Fitbit開発の低コスト人工呼吸器に米食品医薬品局が緊急使用認可

Fitbit(フィットビット)は、米食品医薬品局(FDA)からFitbit Flow緊急人工呼吸器の緊急使用認可を取得した。この人工呼吸器は低コストで、使用にはトレーニングや専門的な技術をさほど必要としない。そのため、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックでヘルスケアシステムがリソース不足で圧迫された場合のソリューションとなる。

Fitbit人工呼吸器はMITのE-Ventシステムと、英国政府が新型コロナ感染拡大中に同国の病院で使用される人工呼吸器のために提供したスペックをベースとしている。自動蘇生器スタイルの人工呼吸器で、救急隊員や救急救命士が使う手動の蘇生バッグ機能を真似ている。

緊急人工呼吸器はパンデミックで脚光を浴びることになった。というのも、医療機関が通常使用するスタンダードの人工呼吸器よりも比較的安価で実際に入手可能な部品で作られているからだ。Fitbitは同社の人工呼吸器のデザインがかなり効果的だと確信している、と話す。センサーの正しい組み合わせ、自動アラーム、蘇生バッグポンプのオートメーションを補助する患者モニター機能などだ。

緊急使用のための人工呼吸器の需要に向けられていたかなりの注意はここ数週間落ち着いてきているが、需要はまだある。そして数カ月内にやってくる新たな新型コロナ感染の波に伴って需要が再度高まることが予想される。Fitbit Flowのようなプロジェクトは、必要となった場合に選択肢として提供できることを目的としている。そしてFDAの緊急使用許可は、企業がその需要に応えるべく大量生産するために既存の製造パートナーと協業できることを意味する。

Flowのような人工呼吸器は従来使用されてきたものの代替ではない。あくまでも間に合わせであり、患者の処置に必要な呼吸器が入手できなくなった時にのみ使用される。

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(翻訳:Mizoguchi

NVIDIAの主任研究員が4.3万円で作れる人工呼吸器を開発

NVIDIAの主任研究員のBill Dally(ビル・ダリー)氏は、人工呼吸器のハードウェア設計をオープンソースとして公開した。世界的な新型コロナウイルスのパンデミックによって、人工呼吸器が不足していることに対処するためだ。ダリー氏が開発した人工呼吸器のメカニズムは、既存の部品を利用して手早く組み立てることができる。費用は総額で約400ドル(約4万3000円)程度。通常の専用人工呼吸器の価格が2万ドル(約214万円)以上であることを考えると、かなり入手しやすいものとなる。

ダリー氏の設計はシンプルさを追求したもので、主要な部品は、基本的にソレノイドバルブとマイクロコントローラーの2つだけとなっている。この設計は「OP-Vent」と名付けられた。以下のビデオを見れば、一般的な人工呼吸器のハードウェアに比べて、部品がスカスカなことがわかるだろう。また新型コロナ対策として、救急用に設計された他の人工呼吸器よりもずっとシンプルだ。

ダリー氏は、これを機械工学のエンジニアや医師からのインプットを活用して設計した。その中には、スタンフォード大学のチーフレジデントであるAndrew Moore(アンドリュー・ムーア)博士や、医療機器の専門家で、企業の共同創立者でもあるBryant Lin(ブライアント・リン)博士も含まれている。わずか5分で組み立てることができ、ペリカンケースに余裕で収まるので、輸送するのも持ち運ぶのも簡単だ。部品点数が少ないだけに、エネルギー消費も少ない。救急医療隊員が緊急対応で使うシンプルな手動のブリーザーバッグを利用するタイプよりも少ないくらいだ。

次のステップは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応機器として、FDAの緊急使用許可プログラムの認可を得ること。それから製造パートナーを探して、大量生産を実現することだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Virgin Orbitの自動人工呼吸器を米食品医薬品局が緊急承認、数日以内に医療現場に提供へ

小型衛星の打ち上げを目指すVirgin OrbitはFDA(米食品医薬品局)から人工呼吸器用の緊急使用許可(EUA)を得た。同社は新型コロナウイルス(COVID-19)感染の重症患者に必須となる人工呼吸器のニーズに対処するため、数週間前から設計とプロトタイプ化の製造を開始していた。Virgin Orbitは、「FDAの承認が得られたので、数日以内に人工呼吸器の提供が開始できる」と期待している。

Virgin Orbitが設計した人工呼吸器は、救急車に搭載され救急隊員が自発呼吸の能力を失った患者に使用する手動人工呼吸器を自動化したものだ。設計に当たっては専門家と医師のグループ、ブリッジ人工呼吸器コンソーシアムの指導を得ている。「ブリッジ」という分類のとおり、主に「つなぎ」として使用されるタイプだが、これには大きなメリットがある。軽症患者にブリッジタイプの簡便な人工呼吸器を使うことにより、本来の人工呼吸器を新型コロナウイルスによって重篤な肺炎を起している患者の救命にあてることができるようになる。

Virginではすでに人工呼吸器の製造を開始していると発表しており、現在の生産体制で「週に100台以上」を生産できるという。今週中に出荷予定の最初の100台はカリフォルニア州に送られEMSA(Emergency Medial Services Authority)によって必要度の高い医療現場に配布される。

Vigin Orbitでは人工呼吸器の生産ラインを迅速に立ち上げて出荷を開始するために多大の努力を払ったが本業はやはり衛星打上だ。同社では独自の小型衛星発射システムの開発を続けるとしている。Virgin Orbitの空中発射システムについてはTechCrunchでも報じてきた。今月、Launcher Oneロケットを747母機の主翼下に吊り下げて所定の高度に上昇させる最終飛行テストに成功している。この後は実際にロケットに点火して衛星を打上げるテストとなる。これは今年中に実施される予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

緊急用人工呼吸器のSpiro Waveが米食品医薬品局の認可を取得して新型コロナ需要に応える

新型コロナウイルス(COVID-19)重篤患者の治療に必要な人工呼吸器の不足を補う新規プロジェクトが、米国時間4月20日に大きな節目を達成した。米食品医薬品局(FDA)の緊急時使用認可(EUA)が下りて、同プロジェクトの機器の使用と量産が認められた。「Spiro Wave」(スパイロ・ウェイブ)と呼ばれるそのハードウェアは緊急用の自動人工蘇生器で、1台5000ドル(約54万円)で製造できる。技術者、医師、研究者らからなる開発チームはすでに製造を開始して、介護施設に提供している。

Spiro Waveは、基本的に手動の人工蘇生器の機能を再現する。人工蘇生器は、緊急時に救急患者に手動で人工呼吸を行う持ち運び可能な装置だが、Spiro Waveはその作業を自動化し、かつ従来の手動式と同じタイプのバッグを使うので、機材の供給が容易だ。

Spiro Waveはマサチューセッツ工科大学(MIT)のオープンソースプロジェクトであるE-Vent(イーベント)のプロトタイプデザインを基にしている。E-Ventは新型コロナ危機による機器不足を緩和する位置手段として、MITの研究者らが開発した。Spiro WaveをつくったのはNewlab(ニューラブ)、10XBeta(テンエックス・ベータ)、Boyce Technologies(ボイス・テクノロジーズ)の共同ファウンダーたちからなるチームで、E-Ventのデザインを出発点にすることで、緊急用人口蘇生器の設計と製造をわずか数週間で成し遂げることができた。

製造パートナーのBoyce社は、ニューヨーク市クイーンズ地区にある同社のLong Island City製造工場で、1日に最大500台作ることが目標だといっている。最初の数百台は既に今週からニューヨーク市内の施設に届けられている。同チームは、FDAの医療機器製造許可を取得している海外パートナーを探して製造規模を拡大し、さらに多くの台数を供給することを考えている。

開発チームによると、これは本格的な人工呼吸器を置き換えることものではないという。緊急時の現場で、人工蘇生器で十分だが、手動式では操作者の配置や長期の利用が現実的ではないという場面に使用することで、機材不足を緩和することを目的としている。緊急時使用許可が与えられている他の多くの機材と同様、これは正式なFDA認可を受けた機器や治療方法を完全に置き換えるものではないが、革新的でスケーラブルな解決方法であり、過大な負荷のかかる医療機関における治療レベルに大きな違いをもたらすだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米食品医薬品局が製造コスト25分の1の新型人工呼吸器を認可

米国食品医薬品局(FDA)は、ミネソタ大学が設計した新しいタイプの人工呼吸器「Coventor」(コベンター)の製造を認可した。このプロジェクトは既存モデルと同等の生命維持能力をもつ人工呼吸器を大幅な低コストで量産できるようにすることで、必要としている医療機関が早期に安価で入手できるようにすることを目的にしている。

Coventorは、FDAの緊急使用許可(EUA)を取得した最初の新型人工呼吸器だ。緊急使用許可とはその名が示す通り、FDAが通常発行する伝統的な医療機器の認可と異なり、不足している必要機器を提供するために一時的に認可したり、全承認行程を経ずに行う緊急時の対応だ。

新型コロナ・パンデミックは近代の記録ではこの種の危機としておそらく最大の事例であり、COVID-19による呼吸器疾患の重篤患者の治療には、殆どの場合挿管あるいは人工呼吸器による補助が必要になる。増え続ける肺炎患者のために人工呼吸器は米国内外で供給不足が続いており、新しい設計の機器や他の医療用呼吸器具を改造して補完するなどいくつもの解決策が提案されている。

ミネソタ大学のCovnetorは、工学部と医学部の共同チームが開発した。卓上サイズの新型呼吸器は約1000ドル(11万円)で製造が可能で、原価で販売されれば、市価2万~2万5000ドルする現行の医療水準人工呼吸器を置き換える有力な候補になる。

医療機器メーカーのMedtronic(Teslaとも共同で人工呼吸器の製造計画を進めている)とBoston Scientific(今回の承認後にCoventorの製造、販売を担当する)の両社も設計に寄与した。ミネソタ大学は今日(米国時間4/15)、Coventorの仕様をオープンソース化し、世界中で製造できるようにすることも発表した。ただし他社が製造するためにはFDAまたは各国の公共保健機関の承認を得る必要がある。

画像クレジット:University of Minnesota

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラが車載コンピュータやエアタンクで人工呼吸器を作るプロセスをビデオで紹介

Tesla(テスラ)は、他の自動車メーカー同様、設備を再編成して、新型コロナ危機のために人工呼吸器を作っている。下のビデオで同社は、人工呼吸器の設計プロセスの裏側を紹介している。

Ford(フォード)、General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)と同じく、Teslaの技術者は自動車用の部品を使って人工呼吸器を作っている。理由は単純、自動車部品がそこにあるからだ。自動車会社というものは、最終組立てにむけて執拗なほどに部品を準備する。さもないと、例えばドアのハンドルがなければ生産ラインは停止する。ビデオの中でテスラのエンジニアは、できるだけ多くの自動車部品を使おうとしていると言っている。

たとえば、テスラの人工呼吸器はModel 3のインフォテイメントシステムを使ってModel 3の車載コンピューターを動かし、呼気マニホールドの気流調節に使う。サスペンションのエアータンクは酸素混合チャンバーとして利用する。Model 3のタッチスクリーンもコントローラーとして使っている。

テスラは、いくつかの米自動車メーカーと人工呼吸器を作るための部品と人材を供給するとともに、自社の資源を利用して人工呼吸器、レスピレーター、フェイスシールドなどを作ることを約束した。GMは、インディアナ州の自動車工場で人工呼吸器を製造する意向であり、まもなく1日当り5万枚のマスクを作れるようになると最近発表した。テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、近々同社のニューヨーク工場を人工呼吸製造のために、再稼働すると発言した。おそらく上のビデオで見られる人工呼吸器もそこで作られるのだろう。

画像クレジット:Tesla

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国では新型コロナ対策で睡眠時無呼吸用の装置を改造して人工呼吸器の不足に対処

米食品医薬品局(FDA)は、従来とは異なる解決策に対する必要性が高まるなか、同局の方針と規制を適応させるよう取り組んできた。つまり、新型コロナウイルス(COVID-19)患者の治療に必要な医療機器の不足などに対応するためだ。カリフォルニア大学バークレー校と同サンフランシスコ校、さらには実働中の病院に所属する医師、エンジニア、医学研究者のグループは、人工呼吸器不足に対応する独創的な解決策を考案した。それがFDAの緊急使用許可(EUA)の基準を満たすことを願っている。これまでほとんど使われずに放置されていた、どこにでもあるハードウェアと、備蓄されている医療用呼吸器具によって解決しようというもの。

このグループには、肺疾患専門医、医学および工学の教授、その他多くのメンバーがいる。自らを、COVID-19 Ventilator Rapid Response Team(COVID-19人工呼吸器緊急対応チーム)と名乗っている。睡眠時無呼吸症候群の治療に一般的に使われている既存のCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)マシンを改造して、一種の人工呼吸器として利用する方法を編み出した。人工呼吸器は、ICU内で重度の新型コロナウイルス患者の呼吸を維持するための挿管に必要とされている。

睡眠時無呼吸用の装置は、自力で呼吸できない患者が継続的に使用するようには設計されていない。基本的に、睡眠中に患者の気道が塞がれないようにし、酸素レベルを維持して、望ましくない目覚めやいびきを防ぐもの。このCPAPの改造に取り組んだグループは、挿管に使用できるチューブを使用して、ハードウェアを適合させることができた。主導的な役割を果たしたのは、ベイエリアの3つの病院のICUで、肺の疾患を専門とする救命救急医、Ajay Dharia(アジャイ・ダリア)博士と、カリフォルニア大学バークレー校の工学系の大学院生だ。

すでにFDAは、緊急の必要性がある場合には、もともと人工呼吸器として設計されていない呼吸装置の使用を検討するよう、医療施設や専門家に促すガイダンスを発行している。これだけでも、人工呼吸器緊急対応チームのアプローチは一歩先んじたものだったことになる。それでもチームは、当局からの緊急の認可をさらに求めている。というのも、大量の機器を改造するには、サプライヤーやメーカーと大規模に協力することが必要だからだ。

さらにチームでは、現在使われていないCPAP、つまり睡眠時無呼吸症候群用の装置を寄付してくれるよう、個人や組織に協力を求めている。それを改造して、人工呼吸器を作るためのベースのハードウェアとして使うためだ。興味のある人は、チームのウェブサイトで、さらなる情報をチェックしてみよう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

トランプ政権がGEやフィリップスなどに人工呼吸器の製造を新たに指示

救命医療機器の国家備蓄が枯渇寸前の危機的状況の中、米国時間4月2日にトランプ大統領は、国家安全保障の重要な法律を活用し、新たな企業に人工呼吸器の製造を指示することを示唆した。

国内で新型コロナウイルスの蔓延を許した無数の初期対応の誤りを政権が正そうとする中、トランプ大統領が国防生産法(DPA)と呼ばれる法律の適用をためらっていたことは多くの人々を困惑させている。前例のない公衆健康危機は、米国で20万人の命を奪うと予測されている。

「本日私は、国防生産法に基づき、国内製造メーカーが国民の命を救うために必要な人工呼吸器を確実に作るための指令を出した」とトランプ氏が声明で語った。「保健福祉省長官および国土安全保障省長官に対する私の指令は、General Electric(ゼネラル・エレクトリック)、Hill-Rom(ヒル・ロム)、Medtronic(メドトロニック)、ResMed(レスメド)、Royal Philips(ロイヤル フィリップス)、Vyaire Medical(バイエア メディカル)といった国内メーカーが、ウイルスを打ち負かすのに必要な人工呼吸器の製造に必要な物資を確保するために役立つだろう」。

この指令によって、健康福祉省のAlex Azar(アレックス・アザール)長官は「あらゆる行政機関を利用して」製造の取組みを指示できるようになる。

「大統領は、米国の人々や医療従事者がPPE(個人防護具)や薬品など必要なものすべてを確実に入手できるために、DPAを使うつもりだ」とホワイトハウスのピーター・ナヴァロ大統領補佐官が木曜日の説明会で語った。

DPAに署名しながら実際に利用しないという大統領の意図を巡る当初の大きな混乱の後、トランプ氏は方針を転換したとみえ、米国時間3月27日にゼネラルモーターズに同法を適用した。同社は国家の指導がないときから人工呼吸器の製造を開始する意思を発表していた。その変容の二日前、トランプ大統領は、GMと人工呼吸器メーカーのVentec Life Systems(ベンテック・ライフ・システムズ)が最大8000台の人工呼吸器を製造する提携を結ぶことを発表する態勢にあった。その発表は、ホワイトハウスと米連邦緊急事態管理局(FEMA)がこの取組みの10億ドルという金額にたじろいだために中止されたと報じられている

関連記事:Trump orders GM to start ventilator production for COVID-19 amid contract dispute

トランプ大統領は、人工呼吸器、マスクその他医療用品の危機的不足状態について、再三疑問を投げかけていた。「一部で言われている多くの数字は実際よりも大きいのではないかと私は感じている」とトランプ氏が先週にFox NewsのホストであるSean Hannity(ショーン・ハニティー)氏に語った。「私には4万個とか3万個もの人工呼吸器が必要だとは思えない」。トランプ大統領はN95マスクやその他の一般的防護具の全国的不足についても繰り返し疑問を呈し、ニューヨークの医療施設はマスクを紛失したか、盗難を許したのではないかという根拠のない説を示唆した。,

国が今も命に関わる救命用品の不足と戦っている中、政府のDPAに基づく指令は、対象となるあらゆる企業が政府との契約を優先するよう強制することになる。同法はまた、連邦政府が力づくで、サプライチェーンに必要な物資をつくって提供させることも可能にする。この法の力の大部分は、国家的危機の中で物資を動員するために使われているが、指令が遂行されるためには、新たに選ばれたメーカーをトランプ政権が積極的に管理、調整していく必要があるだろう。

トランプ大統領がDPAに基づく指令を出し渋っていたのは、民間企業がホワイトハウスの指示を受けることなく、自力で立ち上がることに全幅の信頼をおいていたからだったのだろう。実際一部の企業はまさにそれを行ったが、新たな製造の取組みは需要を満たすにはほど遠く、流通が解決していないことは間違いない。感染拡大が国中の地域を襲うなか、多くの州は命にかかわる救命用品を持たずに戦っている。ニューヨークで次々と明らかになる深刻な健康危機は、悲惨な近未来の可能性を垣間見せている。

画像クレジット:Hiraman / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Medtronicは定評のあるポータブル人工呼吸器の完全な設計仕様とコードを無料公開

医療および生物医学工学系企業のMedtronic(メドトロニック)が、話題になっている。それというのもTesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOが、新型コロナウイルス(COVID-19)危機に対処するために人工呼吸器を生産したいと同社に相談を持ちかけたからだ。3月30日、Medtronicは、それよりもずっとインパクトのある取り組みを発表した。同社はPuritan Bennett(PB) 560ポータブル人工呼吸器の完全な設計仕様、製造マニュアル、設計資料そして将来的にソフトウェアのコードも一般公開する。

PB560にはいろいろな利点があるが、1つは比較的コンパクトで軽量なため、簡単に持ち運びができて、いろいろな医療機関や医療現場に設置して使えることだ。さらにこの機種は2010年に発売されているため10年間、安全に患者の治療を行ってきた医療機器としての実績もある。

現在、人工呼吸器の製造や、Dyson(ダイソン)のような畑違いの製造業者にも作ることができる新しい人工呼吸器の開発などのさまざまな取り組みが行われており、より多くの患者に行き渡るように、既存のハードウェアに改良を加えようとする企業もある。だがMedtronicは、世界中の製造業者が新たな生産ラインを設備できるように、費用も手数料も取らずにすべてを無料公開するという方法をとった。

それでも、現在の生産ラインを作り変えて別のものを製造するのは、どのような設計仕様を手に入れたそしても、現実には大変な仕事になる。だがMedtronicの取り組みは、今何が作れるかを模索している人たちに必要なリソースを与えることを意図している。それが、新しい画期的なアイデアの青写真になるからだ。製造業者は、Medtronicの実績ある設計を見ることで、自分たちでも比較的早期に製造可能なそれと同じ、または近い性能を有する機器を開発できるかも知れない。

Medtronicではその設計は、短期間で製造に入れて、それぞれの状況に適した設計を開発しようと試みている「発明家、スタートアップ、学術機関」に特に適していると話している。

「私たちはPB560の設計仕様を公開することで、業界の壁を越えて参加を望む企業が、早急に人工呼吸器を製造できる方法を考え、新型コロナウイルスと戦う医師と患者の役に立てるように手助けします」と、MedtronicのMinimally Invasive Therapies Group(低侵襲性治療グループ)対外コミュニケーション責任者John Jordan(ジョン・ジョーダン)氏は言う。

その一方でMedtronicは、PB980やPB840などのより高度な人工呼吸器の製造を続けるが、それらはさまざまな専門メーカーから集めた「1500点以上の部品」が必要で、「専門性の高い熟練した人材」と「相互接続されたグローバルなサプライチェーン」に依存しているためだと彼は話す。PB560でも、ある程度まで同じことがいえるだろうが、小型でシンプルなデザインのために、医療分野に初めて参入し、ほとんどあるいはまったく経験を持たずに人工呼吸器の製造に舵を切ろうと考える企業には最適の候補となる。

注意すべきは、Medtronicは厳密にはPB560の設計仕様をオープンソース化するわけではないということだ。同社は、新型コロナウイルスの世界的パンデミックに対処する場合に限って、特別な「パーミッシブ・ライセンス」を発行する。そして、ライセンスが失効するのは、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」の公式な終息宣言を行ったとき、または2024年10月1日のいずれか早い時点となる。

限られた期間であれ、Medtronicのような営利目的の企業が、独自開発したコード技術を一般公開するところまで考えるというのは、新型コロナウイルス危機がいまだ拡大傾向にあり、深刻化を増している証ともいえる。

PB560の設計仕様を見て、それを元に独自の機器を製造したいと考えるスタートアップや製造業者の皆さんは、こちらでライセンスの内容に同意して登録すれば、ファイルにアクセスできるようになる。

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(翻訳:金井哲夫)

1台の人工呼吸器を4人で同時に使える3Dプリント可能な器具をFDAを認可

米国の病院では人工呼吸器の不足が目の前に迫り、すでに危機的状態となっているが、症状が重篤化し入院が必要な新型コロナウイルス(COVID-19)患者が増加すれば、さらに深刻な事態となる。だからこそ、新たにFDA(米食品医薬品局)から非常用として認可を受けたこのシンプルな器具(ソースコードが無料公開されており病院で3Dプリントできる)が、最前線で対応している人たちの負担を最小限に抑える鍵となるかも知れない。

Prisma Health(プリズマ・ヘルス)のVESper(ベスパー)は、信じられないほどシンプルな3口のコネクターだ。これで1台の人工呼吸器を最大4人までの患者が同時に使えるようになる。この器具は、現在のISO規格に準拠した人工呼吸器本体とチューブに適合する。ウイルスやバクテリアが他の患者に感染しないよう、フィルター装置も接続できる。

VESperは2つ1組で使用する。人工呼吸器の吸気側にひとつ、呼気側にひとつを装着する。またこれをつなげることで、最大で4人の患者の治療が可能になる。ただしすべての患者の酸素供給量、酸素濃度、空気圧などすべての設定要素が同じで同じ臨床治療を行う場合に限られる。

この器具は、緊急治療室勤務のSarah Farris(サラ・ファリス)医師によって考案された。夫でソフトウェア・エンジニアのRyan Farris(ライアン・ファリス)氏は、彼女からこのアイデアを聞くと、最初のプロトタイプをデザインして3Dプリントした。Prisma Healthは、求めに応じてVESperのプリント仕様書を提供しているが、FDAが使用を認めた緊急時に限って使うよう注意していただきたい。つまりこれは、あくまで最後の手段として作られたものなのだ。FDAが定めた基準に適合する人工呼吸器がすべて塞がっていたり、患者の命をつなぐための器具や代替手段がない施設などでの使用に限定される。

FDAの緊急時使用許可(EUA)を受けたこれらの器具は、プロトタイプであること、そして実際に使ってみた結果を報告することが条件であることを十分に理解しておく必要がある。そうしたデータが、その有効性の検証に役立ち、安全と有効性のためのさらなる開発や改善に供されるのだ。

現地で3Dプリントするためのデータを提供するだけでなく、Prisma Healthでは3Dプリンターが使えない医療施設にプリントしたもの送るための資金の募集も行っている。南カリフォルニアの医療系基金Sargent Foundation(サージェント・ファウンデーション)がいちばんに寄付をしてくれたが、Prisma Healthは、研究の継続と新しい器具の開発のためのさらなる寄付を求めている

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(翻訳:金井哲夫)

テスラのニューヨークのギガファクトリーが人工呼吸器の生産を再開

Tesla(テスラ)のCEOであるイーロン・マスク氏は3月25日に、米国ニューヨーク州バッファローにある同社の工場を、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの蔓延により供給が不足している、人工呼吸器の生産を行うために「人手が確保でき次第」再開すると語った。

同日にTwitterに流されたマスク氏のコメントは、同氏がすでに発言していた人工呼吸器の寄付、もしくは重要な医療機器の増産を行う計画に続くものだ。こうした機器は、新型コロナウィルスによって引き起こされる呼吸器疾患に苦しむ患者たちに必要とされている。新型コロナウイルスは肺を攻撃し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や肺炎を引き起こす可能性がある。

そして、まだ臨床的に証明された治療法がないため、患者が呼吸し病気と戦えるように、人工呼吸器が頼られている状況だ。 ニューヨークタイムスの報道によれば、米国には現在約16万台の人工呼吸器があり、さらにNational Strategic Stockpile(国家戦略備蓄機構)には1万2700台の人工呼吸器が備蓄されている。

先週、テスラは声明で、電気自動車を組み立てるカリフォルニア州フリーモント工場とニューヨーク州バッファローのギガファクトリーでの生産を一時停止すると発表した。ただし「サービス、インフラストラクチャー、重要なサプライチェーンに必要な部品と供給品」の生産は停止されない。

マスク氏の声明からは、バッファロー工場がいつ再開するのか、あるいはソーラーパネルの製造に使用されている工場の一部の転用に、どれくらいの時間がかかるのかは明らかではない。マスク氏は、これがMedtronic(メドトロニック社)との提携の一部であるか否かには言及していない。

MedtronicのCEOであるOmar Ishrak(オマー・イシュラック)氏は、3月25日にCNBCに対して、救急医療用人工呼吸器の生産量を増やしつつ、テスラなどの他のパートナーと提携を行っていると語った。Medtronicは、他の人ができる限り迅速に製造を行うことができるように、より急性ではない状況で使える下級グレードの人工呼吸器の1つをオープンソース化すると述べた。こうした下級グレードの人工呼吸器は部品点数が少ないため生産が容易であり、重篤なケア以前の中間的な段階に利用できるという。

テスラは、GM、フォード、そしてフィアット・クライスラーに並んで、人工呼吸器を寄付するか、生産のための資源を提供することを約束した自動車メーカーの1つである。フォードは今週初め、人工呼吸器の生産能力を拡大するためにGEヘルスケアと協力していると述べた。

GMは、Ventec Life Systemsと協力して、人工呼吸器などの呼吸ケア製品の 生産拡大を支援している。Ventecは、GMの物流、購買、製造の専門知識を活用して、より多くの人工呼吸器を生産する。なお、生産数が上昇する時期や、どのくらいの数の人工呼吸器が製造される予定なのかについての詳細は、いずれの会社からもまだ明らかにされていない。

画像クレジット:Yichuan Cao/NurPhoto(opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

フォード、GM、テスラの人工呼吸器製造にトランプ大統領がGO

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大で人工呼吸器が不足している事態を受け、Ford(フォード)、GM(ゼネラルモーターズ)、そしてTesla(テスラ)による人工呼吸器製造にゴーサインが出た。トランプ大統領は22日、いかに有能かを示せと3社の経営トップに課題を突きつける文言でツイートを締めくくった。

新型コロナウイルスは呼吸困難を引き起こす病気であり、人工呼吸器は新型コロナウイルスの感染で入院する患者にとって必要不可欠な医療機器だ。新型コロナウイルスは肺へのダメージを引き起こし、急性呼吸窮迫症候群や肺炎につながりえる。臨床的に有効性が確認された治療法はまだなく、患者の呼吸や病気との闘いは人工呼吸器に頼っている。米国には16万台の人工呼吸器があり、これとは別に国家戦略備品として1万2700台があるとニューヨークタイムズ紙は報じた。

今回の動きは、ニューヨーク州のAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)知事の嘆願を受けてのものだ。クオモ知事は22日朝、医療機器の確保を各州に任せるのではなく国が行うよう、連邦政府に嘆願した。国防生産法に基づいて企業に医療機器を製造させるようトランプ大統領に求める自治体当局は増えていて、クオモ知事はそのうちの1人だ。

国の管理がないために、州同士が医療機器を巡って争っているとクオモ知事は述べた。価格は上昇していて、その結果、ヘルスケアシステムをさらに逼迫させることになる。

トランプ大統領はすでに国防生産法を発動させているが、実際に使われてきたのかは不明だ。トランプ大統領は先週、記者会見で発動させていると述べたが、連邦緊急事態管理庁のトップ、Peter Gaynor(ピーター・ゲイナー)氏は3月22日記者に対し、大統領はいかなる企業にもまだ緊急補給品をつくるよう命じていないと話した。

いくつかの自動車メーカーは先週、人工呼吸器の製造が可能かどうかを調査していると話していた。米国では新型コロナウイルスが広がり、人工呼吸器のような医療機器を必要する病院が増えている。こうした事態を受け、GMは3月20日、人工呼吸器の増産サポートに向けVentec Life Systemsとともに取り組んでいると明らかにした。この提携では、新型コロナに対応する企業を調整するStopTheSpread.orgがひと役買った。

フォードは22日のTechCrunchへの電子メールで、人工呼吸器や他の医療機器の生産の可能性など、行政をサポートする用意はできていると語った。「米国や英国の政府と事前協議を行い、対応できるか調べている」と同社の広報担当のRachel McCleery(レイチェル・マッククルーリー)氏は述べた。「危機を前に国を支えるために力を合わせることが不可欠だ。そうすることでこれまでにも増して強くなる」。

SpaceX(スペースX)とTesla(テスラ)のCEOであるElon Musk (イーロン・マスク)氏は3月21日、人工呼吸器のことでMedtronicと協議を持ったとツイートした。Medtronicはその後、協議の事実をTwitterで認めた。マスク氏はこれより前に、SpaceXとTeslaが人工呼吸器の製造に取り組むとツイートしていたが、詳細は示していなかった。この件についてテスラにコメントを求めることはできなかった。

画像クレジット: The Washington Post / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

トランプ大統領が新型コロナ対策に国防生産法を発動、マスクと人工呼吸器の増産を約束

3月18日、ホワイトハウスの記者会見の冒頭でトランプ大統領は国防生産法を発動したことを確認した。今週に入って新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行と戦うために大統領はこの法律を用いるべきだとする声が各方面から強くなっていた。

この法律は米国が冷戦の最中だった1950年に制定されたもので、大統領は企業に対し国防のために必要な契約または措置を命じることができる。また必要な生産を可能にするために資産の徴発、労働争議の仲裁、賃金や価格の管理などの広範な権限を大統領に与える。

この法律が発動された理由の一部は、防護マスク、手袋、人工呼吸器など新型コロナウィルスと戦う最前線の医療スタッフが必要とする基本的物資が米国全体で不足しているからだ。記者会見で記者側から指摘があったように、医療施設は数週間前から人工呼吸器が不足し始めており、重大な事態が迫っていると警鐘を鳴らしていた。また今週に入るとマスクに関する状況が悪化していることがたびたび報じられた。使い捨てマスクを再利用したり、マスクを自製したりするなど、リスクの高い間に合わせの手段に頼らざるを得ない医療スタッフが増えているという。

トランプ大統領は次のように述べた。「この法律を発動したのは、まずマスク(の生産)のためだ。信じられないほどの数のマスクが必要とされる。数百万個が発注済だがさらに数百万個が必要だ。まさかこれほど多数のマスクが必要になるとは考えもしなかったが、ともかく数百万個のマスクが緊急に必要なのだ。すぐに発注する。米国には多数の人工呼吸器が必要だ。それは複雑な装置なので(生産は)大変だ。米国には多数の人工呼吸器があるがさらに多数を発注する」。

政府は以前、使用可能な人工呼吸器の数について正確な数値を調べて発表すると述べていた。今回も同じ質問があったが答えは同じだった。しかしマイク・ペンス副大統領は概数を挙げた。副大統領によれば、「1万以上の人工呼吸器が在庫にある」という。この数字は病院や企業内に存在する数を含まない戦略的備蓄だという。

トランプ大統領は、記者団から「連邦政府や州の政治家、専門家から要請が上がったのに国防生産法を発動するまでになぜこれほど時間がかかったのか」と単刀直入に質問された。

大統領は「人工呼吸器が数千台もあると聞けば大変な数に聞こえる。(新型コロナウィルスは)全く予期しなかった問題だ。(人工呼吸器の)台数など政府では誰も考えたこともないし、そんな大きな数字を見たこともない」と答えた。しかし医療専門家はかなり以前から警告を発していた。トランプ大統領がこれは(国防生産法を必要とする)重大な危機だと公に認めるようになったのは最近の変化だ

さらに「米国では数週間前からもっと多くの人工呼吸器が必要だと知っていた」と追求されると トランプ大統領は「それはよく知っていた」と認めたが、「どうなるか様子を見極める必要があった」と弁解した。つまりこういう数字は最悪のシナリオに基づいており、「たいていの場合そうした予想よりも少ない数で済む」とした。しかし、今週に入って、米国のある人工呼吸器メーカーは「生産量を5倍に増やすことは可能だが、そうは求められていない」と述べている。

もちろん国防生産法の発動は、あらゆるハードウェアを製造する米企業に広範囲な影響をもたらす可能性がある。国防生産法は、何であれ国防に必要な物資の生産を優先させるために大統領に非常に幅広い権限を与えるからだ。大統領は新型コロナウイルスとの戦いに有益であると認めれば企業にその生産の優先を命じることができる。当面、国防生産法に基づく命令は人工呼吸器とマスクの増産に絞られるようだ。しかしこの権限は臨時の病院、診療所、またそれらに必要を機器を含め、緊急医療施設を新設することにも拡大できる。

同時にトランプ大統領は新型コロナウィルスの救援活動のために海軍の病院船、マーシーとコンフォートの動員を許可している。マーシーはニューヨークに展開する一方、現在サンディエゴ港に停泊しているコンフォートは必要とされる場所に向かう準備を整えている。双方とも1週間以内に活動開始可能だ。また臨時施設の建設、設置その他の措置の支援のために米陸軍工兵隊が動員できるという。

画像:Alex Wong / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook