新興市場向けデジタルバンクのUmbaが2億円超の調達、アフリカ全土に事業拡大へ

アフリカを最初の市場として目指している、新興市場向けのデジタルバンクUmbaは、Stripeの元発行責任者であるLachy Groom(ランシー・グルーム)氏、Ludlow Ventures、Frontline Ventures、Act Venture Capitalなどの新規投資家からシードラウンドで200万ドル(約2億660万円)の資金を調達した。

現在ケニアとナイジェリアで事業を展開している同社は、従来のアフリカの銀行に代わるデジタル金融サービスを提供している。Umbaのモバイルアプリでは、無料の当座預金口座、無料の端末間即時送金、貸付、預金、BillPay、キャッシュバックを顧客に提供する。これはアフリカ諸国の伝統的な銀行に見られる一般的な高コストのハードルの高さとは対照を成す。

現在はケニアとナイジェリアで利用可能であり、両国の人口を合わせると2億5000万人を超える。

Umbaと競合するのは、Kudao、Carbon、Eversend、そして「チップ入りカードまたは現金」支払い方式だ。

UmbaのCEOであるTiernan Kennedy(ティアナン・ケネディ)氏は次のように述べている。「当初から、私たちは複数の市場、通貨、支払いインフラに対応できるようにプラットフォームを構築しました。後からシステムをアップグレードすることは難しくなるため、この柔軟性は非常に重要な考慮すべき事項です。例えば、ナイジェリアでは銀行やデビットカードの普及率が高いため、Umbaはこれらの支払い方法に深く統合されていますが、ケニアと東アフリカではモバイルマネーが主流であるため、当社のプラットフォームもこれらのサービスと密接に統合されています」。

Ludlow VenturesのパートナーであるBrett deMarrais(ブレット・デ・マライアス)氏は次のように述べている。「Umbaは我々がアフリカ市場に投資した最初の企業であり、参加することに興奮しました。Umbaのチームは、顧客のために銀行業務のコストを削減し、アクセスを民主化する優れたサービスを提供しています。物理的な銀行支店のインフラから離れる動きはすでに進行中で、今年に入って加速しています。アフリカ市場が成熟しつつあり、非常に興味深い段階に入っていることは明らかです」。

このニュースの直前、今年10月にはStripeが2億ドル(約206.6億円)でナイジェリアの決済サービススタートアップであるPaystackを買収した。7月にはDPO Groupが2億8800万ドル(約297.5億円)で、8月にはSendwaveが5億ドル(516.6億円)で買収されるなど、アフリカのデジタル決済・送金サービス業界はベンチャーラウンドや買収で記録的な更新が続く盛況を呈している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Umba

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(翻訳:TechCrunch Japan)

アフリカを次のグローバル食料基地にするSunCultureのソーラー揚水ポンプ

国連のレポートによると、人口増加の需要に対応するには世界の食料供給を2050年までに倍にしなければならない。供給量を増やすために新しい耕作地を確保するというプレッシャーが高まる中、次の世界の食料基地候補として世界の目はアフリカ大陸に向けられている。

アフリカ開発銀行によると、世界の未開耕作地の65%がアフリカにある一方で、アフリカ諸国は農業分野の生産性向上で大きな障壁に直面している。

アフリカでは80%の世帯が農業で暮らしているが、灌漑を使っているのは4%にすぎない。そして多くの世帯が安定した安価な電力にアクセスできていない。この2つの問題を解決しようと、SunCulture(サンカルチャー)を共同で創業したSamir Ibrahim(サミール・イブラヒム)氏とCharlie Nichols(チャーリー・ニコラス)氏は8年を費やしてきた。

新しい融資モデル、それから専用の太陽光発電で動く発電機と揚水ポンプでニコラス氏とイブラヒム氏は収入を増やすために同社の設備を使っている顧客のネットワークをすでに構築した。そうした顧客は価値の高い作物を栽培し、より広い面性を耕し、そして多くの家畜を育てることで収入を以前の5〜10倍に増やすことを目指している。

同社は事業をアフリカ中に拡大するために1400万ドル(約15億円)の資金調達をクローズしたばかりだ。

「我々は2050年までに食料生産を倍増させなければなりません。食物を育てるのに十分なリソースがあるところはというとアフリカです。農業に従事する人が大勢いて、広大な土地が広がり、リソースも豊富です」とイブラヒム氏は述べた。

アフリカの小規模農家は生産性を上げるにあたって2つの大きな問題に直面している、とイブラヒム氏は指摘した。1つはマーケットへのアクセスだ。これは食料の無駄の大きな原因となっている。そしてもう1つの問題は、気候変動によって悪化している安定した栽培条件の欠如による食料安全保障だ。

2020年初め、とある小規模農家は「雨季は予測できません。雨が降るはずなのに降らないかと思うと、突然降ったりします」とThe Economist紙で語っている

ニューヨーク大学を2011年に卒業したイブラヒム氏は長らくアフリカに引きつけられていた。同氏の父親はタンザニアで生まれ、母親はケニアで育ち、2人とも後に米国にたどり着いた。イブラヒム氏は成長する過程で東アフリカについての話を聞かされた。

ニューヨーク大学で経営学の学位取得を目指しているとき、イブラヒム氏はニューヨークで開催されていた新進の起業家のためのイベントでニコラス氏に出会った。当時ニコラス氏は米国の大規模ソーラープロジェクトで働いていた。

2人は友達になり、ニコラス氏が読んだ農業分野での再生可能エネルギー応用についての論文に端を発てビジネスの機会について議論した。

ニューヨーク大学後援の事業計画コンペティションで2位を獲得したのち、2人は事業計画が1位に値するものであることを証明しようと決心した。ケニア行きの航空券を予約し、ソーラー発電で動く揚水ポンプと発動機を販売する事業のパイロット試験立ち上げに挑んだ。

太陽光で動く揚水システムは概念上、何年も展開されている。しかし太陽光発電とエネルギー貯蓄の施設のコストが下がるにつれ、そうしたものを使うシステムは多くの人が利用しやすいものになった。

そうしたタイミングも作用して、SunCultureは他の企業がつまづいていたところで成功することができた。「多くのマーケットで再生可能エネルギーの発電コストが既存の電力コストと並んだちょうどそのときに我々はここにやって来ました。まさに多くの開発投資家が農業とエネルギーの結合に資金を投入しているときでした」とイブラヒム氏は話した。

当初、同社はエネルギー発生と揚水のシステムを、ナイロビのような都市に仕事を持ち、そして田舎に所有する土地で作物を育てる中所得の農家に販売した。こうした「テレフォン農家」はSunCultureの初期のシステムを導入するのに喜んで5000ドル(約52万円)を払った。

いまやシステムのコストは500〜1000ドル(約5万2000〜10万4000円)で、同社の「pay-as-you-grow(成長するにつれ支払う)」モデルのおかげで世界中の農家5億7000万世帯にとってアクセスしやすいものになっている。

アフリカで提供されるあらゆるタイプのソーラーシステムの中でSunCultureが人気のビジネスモデルになったのは、ちょっとしたひねりのおかげだ。イブラヒム氏によると、投資家はオフグリッドのソーラーエネルギーの開発と、M-kopa、Greenlight Planet、d.light design、ZOLA Electric、SolarHomeといった小売テック企業に10億ドル(約1040億円)近くを注いだ。さまざまな意味で、SunCultureはそのモデルを農業への応用へと拡大しているだけだ。

「我々はサービスと融資を組み合わさなければなりませんでした。これがうまくいったのは、我々の顧客が収入を4、5倍に増やしているからです」とイブラヒム氏は述べた。「収入のほとんどは消費にいっていました。生産に向けられるのは初めてです」。

SunCultureのハードウェアは300ワットのソーラーパネルと、440Whのバッテリーシステムで構成される。バッテリーは最大4つのライト、電話2台、プラグイン式の水中に沈める揚水ポンプをサポートできる。

同社のベストセラーのプロダクトラインは、2.5エーカー(約1ヘクタール)の農地の灌漑に対応する、とイブラヒム氏は話した。「他の応用に向けて、いまはまだ入り口地点にすぎないととらえています。アフリカで最大のソーラー企業になります」 。

Energy Access Ventures (EAV)、Électricité de France (EDF)、Acumen Capital Partners (ACP)、Dream Project Incubators (DPI)といった投資家から調達した1400万ドルで、SunCultureはケニア、エチオピア、ウガンダ、ザンビア、セネガル、トーゴ、コートジボワールに進出する予定だと明らかにした。

今回のディールではEkta Partnersがファイナンシャルアドバイザーを務め、その一方で米国際開発庁のケニア投資メカニズムプログラムのもとでCrossBoundaryが市場機会や競争についての分析を含む助言サポートを提供した。

カテゴリー:フードテック
タグ:SunCulture農業アフリカケニア資金調達

画像クレジット:SunCulture

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(翻訳:Mizoguchi

SENRIがアジア・アフリカ新興国の小売店向け受発注プラットフォーム「SENRI Direct Order」を正式ローンチ

SENRIは10月1日、アジア・アフリカの新興国の小売店向けの受発注モバイルプラットフォーム「SENRI Direct Order」を正式にリリースしたことを明らかにした。

SENRI Direct Orderは、WhatsAppのミニアプリ版とウェブ版を組み合わせることで、新興国での流通のデジタル化を支援する。具体的には、WhatsApp経由の発注サイトへの誘導・プロモーションやWhatsAppを活用したチャットボットでの配送状況通知などが可能だ。ウェブ版では、小売店の発注業務を可能にし、プロモーション情報などを受け取れるメーカー別の発注サイトを提供する。

同サービスは、2020年10月現在、ケニア、ナイジェリア、ウガンダ、タンザニア、インドネシアの計5カ国で累計150社以上への導入実績があるそうだ。月間総取引額は約12億円に達しており、月間アクティブユーザー数は対前年比2.7倍と急成長しているという。

SENRI Direct Orderの特徴は、現地の通信環境やスマートフォンのスペックに合わせた仕様に最適化している点だ。ネットの速度が遅く不安定で、スマートフォンなどの処理スペックが低くても、利便性を損なわない作りになっている。具体的には、これらの条件下でも確実にデータを同期できる仕組みを構築しているとのこと。

また、SAPなどのERPとの接続はもちろん、ケニアや南アフリカで拭く湯しているmPesaモバイル決済システム、チャットアプリのWhatsApp、Google Data StudioなどのビジネスインテリジェンスツールとAPI連携が可能だ。

さらには現地にカスタマーサクセスチームを置いており、ITの知見がない営業マネージャーや営業担当者に対してもサポート対応が充実している点でもアドバンテージがある。

SENRIは2015年8月設立のスタートアップ。本日2020年10月1日に旧社名アフリカインキュベーターから社名変更した。関連会社として、ナイジェリアにSenri Ltd、ケニアにAfrica Incubator Kenya Ltd、ウガンダにAfrica Incubator Uganda Ltdがある。

Tuverlはアフリカの公共交通機関に秩序と利用しやすさをもたらす

アフリカはさまざまな文化や言語、慣習であふれる多様性のある大陸かもしれないが、Tuverlの共同創業者でCEOのHope Ndhlovu(ホープ・ンドロブ)氏によれば、南アフリカからエジプトに至るまでの大陸全体にひとつの共通する体験、あるいは共通する産業があるという。それは公共交通機関で、アフリカ全体に数百万もの中小事業者がありエコシステムはバラバラで混乱している。

公共交通機関は、1人が1台のバンかバスで営業しているようなところもあれば、複数の車を持つ大きな企業が運営しているところもある。時刻表も何らかの調整もなく、ミニバスの事業者は満員になるまで発車しないこともある。支払いは現金だけで移動や乗客の数を管理していないので、不正やお粗末な会計がはびこっている。

結果として、公共交通機関は乗客にとっては信頼できないし事業者にとっては儲からない。こうした混乱の中に、ンドロブ氏と共同創業者のBahlakoana Mabetha(バーラコアナ・マベタ)氏はチャンスを見出している。

両氏がジンバブエを拠点に創業し、公共交通機関の合理化を目指すアプリを作っているTuverlが、米国時間9月15日にTechCrunch DisruptのStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)に登場した。交通機関の事業者は手数料を支払ってTuverlに参加する。すると事業者はアプリを使って車両を管理し、車の場所を追跡し、運賃の処理をすることができる。一方の乗客はアプリを使って市内を走るバスやミニバスの動きをリアルタイムで追い、移動を予約し、タクシーを呼び、運賃を支払える。乗客は移動にレートを付けレビューすることもできる。

このアプリのベータ版が2020年2月にGoogle Playストアで公開され、30事業者と5235人の乗客が利用している。Tuverlは新型コロナウイルスによる外出禁止の緩和に伴って利用を拡大していく計画だ。

現時点では、両氏はジンバブエに専念している。しかしハーバード大学の卒業生である2人は、Tuverlについてもっと大きなビジョンを持っている。

ンドロブ氏は筆者とのインタビューで「一般の人々にとっての公共交通機関を向上させたいというのが、まさに私のモチベーションです。これによって人々の生活が実際に変わるからです」と語り、自分自身が学生の頃に公共交通機関の運営が非効率だったためにしょっちゅう遅刻していたと付け加えた。「ジンバブエで事業を確立してそこから成長していく必要がある。しかし我々はこれをアフリカの問題にしたい。アフリカのすべての国に進出したいと考えている」。

画像クレジット:Tuverl

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(翻訳:Kaori Koyama)

ナイジェリア拠点のフィンテック企業InterswitchのCEOが語る、アフリカ大陸の金融サービスの現状

アフリカ全土に展開するフィンテック企業のInterswitch(インタースイッチ)は、そのベンチャー投資部門を再開することを計画している。CEOであるMitchell Elegbe(ミッチェル・エレグベ)氏自身から、米国時間9月16日に行われたTechCrunch Disruptの壇上で語られた。

このナイジェリア出身の起業家は、同国の首都ラゴスに拠点を置くInterswitchが予定しているIPOについてはあまり新しい情報を語らなかったが、同社がアフリカのスタートアップへの投資を復活させることを明らかにした。

2002年にエレグベ氏によって設立されたInterswitchは、当時は主に現金ベースで行われていたナイジェリアを、デジタル化するインフラストラクチャを開拓した。同社は現在、アフリカ最大の経済と人口2億人を擁するナイジェリアのオンラインバンキングシステムに、多くのインフラストラクチャを提供している。同社は、アフリカの23の国で、個人向けおよびビジネス向けの決済商品を提供するまでに拡大した。

このフィンテック企業は、2019年に行われたVisaによる2億ドル(約209億6000万円)の株式投資によって、評価額が10億ドル(約1048億円)となりユニコーンの仲間入りをした(未訳記事)。

ベンチャー投資の復活

スタートアップの段階を十分に超えたInterswitchは、2015年に1000万ドル(約10億5000万円)のベンチャー部門(未訳記事)を立ち上げたが、ナイジェリアのフィンテックセキュリティ会社であるVansoを買収(techcabal記事)した2016年以降、そのベンチャー部門を休止していた。

しかしエレグベ氏によれば、Interswitchはまもなくスタートアップへの投資と買収を行うビジネスを再開するという。「私たちはチームを認定したばかりですが、そうした投資を再び開始する予定です」。

彼は新しいファンドの焦点を簡単に紹介した。「今回は、金融投資を行い、Interswitchが持つネットワークを投資企業が自由に活用できるようにしたいと考えています」と同氏はTechCrunchに語った。

「私たちは投資先の企業を厳選していきます。それらは、Interswitch自身が、明確に価値を与えることができる企業でなければなりません。私たちの行動と、私たちが既にお付き合いのあるお客様たちの力で、成長の加速をお手伝いできるような企業でなければならないのです」とのこと。

アフリカのテクノロジー業界における最近のベンチャーの動きが、Interswitchが投資分野に戻るように迫った可能性がある。エコシステムとして、アフリカ大陸のVCは過去5年間でほぼ4倍に増加し、2019年には約20億ドル(約2092億8000万円)に達した(未訳記事)。しかし、そのほとんどは単一企業による投資ファンドからのもので、ベンチャーファンド企業による投資とテクノロジーM&Aは、まだ軽微なものに留まっている。それは過去数カ月にわたって変化し、全体的な上昇がInterswitchの競合他社と見なされる可能性のある法人を中心としたアフリカのフィンテック周辺で発生してきた。

7月には、ドバイのNetwork International(ネットワーク・インターナショナル)が、ケニアに拠点を置くモバイル決済処理会社のDPOを2億8800万ドル(約301億4000万円)で買収(The Africa Report記事)した。買収後まもなく、DPOのCEOであるEran Feinstein(エラン・ファインスタイン)氏は、Network Internationa社はアフリカでの買収をさらに推進する予定だと語った。6月には、別のモバイルマネー決済処理会社であるMFS Africaがデジタル金融会社のBeyonic(ビヨニク)を買収(Venture Burn記事)した。そして8月には、保有資産と融資高でアフリカ最大の銀行である南アフリカのStandard Bank(スタンダード・バンク)が、フィンテックセキュリティ企業TradeSafeの株式を取得(AppsAfrica記事)した。

Safaricomによる主要なM-Pesaモバイルマネー製品(未訳記事)がケニアで台頭して以来、アフリカのフィンテックは成長を続け、競争が激化している。このセクターには数百のスタートアップがあり、現在アフリカ大陸でのすべてのVC投資のほぼ50%を受け取っている。

投資家と創業者が狙っているチャンスは、アフリカに多数いる銀行口座を持たない人々と銀行口座は持つものの活用できていない消費者(Investopedia記事)、そして中小企業たちをオンラインにしようとするものだ。世界銀行のデータによると、サハラ砂漠以南の10億人(世界銀行データ)のおよそ66%が銀行口座を持っていない。モバイルベースの金融プラットフォームは、そうした地域全体をシフトさせるための最良のユースケースを提示してきた。

Interswitchは、アフリカのデジタルファイナンスレースのリーダーとしての地位を確立している。しかし、革新的で若いフィンテックスタートアップに、投資や買収を行う積極的なベンチャー部門がなければ、現在の役割をどのように維持または拡張できるのかを想像することは困難だ。

IPOについての具体的な話は出なかった

エレグベ氏は、長い間期待されてきたInterswitchのIPOに対してはあまり語らなかった。会社はまだ上場するつもりなのかと尋ねたところ、彼はそれについては回答を控えたいとした。「現時点では、ビジネスの成長と顧客のための価値の創造に注力していて、それが私たちの主な焦点なのです」とのこと。

IPOの可能性がまだあるのかどうかについて「はい」または「いいえ」の回答を求めたところ、エレグベ氏はそれは「はい」だと答えた。「私たちはプライベートエクイティの投資家を抱えていますが、この先ビジネスのある時点でのエグジットを彼らは望んでいます」という。「イグジットのタイミングを迎えるときには、テーブルにはさまざまなオプションが置かれることになりますが、IPOもそのオプションの1つです」。

InterswitchのIPOについては長年話題されてきた。エレグベ氏は2016年に、TechCrunchに対して、ラゴスとロンドン証券取引所の二重上場が可能だと語っていた。その後、他のInterswitchチャネルを通じて、2017年のナイジェリアの景気後退と通貨のボラティリティのために公開が遅れたという噂が流れた。2019年11月には、状況を知る情報筋が、TechCrunchに対してその背景を語っていた「IPOの可能性はいまでも非常に高いままです。おそらく2020年の前半のいつかでしょう」。その後、新型コロナウイルス危機とそれに伴う世界経済の低迷が起こり、それがInterswitchのIPO計画を再び遅らせた可能性がある。

同社が上場すれば、それはナイジェリアとアフリカのフィンテックにとって大きな出来事となるう。アフリカ大陸には、VCが支援し世界的に上場しているフィンテック企業は存在していない。Interswitchの投資家のイグジットは、アフリカ大陸のスタートアップに対する投資機会の様子をうかがっている主要なファンドから、より多くのVCをナイジェリアやアフリカ全土へと引き寄せることになるだろう。

アフリカへ再注力

グローバルな製品展開に関してエレグベ氏は、今のところアフリカへの注力を継続する予定だと説明した。「アフリカ大陸の中で、Interswitchには十分な機会があります。私たちはできるだけ多くのアフリカ諸国に広がることを望んでいます。そしてInterswitchをアフリカ大陸への(金融)ゲートウェイとして位置付けたいと考えています」と彼はいう。

エレグベ氏は、主要な金融サービス企業との提携を通じて、アフリカの顧客基盤にグローバルな金融アクセスを提供し続けると説明した。2019年8月にInterswitchは、Verveカード所有者がDiscoverのグローバルネットワークを使って支払いを行えるようにするパートナーシップを開始した。

同氏は、ナイジェリアでのビジネスを行う際の欠点と可能性のバランスをとる見方を示しながら、今回のDisruptにおけるセッションを終えた。近年ナイジェリアは、アフリカにおける大規模な技術拡大、VC投資、そしてスタートアップ形成のための非公式なハブ化が進んでいる。しかし、ナイジェリアはインフラストラクチャーに関しては厳しい運営環境が続いている、それはしばしば政治的腐敗とボコ・ハラムのテロ行為による北東部地域の不安定に関連していることが多い。

「ナイジェリアは非常に大きな人口と非常に大きな市場を抱えています。私たちには解決する必要のある課題がたくさんありますが、ナイジェリアにはチャンスがあるので、多くのお金がそこへ向かっていることは理解できます」と彼はいう。

ナイジェリアの検討をしているテック投資家へのエレグベ氏のアドバイスは以下のものだ「短期的な見方をしないでください。そこには素晴らしい仕事をしている素晴らしい人びとがいます。インパクトを与えたいと思う正直な人たちです。そうした人たちを探し出す必要があります」。

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(翻訳:sako)

個人がビットコインでアフリカのソーラー発電インフラに投資できるSun Exchange

南アフリカを拠点とする再生可能エネルギーのスタートアップであるSun Exchange(サン・エクスチェンジ)は、300万ドル(約3億2000万円)を調達してシリーズAラウンドをクローズし、投資額は合計で400万ドル(約4億3000万円)となった。

同社は、世界中の誰もが個人でアフリカのソーラーインフラに投資できる、ピアツーピアの仮想通貨(暗号通貨)に対応した事業を展開している。どういう仕組みなのだろう?

「あなたは個人としてSun Exchangeから購入したソーラーパネルを通じて、南アフリカの学校に電力を販売するのです」と同社のCEOであるAbe Cambridge(エイブ・ケンブリッジ)氏は説明する。「私たちのプラットフォームは、あなたのソーラーパネルの発電量を測定します。その電気を、あなたが指定した電力消費者が購入できるように調整し料金を徴収して、Sun Exchangeのあなたのウォレットに利益を振り込みます」と続ける。

参加するには、ソーラーセル1基あたりおよそ5ドル(約540円)かかる。取引はSouth African Rand(ランド)またはビットコインで決済する。

「私たちがビットコインを選んだ理由は、米1セントの100万分の1まで扱うマイクロトランザクションを可能にする全世界共通の支払いシステムが必要だったたからです」とケンブリッジ氏はTechCrunchの電話取材で話した。

彼はアフリカの再生エネルギーインフラを発展させようと、2015年にケープタウンに本社を置くこのスタートアップを共同設立した。「ソーラーの可能性は膨大だと気づきました。南アフリカだけでの話ではありません。アフリカ大陸全体です」とケンブリッジ氏。「必要なのは、アフリカをソーラーパワー化するための新しいメカニズムでした」。

国際エネルギー機関(IEA)によると、サハラ以南のアフリカの広大な土地には、およそ10億人が暮らしているが、電気が使えるのはその約半数に過ぎない(IEAのレポート)という。

このところ、Sun Exchangeの主要マーケットであり、その地域でも最高のインフラを誇る南アフリカは頻発する停電に悩まされている(Bloomberg記事)。

画像クレジット:Sun Exchange

Sun Exchangeのデータによると、同社には南アフリカ中の学校、企業、施設のためのソーラー発電プロジェクトに投資した会員が全世界に162名いるという。

Sun Exchangeの400万ドルのシリーズAをクローズした300万ドルは、ロンドンのARCH Emerging Markets Partners(アーク・エマージング・マーケッツ・パートナーズ)のAfrica Renewable Power Fund(アフリカン・リニューアブル・パワー・ファンド、アフリカ再生可能電力基金)からの投資だ。

この資金で、同社は新しい市場の開拓を計画している。「私たちは、サハラ以南の別の国々にも進出します。私たちのロードマップには、いくつもの明確なチャンスが記されています」とケンブリッジ氏は、Sun Exchangeが調査した市場のひとつであるナイジェリアを引き合いに語った。

ケニヤやナイジェリアといったアフリカ最大クラスの経済とテクノロジーの拠点では、豊富な資金を有するソーラーエネルギースタートアップ数社が事業展開している。東アフリカでは、M-Kopa(エムコパ)が家庭用のソーラー発電ハードウェアキットをクレジットで販売し、設置代金は携帯電話からM-Pesa(エムペサ)のモバイル送金を使って支払えるようにしている。このベンチャーは、Steve Case(スティーブ・ケイス)氏やRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏を含む投資家から1億6100万ドル(約174億円)の支援を受けている。

ナイジェリアでは、Rensource(レンソース)が住宅用ハードウェアのビジネスモデルから、より大きな市場や商業施設向けのソーラー発電によるマイクロユーティリティーの構築にシフトしている。

関連記事:Nigeria’s Rensource raises $20M to power African markets by solar(未訳)

Sun Exchangeはソーラーパネルの設置や製造を行う他の企業とは異なり、資産を持たないモデルで運用されている。

「私たちは供給業者にはまったく依存していません。アフリカ大陸で事業をしているソーラーパネルの設置業者のほうから、私たちにアプローチがあります。その中で最良の企業と提携しています」とケンブリッジ氏。彼は2017年にベルリンで開催された米国TechCrunchnのStartup Battlefield(未訳記事)でそのビジネスモデルを紹介していた。

「私たちは、ソーラーパネルのユーザーをソーラーパネルのオーナーやソーラーパネルの設置業者につなぐマーケットプレイスなのです」。

Sun ExchangeでCEOを務めるAbe Cambridge(エイブ・ケンブリッジ)氏

Sun Exchangeはソーラーパネルの販売マージンと、購入と発電したキロワット時あたり手数料から利益を得ていると、ケンブリッジ氏はいう。

アフリカでの事業拡大に加え、同社は中南米と東南アジアでの中長期的な展開も視野に入れている。

「これらの地域も、展開の早さと、ソーラーが牽引する環境の改善といったソーラーエネルギーの恩恵を大きく得られる場所です」とケンブリッジ氏は話していた。

関連記事:ジンバブエで日産リーフを利用したタクシー配車システムを展開するVaya Africa

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(翻訳:金井哲夫)

アフリカのテックニュースまとめ読み:UAVによる救命医療用品の配送など

2020年5月におきた各種イベントは、アフリカがグローバルに応用できるテクノロジーを育むことができるという主張を支持するものとなった。

アフリカ大陸でビジネスモデルを開発した2つのスタートアップ、MallforAfricaとZiplineが国際的な注目を浴びている。

DHLは、ナイジェリアのデジタルリテール・スタートアップ、MallforAfrica.comから成長したターンキーのeコマース企業であるLink Commerceの少数株を買収した。

Link Commerceは新興市場でオンライン販売を行うためのホワイトラベルソリューションを提供している。

小売業者が同社のプラットフォームにプラグインすると、支払いと物流を管理するウェブベースのストアフロントを作成できるというものだ。

ナイジェリア人のChris Folayan(クリス・フォラヤン)氏は、アフリカ大陸における消費者市場の需給ギャップを埋めるため、2011年にMallforAfricaを設立した。フォラヤン氏はアメリカに在住する間に、アフリカ人の典型的な慣行に目を留めた。海外に住む家族に欲しい商品のリストを渡し、購入して持ち帰ってもらうというものだ。

そこでフォラヤン氏は、アフリカ大陸の人々がMallforAfricaを利用してグローバルな小売業者から直接オンラインで商品を購入できるようにすることを目指したのだ。

同eコマースサイトは250を超えるグローバルな小売業者を擁し、現在オレゴンとイギリスの注文処理施設で30人の従業員を雇用している。

フォラヤン氏はその後、Link CommerceをMallforAfrica.comの主幹会社として昇格させた。同氏とDHLは同プラットフォームを世界中の新興市場に拡張し、コアビジネスにオンラインストア、決済、ロジスティクスソリューションを取り入れたいと考えている企業に提供する予定だ。

「現在焦点を当てているのはアフリカですが、グローバルな展開を見据えています」とフォラヤン氏は言う。

アフリカにおけるもうひとつのスタートアップZiplineは、新型コロナウイルスとの闘いにおいて重要な医療用品をドローンで配達するため、米国の医療提供者Novant Healthに選出された。

両者はパートナーシップを発表。これによりZiplineのドローンはノースカロライナにあるNovant Healthの緊急ドローンフルフィルメントセンターと、第一線の医療従事者がコロナウイルス患者を治療しているハンターズビルにある同非営利医療センターの間の32マイルの飛行を2ルートで行うことになる。

ZiplineとNovantは、この取り組みが米国で認可された最初の長距離ドローン物流配達飛行プログラムだと述べている。この活動は米国連邦航空局とノースカロライナ州交通局の承認を得た上でのものだ。

NovantとZiplineのUAV(無人航空機)コラボレーションの背景にはひねりがある。米国での運用機能は主にアフリカで開発されているのだ。Ziplineはサンフランシスコ地域にテスト施設を持っているが、ドローン配信モデルの構成をする際にルワンダとガーナで数年を費やした。

Image Credits: Novant Health

アメリカ人のKeller Rinaudo(ケラー・リナウド)氏、Keenan Wyrobek(キーナン・ワイロベック)氏、Will Hetzler(ウィル・ヘッツラー)氏によって2014年に共同設立されたZipline。同社は重要な医療用品を配布するための独自のUAV、ローンチシステム、ロジスティクスソフトウェアを設計した。

同社は2016年に東アフリカに目を向け、ドローンサービスをテストおよび展開するためにルワンダ政府とパートナーシップを組んだ。2016年後半、ZiplineはルワンダでUAVによる救命医療用品の物流を開始。同社はこれを世界初となる全国規模のドローン配送プログラムだとしている。

2016年に同社はガーナへと拡大。ここではドローンによる血液とワクチンの配送に加え、現在では新型コロナ関連の医薬品と検査サンプルを配送している。

パートナーのNovant Healthに加え、ZiplineはUPSなどの大手物流プロバイダーの関心も集めている。UPSは2016年まで同スタートアップのアフリカでの事業をサポートおよび調査した過去を持つ

ルワンダとガーナの大統領、Paul Kagame(ポール・カガメ)氏とNana Akufo-Addo(ナナ・アクフォ=アド)氏は、Ziplineと両国とのパートナーシップを支援するのに尽力した。ケニア、南アフリカ、ザンビアなどのアフリカ大陸の他の国々は、商業ドローンのテストとセクターを規制するための新しいアプローチを推進し続けている。

Novastar Venturesの最新の資金調達後、アフリカのスタートアップらはさらにVCで1億ドル(約108億円)の売り込みをかけている。

ナイロビとラゴスを拠点とする同投資グループは、Africa Fund IIの立ち上げに向けた1億800万ドル(約194億円)の新規契約を締結し、同社の総資本を2億ドル(約215億円)に引き上げたと発表した。

マネージングディレクターのSteve Beck(スティーブ・ベック)氏によると、追加のリソースを使用して同社は大陸全体で12〜14の投資を計画しているとのことだ。

アフリカでは電気と太陽光を利用したオンデマンドモビリティが注目を浴びている。

ジンバブエの権力者であるStrive Masiyiwa(ストライブ・マシイーワ)氏によって設立された配車サービスのモビリティベンチャーであるVayaAfricaは、今週ジンバブエで電気タクシーサービスと充電ネットワークを立ち上げた。今後はこれらを大陸全体に拡大する計画を立てている。

南アフリカに本社を置く同社は、電気自動車である日産リーフを使用し、独自の太陽光発電充電ステーションを開発した。Vaya MobilityのCEOであるDorothyZimuto(ドロシー・ジムト)氏はTechCrunchに対し、同社はパートナーシップを完成させ、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、ザンビアなどの国々に電気タクシーサービスを展開する予定であると語ってくれた。

アフリカにおけるオンデマンドのモビリティマーケットは数年前から本格化しており、スタートアップや投資家、大手の配車サービス企業が人々や商品の動きをデジタルプラットフォームにもたらすことを目指している。

UberとBoltは、アプリベースのタクシースタートアップも数多くあるアフリカの主要経済圏で2015年から事業を行っている。また昨年以降、アフリカ大陸では主にモーターサイクルを中心として、配車サービスや配達用のEVを開発する動きが起きている。

環境における利点に加え、個人の収入と比較して燃料費がドライバーにとって一般的に高額なアフリカのタクシー市場において、Vayaは電気にシフトすることによる乗客とドライバーへの経済的利益も強調している。

充電ステーションネットワークへの電力供給にソーラーパネルを使用しているのも、Vayaの新しいEVプログラムがアフリカの電力網における課題を克服するための救いの手となっている。

Vayaはまた、ミニバスからトゥクトゥクタクシーまで、さまざまなオンデマンドの交通アプリケーションにおけるEVオプションを模索中だ。

5月のやや悲観的なニュースとしては、新型コロナ危機の経済的影響の結果として、アフリカに焦点を当てた技術人材促進企業のAndelaが一時解雇や給与の削減を余儀なくされたことであり、同社CEOのJeremy Johnson(ジェレミー・ジョンソン)氏がその事実をTechCrunchに認めている。

報酬の削減と135人の人員削減により、Andelaの従業員数は1199人へと減少した。同社のエンジニアは解雇の対象に含まれていない。

Chan Zuckerberg Initiativeを含む投資家からの、1億8100万ドル(約195億円)のVCに支えられている同スタートアップ。各プロジェクトのためにAndelaが選出したアフリカの開発者らが働いており、同社のクライアントベースは200社以上のグローバル企業で構成されている。

ジョンソン氏によると、Andelaのサービスに対する需要は減少しているとのことだ。

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(翻訳:Dragonfly)