クラウド型マニュアル作成「Teachme Biz」のスタディストがセールスフォースから資金調達

スマホで写真を選んで説明文を追加するだけで業務マニュアルが作成できる、クラウド型マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」を提供するスタディストは5月9日、Salesforce Venturesを引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。金額は非公開だが、同社のホームページにある資本金を見たところ、2016年2月から現時点で2億1043万円から3億2543万円へと1.1億円ほど増えていることから、約1.1億円ほどの資金調達だったのではないかと思われる。

同社は2015年12月に日本ベンチャーキャピタル三菱UFJキャピタルを引受先とした総額1億5000万円の資金調達を実施している。今回で2度目の資金調達を実施したことになる。

調達した資金は新機能の開発、営業体制の強化、海外展開に充てるとしている。また、セールスフォース・ドットコムが提供するクラウドCRM・SFAサービス「Salesforce Sales Cloud」とのシステム連携も予定しているとのこと。

具体的には、Salesforce Sales CloudのユーザーアカウントでTeachme Bizが利用できるほか、Teachme Bizで作成したマニュアルをSalesforce Sales Cloud内でシームレスに表示、閲覧できるようになるという。また、Salesforce Sales Cloudには営業フェーズの管理および、フェーズごとに対応のアドバイスやガイダンスをテキストで表示するセールスパス機能があったが、画像や動画を混じえて表示することも可能になるそうだ。

主な連携の内容

Teachme Bizの導入企業数は1400社(2017年5月時点)となっている。また、2015年12月に発表した新サービス「ワンストップパッケージ」だが、スタディスト広報部によると、「具体的な数値は公表できないが、導入企業数は順調に増えている」そうだ。

リクルートでAI研究所を立ち上げた石山氏が退職して取り組むのは「介護xAI」のスタートアップ

リクルートでAI研究機関「RIT(Recruit Institute of Technology)」を立ち上げたことで知られる石山洸氏が2017年3月に退職し、ベンチャー企業のデジタルセンセーションにジョインしたことをTechCrunch Japanの取材の中で明らかにした。新たに取り組むのは認知症ケアの領域でAIを活用する、という課題だ。

デジタルセンセーションは2004年に浜松で設立された社員10人ほどの静岡大学発ベンチャー企業で、これまでは自己資本でR&Dや受託開発を中心としたビジネスを展開してきた。今回、石山氏の移籍に伴い、初めて約1億円の資金調達を実施。3年ほど前からリソースを集中させている介護メソッドにAIを適用していくという領域へのフォーカスを決め、既存のWebサイト制作やシステム開発の受託業務は畳んだという。

デジタルセンセーションが外部資本を入れるのは初めてのことで、これがシードラウンドということになる。この資金調達ラウンドをリードしたVCはD4VbetaCatalystの2社。ほかに同じくVCのMistletoeや個人投資家も本ラウンドに参加している。石山氏自身もデジタルセンセーションへの参画前に株を購入しているという。

オッサン2人でやるとグッと来るが介護技法「ユマニチュード」はあたたかい

石山氏は東工大の大学院生だった頃から一貫して、「AIを社会課題に適用すること」をテーマにしてきた。ただ、研究よりも実践をと社会との接点の多いリクルートに入社。「リクルートは結婚、就職、転職、引っ越しなど人生の節目節目で重要なところに関わっていて、関連する資産を持っています」(石山氏)と、AI適用のポテンシャルの大きさを指摘する。そのリクルートを離れた経緯については、「社会課題は(リクルートが関わるところ以外にも)他にももっとたくさんあります。11年勤めたリクルートではデジタルシフトも完成してAI研究所のポテンシャルも作れた」と話している。

退職してさまざまな社会課題を検討している中で「これだ」と決めたのがデジタルセンセーションでの「介護AI」という領域だ。

デジタルセンセーションが取り組むのは「ユマニチュード」と呼ばれる認知症ケアの現場で使われる方法論、もしくは技法の普及だ。40年ほど前にフランスで生まれたユマニチュードは「見る」「触れる」「話す」「立つ」の4つを軸として、約800の技法を含む体系となっているという。

具体的にユマニチュードというのはどういうものなのか?

「ちょっとやってみましょうか」

にこやかに微笑む石山氏に言われるまま、取材者であるぼくはユマニチュードで接してもらった。ぐぐっとパーソナルスペースに踏み込み、じっとこちらを見つめたまま、ゆっくりと手を握ってくる石山氏。至近距離での見つめ合いや触れ合いを含むので、正直オッサン同士ではキツイものがあるが、とても「あったかい感じ」がしたのも事実。子どもの頃の仲良し同士って、こんな感じで触れ合っていたよなと懐かしい感じがしたのだった。

どういうことかというと、認知症患者は「認知」の能力が低下しているので、通常の接し方では「介護拒否」が起こる。介護者が近づいたことを認識しないため、オムツを交換しますよといって普通に近寄っていったのでは、認知症患者はパニックになる。認知症患者にしてみれば「いきなり誰かにズボンを脱がされた!」という認識になるからだ。

こうした認識の齟齬を防ぐために、ユマニチュードでは必ず真正面から20センチ以内で相手の瞳を捉え続けて、いま介護者が何をしているのかを声でナレーションしながら動く、ということをやるそうだ。相手の身体に触れるときには、敏感すぎない背中をなでる。というように、認知能力の低下した人との「人間らしい」接し方をするための方法論が体系化されているということだ。

介護の現場では患者が驚いて拒絶するということが起こりがち。ユマニチュードを取り入れることで被介護者の「拒否」が有意に下がり、これは介護するほうの労力や心労の低減にも有効なのだという(ユマニチュードの効果を定量的に検証した研究もある)。

ユマニチュードの研修の様子(写真提供:デジタルセンセーション)

誰もが介護の当事者という時代、ユマニチュードを一般家庭に

デジタルセンセーションではユマニチュードの普及も手がけていて、日本での実技指導や研修を行っている。このとき画像解析による実技指導の自動化が可能なのではないか、というのが今回資金調達を実施して「介護xAI」という目標を掲げた理由だ。例えば、介護のリハーサル動画から被介護者との目と目の距離が遠かったという指導は分かりやすいし、驚かせないために踏むべきステップを飛ばしたかどうかなども機械的に分かるようになる可能性がある。

「今はこうした研修は病院から導入が進んでいます。認知症患者は高齢者が多く、ほかの疾病も抱えていたりします。一方、病院はバーティカルに分かれています。今後ますます外科に来た人が認知症という状況は増えます。ところが認知症患者との接し方が分からずに看護ができないという問題が起きはじめているのです」

「最終的にはユマニチュードを一般家庭に提供できるようにしたいんです。過去50年間変化のなかった日本人の年齢別人口構成は現在大きく変わりつつある。2045年以降にまた均衡しますが、そのときには誰もが介護の当事者になっていく。だから、読み書き・そろばん・ユマニチュードというくらになればと思っています」

成長戦略としては、介護以外にもアナウンサーやアパレルの接客業など対人コミュニケーションを必要とする分野への応用も考えているという。「対人コミュニケーションの中では介護がいちばん難しい」(石山氏)からだ。

デジタルセンセーションには、コンピューターサイエンスの博士号とユマニチュードの資格の両方を持つ「おむつも替えられる天才プログラマー」がいて、いまはユマニチュードによる介護の状態空間を1000個に切ってみるなんていう分析をしているそう。実は「認知症情報学会」という学会設立の動きもあるのだそうだ。

日本発の国際物流のクラウドサービス「shippio」を手がけるサークルイン、500 Startupsほかから資金調達

個人輸入ではなく事業として、海外の良いものを安く輸入したい、あるいは日本の海外ウケするグッズを輸出したい、というときに案外ハードルとなるのが、船便・航空便の手配や貿易事務の煩雑さ。従来、こうした手続きや管理は、メールや電話、表計算ソフトを駆使して行われてきたが、慣れない言語での交渉や大量の貿易書類の管理が必要で、結構めんどうなものだ。その国際物流手配や管理などをWeb上で一括して行えるサービスが「shippio(シッピオ)」だ。

shippioを開発・提供するサークルインは5月8日、500 Startups JapanYJキャピタルEast Venturesを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は非公開だが数千万円規模と見られる。サークルインは2016年6月設立で、同年8月にアクセラレータープログラム「Code Republic」に採択されている。今回、YJキャピタル、East Venturesからは、Code Republic(プログラム採択企業は、一律でプレ1億円のバリュエーションで700万円の出資を受け入れる必要がある)に続く追加調達となる。

shippioで行えるのは、コンテナ船や航空貨物便などの見積もり・ブッキングといった物流手配や、専用のダッシュボードを使った輸送状況の確認・管理、貿易書類のクラウドでの作成・管理など。サークルイン代表取締役社長の佐藤孝徳氏によれば、当初は中堅規模の国際物流事業者や商社・メーカーの物流部門などを対象顧客として想定しているとのことだ。料金体系は月額課金を基本とするが、将来的に取り扱い件数が多くなった場合には、通関件数に応じた従量課金の追加も検討するという。shippioは現在ベータ版の事前登録を受付中で、正式公開は2017年6月中旬を予定している。

佐藤氏は今回の調達により、エンジニアの採用、プロダクトの強化を図ると話している。佐藤氏と、サークルイン共同創業者で代表取締役副社長の土屋氏は、三井物産の出身。「サプライチェーンの長さやプレーヤーが多いことなど、2人とも日本の物流の苦労についてはよく分かっているつもり」と佐藤氏は言う。「海外ではFlexportHavenといった、国際物流をテクノロジーで効率化するクラウドサービスがあるが、日本ではまだ海運・空運の課題をテクノロジーで解決するサービスはない。shippioはまずは、既存の国際物流の現場で大変な思いをしている人を助けるための業務支援からスタートしたい。ゆくゆくは、みんなが自由に貿易できるインフラを提供できればと思う」(佐藤氏)

(左からYJキャピタル 堀新一郎氏、East Ventures 衛藤バタラ氏、サークルイン土屋隆司氏、佐藤孝徳氏、500 Startups Japan 澤山陽平氏、James Riney氏)

ビデオ会議に最適なカメラを開発するHuddlyが2000万ドル調達

ビデオ会議用カメラの開発、そして映像からデータを収集する「コンピュータービジョン」プラットフォームを提供するノルウェーのHuddlyは米国時間26日、シリーズBで1000万ドルを調達したと発表した。これにより、同社の累計調達金額は2000万ドルになる。研究費として受け取った補助金300万ドルはこれに含まれていない。

Huddly Goと呼ばれる同社初のプロダクトは、ビデオ会議に最適な特徴を備えている。16メガピクセルで超ワイド型のレンズ、ダイナミックな光調節機能、そして”スマート”ズームなどだ。私が知るところでは、以前このプロダクトは中国でのみ生産していたが、現在ではノルウェー国内でも生産している。

「今後短い期間で考えると、シンプルに動作するカメラの市場には大きな可能性が秘められています」とHuddly CEOのThomas C. Holst氏は語る。「現状販売されているカメラでは、会議室のほとんどの部分を映し出すことができません。その部屋にいる全員を映すことができないカメラは便利とは程遠いものです。そして、それこそが私たちが解決しようとしている課題です。時には、部屋全体を映す必要がなくても、その時に注目すべき場所に視点を移したいこともあるでしょう。Huddlyは、非常に高性能なイメージセンサーとデジタルPTZ(パン・チルト・ズーム)によってそれを可能にしました」。

Huddlyによれば、同社が狙うターゲット顧客は3つに分けることができる。その1つ目は、リモートワーカーを多く抱え、ビデオ会議を頻繁に行う企業だ。そのような顧客が要求するのは、デスク上と会議室のそれぞれで行なわれるビデオ会議に最適で、柔軟かつコストパフォーマンスの高いソリューションだ。特に、フォーマルな会議室以外でもビデオ会議を行いたいという企業がこれに当てはまる。次に考えられるのが、個人のノートパソコンで大人数のビデオ会議をしたいという人々。そして最後のターゲットは、日常的にプレゼンテーションを行うが、同時にリモートワーカーも多く抱える企業だ(スタートアップを想像してみてほしい)。

オスロを拠点とするHuddlyの長期的な目標は、同社のプラットフォームにコンピュータービジョンと機械学習の機能を組み入れることだ。これにより、マネージャーが会議の映像から多くのビジュアル・フィードバックを得ることが可能になる。簡単に言えば、このソフトウェアは(ディープラーニングのアルゴリズムを使って)会議室内で何が起こっているのかを理解でき、それに対して何らかのアクションを起こすこともできるようになる。Huddlyはそのユースケースについて以下のように語っている:

例えば、部屋の状況(満室か?部屋の明かりは十分か?)や、部屋にいる人々の数(Huddlyのカメラは前方150度の範囲まで撮影可能。だから部屋にいる全員が映像に収まる)、会議への参加度、発言回数、発言内容、他のメンバー見せている”モノ”などを把握することができます。このような情報は、上層部が会議の様子を把握したり、意思決定をする際に重要になります。このようなユースケースこそ、Huddlyのカメラとソフトウェアプラットフォームがフィットする場所なのです。

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(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

AIが最適なプレゼントをオススメ――Tokenが250万ドルを調達

パーフェクトな贈り物ほど人の心を幸せにするものはない。だからこそ、その人に合わない贈り物をしてしまうと(それを探すのにどれほどの時間をかけたとしても)、とても嫌な気持ちになってしまうのも自然なこと。

そこでTokenの出番だ。

Human Venturesのスタートアップ・スタジオから本日ローンチしたばかりのTokenは、AIを活用してプレゼント選びをより簡単にすることを目指すスタートアップだ。

詳しい使い方は以下の通り:

アプリをダウンロードしたユーザーは、いくつかの情報を入力することになる。プレゼントを受けとる人の趣向、その人との関係、プレゼントを渡す時のシチュエーション、予算などだ。そして、その情報をもとにTokenが1000以上のブランドから販売されている何千ものプロダクトをフィルタリングする。

まず機械学習によっていくつかの候補が絞りこまれたあと、人間が最終的に取捨選択を行う。そして最終的に残った商品をユーザーにオススメするというわけだ。

しかし、Tokenの最大の特徴は、ユーザーにエンドトゥエンドのサービスを提供しているという点だ。プレゼントを選択したユーザーは、外部サイトを利用することなしにアプリ内で購入を完了することができる。プレゼントの包装や配送サービスもあるし、手書きのメッセージを一緒に贈ることもできる。

プレゼントのリコメンデーション機能は無料で利用することができる。Tokenの収益源は、ユーザーがプラットフォームを通して商品を購入した場合に発生する手数料だ。また、同社はその商品を販売するブランドからも手数料を受け取っている。

プレゼントのリコメンデーション機能を提供するスタートアップはいくつか存在するが、プラットフォーム上で購入まで行えるサービスはこれまで無かった。

CEOのJonathan Jarvis氏によれば、Tokenの強みは独自の機械学習アルゴリズムだという。

「このタイプのテクノロジーは過去には存在しませんでした。思いやりがあり、かつクリエイティブなこのテクノロジーによって、私たちは何百万人ものユーザーを獲得することができるでしょう」とJarvis氏は語る。「従来のプレゼント選びの過程には、いくつもの『抜け』が存在します。その一方で、Tokenはプレゼントを贈るべき時をリマインドし、最適なプレゼントを見つけ、包装や配送までしてくれます。これまで、プレゼントを贈る過程を完結できる一貫したサービスを提供する企業は存在しなかったのです」。

Jarvis氏によれば、ギフト市場は米国単体でも1310億ドルの規模をもつ。また、Tokenのβテストでは、同アプリのコンバージョン率は平均して30%だったという。Eコマースアプリとしては非常に高い数字だ。

そんなTokenは米国時間26日、シードラウンドで250万ドルを調達したことを発表した。リード投資家を務めたのはUpfront Venturesで、その他にもSlow VenturesとHuman Venturesが本ラウンドに参加している。Tokenが「利益」という名のプレゼントを”あげる”準備は整ったようだ。

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(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

VR/ARコラボツール開発のCynack、福岡のF Venturesから500万円のシード資金を調達

VR/ARを活用したコラボレーションツールを開発するCynackが今日、福岡と東京で活動する独立系VCのF Venturesからシードラウンドとして500万円の資金調達を行ったことを明らかにした(発表は今日だが、資金調達の実施タイミングは2016年12月)。

Cynackの前身となるチームは2016年9月にIBMが福岡で主催したハッカソンで優勝していて同年11月に起業。このときはメンバー全員が高校生だったというから、きわめて若いチームだ。現在はIBMの事業化支援を受けながら「Cynack」の開発を行っているという。Cynack創業者の吉村啓氏は高校を卒業して上京し、この4月からは慶應大学に通う大学生となっている。現在Cynackは6人で開発しているが、エンジニアとデザイナーの人員強化を予定しているそう。

CynackはIBM主催イベントでのα版の展示を行う予定というから、まだプロダクトはこれから、ということのようだ。次のような特徴を持つVR/ARプロダクトを目指しているという。

・Oculus RiftやHTC ViveといったVRデバイス、Microsoft HoloLensなどMRデバイス対応
・スマホやPCでも利用可能
・オープンなSNSのような複数人でのチャット、もしくはフレンド指定によるクローズドなチャット
・文書、表計算、プレゼン資料などのドキュメント共有による共同編集機能
・チャンネル単位での独自ドメイン取得

完成度についてはCynack CEOの吉岡氏は「現在α版という状況で、ローカルファイルを空間内に引っ張り出し、展開・編集することができます。引っ張り出されたファイルは瞬時にコラボレーションツールの方でも共有されるというイメージです」と話している。

VR空間を舞台にしてソーシャルなインタラクションを行うプラットフォームとしては、大御所FacebookのSpacesが先日のF8で発表になったばかりでTechCrunch Japanでもお伝えしてる。ほかに日本発の「cluster.」もあり、5月の正式ローンチを控えている。これら2つが友だちや家族との交流を念頭に置いたソーシャルVRである一方、Cynackが解決するのは「マルチ空間内での共同作業ということになります。後にVRのOS的な位置付けになればと考えてます」(吉岡CEO)という。

「金融サービスにこそデザインが必要」グッドパッチが4億円を調達し、FinTech領域のUI/UXに特化したチームを立ち上げ

アプリをはじめとしたUI/UXデザインを手がけるほか、プロトタイピングツール「Prott」、フィードバックツール「Balto」といった自社プロダクトを展開するグッドパッチ。同社は4月26日、SBIインベストメント、三井住友海上キャピタルを引受先とする総額4億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の資金調達は2016年2月に実施した4億円の増資に続き、3度目の実施となる。

同社は今回の調達を契機に、FinTech領域を中心にIoT、ヘルスケアなどの成長領域におけるクライアントやパートナーとの連携を強化する。また、ProttやBaltoといった自社プロダクトの販促強化を実施。さらに新規プロダクト開発を加速するとしている。

金融サービスにこそデザインが必要

その中でも特に注力していくのはFinTech領域のクライアントワークだ。グッドパッチでは今回の調達にともない、FinTech領域に特化したUX/UIデザインチームを発足。第1弾として、今月よりSBI証券とのプロジェクトを開始しており、SBI証券のネット証券事業におけるUX/UIデザインの改善から組織へのデザイン文化の浸透にも取り組み始めた。

グッドパッチによると、海外では、UX/UIデザインに初期から注力したFinTech企業が成長したり、大手金融機関がデザイン会社の買収するといった事例が相次いでいるのだそう。米大手金融のCapital OneによるAdaptive Path買収や欧州BBVAのSpring Studio買収などがその例だという。またグッドパッチ自身も、マネーフォワードやMYDCをはじめとしたFinTech領域の実績が増えていることもあり、明確にFinTech領域に注力することを決めた。

「日本ではデザインと金融の親和性が一見ないように感じますが、海外ではいち早く金融サービスを使ってもらうためにデザインが必要という認識が広がっています。一方で日本ではまだそのような事例は聞かれません。ですがFinTech領域でスマホを通じたサービスがさらに増えていくと仮定すると、よりユーザーにとって使いやすく、使い心地の良いサービスが使われ続けるのは当然です。また、オープンAPIなどの環境が整いはじめると様々な形でのサービス提供が増えるのでサービスデザインの観点でもデザインに力を入れていくのは当然の流れと言えます。 この領域でUI/UXデザインの会社としてFinTechにコミットをする会社はまだ日本にないので私達がいち早く挑戦し、他のFinTechサービス企業とは違う切り口で価値提供をしていきたいと思っています」(グッドパッチ代表取締役社長の土屋尚史氏)

今後は新規サービス創出や既存サービス改修を検討しているFinTech関連企業に対し、顧客視点に立ったUX/UI デザインや開発手法までを一貫して提供するほか、FinTech 領域でのデザイン・開発ノウハウの発信・共有をするラボを設けるとしている。

なお同社のクライアントワークと自社プロダクトの売上およびその比率などは非公開。クライアントワークでは、NTTデータのような大企業から、チケットキャンプ、FiNC、VEGERYのようなスタートップまでを支援。またProttは4月時点でユーザー数10万人を突破しているという。「1年前と比べると自社プロダクトは成長しています。Prottは有料課金ユーザーについても、C向けのプロダクトのような派手さはないものの増え続けています。1月に新プロダクトのBaltoもローンチし、もう1つ新プロダクトのリリースを控えています。今回の調達でさらにリソース強化をしていきたいですね」(土屋氏)

1年ほど前の資金調達の際には、50人規模の組織を作る「壁」にぶつかり、そして乗り越えたばかりだと語っていた土屋氏。この1年を振り返って、「今度は100人の壁にぶつかっていました」と笑いながら語る。「どこまで行っても組織課題はついてくるもの。この1年もかなり大変でしたが、やっとグッドパッチは組織としての形ができつつあると感じており、既存事業の強化と新しい挑戦を推し進めていきたいと思います」(土屋氏)

Netflixが外債で10億ドルを調達、同社の今年度のコンテンツ予算の総額は60億ドルだ

Netflixは“非米国人”からの優先債として10億ドル(10億ユーロ)あまりを調達する、と月曜日(米国時間4/24)に同社が発表した。 この債券の売上は同社の一般資本支出として使われるが、同時にNetflixの戦略の執行と関連したコンテンツの取得や投資、諸契約等の資金にもなる。

この調達は予想されていた。Netflixは今月初めの同社第一四半期の投資家宛書簡で、借入金による資金調達を増やす、と述べていた。このストリーミング企業は過去にも定常的に優先債の販売による資金調達を行っている。前の10月には8億ドル、2015年2月には15億ドル、というように。

オリジナルコンテンツの製作や取得は高価につく。Netflixは、それらの番組のマーケティングだけで2017年には約10億ドルを費消する、と言っている。同社の2017年のコンテンツ予算の総額は60億ドルだ。アメリカのエンタテイメント業界全体の中でも、これは相当上位の額だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

サプライチェーンから中間を排除――オンラインで農家から直接作物を購入できるFarmdropが900万ドル調達

農家にフレンドリーなオンライン食料品プラットフォームのFarmdropは米国時間23日、シリーズAで700万イギリスポンド(約900万ドル)を調達したと発表した。本調達ラウンドをリードしたのは、Skype共同創業者のNiklas Zennström氏が設立したAtomicoだ。

Farmdropは元々、「クリックして取りに行く」タイプのサービスだった。オンラインで農家から作物を購入し、地域に設置された受け取りポイントまで商品を取りに行くというものだ。同社はその後、ドアツードアのデリバリーサービスへとピボットした。しかし、スーパーマーケットなどの中間を排除するというアイデアは同じだ。

「この業界の根本的な問題は、過去50年間にわたり独占的な力を持つスーパーマーケットが農家に圧力をかけ、仕入れ価格を大幅に下げていることです」とFarmdrop共同創業者のBen Pugh氏は語る。「そのような状況では、農家に残された道は1つしかありません。収穫高と作物の丈夫さへの過度なフォーカスです。これにより、作物の味と栄養価が大きく損なわれることになります」。

その問題を解決するため、Farmdropはサプライチェーンからホールセーラーとリテーラーを排除した(もしくは置き換えた)と主張している。これにより、従来と比べて2倍の収入を農家に与えることができる。私が聞いたところによれば、Farmdropを利用した農家は最終販売価格の約75%を受け取っているそうだ。それに比べ、Pugh氏によれば、スーパーマーケットを介したサプライチェーンを利用した場合、農家が最終販売価格の50%を受け取れればラッキーだという。

「基本的に、Farmdropは作物の味と栄養価を最大化させることに集中する小規模農家に、利益率の高い販売ルートを提供しています。一方の顧客には、ファーマーズマーケットで買うような新鮮な作物を安価に購入できる方法を提供しています」と彼は語る。

Farmdropは今回調達した資金を利用して、カスタマーエクスペリエンスの向上と農家自身が在庫を管理できる新しいツールの開発を目指すと話している。また、同社はロンドン郊外に流通ハブを随時建設していく予定で、2017年にはブリストルに新しい流通ハブが誕生する予定だ。Farmdropによれば、今年はじめには同社の年間売上高が300万ポンド(約400万ドル)に到達したという。

AtomicoのZennström氏は今回の出資について以下のようにコメントしている:

「Atomicoが好む出資先は、地球上に存在する大きな課題を解決する意志のある企業です。だからこそ、私たちがFarmdropの第2調達ラウンドをリードできたことを非常に嬉しく思います。彼らは、イノベーティブなテクノロジーによって食料品のサプライチェーンを単純化し、ローカルの農家がサステイナブルな形で供給する食料への需要に応えています」。

本調達ラウンドにはAtomicoの他にも、SwiftKey共同創業者兼CEOのJon Reynolds氏、Zoopla創業者のAlex Chesterman氏、連続起業家でSaracens Rugbyクラブの会長でもあるNigel Wray氏、Asos共同創業者のQuentin Griffiths氏などが参加している。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

知識豊富な理系学生を直接スカウト――現役東大生ベンチャーPOLが5000万円調達

POLのチームメンバー。写真右下が代表の加茂倫明氏。

理系学生をターゲットにしたダイレクトリクルーティング・プラットフォーム「LabBase(ラボベース)」を展開する日本のPOL(ポル)は4月24日、リード投資家のBEENEXTサイバーエージェント・ベンチャーズDraper NexusBeyond Next Ventures、及びエンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額5000万円を調達すると発表した。払込日は今月末になる予定。

LabBaseは専門知識をもった理系学生と、彼らを欲しがる企業をマッチングするリクルーティング・プラットフォームだ。ユーザーとなる学生は自分の研究や論文の内容をプロフィールに記載し、それを見た企業が気になる学生を直接スカウトしたり、共同研究の提案を行うことができる。

同サービスを利用することで、日々の研究に追われて就職活動に時間を割きにくい理系学生でも、自分のスキルを活かせる企業と効率的に出会うことができる。また、企業は必要な専門知識をもった学生だけに絞った採用活動を行えるというメリットがある。

LabBaseのマネタイズ方法は企業側への月額課金。学生の登録は無料だ。料金は公開していないが、企業は月額数万円を支払うことで月に15回の「スカウト枠」が与えられる。これはスパムのようなスカウトから学生を守るための仕組みだが、学生からスカウトへの返信があれば、スカウト1回分の「ボーナスチケット」が受け取れる。

2017年2月の正式リリース以降、Amazon Web ServiceSansan電通デジタル日産化学工業などがLabBaseを利用している。具体的なユーザー数、クライアント数はともに非公開とのこと。POL代表の加茂倫明氏は、「今はユーザー、クライアントともに量よりも質にフォーカスすべき時だと考えている。理系東大生の割合が3分の1以上で一番多く、他も京大、東北大、北大、東工大、筑波大の学生が多い」と語る。

同じくダイレクトリクルーティングを手がける競合サービスに挙げられるのは、ビズリーチが手がけるBizReach(ビズリーチ)careertrek(キャリアトレック)などのサービス。ビジネスSNSのWantedlyもダイレクトリクルーティングが可能なプランを有料で提供している。

これらの既存サービスとの差別化要因について、加茂氏は「既存のサービスとは違い、LabBaseの学生プロフィールはアカデミックに寄せた作りになっている」ことを挙げる。「通常の就活サービスでは自己PRなどを掲載する一方、LabBaseでは研究概要、その社会的意義、使用できる研究機器、参加した学会、論文内容などを書く」(加茂氏)

ちなみに1994年生まれの加茂氏は東京大学理科二類の現役学生でもある。そこで、彼に最近の「理系学生の就活事情」を聞いてみた。

まず、理系学生は研究によって拘束される時間が長く、通常の就職活動を行う時間を確保することが困難なことが多い。そのため、教授からの推薦を利用して就職先を見つける学生も多いようだ。企業側も「〇〇教授の教え子なら信頼できる」というメリットもあるのだろう。つまり、理系の世界では従来からダイレクトリクルーティングが「クローズドで」行なわれていたとも言える。

バリバリの文系学生だった僕には、実体験をもってTechCrunch Japan読者にこの就活事情を伝えられないのが残念だ。でも、編集長の西村(物理学部出身)はこの話に同意していたから、実際の現場はこれに近いのだろう。

LabBaseがやろうとしているのは、この閉じた世界をオープンにすることだ。加茂氏は、「企業は理系学部にコネクションを持つとはいえ、そこには偏りがある。事業が多角化すれば、電子系の企業が生物系の学生を欲しくなることもある。そのような場合でも、優秀な学生を見つけられる場所を作りたい」と語る。

埋もれてしまっている理系学生にアクセスできる場所を提供する意義は理解できた一方で、加茂氏から理系学生の特徴を聞くうちに「彼らをユーザーとして獲得するのは難しそうだ」とも思った。推薦で就職することも多い理系学生は「就活意識が低い人も多い」(加茂氏)ので、そもそも就職系サービスのLabBaseに登録すること自体が高い壁になる可能性が高いからだ。そのための対策として、POLは主要大学に「アンバサダー」と呼ばれる学生の営業員を設置(現在40人)。彼らを通してプラットフォームの認知度向上を図っているという。

また、現在LabBaseを利用している企業はスタートアップが多い印象を受けるが、大手志向の学生を惹きつけるためには大企業をプラットフォームに巻き込む策も必要になるだろう。

2016年9月設立のPOLは今回初めて外部調達を完了したことになる。今後の展望として、加茂氏は以下のように語る:

「僕たちのミッションは理系学生がもつ課題をすべて解決すること。そのため、今後は研究者向けの支援ツールなどの新プロダクトを次々に開発していきます。海外の研究室にはScience Exchange(研究器具のクラウドソーシングサービス)などが普及しているが、日本の研究室はまだまだアナログ。先日Trelloを買収したAtlassianはプロジェクトの様々な工程に利用されるツールを開発しているが、POLは『研究者向けのAtlassian』を目指す。大げさかもしれないが、研究室をもっと効率的にすることで日本の技術発展のスピードも早くなるはずだと僕は信じています」。

レーザースキャナーで周辺把握、人間も判別 ―― 警備ロボットを開発するSEQSENSEが2億円調達

画像:SEQSENSE Webページより

自律型ロボットの開発を手がけるSEQSENSE(シークセンス)は4月21日、データセンターやクラウドなどサービス型のITソリューションを提供するTIS、およびジャフコを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額2億円を調達したと発表した

明治大学理工学部の教授を務める黒田洋司氏などが設立したSEQSENSEは、警備用の自律型ロボット「SQ1」の開発などを手がけるスタートアップだ。SQ1にはレーザースキャナーを用いた3次元マッピング技術が利用されており、周辺の環境をリアルタイムに把握したり、スキャンの形状から人間を判別したりすることができる。

そのため、SQ1を走行させるためにGPSを利用したり、事前に地図情報をインプットする必要はない。このような特徴から、人で混みあう商業施設やオフィスビルなどの警備が主な用途として想定されている。

形状や用途が似たロボットとして思い浮かぶのが、2014年3月にNTTドコモベンチャーズなどから資金調達を実施した米Knightscopeの「K5」だ。このロボットは、周囲360度の動画を撮影するHDカメラ、4方向の音声を収集するマイク、超音波式の近接センサー、対象物の移動速度や距離を図るセンサーなどを利用して周辺の状況を把握している。

SQ1と同じく、K5もショッピングモールなど比較的広域なエリアの警備をユースケースとして想定しているため、このあたりがSEQSENSEの直接的な競合となりうるのだろう。

今回の資金調達についてSEQSENSEは、「(警備用の)人材の確保が難しい領域からサービスの提供を始め、その後は、自律移動型ロボットの活用が望まれる分野に合わせた機能開発を行い、サービス提供領域を広げていく予定」だとコメントしている。

SEQSENSEは2016年10月の創業。共同創業者兼CTOの黒田洋司氏は、JAXAの「はやぶさ」と「はやぶさ2」のプロジェクトメンバーでもある。同じく共同創業者でCEOの中村壮一郎氏は、東京三菱銀行、シティグループ証券などを経て黒田氏とともにSEQSENSEを創業した。

日経新聞が報じたところによれば、SEQSENSEは2017年2月、同じくTISから数千万円規模の資金調達を実施している。

物件の95%が家具家電付き ― 不動産賃貸プラットフォームのBedlyが270万ドル調達

Craigslistは犯罪者には絶好のコミュニティサイトだが、不動産を探す人々には良い場所だとは言えない。

不動産賃貸のプラットフォームであるBedlyは、不動産の賃借にかかる苦労を減らすことを目的として設立されたスタートアップだ ― そして、同社は不動産を借りる側と同じく、貸す側にもアピールしていきたいと考えている。Bedlyの共同創業者は、IBMのセキュリティチームに所属していたMartin Greenberg氏と、Benjamin Chester氏だ。そんなBedlyは、不動産を貸す側と借りる側の両方の苦労を解消しようとしている。不動産を借りる人の苦労とは、家具を揃えること、ルームメイトをスクリーニングすること、水道などを契約することなどだ。対して、Bedlyが貸す側に与えるメリットとは、クリーンで使いやすいプラットフォームを通して若くて職のある人々を惹きつけることだ。

主に短期での宿泊を取り扱うAirbnbとは違い、Bedlyがフォーカスするのは中長期での不動産賃貸だ(イメージとしては3ヶ月や6ヶ月の単位)。Bedlyでは、部屋を借りたユーザーがそこを気に入らなかった場合、他の物件に簡単に移ることもできる。Bedlyに掲載された物件の95%は家具家電付きの部屋なので、引っ越しするたびに家具を買い揃える必要はないのだ。家具の他にも、Bedlyはベットシーツやキッチン用品、Wi-Fi環境などを定額で提供している。

「不動産オーナーにとってプロダクトとも呼べる賃貸物件には、長い間なんの改良も加えられてきませんでした」とMartin Greenberg氏は語る。「陳腐化したこれまでのやり方は若い世代には受け入れられません」と彼は話し、借りる側にとって”動きやすさ”がとても重要なのだと強調した。Bedlyでは12ヶ月のリース契約という慣習も廃止している。「フレキシビリティという点では、ユーザーは何にも縛られることはありません」。

今回Bedlyが270万ドルを調達したシードラウンドは、英国のケンブリッジを拠点とするAccompliceがリード投資家を務めた。今回調達した資金を利用して同社は、何かしらの変化を求める不動産オーナーとのパートナーシップを増やし、プラットフォーム内の物件数を増やしていく構えだ。本調達ラウンドには、Founder Collectiveと複数のエンジェル投資家も参加している。また、同社はAngelPadが主催する3ヶ月のインキュベータープログラム(2015年)にも参加していた。

Bedlyは現在、ニューヨークとボストンでビジネスを展開している。この2つの都市は、ともに賃貸ビジネスの激戦地であり、同じ場所に長く住むことに固執しない若者で溢れている。これまで、これらの都市で物件を貸すためにはブローカーたちに高い報酬を支払う必要があった。その不要な「層」を取り除き、浮いたコストで入居者に継続的な価値を提供できるようになると同社は話している。

大学寮を出たばかりで、まだ自分の家をもつ心の準備ができていない若者にとって、Bedlyは現実世界に踏み込むための良いステップになるだろう。オンデマンドという考え方が普及した現代では、寝床の用意もオンデマンドで解決できる問題の1つでしかない ― Bedlyが望むのは、多くのユーザーにとって、それは簡単なことなのだと理解してもらうことなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

動画制作のViibarが電通グループと資本業務提携、動画制作管理ツールの外部提供で協力

動画制作サービスを展開するViibarは4月20日、電通および同社子会社の電通デジタルと資本業務提携を実施したことを発表した。Viibarは1月に日本経済新聞社および電通デジタル・ホールディングス(DDH)、グロービス・キャピタル・パートナーズから総額約4億円の資金調達を含んだ資本業務提携を発表している。関係者によると、このDDHからの調達とあわせて、電通グループからだけでも総額約5億円の資金を調達しているという。

Viibar代表取締役の上坂優太氏によると、今回の資本業務提携は資金の調達もさることながら、業務提携の色合いが濃いものなのだそうだ。2013年4月にスタートしたViibarは、これまで、自社開発の動画制作管理ツール、そして審査の上で認定した3000人超というプロの動画クリエーターネットワークを持ち、デジタルメディアに最適な動画コンテンツを制作してきた。

この独自の管理ツールというのがキモで、離れた環境にいるクリエーター間のコラボレーション、進捗管理などをワンストップで実現。これによって共同・効率的な動画制作が可能なのだとしている。

今回の業務提携では、その動画制作管理ツールを電通グループに提供。より効率的な制作環境の構築を進めるとしている。「これまで自社で使っていたツールを、日本で一番シェアを持っている会社から導入していく」(上坂氏)。将来的には導入先を拡大し、今秋をめどに広く世にサービスを提供していくことを検討している。またツールの提供と同時に電通デジタル内に専用デスクを設置。独自のデジタル動画制作体制を構築するという。

シリコンバレー発のブログポストを日本語に翻訳 ― PeraPeraが4000万円を調達

サブスクリプション型の翻訳メディアを手がける日本のPeraPeraは4月20日、East Venturesおよび複数のエンジェル投資家から合計で37万3000ドル(約4000万円)を調達したと発表した。

PeraPeraは、海外著名人のブログポストなどを中心にシリコンバレー発の情報を翻訳して日本向けに提供するメディアだ。

例えば、ポール・グレアム氏が書いたブログポストなどにはスタートアップ業界からの注目が集まる。だが、英語が苦手な日本人にとって、それは読みたくても読めない情報だった。海外の情報に敏感なTechCrunch Japan読者のなかには、Google翻訳などを駆使して苦戦しながらも情報を集めているという人もいるかもしれない。辞書を引きながら読むという人もいるだろう。

そのような注目度の高い海外コンテンツを集め、日本語に翻訳して提供するのがPeraPeraだ。

現在、PeraPeraは無料プランと月額500円のプレミアムプランを用意している。無料プランのユーザーは記事の60%しか読めないという制限がある一方、プレミアムユーザーは記事の全文を読むことができる。また、プレミアムユーザーは次に翻訳される記事を決める「投票」に参加することも可能だ。

同社によれば、無料プランからプレミアムプランへのコンバージョン率は今のところ6%だという。

PeraPera CEOのMike Eidlin氏は、「ユーザーが増えて来れば、ブログポストの著者に収益の一部を還元する仕組みができる可能性もある」と語る。

ところで、TechCrunch JapanがEidlin氏に取材した当初、PeraPeraにはユーザー自身が日本語で読みたい海外記事を選んで翻訳料を少しずつ負担するという、いわゆるクラウドファンディング・プラットフォームに近い構想があった。

しかし、同社はその後に行ったユーザーへのヒアリングで「毎回読みたい記事を自分で選び、1つの記事ごとに支援する仕組みは面倒くさい」という声を聞き、よりメディアの形に近い、現在のビジネスモデルへとピボットしたようだ。

だが正直、Eidlin氏が当初から掲げている「記事翻訳料の負担をパブリッシャーからユーザーにシフトすることで、より多くの人が海外記事を読めるようにする」というPeraPeraのミッションが、このピボットによって薄れてしまったようにも思う。

ただ、前述したように、PeraPeraではユーザーが次に読みたい記事に「投票」することができる。つまり、人数が一定数以上集まると記事が翻訳されるという、ある意味でクラウドファンディングに近い仕組みがあるということだ。個人的に、僕はこの新しい仕組みがどの程度ワークするのかに注目している。

東京で生まれ、UCデイビスで日本語を専攻したMike Eidlin氏、そして彼のパートナーであるRaymond Lau氏は、PeraPeraを共同創業する以前にも「Bookmarq」やペットをテーマにしたSNSの「Cutesy」と呼ばれるサービスを開発してきた。「Bookmarq」は米500 StartupsのPre-acceleratorプログラム(2015年)にも選ばれている。

PeraPera共同創業者の2人。CEOのMike Eidlin氏(写真左)と、CTOのRaymond Lau氏(写真右)。

その後、Cutesyは約4万5000人のユーザーを獲得するまでに成長。元々、Eidlin氏は同サービスの拡大に必要な資金を調達するために来日していたが、その際に彼は、海外の良質な情報が翻訳されず日本のユーザーに十分に行き届いてないという状況を知る。そこで彼は成長していたCutesyを閉鎖し、Lau氏とともにPeraPeraを創業する決意をしたという。

同社は2017年2月よりPeraPeraのβ版を公開している

視覚的な共有ボードでプロジェクトを管理―、Milanoteの開発元が78万ドルを調達

アイディアの種を発見したり、インスピレーションを刺激したりするのに役立つソフトを探しているクリエイティブな職業の人たちが選択肢に困ることはあまりない。Pinterestのような主流の画像共有プラットフォームから、デザインに焦点をあてたムードボード作成ツールのNiiceまで、さまざまなツールがネット上には存在する。しかし、ライターごとに好みの作業環境が違うように、ビジュアルコンテンツを作成する人たちのニーズもさまざまだ。そこでMilanoteの開発元であるオーストラリアのスタートアップは、まだこの分野にはチャンスが残されていると考えた。

Milanoteのプラットフォームからは、EvernoteやPinterestの影響を垣間見ることができる。Milanoteのチームも同プラットフォームのことを「クリエイティブ向けのEvernote」と呼んでいるくらいだ。基本的には、「ボード」と呼ばれるスペース上に、ドラッグ・アンド・ドロップで画像や文字を配置することで、ユーザーはアイディアをグループ分けしたり、ムードボードを作ったりすることができる。さらに、画像や文字を別のボードに移動することで、ボードがフォルダ代わりになるので、各アセットの保管やリンク付けにも便利だ。

ボードは共有可能なので、関係者でひとつのボードを一緒に更新していくこともできる。さらにMilanoteにはToDo機能も搭載されている。こうして全体を見てみると、このプラットフォームはデザイナーが色々と試すためのものというより(もちろんそれも可能だが)は、多目的ツールのように感じられる。その一方で、例えば研究の進捗を管理したり、画像つきのチェックリストを作ったり、出来事を記録したりするためのツールとしても使えるだろう。

Milanoteはもともと、別のビジネス(UXデザイン会社)用の社内ツールとして開発されたのだが、その後彼らは独立したプロダクトとしてMilanoteを開発していくことに決めた。2月にローンチされたMilanoteのユーザー数は、これまでに3万5000人に増加したとCEOのOllie Campbellは言う。さらに彼によれば、現在Milanoteを利用しているユーザーの主な職業は、「デザイナー、ライター、マーケターなどクリエイティブなもの」で、勤務先にはFacebookやApple、Uber、Dropbox、Google、Adobe、Sony、Nikeなどが含まれているという。

Milanoteのチームは、Simon Martin(MYOBの前CFO)がリードインベスターを務めたシードラウンドで、78万ドルを調達したばかりだ。この資金は、「ウェブ上からインスピレーションを刺激しそうなものをかき集める機能など、クリエイティブなタスクに欠かせないもの」とCampbellが表現する機能(既に「Pinterestスタイルのウェブクリッパー」は導入済)の開発に充てられるほか、動画などさまざまなファイル形式をサポートするためにも利用される予定だ。

さらに彼らはコラボレーション機能も強化しようとしており、顧客からのフィードバックを受け取る機能やアップデート内容にコメントをつける機能などの追加を予定している。

コアユーザーについて尋ねたところ、Campbellは「Milanoteは(TrelloやEvernoteなどのように)とても”水平的”なツールなので、建設作業員や詩人、アーティスト、作家、ゲームデザイナーなど、ユーザーにはさまざまな分野や職種の人がいます。中にはMilanote上で小説を書いている人や、教会での説教の内容を考えたり、美術展の準備をしたりする人までいます。しかし、私たちの主要なターゲット層は、”ビジュアル・クリエイティブ・プロフェッショナル”と私たちが呼んでいる人たちです」と答えた。

「クリエイティブな仕事で重要なのは、既存のアイディアを上手く組み合わせたり、合成したりして何か新しいものを生み出すということです。しかし多くの人は、作業内容に応じて異なるツールやプラットフォームを利用しているので、一か所で全ての作業を行えないという問題を抱えています。例えば、画像はPinterestでノートはEvernote、タスク管理はTrello、ファイル管理はDropbox、メッセージのやりとりはSlackといった具合です。ツールが細分化すると全体像が見づらくなり、なかなかゴールにたどり着けなくなってしまいます」と彼は続ける。

「Milanoteの売りは、全ての作業が一か所でできるということです。さまざまな情報を一か所に集め、それぞれの関係性を見つけることで、新しいアイディアが生まれやすくなるのです」

Milanoteはフリーミアムモデルを採用しており、無料会員だと使えるノートや画像、リンクの数に限りがある。料金は1人で利用するのか、チームで利用するのかで異なるが、有料会員であれば無制限に各アイテムをボード上に配置できる。

Milanoteはユーザーにプロジェクトの関連情報をプラットフォーム上にまとめることを推奨しているため、今後膨大なストレージ容量が必要になり、それが料金プランにも反映される可能性がある。しかし、そもそも”空間的なコミュニケーション”と彼らが呼んでいるコンセプトを求める人たちと、既存のツールをそれぞれのタイミングで(コミュニケーションにSlack、ファイルの保管と共有にDropbox、ムードボードの作成と共有にPinterest、共同作業にGoogle Docsといった具合で)使う人たちのどちらが多いかというのはまだ分からない。

アイディアをこねくり回すことが要される職業では、”餅は餅屋”と考えている人が多そうだが、Milanoteのチームは、彼らのプラットフォームが少なくともある程度の収益をあげるだけのポテンシャルを秘めていると考えているようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Instagramで人気の飲食店を探せるグルメサービス「Tastime」、AnyPay木村氏やFablic堀井氏が出資

若い世代はGoogleで検索せずに、Instagramで検索している——インスタグラマー・GENKINGさんがそう語ってネット業界や広告業界(の特におじさんたち)に衝撃を与えたのはもう1年前のこと。今じゃこんな「Instagramでの検索」を前面に出したグルメサービスだって登場しているのだ。

Tripboxが提供する「Tastime」は、Instagramで人気の飲食店の情報を検索・閲覧できるグルメサービスだ。Instagramの許諾を受けて公式APIを使用しており、ネット上にある飲食店の情報(電話番号や住所、営業時間など)とInstagramにアップされたその飲食店の料理の写真、写真の投稿数などを閲覧できる。

現在、都内を中心に約2000店舗の飲食店情報を掲載。写真の投稿数が多い順に店舗を紹介する「ランキング」のほか、直近1カ月に投稿数が増加した店舗を紹介する「急上昇」、新たに登録された店舗を紹介する「新着」の3つのスタイルで店舗を閲覧できるほか、エリア(現在地から近い順の表示も可能)やジャンルなどの条件で店舗を検索することが可能。気に入った店舗の情報を保存するブックマーク機能も備える。ランキング自体は数日で大きく変化するものではないので正直僕は数日で見飽きてしまったが、急上昇や新着、そして現在地をベースにした検索機能で、きれいな写真をだらだら見ているだけでも楽しい。

ランキング画面(左)と飲食店ごとに表示されるInstagramの投稿(右)

Tastimeでは店舗の登録を運営側が行っており、ユーザーが登録する機能は備えていない。Instagramでの投稿数がそのまま店舗情報の豊富さにも繋がることから、ある程度の投稿数がある店舗を優先して登録しているのだという。トップページに表示する写真もスタッフが選んでいるそうで、おいしそうな料理、しゃれた店内の様子などが掲載されている。面白いのが、Instagramへの投稿数と、ほかのグルメサイトでの評価というのはある程度比例しているという話。やはりみんな、おいしい、楽しいというポジティブな感情があるからこそ写真を投稿するのだ。

Tripboxは2016年4月の設立。TripboxはこれまでにDas Capital(AnyPay代表取締役の木村新司氏の個人投資会社)およびFablic代表取締役の堀井翔太氏、その他エンジェル投資家1人から合計1500万円の資金を調達している。代表取締役の根本淳成氏は現在大学休学中の22歳。東日本大震災を契機に社会起業家に興味を持っていたというが、「(大きな社会問題でなくても)身近な問題を解決していく人間になればいい」という周囲のアドバイスから、ネットサービスでの起業を考えたという。

Tastimeを提供するきっかけになったのは根本氏自身の留学経験。「英語が難しいとき、『感じる』ことができたのは画像のような視覚的な情報だった。それで帰国後は海外からの旅行者向けに観光スポットや宿泊施設、飲食店情報を画像で提供するサービスを作った」(根本氏)。だが実際にサービスインしてみると、ユーザーの7割は日本人。そして閲覧される情報は飲食店に集中していた。そこでサービスをピボット。2017年3月にローンチするに至った。メインターゲットはInstagramとも親和性の高い10〜20代の女性。今後は動画対応を検討するほか、店舗向けのマーケティング機能によるマネタイズを狙うとしている。

LEGOドローンのFlybrixがクラウドファンディングを行わなかった理由―、ハードウェアスタートアップのジレンマ

Flybrixは、子どもがLEGOブロックを使って組み立てられるドローンを2015年に発表した。その当時、共同ファウンダーであるAmir Hirsch、Robb Walters、Holly Kasunの3人は、クラウドファンディングを通じた資金調達の賛否について議論していた。KickstarterやIndiegogo上で資金を調達した、PebbleOculusScanaduといったスタートアップのような露出を求めていた彼らだが、同時にクラウドファンディングを行うハードウェアスタートアップに対して、疑いの目を向ける消費者が増えているというのがネックだったのだ。

Kickstarterの依頼を受けてペンシルベニア大学が行った研究では、Kickstarter上で資金調達を行ったプロジェクトのうち、9%が支援者に対する”リワード”を提供できなかったとされている。Kickstarterはこの独自調査の結果を2015年3月に発表したものの、Indiegogoをはじめとするその他のクラウドファンディング・プラットフォームに関しては、そのような数字が明らかにされていない。少なくとも、各社は利用規約の中に、プロジェクトが資金調達に成功しても、支援者がその見返りを受け取れない可能性があることを明記している。

Flybrix共同ファウンダーの1人のKasunは、クラウドファンディングの世界では、成果物を提供できなかったハードウェアキャンペーンほど、怒りに満ちた反応を生み出すものはないと語っている。ユーザーは芸術的なプロジェクトには寛容なようだが、CoolestのクーラーボックスKreyosのスマートウォッチが、時間通りに(またはそもそもプロダクト自体が)届かなかったときには怒り狂っていた。ドローンも決して例外ではない。

FlybrixがLEGOドローンキットの製造を開始する準備ができるまでに、Torquing GroupのZano Nanoドローンや、AirDroidのPocket Droneといったプロジェクトが失敗に終わっていった。1万2000人に及ぶ支援者が集まったZanoプロジェクトに関しては、一体何が起きたのかを解明するため、Kickstarterは調査ジャーナリストまで雇っていた。

当時Lily Roboticsも、カメラ付き自動追尾型ドローンを予定通りに出荷できずにいた。するとその後すぐに、サンフランシスコ地方検事局が同社を虚偽広告の疑いで起訴したのだ。投資家からも1500万ドルを調達していたにも関わらず、結局Lilyは今年シャットダウンすることとなった。

このような前例もあってか、Flybrixはクラウドファンディング・キャンペーンを完遂するためには、プロトタイプの段階をこえて、サプライヤーがきちんと発注分の製造をこなせるかサプライチェーンを試さなければいけないと判断した。「絶対的な数字ではありませんが、1000ユニット製造すれば、統計的に見て十分なサンプルが得られるので、小さなロットで発生しそうな問題を発見・解決することができます」とKasunは話す。

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クラウドファンディングなしで初期のコストをまかなうため、Flybrixは約100万ドルをシードラウンドで調達した。その一方で共同ファンダーの3人は、クラウドファンディング・キャンペーンに対する反応をもって、消費者の需要の一部だけでも見せることができれば、もっと簡単にシードファンドを調達できていただろうと語っている。

そうは言っても、クラウドファンディングを行わずに、限られた数の消費者の手元に最初のドローンを届けるというのは、最善の判断だったと同社は感じている。2016年9月にFlybrixは一般向けにもドローンの販売を開始し、自社サイトから直接製品を販売している。結果的に同社は、KickstarterやIndiegogoに頼らず、求めていた露出を得ることができた。

公式ローンチから90日の間に、Flybrixは190万ドル分のドローンを販売できたのだ。そして今日までに8000ユニットを出荷している同社は、ディストリビューターの助けを借りずに、現在学校や行政機関から大型の発注を受けている。さらに墜落に強い同社のドローンは、テック系の製品を中心に扱うPao Altoのb8taという店舗でも販売されている。

「私たちの最初の製品は、Appleのコンピューターほど洗練されてはいません。しかし私たちは長い間、ドローンという小さな空飛ぶロボットを使って、Appleのように教育市場に入りこもうと考えてきました。最終的には、もっと大きな一般消費者市場にも進出していければと考えています」とFlybrixのCOOは話す。

今後Flybrixは、新たに資金を調達し、新しいキットの開発やモバイルアプリの機能拡充、同社のドローンを組み込んだカリキュラムの考案に取り組もうとしている。将来的にクラウドファンディングを行うかどうかについては、まだ決まっていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

節水プロダクトの普及を狙うOrbital Systems、シリーズBで£15Mを調達

スウェーデンを拠点に、クリーンテクノロジーを手がけるOrbital Systemsが、シリーズBにて£15の資金を調達した。ファウンダー兼CEOのMehrdad Mahdjoubiは、NASAと共同で再生(re-purification)技術を実現し、シャワー時に消費する水およびエネルギーを大幅に節約するプロダクトを提供している。ここで用いられている技術は多方面にも展開でき、さまざまなシーンにおける節水プロダクトにも転用可能となっている。

Orbital Systemsの提供する未来派シャワーは「OAS」と名付けられている。このOASシャワーは既存シャワーにパーツを付け加える形式よびシャワーシステムを置き換えるかたちで販売される。シャワーの水をその場で再利用することで、資源効率を高めようとするものだ。核となるのはバクテリアやその他の有害物質を排除して再利用する技術だ。再利用しようとする水の品質が基準以下であれば廃棄されるようになっている。清潔な水のみを再利用しても、15分のシャワーで利用する水の量は150リットルから5リットルに減らせるのだとのこと。

Mahdjoubiのいうところでは、シャワー中に、シャンプーやソープを洗い流すのに使われる水はごく一部であるとのこと。たいていの場合は水は単に身体の表面を流れ落ちているに過ぎない。Orbital Systemsの技術では、水が綺麗な場合を正しく判定して、水の再利用を行うようにしている。

シャワーの水の再利用を行うことで、節水以外のメリットもうまれてくる。すなわち省エネに繋がるのだ。当たり前のことながら、シャワーで利用する水はたいてい温められているが、排水時にもほとんど温度は下がっていない状態となる。温めてから使用した水を再利用することで、水の状態から温めなおすよりも少ないエネルギーでお湯にすることができるというわけだ。

水もエネルギーもともに重要なものだ。宇宙空間のみならず地球上においても大切に扱うべきものだとMahdjoubiは言っている。Orbital Systemsはシャワーなど(次のプロダクトとしては洗濯機を考えているのかもしれない)の際に、省資源を心がけようとしているわけだ。Mahdjoubiは「シャワー以外に応用可能性がないのであれば、とても成功はおぼつかないでしょう」とも話している。

今回のシリーズBには、SkypeのファウンダーであるNiklas Zennström(以前にも個人の資格で投資している)も参加している。その他にもKarl-Johan Persson(H&MのCEO)、Jochnickファミリー(化粧品ブランドであるOriflameのファウンダー)、Stena Ventures、およびNils Idoffなどが参加している。

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(翻訳:Maeda, H

マーケットリサーチのLucidが6000万ドル調達

Lucidは米国時間10日、North Bridge Growth Equityがリードする資金調達ラウンドで6000万ドルを調達したと発表した。同社にとって、2011年に調達した280万ドル以来の外部調達になる。

創業者兼CEOのPatrick Comer氏によれば、この空白の数年間、Lucidは「プロダクトのグロースにすべての資金を投入し、それに真剣に取り組んできた」という。しかし、同社はすでにそのフェーズを超えたところにいる ― 彼らのプロダクトは500以上の顧客企業に利用され、過去3年間、収益は年率70%のスピードで成長している。

「『私たちのプロダクトとは何か?それは顧客に受け入れられるのか』という問いに対する答えが見つかったあと、今はビジネスをグローバルにスケールさせることに注力しています。今回の資金調達によってそれを実現させるつもりです」とComer氏は話す。「なぜなら、マーケットはすでにそこに存在するからです ― 私たちが創り上げてきたマーケットです」。

Lucidにとっての「スケール」とは、グローバル展開を意味する。Comer氏は同社をマーケットリサーチ業界におけるNo.1プレイヤーにしたいと語る。彼によれば、同社が提供するアンケート調査は国際的なリーチをもっているが、それは米国企業が世界に目を向けていることが主な要因だという。彼らは今、ヨーロッパ諸国、中東、アフリカでのプレゼンス確立を目指している(同社はすでにロンドンとドバイにオフィスを構えている)。

同社は2015年に社名をFederated Sampleから現在のLucidに変更。サンプリング・マーケットプレイスのFulcrumなどをプロダクト・ラインナップに加えた。Comer氏はLucidを「プログラマティック・ディスラプター」と呼び、広告テストやアンケート調査を自動化するソリューションを提供するLucidはマーケッターに前例のない「スピードとスケール」を与えていると主張する。

「プログラマティックな(広告)を利用すれば、適切なインプレッション、適切なメッセージに標準を合わせることはできます。しかし、そのメッセージを適切なオーディエンスでテストすることはできません」とComer氏は話す。

これはLucidがSurvey MonkeyやQualtricsなどの競合になることを意味するわけではない、と彼は加える。そうではなく、それらの企業はLucidを使って適切なオーディエンスを発見することができるのだと彼はいう。

Comer氏はまた、今回の調達によってLucidの本拠地であるNew Orleansに注目が集まることを期待している。

「人々は私に、『サンフランシスコ以外の場所でユニコーンをつくることができるか』と問います」と彼は話す。「その答えは、『Yes』です」。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

マーケッターとコンテンツクリエイターをつなげる ― Popular Paysが310万ドルを調達

多くの競合がひしめくインフルエンサー・マーケティング業界で、Popular Paysが一歩抜きん出るための策とはなんだろうか?共同創業者のCorvett Drummey氏によれば、それはコンテンツに集中することだという。

そのアプローチは投資家たちを納得させたようだ。Popular Paysは米国時間10日、新たに310万ドルを調達したと発表した。同社は過去に行なわれたシリーズAでY Combinatorなどから520万ドルを調達している。今回の調達ラウンドをリードしたのはGoAhead VCで、Pallasite VenturesとHyde Park Angelsも本ラウンドに参加した。

Drummy氏によれば、創業当初に彼が考えていた同社の主要なビジネスバリューとは、ブランドやプロダクトのプロモーションのためにマーケッターとソーシャルメディア上のインフルエンサーたちをつなぐことだったという。それはあながち間違いではなかったものの、彼は「私たちのビジネスが提供する本当のバリューとは、コンテンツそのものなのです。企業もそのことに気がついています ― 彼らもインプレッションを欲しがっていますが、コンテンツが中心であることに変わりはありません」と話す。

結局のところ、企業はオンライン上のエンゲージメントを維持するために、より多くのビデオ、写真、ブログポストを必要としている。そして、Snapchat Stories式のフォーマットが主流になるにつれて、この流れはますます加速している。

誤解のないように言うと、Popular Paysはインフルエンサー・マーケティングというビジネスモデルを完全に放棄したわけではない。Drummy氏によれば、企業が手がけるキャンペーンの多くは今でも、コンテンツ、そしてユーザーに訴えかけるメッセージを製作するものだからだ。しかし、同社は彼らをインフルエンサーと呼ぶのをやめ、代わりにクリエイターと呼ぶようになった。彼らの本質を表すためだ。「彼らの価値とは、必ずしも有名であること、セレブリティであることではありません。彼らはコンテンツ製作のプロなのです」。

Drummey氏によれば、同社は複数のクリエイターを1か所で管理するためのマーケッター向けツールも提供している(何百ものキャンペーンをまとめて管理できる)。また、コンテンツのA/Bテストツールも同様だ。同社はマネタイズ方法も拡大していて、技術のライセンスを他社に与えたり、リセラーと共同してビジネスを行ったりしている ― 実際、リセラーから得る収益は全体の1/3にものぼるという。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter