Salesforceの元マネジャーが同社内の「自覚なき差別」と不平等を告発

Salesforce(セールスフォース)の元デザイン研究上級研究員で2021年2月始めに退社したCynthia Perry(シンシア・ペリー)氏は、自身の辞職届けをLinkedIn(リンクトイン)に掲載し、彼女に対する会社の不快な対応を詳細に記した。Protocol誌が最初に報じた。文中、ペリー氏は黒人である彼女が在籍中「無数のマイクロアグレッション(自覚なき差別)と不平等な扱い」を経験したことを訴えた。

最終的にペリー氏は会社を辞め、その理由について彼女が一部の社員らから、「正気ではないように見せかけられ、操られ、いじめられ、無視され、ほとんど協力を得られなかった」ためだと語った。相手の名前は明らかにしていてない。

「Salesforceは、私にとって安心して仕事に来られる場所ではありません」と彼女は書いた。「そこは本当の自分でいられる場所ではありません。そこはこれまで自分を投じてきた場所ではありません。そこはチャンスに満ちた場所ではありません。そこは万人が平等な場所ではありません。そこは健全な生活が尊ばれる場所ではありません」。

Salesforceは平等の重要性を長年主張してきた。2016年、SalseforceはTony Prophet(トニー・プロフェット)氏を史上初の最高平等責任者に任命した。その約1年前、CEOのMark Benioff(マーク・ベニオフ)氏は、同社の多様性に関する最大の関心事は「女性の問題」だと語っている。

Salesforceはジョージ・フロイド氏の死亡の後、黒人支持を表明した数ある会社の1つだった。

関連記事:テック業界はジョージ・フロイドの死をどう受け止めたのか

「今、私たちはこれまで以上にお互いを仲間として助け合い、正義と平等のために声を上げなくてはなりません」と当時同社はツイートで述べている

しかし会社内を見ると、Salesforceでは米国において黒人はわずか3.4%であり、管理職の黒人はわずか2.3%であることを2020年11月のダイバーシティレポートが示している。

「プライバシー上の理由から、従業員の個人的問題についてはコメントできませんが、『平等』は当社にとって最重要な価値の1つであり、22年ほど前に創業して以来、会社の内外両方でその推進に専心しています」とSalesforce広報担当者がTechCrunch宛の声明で語った。

ペリー氏の1件は、テック企業での不快な経験について黒人女性IT技術者が意見を述べた最新事例だ。2020年、Ifeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏とAerica Shimizu Banks(エアリカ・シミズ・バンクス)氏はPinterestの人種差別と性差別を訴えた。その後、Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士はGoogleのAI部門における多様性問題について発言したことで解雇されたと語った。それはGoogleの元多様性採用担当者、April Curley(エイプリル・カーリー)氏が、会社を「人種差別のでたらめ」と非難したことでGoogleが自分をクビにしたと主張した直後のことだった。

関連記事:GoogleのAI倫理研究チームの共同リーダーが部下宛てメールが原因で解雇されたと語る

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Salesforce差別

画像クレジット:Ron Miller

原文へ

(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルが給与差別の申し立ての決着で社員らに対し2.7億円近くを支払う

Google(グーグル)は、その給与や雇用に見られる体質的な差別への訴えに関する米国労働省との決定事項の一環として、5500名あまりの現社員およびこれまでの求職応募者に対し259万ドル(約2億7000万円)の支払いを行うことで合意に達した。またGoogleは、向こう5年間、1年につき25万ドル(約2600万円)の公正給与調整予備金(給与の不平等を調整するお金)を留保することでも合意した。これでGoogleの財務的負担額は380万ドル(約4億円)となるが、親会社Alphabetの時価総額が1兆2800億ドル(約134兆4000億円)の同社にとっては大海の一滴でしかない。

この決定は、労働省のOffice of Federal Contract Compliance Programs(OFCCP)が、マウンテンビューにあるGoogleのオフィスおよびワシントン州シアトルとカークランドで、女性のソフトウェアエンジニアに対する給与の格差を見つけたことによる。OFCCPの調査は、2014年9月1日から2017年8月31までをカバーしている。

決定の一環としてGoogleは、同社2565名の女性ソフトウェアエンジニアに、遡及賃金と利息で135万ドル(約1億4000万円)、1人あたり527.5ドル(約5万5400円)を払うことで合意した。また、雇用されなかった1757名の女性と1219名のアジア系求職者には、計125万ドル(約1億3000万円)、1人あたり414ドル(約4万3500円)が支払われる。

最後にGoogleは、Googleのマウンテンビュー、カークランド、シアトル、およびニューヨークのオフィスの米国人エンジニアのために、今後5年間で総額125万ドルの公平給与調整金を留保する。

Googleの広報担当者はTechCrunch宛の声明で次のように述べている。「給与は、その人が誰であるかによってではなく、その人が行った仕事に応じて支払われるべきであり、また雇用と報酬のプロセスを公正不偏にするために重点的投資をすべきだと信じている。これまでの8年間、私たちは毎年、給与の公平性に関する分析を行って、乖離齟齬の発見と対応に努めてきた。2014年から2017年にかけての監査に由来する申し出に関してこの問題が解決し、また私たちが多様性と公平性への誠意ある関与を維持し、弊社の人々が最良の仕事ができるよう、そのサポートを日々続けていることを喜んでいる」。

また、上記OFCCPの地域部長であるJane Suhr(ジェーン・サー)氏はリリースで次のように述べている。「米労働省は、議論の決着と初期的解決への到達に対するGoogleの積極性を歓迎する。テクノロジー産業はこの地域の最大、最速で成長している雇用者であり続ける。その労働者の複雑性や規模を問わず、私たちは今後も平等機会法の執行に精力的に臨み、労働者における無差別と公平性の確立に努めていきたい」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Google差別

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

リモート試験の監視システムには「さらなる透明性が必要」と米上院議員が指摘

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行のために遠隔試験を受けざるを得ない学生たちから、公正さに問題があるという主張が続く中、試験監督システムを手がける大手3社は、透明性の向上が求められている。

試験監督システムは、学生たちが自宅からリモートで試験を受けることを可能にする。学生たちは大学が選択した試験監督ソフトウェアをインストールするように指示される。これによってシステムはウェブカメラやマイクを含む学生のコンピュータに深くアクセスし、不正行為の可能性を発見するために学生の行動を監視することができる。

しかし、試験監視システムを提供するProctorio(プロクトリオ)、ExamSoft(エグザムソフト)、ProctorU(プロクターユー)のような企業は、その試験監視技術が公正さに欠けるなどの問題に満ちているという学生からの批判の嵐を受けている。

苦情の中でも特に多いのは、試験監視ソフトウェアが、肌の色が濃い人や宗教的なかぶり物をしている人の顔を認識できないこと、インターネットの通信速度が受験技術の基準を満たすことができない低所得地域の学生や障害を持つ学生を差別しているといったことだ。

米国民主党の上院議員数名は、2020年12月にProctorio、ExamSoft、ProctorUの3社に書簡を送り、各社に技術やポリシーをもっと詳しく説明するように求めた。TechCrunchが確認したその回答によると、各社は差別の主張を否定し、生徒がカンニングをしたかどうかを判断するのは教師であって、これらの企業自身ではないと述べている。

しかし、議員たちは企業の透明性が十分ではないと考えており、教師たちが学生の行動について、技術が伝える以上のことに基づいて判断しているのではないかと危惧している。

「Proctorio、ExamSoft、ProctorUは不公正の問題はないと主張していますが、学生からの憂慮すべき報告は違うことを物語っています」と、民主党のRichard Blumenthal(リチャード・ブルメンソール)上院議員(コネチカット州選出)は、TechCrunchに語った。「企業からのこれらの回答は、彼らがシステムをどのように運用しているのか、詳しく知るための最初のステップに過ぎません。しかし、学生の不正行為を告発する力を持つそのシステムには、はるかに多くの透明性が必要とされています。私は学生たちが確実に守られるように、必要なあらゆる修正に取り組むつもりです」。

全米の学生たちはすでに、プライバシーとセキュリティのリスクを理由に、学校に対して試験監督ソフトウェアの使用をやめるよう呼びかけている

我々は各社にいくつかの質問を送った。ProctorUの最高経営責任者Scott McFarland(スコット・マクファーランド)氏は、週末の休日を理由にコメントを拒否した。ProctorioとExamSoftは回答しなかった。

カテゴリー:EdTech
タグ:差別プライバシー

画像クレジット:Alain Jocard / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

アップルが104億円を投じる「人種の公平性と正義のためのイニシアチブ」関連の新たな取り組みを発表

2020年6月、Apple(アップル)は「人種の公平性と正義のためのイニシアチブ(REJI)」に1億ドル(約104億円)を投じた。このイニシアチブを主導しているのは、アップルの環境、方針、社会的イニシアチブ担当バイスプレジデントであるLisa Jackson(リサ・ジャクソン)氏だ。アップルは米国時間1月13日、このイニシアチブの一環として、いくつかの新たな取り組みを発表した

アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOは声明で次のように述べている。「あまりにも長い間、人種差別やその他の差別の犠牲になってきたコミュニティに力を与えるために、私たちは学生から教師、開発者から起業家、住民組織から正義の提唱者まで、幅広い業界やバックグラウンドを持つパートナーとともに、REJIの最新のイニシアチブを立ち上げます。私たちはこのビジョンの実現を支援し、我々の言葉と行動を、我々が常にアップルで大切にしてきた、公平性と多様性を受け入る価値観に一致させることを誇りに感じます」。

アップルは、歴史的に黒人の多いカレッジや大学のための革新と学習の中心地であるPropel Center(プロペルセンター)に、2500万ドル(約26億円)を提供する。この資金は、アトランタ大学センター内のバーチャルプラットフォームと物理的なキャンパスの両方に使われる予定だ。アップルは、その新しい建物の完成予想図をいくつか公開した(上と下の画像を参照)。

学生たちは人工知能、農業技術、社会正義、エンターテインメント、アプリ開発、拡張現実、デザイン、芸術創造、起業家精神など、専門の様々な教育コースを受けることができるようになる。アップルは単に資金を提供するだけでなく、同社の従業員もカリキュラム開発を手伝ったり、メンターシップを提供する。学生のためのインターンシップの機会も用意される。

また、アップルはデトロイトのダウンタウンに、若い黒人起業家に焦点を当てた「Apple Developer Academy(アップル・ディベロッパー・アカデミー)」を開設する。これはミシガン州立大学との共同事業で、デトロイト中のすべての学習者を対象とし、起業家、クリエイター、コーダーのための貴重なスキルを教える。

そこでは2つのプログラムが用意される。30日間の入門プログラムは30日間で、さらに深く掘り下げたい人は、10カ月から12カ月の集中プログラムを受けることもできる。アップルによれば、これら2つのプログラムで年間1000人の学生に教えることを目指しているという。

3つ目の取り組みは、黒人や有色人種色の起業家に向けて投資機会を拡大することに焦点を当てている。アップルはニューヨークに拠点を置くベンチャーキャピタル企業のHarlem Capital(ハーレムキャピタル)に1000万ドル(約10億4000万円)の資金を提供する。ハーレムキャピタルとアップルの間では、今後さらに多くのコラボレーションが行われる予定だ。

そのほか、アップルはSiebert Williams Shank(シーバード・ウィリアムズ・シャンク)のClear Vision Impact Fund(クリア・ビジョン・インパクト・ファンド)に2500万ドル(約26億円)を出資し、キング牧師の記念館であるThe King Center(キング・センター)にも寄付を行っている。

以上がアップルの人種的公平性と正義のためのイニシアチブは継続的な取り組みであり、常に新しい機会を評価することが求められる。アップルが資金を提供する相手は、誰でもいいというわけではない。それぞれの機会を個別に評価し、最良のコラボレーションを見つけようとしている。

関連記事:アップルが人種間の公平と正義のためのイニシアチブを創出して1億ドルを拠出

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Apple差別

画像クレジット:Apple

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

イタリア地裁がDeliverooの配達員ランキングアルゴリズムに対し「差別的」と判決、賠償命令

イタリアの地裁は、3つの労働組合が起こした訴訟において、純粋なアルゴリズムによるマネージメントに打撃を与えた。ボローニャ裁判所は、オンデマンドフードデリバリープラットフォームDeliverooで使用されていた評判ランキングアルゴリズムは、地元の労働法に違反してギグ配達労働者を差別したと裁定した。

先にイタリアで報道されたこの判決は、Deliverooのランキングアルゴリズムは、労働を留保する場合に法的に保護された理由を明確に区別しなかった — 例えば、配達員が病気だった、あるいは、保障された権利に基づいてストライキを行使しているなど、法的に保護された理由で働いていないのか、それとも、当初自ら示したほど生産的でなかった、など、もっとささいな理由だったのか区別がないので、配達労働者を差別したとしている。

イタリア労働総同盟(Italian General Confederation of Labour; CGIL)は声明の中で、ボローニャ裁判所の判決を「デジタル社会での、労働組合の権利と自由の征服において画期的な転換点」と呼んだ。

判決についてDeliveroo社にTechCrunchがコメントを求めたところ、同社の広報担当者からこのような声明が送られてきた。

「この判決は、Deliverooがイタリアや他の市場ですでに使用していない、過去の予約オプションモデルに関するものです。ライダーは、いつ働くか、どこで働くか、少しの間、または望む限りの時間など、選択する完全なフレキシビリティを持っています。予約システムというものはなく、仕事を受け入れる義務もないということです」。

「ライダーが望むフレキシビリティを提供するために、私たちは自営業(モデル)を提供しているのです。すべてのアンケート調査で、ライダーは圧倒的に何よりもフレキシビリティを重視していると示しています。最新の調査では、80%以上の確率でした。現在Deliverooは、自営業のライダーとして働くための申込を毎週何千も受理しており、英国内ではライダーの数を倍増させました。昨年、英国では2万5,000人だったライダーの数は、5万人に増えています」。

DeliverooイタリアのゼネラルマネージャーであるMatteo Sarzana(マッテオ・サルザーナ)氏から声明を得たAnsa.itによると、裁判所はDeliverooに対し、申請者に5万ユーロ(約630万円、プラス訴訟費用)を支払うよう、そして同社のウェブサイト上で判決を公開するよう命じたという。これに対し同社は、裁判官の裁定に留意するものの、賛同はしていないこと、さらに、ランキングアルゴリズムとリンクされているシフト予約システムは、もはや市場で使用されていないことを強調した。

「旧システムの公平性は、裁判の過程で客観的かつ現実的な差別の事例が一つも出てこなかったことからも確認されています。裁定は、具体的な証拠のない仮説と潜在的な評価にのみ基づいている」とサルザーナ氏は声明の中で付け加えた(イタリア語からの翻訳)。

オンデマンドデリバリーアプリで知られる同社は、本拠地イギリスでも法的課題の数々に直面している。(自営業の配達人としての)ギグ労働者の分類に関しての問題や、ライダーの団体交渉権に反対しているためだ。

英国の下院議員Frank Field(フランク-フィールド)氏が2018年に主導した調査は、(ギグの)「柔軟な」労働モデルを20世紀の造船所になぞらえ、Deliverooが生成する二重労働市場は、一部のライダーにとっては非常にうまく機能するが、他の者たちには非常に悪いと言っている。

ボローニャ裁判所の判決はまた、大規模な「自営業」労働力をアルゴリズムを使って管理する他のギグプラットフォームに対する数々の法的異議申し立てがここ数ヶ月の間、ヨーロッパで提訴されていることからも注目される。

この中には、昨年夏にオランダでUberの自動化された意思決定に対する異議申し立てを行ったUberドライバーのグループが含まれており、汎EUデータ保護法に言及している。

配車サービス会社のOlaも同様の課題に直面しているが、自営業者の労働力を管理するツールとしての技術的な監視とデータ使用が対象になっている。

これらのケースに関する判決はまだ係争中だ。

同時にEUの議員は、大規模なオンラインプラットフォームがアルゴリズムによるランキングシステムがどのように機能しているかについての情報を規制当局に提供することを義務付ける新法を提案している。AIによって動く巨大企業に対し、より幅広い社会的な監視を可能にすることを目的としたものだ。

プラットフォームのアルゴリズムの監視と説明責任を可能にするこの動きは、透明性の欠如と、自動化された決定がバイアス、差別、搾取を拡大する可能性についての懸念に応えるものと言える。

関連記事:フードデリバリーのDeliverooが客によるピックアップも選択肢として提供

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Deliveroo フードデリバリー 差別

[原文へ]

(翻訳:Nakazato)

Pinterestが差別訴訟・ストライキ後、職場文化の推奨事項を導入すると発表

Pinterestは米国時間12月16日、ブログ記事の中で、取締役会の特別委員会の勧告を導入することを約束する、と発表した。この委員会は今年6月、2人の元従業員、Ifeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏とAerica Shimizu Banks(エアリカ・シミズ・バンクス)氏が、Pinterestで働いていた時の人種・性差別の訴えを公表した直後に結成されたものだ。

WilmerHale(ウィルマーヘイル)法律事務所に職場環境の考察を依頼した委員会は、350人以上の現従業員と元従業員に話を聞き、Pinterestでの多様性、公平、インクルージョンの改善に向けた提言を行った。その中から、次にいくつか挙げる。

  • 管理職・役員を含む全社員を対象にした、アンコンシャスバイアス(無意識の先入観)研修の義務化
  • 包括性と無意識の先入観に関する追加トレーニングを提供
  • 求職者との面接パネルに「多様な人材」を入れる
  • DEI(Diversity・equity・inclusion、多様性・公平・インクルージョン)を支援し、推進するため努力している従業員に褒賞
  • ダイバーシティ報告書を年2回、少なくとも2年間発行し、2年後には年1回発行する
  • 昇格資格基準を設ける
  • Pinterestのハラスメント・差別ポリシーを強化する
  • 一貫した公正な結果を保証するため、職場調査チームを一元化する

こちらから、すべての推奨事項を見ることができる。Pinterestは、TechCrunchへの声明の中で、これらの変更を実行するよう全力を尽くすと述べている。

「私たちは従業員を尊重しており、Pinterestで働くすべての人材にとって多様で公平、包括的な環境を構築することが私たちの責任であると認識しています。」とPinterestの広報担当者は述べている。「私たちは変化の緊急性を理解しているため、この数ヶ月間、Pinterestのすべての人々が安全に感じ、歓迎され、支援されていると感じるようになるべく行動を起こしました。すべての従業員が本社の一員だと感じ、支持されていると感じる文化を確保する過程にあると信じています」とも。

PinterestのCEOであるBen Silbermann(ベン・シルバーマン)氏は、従業員へのメモの中で、今週後半には社内全員がこの勧告について話し合ったり、質問をしたりする機会が設けられる予定だと述べた。シルバーマン氏はまた、提案の多くが 「すべての従業員が含まれ、サポートされていると感じる文化を構築するために、すでに進行中の取り組みを反映している 」ことに勇気づけられたと感じている、と述べている。

米国時間12月14日、Pinterestは前COOであるFrancoise Brougher(フランソワーズ・ブロワー)氏との性差別訴訟を2250万ドル(約23億3000万円)で和解した。しかし、その高額な支払いは、テック業界の不平等の一部を浮き彫りにした。ブロワー氏が訴訟を起こしたのは、オゾマ氏とバンクス氏が訴えを公表した後の8月のことだった。ブロワー氏が数千万ドルを手にしたのに対し、オゾマ氏とバンクス氏が受け取ったのは、1年分の報酬に満たない退職金のみだ。

「多くの、とだけでは言い切れない数多くの他のケースのように、私たちは黒人女性として身をさらし、自分たちに起こったことを何もかもすべて共有して、そこに誰かが急降下して『進歩』を回収する土台を作ったのです」とオゾマ氏は以前TechCrunchに語った。「ここには何の進歩もありません。なぜなら、(最も)害を受けた者たちに対しての償いはないからです」。

関連記事:Pinterestが性差別訴訟で前COOと23.4億円で和解

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Pinterest  差別

[原文へ]

(翻訳:Nakazato)

アリババがウイグル人を識別する自社クラウド部門の民族検知アルゴリズムに「がく然」

中国の巨大テック企業数社は、権力機構のためにウイグル人イスラム教徒を識別する技術を有しているとの調査結果を受け、国際的な批判にさらされている。

Alibaba(アリババ)のクラウドコンピューティング部門であるAlibaba Cloud(アリババ・クラウド)は、民族やその人が「ウイグル人」であるか否かを識別できる顔認識アルゴリズムを開発していたことが、映像の監視を行う業界団体IPVMの調査でわかった。

ウイグル人やカザフ人などのイスラム教少数民族向けの悪評高い中国の「職業訓練プログラム(中国外務省リリース)」を、中国政府はテロ対策だとして擁護(中国外務省リリース)を繰り返してきた。

アリババは声明の中で、Alibaba Cloudが「アルゴリズムとしての民族性」や「いかなるかたちにせよアリババのポリシーと価値観に反した人種または民族の差別や識別」などを含む技術のテストを行っていたことを知り「がくぜんとした」と述べている(Alibabaリリース)。

「私たちは、自社技術が特定の民族に対して使われることを決して意図しておらず、それを許すつもりも毛頭ありません。私たちは、自社製品が提供するものから、民族を示すタグを一切排除しています。この試験的技術が、いかなるお客様にも使用されたことはありません。私たちの技術が特定の民族を対象に使われること、特定の民族を識別することに使われることはなく、それを許可することもありません」と同社はいい加えた。

2019年のセキュリティ侵害事件で、Alibaba Cloudがホスティングしていた「スマートシティー」監視システムに民族の識別やイスラム教ウイグル人にラベル付けできる能力があることが発覚したと、TechCrunchでもお伝えした。当時、アリババは、公共のクラウドプロバイダーとして「顧客のデータベース内のコンテンツにアクセスする権限を持たない」と話していた。

IPVMはまた2020年12月の初め、Huawei(ファーウェイ)と、顔認識製品Face++で知られる人工知能のユニコーン企業Megvii(メグビー)が、システムがウイグルコミュニティーのメンバーの顔を認識すると中国政府に通報する技術を共同開発していたことを突き止めた(The Washington Post記事)。

これらの中国テック企業は海外進出を目指しているが、北京からの要求と、その人権問題への態度に対する国際的な監視の目との間に挟まれて、ますます苦しい状況に追い込まれている。

クラウドコンピューティングは、アリババで一番の急成長セグメントであり、海外の顧客をより多く呼び込みたいと同社は目論んでいる。調査会社Gartner(ガートナー)の調査(Alibabaリリース)によれば、Alibaba Cloudは2019年、アジア太平洋地区の最大手企業となり、世界で3番目に大きい(Alibabaリリース)サービスとしてのインフラストラクチャー(IaaS)提供企業になった。

アリババのクラウド部門は、前年比で60%の成長を果たし、9月までの3カ月間(Alibabaリリース)、全社の収益10%を支えた。この四半期の時点で、中国本土に拠点を置き人民元で取引を行っているA株上場企業のおよそ60%がAlibaba Cloudの顧客になっていると、同社は主張している。

関連記事:中国のとあるスマートシティ監視システムのデータが公開状態になっていた

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Alibaba中国顔認証差別

画像クレジット:Alibaba Databases In Hebei / Getty Images

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

スタートアップの資金調達における明白な男女格差を克服する方法

著者紹介:Ximena Aleman(キシメナ・アレマン)氏は南米のオープンバンキングプラットフォームであるPrometeo(プロメテオ)の共同創業者兼最高ビジネス開発責任者。

ーーー

ベンチャーキャピタル投資において、女性創業者は今でも相変わらず男女格差の問題に直面している。他の領域(例えばテック業界全体の女性の数など)では男女格差は解消の方向に向かっているが、資金調達においては格差が解消される兆しが一向に見えない。2012年以降、女性創業者の企業が調達したVC出資額はほとんど変わっていない

フィンテック業界では特にこの男女格差の問題が顕著だ。過去10年間のフィンテック投資額全体のうち、女性創業社のフィンテック企業が調達した額はわずか1%にすぎない。もともと男性偏重の傾向が強い2つの業界、すなわちファイナンスとテクノロジーを融合させたものがフィンテックであることを考えると、この数字も不思議ではない。しかし、この数字は決して、女性がこの分野で優れた仕事をしていないという意味ではない。女性創業者も相応の公平なVC出資を受けてしかるべきだ。

短期的に見ると、現在の投資環境においてVC資金調達を成功させる確率を高めるために女性創業者にできることもある。例えば、コミュニティと自分を支援してくれる人たちの力を借りる、成功するために必要な自分を信じる力を育む、といったことだ。しかし、長期的に考えると、女性起業家に公平な機会を与えるには、根本的な変化が必要だ。VCファンドは、経営幹部を含め、意思決定が可能な役職に就く女性の数を増やすよう、より一層の努力をする必要がある。

この記事では、VC投資における男女格差の現状と格差を是正するために、創業者、出資者、およびファンド自体ができることについて考察してみたい。

公平な競争条件とはほど遠いベンチャーキャピタルの現状

VCによる2019年の全出資額のうち、女性創業者が獲得したのは3%未満であり、創業者に1人でも女性が含まれるスタートアップに出資した米国のVCは全体の5分の1にすぎない。また、平均出資額の規模で比較しても、女性創業企業または共同創業者に女性が含まれる企業は男性のみの創業者によるスタートアップの半分以下である。創業者コミュニティに占める女性の割合が増えていることを考えると、女性創業者がその割合(創業者の約28%は女性である)に応じた調達資金を獲得できていないというのはゆゆしき問題だ。これに人種と民族性の要素を加味すると、数字はさらに厳しいものとなる。2009年以降の調達資金総額のうち黒人女性創業者が獲得したのはわずか0.6%であり、ラテン系女性創業者に至っては全投資額の0.4%しか獲得していない。

統計の数字は厳しい現実を示しているが、筆者はこうした男女格差を個人的に体験したことがある。例えば、私の目の前で、私の共同創業者に「どうして君ではなくこの女性が話をしているのかね」と尋ねたVC投資家がいた。あるいは、出資者となる可能性のある投資家が私の共同創業者に、「君はこの女性とビジネスを始めるつもりかね」と尋ね、「いや、仕事終わりに君が飲みに行く相手を確認しておきたかったのでね」と付け加えたこともある。

こうした話は、VC投資家たちが彼らのポートフォリオ企業の創業チームに男性がいることを当然のこととして期待しており、無意識であれ意識的であれ、経営陣の中の女性の意見より男性の意見を重視することが多い。

では、もしあなたが女性創業者で、資金を調達するためにVCの前でプレゼンする必要があるとしたら、どのような手順を踏めば無事資金調達に成功できるだろうか。

女性として資金を調達する

このように女性にとって圧倒的に不利と思える環境ではあるが、それでもVCからの資金調達を成功させるために女性創業者ができることはいろいろとある。まずは、自分のコミュニティと自分を支援してくれる人たち(メンターやロールモデルがいれば理想的だ)のネットワークを存分に活用して、可能性のある出資者に自分を紹介してもらうようにする。あなたのビジネスをよく理解していて信頼している人たちなら、喜んで協力してくれるだろう。誰かから個人的に推薦された人物となれば、VC側のあなたに対する見方も随分と違ってくるはずだ。

強力な支援者と呼べるような人がいない場合は、女性創業者やスタートアップグループを探して自分のコミュニティの構築を始めることだ。例えば、成長企業の女性リーダーたちのグローバルネットワークであるNext Women(ネクスト・ウーマン)や、テック業界で働く女性同士をつなぎ支援することをミッションとする草の根団体であるWomen Tech Founders(ウーマン・テック・ファウンダーズ)などを活用できる。

資金調達を成功させる鍵は自信を持つことだ。売り込み、プレゼンテーション、交渉スキルなど、すべてにおいて完璧である必要がある。こうした分野でトレーニングが必要だと思うなら、ワークショップか指導プログラムを探して、資金調達のプレゼンテーションを行う前に必要なスキルを習得しておこう。

男性のVCや出資企業の幹部と話していると、こちらが女性であるために差別的な対応を受けていると感じることがあるかもしれない。そのような場合は、自分を信じる気持ちと内面の強さが重要となる。自分が有望で信頼に値する創業者であることを彼らに信じさせる唯一の方法は、あなた自身がそう信じることだ。

結局のところ、現代の女性創業者たちは、女性としてVCからの資金調達を受ける初めての世代であると認識する必要がある。それは本当に大変なことかもしれないが、エキサイティングな体験でもある。無意識の偏見に直面しても、少しずつ分かってもらうしかないと考えることが不可欠だ。男性の共同創業者にすべて任せてしまっているようでは、次世代の女性たちの成功は期待できない。

女性VCが増えれば女性創業者の調達額も増える

確かに、女性創業者が個人レベルで取り組めることはある。しかし、さまざまな障害を乗り越えるにはベンチャーキャピタル自体が内部から変革しなければならない。女性創業者の資金調達額が男性創業者に比べて少ない最も大きな理由は、VCファンド内で女性が占める割合が極端に少ないからだ。

Harvard Business Review(ハーバード・ビジネス・レビュー)の調査によると、投資家は投資の判断を性別に基づいて行い、女性に対して男性とは異なる質問をすることが多いという。男性投資家から真剣に受け止めてもらえず、結果として価値ある投資対象とみなされない女性企業家の話は枚挙にいとまがない。VCの経営陣にはこうした男女格差があるため、資金調達における男女差別を是正する方法として、女性創業者に特化したファンドが出現している。このようなVCは、女性創業者の企業だけでなく黒人創業者の企業にも投資することが多いことは注目に値する。VCコミュニティは、女性および人種的マイノリティーを中心とする投資家を受け入れるだけでなく、コミュニティ全体として、経営幹部により多くの女性リーダーを登用する必要がある。

VCにおける男女平等はビジネスにも有利

Prometeo(プロメテオ)のチームでは創業初日から、意思決定権を持つ役職に男性と女性の両方を配属するよう協力して取り組んできた。創業チームと経営幹部に女性を含めることは、同社において、無意識の偏見に対抗できるという意味でも、よりダイナミックな労働環境を作るという意味でも、重要な役割を果たしてきた。そうした環境では、思考の多様化によってビジネス上の意思決定の質が向上するからだ。

VCファンド内部と創業者コミュニティの両方で男女平等の取り組みを進めることは、収益向上にも良い結果をもたらす。実際、Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の調査によると、1ドルの投資に対する利益率は、女性創業者のスタートアップで78%、男性創業者の企業では31%となっている。

南米は、女性創業者が獲得するVC出資額がVC全体の投資額に占める割合が世界一高い地域だ。そのため、女性が南米のフィンテック革命を主導したことも驚くには当たらない。経営幹部に占める女性の割合を増やすことは、結果的に、ビジネスにも良い結果をもたらす。

VCファンドにおける男女格差を軽減するのは容易なことではないが、是が非でも実現する必要がある。VC内部の改革と外部的な取り組み(コミュニティの構築、トレーニングの機会、女性中心の支援ネットワークなど)により、最終的にはすべての人に公平なVC活動の実現に向けて歩を進めることができる。

関連記事:ブラジルのブラックシリコンバレーが南米のイノベーションの震源地に

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:中南米 差別

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

ブラジルのブラックシリコンバレーが南米のイノベーションの震源地に

著者紹介:

ヌネス氏はVale do Dendê(ヴァレ・ド・デンデ)およびAFAR Ventures(AFARベンチャーズ)の共同創設者である。AFAR Venturesは新興市場における多国籍ブランド、企業、投資家のための機会を見出すことを目的とした、グローバルで多様性のあるクリエイティブ&コンサルティングエージェンシーである。

コリア氏はアーリーステージのインパクト投資家で、経済開発、社会起業、インパクト投資の分野で15年以上の経験を持つ。オックスフォード大学の客員研究員としてインパクト投資や多様性、エクイティについて教え、執筆活動を行っている。

ーーー

過去5年間、ブラジルではスタートアップブームが起きている。

この国におけるスタートアップの主な拠点は、伝統的にはサンパウロとベロオリゾンテだったが、今ではPorto Digital(ポトデジタル)が拠点を置くレシフェやAcate(アカーテ)が拠点を置くフロリアノポリスなど新しい波が押し寄せてきており、独自のローカルスタートアップ・エコシステムが構築されつつある。さらに最近では、サルヴァドールで「ブラックシリコンバレー」が形成され始めている。

一般的に金融やメディア業界はサンパウロやリオデジャネイロに集中しているが、バイーア州にある人口300万人の都市サルヴァドールはブラジル文化の中心地の1つと言われている。

人口の84%がアフリカ系ブラジル人のこの街には、歴史、音楽、料理、文化などすべてに深く豊かなアフリカンルーツが息づいている。1500万人の人口を擁するバイーア州はフランスとほぼ同じ大きさだ。サンバやカポエイラ、その他様々な地元の郷土料理まで、ブラジルを代表するほとんどすべての文化遺産がこの土地にルーツを持っていると言うから、バイーア州の創造的遺産は明白なものである。

多くの人は、ブラジルがアフリカ以外で最大の黒人人口を抱えていると言う事実を知らない。米国や南北アメリカ大陸の黒人と同様に、アフリカ系ブラジル人は長い間社会経済的な公平性を求め苦闘してきた。また米国と同じく、ブラジルの黒人創業者は資本へアクセスできる機会が少ない。

米州開発銀行のMarcelo Paixão(マルセロ・パイシャオ)教授の調査によると、アフリカ系ブラジル人は白人に比べて3倍以上の確率で信用供与を拒否されている。また、アフリカ系ブラジル人の貧困率は白人ブラジル人の2倍以上であり、彼らはこの国の人口の50%以上を占めているにもかかわらず、立法の役職に就いているアフリカ系ブラジル人はほんの一握りである。言うまでもなく、上位500社の企業のトップレベルに彼らが占める割合は5%にも満たない。米国や英国などの国と比較すると、ブラジルの人口の50%以上がアフリカ系ブラジル人であることから、人種間の財源格差はさらに顕著になっている。

バイーア州はラテンアメリカのイノベーションの震源地となりうる

バイーア州の州都であるサルヴァドールは、ブラジルのブラックシリコンバレー発祥の地であり、地元エコシステムのバブであるVale do Dendêを中心に据えている。

Vale do Dendêは地元のスタートアップ、投資家、政府機関と連携して起業家精神とイノベーションを支援し、特にアフリカ系ブラジル人の創業者を支援することに重点を置いたスタートアップ促進プログラムを運営している。アクセラレーター組織であるVale do Dendêは、スタートアップや技術教育を主流の市場からこれまで十分なサービスを受けていないコミュニティーへと広げる革新的な活動を行っていることから、すでに国内外から注目を集めている。

約3年間でこの組織は、クリエイティブで社会的インパクトのあるセクターを持つ代表的な企業と共に様々な業界にまたがる90社の企業を直接支援してきた。ほぼ全ての企業が二桁成長を達成し、多くの企業がさらなる資金調達や企業の支援を受ける結果となっている。最初のポートフォリオ企業の1つであるデリバリーアプリのTrazFavela(トラズファヴェーラ)は、従来疎外されてきたコミュニティーの顧客と商品をつなぐことに焦点を当て、2019年にアクセラレーターの支援を受けている。ロックダウンがあったにもかかわらず、企業支援後の3月から5月の間に230%の成長を遂げ、最近ではGoogle(グーグル)ブラジルからの更なる支援と投資のための契約を締結した

これはアフリカ系ブラジル企業が認識されていると言う明確な証である。当初Vale do Dendêのメンタリングで支援を受けたもう1つの企業は、観光分野で黒人文化に焦点を当てた企業Diaspora Black(ディアスポラブラック)だ。同企業はFacebook(フェイスブック)ブラジルの支援を受け、2020年には770%の成長を遂げている。

低所得者層のコミュニティーに焦点を当てたヘルステック企業であるAfroSaúde(アフロサウ―デ)も同様で、ファヴェーラ(都市部のスラム街で黒人率が高い貧困街を指す言葉)で新型コロナ感染を予防するための新しいサービスを提供している。このアプリは現在プラットフォーム上に1000人以上の黒人医療従事者を擁しており、極めて人種差別化されていた健康危機問題に対処しながら雇用創出を行なっている。

ルネッサンス開花寸前のバイーア州

ブラジルの厳しい経済状況にもかかわらず、国内外の大企業や投資家がこのスタートアップブームに注目している。大手IT企業のQintess(キンテス)は、サルヴァドールが南米を代表するブラックテックのハブとなることを支援するため、主要スポンサーとして乗り込んでいる。

同社は今後5年間で約1000万レアル(約200万ドル、約2億1000万円)を黒人スタートアップへ投資する予定だと発表しており、その中にはVale do Dendêとの連携による約2000人の技術者の育成や、黒人創業者が率いる500社以上のスタートアップを加速させるプランも含まれている。またGoogleは9月にVale do Dendêの支援を受けて500万レアル(約100万ドル、約1億円)のBlack Founders Fund(ブラック・ファウンダーズ・ファンド)を立ち上げ、アフリカ系ブラジル人によるスタートアップのエコシステムを後押ししている。

スタートアップからイノベーションの新しい波が起きることは間違いなく、アフリカンディアスポラが重要な役割を果たすことになるだろう。世界最大のアフリカンディアスポラ人口を持つブラジルはこの面で主要なリーダーとなることが可能だ。Vale do Dendêはブラジルと南米を代表するより多くのスタートアップを創出し、創造的な経済エコシステムを形成するためのパートナーシップを構築しようと熱心に取り組んでいる。

関連記事:Uber Eatsがチェコ、エジプトなど7カ国から撤退、成長が見込めるマーケットに注力

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:ブラジル 差別 中南米

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

社会正義のために行動することは企業使命から「気を散らす」ことにはならない

著者紹介:Eileen Burbidge(アイリーン・バーブリッジ)氏。ロンドンに拠点を置くアーリーステージテクノロジーベンチャー基金であるPassion Capital(パッションキャピタル)のビジネスパートナー。英国大蔵省フィンテック特使。

ーーー

ご存じかもしれないが、Coinbase(コインベース)のCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏が、企業ブログで「Coinbase is a mission focused company(コインベースは使命に注力する企業)」という記事を書いた。この記事は賛否両論を巻き起こし、その議論はしばらく続いている。私はこの件について個人的にそれほど関心がなかった。

Twitterでリツイートを1回、リプライを2回行い、「いいね」を数回押した程度だ。しかしその次の日に、あるジャーナリストから、この件について記事を書いているのだが、そこに掲載できるコメントはないかと尋ねられたため、1、2行のコメントを送ることにした。だが結局、最後には次のような月並みな文に落ち着いた。

これは非常に敏感かつ微妙で、個人的な話題であり、よく考えずに軽率な意見を言うような無責任なことはしたくない。

実際、質問に回答しないことにより責任を回避することは非常に重要であると私は思う。

アームストロング氏の意図は理解しているつもりだ。テクノロジー企業として(またはその他の分野で)進歩的であると見なされることを除けば、コインベースがさまざまな意見を持つ人を尊重する包容力のある企業となることを望んでおり、政治運動や社会運動によって分裂した「気を散らされる」(本人の発言)ような職場にはしたくないということだ。

しかし、アームストロング氏の記事は、同氏が非常に恵まれた特権階級であることを印象付ける結果となった。コインベースのCEOとしての仕事が楽であるとか、人生で苦労していないとかということを言っているのではない。社会運動によって「気を散らされたくない」と考えていることを言っているのだ。人権に関心を持つこと、自分たちの周りで起こっていることが正義かどうか考えることによって気が散るというのだから。

つまり、アームストロング氏は、毎朝、目を覚ました時に、制度化された人種差別や組織的な迫害が自分に及ぼす影響について心配する必要などない類の人なのだ。テールライトが割れているからといって運転している車を問答無用で止められ、車内を物色され、車外に出るようにと命令される(場合によってはさらにエスカレートする)ような事態に自分が遭うとは夢にも思っておらず、性的嗜好について憶測されて嘲笑や身体的な危害を受ける人の気持ちもまったく理解できない。米国における白人至上主義の高まりによって、企業使命への「注力」に影響が出るなどとは考えてもいない。職場で無視されたり、中傷されたり、無礼に話に割り込まれたりすることを心配する必要がない類の人なのだ。

アームストロング氏の記事を読んで、夏のころに何人かの友人が話していたことを思いだした。友人たちは、米国のBlack Lives Matterの抗議活動に関して、警官による暴力行為の動画をいちいち見ないようにすると言っていた。確かに、私はそのような動画をいささか見すぎていたかもしれない。手助けしたり何かを変えたりできないことへのフラストレーションや無力感を募らせていただけだったのだから。それでも、友人たちは、次々に公開される動画を見なくてもよいのは一種の恵まれた特権だと認めていた。

そう、友人たちは動画を見なくてもよかった。もちろん、動画を見るように強制されている人は誰もいない。でも、友人たちにとって不公正や不公平は心に焼き付いた禍根ではなかったため、スイッチを切りさえすればそのことを忘れられたのだ。この特権を持つ人たちにとって、動画の中の出来事は他人事である。道を歩く際にも、警察と話す際にも、何ら影響はない。警官による暴力行為の犠牲者が家族や身近な友人、顔見知りの人なのではないかと心配することもなく、そもそもそんなことを考えもしない。

ブライアン・アームストロング氏は自分の発言の場やリーダーとしての地位を利用して政治的な談話を発表することはないと書いたが、これは同氏がこの特権を持っているから言えることである。他の人たちは、不公正への懸念や恐れから、自分自身や他の人、特に発言力の弱い人や声を上げられない人のために口を開くことを余儀なくされているのだ。

アームストロング氏は記事の中で、コインベースが、社会的偏見を受けている背景を持つ求職者を採用すること、無意識の偏見を減らすこと、社会的背景・性的嗜好・人種・性別・年齢などにかかわりなくすべての人が受け入れられる環境を促進することといった「企業使命の達成に役立つことに注力する」と繰り返し述べている。アームストロング氏がこのような分野の重要性を認識しているのは喜ばしいことであるが、この記載のすぐ後で同氏は、コインベースが「広範な社会問題」に関与したり政治運動を唱導したりすることはないと述べている。社会の最初の基本的な権利が独りでに出来上がった、とアームストロング氏は考えているのだろうか。

性的嗜好・人種・性別・年齢が異なる人の間での平等性を確立しなければならないということ自体がそもそも奇妙であるが、そのような平等性がこれまで常に労働法で保護されてきたわけではない。私は女性が妊娠を機に解雇されるのを何度も見てきた。これはまさに「広範な社会問題」に関係することである。これまでに法の下での公平と平等がある程度実現されてきたものの、この権利の基盤はいまだに信じられないほど脆弱である。アームストロング氏はこれまでに確立されてきた権利を擁護して支持するが、さらに積極的に関与する理由はないと述べたが、そのような主張は合理的と言えるだろうか。同氏の関心がある分野に関していえば、これまでの議論と運動によって権利が十分確立されており、残っているその他の分野については「気を散らす」ものだと言わんばかりである。

そして、その確立されている権利というのが、特権である。

もちろん、コインベースはアームストロング氏の会社であり、その会社にふさわしい「使命」や規則を決めるのは紛れもなく同氏の特権である。ある人たちはアームストロング氏の主張への同意を表明しており、「勇気を持って」この主張を行っている同氏を称賛するとまで言っている人もいる。私が懸念しているのは、アームストロング氏や同氏の支持者たちが自分たちの特権の限界を理解しておらず、テクノロジー企業・業界の最近の進展や積極的な論議に大きく逆行する可能性があるということだ。近年、立場を明確に表明するブランドや企業に消費者や購買力が引き寄せられている証拠を数多く見てきた。

雰囲気が良いだけ、単にノリが良いだけでは、ブランドが成り立たなくなっている。社会的不公正に対して口を閉ざしていると、消費者の声が聞こえなくなる。特定の人やグループに対する人種差別や迫害を助長したり許容したりする人と関わりがあるブランドであるということ自体、消費者がそのブランドの利用を再考する十分な理由となる。商品やTVコマーシャルで社会運動や人権を公に支援すれば、株価も上がる。商品やサービスがますますコモディティ化する中で、消費者は自分たちの思想を反映するブランドや製品を探すようになってきた。

企業やそのリーダーが政治には関与しないと言う風潮が、あまりにも長い間、許容されてきた。しかし最近、この風潮が変化している。例えば、英国におけるEU離脱の是非を問う国民投票や2016年の米国大統領選挙などの際に、企業やブランドの価値が試され、消費者からの評価が変わった。消費者やすべての株主にとって、このトレンドを逃すのは残念なことである。

企業のリーダーが社会活動によって「気を散らされたくない」といった意見を主張する場合は、その企業の投資家、株主、従業員が、対話や行動によって成し遂げられる影響の大きさを実証する一助となってほしいものである。

沈黙を守る人たちではなく、チームのメンバーや同僚を支えようとする人たちこそ、最高の仕事をして、最高のチームを形成する人たちなのである。

関連記事:起業家精神とソーシャルグッドとしての投資

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:コラム 政治 差別

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

GreylockとMLTはテック業界の富のサイクルに多様化を促す約100億円のファンドを創設

Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)は、Management Leadership for Tomorrow(マネージメント・リーダーシップ・オブ・トゥモロー、MLT)と手を組み、テック業界の多様性とインクルージョンの問題に取り組むことにした。

「これは総合的なアプローチだというのが私たちの見解です」とMLTの創設者でCEOのJohn Rice(ジョン・ライス)氏はTechCrunchに話した。「これは、単なるコーディングやメンタリングやフェローシップのプログラムではありません。それらも大変に素晴らしいものです。重要でもあります。しかし私たちが訴えているのは、これらすべてを採り入れた長期的な視野が必要だということです。一気に方向転換して、テック業界のエコシステムが最大の力を入れている分野にマイノリティーの参加を増やすことは可能だと、私たちは見ています」。

手始めに、Greylockはその多面的なパートナーシップを活かし、専門技能を持つ黒人、ラテン系、米国先住民およそ8000人を擁するMLTのネットワークとつながり、彼らを同社のポートフォリオにある企業の有望な働き口に結び付ける。さらに、GreylockとMLTはともにそれらの企業の離職防止に協力し、同時にMLTに登録した専門家たちがベンチャービジネスでキャリアを積めるように支援する。

「Greylockで働きながら、20年間テック業界のエコシステムを見てきてハッキリしてきたのは、私たちには特に驚きはしませんが、現代のテクノロジーは富を生み出す最大の機会だということです」と、GreylockのパートナーであるDavid Sze(デイビッド・ジー)氏はTechCrunchに話した。「それはこれまでも富の最大の生成器であり、おそらく今後もそうあり続けるでしょう。ここ当面はね」。

しかし、最大の経済的利益は企業創設者、初期の従業員、投資家の元に集まる。そこから、この富を生み出すサイクルの中で、やがて次世代のスタートアップの創設者となる初期の従業員やFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)といったトップ企業出身者のネットワークができ上がったとジー氏はいう。

「このサイクルは繰り返されます」とジー氏。

そしてベンチャー投資家たちは、そんな急成長企業に在籍経験のある人たちを支援したいと必死になる。

「これがシリコンバレーの仕組みです」とジー氏。「それ自体がソーシャルネットワークなのです。しかし問題は、黒人やラテン系や米国先住民の人たちが、テック系スタートアップ、ベンチャー投資、そしてそのネットワークで極端に置き去りにされていることです。結果として、それが悪化因子となっています」。

このシステムの中の人たちにとって、そこは自分の都合のいいように作られている。だがそのために取り残された人たちには、ますます入りづらい場所になっていくとジー氏は話す。

「それに、ベンチャー投資家であれテック系スタートアップであれ、そこを正す能力が私たちにはまったく欠けていることを、素直に認めなければなりません」とジー氏。「歴史的にも、多様性やインクルージョンという面でのトップダウンの視点がないまま、システム発展させてしまった。まさに、そこを変える必要があります」。

GreylockとMLTが手を結び、彼らが支援するテック系スタートアップに黒人、ラテン系、米国先住民の人々をもっと多く送り込もうとする最大の理由はそこだ。またそれは、供給の問題ではないとジー氏は話す。優れた人材はあり余っているからだ。もし供給に問題があるとするなら、「その問題は私たちの側にあります」と。

「人材の側ではありません」とジー氏。「人材は豊富です。長年かけて拡大してきた今のシリコンバレーのネットワークとシステムが、そうした人たちの受け入れを推進してこなかったことに責任があります」。

Greylockのパートナー企業も、この初のインパクト投資に500万ドル(約5億2800万円)を寄付している。これにともないMLTは、Greylockの10億ドル(約106億円)規模の最新ファンド(Greylockリリース)のリミテッドパートナーとなった。

「私たちには、リミテッドパートナーとの長い歴史があります」とジー氏は話す。「新しいリミテッドパートナーは滅多に作らないため、彼らが加わってくれたことを本当に嬉しく思っています。彼らのおかげでパワー倍増です」。

このパートナーシップに期待されるのは、他のベンチャー投資ファンドにもこの考え方が広がることだとジー氏はいう。ライス氏は、これがテック業界の他のリーダーたちの関心を集め、方向転換の力になってくれることを期待している。

「リーダーたちは、今、この極めて重要な時期にあたり、私たちが今こうしている理由について、もっと意識を高める必要があります」とライス氏はいう。「リーダーたちはより深い見識を得るだけでなく、さらに深い見識を学ぶ責任感を持たなければなりません。なにも、人種差別の歴史の専門家になる必要はありません。彼らがよく知っていること、つまりAIやビットコインに関する理解と同じぐらいに、理解すればよいのです。わかって欲しいのです」。

またライス氏は、リーダーたちはベンチャー投資家が企業への投資について考えるときや、自社の成長について考えるときと同程度の厳格さで、総合的アプローチに取り組むべきだと話す。

「それと同じぐらいの厳格さで私たちのアプローチに取り組ままなかったり、また多様性に対して適当に選んだ行動で方向転換を図ろうと軽く考えるようでは、行き詰まります。私たちは方向を変えるのです。それには総合的なアプローチが欠かせないのです」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Greylock Partners

画像クレジット:iStock/Getty Images Plus / Getty Images

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

「人材パイプラインの問題」など存在しない、テック業界の黒人求人活動と採用後の実態

テック業界は白人男性が圧倒的多数を占める場として知られるようになった。しかし、世間で広く信じられている人材パイプラインの問題というのは虚構であり、実際の問題は定着率の低さだ。

Black Tech Pipeline(ブラック・テック・パイプライン)は人材パイプラインの問題という神話の偽りを暴き、黒人テクノロジストたちの就職活動をサポートすることを目的としている。Pariss Athena(パリス・アテナ)氏によって創業されたブラック・テック・パイプラインには3つの主要サービスがある。誰でも料金を支払えば掲載してもらえる求人掲示板、求人およびコンサルティングサービス、およびイベントの講演候補者とのコネクション形成の3つだ。

「ブラック・テック・パイプラインの目標は、黒人テクノロジストのコミュニティが存在していることを広く世間に知ってもらうことだ」とアテナ氏はいう。「我々は黒人テクノロジストたちにフォーカスしている。『人材パイプラインの問題』全体が嘘であることを世間に知ってもらいたいからだ。黒人テクノロジストたちはテック業界に存在している。実際にそこで何年も働いている。ベテラン社員、中堅社員など、経験年数もさまざまだ。でも、それだけでなく、テック業界外の人たちにも波及効果を形成して、彼らに、『ここにあなたと同じような人たちのコミュニティがあって、あなたの就職活動をいつでもサポートしますよ』と伝えたいと思っている」。

現在、データベースには700人近くの黒人テクノロジストが登録されている。7月現在、経験年数ゼロの応募者は8.66%、1~2年相当の経験者は37.33%、2~3年の経験者は27.33%、5~10年の経験者は22%、10年以上の経験者は10.5%となっている。

求人掲示板に掲載された企業は、ブラック・テック・パイプラインの顧客に対して料金を支払う。そうした企業はカスタマイズされたランディングページで、空きのある職種、そうした職種の価値、ダイバーシティとインクルージョンに関する自社の考え方を説明できる。また、その企業は、ブラック・テック・パイプラインのニュースレターやソーシャルメディアプラットフォームでも取り上げられる(両方合わせて4万人を超えるフォロワーがいる)。

「自分がマイノリティーとなる可能性が高い職場で働くということの意味をわかりやすく説明したいと考えている」とアテナ氏はいう。

アテナ氏は、最初の会社でソフトウェアエンジニアの職を解雇され、ツイッターでアクティブに発信するようになってから、黒人テクノロジストのデータベースを作成するというアイデアにたどり着いた。

「実際に作成作業に取り掛かってみると、本当に小さなコミュニティだったが、黒人テクノロジストのコミュニティが存在していることに気づき、興味深く感じた。このボストンという土地柄を考えるとなおさらだった(どこでも状況は同じだと思うが)。それに、私は開発チームで唯一の黒人ソフトウェアエンジニアであったばかりでなく、私がこの業界で働きだしてから、会社全体で黒人は私一人だった」とアテナ氏は語る。

「自分のような黒人エンジニアを見ることはほとんどなく、『ああ、この業界には黒人はいないんだ』と思っていた。ところが、わずかだけど存在することがわかって、『いるじゃない。じゃあ、世界中にどのくらいいるんだろう』と思い、ツイッターで『Black Twitter in tech(テック業界の黒人ツイッター)なんてどうかな』とつぶやいてみた。そのツイートが意外にもあっという間に広がり、世界中の大勢の黒人テクノロジストたちがどんどん投稿してきて、彼らの写真と業界での仕事内容の説明からなる長い長いスレッドが出来上がってしまった。一夜にして、このムーブメントが起こり、Black Tech Twitter(ブラック・テック・ツイッター)のコミュニティが形成された」。

その同じ週に、さまざまな企業がアテナ氏に接触してきて、黒人の求人活動を手伝って欲しいと依頼してきたという。アテナ氏は求人活動の経験などなかったが引き受けた。求職者と雇用主をつなげるために人材データベースを作成し、自動的にデータベースを検索する付随のアプリケーションも用意した。

活動を始めた頃、同氏は、多くの応募者が採用はされているが、その多くは定着していないことに気づいたという。

「つまり問題なのは定着率だったというわけ」と同氏はいう。「白人が圧倒的に多い環境でただ一人の黒人として働いた経験のある者として、何が起こっているのかよくわかった」。

こうした経緯で、アテナ氏はコンサルタントパッケージを作成し、企業に課金するようになる。同氏のコンサルティングを介して応募者が採用されたときは常に、入社後の90日間、隔週でチェックを入れ、応募者の社内での状況を確認するようにした。

「それが、黒人に悪影響を及ぼす会社に応募者を送り込んでいないことを確認するための方法だった」と同氏はいう。「そして応募者の同意を得て、彼らの安全を考慮した上で、彼らから受け取ったフィードバックを雇用主側に伝えるようにした」。

目的は、雇用主に、自社の労働文化、および偏見が埋め込まれたシステムやプロセスを改善してもらうことだ。アテナ氏は当初、このサービスを、単純にツイッターのダイレクトメッセージを使って無料で行っていたが、その後、同氏の立ち上げた会社であるブラック・テック・パイプラインが提供するサービスの一環として雇用主に課金するようになった。

同氏はブラック・テック・パイプラインにかなりの労力を注ぎ込んでいるものの、まだフルタイムの仕事にはなっていない。ゆくゆくはそうしたいと同氏はいう。理想は、コンサルティングの仕事の比率を上げることだという。

「雇用主のためではなく求職者のための社外人事部のようなこの仕事が本当に気にっている」と同氏はいう。「私の仕事は企業を保護することが目的じゃない。企業がひどい有害行為をしていてもそれをカバーしてよく見せるような、そんな仕事はしていない。応募者が採用された後、良い経験を積んでいるかどうか確認し、もしそうでなければ、状況を説明してもらって、対処するのが私の仕事だ。それが本当にやりたいことだ。つまり、変化を起こし、雇用主側に約束を守らせること。演技だけで何も変えようとしない人とは仕事をしたくない」。

これまで12社の求人活動を手伝ったが、採用されたのは9人だけだ。厳密にはもっといたが、「採用されたものの、長続きしなかった人は含めていない」とアテナ氏はいう。低い定着率には、同氏が大企業で経験したいくつかの問題が関連している。

そうした問題の1つに、変化を実現したいと本当に思っている社員と、あまりその気がない上層部との間の断絶がある。また、採用はされたがマイクロアグレッション、つまり排除されていると感じさせる何気ない言動を経験して辞めざるを得ない状況に追い込まれる人もいる。

「そうした事態が起こると、マネージャに報告するのだが、彼らもどう対応してよいのかわかっていない」とアテナ氏はいう。「実際にどの程度深刻なのかわからないとか、偶然じゃないのかといった答えが返ってくる。このように雇用主側に分かってもらえないときは、実際に調査してフィードバックを報告し、その会社との契約を終了する。現在のプロセスを詳細に見て、改善点を指摘するようなことはしない。そうした話の分からない雇用主にそこまでのサービスは提供しなくなった。さっさと契約を終了して、次に進むだけだ」。

関連記事:黒人女性起業家のための資金調達への道を拓く「When Founder Met Funder」イベント

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

人種差別、がん、離婚などのトピックを扱う子ども向け書籍のスタートアップ、創業から現在に至るまでの歩み

企業家であり父親でもあるJelani Memory(ジェラニ・メモリー)氏は、長い間、子ども向けの本を書きたいと思っていた。同氏は、自分が経営するスタートアップであるCircle MediaのシリーズB投資ラウンド中に、燃え尽きたように感じ、もっとクリエイティブで充実した何かを始めたいと思い始めた。これが、A Kids Book Aboutを創業するきっかけとなった。A Kids Book Aboutは、親が子どもといっしょに難しいトピックや会話に挑むのを支援する書籍出版プラットフォームだ。最初に出版された本のタイトルは『A Kids Book About Racism』だった。

メモリー氏は次のように述べている。「私自身、父親として子どもたちと人種差別に関する会話をしようとしていた。子どもたちもこの本を気に入っていた。この本を読んだ後、子どもたちは新しい質問をいろいろとしてきた。人種差別という話題についてそんな質問を子どもたちから受けたことはそれまでなかった」。

メモリー氏がこの本を友人や同僚にも読んでもらったところ、他のトピックについても本を書いたらどうかと勧められた。

同氏は次のように語っている。「それがすべての始まりだった。朝起きたときも、夜寝る前も、日中仕事をしなければならない時間もそのことで頭がいっぱいだった。このような本が必要だ、少なくとも自分の子どもたちには絶対に必要だと直感的に感じていた。一部のトピックは、子どもたちとの会話で取り上げることがあまりに難しいと感じていたからだ。私は自分がオープンな父親で、子どもたちとさまざまなことを話していると思うが、中には取り上げにくいトピックもある。取り上げるつもりでいても、何と言ってよいかわからないこともある」。

これには多くの人たちが共感するのではないか。George Floyd(ジョージ・フロイド)氏が警官に殺された翌日、『A Kids Book About』シリーズは、その前の月全体と同じ冊数が1日で売れた。そして、その勢いは止まることがなかったそうだ。その翌日の売り上げは2倍、さらにその翌日も2倍になり、その後も安定した売り上げを記録した。10日という短い期間で、A Kids Book Aboutは100万ドル(約1億600万円)を超える収益を達成した。

メモリー氏はこう述べている。「正直なところ、あの時点の在庫で年末まで十分に持つだろうと思っていた。だが、2つのタイトルを除き、すべて売り切れてしまったのだ」。

6月のある時点で、入荷待ちは5万冊ほどになっていた。

メモリー氏は次のように語っている。「大人たちもやり方がわかってきて、子どもたちとこうした有意義な会話ができるようになっていった。人種差別に関する本が本当によく売れたが、読者の意欲は素晴らしく、がん、フェミニズム、共感、マインドフルネスといったテーマの本が瞬く間に売れていった。見ていて快感だったよ」。

A Kids Book Aboutは2019年に正式に創業し、同年10月には12タイトルが発売された。現在は25タイトルが販売されており、今後さらに増えていく予定だ。A Kids Book Aboutは直販ビジネスを主体とした「かなりユニークで新しい出版モデル」だとメモリー氏は説明する。

同社では、少人数の集中的なワークショップによって本をあっという間に書き上げてしまう。まず作家に声をかけ、会社のビジョンとミッションについて説明し、その作家と本を共同で執筆する。本を出した経験がない人を意図的に探しているが、以前に本を出した経験がある作家もいる。

メモリー氏は次のように説明している。「本を出した経験がある人となると、大抵は、同性愛者ではない白人の男性になってしまう。我々としては、個人的にさまざまな経験をしており、実体験を通してそのトピックの裏も表も知り尽くしている人を求めている」。

Image Credits: A Kids Book About

出版業務に話を移すと、A Kids Book Aboutでは、本の収益の10%以上を印税として作家に渡すという。従来の出版社の印税は6%程度だ。また、書店に並ぶまでの平均日数は45日と大変短い。従来の出版業界では18か月もかかるところだ。

新型コロナウィルス感染症のパンデミックが発生したとき、A Kids Book Aboutでは、このトピックを取り上げる必要があると考えた。そこですぐにゴーサインを出し、ある社会疫学者と協力して4日間で無償の電子ブックを作成した。書籍版は来月、先行予約を開始する。

フロイド氏の死によって火がついた大きな社会運動の最中、同社では、人種をテーマにした本を追加する必要があると考えた。

メモリー氏は次のように述べている。「私の書いた『A Kids Book About Racism』は人種差別についての会話を始める良いきっかけにはなると思うが、このテーマであと数冊は出す必要があると考えた。今、白人の特権に関する本を急いで執筆しており、今年の秋に出版する予定だ。また、人種差別シリーズの最後の分野として使えるよう、組織的人種差別についての本も執筆中だ」。

A Kids Book Aboutのビジネスのやり方で従来と異なる点がもう一つある。資金調達の方法だ。資金調達プロセスでは、投資家が自分を選ぶだけでなく、自分も投資家を選ぶ、とメモリー氏は言う。

メモリー氏はこう説明している。「これによって、多くの無益なやり取りを回避できる。もちろん、投資の申し出の一部を断る必要もあった。しかし、何よりも、視野を広げて、非白人の投資家を増やすことができるのだ」。

メモリー氏は、スタートアップに今まで投資したことがない投資家も探した。

「適格投資家からだけでなく、適格投資家以外の人からも資金を調達する余地を残しておくことがとても重要だった。富の連鎖がこのまま続くと、富める者だけがますます富むという結果になることがわかっていたからだ」と同氏は述べている。

A Kids Book Aboutは、Cascade Seed Fund、Color Capital、Black Founders Matterなどの一握りのシードファンドから100万ドル(約1億600万円)を調達した。

メモリー氏は次のように述べている。「がんや人種差別などのトピックを扱う子ども向け書籍の直販スタートアップなど、ベンチャーキャピタルにはあまり受けない。私が非白人の創業者であること、またこれが2度目の創業であることもあり、投資家に感銘を与える話をすべきだと何度も勧められた。そのたびに私は、『わかっていない。これは慈善事業じゃないんだ』と答えた。そうした人の投資はすぐに断った」。

メモリー氏によると、eコマースや消費者向けファンドを除けば、全体として、投資家たちの反応はとても良かったという。だが、出版業界について、また同氏のビジネスが今までにないものだということについて、よく分かっていない投資家だけになってしまうこともあったという。

メモリー氏は次のように語っている。「大半の投資家は自分のことを、恐れずにリスクを負う人間だと思っているようだが、私に言わせれば、彼らは地球上で最もリスクを嫌う人たちだ。資金調達とはつまり、自分のしていることを本当に理解してくれる真の支援者を見つけることだ。このビジネスのために100万ドル(約1億600万円)を調達できたことに今でも少し驚いている。しかも、その半分はパンデミックによるロックダウンの真っ只中に調達できたのだ。でも、素晴らしい結果を出していることを書いても、もう問題ないだろう。あの当時、すでに多くの人たちと話をしていたことも。数日で50万ドル(約5300万円)を売り上げるようになった頃には、自分たちとは考えが合わないか、単純に資金の割り当て先を確保できなかったという理由で、かなりの数の投資家たちの申し出を断るようになっていたことも」。

関連記事:Microsoft Azureの「読む能力」をアップするImmersive Readerが一般公開へ

カテゴリー:EdTech

タグ:A Kids Book About アントレプレナーシップ 差別

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

Pinterestが初の黒人ボードメンバーを発表、不動産会社社長でマルチメディア制作会社の元幹部

Pinterest(ピンタレスト)は、不動産会社のSkywalker Holdingsの社長で、マルチメディア制作会社のHarpo Studiosの元幹部であるAndrea Wishom(アンドレア・ウィショム)氏を取締役に任命した。今回の任命により、彼女はPinterest初の黒人役員、女性役員としては3人目となる。

同社は2016年に、元Amazon幹部のMichelle Wilson(ミシェル・ウィルソン)氏を女性としては初の取締役会メンバーに起用した。ウィルソン氏は、同社初の社外取締役でもある。

ウィショム氏は声明の中で「私は、創造的にも文化的にも挑戦することにインスピレーションを受けてキャリア全体を過ごしてきました。Pinterestのコンテンツとメディアへの拡大に特に興味を持っています。従業員と経営陣の間で新しい対話の機会を設けるというベンのビジョンにも同様に興味があります。予想外のことに目を向けつつ、異なる視点を議論に持ち込みたいと考えて。取り組むべき真の課題についての責任は私にもあります。Pinterestが前進し続ける中で、意見に耳を傾け、自分の視点を共有し、指導を提供することを約束します」と述べている。

PinterestのCEOであるBen Silbermann(ベン・シルバーマン)氏は声明の中で「数カ月におよぶ候補者との会議を経て、ウィショム氏の就任が決定した」ことを明らかにしている。また「いくつかの理由からウィショム氏が際立っていた」とも述べている。

「彼女は、世界中のオーディエンスに向けてポジティブでインスピレーションを与えるコンテンツを作成する専門家であり、尊敬、誠実さ、包容力、サポートなどの企業文化を構築することを強く支持しています。アンドレアはシリコンバレーの外でキャリアを積み、役員と従業員の関係を再構築するビジョンを持っています」とシルバーマン氏。

この発表は、Pinterestの従業員が性別や人種差別に関連した制度変更を要求するために仮想的なウォークアウトを行った数日後だった。このウォークアウトは、Pinterestの元従業員がジェンダーと人種差別に反対する発言をしたことに直接反応した運動だった。先週、元Pinterest COOのFrançoise Brougher(フランソワーズ・ブローガー)氏は、性別差別、報復、不当解雇を主張して同社を訴えた(未訳記事)。それに先立ち、Aerica Shimizu Banks(エリカ・シミズ・バンクス)氏とIfeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏もまた、Pinterestの差別を訴えてい

「これらの差別は個別のケースではありません。むしろ、これらの差別はPinterestの従業員を傷つけ、愛する人生を創造するためのインスピレーションをすべての人にもたらすという私たちの使命の達成を妨げている組織文化を代表するものです。私たちは、Pinterestが新規採用者に向けたダイバーシティ(多様性)目標を掲げ、ダイバーシティとインクルーシブ(機会均等)雇用のリーダーであることを認識しています。しかし、それだけでは十分ではありません。ダイバーシティ目標はボトムアップだけではなく、トップダウンから適用する必要があることが明らかになってきました。多様で包括的なリーダーシップは、従業員の差別やハラスメントを防ぐだけでなく、世界規模で通用する製品を構築するのにも役立ちます」と同社の従業員は嘆願書に書いている。

同社の従業員は、昇進レベルと定着率に関する完全な透明性、従業員の総報酬の透明性、CEOに報告できる2つ階層の役職についている従業員は、少なくとも25%の女性と8%の少数派代表の従業員を含めること、CEOに報告する第3階層のダイバーシティ目標への約束を要求している。

関連記事
Pinterest社員が人種差別と性差別を訴えてストライキを実施
多様性、公平性、機会均等を実現するための初心者向けガイド

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Pinterest 差別

画像クレジット:Erika Dufour

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

Z世代からシリコンバレーへのメッセージ「 👁👄👁」が意味するものとは

編集部注:本稿を執筆したRavi Mehta(ラヴィ・メータ)は、消費者向けテック企業のリーダーで最近までTinder(ティンダー)の最高製品責任者を務めていた。その前は、Facebook(フェイスブック)、TripAdvisor(トリップアドバイザー)、Xbox(ゼロックス)で製品担当リーダーを務めた経験を持つ。

多様性に富む若い起業家や技術者で構成されるあるグループが、有色人種やLGBTQコミュニティを支援する3つの慈善団体―Okra Project(オクラ・プロジェクト)Innocence Project(イノセンス・プロジェクト)Loveland Foundation(ラブランド・ファウンデーション)―への寄付金として20万ドル(約2151万円)をわずか36時間で調達した。

どうやって、そして何の目的で、そんなことができたのだろうか。

この質問に対する答えは、テック業界の未来を理解する上で重要である。今回の出来事はZ世代が起業する方法とその理由を示す最初の実例だからだ。「 .fm」とその仕掛け人たちは、今の若者文化に広く見られるトレンドを反映している。

VCは注目すべきだ。なぜなら、この若者たちこそ次のFacebook(フェイスブック)を創り出す者たちだからだ。

VCでなくとも、誰もがこうした動きを喜ぶべきだろう。若い技術者たちが、新しい価値観のもとに新しい未来を創り出そうとしているのだ。彼らの価値観は、過去のソーシャルメディアにあふれる屈折した動機とオンラインでもオフラインでもより良い世界を作りたいという純粋な欲求が交錯する中で成長してきた経験によって培われたものだ。

今回の一連の出来事は米国時間6月25日木曜日の夜、あるグループが仲間内でとあるTikTok(ティックトック)ミーム動画を繰り返したところから始まった。今の世界では、言葉は常に変化している。「 」は「これが現実(It is what it is)」というフレーズの特殊な解釈として出現した。 「 は自分たちの周りに広がる混沌した現実の中で何もできず、逃げ道もない状況を表している」とJosh Constine(ジョッシュ・コンスティン)氏は説明する。

このグループは次に、「 」をTwitter(ツイッター)のハンドルに追加して、架空の招待制ソーシャルアプリ「 .fm」についてツイートし始めた。これが意外にもどんどん拡散し、内輪ネタのジョークが次々と投稿されて制御不能の状態となった。さらに、グループのDiscordサーバーでは次に何をやるかという話題で盛り上がった。そこで、瞬発的に生み出されたこのエネルギーを社会貢献につながる方向に向かわせることはできないだろうか、と皆が考え始めたのだ。

同期型ソーシャルアプリRealtime(リアルタイム)の創設者で「 .fm」の「筆頭仕掛け人」でもあるVernon Coleman(バーノン・コールマン)氏は次のように話してくれた。「ミームとして始まったことが、あっという間に盛り上がった。これはチャンスだと思った。この勢いを社会貢献に変えていく責任があると感じたんだ。スキルのある創造的な人たちが集まって、リアルタイムにコラボレーションしたときのパワーは本当にすごいと思う」。

何にフォーカスすべきか、という問いに対する答えは明白だった。6月26日金曜日にこのグループは次のように投稿した。「難しく考える必要はなかった。今、ようやく多くの人たちが構造的な人種差別主義や黒人差別主義に気づき始めている。この火を消さないようにもっと大きなうねりを起こしていく必要がある」。

6月25日木曜日以来、このグループは2万件のメール登録と1万を超えるツイッターのフォロワーを獲得し、20万ドル(約2151万円)の寄付金を集めた。

これを「うまく考えられたマーケティングキャンペーンだ」と皮肉る者もいる。悪意のあるいたずらだという意見もある。すべてが完璧に運んだわけではないし、失敗した部分もあったことはチームも認めている。しかし、彼らが行ったこととその理由を矮小化したり過小評価したりすべきではない。

このチームは、排他性をマーケティング戦略として使うシリコンバレーのやり方を非難し、次の新しい波にいつも一番乗りしようとしているVCをうまく釣り上げ、ツイッターが持つ爆発的な拡散力を巧みに利用して世間の意識を高め、それを、しばしば見過ごされがちな慈善団体に本当の意味で役立つ寄付金という形に変えたのだ。しかも、これらすべてを一瞬で成し遂げてみせた。

60人の若いテックだ系リーダーで構成されるこのグループは、自分たちのメッセージを伝える際に大手プラットフォームのツールを巧みに使って大きなインパクトを残した。

彼らは決してツイッターのヘビーユーザーではない。大半のメンバーはフォロワー数も数百人程度で、フォロワー数が数十万人の有名アカウントの所有者ではない。しかし、テックエリートと同じくらいこれらのツールを熟知している。

今回の動きはZ世代のリーダーや活動家たちによる一連の動きの中で最新のものだ。Z世代は、ミレニアル世代やX世代の生息領域と考えられているツイッターやフェイスブックといったプラットフォーム上でも、自分たちの発言を増幅させることができる。

このような動きが最初に目撃されたのは、フロリダ州パークランドの高校で銃乱射事件が発生したときだった。高校の生徒がツイッターやフェイスブック、さらにはケーブルニュースさえも乗っ取って銃規制に関する理性的な意見を発信したのだ。そしてそれが、銃規制を求める動きへと発展していった。

この3年間、筆者は若いユーザーや製品開発者との対話に何十時間も費やしたが、これはTinder(ティンダー)の最高製品責任者、フェイスブックのユース・チーム製品ディレクターを務め、エンジェル投資家でもある筆者の仕事の重要な部分となってきた。 .fmチームによって表現される感情の多くは、Z世代全般が持つ感情を反映していると思う。

Z世代は、より良い形で次世代に渡すことなど考えもせずに現世界から最後の1滴まで利益を搾り取ることばかり考えているように見えるベビーブーム世代にうんざりしている。

Z世代は、排他的な集団や仮想的な立ち入り禁止ロープに嫌気が差している。最近の例では、招待制のソーシャルアプリClubhouse(クラブハウス)がある。クラブハウスは創業からわずか数か月で評価額1億ドル(約107億円)で資金を調達し、黒人の著名人であるOprah(オプラ・ウィンフリー)氏やKevin Hart(ケヴィン・ハート)氏をはじめとする数千人の限られたユーザーにのみサービスを提供している。

テック業界内部の人間から見ると、クラブハウスはまさに最高の場所である。しかし、部外者であるZ世代から見ると、白人ばかりの創業者や投資家たちを金持ちにするために黒人の著名人が利用された最新の例にすぎない。

Z世代の起業家やテック業界のリーダーたちは、テック業界がインクルーシブ(包含的)であることの重要性を主張しながら、その実、それをマーケティングの策略として使っている事実にうんざりしている。このやり方を最初に行ったのはGmail(Gメール)だ。Gメールは招待制を大規模に利用した最初のアプリで、その後、招待制は戦略として広く利用されるようになっていった。

今、シリコンバレー内部の人間は、2文字か3文字のメールアドレスを法外な料金(2文字のアドレスは年間999ドル、3文字のアドレスは375ドル)で提供するHEY(ヘイ)という最近リリースされたメールアプリからの招待を受けたくて仕方がないらしい 。テクノロジーに対してより公平で共感を呼ぶアプローチを取ると主張しているJason Fried(ジェイソン・フリード)氏とDavid Heinemeier Hansson(デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)氏が創業した会社が、このような短い名前で高い料金を取るという収益スキームを採用しているのは皮肉なことだ。同社のビジネスは、意図的ではないにせよ短い名前をつける伝統を持つ民族をターゲットにした不公平なものだという批判的な声もある。

最後に、Z世代はダイバーシティを説きながらそれを実践しないテック業界にも嫌気が差している。黒人やヒスパニック系の社員は相変わらず大手テック企業(とりわけリーダーレベル)で過小評価されている。こうした過小評価は起業家になるとさらにひどくなる、ベンチャーの支援を受けた創業者のうち黒人が占める割合はわずか1%にすぎない。

シリコンバレーは努力が足りない。

「テック業界のVCと雇用者数には、パイプライン問題があるという話をよく聞くが、まったくのでたらめだ。我々はプロフィールにミームを入れた人からまったくランダムに選択するという方法で、年齢、文化的背景、スキル、性別、居住地区などが異なる人たちを集めることができた。シリコンバレーの企業は、まったくランダムに採用すればそれでダイバーシティは実現できることを理解すべきだ。テック業界がアクションを起こす気なら、我々が力を合わせたら実現できるであろう魔法のような変化について想像してみてほしい」とコールマン氏は語る。

.fmのストーリーは重要な真実を語っている。たとえZ世代が望むような未来を創造する気がテック業界になくても、Z世代が自分たちで創っていくだろうから心配には及ばないということだ。

彼らに支援を。

Make the hire. Send the wire.(もっと雇用を。もっと投資を。)- The Human Utility(ザ・ヒューマン・ユティリティ)創業者兼エグゼクティブディレクター、Tiffani Ashley Bell(ティファニー・アシュレイ・ベル)氏

「 .fm」を仕掛けたチームが支援している団体:

  • Okra Project – 黒人のトランジェンダーが直面している世界的な危機に対処することを目的とする慈善団体。黒人トランスポートジェンダーの人たちにその文化独自の健康的な家庭料理と支援金を提供している。
  • Innocence Project – 無実の罪で収監されたままでいる驚くほど多くの人たち(黒人が圧倒的に多い)を解放し、そうした不当な収監の原因となっている制度を改革することをミッションとする慈善団体。
  • Loveland Foundation – 黒人の女性と少女が米国全体でセラピー療法を受けられるようにすることを目的とする慈善団体。黒人の女性と少女はセラピー治療を受ける資格があり、その治療はすべての世代にインパクトを与える。

関連記事:コロナ禍でダイバーシティを後退させないために経営者がすべきこと

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 コラム

コロナ禍でダイバーシティを後退させないために経営者がすべきこと

本稿を執筆したRachel Sheppard(レイチェル・シェパード)氏は、世界中でプレシード・アクセラレータ投資を行うFounder Institute(ファウンダー・インスティテュート)のグローバルマーケティング部門ディレクターだ。

どんな災厄でも、一番悲惨な影響を受けるのはすでに社会の主流から取り残された人々だ。だから、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン(都市封鎖)の中で、雇用や事業経営に関して、女性や民族的少数派の市民が他の誰よりも深刻な影響を受けていることも驚くにはあたらない。

今年4月、米国の女性失業率は15.5%に跳ね上がった。これは、男性に比べて2.5%も多い数字である。また、アフリカ系市民とラテンアメリカ系市民の失業率は白人よりも高く、ラテンアメリカ系市民の失業率は過去最高の18.9%に達した

女性たち―特に社会的に不利な条件下で生活する女性たち―はコロナ禍の中、自宅で介護や看護など家族を世話する責任を一手に担うことになる。そのため、職場では解雇の対象になりやすい。同時に、雇用の確保が危機に瀕している今、過小評価されている従業員の多くはこれまでよりさらに会社から軽視されていると感じることになるかもしれない。

ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包含性)が現在の状態まで推進されるに至るには、多くの苦労があった。ゆっくりと、だが確実に、ダイバーシティとインクルージョンがどの企業でも目に見えて重視されるようになってきたのだ。しかしコロナ禍により世界中の企業が窮地に立たされ、ダイバーシティとインクルージョン(D&I)推進の取り組みが後回しにされた結果、これまでの成果が危うく台無しになりそうになった。ジョージ・フロイド氏殺人事件とそれに続く抗議活動がD&Iの取り組みを大々的に再燃させたが、この勢いと決意を今後も長い期間にわたって確実に維持していくために、我々スタートアップ経営者はどうしたらよいのだろうか。

今回の衝撃的な出来事によって、ダイバーシティ推進がお飾りや企業アピールの手段ではなく、従業員1人ひとりが送る毎日の生活と切り離せない重要な要素であることをビジネス界全体が認識するようになるだろう。昨今は、消費者も、あなたと同じ職場で働く従業員たちも、社会的課題に対する意識の高い会社を求めている。だからこそスタートアップとしてバランスの取れた企業になるには、D&I推進に取り組むことが絶対に必要なのである。これは、より大規模に経済を復興させるためにも欠かせない。新型コロナウイルスとの戦いに際してD&Iの維持と改善をなおざりにすると、平等性の実現を目指す取り組みにおいて何年分も後退するばかりでなく、社会全体として力を合わせてこの動乱の時代を無事に乗り切る可能性を低下させてしまう。

D&I推進なくしてビジネス存続なし

今後、ほとんどのスタートアップが存続していくだけで精いっぱいになるのは仕方がないことだと思う。しかし、D&I推進を自社にとって不要不急の課題として脇に押しやるべきではない。不要不急どころか、その正反対の位置づけとすべきだ。ダイバーシティが優れていることは、業績も優れていることを示す指標となることが知られており、不景気の中でも成長していく可能性を高めることにもつながる。

ダイバーシティにより社内でイノベーションが促進されるという話はよく聞く。今、それがいかに重要であるかを考えてみてほしい。前代未聞の危機に直面している今、賢明なロックダウン戦略を見つけ出すには、さまざまな知見や解決策を比較検討することが欠かせない。我々ビジネスリーダーは、世界の現状がどうなっているのかを知る必要がある。そして、それを知るには、あらゆる背景の人々が何を経験しているかを理解しなければならない。

また、現在の行動が長期的に及ぼす影響も無視するわけにはいかない。存続のために会社の理念を犠牲にしてはならないのである。今、ダイバーシティを犠牲にするとどうなるのだろうか。当面の間は従業員をつなぎ留めることができるかもしれないが、それは単に彼らが失業を恐れているからにすぎない。実際は、経営者に対する従業員の信頼が損なわれ、労働市場が改善した暁には、彼らはいとも簡単に会社を辞めていくだろう。同じことは顧客にも当てはまる。今回の危機により、世間はパーパス・ドリブン型(社会課題解決を志向した経営を実践している)かつダイバーシティを実践している企業をこれまで以上にサポートするようになっている。そのため、これらの価値観を実践しない企業は取り残されていくことだろう。

雇用を増やせなくてもD&Iは推進できる

では、まだ慣れないこの新しい日常の中で、スタートアップはどのようにダイバーシティ推進に優先的に取り組み続けることができるのだろうか。確かに、これ以上雇用を増やすことはできないかもしれない。しかし、ダイバーシティを推進するには他にも方法がある。よい機会なので、ここで少し時間を取って社内の文化について見直してみよう。同僚の自宅の様子が垣間見えたり、仕事に影響する個人的な問題や、逆にプライベートに影響を及ぼす仕事上の問題について耳にしたりなど、コロナ禍により我々は自社のビジネスを違う角度から見ることを余儀なくされている。まずは、会社の文化が従業員の問題の原因にならないようにしよう。

経営者は近づきやすい存在でなければならない。中には自分が抱える問題について経営者に話すのを恐れる従業員もいる。あなたは経営者として、従業員の士気が大幅に下がっているのに何の改善策も実行できずにいるだろうか。もしそうなら、職場の雰囲気をより開放的で、誰もが参加しやすいフレンドリーなものにする必要がある。これは単にZoomで朝のコーヒータイムを一緒に過ごして楽しく会話するとか、終業後にお互い知り合う時間を設けるとかいうことではない。自分の心配事を意見として表明する従業員が何らかの煽りを食うような仕組みを社内から一掃する、意見を遠慮なく言うよう従業員に促す、上級管理職だけではなく、チーム内のどのメンバーについても、ミーティングに出席しているどの参加者についても、その貢献度を認めるという意味だ。

ロックダウンが実施された結果、多くの人がリモートで効果的に働けるということが証明された。これを今後、自宅がオフィスから遠い従業員や、子どもや高齢の親族を世話しなければならない従業員が成功するチャンスを広げるために活用できないだろうか。多くの企業の人事部では今、新規雇用を見送っていることだろう。その代わり人事部には、個々の従業員が成功できるよう、各スタッフが抱える独特の問題を見きわめて解決することに注力してもらうのはどうだろうか(こうした仕事にフルタイム社員を1人、担当者として割り当てることも検討できるかもしれない)。

このような取り組みは、過小評価されている従業員(多くの場合、職場環境について同僚よりも気苦労が多い)にとって今も、これからも居心地のよい会社を作るのに欠かせない。また、そのような従業員が成長しても、ずっと働き続けたいと思うような会社にするのにも役立つ。さらに、将来的により多様性のある従業員プールを確保することにもつながる。

雇用を増やせる場合は、より多様性のある求職者を引きつけるのに革新的なソリューションがある。Joonko(ジューンコ)が提供するテクノロジーは、募集企業側の応募者トラッキングシステムに統合でき、過小評価されている人材の中から候補者を見つけやすいようにしてくれる。Pitch.Me(ピッチミー)では、偏見を防ぐため、経験とスキルに関する情報のみが記載された匿名プロフィールが提供される。このプロフィールには、性別、年齢、民族的な背景に関する情報は掲載されていない。DiTal(ディタル)などのように、テック企業と多様性に富んだ候補者とのマッチングを行うサービスを提供している企業もある。

社内における成功の尺度を見直す

コロナ以前、あなたの会社のKPI(主要業績評価指標)は営業担当1人あたりの売上や週あたりのリード獲得件数だったかもしれない。現在、そのようなノルマは今、非現実的であるばかりでなく、より重要なこととして、同僚と比べて手持ちの時間が少ない従業員―家族を世話する責任を担う人(多くの場合は女性)や可処分所得が少ない人―にとっては、達成することが非常に困難になる。また、統計によると、民族的少数派に属する人の方がコロナウイルスの影響を受ける可能性が高い

経営者は、他の人より時間や資金が少ない従業員でも仕事で目標を達成できるような労働環境を整えなければならない。最も価値のある仕事のうち80%に、チームが持つ時間の20%が費やされているという話をよく聞く。であれば、スタッフが自分の持つ力のほぼすべてをその貴重な20%のエネルギーとして費やせるようにしよう。また、会社としての短期的な目標を見直す新たなビジネスプランを作成し、その目標を絶対に達成するための新しいメトリクスを設定しよう。そのことが、共に働く仲間1人ひとりが困難に直面しても目標の達成に向けてやる気を日々維持していくためにどれだけ重要か考えてみてほしい。さらに、従業員の福祉に配慮して柔軟性を示すことは称賛に値する特質であり、簡単に忘れ去られることはない。

ここで重要なことが1つある。各従業員が成功できるよう助けるということは、そうするために必要なリソースを各々に支給するということである。例えば相応の性能を備えたノートパソコンや他のデバイス、高速インターネット接続など、この「ニューノーマル(新たな常態)」に適応するのに必要なツールを全従業員に支給すべきである。このようなものを必要とする従業員のために投資することをためらってはならない。

キャリア開発に力を入れる

過小評価されている従業員にとって昇進は他の同僚より難しいのが常である。そのため、彼らにとってキャリア開発は非常に重要だ。マイノリティに属する人は、そうではない人に比べて、他ならぬ「ビジネス界でマイノリティだから」という理由で、ビジネス上の人脈が弱い。この悪循環と戦うことを決してやめてはならない。

あなたのチームを見渡して、キャリアアップを手助けできる人がいないか考えてみよう。今は特に過小評価されているグループを中心にそのような人材を探そう。なぜなら、過小評価されている人たちは、ロックダウンによってより深刻な影響を受ける可能性が高く、立ち直ることもより困難になりがちだからだ。彼らを利他的な動機で見ることができなくても、過小評価されている従業員を今からリーダー職に抜てきすれば地元経済の回復に貢献でき、さらには会社の業績も改善することになるだろう

もう1つの方法として、スポンサーシップ制度を設け、経営者であるあなたや他の上級管理職が選抜した従業員を直接指導し、そのキャリアアップを後押しすることができる。これは、ビジネスリーダーたちが積み上げてきた人脈や影響力をより多様な人材プールの中で均等に分け合うようなものだと考えるとよい。

自社のブランドにダイバーシティを組み込む

これまでは社内に目を向けてきたが、次に対外的な側面について考えてみよう。あなたの業界に対して人々が抱くイメージを、危機に面しているこの時期であっても好転させるにはどのようにしたらよいのだろうか。例えばファッション業界におけるブランディングのように、これまで我々が目撃してきた目に見える大きな変化は、強い影響力を持つ人たちが業界において権威のある場で決断することによって実現してきた。しかし皮肉なことにその方法は、物事をより不均衡な状態へと簡単に傾ける可能性も秘めている。

それを防ぐには、そのような重大な決断を経営者であるあなた自身が下すこと、そして他の人の賛同を集めることで団結を促すことが必要である。自社のブランドを活用して、社内で推進したダイバーシティを―例えばスタートアップ企業にアドバイスするメンターからオンラインイベントで登壇させる講演者に至るまで―対外的に行うすべてのことにおいて前面に押し出そう。対外的なマーケティングに可能な限りダイバーシティを反映させるよう意識的に取り組む必要がある。コロナ禍のせいで広告におけるダイバーシティ基準が低下するのではないかと危惧されている今は特にそうすべきだ。

過小評価されている創業者を支援する

資金に余裕がある場合、苦戦する創業者がロックダウンを乗り切れるように支援しよう。女性やマイノリティ市民によってあなたのコミュニティで経営される中小企業が支援を必要としているかもしれない。自社の従業員に支援物資やギフトを贈る計画があれば、そのための物品を、過小評価されている市民が経営する地元企業から調達するために余分の手間をかけることを惜しまないでほしい。何も難しいことではない。米国各地にあるそのような企業を見つけるのを助けてくれるWomen Owned’s business directory(ウィメン・オウンズ・ビジネス・ディレクトリ)Help Main Street(ヘルプ・メイン・ストリート)などの組織を活用すれば簡単だ。

大企業はHello Alice(ハロー・アリス)と協力して、退役軍人からLGBTQ+まであらゆるタイプの過小評価グループに属する創業者が経営する小企業へ直接資金を提供できる。IFundWomen(アイファンドウィメン)は女性が創業した事業が多数登録されているネットワークで、どの企業に出資または参画するかを利用者が自分で選ぶことができ、有色人種の女性が経営する会社だけを集めた部門もある。あなたはビジネスリーダーとして、常に多様な創業者とのコラボレーション機会を探すことができる。例えば、米国の巨大なラテンアメリカ系市場をカバーするラテンアメリカ系創業者をまとめたこちらの優れたリストをチェックしてみてほしい。こうした創業者はまた、ビジネスにおいてダイバーシティを向上させる方法も知っている。

NAACP(全米黒人地位向上協会)は1世紀以上にわたり有色人種の市民に平等の権利が与えられるよう戦ってきた。重要な改革の実現を目指す運動に参加する、頭角を現している黒人経営企業に注目する等の方法でNAACPとその取り組みを支援することもできる。

今はダイバーシティ推進の手を緩めるべき時ではない。単なるお飾りだと考えたい誘惑にかられるのはわかる。しかし、コロナ禍を乗り切るだけなく、業界全体がより平等な社会を目指して何十年もかけて苦労して築き上げてきたものを台無しにしないためにも、今こそダイバーシティを推進することが絶対に必要である。

関連記事:人種的偏見と闘うAIの新分野が求められている

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:コラム

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

フェイスブックボイコットのリーダーたちがザッカーバーグ氏とサンドバーグ氏との会談に「失望」

そもそもポリシーの欠陥とされる問題の責任をFacebook(フェイスブック)にとらせようとして始まった活動家団体の比較的小さな運動(未訳記事)は、大規模な企業の反発という形で膨れ上がり、誰の手も届かないテック業界の巨人としてその地位を謳歌していた企業を、まさかの不快な状況に追い込んだ。

#StopHateforProfit(営利目的のヘイトを阻止しよう)キャンペーンに思いも寄らぬ大手企業が数多く惹きつけられ、フェイスブックへの広告出稿ボイコットが続く中、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏、Sheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏そしてこのほど最高製品責任者としてフェイスブックに復帰したChris Cox(クリス・コックス)氏(未訳記事)は、米国時間7月7日に活動家団体と会談を行った。1時間を少し超えたこの話し合いには、フェイスブックのポリシー担当チームと製品チームのメンバーも数人加わっていた。

フェイスブックの最高クラスの幹部たちとの話し合いを終えた後、ボイコットを先導する4つの団体のリーダーたちは、この会談には失望したと明言した。「本日、私たちが発見したことはほとんどなく、ほとんど何も聞くことができませんでした」と、Anti-Defamation League(名誉毀損防止同盟、ADL)のCEOであるJonathan Greenblatt(ジョナサン・グリーンブラット)氏は話した。さらにグリーンブラット氏は、大成功を収めたこのオンライン広告プラットフォームの拡大に貢献しているヘイトや偽情報といった問題に関して、フェイスブックが「意欲も急ぐ様子も」示さなかったことに対する失望も露わにした。

Color of Change(カラー・オブ・チェンジ)の代表であるRashad Robinson(ラシャド・ロビンソン)氏は「参加したことで最高点がもらえると思っている」とフェイスブックを批判した。Free Press(フリープレス)の共同CEOであるJessica J. González(ジェシカ・J・ゴンザレス)氏も、フェイスブックには「ひどく失望した」と話している。NAACP(全米黒人地位向上協会)の代表兼CEOであるDerrick Johnson(デリック・ジョンソン)氏は、フェイスブックの取り組みを一蹴し、「行動よりも話し合いに関心がある」と同社を非難した。

#StopHateforProfitキャンペーンは、人種間の平等を求めて抗議する人たちを暴力で脅しつけるDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領の投稿には手を触れないという判断を含むフェイスブックの最新のポリシーの採択を引き合いに出し、7月はフェイスブックとInstagramに広告を出さないよう企業に訴えている。

ジェシカ・J・ゴンザレス「本日、@rashadrobinson、@DerrickNAACP @JGreenblattADL、そして私は#StopHateForProfitに関してマーク・ザッカーバーグ、シェリル・サンドバーグ、その他のフェイスブックの幹部たちと会談します。私たちの要求はすでに提示されています。このキャンペーンが始まるずっと以前から提示してきたものです」

この取り組みはADL、Color of Change、Sleeping Giants、NAACP、テック企業Mozillaなど、ひと握りの公民権擁護団体やその他の団体によって主導されている。この活動にはコカコーラ、スターバックス、フォード、ベライゾンなどの大手企業から驚くほど幅広い支持が寄せられ、フェイスブックとInstagramへの広告費の支払いを一時停止することに合意している。2020年6月末には、いくつかのアウトドアブランドもキャンペーンの参加に署名した(未訳記事)。

関連記事:Big outdoor brands join #StopHateForProfit campaign, boycott Facebook and Instagram ads(未訳記事)

キャンペーンの目標(Stop Hate For Profit投稿)には、フェイスブックに「『最高』が付くレベルの幹部」として公民権の専門家を雇い入れること、プラットフォームの利用規約に違反し削除されたコンテンツに意図せず広告が掲載された広告主のために監査と広告費の払い戻しを行うこと、そして「白人至上主義、ミリシア(武装民兵組織)、反ユダヤ主義、暴力的な陰謀論、ホロコースト否定論、ワクチンに関する誤情報、気候変動否定論」に基づくプライベートまたは公的なグループの特定と閉鎖を要求することが含まれている。

活動家団体のグループはまた、フェイスブックのプラットフォームでのコンテンツのインセンティブ構造と、トランプ政権などとの政治的関係性についても批判している。「フェイスブックは、驚異的なまでの資産を有する企業です」とボイコット運動の運営者は書いている。「人類史上最大のこのコミュニケーションプラットフォームの可能性を、善を促進する力へと作り変えるための大事業に、その資産を大量に投入せよと社会が願っていることに、フェイスブックはいつか気づいて欲しいと思っています」。

彼らは、その他のテック企業のプラットフォームに非はないとは考えているわけではない。フェイスブックに的を絞っているのは、その圧倒的な企業規模とプラットフォームの内外を問わず議論の影響が多いだからだ。「そのサイズと普及率に肩を並べる者はありません」とグリーンブラット氏は、フェイスブックの26億人のユーザー数を例にいった。

「私たちは、対話にうんざりしています。私たちのコミュニティーの危機感が大変に高まっているからです」と、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに際して有色人種の健康転帰が不自然に悪いことや、今も続くジョージ・フロイド氏の殺害による公民権運動の盛り上がりを受けてゴンザレス氏は話す。またゴンザレス氏は、フェイスブックが米国に住むヒスパニック及び黒人を「非人間的」に扱う政治広告から収益を得ていることも指摘している。

関連記事:広告主のボイコットが拡大する中、フェイスブックに米上院議員グループが白人至上主義対策で圧力

新たな公的監視が行われる中、先週、フェイスブックは反政府暴力活動を奨励する、いわゆる「ブーガルー」グループに厳し対処すると約束した(未訳記事)。しかし暴力による脅しにリンクがないブーガルーの投稿は、手つかずのままプラットフォームに残り続ける。これは、民主党の上院議員たちが、アルゴリズムによってユーザーに「おすすめ」されるそうしたグループの対処をフェイスブックに求めたその日に発表された

「私たちはジョージ・フロイドでつながっています」とジョンソン氏は対フェイスブックキャンペーンについて語った。それぞれのコミュニティーは、人種と人種に基づくヘイトの問題に対して高い基準を持つよう企業に合法的に働きかけているという。

「私たちは、ただ社会を安全にしようと訴えているだけなのです。従業員を守って欲しい。この民主主義を守る手助けをして欲しいのです」とジョンソン氏は話していた。

関連記事:Facebook bans ‘violent network’ of far-right boogaloo accounts(未訳記事)

画像クレジット:Christopher Morin/IP3 / Getty Images

原文へ
(翻訳:金井哲夫)

広告主のボイコットが拡大する中、フェイスブックに米上院議員グループが白人至上主義対策で圧力

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏に送られた新しい書簡の中で、3人の米民主党上院議員は、Facebook(フェイスブック)の最高経営責任者に対して、同社が白人至上主義を助長し、Boogaloo(ブーガルー)グループに代表される暴力的過激主義者の同プラットフォームでの結社を容認している現状(Tech Transparency Project記事)について説明を求めた。

長年の懸案だった人種差別による不平等の全国規模の監視を引き合いに出し、ハワイ州選出民主党Mazie Hirono(メイジー・ヒロノ)氏、バージニア州選出民主党Mark Warner(マーク・ウォーナー)氏、 ニュージャージー州選出の民主党Bob Menendez(ボブ・メネンデス)氏は、フェイスブックが自ら定めたポリシーと実績との乖離を問題視する取り組みの一環として、ザッカーバーグ氏に書簡を送付した。

「合衆国は、長年の懸案となっていたこの社会に蔓延する組織的人種差別の調査を開始しようとしています。あらゆる人種、年代、経歴の米国人が勇敢にも街頭に立ち、すべての人の平等を要求しています」と議員たちは書いている。

「フェイスブックはこの運動に賛同の意を表明したものの、そのプラットフォームでのヘイトの拡散を止められずにいることで、人種間の平等を約束したフェイスブックの宣言と、同社の活動と業務上の関心との間にある大きな溝が露わになりました」。

この書簡は、複数の質問への回答を要求している。一部は、フェイスブックに現在のルールの確実な施行を重ねて約束するよう求める比較的表面的なものだ。しかし、中には大変に興味深いものが2、3あった。1つは、同社プラットフォームでの白人至上主義拡散対策の担当者に明示的に任命されているフェイスブック社員の名前を示せというもの、そしてグローバル公共ポリシー担当副社長でありフェイスブックの保守派の代弁者として特に名高いJoel Kaplan(ジョエル・カプラン)氏(未訳記事)の、過激主義コンテンツへの同社の対応を決定する上での役割の詳細な説明を求めるものだ。

また3人の上院議員は、保守派の政治コメンテーターであるTucker Carlson(タッカー・カールソン)氏が共同創設者であり白人至上主義者たちとつながりのある右翼系ニュースサイトのThe Daily Caller(ザ・デイリー・コーラー)を、フェイスブックのファクトチェック・プログラムのパートナーに加えるか否かの難しい決定(The Daily Beast記事)に対するカプラン氏の影響についても問いただしている。人種間の平等を訴える人権団体のColor of Cange(カラー・オブ・チェンジ)は、フェイスブックに送った最も新しい要望書でも、カプラン氏を名指しして解雇を要求している(Color of Cange投稿)。「変化はトップから始まります。ジョエル・カプラン氏は追放すべきです」と要望書の著者たちは、ザッカーバーグ氏宛の書簡に記した。

関連記事:Facebookはポリシー違反の「報道価値のある」政治発言にラベル添付を約束、広告主の離反受け

上院議員たちの最後の質問には、ユーザーの投稿内容に対してプラットフォームは法的責任を負わないことを保証した通信品位法第230条の見え隠れする危機に関する問題も含まれていた。2020念6月にDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領は、インターネット事業を可能にし、私たちが慣れ親しんでいる現代の社会的インターネットの基盤ともなっているその強力な法律の盾に自ら攻撃を加えた(未訳記事)。

上院議員の書簡は、#StopHateforProfit(営利目的のヘイトを阻止しよう)キャンペーンを機にそのプラットフォームのポリシーを綿密に審査しようという新しい波にフェイスブックが直面している(未訳記事)この時期に届けられた。キャンペーンはAnti-Defamation League(名誉毀損防止同盟)、Color of Change(カラー・オブ・チェンジ)、NAACP(全米黒人地位向上協会)といった公民権擁護団体によって立ち上げられた。フェイスブックの広告出稿のボイコットはCoca-Cola(コカ・コーラ)、Best Buy(ベストバイ)、Ford(フォード)、Verizon(ベライゾン)など最大手ブランドが名を連ねる驚くべき規模に膨れ上がっている。さらにAdidas(アディダス)、Ben & Jerry’s(ベン&ジェリーズ)、Reebok(リーボック)、REI(アールイーアイ)、Patagonia(パタゴニア)、Vans(ヴァンズ)などのブランドも追従している。

あり得ないような異種企業の集まりであり、フェイスブックへの広告費を一時停止した動機もまた異種混合といった感じだが、この取り組みの方針と要求は明確だ(Stop Hate For Profit記事)。ウェブページには、白人至上主義に立脚するプライベートなグループと暴力的な陰謀論の排除、フェイスブックのおすすめエンジンによるヘイトグループや陰謀論グループの推薦の停止、そして「最高」が付くレベルの企業幹部に公民権の専門家を加えること、という要望が示されている。

画像クレジット: Aurora Samperio/NurPhoto / Getty Images

原文へ
(翻訳:金井哲夫)

米ベストセラー作家が語る、テック業界における人種差別

「多くの人がテクノロジーの分野における人種と人種差別について話すことの価値を過小評価しています」。そう話すのは『So You Want to Talk About Race』の著者、イジェオマ・オルオ氏である。この本は、2018年1月の初版発行から2年半で、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストのペーパーバック・ノンフィクション部門でトップに躍り出た。「人種や人種差別について話すのに、テクノロジーほど重要な分野はないと思います」と同氏は続けた。

オルオ氏と私がOne Cup Coffeeで話をしたのは、世界的パンデミックが発生する直前の1月のことだ。教会と店先を共有するこのOne Cup Coffeeは、メタドンクリニックのすぐそばにあり、余分なサービスを提供せずに「単なる利益以上のもの」を追求するコーヒーショップである。このカフェは、ワシントン州シアトルのすぐ北に位置するショアラインにあるオルオ氏の自宅からほど近い場所にある。

「私はWeb上で、アメリカにおける人種と人種差別に関する最高と最悪を見てきました」とオルオ氏は続ける。「私と私が愛する人たちは、Web上で実際に影響を受けてきました。(インターネットは)対面の空間と同じくらいリアルな空間です。私たちは、互いの見方や付き合い方がインターネットによってどのように影響を受けるか、そして不平等と不公正の問題にどう対処するかについて、必ず政治的、社会的に考えてみる必要があります」

私はシアトルの高級住宅地で、拡張を続けるAmazon(アマゾン)本社キャンパスについて調査してきた。同社のキャンパスは、建物の豪華さという点で、私が牧師として勤務するハーバード大学とMITの2つのキャンパスを凌駕している。その高級住宅地からショアラインまで車で移動するには、おそらく今まで見た中で一番大きなホームレスの野営地のすぐ近くを通らなければならなかった。私は、宗教がそれぞれ異なる学生たちで構成されるグループを率いて、ホームレスの大規模な野営地で勉強やボランティアを行ったことがある。

宗教と信仰についていえば、オルオ氏との90分間にわたる会話は、無神論者、不可知論者、および信仰心を持たずに善を行い有意義に生きようとする人たちによる半組織化された運動である「ヒューマニズム」への共通の関心をきっかけとして始まった(主な内容は以下に記載している)。私はハーバード大学とMITでヒューマニズムに基づく牧師として勤務しており、宗教に代わる一種の世俗的な選択肢としてヒューマニスト哲学について執筆している。

オルオ氏は、2018年にアメリカのヒューマニスト協会からフェミニストヒューマニズム賞を受賞した。同氏は、観衆のほとんどが自らを聡明で寛大だと考えがちな白人リベラル派という中で受賞スピーチを行った。彼らは黒いテーブルクロスの上の白い皿に盛りつけられた鶏の胸肉を食べながら、ロールパンとバターを忙しく回し、誤って水飲みグラスをカチンと鳴らしていたとき、同氏が「腰を下ろしてください」と言ってスピーチを始めてもうまく受け流していた。しかし、オルオ氏が「私が皆さんに求めるのは、他人がもたらす害をいつも探すことではなく、自分がもたらす害を探すことです」と話したとき、私の友人Ryan Bell(ライアン・ベル)が当時ツイートしたように、「そこは水を打ったように静まりかえった」。

ここで今年の1月に話を戻そう。コーヒーと紅茶を飲みながら、私はTechCrunchの「Ethicist in Residence(倫理学者・イン・レジデンス)」として1年余りにわたって執筆してきた論文についてオルオ氏に話した。その内容は、私たちが「テクノロジー」と呼ぶ世界はどの業界よりも大きく成長し、単一の文化よりも大きな影響力がある。テクノロジーは世俗的な宗教となった。おそらく人間がこれまでに作った最大かつ最も影響力のある宗教である、というものだ。

以下に続く内容からわかるように、オルオ氏は親切にもこのアイデアを大目に見て楽しんでくれたようだ。そしてとっさに、考えられるいくつかのテクノロジーと宗教の比較について話してくれた。このような話だ。

テクノロジーと多くの宗教の根本的な共通点の1つは、少なくともアメリカでは、テクノロジーは白人男性が考えるユートピアであるということだ。テクノロジーにおいては特に、白人男性のユートピアビジョンに対するカルト的な支持があり、根本的に女性や有色人種の権限を奪い、脅かしている。

私は自分自身をこのテクノロジーという新しい宗教に対して不可知論者(必ずしも無神論者ではない)であると考えている。なぜなら伝統的信仰を見ようとしていた方法で(状況に応じて善と悪の両方を行えるものが入り混じったものとして)テクノロジーも見たいからである。しかし、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のような超億万長者の起業家がますます権力を強めるとき、ソーシャルメディアの誤った情報が民主主義の運命を左右する一方で人工知能が司法制度に介入するとき、そして現在のパンデミックによって私たちの生活がますますオンライン化するとき、私自身が「予言」と言っているものを見直さざるを得なくなるのではないかと思うことがある。注意を怠れば、テクノロジーは史上最も危険なカルトになるかもしれない。

以下のインタビューの前にもう少し詳しく状況を説明すると、オルオ氏と私はこの記事(原文)のタイトルを同氏の著書と同じタイトルである「So You Want to Talk About Race in Tech」にすることで合意した。同書はすでにヒットしていたが、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の死を受け、今では全米で象徴的な地位を獲得している。

この記事は、私がTechCrunchのために執筆してきた約1年におよぶシリーズの最終回であり、テクノロジーの倫理における人と課題について詳細に分析する。これまで編集者と私は文字数15万にもおよぶ38の記事を作成してきたが、そのほとんどが、期せずしてテクノロジーの新たな世界の倫理を改革し再考するための取り組みを主導している女性と有色人種を紹介したものだ。

このシリーズでは、Anand Giridharadas(アナンド・ギリダラダス)氏とのインタビュー「Silicon Valley’s inequality machine」、Taylor Lorenz(テイラー・ローレンツ)氏とのインタビュー「the ethics of internet culture」、James Williams(ジェームズ・ウィリアムズ)氏とのインタビュー「the adversarial persuasion machine」を取り上げている。とりわけ、ジェームズ氏とのインタビューは、同氏の前雇用主Googleによる取り組みを取り上げたもので、これは私たちをひどく混乱させた。

シリーズの特集では、CEOと投資家が幼少期のトラウマを話したうえで、自らが生み出したものの道徳的価値について議論する。また、従業員ギグワーカーが、権力を握る雇用主について痛ましい真実を語る。さらにテクノロジーフェミニズム交差性社会主義に関する知見に加えて、業界における虐待荒々しい入国管理政策に立ち向かう勇敢な取り組みについても深く踏み込んでいる。

それではオルオ氏とのインタビューを紹介しよう。前述のとおり、このインタビューは現在の危機が発生する数週間前に行われたものだが、その内容は今こそ重要なものとなっている。自称「億万長者」の投資家であり、オルオ氏と同じ週に会ったもう一人のシアトル在住者、Nick Hanauer(ニック・ハナウアー)氏の言葉を借りれば、不満の矛先がいよいよアメリカの富豪に向けられた。端的にいえば、この国で白人の仲間や私が人種や人種差別について話すのは、人種差別に対して敏感だからでなく、この世界を「より良い場所」にするために行えるすべてのことをやりたいからでもなく、どうしてもそうしなければならないからである。Kim Latrice Jones(キム・ラトリス・ジョーンズ)氏が今の時代を象徴する自身の拡散動画で言っているように、「幸いにも、黒人が求めているのは復讐ではなく平等である」。

テクノロジーの世界ではおそらくいっそう、そう言えるだろう。今のところ私たちの近隣やオフィスがすべて文字通り炎上しているわけではないかもしれない。しかし炎上する可能性があるテクノロジーの世界は、失うものが最も多いのだ。テクノロジーは、新型コロナウイルス感染症やそうした不満による影響も受けることはない。もし黒人が今後数年間のうちに、テクノロジー業界でさらに持続可能な形の平等を実現できなければ、復讐が次のゴールポストになるかもしれない。そして復讐は正当化され得るのだ。

しかし私は、そこに向かいたい人は誰もいないと信じている。かつてMalcolm X(マルコムX)氏は、Martin Luther King, Jr(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)氏がバーミンガムの刑務所に収監されていたとき、Coretta Scott King (コレッタ・スコット・キング)氏を訪ねて次のように言った

キング婦人、キング牧師に話してくれませんか… 私は彼の仕事をもっと困難にするために来たのではありません。白人が別の選択肢は何かを理解すれば、キング牧師の話に耳を傾けてくれると思うのです。

現在では、MLKはほぼ文字通りの公民権運動の神になっているが、それは当然のことである。しかし私たちはいつか、願わくばこれから長く平和な時代の中で、少なくともキング牧師に匹敵するほどの影響力とインスピレーションを持つイジェオマ・オルオ氏の人生と仕事を、同氏の幾人かの仲間(その多くが黒人女性)と併せて振り返ることができるかもしれない。

一部の読者は、オルオ氏が伝えることを心ならず受け入れる必要があるかもしれないが、同氏のビジョンは今後数年間の成り行きに関するさらに楽観的な選択肢であることを覚えておいていただきたい。

では、オルオ氏に話を聞いてみよう。

編集者注:このインタビューは読者の理解を助けるための編集がなされている。

Greg Epstein(グレッグ・エプスタイン):これまで仕事においてどの程度テクノロジー業界に関わってきましたか。特に著書『So You Want to Talk About Race』が出版されてからはいかがですか。

イジェオマ・オルオ氏:私はテクノロジー産業の中心都市、シアトルで育った黒人女性として本書を執筆しました。執筆活動をする前は、テクノロジー業界で10年以上働いていました。つまり私の本は、人種や人種差別を超越したと考えられていながら明らかにそうではない環境、さらに有色人種、特に有色人種の女性が極めて少数派である環境によって大きく形付けられています。

そのため、テクノロジーについて語っていないときでも、本書の中ではテクノロジー業界が大きな存在感を放っています。なぜならテクノロジー業界の多くの人が、本書で使われている例の中に自分自身や同僚がいることを認識したからです。

私が行った講演の中で最も再生回数が多かった動画の1つは、おそらくGoogleで行ったものでしょう。テクノロジー業界の多くの人、特にここシアトル在住の人は、「ああ、彼女はここに住んでいるんだ。これを読んでみよう。人種や人種差別についていえば、今年はこの本を読むことにしよう」というように、すぐにこの本を読みました。

しかし私はテクノロジー分野に足を踏み入れるとき、この分野をリベラル派の白人優位の分野と同じように考えます。つまり私がその分野においてできることは非常に限られています。私ができる最大限のことは、その業界にいる最も少数派の有色人種が感じ、経験していることを補強することです。なぜなら私は、他の講演者では経験し得ないほどの少数派としての人生を生きてきたからです。

[テクノロジーに関連する本というアイデア]についても同様です。なぜなら私は黒人女性として、作家として、もしソーシャルメディアがなかったら、ソーシャルメディアにアクセスできなかったら、今の私はいなかったからです。

一方で、[ソーシャルメディアがもたらす]代償と、まさに同じこのソーシャルメディアで、テクノロジーを通じて、大きな場ではないにせよ、特に有色人種、有色人種の女性、LGBTQコミュニティを憎み、差別し、虐待する場が提供される方法については、議論する必要があります。

多くの人がテクノロジーの分野における人種と人種差別について話すことの価値を過小評価しています。私は人種や人種差別について話すのに、テクノロジーほど重要な分野はないと思います。私はWeb上で、アメリカにおける人種と人種差別に関する最高と最悪を見てきました。私と私が愛する人たちは、Web上で実際に影響を受けてきました。Webは対面の空間と同じくらいリアルな空間です。私たちは、互いの見方や付き合い方がWebによってどのように影響を受けるか、そして不平等と不公正の問題にどう対処するかについて、必ず政治的、社会的に考えてみる必要があります。

エプスタイン:非常にうまくまとめてくれました。テクノロジーは最高でも最悪でもあります。と言うのは、私はBlack Twitter(黒人ユーザーで構成されているTwitter)から非常に多くのことを学び、大きな力をもらいました。それからWhite Supremacist Twitter(白人至上主義のTwitter)もあります。またWhite Supremacist Lite Twitter(白人至上主義のライト版Twitter)のようなものもありますね。

オルオ氏:[テクノロジーを]宗教のように見るという[エプスタン氏の]話は興味深いですね。テクノロジーと多くの宗教の根本的な共通点の1つは、少なくともアメリカでは、テクノロジーは白人男性が考えるユートピアであるということだと思います。テクノロジーにおいては特に、白人男性のユートピアビジョンに対するカルト的な支持があり、根本的に女性や有色人種の権限を奪い、脅かしています。

エプスタイン:そのイメージが気に入りました。私とブレインストーミングをしていただけませんか。 テクノロジー業界の文化で見られる白人男性のユートピアビジョンには、どのような特徴があるのでしょうか。

オルオ氏:ユートピアはテクノロジー業界の文化の中心にいる白人男性の戦いの神話化から始まります。この考えでは、こうした男性はゼロからモノを築き上げた落ちこぼれで、孤立した存在です。また、行く手を阻む問題を解決しようとします。これが彼らのサクセスストーリー、エリートコースの驀進です。では、彼らの行く手を阻むものは何でしょうか。有色人種、彼らとベッドを共にしない女性、自動的に手に入らない人気と富、白人男性が持つスキルを誰が持っているかという判断基準で新しい階級構造から白人男性を遠ざけている古い階級構造でしょうか。

こうした考えを中心に作られた神話は非常にカルト的で非常に宗教的であるように感じます。この起源を伝える物語の一部始終は真実ではありません。

テクノロジーにおける最も大きな進歩の誕生に目を向けるなら、過剰な多くの権限があること、ルールがあるという考え、純粋に優れたメリットもあること、物事を変革するこの分野において出世するために行えることが見えてきます。そしてテクノロジーの分野で「採用基準はコーディングの腕前です」と言っているのは、実はこうした人たちです。このような人よりもうまく議論することができるでしょうか。

テクノロジー業界でまず行うことは、白人男性を根本的に中心に据えることです。そして目標は白人男性の昇進です。有色人種はそれをサポートすることも、模倣することもできます。あるいは彼らが克服すべき障害になることもできます。テクノロジー業界では誰もが成功できるという議論があります。そう言う人たちは成功への境界線をすべて取り払いました。しかし実際は自分たちの個人的な境界線を動かしただけで、有色人種と女性の境界線はすべて残したままにしています。起源を伝えるこの物語では、有色人種と女性は道具として存在しているに過ぎないからです。

私が笑ってしまうのは、教義の中でテクノロジーと同じくらいよく語られるのは変化と適応であるということ、彼らが実際の変化、特にイデオロギー的な変化に対してどれほど徹底して閉鎖的かということ、室内を見渡して自分と同じような人がいないことをどれほど恐れるか、そして物事を徹底的に突き止めて、これはうまくいっただろうかと尋ねることをどれほど怖がっているかという点です。

現在テクノロジー業界の多くの人が革新的と呼んでいるものに、革新的なものはありません。そして「私たちは、2000年前のルールにまだ固執しているのか。変化と進歩をまだ恐れているのか」といった、人々が組織化された宗教に対して抱く多くの不満は、すでにテクノロジー業界でも見られています。そして[テクノロジーのリーダーが]「いえいえ。これは従来どおりの方法です」と言っているのを目にすると心配になり、この業界はどれほど新しいのだろうかと考えます。

それでは変化が入り込む余地はどこにあるのでしょうか。私たちは試作段階を続けながら、「これは従来どおりの方法です」と言っているのでしょうか。この20年~30年間は何だったのでしょう。おかしな話ですよね。

しかし、白人男性が[ここ20~30年間の現状を]擁護するときの情熱、また変化に対する脅威を語る様子は、宗教的な情熱、インターネットを立ち上げた同じ情熱があることを目にしてきました。宗教を超えた人々についてもそう言えます。

エプスタイン:テクノロジー業界における自身の仕事について、どの程度まで公に話したり書いたりしていますか。

オルオ氏:私は[テクノロジー業界での自分の経験については]あまり書きません。私の著書には、仕事についての逸話が多少含まれています。仕事について書くときは、テクノロジー業界について書いている可能性がありますが、具体的ではありません。

間違いなく言えることは、私はこれまでの人生で、テクノロジー業界で働いていたときほどセクシャルハラスメントを受けたことがないということです。テクノロジー業界にいたときほど、自分の人種について、そしてそれが自分のキャリアに役立つか妨げとなるかについて、あからさまな非難を受けたことはありません。私は「黒人だから昇進したと思っているのか」と面と向かって言われたことがあります。

私はテクノロジー業界にいたときほど部外者であると感じたことはありません。テクノロジー業界は、すべてを理解しているように見せかけるのが好きなので、ガスライティングがひどく横行している環境なのです。

私は人種や性別に厳しい職場で働いたことがあります。そうした職場において、習得する内容を知っていることは、明らかにいらだたせる行為です。私は自動車業界で働いていました。私はそこで習得したことを知っていました。しかしテクノロジー業界では、「いや。そんなことはここでは重要ではない。それはここでは問題ない」ということになります。そしてそれが間違いなく問題なのです。多くの人は、テクノロジー業界に入る人はすべてテクノロジー好きで、それが皆を1つにまとめると思っているのではないでしょうか。この大きな情熱が、性別もセクシャリティも人種も問題とはならないということを気付かせてくれると思っていないでしょうか。

それは絶対に間違っています。なぜなら、テクノロジーが陥る落とし穴は他のあらゆる企業や、実際のところアメリカの他のあらゆる団体が陥る落とし穴と同じだからです。つまり、真の多様性と人種間の平等は白人にとって痛みを伴うものではなく、まったく調整は生じないという考え、有色人種は白人とまったく同じものを必要とし、白人と同じものに価値を置くという考え、そして最後には、有色人種は何らかの点で白人は優れていると見なす、という考えに陥るのです。真の多様性、人種間の真の平等、男女平等において、この考えはどれも誤っています。

私たちはこの問題について話す必要があります。これは単なる作業環境の問題ではないからです。私は世界最大規模のテクノロジー企業やテクノロジー関連企業の数社と話をしたことがあります。そうした企業では、スタッフが実際に毎日オフィスに出社し、人種差別と性差別の問題を認めようとしない場で現実に向き合うだけでなく、人種差別と性差別の問題を再現するような形で、私たちが世界で互いにどのように関わり合うかを方向付ける製品を作っています。

何よりもまずオフィス内のスタッフの環境を整えなければ、提供する製品をうまく扱うことはできないでしょう。白人男性しかいない環境や、白人男性が多数派を占める環境を作ることはできません。また自分が持つ製品で偏見と悪意が再現されないと考えることもできません。

そして製品を作っているスタッフの作業環境に極度の脅迫、排除、悪意に対する苦悩があるのに、偏見と悪意を根絶すると考えられる製品を作ることはできません。どちらも一度に取り組まなければなりません。そして多くの場合、どちらか一方に取り組むと、うまくいかず失敗します。そしてテクノロジー業界でこうした問題に取り組んでいない結果、小さな作業スペースで仕事をしている人以外にも、多くの人を傷つけています。あらゆる人々を心底傷つけているのです。

エプスタイン:「あらゆる人々を心底傷つける」と言うのは、真の平等に対する責任が欠如しているということですか。

オルオ氏:そのとおりです。そして社会的弱者に対する尊重も欠如しているということです。「隣人が好きか」という観点からだけでなく、利益水準の観点から見る場合も同じです。

人種間の平等には、将来的に利益があると思いますか。人種間の平等に関する製品と目標を構築できると思いますか。有色人種は白人の顧客であると思っていますか。そうした顧客が製品に適応するのではなく、製品が顧客に適応すべきだと考えていますか。顧客の子どもたちや孫たちにも製品を使って欲しいと思いますか。歓迎されている、十分なサービスを受けていると顧客に感じてもらいたいですか。

もし私たちが資本主義に目を向けているなら、そして資本主義企業であるなら、私たちは資本主義とは無縁であるように振る舞うことはできません。これは重要な点です。

もっと言えば、資本主義と無関係のプラットフォームであればモノを販売することはないはずです。そんなことはでたらめです。すべては資本主義世界に属しています。資本主義は私たちが尊重している世界です。有色人種の声は重要だと思いますか。もしそうなら、ハラスメントや虐待の問題に取り組む方法が、白人男性の声を重視する場合とはまったく違ってきます。

エプスタイン:倫理に関するこのTechCrunchシリーズでインタビューしたすべての方に尋ねる最後の質問です。人類共通の未来の見通しについて、どれほど楽観的に考えていますか。

オルオ氏:見通しは変わっていません。心配しています。テクノロジーを利用している欧米の人々が、テクノロジーを使うことによって、実際に人と対面することも、人との深いつながりを形成することも、本当の同盟関係を構築しようとすることも、そして自分の未来、安心感と共同体意識、他者への帰属意識を結び付けることも不要ではないかと、いかに感じやすくなっているかについて懸念しています。

間違いなく言えることは、驚くほど欧米中心のテクノロジー観があるということです。私はナイジェリア系アメリカ人です。ナイジェリアでテクノロジーを利用する方法は、ここでの方法とはまったく違います。ナイジェリアでは、まず第1に実用性を重視します。またアフリカのビジネスをより円滑に運用するため、物理的インフラを奪ってきた植民地政策の遺産を取り払うため、そしてそのインフラをオンラインで構築してどこかで存在できるようにするために、人々が1つにまとまり直接集うことも重視します。

ナイジェリア人がインターネットを使い、離散を越えてつながっている様子を見るとき、インターネットに対するナイジェリア人の考え方は、インターネットの存在理由、その使用方法の点で欧米の考え方とは根本的に異なっています。そして私はそこから学ぶべきことは多くあると感じています。真の開拓がどこで行われているかを調べたいのであれば、中米、南米、アフリカ諸国、多くのアジア諸国でテクノロジーやインターネットがどのように使用されているかを見るとよいでしょう。有色人種のコミュニティが、「白人至上主義構造の制限下で私たちが抱える問題を解決するテクノロジーを構築するつもりだ」と言うとき、インターネットはどのようになるかについて考えてみてください。

個人よりも集団を尊重する社会で、インターネットを構築するときどのようになるかについて考えてください。その時インターネットはどうなっているでしょうか。ナイジェリアでは徹底的な独立が夢ではないので、独立はインターネットが構築される目的でも、目標でも、子どもや家族のために手に入れたいものでも、目指しているものでもありません。では社会構造が違うと、インターネットはどのようになるのでしょうか。私たちは自らを自力で引っ張り上げているのではなく、もしかしてコミュニティを引っ張り上げているのかもしれないと考える場合、プラットフォームを構築しているとしたら、インターネットはどのようになるでしょうか。すべてのプラットフォームはインターネットのために構築されるのでしょうか。インターネットこそが、テクノロジーでできることに希望を持ちたいと思う場所であり、私たちがいるべき場所なのです。

エプスタイン:すばらしい答えです。ありがとうございます。私は多くの優秀な方々にこの質問をしてきましたが、いろいろな意味でこの質問に対する最高の答えを受け取りました。

オルオ氏:ありがとうございます。

エプスタイン:お時間を頂きありがとうございました。TechCrunchを代表してお礼申し上げます。

関連記事:インタビュー:多様性促進のために企業が取るべきアクションとは

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 インタビュー

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

インタビュー:多様性促進のために企業が取るべきアクションとは

BLCK VCは2024年までに黒人のベンチャーキャピタリストを現在の2倍に増やすという目標の実現に取り組んでいる。その理由は説明するまでもない。パートナーレベルのベンチャーキャピタリストのうち黒人が占める割合はわずか2%にすぎない。黒人のパートナーが全くいないVC企業も全体の81%に上る。この数字を踏まえると、VCコミュニティの下に構築されたスタートアップエコシステムが、非常に多様性に欠けるものであるのも驚くにあたらない。

私たちは、Extra Crunch LiveのエピソードでBLCK VCの共同創業者兼共同議長のSydney Sykes(シドニー・サイクス)氏と共に、現在進行中の抗議運動、VC業界の多様性や開放性に関する現状、また我々がテックエコシステムのあらゆる面でより非排他的になるための実践可能な洞察と戦略について話し合った。

これは非常に重要な会話であるため、我々はこのエピソードとQ&Aすべてを無料で公開することとした。

下記に、かわされた会話の中から重要な部分を文字起こしし、それに簡単な編集を加えたものをまとめた。また会話全体はYouTubeでご確認いただける。また、BLCK VCの「We Won’t Wait(私たちは待たない)」 アクションデーの動画もそこでご覧いただける。

現在テック企業に充溢するエネルギーが持続し、継続的な変化をもたらすことができるかどうかについて:

これらのテック企業すべてが「Black Lives Matter(黒人の命は重要である)」と言い、そして寄付をしているのをご存知だと思います。寄付をし声明を発表しても、企業のあり方は変わらない、というのが私の考えです。そのような方法では、業界のあり方を変えることはできません。ですから、そうした声明を聞くと、うんざりして悲観的になり、状況は今後も変わらないと感じてしまいます。私が本当に楽観な気分になれるのは、これらのテック企業の従業員、そして市民が「ただ Black Lives Matterというだけでは足りない。それを実現させなければ」と発言するのを聞く時です。

現在、ボトムアップの、本当の意味での草の根レベルで「今までのやり方で問題が解決しないのなら、現状を変える必要がある」という声が上がっています。私はこれらの企業は今後とも従業員や顧客の声に対応していく必要があると思います。ですから、私は今までにないほど楽観的です。そうは言っても、私は依然としてアメリカに暮らす1人の黒人女性ですし、今起こっていることが人種差別を是正するとは考えていません。しかし、将来的には事態が改善すると楽観的に考えています。今から1ヶ月前と1ヶ月後を比較して、どれだけ事態が改善されているかを知るには、もうしばらく待つ必要があります。でもどのような変化が起きるのだろうかと、わくわくしています。

企業の内側と外側から変化を引き出し促進することについて:

私が初めてベンチャーに興味をもったのは大学の後半でした。あらゆるVC企業の様々なページを閲覧しましたが、白人男性投資家の白黒写真ばかりでした。この業界に属し、黒人女性の投資家としてベンチャー企業で働くだけで変化をもたらし違いを生み出せると感じました。個人的には、行動を起こし変化をもたらすには、内側から働きかけるのが最良の方法だと感じました。しかしそれが誰にとっても正しい選択だとは思いません。また、有色人種たちが彼らが内側にいてこそこれらの業界や企業を変えられると考えているからといって、常に彼らに現状を変えるという重荷を背負わせ、不快な立場にいるようにすべきだとも思いません。ですから、そこはバランスだと思います。

一方で、過去にはボイコットが変化をもたらしたことがありました。これは完全な断絶です。不正なシステムから完全に離れることです。一方、企業には内部に従業員がいて、彼らがその環境内で変化を促進しています。

どのように変化を促進するかについて、正しい答えはないと思います。耳を傾けてもらえる立場にいて、意見があるならば、可能な限り最も強力な形で発信する必要があります。Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏の場合、辞任することで意見を伝えたわけですが、これは大変強力なやり方だと思います。内側から声を挙げるのも有効なやり方だと思います。しかし同時に、彼がずっと発言していたにもかかわらず何も変わらないのであれば、彼が辞任することでより強く意思を伝えることができます。おそらくそれも1つの方法です。内側から変化を起こす事ができないのなら、なぜいつまでもそこにとどまって時間を無駄にする必要があるでしょう?変化を推進できる別の場所へ行くべきではないでしょうか。

VC企業の多様性を示す数字をトラッキングする重要性について:

企業内の人々、既存のGPや投資家がどれほど問題が大きいかを認識するためには、数字をトラッキングすることが非常に重要です。書き出してみなければ、何が足りていないか、何が欠落しているかを認識する必要に迫られません。数年後企業がデータを書き出すようになるか、企業の従業員比が突然米国の人口比を反映したものになるか、多様性の価値を認識するか、と言われれば私は楽観視していません。しかし、雪だるま式に変化が起こる効果もあると思います。すぐには変化は起きないでしょうが、より多様性のある人材を社内またはネットワーク内に確保できていれば、あるいは最低でもどこにいるか把握できていれば、投資を行うとき、イベントを主催するとき、エコシステムを拡大するとき、多様性についてより考慮するようになります。

率直に言って、当社にコンタクトを取ってくる多くの企業は、制度化した人種差別を既にある程度認識し理解しています。彼らは暗黙の偏見を理解し、人材に欠落があることを理解しています。これらの企業が最も支援を必要としている人々や企業でないのは確かです。

しかし、当社と積極的に関与する意思のある企業と出会ったとき、あるいは多様性に欠ける企業や、雇用している投資家に人種的多様性のない企業と接触することになったときこそ、多様性がもたらす価値について話し合うチャンスです。多くの研究で、多様性があるほどビジネス、投資家、企業は優れた業績をあげており、彼らがその多様性を保持できれば企業はさらに業績を上げていけることがわかっています。このことは、繰り返し示されています。

ですから、自社のポートフォリオや投資家について、これ以上望めないほど優れていると思っていても、おそらくそれは正しくないでしょう。また、多様性を持つということは情報に基づいた視点を持つことである、という事実強調したいと思います。

自社の投資家、話をする周囲の人々、共に投資の決定を行う人々、これらの人々に多様性があるほど、視点にもその分の多様な情報がもたらされます。ですから、投資委員会に多様性がなければ、資金の投入について決定を下す際、視点が欠け、情報が不足します。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)のトラッキングに関するベストプラクティスについて:
VC企業については、トップレベルの従業員をトラッキングすることをお勧めします。地位の高い従業員について、そのうちの何パーセントが少数派に属するバックグラウンドを持っているかや、性別、LGBTQなど、すべての種類のデータをトラッキングします。そして、シニオリティレベル、つまりアソシエイト、コントローラー、GPについてトラッキングすることもおすすめします。これらの人々のうち何人が、少数派に属しているでしょうか。そして、それに加えて、パイプラインをトラッキングすることも重要だと思います。採用候補者のうちどれくらいが少数派に属しているか、または異なる学校の出身であるか。これらの指標もやはりすべて重要です。パイプラインの不足している箇所を見出すことができるからです。イベントを主催する際、登壇者の顔ぶれはどんな感じでしょう?パネリスト全員が、あなたと同じ人種ということはないでしょうか?

また、起業家側としては、どれだけの費用を費やしたかを確認するのが非常に重要です。何人の少数派に属する創業者に投資したかよりも、彼らにいくら投資したかが重要です。

また最後に、これはやや掴みどころのない部分なのですが、投資する起業家をどこで見つけるかです。他の投資家から薦められた起業家でしょうか?電話やeメールであなたにコンタクトを取ってきた起業家でしょうか?様々なカレッジや大学へ行き、そこの学生を説明会に招待す予定はありますか?そこでもパイプラインのトラッキングを少なからずすることができ、これは非常に重要です。

伝統的に白人が大多数を占めるVC企業で黒人のパートナーの数を増やすことvs黒人のVCに自らの企業を起こすことを薦めることについて:

これには、2つのアプローチがあります。

1つ目は、白人が大多数を占める非常に大規模なこれらの企業が、ベンチャーキャピタルに分配される資産のうち極めて多くの部分を管理しているという考えです。年間800億ドル(約8兆6000億円)を超える資産の大部分は、上位10社からのものです。ですから、新しいファンドを立ち上げても、大手企業による投資額と同等にすることは非常に困難です。

また黒人が率いるこれらのVC企業が上位のGPに気兼ねせず、投資することが非常に重要だと思います。彼らは大変貴重な視点を持っています。どちらも必要なのです。

黒人の投資家は自らのファンドや企業を立ち上げ、また肌の色に関係なく、自らが信じる創業者に投資する必要があります。また私たちは最大規模のファンドを扱う人々に、彼らの行う大規模な富の創造と雇用の創出が、我が国の多様性と黒人の投資家の視点を反映した形で行われるようにしてもらうべきだと思います。

ソフトバンクa16zが行っているような、少数派の起業家への投資に特化した個別のファンドについて:

かつてよく「パイプラインの問題」という言葉を聞いたものです。今でもこの言葉を聞くことがあります。これは、過去によく使われた、黒人の人材が十分いないという意味の婉曲表現ですが、これは真実ではありません。パイプラインの問題は確かに存在しますが、それは企業側が多様性に富んだパイプラインを持たないために発生する問題です。企業が多様性に富んだパーソナルネットワークを持たず、またそうしたネットワークを築こうとしてこなかったことが原因です。彼らは投資をするにしても、話をするにしても、彼らの同種の人々を対象に選ぶ傾向があります。これこそがパイプラインの問題です。これらの企業がどのように変わるか、私にはわかりません。

先程ソフトバンクについて言及されましたね。現在、少数派の起業家への投資に特化したファンドがいくつかあります。黒人の創業者に資金が流れるのはどんな形であれ良いことだと思います。私は、少数派の創業者に投資するための個別のファンドの必要性が理解できないでいます。少数派に属する創業者へ投資した経験がない場合、個別のファンドがなんらかの変化をもたらすでしょうか?私にはわかりません。そこで、それについて調べ、なにが問題なのかを尋ねる必要があります。なぜ、あなたは少数派に属する創業者に投資してこなかったのでしょう?

投資に値する企業ではないからでしょうか?優秀な人材が十分に揃っていないからでしょうか?彼らの経験が十分でないからでしょうか?どれもが真実ではありません。私がお薦めするアプローチは、なによりも、パイプラインを変化させることです。パイプラインが上手く機能していなければ、機能するように変えて下さい。創業者に会いに行き、また、あなたとは異なる方法で少数派の企業に投資をしている投資家に会って下さい。このように行動している企業が実際に存在します。すぐにこのようにできないと感じる場合は、少数派に属するスカウトを連れてきて、投資のための資金を与えてはどうでしょう?企業に代わって投資し、それらの資金を実際に投入することができる、スカウトとして素晴らしい能力を発揮するであろう優れた黒人創業者、CEO、投資家、エンジェル投資家が大勢います。これで瞬時に状況が変わるでしょう。

自分にはできないと感じているなら、現在そうした活動を実践しているファンドに資金を投入してください。Precursor(プリカーサー)が良い例です。すばらしい多様性に富んだ人材を見出すことのできるファンドが他にもたくさんあります。Backstage Capita(バックステージキャピタル)もそうです。たくさんのファンドがあります。これらのうちのどれもできないという場合は、そうですね、それは、やってみようとしていないのだと思います

VCコミュニティに幻滅を感じている、あるいは締め出されていると感じている、志ある黒人投資家へのアドバイス:

諦めないで挑戦を続けて欲しいと思います。常に返事があるとは限りませんが、売り込みのeメールを送り、自分のネットワークの中に友達の友達といったつながりを見出すよう心がけ、ベンチャー企業の中にネットワークを築くよう努めます。大変だとは思いますが、挑戦を続けてください。また、起業家と協力し、その仕事がどのようなものかを学び、スキルの構築にどういったことが役立つかを学んでください。あなたの周囲に起業家がいたら、彼らと共にプロジェクトに取り組むにはどうしたらよいか尋ねたり、彼らにインタビューをしてください。現場を見学したり実際にインターンをする機会をあなたに提供してくれるアクセラレーターやインキュベーターは大勢います。 これは大変良いアプローチで、そちら側により多くの仕事があるはずです。

正直に言うと、ベンチャーの仕事の多くは投資銀行の担当者が扱います。これが唯一のアプローチではありませんが、投資銀行システムあるいはスタートアップエコシステムの中にいると、ベンチャー業界そのものよりもややアクセスしやすいベンチャーキャピタリストとつながりを持つのに役立ちます。大変な道のりですが、一番良い方法は、自分のネットワークを拡大し地に足を付け
積極的に取り組むことです。

この問題を認識し現状を変えたいと考えているが、日和見主義、あるいは単なる見せかけのパフォーマンスになってしまうことを恐れている企業について:

見せかけのパフォーマンスは問題です。

言っていることに行動が伴っていません。これがすべての問題です。行動が伴っているなら、それは見せかけのパフォーマンスではありません。あなたが自分の言っていること、ソーシャルメディアに投稿していること、語っていることを本当に信じているのなら、その行動は本物です。少数派を取り込む形で採用を始めること、これは日和見主義、あるいは単なる見せかけのパフォーマンスには見えません。見識のある啓蒙された行動に見えるでしょう。それは劇的な変化かもしれませんが、あなたがついにこの問題を理解したように見えるでしょう。私はどの企業も行動を起こすこと、特にネットワークを多様性に富んだものにすることに関して、恐れるべきではないと思います。

ここで問題となるのは、あなたが投資した資金やあなたの行った採用について、良いPRになるとか、慈善事業である、と考えるようになる場合です。大勢の黒人の起業家がいますが、彼らがあなたのポートフォリオを向上させてくれるから、という理由で彼らに投資をすべきです。彼らがきっとあなたにより条件の良い投資家を紹介してくれるからという理由や、彼らがあなたの資金をより良いものに改善する機会を与えてくれるからという理由。彼らがあなたのネットワークを広げ、問題について、別の視点から考える機会を提供してくれるから、という理由で黒人投資家の雇用に資金を投入すべきです。彼らは異なる視点、意見をもたらし、あなたにとって最も優れた投資家そして投資対象の一部となるでしょう。彼らを雇用したのに投資を行う権限を与えず、発言し意見を共有する機会を与えないのであれば、それは見せかけのパフォーマンスです。これでは現状を変化させる力にはなりません。見せかけのパフォーマンスでは、生活、人種差別、企業のあり方を変えることはできませんし、ポートフォリオや企業の改善につながりません。

過去数年で見られた前進について:

素晴らしい例の1つがElliott Robinson(エリオット・ロビンソン)氏です。彼は私たちの創設したBLCK VCの取締役会の役員で、現在はBessemer(ベッセマー)のGPです。彼は意見は、黒人のVCコミュニティだけでなく、VCコミュニティで尊重されています。これは前進の印だと私は思います。彼は資金を動かす権限を持っています。

また白人の同志が取締役から降りて、黒人のアドバイザーが独立した取締役会のメンバーとなれるよう議席を空けるという動きがあるといいと思います。これは非常に重要です。これは継続していくべき重要な動きです。取締役会の議席というのは大変な影響力とリソースがあり、多様性を取り入れていくために非常に重要です。

また、私はテック企業につとめる白人従業員の同志からのサポートのうねりをみて興奮しています。彼らは「私たちはあなた方の方針を支持します。私たちは黒人の投資家や黒人の従業員を白人と同じ割合で昇進させない方針を支持しません。私たちは制度的人種差別を促進する動きをサポートする方針を支持しません」と声をあげてくれています。私はこれらは大きな力になると思います。本当に、この運動が今後どうなっていくのか興味があります。とても期待しています。現在緊張感が溢れ行動が起こされ、そして今までにない興奮が沸き起こっていると感じています。今後もこの運動を頑張って前進させていく必要があります。

Image Credits: Courtesy of Sydney Sykes

関連記事:VCを真に21世紀らしい姿へと導く方法

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 インタビュー

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)