住宅診断の効率化を目指すNon Brokersが診断結果のクラウド管理システムをリリース

写真右がNonbrokers代表取締役の東峯一真氏、左がCTOの寺田洋輔氏

建物の信頼性を調査する住宅診断をアプリで完結できる「Rインスペクターズ」を提供するNon Brokersは6月25日、新たにSaaS型「インスペクション管理システム」を正式にリリースした。

また、同社はサービスリリースの発表とともに、既存投資家のジェネシア・ベンチャーズ、および新規投資家のみずほキャピタルを引受先とした総額6,000万円の第三者割当増資を実施したと併せて発表した。同社は今後、調達した資金を活用して開発、運営体制の強化に取り組む。

2018年1月リリースの「Rインスペクターズ」は住宅のインスペクション(診断)作業を大幅に効率化するためのアプリ。そして、本日新たにリリースした「インスペクション管理システム」では、更にその調査結果をクラウド経由で管理会社に送信することでデータの一元管理、編集、報告書出力などをスムーズに行うことを可能にした。

インスペクションは基礎や壁にひびや雨漏りなどの劣化がないかどうか調べる作業だ。専門知識が不可欠な上、国土交通省が用意する紙のチェックリストは難透難解で、目を通すとまるで運転免許の試験でも受けているかのような気持ちになってしまう。一方、「Rインスペクターズ」を使えば、アプリに従って必要な情報をタッチ操作で入力し写真を撮影するだけで診断作業が完了する。作業にかかる負担を大幅に軽減することが可能だ。

 

診断を行うインスペクターは、現場調査の後にも写真整理や報告書作成を行う必要があったが、「Rインスペクターズ」はその無駄で不毛なプロセスをも排除した。現場調査が終わった段階で調査結果の書類作成は完了しており、「インスペクション管理システム」により管理会社に自動送信される。Non Brokers代表取締役の東峯一真氏によると、これによりインスペクターの作業時間はおよそ半分に短縮され、紙からエクセルへデータ入力する手間が省かれた事で報告ミスも削減されるという。

東峯氏は「不利になる情報は調べないというのが業界の慣習」だと説明するが、2018年4月に施行された改正宅地建物取引業法により仲介業者が売買主に対するインスペクションのあっせんを義務付けられたことで、同社サービスのニーズが「どんどん伸びていく」ことを期待している。

また、同氏は雨漏り跡が見つかるなどの問題が住宅売買の契約後に多発していると述べた上で、インスペクションの重要性・必要性を強く訴えた。10軒のリノベ物件にインスペクションを行ったところ、4軒で雨漏りが確認されたそうだ。

「車検をしていない車を買う日本人はいないが、中古住宅に関しては現状引き渡し。インスペクションをやったほうが良いのかやらなくても良いのかというと、必ずやったほうが良いに決まっている」「検査好きの日本人からすると、インスペクション済みの物件が並んでいる状態で安心して選べる時代に倒れるのではと考えている」(東峯氏)

僕の周りにも入居直後に床下浸水を見つけ激高していた友人がいる。確かに、起こり得るトラブルの根源を事前に潰しておく事は仲介業者にとってもメリットとなるだろう。

日本ではまだまだ新築物件の購入が一般的だが、総務省によると2013年度の空き家の総戸数は820万にもおよび、国交省は中古物件の流通を後押しする方針を掲げている。

位置情報からライフスタイルを推測して広告を配信するジオロジックが1億円を資金調達

位置情報データをもとにした広告配信サービスなどを提供するジオロジックは6月22日、総額約1億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先はGenesia VenturesLINE子会社のLINE Venturesが運用するファンド、東急エージェンシーの各社・ファンド。ジオロジックにとって今回の資金調達はシリーズAラウンドに当たる。

ジオロジックが提供するアドネットワーク「GeoLogic Ad(ジオロジック・アド)」は、スマートフォンユーザーの行動を解析することで、ライフスタイルや興味などを推定して広告を配信するサービスだ。

「今近くにいるユーザー」だけでなく、ある地点を過去に訪問したユーザーを対象に広告を配信できるほか、大学、ショッピングセンター、工場などの施設の訪問者や、鉄道路線の利用者などにターゲティング配信ができる。

GeoLogic Adの面白いところは、「お店の近くに来たことがあるユーザーにクーポンを配る」といった従来の位置情報を使ったスタイルの広告配信だけでなく、「この行動パターンを持つユーザーはどういう人か」を推測して広告配信が行える点だ。

ジオロジックではアドネットワークのほかに、マーケティングのための独自の地理情報データベース「GeoGenome(ジオゲノム)」を保有している。

GeoGenomeは国勢調査などのデータをもとに、どの住所にどのような人がすんでいるか、町丁目単位で地域傾向を分類。住所に対して「超高級住宅地のエグゼクティブ」「子育てマイホーム」「超高齢化が進む農村」など36の地域クラスターが割り当てられている。

GeoLogic Adでは、この地理情報とスマートフォンの位置情報データを掛け合わせることで、ユーザーをプロファイリングする。

たとえば、同じ「六本木に夜いる人」であっても、一人暮らしなのかファミリーなのか、都心住まいなのか近郊に住んでいるのか、などで趣味嗜好は異なるはずだ。それらを行動データから推定することで、従来より広い範囲のユーザーに対して広告配信を行う。

またリアル店舗を持たないアプリやサイトなどの提供者でも、位置情報を活用してターゲティングを行い、広告を配信することが可能となる。

ジオロジックを設立した代表取締役社長の野口航氏は、NTTコミュニケーションズからサイバーエージェントに転職し、アドネットワークのアルゴリズム開発やマーケティングに従事。事業拡大にともない分割して設立されたマイクロアドでは京都研究所所長を務めていた。

その後2014年11月にジオロジックを創業。2015年2月に地理情報データベースGeoGenomeの提供を、2016年2月からはGeoLogic Adの提供を開始した。

写真前列中央:ジオロジック代表取締役社長 野口航氏

ジオロジックではこれまでに、乗り換え案内サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究所から2017年3月に資金調達を実施している。

GeoLogic Adは現在、広告主数300社を超え、同社の主力サービスとして成長。位置情報広告事業の伸びにより、同社は既に黒字化しているが、資金調達に至った理由について野口氏はこう話している。

「今回の調達は、事業会社であるLINE、東急エージェンシーとの連携の性格が強い。LINEと東急エージェンシーとの事業シナジーに加え、今年の位置情報広告市場の立ち上がりを確信し、そこで勝つための布陣を整えるため、資金調達に踏み切った。調達資金はGeoLogic Adの販売・開発体制の拡充に投資する」(野口氏)

各社との連携内容については「具体的にはまだ言えないが」としながらも、「LINEとは特にネット広告事業と連携し、O2Oの分野で協業を検討していく」と野口氏は言う。

また東急エージェンシーについては「チラシ広告のクライアントが多い点が強み」とし、「デジタル内でのチラシ的な商品の共同開発を考えている。また東急グループの持つ位置情報との連携や、投資先となっているスタートアップとの連携も検討していきたい」と野口氏は述べていた。

位置情報データ関連のスタートアップでは、データをAIも利用して統合的に解析し、施策の提案も行うプラットフォームを開発するクロスロケーションズが6月20日に数億円規模の資金調達を行ったばかり。今後も既存の地理情報データや位置情報プロダクトをちょっとひねった視点から、新たなサービスが生まれそうな分野だ。

テクノロジーで水産養殖の課題解決へ、ウミトロンが9.2億円を調達——IoTでエサやりを最適化

テクノロジーの活用によって水産養殖の課題解決を目指すUMITRON(ウミトロン)は6月21日、産業革新機構、D4V、藤代真一氏、松岡剛志氏ら個人投資家を引受先とする第三者割当増資により約9.2億円を調達したことを明らかにした(実施したのは6月8日)。

ウミトロンの設立は2016年。JAXAにて人工衛星の研究開発に従事した後、三井物産で農業ベンチャーへの新規事業投資や事業開発支援をしていた藤原謙氏。大学大学在学中に超小型衛星開発に携わり、三井物産やメタップスで働いていた山田雅彦氏。グリーやメタップスでエンジニアとして活躍していた岡本拓麿氏の3人が共同で立ち上げた水産分野のスタートアップだ。

現在はシンガポールに本社、日本に開発本部を持ち、IoTや衛生リモートセンシング、AIなどの技術を使って持続可能な水産養殖の仕組み作りに取り組んでいる。

ウミトロンが現在展開しているのは、データをもとに魚のエサやり(給餌)を最適化するIoTサービス「UmiGarden(ウミガーデン)」だ。

ユーザーは生簀にウミガーデンを設置後アプリにユーザー情報を登録しておく。するとセンサーによって飼育状況が自動でモニタリング・記録され、得られた魚群データを解析すればエサやりの最適なタイミングや量が把握できるようになる。

ウミガーデンではスマホを通じて遠隔からエサやりをコントロールできるので、リアルタイムで量を調整することも簡単。エサ代はもちろん、生産者の負担を削減する効果もある。2018年6月には愛媛県愛南町と技術検証のための研究契約を締結。ウミガーデン20台を養殖生産者に提供し、エサ代の削減と働き方改革に向けた実証実験に取り組む計画だ。

ウミトロンによると現在の水産養殖において給餌が事業コスト全体の50%以上を占め、生産者の利益を圧迫する要因になっているという。加えて過剰な給餌は海の富栄養化や赤潮の原因にもなるなど、海洋資源にも影響を及ぼすそうだ。

同社では今回調達した資金をもとに既存サービスの事業基盤と研究開発体制を強化していく方針。世界中の養殖ノウハウを集積したコンピュータモデルを開発・提供することで、水産資源の持続可能な生産環境の構築を目指す。

テレビでも現地でもない“新しいスポーツ観戦”の形を——「Player!」が数億円を調達

スポーツエンターテイメントアプリ「Player!」を運営するookamiは6月20日、NTTドコモ・ベンチャーズ、みずほキャピタル、朝日メディアラボベンチャーズ、アシックス・ベンチャーズ、グリーベンチャーズ、スパイラル・ベンチャーズらを引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。具体的な調達額は非公開だが、数億円規模になるという。

今回のラウンドは2017年3月にIMJ Investment Partners、グリーベンチャーズ、朝日新聞社、個人投資家から数億円を調達した時に続くもの。ookamiでは調達した資金をもとに組織体制を強化し、事業の拡大と新しい広告商品の開発を進める。

大学スポーツを中心にアマチュアスポーツが拡大

Player!はさまざまなスポーツのリアルタイム速報を軸に、ファン同士でライブチャットを通じてコミュニケーションが取れる機能や、各競技のニュース記事を閲覧できる機能を持つサービスだ。好きなチームや気になる大会をフォローすることで、関連する情報を逃さずチェックできる。

現在はiPhone版とWeb版を提供。各機能は無料で楽しめる。

先日から開催されているサッカーのワールドカップをはじめとしたプロスポーツはもちろん、大学や高校といったアマチュアスポーツや、マイナースポーツにも対応しているのが大きな特徴。

メジャーなスポーツについてはテレビを見ながらPlayer!で他のユーザーと交流を楽しむ、という使い方もされているそう。この点はTwitterに近い感覚で使っている人も多いようだ。一方のマイナースポーツについては、今まで地方紙などでしか試合の情報を扱っていなかったようなものでも、Player!ならデジタル上で気軽にアクセスできる点がウリだ。

ookami代表取締役の尾形太陽氏の話では、2017年3月の調達時と比べてユーザー数は年次で約8〜9倍になっているそう。その要因のひとつが、大学スポーツを中心としたアマチュアスポーツのコンテンツの拡大だという。

「直近1年間では高校や大学、地域リーグといったマス向けというよりはロングテールよりの領域を強化してきた。数百万人のファンがいるわけではないけれど、数万人、数十万人の根強いファンがいるコミュニティにアプローチできてきている。実際にこのような競技でも1試合あたり数千人ほど集客できるようにもなった」(尾形氏)

たとえば大学スポーツはビジネスの観点からもポテンシャルがあるというが、どうしてもプロスポーツに比べるとその規模に限りがあるため、これまではあまり手付かずだった領域だ。Player!においても現時点では「まだコンテンツの供給量も十分ではない」(尾形氏)というが、それでも現役の学生やOB、保護者といった関係者を中心に利用が増加。大学側からも問い合わせが来るようになった。

今回の資金調達も踏まえ、Player!では大学スポーツを中心としたアマチュアスポーツ領域のコンテンツをさらに強化する方針。調達先であるアシックスやドコモとは事業面でも連携をとりながら、「まずは大学スポーツといえばPlayer!だよね、というレベルまで持っていきたい」(尾形氏)という。

ブランド・コンテンツ・ファンが一体になった新しいビジネスモデルを

ookamiのメンバー。写真左から3番目が代表取締役の尾形太陽氏

アマチュアスポーツの拡大と合わせて、尾形氏が今後注力していきたいと話すのが新しいビジネスモデルの構築だ。

スポーツマーケティングの軸となるのはスポンサーとなるブランド、各種チームや大会などのコンテンツ、それぞれのチームを応援するファンの3つ。ブランドがチームや大会をスポンサードすることを通じて、ファンに自社や自社の製品をアピールするというのが一般的な仕組みだろう。

ただ尾形氏によると「この仕組みではブランドからファンまでが一直線」である一方で、「近年はブランドがファン側によってきているのがトレンド。ブランドとコンテンツとファンが一体になってコミュニティを形成するようなモデル」が生まれ始めているのだという。

その一例として尾形氏があげるのが、今シーズンからJ1リーグに昇格したサッカーチームのV・ファーレン長崎。同クラブは2017年より「ジャパネットたかた」でおなじみのジャパネットホールディングスのグループ会社となり、代表取締役社長に髙田明氏が就任している。

「社長がサポーターと同じ席でチームを応援したり、J1昇格を一緒に喜んだりといったようにブランドがファンと同じ目線になっている良い事例だと思う。従来はファンから見えづらかったブランドの顔がよく見えることで、一体感が生まれる。結果的にブランド側としてもテレビCMなどに多額の予算を投じるよりも、高い広告価値を生み出す可能性があると考えている」(尾形氏)

これはあくまでデジタルではなくリアルの場の例だが、Player!ではこのような共感を得られるブランドの見せ方をデジタル上で模索しているそう。すでにこの1年間ほど個別でクライアントとテストマーケティングを実践していて、新しいビジネスモデルの実現を目指すという。

「目指しているのは新しいスポーツエンタメの形を提供すること。テレビでも現地でもできない『スマホだからこそ、デジタルだからこそできる観戦体験』を作っていきたい。同様にスポーツマーケティングのあり方も変わってきているので、新しいスポーツビジネスにも挑戦していく」(尾形氏)

BtoBエンジニアプラットフォームを運営するメイプルシステムズが1.4億円調達、間接部門向け新サービスも

客先常駐型のシステムエンジニアリングサービス(SES)業界向けに、エンジニア管理のプラットフォーム「PRO-SESS」を提供するメイプルシステムズは6月20日、第三者割当増資と金融機関借り入れにより総額約1億4000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はベクトルエボラブルアジアオークファンOrchestra Investmentと個人投資家の高野秀敏氏。今回の資金調達は2017年8月に実施した総額1億円の調達に続くものとなる。

またメイプルシステムズでは同時に、PRO-SESSで提供してきた機能の一部を切り出し、いくつかのサービスに分けて提供していくと発表。第1弾としてSESの間接部門業務を一元管理できる「契約管理できるくん」を7月1日にリリースする。

IT業界では、急なエンジニア需要に対応するために、企業間でのエンジニア派遣の仕組みとして、SESが利用されてきた。しかしSESでは、仲介会社がいくつも関わることによるエンジニアのミスマッチや契約の不透明性、多重下請け構造などが問題となっている。

PRO-SESSは、そうした問題を解消したいと開発された、BtoBのオープンプラットフォームだ。エンジニアが所属する企業と顧客企業とを、仲介企業なしで直接結び付ける。

契約管理できるくんは、PRO-SESSの中からSESのバックオフィス業務を支援する機能を分割して提供。SES契約の管理や見積書・発注書・発注請書の作成・送付、勤怠管理、請求書発行などが行える。

メイプルシステムズ代表取締役の望月祐介氏は「PRO-SESSをエンジニアが集まるプラットフォームとして、1年ほどかけてブラッシュアップを進める中で、業務にシステムがより溶け込んでいかなければ使ってもらえないし、エンジニア情報も集まらない、と課題を感じた」とサービスを分割する理由について説明する。

望月氏によると、現在PRO-SESSの契約企業は300社を超え、対象企業のエンジニア数は1万2000人を数える規模となったそうだ。その一方、PRO-SESSに登録されているエンジニアは2000人程度で、登録にまで至っていないエンジニアの数が多いという。

「SESは契約形態が独特で、納品もプロダクトを引き渡せば終わり、とはならない」と望月氏は話す。エンジニアが現場常駐の形で働くことの多いSES業界では、契約期間や勤怠情報の管理・レポーティング、それに基づく請求書発行などのバックオフィス業務が煩雑になりやすい。

SES企業には小さな会社も多く、自社で管理ツールを導入できるところは少ない。こうした業務はExcelやWordを使って、手作業で行われていることがほとんどだ。

メイプルシステムズでは、業界でニーズが高かった、これらの業務支援を切り離してサービスとして前面に出し、契約管理できるくんとして提供。このサービスでは契約・勤怠管理から請求書発行までを一元管理できるため、エンジニアを登録することがバックオフィス業務負荷の軽減にもつながるという。

同社としては、ニーズの高い部分のサービスを業界に浸透させた上で、エンジニア登録を進めてもらい、エンジニア情報の収集も図っていく考えだ。

契約管理できるくんは登録料、月額利用料は無料。望月氏は「顧客企業からSES企業への支払いサイトを縮めるファクタリングの手数料などで収益化を検討している」と話している。PRO-SESSの一連のサービスについても「マッチングでの収益ではなく、案件情報やエンジニア情報の上位表示を有料オプションとして提供したい」とのことだ。

メイプルシステムズは契約管理できるくんに続き、エンジニア探しを支援するプラットフォーム「エンジニアあつまるくん」もPRO-SESSから切り出して、来年1月ごろをめどに正式リリースを予定している。7月の契約管理できるくんのリリースとともに、エンジニアあつまるくんのベータ版提供を開始する。また、今後も数段階にわたり、PRO-SESSから分割したサービスのリリースを行っていくという。

「SES所属エンジニアも、これまでは所属会社や客先へのレポーティングなどをExcelで行っていた。今後リリースするエンジニア向けのサービスでは、それに置き換わるアプリも提供するつもりだ」(望月氏)

今回、シリーズAラウンドの資金調達を完了したメイプルシステムズ。調達資金は「広報とカスタマーサクセスチームの体制強化に充てる」と望月氏は述べる。「今回参加した投資家は、事業会社としての連携に期待している。SES業界における『エンジニアがいない、抱えたい』あるいは『エンジニアを外に出したい』との需要に応えていきたい」(望月氏)

自然に会話できるAI開発のSELFが東京理科大VCとエイベックスから2.5億円を調達

対話型AI開発を行うスタートアップのSELFは6月18日、東京理科大学ベンチャーファンドとエイベックスを引受先とした第三者割当増資により、2億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

SELFが開発するのは、自動で理解と推測を行い、自然な会話を進めることができるAI会話エンジンだ。ボットや自然言語処理開発者によって開発されたこのシステムは、ユーザーと会話した内容をもとに情報を記憶。これをリアルタイムに応用して新しい情報を提示する。ユーザーとAIとの掛け合い、コミュニケーションがより自然に行えるという。

SELFのAIエンジンでは、単層的なレコメンドサービスやボットサービスと違い、ユーザーから得られたさまざまな情報を各要素へ分解した上で、総合的に会話と情報提示へ結びつける。同社が独自に開発した30万近い会話のライブラリーから、システムが自動で適した会話を選択して、ユーザーとのコミュニケーションを成立させる。

現在同社では、このAIエンジンを活用して、自動でセールスや接客を行う企業向けのマーケティングソリューションや、ユーザーとの会話でグルメやニュースの提案や性格診断ができる個人向けAIアプリ「SELF」を提供している。

SELFでは、今回の資金調達は出資元との実践的なシナジーを見込んだ業務提携を目的としたものと説明している。

東京理科大学とは今回の資金調達後、学生生活をサポートする新規サービスの開発や共同研究、新規技術開発など、サービス面・技術面・人材面での総合的な提携を目指す。

エイベックスには、まずはエイベックスグループが運営するアーティスト育成スクールに、サービスナビゲーション型AIの導入を行う予定だ。AIが会員や入会希望者向けの情報提供を行うことで、サービスの利用促進を目指す。また、今後エイベックスが保有する、音楽コンテンツやエンタテインメントコンテンツに関わるサービスへのAI導入、アーティストやアニメキャラクターのAI化なども進めていくという。

調達資金については、AIエンジンの開発とサービス拡充に充てていくということだ。

仮想通貨取引所向けウォレットのスタンダード目指すフレセッツ、UTECとセレスから約3.5億円を調達

仮想通貨やブロックチェーン技術の研究開発を行うフレセッツは6月18日、UTEC(東京大学エッジキャピタル)およびセレスを引受先とした第三者割当増資により総額3億4900万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回調達した資金をもとにエンジニアの採用など組織体制を強化する方針。近日公開予定の事業者向けウォレット管理システム「Bitshield」の開発を進めるほか、マーケティング活動への投資も行う。

フレセッツは2017年8月の設立。同年9月にセレスとストーンシステムから約2300万円、2018年3月にも同じくセレスとULSグループから約3500万円を調達している。

社内に専門家がいなくても導入できるウォレット

フレセッツが現在開発しているのは、複数のホットウォレットとコールドウォレットをそれぞれマルチシグで複合利用できる事業者向け(仮想通貨取引所向け)のウォレットだ。

「コールドウォレット(ネットワークに接続されていない環境に秘密鍵を保存したウォレット)」や「マルチシグ(送金に必要な秘密鍵を分割し複数管理することでセキュリティを高める技術)」については1月にコインチェックからNEMが流出した騒動で取り上げられたこともあり、仮想通貨を保有していない人であっても聞き覚えがあるキーワードかもしれない。

この1件の影響もあり、金融庁では仮想通貨交換業者への一斉検査を実施。複数の事業者が行政処分の対象となり、一時は16社あったみなし業者も半数以上が登録申請を取り下げている。

こういった背景からすでに仮想通貨交換業に参入している事業者やこれから参入を目指している事業者は、これまで以上にセキュリティ面に配慮する必要がでてきた。特に安全性と利便性を兼ね備えたウォレットの整備は急務だ。

今までウォレットと言えば一般ユーザー向けのものが複数登場する一方で、事業者向けのものはアメリカの「BitGo」などほんのわずか。このBitGOでさえもAPI利用が前提となるため、コンプライアンス面がネックになる場合もあるという。

フレセッツのBitshieldはそのような事業者の課題を解決すべく、ウォレットの組み合わせやマルチシグによる運用管理をはじめとした機能により安全面を担保。それと同時に可用性やスケーラビリティを実現することを目指したものだ。

Bitshieldでは根幹となる標準化されたモジュールと、顧客ごとにカスタマイズできるモジュールを明確に分割。社内に高度な知識やスキルを持つ専門家がいない事業者でも、社内の内部統制基準に合わせて導入できることが特徴だ。技術面のアップグレードや、将来的に金融庁から新たな要望があった場合にも対応できるように設計しているという。

利用料金は初期費用と月額の利用料。BitGoのように出金額の一定割合(0.25%)が手数料となる仕組みではなく、取引額の大きい取引所でも使いやすい形で提供する。

まずは近日中にビットコイン向けのウォレットをリリースする計画で、年内を目処にイーサリアムなどほかの通貨への対応を目指す。

事業者向けウォレットのデファクトスタンダードを目指す

フレセッツの代表取締役社長を務める日向理彦氏は、東京大学の博士課程在学中にビットコインと出会ったことをきっかけに、モナコインの取引所の開発・運営を始めビットコイン決済のできるECサービスや、Twitter上でビットコインを送金できるサービスなどを開発してきた。

並行して専門家向け、初心者向けに仮想通貨関連の勉強会をかれこれ約2年に渡って運営。エンジニアとしてプロダクトを開発するだけでなく、ナレッジの提供や情報発信なども積極的に行っている。

フレセッツ創業のきっかけとなったのは、2017年4月の改正資金決済法の施行が決まった2016年の秋頃。これを機に仮想通貨交換業への参入を決める企業が一気に出てきた中で、上述したようなウォレットの問題が発生し、日向氏のもとに相談が寄せられたのだという。

共同創業者である余語邦彦氏とともにいくつかの事業者を回り、事業者向けウォレットのニーズを確認。8月にフレセッツを創業しBitshieldの開発を始めた。

2人の話では「社内に専門的な技術者がいない事業者が仮想通貨交換業に参入するのは日本がはじめてのこと」で、そこに海外展開も含めて大きなチャンスがあるという。まずは事業者向けウォレットのデファクトスタンダードを目指しつつ、ゆくゆくはウォレット以外にも同社の仮想通貨・ブロックチェーン技術を活用したプロダクトを開発する予定だ。

きっかけはクックパッドを支えた社内ツール、個人の情報発信をチームの力に変える「Kibela」が資金調達

「ものづくりを支える“いい道具”を提供することで、世の中からもっと良いサービスが生まれる。そんな循環を作っていきたい。イメージとしては大工さんが仕事で使う道具のようなもの。(周りからは)見えづらいけど、ものづくりをしっかりと支える存在」——そう話すのは、チーム向けの情報共有ツール「Kibela(キベラ)」を提供するビットジャーニー代表取締役の井原正博氏だ。

同社は6月18日、元クックパッドの社長で現在はオウチーノやみんなのウェディングで取締役会長を務める穐田誉輝氏から約5500万円を調達したことを明らかにした。

クックパッドの組織作りを支えた情報発信の文化

井原氏はもともとヤフーやクックパッドで開発部長や技術部長を担っていた人物だ。

特にクックパッドにはエンジニアが7〜8人のタイミングでジョイン。「日本で1番、イケてるエンジニアが働きたいと思う会社」を目標に技術力の向上やエンジニアの採用に従事し、開発チームが40〜50人規模になるまでを支えた。同社ではその後、人事副部長や新規事業の立ち上げなども担当している。

ビットジャーニー代表取締役の井原正博氏

そんな井原氏が自ら起業をして、社内情報共有サービスを開発するに至ったのは、クックパッドで使われていた社内ツール「Groupad」の影響が大きかったという。

「クックパッドではGroupadを通じてエンジニアに限らず社員みんなが積極的に情報発信をしていて、これが強い組織作りのひとつの源泉になっていた。あるメンバーの知見や経験、アイデアがほかのメンバーにもインプットされ、また新しいアイデアを生むきっかけになる。そんな良いサイクルが回っていたように思う」(井原氏)

自分が得たものを少しだけ頑張って社内へアウトプットすることで、他のメンバーの役に立てる。そんな効果があるのはもちろんだけど、実は発信者側にも大きなメリットがあるという。

「情報を発信すればするほど、周囲から『自分の得意なこと』を知ってもらえる。結果的に関連する情報や仕事が自分に集まり、さらに得意になり成果にもつながる。(この仕組みができれば)わかりやすく言えば、情報を発信することで給料もあがると考えている」(井原氏)

このような文化が他の組織にも広がっていけば、より良いものづくりが行われ、今よりもさらに良いサービスが増えていくのではないか。そんな思いからまずは井原氏1人でKibelaの開発を始めたそうだ。

そこから少しずつ体制を整え2016年5月にベータ版のティザーサイトを公開したところ、数百チームが登録。同年8月にベータ版を、2017年3月に正式版をリリースしている。

とにかく簡単でシンプルなインターフェースがウリ

少し背景が長くなってしまったけど、ここからはKibelaがどんなプロダクトなのかをもう少し詳しく紹介したい。

Kibelaは社内に蓄積しておきたいストック情報を発信、共有するためのツールだ。個人的なメモや考えを共有できるBlog(ブログ)と、複数人で情報の整理がしやすいWiki(ウィキ)の2種類のアウトプット方法を用意している。

発信の対象となるのは議事録や日報だけでなく、個人的な学びや気づきなど幅広い情報。部署ごとにグループをつくることで、情報が届く範囲をコントロールすることもできる。発信した情報が個人のプロフィールページにも蓄積されていくので、「各メンバーごとの得意分野や関心トピック」も周囲からわかりやすい。

チームの情報共有をサポートするサービスとしては、世界で広く使われている「Confluence(コンフルエンス)」のほか、国内発の「Qiita:Team」や「esa」などがある。

井原氏の話では世界のエンタープライズ向けのツールとしては現状Confluenceの一択であり、別の選択肢となれるようなサービスを目指したいということだった。サービスの特徴としては「技術的に何かしらの特許で支えられているわけではない」とした上で、今は使い勝手の違いが大きいという。

「前提として社員全員が使えないと意味がない。クックパッド出身者が多いということもあり、とにかく簡単で使いやすいインターフェースへのこだわりや、サービス開発に対する考え方は意外と真似できないのではないか。いかにUIを追加せずやりたいことができるかを追求する一方で、なんでもできるツールにはせず『こう使うといいのでは』という意思を込めている」(井原氏)

たとえばこういったツールでは一般的な機能のように思える、記事ごとのタグ機能はKibelaにはない。その理由は「探したい情報にたどり着きやすくするのが目的なのであれば、検索の精度をあげるなど別の手段もある。検索の場合はインターフェースを増やさずにすむので、よりシンプルに保てるから」(井原氏)だという。

試しに少し使ってみたのだけど、投稿画面も含め余計な機能が一切ないというか、他のツールではあるような機能も削ぎ落とされているように感じた。Confluence含め上述した3つのサービスは全て使ったことがあるが、確かに「それらにはない特別な機能がいくつもある」というわけではなさそうだ。

なおKibelaはユーザー数に応じて料金が変わる設計になっていて、5ユーザーまでは無料で使うことができる。

今後はエンタープライズ領域で拡大へ

現時点の導入企業はスタートアップ含めTech系の小規模なチームが多いというが、徐々に大きめの企業からの問い合わせが増えてきているという井原氏。これからの1年で売り方を固めつつ、より大規模な企業にも使われるサービスを目指していくという。

「今までコツコツと作ってきて、ようやくお金を払って使ってもらえるレベルになってきたのでここからアクセルを踏んでいく。(大規模な企業では)情報が属人的になってしまい、社内に共有するという文化がないところも多い。アウトプットをするのが日常的ではない人でも使いやすいサービスを通じて、情報共有の課題を解決していきたい」(井原氏)

ビットジャーニーでは今回調達した資金を通じて、開発やセールスなど人材採用を強化する方針。エンタープライズ向けの機能開発や事業推進、ネイティブアプリの開発などに取り組む。

自動運転の “眼” を担う高性能なステレオカメラの開発へ、東工大発のITD labが4.8億円を調達

自動車やドローンなどの自動運転や衝突防止システムの基盤となる、ステレオカメラの開発を行っているITD lab。同社は6月15日、ニッセイ・キャピタル、三井住友海上キャピタル、ミナトホールディングス、ソニーセミコンダクタソリューションズを引受先とした第三者割当増資により、総額4.8億円を調達したことを明らかにした。

ITD Labは2016年5月の創業。同社の代表取締役会長でCTOも務める実吉敬二氏は、元東工大の准教授であり、スバルの運転支援システム「アイサイト」で使用されるステレオカメラの発明者でもある。実吉氏は1998年にスバルを退社した後、東工大へ。それから約20年に渡ってスバルとは独立してステレオカメラ技術の研究開発に従事。この研究を引き継ぐ形でスタートしたのがITD Labだ。

同社が開発するステレオカメラは、2つのイメージセンサーから得られる視差を使って物体までの距離を計算するというもの。たとえば自動車やドローン、建機、ロボットの自動運転、衝突防止システムを組む際に活用できる。

ステレオカメラの基本なるアルゴリズムは、商品化されているステレオカメラの多くが採用しているSGM(Semi Global Matching)方式とは異なるSAD(Sum of Absolute Difference)方式。これによってアルゴリズムを簡素化し、必要となるコンピュータパワーを低減。コストや消費電力を抑えながら毎秒60〜160フレームの超高速処理を実現できるという。

SGM方式と比べて視差画像の中で物体の輪郭がハッキリと表現されるため、高価なLiDARを使わずに衝突防止や自動運転のシステムを組めるのも特徴。またアイサイトでも実現できていない高速リアルタイム自動調整を搭載していて、温度変化や衝撃などによりステレオカメラの組立て精度が変動しても、システムが全て自動調整・自動補正する機能も備えている。

以下の映像は同社の技術を活用した運転支援システムの様子を映したものだ。走行中の車の前方に現れる歩行者や車、障害物や白線などを自動検知。危険な状況を瞬時に見極めてアラートする。

特に今後期待されるレベル4、レベル5の自動運転車においては、運転者ではなくシステムが衝突回避の責任を負うため、高精度の衝突回避性能が必須となる。その点で応答速度が遅かったり、モデルに無い物体や状況では距離計算ができなかったりする既存のシステムでは、自動運転を実現することが困難だという。

ITD Labでは上述したような技術を活かして従来の壁を乗り越え、レベル4、5の自動運転を可能にする“眼” の役割を担うことも視野に入れているようだ。今回調達した資金は研究開発を進めるための人材確保や環境整備のほか、外部開発会社を巻き込んだ大規模開発の推進費用などに用いるとしている。

スキャンで人間を判別、周囲を把握して動く自律移動型ロボット開発のSEQSENSEが10億円調達

自律移動型ロボットを開発するスタートアップのSEQSENSE(シークセンス)は6月15日、三菱地所TIS、およびJAFCOが運営するファンドを引受先とする総額約10億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

SEQSENSEの創業は2016年10月。宇宙航空研究開発機構(JAXA)ではやぶさ、はやぶさ2のプロジェクトメンバーを務めた明治大学理工学部教授の黒田洋司氏らにより設立された。

今回の資金調達はSEQSENSEにとってシリーズAラウンドに当たる。同社は2017年4月、TISとジャフコから2億円の資金調達を実施している。また2017年度のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「研究開発型ベンチャー支援事業/企業間連携スタートアップに対する事業化支援」にも採択されている。

SEQSENSEが開発する自律移動型ロボットは、レーザースキャナーを使った3次元マッピング技術でロボット周辺の環境をリアルタイムに把握し、スキャンの形状から人間も判別することができる。そのため、 あらかじめ地図情報を用意したり、GPSを使わなくてもスムーズに移動が可能。人が多く出入りするような商業施設やオフィスビルなどでの利用が想定されている。

SEQSENSEでは、2017年秋に警備ロボットのプロトタイプを開発済み。24時間の巡回警備が必要なオフィスビル、商業施設や空港などでの警備、管理、監視など、「高度なセキュリティレベルが求められるが人材の確保が難しい」という分野でニーズが高く、すでに警備会社やビルのオーナー、総合建設業者などから問い合わせが来ているという。

SEQSENSE代表取締役の中村壮一郎氏は「これまでは実証実験を進めてきた。その成果をもとに、調達資金で複数ロボットのクラウド連携への対応やAIによる人識別機能の精度向上など、プロダクトをビジネスとして成立させるための開発強化を行う。またフロントエンドやアプリケーション開発も進めていく」と資金調達の目的について説明。「今年度中にはセキュリティロボットシステムの商用化を目指す」としている。

また将来的には「ロボティクスで新マーケットを築き、高齢化や生産人口減などの課題に対応する」という企業理念に基づき、「新しい付加価値を提供し、生産性向上に寄与したい」と話す中村氏。「人間には人間しかできないことに集中できるよう、ロボットが人間に代わってできること、ロボットにしかできないことを提供していく」と述べる。

具体的には、人員不足のために直近で需要の高い、警備ロボット、警備システムの分野からサービス提供を始めて「ゆくゆくは物流や小売など、ほかの分野でも自律移動型ロボットの新しいマーケットを作っていきたい」と中村氏は話している。

Sphero、教育分野注力で1200万ドル調達

今年はSpheroにこれまでのところタフな年となっている。コロラド拠点のこのトイロボティクスの会社は、ディズニーブランドで出した商品の売れ行きが芳しくなかったため、社員数十人の解雇で年をスタートさせた。

しかしながら、ここへきてようやくいいニュースが出てきた。Crunchbaseによると、1200万ドルの資金を調達し、累計調達額を1億1900万ドルとした。この最新の資金は、BB-8製造元であるSpheroが教育専門の企業となるのに活用される。

「今回の資金調達で、これまでの累計調達額は1億2000万ドルとなった。我々は最終的に累計2億ドル調達できると踏んでいる」。SpheroはTechCrunchに対し、こうコメントしている。資金はこれまでの出資元と、新規によるもので、「これは我々の、遊んで学んでの分野に注力するという大きな戦略を進めるのに活用される」としている。

コーディング用玩具の分野の競争が激しくなっている現状を考えると、これはやや際どい戦略のように思える。しかしSpheroはこれまで、コンシューマーにフォーカスした製品を展開してきており、この分野でそれなりの地位を長きにわたって築いている。

スター・ウォーズのBB-8がヒットしたのち、スパイダーマンやCarsのライトニング・マクイーンといったハイテックなディズニー関係の商品を売り出したが、同社の売り上げは4分の1に落ちた。

「[教育]というのは、我々がこれまでそれなりに成果を出してきた分野だ」。解雇が発表されたのち、Spheroは私にこう明かしている。「我々が今うまくやっている分野というのは、これでいこうと決めた最初から培ってきた、100%自信をもってやれることなのだ」。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

真っ暗闇でカラー撮影ができる暗視カメラ開発のナノルクスが約2億1600万円を資金調達

全く光が入らない暗闇でもカラー撮影ができる「赤外線カラー暗視技術」を持つナノルクスは6月13日、総額2億1592万円を資金調達したことを発表した。第三者割当増資の引受先は、Samsung Venture Investment日本ベンチャーキャピタルフリーバンクきらぼし銀行が組成したTokIめき応援1号ファンド、筑波銀行グループの筑波総研の各社およびファンド。

今回の調達は2017年5月に実施した、ASUSおよび筑波銀行グループからの約1.3億円の調達に続くもので、ナノルクスにとってシリーズAラウンドにあたる。

ナノルクスの暗視技術は産業技術総合研究所(産総研)が発明したもの。この特許を技術移転によって製品に活用することを目指して、2010年1月につくば市で設立されたのがナノルクスだ。

カラー暗視技術は、これまでのカメラの構造はほとんど変える必要がない。赤外線を被写体に当てて反射光をカメラで捉え、カラー画像に再現するというものだ。これまでの赤外線暗視カメラでは、モノクロ画像しか作成できなかったが、赤外光の反射強度に色の要素(RGB)との相関関係があることを利用して、赤外線情報から色を再現することを可能にしている。

カラー暗視技術原理の説明(ナノルクス サイトより)

2017年2月にカラー暗視技術が搭載されたカメラの第1号機を完成させたナノルクス。調達資金はカラー暗視カメラの量産開始のために投資するとのことだ。防犯カメラや車載カメラ、医療カメラなど、光がないところでもカラー撮影が可能なカメラを提供すべく、今年後半の量産体制確立を目指す。

ナノルクスの代表取締役の祖父江基史氏は、今回出資に参加したサムスンについて「当社がグローバルにビジネス展開を行う上で最良のパートナー」と述べ、「サムスンがナノルクスに加わることで、資金面だけでなく豊富なビジネス経験を得られることをとても喜んでいる」とコメントしている。

英語教師からリフォームまで、プロと依頼主をつなげる集客プラットフォームのZehitomoが4億円調達

写真右がZehitomo代表取締役のジョーダン・フィッシャー氏

個人事業主やスモールビジネス向け集客プラットフォーム「Zehitomo」を提供するZehitomoは6月12日、500 Startups Japan、KLab Venture Partners、Draper Nexus Ventures、ベクトル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、Social Starts、および複数の個人投資家から約4億円を調達したと発表した。

Zehitomoは、カメラマンや英語教師などの個人事業主を含むSMBと、仕事を依頼したいユーザーをつなげる集客プラットフォームだ。結婚式の写真を撮ってもらいたい、英語を教えてもらいたい、家を改装したい時など、ユーザーはそれぞれの仕事を直接依頼できる“プロ”を検索することができる。

依頼を受けたプロはユーザーに対して見積書を送り、その依頼に「応募」することが可能。ユーザーは送られた見積書を比較して、最終的にどのプロに仕事を依頼するのかを決めるという流れだ。

報酬の〇%が手数料という決済手数料型のクラウドソーシングとは違い、Zehitomoでは依頼への応募ごとに課金するというビジネスモデルで、プロ側は1回の応募につき平均500円の費用がかかる。逆に依頼主であるユーザーはZehitomoを無料で利用できる。ちなみに、Zehitomoが扱う仕事の単価は平均5万円程度だという。

TechCrunch Japanが最後にZehitomoを取材したのは、同社が1.5億円を調達した2017年7月。当時の登録プロ数は約6800人ということだったが、それから約1年で登録者数は5万人(法人含む)にまで拡大している。ユーザーからの依頼は1週間に1000件以上が寄せられるようにもなった。順調に成長を続ける同社だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかったとZehitomo代表取締役のジョーダン・フィッシャー氏は話す。

「前回の資金調達のあと、自分が思っていたスピードでグロースすることができなかった。初めての資金調達でお金を手にすると、やりたいことが沢山浮かんでくる。結果、Must Have(必須事項)ではなく、より着手もしやすいNice to Haveばかりに手を出してしまっていた。昨年のQ4にそれを見直し、選択と集中を進めた結果、ユーザー数も上手く伸びるようになった」(フィッシャー氏)

前回の資金調達から多くを学んだというフィッシャー氏。新たに4億円を調達し、これからの注力ポイントとして彼が選んだのは、組織の強化とZehitomoへの理解度の向上だ。同社はまず、2018年4月に就任したロバート・シューマン新CTOのもと新しいエンジニアチームの構築を目指す。

また、Zehitomoはセールスチームの人員も増やし、プロとのコミュニケーションも強化していくという。「このビジネスモデルへの理解度はまだまだ足りない。(約1年前と比べて)数字の面ではあらゆる指標が10倍になったけれど、理解度は10倍にはなっていない。今年は、プロがどのようにみずからをPRするかを一緒に考えるコンサル的なことも含め、彼らとのコミュニケーション強化をテーマにしたい」(フィッシャー氏)

介護施設探しを時短&最適化、介護・福祉の専門家が作った「KURASERU」運営が5000万円を資金調達

写真左端:500 Startups Japan代表 James Riney氏、左から3人目:KURASERU代表取締役CEO 川原大樹氏、4人目:取締役COO 平山流石氏

医療ソーシャルワーカーという職業をご存じだろうか。病院や診療所などの医療機関で、患者や家族の抱える経済的・身体的・社会的な問題に対し、社会福祉の立場から解決や調整をサポートする専門職だ。

医療ソーシャルワーカーの仕事は、療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助や患者の社会復帰の援助など、厚生労働省により6つの業務範囲が指針として示されている。そのうちの1つが「退院援助」である。

退院できることになっても「体が不自由になってすぐに元の生活に戻れない」、「自宅に帰っても自力で生活することができない」。そうした在宅療養が困難な患者や家族の相談に応じて、症状や状況に合った適切なリハビリ専門病院や介護施設、在宅療養支援事業所などを紹介するのも、医療ソーシャルワーカーの大切な業務となっている。

だが、医療・介護業界のコミュニケーションツールの主流は今でも電話やFAXがほとんど。高齢化が進み、介護施設の空床確保はますます厳しくなっているなかで、医療ソーシャルワーカーが患者に最適な施設を探すには、大変な労力がかかっていた。

KURASERU(クラセル)」は、そんな医療ソーシャルワーカーの介護施設探しを支援するマッチングサービスだ。サービスを運営するKURASERUは6月11日、500 Startups Japanを引受先とする第三者割当増資により、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

神戸市を拠点とするKURASERUの創業は2017年10月。代表取締役CEOの川原大樹氏は介護施設で介護職に従事した後、病院で医療ソーシャルワーカーに従事した介護・福祉のスペシャリストだ。IT業界数社で取締役・執行役員を歴任してきた取締役COOの平山流石氏とは大学時代の同級生。ITで医療介護の課題を解決したいとの思いから、ともに同社を立ち上げた。

在宅復帰が難しい患者に医療ソーシャルワーカーが介護施設を紹介するには、患者に合わせた看護・医療体制が整っているか、利用料金が患者や家族にとって経済面で適切か、といった多くの条件に沿った最適な施設を、少ない空床の中から選ぶ必要がある。

川原氏は、これまでの介護施設探しの状況を「どの施設が空いているかわからない状況で、空いている施設を探すために、60件電話をかけ続けるというようなことをやっていた」と話す。「医療ソーシャルワーカー、もしくは家族や患者の知識の中でしか介護施設を選べず、選択が属人的だった。本当にこれで良かったのか、悩んでいる姿も現場で数多く見ている」(川原氏)

一方、介護施設側も空床があれば早く患者を受け入れたいところだが、医療ソーシャルワーカーや家族からの連絡を待つしかなく、受け身の体勢しか取ることができなかった。営業するといっても病院へパンフレットを置くとか、空床状況をFAXで流すといった、レガシーな手法が大勢を占めている。

KURASERUでは、医療ソーシャルワーカーがエリア、月額利用金額、医療処置の範囲など、在宅復帰が難しい患者のニーズをヒアリングして情報を打ち込むと、空いている最適な介護施設情報をリアルタイムで検索することができる。このためスムーズな退院調整が可能となる。

また、医療ソーシャルワーカーが患者の医療情報なども入力して利用するので、退院期限管理や退院患者のデータ管理もKURASERU内で行うことができ、病院からのニーズが高まっているという。

介護施設のほうは、施設情報や空床状況をKURASERUに登録。病院の退院予定者リストを個人情報が判定できないレベルで閲覧できるため、施設から病院へ入所のオファーを出すことも可能となっている。

KURASERUは神戸市が主催するスタートアップコンテスト「KOBE Global Startup Gateway」の第5期に採択され、神戸市アクセラレーションプログラムにも参加。2018年1月のローンチ以降、神戸市内の46の病院と128の介護施設が利用しており、KURASERUを通して介護施設の入所を検討した患者は50名を超えたそうだ。

ローンチ後しばらくは、介護施設から紹介費用を受け取る課金モデルを採っていたKURASERUは、5月から病院にも施設側にもすべて無料でサービスを提供するようになった。

川原氏は「いまKURASERUの中で、病院と介護施設との間にコミュニケーションが生まれ、医療情報が集まっている。ここにコアな医療情報が集まり、共有できれば、より多くの病院や施設が参加して、さらに医療情報やコミュニケーションを生んでいくだろう」として「課金モデルから要介護に関する情報のプラットフォーム化へ方向転換した」と説明する。

「チャレンジングだが、高齢化社会が大きな問題となっている中で、医療、介護の状況を大きく変えるには、これぐらいの思い切りが必要だと考えた」(川原氏)

現在は神戸の介護施設を対象にサービスを提供するが、ゆくゆくは「病院・介護施設・在宅療養支援事業所をつなぐ医療情報のプラットフォーム」として世界を目指すというKURASERU。「まずは神戸でモデルケースを作る」と川原氏は述べている。エリア限定でサービスを磨いた後、1年以内に神戸で培ったモデルを6都市へ拡大、2年以内に全国への展開を目指す。

「介護施設の空床率は7%と言われていて、都市部では特に空いていないところが多い。しかし、このサービスでそれを埋めることができると考えている」(川原氏)

今回の調達資金は開発の強化、人材確保に充てる。「課金モデルからプラットフォームモデルに転換したことで、登録のスピードは上がるだろう。これからはアクティブユーザーを増やすために、時間とコストをかけてシステムづくりを進めていきたい」と川原氏は言う。

「ITにもいろいろな分野があるが、社会問題としての高齢化や社会保障を扱うKURASERUは、ソーシャルインパクトがある事業としては、やりがいがある、壮大な分野。そういうところに興味がある人に来てほしいし、我々と組んでほしい」(川原氏)

飲食店の経営をデジタル化し、ECのように効果測定できる環境へ——「favy」が5億円を調達

favyの役員と株主一同。写真中央が代表取締役社長の髙梨巧氏

「どうやって飲食店というビジネスとデジタルを融合していくか、『飲食店の経営のデジタル化』をテーマに事業を進めてきた。特に正確な経営判断に必要なデータ基盤を作るというのは創業時から決めていたこと。ようやく、やりたかったことの本丸の領域に入っていける段階になった」——favy代表取締役社長の髙梨巧氏は、同社の現状についてそう話す。

グルメメディアや飲食店向けツールなど、食の領域で複数の事業を展開してきたfavy。同社は6月11日、Draper Nexus Ventures、アプリコット・ベンチャーズ、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫の資本性ローンに基づく融資により、総額約5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

favyでは調達した資金をもとに新規事業となる飲食店向けMA(マーケティング・オートメーション)ツールの開発のほか、グルメメディア「favy」やサービスEC事業「ReDINE」 の拡充に向けて組織体制を強化する。

同社は2017年3月に環境エネルギー投資、サイバーエージェント・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家より総額約3.3億円を、2016年4月にみずほキャピタルとサイバーエージェント・ベンチャーズから総額1億円を調達している。

飲食店がデータを収集し、有効活用できるシステムを作る

favyはちょっと変わったスタートアップかもしれない。

グルメ領域のメディアや飲食店向けのサイト作成ツール「favyページ」など複数のWebサービスを展開する一方で、「飲食店ABテスト」というリサーチサービスを作ったと思いきや、完全会員制の焼肉屋定額制のコーヒースタンドなど、新しいモデルの飲食店を立ち上げたりもしている。

もちろん各取り組みごとに狙いや役割はあるのだろうけど、創業時から髙梨氏がやりたかったことは変わらないという。それがこれから始める飲食店のMAツールも含め、冒頭で紹介した「飲食店の経営のデジタル化」の実現であり、そのために不可欠な基盤作りだ。

「レジの情報や予約の情報も有用だが、多くの飲食店にとってそれだけでは基盤としては物足りないと考えていた。売り上げが増えたとしても『それがどんな顧客なのか、何の影響で来店したのか』と言ったことがわからなければ次に繋がらない。何に投資をしたらどれだけのリターンがあったのか、きちんと効果測定できるようなデータとシステムが必要だ」(髙梨氏)

たとえばfavyが運営する焼肉屋「29ON(ニクオン)」では完全会員制とすることで、1人あたりの来店率やLTV(顧客生涯価値 : 1人の顧客が生涯に渡ってどれくらいの利益をもたらすかを算出した数値)がわかる。これによって「飲食店でも健康食品や単品通販と同じようなマーケティング手法が使える」(高梨氏)という。

「自社店舗で試すうちに必要なデータをトラッキングさえできれば、それを活用することで売り上げを伸ばしていけるという手応えをつかめた。さらに言えば、どのようなデータをトラッキングするべきか、どういった形でデータが取れれば使いやすいかもわかってきている。これらの仕組みを他の飲食店でも使えるようにシステム化したのが、飲食店向けのMAツールだ」(髙梨氏)

高梨氏はもともとネット広告代理店のアイレップ出身。同社ではSEO、SEM分野の立ち上げを担っていた。「Google アナリティクスの登場でWebサイトの効果測定や改善が簡単になった」ように、飲食店にも同様の仕組みが必要だという。

月間閲覧者6000万人超えのメディアfavyと連動

現在開発を進めるMAツール(飲食店向けには顧客管理ツールと紹介しているそう)は、favyの直営店で約1年前からテストを重ねてきたもの。2018年夏頃のリリースを目処に、5月にはテスト版をリリースしている。

開発中のMAツール。画像はテスト版のTOP画面

このツールでは顧客の予約経路やグルメメディアfavy内における行動データなどから、マーケティングに必要な情報を自動で収集、分析。店舗への来店誘導、集客施策に活かせるほか、予約管理や顧客管理に関する業務を効率化する機能、無断キャンセルを防ぐための前日確認を自動化する機能なども備える。

興味深いのは月間閲覧者が6000万人を超えるfavyで蓄積されたデータと連携している点だろうか。

高梨氏の話では、このデータを活用することで「来店したことのないユーザーも含めて、お店の見込み客が見える化できる」という。たとえばラーメン屋の記事に興味を持っているユーザーのデータとエリアのデータを組み合わせ、「新宿のラーメン屋だと、これくらいの見込み客がいる」と把握できるようなイメージだ。

テスト版の顧客管理画面

もちろん飲食店向けのMAツールと言っているように、来店頻度が下がっているユーザーへ広告やはがきを自動で送ったりなど、見込み客に対する集客施策を自動化することもできる。

飲食店向けのSaaSとしてさらなる進化を

今回の資金調達を踏まえ、favyでは組織体制を強化しMAツールや既存事業の開発、機能拡充を進める方針。MAツールに関しては他サービスとの連携にも取り組んでいくという。

また高梨氏によると、今後目指しているのは飲食店向けSaaSとしての展開。詳しくはまだ言えないとのことだが「集客の機能をより掘り下げていく深さの部分と、それ以外の領域へラインナップを広げていく幅の部分」の2軸でサービスを拡張していく計画のようだ。

「飲食店の経営のデジタル化を通じてやりたいのは、飲食店が簡単にはつぶれない世界を作ること。『デジタル化』というのは、広告手段が増えるとか、効果測定ができるというだけでなく、考え方がアップデートされるという意味もある。自社でも直営店を経営していて飲食店の仕組みとデジタルなマインドを融合することの大変さを痛感しているが、(favyの事業を通じて)飲食店の経営をサポートしていきたい」(高梨氏)

アリババ傘下の金融Ant、海外開拓へ140億ドル資金調達

モバイル決済サービスAlipayを展開するアリババグループの金融サービス会社Ant Financialは、投資ラウンドシリーズCを締め切り、累計140億ドルもの資金を調達したことを明らかにした。

この巨額調達に関しては、いくつかのメディアがAntを取り上げるなど、この1、2カ月噂が飛び交っていた。それはIPOと関連づけられていて、少なくとも90億ドルの資金を調達し、評価額は1000億ドル超となるというものだった。しかし、実際の数字はそれを上回るものだった。

今回の資金は、地元の投資家による米国ドルと中国人民元での分割発行だ。投資家には、シンガポールの政府系ソブリンファンドであるGICとTemasek、マレーシア政府系ソブリンファンドのKhazanah Nasional Berhad、米国のプライベートエクイティWarburg Pincus、カナダ年金基金投資委員会、Silver Lake and General Atlanticが含まれる。

Antは調達した資金でグローバル展開し(すでに進出している中国外マーケットでのプレゼンスを高める)、テクノロジーの開発や雇用にも注入する。

Ant FinancialのCEOで経営執行役会長のEric Jingは「私たちのビジョンとミッションを共有する投資家を迎えられることを嬉しく思う。今後、我々は共に包括的な金融サービスをグローバルで展開し、平等な機会を世界にもたらす。我々は過去14年間、人々の暮らしや小規模事業者に貢献してきた。そのことを誇りに思うし、その事実は我々を勇気付けるものだ」とコメントした。

Antは、アリババが2014年に米国で大規模な新規株式公開をする直前にスピンオフした企業で、アリババはAntに出資していない。しかしアリババは最近、Antの株式の33%を取得している。

Antは長い間、株式公開すると予想されてきた。2016年に45億ドルを調達した時には、株式公開を検討していると報道されたが、その代わり資本金を600億ドルにすることを選択した。

今回もそれに似ているが、額が大きい。Bloombergの報道によると、今回のシリーズCラウンドで企業価値を1000億ドル増やした(Antは企業価値についてコメントしていない)。このような飛躍を成し遂げるのに、Antは過去2年で一体どんなことをしたのだろう。

Antは、5億人の顧客に、デジタルバンキングや投資サービスなどを行うAlipayを提供していており、中国における主要なフィンテック企業の1社だ。しかし近年は海外で同様のビジネスの展開を始めている。特に、インド、タイ、韓国、インドネシア、香港、マレーシア、フィリピン、パキスタン、バングラデシュといったアジアの国々で投資を行ったり、ジョイントベンチャーを立ち上げたり、そして新事業を展開したりしている。

しかしながら、米国で企てたMoneyGramの買収は、米国政府がこの12億ドルの案件を阻止し、失敗に終わっている。

経営面に目を向けると、Antは昨年14億ドルの利益を計上したとされる。株式を公開すればこの数字はさらに大きなものとなることは明らかだ。

米国での買収は成功しなかったにもかかわらず、今日のAntの発表によると同社が抱える顧客はグローバルで8億7000万人にものぼるという。しかし、中国以外でのビジネスはまだ初期段階にあり、現時点では、私はこの数字については半信半疑だ。しかしながら、今後、中国と同じくらいの規模のビジネスをアジア各国で展開するというのは大いにあり得る。世界のほとんどのIPOを上回るほどの大規模な資金調達を1回のラウンドで行ったことで、海外展開のプランは強固なものとなる。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

クルマを買えない世界の20億人を救う、新たな金融の仕組みーーGMSが11億円を調達

自動車の遠隔起動デバイスを活用したプラットフォームを通じて、これまで金融にアクセスできなかった人たちに向けた新たな金融サービスを提供しているGlobal Mobility Service(GMS)。同社は6月8日、イオンファイナンシャルサービスなど10社を超える東証一部上場企業から11億円を調達したことを明らかにした。

今回GMSに出資した企業は次の通り。

  • イオンフィナンシャルサービス
  • 川崎重工
  • 凸版印刷
  • 大日本印刷
  • 双日
  • G-7 ホールディングス
  • バイテックグローバルエレクトロニクス
  • そのほか非公開の一部上場企業

各企業とは資本業務提携を締結し、事業の拡大へ向けて取り組んでいくという。なお同社は2017年4月にもソフトバンク、住友商事、デンソー、クレディセゾン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、SBI インベストメントなどから総額約7億円を、2015年8月にもSBI インベストメントから3億円を調達している。

与信審査の概念を変える新たなファイナンスプラットフォーム

GMSが取り組んでいるのは、既存の与信審査の仕組みでは自動車を手に入れることのできない人達を救うためのデバイスとプラットフォームの開発だ。

同社代表取締役の中島徳至氏によると「リースやローンといったモビリティファナンスが利用できない人が世界に20億人いる」とのこと。特に新興国では劣化した車両を長年使い回すことにもつながり、騒音や排気ガスといった新たな問題の原因にもなっているという。

前回の調達時にも紹介したとおり、GMSでは自動車を遠隔から起動制御できる車載IoTデバイス「MCCS」を開発。月額の料金支払いがないユーザーの自動車を遠隔で停止、位置情報を特定できる手段を作ることで、従来とは異なる新しい金融の仕組みを構築した。

これまでの与信審査を省略することで、より多くの人が自動車を手に入れるチャンスを掴めるようになる。

中島氏によると、現在GMSのサービスは2000台を超える車で利用されていて、毎月導入台数が200台ペースで増えているとのこと。中心となっているのはフィリピンの三輪タクシーで、日本やカンボジアでもすでに事業を展開している。

最近フィリピンではGMSの仕組みを利用して三輪タクシーを手に入れたユーザーが、1回目のローンを完済した上で、次は自動車を入手するべく2回目のローンを組む事例も増えているそう。新たなエコシステムが生まれてきているだけでなく、三輪タクシーから車に変わることで金額も一桁変わるため、ビジネス上のインパクトも大きい。

日本でも年間約190万人がローンやリースの審査に通過できないと言われている。従来は金融機関が保証会社を通じて審査をするのが一般的だったが、GMSの仕組みを使って自分たちでやってしまおうという企業もでてきた。

すでに西京銀行やファイナンシャルドゥとは業務提携を締結済み。今後も金融機関やメーカー系のディーラーと連携を深めていくという。

「今までは台数を重視するというよりも『この仕組みでビジネスが成り立つのか、そもそもユーザーからニーズがあるのか』を検証しながら関係者とのパートナーシップを進めてきた。結果として新興国のファイナンスではデフォルト率が15〜20%が一般的と言われている中で、(GMSでは)1%以内に押さえることができている」(中島氏)

事業会社10数社とタッグ

これまでは技術開発と市場開発に加え、金融機関からの理解を得るために話し合いや実証実験に時間を費やし、少しずつ体制が整ってきたという。たとえば今回出資しているイオンファイナンシャルサービスとは実証実験からスタート。手応えがあったため資本業務提携に繋がった。

同社以外にも今回のラウンドには東証一部に上場する各業界の事業会社が10社以上参加している。GMSによると「国内Mobility、IoT、FinTech の各業界における未上場ベンチャー企業の中では最多」とのことで、各社とは業務提携を締結し事業を推進していく方針だ。

「たとえば初めのベンチャー投資となる川崎重工は、GMSの中で最も取り扱いの多いバイクを開発している企業。今後はタッグを組むことでさらにサービスの価値を向上させていきたい。また当社の事業において『セキュリティや個人認証』が大きな鍵となる。凸版印刷や大日本印刷とはお互いのナレッジやリソースを活用しながらサービスを強化していく」(中島)

今回調達した資金をもとに、GMSでは組織体制を強化しプラットフォームの機能拡充とともに、ASEAN各国での事業開発を加速する計画。直近ではインドネシアでの展開を予定しているという。

「GMSが取り組んでいるのは『Financial Inclusion(金融包摂)』と呼ばれる、これまで金融にアクセスできなかった人たちをサポートする仕組み作り。その点では、導入台数を増やすというよりは、どれだけの雇用を創出していけるかを大事にている。20億人がローンを組めないという中で、まずは1億人の雇用を生み出せるようなサービスを作っていきたい」(中島氏)

クリエイターが創作活動で評価される仕組みづくりへ、イラストやマンガ制作のフーモアが2.6億円を調達

クラウドソーシングの仕組みを活用して、ゲームイラストやマンガなどのコンテンツ制作を行うフーモア。同社は6月5日、みらい創造機構を含む6社と個人投資家3名を引受先とする第三者割当増資に加え、日本政策金融公庫からの融資により総額で2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドに参加した投資家陣は以下の通り。

  • みらい創造機構
  • ジュピターテレコム
  • iSGS インベストメントワークス
  • 一般社団法人 CiP 協議会
  • DG インキュベーション(既存投資家)
  • DK Gate(既存投資家)
  • 個人投資家3名

今回の調達を受けてフーモアでは組織体制を強化しクリエイタープラットフォームの拡大を目指すほか、映像化やゲームなどメディア展開を前提としたコンテンツの原作開発を進める方針だ。

なおフーモアは2011年の設立で、2015年12月にもDG インキュベーションとDK Gateから2億円を調達している。

クリエイターが創作活動を通じて評価されるプラットフォームへ

冒頭でも触れた通り、フーモアではクラウドソーシングを通じてゲーム向けのイラストやプロモーション用のマンガコンテンツを制作してきた。登録クリエイター数は国内外で6000名以上。制作工程を分業するスキームを活用し、手がけたコンテンツは累計で4000〜5000本に及ぶ。

フーモアではこのクリエイターネットワークとノウハウを生かし、クリエイターが世界中で創作活動を通じて評価されるプラットフォームの実現に向けて「クリエイターグローバルプラットフォーム構築の拡大」を中長期の戦略に掲げている。今回の調達もこの戦略をさらに推進するためのものだ。

「これまではクリエイターがクリエイターとしてだけで食べていく世界観というのは非常に限定的だった。我々が実現したいのは、あくまでクリエイターがクリエイターとしてしっかりと社会的に評価されることだ」(フーモア取締役COOの松田崇義氏)

松田氏の話では普段の仕事を提供するのはもちろん「ライフイベントで融資ができるようにしたり、手に職をつけるために雇用先を斡旋したり、アートディレクションという仕事をしっかりと教育する支援をしたりといったように、クリエイターのあらゆる活動を支援するプラットフォーム」をグローバルで目指していくという。

またアニメや映画などの映像化、ゲーム化、商品化などのメディア展開を目的としたコンテンツの原作開発にも力を入れる。これについては先日TechCrunchでも紹介した通り、ジュピターテレコムと業務提携を締結した。

今後は同社の100%子会社であるアスミック・エースと共同で電子コミックやライトノベル、ノベルアプリなどを制作。自社で管理できるIPを保有しマネタイズできる仕組みを構築する計画だ。

フーモア代表取締役の芝辻幹也氏は「今回の資金調達を皮切りに、クリエイターのグローバルエコシステムを構築し、エンターテインメントを前進させていきたい」とコメントしている。

フーモア代表取締役の芝辻 幹也氏

日本のよいものを定期購入でアジアへ——越境EC支援のアジアンブリッジが3億円を資金調達

日本の商品を台湾・ASEAN諸国に販売したい企業へ越境EC支援を行うアジアンブリッジは6月5日、ニッセイ・キャピタルと事業会社1社から総額3億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。今回の資金調達は同社にとって外部からの初めての調達で、シリーズAラウンドにあたる。

アジアンブリッジが提供するサービスは大きく分けて2つだ。1つは日本企業が通信販売で海外展開する際の越境EC支援で、台湾をテスト拠点とした事業が軌道に乗り、現在の利用企業は約50社。資金調達を機にASEAN各国への事業拡大を目指すという。

もう1つはクラウド型の現地法人通販システム「bamb(バンブ)」だ。bambはいわゆる「カート」をベースにした通販システムとは異なり、在庫管理と会計処理をベースとするシステムで、通販事業を行う国に会社を設立することなく、その国に在庫を置いて通信販売ができるというものだ。

アジアンブリッジ代表取締役社長の阪根嘉苗氏によれば「現地に在庫を置かずに海外向け通販事業をやろうとすると制限が多い」という。「アジアでは通信販売の決済方法は、まだまだ代金引換が一般的だが、EMS(国際郵便)を利用した発送では代引きを選択することができない。せっかくのいい商品でも買える人が少なくなってしまう」(阪根氏)

「では現地にパートナー企業を見つけて商品を仕入れてもらおう」となっても、今度は商品の買い取りリスクを恐れてパートナーがなかなか見つからないのが現状だと阪根氏は言う。「そこに課題を感じ、日本の海外通販進出が進まない実情を見て、bambを2年前にリリースした」(阪根氏)

bambでは、商品を販売したい企業の商品を現地に置き、委託で販売する形を取っている。現地からの発送となるため、代引きでの販売も可能となる。現地で発信する広告のローカライズや許認可、申請などもアジアンブリッジがサポートすることで、日本企業の海外通販進出のハードル、リスクを下げている。

またアジアンブリッジでは、アジアではまだ浸透していないが日本では当たり前となっているサブスクリプション(定期購入)の手法を、越境ECでも提供できるよう支援を行っている。定期購入の仕組みがアジアで浸透していない理由について阪根氏は「リピート通販を成立させるには、日本流の丁寧なフォローが必要だから」と話している。

「定期購入はメールや電話、手紙などでコミュニケーションをどう取るかがカギ。これをサブスクリプションの概念がない現地の企業で対応するのは難しい。でもアジアでは、そういったきめ細かいフォローをしてもらうのがうれしくない人はいないはず。日本のよいものを、長く使ってもらえるように当社でサポートしていく」(阪根氏)

とはいえ、定期購入というものがどういう仕組みか知らない人々に、そのメリットを伝えるのは簡単ではない、と阪根氏は言う。

「ウェブでも大きくわかりやすく説明を書くようにしているけれども、2回目の商品が届いたときに『クレジットカードが不正利用された』とか『詐欺会社だ』といったクレームが来ることも。苦労はある。でもウェブやメール、手紙などでフォローすることで、徐々にサブスクリプションのスタイルは浸透してきている」(阪根氏)

阪根氏は台湾出身で日本育ち。第二の故郷・日本のものが大好きで「日本と台湾、そしてアジアとの架け橋になって日本のよいものを届けたい」と6年在籍したリクルートを退職し、2010年にアジアンブリッジを設立した。

「今はスキンケア用品やサプリメントなどを定期購入で販売する企業を中心にサービスを提供しているが、定期的に届いてうれしいものは、ほかにも日本にたくさんある。地方特産のおいしいものが月替わりで届くとか、地酒が順番に届くといった頒布会形式の通販もサポートしていきたい。日本に来なくても、日本のものを手に取ってもらえるようになればいいと思う」(阪根氏)

アジアンブリッジでは調達資金により、現在ベータ版で提供しているbambの機能強化を行い、台湾以外の拠点へも展開していく。来月にもベトナム、シンガポール、マレーシア、タイへパイロット展開を行い、ブラッシュアップを図る。2年以内にASEAN全域へのサービス提供を目指す。

アジアンブリッジ代表取締役社長 阪根嘉苗氏

アメリカ農務省に海軍も、3万社が使う日本のVRアプリ作成ツール「InstaVR」が5.2億円を調達

VRコンテンツの制作・配信・分析プラットフォーム「InstaVR」を提供するInstaVR。同社は6月4日、YJキャピタルなど日米のVC複数社を引受先とした第三者割当増資により総額5.2億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドに参加した投資家陣は以下の通り。

  • YJキャピタル(リード投資家)
  • 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • みずほキャピタル
  • グリーベンチャーズ
  • コロプラネクスト(Colopl VR Fund)
  • The Venture Reality Fund

上記VCより、グリーベンチャーズのジェネラルパートナーである堤達生氏、YJキャピタル取締役副社長の戸祭陽介氏がInstaVRの社外取締役に就任する。

同社では調達した資金をもとに開発体制および事業体制を強化し、人材育成VRプラットフォームを中心にさまざまな事業用途に特化したプラットフォームの開発を進める方針。また機械学習や人工知能の研究開発を推進し、蓄積してきた視聴データの活用にも力を入れていく予定だ。

InstaVRは2015年11月の設立。2016年8月にもグリーベンチャーズとColopl VR Fundから約2億円を調達している。

世界で3万社が利用、海外売上比率が9割

InstaVRはビジネスの現場でVRコンテンツを活用したい事業者向けのプラットフォームだ。プログラミングなど専門知識は不要で、ブラウザ上からVRアプリをスピーディーに作成できる。

さまざまな種類のVR動画、画像フォーマットに対応するVR再生プレイヤーを自社で開発。コンテンツは幅広いVRデバイスへ出力可能で、配信方式もアプリへの埋め込み、クラウドやイントラネットからのダウンロード、ストリーミングなど柔軟性に優れる。

世界最大のサーフィンリーグであるワールド・サーフ・リーグ (WSL)では1名の担当者がInstaVRを活用。2週間でiOS、Android、Daydream、Gear VR、Oculus Riftなどの主要なVRヘッドセットに、自社VRアプリを配信した事例もあるそうだ。

現在までに世界140ヶ国、3万社で導入。トヨタやサンリオ、エルメスを始めとした大企業のほか、少し変わったところではアメリカ合衆国農務省やアメリカ合衆国海軍、スタンフォード大学、イギリス政府、国連なども含まれる。海外での利用が多く、売上の約90%が海外企業によるものだ。

当初は不動産の内見や観光案内などの目的で使われることが多かったそうだが、現在は配信されたコンテンツも約20万本となり、利用用途も広がってきた。特にInstaVR代表取締役の芳賀洋行氏も意外だったというのが「90%がマーケットプレイスを利用せず、社内配布している」こと。

中でも直近では人材育成や人材採用用途での利用が増えてきているという。

人材育成に特化したプラットフォームの提供を開始

そのような背景も受けて、InstaVRでは人材育成VRプラットフォーム「InstaVRセントラル」の提供を始めた。これは簡単にいうと「OJTや職場体験をVR化」するようなイメージだ。

最大の特徴は専門知識や、実際に撮影した時間の10倍〜20倍の時間が必要となる「VR撮影後の現像工程」を不要にしたこと。InstaVRの独自再生プレイヤーを機能拡張することによって、ユーザーが360度カメラで撮影したデータをアップロードしさえすれば、自動でVRコンテンツが生成されるようになった。

「(以前から提供していたInstaVR本体でも)プログラミングスキルは不要で、ドラッグアンドドロップなどで直感的に作れるようにしていた。そのため十分簡単だとは思っていたが、それでもITになじみのない人からすれば難しいと言われたこともある。その作業を自動化し、ボタンをカチカチ押すだけでVRコンテンツができるようになった」(芳賀氏)

僕も実際にデモを見せてもらったのだけど、承認ボタンを押すような感覚で、順を追ってボタンをただ押すだけ。UIもエディタという感じはなく、かなりシンプル。Googleのトップページのようなイメージに近く、中央にボタンのみが設置されているような設計だった。

従来コストがかかっていた編集作業の自動化に加えて、InstaVRでは導入企業の担当者が自身で撮影できるように機材のマニュアルや講習を提供。専門のスタッフを派遣せずに済むようなフローを構築している。

これらによって「専門の制作会社に頼むと数百万円かかっていたようなVRコンテンツを、月額30万円から定額で作れるようになる」(芳賀氏)という

とはいえ、そもそもVRコンテンツにする必要性があるのか疑問に思う読者もいるはずだ。

芳賀氏自身も当初はEラーニングで十分ではないかと思っていたそうだが「VRは没入感がすごく、自身が現場を体験しているような感覚になれるのが大きい。業務が完全にマニュアル化されていない複雑な業務や、実地訓練を必要とするものに向いている。熟練従業員の技術を実際に体験するといった使い方もできる」という。

InstaVRセントラルは2017年より一部の企業向けに先行して導入済み。アメリカ合衆国農務省では、食肉加工工場のライン作業の訓練をすべてVR化したところ、訓練時間が1/3に短縮。年間研修費用が1/5に削減されるほか、離職率も10%以上低下できたそうだ。

すでに国内においても大手企業から中小ベンチャーまで導入実績があるが、今後は調達した資金も活用して組織体制を強化し、InstaVRセントラルを本格的に広げる計画。

またInstaVRではこれまで約1億再生分の視線データ、視野内の物体を人口知能によって認識した100億個超のタグデータを蓄積している。これらのデータを事業に活用するべく、人工知能の研究開発にも力を入れる方針だ。