月5日、首掛け型ウェアラブルデバイス「THINKLET」(シンクレット)のための高度な指向性集音エッジソフトウェアを、NTTテクノクロスと共同で試作開発したことを発表した。同試作ソフトウェアは「LINKLET(インテリジェントマイク版)」として、1月5日より開催のデジタル技術見本市「CES 2022」に参考出展する。

THINKLETは、スマートフォン同等の処理性能とLTE通信機能を備える現場向けのウェアラブルデバイス。音声や内蔵カメラで撮影した画像などの現場データの収集・学習・自動化・支援を可能にする「コネクテッドワーカーソリューション」だ。広角カメラに加え、高性能なマイクを複数搭載するほか、エッジAI処理や5チャンネル・マイクアレイを活用した指向性集音機能で、工場や作業現場などの雑音の大きい場所で、会話や特定方向の音を聞きやすくするという。「THINKLET Cloud」に接続されていることから、現場の声のテキスト化も可能。

またフェアリーデバイセズは、その応用ソーリューションの1つとして、ZoomやMicrosoft Teams(2022年春頃めどにリリース予定)に対応し、1人称視点での遠隔支援・ライブストリーミングをハンズフリーで実現するウェアラブルプロダクトのLINKLETを展開している。フェアリーデバイセズが首掛け型ウェアラブル機器THINKLETの指向性集音機能をNTTテクノクロスと共同開発

これまでフェアリーデバイセズは、多チャンネルマイクを利用したフロントエンド音響信号処理、雑音抑制、発話区間抽出、エコーキャンセル、ボイスウェイクアップなどの技術を複合した音声エッジAIライブラリー「mimi XFE」を提供してきたが、そこにNTTテクノクロスのインテリジェントマイク技術を組み合わせることで、高度で柔軟な指向性集音機能が実現されたという。

THINKLETは、すでにその指向性集音機能が評価されているが、今回の共同開発では雑音抑圧性能が大きく向上した。また、指向性を自由に制御できるようになり、装着者の声、目の前にいる人の声、特定方向の機械音などを選択的に聞くことが可能になった。これらにより、熟練作業者による円滑な遠隔作業支援、現場作業の対話記録、音声対話AIによる作業指示、機器の異常音検知などの性能が向上する。

フェアリーデバイセズが首掛け型ウェアラブル機器THINKLETの指向性集音機能をNTTテクノクロスと共同開発

今後は、革新的な音声フロントエンド処理のための技術開発を共同で進め、THINKLETを導入している現場からデータを集め活用することで、「世界中の現場DXに積極的に貢献」すると、フェアリーデバイセズでは話している。

TikTokをモデレーターが提訴、生々しい動画の審査業務が精神的トラウマに

Bloombergの報道によると、TikTok(ティックトック)のモデレーターが、生々しい動画による精神的トラウマを理由に、同ソーシャルメディアプラットフォームとその親会社であるByteDance(バイトダンス)を訴えたという。提案されている集団訴訟の中で、モデレーターのCandie Frazier(キャンディー・フレイジャー)氏はこれまで、暴力、学校での銃撃、致命的な転落、さらにはカニバリズムなどが映っている動画をスクリーニングしたと述べている。「(結果)原告は睡眠障害に悩み、眠れた時には恐ろしい悪夢にうなされています」と訴状には記されている。

問題をさらに悪化させているのは、TikTokはモデレーターたちに12時間のシフト制で働くことを要求し、1時間の昼食と15分の休憩を2回取ることしか許さないことだという。訴状によると「膨大な量のコンテンツがあるため、コンテンツモデレーターは、1つの動画につき25秒以内の視聴しか許されず、同時に3~10本の動画を観ることになる」とのこと。

TikTokは、Facebook(フェイスブック)やYouTubeを含む他のソーシャルメディア企業とともに、児童虐待やその他のトラウマになるような画像にモデレーターが対処するためのガイドラインを作成した。その中には、モデレーターのシフトを4時間に制限することや、心理的なサポートを提供することなどが盛り込まれている。しかし、訴訟によると、TikTokはこれらのガイドラインを実施しなかったとされている。

コンテンツモデレーターは、ソーシャルメディアに掲載される生々しい画像やトラウマになるような画像の矢面に立ち、ユーザーがそれらを体験しなくて済むようにする役目を背負っている。大手テック企業にコンテンツモデレーターを提供しているある企業は、この仕事が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を引き起こす可能性があることを同意書の中で認めているほどだ。しかし、ソーシャルメディア企業は、心理的な危険性を考慮して十分な報酬を支払っておらず、メンタルヘルスのサポートも十分ではないとして、モデレーターなどから批判を受けている。2018年には、Facebookに対して同様の訴訟が起こされている。

フレイジャー氏は、他のTiktokスクリーナーを代表して集団訴訟を起こすことを希望しており、心理的傷害に対する補償と、モデレーターのための医療費支援基金を設ける裁判所命令を求めている。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Nur Photo / Getty Images

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

【レビュー】Mevo Multicamは手ごろですばらしいライブ配信スタジオだ……必要なのは「それを信じる」ことだけ

Mevo Multicam Appと3つのカメラがセットになったMevo Start 3パックは999ドル(約11万4000円)。これに良い照明と適当なマイクを加えれば、2000ドル(約22万8000円)以下でフルマルチカムのストリーミングセットアップが完成する。数年前ではまったく考えられなかったことだ……人類の進歩は驚くべきことだとしみじみ思う。これにしっかりとしたインターネット接続を追加すれば、このキットよりも2桁は高価な機器を満載した衛星中継車の中核的な機能が再現される。

プロの放送局のニュースクルーがMevo Startキットを使うことはできるだろうか。それは難しいだろう。もっと高い信頼性と冗長性、そして生放送のニュースレポーターのニーズに対応した機器が必要だ。しかし、同じ問題を別の視点で考えてみると、非常にわかりやすくなる。

例えば、ユーチューバーが自分のスキルを発揮したいと思ったらどうだろう?ウェブカメラとOBS(録画とライブ配信用のアプリ)を組み合わせてライブ配信を行っている人なら、もっと簡単に分解・再構築できるセットが欲しいと思うかもしれない。Twitchで音楽配信をしていたり、自分のバンドで何度かライブ配信したことがあったり、マルチカメラを使ったライブ配信の腕を上げたいと考えている人も、さまざまな会場で行われるイベントのライブ配信を始めたいと思っている人もいるだろう。この場合、Mevo Start 3パックは俄然お買い得に思える。何よりも、最初にセットアップしてしまえば、分解して再度組み立てるのも簡単だ。

少なくとも理論上は良い話だ。しかし、少しリラックスして考えてみよう。本当にこれだけのことができるのだろうか?

テクニカルレビュアーは時として不可能といってもいい課題に直面する。自分の用途ではない製品をどうやってレビューするのか、その製品が対象とするユーザーに適しているかどうかについて、どうしたら有意義なレビューをすることができるのか。Logitech for Creators(ロジテックフォークリエイターズ)のMevo MulticamアプリとMevo Start 3パックは、まさにそのような製品の1つだ。筆者はTwitchやYouTube、Facebookのストリーマーではないが、放送ジャーナリズムを中心としたジャーナリズムの学位を取得している。ニュースキャスターやテレビの生中継レポーターとして訓練を受けたことが懐かしい。BBCニュースの衛星中継車では(文字通り)熱い時間を過ごした。テレビのプロデューサーだったこともある。

問題は、ある業界で専門的な経験を積むと、普通の人とは異なる期待を持って製品に臨むようになることである。BBCに在籍していたときは、生放送中に衛星への信号がほんの一瞬落ちただけでも、ニュースルームの送受信センターにとって信じられないほどのストレスだった。一方で、端的にいえば、このキットは何百万、何千万もの人々にニュース速報を伝えるための中継車1台分の機材を置き換えるためにデザインされたものではない。ユーチューバーに使ってもらうためのものだ。

Mevo Multicamアプリは、マルチカメラを使用したライブ配信のコントロールセンターとして機能する。エレガントなすばらしい方法でマルチカメラストリーミングを行うことができる(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

理論上はMevo Startは非常に良いアイデアのように思える。しかし、これはMevo Startが完ぺきという意味ではない。Mevo Startは明らかに、薄暗いクラブハウスでカメラ機材のセットアップに長い時間を費やしたことのない人によって設計され、その製品チームはMevo Startキットのセットアップと解体を連続して30回行うことを要求されていない。もしそうなら、製品の仕上がりに大きな影響を与えるほんの少しだけ異なる判断をしていただろう。

例えば、カメラの電源ボタンについては実に愚かだ。電源ボタンはゴム製ではあるものの、ボディに対して凹凸がなく、触っただけではどこがボタンかわからない。さらに悪いことに、マットブラックのボディに対して電源ボタンもマットブラックだ。暗闇の中で、何人ものミュージシャンに囲まれながらカメラを設置しようとしたらどうなるかを考えてみたらいい。公平を期すためにいえば、これは製品設計上よくあることである。CADで設計され、明るいハードウェアラボでテストされた製品を、誰かが「カメラが使用されるであろうユースケースに合わせて調整しよう」と考えるのが遅すぎたのだ。

カメラの背面:電源用のUSB-Cポート、ローカルレコーディング用のMicroSDカードスロット、マイク入力、そして暗闇の中では非常に見つけにくい電源ボタンがある(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

デザイン上の特徴を1つだけ殊更に強調するのは申し訳ないとは思うが、電源ボタンはカメラの唯一のボタンであるので重要なことだ。電源ボタンが簡単には押せず、かなりの力で押さなければならない、という点はすばらしい。ライブ配信中の事故は絶対に避けたいものだが、誤って電源ボタンを押してしまうのを防ぐことができる。一方で、ライブ配信のために急いで何かを設定しようとすると、両手がふさがってしまう。筆者の場合、片手はマイクや他の機材でふさがっていて、常に片手でカメラの電源を入れたり切ったりする必要があった。(電源ボタンがかたいということは)つまり、カメラの電源ボタンを押すときには、電源ボタンの反対側の同じ位置をつかんでカメラを固定しないと力が入らない、ということである。残念ながら、電源ボタンを押す際、力をいれようとすると自然にレンズもつかんでしまうということになる。カメラの中で唯一指紋をつけてはならないのがレンズなのだが。

片手でカメラの電源を入れたり切ったりするには、このようにカメラを持つしかない。人差し指は電源ボタンを押しているが、親指はどうだ?次にやるべきことは、レンズについた親指の指紋を消すことか?(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

電源ボタンはさておき、このカメラにはスマートなデザインも多くみられる。迷光を防ぐためにドーム型のレンズの上には小さなひさしがあり、レンズフレアの軽減に大いに役立っている。カメラ底部の三脚穴は取り外し可能で、穴の径を変えればカメラをマイクやライトスタンドに取り付けることができる。カメラ前面のライトLEDは、スタンバイ中のカメラを示す緑のLEDと、実際に撮影中であることを示す赤のLEDで構成されている。カメラにはバッテリーが内蔵されているので、電源がなくてもライブ配信を開始することが可能。外出先でのライブ配信にも適している。これらはすべて、非常に考え抜かれた機能である。

しかしながら、カメラのセットアップには非常に苦労した。3台とも使用する前にファームウェアのアップグレードが必要だった。もしかしたら筆者がAndroidデバイスを使用しているのが原因で、iOSのアプリの方がこなれているのかもしれないが、判読不能なエラーメッセージが表示されて完了までに何時間もかかった。最終的には使えるようになったものの、スマートフォンを6回も再起動する羽目になった。そのうち1回は最初に各カメラに接続するため、もう1回はファームウェアのアップグレードの失敗からリカバリーするためだ。

ファームウェアの問題が発生したことを受けて、筆者はMevoのプレスチームに連絡をしてみた。彼らは開発チームに連絡してカメラが動作するようサポートと提案してくれた。筆者はこれについて検討したが、その申し出は断ることにした。ハードウェアレビュアーとしては、製品の開発に携わった人と電話で話すことができるというメリットがあるが、消費者としては、このようなことは期待できない方が多い。

もし自分で使うためにこのカメラを購入していたなら、この時点で返品していたと思う。筆者はハードウェアのレビューを長年担当してきたが、レビューを始める前にスマートフォンを6回も再起動しなければならないような製品をテストしたことはない。数日間あきらめて、やっと重い腰を上げてカメラを本格的に試そうとしたら、またファームウェアのアップグレードがあった。今回は比較的スムーズに作業を進めることができたが、数週間のうちに2回もカメラのファームウェアをアップデートしなければならないというのは決して心強いとはいえない。

問題の核心は「信頼性」にある。製品の中には、2回、3回うまくいかなくても問題のないものがたくさんある。例えば、Google Nest Thermostatの温度を変更しようとして、最初はうまくいかなかったとしても、それはそれで問題ない。もう一度やってみる、うまくいく。それでOKだ。しかしながら、ライブ配信はエアコンをつけるようなものではない。数千人の人々がライブを観ている場合はストレスレベルが上がり、小さな技術的な問題であっても、とてつもないストレスとなる可能性がある。私の感覚は、何百万、何千万もの視聴者が観ているかもしれない衛星回線のライブや、現場からのライブレポートがニュースルームに届かずに台無しになってしまうテレビの生放送なので、おそらく他のライブストリーマーは、筆者のように技術的な問題に敏感ではないのだろう。

取り外し可能な三脚穴のデザインはありがたい。ネジは照明スタンドのサイズと三脚のサイズの2つ。ネジを外すとマイクスタンドのネジのサイズになる。非常によくできた仕組みだ。ボディに指紋がつきやすいのは指摘しておくべきだろうが、機能的には問題ない(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

製品を完全にセットアップできたら、製品が輝くチャンス到来だ。カメラを操作するMevoのアプリは非常に優れている。Mevo Multicamアプリでは、1台のカメラで撮影を準備し、カメラ間でフェードイン / アウトすることができる。また、ズームインやオーバーレイの使用、さらにはデジタルパンニングも可能だ。基本的には非常にシンプルなセットアップでありながら、非常にパワフルな結果を生み出すことができる。

セットアップのプロセスについては不満を並べたが、それはここで打ち切るべきだろう。筆者はこのカメラをさまざまな場面でテストしたが、一度も期待を裏切られることはなかった。問題も起きなかったし、バッファリングし続けることも、遅延、切断もなかった。

マルチカメラによるストリーミングは、創作活動、音楽ライブ、実写イベントなどに最適である。Mevo Startは、小さなボディに驚くべき価値を秘めている(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

問題は、筆者がこのカメラを完全に信頼することができなかったことであり、結果として筆者が担当するライブ配信にこのカメラを使用することはおそらくないだろう、ということだ。3台のカメラを用意して、もらったばかりの子猫たちが遊んでいる様子をライブ配信するか?もちろん、見応えのある愛らしい映像になると思う。友人が地元のバーで行う音楽ライブの様子を、何十人かのライブ配信愛好家に向けてライブ配信する際は利用するだろうか?おそらく「No」だ。ストレスレベルが高すぎる。長時間なんの問題なくライブ配信して初めて、重要な撮影にこのカメラを使ってもいいと思えるだけの信頼を置けるかどうか、といったところだ

ここに難問がある。ライブ配信は非常に危険で高ストレスなものなので、自分の機材を信頼できると感じることが重要である。私がこれまでにレビューした製品の中でも、Mevoのカメラは信頼という点で最悪のデバイスだ。とはいえ、逆もまた真なりだ。というのは、レビュアーという仕事では、ファームウェアの初期バージョンや、まだ本領を発揮していないソフトウェアを目にすることもある。Mevoは、このレビューで見つかった問題を解決してくれるかもしれないし、3カ月後、6カ月後にはカメラはすばらしいものになっているかもしれない。筆者は喜んでそれを受け入れよう。

少なくとも理論的には、マルチカメラにチャレンジしたいと考えているライブストリーマーにとって、Mevo Start 3パックは費用対効果の高い、完ぺきに近いソリューションとなるはずだ。この製品がおすすめできるかどうかは、数カ月後に再検討したいと思う。

画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

ストリーミングビデオをインタラクティブにするAdventrが約5.7億円のシード資金調達

創業者でCEOのDevo Harris(ディーボ・ハリス)氏がAdventrを思いついたのは、音楽業界の大物アーティストたちと仕事をしていたときだ。

「AdventrはKanye West(カニエ・ウェスト)やBritney Spears(ブリトニー・スピアーズ)やNas(ナズ)といったアーティストのコンテンツを作っているときに思いつきました。インタラクティブな要素を導入したミュージックビデオは人気を博し、視聴者を惹きつけるのは高価な映像や編集だけではないことが証明されました」とハリス氏はいう。

そこでハリス氏は、グラミー賞まで取ったメディアプロデューサーとしての地位を捨て、一介のアーリーステージスタートアップの創業者になった。現在、Adventrはインタラクティブなメディアを作成、閲覧、共有するためのドラッグ&ドロップSaaSツールで、ユーザーはタッチスクリーンやクリック、さらには自分の声を使ってビデオを操作できる。Adventrは、「SmartListen」という音声制御技術の特許を取得し、音声コマンドに基づいてメディアコンテンツを流れの途中で変更することができる。この技術は広告に応用可能で、視聴者が「緑のシャツを買って」などということができるようになるかもしれない。また、クリエイターがAdventrで映画を作る場合、ホラー映画の主役に「あの廊下を進むな」というように、観客から登場人物に指示を出すよう呼びかけることもできる。

その特許を取ったSmartListen機能はまだ未完成だが、Harris氏によると、2022年の初めには一部のパートナーが利用できるようになる。

「これはゲームチェンジャーであり、動画内のクリックを超えたコネクテッドメディアの可能性にクリエイターの心を開くことになるでしょう」とハリス氏はいう。

関連記事:動画に話しかけることでユーザーがストーリー展開を変えるAdventrのボイスコントロール技術

立ち上げからわずか1年のAdventrは、2021年秋のTechCrunch Disrupt、Startup Battlefieldに登場し上位5社のファイナリストに残った。その後、同社はベータでプロダクトを磨き、ユーザーは8000社になっている。その中にはAsiaNet NewsやMSI Gaming、SK Interactive、そしてニューサウスウェールズ州政府もいる。これらの顧客はユーザーが動画と対話している際のアナリティクスを確認できるので、消費者についていろいろ知ることができる。

Disrupt後、AdventrはPaladin Capitalがリードするシード投資で500万ドル(約5億7000万円)を調達し、それにReinventure CapitalやIn/Visible Ventures、そしてアカデミー賞受賞者John Legend(ジョン・レジェンド)氏らが参加した。レジェンド氏はハリス氏の長年の協力者で、カレッジのルームメイトでもある。

「Disruptの直後から6桁ドルの収益が上がり、今でもオンラインでピッチビデオを見た人からインバウンドがきています」とハリス氏はいう。

Adventrは今回の資金をチームの構築に使っていきたいという。Disruptに出たときは5人の社員しかいなかった。最近同社はVimeoのゼネラルマネージャーだったPeter Gerard(ピーター・ジェラルド)氏をプロダクトのトップに招いた。Adventrはまもなくソーシャルメディア・プラットフォームとの統合を開始し、顧客がそれらのプラットフォーム上でインタラクティブビデオをネイティブに共有できるようにする予定だ。

画像クレジット:Adventr

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TikTokがMeta傘下のGIPHYと連携、グリーンスクリーンやHDビデオ、猫の鳴き声エフェクトなどの新機能を発表

米国時間12月16日、TikTokはFor Youの変更に加えて、カメラや編集ツールのアップデートも発表した。具体的には、広く使われているグリーンスクリーン編集ツールの新機能や、ビデオ補正とサウンドエフェクトのアップデートがある。

今回のアップデートで注目されるのはグリーンスクリーンの新機能だ。TikTokによれば、グリーンスクリーンは2019年の公開以来、同プラットフォームで目立って多く使われているという。このツールを使うと自分の背景を別の写真やビデオにすることができるが、このツールが新たにGIFに対応した。

この機能を実現するために、TikTokはMeta傘下のGIPHYと協業した。この連携により、TikTokユーザーはライブラリからGIFを選んで自分の背景にし、さまざまなビデオを作れる。例えばGIFを背景にした「リアクション」ビデオを作ったり、ミームの紹介や言及をするツールとしても使えるだろう。

一方、TikTokはプロのクリエイターにも使われるようになっており、ライブストリーマー向けデスクトップソフトウェアのテストに見られるように特定の対象者に向けたツールの展開も始めている。同社は1080pのHDビデオをアップロードするオプションを今後公開すると発表した。この機能を利用できるようになるのは「一部の国」で、対象となる国では投稿ページのオプションに「HDをアップロード」の項目が表示されるようになる。

画像クレジット:TikTok

他の新機能としては、ビデオの露出や光量不足、色を自動で補正するボタンが追加される。ビデオの専門家でなくてもタップするだけで簡単に利用でき、コンテンツが良い仕上がりになる。このツールを使うには、ビデオを撮影またはアップロードした後で、右側のパネルに表示される補正ボタンをタップする。補正が気に入らない場合はもう一度ボタンをタップすればエフェクトが取り消される。

TikTokはさらに音楽とオーディオの新しいエフェクトも公開する。声や音を動物の鳴き声や楽器の音、例えば猫やフルート、日本では一般にチャルメラと呼ばれる中国の管楽器のチャルメラに変えるおかしなエフェクトもある。この新機能は、編集ページの右側にあるパネルでボイスエフェクトボタンをタップして使用する。

画像クレジット:TikTok

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

米Hulu、ユーザーのストリーミング習慣に関する統計情報を含むパーソナライズされた年末まとめ機能を提供

遅ればせながら、米HuluもSpotifyの「S⁠p⁠o⁠t⁠i⁠f⁠y⁠ま⁠と⁠め⁠2⁠0⁠2⁠1」のような年末まとめを提供している。Huluが提供しているのは、ユーザーそれぞれの視聴習慣を「Your TV DNA」ツールを使って知ることができるというオプションだ。ツールは新しいウェブサイトからアクセス可能で、ユーザーは、2021年の自分の個人的視聴習慣のプロフィールにアクセスできる。ツールはユーザーのストリーミング習慣を分析して、最もよく観たジャンルや映画、テレビ番組のエピソードをいくつ観たのかといっや情報をシェアする。

まとめを見るためには、まずウェブサイトでHuluアカウントにログインする。するとツールがユーザーのデータを分析して、それから、最もよく観たジャンルが表示される。カテゴリー名は「エッジの効いたコメディー」や「ハラハラドキドキのドラマ」「犯罪ドラマ」といった感じだ。まとめには「ストリーミングペルソナ(ストリーミングの性格)」という項目があり、2021年の視聴習慣がわかる。

ツールには、次回、ユーザーが訪れた際、観るべきものを推薦する機能もある。このレコメンデーション機能には、ユーザーがこれまで観たものに基づいてコンテンツを薦めてくれる。また、自分のまとめをソーシャルメディアで他の人たちとシェアするオプションもある。

「2021年、Huluは初めて加入者が自分の視聴DNAの閲覧をリクエストする機会と、希望すれば自分のストリーミングペルソナを堂々と共有できるツールを提供します。本日より、加入者はYourTVDNA.comにアクセスし、2021年を通じてパーソナライズされたHuluの視聴習慣を見るようリクエストすることができます」と同社はブログで述べている。

画像クレジット:Hulu

同社がこの新機能をローンチしたのは、毎年行われるSpotifyの「S⁠p⁠o⁠t⁠i⁠f⁠y⁠ま⁠と⁠め⁠2⁠0⁠2⁠1」のおかげで、年末のまとめをシェアするという行為がますます人気になり、ソーシャルメディアで広くシェアされているためだ。その成功を見て、他社がその人気機能をマネるのも当然だ。Huluも多くのデジタル巨人たちに合わせて、自ら「まとめ」風機能をリリースした。先にFacebookとInstagramは、ユーザーがそれぞれの「Year in Review」機能を導入して、ユーザーにその年に思いをはせる方法を提供した。Redditもユーザー個人のまとめを展開し、ユーザーの習慣に関する統計を提供している。一方Snapchatは今週「Year End Story」機能をローンチした。

Huluは、個人のまとめだけでなく同プラットフォーム全般のトレンド情報も発表している。それによると、最も多く観られたコメディーは「Only Murders in the Building(マーダーズ・イン・ビルディング)」で、最も多く観られた連続ドラマは「Nine Perfect Strangers」が記録を更新した。そして、アダルトアニメが、Huluで最も観られた時間が多かったジャンルだった。

同社によると、2021年にストリーミング量が最大だった日は1月31日日曜日で、おそらくJohn Krasinski(ジョン・クラシンスキー)氏がホストを務める「Saturday Night Live(サタデー・ナイト・ライブ)」のエピソードを前夜から見ていたことが大きい。オリジナル以外の連続ドラマでは、もっとも多く見られた医療ドラマが「The Good Doctor(ザ・グッド・ドクター)」で、それは2020年にもこのカテゴリーのトップだった。ノンオリジナルで人気が高かった連続ドラマは他に「Law & Order:SVU(LAW & ORDER:性犯罪特捜班)」と「Modern Family(モダン・ファミリー)」だった。

画像クレジット:Hulu

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Netflixが作品の更新や独占インタビューなどを最新情報をまとめるウェブサイト「Tudum」を開設

Netflix(ネットフリックス)は、テレビ番組や映画の更新、リリース日、追加コンテンツに関するニュースを掲載する新しいウェブサイト「Tudum(トゥダム)」を開設した。Netflixは、このサイトを「Netflixのお気に入りの作品をより深く知ることができる場所」と位置づけている。ユーザーは、自身のNetflixアカウントでこのサイトにログインすることで、よりカスタマイズされた体験をすることができる。Netflixによると、同ウェブサイトはまだ初期段階にあり、今後も継続して構築し、新しい機能を追加していく予定だという。

Tudumでは、Netflixのテレビ番組や映画に関する追加コンテンツや情報を提供する予定だ。例えば、ユーザーはコンテンツをより深く掘り下げることができるようになり、「ウィッチャー」のキャストを他にどこで見たか、「メイドの手帖」は実話に基づいているのかなどの情報を調べることができるようになると述べている。同ウェブサイトには、独占インタビュー、キャストの内訳、プラットフォームで人気のあるコンテンツの情報、トレンドニュースセクション、今後のショーの詳細、探索セクションなどが含まれている。

「Tudum」という名称は、Netflixで再生ボタンを押したときに聞こえてくる音にちなんで名付けられたもので、9月に開催されたNetflixのグローバルなバーチャルファンイベントの名称でもある。このイベントでは、Netflixの最も人気のあるタイトルのスターたちによる独占的な初公開やパネル展示が行われた。「ストレンジャー・シングス 未知の世界」「エミリー、パリへ行く」「ウィッチャー」「ザ・クラウン」「コブラ会」「ブリジャートン家」など、Netflixの最も人気のある番組のクリエイターやスターとの話があった。

このストリーミング大手の最高マーケティング責任者であるBozoma Saint John(ボゾマ・セイント・ジョン)氏は、ブログ記事で新サイトの立ち上げを発表し、Netflixは「ファンのみなさまが愛するストーリーをより深く掘り下げ、夢中にさせ、新しい会話を始めるために、Tudumを導入できることに興奮しています。まだまだこれからで、今日の公開は始まりに過ぎません」。 と述べている。

新しいウェブサイトは世界中でアクセスできるようになったが、現在は英語版のみの提供となっている。Netflixがこのウェブサイトを他の多くの言語でも展開する予定かどうかは不明だ。

画像クレジット:Netflix

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

SpotifyがTikTokに似た縦方向ビデオフィードのテストを開始

TikTokのショートビデオのフィードはInstagramからSnap、YouTube、さらにNetflixに至るまで、多くの競合に模倣されている。今度はSpotifyも模倣の仲間に加わるようだ。Spotifyはアプリ内でDiscoverという新機能をテストしていることを認めた。Discoverはミュージックビデオを縦方向のフィードで表示する機能で、ユーザーは上下にスクロールして見ていく。お気に入りにしたりスキップしたりすることもできる。この機能が提供されているユーザーに対しては、アプリ画面下部のナビゲーションバーで「ホーム」と「検索」の間にタブが1つ増え、タブが4つになっている。

この新機能を初めて指摘したのはChris Messina(クリス・メッシーナ)氏で、Discover機能の動作を動画でツイートした。同氏はこの機能について、ミュージックビデオを表示するTikTok風フィードの「簡略版」と表現している。

メッシーナ氏はTechCrunchに対し、SpotifyのTestFlight版(iOS用のベータ版)でこの機能を見つけたと語った。ナビゲーションバーに新しいアイコンがあり、タップするとすぐにビデオのフィードが表示されるという。上下にスワイプしてフィードを移動する操作がTikTokによく似ている。さらにハートをタップして曲をお気に入りにしたり、3つの点のアイコンをタップして標準で使われている曲の情報画面を表示したりすることができると同氏は説明した。

同氏は、この機能はSpotifyに以前からあるCanvasのフォーマットを活用しているのだろうと推測している。

2019年に広く導入されたCanvasは、Spotifyアプリで曲とともに表示されるビデオをアーティストが設定できる機能だ。この機能にはユーザーからさまざまな意見がある。音楽を聴くときは静止画のアルバムアートワークだけが表示されている方が好ましくビデオがループしているのは邪魔だという人がいる一方で、ビデオのループが好きだという人もいる。ともあれCanvasはSpotifyが狙っていた効果をあげているようで、同社はユーザーがCanvasを見ているとストリーミングを継続し、曲を共有したり保存したりする傾向が強いと発表している。

メッシーナ氏が共有したビデオやそれ以外に我々が見たビデオから、縦方向のフィードで再生されているのは既存のCanvasビデオであることが確認できた。しかしSpotifyはこれに関してはっきりとは認めなかった。

TechCrunchはSpotifyに対し、この機能を広く公開する予定があるか、iOSとAndroidの両方で利用できるか、どのマーケットで利用できるかなどの詳細を問い合わせた。Spotifyは詳細を明らかにしなかったが、縦方向のビデオフィードのアイデアを試していることは認めた。

同社は「Spotifyはユーザーエクスペリエンスを向上させるために常に多くのテストを実施しています。最終的にユーザーエクスペリエンスの幅を広げることにつながるテストもあれば、重要な研究として実施されるだけのテストもあります。現時点で共有できる情報は、これ以上はありません」と補足した。

つまり、このテストはごく初期のものであり、広く公開されない可能性がある。しかし広く公開されなかったとしても、Spotifyの動きとしては驚くにはあたらない。同社はこれまでもソーシャルメディアで人気のフォーマットに目を向けてユーザーを引きつけようとしてきた。インフルエンサーが自分で作ったプレイリストを投稿できるストーリーズ機能をテストしていたこともある。しかしこの機能はSpotifyの全ユーザーに公開されることはなかった。

TikTokのフォーマットは人気のソーシャルプラットフォームに取り入れられてきた。Instagramのリール、SnapchatのSpotlight、YouTubeショート、Pinterestのアイデアピンなどだ。コンテンツを見つけるのに理想的なフォーマットであることも証明されつつある。例えばNetflixは最近、縦方向の短尺ビデオフィードをアプリに取り入れ、Fast Laughs機能として公開した。これは同社のコンテンツライブラリからクリップを配信するもので、番組をウォッチリストに保存したりストリーミングをすぐに開始したりするツールとなっている。これと同様に動画をベースとしたSpotifyのDiscover機能も、おなじみのフォーマットでユーザーに新しい音楽を紹介し、ユーザーの関心をSpotifyに伝える役割を果たすかもしれない。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Netflixがストレンジャー・シングスやマーベル作品などの視覚効果を担当した独Scanline VFXを買収

Netflixが、ミュンヘンの視覚効果スタジオScanline VFXを買収た。買収の完了は規制当局の承認とその他の条件により2022年の第1四半期を予定しているが、買収の価額は公表されていない。Scanlineはこれまで「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」や「Cowboy Bebop(カウボーイビバップ)」など、Netflixのオリジナル作品をいくつか手がけている。また同スタジオはMarvelとDCの多くの作品にも特殊効果を提供している。

1989年に創業されたScanlineは、バンクーバーとモントリオール、ロサンゼルス、ロンドン、ミュンヘン、シュトゥットガルトにオフィスを持つ。同社は「Stranger Things 4」「Blood Red Sky(ブラッド・レッド・スカイ)」「Slumberland」「The Gray Man(グレイマン)」「The Adam Project(アダム&アダム)」そして「 Don’t Look Up(ドント・ルック・アップ)」といったNetflix作品を手がけている。Netflix以外では同社は「Game of Thrones(ゲーム・オブ・スローンズ)」や「Black Widow(ブラック・ウィドウ)」「Black Panther(ブラックパンサー)」「Captain Marvel(キャプテン・マーベル)」「Iron Man 3(アイアンマン3)」「キャプテン・アメリカ / ザ・ウィンター・ソルジャー」「Zack Snyder’s Justice League(ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット)」「Joker(ジョーカー)」などなどに特殊効果を提供している。

今後のプロジェクトとしては、Scanlineは「The Batman(ザ・バットマン-)」「The Flash(フラッシュ)」「Aquaman and the Lost Kingdom(アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム)」「Black Adam(ブラックアダム)」「Moonfall(ムーンフォール)」などに関わっている。Netflixによると、今後もScanlineは独立の企業体を維持し、今のクライアントの仕事も行っていく。

Netflixのスタジオ運用担当副社長Amy Reinhard(エイミー・ラインハルト)氏によると、Scanlineはその複雑でフォトリアリスティックな効果と、バーチャルプロダクションにおける専門的技能で知られている。ラインハルト氏のブログ記事によると、NetflixはScanlineのパイプラインとインフラストラクチャとワークフォースに投資して、ScanlineのEyeline Studiosがバーチャルプロダクションにおいて「視覚が為しうることの限界を押し広げようとしている営為を継続してサポートしていく」という。

ラインハルト氏はさらに続けて「弊社のVFXのニーズに関しては世界中の他の多くのスタジオにも依存を続け、弊社のクリエイターたちが世界でもっとも革新的な技術にアクセスできる状態を維持したい。そしてそれにより、弊社の会員のみなさまに、最先端のすばらしい物語をこれからも引き続きお届けしたい」と述べている。

NetflixによるScanlineの買収は、このストリーミング大手がますますプロダクションの内製化に力を入れようとしている間に行われた。2018年にNetflixはAlbuquerque Studiosを買収し、2020年は自社プロダクションへの支出をさらに増やして、すでに巨大なスタジオの300エーカーの増築に10億ドル(約1148億円)を投資すると発表した。その投資とさらに1億5000万ドル(約172億円)の資本支出により、新しいステージを10、ポストプロダクションサービス、大道具等工場、野外撮影所、訓練施設、衣装部、食堂喫茶などが増設される。

そして同社は最近では、ゲームスタジオまで買い上げた。それは9月に買収したNight School Studioだ。このインディーのゲームデベロッパーは「Oxenfree」のような物語性のあるゲームで知られ、Disney Interactiveの元シニアゲームデザイナーSean Krankel(ショーン・クランケル)氏と、Telltale GamesのリードライターだったAdam Hines(アダム・ハインズAdamuhainzu)氏により2014年に創業された。

画像クレジット:Sam Wasson/Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Spotifyが教育番組「EDUCAST 熱中大学」配信、国内オリジナル番組として初の「ビデオポッドキャスト」形式導入

Spotifyが教育番組「EDUCAST 熱中大学」配信、国内オリジナル番組として初の「ビデオポッドキャスト」形式導入

Spotify

Spotifyは11月15日、その道のプロフェッショナルとして第一線で活躍するZ世代のクリエイターやインフルエンサーたちに、技術やノウハウ、独自の人生哲学などを学ぶ、講義形式のオリジナル教育ポッドキャスト番組「EDUCAST 熱中大学」の配信を開始しました。番組は日本テレビとの協業で作成されているとのこと。

EDUCAST 熱中大学は、国内オリジナル番組として初めて、ビデオポッドキャストのフォーマットを採用したのも特徴です。通常、ポッドキャストは音声のみですが、ビデオポッドキャストは映像も配信。動画コンテンツとしても利用できるというもの。とはいえ、音声がメインであることに変わりはなく、映像を見ずに音声のみでも番組として成立しています。

ビデオポッドキャストは、海外では2020年7月からサポートされているものですが、視覚情報を伴うことで、クリエイターをより身近に感じられると好評を得ているとのことです。

なお、EDUCAST 熱中大学は、Spotifyが提供する音声コンテンツ制作ツールAnchorを利用しており、Anchorに実装されているQ&A機能や投票機能を活用し、リスナーから各エピソードで最も印象に残った言葉を募集するとのこと。

各回3エピソードずつ、隔週月曜日の18時ごろに配信を行うとしています。

(Source:PR TimesSpotifyEngadget日本版より転載)

ビジネス動画編集クラウドVideo BRAINが視聴分析含む動画配信機能追加、作成した動画を自社サイトなどに埋め込み可能に

オープンエイトは11月15日、クラウド型ビジネス動画編集「Video BRAIN」(ビデオブレイン)に、作成した動画を自社サイトなどへ表示させることができる配信機能と視聴回数や平均視聴時間などが分析できる機能をリリースした。

Video BRAINは、AIのサポートにより誰でも簡単にストーリー性のある動画を制作できるクラウドサービス。今回追加された機能により、Video BRAIN上で発行されたHTML埋め込みタグを自社サイトなどに貼り付けるだけで動画プレイヤーが設置できるようになり、閲覧者側は再生ボタンをタップするだけで視聴可能となる。動画投稿サイトの埋め込み動画とは違い、広告が表示されたり、関係のない動画がリコメンド表示されたりといったことはない。動画ファイルはVideo BRAIN側のセキュアな環境で保存されるため、動画コンテンツを保存しておくストレージや配信用のサーバーを用意する必要もない。

また、SNS投稿・分析サービス「Insight BRAIN」が動画視聴分析にも対応。HTML埋め込みタグを利用し公開した動画や公開用URLにより発行した動画に関して、視聴回数や平均視聴時間など視聴に関するKPIがリアルタイムに可視化および分析可能になった。分析情報は、CSV形式ファイルとして書き出し可能。

これら機能による配信と分析の利用イメージとしては、自社サイトでの動画版プレスリリース公開、またメディア側にHTML埋め込みタグを送付し記事内に貼り付けてもらうなどを挙げている。採用向けHRコンテンツ、オンラインイベント向け資料動画、マニュアル動画などの配布と視聴ログ計測などにも活用できるという。

2015年4月設立のオープンエイトは、「AI × SaaSであらゆる企業の情報流通戦略の成長ドライバーとなる」ことをコンセプトとするコンテンツテクノロジーカンパニー。動画広告事業および動画メディア事業で培った動画コンテンツ制作・配信ノウハウとAI技術を組み合わせ、Video BRAINやInsight BRAINを開発した。また、自然言語処理とコンピュータービジョンを中心とする独自のAI技術を有し、「OPEN8 CORE TECHNOLOGY」としてアルゴリズム・ソフトウェアモジュール群をAPIの体裁で提供している。