10cmの高解像度衛星画像提供を目指すAlbedoが10.8億円調達

今では、大半のスタートアップがソフトウェアを開発しているが、すべての新興企業が事業を構築するのにコード専門のアプローチを取っているわけではない。現代で最も野心的なスタートアップの一部はそれ以上のものを目指している。

Albedo(アルベド)はそうした企業の1社だ。最近のY Combinator卒業生である同社は、今日入手できるものよりも高解像度の地球画像を提供できる低軌道衛星コンステレーションの構築を目指している。そして同社は1000万ドル(約10億8000万円)のシードラウンドをクローズしたばかりだ。

同ラウンドはInitialized Capitalがリードし、JetstreamLiquid2 VenturesSoma Capitalが参加した。

TechCrunchはY CombinatorのときからAlbedoに目をつけ、同社が「空中品質」の画像と表現するものの提供で取っているアプローチを取り上げた。同社はドローンや航空機の代わりに宇宙から撮影する。より専門的にいうと、Albedoは10cmの視覚画像と2mの赤外線画像を提供しようとしている。

共同創業者でCEOのTopher Haddad(トファー・ハダッド)氏によると、同社は初の衛星を2024年に打ち上げ、2027年までに全コンステレーションを軌道に乗せることを目指している。衛星8基で毎日画像を2回提供でき、24基で3回提供できるが、衛星8基が初期の目標となるとのことだ。

Albedoが取り組んでいるものに、なぜこれまで誰も挑戦していなかったのか。部分的には大きな宇宙産業経済における進歩のおかげで、そして大手クラウドプロバイダーのAWSとAzureが衛星データを扱うためのサービス「AWS Ground Station」と「Azure Orbital」を構築したという事実によってAlbedoは可能になっているとハダッド氏はレターの中で説明した。つまり、より安価な打ち上げとより多くのモジュラー衛星建設が組み合わさり、Albedoが手がけたいものが可能になりつつある。

AlbedoのCEOで共同創業者のトファー・ハダッド氏(画像クレジット:Albedo)

しかしAlbedoがしようとしていることにはテック面でリスクもいくらかある。衛星が長く漂っていられるよう、衛星の電気推進装置にどのように軌道上で給電しようとしているかについてハダド氏は説明した。もし給電の取り組みが失敗すれば、あるいは予想よりも風の巻き上がりが悪ければ、Albedoの衛星はわずかに高い軌道と12〜15cmの範囲の低解像度の写真を選択しなければならないかもしれない。

蛇足だが、実際問題として解像度は何を意味するのだろうか。衛星からの10cmの解像度の画像は各ピクセルがそれぞれの面で10cmのものだ。なので、15cmの解像度の画像は10cmの画像の表面の2倍超のピクセルを持つことになる。

解像度は重要で、新しい画像が規則的に撮られることもそうだ。後者に関しては、今後展開される同社の衛星が写真を次々と撮るはずだ。

Albedoはあらゆる規模の企業を顧客としてターゲットにしたい意向だ。画像の世界は大きなマーケットだ。不動産保険会社、地図作成会社、電力会社、その他大企業が顧客になるとハダッド氏は見込んでいる。そして現在、同社は目標に向かって進むためにこれまで以上に多くの資金を手にしている。

ラウンド

初期のソフトウェアプロダクトを繰り返すよりも、宇宙スタートアップとしてスタートさせることに金がかかる。調達したばかりの1000万ドルでAlbedoは何をするのか。まず最初はスタッフだ。TechCrunchが最後にハダッド氏と話したとき、Albedoはまだ3人のチームだった。しかしそれは変わろうとしている。最近多くの新規採用を行い、すでに同社に入社する予定の人以外にも4、5人加わる見込みだ。

2021年末までに10〜12人になると予想している、と同社は話した。

調達した資金によって同社はロケット会社への頭金を払い、Albedoが衛星デザインを完了させられることにつながるはずのサプライヤーへの支払いを行うことができる。ハダッド氏によると、同社は初の衛星を軌道に乗せる資金をまなうためにおおよそ1年以内に大型のシリーズAを実施する予定だ。その際は自社のテクノロジーを証明することになりそうだ。そしてすべてが順調にいけば、打ち上げスケジュールを予定通り進めるためにさらに多くの資金調達にもつながる。

新たに調達した資金で何をできるのか見ることにしよう。資金が十分であれば、次の資金調達のマイルストーン達成へと進む。そうであれば、初の衛星打ち上げをTechCrunchが紹介できる。楽しみだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:Albedo人工衛星資金調達

画像クレジット:Albedo

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

産業や気候変動モニタリングで重要な赤外線と熱放射を観測する衛星画像のSatellite Vuが5.4億円調達、2022年に衛星打ち上げへ

地球観測の分野はますます競争が激しくなっているが、Satellite Vu(サテライトヴ)は産業や気候変動モニタリングにとって重要なものである赤外線と熱放射にフォーカスするという異なるアプローチを取っている。TechCrunchのStartup Battlefieldを経て、同社はシードラウンドで360万ポンド(約5億4000万円)を調達し、2022年に初の衛星を打ち上げる予定だ。

Satellite Vuのテックとマスタープランの基本はTechCrunchのSatellite Vu紹介記事にあるが、要旨はこうだ。Planetのような企業が地球の表面のほぼリアルタイムの画像を儲かる商売にした一方で、熱画像のようなニッチな部分は比較的開拓されていない。

建物や地上の特徴的なもの、あるいは人々の集まりから放射される熱は非常に興味深いデータポイントだ。オフィスビルや倉庫が使用されているのかどうか、温められているのか冷やされているのか、そのプロセスがどれくらい効率的かを示すことができる。地下水や送電線、熱影響を受ける他の物体の存在をうかがわせる温かい、あるいは冷たいエリアを見つけ出すことも可能だ。また、何人がコンサートあるいは就任式に参加しているかを推量することもできる。もちろん、夜でも使える。

たとえば発電所のどの部分がいつ稼働しているかを確認できる(画像クレジット:Satellite Vu)

汚染や他の物質の排出も簡単に特定して追跡でき、地球の赤外線観測を気候変動という観点から産業を監視するのに重要な役割を果たす。これこそがSatellite Vuが初の調達で現金を、それから英国政府からの140万ポンド(約2億円)の助成金、5億ポンド(約748億円)のインフラ基金の一部を引きつけたものだ。

「やはり我々の考えは正しかったのです」。創業者でCEOのAnthony Baker (アンソニー・ベイカー)氏は、同社がこの資金で初の衛星の製造を開始し、追加の資金のクロージング手続きを開始したと話した。

宇宙を専門とするVCファームのSeraphim Capitalは同社への助成金基金をマッチングし、その後の助成金と合わせて調達総額は目標の500万ドル(約5億4000万円)を超えた。Seraphim Capitalの最重要のベンチャーはおそらく合成開口衛星スタートアップICEYEだろう。

「Satellite Vuの魅力はいくつかあります。これについて我々は2020年いくつかの調査を発表しました。小型衛星コンステレーションを打ち上げる計画を持っている企業は180社以上です」とSeraphimのマネージングパートナーJames Bruegger(ジェームズ・ブルガー)氏は話した。しかし、赤外線あるいはサーマルの分野に目を向けている企業はかなり少数だと指摘した。「それで我々の好奇心がかき立てられました。なぜなら、赤外線はかなりのポテンシャルを持っていると常々考えていたからです。そして当社の2019年の宇宙アクセラレーターを通じてアンソニーとSatellite Vuを知っていました」。

Satellite Vuは資金を必要とする。衛星そのものはかなり安いように思える。衛星は合計1400万〜1500万ドル(約15億〜16億円)で、全体をカバーするのに衛星7基が必要となり、それだけで今後数年で1億ドル(約108億円)超はかかる。

画像クレジット:Satellite Vu

しかしSeraphimはひるんでいない。「宇宙を専門とする投資家として、当社は忍耐の価値を理解しています」とブルガー氏は話した。そしてSatellite Vuが同社のアプローチで「広告塔」になっていて、これによりSeraphimのアクセラレーターを通じてアーリステージの企業を導き、エグジットするまでサポートする、と付け加えた。

Seraphimはベイカー氏が関心のある企業から得られそうな収入について計算するのを手伝っている。あらゆるもののための資金を工面する必要があるからだ。「商業的なトラクションは最後に話したときから改善しました」とTechCrunchのDisrupt 2020 Startup Battlefieldでプレゼンする前にベイカー氏は話した。

同社は現在、26件の仮契約を抱えており、ベイカー氏の推定では1億ドルの事業になる。もちろん求められているサービスを提供できればの話だ。そのために同社は未来の軌道カメラを普通の飛行機に設置して飛ばし、衛星ネットワークから送られてくると予想するものに似せるために出力を修正してきた。

衛星からの画像に関心のある企業は現在、事前に撮影された画像を購入でき「本当の」プロダクトへの移行は比較的大変ではないはずだ。Satellite Vuのサイドでパイプラインを構築するのにも役立ち、テスト衛星やサービスは必要ない。

模擬の衛星画像の別例。同じカメラが軌道に設置されることになるが、遠くからの画像に似せるために質を低下させた(画像クレジット:Satellite Vu)

「我々はそれを疑似衛星データと呼んでいます。ほぼ実用最小限の製品です。顧客企業が必要とするフォーマットやスタッフについてともに取り組んでいます」とベイカー氏は話した。「次のステージとして、当社はグラスゴーのような都市全体をとらえてサーマルでマッピングする計画です。これに関心のある組織は多いのではないかと考えています」。

Satellite Vuのオペレーションや打ち上げはPlanetやStarlink、そして AmazonのKuiperのものに比べると小さいが、調達した資金、仮の収入、そして抱えている見込み客からするにSatellite Vuは注目を引く準備ができているようだ。2022年に仮予定されている初の打ち上げ後、残る6基の衛星を軌道に乗せるのに必要な打ち上げは2回で、ライドシェアの打ち上げロケットに1度に3基を載せる、とベイカー氏は話した。

しかし打ち上げ前にさらなる資金調達が行われ、おそらく早ければ数カ月内だろう。結局のところ、Satellite Vuが倹約的であっても、本格的に事業を展開するには巨額の現金が必要となる。

カテゴリー:宇宙
タグ:Satellite Vu気候変動赤外線人工衛星資金調達

画像クレジット:Satellite Vu

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペースXが再利用Dragon宇宙船での宇宙飛行士の打ち上げに初成功

SpaceX(スペースX)は米国時間4月23日の金曜日朝、Crew Dragon宇宙船の打ち上げと軌道投入を予定通り実施し、またしても有人宇宙飛行を成功させた。Crew DragonはFalcon 9ロケットに搭載され、米フロリダ州ケープカナベラルから東部時間4月23日午前5時49分(日本時間4月23日午後18時49分)に離陸した。搭乗したのはNASAのMegan McArthur(メーガン・マッカーサー)飛行士、Shane Kimbrough(シェーン・キンブロー)飛行士をはじめ、JAXAの星出彰彦、ESAのThomas Pesquet(トーマス・ペスケ)氏ら4名の宇宙飛行士である。

これはスペースXにとって、2020年のCrew-1に続く2回目のNASA向けの正式な宇宙飛行士輸送ミッションだ。Crew-1とは異なりCrew-2では、Crew-1の打ち上げ時に使用された第1段ブースターや、ペースXが初めて有人宇宙飛行を行った際に使用されたCrew Dragonカプセルなど、宇宙船システムのうちの2つの再使用部品が使用された。Crew DragonカプセルはNASA向けの宇宙船認証プログラムの最終デモンストレーションミッションで、Bob Behnken(ボブ・ベンケン飛行士、このミッションのパイロットであるマッカーサー飛行士はベンケン飛行士の妻)とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)飛行士をISSに送り込んだ。同社は再使用部品を使用することは新品部品を使用するよりも間違いなく安全であると指摘しており、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは4月22日の夜に行われたXPRIZEのPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏との会話の中で「工場から出てきた宇宙船の初飛行」には参加したくないと述べている。

Crew Dragonは目標とする軌道に到達し、これから24時間弱かけて国際宇宙ステーション(ISS)とのランデブーを実施する。そして翌日の早朝には、スペースXのもう1機のCrew Dragonが2021年4月初めにISSの別のポートに移動した際に空けられたばかりのドッキングポートに取り付けられる予定だ。

今回の打ち上げにはブースターの回収も含まれており、スペースXのドローン着陸パッドを使って海上に着陸した。このブースターはすでに2組の宇宙飛行士を搭乗させており、改修後にさらに別の宇宙飛行士を乗せることができる。

スペースXとNASAとのCommercial Crewプログラムは、NASAが研究や宇宙開発ミッションのためにより多くの民間企業と提携する動きの中でも、重要な成功例であり続けている。アポロ計画以来初めて月に人間を帰還させるアルテミス計画の有人着陸システムの開発に、NASAはスペースXを起用した。同社の有人宇宙飛行計画にとって次の大きなマイルストーンは、現在秋に予定されている民間人のみで構成されたミッションの初飛行だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXCrew DragonFalcon 9ロケットNASAJAXA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAが初めて火星の大気からの酸素生成に成功、将来の有人探査に向けた実証実験

NASAが初めて火星の大気からの酸素生成に成功、将来の有人探査に向けた実証実験

NASA/JPL-Caltech

2月18日に赤い大地に降り立ってから60日が経過した最新の探査ローバーPerseveranseが、火星の大気から酸素を生成することに成功したと、NASAが発表しました。

酸素を生成するのは、トースターほどの大きさであるMOXIE(Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment)と称する機器。96%がCO2という火星大気を酸素と一酸化炭素に分離します。

将来的にこれを改良した装置が、火星にやってきた飛行士が現地で酸素を手に入れる手段を提供するために重要な役割を果たすことになるかもしれません。

「これは火星の二酸化炭素を酸素に変換するための重要な第一歩です。MOXIEにはまだ課題がありますが、今回の技術実証の結果には、人類が火星に降り立つという将来の目標に向け、大きな期待が寄せられます。酸素はわれわれが呼吸するためだけのものではなく、ロケット推進用燃料の燃焼にも必要です。将来の探査機は火星で生成した酸素を使用して地球へ帰還することになるでしょう」とNASA宇宙技術ミッション局の副局長ジム・ロイター氏は述べています。

NASAによると、ロケット推進のためには推進剤に対して重量比で5倍の酸素が必要になります。一方で、飛行士が火星で生活するだけならそれほどまでに大量の酸素は必要ではなく、年間1トンほどで済むとのこと。

ただし、CO2から酸素を取り出すには約800℃という高い温度が必要となります。そのためMOXIEは非常に高度な耐熱構造になっています。

MOXIEは1時間に最大10gの酸素を生成可能で、これは飛行士が20分程度呼吸できる量とのこと。Perseveranseは火星における1年(地球の時間では約2年)の間に、少なくともあと9回は酸素生成を実施する予定です。

NASAはMOXIEの技術によって火星の大気からロケットの推進剤や飛行士の呼吸用酸素を作るだけでなく、できあがった酸素と水素を反応させて水に変換することもできるとしています。

なお、NASAは今週、火星での初の航空機(回転翼機)であるIngenuityの飛行に成功しています。IngenuityもMOXIEもいまは概念実証的な段階ですが、いずれもいつか飛行士が火星を歩くときには必要な技術です。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

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タグ:炭素 / 二酸化炭素(用語)NASA(組織)惑星探査車 / ローバー(用語)

SpaceXがFalcon 9による第2クルー打ち上げをライブ中継

SpaceX(スペースX)は、国際宇宙ステーションへの2回目の商用有人飛行を、太平洋夏時間4月23日午前2:49(日本時間4月23日午後18時49分)に発射する予定だ。このフライトではNASAから2名、JAXA(宇宙航空研究開発機構)から1名、ESA(欧州宇宙機関)から1名の計4名の宇宙飛行士がISSに向かい、科学実験の実施や軌道プラットフォームの維持・改良などの定期的なミッションを行う。

2020年に、Dragon宇宙船とFalcon 9ロケットの有人飛行を正式に認めたSpaceXにとって、今回のミッションは2回目の商用有人飛行となる。NASAは同年11月、SpaceXの有人飛行認定を受けた打ち上げシステムを使用して4人の宇宙飛行士を打ち上げ、2011年にスペースシャトルが退役して以来、米国の宇宙船として、そして民間企業として初めてISSに人を送り届けた。スペースシャトル退役後、NASAはロシアのソユーズロケットを利用していた。

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宇宙ステーションには、2020年に打ち上げられたCrew-1に搭載されたSpaceXのCrew Dragonがすでにあり、Crew-2に搭載されるCrew Dragonの到着に備えて、2021年4月初めにステーションの別ポートに移動されている。Crew-1 Dragonは、2021年4月28日に今回のフライトでクルーが交代した後、その宇宙飛行士を乗せて地球に帰還する予定だ。

今回の打ち上げで注目すべき変化の1つは、飛行実証済みのFalcon 9ロケットブースターの使用だ。SpaceXはこれまで、有人飛行の際には工場から出荷されたばかりの新しいブースターを使用してきたが、貨物飛行でのブースター再利用に関して申し分のない実績がある。これはCrew Dragon初の再利用でもある。この打ち上げシステムのどちらのコンポーネントも以前は人間の打ち上げをサポートしており、第1ステージはCrew-1の間に提供され、Dragonは宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurleyn(ダグラス・ハーリー)氏を飛行させたDemo-2のためにされている。

本日の打ち上げに参加する宇宙飛行士は、NASAのShane Kimbrough(ロバート・キンブロー)氏、Megan McArthur(メーガン・マッカーサー)氏、JAXAの星出彰彦氏、ESAのThomas Pesquet(トマ・ペスケ)氏だ。

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タグ:SpaceXNASA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アマゾンが同社Project Kuiper衛星群最初の打ち上げで宇宙開発で実績あるULAと契約

Amazon(アマゾン)の衛星コンステレーションであるProject Kuiperが、宇宙への進出に一歩近づいた。アマゾンはUnited Launch Alliance(ULA、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)と、9回のAtlas Vロケットの打ち上げで同社衛星を打ち上げる契約を結んだと発表した。同社は複数の打ち上げ事業者とロケットを使用して3236機のKuiper衛星を低軌道(LEO)に打ち上げる予定だが、ULAはアマゾンが契約を発表した最初の打ち上げ事業者だ。

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ULAのAtlas Vは、これまで85回のミッションを完璧にこなしてきた宇宙開発業界で実績のがあるロケットだ。例えば、NASAの探査車PerseveranceやLockheed Martin(ロッキード・マーティン)のロボット小惑星探査機OSIRIS-RExの打ち上げに使われた。アマゾンとULAは、契約の対象となる打ち上げロケットの総数については詳しく説明しているが、いつ打ち上げが行われるかについてのスケジュールは明らかにしていない。

2020年末のTC Sessions:Spaceで、TechCrunchはアマゾンのデバイス&サービス担当SVPであるDave Limp(デイブ・リンプ)氏に、打ち上げスケジュールについて質問している。その際、リンプ氏はアマゾンがProject Kuiper衛星の「設計段階の中盤」にあると述べていた。これは明らかに、打ち上げに先立つ量産に入るまでまだ作業が残っていることを意味する。

リンプ氏によると、アマゾンがこのコンステレーションを運営するためのFCC(連邦通信委員会)のライセンス期限が迫っており「約6年後までにコンステレーションの半分を打ち上げる」必要がある。これは設計段階が完了し、実際に衛星を製造している段階になった後、積極的な打ち上げスケジュールが必要になることを意味する。

アマゾンはProject Kuiperに多くの資本と時間を投資しており、初期投資額の100億ドル(約1兆1000億円)と現在500人を含むプロジェクトの専任スタッフ、およびグローバル本社のあるレッドモンド近くの専用オフィスと研究開発施設で支援することを約束している。

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タグ:AmazonProject KuiperULA

画像クレジット:Amazon / ULA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAが火星でのヘリコプター初飛行に成功、歴史にその名を刻む

米航空宇宙局(NASA)は火星で初めて動力により航空機を飛行させるという、地球外探査計画における重要な節目を迎えた。この飛行ミッションは米国時間4月19日早朝に行われ、NASAはIngenuityヘリコプターが火星で飛行したことを確認するテレメトリーを、Perseverance探査機の中継により受信した。火星の大気が非常に薄いため、Ingenuityのように大気を利用して揚力を得ることができるローター駆動の機体を作ることは非常に難しい挑戦であることを考えると、これは大きな成果だといえる。

今回のIngenuityの初飛行は自律的な遠隔飛行で、地球上のクルーが適切なタイミングでコマンドを送り、火星の「空気」の中を40秒かけて移動するというものだった。これは短い飛行のように思えるが、飛行中にヘリコプターが収集したデータには計り知れない価値がある。IngenuityにはローバーのPerseveranceよりもはるかに高性能なプロセッサーが搭載されている。そして飛行テスト中に生成された膨大なデータを収集してローバーに送信し、ローバーがその情報を地球に送信した。

画像クレジット:NASA/JPL

前述したように、これは火星における初めての動力飛行であり、どのように飛行するかを予測するために多くのモデリングやシミュレーション作業が行われてきたが、実際のテストの前には何が起こるのか誰にもわからなかった。例えば火星の大気は薄いため、地上のヘリコプターのローターが毎分400〜500回転であるのに対し、Ingenuityは毎分2500回転という超高速でローターを回転させなければならないなど、技術的な課題が山積していた。

火星でヘリコプターを飛ばすことに、どんな意味があるのだろうか。いくつかの重要な応用の可能性として、まず第1に将来の探査ミッションの準備として、火星での将来の科学探査のためにNASAが航空機を利用できるようにすることだ。例えば航空機なら、ローバーが到達できない洞窟や山頂などを探索できる。最終的にNASAは、将来の火星有人探査において航空機が利用できるかどうかも確認したいと考えている。いずれ火星に到着したときに地上の乗り物だけでなく航空機が利用できれば、火星の探査チームには大きなメリットとなる。

今後、NASAは今回のフライトから得られたデータを解析し、ヘリコプターの上昇、ホバリング中、そして着陸時の写真や動画をより多く取得する予定だ。今回の飛行によりIngenuityが意図したとおりに飛行できることがわかったため、NASAは残りの電力やその他のパラメータにもとづいて追加の飛行テストを計画する予定だ。

関連記事:NASAが火星で初となるヘリコプターの飛行を4月8日に計画

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タグ:NASA火星ヘリコプター

画像クレジット:NASA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAがアポロ計画以来となる有人月面着陸システムの開発にSpaceXを指名

NASAの有人着陸システム(HLS)を受注する企業が、SpaceX(スペースエックス)に決定した。同社は、アポロ計画以来初めてNASAの宇宙飛行士が月面に降り立つ手段を開発する権利を、29億ドル(約3156億円)で落札した。SpaceXはBlue Origin(ブルーオリジン)や Dynetics(ダイネティックス)と並んで入札に参加していたが、The Washington Post(ワシントンポスト)によると、これらのサプライヤー候補を大幅に下回る価格で落札したという。

SpaceXは、現在開発中の宇宙船「Starship(スターシップ)」を、宇宙飛行士が月に到着した後の着陸手段として使用することを提案した。HLSは、NASAのArtemis(アルテミス)計画で重要な部分だ。このミッションは無人飛行から始まり、有人での月面接近を経て、最終的には2024年を目標に、月の南極に宇宙飛行士が着陸することを目指している。

NASAは2020年4月、HLSの入札に参加するベンダーとして、SpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を承認したと発表。それ以来、Blue Origin(とそのパートナー企業であるLockheed Martin[ロッキード・マーチン]、Northrop Grumman[ノースロップ・グラマン]、Draper[ドレイパー]による「ナショナル・チーム」)とDyneticsは、各々のシステムの実物大モデルを製作し、機能的仕様の計画を詳細に記した提案書をNASAに提出して検討を受けていた。一方、SpaceXはテキサス州でStarship宇宙船の機能的なプロトタイプを積極的にテストしており、準備が整えば月に向けてStarshipを推進させるための「Super Heavy(スーパーヘビー)」ブースターの開発も進めている。

関連記事:NASAがSpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を月面着陸船の開発に指名

この計画では、NASAは3社すべてを選んで契約の初期要件を満たす最初のバージョンを製造させ、最終的には、月面に到達する手段に柔軟性を持たせるために、3社の中から2社を選んで有人着陸機を製造させると一般的に考えられていた。これは基本的に、NASAが国際宇宙ステーションに向けてCommercial Crew Program(商用有人宇宙船計画)を実施した際に、SpaceXとBoeing(ボーイング)の2社に宇宙飛行士輸送用の宇宙船の製造を発注したのと同じやり方だ。SpaceXはすでに資格を取得して宇宙船の運用を開始しており、ボーイングは2021年の終わりか来年の初めには、SpaceXと並ぶ選択肢として稼働できるようにとたいと考えている。

SpaceXは信頼性が高くて再利用可能な有人宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」で商用人員輸送を実現し、NASAから多くの信頼を得ている。魅力的な価格設定に加えて、NASAは人間だけでなく、大量の物資や材料を月へ、そして最終的には月より遠い場所にも飛ばせることを目指しているため、SpaceXの柔軟性と貨物容量に惹かれたと、ワシントンポストは書いている。

しかし、現時点において、SpaceXのStarshipはその目標からまだほど遠いところにある。SpaceXはラピッドプロトタイピングという手法を用いて、新たなテストを繰り返すことで迅速に開発を進めてきたが、直近のStarshipによる高高度飛行は、着陸前に爆発するという不運な結果に終わった。しかし、これまでのテストでは、空中で向きを変え、着陸に向けて減速を行うなど、他の要素では成功を収めている。とはいえ、これまでのテストでは地球の大気圏外に出たことはなく、有人飛行テストも行われていないため、ミッションに対応するためにはさらなる開発が必要だ。

SpaceXは、Lunar Gateway(月周回有人拠点)建設のための資材を搬送するロケット会社としても選ばれており、2024年に予定されている打ち上げに向けて、実際にPPE(Power and Propulsion Element、電力・推進モジュール)とHLO(Habitation and Logistics Outpost、居住・物流前哨基地モジュール)を製造するMaxar(マクサー)と協力している。だが、これらのモジュールは、すでに何度も打ち上げに成功している「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」で搬送される予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:NASASpaceXアルテミス計画Starship

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ノースロップ・グラマンが軌道上の古い衛星の再生に成功、衛星の寿命を5年延ばす

宇宙防衛産業大手のNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)が新しい衛星テクノロジーを開発した。同社のミッション延長のための衛星、MEV-2をインテルサットのIS-10-02衛星にドッキングさせ、同衛星の寿命を5年延長することに成功した。これによりオービタルサービスと呼ばれる衛星サービス業務がビジネスとして極めて大きな可能性を持つことを証明した。

2020年8月に打ち上げられたMEV-2はインテルサットの通信衛星の軌道に同期した。インテルサット衛星は打ち上げ後18年で当初の運用予定期間をすでに5年も超過しており、まもなく退役が予定されていた。しかしOSAM(軌道上サービス・組立・製造)ビジネスが指すのは、まさにこのような状況で衛星を再生することだった。成功すれば運用者には数百万ドル(数億円)の効果がある。

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米国時間4月13日の軌道上作業でMEV-2衛星はIS-10-02に慎重に接近、ドッキングに成功した。MEV-2はそれ自身が燃料をフルに搭載した新しいエンジンとなり、インテルサット衛星の寿命を5年間延長した。ノースロップ・グラマンの広報担当者は「MEV-2は、10-02衛星の新しい動力原と考えてください」と語った。同社のプレスリリースによればドッキングの仕組みは次のようなものだ。

MEV-2のドッキングシステムはインテルサット衛星の後端にある位置制御用液体アポジモーターの噴射ノゾルに挿入するプローブを備えています。軌道上にある衛星の8割近くがこうしたノズルを備えているのでMEVは多様な衛星にサービスを提供することができます。液体アポジモーターの噴射ノズルはドッキングシステムのプローブを捕獲するための誘導コーンの役割を果たします。ドッキングプローブはモーター内部に入ったところで拡張されてカスタマー衛星を捕獲します。続いてプローブは3本の支柱を備えたドッキングリングによって両衛星を確実に結合します。

MEV-2に先行するMEV-1は2020年インテルサットのIS-901衛星とドッキングし軌道変更に成功している。

関連記事:ロボットが軌道上で部品から宇宙船を組み立てるMaxarとNASAの実験

しかし、その場合、衛星は活動を停止しており、復帰に適した軌道に軌道に入っていなかった。そのためMEV-1には、ミッションの最初の部分でのアプローチに少しだけ余裕があった。

MEV-2の場合、IS-10-02衛星は通常の軌道上で運用されていたため、サービスを提供する宇宙船は対象となる衛星の運用を妨げないようにアプローチを調整する必要があった。もちろん、稼働中の衛星にサービスを提供できるようになることは、死んだ衛星にしか対応できない状況から大きなステップアップになる。

そして当然のことながら、目標は、数年も衛星にしがみつくことなく別の衛星をドッキングして燃料を補給できる宇宙船を作ること、そして故障した部品を修理して、99%機能する衛星を燃え尽きることなく軌道上に留めておくことだ。Orbit Fabのような新興企業は、これを実現するために必要な部品やポートの製造と標準化を目指しており、Northrop Grummanは2024年に打ち上げ予定の次のトリックでロボットによるサービスミッションを計画している。

カテゴリー:宇宙
タグ:Northrop Grumman人工衛星

画像クレジット:Northrop Grumman

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

宇宙船や先進的製造の未来をより良くより早く実現する工場を建設するHadrian

もし、新しいスタートアップHadrian(ヘイドリアン)の8人の仲間がこの道を突き進めば、次の10年で製造業界は一変する。

少なくともそれが、サンフランシスコに2020年に創設されたばかりのこのスタートアップの目標だ。彼らは、人工衛星、宇宙船、先進エネルギー技術を開発する企業が思い描く未来を、より良くより早く実現できる先進製造技術の新モデル構築を目指している。

「私たちの仕事は、世界で最も効率的な宇宙防衛産業のための工場を提供することだと考えています」とHadrianの創設者Chris Power(クリス・パワー)氏は話す。

パワー氏によれば、創設当初はロケットの部品を製造する工場を建設しようとしていたという。しかしその事業には、製品の製造に特注部品を必要とするすべての企業にも対応できる可能性が含まれていた。

「今がどれほど最悪で、20年後にはどうなるかをお話しましょう。現在、SpaceX(スペースエックス)もLockheed Martin(ロッキード・マーティン)も、宇宙防衛産業のあらゆる企業は部品と製造を全国の小さな工場に発注しています。それらはめちゃくちゃ高価で、信頼性が低く、顧客からは一切見えません」とパワー氏。「これが宇宙防衛関連の製造業者に、設計段階での大きな問題を引き起こしています。なぜなら、リードタイムが非常に長く、作り込みにかかる時間がさらに長いからです。ソフトウェアの関係上、製品の作り直しは20日に1度だけ可能だとしましょう。ロケット製造の場合、その作業工程表の60パーセントは待機時間です。そのため3カ月前に送られてきた部品のせいで、打ち上げやら何やらの工程が大幅に遅れます。つまり、マクドナルドの経営者が、ハンバーガーやポテトの納品業者からいつ商品が届くかを教えてもらえない状態と同じです」。

航空宇宙、防衛、先進的機械の企業に部品を納入する業者にとって戦略がどれほど重要であるかは、言葉では言い尽くせない。他ならぬ製造業の権威Elon Musk(イーロン・マスク)氏もこうツイートしていた。「工場が製品だ」と。米国を卓越した製造業の中心地として返り咲かせるためは、地政学的要素もまた言葉では言い尽くせないほど重要だと、Hadrianに投資しているLux Capital、Founders Fund、Construct Capitalは語っている。それが、この非常に若いアーリーステージの企業に950万ドル(約10億円)を投入した理由にもなっている。

「米国は90年代初頭に大きな戦略的過ちを犯しました。それが全国の製造業エコシステムを完全に荒廃させてしまったのです」とFounders Fundの会長Delian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏は話す。「この悲惨な状況から抜け出す唯一の方法は、航空宇宙産業と防衛産業のサプライチェーンへのもっとも基礎的なインプットを考え直し、金属部品をすばやく製造して、許容性を高めることです。今現在、米国でもっと革新的な企業であるSpaceXも、引退間近の機械工のネットワークに依存して宇宙品質の金属部品を作らせています。テック業界で、この問題を重視している者はいません」

Sam Korus「工場はクルマを作り、Teslaは工場を作る」
Elon Musk「工場が製品だ」

パワー氏は、前に務めていたブルーカラーの顧客に人材管理ソフトウェアを販売する会社Ento(エント)で、その問題を実感することになった。職人の高齢化の問題と、製造業者の独自の技術スタックのほぼあらゆる側面をアップグレードする必要性を感じたのは、そのときだった。「工業分野にテクノロジーを適切に導入する方法は、企業にソフトウェアを売ることではなく、ソフトウェアとともに工業という業種を一から作り直すことだと悟りました」。

当初、Hadrianは宇宙産業に全精力を傾けていた。そこでは特に部品製造の問題が深刻だったからだ。しかし、同社が構築を目指す製造能力は、高度な技術で部品を製造する産業全体に、広く関わるものでもあった。

「製造の需要は、SpaceXやBlue Origin(ブルー・オリジン)といった大手から、ロングテールのずっと末端のAnduril(アンデュリル)、Relativity(レラティビティー)、 Varda(バーダ)に至るまであります」と、Lux Capitalの共同創設者Josh Wolfe(ジョシュ・ウルフ)氏はいう。「そのほとんどが、家族経営の工場を利用しています。そしてそうした工場は、恐ろしいまでに非効率です。一貫性がなく、信頼性も低い。ソフトウェアによる自動化とハードウェアを用いることで、製造工程のあらゆる非効率なステップを排除できます。価値の創造は、無駄の削減だという考え方が私は好きです。見積もりから、予定組み、入札、計画、プログラミングに至る製造業の日常的な作業は、その1つ1つで数時間、数十時間、数日、数週間という時間がかかります。それを数分で済ませられるようになれば、悩みは解消です。Hadrianは、新しい、そして航空宇宙防衛産業に明確に特化した企業のための、最先端の選択肢となります」。

パワー氏は、まずは宇宙防衛産業全体の65パーセントをカバーする製造施設のネットワーク作りを思い描いている。ゆくゆくは95パーセントにまで拡大したい考えだ。すでに、最大手クラスのロケット打ち上げ企業や衛星製造企業数社から、数百単位の製造を持ちかけられているとパワー氏はいう。その一部の企業は、偶然にもConstruct、Lux、Founders Fundのポートフォリオに入っている。

これは、米国の製造業の雇用を浮揚させる新しい方法でもあると、パワー氏は考えている。「宇宙防衛産業の製造職の給与は、簡単にGoogleのソフトウェア技術者と同じぐらいの高給に引き上げることができます」と彼はいう。理想的には、20世紀の自動車産業が高待遇のユニオンジョブ(労働組合を通して与えられる仕事)をもたらしていたように、21世紀の製造職も高い給与が得られる道筋をつけたいとHadrianは願っている。

「まだ何もできていません。私たちの新しいテクノロジーと新しいシステムの訓練を受けた後に雇用されべき人たちが膨大に存在することに注目すれば、人材の問題や訓練の問題も、私たちの事業の成長の一部です」。

Axiomが計画している商用宇宙ステーションの想像図

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タグ:Hadrian製造業工場

画像クレジット:NASA / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

低コストの小型静止通信衛星スタートアップAstranisが約272億円調達

宇宙スタートアップのAstranis(アストラニス)が、同社のユニークなMicroGEO衛星の製造を拡大する原資にしようと、シリーズCで2億5000万ドル(約272億円)を調達した。MicroGEO衛星は、地球上の特定の場所に通信と接続を提供するための軌道バンドで使われる、巨大で高価なことが多い通常のものよりもずっと小型の静止通信衛星だ。

AstranisのシリーズCはBlackRockが管理するファンドがリードし、Baillie Gifford、Fidelity、Koch Strategic Platformsなど多くの新規投資家が参加した。既存投資家からはAndreessen HorowitzやVenrockが参加し、Astranisの評価額はポストマネーで14億ドル(約1524億円)となった。

今回のラウンドにより、株と借入による調達も含めAstranisの累計調達額は3億5000万ドル(約381億円)超となる。Astranisは2016年に創業され、YCの2016年冬季プログラムに参加した1社だった。他社の多くが低コストのブロードバンドを地上で提供するために低軌道(LEO)に衛星コンステレーションを築こうとしているが、共同創業者でCEOのJohn Gedmark(ジョン・ゲドマルク)氏が率いるAstranisはGEO(静止軌道)バンドにフォーカスしている。GEOバンドでは大型で古い通信衛星が現在稼働していて、固定されたポジションで地球を周回しながら地上の設定されたエリアに接続を提供している。

ゲドマルク氏は以前筆者に、同社のサービスはSpaceXなどの企業が打ち上げて運用しているLEOコンステレーションとかなり異なる、と話した。というのも、それらは本質的にはかなりターゲットを絞っていて、既存の地上インフラを利用する手軽なソリューションだからだ。特定の地域に絞って接続を確保したい顧客は、Astranisを使って従来のGEO通信衛星よりもかなり安いコストで衛星を打ち上げることができる。たとえば老朽化した既存の衛星ネットワークインフラを交換したりアップグレードしたりするために打ち上げる。

今回のラウンドをリードしたBlackRockはロケット打ち上げ会社Astraが合併した有名宇宙スタートアップSPAC(特別買収目的会社)のPIPE(上場企業の私募増資)の主要参加者だったことは注目に値する。今回のラウンドではAstranisがエグジット計画を準備しているとはいわないが、何か検討していることは確かだろう。

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タグ:Astranis人工衛星資金調達衛星コンステレーション

画像クレジット:Astranis

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブルーオリジンがNew Shepardの打ち上げと着陸を実施、有人飛行のための重要な準備飛行

Blue Origin(ブルーオリジン)が2021年2回目となるNew Shepardロケットの打ち上げを実施した。今回のミッションでは、再使用可能な宇宙船がサブオービタルの宇宙空間まで飛行し、その後テキサス州西部にあるブルーオリジンの発射施設にパラシュートで着陸する様子が確認できた。

このフライトは通常のミッションとは少し異なり、ブルーオリジンが最終的には有償で提供する商業宇宙旅行の顧客の代わりとなる宇宙飛行士によるリハーサルの要素が含まれていた。つまり、彼らは飛行準備を行い、パッドへの移動やNew Shepardに乗り込んで着席するなど、あたかも自分が飛行に参加しているかのような体験をした。

実際の商業飛行との決定的な違いは、ブルーオリジンがカウントダウンを一時停止し、模擬クルーが下船した後にカウントダウンが再開され、予定どおりの打ち上げが行われたことだ。同社のテスト用ダミーである「Mannequin Skywalker(マネキン・スカイウォーカー)」はこの準備ミッションで飛行し、打ち上げと帰還時に重要な測定を行った。

ニューシェパードは問題なく帰還・着陸し、これまでで最もスムーズな着陸を披露した。これは、このブースターの2回目の打ち上げと着陸だった。カプセルも計画どおりに着陸し、宇宙船のパラシュート降下システムによって軟着陸を達成した。

画像クレジット:Blue Origin

ブルーオリジンは次に、実際の有人ミッションの最終段階を再現する予行演習を行い、リハーサルを行った宇宙飛行士をカプセルに戻して、商業飛行中に発生する宇宙飛行士の回収と出発のプロセスを完全にリハーサルすることになる。

今回のミッションはすべて、ブルーオリジンが2021年中に有人ミッションを達成したいと考えていることを示している。これは、民間宇宙飛行士が宇宙に行くための新たな手段であり、スペースXのDragon宇宙船の飛行や、願わくば近い将来に実現するかもしれないVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)による打ち上げなどの選択肢が増えている。

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タグ:Blue OriginNew Shepardロケット有人宇宙飛行民間宇宙飛行

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

月へNASAの水探索車を届けるためにスペースXがFalcon Heavyロケットの打ち上げを2023年に予定

SpaceX(スペースX)は、2023年に大型の(そしてあまり使われていない方の)ロケット「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」を使用して、月にペイロードを送り込むことを予定している。このミッションでは、宇宙ベンチャー企業のAstrobotic(アストロボティック)が製造した月面着陸船を打ち上げることになっており、それにはNASAのVIPER(Volatiles Investigating Polar Exploration Rover、揮発性物質調査極地探索車。この機関は、楽しい頭字語を付けるために言葉に無理させることを好む)が搭載される。

打ち上げは現在のところ2023年後半に予定されており、計画どおりに進めばFalcon Heavyにとって初の月ミッションとなる。しかし、それがSpaceXにとって初の月旅行になるというわけではない。同社はMasten Space Systems(マステン・スペース・システムズ)とIntuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)の委託を受けて、早ければ2022年に月面着陸機を打ち上げるミッションを予定しているからだ。これらのミッションでは、少なくとも現在の計画仕様のとおりであれば、どちらも「Falcon 9(ファルコン・ナイン)」ロケットが使用される。また、上記のスケジュールは今のところ、すべて書類上のものであり、宇宙ビジネスでは遅延やスケジュールの変更も珍しくはない。

しかし、このミッションは関係者にとって重要なものであるため、優先的に実行される可能性が高い。NASAにとっては、人類を再び月に送り込み、最終的には軌道上と地表の両方でより永続的な科学的プレゼンスの確立を目指す「Artemis(アルテミス)」プログラムの長期的な目標において、重要なミッションとなる。月面にステーションを設置するためには、その場にある資源を利用しなければならないが、中でも水は非常に重要な資源だ(VIPERは月の南極で氷結水を探索する)。

画像クレジット:Astrobotic

Astroboticは2020年、NASAから委託を受けてVIPERを月に届ける契約を獲得した。このミッションには、月の南極にペイロードを着陸させることが含まれているが、月の南極は有人宇宙飛行士が参加するNASAのArtemisミッションで目標着陸地点となる予定だ。Astroboticがこのミッションに投入する着陸船は「Peregrine(ペレグリン)」型よりも大型の「Griffin(グリフィン)」型で、VIPERを搭載するためのスペースが確保されている。そのため、SpaceXのロケットの中でも大型のFalcon Heavyを使用する必要があるというわけだ。

2024年までに宇宙飛行士を再び月に送り込むというNASAの野心的な目標は、新政権がスケジュールや予算を見直す中で流動的になっているものの、その達成のためには官民パートナーシップを活用して道を切り開くことが依然として約束されているようだ。このGriffinを使う最初のミッションは、先に予定されているPeregrineの着陸とともに、NASAの商業月面輸送サービス(CLPS)プログラムの一環である。このCLPSでは、NASAを1つの顧客として、月面着陸機を製造・提供する民間企業を求めている。

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タグ:NASASpaceXFalcon Heavyロケットアルテミス計画Astrobotic Technology

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ブルーオリジンが4月14日の打ち上げで「宇宙飛行士リハーサル」を実施、有人宇宙飛行にまた一歩前進

Blue Originは、有人宇宙飛行の実現に向けて一歩前進している。米国時間4月14日に予定している打ち上げでは「宇宙飛行士リハーサル」を行う計画だ。Blue Originの再利用可能な準軌道ロケット「New Shepard」の打ち上げは、同社宇宙船に有料の旅客を乗せて飛ばせることを検証するための重要なステップとなる。

そのリハーサルは、何をするのか?それは、実際の大気圏外飛行を除く宇宙旅行のすべてで、まず乗船、そして飛行前の各種操作、着地したらカプセルへ戻る、そして、ポストミッションの操作となるカプセルから出るための段階的な操作だ。これらはBlue Originの打ち上げと並行して行われる操作で、本番では民間人の宇宙飛行士数名が乗る。ただし今回のリハーサルでは、実際のエンジン点火と打ち上げの前にそれら顧客の役を演じる職員がカプセルを出て、カプセル着地地点へ移送される。着陸地点でカプセルに戻されてからはずっと乗っていたかのように振る舞う。

しかし打ち上げ時にカプセルから出ずに、実際に打ち上げられる乗客が1名いる。それは「Mannequin Skywalker」と呼ばれるマネキン人形で、打ち上げが人間にとってどうであるかをテストし計測するためのダミーだ。このマネキンは以前にも飛んだことがあるが、地上部分のリハーサル操作をするクルーと一緒に、有人宇宙飛行のような役を演じるのはこれが初めてだ。

Blue Originは最初のNew Shepardロケットを2021年の1月にローンチし、そのミッションには、音響特性と温度管理システムの改良や、新しいディスプレイと実際には乗組員が使用する通信機器のテストといったカプセルの乗組員用機能改善テストも行われた。最近公表されたタイムラインによると、ロケットの有人飛行開始は2021年のいつかで、となっている。

今週の打ち上げは、予定時刻は米国中部標準時(夏時間)4月14日午前8時(日本標準時4月14日午後10時)で、場所はテキサス州西部にある同社の発射場だ。打ち上げ時刻の1時間前からライブ中継を開始する予定で、宇宙飛行士のリハーサル風景などの映像も予定している。Blue Originの観光打ち上げがどのようなものになるかを知ることができるだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue Originロケット民間宇宙飛行New Shepard

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

再利用化を進めるRocket Labは次のElectron打ち上げでも第1段回収を実施

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は次の打ち上げ準備を行っている。今のところ、ニュージーランドの施設から2021年5月に打ち上げられる予定だ。このフライトのペイロードは、BlackSky(ブラックスカイ)の地上観測コンステレーションに追加される2基の衛星だが、Rocket Labにはもう1つ、Electron(エレクトロン)ロケットの再利用化に向けた重要な目標もある。つまり、宇宙から帰還したブースター(第1段)の回収だ。

Rocket Labにとって、第1段の回収はこれが初めてではない。2020年11月、Return to Sender(送り主に戻す)とそのものズバリの名が付けられたミッションの際、同社は第1段を海から回収している。Run Out of Toes(つま先が足りなくなる)と名づけられた今回のフライトの目標は前回とほぼ同じながら、Electronには部分的な改良と、同社が多くのデータを収集しやすくする改造が施されている。さらに、回収後の完全な再利用に向けて進歩もしている。

「私たちは、回収した第1段の状態に大変に満足しています。どの耐熱システムにも、基本的に変更を加える必要はありませんでした」とRocket LabのCEOにして創設者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏はインタビューに応えて話した。「私たちの第1段の再突入方法は、エンジンを下にして、大きな衝撃波を前方に逃がすというやり方です。次のフライトは次なる改良版であり、負荷の大きさが判明したことから、熱シールドを強化して負荷に耐えられるようにしています」。

最初のフライトでは、大気圏再突入の際にElectronの第1段にかかる実際の負荷に関する貴重なデータを大量に収集できた。そうした情報は、地上の技術者たちが専門知識から推測はできても、現実にやってみなければ本当に知ることはできないものだ。11月のフライトでロケットに装着したセンサーからのデータによって、Electronは、熱シールドの「性能と強度の大幅な向上」のためののデザイン変更が可能になったとベック氏はいう。

2回目のフライトでは、この改良策の効果を見極め、さらに多くのデータを回収して、3回目にして最後の回収テストに活すことにしている。これは、Electronの第1段が大気圏に突入する際の速度をさらに落とせるよう、再突入手順の調整に重点が置かれる。Rocket Labが回収計画の最終目標としている、パラシュートで降下速度を下げてヘリコプターで空中捕捉する方式の実現性を高めるためのものだ。

「その後に、空中での速度をさらに下げて、第1段の熱を取ることを目指して、もう一回、設計の見直しを行います。それにより、回収ヘリコプターのような要素を導入してまで、第1段をわざわざ取りに行ってもう一度飛ばすことに本当に価値があると感じられるレベルに、私たちは到達できます」とベック氏はいう。

その3回目にして最後の着水テストは、物事が順調に進めば、2021年後半に実施される。この3回の開発テストで回収した第1段を実際に再び打ち上げる予定はないが、最初に回収した第1段の部品の一部が、今回のテストで飛ばされる第1段に再利用されているとベック氏は教えてくれた。3回目のテストでは、さらに多くの部品を回収して再利用するという。

ベック氏によれば、再突入の際に何が起きたか、どの部分がいちばん損傷を受けているかを技術者たちが学ぶには、Rocket Labの工場に持ち帰った第1段を細かく切り刻むのが一番だと話す。

「第1段を工場に持ち帰ること以上に、本当にそれを理解する方法はありません」と彼はいう。「必要な道具はすべて揃っています。しかし、第1段をここへ運び込んで真っ先にするのは、切り刻むことでした。熱の影響を受けた部分、空気の流れから隠れていた部分をすべて切り取り、材料の特性を調べる張力試験を行いました」。

これらすべての作業が、回収したElectronの第1段を再び飛ばすという最終目標への推進力になっている。これが実現すれば大変な偉業となる。なぜなら、Rocket Labは打ち上げ回数を増やせるからだが、それだけではない。そもそも再利用を考慮せずに設計されたロケットだったという点が大きい。私は、Electronの回収した第1段の最初の再飛行は商用ミッションになるのか、または顧客のペイロードを積まないテスト飛行になるのかをベック氏に尋ねてみた。

「商用ミッションになることは考えられます。そのわけは、単に私たちは、心底自信を持てないものを打ち上げ台に載せたりはしないからです」と彼は答えた。「最初の再利用ロケットは、かなりの量の修繕が加えられると思います。他に再飛行を実際に行っている唯一の企業(SpaceX)を見てください。そこには長い長い年月におよぶ研究と知識があります。ロケットを回収して、大丈夫そうだから発射台に載せようなんて簡単にはいかないのです。自信と確実性を積み上げるには、何度も何度もやり直すプロセスを経る必要があります」。

Electronの再利用化は、このロケットにとって、それ自体に価値のあることだが、この機能を開発する過程は、Rocket Labの大積載量を誇る新型ロケットNeutron(ニュートロン)の建造に、かけがえのないものを与えているとベック氏は話す。Neutronは、推進力を使って離陸と着陸が行えるよう設計されている。また、最初から高い利便性がデザインに織り込まれている。

「Electronは、世界で最も建造しやすいロケットとして設計されました。Neutronは、もっとも再利用しやすいロケットとして設計されています」とベック氏。「これらはパラダイムが大きく異なるものですが、尋常でないことに、私たちはその両方の体験を有しています。Neutronでは、革新的技術は再利用性に集中しています。間もなく、おもしろい情報を少しだけお伝えしますが、このロケットの構造をほんの少しだけ見れば、私たちが作っているロケットが、どの程度まで再利用可能なのかが明白になるでしょう」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabロケットElectron

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

Virgin Galacticが第3世代宇宙船「VSSイマジン」を初公開、CEOが語る消費者向け宇宙ブランドの構築

商業用有人宇宙飛行企業であるVirgin Galacticは、同社の主要な宇宙船デザインの3つ目となる、初の「Spaceship III」(スペースシップIII)を発表した。この新シリーズの第1弾は「VSS(Virgin SpaceShip) Imagine」(VSSイマジン)と名づけられ、2021年夏の初の滑空飛行を目指して地上試験が開始される。VSSイマジンの外観は、鏡面仕上げのラップアラウンド型で、地上から宇宙へと移動する際に変化する環境を反映するように設計されているが、それ以上に重要なのは、Virgin Galacticが宇宙船の大規模な製造のために必要なエンジニアリング目標の達成に近づいていることだ。

Virgin GalacticのCEOであるMichael Colglazier(マイケル・コルグラジア)氏に、VSSイマジンについて、そしてそれが当社にとって何を意味するのかを聞いた。

「これらはより速いペースで製造できます。次の段階の宇宙船に求める製造スピードと比べるとまだ遅いですが、ここで私たちが期待しているのは、(VSS) Unity(VSSユニティ)から学んだことをすべて取り入れ、これらの宇宙船をより速いペースで回転させるために必要なことを組み込んだことです。というのも、飛行可能なフライト数は、宇宙船の数と、それをどれだけ早く回転させることができるかに左右されるからです」と説明した。

Virgin Galacticが2016年9月に初飛行を行い、現在もニューメキシコ州で試験や商業打ち上げ準備プログラムに使用している宇宙船「ユニティ」とは異なり、イマジンは「モジュール式設計」を採用しているため、メンテナンスが非常に簡単で、後続のミッションを飛行できる確率も増加している。コルグラジア氏が述べたように、宇宙船の設計を、それぞれの宇宙港で年間約400回の飛行という会社の目標をサポートできるところまで持っていくには、まだ取り組むべき課題がある。しかし今回のアップグレードは重大なもので、当社はすでにスペースシップIIIクラスの2機目である「VSS Inspire」(VSSインスパイア)の製造作業を開始している。

画像クレジット:Virgin Galactic

イマジンとインスパイアは確かに技術的な成果だが、2020年7月にDisney Parks InternationalからVirgin Galacticに移ったコルグラジア氏は、同社の消費者ブランドの観点からも、今回の宇宙船のデビューの重要性を強調している。

「画像に現れているもの、衣服の選択、配信している映像は、消費者向けブランドの立ち上げという明確なステップであり、Richard Branson(リチャード・ブランソン)のフライトに向けて夏の間に構築していくものです。私たちは意図的に『宇宙の民主化』という高尚な言葉を使っていますが、宇宙すべての人のためのものです。すべての人がそこに到達するまでには、しばらく時間がかかるかもしれませんが、実現は近づいています。このことは消費者の立場に立った、『なぜこれをするのか』を問うことにつながります」と彼は語った。

実際、この消費者向けビジネスは、入社してからの8ヵ月間、コルグラジア氏の仕事の多くを占めている。彼が入社したVirgin Galacticには「世界的なチーム」があり、航空宇宙分野は完成されていたが、彼が特に貢献したのは、商業面でのビジネスをそれに見合うように構築することだったという。

「現在、この種のビジネスの拡大に慣れた人材を投入しています。Swami Iyer(スワミ・アイヤー)は先週の月曜日に勤務を開始しました。また、Joe Rohde(ジョー・ロード)のようにエクスペリエンスの分野で活躍している人材もいますが、こうした人材は代わりが利きません。このような人材は、このエクスペリエンス関連の中身を構築していくために必要なものです」と彼は語った。

アイヤー氏は、GKN Advanced Defence SystemsやHoneywell Aerospaceなど、商業宇宙活動分野および防衛産業での長年の経験を活かし、Aerospace Systemsの社長として入社した。一方、ロード氏は、長年ディズニーのイマジニアとして活躍し、Virgin Galactic初の「エクスペリエンス・アーキテクト」として入社し、宇宙飛行士の顧客とその友人や家族、さらには広く一般の人々にとってのVirgin Galacticの体験を意味付けすることに注力している。

コルグラジエ氏は、世界のどこで宇宙船に乗るかによって、体験のビジョンも変わってくるという。ヨーロッパ、アジア、インド、オーストラリアのどの宇宙港から旅立つのかによって、たとえ宇宙船自体がニューメキシコ州での使用と同じように使用されていても「劇的に異なるもの」になるはずだと語る。これはアナハイム、パリ、香港、上海、東京のディズニー・パークを率いた経験を持つ経営者の論理的なアプローチであることは間違いないだろう。

写真提供:Virgin Galactic

最終的には、Virgin Galacticが消費者ブランドとして追求する基本理念は、たとえ実際に「宇宙に行く」という部分が短期的には多くの人にとって手の届かないものであったとしても、インクルージョンに焦点を当てたものになるだろうとコルグラジア氏は語っている。

さらに彼は「これはすべての人のためのものですし、すべての人のためのものでなければなりません。この野望が実現するには、何年かかかるかもしれません。しかし、その間に、私たちのブランドや会社、私たちのさまざまな層の活動にすべての人々がアクセスできるような方法を見つけなければなりません。私たちはそうした目的意識を持って行動するつもりです。主に、頂点の体験について―具体的には新しい船を宇宙に運ぶということについて話すことになるでしょう。しかし、そうした話を細かく分解できるかどうかが非常に重要であり、私たちがすべての人に手を差し伸べるブランドであることができるかどうかも、非常に重要です」と語った。

それは、今日デビューするこの宇宙船へのアプローチから始まっており、同社が公開を記念して配信した動画の口調(上の埋め込み動画を参照)にも明らかだとコルグラジア氏はいう。また、Virgin Galacticには600人の乗客が予約しており、フライトを待っている。2021年末に予定されているブランソン氏のフライトの後には、当然ながらそれが重要な焦点となる。

最後に、コルグラジア氏にいつ宇宙に行くつもりなのか聞いてみた。彼は「お金を払ってくれるお客さんの前に割り込むことはしたくない」と言った。

「列を割り込むと600人くらいの人に怒られそうだから、消費者に集中し続けるつもりです」と彼はいう。「でも、600人の人々の後ろにはまだ誰も並んでいないから、誰かが並ぶ前に私が並んでしまいましょうか」。

写真提供:Virgin Galactic

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カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Galactic宇宙船

画像クレジット:Virgin Galactic

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

スペースXが新たに60基のStarlink衛星を打ち上げ、1カ月あまりで計300基が地球低軌道へ

SpaceX(スペースX)は米国時間4月7日、地球低軌道に展開するブロードバンドコンステレーション「Starlink(スターリンク)」衛星を新たに打ち上げた。これで3月4日以降に打ち上げられたStarlink衛星は300基となり、5回のフライトで60基ずつという速いペースを維持している。

前回の打ち上げは米国時間3月24日で、その前は3月14日、3月11日、3月4日だった。SpaceXは、2021年中に合計1500基のStarlink衛星を打ち上げることを目標としているため、このペースは意図的に速いものとなっている。この特に忙しかった月の前にも、SpaceXは他に4つのStarlinkミッションを打ち上げており、その中には他の顧客の衛星も運んだSpaceX初のライドシェア専用ミッションも含まれる。

関連記事:スペースXがStarlink衛星をさらに60機打ち上げ、3月だけで240機も投入

SpaceXは、これまでに全部で1443基のStarlink衛星を打ち上げている。しかし、これは現在軌道上にある衛星の総数を反映したものではない。初期に打ち上げられた衛星のいくつかは、計画通りに離脱したためだ。現在、FCC(連邦通信委員会)に申請されている周波数スペクトラムに基づくと、最終的に計画されているコンステレーションの規模は、最大で4万2000基の衛星を含むと予想される。

SpaceXは先日、NASAと新たな協定を結び、両組織がそれぞれの宇宙船の接近や衝突を回避する方法を定義した。NASAはこの種の事故を回避するための方策を制定し、すべてのロケット打ち上げ会社に遵守を求めているが、SpaceXによるStarlinkミッションの規模と頻度から、より広範な追加協定が必要になった。

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今回の打ち上げでは、使用したFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットの、これで7回目となるブースターの着陸も行われた。大西洋に浮かぶSpaceXの着地パッドに予定通り着陸したブースターは、今後の再利用のために改修が行われる予定だ。また、SpaceXは、離陸時に衛星を保護する分割式の貨物カバーであるフェアリングを、海上で回収することも検討している。同社はこれまでパラシュートで減速して落下するこのカバーを空中で回収するために使用していた2隻の船を退役させたばかりだが、現在は着水後に海から回収して再利用することを目指している。

画像クレジット:SpaceX

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXStarlink衛星コンステレーションFalcon 9

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAが自律型軌道離脱システムや金星でも使えるバッテリーの研究に補助金

NASA(米航空宇宙局)のSBIRプログラム(中小企業技術革新研究プログラム)は定期的に将来有望な中小企業や研究プログラムに補助金を出している。そしてその補助金が交付されたリストを調べるのは常に興味深い。今回のリストから、特に説得力のあるもの、あるいは宇宙業界のミッションと産業にとって新たな方向を示している1ダースほどの企業と提案を紹介しよう。

残念なことに、現在提供できるのは下記のような短い説明だけだ。補助金対象となった企業や提案は往々にしていくつかの方程式やナプキンの裏に描いた図の他に提示するものがないほど初期段階にある。しかしNASAは目にすると将来有望な取り組みがわかる(SBIR補助金の申し込み方法についてはこちらに案内がある)。

自律型軌道離脱システム

Martian Sky TechnologiesはDecluttering of Earth Orbit to Repurpose for Bespoke Innovative Technologies(DEORBIT)で補助金を獲得している。これは低軌道のための自律的クラッター除去システム構築する取り組みだ。ある決まった量をモニターしながら侵入してきたものを除去し、建設や他のクラフトの占有のためにエリアを開けておくためのものだ。

画像クレジット:Getty Images

超音波の積層造形

3Dプリント、溶接、そして「軌道上サービス、組み立て、製造(OSAM)の新興分野にとって重要なものについて、さまざまなかたちの提案が数多くある。筆者が興味深いと思ったものの1つは、超音波を使っていた。筆者にはそれが奇妙に思えた。というのも明らかに宇宙では超音波が作用するための大気がないからだ(彼らもそれを考えたと想像する)。しかしこの種の反直感的なアプローチは真に新たなアプローチにつながり得る。

ロボットが互いを見守る

OSAMにはおそらく複数のロボットプラットフォームの調整が含まれ、それは地上においても十分難しいものだ。TRAClabsは有用な他のロボットの視点を提供できるところでなくても自律的にロボットを動かすことで「知覚フィードバックを高め、オペレーターの認知負荷を減らす」ための方法に取り組んでいる。シンプルなアイデアで、人間が行う傾向にある方法に適する。もしあなたが実際のタスクを行う人でなければ、あなたは邪魔にならないよう何が起きているかを目にするのに最適の場所に自動的に移動する。

3Dプリントされたホール効果スラスター

ホール効果スラスターは、特定のタイプの宇宙での操作でかなり有用となり得る電気推進の高効率なフォームだ。しかしそれらは特にパワフルではなく、既存の製造テクニックで大きなものを作るのは難しいようだ。Elementum 3Dは新たな積層造形テクニックと、好きなだけ大きなものを作ることを可能にするコバルト鉄の原料を開発することでそれを達成しようとしている。

金星でも使えるバッテリー

金星は魅力的なところだ。しかしその表面は地球で作られた機械にとっては極めて敵対的だ。鍛えられたPerseveranceのような火星ローバーですら数分でダメになり、華氏800度(摂氏426度)では数秒しかもたない。ダメになる数多くの理由のうち1つは機械で使われるバッテリーがオーバーヒートを起こし、おそらく爆発するということだ。TalosTechとデラウェア大学は大気中二酸化炭素を反応材として使うことで高温でも作動する珍しいタイプのバッテリーを手がけている。

ニューロモーフィック低SWaP無線

あなたが宇宙に行くときは重量と体積が重要で、宇宙に行ってからは電力が重要となる。だからこそ、既存のシステムをコンパクトで軽量、電力(低SWaP)代替のものに切り替える動きが常にある。Intellisenseは着信信号を並べ替えて管理するという部分を簡素化・縮小するためにニューロモーフィック(たとえば空想科学的な方法ではなく頭脳のような)コンピューティングを使って無線に取り組んでいる。1グラムでも軽くすることは宇宙船の設計者がどこでも取り組めることであり、パフォーマンスの向上を図れるところでもある。

LiDARで宇宙を安全なものに

AstroboticはNASAの今後数年の惑星間ミッションにおいて頻繁に目にする社名となりつつある。同社の研究部門は、宇宙船とローバーのような車両をLiDARを使ってより賢く安全なものにすべく取り組んでいる。同社の提案の1つが、評価と修理の目的でスパースシーン(例えば広大な宇宙に対して1つの衛星を他の衛星からスキャンするなど)の1つの小さな物体の画像にピンポイントでフォーカスするLiDARシステムだ。もう1つの提案には、惑星の表面上の障害物を特定するのにLiDARと従来の画像手法の両方に適用する深層学習テクニックが含まれる。これに従事しているチームは現在、2023年の月面着陸を目指しているVIPERウォーターハンティングローバーにも取り組んでいる。

関連記事:NASAが月面の水源探査車VIPERの輸送に民間企業のAstroboticを指名

宇宙ファームのモニタリング

Bloomfieldは農業の自動モニタリングを行っているが、軌道上あるいは火星の表面での植物栽培は地上で行うものとやや異なる。同社は、微小重力といった特殊な状況で植物がどのように成長するのかを観察してきた小さな実験ファームのようなControlled Environment Agriculture(環境抑制農業)の拡大を願っている。植物の状態を絶えずモニターするのにマルチスペクトル画像と深層学習分析を使う計画で、宇宙飛行士は毎日ノートに「葉25が大きくなった」などと記録する必要はない。

レゴリスブロック

アルテミス計画(NASAの有人月探査)は月に「滞在する」ために行くというものだが、どうやって滞在するかはまだはっきりとわかっていない。研究者らは必要なものすべてを月に持ち込むことなしにロケットに燃料を補給して打ち上げる方法、そして月面ロケット打ち上げパッドを文字通りブロック1つ1つで建設するExploration Architectureを研究している。この研究は月の粉塵あるいはレゴリス(堆積物)を溶かし、必要なところに置けるよう焼いてブロックにする統合システムを提案している。これを実行するか、地球のブロックを持ち込むかになるが、後者の方はいい選択肢ではない。

その他いくつかの企業や研究機関もレゴリス関連の建設とハンドリングを提案した。これはいくつかあるテーマの1つで、テーマの一部は追求するにはあまりにも小さいものだ。

他にはエウロパ(木製の第2衛星)のような氷の世界を探検するためのテクノロジーというテーマもあった。金星のほぼ逆の氷の惑星は多くの点で「通常の」ローバーにとって致命的で、パワー、センシング、横断のためのアプローチで必要とされる条件が異なる。

NASAは新たなトレンドにオープンで、衛星や宇宙船においてもそうだ。こうした新たな技術の一群の管理は多くの作業を伴い、もしそうした新技術が1つの分散型マシンとして機能するとしたら(これは一般的な考えだ)、しっかりとしたコンピューティングアーキテクチャの支えが必要となる。多くの企業がこれを達成しようと取り組んでいる。

NASAの最新SBIR補助金リストの残り、そしてテクノロジートランスファープログラムのセレクションもこちらの専用サイトで閲覧できる。もし政府の補助金獲得に興味があるのなら、こちらの記事も読んで欲しい。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA補助金金星火星アルテミス計画バッテリーLiDAR

画像クレジット:Space Perspective

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSで採択

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSに採択

Pale Blueは4月1日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施した2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」(最大助成額:7000万円。NEDO STS事業)第3回公募において、助成対象として採択されたと発表した。2020年4月の設立後1年で累計調達額は約2億円となった。

これにより、宇宙産業を革新するメガコンステレーションの実現に必要な安全かつ安価な超小型衛星向け水統合エンジンの開発および実用化に挑む。

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSに採択

現在、技術革新によって超小型衛星の市場が拡大している一方で、現状の小型衛星のほとんどは推進機を搭載していないため、能動的に軌道や姿勢を維持して運用寿命を長引かせたり、軌道を離脱させたりすることができず、とりわけ、後者に起因する宇宙ゴミ(デブリ)増大は深刻な問題になっているという。

こうした課題は推進機の搭載により解決可能なものの、大型衛星搭載の推進機は体積・重量・コストの観点から小型衛星への適用が難しく、また高圧ガス・有毒物を推進剤として使うため、環境への配慮や持続可能性の点でも問題があるという。

Pale Blueはこの解決策として、水を推進剤とした小型推進機を開発。従来の高圧・有毒な推進剤から脱却し、低圧貯蔵可能、安全無毒で取り扱い性と入手性の良い水を推進剤として利用することで、前述の課題を解決し、圧倒的な小型化と低コスト化を実現するとしている。

小型衛星実用化のボトルネックとなっている小型推進機にイノベーションを起こすことで、小型衛星群によるビジネスや深宇宙探査を実現し、科学技術による人類の幸福の最大化や文明レベルの向上を目指す。

東京大学は長年にわたって宇宙推進機の研究を行ってきており、推進機内における複雑なプラズマ物理の解明や電気推進の性能評価に関して、世界をリードする研究機関のひとつという。Pale Blueメンバーは、東京大学在籍時から推進機の基礎研究に加えて、高周波電源や高電圧電源の小型化・高効率化に取り組み、成果を上げ、さらに実際の小型衛星に搭載する推進システムの開発を多数経験してきたという。同社は水統合推進システムの実現において、東京大学のエンジン基礎研究の成果を社会実装・実用化する役割を担い、その収益をアカデミアに還元することを目指すとしている。

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSに採択

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カテゴリー:宇宙
タグ:資金調達(用語)NEDO(組織)東京大学(用語)Pale Blue(企業)日本(国・地域)

SpaceXが「最も宇宙にいると感じられる」展望ドームをDragon宇宙船の先端に設置すると発表

SpaceX(スペースエックス)は、現在9月15日に計画されている歴史的な民間人のみの宇宙飛行に向けて、宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」に変更を加える予定だ。この宇宙船は、国際宇宙ステーションのドッキング機構が透明なドームに置き換えられ、乗員は軌道上から宇宙と地球の壮大なパノラマを眺めることができるようになる。

このガラスドームは、Dragonカプセルの「鼻」の部分、つまり打ち上げ準備中のFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットの先端に、このカプセルを直立状態で搭載した時の最上部にあたる部分に設置される。一度に1人の乗員が利用できるスペースが設けられ、宇宙船が安全に地球の大気圏外に出ると保護カバーが開く。帰還時に大気圏に再突入する際には再びカバーが閉じて、展望デッキを保護する。

SpaceXの Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは、この新装備のレンダリング画像をTwitter(ツイッター)に投稿し「最も『宇宙にいる』ことを感じられるだろう」とツイートした。億万長者のJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏が率いる、この「Inspiration4(インスピレーションフォー)」と名づけられた宇宙観光飛行の記者説明会では、国際宇宙ステーションのキューポラから脱出したような景色が楽しめると説明された。

国際宇宙ステーションのキューポラは、欧州宇宙機関(ESA)が製作し、2010年に設置された観測モジュールだ。SpaceXの予想画像によると、ISSのキューポラが支持構造によって区切られた複数のパネルで構成されているのに対し、Dragonのドームは切れ目のない透明な半球状になっているので、Dragonの方が見晴らしが良いということになりそうだ。

国際宇宙ステーションのキューポラ(画像クレジット:NASA)

この改造は、SpaceXが計画している商業宇宙旅行ミッションに適した、より恒久的なDragonの後継機につながる可能性がある。商業旅行ミッションでは、ほとんどの場合、ISSに実際にドッキングすることなく、軌道上を移動することを目的としていると思われるからだ。軌道上の科学ステーションへのクルー輸送が目的でない場合、SpaceXはさらにキャビンに改良を施す可能性もある。

SpaceXは米国時間3月30日、Inspiration4ミッションについて、打ち上げ予定日が9月15日であること、ミッションの飛行期間が3日間であることなど、新たな詳細を明らかにした。また、4名のクルーのうち、残りの2名の搭乗者も同日朝に公表された。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXイーロン・マスク民間宇宙飛行宇宙船Crew Dragon

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)