贅沢体験を提供するECサイトのLUXAとKDDIが3.3億円の資本業務提携

高価な食品や化粧品、家電から歌舞伎座や高級ホテル宿泊付きの旅行といった体験などをおトクな価格で提供するECサイト「LUXA(ルクサ)」がKDDI Open Innovation Fundから3億3,000万円を調達した。これまでにルクサはジャフコから2010年11月、今年3月に合計10億円を調達している。

今回調達した資金は主にオペレーション上の人員、広告・マーケティング、スマートフォンのユーザービリティ向上・インフラ強化に充てるようだ。LUXAの会員数は現在45万人で、今年3月の35万人から約7カ月で10万人ほど増えている。

ルクサはKDDIと資本提携だけでなく、お互いのサービスでも提携を積極的に行う。スマホの普及により、どのサービスでもモバイルからのアクセスが日に日に増しているが、LUXAも例外ではなく2012年1月には8%だったスマホ経由の売上が今では35%にまで増えている。売上金額でいうと11倍になるそうだ。今年3月には2012年1月と比較してスマホ経由の売上が6倍だと言っていたから、この半年でさらにスマホシフトが進んでいることがわかる。

 

LUXAは冒頭で述べたおトクな体験をタイムセール形式で提供している。だから、通勤時間やちょっとした休憩時間にチェックするユーザーが多く、スマホとの相性が良いのだとルクサ代表取締役会長の南壮一郎氏はいう。実際に時間帯別の購入比率を見てみると、朝と夕方の通勤時間ではスマホ経由の購入がPC経由のそれを上回っているし、一番活発なお昼時でもスマホとPCが同等になっている。今後はさらにスマホ経由の売上が増加してくるのだろう。

KDDI Open Innovation Fundは注力領域の1つにコマースを選んでおり、これまでにOrigamiやMONOCOといったスタートアップにも出資している。KDDIはこれらのサービスと共に新しいショッピング体験を提供したいという。その1つがLUXAとなるのだが、LUXAとの具体的な提携案としてはauスマートパスに特設ページを開設したり、auのサービスである「タイムライン」にプレミアム商品を提供することなどが決まっている。他にもauのキャリア決済、au IDなどをLUXAは使用するようだ。

今後はスマホでのユーザビリティ向上といった機能面はもちろん、スマホ経由の売上はPCに比べて若い女性が多いことから、この層に向けた商品群も強化していきたいという。ちなみに、今回の提携を記念してスクウェア・エニックスの社食ツアーがプレゼントされている。


マネー管理アプリのMoneytree、DGインキュベーション等から1億5,000万円を調達

Moneytreeは銀行口座やクレジットカードのアカウント、電子マネー口座などを登録すると、これらの口座残高や利用履歴を一括管理してくれるアプリだ。このアプリを提供するMoneytreeがDGインキュベーションと個人投資家から1億5,000万円の資金を調達した。

Moneytreeは現在iPhone向けにアプリを提供しているが、今年4月25日のローンチから約150日間で20万ダウンロードを達成している。iPad版、Web版も提供予定だ。このアプリは口座残高を確認するだけでなく、電子マネーをいつチャージしたか、クレジットカードの支払日はいつで、いくら必要なのかといった情報もまとめて表示してくれる。

Moneytreeのようなクラウド家計簿とも言うべきカテゴリに分類されるサービスは国内でもここ1、2年でいくつか登場し、盛り上がりをみせている。昨年11月にはZaimがクックパッドから4,200万円、今年3月にはマネーフォーワードが個人投資家等から約1億円を調達した。この他、MoneyLookやDr.Walletといったサービスも注目されている。

米国では一足早く2007年のTechCrunch50でデビューしたmintが約1年半で100万ユーザー近くを獲得し、2009年に1億7,000万ドルでIntuitに買収された。日本ではまだ圧倒的な地位を確立しているサービスはないが、各社はそれぞれ特徴を持って展開している。レシートを自動で読み取る機能を提供しているサービスもあれば、逆にアップロードされたレシートを手作業で入力するチームもある。

Moneytreeもさらにこのサービスを便利にするために対応金融機関を増やしながら、新機能、プレミアム機能を提供する予定だ。


楽天が「スマポ」を運営するスポットライトを買収、創業2年1カ月で

楽天がチェックイン型のポイントサービス「スマポ」を運営するスポットライトを買収したことが明らかになった。スポットライトは2011年9月に創業、これまでに伊藤忠テクノロジーベンチャーズから1億5,000万円を調達している。買収額は非公開となっている。

スマポは実店舗に出向いて、チェックインするとショッピングなどに使えるポイントがもらえるアプリである。このポイントはビッグカメラやマルイなどスマポに参加している店舗で共通して利用できる。

チェックインにはスマポ独自のデバイスを利用しており、店舗内に音波を発信するデバイスを設置し、それをスマートフォンで受信するから来店せずにポイントを得るような偽チェックインはできないことが特徴だ。

プレスリリースによると、楽天は今後スマポの来店検知プラットフォームを活用し、楽天グループの会員を実店舗へ送客するサービスの展開を検討しており、O2O事業を一層強化したいとしている。楽天はすでに購入時に貯まる「楽天スーパーポイント」を実店舗でも利用できるような施策なんかもテストしている。

楽天の2012年12月期国内流通総額のうち、スマートフォン、タブレット経由の割合は25%ほどで、来年には半分以上を占めるだろうと予想されており、これまで屋内でデスクトップを利用している人を対象にビジネスを拡大してきた楽天は徐々にその範囲をリアルにも広げようとしている。

なお、スポットライトの代表取締役柴田陽氏は同社を創業する前に商品のバーコードを読み取り、オンライン上でその製品を安く購入できないかを調べるショッピッ!を提供するコードスタートをIMJに売却した経緯を持つ(その後、IMJはコードスタートをオプトへ譲渡している)。


Square、Coineyなどに続き10億円増資でロイヤルゲートがモバイル決済に本格参入

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今年5月に国内参入した「Square」、国産スタートアップの「Coiney」、ソフトバンクが展開する「PayPal Here」、楽天が手がける「楽天スマートパス」など、競争が激化するモバイル決済サービス。これらのほとんどは中小規模のスモールビジネスを対象としているけれど、それよりも規模が大きい中堅・エンタープライズをターゲットするロイヤルゲートが15日、産業革新機構と総額10億円の投資契約を締結した。

ロイヤルゲートは企業向けの決済プラットフォーム「PAYGATE」を展開。現在は中堅規模の企業を中心に導入され(件数は非公開)、大手の運送・保険・通信会社などでも導入が検討されているのだという。1件あたりの決済金額が小さく、月間取扱高が数万〜数十万円程度の小規模店舗が中心に導入する競合サービスと比べて、PAYGATEは「月間数百万円から数億円」(ロイヤルゲート梅村圭司社長)単位で取引する中堅・エンタープライズ市場が主戦場。ちなみに10月11日、大手小売チェーンのユニクロ銀座店の一部フロアでSquareが導入されたが、現時点では1店舗のみにとどまっている。

PAYGATEのターゲット顧客(ロイヤルゲート提供)

エンタープライズ市場に入り込むには、企業が持つ独自ポイントへの対応、企業の既存システムとの連携、高度なセキュリティなどの要件が求められる、とロイヤルゲートの梅村社長は指摘する。同社はイヤフォンジャックやBluetoothで接続するカードリーダーを自社開発していて、それらはiOSやAndroidだけでなく、Windows 8.1にも対応している。そのほかには、NFCや口座振替・Jデビット、バーコードリーダーなどのマルチ決済が可能な端末も開発し、日本独自のカード文化への対応を図っているのだという。

「カードリーダーだけでなく決済用のアプリ、決済代行センターも自社開発しているため、企業のシステムと柔軟に連携できるのが強み」(梅村社長)。

カードリーダーについて少しだけ専門的なことを言うと、リーダーにはカードの磁気を1つのヘッドで読み取る「シングルヘッド」と、2つのヘッドで読み取る「デュアルヘッド」というタイプがある。SquareやPayPal Hereなどは前者、PAYGATEは後者となる。デュアルヘッドは「エンタープライズの要望が大きい」(梅村社長)という読み取り精度が高く、「JIS2型」と呼ばれるクレジットカードに含まれるポイント情報も読み取れるのが特徴だ。

他社イヤホンジャック型サービスのリーダーとの技術的比較(ロイヤルゲート提供)

今後はモバイル決済に加えて、モバイルPOS、ネット上で決済した商品を店舗で受け取れるウォレットサービスを合わせた決済サービス「PAYGATE OPEN Platform」にも注力。モバイルPOSを無償提供したり、他社のPOSとの連携を進めていく。ウォレットサービスでは消費者の購買動向をビッグデータとして収集し、クーポン型O2Oサービスによる広告収入を見込んでいる。調達した10億円の資金は、人員体制やデバイスの開発体制の強化にあてるほか、年内にはアジア地域に拠点を設け、来年には海外でもサービスを開始する。3〜5年にはIPOを視野に入れている。

スモールビジネス向けのモバイル決済は0.01%単位の手数料の値引き合戦が続くなど競争が激化しているけれど、「エンタープライズ市場は未開拓の金脈」と梅村社長はみている。「スモールビジネス向けモバイル決済は、手数料が安ければ他のサービスに乗り換えられてしまう」。その一方、「潜在市場は100兆円規模」(梅村社長)というエンタープライズ分野には膨大な「金脈」が眠っているのかもしれない。


楽天IDで他社サイトの会員登録から決済までが一気通貫に

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FacebookやAmazonが自社サービスのIDに登録された決済情報を使ってサードパーティのサイトで支払いをできるサービスを発表したのは記憶に新しい(Facebook、PayPalらと提携してモバイルアプリで支払い情報を「オートフィル」Amazon IDでサードパーティのサイトで支払ができる‘Login and Pay with Amazon’ がスタート)。こうした動きがある中で楽天も11日、これらと似たような「楽天あんしん支払いサービス かんたん登録オプション」を開始した。

楽天は2008年10月、楽天IDを利用して、他社サイトでクレジットカード情報を登録せずに決済できる「楽天あんしん支払いサービス」をスタートしていて、これまでに無印良品やESSEなど1100サイトに導入されている。

今回のかんたん登録オプションは、OpenIDログインの仕組みを利用したもの。ユーザーは同オプションを導入したサイトで会員登録する際、楽天会員のIDとパスワードを入力するだけで、名前や住所などの会員情報が自動的に入力される仕組みだ。

これによってユーザーは、面倒な会員登録作業の手間を省くことができる。オプションを導入するサイトにとっても、会員情報の入力途中での離脱を防げるため、利用者拡大につながるメリットがある。

楽天は、かんたん登録オプションと、すでに提供済みのあんしん支払いサービスを組み合わせることで、サイトでの会員登録から、ログイン、決済までを簡単に一気通貫に提供する狙いだ。


B Dash Campが大阪で開催、ピッチコンテストで国内外から11社がプレゼン

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B Dash Venturesが主催する「B Dash Camp 2013 Fall in Osaka」が大阪で開かれ、講演やパネルセッション、スタートアップのコンテストなどが2日間にわたって行われた。今回で4回目となる同イベントには国内外のネット業界で活躍する経営者や投資家、起業家などスタートアップ関係者400人ほど集まった。参加者の国籍は10カ国にのぼり、北米だけでなく、台湾や韓国、タイなどアジア各国からの参加も目に付く国際色の強いイベントだった。

イベント初日はB Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏が、注目されるネット企業の若手経営者としてミクシィの朝倉祐介代表取締役社長兼CEOとリブセンスの村上太一代表取締役社長の2人を相手に今後の展開や戦略を聞くというセッションで始まった。続いて、ソーシャルゲームの市場動向を占うセッション、CocoPPaやGunosyなどゲーム以外のスマフォ人気アプリ・コンテンツを扱う代表らがディスカッション、中堅ベンチャーのCROOZやドリコムの経営者らが、いかに苦しい時期を乗り越えて経営を続けていっているのかといった対談が行われたほか、任天堂の岩田聡代表取締役社長が登壇して、同社の経営哲学を語るなど、スタートアップ関係者にとって盛りだくさんのイベントとなった。イベント2日目は、ビッグデータ、動画・リッチメディア広告、モバイルやアドテクの最前線のパネルセッション、スタートアップにおける資本政策を昨今増加傾向にあるM&Aの当事者たちによる生々しい意見が飛び交うパネルセッションなどが行われた。

ここではスタートアップコンテスト「B Dash ピッチアリーナ」の応募チームのうち、ファイナリストに選ばれた11社を紹介する。

先に結果を書いてしまうが、優勝したのは本誌TechCrunchでも記事にしたことがあるKaizenPlatformの「planBCD」、審査員特別賞を受賞したのは、台湾から参加した語学学習サービス・アプリを提供する「Q.L.L.」だ。

・886 Food(台湾)

886 Foodは台湾でプレミアムな農作物を消費者に直販するECサービスを展開している。プレミアムというのは環境保護や健康といった観点の話で、消費者により正しい選択をしてもらうというのが同社ミッションのようだ。こうした食品・食材は価格が高いというのが一般的な認識だが、それは必ずしも正しくないという。ビジネスディレクターのYuting Liu氏によれば、台湾の625億ドル市場の食料品市場のうち農家に還元されている利益は5%に過ぎないという。それだけ中間マージンが大きいということだが、これを直販によって農家により多く還元する。現在、886 Foodはコーヒー豆とお米をプレミアムブランド品として販売している。ITともインターネットともあまり関係ないような気もするが、おしゃれなパッケージやブランディングは、「○○2.0」というカンジもする。○○に何が入るのかは分からないけれど、イケてる感はある。

・Binpress(アメリカ)

Binpressはオープンソースのプロダクトのマーケットプレイスで、「次のMySQLを生み出したい」という。PostgreSQLと並んでオープンソースのRDMSとして大きな成功を収めているMySQLは、商用利用のコマーシャルライセンスと、ソフトウェアの利用や改変、配布の自由を保証したGPLが選択できることで商業的成功と同時にオープンソースプロジェクトとしての成功を実現した。これと同じモデルを、個人開発のオープンソースプロジェクトでも実現できるオンラインのマーケットプレイス、それがBinpressだ。例えば、PHP用のPayPal決済用クラス(29.9ドル)だとか、iOS向けのタッチ対応PDFレンダリングSDK(349.99ドル)といったモジュールが販売されている。こうしたソフトウエアコンポーネントが現在1000以上登録されている。Binpressは2年でブートストラップに成功、2013年末までに50万ドルの売上を達成する見込みで急成長を果たしている。南米ではBinpressで生計を立てている個人開発者も出現しているという。Binpressは500 StartupsやScrum Venturesなどから合計5万ドルのシードラウンド出資を受けている。オープンソースは儲からないと言われて久しいが、こういう形でソフトウェアの自由と、オープンソース開発者の経済的な成功が結び付くのだとしたら、これは素晴らしいイノベーションになりそうだ。

・CliPick(台湾)

CliPickは台湾のスタートアップで、ECサイトのレコメンドエンジンを開発している。一般的にレコメンドエンジンでは、過去の購買履歴や協調フィルタリングなどが用いられるが、CliPickがユニークなのは、商品アイテムの外観の類似度でユーザーが好みそうなアイテムを推薦するというアプローチを採っていることだ。現在はファッション系のECサイトで導入がスタートしていて、例えばあるスカートを見ていると、それに似た「色」もしくは「柄」、「スタイル」の点で類似しているアイテムを表示する。街中で見かけたファッションスタイルをスマフォで撮影することで、それに似たスタイルのアイテムを検索し、その場で類似アイテムを購入できるというような使い勝手も実現できるという。つまり、ガチの画像処理技術がコアにあるテックなスタートアップだ。CliPick CEOのRonald Yu氏によれば、導入済みサイトではアイテム閲覧時間が3倍、収益が2倍になった例もあるという。

・UIscope(日本、社名はInnoBeta)

UIscopeはInnoBetaが提供するクラウドベースのユーザーテストサービスだ。スマフォアプリ・メディアのユーザー体験を、現実のユーザーに使ってもらうことで検証できる。実際に各ユーザーがアプリを使っている様子は動画で確認することができ、どこでユーザーが戸惑ったかなどの状況が分かるという。同社は現在、テスト1件あたり3000円を課金している。約5000人ほどいるテスターは学生や主婦が中心で、敢えてプロのテスターを使っていないという。この一般ユーザーとなるテスターは、3000円のうち500円を受け取り、残り2500円がInnoBetaの取り分。すでにリクルートやヤフー、mixi、フジテレビ、ガンホー、MoneyForwardなどがユーザー企業となっているという。InnoBetaの平石大祐CEOによれば、こうしたマーケティングリサーチ市場は33億ドル市場。これをオンライン/オフライン、定量的調査/定性的調査という2軸の4象限に分けて考えると、オンラインの定量的調査として成功しているサービスにMonkeySurveyがある。その反対側の象限に位置するのがオンラインで定性的調査を行うUIscopeだという。同社は現在スマフォをターゲットにUIScopeを提供しているが、狙い自体は「オンラインでの定性調査」という象限。今後はスマフォに限らず取り組んでいくといい、ハードウェアのユーザーテストや、いずれはシャンプーのような一般消費財についても取り組んでいく計画だという。さらにユーザーテストだけでなく、ユーザーへのインタビューもオンラインで提供できるようなことを考えているという。

・JazzPay(タイ)

JazzPayはSMSとアプリを使った決済サービスだ。主に東南アジアをターゲットとしている。クレジットカード所有率が低い国や地域で、カードなしに決済手段を提供することで、伸び盛りの東南アジアEC市場の決済を取りに行く、という野心的なスタートアップだ。JazzPayによれば、タイではEC市場は年率25〜30%で伸びている一方で、カード所有率は1割前後に過ぎない。東南アジア全体では1割を切っているという。東南アジアには教育を受けたデジタルネイティブの若者が沢山いてスマフォも普及しているが、決済の手段が欠けているという。そこで支払側、販売側の電話番号を入力することでSMS経由で相互に認証して、決済を行う方法を提供する。クレジットカードよりも匿名性が高く、たとえクレジットカードを持っていても、決済のたびに個人情報を渡したくないようなケースでも有効だろうとJazzPayは話している。

・planBCD(日本、社名はKAIZEN Platform)

今回のピッチコンテストで優勝したKAIZEN PlatformのplanBCDは、グロースハックのためのA/Bテストを安価に運用できるB向けソリューションだ。planBCDについては、以前本誌TechCrunchで記事にしているので、そちらを参考にしてほしい。須藤憲司CEOによれば、先週モバイル・アプリのA/Bテストにも対応したそうだ。また、技術顧問として元はてな・グリーの伊藤直也氏を迎え入れたとのこと。

・colAR Mix(ニュージーランド、社名はPuteko)

colARは飛行機や恐竜の塗り絵をiOSアプリで撮影すると、それがデバイス上で3Dグラフィックとしてニュッと立ち上がるARアプリだ。TechCrunchでも紹介したことがある(colARは驚異的なAR―子供の塗り絵がiPad/Androidタブレットから飛び出してスーパーリアルに動き出す)。Putekoはニュージーランドで創業し、2013年末には東京に拠点を移すそうだ。すでにソースネクストとのアライアンスでパッケージ販売を9月に発表するなど日本企業との業務提携も進めている。

・Q.L.L.(台湾)

Q.L.L.は、子ども向け語学学習アプリ・サービスだ。アルファベットを押したり、ゲーム仕立てのリスニング練習などが楽しめるアプリをシリーズで150タイトルほど展開している。子ども向け学習アプリは競合がひしめく激戦区。今回、並み居る内外のスタートアップを抑えてQ.L.L.が審査員特別賞を受賞した理由は、これが単なるシリーズアプリというものではなく、親が子どもの学習の進捗を把握できるサービスとして提供されているからだ。さらに親は、親の設定画面から、目標達成のご褒美として仮想コインや仮想グッズを設定したりできる。次から次へと教育アプリをランダムにやらせてみては難易度が合わずに子どものやる気をそいでしまったり、適当なアプリを探すのに疲れがちな親心をよく分かっていると思う。台湾ではQ.L.L.は、すでに55万ダウンロード、MAUが30万を超えているという。台湾の人口は2300万強なので、これは立派な数字といえそうだ。

・WhatsTheNumber(台湾、社名はStorySense Computing)

StorySense Computingは、モバイル向けの検索アプリ「WhatsTheNumber」などを提供する台湾のスタートアップ。増え続ける情報に対して、スマフォは画面が小さくUIもPCと異なる。このことからPC向けの検索のようにブラウジングを基本とする情報の探索ではなく、より小さな画面向けに洗練された情報の提示の仕方を目指すという。WhatsTheNumberでは検索クエリから近隣の施設・店舗情報など即座に提示して、電話番号や地図を表示するなど、すぐにアクションが取れるよう工夫されたアプリだ。Googleのモバイル検索でも近いことができるようにも思えるが、こうした地域に根ざしたアプリは地域文化の深い理解が必要で、だからこそStorySense Computingはアジア圏に強みを持つのだという。同社は「どのイベントに行くのかではなく、誰が(誰と)行くのか」というソーシャルな交友関係に基づいたイベント推薦のアプリ「LAIKI」も提供している。

・Pairy(日本、社名はTimers)

Pairyは恋人同士が2人でセットになって使うSNSアプリ。写真共有もデート予定共有も2人きり。創業者の高橋才将氏によれば、カップルの本質の1つは思い出の共有で、実際、調査によれば4割のカップルが過去1カ月までの写真やチャットのやりとりを振り返るのだという。通常の写真アルバムやチャットアプリだと何画面もスクロールしないと古い情報は遡れなかったりするが、Pairyでは、こういう「思い出に浸る」ニーズを捉えているのが1つの特徴ということだ。写真アルバムには、付き合って何日目とか何度目のデートかといったことが表示される。多くのSNSが「近況の共有」を基本とするなか、Pairyは「思い出の共有」を目指すという根本思想に違いがあり、単にFacebookのお二人様向けというだけでない切り口のアプリを提供しているのだとか。デートのカウントダウンや、次に出かけるデート場所を相手に打診したりして調整する機能もある(この辺は、商業施設やイベント業者、情報誌などのメディアを巻き込めばコンテンツ協業ができそうな匂いもするし、デートの行き先選びが面倒で仕方ないタイプの男性諸氏には歓迎されそうだ)。現在マネタイズ手法は、広告、フォトブック販売、500円のプレミアム会員(画像保存のフルサイズやバックアップ機能の提供、スタンプ追加など)の3つ。TwitterやFacebookでのシェアによるバイラルが期待できない性質のアプリだが、実はオフラインでは若い女性は、彼氏の写真や受け取ったメールを女子会で見せ合う(!)という文化があるらしい。こうした口コミにより、例えば過去3カ月で156%ユーザーが増えていて、2014年10月に100万ユーザー突破の見通しという。Pariyはフジ・スタートアップ・ベンチャーズが9月末に開催したピッチコンテストの「FSV MEETUP 2013」で優勝しており、何らかのテレビ番組連動企画が行われることも決まっているという点でも注目かもしれない。Pairy同様のアプリとしてアメリカでは「Couple」、イギリスでは「Pair」、お隣の韓国では「Between」がというように、こうしたバーチカルぽいSNS(ソーシャルという言葉を使うのはちょっと違う気もするが)は、モバイルチャットが文化圏ごとに群雄割拠の状態になるのと似て、国もしくは言語圏ごとに違うものが流行するのかもしれない。そうそう、高橋氏によれば、今後はPairyによって結婚したペアの夫婦向けに「Family」(仮称)を提供する構想もあるそうだ。

・WebPay(日本、社名はfluxflex)

fluxflexのWebPayはWebサイトやモバイル・アプリにクレジットカード決済機能を組み込むための開発者向けサービスだ。これまで決済機能を実装するには大きく3つのハードルがあったという。決済サービスの仕様が複雑なこと、カード情報流出のリスクが大きいこと、そして検討開始から課金開始まで何カ月もかかること。創業者の久保渓氏によると、日本では今、スタートアップや新規事業が増えているが決済機能の導入がボトルネックになっているという。WebPayはこれを解決する。審査3日、開発者なら直ぐに理解して10行ほどのコードで書けるというシンプルな決済APIがウリだ。急成長するスタートアップ向けクレジットカード決済サービスという位置付けでユーザー企業を増やしていて、過去10週連続で2桁%で売上が伸びているという。


NTT Docomo、ついにiPhoneの取り扱いも開始するも(在庫不足もあり)加入者流出が止まらず

日本の通信キャリアであるNTT Docomoは、9月に加入者が大幅に減少したことを発表した。NTT Docomoは、これまで日本のメジャーキャリアの中では唯一iPhoneを提供していなかった。しかし今回のiPhone 5sおよびiPhone 5cにあわせて、9月からのiPhoneの提供を開始した。iPhoneを求める利用者の流出を防ぐ狙いもあったはずだが、どうやら奏功しなかった形だ。NTT Docomoは、むしろiPhoneこそが顧客流出の原因になった可能性があるとしている。つまりiPhoneの取り扱いを決定したことで顧客層の心に火がついたものの、販売店では品薄が続き、それにより待ちきれなくなった顧客が流出してしまった面もあるようだ。

ロイターのレポートによれば、DocomoはiPhoneの在庫不足により66,800名の加入者を失ってしまうことになったそうだ。ライバルのKDDIやSoftbankと明暗がわかれてしまったかっこうだ。両者ともに新しいiPhoneの登場を受けて、加入者数を伸ばしているのだ。こうした状況をみてDocomoは、両者については十分なiPhoneを供給されていたのではないかとしている。

スタートダッシュには完全に失敗したように見えるDocomoの状態ではあるが、しかし結局のところはiPhoneを扱うことにしたのは成功と出るのではないだろうか。アメリカの状況を見てみても、当初はiPhoneの販売を独占していたAT&Tのライバルたちが、利用者を取り戻し始めたのはしばらくたってからのことだった。在庫については、あるいは今回の初期販売台数については、既存取り扱い2社に対して優先割り当てがあったのかもしれない。あるいはDocomo側の見積もりに甘さがあったのかもしれない。iPhoneの吸引力を理解するにも、やはりそれなりの時間がかかることだろう。

ともかく、この日本の動きを見て、世界の携帯キャリアは、iPhoneの「力」を再認識することになったのではないだろうか。iPhoneを使うためにキャリアを乗り換え、そして手に入れられるとわかっていても、待ちきれなくなってしまう。これまでのデバイスを、馴れたキャリアで使い続けて数週間待つことよりも、すぐに他のキャリアで使い始めたいという気持ちになってしまうものなのだ。各国のキャリアは寺社サービスの「土管化」(dumb pipe)を危惧している。しかし、日本のマーケットを見ると、まさにそうした事態になりつつあることがよくわかる。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


鮮魚流通のAmazonを目指す八面六臂が1.5億円の資金調達を実施

鮮魚の流通はIT化が遅れている巨大な市場の1つだ。漁師から産地市場へ、そして納品業者、飲食店にというように鮮魚の流通には多くのプロセスが発生するが、このプロセス間では未だに電話やFAXなどの通信手段が多く用いられている。

八面六臂(ハチメンロッピ)はこの市場を効率化すべく、流通のITソリューションを提供している。そして本日、同社がバリュークリエイト、ベクトル、ウインローダーの3社から総額1億5,000万円の資金を調達した。

八面六臂は飲食店に対してiPadアプリを提供しており、このアプリには日々の鮮魚情報が入力されている。飲食店側はこのアプリを通じて、欲しい魚の種類、サイズ、産地、価格をチェックし、簡単に注文することができる。

このサービスが特徴的なのはマーケットプレイスではない点だ。漁師らが直接アプリに出荷できる商品を入力し、それを飲食店が買うというようなサービスではなく、商品は八面六臂が自身らで調達して販売しているのだという。だから、立ち位置としては納品業者ということになる。

年内には取引先の飲食店は300店舗程度になる予定で、現在は都内近郊を中心に展開しているが今後対応地域を拡大していく予定だという。

これまでの鮮魚流通は冒頭で述べた通り、手間が多いため人件費が高くついていた。松田氏によるとその約50%がムダなコストであり、IT化を進めることで大幅にコストを削減できるのだという。鮮魚流通は3兆円の市場規模があるそうで、八面六臂は2016年までにこの市場の0.1%のシェア(30億円)を取りにいくと語る。

現在のアプリは商品の受発注が主で、松田氏が実現したいものの10%程度しか完成されていない。今後は受発注以外にもどんな商品がいいのかなど、今後は飲食店により役立つ機能も開発を考えているという。

生鮮流通市場では八面六臂のようにBtoBではないが、Amaoznがシアトル地区で長年Amazon Freshという宅配サービスを実験しており、本格事業化されるのではないかという報道もあるなど、密かにこの業界が盛上がってきている。


翻訳クラウドソーシングConyacのエニドアが6,000万円の資金を調達 – 8カ月で法人登録1,000社を突破

低価格で翻訳をクラウドソースできるConyacを運営するエニドアが8月30日付けで総額6,000万円の第三者割当増資を実施した。引受先はユナイテッド、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルの3社だ。

2009年にローンチしたConyacはオンライン上で簡単に翻訳を依頼でき、発注確定後たいてい1時間以内に納品されるというスピードと安さが売りのサービスだ。現在の登録者数は2万人で、これまでにConyacが翻訳してきた文字数は1億文字を越えているという。

ローンチ当初は個人向けのサービスとして運営されていたが、今年2月にはビジネス向けのサービスも提供を開始した。法人向けにはテキストファイルだけでなく、プレゼンテーションファイルの翻訳も提供している。

法人向けサービスは順調に成長しているようで、約8カ月の間に1,000社が登録しているという。エニドアは今回調達した資金を基に営業力を強化し、2014年の3月までに国内利用企業数を3,000社まで成長させたいそうだ。

オンライン上の翻訳サービスといえば、Conyacの他にGengoがある。Gengoも順調に成長しており、今年に入ってからはさらに成長が加速しているようだ。2月にはYouTubeのビデオ字幕の有料翻訳依頼先として提携を開始しているし、4月にはIntel CapitalやAtomicoなどから1,200万ドルを調達している。


名古屋を拠点とするクラウド請求管理「Misoca」のスタンドファームが3,000万円の資金調達を実施

TechCrunch Tokyo 2011にも出場した名古屋のスタートアップであるスタンドファームがインキュベイトファンドから第三者割当増資で3,000万円を調達した。スタンドファームが運営するのはクラウド請求管理の「Misoca」というサービスだ。

Misocaはオンライン上で請求書や見積書を作成・編集することはもちろん、これらを紙に印刷して郵送してくれる。郵送システムは自動化されているので、請求書の中身が人の目に触れることはないそうだ。

また、請求書の管理やPDFの作成・ダウンロードなどの機能は無料で利用でき、書類の検索や納品書の発行といったものは有料プランのみの利用となっている。郵送には1通あたり160円から210円ほどかかる。

Misocaには2011年11月のローンチ以降、約8,000の事業者が登録しており、今では毎月700以上の事業者が登録しているという。今月からはGMOペイメントゲートウェイと提携し、口座振替による代金回収サービスなどにも力を入れている。

今回調達した資金は開発力をあげるためにエンジニアを増やすことはもちろんだが、エンジニアのみのチームで運営しているため、マーケティングの人材も採用していくという。さらに、請求書だけではなく支払い明細書や領収書といった文章類を電子配信する「MisocaのWeb請求書」というサービスもクローズドで運営し始めており、こちらも強化していくようだ。

冒頭でも述べたようにスタンドファームは名古屋に拠点を置くスタートアップで、どうしても東京と比べると先輩の起業家に会ってアドバイスをもらう回数や自社にジョインしてくれそうな人達と出会う回数は減ってしまうだろう(スタートアップは開発だけに専念すればよいという意見もあるが)。

この点に関してスタンドファーム代表取締役の豊吉隆一郎氏は「地方でスタートアップすることにデメリットは多いと感じる」としているものの、「今ぐらいの規模まで持って来れたのなら地方でも特に問題はない」と考え、来月末に予定しているオフィスの移転先も名古屋で検討しているようだ。


日テレがスタートアップコミュニティの「creww」に1.2億円を出資

日本テレビ放送網(日テレ)がスタートアップコミュニティの「creww」に1億2,070万円出資したことが明らかになった。crewwは昨年10月にはインキュベイトファンドから3,010万円を調達している。

日テレは今年8月に開局60周年を迎えた。これを”第二の創業”とし、「Next60」という次の60年を見据えた中期経営目標を掲げており、この目標達成のための取り組みとして2015年度までに総額500億円の投資枠を設定している。今回の出資はこの取り組みの第一歩となる。

crewwはスタートアップのエコシステムを良くするために立ち上げられたサービスで、スタートアップが自分たちを応援してくれるサポーターを募り、求人やノウハウのリクエストを送ることができる。また、登録しているスタートアップがValuePress!やMicrosoft BizSparkといったサービスを割引料金(または無料)で利用できるマーケットプレイスの提供もしている。

この他にも大企業とスタートアップのコラボレーションの場の提供も行っている。これは主に大企業がプロモーション方法や新事業のアイデアをスタートアップに募集するというものだ。昨年末にはハーゲンダッツがプロモーションの企画を募集し、実際にスタートアップとの企画協業が決定したという。

日テレも5月にcreww上でこのコラボレーションの場を利用し、スタートアップ60社ほどから応募があったそうだ。この時の出会いがcrewwへの出資のきっかけとなった。

現在crewwには約700社のスタートアップとエンジニアや投資家といったサポーター4,000人が登録している。今後は今回調達した資金を基にマーケットプレイスの充実を図ると同時に、日テレとも何らかの形で事業提携もしていきたいという。


ドコモ・イノベーションビレッジ初のデモデイ開催 – 第1期全6社がプレゼン

今年2月にアナウンスされたNTTドコモの新しいベンチャー支援の取り組みであるインキュベーション事業「ドコモ・イノベーションビレッジ」が初のデモデイを開催した。イノベーションビレッジについては本誌で何度か取り上げているが、この取り組みは国内のインキュベーションと同じく、応募者の中から数社を選び、オフィスや開発環境、メンターによるメンタリングなどを提供する。

イノベーションビレッジの特徴はKDDI∞LaboやOpen Network Laboが3カ月間のプログラムを提供しているのに対し、やや長めの5カ月間としていることやドコモの様々なAPIの解放(音声認識、翻訳等)、200万円の開発助成金(コンバーチブルノートによる資金を提供)とった点である。

今日デモデイに登壇した6社のスタートアップはイノベーションビレッジの1期生にあたる。それでは、ドコモがどのようなスタートアップを採択したのかを見てみよう。

DecoAlbum(デコアルバム)、DrawChat — プライムアゲイン

プライムアゲインは2つのアプリを開発している。DecoAlbumは昨年6月にリリースされ、すでに200万ダウンロードを突破している。このアプリは女の子向けで撮影した写真を可愛く、キレイにデコレーションし、オリジナルのアルバムに保存できる。

写真を加工するアプリとアルバムアプリは個々にたくさんあるが、DecoAlbumではその一連の動作を1つのアプリ上で行える。このアプリは日本でもある程度のDL数は記録しているが、海外のユーザーが70%を占めており、タイや台湾といったアジア圏で人気のようだ。

また、DecoAlbumを運営している中で「ユーザーは他人と写真を使ってコミュニケーションを取りたいのではないか」と思ったとプライムアゲイン代表取締役の阿部伸弘はいう。というのも、このアプリの写真は外部のSNSでシェアされることが多かったからだそうだ。

そこで写真や絵を使ったコミュニケーションツールであるDrawChatを開発した。DrawChatはFacebookのサードパーティーメッセンジャー的な位置づけで、Facebookのメッセージ内で写真やキャンバスに手書き文字を加えて送信できる。

DrawChatはスタンドアローンのアプリだが、まだダウンロードしていない相手にこのアプリからメッセージが送られると画像のリンクが送信される。このような仕組みもあって、リリースから20日間で1万ダウンロードを突破しているとのこと。

今後はこの写真とチャットという2つの市場で大きき成長を目指し、2014年中に1000万ダウンロードを目標としている。

FUNPICTY — SODA

FUNPICTYはある共通の言語で人々を元気にしたいというビジョンから始まった。その共通の言語とは「笑い」である。笑いは世界共通の癒しであると語るSODA代表取締役の本名 耕氏はオモシロ系(ギャグやネタ等)アプリを昨年リリースした際には大きな反響を呼び300万ダウンロードを達成したが、継続率は著しく低かったという。

そこで、このようなアプリでも継続して使ってもらえるプラットフォームを構築している。FUNPICTYはちょっと変わったアプリで、複数のカメラアプリをまたいで利用できるオモシロ写真のプラットフォームとなっている。

漫画風の写真、ホラー写真、ギャグの合成写真などを撮れる個々のアプリと連携し、それらで撮影された写真を1つのプラットフォームにまとめて、ギャラリー化を試みている。

現在はAndroidとデスクトップのみでの利用だが、累計ダウンロード数が500万、MAU(マンスリーアクティブユーザー)は30万人の規模にまで成長しているそうだ。

現在は自社で提供しているカメラアプリからの投稿にのみ対応しているが、今後はSDKを提供し、サードパーティーのアプリからもFUNPICTYに写真を投稿できるようにする予定とのこと。

coromocoromo

coromoはAndroid向けのサービスで、これを使うと簡単にホーム画面をカスタマイズ、切り替えることができる。ホーム画面をカスタマイズすると言えば、CocoPPaが最近では人気だが、coromoは少し違ったアプローチをしている。

先に収益源について述べると、イベントやブランドなどのオリジナルテーマによる集客や販促、ブランディングといったB向けの側面、デザイナーによるテーマの販売といったC向けの2つの側面がある。

coromoはテーマをアプリ内からダウンロードして利用することはもちろんできるのだが、カードに端末をかざしたり、QRコードを読み取ってテーマをインストールすることもできるのだ。だから、例えばサッカーの試合のチケットにあるQRコードを読み込んでリアルタイムに情報が流れてくるサッカー専用のテーマをすぐにインストールすることなんかも出来るようだ。

すでに11月末から開催される東京モーターショーでの導入が決まっているそうで、そのテーマでは常時情報を配信し、メーカーのブースへの誘導や、テーマ内に広告を挿入する予定なんだとか。

また、外部のデザイナー達がテーマを作りやすいようにcoromoはHTML5でテーマを作成しているという。こうすることで、開発の負担が減りより多くのテーマが提供されることだろう。

クミタス — ウィルモア

クミタスは食物アレルギーを持つ人のためのECサービスである。食物アレルギーを持つ人が家庭内に居る世帯は14.2%にもなり、小中学校などでアレルギーのため、食べれないものを省いてもらう除去給食者は7%もいるという。

食物アレルギーを持っていると食品を選ぶ際に成分などをチェックするわけだが、その情報量は少ないとウィルモアの石川麻由氏は語る。例えば、ハム1つを取ってもその中に卵が含まれていることもあるそうで、そういった情報は記載されていないこともあり、ネットで購入の判断がつかずに困っている人が多いという。

そこでクミタスでは1年をかけて構築した食品データベース(現在約4万点)を基に、サービス内で「〇〇を含まない△△」といった検索を可能にしている。検索結果には該当商品が販売されているオンラインショップが表示され、ユーザーはそのショップで実際に買物をする。

マネタイズ方法としてはECサイトのアフィリエイトや、データの販売、レシピやレストランの情報を含めた有料会員機能を予定している。

クミタスは本日ブラウザ版がリリースされ、年内にはアプリでも提供される。

Pairy — Timers

Pairyは名前から想像できるかもしれないが、カップル向けのアプリだ。このカテゴリーにはBetweenやhugg、Pairなどが存在している。

Timers代表取締役高橋 才将
によると友人同士の繋がりを重視するFacebookなどの場合は近況の共有がベースとなっているが、恋人同士では思い出の共有が大事なんだとか。カップルの本質は「思い出の共有」であり、デートなどで思い出を作って、それを振り返るというのが関係を深めることになるという。

Pariy内には2人だけのニュースフィードがあり、そこに思い出が蓄積されていく。カップル向けだから、写真には付き合ってから何日目に撮ったのか表示されたり、デートの回数が記録されたりする。

また、デート機能もあり、見たい映画や行きたいレストランなんかを登録しておいて、そこでデートの日にちなどを決めることもできるようだ。

昨年6月にリリースされてから、現在は12万のユーザーが利用しており、アプリ利用開始から30日後の継続率は46%だという。他に面白いデータとしては行きたいスポットが登録されたのは約5万箇所で、そのうち20%は実際にユーザーが訪れているんだとか。

高橋氏によるとフジテレビとPairyが連動して恋愛バラエティ番組も放映される予定とのこと。

超短篇小説 nanovel — GADGET

掲載される作品は全て2,000文字以内という短篇小説よりもさらに短い小説だけを集めたレーベルがnanovelである。「2,000文字以内、5分程度で読めるが面白い」小説だけを取り扱うという。

GADGET代表取締役の浅見敬氏は以前、映画のプロデューサーをしており、その時の体験がnanovelの起源となっている。プロデューサー時代に10分間で人を泣かせることができる作品を考える企画があったそうだ。浅見氏の企画自体は映像化されることはなかったのだが、一緒に仕事をしていた、他のプロデューサーが企画終了後も諦めずに考えたシナリオを映像化した。

その作品がアカデミー短篇アニメ賞を初めて受賞した邦画「つみきのいえ」だったという。この作品には浅見氏は関わってはいなかったが、これで短篇でも人の心を動かせることがわかり、nanovelの発想に至ったわけである。

また、日本には昔から短歌や俳句といった短い作品の文化がある。だから、日本人は短いけど面白い作品を書くことは得意なのではないかと考えている。

nanovelにはプロの脚本家や放送作家、コピーライターなど50人が参加しており、クオリティーの高い作品が揃っているという。ユーザーは彼らの作品を月に16本まで無料で読むことができる。

今後はバックナンバーの有料販売や個別に有料作品などを提供予定だ。


Gunosyがソーシャル化 – フォローやリアルタイムの話題表示機能が登場

 

ユーザーのソーシャルメディアアカウントを分析し、ひとりひとりの好みに合った記事を配信してくれるGunosyがiOSアプリに大きな変更を加えている。今回のアップデートにより新たに友人をフォローしたり、周りで話題になっている記事をリアルタイムに表示したり、記事にコメントを残せるようになった。

Gunosyは当初の1日1回のニュース配信から、朝刊・夕刊の2回に分けて配信回数を増やすなどユーザーがアプリに触れる回数・時間を増やして来た。しかし、朝と夕方(設定にもよるが)のみの配信ではリアルタイムな話題となると他のニュースアプリに比べて劣っていた。

これまでのGunosyユーザーは朝刊と夕刊配信のタイミングでプッシュ通知を受け取ってアプリを起動するという、受動的なアクションが多かっただろう。だから、今回のアップデートではユーザーがアプリを自発的に利用するような仕組みを取り入れたと言える。

また、ソーシャル化に加えて、気になるキーワードが登録できるようになっている。これでソーシャルアカウントの分析と合わせて更にユーザーの欲しいニュースが集まるようになるとしている。このキーワードの登録というのはGunosyの競合でもあるVingowで以前から利用されている機能だ。

このVingowも6月に自動要約機能を加えて話題になり、さらにユーザー数を伸ばしているようだ。同じくニュースアプリのSmartNewsを運営するゴクロは8月に4.2億円を調達し、開発体制を強化するなどこの業界の競争は激化している。


KDDI∞Labo第5期参加チーム5社を発表 – オークションアプリ、駐輪場貸借サービス等が採択

本日、KDDIが運営するインキュベーション事業である∞Laboの第5期採択チームが発表された。今回で5度目となるこのプログラムには毎回100社近い応募があり、その中から数社が選ばれる。

採択されたチームはKDDIが用意したオフィス・スペース(渋谷ヒカリエ内)や開発環境、デバイスの貸与、社内・社外メンターからのメンタリングなどを3カ月間受けられる。

それではKDDI∞Labo第5期参加チームを紹介しよう。

スマオク — ザワット株式会社

スマオクは女の子のためのブランド古着オークションアプリだ。最近ではFrilやメルカリといったフリマアプリが成長しているが、こちらはオークションのアプリになるようだ。

ターゲットとなるユーザー層は売り手が20代後半から30代前半、買い手が20代前半から20代後半としている。ユーザーはスマートフォンからオークションストアを簡単に開設でき、手軽に売りたい商品を出品できる。

このスマオクを運営するザワットはちょっとしたお願いごとなどを売買したり、仲間を募集するためのWishScopeを運営していることでも知られている。このサービスでCtoCのマーケットプレイスを運営するノウハウを培っているため、スマオクでも経験が活かされてくるのだろう。

Dr.Wallet — 株式会社Bear Tail(学生枠)

レシートを撮影して送るだけで、家計簿を作成してくれるサービスがDr.Walletだ。こちらのサービスについては本誌でもローンチ時に取り上げている

家計簿サービスは日本でもいくつか存在するが、このサービスが特徴的な点は全て人が入力している点だ。だからミスが少なく、99%以上の精度で家計簿が作成できているそうだ。ただ、人力で全てをデータ化することは非効率な面もある。そのため、∞Laboのプログラム期間中にレシートをOCR処理(自動の文字認識)できるようにして効率化を図るようだ。

その他、より経理申請用のCSVエクスポートなどの機能を加えた有料プランやレシートと連動するクーポン配信などの仕組みを構築することで収益化も考えている。

Bear Tail代表の黒崎賢一氏によると、家計簿をつけている人のうち半分程度はまだ家計簿ノートなど紙媒体で管理をしているそうで、これからはさらにデジタル化が進むだろうから、ニーズのある市場だとのこと。

なお、Dr.Walletは8月のローンチ以降、登録者は2万人ほどでDAU(デイリーアクティブユーザー)は25%ほどに成長している。

PEDALRest — チームPEDALRest

駅前やオフィス街に自転車を止めておいて撤去されてしまった経験のある方はいるだろう(ちなみにこの日、KDDIの会見場にいた記者たちの約3割が経験ありと挙手していた)。駐輪場があれば良いのだが、特に都内では止めるスペースが少なく、移動手段として自転車を選択することは好ましくない場合が多い。

PEDALRest代表の中島大氏は自身がそのような経験をよくしたことから、この問題を解決するために遊休スペースを転用し、駐輪場として貸すためのサービスを開発している。

仕組みはシンプルで余っているスペースを持っている人達がその場所を駐輪場として提供する。自転車利用者はオフィスなどの目的地を入力すると、その付近で提供されているスペースを選びそこに自転車を止める。中島氏によると駐車場などの端に自動販売機などがよく置かれているように、遊休スペースは多く存在するのだとか。

PEDALRestは最初は東京を中心に展開し、徐々に対応エリアを拡大していく予定だ。

アオイゼミ — 株式会社葵

アオイゼミは「ゼミ」という名前からわかるように学習系で教室をWeb上に再現しようというサービスだ。すでにサービスは提供されており、月曜日から木曜日にライブストリーミングで授業を行っている。

中学生を対象にしたこの授業ではリアルタイムにユーザー(生徒)がコメントを残し、コミュニケーションを取ることができる。また、このコメントは他のユーザーにも見えるため、互いに競争意識が湧いたり、わかりにくい点などの共有ができるといったメリットがある。

葵代表の石井貴基氏によると、このコメントでの交流により授業がより楽しいと感じてもらえているそうだ。しかし、現在は授業中のみしかユーザー同士のコミュニケーションの場を提供できていない。この点を解決すべく、∞Laboのプログラム期間内によりコミュニケーションを活性化させ、学習が楽しく継続するように学習SNSをサービス内に構築するという。

なお、リアルタイムでの授業は全て無料だが、収録した分の授業を見るためには有料会員になる必要がある。

ズカンドットコム — 株式会社ズカンドットコム

Wikipediaが世界中の皆で作り上げる百科事典であるのと同様に、ズカンドットコムはあらゆる分野の図鑑を構築しようとするサービスだ。

Wikipediaは文字ベースで様々な情報が網羅されているが、ズカンドットコムは画像ベースで図鑑を作る。ユーザーは自分が撮影した写真を投稿し、写真はテーマごとに分類される。

ズカンドットコム代表の山出潤一郎氏はスマートフォンで高品質な写真が撮れるようになり生き物や食べ物、風景といった写真が多くアップロードされているが、そのアップロード先はユーザー個々のFacebookやFlickrアルバムになっている。これらの写真をテーマごとに分類して収集できればネット図鑑ができるのではないかという。

図鑑にニーズがあるのか疑問に思う方がいるかもしれないが、現在すでに公開されている魚図鑑は月に100万PVを稼ぐまでに成長しているそうだ。

また、ユーザーへのインセンティブも用意されており、将来的には図鑑内の画像を第三者が有料で利用できるようにして、使用料の70%をユーザーに還元する予定だという。一般的な画像マーケットに比べてズカンドットコムはテーマに合った写真を見つけることができるだろうと山出氏は語る。

以上がKDDI∞Labo第5期に採択された5チームだ。これから各チームは∞Laboのプログラムを受け、3カ月後のデモデーでプロダクトを発表する。


楽天、Rakuten Essentialをスタート―アメリカのブログネットワークTidal Labsと提携して販売商品に関連記事を表示へ

日本のeコマースの巨人、楽天は今日(米国時間9/25)、強大なAmazonと差別化すべく、アメリカのRakuten.comに新たな機能を追加した。 このRakuten EssentialはTidal Labsのネットワークを通じてRakutenで販売される製品を推薦するブログ・コンテンツをインポートするものだ。

この機能は消費者がRakutenネットワークの掲載製品についてより深く知って購買意欲をそそられたり、あるいは少なくともRakuten.comを次回も訪問してくれるよう仕向けたりするのが目的だ。

Tidal Labsはあまり知名度は高くないが、いわば無印のハフィントン・ポストのようなものだ。またAbout.comにも似ている。特定の分野に詳しく、(この点もハフポに似ているが)たとえ無給であってもそれについて記事を書きたい熱心なブロガーを大量に組織している。Tidalがハフポと違うのは、こちらは他のサイトにコンテンツを供給することに特化している点だ。

Tidalの共同ファウンダーのMatt Myersは私の取材に答えて「一部のブロガーには報酬を支払っている。全員にではない」と答えた。たとえばTidalはCondeNast傘下のLucky.comにコンテンツを供給している。Luckyには何千人ものTidalのブロガーの記事が掲載されている。その一部は報酬を得ているという。しかし大多数のブロガーは有力サイトに記事が掲載され、ブロガーとしてイベントに招待されることがあるだけで満足しているのだという。

2011年のローンチ以来、TidalはConde Nast、HarperCollinsのようなメディアやPepsiのようなブランドと提携してきた。

こうしたブログ記事の一部は製品やサービスのプロモーションを意識している。企業サイトや一般サイトで特定の製品を推薦する記事やを見かけたことがあるだろう。RakutenEssentialはコンテンツがeコマース・サイトに特化しているという点でTidalにとって新しい分野の開拓となる。

もちろんRakuten.comにとっても重要な機能強化だ。このサイトは以前のBuy.comで、2010年に楽天に2億5000万ドルで買収されてRakuten.comに再編された。Rakuten.comのCOO、Bernard Luthiは「買収当時、Buy.comは主として消費者向けエレクトロニクス製品の通販サイトで、ユーザーもそれに見合ったもの(若い男性)だった。その後のわれわれの努力は主として、女性や子供、年配のユーザーを取り込むことに当てられた。Rakuten Essentialがその役に立つことを期待している」と語った。

またLuthiは「この提携は当面TidalのコンテンツをRakuten.comに導入することだが、将来はTidalのネットワークを通じて、製品に関するブログ記事にウィジェットを埋め込むことによってRakutenの商品をサイト外でも販売できるようにしたい」という。

両社はこの提携の財政面については明らかにしていない。Tidalと楽天の提携によって、楽天大株主の一員であるPinterestとなんらかの関係が生じるのかも注目される。現在、Pinterestは収益化に向けておそるおそる第一歩を踏み出したところだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


デイブ・ゴールドバーグ・インタビュー―デジタル音楽ビジネスにのチャンピオンが2009年にYahooを辞めてSurveyMonkeyを始めたわけ

昨日(日本時間9/18)、恵比寿でSurvey MonkeyのCEO、デイブ・ゴールバーグがプレスイベントを開催し、質問バンク日本語版などの新機能を発表すると同時にプレスの質問に答えた。

ゴールドバーグは「アンケート調査は有力な会話の手法だ。マーケティング専門家だけのものではなく、結婚式のプランニングから人事管理までありとあらゆる場面で正しい決定をするために重要な役割を果たす」と力説した。その内容はTC Japan西村編集長のアンケート専門家による質問と選択肢をオススメする「質問バンク」、SurveyMonkeyが日本語でも提供開始に詳しい。

私はTechCrunchとはまったく別にイベント・オーガナイザーからの個人的な依頼でデイブの通訳を務めたが、イベントの合間にデイブにインタビューもしたのでご報告しておきたい。

日本のマスコミはデイブ・ゴールドバーグといえばやはりFacebookのナンバー2、シェリル・サンドバーグの夫ということで関心を持ったようだ。これはやむを得ないことで、私もつい「以前『フェイスブック 若き天才の野望の野望』という本を訳したとき、マーク・ザッカーグがあなたの家でシェリル・サンドバーグにFacebookに加わるよう長時間説得したというエピソードが印象に残っている」などと言ってしまった。さいわいデイブはきさくなタイプで「あれはおかしな話だった」と笑ってくれた。

しかしデイブ・ゴールドバーグは彼自身が飛び抜けて有能で飛び抜けた成功を収めた起業家、投資家、経営者だ。ただSurveyMonkey以前のキャリヤは完全にデジタル音楽分野だというのが興味深い。

1994年にゴールドバーグはCD-ROMベースでLAUNCHというマルチメディア音楽雑誌を創刊した。これにはスターミュージシャンのインタビューやプロモーションビデオなどが収められていた。1999年には対応するウェブサイトとLAUNCH castというインターネット・ラジオをオープンする。2001年にリリースされたiTunesとともにLAUNCHはデジタル音楽の最初の主要な試みだった。

LAUNCHメディアは2001年にYahooに買収される。ゴールドバーグは以後Yahooの音楽部門の責任者として腕を振るい、2006年にはビルボード誌に「デジタル音楽でもっとも影響力のある男」に選ばれている。当時デジタル音楽は既存のメジャーレーベルによって法廷闘争の泥沼に引きずりこまれており、ゴールドバーグの名前も「デジタル音楽の闘士」という流れでなんどか目にしている。

それだけにゴールドバーグがオンライン・アンケートの設計から実施、分析までを提供するSurveyMonkeyのCEOとしてシリコンバレーに再登場したときにはその飛躍に驚いたものだ。「いったいなぜ音楽を止めてSurveyMonkeyという全く別分野に飛び込んだのか?」という私の質問にゴールドバーグはこう答えた。


いちばん大きかったのは私の個人的な事情だろう。サンフランシスコは残念ながら音楽ビジネスとは無縁の町だ。音楽ビジネスの中心はロサンゼルスだ。YahooMusicの本拠地はロサンゼルだったから、サンフランシスコからロスまで通勤を続けていた。それは妻がサンフランシスコの会社〔当時シェリル・サンドバーグはGoogleの副社長〕に勤めていたからだ。これでは家族と過ごす時間があまりにも少ない。そこでサンフランシスコで仕事を探そうと思い立った。 

そこで音楽関係の仕事を続けなかった理由だが―いや、今でも投資家、コンサルタントとしては音楽ビジネスと関わっている。しかし、そうだな、2009年になると音楽のデジタル化はほぼ完了してしまった。私がデジタル音楽を始めたときのような革命的な動きは今後望めそうになかった。Yahooでやれることはだいたいやってしまったというか…まあ、それ以外にもYahooには〔「いろいろと問題があった」というように巨大な肩をすくめた〕。

しばらくクールダウンして情報を集めているときに、ライアン・フィンリーという男が始めたこの会社を見つけた。まだ小さな会社で、社員も14人しかいなかったが、すでに創業以来10年経っていて十分な利益を上げていた。しかも同業のライバルはいない。このアイディアにはまだ誰も気がついていないようだった。有望だと思って買い取った。フィンリーにはまだ取締役に残ってもらっている。

その後ゴールドバーグはYahoo Music時代につちかった定期課金ベースのビジネスモデル、事業の国際展開のノウハウと巨額の資金をフルに活用してSurveyMonkeyを有力企業に育て上げた。しかしそのきっかけが妻の勤め先の近くに勤め先を探した結果だというのは人間味がある話だ。

ゴールドバーグはSurveyMonkeyの特長のひとつを「エンタープライズ・ビジネスツールのコンシューマ化」だとして、スライドでDropboxとEvernoteを似たよう存在として挙げていた。そういえばクマ的な体形(ゴールドバーグはフィル・リビンよりさらに一回り大きい)、家族を第一に考える点などは似ているかもしれない。優秀な起業家でありながら人間としても温かみを感じさせる人というのはいるものだ。

余談だが、ゴールドバーグの日本側サポート・スタッフ(広報、提携先)はほとんど全員が女性で、ごらんのようにテクノロジーをフルに駆使してその場からスケジュールを調整し、情報を発信していた。「女性の登用」などという男側の上から目線よりも現実はどんどん先に動いていると思う。

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ECテクノロジーのアラタナが総額約5.5億円の資金調達を実施 – リブセンスが会社として初めての出資

宮崎に拠点を置くアラタナが総額5億4,992万円の資金調達を実施した。このラウンドには既存株主のジャフコ、みずほキャピタル、GMO VenturePartnersの3社に加え、新たにNTTドコモ・ベンチャーズとリブセンスが参加している。リブセンスが会社として出資するのはこれが初めてのことだ。アラタナはこれまでに2011年3月に約6,200万円、昨年3月に約1億円をそれぞれ調達している。

アラタナはECサイト構築サービスの「CAGOLAB(カゴラボ)」やECサイトに必要なバナーなどを制作できる「SketchPage」といったサービスを展開している。SketchPageは3,000社以上が利用しているという。

これらのサービスに加えて、昨年6月からはソーシャルメディアの分析ツール「Zeeble」なども提供しており、ECサイトの構築面だけでなくECサイト運営に役立つツールの開発にも力を入れているようだ。

今後の展開についてはまだ明らかにされてないが、近々大きな動きがあると予想される。というのも、本日予定されていた(中止になった)アラタナの記者会見の内容には増資ではなく新事業についての発表が含まれていたからだ。

なお、プレスリリースによると今回の増資により展開される新サービスは、来年春にスタートを予定しているとのこと。


モバツイ開発者のえふしん氏が新アプリ「ShopCard.me」をローンチ – 友達同士で店舗情報をカード形式で交換

藤川真一(通称えふしん)氏は2007年、まだ日本でiPhoneが発売されていなかった時代にフィーチャーフォン向けのTwitterクライアント「モバツイ(当初はモバツイッター)」を開発し、その後会社を設立、ユーザー数が160万人に達した昨年5月にjig.jpへ会社ごと売却した。

このような経緯を持つえふしん氏が本日新たなiOSアプリ「ShopCard.me」をローンチした。このアプリは訪れたレストランやカフェといった店舗情報をカードとして保存したり、共有したりできる。このカードは「ショップカード」と呼ばれ、表面と裏面が用意されており、表はアプリ利用者全員で共有される店舗名、住所、電話番号といった情報が、裏はプライベートなもので自分が何を食べたか、店に何回訪れたかといった情報が記録される。

もちろん店を記録するだけではなく、店を発見するために近場の店舗情報を一覧で表示してくれる機能なども備えられている。だが、えふしん氏がこだわるのはリアルでの行動のようだ。

例えばこのアプリでユーザーに何を体験してもらいのかというと、「お気に入りの店を友達に教える時に使えること」だという。会話の中でオススメの店名を思い出せなかったり、調べようとしても店舗内で電波が繋がらなかったりする時*に、このアプリで簡単にその店の情報を取り出し共有してもらいたいそうだ(*: ショップカードはオフラインでも閲覧できる)。えふしん氏はこのようなリアルでのコミュニケーションを取ることに価値を見いだしている。

実はえふしん氏は前社を売却後、今年4月から慶應義塾大学メディアデザイン研究科に入学し、このようなモバイルを活用した近距離コミュニケーションメディアをテーマに研究をしている。具体的には飲み屋に入った時に知らない人と会話することは難しいけど、3.11震災時には話したこともない近隣住民とコミュニケーションを取れたのはなぜかといった具合だ。それは共通の不安な気持ちが互いに話しかけても良いという状態を産み出したからで、こうした状況を作りリアルでのコミュニケーションをもっと豊かにできないかという研究をしているという。ShopCard.meは友達などすでに面識のあるユーザー同士が使うアプリではあるが、リアルでのコミュニケーションを豊かにするという点ではこのような研究が活かされてくるのだろう。

また、冒頭で述べたモバツイもその頃から同じ思想で開発されていたようだ。モバツイを作ろうと思った理由はTwitterを「持ち歩ける」ようにしたいという気持ちだった。今でこそ皆がスマートフォンを使ってリアルタイムにTwitterを利用しているが、2007年の当時はPCからの利用が多かった。そこでモバツイが登場し、リアルタイムの情報を持ち歩けるようになった。今回のShopCard.meも同様にショップの情報を「持ち歩く」ことで新しい価値を産み出せればとえふしん氏は語る。

今後はユーザー数の拡大とともに店舗側からプッシュ通知を送れる機能や、モバイルに特化したサービスならではの機能 — 移動販売の店舗情報をリアルタイムで更新 — などの追加を検討しているとのこと。なお、Androidアプリは今後開発予定だ。


グロースハックツール「Fello」運営のユニコンがジャフコから総額1億円を調達

シンガポールに拠点をおくUnicon Pte.Ltd.(以下、ユニコン)がジャフコから総額1億円の資金調達をしたことを発表した。ユニコン創業者の田中隆一氏は元Zynga Japanのメンバーであり、ゲーム業界での経験を活かし、「Fello」というモバイルゲーム開発者向けのグロースハックツールを提供している。

Felloではプッシュ通知、メッセンジャー機能、分析ツールなどをゲーム開発者に提供することで、継続率の向上や開発コストの削減をサポートしている。このサービスはiOS、Androidに対応しており、今後はUnityなどにも対応予定だ。なお、利用は全て無料となっている。

Felloが公開されたのは8月8日で、それから1カ月のうちに開設されたアカウント数は100を越えるという。今回の資金を基に新たに日本にも拠点を置き、国内のプロモーションを強化していくと同時にアジア全体でのモバイルゲーム市場を開拓していく予定だ。


ポケットコンシェルジュを運営するポケットメニューが総額6,000万円の資金調達を実施

会食や接待向けのレストラン予約サービス「ポケットコンシェルジュ」を運営するポケットメニューがフジ・スタートアップ・ベンチャーズ、日本ベンチャーキャピタル、個人投資家から第三者割当増資で約6,000万円を調達した。今回調達した資金は主にサービスの展開地域をパリ、京都、大阪に広げていくために充てられる。

ポケットコンシェルジュは、会食や接待などに使える厳選されたレストランを予約できるサービスである。現在は東京の60店舗ほどのレストランが登録されており、レストランの客単価は1万円から2万円程度で、高所得者層を中心に約1万人が利用しているそうだ。

このサービスは食べログやRettyのようなユーザーの評価を中心としたものではなく、サービス側が選んだレストランだけが掲載されている。ユーザーは目的(接待、デート等)、日程、料理のジャンルからレストランを探し、サービス上で予約できる。

この予約フォームは今時のサービスに比べるとやや入力項目が多い。会食の趣旨や過去の来店回数、店への要望、連れの情報(アレルギーや好き嫌い)といったものがある。また、登録時にも年齢や性別などの情報も入力を求められる。

だが、これにはもちろん訳があるようだ。板前として6年間働いた経験を持つポケットメニュー代表取締役の戸門慶氏曰く、普段レストランが電話で予約を受け付ける際には声のトーンから年齢と性別を判断し、それを踏まえた上で席の配置はもちろん(若い人で騒ぎそうならカウンターの端っこなど)、高齢の方の場合には味を薄めたり、量を減らすなどの工夫をしているという。その他、来店回数によってコース料理でも同じメニューを出さないようにもできる。

ポケットコンシェルジュでは会食や接待で利用されることが多いから、このような細かな気配りも重要になってくる。入力は確かに面倒だが、結果として一番大事なレストランでの体験が向上することになる。こういった点は板前の経験がある戸門氏ならではの視点と言えるだろう。

このようにポケットコンシェルジュは戸門氏の経験を活かしている点が多いように感じるのだが、今後のパリでの展開方法も同様だ。パリでの事業では地元の企業と組み、新たに新会社を立ち上げて展開していくのだが、これがレストランの海外展開と似ているという。

IT企業はGoogleやFacebookのように自社で海外展開していくことも多々あるが、ポケットコンシェルジュの場合はレストランと組むため、そのネットワークが非常に重要だという。というのも、レストランはシェフ同士の繋がりも多いようで、実際にサービスに掲載するレストランをシェフから紹介してもらうこともあるからだ。良いシェフが紹介するレストランは良い確率高いそうで、そのようなコネがあるのと無いのでは良いレストランをサービスに取り込めるか否かに差が出てくる。

戸門氏によると、レストランの海外展開では、しばしばこのように地元レストランや企業と組んで展開することがあるそうで、ポケットコンシェルジュもこれと似たような展開をしていくという。

すでにパリでの事業は話が進んでおり、数名がパリに移動し本格的に展開していくという。今後は上記の地域での展開はもちろん、スマートフォン向けのアプリの開発やクレジットでの事前決済機能などサービス内容の充実も進めていく。