AIを活用した製造工程モニタリング技術を提供するInstrumentalが21億円調達

米国時間7月29日、ビジョンベースのAIを使用して製造工程の異常を検出するスタートアップ Instrumentalが、Canaan Partnersが主導する2000万ドル(約21億円)のシリーズBラウンドを行ったと発表した。2017年半ばに行われた750万ドル(約7億9000万円)のシリーズAと合わせて、同社はこれまでの2ラウンドで1030万ドル(約10億8000万円)を調達(Crunchbase記事)していた。

リリースによれば、今回のシリーズBには、シリーズAの投資家であるRoot VenturesEclipse Ventures、シードラウンドも主導したFIrst Round Capitalなどの他のVCも参加した。Stanford StartXも新しい投資家の一員として加わっている。

アンナ=カトリーナ・シェドレツキー氏(画像クレジット:Instrumental

Instrumentalテクノロジーは、ハードウェアとソフトウェアのハイブリッドだが、特に後者に重点が置かれている。

TechCrunchは、同社の創業者でCEOのAnna-Katrina Shedletsky(アンナ=カトリーナ・シェドレツキー)氏に話を聞き、その保有技術と成長戦略について理解を深めた。また、CanaanのパートナーであるHrach Simonian(フラク・シモニアン)氏に対して、今回のラウンドの主導に至ったビジネス指標とマイルストーンに対して質問した。

保有技術

Instrumentalのテクノロジーは、カメラとコードの組み合わせだ。スタートアップはハードウェアを製造ラインにインストールし、データの小さなサンプルセットを使って異常を検知できる学習ソフトウェアを採用している。同社の目標は、物理的な製品を製造するビジネスの生産性を向上させ、時間の短縮を支援する。

「私たちのお客様は、競合他社様に比べて、きわめて迅速に、設計、品質、そして工程上の課題を見つることが可能となります。そのことで高品質の大量生産をはるかに安価に行うことが可能となるのです」とシェドレツキー氏はTechCrunchへのメールに書いてきた。

以前Apple(アップル)で設計および製造を担当していた同氏によれば、Instrumentalは市販のありふれたハードウェアを使用しているという。大切なのはスタートアップのソフトウェアだ。それを使うことでわずか30台のユニットと簡単なラベル付けトレーニングだけで、カメラユニット群をトレーニングすることができる。特に同社が頻繁に手掛ける、インターネットの容量が小さい中国の多くの製造施設では、同社のハードウェアを利用してデータをオンサイトで処理することで、アップロード・ダウンロードの遅延を防ぐことができる。

このテクノロジーを製造ラインに組み込んでもらうことは簡単ではないと、同社はTechCrunchに語る。なぜなら製造を止めてしまうからという理由で採用を見送られることが多いからだ。これは、Instrumentalのような企業に対して参入の壁を高くする。

Instrumentalはこの問題を、製造ラインがまだ稼働前の開発段階にあるときに、そのテクノロジーを組み込むことで回避しようとしている。もしスタートアップがそこで価値を証明できれば、製造ラインが開発段階から本番に移行する際にテクノロジーも展開される可能性がある。また、Instrumentalのテクノロジーが最初のラインで機能した場合には、その後他にも立ち上がる製造ライン(「複製ライン」と呼ばれる)全体に拡張することができる。

Instrumentalのハードウェアユニット(提供:Instrumental)

スタートアップは2種類の製品を持つ。1つは開発中の製造ライン用で、もう1つは本番稼働中の製造ライン用だ。一般に1年単位の契約で販売されることが多いエンタープライズソフトウェア契約とは異なり、Instrumentalの製造契約は、CEOが「継続的販売」(Continuous Sale)と呼ぶプロセスを通じて、量に基づいて増額する形態だ。

このモデルによって、同社は、通常は再交渉を行うためには更新期間を待つ必要があるエンタープライズソフトウェア契約よりも、迅速に請求を行うことができ、Instrumentalのビジネスの成長速度を後押ししている。

成長戦略

2000万ドル(約21億円)という資金を得て、Instrumentalは何を計画しているのだろう?シェドレツキー氏はTechCrunchに対して、その最初の目標はスタートアップが最初の顧客の注目を集めている、製造業界の一角を占める電子機器分野でのビジネスを拡大することだと語った。

その取り組みを強化するために、Instrumentalは市場開拓機能を構築し、コアテクノロジーに引き続き取り組むつもりだと彼女は語った。

多くのVC支援企業が過ごすよりも約2倍ほど長いシリーズA以降の期間が経過して、TechCrunchは同社がより大規模なシリーズBにいつ踏み出すのだろうと考えていた。CEOによれば、スタートアップはその信念に従っているだけで、決してわざとゆっくり進もうとしているわけではないという。彼女は、長期的な視野に立つ企業の構築に取り組んでいて、維持可能でかつ大規模なものになりたいのだと強調した。

急激な成長目標を置かない現在のInstrumentalに、Canaanを引きつけたものが何だったのかにTechCrunchは興味を持った。Canaanのゼネラルパートナーであるシモニアン氏は、「Instrumentalのツールは急速に、ビジネスにとっての必須要素になりつつあります。大規模な顧客での更新率は非常に高いものです」と語る。

全世界の電子機器産業の巨大な規模を考えると(Business Wire記事)Instrumentalが売り込める市場規模はほぼ無限だ。この先スタートアップがどれだけ早く成長できるか見てみよう。

Image Credits: Getty Images

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(翻訳:sako)

女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」が約4500万円の資金調達を実施、月経前症候群の悩みにアプローチ

WRAY 月経前症候群(PMS)の悩みにアプローチ

女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」(レイ)を展開するWRAYは7月30日、第三者割当増資として、総額約4500万円(資本準備金を含む)の資金調達を実施した。引受先は、マネ―フォワードベンチャーパートナーズが運営するアントレプレナーファンド「HIRAC FUND」、サニーサイドアップグループの100%子会社サニーサイドアップパートナーズ、個人投資家。

2020年4月設立の同社は「女性のベストパフォーマンスをサポートする」をミッションに掲げ、女性がホルモンバランスや年齢による体調の変化に振り回されず、社会でも家庭でも笑顔でパフォーマンスを発揮できるようサポートを行う。

その第1弾として月経前症候群(PMS)の悩みにアプローチするセルフケアプロダクトブランドとして、WRAYを立ち上げ。2020年8月の商品発売および人材採用に向け、資金調達を実施した。

また、生理周期に基づくサブスクリプションモデル、パーソナライズアプローチなど、フェムテック×D2Cブランドとしての施策を積極的に展開していくという。商品はすべてMade in Japanで、工場と直接取引により中間コストの削減、職人の品質へのこだわりを商品づくりに反映するとしている。

WRAYの独自調査結果によると、女性の約8割が生理前にイライラや気持ちの落ち込み、肌荒れ、腰痛など、心身に体調不良を感じているという。

これらの症状は月経前症候群(PMS)と呼ばれ、生理周期によるホルモンバランスの変化によって引き起こされる。PMSの症状は様々で、重い場合には吐き気などの食欲不振、うつ状態など重篤な症状として現れることもある。これらの症状に対して多くの女性は周囲に助けや理解を求めず、ひとりで我慢するか、市販の鎮痛剤の内服が解決策の主流とされてきた。しかし、低用量ピルの服用で緩和は可能であるものの、通院や診察を伴うため、時間的制約や精神的なハードルから活用に踏み切れずにいる女性は少なくないという。

PMS症状の緩和としては、ピル以外にもサプリメントの飲用による栄養補助や、身体の冷え予防などのセルフケアも期待できるという。WRAYでは同社メディアを通して最適な選択肢を探す支援を行いながら、婦人科医師監修のPMS対策サプリメントなどPMS対策プロダクトを展開するとしている。

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電動マイクロモビリティシェアのLuupがANRIやENEOS、大林組から約4.5億円調達

Luup ANRI ENEOS 大林組

電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」(ループ)を展開するLuupは7月30日、第三者割当増資として約4.5億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のANRI、ENEOSグループのCVC(Corporate Venture Capital)であるENEOSイノベーションパートナーズ、大林組。これまでのベンチャーキャピタル複数社、個人投資家複数名、事業会社を引受先とする第三者割当増資と合わせて、累計8.55億円の資金調達が完了した。

Luupは、短距離移動インフラの構築を目指しており、そのためには街中でエネルギーをモビリティに供給するシステム構築や、街に合ったサービス形式で、街の人々のニーズに応える種類・台数のモビリティを提供することが重要という。今回調達した資金をもとに、新しい電動マイクロモビリティの開発と、ENEOSグループおよび大林組との将来的な協業に向けて取り組みを進めるとしている。

Luup ANRI ENEOS 大林組

2018年7月創業のLuupは、電動・小型・一人乗りのマイクロモビリティのシェアリング事業を通して、日本に新しい短距離移動インフラを作ることを目指すスタートアップ。電動キックボードなどの新しいモビリティを日本で安全・便利に利用するための「新しい機体の実証」と、シェアリングの形での移動体験を検証する「新しいシェアサービスの実証」の2点に取り組んでいる。

その第1ステップとして、2020年5月25日より、街中の電動アシスト自転車に、どこからでも乗れて好きな場所に返せるシェアサイクルサービス「LUUP」(ループ)を渋谷区・目黒区・港区・世田谷区・品川区・新宿区の6エリアの一部で展開。

続く第2ステップとしては電動キックボードのシェアリングの実現、第3ステップではより多くの人々の移動課題を解決できる新たな電動マイクロモビリティの導入を目指しているという。

ENEOSグループは「エネルギー」の領域で社会へのエネルギー供給環境を構築しており、Luupのモビリティへの最適なエネルギー供給体制構築を目指す。大林組は「まちづくり」の領域で建築・土木・開発の事業を展開しており、地域特性に適合した建設サービスの提供を通じて、よりよい生活を人々に届けることを目指すとしている。

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不動産仲介のDXを推進する「カナリー」のBluAgeが約3億円の資金調達

BluAge 不動産仲介 カナリー

不動産仲介のDXを推進する「カナリー」運営のBluAgeは7月30日、約3億円の資金調達を発表した。引受先はAngel Bridge、東大創業者の会応援ファンド、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家。

同社は、電話やFAXがいまだ主流となっている不動産業界において、一気通貫したデジタルトランスフォーメーションによりユーザーに透明性高い情報と効率的なプロセスを提供。また不動産エージェントの生産性向上によって、よりよい部屋探しのユーザー体験を追求するとしている。

賃貸物件を探す消費者向けアプリ「カナリー」(iOS版Android版)は正式リリースから約1年間の期間で16万件以上のダウンロード、2万件以上の内見依頼があったという。

また2020年7月より同アプリ内において売買版を正式リリース。ヤフーと売買物件情報における事業提携を締結した。ヤフーが運営する不動産ポータルサイト「Yahoo!不動産」が扱う約30万件の物件情報がカナリーにも掲載される。

BluAge 不動産仲介 カナリー

カナリーは、管理会社と提携することで物件情報をデジタル化しており、物件情報の自動掲載を可能にしている。これにより不動産エージェントは面倒な広告掲載作業から解放され、顧客対応に集中できるようとしている。

さらに店舗を起点としない、内見は現地待ち合わせ現地解散、契約はオンラインで完結という効率的で柔軟な業務の形を実現するとしている。

BluAge 不動産仲介 カナリー

また、いわゆる「おとり物件」を含む募集終了物件や重複した情報が大きく削減されるため、ユーザーは正確で最新の物件情報をもとに部屋探しを行えるほか、店舗に行かず契約まで完了できる。

BluAge 不動産仲介 カナリー

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レントゲンに代わる低コスト小型スキャナー開発のNanoxが約62億円調達、5G利用で救急車搭載も夢ではない

イスラエルのスタートアップNanox(ナノックス)はスキャン装置のサイズとコストを抑えるハードウェア、そして画像の質と画像から得られる洞察を高めるソフトウェアでもって、医療画像と画像分析の世界を席巻しようという野心を持っている。7月28日、同社はその計画さらに前に進めるための大きなステップを発表した。5900万ドル(約62億円)を新たに調達し、これによりシリーズBを1億1000万ドル(約115億円)でクローズした。新たな資金をもとに、体全体をスキャンするハードウェアの開発を継続し、顧客をさらに開拓する。同社はすでに13カ国で契約を獲得している。

今回の資金はSK Telecom(SKテレコム)やカナダの保険グループIndustrial Alliance、Foxconn(フォクスコン)、Yozma Korea(ヨズマコリア)といった戦略的投資家が拠出した。シリーズBではこれまで2回にわたって5100万ドル(約54億円)調達された。最新のものは6月の2000万ドル(約21億円)で、戦略的投資家SK Telecom(SKテレコム)が出資した。同社はNanoxのハードウェアを韓国で製造するための工場を建設中だ。実は日本にも工場がある。

Nanoxはバリュエーションを明らかにしていないが、6月時点では6億ドル(約630億円)だった。そしてTechCrunchが把握しているところでは、今回が上場前の最後の調達となりそうだ。ただ、上場のタイムラインはまだ設定されていない。もちろん、スタートアップの資金調達の世界ではこうしたタイムラインは決して明らかにされることはない。

Nanoxの創業者でCEOのRan Poliakine(ラン・ポリアキン)氏は7月28日のインタビューの中で、同社の売上の大半はライセンス取引で上げていると述べた。FoxconnやSK、富士フイルムなどのメーカーがNanoxのコンセプトに基づくデバイスを製造するのにIPを提供する。計画では今後7年間でスキャナー1万5000台を製造する。

長期的には、Nanoxはサービスの提供を開始するために、同社のマシンが設置される全マーケットで現地当局の承認を得る。サービスは、ハードウェアから得られた画像に洞察を提供するというものだ。承認取得のための作業は進められているが、新型コロナウイルスの影響で遅延している。実際の承認取得などその後の多くのプロセスもずれ込むことになる。

Nanoxの事業はサービスという点において特に興味深い。というのも、医療サービスが現在、そして将来どのように提供されるかというところで大胆なシフトを強調するものだからだ。

よりパワフルなコミュニケーションネットワークや改良された画像テクノロジー、かなりの人件費、そして施設を最新の状態に保つための高額のメンテナンス費用の影響で、病院などの施設は分析業務をオンサイトラボからリモート施設にアウトソースするようになった。これにより、新たなチャンスに入りこもうとする事業が数多く生まれることになった。

「通信会社は5Gの販売方法をめぐり、機会を模索している」とSK Telecomの会長Ilung Kim(イルウン・キム)氏は6月のインタビューで述べた。「そしていま、5Gデータを使いながら救急車の中で使用できるほどのサイズのスキャナーが期待できる。業界にとってゲームチェンジャーだ」。

Nanoxは当局の承認を待っているが、すでにこのサービスで契約を結んでいて、つまりマーケットの需要があることを示している。直近では、USA Radiology(USAラジオロジー)と契約を結んだ。この契約では、全米とその他15カ国でのスキャン・アズ・ア・サービス事業でNanoxのテックを使う。

もちろんNanoxはそうした契約では2つの面で利益を上げる。サービスのテックをライセンス貸しするだけでなく、製造して販売するハードウェアの接続ライセンス料も徴収している。

以前述べたように、Nanoxシステムは占有のデジタルレントゲン技術をベースとしている。これは画像をとらえて処理するのにレントゲンではなくデジタルスキャンに頼るという、画像分野では比較的新しい技術だ。Nanoxの主力製品であるARCハードウェアは重さ70kg。これに比べ、平均的なCTスキャナーは2000kgもある。そして製造コストはCTスキャナーが100〜300万ドル(約1〜3億円)なのに対し、ARCは約1万ドル(約105万円)だ。

ポリアキン氏によると、小型のマシーン(よって安い)で、画像処理のほとんどをクラウドで行うのに加えて、Nanoxシステムは1秒もかからずに画像を生成できる。既存の方法に比べて放射線被曝という点においてかなり安全だ。そのため、マシーンの所有が簡単で安くなり、そして通常のスキャンで一部の箇所だけでなく体全体をカバーでき、そこからさらに知見を得ることができる。Nanoxはまた、そうした画像からさらに正確な知見を「読む」複雑なアルゴリズムを構築している機関と提携している。

Nanoxの取り組みは、かなり注目せずにはいられないものだ。以前指摘したように、画像はこのところかなりニュースで取り上げられている。というのも、画像では新型コロナウイルスが肺や他の器官にダメージを与えているかが確認でき、画像は新型コロナ患者もしくは新型コロナに罹っているかもしれない人の症状の進行状況を最も正確に把握する手段の1つだからだ。

その一方で、グローバルの新型コロナパンデミックで人々は互いに距離を取ることを余儀なくされ、ヘルスケア分野では遠隔から患者を簡単に診断できるサービスの需要が高まった。このため、医療分野が今後どういう方向に展開されるかという点で、Nanoxと同社のアプローチは脚光を浴びることになった。

事業を次のレベルに進められるよう、Nanoxは必要な当局の承認が得られるはずだ。

「世界を変えることを目指している、と言うのはたやすい」とポリアキン氏は声明で述べた。「そうした言葉の最大の課題は常に実行にある。当社は早期発見でがんや他の病気の撲滅をサポートするという大胆なビジョンを持っている。夢を現実のものにするグローバルの医療画像サービスインフラ展開のために鋭意取り組んでいる」。

画像クレジット: Nanox

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(翻訳:Mizoguchi

150ヵ国で利用される思考力育成アプリ「シンクシンク」開発のワンダーラボが小学館から2.5億円の資金調達

ワンダーラボ シンクシンク

子ども向けアプリ・タブレット教材開発・運営のワンダーラボ(旧社名: 花まるラボ)は、第三者割当増資として2.5億円の資金調達を発表した。引受先は小学館。

今回調達する資金は、主にプロダクトの開発体制の整備や人材採用、プロモーションに投資し、成長を加速させる。また小学館とワンダーラボは、これまでも子ども向け教材の監修やイベント共催などの取り組みを続けており、今回の調達を機に協業体制を強化するとしている。

ワンダーラボは、STEAM教育領域の子ども向けデジタル教材の開発・運営を手がけるEdTech(教育テック)分野のスタートアップ。2017年リリースの思考力育成アプリ「シンクシンク(Think!Think!)」(iOS版Android版)は、抽象思考の基礎となる思考センスを育てる問題を多数収録する形で世界中に配信しており、150ヵ国のべ120万人に利用されているという。

日本e-Learning大賞 Edtech特別賞受賞、海外でGoogle Play Awards 2017/2019 TOP5に選出。2018年11月には、世界最大の教育ベンチャーのコンペ「Global EdTech Startup Awards」(GESA)の日本予選にて最優秀賞を受賞した。

また、STEAM教育領域の新しい通信教育「ワンダーボックス」も2020年4月よりスタートしている。

EdTech分野では、マシンラーニングなどを用いた学習の効率化・最適化にスポットライトがあてられているが、同社は、「子どもの『知的なわくわく』を引き出す」ことにこそ技術や知見を活用するとしている。

天気予報と情報で建築や運送などでのスマートな判断を支援するClimaCellが基礎研究と戦略部門を強化

さまざまな興味深い新しいテクニックを駆使して(未訳記事)、天候の予測と天候関連の情報を提供しているClimaCellは米国時間7月28日、シリーズCで2300万ドル(約24億2000万円)を調達したことを発表した。このラウンドをリードしたのは新しい投資家であるPitango Growthと既存の投資家であるSquare Peg Capitalで、この新たなラウンドによりボストンとテルアビブにオフィスのある同社の総調達額は1億ドル(約105億円)を超えた。

ClimaCellの共同創業者でCEOのShimon Elkabetz(シモン・エルカベッツ)氏によると、このラウンドの話があったのは新型コロナウイルス(COVID-19)によるロックダウンが始まってからかなり後で、新しい投資家には個人的に会ったこともないという。パンデミックはClimaCellの旅行業界の顧客の多くに影響を与えているため、同社は最近、費用を下げ業務を拡張するために、いくつかの対策を講じた。しかしエルカベッツ氏が強調するのは、新たな資金を調達する必要はまったくなかったことだ。この新たなラウンドでは、投資家が同社にアプローチしてきた。

「積極的かつ慎重な努力により支出の節減と新たな有意義な新しい業務路線の創造を行なってきたが、資金を調達する必要は今はない。しかしこのような機会が訪れたからにはそれを前向きに迎えるべきであり、それによっていくつかの戦略的投資も可能になる」とエルカベッツ氏は説明する。

画像クレジット:ClimaCell

ビジネス環境が変わりつつある今では、同社は気象予報士でなくても事業者が事業に対するスマートな意思決定を支援するインテリジェントなプラットフォームとしてブランド化することに傾注している。ブランド化努力の中心は、同社のInsightサービスを強調することだ。このサービスを利用するとさまざまな業種の事業者が、同社の天候予測に基づいてスマートな意思決定をできるようになる。例えば建設企業の場合(ClimaCellリリース)は、嵐のときに現場の安全を確保し、風のためにいつクレーンの運転をやめるべきかを判断できる。またロジスティクス企業の場合は、豪雨のために作業を遅くすべきタイミングを見極めたりできるようになる(ClimaCellリリース)。つまりユーザーに単なる天気予報を提供するのではなく、同社のツールは行動方針の提案を行うのだ。

Pitango Growthの役員格ゼネラルパートナーであるAaron Mankovski(アーロン・マンコフスキー)氏は、本日の声明で次のように述べている。「世界のGDPの65%は天候に左右される。ClimaCellは天候の変化に反応するのではなく、変化に備えるアクションを提示し、その変化の意味や影響を教える唯一のSaaS企業だ。ClimaCellによりサプライチェーンやロジスティクス、鉄道、トラック輸送、船舶、オンデマンド、エネルギー、保険といった多様な企業にもたらされる機会は、既存の競争 を完全に覆すものであるだけでなく、同社が顧客の価値に極めて精密に照準を合わせられることの証でもある」。

画像クレジット:ClimaCell

エルカベッツ氏によると、今回の新しい資金はマーケティング努力の拡大と、このプラットフォームを支えている基礎部分の研究開発に向けたいという。このR&Dについて具体的な話はなかったが「近く発表できるだろう」とのことだ。

同社がもう1つ予見しているのは、一般向けモバイルアプリの早期のアップデートだ。一般向けアプリはClimaCellの主力ではないが、例えばレジャーのためのInsightのバージョンなど、使われているバックエンドの技術は同じだ。エルカベッツ氏によると、一般向けアプリはClimaCellブランドの知名度向上を助けるが、今後はそれ自身のビジネス利用も考えたい、という。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

東京工業大学発ベンチャー認定企業aiwellが資金調達を実施

aiwell AIプロテオミクス

東工大発ベンチャー認定企業aiwellは7月29日、シリーズA’ラウンドにおいて、第三者割当増資として資金調達を実施したと発表した。調達額は非公開。引受先は個人投資家の栢孝文氏(シグナルトーク 代表取締役)。

2018年1月創業のaiwell(アイウェル)は、東京工業大学 生命理工学院 准教授 博士(理学)林宣宏氏の研究室と次世代技術「AIプロテオミクス」に関する共同研究を2018年10月より開始。2019年4月に東京工業大学 大岡山キャンパス内に「東京工業大学・aiwell AIプロテオミクス協働研究拠点」を開設し、2019年12月には東工大発ベンチャー認定企業となった。

AIプロテオミクスとは、林宣宏氏が発明した、生体の状態をプロファイルする次世代特許技術。二次元電気泳動技術の(大量の検体を扱うための)ハイスループット化と(微量な検体でも分析を可能とする)高感度化に成功。

生体内の遺伝子産物を網羅的に解析するプロテオミクスの基盤技術である二次元電気泳動法を用いて、
血中タンパク質の二次元電気泳動画像をAIが学習することで、様々な病気や怪我になる一歩手前の状態を発見する研究として注目されているという。敗血症においては、98.2%の精度で的確な判断を可能にした。

aiwellは、AIプロテオミクスに関する研究開発とその実用化、社会実装を推進することで、病気や怪我の自覚症状が出る前、そして重篤化をする前にAIの画像判断による診断支援や遠隔診療支援、創薬支援が可能になるサービスの実現を進めている。

今回調達した資金は、AIプロテオミクスの社会実装、実用化のさらなる推進に活用。aiwellは今後も資金調達を進めるとしている。

栢孝文氏は、会員数130万人超のオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」やヘルスケアサービスを開発・運営するシグナルトークの代表取締役。個人投資家として、ヘルスケア事業など社会貢献性の高いスタートアップの支援を行っている。

クロスボーダー金融決済のEMQが21億円を調達、日本、中国、インド市場を狙う

国境を越える金融取引は個人・大企業を問わず大きな頭痛の種であり、他国の受取人に送金する際、往々にして長い待ち時間や高額の手数料に向き合わなければならない。国をまたぐ決済を迅速に行えるネットワークインフラを開発する香港のスタートアップであるEMQは7月28日、WI Harper Group(WIハーパーグループ)がリードするシリーズBで2000万ドル(約21億円)を調達したことを発表した。

EMQのテクノロジーは、オンライン銀行のデジタルウォレット、eコマースおよび加盟店向けの決済業者、認可を受けた金融機関などのクライアントの既存のネットワークに統合されるため、国境を越える送金を簡単に実行できる。

今回の資金調達にはAppWorks(アップワークス)、Abu Dhabi Capital(アブダビキャピタル)、DG Ventures(DGベンチャーズ)、Intudo Ventures(イントゥドベンチャーズ)、VS Partners(VSパートナーズ)、January Capital(ジャニュアリーキャピタル)、Hard Yaka(ハードヤカ)、Vectr Fintech Partners(ベクターフィンテックパートナーズ)、Quest Ventures(クエストベンチャーズ)、Sparklabs(スパークラボ)も参加した。資金はEMQの国際ビジネス拡大、製品開発、主要市場での免許取得のために使われる。2017年12月に発表した650万ドル(約7億円)のシリーズAと今回のラウンドを合わせたEMQの調達総額は2650万ドル(約28億円)となった。

EMQはすでに香港、シンガポール、インドネシアで免許を取得しており、カナダではマネーサービスビジネスとして登録されている。また、フィンテック企業によるイノベーションを促進する目的で台湾の金融監督委員会が立ち上げた規制サンドボックスにも採用された。

同社の共同創業者兼最高経営責任者であるMax Liu(マックス・リュー)氏はTechCrunchに対し、今後は特に中国、インド、日本で企業向け送金事業の拡大に注力すると語った。EMQのテクノロジーはすでに80カ国で企業の決済処理に利用されている。

最近まで、EMQが関わった取引の大部分は消費者間決済だった。その後5月に企業向け決済ソリューションを立ち上げた。リュー氏は「EMQにおける企業間取引は2021年には総取引量の半分を占めていると予想している」と語った。

Juniper Research(ジュニパーリサーチ)によれば、クロスボーダーのB2B取引は、主に新しいテクノロジーの採用により、2018年の150兆ドル(約1京6000兆円)から2022年までに218兆ドル(約2京3000兆円)を超えると見込まれている。クロスボーダー取引のテクノロジー(APIを含む)を提供するフィンテック企業には、Currencycloud(カレンシークラウド)、Payoneer(ペイオニア)、Transferwise(トランスファーワイズ)などもある。

リュー氏はEMQの主なセールスポイントとしてeコマース、小売業者の決済、調達、送金、給与計算など、さまざまな国での幅広い用途に対応できる柔軟なインフラの構築に重点を置いていることを挙げた。

また同氏は、EMQがわずか2つのAPI呼び出しを行うことでクライアントの既存のテクノロジーインフラに統合できることを付け加えた。EMQは模擬取引を使ってフルに機能するサンドボックス環境をクライアントに提供し、正式運用の前にテクノロジーを実験したり、EMQのカスタマーサポートチームと予行演習したりできる。リュー氏は、クライアントがEMQをビジネスオペレーションに完全に統合するには、企業の規模と要件によるが通常2週間から2カ月かかると述べている。

WI Harper Group(WIハーパーグループ)のパートナーであるEdward Liu(エドワード・リュー)氏は、投資に関する記者発表で次のように述べた。「デジタルトランスフォーメーションが世界的に盛り上がり、企業の活動はますます国際的になる中、クライアントがアジアやさらにその先にビジネスを広げるには、EMQのような高速で確実そして柔軟性と透明性を備えるネットワークインフラがに必要になる。EMQチームと提携して、クロスボーダーのビジネス決済市場をリードするポジションをグローバルに拡大できることをうれしく思う」。

画像クレジット:Chuanchai Pundej / EyeEm / Getty Images

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カテゴリー:フィンテック

タグ:EMQ 香港 資金調達

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(翻訳:Mizoguchi

ギフト特化EC「TANP」運営のGraciaが約11億円調達、記念品配送に最適化した基幹業務システム強化へ

誕生日や結婚記念日、出産祝いなどのギフトに特化したECサイト「TANP」を運営するGraciaは7月29日、​シリーズCラウンドにおいて総額11億円の資金調達を明らかにした。第三者割当増資による調達で、引受先は既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、ユナイテッド、エンジェル投資家の有安伸宏氏と、新規投資家のYJキャピタル。累計調達額は17億円で、これまでANRI、マネックスベンチャーズ、ドリームインキュベータ、Spiral CapitalなどのVC、個人投資家からの投資も受けている。今回調達した資金は、自社開発の基幹業務システムの強化に投下するとのこと。

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Graciaは昨年の資金調達以降、ロジスティクス部門の人員体制の整備と管理システムの改修による効率化を図り、1日あたりの自社発送能力を2300件超に拡大。​2018年5月時点で800件、2019年8月時点で1200件だった能力を大幅に増強している。昨年同月対比で売上成長率も210%増を達成しているとのこと。

同社代表取締役社長の斎藤拓泰氏はギフトに特化したECを構築した理由について「少量多品種の記念品の梱包や商品加工、ラッピング、セット組みへの対応などは、システム化された大手ECサイトでも誤配がしばしば発生し、積極的にサービスを提供しない業者が多いことに注目しました」とのこと。Amazon(アマゾン)ではシステム化されたギフトオプションがあるが細かなカスタマイズができない、楽天ではギフト発送できるかどうかは店舗次第など、一長一短がある。

そこで同社は、ECサイト向けの業務システムを開発したうえで自前の物流倉庫を持ち、前述した梱包などを担うスタッフとも契約して、ソフトとハードの両面でギフトの受注・配送に最適化したシステムを構築している。具体的には、用途や送る相手によって記念品の絞り込みが可能なほか、ギフトボックスや種類が選べるほか、フラワーやメッセージカード、ドライフラワーの同梱、手渡し用の紙袋の追加など細かなカスタマイズが可能だ。

今後の展開として同社は、現在は本州で実現している最短翌日配送を九州地域などへ拡大するため、数年以内に関西地域に拠点倉庫を設ける計画だ。新型コロナウイルスの蔓延を受けてデパートなどのリアル店舗での売上は落ちているがECサイトは堅調に伸びており、大手ブランドを中心にTANPへの問い合わせも増えているそうだ。斎藤氏は「コロナ禍の状況で、今後は路面店での販売よりもECに力を入れる大手ブランドも増えてくると予想され、ブランド直営ECサイトだけでなくTANPのようなギフト特化ECに販路を拡大するケースは増えるでしょう」と語る。また、今後の倉庫業務の効率化・発送能力の増強については「スタッフ増員だけでなく、作業指示書と伝票の一体化、現在は人力でチェックしているメッセージカードの紐付けの自動化による省力化、在庫の棚管理によりピッキングの効率化を図りたい」とのこと。

フリーランス向け報酬先払いサービスを手掛けるyupが1.3億円調達、freeeやMisoca、セブン銀行などとも連携

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」を開発・提供中のyupは7月29日、総額1億3000万円の資金調達を明らかにした。第三者割当増資による調達で、引受先は既存投資家のインキュベイトファンドのほか、新規投資家としてイーストベンチャーズ、ログリー・インベストメント、エンジェル投資家の赤坂 優氏が加わる。同社は過去に、佐藤裕介氏、大湯俊介氏、砂川 大氏など個人投資家複からの投資も受けている。

先払いは、2019年9月にサービスの受け付けを開始し、申し込み件数は7カ月で1000件を突破。同社によるとリピート率は70%以上とのこと。セブン銀行やfreee、弥生(Misoca)、フリーランス協会、Fintech協会など15社のパートナー企業​とのサービスやAPIなどの連携も果たしている。今回調達した資金は、マーケティング強化、AIを活用したスコアリングモデルの研究開発、新規サービスの推進、人材採用に投下する計画だ。

yupの先払いサービスは、取引先に送った入金前の請求書情報を登録すると、10%のサービス利用料を差し引かれた金額を指定口座経由で即日受け取れる仕組み。セブン銀行も利用可能だ。手続きはすべてオンラインで審査は最短60分、面談や書面でのやり取りが不要なのも特徴だ。会員登録した当日から利用できるのもうれしいポイント。もちろん後日、取引先から実際に支払われた報酬をyupに振り込む必要がある。

フリーランス(個人事業主)の場合、取引先からの報酬の支払いは通常は1〜3カ月後になることが多いが、yupの先払いサービスを使えばサービス利用料は徴収されるものの即日資金が手に入る。同サービスは初期費用や月額費用などは不要なので、資金繰りが難しい月だけ利用する、支払いサイトが長い取引先のみに利用するといった柔軟な使い方ができる。

トラクター運転支援アプリ・農業ICTの農業情報設計社が3億円の資金調達

農業情報設計社 AgriBus-Navi AgriBus-GMiniR AgriBus-AutoSteer

トラクターの運転支援アプリ、農業におけるICT技術の活用や農業機械の自動化・IT化に関する研究開発に取り組む農業情報設計社は7月28日、第三者割当増資として3億円の資金調達を発表した。引受先は農林中金イノベーションファンド(グローバル・ブレイン)、SBIインベストメント運営のファンド、DRONE FUND。

今回の資金調達により、さらなる事業拡大に向け製造・販売・管理体制の強化、国際競争力の向上に取り組む。また、農業機械の走行距離や農作業履歴のビッグデータを利用した世界の作況予測など、データ農業への展開にも着手するとしている。

農業情報設計社は、2014年4月に北海道帯広市を拠点として設立。農業者の熟練度によらず、トラクターが「まっすぐ等間隔に走る」ための農業機械用ガイダンスナビアプリ「AgriBus-NAVI」を2015年2月にリリース。作業の効率化や資材コストの低減につながることから、世界で80万件以上がダウンロードされているという。

また、AgriBus-NAVIで高精度ガイダンスを実現するために設計された、高精度の位置情報を取得するGPS/GNSSレシーバー「AgriBus-GMiniR」も展開。cm精度の超高精度測位が可能なほか、IMU(傾斜補正・進路予測)を搭載した移動局としての利用が可能。

トラクターなど既存農業機械に後付けで自動操舵機能を付加できるオートステアリング「AgriBus-AutoSteer」も用意している。

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SlackやMS Teamsでの日常のやり取りから従業員コンディションを解析する「Well」開発のBoulderが1億円調達

SlackやMicrosoft Teamsを利用して従業員のコンディションを確認・解析できるエンプロイーサクセスプラットフォーム「Well」(ウェル)を開発・運営するBoulderは7月28日、プレシリーズAラウンドで総額1億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先はジェネシア・ベンチャーズとOne Capital。ちなみにOne Capitalは、元Salesforce Ventures代表の浅田氏が創設した新ファンドだ。

関連記事:元Salesforce Ventures浅田氏が独立系VCのOne Capital設立、1号ファンドは50億円規模でスタート

資金調達にあわせて、これまで一部企業にクローズドで提供していたWellのベータ版をパブリックベータとして一般公開する。Wellは、SlackやMicrosoft Teamsでの応答速度や内容などの行動データを機械学習で解析し、従業員や組織のコンディションを客観的かつリアルタイムに可視化できるのが特徴のSaaS。普段のメッセージのやり取りだけではわからない部分については、より調査が必要な従業員だけに向けてアンケート(サーベイ)を実施することで正確性・信憑性を補う仕組みだ。

2015年12月に「労働安全衛生法」が改正され、従業員50人以上は同じ場所で働くオフィスや営業所、支店などを持つ企業は、ストレスチェックや面接指導が法律で義務づけられている。多くの企業は、ウェブページやSlackなどのコミニュケーションツール上で従業員のコンディションをチェックするためのアンケートを実施し、それを基に上司や人事、総務、産業医との面接というのが一般的だ。

この場合、アンケートの頻度を上げることで従業員のコンディション見極めの精度も上がるが、アンケート頻度が多いと総務・人事側も従業員側も大きな負担になる。アンケートに適当に回答する従業員も増えてしまい、逆に精度が下がってしまう恐れもある。

Wellはまさにこういった問題を解決してくれるサービス。Slackなどでやり取りされているメッセージとサーベイを通じて、従業員の業務負荷やコミュニケーション・人間関係、モチベーションなどを解析してくれる。解析結果を基に適切な解決策を提案してくれるレコメンド機能も備える。なお、サーベイ機能とレコメンド機能、Microsoft Teams対応はベータ版からの新機能だ。なお、部署ごとに使っているツールがSlackとMicrosoft Teamsに分かれている企業については、今後解析データの一元管理も可能になるとのこと。

料金については個別対応となるが、導入初期費用不要で従業員数300名まで一律、その後1アカウント追加ごとに数百円が加算される体系だ。実際にベータ版を導入している企業の多くは月々数万円のコストで運用できているとのこと。正式版のリリースが気になるところだが、同社によると12カ月~18カ月後のリリースを目指しているという。

インフォームドコンセントを動画で支援するContreaがシード資金調達

医師から患者への医療情報提供の支援ツールを開発するContrea(コントレア)は7月28日、East Venturesからシードラウンドでの資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開だ。

診療説明を動画で“処方”するシステム

Contreaが開発するのは、患者が納得して治療を受けられるように医師が行う説明を、オーダーメイドの動画で支援するツール「MediOS(メディオス)」だ。

Contrea代表取締役の川端一広​氏は、診療放射線技師でもある。4年半、病院で勤務する中で、レントゲンやCT、MRI、PETといった医療画像を提供し、医師が患者に画像を使って説明することを助けてきた。ただ、特にがんなどの高度な診療が必要な患者への説明では、たとえ画像を使ったとしても、説明が専門的になることは避けられず、患者にとっては分かりづらくなる。

川端氏は「医師・医療従事者から患者さんへ情報を届けたい」との思いから、まずは病院勤務を続けながら、VRを使って、医師からがん患者へ医療画像を説明するためのプロダクトを作った。これは、CTやMRIで撮影した画像から、機械学習を用いて病気の部分を抽出し、医師・患者の双方がVR空間上でそのデータを見ながら、説明が行える/受けられるというものだ。

ところが実際にがんに罹患した人たちの患者会などで川端氏が話を聞いていくと、患者にとっては「がんがどれくらいの大きさか」といった画像データで得られる情報だけでは断片的で、知りたいのは「このがんがどういう病気で、どんな検査・治療を行い、予後はどうなる可能性があるか」という一連の情報だと分かった。

これらの情報は専門性が高く、患者にとっては分かりづらい。「いろんな患者さんが『難しくて分からないが、分からなくてもしょうがない』という感じだったのを見て、何とかしたいと思った」と川端氏。そこで川端氏は、病気の状態から、検査・治療法、合併症や副作用などの一連の情報を患者に分かりやすく伝えるために、「説明動画の“処方”システム」としてMediOSを構想するようになった。

「withコロナ時代にも相性の良いサービスに」

Contrea設立に先立ち、川端氏はMediOSの構想を持って経済産業省主催の「ジャパン・ヘルケアビジネスコンテスト」などへ出場。「当初作っていたVRプロダクトと比べて、医師や製薬会社といった医療関係者からの反響がずっと良かった」と話す。コンテスト参加で自信を得た川端氏は、2020年1月にContreaを設立し、MediOSの開発を本格化させた。

がん患者への説明では、医師はおよそ1時間ほど説明に時間をかけるが、それだけの時間をかけても患者に伝わらないことも多いという。このギャップを動画コンテンツを使って解決したいというのがMediOSの発想だ。これは患者の診療への納得度や信頼度を上げると同時に、医師の勤務時間の短縮にもつながると川端氏は言う。

厚生労働省の調査(「平成29年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書 (医療に関する調査)」)によれば、医師の時間外労働が発生する理由として、病院・医師が共通して第3位に挙げたのは「患者(家族)への説明対応」で、いずれも50%を超えている。

所定外労働が発生する理由(病院調査結果、複数回答)。医師調査結果でも第3位が51.8%で「患者(家族)への説明対応のため」となっている。

患者にとって納得して、満足のいく治療を受けるためにはインフォームドコンセント(十分な情報を元に医師と患者が合意するプロセス)が不可欠なため、信頼関係を構築するためにも十分な説明は不可欠だが、これまでは、医師の属人的なスキルに依存していたと言える。

だが、臓器の働き、画像から想定されるがんの特徴、今後の検査や治療法、可能性がある合併症や副作用といった土台となる基礎的な知識は、実はどの医師が話しても同じになる部分だ。ここを動画を見てもらうことでショートカットできれば、1から100まで医師が説明せずともよくなる。

一方で患者が抱える病気への不安や悩み、例えば治療費や期間、治療方法など、どのポイントがより気になるかは、患者の生活環境や経済状況などによってそれぞれ異なる。個々の患者に特化した相談に医師が集中できれば、時短を実現しながら、より患者にとって納得や満足のいく診療を行うことが可能になる。

MediOSの利用の流れは以下の通りだ。まず、医師が説明の対象となる臓器の部位と検査・治療方法、術式、再建法、合併症など、患者に説明したい項目を、医師向けのダッシュボード画面から選択して登録し、患者へのメッセージを入力する。すると説明したい内容に沿った動画ができあがる。

患者はできあがった動画を、スマホやタブレットでいつでも、どこでも確認することができる。また、MediOSにはコンテンツに応じた理解度の確認機能も搭載される。費用、治療期間など、患者が事前に知りたいことを登録しておくこともできるので、医師を初めとした医療関係者が次の診療の際、患者の理解度や不安な点に応じた対話を、問診時間を別途取らなくても行うことができる。患者も「何を聞けばいいか分からないので、お任せします」という状態ではなく、丁寧な説明を受けることが可能になる。

MediOSにより実現できるのは、医師と患者との信頼関係構築、医療者の時間短縮・業務効率化だけではないと川端氏は述べている。基礎的な説明部分を対面で行う必要がなく、スマホ、タブレットで見る時間・場所の自由ができることで、診察室を専有する時間を開放することが可能になるというのだ。

「インフォームドコンセントではプライバシーの確保なども重要で、どうしても密閉空間で長時間説明することになる。その時間の一部を“いつでもどこでも”に置き換えることで、診察室の空間を拡張できる。これはwithコロナ時代にも相性の良いサービスとなるはずだ」(川端氏)

収益については、医師1アカウント当たりで利用料金を設定していく予定だと川端氏は話している。

患者の医療体験改善にもつながるプロダクト目指す

問診プログラムなど、医師と患者とのコミュニケーション改善によって医療者の業務効率化を支援するSaaSはこれまでにも、Ubieやメルプといった企業からも提供されている。だが川端氏は「直接の競合は今のところない」と語っている。

「医療情報システムの市場規模は約4700億円と言われているが、そのうちSaaS化されているのは、まだ3%程度。残りの97%が代替可能だ。ライバルは多いが、その中で業務改善だけでなく、動画で患者の医療体験の改善にもつながるプロダクトとなっているのが、私たちの強みだと考えている」(川端氏)

市場への浸透のためには、患者に分かりやすい動画コンテンツの開発は必須となるだろう。川端氏は「医療的に正しいこと、医師が見ても信頼が置けることが重要。このため、著名な先生に監修を依頼しており、コンテンツ製作の仕組みづくりにも今、まさに取り組んでいる」と述べている。

今回の調達資金の使途も、そのコンテンツづくり、システムづくりに充てると川端氏。同時に間もなくクローズドで開始する、病院での実証実験にも投資すると話している。

「直近で来月から、3〜4カ所の病院でテストを開始し、11月にはサービスローンチを予定している。コンテンツについては、1疾患ごとに作成しながら、疾患の種類を増やして拡大していくつもりだ。1年後には3〜5疾患に対応し、10の病院への導入を目指す」(川端氏)

1年半でARR(年間経常収益)1億円達成を目指すという川端氏。「スローペースに見えるかもしれないが、病院に導入してもらうためには信頼関係の構築が大事。初めはゆっくり展開するが、それで高評価を得られるようにして、他院への口コミ紹介で拡大を狙いたい」とのことだ。その後、2024年にはARR10億円を目指すという。

対象となる疾患についても、がんから心疾患や脳疾患、高血圧などの慢性的疾患に広げていくつもりだという。また導入先については大病院からスタートするが、ゆくゆくは中小病院やクリニックにも導入できるようなものを用意していきたいと川端氏は語っていた。

各SNSの店舗アカウントを一括管理できる「Canly」運営のLerettoが累計約6600万円を資金調達

Canly Leretto

Lerettoは7月27日、累計約6600万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は東証一部上場企業代表を含む合計11名の著名エンジェル投資家や日本政策金融公庫など。また、各種SNSの店舗アカウントを一元管理するクラウドサービス「Canly」(カンリー)の提供開始を明らかにした。

調達した資金は、エンジニア、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス領域を中心とする採用強化、Canlyの導入店舗数拡大・サービス強化に利用する。現状の連携媒体はGoogleマイビジネス、Facebook、Webサイトのみだが、InstagramやTwitterなどの各種SNSとも随時連携し、インターネット上における全集客媒体の管理プラットフォームを目指す。

Canlyは、各SNSの店舗アカウントを一括管理することで、管理・運用コストの削減、データ分析により店舗運営上の課題を特定し施策の改善につなげる店舗管理クラウドサービス(国際特許申請済み)。

Canly Leretto

店舗営業情報の修正、店舗ごとの発信作業などで運用工数を大幅に削減できるだけでなく、Googleマイビジネスでの悪質なユーザーによる店舗情報の改ざんを自動でブロックする機能を採用。全店舗横断でのデータ分析、エリアや業態で切ったグループ分析やランキング機能も搭載している。全店舗分複数アカウントのクチコミデータの一元管理、一括口コミ返信も行える。

叙々苑、メガネのパリミキ、てもみんなどの大手企業を中心に、飲食店、マッサージ、メガネショップ、カラオケ、美容院、中古車販売、ホームセンター、物流センター、ゲームセンターなど、有料導入店舗数が1500店舗を突破したという。

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法人向け電力リバースオークション「エネオク」のエナーバンクが約5000万円の資金調達

エナーバンク エネオク 電力リバースオークション 競り下げ方式入札

法人向け電力リバースオークション(競り下げ方式入札)「エネオク」運営のエナーバンクは7月27日、第三者割当増資による約5000万円の資金調達を発表した。引受先はジェネシア・ベンチャーズ。

調達した資金により、サービスの開発運営・販売体制を強化し、全国の民間施設、官公庁・自治体が最適・最安の電力調達ができるようサービスを拡充するとしている。

エナーバンクは「エネルギーをもっとシンプルに」というビジョンのもと、2018年7月に創業。電力需要家である法人事業者が日本全国の小売電気事業者から最適・最安の電力契約に切り替え可能な仲介サービスとして、リバースオークションの仕組みを活用した業界初の法人向けエネルギー調達プラットフォーム「エネオク」を提供している。

エナーバンク エネオク 電力リバースオークション 競り下げ方式入札

2018年10月のサービス開始以来、数ある小売電気事業者の中から需要家が最適な電力調達を行う際の難易度の高まりや、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う経済活動減速・コスト削減ニーズを背景に、オークション実績を伸ばしているという。

また2019年11月には、環境省の「RE100(再生可能エネルギー100%)」の調達選定システムとして採用された。RE100は、企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的なイニシアティブ。

エナーバンク エネオク 電力リバースオークション 競り下げ方式入札

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:エナーバンク 資金調達 日本

オフラインで動く入力単語予測エンジンを開発したキーボードスタートアップのTypewiseが1.1億円調達

スイスのキーボードスタートアップであるTypewise(タイプワイズ)はシードラウンドで100万ドル(約1億1000万円)を獲得した。同社は入力ミスを防止し「プライバシーを守る」、完全にオフラインで動く設計の入力単語予測エンジンを開発した。クラウド接続なし、データマイニングリスクなしが基本的な考え方だ。

またTypewiseが取り組もうとしている技術には、スマートフォン、デスクトップ、ウェアラブル、VRなど、あらゆるデバイスで行われるテキスト入力や、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が将来あなたの脳に差し込むかもしれない奇妙なものも含まれる。

現在のところ、同社はダウンロード数が約25万のスマートフォン向けキーボードアプリをリリースしており、現時点で約6万5000人のアクティブユーザーがいる。

シード資金は、1ダース以上のスイスのビジネスエンジェルから得た70万ドル(約7400万円)とスイス政府経由の「Innosuisse projects」からの拠出である34万ドル(約3600万円)で構成される。後者は研究助成金に似ており、チューリッヒのETH研究大学で機械学習の専門家を雇いコアAIを開発するスタートアップに支払われる。

チームは2019年末にスマートフォン向けキーボードアプリをリリースした。より効率的だと同社が宣伝する蜂の巣型レイアウトや、次の入力単語を予測しキーボードが入力者のスラングを直ちに提示するなどの追加機能もある。アプリでユーザーが入力するデータが同社のAIを形成していく。

同社が注力するのはオフラインで動く入力単語予測エンジンの開発だ。モバイルデバイスに限らず、ユーザーがテキストメッセージを入力するあらゆる場面でのライセンス供与を狙う。

「目標は、すべてがデバイス上で実行される世界をリードするテキスト予測エンジンを開発することだ」と共同創業者のDavid Eberle(デイビッド・エバーレ)氏はいう。「スマートフォンのキーボードは最初の例にすぎない。数万人のユーザーがいるリアルな環境でアルゴリズムをテスト、開発できることは素晴らしい。より大きな構想は、モバイルやデスクトップ(または将来的にはウェアラブル、VR、ブレインコンピューターインターフェース)で、テキスト入力を行うすべてのアプリケーションに単語や文の予測提示機能を提供することだ。

「現在この分野に取り組んでいるのはほぼGoogle(グーグル)だけだ(Gmailの入力予測機能を思い出して欲しい)。Microsoft Teams、Slack、TelegramさらにはSAP、Oracle、Salesforceなどのアプリケーションが、入力予測による生産性の向上を望んでいる。テキスト入力に関してはプライバシーとデータセキュリティが非常に重要となる。最終的にはすべての『ヒューマンマシンインターフェース』が、少なくともテキスト入力レベルではTypewiseを使用している状態が理想だ」。

現在はMicrosoft(マイクロソフト)が所有しているSwiftKeyなどのスマートフォンAIキーボードのかつての隆盛を考えると、すべてが少し古臭く聞こえるのは仕方がない。

創業者らは独自の蜂の巣型レイアウトなど現行のキーボードアプリの一部の要素の開発を進めており、このコンセプトをWrioと呼んでいた(未訳記事)2015年にクラウドファンディングへと向かった(未訳記事)。しかし彼らは現在、すべての要素を検討するときだと考えている。そのため、ビジネスをTypewiseとして再出発し、オフラインでの入力単語予測によるライセンスビジネス構築を狙う。

「当社は調達した資金で高度なテキスト予測機能を開発する。まずキーボードアプリではじめ、次にデスクトップに持ち込み、関係するソフトウェアベンダーとのパートナーシップ構築を開始する」とエバーレ氏は語る。「当社はさまざまな機能強化に取り組んでいる。キーボードアプリだけでなく、2021年には100万人のアクティブユーザー獲得に向けてマーケティングにも資金を使う予定だ」。

「UXの点でも当社にはもっと『革新的なもの』がある。例えば 自動修正機能とのやり取り(自動修正機能が誤った処理をしようとしたときにユーザーが簡単に介入できるようにする。ユーザーは煩わしいと思うことが多いため、すべてのキーボードでこの機能をオフにしている)や一般的なタイピングエクスペリエンスのゲーム化(例えば幼児やティーンエイジャーに何をどうに入力するかよく理解してもらえば彼らにとって良い機会となる)などだ」。

スマートフォンのキーボード技術をめぐる競争は主に大手テック企業が支配しているため、小規模独立系にもチャンスがあるとみる。そう考えているスタートアップはTypewiseだけではない。Fleksy(フレクシー)も同じ野心を抱いている(未訳記事)。ただし大手や長い間確立されたタイピング方法に対して、優位性を勝ち取るには注意が必要だ。

Androidを開発したグーグルは、機能てんこ盛りのGboard AIキーボードにリソースを投入している。一方iOSでは、サードパーティーのキーボードに切り替えるためのApple(アップル)のインターフェースが鬱陶しくイライラさせられると非常に評判が悪い。シームレスな体験の正反対だ。さらにネイティブキーボードが入力単語予測を提供している。そしてアップルはプライバシーに関して信頼性が高い。ではなぜユーザーはわざわざ切り替えようとするのか。

スマートフォンユーザーの指先を独立系として争うことは確かに容易ではない。異なるキーボードレイアウトと入力メカニズムは、ユーザーの「筋肉の記憶」を壊し快適性と生産性に強い影響を与えるため、売り込むのは常に非常に厳しい。ユーザーが辛抱強く、苛立たしいほど異なる体験にあえて固執する頑固者でなければ、慣れ親しんだキーボードという悪魔の下へすぐ帰ってしまう。「Qwerty」は英語話者が捨てられない、そしてタイピングの習慣を変えた古代のタイプライターレイアウトだ。

これらすべてを踏まえると、Typewiseがコア技術で勝負できるとの想定で、オフラインの入力単語予測に絞ってホワイトラベル(他社ブランドでの販売を前提としたライセンス供与)のB2Bライセンスに取り組むのは理に適っている。

また同社が確立された大手ハイテクキーボードプレーヤーと競争する際、データの点でも不利な立場にあるが、それでもこれはビジネスチャンスだと主張する。

「グーグルと(SwiftKeyを買収した)マイクロソフトは確かなテクノロジーを備えており、キーボードの外でテキスト予測を提供し始めた。ただし競合他社の多くは、特にプライバシーや機密性を売りにしている場合、独自の(これは開発が難しい)または独立系の技術を組み込みたいと考えている」とエバーレ氏は主張する。

「Telegram(テレグラム)がグーグルのテキスト予測を使用したいだろうか。SAPがクライアントのデータをマイクロソフトの予測アルゴリズムにかけたいと思うだろうか。当社に勝つ理由があると思えるのはここだ。ワールドクラスであるこのテキスト予測は、デバイス上で実行されることでプライバシーを守り、独立した環境でセキュリティバックドアがないスイス製だ」。

Typewiseの単語予測スマートの初期の印象(iOSアプリをチェックして情報収集した)は、かなり「low-key(地味)」だ。しかしこれはAIを利用した最初のバージョンであり、エバーレ氏は「ワールドクラス」の開発者がこれに取り組んでいると強気で語った。

「ETHとのコラボレーションは数週間前に始まったばかりで、現行のアプリにまだ大きな改善点はない」とTechCrunchに語った。「コラボレーションは2021年末まで(延長の可能性あり)行われるため、イノベーションの大部分はまだ実現していない」。

また同氏は、TypewiseがETHのThomas Hofmann(トーマス・ハンソン)教授(Data Analytic Labの会長で、以前グーグルに在籍)と協力しており、開発には自然言語処理と機械学習の2人のPhDと機械学習の修士1人が貢献しているという。

「当社はETHのテクノロジーの独占権を取得する。ETHは当社の株式を保有していないが、当社に代わりスイス政府から報酬を受け取る」とエバーレ氏は補足する。

Typewiseによると、同社のスマートフォンアプリは35以上の言語をサポートしている。しかし入力単語予測AIは現時点では英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語しか処理できない。同社はさらに言語を追加すると述べている。

画像クレジット:Typewise

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(翻訳:Mizoguchi

リアルタイム通訳・ビデオ会議のKudoが6.5億円調達、新型コロナが追い風に

2020年はSaaSが熱い。リモートワークを支えるツールも熱い。中でもビデオチャットに関連するものが今年ブレークしていることは多くの人が知っているところだ。この3つのトレンド要素を内包するKudo(クド)は、Felicis(フェリシス)がリードするラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した。

しかし、通訳と複数オーディオストリームのサポートが用意されているKudoのビデオチャット・会議ツールは、新型コロナウイルス(COVID-19)時代のためにつくられたものではなかった。始まりは2016年だ。なので、パンデミックやリモートワークブームが同社の成長をいかに加速させたのか(同社はニュースリリースで3500%成長と書いた)を語る前に、どのように現在に至ったのかについて取り上げよう。

プロダクトを証明するための苦難

TechCrunchは今週初め、Kudoの創業者でCEOのFardad Zabetian(ファルダド・ゼベティアン)氏に同社がどのようにして始まったのか話を聞いた。同氏によると、彼が言うところの分散したミーティングにサポート言語を加える必要を感じた後の2016年にKudoに取り組み始めた。

「インタラクティブな音声とビデオはリモート参加者のために500ミリ秒以下のレイテンシーで集められるか」という概念を証明した後、社を2017年に立ち上げた。さらに作業を進め、同社のプロダクトは2018年9月にマーケットに投入された。

その間、Kudoはエンジェル投資家や友達、家族から資金をかき集めたが、ゼベティアン氏によると合わせて100万ドル(約1億円)に満たなかったという。つまり、Kudoはたくさんの資金を使うことなく多くのことを成し遂げた。10年以上創業者らに話を聞いてきた筆者の経験では、それはいい兆候だ。

そうした取り組みは、新型コロナが世界を震撼させ、企業が出張を取りやめて代わりにビデオ会議ソリューションに頼らざるを得なくなった今年に報われた。現代ビジネスの世界的な性質を考えると、愛国主義者が欲しているものにかかわらずグローバリゼーションが事実であり、世界の会議における変化はKudoへの需要となって表れている。

Kudoの仕組みはこうだ。KudoはセルフのSaaSビデオ会議ソリューションを提供し、どの企業でも必要に応じて会議をサインアップできる。Kudoは通訳人材も抱えていて、もし顧客が必要とするならKudoは通訳者を会議にはりつけることが可能だ。もしくは、顧客が自分たちの通訳者を会議に連れて来ることもできる。

つまり、Kudoはオプションのサービスも提供するSaaSだ。ただ、ソフトウェアによるサービスが薄利であることを考えると、Kudoのサービス売上高をSaaS収入のヘルパーと考えるべきではないかと言いたい。言い換えると、Kudoの混ぜこぜになった粗利益への影響についてやきもきする必要はない。

ゼベティアン氏によると、顧客の4分の3が自前の通訳者を連れてくるが、4分の1がKudoの通訳者を雇う。

成長

前述したように、Kudoは2018年にマーケットに参入した。つまりパンデミックの前にソフトウェアをすでに販売していた。リード投資家のNiki Pezeshki(ニキ・ペゼシュキー)氏はTechCrunchに対し、Kudoは「パンデミック中に大きくステップアップした」が、新型コロナは「確かにKudoの成長を加速した。国境をまたいで移動したり、あれこれ準備しなくても複数言語による会議やミーティングを実際に開催することは可能だと顧客に示すことでKudoはマーケットにおける長期的シフトを可能にしていると考えている」と語った。Kudoは世界が向かおうとしていたところにすでにいて、パンデミックが成長を加速させただけのことだ。

ラウンドの規模をみれば追い風が吹いているのは明白だ。ゼベティアン氏は600万ドルではなく200万ドル(約2億円)を調達しようとしていたと述べた。差額の400万ドル(約4億5000万円)は、競争できるだけの資産を持つ企業であることを示している。

そしてKudoの成長は、キャッシュフローが数カ月間はポジティブであるなど財政上のメリットをもたらした。この創業年数とサイズのスタートアップではほとんど聞かれないことだ。しかしKudoは調達した600万ドルを使ってラインアイテムをネガティブにするつもりだ。同社は現在、セールスやマーケティング部門で30人を募集していて、今後数四半期内の採用を見込む。同社はこれらの部門にはこれまで投資していなかった(スタートアップがセールスやマーケティングにかなり支出することなしに長く活発に成長できるのは別のいい兆候だ)。短期的にはそれなりの出費となる。

以上がKudoと今回の資金調達についてだ。我々が次に知りたいのは2020年上半期の売上高が対前年でどれだけ成長したかだ。その数字を知っていたら書き込んでほしい。

画像クレジット: Alistair Berg / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

HRTechのHAB&Co.が資金調達を実施、ハローワークAPI活用の新サービスで完全API連携も開始

HAB&Co. ハブアンドコー SHIRAHA WORK

HRTechサービスの開発・展開を行うHAB&Co.(ハブアンドコー)は7月22日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資として資金調達を実施したことを明らかにした。調達額は非公開。引受先は九州オープンイノベーション1号投資事業有限責任組合、Miraise1号投資事業有限責任組合、ABBALabスタートアップファンド投資事業有限責任組合。

また、ハローワークユーザーが採用サイトを手軽に作れるサービス「SHIRAHA WORK」において、7月より完全API連携が可能となったと発表した。

HAB&Co.は、HRTech/SaaSの自社サービス事業、有料職業紹介事業、就職・移住相談が可能なコミュニティスペースの運営管理、UI/UX領域を中心としたクライアントワーク事業を展開。調達した資金は、日本の中小零細企業の人材不足問題の解決に向けた事業の加速に利用するという。

AI技術を活用した採用サイト・オウンドメディアを作れるサービス「SHIRAHA -シラハ-」は、2019年のローンチ以降、全国の中小企業を中心に350社以上に導入されているという。

また、SHIRAHA運営の過程で人事担当者の声からスピンオフでリリースした「SHIRAHA WORK -シラハワーク-」は、ハローワークを活用している企業が有する「求人番号」を入力するだけで自社独自の採用サイトを作成可能。

HAB&Co. ハブアンドコー SHIRAHA WORK

同サービスでは、AI技術とハローワーク求人・求職情報提供サービスのAPIを利用し、すでに提出済みの求人情報を取得・一部活用することで、ノーコードでのサイト構築を実現できる。一般的なサイト制作と比べ、所用時間を90%以上削減、数十〜百万円単位でのコストカットが可能となったという。

また、制作後の運用や応募者管理を円滑にするためのCMS(コンテンツ管理システム)・ATS(採用管理システム)、求人検索エンジンとのクローリング連携なども備えており、中小企業の人事採用担当者を総合的にサポートできる。

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テスラと係争中の中国EVスタートアップXpengが約535億円調達

Alibaba(アリババ)の前幹部であるHe Xiaopeng(何小鵬)氏が経営する電気自動車スタートアップのXpeng(シャオペン)は米国時間7月20日、シリーズC+ラウンドで5億ドル(約540億円)を調達したと発表した。中国のテック好き中流階級の消費者向けモデルのさらなる開発にあてる。

今回の調達は2019年11月にクローズした4億ドル(約430億円)のシリーズCラウンド(未訳記事)に続くものだ。とある情報筋はTechCrunchに対して、Xpengバリュエーションが2018年8月のラウンド時点で250億元(約3840億円)を超えていた、と明らかにした。

新たなラウンドにより、創業5年のXpengの累計調達額は17億ドル(約1820億円)になった。

この1年の間、XpengはTesla(テスラ)と法的闘争を展開してきた。Teslaは同社で働いていたエンジニアがXpengに移る前にAutopilotのソースコードを盗んだ、と主張している(Reuters記事)。エンジニアのCao Guangzhi氏はTeslaのソースコードの一部をダウンロードしたことを認めた(Bloomberg記事)が、Teslaを退職する前にすべてのファイルを削除したと述べた。

Teslaは、ソースコードやコンピューター画像などの証拠を求め、Xpengに対して召喚の手続きを進めた。この動きをXpengは「若い競合相手をいじめて潰すもの」と表現した(Bloomberg記事)。現在も続く新型コロナウイルスパンデミックにより裁判は遅れている

Xpengの最新ラウンドの投資家には、香港拠点のプライベートエクイティ会社 Aspex Management、有名な米国テックヘッジファンドのCoatue Management、中国のトッププライベートエクイティファンドのHillhouse Capital、そしてSequoia Capital Chinaが含まれる。よく知られている既存投資家としてはFoxconn、Xiaomi、GGV Capital、Morningside Venture Capital、IDG Capital、Primavera Capitalなどが名を連ねる。

多額のラウンドであるにもかかわらず、Xpengには多くの困難が待ち受ける。中国の電気自動車販売は、中国政府が2019年に補助金を減らしたために縮小している(The Wallstreet Journal記事)。また新型コロナパンデミックによる経済停滞でさらに需要が弱まるとことが予想される(Reuters記事)。

Xpengの中国メーカーのライバルで、TencentやFAW Group、Foxconnなどそうそうたる企業から出資を受けているByton(バイトン)はすでに苦境にある。北米拠点の450人のスタッフのおおよそ半分を新型コロナ影響のために一時帰休とした。そして2020年6月には社内再編のために生産を一時中止した。

Xpengの他の競合相手は体力があるようだ。ナスダックに上場しているNio(ニオ)は2020年4月に10億ドル(約1070億円)の資金を確保(未訳記事)し、Li Auto(リオート)は米国での7月上場を目指して申請書提出を行った(Reuters記事)。

Xpengはこれまでのところ新型コロナの影響に耐えられると主張している。同社は2020年5月に、本社を置く広州市の近くにある完全自社プラントの生産許可を取得した(Xpengリリース)。これは、生産パートナーであるHaima Automobile(ハイマー・オートモービル)への依存抑制を意味する。

画像クレジット:Inside Xpeng’s fully-owned car plant. Source: Xpeng

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(翻訳:Mizoguchi