衛星燃料補給技術のOrbitFabが米国立科学財団から資金を獲得

軌道上の衛星燃料補給技術の実用化が、これまでになく現実的なものとなってきた。この技術は軌道上ビジネスのコストと持続可能性の改善に非常に役立つものだ。 2019年のTechCrunch Battlefieldファイナリストである、スタートアップのOrbitFab(オービットファブ)は、軌道上での燃料補給を実現するために取り組んでいる企業の1つである。このたび米国立科学財団(NSF)の初期ステージ高度技術R&D推進組織であるAmerica’s Seed Fundと、その目標へ向かうための新たな契約を結んだ。

この契約が目的としているのは、2つの宇宙船を接続して燃料を送り込むエンドツーエンドのプロセスを管理するために、宇宙でのランデブーおよびドッキング機能を提供するソリューションの開発だ。OrbitFabは2019年10月に開催されたDisruptで、これを可能にするためのコネクタハードウェアを発表している。現在そのハードウェアはRapidly Attachable Fluid Transfer Interface (RAFTI、迅速着脱可能燃料移送インターフェイス)という名前で呼ばれている。RAFTIは、燃料である推進剤を供給および排出するために衛星で使用されている既存のバルブに代わるものとして設計されている。その狙いは、地上での燃料補給と宇宙での燃料補給(あるいは必要に応じて1つの衛星から別の衛星への移送)の互換性を提供できる、新しい標準を確立することだ。

OrbitFabは既に、国際宇宙ステーション(ISS)まで2度飛行することに成功し、2019年には軌道上実験室に水を供給した最初の民間企業となった。同社は栄光に満足することはない、今回の新しい契約は、2020年夏に同社の試験施設で行われる予定のRAFTIのドッキング技術実証の準備に役立つだろう。

長期的には、これはNSFと結ぶ複数年契約の第1段階(フェーズ1)に過ぎない。フェーズ1に含まれるのは、最初のデモを行うための25万ドル(約2690万円)であり、このデモは最終的には宇宙で行う燃料販売ビジネスの最初の試行につながる。OrbitFabのCMOであるJeremy Schiel(ジェレミー・シエル)氏によればそれは「2年以内」に行われるということだ。

「この試行には2つの人工衛星、すなわち私たちのタンカー(補給衛星)と顧客の衛星が必要です。低地球軌道(LEO)でドッキング、燃料交換、デカップリングを行い、私たちの能力を実証できるまでこのプロセスを何度でも繰り返します」と彼はメールで述べている。

これまで軌道上燃料補給に関する多くの技術プロジェクトとデモンストレーションが行われてきており、業界最大の企業の中にもこの課題に取り組むものがいる。しかし、OrbitFabのアプローチは、衛星の大小や企業の違いを乗り越えて活用できる共通標準を提案することで、シンプルさと実現の容易さを目指している。RAFTIを広く採用されるインターフェースにするために、OrbitFabは既に30の異なるプロジェクトや組織と協力していると述べている。

これが成功すれば、OrbitFabは将来の軌道上の商業的な運用環境を支えることができるようになるだろう。宇宙船が軌道上に達したあとは、そこを周回する燃料ステーションが宇宙船からの需要に応えることができるため、燃料は打ち上げコストにおいてほとんど気にならなくなり、燃料を個別価格ではなくバルク価格で購入することができるようになる。

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(翻訳:sako)

SpaceXの有人運用1号機にJAXAの野口聡一宇宙飛行士が搭乗

SpaceXは宇宙飛行士が搭乗する最初のフライトDemo-2の準備に取り組んでいる。厳密にいうと、これはCrew Dragonカプセルが正規ミッションとして飛行開始することが正式に認可される前に必要とされる最後のデモミッションとなる。

画像クレジット:SpaceX

Demo-2ミッションの範囲は多少調整され、宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンキン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏が、国際宇宙ステーションで実際にシフト任務を行うことになった。それでもCrew-1が、SpaceXの有人型宇宙船の公式な最初の運用ミッションであることに違いはない。今回、そこに誰が搭乗することになるのか、さらに詳しい情報を得ることができた。

日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、JAXA所属の宇宙飛行士、野口聡一氏がCrew Dragonミッションが正式に運用を開始し次第、その1号機に搭乗すると発表した。またJAXAは3月31日に、野口氏がISSに向かうためのトレーニングを開始したことも明らかにしている。同氏はこれまでに2回、別のミッションでISSに滞在した経験を持つ。最近ではロシアのソユーズで宇宙に向かい、2009年から2010年にかけて滞在した。それ以前にも2005年にはスペースシャトル・ディスカバリーに搭乗し、宇宙ステーションの組み立てに携わっている。

SpaceXとNASAは現在、Demo-1を準備している。すでに報じられているようにDemo-1には、2人のNASAの宇宙飛行士が搭乗する。現在の計画からスケジュールに変更がなければ、5月中旬から下旬には発射される予定だ。それが成功すれば、乗組員4人を運ぶことができるCrew-1のミッションが、2020年の後半には開始される予定となっている。

Crew-1には野口さんのほか、NASAの宇宙飛行士としてMike Hopkins(マイク・ホプキンス)、Victor Glover(ビクター・グローバー)の両氏、そしてNASAが米国時間3月31日にチームの新メンバーとして発表したShannon Walker(シャノン・ウォーカー)氏が搭乗することになる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

SpaceX Starshipのマニュアルが語るスペースシャトルの後継機となり快適な宇宙旅行を提供できる理由

SpaceX(スペースエックス)は、テキサス州ボカチカで建造を進めている次世代のロケットStarshipの、宇宙船ユーザーマニュアル初版を発表した。このマニュアルはすでに運用中のSpaceXの他のロケットのものほど詳細ではないが、例えば大容量の貨物船としてStarshipをどのように活用したいか、または人を運ぶ宇宙ライナーとして比較的豪華であるとされる理由など、いくつもの興味深い内容が含まれている。

Starshipは静止通信衛星を一度に3基まで同時に運ぶことができ、衛星コンステレーション全体を1回で展開できる。あるいは静止衛星を1基か2基搭載して、余った空間を使って小型衛星の正式な相乗りミッションに利用することも可能だ。現在使用できる手段と比較して、1回のフライトでたくさんのミッションに対応できることは、運用上の費用という面で大変な助けになる。

SpaceXが提案するStarshipのもうひとつの利用法に「宇宙空間で実験を行う宇宙船」の運搬がある。Starshipに宇宙船を搭載したまま一体となって実験やミッションを遂行して、地球に戻ってくるというものだ。事実上これは、Starshipを国際宇宙ステーションのような宇宙研究所プラットフォームにするものだが、宇宙ステーションと違い自力で飛行し帰還する能力を有する。

SpaceXではまた、Starshipは本来のペイロード・アダプターの他に、側壁やノーズにもペイロードを搭載できるようになるという。かつてスペースシャトルにも類似の機能があった。さらにスペースシャトルと同様に、Starshipは軌道上の衛星の回収して必要に応じて軌道上で修理したり、地球に持ち帰ったり、別の軌道に投入したりもできるとSpaceXはいう。これは、現在運用中のどのロケットも成し得ないことだ。

Starshipに人を乗せる場合の設備に関する提案もあった。SpaceXでは100人もの人間を地球低軌道に、さらには月や火星に運ぶことができると説明している。船内設備には「プライベートな客室、広い共有エリア、集中型倉庫、太陽風シェルター、展望ギャラリー」などが考えられると資料には記されている。SpaceXはまた、地点間の移動という用途を特に強調していた。つまり、地球上のある宇宙港から別の宇宙港への移動だが、近宇宙を通過することにより大幅に移動時間を短縮できるということだ。

最後に、小さいながらおもしろい話がある。SpaceXは、打ち上げをフロリダ州のケネディ宇宙センターとテキサス州ボカチカの両方で行い、着陸もその両地点で行われる可能性があるという。複数のSpaceshipが完成して性能が実証され、実際にフライトが始まった際には、運用の頻度が高まるというわけだ。

SpaceXのStarship SN3は、現在ボカチカで建造中だ。エンジンの地上燃焼試験のために、すでに打ち上げ台に運ばれている。SpaceXは2020年末の高高度飛行テストに間に合わせようと、プロトタイプの改善ペースを速めている。そしてゆくゆくはStarshipとSuper Heavy(スーパーヘビー)ロケットブースターも、完全に再利用可能な宇宙船を目指して開発したいと考えている。

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(翻訳:金井哲夫)

新型の超音速飛行機2機種とスペースプレーンをStratolaunchが発表

航空機を高高度で空中発射させるスタートアップStratolaunch(ストラトローンチ)は、いくつかの変遷を経験しつつも、3月30日、超音速飛行機2機種とスペースプレーン1機種の詳細なデザインを公開した。どちらも同社の航空母機から発射される。すべて計画通りに進めば、試験飛行は、この3つのうちいちばん早いもので2022年に始まる。そこまでの資金は十分にあると同社は話している。

Stratolaunchは、もともと2011年にMicrosoftの共同創設者Paul Allen(ポール・アレン)氏によって設立された。アレン氏は惜しくも2019年に亡くなり、現在この会社は、Steve Feinberg(スティーブ・フェインバーグ)氏率いる投資家グループによって運営されている。だが新しい経営陣も、大気圏を飛ぶ超音速飛行機を開発するという設立当初と変わらない目標を掲げている。

3月30日の月曜日、同社はそのミッションを拡大し、貨物も人も運べる新型スペースプレーンによる宇宙飛行に進出することを発表した。機体は完全に再利用可能。つまり、貨物を搭載して通常の滑走路で離着陸できる能力を有していることを意味している。

だが、Stratolaunchの最初の目標は、超音速自動航行飛行機Talon A(タロンA)を実現させることだ。こちらもまた完全に再利用可能なタロンAは、全長はおよそ28フィート(約8.5メートル)、翼長は11.3フィート(約3.4メートル)。1分間以上の超音速モードで飛行し、自動航行により通常の滑走路に着陸させることを目的とした実験機だ。Stratolaunchの航空母機から発射できるが、通常の飛行機と同じように、滑走路から自動航行での離陸もできるよう設計されている。

この飛行機の第1の目的は、さまざまな機器を搭載して超音速飛行中のデータを収集するテストベッドになることだ。これまでシミュレーションでしか得られなかった状況を現実に体験する、事実上の実験室となる。Stratolaunchの航空母機からは、最大で同時に3機のタロンAを発射できる。

より大型の超音速機Talon Z(タロンZ)については、その性能と目的に関する詳細は明かされなかった。スペースプレーンBlack Ice(ブラックアイス)も、軌道上での実験手段を求める顧客にその機会を提供することが主な目的のようだ。だが、貨物の積載量と、将来的に人を乗せる場合の搭乗員数を考えると、実際に地球軌道上での運輸業に適している。さらに衛星配備の能力も備えていそうだ。

Stratolaunchのブラックアイスを使った取り組みは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)とVirgin Orbit(バージン・オービット)が行おうとしている商用有人宇宙飛行と小型衛星の運搬に近いものがある。この2つのVirgin系企業も、通常の滑走路から離陸する航空母機から宇宙船を発射する方式だが、開発計画はずっと先を行っている。Stratolaunchも、航空母機の最初の試験飛行を2019年に成功させた。彼らは、2023年のタロンAによる商用サービス開始を目指している。

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(翻訳:金井哲夫)

米宇宙軍のスペース・フェンス衛星追跡システムが正式運用開始

米国宇宙軍は新しい軍だが、そのリソースの中にはすでに稼働しているものがある。USSF(米国宇宙軍)は先週後半、スペース・フェンスと呼ばれるレーダーシステムが正式に運用可能になったことを発表した。ちょっと奇抜な呼び方だが「スペース・フェンス」というのが間違いなく正式な名称だ。スペース・フェンスはレーダーシステムで商用衛星、軍事衛星、宇宙ゴミなど軌道上の物体を精密にモニターする。

スペース・フェンスの主要システムは太平洋のマーシャル諸島にあるクェゼリン環礁に置かれ、現在、「初期運用・システム受け入れ」の段階にある。現行の宇宙監視ネットワーク(SSN)は2万6000個の軌道上物体を追跡しているが、新しいスペース・フェンスは独自の機能追加によりSSNのモニター能力を大きく拡大するとUSSFは期待している。

地球低軌道上の物体を詳細に追跡するためにロッキード・マーティンが開発したレーダーシステムは、最終的にはビー玉サイズの物体を認識できるようになるという。このレベルの観測能力があれば、軌道上にあるほとんどの物体のカタログを作ることができる。これには観測衛星、通信生成、軍事衛星(可能なものも含む)などあらゆる軌道上のアイテムが含まれるはずだ。

状況を正確に把握することは、軍にとって作戦を成功させるためのカギとなる。スペース・フェンスが正式に稼働することは宇宙軍にとって大きな一歩となる。先週、宇宙軍として最初の衛星打ち上げが行われた。これは米国軍の作戦にミリ波帯域で安全性の高いコミュニケーションを提供する先進EHF通信衛星システムを構成する衛星の6基目だった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ドイツ航空宇宙センターが3Dプリントのリソースを医療機器生産に転換

ドイツ版NASAに相当するDLR(ドイツ航空宇宙センター)は、COVID-19こと新型コロナウイルス感染症の治療で使用される、最前線の医療従事者が使用する個人用保護具(PPE)の世界的な不足をサポートする。DLRは通常、航空宇宙グレードの部品生産に使用されるオンサイトの3Dプリンターを、保護マスクや人工呼吸器を含む、医療機器の生産に転換する試験に成功したと発表した。

世界中でさまざまな種類の部品や機器が必要とされているが、他の選択肢がないという理由だけで、理想的とほど遠く必ずしも行政機関に使用が承認されているわけではないソリューションを医療従事者は検討している。DLRはSytemhaus Technikのエンジニアリングおよび生産グループと連携して何ができるかを調査し、世界的な機器不足に対処するために活動しているグループによって作成された個人用保護具のテンプレートを含む、無料でオープンなリソースを活用する。

DLRの装置は保健機関から医療用途での使用を認められており、また同宇宙機関とSystemhaus Technikは、他の機関や科学/研究機関と知見やノウハウを共有し、それぞれのリソースを活用して同等の生産能力を獲得することを目指している。

これまでのところDLRは「1日に最大10個の防護マスクと15個の人工呼吸器用バルブを生産できる」としているが、今後は生産量と生産率を引き上げられる施設ネットワークの構築に取り組みたいと述べている。

この3Dプリント装置が世界的に必要とされているのは、物資リソースが足りないのはもちろんだが、より重要なのは、同様の3Dプリント装置で同じことを行うために開発された知識を共有することかもしれない。他の生産環境でも再現可能で、医療レベルの要件を満たすソリューションの開発に航空宇宙技術者を投入することは、新型コロナウイルスのパンデミックのため、高度な治療を必要とする患者が世界中の医療機関に流入する中、最終的に多くの人命を救うことにつながるかもしれない。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAのルナ・ゲートウェイ宇宙ステーションへSpaceXの新型DragonXL宇宙船が物資を輸送

NASAは3月27日、ルナ・ゲートウェイへの機器の材料、貨物、補給品の輸送を請け負う初の宇宙物流企業としてSpaceX(スペースエックス)を選定したことを発表した。つまりSpaceXは、月軌道を周回して、将来の有人月面ミッションの基地となるプラットフォームと地球との間を往復して物資を輸送する必要が生じたときに、NASAが業務を発注する企業のひとつに加えられたわけだ。

今回の契約により、SpaceXは事実上、月に人類を常駐させる科学調査基地の設置を目指すNASAのアルテミス計画で重要な役割を果たすだけでなく、さらに火星へと足を伸ばそうとするNASAの計画にも参加できることになった。ゲートウェイの建設はこれからだが、NASAでは新しい専用の宇宙船でゲートウェイに貨物を運搬し、6カ月から12カ月滞在するというミッションを複数計画している。

トータルの契約金は、契約全体で最大70億ドル(約7500億円)に達し、1つの企業につき少なくとも2つのミッションが保証される。他の企業もこれから指名されるはずだが、SpaceXは契約に基づいて選定された最初の企業となった。なお同社は、地球の軌道を回る国際宇宙ステーションへ同社のDragon(ドラゴン)輸送船を使った通常の物資の輸送については契約済みだ。

SpaceXは、このミッションに使用する予定のDragon宇宙船の派生型DragonXLを打ち上げることにしている。DragonXLは、月の軌道を回るゲートウェイ宇宙ステーションに5トン以上の物資を輸送できる。打ち上げには、SpaceXが保有しているFalcon Heavy(ファルコン・ヘビー)ロケットが使われる。

実際に最初のミッションが打ち上げられるまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。最初のゲートウェイ用モジュールを載せて打ち上げられるのが早ければ2022年となっているものの、ゲートウェイがある程度のかたちになり定期的な貨物輸送が始まるのは、そこからほんの数年後だろう。

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(翻訳:金井哲夫)

ロケット打ち上げスタートアップのSkyroraは消毒液とマスクの生産に注力

Skyroraは、実際にペイロードを軌道上に運ぶ稀有な民間打ち上げスタートアップの仲間入りを目指している新しい企業の1つだ。しかし今、英国内の製造能力のすべてを、COVID-19対応に集中させることにした。スコットランドのエジンバラに拠点を置くSkyroraは、英国政府やNHS(英国民医療サービス)からの製造業者への呼びかけに応じて、できる限りのことをすることにした。新型コロナウイルス危機と最前線で戦っている人たちのために、切望されている医療用品を供給するのだ。

Skyroraryによれば、英国にある事業全体つまりすべての人的資源と運転資金を現在はCOVID-19対応に向けているという。同社は2017年に設立され、最初の宇宙船の試験飛行に向けて活動していた。この2月にはより環境にやさしい実験的なロケット燃料を使った初期のエンジンテストに成功したばかりだった。

しかし現時点、Skyroraは手指消毒液の製造に注力することにした。これが同社としてCOVID-19対応をサポートする初の仕事となる。すでにWHOのガイドラインと要件に沿って最初のバッチを生産している。現在、1週間あたり250mlボトルで1万本以上を製造できるよう生産活動拡大を目指している。

実際のところ、ロケット工学と手指消毒液の間にはかなり密接な関係がある。消毒液の基本的な殺菌成分はエタノールだ。これはアルコールの一種で、初期のロケット燃料に使用されていた。ただしSkyroraの「Ecosene」燃料は灯油の一種で、現在の航空機やロケットの燃料としてかなり一般的に使われているものとなる。

Skyroraは消毒液だけでなく3Dプリンターで作った保護用フェイスマスクが、医療従事者の安全確保に貢献できる可能性についてスコットランド政府と協議している。現在、初期のプロトタイプのテスト中だ。効果が確認できれば、この保護器具を大量生産することを検討している。

多くの企業が、自社の生産ラインと製造能力を最も需要のある領域にシフトするなど、可能な範囲で努力している。今は間違いなく「総動員」が求められる時期だ。とはいえ、注力する分野をここまで大きく変更した企業に、今回のような緊急事態が過ぎたとき、いったい何が起こるのかという疑問もある。特に新しい分野の若いスタートアップにとっては、深刻な問題だろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ソフトバンクなどからの追加資金を確保できずOneWebが破産を申請

TechCrunchが得た情報によると、衛星コンステレーションによるブロードバンド事業者のOneWebは、米国時間3月27日にも、米国で破産保護の申請を行うことになる。既存の投資家であるソフトバンクからも含めて、新たな資金の確保に失敗した結果だ。Financial Timesも、独自の複数の情報源に基づき、同社が資金確保に失敗したことを、同日レポートしている。TechCrunchの情報源によれば、OneWebは、ほとんどの社員をレイオフすることにしており、1つのチームだけを残して、すでに打ち上げて宇宙空間にある衛星の運用を続けるという。

OneWebは、今回の報道についてプレスリリースで認めた。それによると「COVID-19の拡散による市場の混乱」が、資金確保失敗の原因だったという。「私たちは、あらゆる場所であらゆる人たちをつなぐという私たちの使命の、社会的および経済的な価値を確信し続けています」と同社CEOのAdrian Steckel(エイドリアン・ステッケル)氏は述べている。

OneWebは、2012年にWorldVu Satellitesという名前で創立。ブロードバンドインターネットを実現する低軌道衛星コンステレーションの構築を目指していた。それにより、現状の地上のネットワークではカバーしきれないような遠隔地や、アクセスが難しい地域も含めて、地上のユーザーに安価なインターネット接続を提供しようというものだった。

2020年3月初め、BloombergはOneWebが他の選択肢も検討しつつ、破産保護の申請を検討していることをレポートしていた。他の選択肢の1つというのは、新たな資金調達ラウンドのことだ。およそ20億ドル(約2158億円)の確保を目標としていた。同社はこれまでに、複数のラウンドを通して合計30億ドル(約3237億円)を調達している。2019年と2016年に、それぞれ13億ドル(約1403億円)と12億ドル(約1295億円)のラウンドを実現していた。どちらも主要な投資家はソフトバンクグループだった。

OneWebは、3月の初めに打ち上げを成功させ、軌道上にある衛星の総数を74としていた。その後同社は、先週のTechCrunchの記事でレポートしているように、レイオフによって人員の数を10%ほど削減していた。

この最新の動きは、OneWebが現金を確保し続けるために、他のすべてのオプションを使い尽くしてしまったことを基本的に示すものだ。実際、計画していたような頻繁な打ち上げペースを維持するには、相当な準備金を必要としていた。その計画では最終的に650以上の衛星を打ち上げて、地球全域をカバーできるサービスを提供することになっていた。ソフトバンクが投資家として身を引くと、埋め合わせが難しい大きな穴を残してしまうことになる。WeWorkなど巨額の投資額に対して得られるリターンが少なく同社に苦境をもたらしている案件もあるため、ソフトバンクは実際に、いくつかの注目度の高い投資から身を引こうとしている。

OneWebの資金繰りの厳しさに、進行中の新型コロナウイルスのパンデミックに揺れる世界情勢が追い打ちをかけた形だ。複数のレポートによると、少なくとも一部の投資家は、より保守的なアプローチをとっているという。伝統的な手段によって、より多くの投資を確保することは、これまでよりもずっと実現困難になっているという指摘もある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ULA初の米宇宙軍向けロケット打ち上げをライブ配信

United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)は米国時間3月26日のミッションで、米宇宙軍のために特別な機密通信衛星を打ち上げる。これは昨年正式に発足した米軍の新たな宇宙部門で、現政権は宇宙における米国の資産を適切に保護する必要性が高まっていると主張している。

打ち上げはフロリダ州ケープ・カナベラルから実施され、打ち上げ時刻は米国東部夏時間で午後2時57分(日本時間3月27日午前3時57分)に設定されている。衛星を搭載するロケットはアトラスVで、3月26日の朝の時点では天候やシステムチェックの結果に問題はなかった。

これは、米軍向けに打ち上げられる6機目の超高周波(AEHF)衛星だが、宇宙軍が正式に発足したのはつい昨年なので、これまでの5機はすべて米空軍のもとに配備されている。最初の5機の衛星は2010年から2019年の間に打ち上げられ、6機の衛星は連携して空、陸、海を越えた軍事作戦にセキュアな通信機能を提供する、コンステレーションを形成することになる。

これはアトラスVにとって83回目の打ち上げとなり、この機体構成では11回目の打ち上げとなる。ULAはBoeing(ボーイング)とLockheed Martin(ロッキード・マーチン)が共同で設立した合弁会社で、現在のミッション成功率は100%となり、これまでに133回の打ち上げを実施している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXが新型コロナによる初の打ち上げ延期を発表

これまでSpaceX(スペースエックス)は、新型コロナの世界的蔓延にもかかわらず打上げスケジュールが大きく影響されたことがなかった。先週同社は、人工衛星Starlink(スターリンク))60基の追加上げに成功し、5月下旬に予定されているNASAの商用有人飛行ミッション(前回の打上げでエンジンが早期停止した原因を調査中)は順調に進んでいると見られていた。

しかし米国時間3月24日、米空軍第45宇宙航空団(45 th Space Wing)は、3月30日にFalcon 9ロケットを用いてカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地から発射される予定だったSpaceXの来たるべきSAOCOM(アルゼンチンの地球観測衛星)の打ち上げが、現在進行中の新型コロナ危機の影響を受け、「無期」延期されたことを正式に発表した。空軍基地があるヴァンデンバーグ市は先週末に公衆衛生緊急事態を宣言し、これまで新型コロナ感染が確認された事例はないものの、空軍は基地への入場を必須要員に限定し、必要最小限のサービスしか提供しないほか、現地に残らなくてはならない人々の保護と安全のために追加の予防措置を講じている。

SpaceXの打ち上げスケジュールが、新型コロナ・パンデミックの影響を受けることは不可避だった。NASAは、宇宙探査宇宙船アルテミスの開発やJames Webb(ジェームズ・ウェッブ)望遠鏡プロジェクトなど進行中の重要ミッションの一部を停止している。現在も有人宇宙飛行に向けた作業を進めつつ、NASAは職員と公衆の安全を確保するための基準引き上げについて頻繁に情報を更新しているので、進展があれば追って報じる予定だ。

画像クレジット:SpaceX

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンクが出資するOneWebが新型コロナで苦境に立ちレイオフ実施を確認

今週に入って、TechCrunchは、衛星通信を提供するOneWebが社員を最大で10%削減したという情報を得た。

同社はTechCrunchの取材に対し、現在の運営状況を説明し、レイオフによって人員削減を実施していることを確認した。 ただしレイオフの総人数は明らかにされなかった。声明はこのコスト削減の理由として、新型コロナウイルスのパンデミックによる混乱が世界経済におよぼす影響を挙げている。

以下はOneWebの広報担当者がTechcrunchに提供した声明の全文だ。

「OneWebの衛星打ち上げは3月21日土曜日に予定されており、その後2020年中にさらに打ち上げが続く。しかしながら、他社同様、我々も世界的な健康および経済に関する危機の影響を受けており、社員数もこれに応じて弾力的に調整する必要が生じた。世界的な輸送制限の強化とサプライチェーンの混乱により、衛星の打ち上げならびに衛星製造のスケジュールに遅れが出ることは残念ながら避けられない見通しとなった。このため主要事業に注力するために、いくつかの付帯的事業の運営を断念するという困難な決定を余儀なくされた。この措置を取らざるを得なかったことを遺憾に思っており、影響を受けた人々をサポートするためにできる限りのことを行っているところだ」

3月19日に、BloombergはOneWebが財政的苦境に対する1つの方法として破産申請を検討しているという記事を発表し、ソフトバンクが過去2回のラウンドで30億ドル(約3329億円)近くをOneWebに投じていると付け加えた。2019年に、TechCrunchもOneWeに対するSoftBankの大型投資を報じている。

ソフトバンクが出資する大型スタートアップのいくつかは最近、大きな困難に直面している。この苦境をもたらした大きな原因のひとつはコワーキングスペースのWeWorkが派手な転倒を演じたことだろう。OneWebは報じられた破産の検討についてはコメントしなかった。

Bloombergの記事はOneWebは運営を継続するために破産申請以外の選択肢も検討しているとしている。 しかし同社が運用コストをまかなう資金の調達で大きな課題に直面しているのは事実だ。引用したの声明にもあるとおり、OneWebは3月21日にカザフスタンからソユーズロケットで衛星34基の打ち上げを予定している。これにより、2020年初めに打ち上げられた34基と、2019年3月に打ち上げた6基を合計して74基の衛星群を運用することになる。

OneWebは、低軌道を周回する衛星を使用して広帯域幅通信サービスを提供することを目的としており、農村部その他、地上ネットワークではアクセスが困難な地域をカバーすることに重点を置いていまる。SpaceXなどが主要なライバルだ。SpaceXはすでにStarlinkでミニ衛星302基を打ち上げている。まだ実機を打ち上げていないものの、AmazonにもProject Kuiperという同様の計画がある。

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滑川海彦@Facebook

NASAとSpaceXは新型コロナに屈せず、5月中旬から下旬に初の有人打ち上げを予定

NASAとSpaceXは3月18日、商用有人打ち上げDemonstration Mission 2(Demo2、デモンストレーション・ミッション2)のメディア認定招待状を発送した。商用有人計画で初めて、人を宇宙に送り込むミッションだ。この招待状には現在公表されているスケジュールが記されているが「5月中旬から下旬より早くなることない」という。

今年の初め、打ち上げウィンドウは5月に決定したが、宇宙船と乗員の準備の進捗に応じてSpaceXとNASAは、早ければ4月、遅ければ6月下旬に変更する可能性があると伝えていた。SpaceXは、このミッションで使用するCrew Dragon(クルー・ドラゴン)の準備を早々と整えているとのことだが、NASAはこのデモミッションで国際宇宙ステーションに送られる飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏の宇宙滞在期間を延長するなど、ミッションの内容を変更した。

SpaceXの宇宙船で宇宙飛行士が打ち上げられるのは今回が初めてであり、商用有人計画で人を乗せて飛行するのも初めてとなる。これを通じてNASAは、民間のロケット打ち上げ企業と協力して、人を宇宙に送り込む能力を再び米国の国土に取り戻そうと頑張っている。現在、国際宇宙ステーションの行き帰りは、ロシア連邦宇宙局ロスコスモスとの協力関係により、すべてロシアのソユーズ宇宙船で行われている。

今のところNASAもSpaceXも、Crew Dragonによる初の有人ミッションの予定が、新型コロナウイルスのパンデミックによって変更される心配はしていないようだ。今回のNASAからの招待状は、現時点でミッションが健在であることがもっとも詳細にわかる確認証であり、打ち上げウィンドウまでの日程は、COVID-19の感染が米国で拡大し厳しい社会的距離の確保や隔離措置が実施される以前のものから変わっていない。

最近になってNASAは、すべての施設の有事対応段階を「ステージ3」に引き上げた。これにより、ミッション関連の仕事のために実際にオフィスに出向く必要のある人間を除き、すべての従業員がテレワークを要請される。NASAのエイムズ研究センターは、すでにステージ4にまで引き上げられた。同センターが位置するカリフォルニア州の郡政府から、自宅待機命令が出されているためだ。この命令により、施設は閉鎖されテレワークのみが許可される。

3月18日にメディア向けに発送された招待状でNASAは「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の状況を積極的に監視」し、「ミッションの進行やメディアの取材に影響する事態が発生した際には準備ができ次第、最新情報をお伝えします」と書かれている。さらにNASAは、ハーレー氏とベンケン氏の健康を維持するため、打ち上げ前に規定されている自宅隔離措置を実施しているが、それに加えて体調を崩さないよう特別な予防対策も講じているとも伝えている。

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(翻訳:金井哲夫)

欧州のロケット打ち上げは新型コロナですべて延期

数日前に3月下旬の打ち上げは予定通りとされていたが、Arianespace(アリアンスペース)は16日、フランス領ギアナにある欧州の宇宙基地、ギアナ宇宙センターでのオペレーションを一時停止するという難しい決断を下したと発表した。これには3月24日に予定されていた複数の衛星を打ち上げるヴェガロケットミッションや、4月14日に予定されていたソユーズロケットのファルコンアイミッションなどが含まれる。

Arianespaceは「フランス政府が決めた対策に完全に対応する必要があること」が、打ち上げ一時停止を決めた主な理由としている。同社はまた「従業員や(打ち上げ施設がある)地元の人々の健康を守る」ために今回の措置を取ったとした一方で、予定されている打ち上げの準備に必要なセキュリティは維持する。

シャットダウンし、そして安全に再開できる状況になったときにいつでも対応できるように、フランス国立宇宙研究センターは宇宙船と積荷をスタンバイモードにしておくために、Arianespace、そしてロケット打ち上げ側と荷主側のあらゆる企業と協力している。再開時期に関する情報はないが、現状を踏まえればそれは当然の措置だろう。

他国の宇宙当局やロケット打ち上げ企業はまだ特に影響は受けていないようだ。 SpaceXは3月15日に打ち上げを予定していたが、技術的な理由で中止になり、早ければ週半ばにも再設定されそうだ。一方、中国の長征ロケットは今日打ち上げが予定されている。そしてULA (ユニテッド・ローンチ・アライアンス)はSpace Force通信衛星の3月26日打ち上げに向けて予定通り準備を進めているようだ。

画像クレジット: Sergei SavostyanovTASS / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

SpaceXがエンジントラブルでStarlink衛星の6回目の打ち上げを中止

SpaceX(スペースX)は、衛星ブロードバンド計画ことStarlinkの第6弾を打ち上げる予定だったが、カウントダウンタイマーが0になるとともに打ち上げは中止された。打ち上げの生放送では、同社のエンジニアが「エンジン出力が高いので打ち上げを中止する」との報告を受けており、生放送をしていたアナウンサーもMerlinエンジンの出力に関連した中断であると述べ、同社は後にシーケンスがシステムによって自動的に中断されたとの追加の詳細を発表した。

アナウンサーは「機体の状態は良好だ」と発言し、SpaceXも後にこれを確認した。これは、次回の打ち上げに向けたいい兆候だ。同社は米国時間3月16日にバックアップのウィンドウを設けているが、実際の次の打ち上げスケジュールはまだ決まっていない。同社としてはエンジン出力の問題の原因を調査して特定し、その後に打ち上げを決定するのが理にかなっているだろう。

今回の打ち上げで使われるFalcon 9のブースターは記録的な5回目の飛行となり、ペイロードを保護するフェアリングは初めて再利用される。SpaceXは詳細が確認でき次第、最終的な打ち上げスケジュールを明かすとしており、TechCrunchも情報が得られ次第お伝えする予定だ。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

第36回スペース・シンポジウムは新型コロナウイルスの影響で開催延期に

米国時間3月30日から4月2日に開催される予定だった第36回Space Symposium(スペース・シンポジウム)は、新型コロナウイルス大流行の影響により、正式に延期された。新しい日程に関する予定は発表されておらず、Space Foundationの主催者は今後の日程について関係者と協力し、次のステップは「追加発表する」と伝えている。

コロラド州で開催されるこのイベントは宇宙業界、政府、そして一般の宇宙コミュニティの有力メンバーが一堂に会する宇宙に焦点が当たる最も重要なイベントになるだろう。今週初めに世界保健機関(WHO)によってパンデミックだと公式に定義されたCOVID-19こと新型コロナウイルス感染症の現状を考慮すると、イベントの延期は驚くものではない。

Space Symposiumがイベントを延期したのは当然の判断だが、主催者がリモート会議やバーチャル会議への変更ではなく、「スケジュール変更」を選択したのは興味深い。年に1回のイベントで得られるメリットの多くは、優秀な参加者同士が直接顔を合わせたり、偶然会うことで得られるもだ。そのような意味でも、今回の決定は最も理にかなっている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

NASAも新型コロナウイルスを考慮して宇宙飛行士の健康管理対策を強化

NASAは標準的なプロトコルとプロセスを補強して、最初の民間乗員宇宙飛行プログラムに参加する宇宙飛行士の健康管理を徹底しようとしている。COVID-19の可能性から保護するように設計された追加の対策を実施すると、Business Insiderが報じた。NASAの標準的な慣行では、すべての宇宙飛行士に対して、地上でのあらゆる病原体に感染する可能性を下げるよう、飛行に先立って対策が施されることになっている。そして現在、特に新型コロナウイルスのリスクに対処するため、特別な措置が講じられている。

Business Insiderのレポートによれば、民間の乗務ミッションに先立つ標準的な2週間の検疫に加えて、追加の対策が実施される。今のところ4月、5月、6月のいずれかに予定されているSpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船への乗船に際して行われることになっている。そこには、表面洗浄と消毒、社会からの隔離、手洗いなどの方策について、さらなる強化が盛り込まれている。これらはすべて、CDC(米疾病予防管理センター)が推奨する一般向けの予防策に沿ったものとなっている。

またNASAは、宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏やBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏がフライトに先立って訓練を受けている施設の見学ツアー開催を止めている。さらに、潜在的なウイルスへの曝露を制限するため、NASAのスタッフに対しても、何らかの病気の可能性に気づいたら、自宅待機するよう指導している。

宇宙に旅立ったり、そこで仕事をする人の健康は間違いなく最も重要だ。NASAの手順には、実際のフライトに至るまでの広範な検査と監視が含まれており、ウイルスなどの招かれざる客を宇宙空間に連れて行かないようにするという点において優れた実績を誇っている。新型コロナウイルスは、こうしたNASAの予防策に対して新たな課題となる可能性もある。とはいえ、COVID-19はミッションに参加する宇宙飛行士がこれまでどおり回避しようとしている一般的なウイルス性の疾患に対する健康管理と、機能的に大きく異なるものにはならないだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAの月ロケット打ち上げは計画から2年遅れで予算オーバーとの内部報告

2024年に人類を月に立たせるというNASAの意欲的な計画は間近に迫ってきた。と同時に、同局の監察総監室が報告した現在の予算超過と遅延から察するに実現性が遠のいている。

「SLS(Space Launch System、大型打ち上げロケットシステム)計画のコストとスケジュールの管理に苦戦を続けるNASAの状況は、同局の(有人月飛行計画である)アルテミス計画の意欲的な目標に影響する恐れがある」と米国時間3月10日に公開された報告書には書かれている。「アルテミス1号のSLS(ロケット本体、ICPS、ブースター、RS-25アダプテーション、RS-25リスタート)の開発建造における主要な契約のそれぞれが、数々の技術的困難、性能の問題、仕様変更に直面し、20億ドル(約2070億円)の予算超過と少なくとも2年のスケジュールの先送りという結果を招いた」とのことだ。

とはいえ、もちろん、2024年の予定が2026年にずれ込むわけではない。遅れているのは、NASAがアルテミスの有人ミッションに使おうと計画している次世代型の重量級ロケットSLSの最初の試験機だ。最初の打ち上げは、今のところ2021年の春の予定になっている。当初の予定からは2年以上が経過している。

関連記事:NASAのSLSロケットが月探査ミッションのマイルストーンを通過

こうした遅延を考慮して、SLS計画は2010年にスタートし、2014年には設計段階を終え、その後にテストと建造のための契約が交わされた。SLSの完成時期は早ければ2016年というスケジュールが浮上したが、実際にNASAが公式に発表したのは2018年後半という日程だった。だがそれも何度か後ろにずれ込み、直近では、今年の11月の打ち上げはもはや約束できないと1月にNASAが発表している。

しかもこうした、NASA、契約業者、孫請け業者のそれぞれに存在する遅延と難しい問題は財政を複雑化し、当初の予算はとっくに突破してしまった。報告の手法にもよるだろうが、これまで達成されたものの経費は当初の予測を超えていたとも言える。

報告書には「全体で、2020会計年度末までに、NASAはSLS計画に170億ドル(約1兆8000億円)以上を費やすことになる。その中には、60億ドル(6300億円)近い使途不明金やABCの一部だと説明されるものがあった」と記載されている。ABCとはAgency Baseline Commitment(局の最低基準契約)のことで、基本的に予算を確保するために用いるとNASAが米国議会に伝えていたものだ。

関連記事:NASAの2021年予算要求は有人月面着陸に約3625億円、月面資源開発に約472億円

月着陸計画を進めるといった大きな冒険は、最初に考えていたよりも難しく費用もかかるなどということは、意外でもなんでもない。アルテミス計画の最終目標は、米国が再び安全に適切な時期に月に立って、James Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)局長が好んで言うように「そこに居住する」ことにある。2024年の目標はあくまで希望であって、エンジニアも宇宙飛行士も、政治的な日程を満足させるために急ぐべきではない。なにより命が大切だ。

監察総監室は、NASAと契約業者が時間と経費に責任が持てるよう、出費をより正確に記録する方法について新しい提案をしている。だが遅延が再三にわたり警告されるということは、言葉には出さないまでも、2024年に月に着陸するという目標がほんの数カ月遅れるだけであって、計画が破綻したわけでもなんでもないことを示しているように思える。

像クレジット:NASA

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(翻訳:金井哲夫)

宇宙のペイロード輸送サービスMomentusがSpace Xのミッションで6スロットを購入

宇宙におけるペイロード輸送サービスのMomentusが、SpaceXのSmallSat Rideshare Programミッションで6個のスペースを購入した。

ミッションには太陽同期軌道への5回の打ち上げと、中高度低軌道への1回の打ち上げが含まれ、Momentusの小型輸送機は打ち上げ後に、顧客のペイロードを指定された投入高度の軌道へと運搬する。

Momentusによると、同社の軌道間輸送機VigorideはすでにSteamjetやNuSpace、Aurora Space Technologiesなどの顧客を獲得している。

Momentusは、増え続ける宇宙でのラストワンマイルシャトルサービスの1つだ。現在、地球を周回する衛星の数は増えているが、それにつれて衛星運用会社にとってはカスタマイズされた、あまり混雑していない軌道の選択肢が増えることになる。

Momentusの最高経営責任者ことMikhail Kokorich(ミハイル・ココリッチ)氏は声明で、「我々は、Falcon 9のライドシェアがより画期的なものになることを示したいと考えている。1回の打ち上げで複数の軌道にペイロードを運ぶことで、宇宙へのアクセスに革命をもたらし、システムの能力が倍増する」と述べた。

Momentusによると、Vigorideはさまざまな高度、軌道に最大300kgの貨物を投入できるという。またSpace Xのライドシェアの顧客は、シャトルサービスを利用することで中間傾斜軌道や太陽同期軌道の場合、高度300kmから1200kmまでの範囲で軌道を指定できるという。

顧客にとってこの機能は、監視を同期化、つまり衛星が特定の場所の画像を同じ時刻に取得できることを意味し、その分析やデータの管理を容易にする可能性がある。

MomentusはこれまでにMountain Nazca、Quiet Capital、Y Combinatorなどから5000万ドル(約52億円)のベンチャー資金を調達している。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

SpaceXの第1世代Dragon貨物船が20回目、そして最後の宇宙輸送

SpaceX(スペースX)は米国時間3月7日の夜、第1世代Dragon
貨物船の20回目、そして最終のの打ち上げを実施
し、国際宇宙ステーション(ISS)への補給ミッションをおこなった。

この打ち上げはDragon貨物船の最後のミッションであり、今後はSpaceXの新型カプセルことDragon 2に取って代わられ、10月からISSへの補給が開始される。

DragonはISSへの補給物資に加えて、科学実験用のペイロードもISSに輸送する。その中には、宇宙でミッドソールを製造する方法を研究するAdidas(アディダス)の実験もある。また水栓メーカーのDeltaは、無重力状態で水滴がどのように形成されるかを研究する。そしてEmulateは、微小重力が腸内の免疫細胞にどのような影響を与えるか、そして心臓組織を宇宙でどのように培養できるかを調査するために、生体機能チップを宇宙へと送り出す。

SpaceXが最初に16億ドル(約1700億円)の宇宙ステーション補給契約を獲得してから12年の間に、宇宙産業は劇的に変化した。

SpaceXによるロケット部品の製造と再利用に関するイノベーションは宇宙産業に革命をもたらし、Aerojet Rocketdyne(エアロジェット・ロケットダイソン)やBoeing(ボーイング)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)のような業界の巨大企業と競合できる可能性を、起業家が信じる環境を作り出した。

政府の宇宙ミッションが前述の請負会社に長年独占されていたことに、SpaceXが挑戦すべく登場して以来、ISSの周りには新たな産業の創出を支援する商業活動の波が押し寄せている。

Axiom Spaceは先週、SpaceXと提携して商業旅行客をISSへ費用5500万ドル(約58億円)で10日間滞在させる計画を発表した。さらにAxiomによるISSと接続する商業宇宙ステーションの建設計画は、宇宙の商業化に向けた大胆な一歩であり、SpaceXによる最初のDragonの成功がなければ、実現の可能性は低かっただろう。

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(翻訳:塚本直樹Twitter)t