TechCrunch Tokyo 2019「超早割チケット」販売開始、8月31日までの限定発売

TechCrunch Japan編集部では、通算9回目となるスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」を11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催する。現在、国内外のVCや投資家、スターアップ企業の経営者などに登壇を交渉中だ。すべてのゲストスピーカーが確定してない段階だが、今年もコアな読者のみなさんのために「超早割チケット」を用意した。本日7月16日より販売を開始する。

TechCrunch Tokyoは、設立3年未満のスタートアップ企業が競う「スタートアップバトル」や、会場の展示ブースを通じて国内のスタートアップのトレンドを知ることができるほか、国内外から招待した著名ゲストのキーノートスピーチ(基調講演)、ファイヤーサイドチャット(対話形式のトークセッション)、テーマに沿って複数人が議論するパネルディスカッションなど、シリコンバレー発祥のブログメディアの日本版が運営するTechCrunchならではセッションを多数設けているのが特徴だ。

一般チケットの価格は4万5000円(税込)だが、本日発売の超早割チケットは半額以下の2万円(税込)。このチャンスを逃さないでほしい。販売期間は8月31日までを予定しているが、予定枚数に達した場合はその時点で販売終了となる。

TechCrunch Tokyoの最大の目玉は、何と言ってもスタートアップバトル。例年100〜150社から応募が寄せられ、VCやエンジェル投資家、そしてTechCrunch Japan編集部が書類審査のうえ、20社程度を選抜する。書類審査をくぐり抜けてファイナリストとなったスタートアップ企業だけが初日の本戦に進むことができ、さらに5〜6社に絞られたあとファイナルラウンドに進出。勝ち抜いた6社は最終日に最優秀賞を目指して戦いを繰り広げるわけだ。今年はどんなスタートアップが登場するのか、編集部としてもいまから楽しみでならない。

もう1つの目玉は、ファイヤーサイドチャット。国内外のテクノロジー業界、スタートアップ業界のコアにいるキーパーソンを招き、毎回TechCrunch Tokyoでしか見られないセッションが目白押しだ。昨年は海外から、Periscope共同創業者で現在はTwitterのプロダクトリードを務めるケイヴォン・ベイポー氏、トヨタグループのCVCであるToyota AI Venturesでマネージング・ディレクターを務めるジム・アドラー氏、ソフトバンクグループ傘下のArm入りしたTreasure Dataの芳川裕誠氏などが登壇した。

国内では、昨年6月に上場を果たしたばかりのメルカリで社長を務める小泉文明氏、ナイアンテックでアジア統括本部長を務める川島優志氏、登壇直後の12月に100億円キャンペーンを開始してコード決済を国内に一気に広めたPayPayの中山一郎社長、ハリンダー・タカール副社長兼CTOなどが登壇した。

登壇者についてはすでに数人が確定しており、9月頭にはプログラムの大枠が完成する予定だ。登壇者や当日のプログラムについては8月以降に随時発表していくので期待して待っていてほしい。また、8月にはスタートアップバトルの募集も開始する。設立3年未満でローンチ1年未満もしくは未ローンチのプロダクトやサービスを開発しているスタートアップ企業は、ぜひこの機会を逃さないでほしい。

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「育成よりカルチャー」STRIVE堤氏が語るチーム成長の秘訣:TC School #15レポート1

TechCrunch Japanが主催するテーマ特化型イベント「TechCrunch School」第15回が6月20日、開催された。今年のテーマはスタートアップのチームビルディング。今シーズン2回目となる今回のイベントでは「チームを育てる(オンボーディング・評価)」を題材として、講演とパネルディスカッションが行われた。

本稿では、そのうちのキーノート講演をレポートする。登壇者は、グリーベンチャーズで共同代表であり、ベンチャーキャピタルSTRIVEを立ち上げた堤達生氏だ。堤氏には「アーリーステージ企業が陥る成長痛について」と題して、これまでに手がけてきた投資先スタートアップに見られる成長過程での“痛み”と、チーム成長で重視すべき点について語ってもらった。

3年目に消え始める「スタートアップの魔法」

まずは自己紹介も兼ねて、STRIVEと堤氏の経歴について説明してもらった。

STRIVEは、堤氏が天野雄介氏、グリーベンチャーズとの共同事業として設立したベンチャーキャピタルだ。5月14日には新ファンド「STRIVE III」がファーストクローズを迎え、運用を開始した。現在、新ファンドも含めて3本のファンド、合計220億円を運営しながら、引き続き資金を調達中だ。

STRIVEでは、シリーズAを中心としたアーリーステージのスタートアップへ2億〜5億円のサイズで投資を行っている。リード投資、かつハンズオン投資を特徴とし、採用支援も含め、熟練メンバーが経営者支援まで実施する。

堤氏は、20代前半はシンクタンクで経営コンサルタントとして、後半はグローバルブレインでアソシエイトとして働き、30代からは「事業をやりたくなった」とのことで、サイバーエージェントでベンチャーキャピタル事業も含む金融事業の立ち上げに参画。その後リクルートで新規事業開発部門に参加して「事業の作り方を学んだ」という。リクルートではコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の運用にも従事していた。

グリーには2011年ごろ参加し、CVC事業を立ち上げ。そして2014年、グリーを辞し、グリーベンチャーズとのジョイントベンチャーの形で、ファンドを設立、現在に至っている。
堤氏の投資先スタートアップの事業分野は幅広い。SaaSへの投資が多いが、メディア、マーケティング、ビデオやライブ、Eコマースなど多岐にわたっている。堤氏は「起業して投資家を選ぶときには、パートナーの得意分野、何に興味を持っているかを調べてから相談すれば、無駄な時間をショートカットすることができる」と話している。

STRIVE共同代表パートナーの堤達生氏

自己紹介に続き、堤氏からはスタートアップにおける「3年目の魔法」について解説が始まった。スタートアップにとっての魔法とは「創業初期の頃のワクワクした気持ちや、やってやるぞといった感覚」のこと。堤氏はその“魔法”が「だいたい創業3年目で消え始める」という。

3年目というと調達ステージでいえば、シードからシリーズAラウンドにあたる時期。「何となく思っていた成長とは違う」「VCや自分たち自身の期待していたものと成長とのギャップを感じる」と、少しずつ苦しみ始める企業が増える時期だと堤氏は話している。

「かつてのグリーや最近のメルカリなど、テンポよく成長する企業はごくまれ。大半のスタートアップは勢いで3年目を迎えた後、いったん成長の踊り場を迎える。この踊り場のことを“3年目の魔法が消える”といった表現をしている。いわゆる“成長痛”のようなものだと理解してもらえばいいかと思う」(堤氏)

ではその“成長痛”の症状とは、どういったものなのだろうか。堤氏はいくつかの典型的な症例を挙げる。

1つ目は「人員は何となく増えているが、隣の人が何をやっているのかよく分からなくなってくる」というもの。30人〜50人規模の組織になってくると起こり始めると堤氏はいう。

2つ目は「創業メンバーと新規メンバーの確執」。例えば「あいつは仕事はあまりできないのに、初期メンバーだから取締役に収まっている」といった不満が新たに参加したメンバーから出るというものだ。堤氏によれば、これも「メチャクチャよくある」症例だとのことだ。

「鳴り物入りで入った幹部社員がワークしない」という例も多いという。Googleなどの有名企業から“優秀な人材”として移籍した人物であっても、アーリーステージのスタートアップにフィットするのは、なかなか難しいと堤氏は述べている。「大企業の中でスター社員だったとしても、スタートアップで成功することとは必ずしもリンクしない。『意外とワークしない』という感想になるのは、採用のときの期待値とのズレの問題でもある」(堤氏)

また「経営者がイベントなど外部のネットワーキングには熱心になるが、内部とのコミュニケーションがだんだん減って『最近社長とあまり会話できていない』『社長がオフィスにいるかいないか、よく分からない』となることもよくある」そうだ。

これらの状況の結果は成長率に現れると堤氏はいう。3年目までは劇的に成長していた企業であっても、成長の鈍化が見られるようになる。

「これは起業家には気をつけて欲しいことだ」と堤氏は、その成長鈍化の理由について、以下のように説明する。「成長市場を狙って起業すること自体はよいけれど、市場の成長と企業の成長は必ずしも一致しない。市場の成長率が10%で、自社の成長率も10%だったら、それは成長していないことになる。マーケットの伸び率に乗っかっているだけ。マーケットの成長が鈍化してしまうと、その会社の成長も止まってしまう」(堤氏)

組織が大きくなり、人が増えることを喜んでばかりもいられない。「気が付くと意外に生産性が下がっていて、1人当たりの売上高が前年より低くなっている」ということも、よく見られると堤氏はいう。

これらの症例には、多くのスタートアップが直面すると堤氏は述べている。「すべての企業とは言わないが、自分が見ている投資先でも7割ぐらいは、このうちの何かしらの問題にぶつかっている」(堤氏)

成長痛を意識したら3つの問いに立ち返る

スタートアップの魔法が解けたとき、経営者が口にしがちなのが「最近チームがワークしていないんですよね」というセリフだと堤氏は続ける。

「経営者は責任回避で言っているわけではないと思うが、チームがワークしないのは、そもそも採用した人が間違っているのが原因。なぜ採用してはいけない人を採用してしまうのか。それは採用戦略がブレているからだ」(堤氏)

戦略を決めたのは、他ならぬ経営者自身のはず。社員が増えても売上は思ったより上がっていないという状況になるのは、「チームや個人の問題というよりも、そもそも戦略に問題があるから」と堤氏は話している。

では、どうすれば戦略のブレを起こさずに済むのだろうか。堤氏は3つの基本的な問いに立ち返るべき、と次の項目を挙げた。

この3つの質問は、堤氏が投資をする前に必ず起業家にするものだという。「これらにスパッと答えられれば、すぐにも投資したい」という堤氏。そして、同じ問いをスタートアップの魔法が切れかかったときや、経営者が悩んでいるときに、あらためて確認するとよいと述べる。

「特に1つ目の問いは一番重要。『この会社の提供価値は何か』ということだが、ここがグレーになっているとブレる。勢いよく成長していくにつれて、経営者のやりたいことはどんどん広がっていく。広がること自体はよいが、その分どうしても密度が薄くなっていく。そうなると、そもそも自分が何がやりたかったのか、提供する価値は何なのかがぼやけ、戦略がブレていくことに重なっていく」(堤氏)

先に挙げた成長痛の症例が出てきたと感じた場合には、自分が何屋なのか一言で言えるかどうか、自問自答してみて欲しいと堤氏は話している。

アーリーステージでは育成よりカルチャーづくりを重視する

堤氏は「今日のテーマからは少し外れてしまうかもしれないが、3年から5年のアーリーステージのスタートアップでは、『チームを育てる』ことを考える余裕はない」と述べている。

それでは、経営者は何をすべきなのだろうか。堤氏はまず「ビジョン・ミッションをつくり、浸透させること」を挙げる。

「メルカリなどがうまいところだが、いかに文化をつくり、浸透させられるかどうかが重要。これにのっとって採用基準も決まってくる。みんな『スキルで採用してはダメ』と頭では分かっていると思うけれども、学歴や職歴でどうしても見てしまいがち。ビジョン・ミッションをつくって、そこに合う・合わないというのを採用のもっとも大切な評価基準にしていけばよいのではないかと思う」(堤氏)

次いで堤氏が経営者がすべきこととして挙げたのは「自分にとって大切な人順のリストをつくること」。「誤解を招く表現だけれども」と断りつつ、堤氏がその詳細について説明した。

「社員に順番をつける、ということを経営者には必ずやってほしい。というのは、正直に言って、会社がずっとうまくいくとは限らないので、常に入れ替えをしていかなければならない。場合によってはリストラしなければならないこともある。またそうした状況でなくても、常に『自分にとって何が本当に必要なのか』を考える意味でも、人に順序を付けてほしい」(堤氏)

社員が100名規模を超えたら、自分が見える範囲で順序を考える、といった形で応用していってもよいとのこと。「嫌な言葉に聞こえるけれど、これは本当にやっておいた方がいい」と堤氏はいう。

カルチャーづくりの方法としては、STRIVEの投資先でもあるRettyの行動指針づくりのケースが挙げられた。企業の成長ステージによって重視する点も変わるため、Rettyでは2年ごとに行動指針を更新しているという。

行動指針は、幹部社員だけではなく全社員(約100人)でつくるそうだ。顧客やプロダクトなどの課題感について「考えさせて、意見をアウトプットさせること」が大切で、業務とは異なる組み合わせでプロジェクトチームを組み、つくるという。

そこで出し合ったアウトプットは、合宿形式で全員でシェアし、集約してだんだん形にしていく。また、形にした行動指針を「どうやって浸透するかを全員で考える」ことが、もっとも大事だと堤氏。Rettyでは「壁に貼るとかいうことだけではなく、評価や採用、ビジネスモデルにどう反映するかをみんなが考え、浸透させている」ということだった。

評価制度をつくる代わりにRettyでは、カルチャー、行動指針に合っているかを判断基準にしていた時代もあったそうだ。「細かい評価制度をつくっても、30〜50人規模のアーリーステージの企業ではほとんどワークしない。カルチャーをつくりあげて、それに合うか合わないかで判断するのがよいと思う」と堤氏はいう。

またメンバーの育成についても「小さな組織では難しい」と堤氏。「特にアーリーステージでは育成や評価制度を考えるより、全社にカルチャーを浸透させた上で、それぞれのメンバーにチャレンジングな仕事をいかに用意できて成長させられるかが大事なのではないか」と話していた。

TechCrunch Japanは本日25時30分よりWWDC19解説生放送を放映、その見どころは?

アップルは太平洋標準時の6月3日午前10時(日本時間6月4日午前2時)に、毎年恒例の開発者向けイベント「WWDC」を開催する。今年のWWDC19の開催場所も、昨年と同様に米国カリフォルニア州サンノゼにあるMcEnery Convention Center(マッケンナリー・コンベンション・センター)。会期は7日までの5日間。

プログラムを見てみると、詳細は未定(To Be Announced)ながらタイトルが日本語や簡体字、ハングルで記載されたセッションが用意されているので、もしかすると各国に特化した発表があるのかもしれない。しかし、太平洋標準時6月3日午前10時からの基調講演以外はNDA(守秘義務契約)が前提なので、残念ながら一般メディアでは各セッションの詳細を伝えられない。

TechCrunch Japanでは、3月のiPad発表会に引き続きWWDC19のライブ中継を見ながらその内容を解説するニコニコ生放送を放映する。放送開始時間は本日25時30分(6月4日午前1時30分)。終了時間はWWDC19の基調講演が終わり次第。放送中には、姉妹サイトであるEngadget日本版の速報記事も適宜紹介・解説する予定だ。

【iOS13?新Mac Pro発表!?】アップルWWDC2019 発表イベント実況~Engadget日本版 & TechCrunch Japan

さて、TechCrunch Japanでは、すでにWWDC19で発表される内容を予想した記事を公開しているが、実際にどこに注目すべきかを改めてまとめておく。

関連記事:週明け開幕のWWDC 2019でアップルが発表するモノ

 

■iOS

iOS 13がプレビューされる予定。新機能としてウワサされているのは、昨年リリースのmacOS Mojaveで搭載されたダークモード。UIの基調色を黒系にすることで落ち着いた印象になるが、個人的には正直いってどうでもいい。一方で話題の5Gやアップルが注力しているARについて大きな発表があるのは来年に登場予定のiOS 14になるという。このタイミングで5Gについてまったく触れないとなると、かなりの出遅れ感はある。

個人的にずっと前から期待しているのが「メッセージ」アプリのオープン化だ。現在、米国では送金などにも対応している同アプリだが、いまのところiOSデバイスやMacとしかやり取りできないため使用範囲がかなり限られてしまう。LINEのようにiOSとAndroidに両対応、もしくはFacebookメッセンジャーのようにスマホやタブレット端末、PCで同じアカウントを共有できるようにして、ユーザーの拡大を目指すべきではないか。Goolgeと協力してデフォルトのメッセージアプリの共通化を進めてもいいかもしれない。

米中の貿易摩擦によってファーウェイ製品を閉め出している米国だが、一方で中国でのiPhoneは人気に陰りが見える。仮にG20で米国と中国が妥協点を見い出して和解しても、ハードウェア性能でファーウェイ端末を圧倒できなくなっているiPhoneが、中国で再びシェアを伸ばすことは考えにくい。となるとアップルは大幅な戦略の練り直しが必要だ。

iPhoneのシェアが高い米国や日本を重視したサービスや機能をiOSに組み込むべきだろう。PayPayとLINE Payの壮絶な殴り合いでキャシュレス決済やユーザー間送金が身近になってきた日本なら、メッセージアプリの送金機能やマルチプラットフォーム化は歓迎されるかもしれない。アニ文字の種類を増やしている場合ではないのだ。

 

■macOS

最近のmacOSは、iOSに先行導入された機能を取り込む傾向が強いが、昨年登場したmacOS Mojaveでは、iOSの機能ではなくアプリごと取り込んだことで話題になった。もちろん、WWDC19で期待するのはMarzipan(マジパン)だ。

Marzipanとは、iOSとmacOSのソースコード共通化できるアプリ開発環境のこと。WWDC18でこの開発環境のβ版を利用して、株価、ボイスメモ、ホームなどのiPadアプリがmacOSアプリに移植された。とはいえ、タッチパネル操作が前提のiOSデバイスと、キーボードとマウス(トラックパッド)の操作が前提のMacではアプリのUI/UX設計が大きく異なる。従って実際にはまったく同じソースコードを使うことは難しいが、果たしてどこまで少ない手間でmacOSに最適化できるのか注目だ。

いっそのこと、Apple AシリーズのSoCで動作するmacOS、もしくはタッチパネル操作が可能なMacをリリースしてほしいところだ。特に後者が登場すれば、Marzipanによる単一コード化はさらに容易になるほか、iOSとmacOSの融合による新たなユーザー体験を生み出せるかもしれない。

 

■watchOS

アップルの数少ない成長分野であるApple Watchは、健康をより重視する機能の搭載を期待したい。既存機能の拡張としては、ユーザーの動きに応じて自動的にエクササイズの種類を判別する機能の精度向上、計測できるバイタルデータの種類を増やすといった内容もうれしいところ。WWDCでは、おそらく米国の大手医療機関の要人がゲスト登壇していろいろ話すのだろう。日本在住のユーザーとしては、心電図機能を早く使えるようにしてほしいところ。

 

■tvOS

ソフトウェアのApple TVの登場で、先行きがよくわからないハードウェアのApple TV用のtvOS。個人的には、Apple TVアプリが予定どおりAmazonのFireTVに対応すれば、ハードウェアのApple TVの必要性はかなり下がると感じている。サブスクリプションなどをサービス事業を柱とするならば、ハードウェアとそれにともなうOSの開発はこの際きっぱり中止して、アプリ開発に注力する手もあるのではないか。

 

■ハードウェア

ウワサされているのは、もちろんMac Pro。2013年以来6年ほど新モデルが登場しておらず、待たせるにもほどがある。これまでのアップルの発表では、新Mac Proはモジュール形式のマシンになるとのこと。CPUやGPU、そしてロジックボードまでを適宜取り替えたり、増設したりできる仕様になるのか期待して待ちたい。スペック的には、CPUにXeonプロセッサ、GPUにRadeon Pro Vegaの最新版が採用されるのだろう。できればGeForceも使いたいが。

とはいえ、いまどきMac Pro級のパワフルなマシンが必要なユーザーは限られている。本体価格が高価すぎると、iMac Pro同様一部のプロフェッショナルなユーザーだけのマシンとなり、先行きがまた不安になってくる。モジュール形式を生かして最小構成は10万円台の手頃な価格設定にし、オプションでいろいろ追加していくと100万円超になるといった夢のある設計にしてほしい。もちろん、LEDでピカピカ光るようなギミックはいらない。

そして、アップルがいま提案すべきなのはAR/VRコンテンツの開発・視聴環境としてMac。Facebookからは、6DOF対応VRヘッドマウントディスプレイの最高峰であるOcurus Rift Sが出荷されたばかりなので、少なくとももRift Sへの完全対応を果たしてほしいところ。AR/VRの開発環境についてはWWDC18でも概要が発表されたが、VR/AR市場を本気で獲りに行くという力強いメッセージをアップルから聞きたいものだ。

6月20日開催のTC SchoolにSTRIVEの堤氏が登壇、テーマは「チームビルディング(2) 〜チームを育てる〜」

4月開催の第14回に続き、6月20日に第15回で今年2回目の「TechCrunch School」の開催が決定した。TechCrunchでは、例年11月に開催する一大イベント「TechCrunch Tokyo」のほか、テーマを設定した80〜100人規模のイベントであるTechCrunch Schoolを開催してきた。

前回の4月10日のTechCrunch Schoolは、スタートアップのチームビルディングに焦点を当てた全4回のイベントの1回目。テーマは「チームを集める」で、起業時の創業メンバー、会社設立後に早期に入社した初期メンバーのあとに必要となる中核メンバーの採用に焦点を当てた。

今回はこの全4回のシリーズの2回目となり、テーマは「チームを育てる(オンボーディング・評価)」。イベントは、キーノート、パネルディスカッション、Q&Aの3部構成となる。

キーノートでは、グリーベンチャーズで代表パートナーを務め、5月14日からは新しくベンチャーキャピタルファンドとしてSTRIVEを立ち上げた堤 達生氏を招き、これまで手がけてきた投資先スタートアップのチーム育成について語ってもらう予定だ。

パネルディスカッションでは、堤氏のほか、ボイスメディア「Voicy」を開発・運営するVoicyで代表を務める緒方憲太郎氏、ホテル価格のダイナミックプライジングを実現するサービス「MagicPrice」を開発・運営する空でCEOを務める松村大貴氏、そしてエン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4名で、チーム育成に関わる悩みや問題点を議論していく。

そのあと、来場者を交えたQ&Aセッションとミートアップを開催する予定だ。もちろんQ&Aセッションでは、おなじみの質問ツール「Sli.do」を利用して会場からの質問も募集して、その場で回答する予定だ。

イベント会場は、TechCrunch Japan編集部のある東京・外苑前のVerizon Media/Oath Japanのイベントスペース。セッション後はドリンクと軽食を提供するミートアップ(懇親会)も予定している。

スタートアップ経営者はもちろん。スタートアップへの転職を考えているビジネスパーソン、数十人の組織運営に課題を抱えているリーダーなど幅広い参加をお待ちしている。

TechCrunch School #15概要

チームビルディング(2) 〜チームを育てる〜
開催日時:6月20日(水) 18時半開場、19時開始
会場:Verizon Media/Oath Japanオフィス
(東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル4階)
定員:80人程度
参加費:無料
主催:Verizon Media/Oath Japan
協賛:エン・ジャパン株式会社

イベントスケジュール
18:30 開場・受付
19:00〜19:05 TechCrunch Japan挨拶
19:10〜19:40 キーノート(30分)
19:45〜20:25 パネルディスカッション(40分) Sponsored by engage
20:25〜20:45  Q&A(20分)
20:45〜21:30 ミートアップ(アルコール、軽食)
※スケジュールは変更の可能性があります。

スピーカー
・キーノート
STRIVE代表パートナー・堤 達生氏

・パネルディスカッション、Q&A
STRIVE代表パートナー・堤 達生氏
Voicy代表・緒方憲太郎氏
空CEO・松村大貴氏
エン・ジャパン 執行役員・寺田輝之氏
TechCrunch Japan 編集統括・吉田博英(モデレーター)


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5月31日にEngadgetと共同開催「5G時代のガジェットとIoT」を語るイベント

TechCrunch Japanは5月31日、姉妹メディアEngadgetと合同で次世代通信技術5Gをテーマとしたイベントを開催する。それぞれの編集部が5Gにまつわるゲストとのトークセッションを繰り広げる。

5Gといえば、安定した高速通信で低遅延、それでいて多人数の同時接続を可能にする通信技術。米国では大手キャリアのVerizonが、韓国では大手3キャリアであるSKテレコム、KT、LGユープラスがそれぞれサービスを開始(TechCrunch JapanはVerizonグループに属している)。日本では2020年春にNTTドコモやKDDI(au)がサービスを開始する見込みだ。

スマホやGPSが普及したことで、さまざまなスタートアップがさまざまなサービスや製品を世に送り出してきた。前述のように、これまでとは次元の違う特徴を備える5G通信のサービスが始まることで、さらに新しいサービスやプロダクトが登場しそうだ。

TechCrunchでは、バーチャルイベントプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターで代表取締役を務める加藤直人氏を招き、ファイヤーサイドチャットを開催予定。5G通信によってバーチャルアーティストの活動がどのような広がりを見せるのかを、加藤代表にじっくりと聞いていく。

Engadget meetup Special featuring.TechCrunch開催概要

開催日時:5月31日(金)19:15~21:45(予定)
開催場所:都内某所(選定中)
参加費用:無料
応募条件:参加者のみなさまのSNSやイベント記事などでの顔出しがOKな方。未成年の方も参加いただけますが、必ず保護者の方が最後まで同伴されることが条件となります。

また、TwitterやFacebookなどでイベントの模様をどしどし発信できる方だとうれしいです。

※会場に限りがありますので応募者多数の場合は抽選とさせていただきます。当選結果は5月23日から順次ご連絡いたします。
※未成年の方が参加される場合は必ず保護者の方が最後まで同伴いただきますようお願いします。保護者の方がいらっしゃらない場合は入場をお断りさせていただきますので予めご了承ください。

【タイムスケジュール(予定)】
19時00分:受付開始
19時15分:イベント開始(トークセッションなど)
21時00分:懇親会開始
21時45分:懇親会終了、閉場


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TechCrunch Tokyo 2019は11月14日、15日に開催決定、9回目を迎えるスタートアップの祭典

TechCrunch Tokyo 2019の開催日が2019年11月14日、15日に決定した。TechCrunch Japanが主催する今年で9回目を迎えるテクノロジーとスタートアップの祭典で、会場は昨年と同じく東京・渋谷ヒカリエとなる。

昨年はTechCrunch Tokyoのピッチコンテスト「スタートアップバトル」に100社超のスタートアップが参加し、最優秀賞にはムスカが輝いた。もちろんスタートアップバトルの開催も決定しており、8月ごろから応募受付を開始する予定だ。応募資格は、2016年10月以降に設立(上場企業の子会社でないこと)で、ローンチ1年未満(2018年10月以降)もしくは未ローンチのプロダクトやサービスを擁する企業だ。

昨年のスタートアップバトルは、サラブレッド化したイエバエでタンパク質危機の解決を目指す、ムスカが最優秀賞となった

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国内外の著名スピーカーの登壇が目白押しだった昨年は、有料入場者数は過去最高の2200人超え。その結果、1日目の朝9時から始まる最初のセッションから立ち見が出るほどの盛況だった。今年も国内外の注目人物への登壇依頼を進めており、正式決定次第TechCrunch Japanのサイトで順次発表する予定だ。まだ言えないが、あっと驚く人物との交渉も進めているので大いに期待して待っていてほしい。登壇者の決定の記事は7月ごろから順次アップしていく予定だ。

昨年は、Toyota AI Venturesのマネージング・ディレクターJim Adler氏とのファイアーサイドチャットからイベントがスタート

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TechCrunch Tokyoは、来場者の6割強が初参加というスタートアップ関連では珍しいイベント。参加企業も毎年変わっており、スタートアップの今を知る絶好の機会となるはずだ。チケットの販売は7月下旬〜8月上旬を予定している。こちらも準備が整い次第当サイトで告知するので、楽しみに待っていてほしい。

昨年の登壇者

Android Qは「キッシュ」?来週のGoogle I/O 2019の発表を予想

デベロッパーカンファレンスの季節がやってきた。FacebookのF8の後は、Google I/O 2019が来週予定されている。会場はマウンテンビューの本社に隣接する野外劇場だ。今年のGoogle I/Oはビッグイベントになりそうだ。今週の第1四半期決算のカンファレンスコールでCEOのサンダー・ピチャイ氏が今年のデベロッパーカンファレンスに言及し、さまざまなプロダクトの発表があると示唆したからだ。

現在流れている各種情報8も合わせて考えるとマウンテンビューのアンフィシアターからAndroid OS、アシスタント、ハードウェアに至るまで数多くのホットなプロダクトがお披露目されそうだ。以下に「何が発表されそうか?」を簡単にリストアップしてみた。

Android Q

次世代Android OSはベータ2がリリースされているが、ニックネームは何になるのだろう?キッシュ?キンジン?後者は初めて聞く名前だったのでググってみた。どうやらブラジルで人気があるココナツ入り焼プリンみたいなものらしい。

ともあれ、I/Oではまだニックネームは発表にならないだろうが、Android Pieの後継OSについてもっと詳しく知ることができるのは間違いない。毎年、Androidはカンファレンスのセンターステージを占めてきた。夏にリリースされるというスケジュールを考えれば、Android v10の製品版に近い新しいベータを見ることができると思う。

現在わかっているのはプライバシーと認証の改良、Bubblesを利用したマルチタスクなどだ。Android Qのベータ2で公開されたBubblesはFacebookのチャットヘッド風の通知アイコンだが、I/Oではさらに新機能が紹介されるだろう。感圧型タッチ機能やダークモードの拡大などが噂されている。

折り畳みディスプレイを展開

フォームファクターの画期的改善に役立つはずだった新テクノロジーはやっかいな逆風に悩まされている。その原因はなんといっても大々的に宣伝された後でつまづいたGalaxy Foldだ。 しかしカンファレンスコールではGoogleは折り畳もディスプレイに関して強気な姿勢を崩さなかったが、そうせざるを得ない事情もあった。沈滞ぎみのスマートフォン市場にカツを入れるためには、Androidを折り畳み式にするのが近道だと考えているのだと思う。

当面棚上げになってしまったGalasy Foldだが、再リリースのスケジュールを早く知りたい。フォルディングスマートフォンはHuawei(ファーウェイ)のMate Xをはじめ、Motorola、Xiaomi(シャオミ)、TCLなどのメーカーが発表を予定している。Googleでは折り畳みディスプレイを次世代Androidのメインにしたいはずだ。

低価格のPixel

I/Oはもともとデベロッパーカンファレンスなので消費者向けデバイスの発表の場所としては不向きだった。しかし来週はこの点に変化があるかもしれない。サンダー・ピチャイ氏は四半期決算の記者会見でPixel 3aの発表を予告した。 当初Pixel Liteと呼ばれていたこのモデルはGoogleのスマートフォンのフラグシップ、Pixel 3の低価格版だ。

噂ではこのモデルの定価は500ドル前後になり、ヘッドフォンジャックが復活するという。Bluetoothヘッドフォンの価格が高すぎて低価格版Pixelで広く利用されるのは無理という判断のようだ。【略】

ゲーム

Googleは3月のGDCで新しいゲーム配信プラットフォームとしてStadiaを発表して注目を集めた。ライブストリーミングテクノロジーによってハードウェアやOSと無関係にゲームがプレイできる可能性を開いたことがGDCでStadiaに強い関心が注がれた理由だ。しかしGoogleはGDCではテクノロジーの詳細の発表を控えた

ピチャイCEOはカンファレンスコールでStadiaについても触れ、I/Oで何らかの発表があることを匂わせた。

スマートホーム

Google Hardware Event 2018

スマートホームはビジネスとしてなかなか難しい局面だが、GoogleアシスタントはAmazon Alexaより機能面で優っている点が多い。Home Mini、Hubの売れ行きも好調だ。I/Oでアシスタントのアップデートが発表されるのは間違いない。おそらくAI、機械学習に関連した機能となるだろう。

またハードウェアとして廉価版PixelとともにNest Hub Maxが発表される。リーク情報によればこのデバイスは名前のとおり大型で、10インチ画面を備え、スマートホームのハブの役割を果たすという。

その他.

AR(拡張現実)構築ツールのARCoreについても発表があるだろう。今週アップデートされたWear OSAndroid Automotive、 ChromeOSなどにも時間が割かれるはずだ。ただしこの方面で驚くような発表は期待していない。

我々は来週マウンテンビューのアンフィシアターからライブでイベントを報告するのでご期待いただきたい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

スタートアップのチーム作りを創業者・VC・人材会社が語る:TC School #14レポート2

TechCrunch Japanが主催するテーマ特化型イベント「TechCrunch School」の新シーズンが4月10日、スタートした。新シーズンは、スタートアップのチームビルディングをテーマに、全4回のイベント開催が予定されている。

今シーズン初回、そしてTechCrunch School通算では14回目となった今回のイベントは「チームを集める」が題材。起業時の創業メンバー、設立後の初期メンバーに続く中核メンバーの採用に焦点を当て、講演とパネルディスカッションが行われた(キーノート講演の模様はこちら)。

本稿では「TechCrunch School #14 Sponsored by engage」のパネルディスカッションの模様をお伝えする。登壇者はMeily代表取締役CEO 川井優恵乃氏、レキピオCEO 平塚登馬氏、インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏、エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏の各氏。モデレーターはTechCrunch Japan 編集統括の吉田博英が務めた。

スタートアップ、VC、人材会社に聞くチーム組成

Meilyの川井氏とレキピオの平塚氏には、アーリーステージのスタートアップ経営者として、今まさに行っているメンバー集めの状況や課題について、赤裸々に語ってもらった。また、キーノート講演にも登壇した村田氏とエン・ジャパンの寺田氏からは、これまで数多くのチームビルディングや採用の事例を見てきた経験から、アドバイスをうかがった。

まずは各氏から自己紹介があった(村田氏とインキュベイトファンドの紹介はキーノート講演レポートを参照してほしい)。

トップバッターはエン・ジャパンの寺田氏だ。寺田氏は2002年、当時スタートアップだった人材サービスのエン・ジャパンに入社し、現在は執行役員を務めている。また2018年に設立されたLINEとのジョイントベンチャーで「LINEキャリア」を運営するLENSAの代表取締役にも就いている。

エン・ジャパンでこれまでに「エン転職」「キャリアハック」「カイシャの評判」といったウェブサービスを立ち上げてきた寺田氏が、現在力を入れているサービスは「engage(エンゲージ)」だ。

2016年に「3人でプロダクトを立ち上げた」というengageは、企業が無料で独自の採用ページが持てる採用支援ツール。「求人情報が広く届けられるように、企業にもっと情報発信してもらいたい」という思いから生まれたそうだ。

「立場上、採用側、求職者の両方から話を聞くが、採用する側からは『なかなか採用ができない』、求職者からは『人材サービスに登録されている求人しか、選択肢がない』という声が多い。それならば、求人したい企業が自社の採用情報をもっと発信できるようにすれば、求職者にとっても良いのではないか、と考えたサービスがengageだ」(寺田氏)

engageは現在19万社が利用中で、今では、毎月1万社ベースで増加しているという。

engageでは、自社独自の採用ページ作成ツールのほかにも、遠隔地や時間が合わない求職者とのビデオ面談ツール「Video Interview(ビデオインタビュー)」や、自社とのカルチャーフィットを数値で可視化できる適性検査「Talent Analytics(タレントアナリティクス)」、入社後の早期離職を防止する「HR OnBoard(エイチアールオンボード)」といった採用支援ツールも提供する。また、Googleの検索結果やIndeedなどのサイトにも、求人情報が自動掲載されるようになっている。

寺田氏は「engageは人材を集めるだけでなく、定着までの採用支援ツールをワンパッケージで提供している。ずっと無料で使えるので、これからチームづくりを行うスタートアップにはぜひ、お勧めしたい」と話す。

続いて紹介があったのは、レシピアプリを提供するレキピオの平塚氏。アプリ「レキピオ」は、いま家にある食材を選ぶと、AIがメニューを提案してくれるというものだ。

和食、洋食などの好みや食事の相手、人数といった条件を選べば、登録した食材とあわせて推測を行い、メニューが提案される。料理を選択すると、詳しいレシピとともに足りない食材が表示されるので、買い物にも便利。選んだメニューを実際に作るときには、食材を使い切ったかどうかをチェックすることで、次のメニューを考えるときに生かすことができる。

平塚氏は京都出身で先月大学を卒業したばかり。在学中にレキピオを設立して、現在約1年半が経過したところだ。2018年の秋にシードラウンドで合計約5000万円を資金調達し、現在は東京で事業を展開している。

最後にMeilyの川井氏が自己紹介。Meilyは美容医療のリアルな情報を得られるサービス「Meily」を提供している。川井氏は自身が美容整形を行っていて「合計500万円ぐらい、(自動車の)LEXUSが買えるぐらい費やした」という。

「美容医療の利用者は日本では少ないのではないかと思われているが、実は整形大国と言われる韓国よりも日本の方が施術件数は多く、しかも年々成長している」と川井氏。「美容医療の市場規模が年間7200億円、そのうち約20%が広告に投下されると考えると、およそ1400億円〜2000億円のマーケットがある」と同氏は分析している。

容姿について「コンプレックスをなくして生きたい」と美容整形を決意した川井氏は、情報収集を始めたのだが、検索サイトではクリニックのホームページや広告ばかりが表示され、「二次情報に対する不信感が否めなかった」と語る。またクリニックへカウンセリングに通っても「医師や看護師の言うことも信じられない」状況。実際に顎の施術後に2カ月間、顎が長い状態が続き、医院から「大丈夫」と説明されても、ずっと不安を感じたまま過ごしたこともあるそうだ。

「美容整形をするユーザーは、実際に施術を受けた人の意見が知りたいんです」と語る川井氏。情報収集を行うため、TwitterやInstagramで自身も情報発信を行っていたそうだが、まず「検索に情報が引っかからない」、そして「SNSでは質問しづらいし、したとしてもフォロワー数が少ない人では回答が得にくい」、さらに「症例は、知っている病院のホームページで見るしかなく、探しづらい」という3つの課題があることが分かったという。

この3つの課題を一度に解決できる、「美容医療情報の検索」「ユーザー同士のQ&A」「クリニックの症例紹介」機能を備えたアプリとして、Meilyは2018年4月に作られた。

欲しい人材、機能を手に入れるためには

パネルディスカッションは、まずレキピオ平塚氏、Meily川井氏にチームビルディングに関する質問に答えてもらい、採用の専門家である村田氏、寺田氏からは、それに対して経験談やアドバイスをもらうという形で進められた。

最初の質問は「会社をどれぐらいの規模、人員にしたいと考えているか」というもの。平塚氏は「世界のリーディングカンパニーを目指すというビジョンを掲げているので、規模には際限はない。できる限り高みを目指したい」と回答した。

レキピオCEO 平塚登馬氏

とはいえ「直近の話で言えば、少数精鋭にしておきたい」という平塚氏。「現在、副業なども含め、全部で10人ぐらいの従業員がいるが、今はちょっと会社規模に対して大きいのでは、という状況。人員を増やしすぎると意思決定がふらつくし、マネジメントコストもかかる。人数が少ないときの方がスピードが出るな、ということは感じている」として、「会社の規模自体は今後大きくしていくが、比較的、少数精鋭になるようにしていきたい」と述べている。

初期メンバーの人員について、村田氏は「理想は社長がコードを書けること。1人フルスタックの人がいれば、意思決定に迷わずに、すごく簡単にプロダクトが作れる。最低限のコードが書ける人が何人もいるよりも、スカッとプロダクトが作れる人が1人いれば、少数精鋭も実現できる」と話す。

「最近ではクラウドソーシングも便利になってきている。ルーティンワークについては『顔が見えなくてもいい』と割り切って、そういう人へ振るのもよいのではないか」(村田氏)

川井氏は「会社規模、人員についてはそれほど深くは考えていない」と言う。現在Meilyには、フルタイムで川井氏を含めて7名がいる。

大学在学中だった創業時、理系学部の友人にもエンジニアの紹介を頼んだそうだが「(学業など)タスクが多すぎて無理」と断られ続けた川井氏。創業メンバーは、イケメン探しに使っていた「Tinder」で見つけたという。そのチームの作り方も独特だ。

「Tinderで肩書きに“UX/UIデザイナー”と書かれた人を見つけて、スーパーライク(超いいね)を送った。返信が来たので『アプリを作りたいので、会って話を聞いてください』と言って会い、企画書を見せたところ、興味を持ってくれた。何度もディスカッションを重ねていくと、その人が『実はチームを持っている』と言うので、最後はチームごと引き抜いた」(川井氏)

川井氏が今後募集したい人材は、マーケティング担当者だという。

「どのスタートアップに聞いても、マーケティング担当はみんな探している。ゼロイチのフェイズに参加してくれる人で、数字を見て改善ができ、どのチャネルを使えばいいか選定できる人は、本当にいない」(川井氏)

村田氏は、ネットを使ったプロダクトのマーケティング手法に関しては「Googleでアカウントエグゼクティブをやっているような人に、一度方法を聞ければ、ずっと使える知識が身につく」として、採用するというよりも、知識のある人にレクチャーを受けることを勧めている。

Googleのリスティングにせよ、FacebookのAdネットワークにせよ、やり方が分かれば、後はひたすら運用するだけだという村田氏。「効率的なCPAへ落とし込むためのゴールは確実にある。フレームワークを一度作れば、誰でも回せるようになる」と話す。

またクリエイティブの選定に関しても、広告配信のパターンと同様にいくつかのパターンを用意してテストを行い、効率の良いものだけを残すということを繰り返していけば、パフォーマンスの良いものだけが残っていく、と村田氏。「それを実施するだけでも、とてもいいマーケティングになる」という。

今後募集したい人材へ話を戻そう。レキピオでは「僕がビジネス面やマーケティングを1人で担当しているので、エンジニアをひたすら集めている」と平塚氏は言う。

「特定の技術スタックにはこだわらない。初期のスタートアップにエンジニアとしてジョインしようと思ってくれる人なら、熱量は間違いなくある。開発環境も悪い状況で入ろうと思ってくれている時点で、スキルはあると考えている。例えばJSしか業務で使っていなかったとしても、そういう人はバックエンドも書けるようになる」(平塚氏)

寺田氏は、エンジニア採用のコツについて、このように説明している。

「1カ所に掲載された採用情報を見ただけでは、エンジニアも企業を判断できないはず。だから、いろいろなところで、いろいろな角度から情報を出しておくことが大事だ。今いるエンジニアたちが、どういう人が良くて、どういう人はちょっと違うと思っているのかをブレストして出してみると、何となく自分たちが評価する/評価しないエンジニア像が分かってくる。そこで分かった『求めるエンジニア像』や、用意している環境、やっていきたいことを、場を持って発信していくといい」(寺田氏)

みんなが利用するサービスでのスカウト合戦よりは、そこで興味を持ってくれた人に、より深く理解してもらえる場へ誘導して、説得することが大切、という寺田氏。「これはエンジニアに限ったことではなく、採用の悩みを抱えている企業が取るべき、基本的なスタイルだ」と述べている。

カルチャーフィットは“間”で見極める

平塚氏は「どんなエンジニアでも採用したいというわけではなく、今のメンバーと仲良くできなさそうであれば、どれだけ技術スタックが高くても採用しない。チームブレーカーではない、“いい奴”を探している」という。

ではスタートアップの人材採用では必ずというほど課題に挙がる、採用候補者とのカルチャーフィットの見極め方はどのようにしているのだろうか。

「スタートアップの人たちには、エンジニア出身の人も多いし、真面目な人が多いけれども、僕はその正反対。プライベートでも攻撃的な人間だ」という平塚氏は、「自分の意見をはっきり言わない人や、ぼそぼそとしゃべる人、挨拶に勢いがない人だと、面接が10分ぐらいで終わってしまうこともある」という。

「『言い方が怖い』と言われることもあるので、4〜5人で向かい合って毎日仕事をしている現状では、それに耐えられる人でなければフィットしないかなと思う」(平塚氏)

Meily代表取締役CEO 川井優恵乃氏

一方、川井氏は、今、採用で一番重視していることとして「絶対に辞めないかどうか」を挙げる。

「途中で辞められたら本当に困る。市場は絶対にあるので、後はやりきるかどうかだと思っている。できない理由を探す人ではなくて、どうにかする。その覚悟があるかどうかというのを一番見ている」(川井氏)

Meilyの創業メンバーは現在、川井氏以外に6人いるが、「2回資金ショートしても、受託業務でも、アルバイトしてでも何でもやって、絶対にやり遂げる」と言ってくれているそうだ。性格が合わないときもあるが「本当に信頼している」という川井氏。「同じような人を探すとなると、やはり、そこの部分が重要」と話す。

村田氏は、スタートアップの創業初期に加わる人の見極め方について「社員数が少ない時点では、相手と自分の“間”、話すテンポや、自分の理解のスピードと近いかどうかという点が大事だと思う」と語る。

「優秀かどうかというよりも、一緒に仕事をしてうまくいくことが大切。優秀さは会社がある一定のところへ到達するまでは、あまり関係ないのではないかと感じる。だから最低限、絶対にこの人は裏切らない、嘘をつかない、コミットメントが高い、というところ以外を見るとすれば、コミュニケーションが楽だ、うまく合いそうだと思ったら、すぐに採用した方がいい。逆にすごく優秀だと言われている人であっても、そこが合わないとムチャクチャになってしまう可能性が高い。だからスキル重視ではなく、人物重視というのはすごく大事だ」(村田氏)

寺田氏も「僕も“間”は重要だなと思っている」と発言。「飛行機が飛ばなかったとして、そいつと一緒に一晩過ごせるかというテスト(Googleの採用面接で面接官の判断基準となっている『エアポートテスト』のこと)と同じで、それくらいの関係性になれるかどうかということは重要。空気感は平塚さんが言うように、会ってみなければ分からないし、話してみないと分からないということはあるな、と感じている」と話している。

さらに寺田氏は「『こいつは合うな』と思った後、適性検査を互いに受けている」という。検査結果では「仕事上の何に対してやる気を出すか、その傾向が近いかどうか。それと何にストレスを感じるかを見ている」という寺田氏。

「まず面接でフィーリングが合うかどうかを判断した上で、科学的に数値でも見る。必ずしも全てが一致していなくてもいいんだけれども、採用する側としては、そこはマネジメントしていかなければならない部分。『カルチャーは合うけれども、こういうところにストレスを感じやすいなら、こう接していこう』といった入社後のオンボーディングにも役立つ」(寺田氏)

スタートアップの“ゴールデンタイム”は1年半

「現在の事業をいつごろまでに軌道に乗せ、新規事業などの次のフェーズへ移るつもりか」という質問には、平塚氏は「この1年が勝負」と回答。「今のアプリではマネタイズは想定されていないので、これをどうお金に換えていくか、新規事業の立ち上げなども検討しているところ。あと1年で軌道に乗せたい」ということだ。

川井氏は「半年で軌道に乗せる」と答える。「現在、Meilyと同じ領域の会社が3社いる状態。プロダクトも似ているので、スピード感と規模感が必要だ。いずれも大型調達へ向かって動いていて、半年以内には結果が見えてきてしまうので、この半年が勝負だと思っている」(川井氏)

左:インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏、右:エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏

スタートアップの“ゴールデンタイム”について、村田氏はこう話している。

「会社を作ってから1年半は、創業者にとってはエンペラータイムのようなもの。『起業すると思っていた』『お前ならきっとやれる』と周りからも言ってもらえるし、自分自身も寝ないで仕事ができるほど、すごいエネルギーが出ている。それが1年半ぐらい経つと、周りも何も言わなくなるし、自分も自信を失う瞬間が少しずつ増えていく。だからこのタイミングまでに、強いチームを作れるかどうかがすごく大事だ」(村田氏)

村田氏は、プロダクト・製品も大事だが、チームこそがスタートアップでは重要だと説く。「先ほどの川井さんの話にもあったが、お金がなくても会社は続くと僕は思っている。強いチームが作れていれば、受託でもやろうとか、絶対にエンジェルが現れるはずだとか、必ずサバイブできていくという面がある。創業1年半で、いかに強いチームが作れているかが大事だ」(村田氏)

寺田氏は「創業初期では、エンジニアとPRをいかに集められるかが重要。engageは、アーリースタートアップでは、思いにコミットしてもらえて、一緒に学びながら運営してやっていけるような若いメンバーを探す、という使い方をされている企業も多い」と初期のチームづくりに関して語っていた。

初期チーム採用について質疑応答

最後に会場からの質問に対する登壇者からの回答をいくつか紹介しよう。

Q:CXOを入れるタイミングは?

「いい人がいたらすぐに入れたいところ。出会った日が吉日だ。まとまったトラクションができていて、資金調達ができたら即入れるべき」(村田氏)

Q:採用に関連して企業が発信すべきことは?

「いいところも悪いところも含めて、すべての情報を発信すべき。エン・ジャパンでは、採用された人が入社した後にどれだけ活躍できるかということを重視しているが、1年以内の早期退職の理由は3つ。1つ目は、入社前と後でのギャップ。入る前と後とで『違う。聞いていなかった』となると辞めることになるので、これを防ぐには全ての情報を出すしかない。2つ目は直上の上司のパーソナリティが合わないこと。3つ目は仕事量だ。仕事量に関しては、多すぎても少なすぎても辞める原因になる。スタートアップだと『張り切って入社したが思ったより仕事がない』とか『想像はしていたけれど、それ以上に忙しかった』とか、いろいろなパターンがあり得る」(寺田氏)

Q:創業後のエンジニア採用で大事なことは?

「ノンエンジニアが会社を作った場合は、リファラルが大切。知り合いの知り合いの技術者などに、リファレンスが取れるかどうかが全て。信じられるエンジニアかどうか、聞ける人を1人以上は確保して、声をかけまくるというのがポイント」(村田氏)

Q:チームブレーカーの出現を未然に防ぐための価値観の共有方法は?

「ミッション・ビジョン・バリューが早期に決められるスタートアップならよいが、なかなか決められないものだ。そこで、KPTというフレームワークを利用する方法がある。週1回ぐらい、メンバー全員が今自分が取り組んでいることについて、Keep(継続すべきこと)・Probrem(解決すべき課題)・Try(新たに取り組みたいこと)の3つに分けて付箋紙に書き出して、並べてその場で共有するというもの。うまくファシリテートできる人がいるなら、間違いなくこれはやった方がいい。メンバーが、自分の手がけていることをやるべきか、止めるべきかを共有することができる」(村田氏)

「僕たちは、engageのTalent Analyticsを年1度、メンバー全員で受けている。性格や価値観は変わるもの。定期的に診断すると、家庭の事情などで変化が大きい人が出てきて、重視する項目が変わるのが可視化できる。また、Talent Analyticsでは、例えば『主体性』といった項目を偏差値で表すことができるが、数値で把握できることは大切だ。直属の上司・部下がどういった価値観を持っているのかを、データで把握できるとよいと思う」(寺田氏)

Q:創業者間の持ち株比率は何%が理想?

「代表が100%保有するのが分かりやすく、おすすめ。メンバーには後でストックオプションではなく、生株で渡すのもよい。投資家の立場からすると、上場前にメンバーの持分が5%だと『めっちゃ渡している』という感覚。ガバナンスを明らかにする意味でも、代表ができるだけ持っておくのがベスト」(村田氏)

「僕も100%を勧める。腹を決め、決断できる人が持っているというのが分かりやすい構造だ」(寺田氏)

 

次回もチームビルディングをテーマに「TechCrunch School #15 Sponsored by engage」を開催予定だ。イベント開催時期が近づいたら、TechCrunch Japanでもお伝えするので、ぜひ楽しみにお待ちいただきたい。

スタートアップの初期チーム組成の事例と陥りやすいワナ——TC School #14レポート1

TechCrunch Japanが主催するテーマ特化型イベント「TechCrunch School」の新シーズンが4月10日、スタートした。新シーズンでは、スタートアップのチームビルディングをテーマに、全4回のイベント開催が予定されている。

今シーズン初回、そしてTechCrunch School通算では14回目となった今回のイベントは「チームを集める」が題材。起業時の創業メンバー、設立後の初期メンバーに続く中核メンバーの採用に焦点を当て、講演とパネルディスカッションが行われた。

本稿では、そのうちのキーノート講演の模様をお伝えする。登壇者はインキュベイトファンドでジェネラルパートナーを務める村田祐介氏だ。講演では、創業期の投資・育成にフォーカスしたベンチャーキャピタルとして、これまでに手がけてきた投資先スタートアップのチーム組成の例と、チームビルディングで陥りやすいワナについて、語ってもらった。

インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏

インキュベイトファンドは、創業期のスタートアップに特化した独立系のベンチャーキャピタル(VC)だ。

「良い会社を見つけてきて、審査して投資するというのではなく、良い会社を作りそうな人を見つけて、一緒に会社を立ち上げていくという形で、これまでに関連ファンドの出資先を含めて300社以上を創業から支援。累計400億円以上の資金を集めて、これらの会社に出資してきている」と村田氏はインキュベイトファンドの歩みについて説明する。

これまでIPOは20社超、M&Aで約30社をエグジット。ほかにも急成長中のスタートアップを多数支援しているという。

また、通常の投資・育成とは別に、アクセラレーションプログラム「Incubate Camp」を2010年から主催。同社以外も含めたVCのジェネラルパートナー級の投資家たちと起業家たちを集め、泊まりがけで毎年行われるこのプログラムには、これまでに約200名の起業家が参加。参加企業の累計調達金額は約200億円、上場企業も出ており「非常にいいイベントになってきている」と村田氏は話す。

村田氏自身は、学生起業をして3年後に失敗しエグジット。その後キャピタリストとなって現在17年目、インキュベイトファンドを共同代表として設立して10年目になる。日本ベンチャーキャピタル協会にも携わり、スタートアップにより大きな成長資金が集まるような活動も行っている。

インキュベイトファンドにおいては、ジェネラルパートナーとしてスタートアップと関わる中で、共同創業者を探して連れてきたり、会社がスタートしてからの人材確保など、チームビルディングも組織的に行っているという。その経験から、まずは創業チームの組成について「特徴的な3社」を紹介してもらった。

スピード上場を果たしたGameWith、U25の少数精鋭チーム組成

GameWithは、2013年創業のゲームメディア事業会社。代表の今泉卓也氏は23歳のときにGameWithを設立し、30歳未満で東証マザーズに上場した。ゲームの攻略メディアとコミュニティも運営しているGameWithは、国内最大級のゲームメディアへと成長。MAU(月間アクティブユーザー)が4000万前後で推移しているという。

GameWithは2013年の設立だが、今泉氏はその前の2011年、コスモノーツというゲーム会社を立ち上げ、CTOとして参画していた。コスモノーツは「まさにチーム組成に大失敗してしまって、結果的に解散するところまで行った」(村田氏)。ということだが、その解散の役員会で次の会社を立ち上げようという話になり、設立されたのがGameWithだという。

「創業前に今泉さんと僕の2人でスタートし、プロダクトの原型を手がけていった。まだ会社を作る前の段階から、インキュベイトファンドからの出資をコミットし、ヤフーからの出資も取り付けてスタートした」(村田氏)。

創業チームは全員アンダー25歳の5人。「創業時は『完全にコミットしたい』という今泉さんの思惑から、巣鴨の住宅街にあるマンションを借り、それぞれが自分の部屋に住んで、リビングがオフィス、という形を取っていた。」(村田氏)。

2013年6月に創業、9月にメディアをリリースしてから、年末までに100万MAUまで一気に伸びたというGameWith。創業メンバー5人に加えて1人目を採用したのは、2013年の暮れから2014年初にかけてのころで、mixiにいたエース人材を「飲んで口説いた」と村田氏は言う。
組織作りに関しては、今泉氏にはある思いがあったようだ。村田氏によれば、コスモノーツを最初立ち上げたときには「経営者も社員もフラットに、和気あいあいとやろうと言って始めた」という。しかし「みんなが不満ばかり言うようになり、統制が取れなくなって失敗した」ということで、GameWithのリスタートに際し、今泉氏は「一定の形ができるまでは文鎮型の組織でトップの統制を強くしたい。決めるのは村田さんと僕だけでいい」と話していたそうだ。

今泉氏自身がエンジニアだったこともあって、トラフィックが1000万MAUを超えるまでは、フロントエンドもバックエンドも彼がほぼ1人で開発していたというGameWith。利益が1億円を超え、2015年が始まろうという頃、初めて外部から幹部として、オプトの14年選手だった眞壁雅彦氏を迎え入れるまでは、「今泉氏+その他」という“文鎮型組織”をずっと維持し続けたという。

2015年のシリーズBラウンド調達のころには、5億PV、2000万MAUを超え、完全に黒字化。「そこでIPO準備を進めようということで、公開準備のための実務担当者と、社外役員としてスクエア・エニックスの元社長(武市智行氏)と元CFO(森田徹氏)、複数の上場経験を持つ人物などを連れてきて、上場のためのチームを作った」(村田氏)。

そして、2017年6月には東証マザーズへ上場。創業時メンバーのうちの二人は上場後の今も執行役員として活躍しているそうだ。アンダー25での創業から、現在30歳を超えたメンバーたちだが「会社の成長とともに、チーム全体がしっかり成長できた一例と言えるのではないか」と村田氏は述べる。

上場直前の正社員は30人程度。少数精鋭だったというGameWithで、特徴的なチームづくりとして、もうひとつ村田氏が挙げたのが、アルバイト採用の基準だ。「ゲーマーをたくさん採用したい、ということで、アルバイトの募集をする際、ゲーム画面のスクリーンショットを送らせた。バイトとして採用した人間を契約社員へ引き上げ、契約社員を正社員へ登用する、という段階構造を作って組織を残してきた」と村田氏は説明する。

天才が天才を呼ぶ構造、落合陽一氏率いるPixie Dust Technologies

続いて紹介されたPixie Dust Technologiesは、メディアアーティストで筑波大学の准教授でもある、落合陽一氏が設立したスタートアップだ。立ち上げ当時、落合氏は東京大学の博士課程にいる学生で、村田氏は「天才がいるので会ってほしい」と言われて紹介され、「とんでもない天才だ」と感じたそうだ。

当時から「音、光、電磁場を波動制御コントロールによって3次元化したい」というようなことを言っていた、という落合氏。誰でも体感できる最先端のテクノロジーを表現することを得意とする落合氏は、研究者としての人生を全うしたいと言いつつ、この成果の社会実装をしていきたいと述べていたそうだ。

そこで村田氏は、スタートアップとして資金調達した方が実現確度が高くなる、とアドバイス。ともに立ち上げたのがPixie Dust Technologiesだ。プロトタイプづくりに必要な資金が4000万円と落合氏から聞き、その場で4000万円を出すと話した村田氏。最初は「デラウェア州の法人でスタートすれば、テクノロジーに対する理解が早い投資家や大企業が国内よりも多いので資金調達または買収の可能性が上がるのではという思惑で、現在の同社の前身となる米国法人を2015年に立ち上げるところからスタートした」そうだ。

落合氏は「(研究もあり)フルコミットは難しいが、4000万円を元手に2年以内にプロトタイプをつくり、それに関わる論文を出し、IP(知的財産権)を取る。そこまでなら、コミットできる」と言っていたという。村田氏は「当初から早期Exitを狙いに行く可能性もあったが、そこまでやれればもっと欲が出てくるはず」と考えて、一緒にスタートすることを決めた。
創業チームには、落合氏の研究者としての“相方”でもあり、後に東京大学助教も務めた星貴之氏が加わり、プロトタイプ完成までの1年半ぐらいを過ごした。当時経営について落合氏は「興味がない、研究だけがしたい」ということで、研究以外の業務を村田氏が巻き取ったという。

プロダクトとしては、音が特定の場所だけで聴こえるというスピーカー「Holographic Whisper」を製作。これらのプロトタイプを作っていく段階で、落合氏は村田氏の思惑通りに「会社としてスケールさせていきたい」と告げたそうだ。

またプロトタイプが出来上がってくると、国内外のメーカーからたくさんのオファーが来るようになり、PoC(実証実験)からスタートして共同製品を開発したい、と声がかかるようになる。このため、これらをクロージングするためのチームづくりに入った。
2017年初には、後にCOOとなる村上泰一郎氏が参画。アクセンチュア出身で社団法人の未踏エグゼクティブアドバイザーも務める村上氏を、落合氏と村田氏は「『COOとしてジョインしてほしい』と飲みながら口説いた」という。

村上氏の参画と同時に、Pixie Dust Technologiesを日本法人化し、本格的な資金調達をスタート。2017年、シリーズAで6.5億円を調達した。NEDOやCREST、AMED、JST ASTEPなどのプロジェクトにも採択され、2019年にはシリーズBとして、数十億円規模の大型調達を予定しているという。

村上氏参画までは、落合氏、星氏の2名体制だったPixie Dust Technologiesだが、この1年ほどで大量に人材を採用した。CFOとして迎え入れた関根喜之氏は、東大発の創薬ベンチャー、ペプチドリームでCFOの任に就き、東証マザーズ、東証一部上場を果たした人物だ。またGoogleでハードウェア部門に在籍していた人物、トヨタ自動車やキヤノンのAIエンジニア、Google Japanの創業メンバーなど、そうそうたる人材がこの1年で参加した。

「チームづくりに落合氏自身も自信を持つようになってきている。この会社は『天才が天才を呼ぶ構造』になっていると思う」(村田氏)。

チームビルディングで陥りやすいワナ

キーノート講演の最後には、村田氏から「チームビルディングで陥りやすいワナ」について、いくつかピックアップして解説があった。

「創業者間での仲違いは、本当によく起きる」という村田氏。「誰が最終意思決定をする人であり、誰がエクイティを大きく持つのか、というのは絶対に最初に決めておかなければいけないこと」と述べている。
「エクイティの保有パーセントが近ければ近いほど、もめ事が起きやすくなって、最終的にエクイティのシェアが低い人が辞めざるを得なくなりやすい。シェアのバランスはすごく慎重に調整した方がいいと思うし、創業者の株主間契約も必ず結ばないと、後で取り返しのつかないことになりやすいので、気をつけた方がいい」(村田氏)。

また「コードが書けるからCTO、コードが書けないからCOO」といった形で、創業メンバーの中からCXOを選んでしまうケースはよくあるが、「これをやってしまうと、後でその人のスペックが足りないということになる可能性が極めて高い」と村田氏は言う。

「ポストは後から用意しても、その中にキレイにハマる瞬間というのが必ずある。トップマネジメントはこの人、と決めたんだったら、あとは一旦フラットな組織にしてしまった方が、構造が明らかで設計もしやすい。後から優秀な人を集めるための素地として、作りやすい」(村田氏)。

チームブレーカーにより組織が崩壊する、というのも「本当にあちこちで起きているケースだ」と村田氏。

「事業がうまく立ち上がってこないことを他責にする人はたくさんいるのだが、課題解決のためによかれと思って知りうるネガティブな情報をあらゆる人に伝えてしまうことで、結果的に情報過多な状態をチーム全体に行き渡らせて、どんどん組織崩壊していくパターンも」(村田氏)。

このパターンは、会社を「より良くしていこう」と思ってモチベーションが落ちている人に対してチアアップしてくれたり、「誰々は今大変な状態にあるから」とカバーするために、自分の知っている情報をチーム全体にまき散らしてしまう人に見られるとのこと。
「本来見えなくてもいい悪い部分だけが独り歩きしてしまって、結果として組織が崩壊していくということは、よく起きている」と村田氏は説明する。

キーノート講演の後、村田氏も参加して、創業期のメンバー集め、チームビルディングに関するパネルディスカッションが行われた。その模様も近日中にレポートとして紹介する予定だ。

なお、実際のキーノート講演では村田氏が関わったもう1社の創業期のチーム組成について語られたが、その場限りの話としてこの記事では割愛している。

TC School 「チームビルディング(1)〜チームを集める〜」は南青山で4月10日で開催、参加費無料

TechCrunchでは、例年11月に開催する一大イベント「TechCrunch Tokyo」のほか、テーマを絞り込んだ80〜100人規模のイベント「TechCrunch School」を開催してきた。昨年3月開催の第13回に続き、今年も4月から新たな「TechCrunch School」がスタートする。

すでに80名超の参加登録をいただいているが、このたび立ち見席を含む座席を若干数増やして受付を続行することが決定した。参加費は無料なので、興味のある読者はぜひ参加してほしい。参加チケットはイベントレジストのTCページから入手できる。

昨年3月に開催したTechCrunch Schoolの様子

4月10日のTechCrunch Schoolは、スタートアップのチームビルディングに焦点を当てた全4回のイベントの1回目。テーマは「チームを集める」で、起業時の創業メンバー、会社設立後に早期に入社した初期メンバーのあとに必要となる中核メンバーの採用に焦点を当てる。

イベントは、キーノート、パネルディスカッション、Q&Aの3部構成。キーノートではインキュベイトファンドでジェネラルパートナーを務める村田祐介氏を招き、これまで手がけてきた投資先スタートアップのチーム組成について語ってもらう予定だ。

パネルディスカッションでは、村田氏のほか、現在アーリーステージのスタートアップ経営者として、Meily代表取締役CEOの川井優恵乃氏とレキピオCEOの平塚登馬氏、そしてエン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4名で、中核スタッフの採用についての悩みを解消していく。そのあと、来場者を交えたQ&Aセッションとミートアップを開催する予定だ。もちろんQ&Aセッションでは、おなじみの質問ツール「Sli.do」を利用して会場からの質問にも回答する。

イベント会場は、TechCrunch Japan編集部のある東京・外苑前のVerizon Media/Oath Japanのイベントスペース。セッション後はドリンクと軽食を提供するミートアップ(懇親会)も予定している。

起業間もないスタートアップ経営者はもちろん。スタートアップへの転職を考えているビジネスパーソン、数十人の組織運営に課題を抱えているリーダーなど幅広い参加をお待ちしている。

TechCrunch School #14概要

チームビルディング(1) 〜チームを集める〜
開催日時:4月10日(水) 18時半開場、19時開始
会場:Verizon Media/Oath Japanオフィス
(東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル4階)
定員:100人程度
参加費:無料
主催:Verizon Media/Oath Japan
協賛:エン・ジャパン株式会社

イベントスケジュール
18:30 開場・受付
19:00〜19:05 TechCrunch Japan挨拶
19:10〜19:30 キーノート(20分)
19:35〜20:15 パネルディスカッション(40分) Sponsored by engage
20:15〜20:35  Q&A(20分)
20:35〜21:30 ミートアップ(アルコール、軽食)
※スケジュールは変更の可能性があります。

スピーカー
・キーノート
インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏

・パネルディスカッション、Q&A
Meily代表取締役CEO 川井優恵乃氏
レキピオCEO 平塚登馬氏
インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏
エン・ジャパン 執行役員 寺田輝之氏
TechCrunch Japan 編集統括 吉田博英(モデレーター)

申し込みはこちらから

アップル発表イベントの全ビデオはこちら

ビデオは、今日のApple(アップル)イベントで形式的にも機能的にも大きな役割を果たしていたが、Appleは伝統的なAppleイベントのビデオについてもぬかりなかった。Apple Arcadeなどの新サービスのプレビューから、アーティストがApple TV+のコンテンツを作る様子、一連のビデオを見れば今日のライブストリームを見損なった人でもAppleの新サービスの概要を一覧できる。

例によって今日も初めはティーザービデオだった。

Appleが最初に発表した製品はApple News+で、300種類以上の雑誌や新聞を月額9.99ドルで利用できる。ちなみに、Apple News+は今日発表された中で唯一今日から利用できるApple製品だ。

2番目のApple製品はApple Card。Apple Cardとは、Apple Payが利用できる場所ならどこでも使える電子クレジットカード。Apple Cardアプリを使うと取引履歴を見ることができ、カードで支払うとその日のうちに2%のキャッシュバックが受けられる。すべてウォレットアプリの中に含まれている。

そして、もちろん。物理的カードもついてくる。チタン製で名前がレーザー刻印されていて番号は〈ない〉。Apple Cardは クレジットカードの不正を困難にするはずだ

次にAppleは、ゲームのサブスクリプション・サービス、Apple Arcadeを発表した。

同サービスは今秋にならないと始まらないが、スタート時点で100種類以上の有名ゲームがディズニー、コナミ、レゴなどから提供される。重要なのはこれがクロスプラットフォーム製品であることで、ゲームはiOS、macOS、tvOSのどこでもプレイ可能なので、AppleはiOSをきっけかにMac上でもゲームを推進できる。

これについてはビデオが2本あるが、価格は示されていない。

そして最後にAppleは、Apple TV+を発表した。近日公開予定のサブスクリプションサービスで、ユーザーはAppleの新しいオリジナルコンテンツのライブラリーを利用できるようになる。これには、ジェニファー・アニストン、リース・ウィザースプーン、スティーブ・カレルなどがニュースについて語るモーニングショウや、クメイル・ナンジアニが移民の毎日について真実を語るアンソロジーシリーズなどもある。

最後のワンモアシン、オプラ・ウィンフリーがApple TV+2つのニュース番組に出演する契約にサインした。

Apple TV+の開始は今年の秋からで、価格については未だに言及されていない。

アップデート:AppleはついさきほどApple TV+のプレビュービデオを公開した(これが今日のイベントで最高のビデオというのが正直な感想)。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルスペシャルイベントと並行生中継、TCライブ配信は26日午前1時30分から

TechCrunch Japanでは、日本時間3月26日午前2時から開催されるアップルのスペシャルイベントに併せて、その内容を実況・解説するライブ配信を実施する。前回同様、ドワンゴとの共同で、配信プラットフォームはニコニコ生放送。出演は、TechCrunch Japan編集統括の吉田博英と、女優兼エンジニアの池澤あやかさん。

TechCrunchでも、イベント前にさまざまな噂記事が上がっているが、キーワードはやはり「サブスクリプション」。動画はもちろん、新聞・雑誌、ゲームなどのさまざまな定額配信サービスの登場が予想されている。

アップル新サービスはHBOやShowTimeなどを月額9.99ドルで提供か
26日午前2時開始のアップルイベントのテーマはサブスク、アップルクレカの発表も?
明日のアップルイベントの目玉はオンラインゲームサブスクの可能性
Netflixは3月25日発表のアップルのビデオストリーミングサービスに加わらないとCEOが声明
日本時間3月26日未明のアップルイベントを前に無人のスティーブ・ジョブズ・シアターを覗いてみた

Google、Apple、Facebook、AmazonはGAFAとしてまとめられることも増えたが、GAFAの中でハードウェアの依存度が高いアップルが、ソフトウェアで収益の大きな柱を構築できるのか、早朝の発表に注目したい。

Disrupt SF 2019は10月2〜4日に決定、メーリングリスト登録で500ドル早割をゲット

TechCrunchでは今年もアーリーステージのスタートアップのためのビッグなイベントを準備している。Disrupt San Francisco 2019の開催日時は10月2日から4日までの3日間(米国時間)だ。会場はサンフランシスコ最大のコンベンションセンター施設の一つ、Moscone Northだ。

今年のイベントでは早割もビッグになる。3日間の参加パスの料金から500ドルも節約できるスーパー早割がある。

実は大変簡単だ。3月に参加申し込みサイトが公式にオープンする前にまずメーリングリストに登録するのがその方法だ。登録ページには「姓、名、メールアドレス、会社名」を入力してクリックするだけで500ドルの節約が可能だ。参加登録は来月すぐに始まってしまうのでので急いだほうがいい。

Disrupt SFではクレージーなほどの内容を3日間に詰め込んでいる。素晴らしいスタートアップ、トレンドのイノベーション、思いもよらないアイディアを発見できるだけなく、テクノロジー・コミュニティーのベスト&ブライテストな人々が集まるお祭りでもある。起業家志望者は共同ファウンダーを見つけることができるかもしれない。投資家は時代のユニコーンを探り当てることができるだろう。

もちろんDisruptはStartup BattlefieldがなければDisruptではない。今やスタートアップの公開コンペティションとして世界的に有名になったBattlefieldだが、昨年は選ばれた21チームのスタートアップが激しい戦いを繰り広げた。その結果、ForethoughtがDisrupt Cupと賞金10万ドルを勝ち取った。メディア投資家の注目の的となったメリットも計り知れない。今年のBattlefieldも株式の売却を必要としないキャッシュの賞金を各種用意している。起業家、起業家志望者はDisruptサイトを定期的にチェックして最新の情報を得るようお勧めする。

エキジビション・フロアに設けられるStartup Alleyではアーリーステージのスタートアップのブースが数百も並ぶ。AI/MLはもちろん、ブロックチェーン、フィンテック、ゲーム、モビリティー、プライバシーとセキュリティー、eコマースとリテール、ロボティクス、IoTまでありとあらゆるサービス、ソフトウェア、ハードウェアまでありとあらゆるカテゴリーのスタートアップが競う。

Startup Alleyの参加者から有望なチームにスポットライトを当てるTC Top Picksが今年も実施される。参加希望者は要チェックだ。

Disrupt San Francisco 2019ではテクノロジー・コミュニティーの世界的リーダーによる講演、デモ、ワークショップ、 Q&Aセッションなどのイベントが盛り沢山だ。メーリングリストに登録しておくだけでこれらすべてが500ドル割引で体験できる。3月早々にチケットの申し込みがスタートするとML登録は終了する。 早割のMLをゲットするには急ぐ必要がある!.

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

1月のCESに行くならTCミートアップを予約しよう――暗号化テクノロジーのハードがテーマ

新年早々、ラスベガスで開催されるCES 2019に参加予定の読者も多いだろう。TechCrunchはこの機会にスタートアップがプレゼンをするミニイベントを計画している。テーマは暗号テクノロジーを中心にしたハードウェアだ。コ・ワーキングサービス、Work In Progressの好意で200人のオーディエンスを収容できるスペースを確保した。

会場はWork In Progress, 317 South 6th Street Las Vegas、 日時は2019年1月9日(水)6:00 PM – 9:00PM(太平洋時間)。

ラスベガスのダウンタウン、フリーモントストリートエクスペリエンスの近くで、チケットは無料だが200枚しか用意できない。 先着順なので興味があるなら早めにチェックすることをお勧めする。予約はこちらから

このイベントでは各チーム3分、10チーム分の枠が用意されているので、応募多数の場合はわれわれの方でチームを選ぶことになる。ハードウェア・イベントなので実物を持参できることが望ましい。スライドの利用は禁止。ピッチ希望者はこちらの書式に記入して申し込む。選ばれたチームにはこちらから連絡する。

ではラスベガスでお会いしましょう。

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滑川海彦@Facebook Google+

日本のスタートアップ成長に重要な5つの要素とは——Plug and Play SHIBUYA開設から1年

シリコンバレー発のアクセラレーターPlug and Playが日本法人を設立し、国内での活動を本格化したのは2017年9月のこと。それから1年が経ち、彼らが年2回実施するアクセラレーションプログラムも「Batch 0」「Batch 1」の2期が完了した。現在は59社のスタートアップが参加する「Batch 2」が走っているところだ。

12月4日、東京・渋谷のコワーキングスペース「Plug and Play Shibuya」で開催された「メディアラウンドテーブル」では、Plug and Playが日本のスタートアップ成長に向けて考えていること、そしてBatch 1参加企業2社の成果と、Batch 2採択企業1社の現状についても紹介があったのでお伝えしたい。

日本でイノベーションを進めるために大切な5つの要素

Plug and Playは、2006年の創立から2000社を超える企業を支援し、70億ドルを超える資金調達を達成しているアクセラレーター・投資家だ。米・シリコンバレーに本拠地を置き、全世界26カ所にオフィスを構えるPlug and Playは、スタートアップを中心にしたエコシステムを形成を目指し、14にわたる幅広いテーマのそれぞれでアクセラレーションプログラムを実施している。

Plug and Play Japan代表 マネージングパートナー フィリップ・ヴィンセント氏

Plug and Play Japanの代表でマネージングパートナーのフィリップ・ヴィンセント氏は、まず世界のスタートアップエコシステムの状況を紹介。各国のPlug and Playの拠点の中でも、特にエコシステムがうまく発展している地域の特徴を紹介した。

ドイツではシュトゥットガルト、ベルリン、ミュンヘンに拠点があるが、このうち2016年に開設されたシュトゥットガルトの「Startup Autobahn」はクルマ、交通に関連したモビリティを対象領域とする。パートナー企業にはダイムラー、メルセデスベンツなどが参加している。

ヴィンセント氏は「ここでは、パートナー企業が大企業として乗り込むのではなく、カルチャーをスタートアップに合わせて一緒にイノベーションに取り組むことが、成果につながっている」と話す。シュトゥットガルト大学キャンパス内の研究開発施設「ARENA2036」内に拠点を置くことで、大学とも企業ともコラボレーションが可能になっているそうだ。

続いて紹介されたシンガポールでは、2010年からプログラムが開始されている。金融・保険、モビリティ、旅行・観光、サプライチェーンが対象領域のシンガポールでは、マリーナベイに近いCentennial Towerとシンガポール国立大学近くに位置するBlock 71が拠点となっている。

Block 71は、250社のスタートアップが参加し、複数のインキュベーターやアクセラレーター、VCも参画する、スタートアップハブ、起業家のためのコミュニティだ。ヴィンセント氏は「シンガポールでは大学との連携が強い」という。またシンガポールでは、政策でスタートアップ支援が強く打ち出されていることから、政府との連携も行われているということだった。

パリではフィンテックと流通領域を対象に活動する2拠点が、いずれも2016年に開設された。このうち主にフィンテックを扱う「BNP Paribas-Plug and Play」は、2017年の夏にオープンした3万4000平方メートルの広大なインキュベーション施設Station Fを利用している。大きな一つの屋根の下で、起業家同士のコラボレーションも生まれやすい環境のStation Fには、約3000社のスタートアップが入居でき、20〜30のアクセラレーションプログラムが実行されている(Station F オープン時のTechCrunchのレポート)。

フランスでは政府のイノベーション推進施策により、海外から起業のためにフランスに移住する人のためのFrench Tech Ticketや、テック系人材とその家族のためのFrench Tech Visaといった特別なビザプログラムが用意されている。また政府の後押しを受けた、スタートアップエコシステム醸成のためのイニシアチブ「La FRENCH TECH」もある。

最後に紹介されたのは中国だ。北京、上海、深圳など、中国にはPlug and Playの拠点は8カ所あり、近いうちに10拠点に増える計画だ。中国でも政府がスタートアップエコシステムを力強くプッシュしている。また、スタートアップへの投資は中国が世界の半分を占めており、今では、評価額10億ドル以上のユニコーン企業の数が米国より多くなっているという。

さて、翻って日本の状況はどうだろうか。

日本でPlug and Playは、フィンテック、IoT、保険、モビリティの4領域でプログラムを実施。2019年春からはブランド・流通のエリアもカバーしていくことになっている。

ヴィンセント氏は、日本のスタートアップの成長、イノベーションが進むために大事なこととして、以下の5つの要素を挙げた。

1つめは「カルチャーとマインドセット」。社会や企業のイノベーションへの積極性や、パートナーとなる企業がスタートアップと対等に、スピード感を持って、柔軟に対応できるかどうかがカギになる、とヴィンセント氏はいう。「日本でも、社会がスタートアップを見る目が変えられるかどうかが大事になってくる」(ヴィンセント氏)

2つめは「政府の後押し」。ただし一方的に関与しすぎるのも良くないようで、ヴィンセント氏は「関わるも関わらないもバランス良くあることが大切」と話していた。「政府が民間同士、スタートアップ同士の横の連携を作ることを勧めてくれて、(フランスのように)海外からの参画もしやすいのが理想だ」(ヴィンセント氏)

3つめは「教育と大学」。ヴィンセント氏は「CTOではなく、CEOを増やす教育が必要」という。また「海外へ飛んで学ぶためのプログラムも重要だ」とも述べている。

4つめは「先進的な考えを持つ企業」。大企業のコミットメントが得られるかどうかは、スタートアップエコシステムが育つための大切なファクターとなる、とヴィンセント氏は話す。

最後の5つめは「アクセラレーターや支援者」の存在だ。「スタートアップをサポートする会社が増えることが、エコシステムの醸成には欠かせない」(ヴィンセント氏)

SynchroLife「大企業へのイメージが180度変わった」

続いてBatch 1参加企業2社から成果の発表と、Batch 2採択企業1社から現状のレポートがあった。

まずはBatch 1に参加したスタートアップGINKANと、パートナー企業・東急不動産による実証実験の事例が紹介された。

GINKANは、グルメSNSアプリ「SynchroLife(シンクロライフ)」を提供している(過去紹介記事)。GINKAN創業者でCEOの神谷友愛氏は「SynchroLifeは良い体験を発信するSNSとAIにより、ハズレなしのお店を提案するアプリだ」と説明している。現在4カ国語に対応、17万件以上のレビューが掲載されている。

SynchroLifeでは、ブロックチェーンを活用したトークンエコノミーを取り入れ、良質なグルメレビュアーにはトークン(仮想通貨)で報酬が付与される。また、飲食代金からの還元リワードをトークンで発行。来店を促すマーケティングに利用できる仕組みとなっている。

飲食店は、タブレット端末に加盟店向けアプリを導入。初期費用・月額料金なしで、売上の3%を支払う完全成功報酬型でサービスを利用できる。利用客であるユーザーは、支払い時にアプリで飲食店から提示されるQRコードを読み取ることで、食事代金の1%以上相当のトークンを還元してもらえる。

実証実験はこのリワードの部分について検証するものだ。東急不動産の協力により、2018年9月〜10月の1カ月間、東急プラザ銀座のレストラン21店舗で実験が行われた。

GINKAN CEO 神谷友愛氏

実証実験では、QRコードを使って飲食代金の3%分の暗号通貨をユーザーに還元。ユーザーエクスペリエンスおよび店舗のオペレーション負荷を検証した。還元は10秒で完了でき、障害もなかったということだった。

また、レストラン開拓インフルエンサー送客による、グルメSNSとしてのマーケティング効果の部分の検証では、来店者の投稿の92%が高評価に。投稿数の増加に伴って来店客数も向上しており、SNSの特徴である「良い体験」が「来店」に影響した、と神谷氏は分析する。

Plug and Play Batch 1と実証実験で学んだこととして、神谷氏は「3カ月という短いBatch期間でキッカケの創出と、期間目標のコミットができたことで、Plug and Play Japanの強力な“お見合い力”を実感した。また東急不動産との実験取り組みで、大企業へのイメージが180度変わった。(SynchroLifeという)プロダクトでビジネスをまだしたことがなかった僕たちが、いきなり東急不動産と組めるというのはすごい経験だ」と話している。

また、ビジネス上の課題認識の一致が重要であるとして「実証実験は結果ではなく、過程だとあらためて認識した」とも述べていた。

一方、パートナーとしてGINKANを支援した東急不動産。渋谷で次世代のビジネス共創を目指し、2020年に向けて100のビジネス創出を目指すプロジェクト「SHIBUYAスタートアップ100」を立ち上げて、スタートアップを支援。その一環として、2017年11月にはPlug and Playとともに渋谷にインキュベーション施設を開設した。

東急不動産 都市事業ユニット 事業戦略部の伊藤英俊氏によれば、インフラとしての施設提供のほか、スタートアップとの事業連携も20社が確定しており、近く30社になる見込みとのこと。GINKANとはPlug and Playを通じて、Fintechパートナーとして組むことになった。

「QRコードで暗号通貨を付与するという新しい試みと、SNSマーケティングで集客できるのかという実務の部分でともに検証を行った。今後、実際の導入へと進みたい」(伊藤氏)

伊藤氏は、Plug and Playでのパートナーシップと実証実験が成功したポイントを3つ挙げている。「1つはプロダクトや事業について、具体的なイメージの共有ができたこと。2つめはリアルな場での交流があること。そして、相手の時間を大切に考えられるカルチャーだ」(伊藤氏)

Batch 1での取り組みでは、最終的に「経緯、信頼、そして両者の情熱と覚悟が噛み合った」と手応えを感じている伊藤氏。Batch 2でも既に複数社との取り組みが検討されているとのことで、「Batch 0、Batch 1からの継続案件の具現化も進める。また渋谷区や東京都とのパイプも生かし、行政とも適度な距離感を持ちつつ、いろいろ調整して支援を進めたい」と話していた。

Trillium「世界に羽ばたくスタートアップにとっていい場だ」

Batch 1採択企業からはもう1社、モビリティ関連スタートアップTrilliumの事例が紹介された。

Trilliumは2014年の設立。米国カリフォルニア州サニーベールにあるTrillium本社は、シリコンバレーのPlug and Playから支援を受けており、東京でもBatch 1に参加することになった。Trilliumでは、ほかにも世界各地のPlug and Playでプログラムに参加している。またTechCrunch Disrupt Berlin 2017のStartup Battlefieldではピッチも披露している(英文記事)。

Trillium日本法人 執行役員 事業開発部長 山本幸裕氏

Trilliumが提供するのは、モビリティに対するサイバー攻撃に対抗するセキュリティ、特にコネクテッドカーのサイバーセキュリティソリューションだ。

日本のTrilliumで執行役員 事業開発部長を務める山本幸裕氏は「OBD 2(自動車の自己診断機能の規格)やWiFi、Bluetoothなどを通じてネットワークに接続されたクルマは、外部から無線でハッキングが可能だ」と説明する。

「現状、既にハッキングは行われている。今のところは、メーカーからの報賞金やエンジニアとしての売り込みによる雇用を目的にしたホワイトハッカーが多いが、より悪意を持った動作を目的としたブラックハッカーも出てくる可能性が大きい」(山本氏)

さらに、「以前に比べてクルマの寿命が延びたことにより、発売当初のクルマが最新のセキュリティで守られていたとしても、ハッキングの進化により乗っ取りがいずれ可能になるという面もある」と山本氏は指摘する。

Trilliumでは、サイバー脅威からクルマを守るためのソフトウェアに加え、収集した攻撃データを分析した上で、OTA(Over the Air:無線)で車載システム、ネットワークのセキュリティをアップデートする仕組みを提供している。

今後さらに、自動車メーカーや、物流やレンタカー、交通などで車両を保有・運用する企業、保険会社などと提携することで、安全なモビリティプラットフォームを構築したいとして、パートナーを探しているという。

東京のBatch 1では、パートナー探しに加えて「インベストメントでも成果があった」と山本氏は述べる。2018年7月のシリーズA2ラウンドで、総額1100万ドル(約12億円)の資金調達を実施したTrillium。山本氏は「このラウンドでMUFJグループ(三菱UFJキャピタル)が参加したことは、Plug and Playの日本のBatchに採択された成果として大きい。出会って3カ月で投資が決まった」と話している。

またシリコンバレーのPlug and Playでも「ピッチを行ったところで(パートナー企業との)出会いがあった」と山本氏。世界中に拠点を持つPlug and Playは「世界に羽ばたくスタートアップにとっては、大変いい場所だ」と評価する。

「Plug in Play SHIBUYAでも、パートナーとなる企業と出会うことができた。今後PoC(概念実証)を目指していく」(山本氏)

Nauto「日本でのPoCと認知・ブランド向上図りたい」

最後に、11月にスタートしたばかりのBatch 2採択企業の中から、Nauto(ナウト)が現況をレポートした。

NautoはIoT領域で、Plug and Playのプログラムに参加するスタートアップだ。Nautoが提供するのは、自動車運転の安全性を高めるためのソリューション。Batch 1 EXPO(デモデイ)でピッチを行い、採択に至っている。

NautoもTrilliumと同様、米国カリフォルニア州パロアルトに本社がある。本社設立は2015年、Nauto Japanは2017年6月に開業している。Nautoには既に、General Moter VeunturesやToyota AI Venturesなど、自動車系ファンドが多数出資しているほか、2017年7月にはソフトバンクがシリーズBラウンドで1億5900万ドル(約180億円)の出資を行っている。

Nauto Japanで日本代表を務める井田哲郎氏は、「Nautoはテクノロジーを使って収集したデータを、運転の安全に使う。今日の運転の安全、そして将来の運転の安全に貢献するプロダクトを開発している」と説明する。

Nauto Japan 日本代表 井田哲郎氏

Nautoのプロダクトは、車載器と、車載器からのデータを収集・分析するプラットフォーム、運行管理アプリから成る。

Nautoは車載器として、人工知能を搭載したドライブレコーダーを開発。Bluetooth、LTE通信でネットワークに接続できるデバイスには、2つのビデオカメラと各種センサーが内蔵されている。クルマの内部に向けられたカメラでドライバーの様子を、外部へ向いたカメラは進行方向の道路を撮影する。デバイスから集められた映像やセンサーデータは、クラウドプラットフォームで分析される。

分析データをもとに、運行管理アプリではさまざまな機能を提供するが、顔認識や映像ベースでのリスク評価がその大きな特徴となっている。

「コンテクスト分析を内側カメラと外側カメラの双方向で行い、エッジでは車間距離を測定。社内の運行管理者によるモニタリングも実施できる。ほかにもクルマのセンサーからの情報なども合わせて、総合的に分析を行い、必要に応じてドライバーに危険を警告する」(井田氏)

米国で行われた実証実験では、独自のアルゴリズムによって、ドライバーの集中・わき見の状況を分析した。「運転の荒さだけでは、実はリスク評価は十分ではない。したがって加速度センサーによる加減速のデータだけでは、事故につながるとは断定できなかった。これを顔認識も加えて、わき見の状況をモニターすることで、Nauto搭載のクルマでは35.5%の事故削減につなげることができた」(井田氏)

「この実験は米国で行われたもので、日本では事例がまだない」としながら、井田氏は「日本でもスマートフォン使用による交通事故件数は、2011年から2016年にかけて2.3倍に増えているという統計がある。Plug and Play Japanのプログラムに参加することによって、PoCを実施し、日本でも導入実績、ケース事例を作りたい」と述べる。また「(日本での)認知向上やブランドづくりも図りたい」とBatch 2参加による成果に期待を寄せていた。