トヨタが圧倒的に信頼性が高いApex.AIの自動運転ソフトウェア開発キットの使用を発表

電気自動車やハイテク車へシフトしつつある自動車メーカー各社は、ソフトウェア、さらにいえばバグがなくワイヤレスでアップデートできるソフトウェアの開発が、顧客獲得に向けて超えなければならないハードルになっていることに気がついた。この問題は、Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「ID.3」や、近々発売されるVolvo(ボルボ)の「XC40 Recharge(XC40リチャージ)」、Ford(フォード)の「Mustang Mach-E(マスタング・マッハE)」などの新型電気自動車でもメーカーを苦心させている。

Apex.AI(エイペックスAI)は、Bosch(ボッシュ)で自動化システムを手がけていたベテランエンジニアであるJan Becker(ジャン・ベッカー)氏とDejan Pangercic(デヤン・パンガーシック)氏が設立したスタートアップ企業で、車両内のソフトウェアを統合し、すべてのアプリケーションを確実に動作させるフレームワークとなるロボットオペレーティングシステムの再構築に4年を費やしてきた。同社は最近、そのソフトウェア開発キット(SDK)が、量産車に使用できるほど洗練されていることを証明する安全認証を取得したばかりで、この度トヨタ自動車と日本の技術系スタートアップのTier IV(ティアフォー)をパートナーとして迎えることになった。

トヨタの先進技術開発部門から2021年1月に新事業体として設立されたWoven Planet Group(ウーブン・プラネット・グループ)は、Apex.OS SDKを自社の車両開発プラットフォーム「Arene(アリーン)」に統合すると発表した。Apex.OS SDKは、車両の安全性に関わる重要なアプリケーションを処理し、自動運転ソフトウェアの開発を加速させ、最終的に量産車への搭載を目指す。米国時間4月14日に発表された別の契約では、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発元として知られるTier IVが、Apex.AIのソフトウェア・スタックを、安全性が最重要視される自動運転システムに使用すると述べている。

「この1年で明らかになった傾向は、自動車メーカーがTesla(テスラ)に勝つために、Software-Defined Vehicle(ソフトウェア定義自動車)と呼ばれるものを目指していることです」と、ベッカー氏は最近のインタビューで語っている。自動車メーカーは、車両のあちこちに100基の電気制御ユニット(コンピュータ)を配置する従来の考え方から離れ、代わりに数台の高性能コンピュータを搭載してすべての機能をソフトウェアで実現しようとしていると、ベッカー氏は説明する。

このような変化は、1台のクルマに何百人、何千人ものソフトウェア開発者が携わる可能性が生じることを意味する。「そのためには、ソフトウェア開発者が同じインターフェースを使い、各部署が連携できるようにする必要があります」と、ベッカー氏はいう。「それを可能にするのが、我々のSDKです。Apex.OSでは、車両のほぼすべての機能に対応できる共通の抽象化レイヤーやSDKを初めて実現させました」。

Apexのツールキットは、個人投資家や戦略的投資家の注目も集めている。2018年、同社はシリーズAラウンドで1550万ドル(約16億9000万円)を調達した。それ以降、同社はAirbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)、JLR(ジャガー・ランドローバー)のInMotion Ventures(インモーション・ベンチャーズ)、そしてトヨタやボルボ・グループから、戦略的投資を受けている。これらの投資額について、ベッカー氏は明らかにしなかったものの、同社が現在、シリーズBの資金調達を行っていることに言及した。

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Apex.OSのルーツは、研究開発プロジェクトや自動運転車の開発に広く使われているオープンソースのROS(ロボットオペレーティングシステム)だ。Apex.OSの目的は、そのコードを機能安全とリアルタイム処理に対応するように書き換えることだった。このSDKは先日、TÜV NORD(北ドイツ技術検査協会)による機能安全認証を取得した。これは、この技術が量産車に適用できると認められたことを意味する。

ベッカー氏によると、オープンソースのコードは認証を受けられないというのが長年の常識だったという。同社は1年かけて認証を取得した。

「自分のノートPCでソフトウェアがクラッシュしたら面倒ですが、自動車の安全性に関わる重要な機能でソフトウェアがクラッシュしたら大惨事になりかねません」と、ベッカー氏は語る。「だからこそ私たちは、システムのクラッシュや操作ミスから保護される信頼性の高いソフトウェアを開発しようとしたのです。今回の認証取得は、当社のソフトウェアが目標としている統計的に表れないほど低い故障率を達成できたことの証明です」。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NVIDIAが次世代車載半導体「DRIVE Atlan」発表、演算処理性能1000TPSの「車載データセンター」

NVIDIAが次世代車載半導体「DRIVE Atlan」発表、演算処理性能1000TPSの「車載データセンター」

4月12日(現地時間)、半導体メーカーNVIDIAはオンラインカンファレンス「GTC 2021」を開催。この中で、同社のジェンスン・フアンCEOが次世代車載半導体「DRIVE Atlan(ドライブ アトラン)」を発表しました。

NVIDIAの車載半導体は、2018年提供の「Parker(パーカー)」、2020年から供給している「Xavier(エグゼビア)」が現行モデル。来年にはXavierの後継に当たる「Orin(オーリン)」の供給が開始される予定です。すでにメルセデスベンツの次世代車両に搭載されることが決まっており、今回のカンファレンスでも、ボルボの車両に「Orin」の搭載が発表されましたが、早くもその次の車載半導体が発表されたかたちです。

注目の「Atlan」ですが、特筆すべきはその処理能力。「Atlan」はなんと1秒間に1000兆回もの処理を行うことが可能。「Parker」は1TOPS(1秒間に1兆回)、「Xavier」は30TOPS(1秒間に30兆回)、「Orin」は254TOPS(1秒間に254兆回)ですから、これらと比べると「Atlan」は破格の性能を有しているといえます。

高度なAI技術を用いて自律走行を行う無人車両はもちろんのこと、有人車両でもアプリケーションやAI機能が充実したモデルで高い演算能力が求められます。同社は「Atlan」の高い能力を「A Data Center on Wheels(車載データセンター)」と表現していますが、データセンターレベルの能力を車に搭載することができれば、自動運転技術も飛躍的に向上するかもしれません。

「Atlan」は2023年にサンプル提供が行われ、車両への搭載は2025年を予定しているとのこと。

(Source:NVIDIAEngadget日本版より転載)

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中国の自動運転車両スタートアップWeRideが米サンノゼでの無人テスト許可を取得

このほど3億1000万ドル(約339億円)を調達した中国の自動運転車両スタートアップWeRide(ウィライド)が、米国カリフォルニア州サンノゼの公道で無人の車両をテストする許可を取得した。無人運転車両テストの許可を取得したのはAutoX、Baidu、Cruise、Nuro、Waymo、Zooxに続き7社目となる。

自動運転車両開発の初期段階においては、テストの許可はセーフティドライバーが運転席に乗ることが必須だった。セーフティドライバーが乗り込んでの自動運転車両テストの許可は現在56社が取得している。人間が運転席に乗り込まないドライバーなしのテストの許可は新たな指標となり、商業ロボタクシーや配達サービスを米国で展開したい企業にとっては必須のステップだ。

カリフォルニア州内の自動運転車両テストを管轄するカリフォルニア州自動車管理局(DMV)は、今回の許可でWeRideはサンノゼ内の特定の道路でドライバーなしで自動走行車両2台をテストできる、と述べた。WeRideは2017年からドライバー付きでの車両テストの許可を持っている。同社はまた、どのように、そしていつ車両をテストするか規制されている。DMVによると、無人自動運転車両は時速45マイル(約72km)以下で走行し、テストは月曜日から金曜日の間に行う。ただし濃い霧や雨の場合、テストは不可だ。

カリフォルニア州でドライバーなしでのテストを行う許可を取得するには、企業は数多くの安全や登録、保険に関する要件を満たさなければならない。ドライバーなしテスト許可を申し込む企業は保険の証拠か500万ドル(約5億5000万円)相当の債券を提出し、車両がドライバーなしで走行できることを証明しなければならない。そして、連邦自動車安全基準を満たすか国道交通安全局からの免除を取得している必要があり、SAEレベル4あるいはレベル5の車両でなければならない。かつ、テスト車両は絶えず監視され、テクノロジーでつながったリモートオペレーターを訓練する必要もある。

ドライバーなしテスト許可所有事業者はまた、ドライバーなしテスト車両の衝突をすべて10日以内にDMVに報告し、離脱の年次報告を提出しなければならない。

WeRideのオペレーションの大半は中国で行われている一方で、今回の許可取得は同社が引き続き米国にも関心を持っていることを示している。中国・広州に本社を置くWeRideはR&Dとオペレーションセンターを北京、上海、南京、武漢、鄭州、安慶、そしてシリコンバレーに置いている。2017年創業の同社は2021年2月に広州で配車事業運営の許可を取得した。

同社は中国で最も資金を調達した自動運転車両テクノロジーのスタートアップで、出資者にはバスメーカーのYutong、中国の顔認証企業SenseTime、そしてとRenaultと日産、三菱の戦略ベンチャーキャピタル部門Alliance Venturesが含まれる。その他、CMC Capital Partners、CDB Equipment Manufacturing Fund、Hengjian Emerging Industries Fund、Zhuhai Huajin Capital、Flower City Ventures、Tryin Capital、Qiming Venture Partners、Sinovation Ventures、Kinzon Capitalも投資している。

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画像クレジット:WeRide

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Intel子会社MobileyeがUdelvと提携し2028年までに3.5万台の自動走行配達車両3.5万台を展開

Intel(インテル)の子会社Mobileye(モービルアイ)が自動走行車両で野心を膨らませ、配達分野に参入しようとしている。

Mobileyeは4月12日、自動走行する多数の配達専用車両に同社の自動走行システムを提供すべく、Udelvと契約を結んだと発表した。両社は2028年までにTransportersという名称の車両3万5000台超を走らせる計画だと述べた。商業展開は2023年に開始する見込みだ。

まずは米国の商用車リース管理会社DonlenがTransporters1000台をプレオーダーした。

今回の発表は両社にとって大きな意味を持つ。自動走行車両配達スタートアップとして創業されたUdelvはMobileyeの自動走行システムを受け入れ「自動走行デリバリーを可能にするハードウェアとソフトウェアの構築」に注力することを選んだ、とCEOのDaniel Laury(ダニエル・ラウリー)氏はTechCrunchへの電子メールで述べた。

「配達する商品の多様性、配達方法のバラエティ、配達のラストマイルと中間マイルの自動化に関連する込み入った複雑な問題を考えるとき、これは解決すべきエンジニアリングの中心的な問題です」とラウリー氏は述べた。「Mobileyeと提携することで、Udelvはリソースと取り組みのすべてをビジネス応用の最適化に注ぐことができ、その一方でMobileyeはすばやく展開するツールを提供します。ウィンウィンの関係です」。

カメラベースのセンサーのデベロッパーとして始まったMobileyeにとって、この提携は新たな事業拡大となる。同社の技術は高度なドライバーアシスタンスシステムをサポートするものとして大半の車両メーカーに採用されている。偏在、車両5400万台超がMobileyeのテクノロジーを搭載している。

「2社の提携はすばらしい組み合わせで、大規模展開ができます」とIntelのシニアエンジアニア主任で、MobileyeのAutomated Vehicle Standards担当副社長を務めるJack Weast(ジャック・ウィースト)氏は直近のインタビューで述べた。「そしてこれはMobileyeのテクノロジーが、すでに発表した分野に加えて商品配達の分野でも活用されるという公式な初実証ポイントとなります」。

2017年に153億ドル(約1兆6742億円)でIntelに買収されたMobileyeは近年、高度なドライバーアシスタンス技術から自動運転車両システムの開発へとスコープを広げてきた。2年以上前に同社は視覚、センサフュージョン、REM マッピングシステム、ソフトウェアアルゴリズムを含むキットを立ち上げる計画を発表した。そして2018年には、サプライヤーとしてだけでなくロボタクシーオペレーターになるという予想外の計画を明らかにした。同社はまた、自動走行のシャトルをTransdev ATS、Lohr Groupとともに欧州で展開することも計画している。Mobileyeは自動走行車両を使った配車サービスを2022年初めにイスラエルで立ち上げる計画も持っている。

最新の契約は、自動運転システムをロボタクシー以外に応用するというMobileyeの野心を示している。

Mobilieye Driveというブランド名の自動運転システムは、SoC(システムオンチップ)ベースの計算、カメラベースの冗長センシングシステム、レーダーとライダーのテクノロジー、REMマッピングシステム、責任感知型安全論(RSS)ドライビングポリシーで構成される。MobileyeのREMマッピングシステムは本質的には、ADASと自動走行運転システムのサポートに使われる高解像度のマップを作成するために、同社のテックを搭載した100万台超の車両を利用することでデータをクラウドソースする。

Udelvは自動運転テクノロジーを自社の配達管理システムに統合するのにMobileyeと協業する。Mobileyeは車両が使用される間はずっと無線のソフトウェアサポートも提供する。

こうした専用車は人間が運転するトラックや配達バンにあるような典型的な機械的特徴を持たない。いわゆるレベル4の自動運転に対応するようデザインされている。SAE(自動車技術者協会)の定義では、レベル4だと特定の状況で人間の操作なしに車両が運転を制御できる。車両はまた四輪駆動で、配達を行う人にとって有用なLEDスクリーンや商品のための特別コンパートメントを備えている。

Udelvによると、駐車場や荷物積み下ろし場所、集合住宅、私道での車両操縦ができる遠隔操作システムも搭載する見込みだという。

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画像クレジット:Mobileye/Udelv

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドミノ・ピザがヒューストンで無人のピザ配達を開始、自律配達車両スタートアップNuroと提携

4月12日の週から、米テキサス州ヒューストンでDomino’s(ドミノ・ピザ)にピザを注文する顧客の一部は、人間と接することなく商品を受け取れるようになる。

米国時間4月12日、Domino’sは自律配達車両スタートアップのNuroと提携し、顧客はNuroのR2ロボットから家の前でピザを受け取る方法を選べるようになると発表した。

Domino’sのシニアVP兼最高イノベーション責任者のDennis Maloney(デニス・マロニー)氏は発表の中で「我々には自律配達の分野で学ぶべきことがまだたくさんあります。このプログラムによって我々はお客様の反応、お客様とロボットとのやりとり、ストア運営への影響をもっと理解できるようになるでしょう」と述べた。

いずれかの時点で、Domino’sのウェブサイトでWoodland Heightsストアに注文するとR2を選べるようになる。R2はレーダー、360度カメラ、赤外線画像により動きを制御する。ロボットの場所や、ピザを受け取るためにロボットのタッチスクリーンに入力するPINコードは注文者にテキストメッセージで通知される。

コロナ禍で非接触の自律食品配達業界は急速に成長し、現在Nuroはこの分野のリーダーになりつつある。

Nuroの共同創業者で社長のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏は発表の中で「Nuroのミッションはロボットで生活を向上させることです。我々の自律配達ロボットをヒューストンでDomino’sのお客様に使っていただけることになり、たいへんうれしく思っています。お客様の感想を楽しみにしています」と述べた。

ヒューストンの公道で電動の無人自動運転車両が料理を配達するのはこれが初めてだ。住宅地であるWoodland Heightsはヒューストンでは最も古い歴史的地区の1つで、高速道路のI-45とI-10にはさまれている。この街のDomino’sはメインの大通りであるHouston Avenueに面しているため、このテクノロジーのテストをするには相当難しい場所だ。

Nuroは元々、Domino’sとの提携およびヒューストンでのテストを2019年に発表していた。同年には、ヒューストンとアリゾナ州フェニックスでスーパーのKrogerの配達サービスを開始した。2020年末にはカリフォルニアの公道でのテストが許可され、ウォルマートやCVSなどのパートナーから商品を配達している。Nuroは米運輸省から無人運転車両に関する安全規定適用除外を承認された初の企業だ。

Nuroがレストランの配達に大規模に進出するのはDomino’sが最初のようだが、間違いなくこれが最後ではないだろう。NuroはシリーズCで5億ドル(約547億円)を調達したと発表したばかりで、メキシコ料理チェーンのChipotleがこのラウンドで出資した。イノベーションにフォーカスするトヨタ自動車の子会社Woven Planetの投資部門であるWoven Capitalも出資した。

関連記事:Nuroの無人運転配達車がカリフォルニア州初の商業運用許可を獲得、2021年早々にもサービス開始予定

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画像クレジット:Nuro

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

ホンダとベライゾンがドライバーの安全性向上に5Gとエッジコンピューティングの活用を検討

Honda(ホンダ)とVerizon(ベライゾン)は、5Gとモバイルエッジコンピューティング(MEC)が、現代のコネクテッドカーと将来の自動運転車の安全性向上にどう役立つかについて検証を行っている。

米国時間4月8日に提携を発表したこの2つの企業は、ミシガン大学にあるコネクテッドカーと自動運転車のための試験場Mcity(エムシティー)で、さまざまな安全シナリオを試験中だ。このベンチャーの目的は、5G接続とエッジコンピューティングの組み合わせをどのように使えば、自動車、歩行者、道路インフラ間の高速通信が可能になるかを研究することにある。要するに、高速通信により、衝突や危険を回避してより安全なルートを自動車が判断できるようにすることだ(TechCrunchはVerizonのVerizon Mediaの所有している)。

5Gのテストは、まだ予備研究の段階であり、ホンダはこの新技術を使った機能を製品に実装する予定はない。Verizonは、2021年中に少なくとも4つの都市で5G対応車の公道テストを計画していると、同社技術開発上級マネージャーでありこのプロジェクトのリーダーの1人Brian Peebles(ブライアン・ピーブルス)氏は話している。

この提携事業は、ホンダが2017年から開発を進めているSAFE SWARM(セーフスウォーム)車載AI技術の上に成り立っている。これには、C-V2X(Cellular Vehicle-to-Everything)通信が利用されている。その名が示すとおり、C-V2Xは、クルマとその他の道路利用者との通信を行うための標準技術だ。

以前にも、DSRC(Dedicated Short Range Communications)という同様の通信技術があったが、これは基地局を介してクルマ同士の通信を行うというものだった。一方、V2Xと5Gの組み合わせには、デバイス間の直接通信が可能になるという優位性がある。もちろん、FCC(米連邦通信委員会)も承認している。

「そもそも、V2Xは車両同士が対話をするものです」と、ホンダ先進技術研究部門の研究グループリーダーEhsan Moradi Pari(エサン・モラディ・パリ)博士はTechCrunchに話してくれた。「車両は、互いに現在位置、速度、その他のセンサー情報を提供し合い、各車両は他車との衝突しないかどうかといった脅威の査定を行います。この(5GとMECという)技術により、私たち全員が自身の情報をネットワークに提供することで、事故の恐れがないかどうかをネットワークが教えてくれるようになります」。

ホンダとVerizonは、この技術なら車載コンピューターよりもずっと速く通信を処理できるという前提に立っている。クルマに搭載されている非力なコンピューターにネットワーク処理を任せるのではなく、コネクテッドカー、歩行者、道路インフラで生成された情報を5Gネットワークに送信する。そうして、ネットワークのエッジで(つまりクラウド内ではなく)コンピューター処理をリアルタイムで行わせる。

センサーとソフトウェアに依存した車両では、ドライバーが何かにぶつかりそうになったと感知してからブレーキをかけることになるが、MECの場合は道路のずっと先で何が起きているかを確認しコミュニケーションをとることで、ほぼ未来を予測できる。そこが利点だ。

ピーブルス氏によれば、通信速度は際立っており、Verizonの5GネットワークからMECとの間の往復の遅延テストでは、50ミリ秒以下という成績が得られたという。

Verizonとホンダがテストを行った安全シナリオには、信号無視もあった。彼らは、スマートカメラ、MEC、V2Xソフトウェアからのデータを使うことで、赤信号を無視して突っ込んでくる車両を感知し、視覚的な警告メッセージをその交差点に近づきつつある他の車両に送ることに成功した。同様のシナリオを用いて、建物の陰に歩行者が隠れていることや、大音量で音楽をかけていてサイレンが聞こえないドライバーに緊急車両の接近を知らせるテストも行った。

「すべての道路利用者間の確実なアルタイム通信は、自動運転環境に極めて重要な役割を果たします」とパリ氏。「こうしたネットワーク接続を用いた安全技術により、潜在的な危険をはらむ状況をリアルタイムで感知し、ドライバーや自動運転システムに警告を発することが可能になります」。

この研究の初期段階には、人が運転する車の安全性を向上させる技術も含まれているが、ホンダとVerizonの提携関係は、将来の自動運転車の5G利用に向けた下地を作ることになる。このテストでコネクテッドカーの安全性が証明されたなら、やがてはより効率的なネットワークが生み出され、交通渋滞の緩和と、ひいては大気汚染の減少につながっていくはずだ。

「私たちの第1の目的は、クルマの安全と人の安全の向上です」とピーブルス氏はTechCrunchに語った。「米国内だけでも、年間4万2000人以上が交通事故で亡くなり、200万人が怪我をしています。人間が運転する時代から進化するためには、テクノロジーの重要性はさらに高まります。その移行は、安全で総合的なやり方、つまりすべてのものが協調して動くとった方向で進めなければなりません」。

現在公道で走行テストが行われている自動運転車は、5Gもエッジコンピューティングも必要としないものだ。自動運転車のメーカー各社も、5Gの可能性に注目しているが、彼らは今の技術をベースに車両を開発している。

5GとMECの組み合わせには、課題もある。これほどのレベルの相互接続性は、ハイウェイ全般と、すべての交差点にセンサーを配置して初めて機能する。5G対応の車両やデバイスは相互通信が可能だが、歩行者や道路インフラとコミュニケートするためには、スマートカメラがそれらの存在に気づき、その情報をネットワークで共有できなければならない。しかも、センサーは完ぺきではない。

これには巨大なインフラ投資が必要であり、さらに、必要なあらゆるセンサーの設置には、州、都市、地方自治体の住民の支持と協力が欠かせない。だが、1つのユースケースとして中国に目を向ける人もいるだろう。中国では、5Gネットワークへの早急な移行を国策にしており、同国の多くの自動運転車メーカーは、開発には、5G通信と高度な計算能力が極めて重要であることに気づいている。

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画像クレジット:Verizon

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

ティム・クック氏が自動運転技術とApple Carについてヒントを出す

Apple(アップル)のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、米国時間4月5日に公開されたインタビューで、大きな期待を集めるApple Carと、その重要な機能となるであろう自動運転技術の方向性について遠回しに語った。

「自動運転そのものがコア技術だと私は考えます」とクック氏はポッドキャスト「Sway」(スウェイ)でKara Swisher(カラ・スウィッシャー)氏のインタビューに応えて話した。「一歩下がって見れば、このクルマ、いろいろな意味でロボットです。自動運転車はロボットなのです。そのため自動運転では、いろいろなことができます。そこに、Appleがするべきことが見えてきます」。

多くを語らないよう言葉を控えるクック氏は、Appleが自動車を生産するのか、あるいはその車載技術を開発するのかというスウィッシャー氏の質問には正面から答えなかった。ただ同氏は、Project Titan(プロジェクト・タイタン)は中間地点に達していることをほのめかした。

「私たちは、ハードウェアとソフトウェアとサービスを統合して、その交差点を探し出すことを身上としています。そこに魔法が起きるからです」とクック氏。「そして私たちは、そこに関わる主要技術をぜひとも手にしたいのです」。

これに対してスウィッシャー氏はこう尋ねた。「よろしければ、自動車に関してその点をお聞かせ願えませんか。自動車のことが知りたいのです」。

私も知りたい。

マイクロモビリティー業界では、電動スクーターは車輪がついたiPhoneみたいなものだと考える人間が多い。だが、Apple Carは、もっと実質的に車輪つきiPhoneになるはずだ。Appleは、ハードウェアとソフトウェアのすべてを所有することでよく知られている。そのため、Apple Carの開発のためにAppleのエンジニアが自動車メーカーと密接に作業を進め、いつかその中間業者を排除して自分たちが自動車メーカーになったとしても、別段驚きはしない。

いわゆるProject Titanは、2019年の大量一時解雇のために、一般の目に触れる前に頓挫する危機に瀕しているかに見えた。しかし、最近の報告によれば、プロジェクトは現在も健在で、2024年までに自動運転電気乗用車を生産する予定に変わりはないという。

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2021年の初め、AppleとHyundai(現代自動車)傘下のKia(起亜自動車)は、ジョージア州ウェストポイントにあるKiaの工場でAppleブランドの自動運転車を生産するための契約を間もなく締結するとCNBCが伝えた。AppleがHyndaiに興味を示している件に詳しい情報筋は、Appleは、クルマに搭載されるソフトウェアとハードウェアの主導権を握らせてくれる自動車メーカーと提携したいのだと聞かせてくれた。

この契約は合意に達することなく、2021年2月に交渉が打ち切られたとを複数メディアが伝えている。しかし、Appleは日産などの自動車メーカーや、さらにはスタートアップも含むサプライイヤーと、以前から繋がりを作っているなど、Appleとその計画に関する大量の噂や報道が、それで止まることはなかった。

Apple Carがどのようなかたちになるかはまだ不透明だが、ロボタクシーや配送トラックではなく乗用車ということで、Tesla(テスラ)などと競合することになるのだろう。

「彼が作り上げた企業には大きな賞賛と尊敬の念を抱いていますが、イーロンに話を持ちかけたことはありません」とクック氏。「Teslaは、EV分野の主導権を確立しただけでなく、実に長い期間それを維持するという快挙を成し遂げました。なので私は、彼らを大変に評価しています」。

Project TitanはDoug Field(ダグ・フィールド)氏が率いている。彼はTeslaでエンジニアリング上級副社長を務め、Model 3発売の立役者となった人物だ。

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画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

自動運転技術のオーロラがボルボと提携、高速道路を自律走行するトラックの製造を目指す

自動運転車のスタートアップ企業であるAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、Volvo(ボルボ)と自動運転セミトラックを北米向けに共同開発することで合意したと発表した。

両社によると、この数年に渡る予定の提携は、ボルボの自動運転ソリューション部門を通じて行われ、同社の顧客が利用するハブ間の高速道路を自動運転で走行できるトラックの製造に焦点を当てたものになるという。オーロラが開発した、自動運転ソフトウェア、コンピュータ、センサー類を含む「Aurora Driver(オーロラ・ドライバー)」と呼ばれる技術スタックが、ボルボのトラックに搭載されることになる。

今回の発表は、オーロラがUber(ウーバー)の自動運転子会社を買収したことや、トヨタ自動車と自動運転ミニバンの開発で提携を結んだことに続くものだ。米国で販売されているクラス8トラックは、半数近くが3社のトラックメーカーによって占められているが、オーロラは現在、そのうちのPaccar(パッカー)とボルボの2社と提携している。

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「パッカーなど以前発表したパートナーとの提携は、ボルボとの協業と並行して継続します」と、オーロラの広報担当者はTechCrunchに語った。「パッカー初の自動運転技術パートナーとして、我々の提携の独自性は、安全のために運転手を乗せることなく運用できるパッカー初の大型トラックを製造して、それを市場に初めて投入し、広範囲に展開することを可能にします」。

オーロラによると、同社が買収したBlackmore(ブラックモア)とOURS Technology(アワーズ・テクノロジー)による周波数変調連続波LiDARは、長距離トラックの自動運転を解決する鍵になるという。LiDAR(ライダー)とは、light detection and ranging(光による検知と測距)レーダーのことで、自動運転システムに必要なコンポーネントと考えられている。オーロラの技術は、従来のTime of Flight(光の飛行時間から計測する)方式とは異なり、危険を察知してから停止または減速するのに十分な時間を確保できる長距離の認識が可能であることを売りにしている。

関連記事:自動運転のAuroraがLiDARスタートアップを買収、自動運転トラックの普及へ向け開発加速

今回の発表は、ボルボの自動運転車部門であるVolvo Autonomous Solutions(ボルボ・オートノマス・ソリューションズ)にとっても、大きな加速を示すものだ。同事業部にとって、これが自動運転トラックを公道に導入する初の案件となる。

2017年の創設以来、オーロラは急速に自動運転技術をリードする企業の1つとなり、Amazon(アマゾン)、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)、Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)からの支援を集めている。同社は、Uber、Tesl(テスラ)、Google(グーグル)の元幹部らによって設立された。

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画像クレジット:Aurora

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

元Googleのエンジニアによる自動運転ロボットがマイアミで料理配達業務を開始

自動運転とロボット工学のスタートアップ企業Cartken(カートケン)は、駐車場やコミュニティセンターを運営するスタートアップ企業のREEF Technology(リーフ・テクノロジー)と提携し、マイアミのダウンタウンの街路に自動運転の配達ロボットを導入すると発表した。

今回の発表により、Cartkenは正式にステルスモードから脱却した。Googleで日の目を見なかったBookbot(ブックボット)の開発に携わっていたエンジニア達が2019年に設立したこの会社は、自動運転とAIを搭載したロボットや、それを使った配送業務などに関して、市場で通用する技術の開発に取り組んでいたが、これまで事業内容は伏せられていた。Cartkenの歩道用自動運転ロボットが大規模に展開されるのは、これが初めてのこととなる。

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このCartkenが開発したREEFブランドの電動ロボットは、数カ月のテスト期間を経た後、現在はマイアミのダウンタウンにおける半径3/4マイル(約1.2キロメートル)の地域に住む人々に、デリバリー専用キッチンから料理のオーダーを届けている。スパゲッティなど温かい料理の熱を逃がさないように断熱された荷室を備えたこのロボットは、あらかじめ設定された物流拠点に配置されており、料理の準備が完了すると指示を受けて配達に向かう。

「私たちは、いかにマイアミが未来に向けて先行しているかを示したいと思っています」と、REEFの最高技術責任者であるMatt Lindenberger(マット・リンデンバーガー)氏は、TechCrunchに語った。「これは技術の可能性を示す絶好のチャンスです。当社がマイアミで大きな存在感を示していることに加え、新型コロナウイルス感染流行の沈静化にともなう路上の混雑が相まって、この技術がどのように機能するかを示すことができる非常に良い環境が整っています」。

リンデンバーガー氏によると、マイアミはスタート地点として最適な場所だが、これはほんの始まりに過ぎず、REEFの他のラストマイルデリバリー事業にも、Cartkenのロボットは利用できる可能性があるという。現在、マイアミで稼働しているのは2台のレストラン料理配達ロボットだけだが、今後は同地区の内外で採用を拡げ、フォートローダーデールや、さらにはダラス、アトランタ、ロサンゼルス、最終的にはニューヨークなど、同社が事業を展開する他の大都市にも拡大する計画だという。

街中にロボットが存在することが、いわゆる「フォース・マルチプライヤー」の役割を果たし、サービスの質を維持しながら、コスト面の効率に優れた方法で、規模を拡大していけることを、リンデンバーガー氏は期待している。

「ポストコロナの世界では現在、配達が爆発的に増加しており、今後もそれが続くと予想されます。そのため、このような非接触・ゼロエミッションの自動化技術は、非常に重要です」と、リンデンバーガー氏は述べている。

Cartkenのロボットは、機械学習とルールベースのプログラミングを組み合わせ、起こりうるあらゆる状況に対応するという。それは単に、安全に停止して助けを求めるということも含まれると、CartkenのCEOであるChristian Bersch(クリスチャン・バーシュ)氏はTechCrunchに語った。REEFでは、必要に応じてロボットを遠隔操作するために管理者を現場に配置しているが、これは2017年にフロリダ州で自動運転の配送ロボットの運用を認めた法律に盛り込まれている注意事項である。

「結局のところ、この技術は自動運転車と非常によく似ています」と、バーシュ氏はいう。「ロボットは環境を見て、歩行者や街灯のような障害物を回避する計画を立てます。もし未知の状況が発生したら、ロボットは急に止まることができるので、安全にその状況からロボットを助け出すことが可能です。しかし、重要なのは、誰かが急にロボットの前に飛び出したような事態が発生した場合、遠隔操作では不可能なほど一瞬で反応できるレベルの自律性をロボットに持たせることです」。

REEFは地図上でロボットの活動エリアを特定し、Cartkenはロボットが必要とする特定の状況を考慮ながら、都市に合わせて設定を調整する。これにより、ロボットは配達先の住所を指定されると、人間の配達員と同じように動き、業務を遂行することができる。このロボットにはLTE回線が搭載されており、常に位置情報を更新しているので、REEFは配達部隊のマネジメント機能に組み込むことができる。

将来的には、Postmates(ポストメイツ)、UberEats(ウーバーイーツ)、DoorDash(ドアダッシュ)、GrubHub(グラブハブ)など、REEFが提携している主要なフードデリバリープラットフォームでも、ロボットによる配達を顧客が選択できるようにしたいと、リンデンバーガー氏は語る。顧客はロボットが到着するとテキストメッセージを受信し、家の外に出てロボットと会うことができる……ようになる予定だが、現在はまだこの技術は完成していない。

現状では、ロボットは道路までしか行くことができないため、人間の配達員が料理を受け取って、直接ドアまで運ぶというサービスを、多くの顧客が希望する。

また、集合住宅に住んでいる場合は、ロボットが建物の中に入って注文主の部屋まで辿り着くことは難しい。まだ多くの顧客が直接ロボットと対面できる準備は整っていない。

「これは暫定的なステップです。しかし、我々にとって、他に制限を設けることなく、技術を迅速に現実に移すための道筋でした」と、リンデンバーガー氏は語る。「どんな新しい技術でもそうですが、段階を踏んで進めていくことが大事です。今、私たちが踏み出して成功させた非常に重要なステップは、一定の半径内にロボットを派遣し、そこにちゃんと到着できると分かることです。これは開発の過程において、それだけでも非常に大きなステップであり、最終段階に向けてどのような課題があるかを知ることができます。そうすれば、私たちはCartkenと協力し、最後の課題の解決に向けた取り組みを始めることができます。このような自動化が可能になっただけでも、大きな一歩です」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Cartkenマイアミロボット配達フードデリバリー自動運転 / 自律運転

画像クレジット:REEF Technologies

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Optimus Rideがパワースポーツ車両メーカーPolarisと提携、キャンパスから自律走行EVの商業化を目指す

自律型電動モビリティサービスを提供するOptimus Rideは、パワースポーツ車両メーカーのPolaris(ポラリス)と提携し、完全自律走行型のGEM電気自動車(EV)を市場に投入すると発表した。両社は、Optimus Rideの自律走行ソフトウェアとハードウェアを完全に統合した、Polaris GEM低速車両の新しいラインアップを販売していくという。

このマイクロトランジット車両は2023年後半に発売される予定で、企業や大学のキャンパス、複合施設など、ジオフェンスで囲まれた限定地域の環境で展開されることになる。

道路を走る電動の自律式車両は、Polaris GEMだけではない。Alphabet(アルファベット)傘下のWaymo(ウェイモ)、Uber(ウーバー)、Ford(フォード)、Motional、GMの子会社であるCruise(GMクルーズ)などの大企業が、都市部での配送やライドシェアサービスに使用する自律走行車に投資している。しかし、Optimus RideのCEOであるSean Harrington(ショーン・ハリントン)氏は、まず限定地域のジオフェンス環境でスタートし、技術が安全に開発されたら、それを外に拡大していくことにより市場の優位性を得られると考えている。

ハリントン氏はTechCrunchの取材に対し「マイクロトランジットは自律走行の出発点として最適であり、AV(自律走行車)が浸透し始める場所になるでしょう」と語った。「低速で局地的な環境の中で短距離の移動に集中することにより、自律型モビリティソリューションを最も迅速に展開し、優れた体験を提供できるようになります。一方ロボタクシーの場合は、技術的な課題が無限にあります」。

Optimus Rideは同社の自律走行技術を搭載したPolaris GEMを、ブルックリン、ボストン、カリフォルニア、ワシントンD.C.、北バージニアでのライドシェア事業、またはテストの一環として、すでに30台ほど導入している。ボストンのシーポートにある本社の近くにテストサイトがあり、マサチューセッツ州のSouth WeymouthにはUnion Pointと呼ばれる無人トラック環境がある。

近い将来、不動産大手であるBrookfield PropertiesのワシントンD.C.オフィスなど、現在のパートナーシップを継続的に拡大するとともに、新しい市場にも進出していく予定だという。またハリントン氏は、次のステップとして大学キャンパスを示唆した。

ブルックリン海軍工廠では、固定ルート上のマイクロトランジットで従業員が移動するためにPolaris GEMが配備されている(画像クレジット:Optimus Ride)

GEMは、来校者やキャンパス内の居住者、そして職員に、施設周辺の固定ルートとオンデマンドの移動手段を提供し、場合によっては地域の交通機関のハブや近隣地域への移動も可能にする。

「ワシントンD.C.のBrookfieldキャンパスでは、Opti Rideアプリを利用して、ユーザーが配車の予約をしたり、シャトルの座席を確保したりすることができます」とハリントン氏は語る。「そしてブルックリン海軍工廠では、固定スケジュールと固定ルートを運行しています」。

時速25マイル以下で走行するマイクロトランジット車両は現在4人乗りで、最前列には安全のためにオペレーターがいる。同氏によると、次世代のGEMでステアリングホイールとブレーキペダルを取り外せば、車両は6人乗りになるという。

現在のGEMも次世代のモデルもレベル4の自動運転が可能で、人間の操作を必要とせずに走行できる。ジオフェンスに囲まれた環境という制約はあるが、ハリントン氏によれば、これらの車両は環境を完全に認識して対応できるとのこと。

「この車両は、LiDARとコンピュータビジョンを活用した完全な知覚スタックを備えており、状況認識、物体の分類と追跡、フルプランニングとモーションコントロールのアルゴリズムにより、与えられた環境内で安全に動作することができます」とハリントン氏は述べている。「ジオフェンスの利点は、その場所のHDマップを開発し、トラフィックの観点から予想されるすべてのことを決定づけられることです。特定の環境で制約を受けるということは、いかなる状況でも動作することを期待された制約のない車両ではなく、高い安全性と性能レベルを迅速に実現することを意味します」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Optimus RidePolaris自律運転電気自動車

画像クレジット:Optimus Ride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)