Ecosiaが検索による広告収益をグリーンエネルギーに投資

非営利的な検索エンジンであるEcosia(エコシア)は、ユーザーの検索結果に対して得られる広告収入の一部を、再生可能エネルギー分野のスタートアップ企業に提供することを始めた。

これは、Ecosiaが気候変動に注力するスタートアップ企業を支援するために、2021年立ち上げた3億5千万ユーロ(約456億円)の「WorldFund(ワールドファンド)」に追加されるものだ。

Ecosiaは、検索による広告収益で植林のための資金を寄付する活動も続けている(この活動は、Ecosiaの活動として最もよく知られている)。しかし、ベルリンを拠点とするこの検索エンジンは、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされたエネルギー危機を受け、グリーンエネルギーへの投資に「継続的に取り組む」ことにしたと語っている。

その最初の投資対象はドイツに焦点を当てている。特にロシアからのガス購入に依存しているドイツは、その経済がウクライナ危機の影響を大きく受けていることを意味する。

この戦争はすでに、世界に化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速させる新たな原動力を生み出している。気候危機に経済危機が重なったことで、再生可能エネルギーへの需要が急増する可能性がある。

しかし、化石燃料の利権者たちは、グリーンエネルギーへの急速な移行を阻止するため、すぐに反論を展開し、西側諸国が石油やガスの利用を進め、地球上の生命をより早く焼き尽くしてしまうように、ロビー活動を行っている。つまり、投資家が再生可能エネルギーに小切手を切ることに急ぐ理由には事欠かないというわけだ。

Ecosiaは、スタートアップ企業や自然エネルギーの取り組みに資金を提供するため、まずは2700万ユーロ(約35億円)を用意したという。その初期の投資の対象となるのは、ベルリンのスタートアップ企業であるZolar(ゾーラー)の供給ネットワークだ。Zolarは太陽光発電システムの設置を希望する顧客と、地域の計画・設置事業者を結びつけるプラットフォームで、ドイツ中の家庭へグリーンエネルギーを普及させることに貢献している。

Ecosiaは、Zolarの地域ソーラー販売ネットワークを通じて、小型ソーラーシステムにすでに2000万ユーロ(約26億円)を投資したと述べている。同時に、ドイツ全域でその他の再生可能エネルギープロジェクトにも投資を行っているという。

「現時点では、我々はドイツ全域の再生可能エネルギープロジェクトを支援しています。再生可能エネルギーへのさらなる投資は、Ecosiaが地域自然エネルギープロジェクトや起業家からの提案を評価した上で、他の国でも行われる可能性があります」と、広報担当者は筆者に語った。

Ecosiaのグリーンエネルギー投資の目標は、より多くの企業が再生可能エネルギーに投資することを促し、化石燃料を地中に埋めたままにしておくことがかつてないほど急務となっている今、再生可能エネルギーへの移行を加速させることであると、広報担当者は付け加えた。

Ecosiaの広報担当者は「再生可能エネルギーへの投資を、気候変動に留まらない規模に拡大したいと考え、助言を求めている企業や、欧州の化石燃料への依存度を下げるという意味で変化をもたらすグリーンエネルギーのアイデアを持つ起業家やコミュニティのプロジェクトリーダーは、当社のエネルギーチームに連絡してください」と述べ、最高執行責任者のWolfgang Oels(ウルフガング・オールズ)氏がこの取り組みを指揮していることを強調した。

Ecosiaは、検索による広告収入の投資先をさらに多様化し、将来的には再生可能農業も視野に入れることを示唆している。ただし、現時点では、グリーンエネルギープロジェクトに重点を置いていることは変わらない。

植林と再生可能エネルギーへの投資をどのように分配するかという質問に対して、Ecosiaは、エネルギー資金は応募者の能力次第であるため、正式な分配は行わない、つまり収益の分配は毎月ケースバイケースで決定されると答えた。

広報担当者によれば、Ecosiaは月次の財務報告書で「いつ、どのように」投資を行うか、利益の分配を公表するという(これは従来からの植林への寄付も同じだ)。

幅広い気候変動技術に注力し、資金調達を希望するスタートアップ企業は、Ecosiaの創業者であるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏がベンチャー・パートナーを務めるWorldFundに売り込むことをお勧めしたい。これまでWorldFundは、植物由来ステーキをてがけるスタートアップ企業のJuicy Marbles(ジューシー・マーブルズ)や、植林のためのフィンテック企業であるTreeCard(ツリーカード)、カカオを使わないチョコレート代替品を作るQoa(コア)などに出資してきた。

画像クレジット:Ecosia

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SeMI TechnologiesのAI検索エンジンはデータを照会する新しい方法を提供する

ベルリンで開催されたGraphQLミーティングでデモをを行うSeMi Technologies CEOのボブ・ファン・ラウト氏(画像クレジット:SeMi Technologies)

企業は大量の非構造化データを保有しているが、そのデータから多くのことを得ることはできていない。

例えば、保有しているデータに対して「ABC社が当社と初めて契約したのはいつ?」とか「青い空が映っているビデオを探して」といった質問を、実際にできるようになることを想像してみて欲しい。

それこそが、SeMI Technologies(セミ・テクノロジーズ)が開発しているベクター検索エンジンWeaviate(ウィビエイト)だ。SeMIの共同創業者でCEOのBob van Luijt(ボブ・ファン・ラウト)氏によれば、それはエンベッディングとも呼ばれる、ベクトルを出力する機械学習モデルを用いたユニークなタイプのAIファーストデータベースであり、それゆえにベクトル検索エンジンと名付けられたのだという。

彼によれば、ベクトル検索エンジンは新しいものではなく、ベクトル検索エンジンの上に構築されたソリューションの例としてGoogle Search(グーグルサーチ)があることを説明した。しかし、SeMIはこの技術のコモディティ化を目標としており、誰でも使えるようにオープンソースのビジネスモデルを採用している。

ファン・ラウト氏は2021年、私の同僚であるAlex Wilhelm(アレックス・ビルヘルム)記者に、2021年のTechcrunchの記事に対して質問応答を行えるセマンティック検索エンジンを示しながら、その技術の詳細を紹介している。

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「誰もがこの技術を使うことができますし、それを必要とする企業のためのツールやサービスも用意しています」とファン・ラウト氏は付け加えた。「私たちは実際のモデルを作成したり配布したりはしません。それはHuggingface(ハギングフェイス)やOpenAI(オープンAI)のような企業が行っていることですし、企業自身がモデルを作成していることもあります。しかし、モデルを持っていることと、検索やレコメンデーションシステムを実際に稼働させるためにそれらを使うことは別のことです。Weaviateが解決するのはまさにその部分なのです」。

2019年にCTOのEtienne Dilocker(エティエンヌ・ディロッカー)氏ならびにCOOのMicha Verhagen(マイカ・バーハゲン)氏とともに会社を創業して以来、ファン・ラウト氏は、SeMIの技術がKeenious(キーニアス)やZencastr(ゼンキャスター)のようなスタートアップを含む100以上のユースケースに影響を与え、ベクトル検索エンジンが与える新しい可能性に基づいて新しいビジネスを創造し、Weaviateによって提供された結果がたとえば医療分野で人々を直接助ける場面で利用されているのを眺めてきた。

ファン・ラウト氏が個人的に気に入っているのは、より「難解」なものだ。例えばヒトゲノムをベクトル化して検索したり、全世界をベクトルでマッピングしたり、Weaviateを使って簡単に検索できるいわゆるグラフエンベディングと呼ばれるものだ。Meta Researches(メタ・リサーチ)のグラフエンベディング上にSeMIが作成したデモがその例だ。

SeMIは、2020年8月にZetta Venture PartnersとING Venturesから120万ドル(約1億4000万円)のシード資金を調達し、それ以降VCの目に留まるようになった。以来、同社のソフトウェアは75万回近くダウンロードされており、その数は毎月約30%増加している。ファン・ラウト氏は、同社の成長指標の具体的な内容については言及しなかったが、ダウンロード数は企業向けライセンスやマネージドサービスの売上と相関関係があると述べている。また、Weaviateの利用者が急増し、付加価値が理解されたことで、すべての成長指標が上昇し、シード資金を使い果たすことになった。

だがシード資金はなくなったものの、会社は新たな資金調達には積極的ではなかった。しかし、SeMIの共同創業者たちが、元Datarobotの創業者たちが設立したCortical Venturesや、New Enterprise Associates(NEA)と会談をした際に、両社が自分たちの事業をどのように支援できるかを示してくれたのだとファン・ラウト氏はいう。

「まさに『ふいを突いてびっくりさせる』ような凄さでした」と彼は付け加えた。「過去に彼らが行ってきたこと、そして私たちをサポートしてくれているチームは、まさに私たちが求めていたもので、私にとっては初めての経験ではありますが、すべての驚くべき話が真実であると言えます」。

そうした会談の結果、NEAとCorticalがともに主導したシリーズAにつながり、このたび1600万ドル(約18億4000万円)の新規資金が調達された。

SeMIは今回の資金をアメリカとヨーロッパの人材採用に投入し、Weaviateとベクトル検索全般のためにオープンソースのコミュニティを強化しようとしている。また、オープンソースのコアを中心とした市場進出戦略や製品への取り組みを強化するとともに、機械学習がコンピュータサイエンスと重なる部分の研究にも第一歩を踏み出す。

一方、ファン・ラウト氏は、データベース技術の次の波を見ている。彼はデータベース技術はOracle(オラクル)やMicrosoft(マイクロソフト)のような大成功をもたらしたSQLの波から始まり、MongoDB(モンゴDB)やRedis(レディス)のような成功を収めた非SQLデータベースが第2の波だったと考えている。

「私たちは今、新世代のデータベース、つまりAIファーストのデータベースの入り口に立っています。Weaviateはその一例です」と付け加えた。「Weaviateだけでなく、ベクトル検索データベース、あるいはAIファーストのデータベースを市場を啓蒙していく必要があります。機械学習が新たにもたらすすばらしい可能性に、興奮を押さえられません。例えば何百万、いや何十億ものドキュメントに対して自然言語で質問してデータベースに答えさせたり、何百万もの写真やビデオに含まれている内容を『理解』させたりするのです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:sako)

社内に散らばる膨大なナレッジを検索できるサービス「Dashworks」

企業が成長すると、それにともなって、社員たちが知っているべき重要な情報が増える。テクノロジーの利用が複雑化すると、Slackのスレッドにあったり、Jiraのチケットにあったり、ファイルとしてDropboxにアップされていたりと情報はあちこちに散在してしまうことになる。

Dashworksは、そんな社内のナレッジを集約する場所を目指しているスタートアップだ。カスタマイズ可能なスタートページと検索エンジンを備え、何十種類もの企業向けサービスに接続し、必要なものを見つけるための1つのハブを提供する。

仕事用のノートPCのホームページとしてDashworksは構築されている。全社的なアナウンスやFAQの作成、ブックマークの共有など、ハンドブック、OKR、組織図など、必要なのになかなか見つからないものを見つけることができる。

しかし、それ以上に印象的なのは、ツールを横断した検索機能だ。FacebookやCrestaといった企業で自然言語処理の経験を積んだ共同創業者のPrasad Kawthekar(プラサド・カワテカール)氏とPraty Sharma(プラティ・シャルマ)氏は、Dashworksに質問をすると、前述のSlackのスレッド、Jiraのチケット、またはDropboxファイルといったすべてのナレッジから回答を得ることができるツールを構築している。ユーザーが登録したサービスの関連ファイルの検索結果ページが表示されるが、質問の答えを知っていると判断した場合は、ページの一番上にGoogleのスニペットスタイルで表示される。

画像クレジット:Dashworks

現在、DashworksはAirtable、Asana、Confluence、Dropbox、Gmail、Google Drive、Intercom、Jira、Notion、Slack、Salesforce、Trelloなど30以上の人気サービスに接続することが可能で、需要に応じて順次追加していく予定だ。

これらのサービスやナレッジに他社がアクセスすることは、不安なことかもしれない。Dashworksのチームは、それを十分承知しているようだ。SOC-2認証を取得していること、サービスを停止する場合、データはすべてサーバーから消去されること、そしてツールをホスティングできるチームには、完全なオンプレミス版を提供していることという。

今週、DashworksはPoint72 Venturesが主導し、South Park Commons、Combine Fund、Garuda Ventures、GOAT Capital、Unpopular VenturesおよびStarling Venturesが支援する400万ドル(約4億6000万円)のラウンドを調達したと発表している。また、Twitchの共同創業者であるEmmett Shear(エメット・シアー)氏やGustoの共同創業者であるJosh Reeves(ジョシュ・リーブス)氏とTomer London(トーマー・ロンドン)氏など、多くのエンジェルたちがこのラウンドを支援している。同社は、Y Combinatorの2020年冬季にも参加していた。

画像クレジット:Dashworks

画像クレジット:Dashworks

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フランス当局が偽造品や危険な製品を扱うeコマースプラットフォームWishの削除を検索エンジンなどに要請

フランスの複数の閣僚が共同声明を発表し、フランスで運営されている主要な検索エンジンとモバイルアプリストアに対し、Wish(ウィッシュ)のウェブサイトとモバイルアプリを完全に非表示にするよう要請したことを明らかにした。Wishは、人気のeコマースプラットフォームで、主に中国の業者の商品を扱っている。商品は業者から顧客に直接発送されるため、在庫は抱えていない。

消費者の権利と詐欺を担当するフランスの行政機関は2020年、Wishの調査を開始した。当時、DGCCRF(競争・消費・詐欺防止総局、Director générale de la concurrence, de la consommation et la répression des fraudes)は、Wishが有名ブランドのロゴを示す画像を不正確に掲載したスニーカーや香水など消費者を簡単に誤解させる偽造品を販売しているのではないかと疑っていた。

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そこでフランス政府は、Wishで販売されている140種の商品を注文したが、そのほとんどが輸入品だった。これを受け、政府はそうした商品が安全かどうかを調べることにした。

Wishで購入したおもちゃの95%が欧州の規制に適合しておらず、そのうち45%が危険だと判断された。電子機器については、95%が欧州では販売されてはいけないはずのもので、そのうち90%が何らかの形で危険なものだった。

さらに、同プラットフォームで販売されている安価なコスチュームジュエリーにもリスクがあり、政府が注文したものの62%が危険とみなされた。繰り返しになるが、これらの指標は商品140点という非常に小さなサンプルに基づいている。

Wishが危険な商品を販売しているという通知を受けた場合、それらの商品は24時間以内にマーケットプレイスから削除されることが求められる。しかし「ほとんどの場合、それらの商品は別の名前で販売されたままであり、時には同じ販売者からも販売されている。同社は、不適合で危険な商品の取引に関する記録を一切残していない」とフランス経済省は声明で述べている。

同調査によると、Wishは危険な製品を購入したことを顧客に通知する際、製品回収の理由については言及していない。

2021年7月、消費者の権利と詐欺を担当するフランスの行政当局はWishに通知し、eコマースと製品安全に関する欧州の規制を遵守するよう求めた。当局は、さらなる行動を起こす前に2カ月間の猶予を与えた。

そして4カ月後、フランス政府は最近の欧州規制の変更を利用して、問題のあるウェブサイトやアプリの参照元を外したり、ブロックしたりしている。これは複雑なプロセスだが、経済省は検索エンジンやアプリストアにWishの参照解除を要請するよう、担当行政機関に依頼した。本稿執筆時点では、WishはまだApp Storeで利用でき、Googleの検索結果にもWishのウェブサイトが表示される。

今後、Wishはフランスでシャドーバンされる。ウェブサイトは今後も利用でき、すでにスマホにダウンロードしているアプリも機能する。しかし、App Store、Play Store、Googleの検索結果には表示されなくなる。

Wishがフランスの規制を遵守するために適切な変更を実施したと行政が判断すれば、シャドーバンを解除する可能性がある。今回の過激な決定によってフランスは前例を作り、ウェブがますます細分化されていることを改めて示している。この場合、フランスは消費者の最善の利益のために行動するとしている。

また、欧州で予定されているデジタルサービス法が、ドロップシッピング全体に大きな影響を与えるかどうかも注目される。欧州は、2000年に制定されたeコマース指令をデジタルサービス法で抜本的に見直す予定だ。

画像クレジット:Kira auf der Heide / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

検索エンジンをよりユーザー中心なものに再構築するYou.comが約22億円のシードを獲得

元SalesforceチーフサイエンティストであるRichard Socher(リチャード・ソッハー)氏と、同氏のYou.com共同設立者たちは2020年来、これまでとは異なるタイプの検索エンジンを構築するというミッションに取り組んできた。そして米国時間11月9日、You.comはパブリックベータ版を公開するとともに、2000万ドル(約22億円)という多額のシード投資を発表した。

この新しい検索エンジンは、そこらにある検索エンジンに見られるような、縦にスクロールする検索結果のセットは使用しない。ソッハー氏とチームは、思い込みを捨て、まったく新しいものを考え出したかった。

「デザインは実際に何度も繰り返し行われました。私たちは初心者のような考え方で、検索に革新をもたらそうとしました。ある意味ではクレイジーなことですが、縦型リストでは(広告のような)他のものがどんどん散らばってしまい、20年間変わっていませんでした」とソッハー氏は筆者に語った。

You.comのチームはこの状況を打破するために、まったく違うものを作った。まず、検索結果のページは、Medium、Yelp、Redditといったさまざまなアプリにリンクされている。それらのアプリの重要度をカスタマイズすることも、特定のアプリをまったく使わないようにすることも、思いのままだ。

検索結果は、ウェブ検索結果のカテゴリーとともに、アプリ別のカテゴリーで表示され、左から右にスクロールすると、特定のアプリやカテゴリーの検索結果を見ることができるようになっている。さらに、実際に新しいタブを開かなくても、ビデオやコードスニペットなどの結果を見ることができ、タブのオーバーロードを減らしつつ時間とキー入力を節約すことができる。

気に入った検索結果があれば、それを上位に移動させられる。そうしたことをYou.comは記憶し、次回はユーザーがもっと気に入るような検索結果を提示する。

You.comで検索したサンクスギビングの添え物料理(画像クレジット:You.com)

創業者らがYou.comという名称を選んだのは、ユーザーとしてのあなたが検索エンジンに何を求めているかを表しているからだ、とソッハー氏は話す。「我々はこの名称に忠実です。それはあなたのことです。だから、あなたはここで、『もっとRedditを見たい』とか『Redditをさほど見たくない』とか選ぶことができるのです」と説明した。

近くのタイ料理店を探しているときのように、Redditからの検索結果を表示することに意味がない場合は、代わりにYelpの検索結果がトップに表示される。Yelpの検索結果が気に入らなければ、単にウェブの検索結果を表示することもできるが、このようにカスタマイズできることで、表示される検索結果にかなりの柔軟性とコントロールが生まれる。

特にニュースソースを選ぶとき、このレベルのカスタマイズによって結果が一面的になりすぎるのではないかと懸念するかもしれないが、目立たせたくない項目は消えてしまうのではなく、結果のリストの下に移動するだけだ。カスタマイズ機能を気にしないのであれば、検索エンジンに結果を表示させることもできる。

You.comはまず、開発者やプライバシーを意識したユーザーに焦点を当てている。ソッハー氏らはショッピングを主要ユースケースとして考えていたが、テストの結果、小売業者の製品カタログにリンクした場合、検索結果が実際にはカタログのページであるにもかかわらず、初期ユーザーは広告だと思ってしまうことがわかった。そこで、他のユースケースを検討することにした。

開発者は、コードスニペットのようなものを検索することができる。スニペットのセットを水平方向にすばやくスクロールし、何かを見つけてコピー&ペーストすると、Googleや、DuckDuckGoのようなプライバシーを重視した検索エンジンよりもはるかに早く作業を終えることができる。

プライバシーを気にする人のために、ソッハー氏が「真のシークレットモード」と呼ぶ機能では、IPアドレスを含むあなたに関するすべての情報が隠された状態にすることができる。この検索エンジンは、シークレットモードへの出入りが簡単にできるように設計されており、レストランを探すのに位置情報をオンにする必要がある場合は、プライバシーモードをオフにして、すぐにオンに戻すことができる。

収益化については、ユーザーのデータを第三者に売らないことを誓っているが、今は単にデザインを落ち着かせてユーザー数を増やすことを目指している。ソッハー氏は、収益化は後回しにすると話す。おそらく、いずれ広告が表示されることになるだろうが、その際には検索結果とユーザーを結びつけることなく、また検索結果があちこち散らばることがないようにするという。

例えば、空気清浄機を検索すると、その広告が表示されるかもしれないが、その広告を出している企業は、現在展開されているほとんどのオンライン広告と同様、ユーザーのデータに直接アクセスすることはない。もちろん詳細は不明だが、ソッハー氏はそのように説明する。

同社はまた、2000万ドルのシード投資を発表した。これは、ソッハー氏の元上司であるMarc Beniof(マーク・ベニオフ)氏のプライベート・ベンチャー・ファンドであるTime Venturesが主導したもので、Breyer Capital、Sound Ventures、Day One Ventures、そして業界のエンジェル投資家たちが参加した。

これまで、この検索エンジンは数千人のユーザーを対象としたプライベートベータ版だったが、11月9日からは誰でも試すことができる。Chromeを使っている人は拡張機能をダウンロードできる。

画像クレジット:you.com

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

独Xaynが広告を表示させずにプライバシーを保護できる検索ツールのウェブ版を発表

ベルリンを拠点とするスタートアップ企業Xayn(ゼイン)は、Googleのようなアドテック大手のトラッキングやプロファイリングを利用せずに、プライバシー保護とパーソナライズを両立させた広告のない検索サービスを提供している(2020年のTechCrunchの記事を参照のこと)。同社はその製品の提供範囲を拡大し、ウェブ版(現在はベータ版)を発表した。

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同社がモバイルアプリと同様の機能を持つ「light web version」と説明しているウェブ版「Xayn WebBeta」は、あるコンテンツに「興味がないことを意思表示するためにスワイプ」できないといった点がXaynのモバイルアプリとは異なる。

ブラウザのように見えても、Xayn自体はブラウザとも少し違う。同社が「ブラウジングエンジン」と称するXaynでは、プライベート検索だけでなく、ディスカバリーフィード(ニュースフィード)の形でコンテンツを整理して表示することで、アプリ内でブラウジングすることができる。

デスクトップのブラウザでXaynを読み込むと、XaynのAIがフィードで何を表示するかを判断するために、短いタイムラグが発生する(モバイルでも同様)。Xaynを最初に起動したとき(すなわち、AIがゼロからコンテンツをユーザーの地域に合わせてローカライズしているとき)は、すでにユーザーが何回かXaynにアクセスしてユーザー固有の閲覧シグナルをAIが利用できるときを比べて、わずかに長く時間がかかるようだ。

ウェブ版のXaynでは、コンテンツの左右に緑(好き)またはピンク(嫌い)のバーが表示されている。そのバーの横にカーソルを合わせるとホップアップ表示される、上向き(または下向き)の親指のアイコンをクリックすることで、特定のコンテンツに対する「評価する」または「評価しない」のシグナルを送ることができる。左クリックだけで「いいね!」できる、という仕組みだ。

また、フィードを増やしたくない場合は、フィードをオフにして、起動時に検索バーだけを表示させることもできる。

デフォルトでは、検索結果はコンテンツペインに、ニュースフィードと同じような長方形のグリッドで表示される。情報を求めているユーザーにとっては、少しばかり情報密度が足りないだろうか。

Xaynウェブ版(ベータ版)の検索結果ページのサンプル(画像キャプチャー:Natasha Lomas / TechCrunch)

Xaynの学習AIは、右上の「脳」のアイコンをクリックすれば、いつでもオフにすることができる。オフにすると、ユーザーが閲覧しているものが、ユーザーに表示されるコンテンツ(フィードのコンテンツと検索結果の両方)を決定するAIの学習に使用されないようになる。

全体をまっさらな状態に戻したい場合は、手動で閲覧データを消去して学習をリセットすることもできる。

ユーザーに魅力的なもう1つの要素はXaynには広告が表示されないことだ。DuckDuckGoやQwantのような他の非追跡型プライベート検索エンジンは、コンテクスト広告を表示することで収益を上げているが、Xaynには広告がない。

さらに同社は、検索業界の常識にとらわれずに、Xayn AIの検索アルゴリズムをオープンソースで提供している。

他にもウェブ版のXaynには、クリック1つで関連コンテンツが表示される「ディープサーチ」や「コレクション」というブックマークのような機能がある。ユーザーは「コレクションを作成、コンテンツを追加、管理することで、お気に入りのウェブコンテンツを集めて保存することができる」という。

Xaynは広告を表示しないだけでなく、広告ブロッカーを搭載し、第三者のサイトに表示される広告をブロックして「ノイズのない」ブラウジングを実現している。

Xaynのウェブ版は、ChromiumベースのブラウザとFirefoxにのみ対応しているので、Safariユーザーはサポートされたブラウザに切り替えてXaynを使用する必要がある。

同社によると、2020年12月に発表されたXaynのモバイルアプリは、その後世界中で25万回以上ダウンロードされている。

Xaynのモバイルアプリでは、発表から3カ月後には毎日10万以上のアクティブ検索が行われ、Xaynはブラウジングデータとユーザーの興味を示すスワイプを取り込み、このツールの価値提案の中核であるパーソナライズされたコンテンツの検索のためのAIをトレーニングし、改善している。この学習と再評価はすべてデバイス上で行われ「Xaynはユーザーごとの検索結果のプライバシーを保護している」とアピールできる材料になっている。

また、フィルターバブル(泡の中にいるように、自分の見たい情報しか見えなくなること)効果を避けるために、Xaynの検索結果には意図的な変化が加えられ、アルゴリズムが常に同じものばかりをユーザーに提供しないようにしている。

Xaynのウェブ版もモバイル版も、Masked Federated Learning(保護されたフェデレーテッドラーニング(連合学習))と呼ばれる技術を用いて、ユーザーのプライバシーを損なうことなく、ユーザーにパーソナライズされたウェブエクスペリエンスを提供している。

もちろんGoogle(グーグル)も独自の広告ターゲティング技術の改善に取り組んでいて、現在、広告ターゲティングのためにブラウザユーザーをインタレストバケットに分類するFloC(コホートの連合学習)と呼ばれる技術を試験的に導入し、トラッキングクッキーを廃止しようとしている。しかし、Xaynとは異なり、Googleのコアビジネスはユーザーをプロファイリングして広告主に販売することだ。

共同創業者でCEOのLeif-Nissen Lundbæk(レイフニッセン・ルンドベーク)氏は声明で次のように述べる。「私たちは、誤ったプライバシーと利便性のジレンマへの直接的な対応としてXaynを開発しました。このジレンマを解決できることはすぐに証明されました。ユーザーはもはや敗者ではありません。実際、私たちのすばらしいエンジニア&デザイナーチームは、アップデートのたびに、プライバシーや品質、優れたユーザーエクスペリエンスがいかに密接に結びついているかを繰り返し実証してくれます」。

「私たちは既存のものをコピーするのではなく、じっくりと検討して新しいものを作りたいと考えました。Xaynでは、積極的にウェブを検索したり、インターネット全体からパーソナライズされたコンテンツを提案するディスカバリーフィードを閲覧したりして、インターネット上のお気に入りのサイトを見つけることができます。どちらの方法でもユーザーのプライバシーは常に保護されます」。

デザイン部門の責任者であるJulia Hintz(ジュリア・ヒンツ)氏も、別の声明で次のように付言している。「Xaynのウェブ版を開発するにあたり、Xaynアプリの成功につながったすべての要素をデスクトップのブラウザウィンドウで利用できるようにしました」。

「ウェブ版にもプライバシーを保護するアルゴリズム、直感的なデザイン、スムーズなアニメーションが採用されています。ユーザーは、慣れ親しんだ環境から切り離されることなく、モバイルとデスクトップを簡単に切り替えることができます。これこそが、シームレスで強いインタラクションの鍵となる、Xaynのすばらしい利点です」。

ウェブ版のXaynでは、ユーザーの個人情報はブラウザ内に保存されるという。

ウェブ版のセキュリティについては、広報担当者が次のように話す。「デスクトップパソコンは、一般的にスマートフォンよりも安全性が低いといわれています。Xaynはプライバシー保護のために、分散型の機械学習と暗号化を組み合わせて個人データを保護しています。純粋に技術的な観点から見ると、Xaynはデスクトップデバイス上のブラウザの中のブラウザです。Xaynはそれぞれのブラウザのサンドボックス内で動作し、個人データを第三者の不要なアクセスから保護します」。

Xaynは今後、プライバシーを保護しながらパーソナライズされたブラウジングを同期する機能を追加する予定で、オンラインであればどこからでも、モバイルとデスクトップの複数のデバイスでAIの学習結果を享受できるようになる。

ブラウザでwww.xayn.comにアクセスすれば、Xayn検索エンジンのウェブ版(ベータ版)をデスクトップパソコンで確認できる。

Xaynは2021年8月、日本のベンチャーキャピタルGlobal Brain(グローバル・ブレイン)とKDDIが主導し、ベルリンのEarlybird VC(アーリーバードVC)などの既存の支援者が参加したシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達。累計調達額は2300万ドル(約25億円)を超えた。同社が日本をはじめとするアジアに注目しているのは確実だ。

関連記事:プライバシーとパーソナライズを両立する検索エンジンXaynが日本のKDDIやGlobal Brainなどから約13億円調達

画像クレジット:Xayn

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

プライバシーとパーソナライズを両立する検索エンジンXaynが日本のKDDIやGlobal Brainなどから約13億円調達

TechCrunchは2020年12月に新しいスマホアプリベースの検索エンジンXayn(ゼイン)を取り上げた。

「検索エンジン!?」。そういうのはわかる。個人に合わせて検索結果を調整する現代の検索エンジンの能力は便利なものだが、そうしたユーザー追跡はプライバシーを犠牲にしている。いくつか例を挙げると、この監視社会はGoogle(グーグル)の検索エンジンやFacebook(フェイスブック)のターゲティング広告を改善しているかもしれないが、我々のプライバシーにとってはあまり良くない。

関連記事:オンデバイスAIでプライバシー保護とパーソナライズを両立させる検索エンジン「Xayn」

もちろんインターネットユーザーは米国拠点のDuckDuckGoや、フランスのQwantなどに切り替えることができるが、プライバシーで得られるものがある代わりに、検索結果の調整の欠如によりユーザーエクスペリエンスや検索結果の適切性が往々にして損なわれる。

ベルリン拠点のXaynが提案しているのは、パーソナライズされているもののプライバシーが守られているスマホでのウェブ検索だ。これはGoogleが展開するクラウドベースのAIや、現代のスマートフォンにビルトインされているAIに代わるものだ。結果として、あなたに関するデータはXaynのサーバーにアップロードされない。

このアプローチは「プライバシー熱烈支持者」のためだけではない。検索を要するがGoogleのマーケットにおける支配的地位は必要としないという事業者もこのモデルにますますひきつけられている。

その証拠が8月9日に明らかになった。Xaynは、日本のベンチャーキャピタルGlobal Brain(グローバル・ブレイン)と通信事業者KDDIがリードしたシリーズAラウンドで約1200万ドル(約13億円)を調達した。本ラウンドには既存投資家であるベルリンのEarlybird VCなども参加し、Xaynの累計調達額は2300万ドル(約25億円)を超えた。

Xaynの検索エンジン、ディスカバリーフィード、そしてモバイルブラウザの融合はこうしたアジアマーケットの企業にアピールしてきたようだ。というのも、特にXaynはOEMデバイスに組み込むことができるからだ。

今回の投資を受け、Xaynは日本を皮切りとするアジアマーケット、ならびに欧州マーケットに注力する。

Xaynの共同創業者でCEOのLeif-Nissen Lundbæk(リーフ−ニッセン・ルンドベック)氏は次のように述べた。「我々はXaynで、パーソナライゼーションを通じたすばらしい検索結果、高度なテクノロジーを使ったプライバシー重視デザイン、そしてクリーンなデザインを通じた便利なユーザーエクスペリエンスのすべてを手にすることができると証明しました」。

そして「データーを販売し、多くの広告を表示するのが常態となっている業界にあって、当社はプライバシーを優先し、ユーザーの満足を中心に据えることを選びました」と付け加えた。

今回の資金調達は、 EUのGDPR(一般データ保護規則)やカリフォルニア州のCCPA(消費者プライバシー法)といった法制化がオンライン上の個人データについて市民意識を高めてきた中でのものだ。

リリース以来、Xaynのアプリは世界で21万5000回ダウンロードされ、アプリのウェブバージョンも間もなく展開される、と同社は話す。

電話取材で、ルンドベック氏は資金調達にともなうKDDIの役割について詳しく話した。「KDDIとの提携は、我々がユーザーにXaynへのアクセスを無料で提供することを意味します。KDDIのような企業が実際の顧客でありながら、KDDIが当社の検索エンジンを無料で提供します」。

Xaynの基本的な特徴には、パーソナライズされた検索結果がある。個人データの収集や共有はせずに、Tinderのようなスワイプから学ぶインターネット全体のパーソナライズされたフィードだ。そして広告なしのエクスペリエンスも提供される。

グローバル・ブレインのパートナー、上前田直樹氏は次のように述べた。「プライベートオンライン検索のマーケットは成長していますが、Xaynはオンラインでの情報収集がどのようにあるべきか、その再考法において他社より抜きん出ています」。

KDDI Open Innovation Fundの責任者である中馬和彦氏は「この欧州のディスカバリーエンジンは効率的なAIにプライバシー保護重視とスムーズなユーザーエクスペリエンスを独自に組み合わせています。KDDIは、専門性とテクノロジーで未来を形作ることができる企業に目を光らせています。ですので、今回の取引は当社に完璧にマッチするものでした」。

共同創業者であるCEOのリーフ−ニッセン・ルンドベック氏、最高研究責任者のMichael Huth(マイケル・フート)教授、最高執行責任者のFelix Hahmann(フェリックス・ハーマン)氏に加え、Daniel von Heyl(ダニエル・フォン・ヘイル)博士が最高財務責任者として取締役会に加わり、Frank Pepermans(フランク・ペパーマンズ)氏が最高テクノロジー責任者に、Michael Briggs(マイケル・ブリグズ)氏が最高事業成長責任者に就く。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

プライバシー重視ブラウザ「Brave」、非追跡型検索エンジンのベータ版をリリース

プライバシー重視のブラウザBraveは、数カ月間独自の検索エンジンのテスト(予約リストに登録されている[ブラウザ名がBraveだけに]勇敢な早期採用者による新興の代替インターネット検索ブラウザの品質検査)を行ってきたが、今回、Brave Searchというツールのグローバルベータ版のリリースを発表した。

Braveの非追跡型検索エンジン(独自のインデックス上に構築されており、Google検索のような監視テック製品に代わるプライバシー重視をうたっている)に興味のあるユーザーは、Braveのデスクトップ版およびモバイル版のブラウザを介して入手できる。他のブラウザでsearch.brave.comにアクセスしても入手できる。つまり、Braveブラウザに乗り換えなくても、Braveの検索エンジンを使用できる。

Brave SearchはBraveブラウザのユーザーが選択できる複数の検索オプション(Google検索エンジンを含む)の1つとして提供されているが、Braveによると、2021年後半にはBraveブラウザのデフォルトの検索エンジンにする予定だという。

3月の記事に書いたとおり、BraveはCliqz(欧州の非追跡型検索ブラウザで2020年5月に閉鎖された)に在籍していた開発者と同社のテクノロジーを買収によって取得し、彼らが開発していたTailcatと呼ばれるテクノロジーを基盤として、Brave独自の検索エンジンを作り上げた。

現在ベータのBrave Searchは、現時点で、10万人を超える早期リリース版ユーザーによってテストされたという。同社はこのマーケティング動画を作成し、Brave SearchをGoogle検索エンジンとChromeの組み合わせの代替オプションとして使用できる「すべてを含むパッケージ」であるとうたっている。

Braveの月間アクティブユーザー数は、(3月時点では2500万人だったが)最近3200万人を超えた。これには、同社のフラグシップ製品であるプライバシー重視のブラウザだけでなく、ニュースリーダー(Brave News)やFirewall+VPNサービスなど広範な製品スイートのユーザーも含まれる。

Braveは、プライバシーを重視するユーザーのコミュニティにリーチしたいと考えている企業向けに、プライバシー保護型のBrave Adsも提供している。

監視べースのビジネスモデルに対する一般市民の認識が高まるにつれ、プライバシー重視の消費者テックが何年にも渡ってその勢いを増し続けている。特定のプライバシー重視製品に注力してビジネス展開をはじめ、完全な製品スイート(ブラウザ、検索エンジン、電子メールなど)を形成するに至った企業も少なくない。こうした企業では、すべての製品を非追跡型という1つのカテゴリに属するものとして提供している。

Brave以外にも、DuckDuckGo(ダックダックゴー)は、非追跡型検索エンジンだけでなく、トラッカーブロッカーや受信箱プロテクターツールといった製品を提供しており、全体で7000万人~1億人のユーザーを獲得したと思われる。また、Proton(プロトン)はE2E暗号化メールサービスProtonMailだけでなく、クラウドカレンダーやファイルストレージ、VPNといったサービスも提供している。プロトンは最近、全世界で5000万人を超えるユーザーを獲得した。

もちろん、Apple(アップル)も例外ではない。AppleはGoogleと競合するテック大手でアドテック複合企業でもあり、ユーザーに高品質のプライバシーを約束することでハードウェアと各種サービスの売上を伸ばしている(アップルによると、2021年始めの時点で、iOSのユーザーは全世界で10億人を超えており、Apple製デバイスの台数は16億5000万台以上に達しているという)。

要するに、消費者向けプライバシーテクノロジー市場は成長しているということだ。

それでも、そのAppleでさえGoogle検索との競争は避けている。これは、Googleという巨大検索企業からユーザーを横取りしようと試みることがあまりに大きな挑戦であることを示しているのだろう(とはいえ、Appleは、Google検索エンジンのiOS端末への事前ロードを許可する代わりにGoogleから巨額の支払いを引き出している。これによってAppleは巨額の収益を得ているものの、自ら唱えている広範なプライバシー重視、ユーザー重視の約束と矛盾しており、問題を複雑にしている)。

対照的にDuckDuckGoは長年、非追跡型検索の第一線に位置しており、2014年以降黒字化を実現している。同社はもちろんAppleのような巨額の利益を出しているわけではないが、投資家がプライバシー重視検索の成長に目をつける中、最近、例外的に巨額の外部資金を調達している。

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商業的な情報詮索プログラムから人個人情報を保護するという市民の欲求が拡大しているその他の兆候として、Facebook所有のWhatsAppに代わるエンド・ツー・エンド暗号化アプリの急増がある。例えばSignalは、2021年前半、広告大手であるFacebookがWhatsAppのサービス利用規約の一方的な変更を発表した後、ダンロード数が急増した。

本格的なユーザープライバシーの約束に期待を寄せる思い入れの強いユーザーのコミュニティを構築してきた有望な企業は、プライバシーへの関心が高まるたびにその波に乗る絶好の位置につけているといえる。さらには、消費者向け製品スイートを抱き合わせ販売することで、個々の製品の有用性を高めることもできる。Braveが検索に手を出す絶好のタイミングだと確信したのもそのためだ。

BraveのCEO兼共同創業者Brendan Eich(ブレンダン・アイク)氏は、今回の発表のコメントで次のように語っている。「Brave Searchは業界で最もプライバシーを重視した、なおかつ独立系の検索エンジンであり、ユーザーがテック大手の代替エンジンに求めるコントロールと信頼をもたらします。ユーザーを追跡しプロファイルを作成する古い検索エンジンや、その後に登場した独自のインデックスを持たない、古いエンジンの外観を変えただけのような検索エンジンと違って、Brave Searchはコミュニティの力を活用したインデックスで関連性の高い結果を出す新しい方法を提供すると同時に、プライバシーも保証します。数百万という人たちが監視型経済を信頼できなくなり、自身のデータを自身で管理できるソリューションを積極的に探している中、Brave Searchは今市場にある明らかな空白を埋めることができます」。

Braveは、同社の検索エンジンにライバル企業(小規模のライバルも含む)との差別化を図る機能が多数用意されていることを売りにしている。その1つが独自の検索インデックスであり、このおかげで他の検索プロバイダーに依存しないエンジンとなっている。

独自の検索インデックスがなぜそれほど重要になるのだろうか。この質問をBraveの検索最高責任者Josep M. Pujol(ジョセフ・M・プホール)氏にぶつけてみた。「検閲とバイアスが組み込まれる動機は、故意であれ、無意識であれ(こちらのほうが対処は困難ですが)たくさんあります。検索と人々がウエブにアクセスする方法の問題は、それがモノカルチャーである(ごく少数の企業に席巻されている)点です。誰もが、この状態は非常に効率的であると同時に非常に危険であることを認識しています。モノカルチャーでは、一度病害が発生するとすべての作物が駄目になる可能性があります。現在のこの状況は障害に対する耐性がなく、ユーザーでさえそのことに気づき始めています。我々にはもっと選択肢が必要です。これは、GoogleやBingを置き換えるという意味ではなく、それらの代替案を提示するという意味です。選択肢が増えれば自由度が上がり、抑制と均衡を備えた本当の競争を回復できます。

「選択肢は独立性があって初めて可能となります。というのは、もし当社が独自の検索インデックスを持っていなかったら、当社のエンジンはGoogleやBingの上に一枚皮を被せただけのものになり、ユーザーの問い合わせに対する結果もほとんど、あるいはまったく変わりません。某検索エンジンのように独自の検索インデックスを持たないエンジンを提供すると、一見選択肢が増えたように見えますが、中身は大手2社と何ら変わらないのです。コストはかかりますが、独自の検索インデックスを構築することによってのみ、真の選択肢を提供できます。そして、それはBrave Searchユーザーに限らずすべてのユーザーに利益をもたらします」。

ただし、現時点では、Braveは他の検索プロバイダーの機能に依存している部分があることを指摘しておきたい。これは、特定のクエリーや画像検索などの領域で(Braveによると、例えばMicrosoft所有のBingの結果を利用しているという)、十分に関連性の高い検索結果が得られるようにするためだ。

また、検索結果の改善と精緻化にコミュニティからの匿名のコントリビューションも利用しており、検索インデックスに関して広範な透明性という謳い文句に沿った製品にしようとしている(検索インデックスでは、結果にバイアスを生じさせる秘密の手法やアルゴリズムを使用しないという。これを実現するために、まもなくコミュニティによってキュレーションされるオープンなランキングモデルを提供して多様性を確保し、アルゴリズムによるバイアスとあからさまな検閲を防ぐという)。

透明性を上げるもう1つの手段として、Braveは、ユーザーの問い合わせが独自インデックスによって処理された割合を報告するとしており、これを「業界初の検索独立性指標」と称して宣伝している。つまり、同社独自の検索インデックスだけで得た結果の割合を表示するというものだ。

「当社はユーザープロファイルを構築しないため、この指標はユーザーのブラウザを使用してプライバシーを重視して作成されます」とBraveはプレスリリースに記している。「ユーザーはこの集計指標をチェックすることで検索結果の独立性を確認し、検索結果の作成に当社独自のインデックスが使用された程度を知ることができます。あるいは、当社独自のインデックスがまだ構築中であるためにロングテール結果の作成にサードパーティのインデックスが使用されたかどうかも確認できます」。

また同社は、Brave Searchは「通常、大半の問い合わせに答えることができ、それは高い独立性指標に反映されている」ことも付け加えた。とはいえ、たとえば画像検索を実行すると、独立性指標が頭打ちになるのがわかる(ただしBraveは、これによってユーザーの追跡が行われることはないことを確認している)。

透明性はBraveにとって重要な原則であり、 Brave Searchによるすべての検索を対象にグローバルな独立性指標も開発する予定で、これを公開することで当社が完全な独立性に向けて進んでいることを示すつもりです」。

Braveの検索結果に表示される「独立性指標」の例(画像クレジット:Brave)

収益化に関しては、まもなく、広告なしの有償バージョンと広告付きの無償バージョン(「完全な匿名」検索は保証される)の両バージョンを提供する予定だという。ただし、早期ベータ版では広告スイッチをオフにする予定はないと明言している。

「広告なしの有料検索と広告付きの無料検索の両方に各種オプションを提供する予定です」と同氏はいう。「それができたら、Braveのユーザー広告ですでに行っているように、BATで広告収入をユーザーと共有するプライバシー重視の広告を検索にも持ち込みたいと思っています」。

Brave Search検索エンジンは使用するがBraveブラウザーは使用しないユーザーには、コンテキスト広告が表示される。

「BraveブラウザーによるBrave Searchでは、オプトイン広告における強力なプライバシー保護を保証するのが標準であり、当社の支持するブランド価値です」とプホール氏は付け加え、検索のユーザーとブラウザのユーザーは同じタイプの広告ターゲティングの対象となる可能性が高いことを確認した。

まもなくリリースされる広告なしバージョンの検索エンジンの価格設定について同氏は次のように答えた。「リリース日と価格については未定ですが、広告なしの検索はお求めやすい価格にする予定です。検索と情報へのアクセスはすべての人が公正な条件で利用できる必要があると当社は考えているからです」。

最近、欧州で興味深い展開があり、Googleは、反トラスト規制当局からの圧力を受けて、Androidプラットフォームの域内ユーザーに表示される選択画面における「載りたけりゃ金を払え」式のオークションモデルを見限って、多くのライバル企業と自社ブランドのGoogle検索が掲載されたリストからデフォルトの検索エンジンを選択できるようにすることに同意した。この動きによって欧州のAndroidユーザーが選択できる代替検索エンジンの数は増えるはずだ。そうなれば、Googleの検索市場シェアが少しずつ減少する可能性がある。

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Braveは以前、Googleの有償オークション形式には参加しないと語っていたが、新しいモデルが「本当に無料で参加できる」なら、今後参加する可能性はあるという。

「Googleが参加無料にするというのは、たくさんの前例があることを考えるとにわかには信じがたいのですが、このモデルが本当に参加無料で、各種契約や機密保持契約を交わす必要もないのなら、参加する可能性はあります」と同氏はいう。「結局、Brave Searchは使いたいすべての人にオープンな製品です。どのプラットフォームでもBrave Searchを選択できるよう積極的に取り組んでいきたいと考えています」。

「欧州各国にはローカライズ済みの各種ブラウザがすでに存在しているため、見込みのあるユーザーにリーチできるすべてのメディアでクラス最高のプライバシーをマーケティングすることで、Braveブラウザのシェア拡大のみに頼らず、Brave Searchの市場シェア拡大を図っていきたいと考えています」と同氏は付け加えた。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

【コラム】SEO担当者はGoogleアルゴリズムアップデートに慌てる必要はない

編集部 注:本稿の著者Eli Schwartz(イーライ・シュワルツ)氏は、10年以上にわたりB2BおよびB2Cの大手企業で働いてきた経験を持つ、SEOの専門家でありコンサルタント。

ーーー

Googleのアルゴリズムアップデートの噂が流れるたびに、SEOコミュニティは大パニックに陥る。皆数字が分析されるまで息をひそめ、アルゴリズム・アップデートを(願わくば)無傷で乗り切ったときには、安堵のため息がもれる。

アップデートが公開され、特にGoogleによる承認があった場合には、Googleが何を変えたのか、新しいパラダイムで勝つにはどうすればいいのかを分析しようとする記事や専門家の分析が相次ぐ。

私はこの悩みはまったくの杞憂だと思う。

Googleアルゴリズムは、あたかも研究室で作られたようなある種の神秘的な秘密のレシピであり、不思議な全知の魔法使いの気まぐれでサイトを盗んだり、サイトに報酬を与えたりするかのように思われている。この時代遅れのスキーマにおけるすべてのSEOとウェブマスターの目標は、この魔法使いを騙して、すべてのアップデートの勝者になることだ。

この考えは、Googleアルゴリズムのアップデートで何が起こるのかに関する根本的な誤解、そしてGoogleに対する根本的な誤解に根ざしている。実際のところ、アルゴリズムは私たちの敵ではない。アルゴリズムは、より良い、より正確なユーザーエクスペリエンスを実現するために設計されているのだ。ここでは、アルゴリズムとの関係を再構築するためのいくつかの視点を紹介する。

Googleは力になろうとしているだけ

まず確認したいのは、Googleは、あくまでも手助けをしようとしているということだ。Googleは、検索する人に快適で高品質なユーザー体験を提供したいと考えている。それ以上でもそれ以下でもない。Googleは魔法使いではないし、そのシステムは恣意的にサイトを奪ったり、報酬を与えたりするためのものでもない。

それを念頭に置いて続けたい。

Googleのアルゴリズムは、大規模で複雑なソフトウェアプログラムであり、実際のシナリオに基づいて常に更新される必要がある。そうしないと、まったくの恣意的なものになってしまうからだ。ソフトウェアのバグが報告されて修正されるように、検索エンジンは何が機能していないかを発見し、解決策を生み出さなければならない。

Googleのアップデートは、他のソフトウェア企業と同様に、自社の製品やサービスを大きく飛躍させるものだ。ただし、Googleの場合は、単なる製品アップデートではなく「メジャーアルゴリズムアップデート」と呼ばれている。

これで、Googleのアルゴリズムアップデートとは何かという知識が身についたことだろう。慌てる必要がないというのはありがたいことではないだろうか?

検索トラフィックが減少しても、必ずしも不利になるとは限らない

大規模なアルゴリズムアップデート後にサイトの検索トラフィックが減少したとしても、それがサイト全体を対象としたものであることはほとんどない。通常、1つのURL群の検索順位が下がっても、他のページは改善されていることが多いようだ。

改善されたページを確認するには、Google Search Consoleを深く掘り下げて、どのURLでトラフィックが減少し、どのURLで増加したかを調べる必要がある。アップデート後にサイトが急激に落ち込むことは確かにあるが、それは通常、そのサイトで勝者よりも敗者が多かったためだ。

トラフィックが減少したとしても、それはアルゴリズムがサイトを懲らしめたからではないことは間違いない。

多くの場合、実際のトラフィックは減少しておらず、クリックに結びついていないインプレッションが減少しただけの可能性がある。最近のアップデートで、Googleは強調スニペットを掲載していたサイトの検索結果を削除した。その結果、インプレッション数は大幅に減少したが、クリック数はほとんど変わらなかった。アップデート後にサイトが勝った、あるいは負けたと決めつけるのではなく、詳細なデータを集めて研究し、より明確な情報を得るようにしたい。

Googleを見習い、優れたユーザー体験を重視する

ユーザーへの高品質ですばらしい体験の提供に注力しているウェブサイトは、アルゴリズムのアップデートを恐れる必要はない。むしろ、アップデートは優れた結果を出すために必要な原動力となることもある。怖がる必要があるのは、ユーザー体験の質が低いために、そもそも検索で上位に表示されるべきではなかったウェブサイトだけだ。

ウェブサイトがユーザーに優れた体験を提供しているのであれば、アップデートによって質の低いサイトが淘汰されるため、アップデートが実際に味方に付いてくれる可能性が高い。

ユーザー体験の質を重視していれば、アルゴリズムの更新でトラフィックが減少するページもあるだろうが、ほとんどの場合、全体としてトラフィックが増加するのが普通だ。何が変化したのかという詳細なデータを調べれば、ウェブサイトはアルゴリズムの更新によって苦境に陥ったり、影響を受けたりすることもなく、特定のURLだけが影響を受けるという見解が裏付けられるだろう。

アップデートは検索エンジンにとっての現実

Googleはアルゴリズムを継続的に更新していくであろうし、そうするべきだ。Googleの一番の目的は、ユーザーを満足させ、維持し続けることができる進化したプロダクトを提供することなのだ。

Googleがアルゴリズムを放置すれば、抜け道を利用したスパマーに蹂躙されるリスクがあることを考えてみて欲しい。スパム的な検索結果を多く提供する検索機能は、AOL、Excite、Yahoo、その他の検索エンジンのように、機能的にもはや存在しないものとなってしまうだろう。Googleは、アルゴリズムを更新することで、関連性を維持しているのだ。

アップデートは検索という行為の一部なのだ。

アルゴリズムではなく、ユーザーを追いかける

オーガニック検索に依存しているすべてのウェブサイトは、必ず変化するアルゴリズムを追いかけるのではなく、もっと重要なところ、つまりユーザー体験に焦点を当てるべきだと私は考える。

ユーザーは、結局のところ検索における顧客だ。サイトがユーザーに貢献していれば、検索体験を保護するために設計されたアルゴリズムの更新に対する免疫がつくだろう。アルゴリズムにおける魔法使いは存在しない。存在するのは、サイトに最適なプロセス、手順、行動を適用する方法を見出したSEOマスターだけだ。

アルゴリズムやアップデートの目的はただ1つ、ユーザーが求めるものを正確に見つけられるようにすることだけだ。サイトがユーザーの役に立っていれば、何も恐れることはない。

【編集部注】この記事は「Product-Led SEO:The Why Behind Building Your Organic Growth Strategy」(製品中心のSEO オーガニック検索における成長戦略を築く際の根拠)からの抜粋となる。

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(文:Eli Schwartz、翻訳:Dragonfly)

プライバシー重視を追い風に快進撃中の検索エンジン「DuckDuckGo」がブラウザとしても使えるデスクトップアプリ開発

テクノロジーとプライバシーの保護をめぐる話題が沸騰を続けている。そこで、ユーザーを追跡しないことでかねてから評価の高い検索エンジンのDuckDuckGo(DDG)がこのほど、2020年末に既存および新たな投資家の混成グループから、主に「二次的投資」で1億ドル(約110億円)あまりのバランスシートの底上げを達成したことを明らかにした。

同社のブログで名が挙がっている投資家はOmers Ventures、Thrive、GP Bullhound、Impact America Fund、そしてWhatsAppの創業者Brian Acton(ブライアン・アクトン)氏、「world wide web」を発明したTim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)氏、VCでダイバーシティの活動家Freada Kapor Klein(フレーダ・ケイパー・クライン)氏、そして起業家のMitch Kapor(ミッチ・ケイパー)氏などだ。そうそうたる顔ぶれである。

DuckDuckGoによると、二次的投資であることによって、初期の社員や投資家の一部がその財務状態を強化するとともに、株式の一部を現金化できた。

しかし同社はこうも言っている。すなわち2014年以降ずっと利益が出ている同社は「繁昌」しており、1億ドル以上の年商を各年に報告している。したがって今同社は、外部投資家の鍋で煮られ続ける必要がない。

同社の最後のVCからの調達は2018年で、それは、Omers Venturesからしつこく迫られた1000万ドル(約11億円)のラウンドだった。Omersは、今そのい金があれば目標とする成長、とりわけ国際化を達成できる、と口説いた。

DDGには、他にも発表すべき数値がある。同社によると、そのアプリは過去12カ月で5000万回以上ダウンロードされた。それまでのすべての年を合わせたよりも多い。

また月間の検索トラフィックは55%増加し、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど一部の国ではモバイルの検索エンジンのナンバー2の地位を獲得した(StatCounter/Wikipediaによる)。

上のデータは「我々はユーザーを追跡しないのでその数を挙げることはできないが、マーケットシェアの推計とダウンロード数および各国のアンケート調査などによるとDuckDuckGoのユーザーは7000万から1億と思われる」、と言っている。

ヨーロッパでは、GoogleのAndroid選択画面の変更が迫っている。そこでは、規制当局からの強制により、Googleは同社のOSが動くモバイルデバイスのユーザーに、彼らがデフォルトの検索エンジンを設定するとき競合他社の製品も提示しなければならない。これによってDuckDuckGoの各地での運は、大吉に向かうと思われる。

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Googleは、他の検索エンジン企業が、自分がAndroidの選択画面に表示される権利をオークションへの入札で買うという悪習をやめる予定だから、プライバシーなど独自の価値命題を持つライバルで、しかもDuckDuckGoのようにブランド知名度もある企業には、Googleのマーケットシェアを奪うチャンスだ。

DuckDuckGoはブログで、ヨーロッパやその他の地域でマーケティング活動を強化すると確約している。

そのブログ記事は「また弊社の好調なビジネスは弊社に、今すぐにでも使える、オンラインのプライバシーのためのシンプルなソリューションがあることを多くの人びとに伝えるためのリソースを与えている。2021年5月は弊社は、全米の屋外広告やラジオ、テレビなどの広告を駆使し、175の大都市圏でこのことを宣伝してきた。ヨーロッパや世界中のその他の国にも、この努力を広げていきたい」と述べている。

……なのでDDGの二次資金の多くの部分が、同社のグロースマーケティングに投じられるだろう。同社は今、オンラインのプライバシーや、ユーザー追跡、そして長年のデータスキャンダルを背景とする、まるで自分のことが知られているかのような気持ち悪い広告に対する人びとの関心が盛り上がっている今を、好機として利用したいのだ。

Appleが最近iOSユーザーにサードパーティのアプリ追跡とそれを無効にする方法を教えるようになったことも、これらの問題への一般大衆の気がかりを高めている。Appleは下の例のような、Apple自身の良く出来た広告によって、人びとの関心を惹こうとしている。

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シンプルで説得力のあるマーケティングメッセージでプライバシーを語ることは容易ではない、と言っても過言ではないだろう。それを考えると今のプライバシー技術は使いやすさとアクセシビリティーの両方でかなり進歩した、と言ってよい。

というわけでDuckDuckGoのビジネスは確かに、ウェブの進化における現在の重大局面にぴったりはまっているようにも見える。同社のブログは「シンプルなプライバシー保護を言い表す代名詞のようなものになりたい」と言っている。ということは、もはや対象はニッチではなく全世界だ。

「あまりにも長く、オンラインのプライバシーに関する議論は懐疑論者たちが支配してきた。もちろんプライバシーは気になるが、でも彼らには何もできないと。今こそ、この悪質な定説を葬り去るべきだ」、とDDGのブログは言っている。

プライバシー追究歴13年のこのベテラン企業には、今後の製品の計画もいろいろある。

同社はすでに2018年に追跡ブロックを検索エンジンに導入したが、今後の計画では、もっと総合的なプライバシー保護機能「何でもありのプライバシー集大成」を展開したい。そこには検索とは一見無縁なメール用の保護ツールもあり、数週間後にベータでローンチできる。そしてそれは「新しい受信トレイを作らなくてもプライバシーを強化できる」そうだ。

ブログ記事はさらに続く。「この夏の終わりごろには、アプリのトラッカーブロックがAndroidデバイスでベータで使えるようになる。ユーザーはアプリトラッカーをブロックできるようになり、自分のデバイスの楽屋裏で起きていることへの透明性が増す。そして年内には、今のモバイルアプリの完全に新しいデスクトップバージョンをリリースする。それはメインのブラウザーとしても使えるもので、我々のシンプルでシームレスな総合的プライバシー機能により、弊社のプロダクトのビジョンである『シンプルになったプライバシー』を現実にしたい」。

それは、今私たちが目にしているプライバシー技術の、もう1つのトレンドだ。検索エンジンなら検索エンジンという特定の一種類のツールで、注意深く、信頼を損なわないようにして堅固な評判を構築してきた者が、ユーザーの成長とともに、さまざまなアプリを取り揃え、完全に総合的なプライバシー保護システムを提供していく。

たとえばメールアプリのProtonMailはプライバシー企業Protonに姿を変えて、エンド・ツー・エンドの暗号化メールだけでなく、クラウドストレージやカレンダー、それにVPNまで揃えて、それらすべてが同社のプライバシー重視の傘の下に整然と収まっている。

プライバシー技術は今後ますます開発が加速度的に進み、これまでのついでの技術からメインストリームの技術へと変貌を遂げるだろう。

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画像クレジット:Frank Vassen/Flickr CC BY 2.0のライセンスによる

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

欧州のAndroidの「選択画面」はより優れた選択肢を隠し続ける

2018年に欧州委員会によって下された反トラスト法違反の重い制裁を受けて、Google(グーグル)が欧州のAndroid(アンドロイド)で検索エンジンの「選択画面」の枠をオークションにかけ始めてから1年以上が過ぎた。しかし、2年以上前にGoogleに記録的な罰金を科したにもかかわらず、ほとんど何も変わっていない。

Googleの検索エンジン市場でのシェアは依然として低下しておらず、EUでは高い関心を集める代替の検索エンジンがGoogleが考案した「是正処置」によって値付けされている。この是正処置は、GoogleのAndroid OSを搭載したスマートフォン上で、最も多くの費用を支払える検索エンジンを優先し、支配的なGoogle自身の代替手段として掲載するというものだ。

四半期ごとの選択画面の勝者は、ますます変わらなくなってきている。Googleの代替検索エンジンは、またすぐに見栄えのしない「勝者」たちが列挙されるだろう。

2021年第1四半期の結果は、スマートフォンユーザーのほとんどが聞いたことがないであろう広告ターゲティングの検索エンジンオプションの一団で占められていた。ドイツの「GMX(ジーエムエックス)」、カリフォルニアを拠点とする「info.com(インフォ・ドット・コム)」、プエルトリコの「PrivacyWall(プライバシーウォール)」(ウェブサイトに「100%プログラマティック広告」というスローガンを掲げている会社が所有している)に加えて、もう1つは名の知れたアドテック大手の検索エンジンMicrosoft(マイクロソフト)の「Bing(ビング)」だ(*記事執筆時。現在は2021年第2四半期の結果が掲載されている)。

リストの下方では、ロシアの「Google」にあたるYandex(ヤンデックス)が8つの枠を獲得した。また、チェコの検索市場の古参Seznam(セズナム)は2つの枠だ。

大敗となったのは、トラッキング防止機能を備えた検索エンジン「DuckDuckGo(ダックダックゴー」だ。同社は、10年以上にわたってオンラインでのプライバシーを擁護してきたが、獲得枠は1つ(ベルギー)のみとなった。オークション開始時にすべての国でまんべんなく枠を獲得していたのとは対照的に、ほぼ完全に締め出されてしまった。

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広告収入のすべてを植樹活動に寄付する非営利団体の検索エンジンEcosia(エコシア)は、今回もほとんど出てこない。スロベニアのAndroidユーザーの画面に表示される1枠のみだ。しかし、エコシアは12月にiOS(アイ・オーエス)、iPadOS(アイパッド・オーエス)、macOS(マック・オーエス)のSafari(サファリ)にデフォルトの検索オプションとして追加され、世界中で1500万人以上のユーザーに利用されるようになった。

一方、プライバシー保護に焦点を当てた欧州産の検索オプションであるフランスの「Qwant(クワント)」は、わずか1枠にとどまった。それも、自国の市場ではなく非常に小さな国、ルクセンブルクだ。

もし欧州の規制当局が、自ら指摘した重大な反トラスト法違反を受けてGoogle自身が考案した「是正処置」によって、Android検索市場に健全な競争が自然に取り戻せるとでも思っているのなら、ほぞを噛むことになるだろう。Googleの検索市場でのシェアは、へこむどころか、かすりもしていないというのが純然たる事実だ。

Googleは、iPhoneのデフォルトに同社の検索エンジンを設定するために、Appleに毎年数十億ドル(数千億円)を支払っているが、Statista(スタティスタ)のデータによると、2021年2月の欧州におけるAndroidとiOSを合せたモバイル検索市場でのGoogleのシェアは97.07%であり、欧州委員会が反トラストの裁定を下した2018年7月の96.92%から上昇している。

そう、実際にはGoogleは、この「是正処置」を実施してシェアを伸ばしているのだ。

これはどう見ても、EUの競争法執行の壮大な失敗だ。大きなニュースとなったAndroidに対する反トラスト判決から2年半以上経ってご覧の有様だ。

欧州委員会はまた、Googleがこのオークションを行っている間、欧州がテクノロジーの主権を握ることを目標に掲げ推進してきた。Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)欧州委員会委員長は、この包括的な目標を自身のデジタル政策プログラムに結び付けている。

テクノロジーの主権という施策においても、Androidの選択画面は大きな失敗と言わざるを得ない。2020年、検索エンジン付きブラウザーの事業から完全に撤退したCliqz(クリックス)が、その責任の一端は、欧州独自のデジタルインフラを所有する必要性を理解できなかったEUの政治関係者にあるとしているように、Googleに代わる(ほとんどの)欧州産の検索エンジンの助けになっていない。それどころか、最も関心を集め、Googleの代替となるべき欧州の検索エンジンを積極的に埋没させ、広告から資金を得ているGoogleクローンの一群との競争を強いている。

(もしBrave Searchが軌道に乗れば、欧州産でない新たな代替検索エンジンとなる。欧州発の専門知識やテクノロジーの恩恵を受けたものではあるが……)

これは、オークションの仕組み上、Googleに最も多くの費用を支払った企業だけが、Androidのデフォルトオプションとして設定されるチャンスを得られるからだ。

稀に欧州の企業が大枚をはたいて選択リストに掲載されることがあっても(これは検索クリックごとにコストがかかることを意味するようだ)、ほとんどの場合、他の欧州以外の選択肢やGoogleと一緒に掲載されることになり、晴れて選択されるまでのハードルはさらに高くなっている。

このような方法を取る必要はないはずだ。実際Googleは当初、市場シェアに基づいた選択画面を設けていた。

しかし、Googleはすぐに「載りたければ金を払え」モデルに切り替え、ユーザーのデータを追跡しない(または、純粋に環境保護を目的とし広告収入を植林に充て、利益を追求しないエコシアなど)代替検索エンジンの見つけやすさを一気に低下させてしまった。

このような代替検索エンジンの企業のほとんどは、Googleの選択画面オークションに勝つ余裕がないという(このゲームに参加する企業は、GoogleとのNDA締結が必要なため、発言に制限があることも注目すべきだ)。

Googleのオークションの落札者が、Google自身のビジネスの土台である行動ターゲティングモデルにほぼ偏っているのは、明らかに偶然ではない。あらゆるデータ追跡型のビジネスモデルが集結している。そして、消費者の観点からすると、人為的に限定されたGoogleの劣化バージョンしか含まない貧弱な「選択肢」の中からGoogleを選ばない理由があるだろうか。

エコシアがTechCrunchに語ったところによると、同社は現在、オークションプロセスから完全に撤退することを検討しているという。これは、参加するべきと考える前にオークションをボイコットするという、最初の直感に立ち返ることになる。Googleの「載りたけりゃ金を払え」スタイルの「no choice(選択不可)」(と、エコシアはオークションのことを呼んでいる)ゲームを数カ月間プレイしたことで、このシステムは、真正直な検索エンジンプロバイダーには勝ち目がないという見解を固めた。

過去2回のオークションで、エコシアは毎回1つの枠しか獲得できなかったが、ユーザー数には何の好影響も見られなかったという。完全に撤退するかどうかは、次のオークションプロセスの結果が明らかになった後に決定される。(そのオークションの結果は、3月8日に発表され、エコシアは今回も1枠となっている)。

「結局、このゲームをプレイするのが『面白くない』ことに気づいた」とエコシアの創業者であるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏は語る。「このゲームは非常に不公平で、『ダビデ対ゴリアテ』というだけでなく、ゴリアテがルールを選び、アイテムを手に入れ、望めば途中でルールを変えることさえできる。だから、参加してもおもしろいことは何もない」。

「参加して9ヵ月になるが、欧州の市場全体のシェアを見ると、何も変わっていない。今回のラウンドの結果はまだわからないが、何も変わらないと思っている。いつものお仲間がまた掲載されるだろう……今掲載されている選択肢のほとんどは、ユーザーにとって興味深いものではないが」。

「興味を引く選択肢をすべて画面から消してしまって『選択』画面と呼ぶのは、何とも皮肉なものだ。だから、状況は変わらず、ゲームをするのがますますつまらなくなり、ある時点で、もうこのゲームは止めるという決断を下すことになるかもしれない」と同氏は付け加えた。

TechCrunchが話を聞いた他の代替検索エンジンは、今のところ参加を継続する予定だが、いずれもAndroidの「選択画面」でGoogleが「載りたけりゃ金を払え」モデルを採用していることに批判的だ。

ダックダックゴーの創設者であるGabriel Weinberg(ガブリエル・ワインバーグ)氏は「我々は入札に参加しているが、それはGoogleの出来レースがどれほど酷いものかを欧州委員会の前にさらけ出すためであり、消費者にとって本当に役立つものへと正すために、欧州委員会がより積極的に使命を果たすことを期待している。当社の厳格なプライバシーポリシーのため、前回と同様に排除されると予想している」と述べている。

同氏は、同社が2020年秋に掲載した「根本的に欠陥のある」オークションモデルを公然と非難するブログ記事を紹介し「記事全体はまだ有効だ」と述べている。このブログ記事で同社は、2014年から利益を上げているにもかかわらず「ユーザーからの搾取で利益の最大化を図るという選択肢はなかったため、今回のオークションでは落札に至らなかった」と書いている。

「実際のところ、プライバシーの保護とクリーンな検索エクスペリエンスという当社のコミットメントは、検索1件あたりの収益が少なくなることを意味する。つまり、利益の最大化を狙う他の企業と比較して、より少ない金額で入札しなければならないということだ」とダックダックゴーは続ける。「このEUの反トラスト法に対する是正処置は、消費者が使いたいと思う代替検索エンジンを排除し、掲載される検索エンジンからは、設定メニューで得た利益の大半を奪うことで、モバイル検索におけるGoogleの優位性をさらに強化することにしかならない」と述べている。

「このオークションの形式は、ユーザーの選択ごとに期待される利益を入札価格として入札するという動機を与える。長期的に見ると、選択されたGoogleの代替検索エンジンは、設定メニューから得た利益のほとんどをGoogleに渡さなければならない。Googleのオークションは、検索エンジンプロバイダーがプライバシーを軽視したり、広告を増やしたり、善意の寄付をしなかったりする動機を与えているが、それはそうすることで、より高い価格で入札する資金が得られるからだ」とも述べている。

フランスのクワントも同様に批判的であり、オークションに対して「極めて不満」と述べ「早急な修正」を求めている。また、2018年の欧州委員会の決定を「文面においても、その精神においても」完全に尊重すべきだとしている。

CEOのJean-Claude Ghinozzi(ジャン・クロード・ギノッジ)氏は「当社は、オークションシステムに極めて不満を持っている。Googleに最も費用を払っている3つの選択肢だけでなく、消費者が自分の使いたい検索エンジンを見つけられるように、選択画面の早急な修正を求めている。2018年の決定を、文面でも精神面でも完全に尊重することを要求する」と語る。

「当社はあらゆる選択肢を検討し、四半期ごとに決定を再評価している。いかなる場合でも、Googleが提供するたった3つの代替選択肢に限られることなく、消費者が好みの検索エンジンを自由に選択できるようにしたいと考えている。消費者の利益は常に最優先されなければならない」と付け加える。

ロシアのヤンデックスは、第2四半期のオークションへ参加することを明言した。しかし、Googleの処置について、Androidユーザーに真の「選択の自由」を提供するには至っていないと批判する。

「当社は、高品質で便利な検索エンジンを世界中に提供することを目指している。検索エンジンの選択の自由は、活発な市場競争につながり、各社のサービス向上へのモチベーションを高めると確信している。現在のEUの解決策は、2020年3月以降に発売される端末のみを対象としており、ユーザーの選択の自由を完全に保証するものではないと考えている」とヤンデックス社の広報担当者はいう。

「そのようなデバイスは、現在のEU市場でユーザーが手にしているデバイスの総数に比べて、非常に少ない。正当で実質的な選択の自由を提供することが不可欠だ。サービスプロバイダー間の競争は、最終的には、より良い製品を受け取るユーザーに利益をもたらす」

検索分野に新たに参入したトラッキング防止機能付きブラウザーのBrave(ブレイブ、前述のとおり、ブレイブはクリックスの資産を買収し、近く公開される自社ブランドであるブレイブサーチを立ち上げようとしている)は、オークションに参加することはまったく考えていないことを明らかにした。

「ブレイブは、このオークションに参加する予定はない。当社はユーザーを第一に考えているが、この入札プロセスは、ユーザーの選択肢を狭め、Google Play(グーグルプレイ)ストアの最適化に最も有効な入札者のみを選択し、ユーザーへ最大の利益を提供することを無視している」と同社の広報担当者は述べている。

そして「皮肉なことに、Googleは、ChromeとAndroidを結びつけた反競争的な行為で有罪となったことを受けた自らの是正処置で利益を得ている」と付け加えた。

Androidの選択画面に参加せずにEUでブレイブサーチのシェアを拡大するための戦略について尋ねられた広報担当者は「ブレイブはすでに欧州市場向けにブラウザーをローカライズしている。マーケティングキャンペーンや推薦プログラムで紹介されているクラス最高のプライバシーを提供することで、今後も成長を続けて行く」と述べている。

Googleが自ら策定した「是正処置」は、2018年に欧州委員会が下した反トラスト法上の裁定、つまり記録的な50億ドル(約5480億円)の制裁金と、さまざまな侵害行為の停止命令に対処したものだ。EUの反トラスト規制当局は、現在も同社の実施状況を監視し続けている。しかしクロール氏は、欧州委員会はGoogleに対し、指摘した不正行為を修正させるのではなく、実質的には時間稼ぎをさせているだけだと主張する。

「現時点での見方だが、欧州委員会は、選択画面のオークションは必ずしも是正処置として要求したものではないため、Googleに変更を強制することはできないと考えており、それが自分たちの責任と捉えていない理由かもしれない」と同氏は言い「しかし、同時に、欧州委員会はGoogleに状況を解決するよう要求し、それに対しGoogleは何もしていない」と付け加える。

「欧州委員会はまた、Googleがマスコミやユーザーから信望を得る隙を与えていると思う。Googleが何か対処しているように見えるため、Googleが好きなように動くことを許している【略】本当の選択画面が良い解決策になるかどうかはわからないが、それを決めるのは私ではない。Googleが代替検索エンジンの損害をうまく修復したかどうか【略】また、これまでに与えた損害をいくらかでも補償したかどうかを決めるのは欧州委員会だが、それが成されているようには見えない。[マーケットシェア]の数字を見れば、基本的にはまだ同じ状況が続いていることがわかる」。

さらに同氏はGoogleの現在の「是正処置」についても「全体的に、人気のある選択肢を画面から排除するように設計されている」と主張し「それがオークションの仕組みだ。もちろん、誰もそこに踏み込もうとしないことに失望している。つまり、基本的にGoogleの競合他社同士で殴り合うという不公平なゲームに参加している。どこかの規制当局が介入して、これではダメだと言ってくれることを期待しているが、そうはならない」と述べる。

「今のところ、当社の唯一の選択肢はそこに留まることだが、もし本当に効果がなく、規制当局が介入する可能性もないと判断すれば、完全に撤退して私たち抜きでGoogleに楽しんでもらうという選択肢もある。[現在のオークションモデル]からは何も得られないだけでなく、当然ながらそこに投資もしている。また、NDAを締結しているために制限もあり、その制限さえもちょっとした苦痛だ。つまり、弊害ばかりがあり、何の利益も得ていない」。

NDAによってオークション参加にともなうコストについて話すことは制限されているが、クロール氏は、収益を犠牲にしてリーチを追求しているため、落札者は損をしていると示唆する。

「前回の入札を見てみると、この入札では当社が利益を得ることは難しく、他社も損をするのではないだろうか。これはまさに、勝者がしばしば損をするという、このオークション、というよりむしろほとんどのオークションの作られ方だ。つまり、落札者が過剰な値段を付けるという『勝者の呪い』そのものだ」。

同氏は「当社は非常に慎重に入札したので、損をするというようなことにはなっていない。前回幸運にもスロベニアの枠を落札した。スロベニアは美しい国だが、やはり当社の収益には影響しないし、この落札は予想もしていなかった。これは、基本的にゲームに参加するためのものだが、財務上のリスクはない」とし「当社が落札できることはまずないだろうと思っていたため、[現在オークションに参加しているものの、ほとんどが落札できないエコシアにとっての]財務リスクはそれほど大きくないが、実際に落札した他社にとっては話は異なるかもしれない」と付け加える。

クロール氏は、このオークションモデルによって、Googleは競合企業を弱体化させながら市場シェアを伸ばし続けることができたと指摘する。

「検索によって損をしてでも、シェアを拡大しようとする企業は割りと多くある。そして結局Googleはそのすべてのシェアを獲得し、同時に競合企業を弱体化させている」と同氏は主張し「競合企業はシェアの拡大に費用をかける必要があるからだ。また、少なくともオークションが始まった当初は気づかなかったことだが、本物の検索会社であれば【略】ブランドを構築し、製品を産み出し、そのためにあらゆる投資を行い、本物のユーザーがいるはずだ。そしてそういった状況であり、真の意味での選択画面があれば、ユーザーはそのブランドを自ずと選ぶ。しかし、このオークションモデルの選択画面では、基本的には、すでに獲得しているであろうユーザーのためにコストをかけることになる」と語る。

「つまり、そういう企業は不利になってしまう。ダックダックゴーや当社のような『真のUSP(独自の強み)』を持っている企業がそうだ。Lilo(リロ)、そしてクワントさえも、基本的に検索でより自国民よりのアプローチを取っていれば、そうなる可能性がある。これらの企業は、さらに不利な立場に置かれることになる。これは不公平なことだと思う」と同氏はいう。

オークションの勝者のほとんどは、Googleのように、検索ユーザーのデータを収集して広告ターゲティングで利益を得るという監視資本主義に関わっている。そのため、EUの競争法執行が、ウェブを支配しているプライバシー上好ましくないビジネスモデルを打ち砕く(そして、より健全な代替検索エンジンが参入するきっかけをつかむ)方策として機能することを当てにしていた人がいたとしたら、ひどく失望していることだろう。

広告のために消費者を追跡しない、あるいはエコシアのように完全に非営利のミッションに基づく、より優れた代替検索エンジンは明らかに迫害されている。

欧州委員会は、抗議を聞いていなかったとは言えない。Googleがオークションモデルを発表すると直ぐに、ライバル企業らはそのモデルの欠陥、不公正、不公平、持続不能性を非難し、(確かに、Googleの「広告収益モデルのための行動ターゲティング」を模倣しているわけではないので)競争上不利になると訴えていた。

それにもかかわらずこれまでのところ、最大手のプラットフォーム企業らに対して、公正な事業を保証するための大規模な新規則を大々的に提案しておきながら、欧州委員会は対応する気がない、あるいは、対応できない様子だ。しかし、なぜ欧州委員会は、Googleのようなテクノロジー大手に対して、既存のEU規則をより効果的に行使しないのかという疑問が生じる。

TechCrunchからGoogleのAndroidの選択画面オークションモデルに対する批判を欧州委員会に提起したところ、欧州委員会は月並みな主旨で回答してきた。そこには「選択画面がユーザーの選択を促進する効果的な方法であることは過去に見てきた」と書かれている。

「選択画面は、EEA(欧州経済領域)加盟国のすべての新しいAndroid端末の起動時に、ユーザーに追加の検索プロバイダーを提示することを意味する。これにより、ユーザーは新たに購入したAndroid端末のセットアップ時に、好みの検索プロバイダーを選択できるようになった」と述べ「この決定が完全かつ効果的に実施されるよう取り組む」と付け加えている。

「そのため、選択画面の仕組みの適用状況を注意深く監視している」という。これは、Googleが2018年のEUの裁定を「遵守」し始めて以来の決まり文句だ。

わずかな進展だが、欧州委員会は「市場からの関連するフィードバック」と称し、選択画面の仕組みについてGoogleと協議したことも明らかにした。

同委員会は「選択画面の表示と仕組み、およびライバル検索プロバイダーを選択する仕組み」を中心に話し合ったと述べている。

しかし、時は刻々と過ぎ、Google検索に代わる真の選択肢は市場からますます排除されている。そして、欧州の消費者はプライバシーを侵害するAndroid上での検索に対して有益な代替手段を提供されないままとなっているが、規制当局は何を待っているのだろうか。

欧州委員会でMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏が競争政策を担当して以来(そして2019年からはEUのデジタル政策の重要な決定者でもある)、肝心なところでテクノロジー大手への姿勢が弱腰になっているように思われる。

テクノロジー大手と対峙することを厭わないという評判を得て、過去5年以上に渡りGoogle(およびその他の企業)に対して、注目を浴びる数々の罰金を科してきたにもかかわらず、最近のGoogleの事例に限って言えば、モバイルデバイスでの検索、スマートフォンのOS、検索広告の仲介などで、同氏が市場のバランスを取り戻すことに成功したとは言えない。

それでもなお、同氏は、2020年末のGoogleによるウェアラブルメーカーFitbit(フィットビット)の買収について、このテクノロジー大手がさらなる支配を固めることに多くの反対の声があったにもかかわらず、甘んじて受け入れている。

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その際、同氏は、その懸念に対処するにはGoogleが確約した譲歩で十分だと言い訳がましく主張した(例えば、少なくとも10年間はフィットビットのデータを広告に使用しないという約束をGoogleから引き出した)。

しかし、Googleが一連のEU反トラスト法の裁定を遵守しているかどうかを監視してきた同氏の実績を考えると、Google以外の誰が、同社に対する欧州委員会の命令執行能力や意思を信じることができるだろうか。そうこうしている間に、Googleのやり方に対する不満は、蓄積される一方だ。

欧州委員会の対応についてクロール氏は「聴いているとは思う」と述べ、そしてこう続けた「しかし、見たいのは行動だ」。

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タグ:ヨーロッパGoogleAndroid独占禁止法検索Google検索検索エンジン

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

プライバシー重視のブラウザ開発Braveが独自の検索エンジンを発表、欧州版Firefoxの元開発者と技術の協力で

Mozillaの元CEOであるBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏によって共同設立されたプライバシー重視のブラウザ開発企業Braveは、デスクトップとモバイル向けに独自ブランドの検索エンジンをローンチする準備を進めている。

Braveは米国時間3月3日、Cliqzアンチトラッキング検索ブラウザコンボ(現在は廃止されている)の開発チームが開発したオープンソース検索エンジンの買収を発表した。このテクノロジーは来るべきBrave Searchエンジンを支えることになるだろう。同社は「Big Tech(ビッグテック)」によるものではない検索とブラウジング体験を何百万ものユーザーに提供していく予定だ。

「今日の検索エンジンのほとんどは、ビッグテック企業の検索結果に基づいて作られています。対照的に、Tailcatの検索エンジンは完全に独立したインデックスの上に構築されており、プライバシーを犠牲にすることなく、人々が期待する品質を提供することができます」とBraveは買収発表のプレスリリースに記している。

「Tailcatは、検索結果を向上させるためにIPアドレスを収集したり、個人を特定できる情報を使用することはありません」。

Cliqzはプライバシーに重点を置いたMozillaのFirefoxブラウザのヨーロッパ版であり、同社の主要株主であるHubert Burda MediaはGoogleに代わるブラウザを開発しようと複数年にわたる取り組みを続けていたが、パンデミックで厳しい取引環境が続いたことを受け、早期撤退を余儀なくされ、2020年5月に閉鎖された。

以前のCliqz開発チームはその後Tailcatで働いていたが、買収の一環としてBraveに移った。エンジニアリングチームを率いるのはJosep M Pujol(ジョセップ・M・プジョル)博士で、同氏はBraveのPRで「ビッグテックに代わる唯一の本格的なプライベート検索 / ブラウザを開発していることに大きな興奮を感じています」 と語っている。

「Tailcatは完全に独立した検索エンジンで、独自の検索インデックスをゼロから構築します」とアイク氏はTechCrunchに語った。「Tailcat as Brave Searchは、Braveがブラウザで提供しているものと同じプライバシー保証を備えています」。

「Braveは、ビッグテックのプラットフォームに代わる初めてのプライベートブラウザ+検索機能を提供することになります。ユーザーはプライバシーを保証された閲覧と検索をシームレスに行うことができます。またBrave Searchは、その透明性により、アルゴリズムのバイアスに対処するとともに直接的な検閲を防ぎます」。

アイク氏によると、Braveが検索事業に参入したことにはプライバシーが主流になりつつあるという同社の自信を投影しているという。同氏は、過去1年間で同社のブラウザの利用が「前例のないほど」増加しており、月間アクティブユーザーは1100万人から2600万人以上に増加していることを指摘し、それは非営利のe2e暗号化メッセージングアプリSignal(Facebook傘下のWhatsAppがプライバシーポリシーの変更を発表した後、WhatsAppのビジネスアカウントを通じてFacebookとデータを共有できるようになった)の利用が2021年初めに急増したこのと似通った現象だと語った。

同氏は声明で「2021年にはビッグテックの侵入的慣行から逃れるための真のプライバシーソリューションを必要とするユーザーが増え、Braveに対する需要はさらに高まると見込んでいます」と付け加えた。「Braveのミッションはユーザーを第一にすることであり、プライバシー保護検索を当社のプラットフォームに統合することは、監視経済を促進する目的でユーザーのプライバシーが奪われることがないようにする上で必要なステップです」。

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Brave Searchは、ユーザーがブラウザのデフォルト設定として選択できるかたちで、既存のサードパーティー(Google、Bing、Qwant、Ecosiaなど)と並んで提供される。

アイク氏はまた、将来的にはこれがデフォルトになる(ユーザーが自ら選ぶことのない)可能性もあると述べている。

「当社は引き続き、複数の代替エンジンで『オープン検索』をサポートしていきます」と同氏は述べた。「ユーザーの自由な選択は、Braveの絶対的原則ですから、Braveはユーザーのデフォルトの検索エンジンに複数の選択肢を提供し続けます。しかし当社のユーザーはBrave Searchの比類ないプライバシーを選択すると考えています。準備が整い次第、Brave SearchをBraveのデフォルトエンジンにしたいと考えています」。

Tailcatによる検索結果の品質とGoogleとの比較について尋ねたところ、アイク氏は「かなり良好です」と述べ「普及することでさらに向上していくでしょう」と付け加えた。

「Googleの『ロングテール』はどんなエンジンにとっても打ち負かすのは容易ではありませんが、一度Braveブラウザーに統合されれば、その面でも競合する計画が私たちにはあります」と彼はメールインタビューの中で語り、Googleの巨大な規模は検索のライバルにある程度の競合の機会を提供していると論じた。「Googleが後れをとっている面もあります。検索が彼らの収益の主な源であるとき、彼らが検索の革新を進めることは難しいでしょう。

「彼らは新しい技術や透明性を試す対してリスクを回避しがちですし、株主から希少な検索エンジンの検索結果ページ(SERP)領域に彼らの事業を結びつけるよう求められたり、検索エンジン最適化(SEO)を迫られたりしています」。

「検閲、コミュニティからのフィードバック、アルゴリズムの透明性などの問題については、初期段階から改善が可能であると私たちは考えています。他の検索エンジンとは異なり、大きな改善を行う唯一の方法は新たなものを構築することであり、構築から得られるノウハウを活用することであると確信しています」と同氏は続けた。「インデックスを生成する代わりにBingを使うオプションもありますが(他の検索サービスと同様に)、そうすると品質の面ではBing止まりとなります(そうした場合ユーザーは完全にBingに依存することになるでしょう)」。

Braveは晩春ないし夏までにBrave Searchの一般公開を目指しているとアイク氏は語った。早期イテレーションのテストに興味のあるユーザーは、ウェイトリストにここから登録することができる。(テスト版は「今後数週間」のうちに登場する予定である。)

Tailcatという名称は、Cliqzが閉鎖される前にブラウザに実装されていない内部プロジェクトであったため、一般にはあまり知られていないようだ。

アイク氏によると「本格的な検索エンジンの開発に向けて」Burdaで開発が続けられていたという。(2020年4月に同社がCliqzの閉鎖を発表した際、同社はCliqzのブラウザーと検索技術を閉鎖すると述べたが、同時にAIや検索のような分野の技術的な問題に取り組むために専門家チームを招集するとも表明していた)。

「CliqzはSERPベースの検索エンジンを提供していましたが、ブラウザにはまだTailcatを実装していませんでした」とアイク氏はいう。「2020年4月にCliqzが閉鎖された後も、Burdaの開発チームは、本格的な検索エンジンを開発するために、新しいプロジェクト名をTailcatとして検索技術の開発を続けていました。チームはそのミッションを継続するための長期的な拠点を求めていましたので、Braveの一員になることに大きな喜びを感じています」。

買収の金額的条件は明らかにされていないが、我々はBurdaが買収契約の一環としてBraveの株主になっていることを確認した。

「当社の技術がBraveで使用され、その結果、ブラウジングと検索の中核的なウェブ機能において、Googleに代わる真の、プライバシーに配慮した代替手段が生み出されたことを大変喜ばしく思っています」とHubert Burda MediaのCEOであるPaul-Bernhard Kallen(ポール=ベルンハルト・カレン)氏は支持声明で述べている。「Braveの株主として、私たちは今後もこのエキサイティングなプロジェクトに関わっていきます」

Braveが代替ブラウザの開発に注力し始めたのは、主に広告資金によるインターネットビジネスモデルを再考し、暗号化通貨による報酬システムを利用してコンテンツクリエーターへの支払いを行う(およびユーザーの閲覧に対しても支払いを行う)ことを意識してのことであったが、今ではプライバシー重視の「スーパーアプリ」と自らを評している。

現在、Brave Browserはプライバシー保護広告プラットフォーム(Brave Ads)とニュースリーダー(Brave Today)をバンドルしている。今後リリース予定の検索エンジン(Brave Search)、プライバシー保護ビデオ会議サービス(Brave Together)に加えて、Firewall+VPNサービスも準備中だ。

「スーパーアプリ」による統一的なブランド提案は、主流のツールとは対照的に、ユーザーにオンライン体験の真のコントロールを提供するという誓約であるといえるだろう。

関連記事:ブレンダン・アイク氏の画期的なブラウザーBraveの1.0版が登場

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タグ:Braveウェブブラウザー検索エンジンプライバシー

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

MealMeが出前サービスの食事を比較検討できる検索エンジンで9500万円を調達

米国時間2月24日朝、食事専用の検索エンジンMealMe.ai(ミールミー・エーアイ)がプレシード投資ラウンドを90万ドル(約9500万円)でクローズしたと発表した。このラウンドはPalm Drive Capitalが主導し、Slow VenturesCP Venturesが参加している。

TechCrunchがMealMeを初めて知ったのは、2020年10月に行われたアクセラレーターTechstars Atlanta(テックスターズ・アトランタ)のデモデーでのことだ。TechCrunchでは、そのとき登壇した当時のコホートのうち気になったスタートアップをまとめて紹介している。

同社の製品では、利用者は食事やレストランを検索できる。すると、さまざまな食事の出前アプリから利用者が食べたいもの、配達して欲しいものの価格帯が示される。注目すべきは、MealMeが業者に関わらずアプリ内で決済ができる点だ。

このサービスは、DoorDash(ドアダッシュ)やUber Eats(ウーバーイーツ)といった食事配達サービスアプリの価格や配達時間の透明性を高める可能性がある。しかし、MealMeは最初から検索エンジンを作ろうとしていたわけではない。ここに至るまでには紆余曲折があった。

ソーシャルネットワークから検索エンジンへ

MealMeは、最初のアイデアの方向性だけは正しかった類のスタートアップだ。同社は、食事に特化したソーシャルネットワークとしてスタートしたのだと、共同創設者のMatthew Bouchner(マシュー・ボシュナー)氏はTechCrunchに話した。そのサービスは改良を重ねるうちに、食事の写真を投稿できるようになり、掲載されたものを注文できるようになっていった。

まだソーシャルネットワークとして運用されていたころに、MealMeはY CombinatorとTechstarsに参加を申し込んだが、どちらからも断られてしまった。

やがて同スタートアップは、利用者たちが食事の写真を投稿するのは、どの出前サービスを使えば望みの食事を配達してもらえるかを知りたいためだと知った。そこに気づいた彼らは、レストランを検索でき、出前業者や価格の比較検討ができる料理専用の検索エンジンの開発に精力を傾けた。その改良によって、同社はTechstars Atlantaへの参加が叶い、TechCrunchが記事にしたデモデーにこぎつけたというわけだ。

Techstarsの参加中、同社はそのモデルを、DoorDashなどへの単なるリンクから、自社アプリの中で決済までできるかたちに変更した。これがMealMe内部の流通取引総額(GMV)を引き上げたとボシュナー氏はインタビューの中で話していた。その機能は2020年9月に運用開始となった。

そこから同社は、前週比でおよそ20パーセントという急成長を始めた。TechCrunchがMealMeインタビューを行った時点で、同社はGMVランレートが50万ドル(約5300万円)に達し、100万ドル(約1億600万円)に拡大しつつあると話していた。そこから現在までの数週間で、GMVランレートは100万ドルの壁を突破した。

MealMeは、そのビジネスモデルを積極的に語ろうとしないが、利用者が注文の際に支払う金額と、出前アプリに渡す総収益との差からマージンを生み出しているようだ。

TechCrunchは、MealMeのプラットフォームとしてのリスクが気になった。いくつものサードパーティーの出前サービスの価格を比較しながら注文できる仕組みを、それらのサービスを提供する業者を怒らせずに、うまく運営できるのだろうか。インタビューを行った時点では、サービス提供業者からの反発はないとボシュナー氏は話していた。同社の目標は、早く成長して、世界のDoorDashにとって有用な収入源となり、その後に正式な契約を交わすことだとボシュナー氏は話していた。

「私たちは強力な収益発生器として事業を続け、毎週数千件の注文を出前サービスにもたらします」とボシュナー氏は声明文の中で述べている。MealMeは、投資家たちは、Uber EatsなどがMealMeでアプリを使えなくするという懸念よりも、成長の早さのほうに大きな期待をかけていると確信しているようだ。

私がMealMeに興味を惹かれた最初の理由は、もし私が20代位前半だったら、どんだけ使っていただろうかと感じたことだ。おそらく同社は、若いころの私のような利用者を大勢呼び寄せ、大手の出前サービス企業に対して、掲載を断られるどころか、手数料を要求できるぐらいにまで大きく成長することだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:MealMe資金調達検索エンジンフードデリバリー

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:金井哲夫)

グーグルが豪州における無料での検索エンジン提供停止と警告、デジタルニュース規則に対するロビー活動で

Google(グーグル)が、オーストラリアで検索エンジンを停止すると迫っている。コンテンツの再利用に関し、ニュース配信元への支払いを義務づける法案に反対するロビー活動を展開している。

Facebook(フェイスブック)も法律の対象となる。またFacebookは以前、法律が導入された場合にはニュースを自社のサービス上で共有することを禁止すると述べた一方で、法律から受けた脅威の結果として同国への投資が減少したと主張した。

「ウェブサイト間のリンク無制限の原則は、検索の基本です。規則がこのまま法制化された場合、金銭面および運営面で管理できないリスクが生じるため、オーストラリアでのGoogle検索の提供を停止せざるを得なくなります」とGoogleは米国時間1月22日に警告した

ハイテクの巨人であるGoogleは、2020年8月も政府の方針を攻撃した。政府が同社に対しメディア企業と広告収入をシェアする施策を進めた場合、オーストラリア内のサービスの品質が低下し、無料でなくなる可能性があると警告している。

2020年夏以来、Googleはロビー活動のやり方を変えたようだ。明らかに、金銭的影響を最小限にするよう法律を作り変えることを支持しており、法律を完全に脱線させる試みはあきらめたようだ。

最近のロビー活動は、法案の(Googleの視点からの)最も有害な要素を排除することに注力している。また、配信元への支払いの代替モデルとして、2020年に急ぎ立ち上げたニュースショーケースプログラムを推進している。Googleは代替モデルを規則の下で送金を受けるビークルにしたいと考えている。

現在、議会で審議されているオーストラリアのデジタルニュース規則法案には、テック大手のGoogleとFacebookがコンテンツの一部(スニペット)の表示に関してだけでなく、コンテンツへのリンクに関しても配信元に支払うという物議を醸す条件が含まれている。

それでもGoogleはオーストラリアに対し「リンクとスニペット」の代金を払うとなればインターネットの仕組みが壊れると警告した。

1月22日の上院経済委員会への声明で、オーストラリア・ニュージーランド担当副社長であるMel Silva(メル・シルバ)氏は次のように述べた。「規則に関するこの規定は、私たちのビジネスとデジタル経済にとって受け入れがたい前例となるでしょう。検索エンジンやインターネットの仕組みと相容れるものではありません。これはGoogleだけの見解ではありません。この審議に提出された多くの文書でも言及されています」。

「ウェブサイト間におけるリンク無制限の原則は、検索の基本です。規則がこのまま法制化された場合、金銭面および運営面で管理できないリスクが生じるため、オーストラリアでのGoogle検索の提供を停止せざるを得なくなります」。

リンクに対して支払いを要求するという提案に反論しているのは、確かにGoogleだけではない。

ワールドワイドウェブの発明者であるTim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)卿は、法案が「特定のコンテンツをオンラインでリンクすることに対して支払いを要求することは、ウェブの基本原則に違反するリスクがあります」と警告した

書面による証言で彼は続ける。

検索エンジンがウェブ上で有効になる前は、あるページから別のページへのリンクをたどることが資料を見つける唯一の方法でした。検索エンジンはそのプロセスに対し非常に効果を発揮します。ただし、重要なインプットとしてウェブのリンク構造がなければ検索エンジンは機能しません。つまり、リンクはウェブの基本です。

私が理解しているところでは、提案された規則は、指定したデジタルプラットフォームに対し、特定のニュースプロバイダーが提供するコンテンツへのリンクに関して、ニュースプロバイダーと交渉し、場合によっては支払うことを要求しようとしています。

ウェブ上のリンクに料金を請求すると、ウェブコンテンツの価値の重要な側面が妨げられます。私の知る限り、他のコンテンツへのリンクに対して法的に支払いを要求する例は現在ありません。自由にリンクできること、つまりリンク先のサイトのコンテンツにリンクの制限がなく、金銭的に料金がかからないことは、ウェブの運用方法、これまでの繁栄、そして今後数十年にわたる成長の根本です。

ただし、バーナーズ=リー氏の文書がスニペットについて言及していないことは注目に値する。一度もだ。触れたのはリンクについてのみだ。

一方、Googleはフランスの配信元と合意に達したばかりであり、Google自らがコンテンツのスニペットも支払いの範囲に含まれると述べている。

EUでは、Googleはすでに改訂された著作権指令の対象となっている。この指令はテキストのスニペットの再利用を範囲に含めるため、ニュースコンテンツの隣接領域にまで権利を拡張している。もっとも指令は、リンクまたは「非常に短い抜粋」を範囲に含めていない。

フランスでは、Googleは「リンクと非常に短い抜粋を超える」コンテンツにのみお金を払うという。しかし、その文脈でスニペットについては何も述べていない。

フランスの配信元は、Googleがニュースアグリゲーターに通常表示するそれほど短くないテキストスニペットをEU法は明確に範囲に含むと主張している。そして、指令は例外が隣接権の有効性に影響を与えるような方法で解釈されるべきではないとも指摘している。したがって、Googleがスニペットに関して支払いを拒否しようとすれば、フランスで大きな戦いになると思われる。

しかし、オーストラリアではまだ戦いが続いている。そのためGoogleは、実際には別の2つの問題(リンクへの支払いとスニペットに関する支払い)を混同しようとしている。EU法にすでに組み込まれたものに比べ、金銭的影響を軽減しようとしているのだ(これまでのところ指令はフランスでのみ積極的に施行されており、フランスは国内法に置き換えた点で他のEU諸国よりも進んでいる)。

オーストラリアでGoogleはまた、規則が「ニュースショーケースを指定すること」(ニュースショーケースは配信元への支払いに関する法案が審議され始めたときにGoogleが始めたプログラム)を強く求めている。そしてニュースショーケースを「オーストラリアのニュース配信元が提供する価値に対して支払う商業的合意」に達するための手段とするよう働きかけている。

もちろんGoogleにとっては、商業的な交渉プロセスは規則が提案する「最終オファー仲裁モデル」に拘束されるよりも望ましい(そしてなじみがある)。Googleは「最終オファー仲裁モデル」を「偏った基準」だとして攻撃しており、同社が「管理不能な金銭面および運営面のリスク」にさらされると主張している。

「これが類似の取引に基づく標準的な商事仲裁になるのであれば、誠実な交渉を促し、強力な紛争解決により私たちは確実に責任を問われることになります」とシルバ氏は主張する。

Googleが現在のドラフトから削除しようと躍起になっている第3の規定では、コンテンツが検索結果にどう表示されるかに影響を与えるアルゴリズムを変更する前に、Googleは配信元に通知する必要がある。

「アルゴリズム通知の規定は、本当に合理的な通知のみを求めるよう調整してもいいはずです。Googleのアルゴリズムに関する重要で対応可能な変更について通知を求めるのです。配信元は自身に影響がおよぶ変更に対応できます」とGoogleは提案している。

数年の間にGoogleの立場が、関連する法律成立前の「ニュースにお金を払うことは決してない」から「独自のライセンスプログラムを通じてニュースのライセンスにお金を払わせてください」へと変わったことを考れば確かに興味深い。EUが指令を採択し、現在フランスで競争法の助けを借りて)非常に積極的に施行され、オーストラリアでも同様の法律の制定に向けて動くようになってからそうなった。

法律がテックの巨人のマインドを変えられることが判明した。

もちろん、オンラインのコンテンツにリンクする人にお金を払わせるという考えは明らかにひどい。それはやめるべきだ。

しかし、草案のその部分が、配信元に何かを支払わなければならないことをGoogleに受け入れさせるためのオーストラリアの議員による交渉戦術であるならば、それは勝てる戦術だと思われる。

そして、シルバ氏が示唆するように、検索エンジンを停止するというGoogleの脅しは徹底しているように見えるかもしれないが、代替の検索エンジンがいくつ存在するかを考えると、かつてほどの脅威はほとんどない。

特に、代替の検索エンジンの多くは、ユーザーのプライバシー悪用がはるかに少ないからだ

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オンデバイスAIでプライバシー保護とパーソナライズを両立させる検索エンジン「Xayn」

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タグ:Google検索エンジンオーストラリア

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(翻訳:Mizoguchi

オンデバイスAIでプライバシー保護とパーソナライズを両立させる検索エンジン「Xayn」

TechCrunchの読者もご存知のように、現在のWebにはプライバシーと利便性のトリッキーなトレードオフがある。この「非常に私的な情報(プライバシー)の盗難」をうまく成功させるために登場したのが、オンライン追跡だ。インターネットユーザーが見ているものを大規模に監視することが、Google(グーグル)の圧倒的な検索エンジンとFacebook(フェイスブック)のソーシャル帝国を支えている。この2社は、広告から資金提供を受ける最も知名度の高いビジネスモデルだ。

TechCrunchの親会社であるVerizon(ベライゾン)もまた、モバイルデバイスやこのようなメディア資産など、さまざまなエンドポイントからデータを収集して、独自の広告ターゲティング事業を強化している。

他にも数え切れないほどの企業が、知覚価値を抽出するためにユーザーデータを取得している。これらの企業の中に、どのような種類の個人情報をどの程度集めているのか、あるいは実際にそれを使って何をしているのかを完全に開示している企業はほとんどない。しかし、Webはこんなことのために存在しているのではない、としたらどうだろう。

ベルリンを拠点とするXayn(ゼイン)はこのダイナミクスを変えたいと考え、パーソナライズとプライバシー保護を両立させるWeb検索を、まずスマートフォンで始めることにした。

本日同社は、(AndroidおよびiOS向けの)検索エンジンアプリをローンチする。このアプリでは、検索結果のパーソナライズによる利便性は確保されるが、通常のショルダーサーフィンは行われない。これが可能なのは、アプリが、ローカルで学習するオンデバイスAIモデルを搭載しているからだ。データがアップロードされることは決してない(ただしトレーニングされたAIモデル自体がアップロードされることはある)。

このアプリを開発したのは、博士号を持つメンバーが30%を占め、核となるプライバシーと利便性の問題に約6年前から取り組んでいるチームだ(同社は2017年に設立されたばかり)。当初は学術研究プロジェクトとしてスタートし、XayNetと呼ばれる、マスクされたフェデレーションラーニングのためのオープンソースフレームワークを提供するようになった。Xaynアプリは、このフレームワークをベースにしている。

同社はこれまでに、アーリーステージで950万ユーロ(約12億円)の資金を調達している。出資元は、ヨーロッパのVC企業Earlybird(アーリーバード)、Dominik Schiener(ドミニク・シーナー)氏(Iota(アイオータ)の共同創業者)、スウェーデンの認証および決済サービス会社Thales AB(タレスAB)だ。

同社は現在、XayNetテクノロジーをユーザー向け検索アプリに適用することによりXayNetを商品化しようとしている。CEOかつ共同創業者のLeif-Nissen Lundbæk(レイフニッセン・ルンドベーク)博士によると、無料・有料のユーザーを対象とするユビキタスなビデオ会議ツールである「Zoom」のようなビジネスモデルを目指しているとのことだ。

つまり、Xaynの検索エンジンは広告に頼らない。検索結果に広告が表示されないのだ。

その意図は、この消費者向けアプリを、広告を表示するためではなく、同じコアAIテクノロジーを搭載するB2B製品向けのショーケースとして機能させることにある。商用データのプライバシーを損なうことなく、企業・社内検索を高速化することが、企業・公共部門の顧客へのアピールポイントだ。

ルンドベーク氏は、企業は自社のデータに(安全に)適用するための優れた検索ツールを切実に必要としていると主張し、一般的な検索に掛かるコストは、世界的に見ると作業時間のおよそ18%になることが調査からわかったと述べている。同氏はまた、職員が勤務時間の37%を文書やその他のデジタルコンテンツの検索に費やしているとする調査にも言及した。

ルンドベーク氏はまた、「これはGoogleが試みたが成功しなかったビジネスモデルだ」と主張し、「当社は、普通の人々が抱えている問題だけでなく、企業が抱えている問題も解決する。人々や企業にとって、プライバシーはあると嬉しいオプションのようなものではなく、必須事項だ。プライバシーが確保されていなければ、なにも使うことできない」と付け加えた。

消費者側では、アプリ向けにいくつかの有料アドオンも提供されるため、フリーミアムのダウンロード版で提供される予定だ。

スワイプしてアルゴリズムを微調整

注目すべき重要な点は、Xaynが新たにローンチしたウェブ検索アプリでは、閲覧しているコンテンツが自分にとって有用かどうかをユーザーが自分で決められることだ。

これは、ユーザーがパーソナライゼーションアルゴリズムを適切に調整できる、Tinder(ティンダー)スタイルの右スワイプ(または左スワイプ)の仕組みによって実装されている。ホーム画面にニュースコンテンツ(国別にローカライズされる)を表示することはもちろんのこと、検索結果ページも表示できる。

もう1つの注目すべき機能は、ニュースにフォーカスしたホーム画面だ。将来的に、有料ユーザーはホーム画面にさまざまなフィードを表示させることができるようになるかもしれない。

このアプリのもう1つの重要な機能は、検索結果のパーソナライズのオン・オフを完全に切り替えられることだ。右上にある脳の形のアイコンをタップするだけでAIをオフ(またはオン)に切り替えることができる。AIをオフにしていると、検索結果はスワイプできない。ただし検索結果のブックマーク・共有は可能だ。

他にも、このアプリはデフォルト設定で過去7日間の検索結果を一覧表示する履歴ページを備えている。設定を変えれば、「今日」の検索結果、「過去30日間」の検索結果、「すべての履歴」も表示でき、「ごみ箱」ボタンで検索結果を削除することもできる。

また、ブックマーク用のフォルダを作成してアクセスできる「コレクション」機能もある。

検索結果をスクロールしながら、右にスワイプしてブックマークアイコンを選択すると、追加先を選択するプロンプトが表示され、コレクションにアイテムを追加できる。

スワイプ式のインターフェイスは親しみやすく直感的だが、TechCrunchがローンチに先駆けて調査したTestFlightベータ版では、コンテンツの読み込みにわずかな遅れがあった。

コンテンツを左にスワイプすると、警告の 「x」 が付いた明るいピンクのカラーブロックが開く。続けるとスワイプする項目が消える。おそらく今後はそのような項目を目にする機会が少なくなるだろう。

一方、右にスワイプするとコンテンツが有用だと認めたことになる。つまり、そのコンテンツはフィードに残り、Xaynグリーンでアウトライン表示される(右にスワイプすると、ブックマークオプションと共有ボタンも表示される)。

米国のDuckDuckGo(ダックダックゴー)やフランスのQwant(クワント)など、プライバシー重視・非トラッキングの検索エンジンは既に市場に出回っているが、そのようなライバル企業の検索エンジンは、検索結果の関連性と検索にかかる時間という点で、Googleのようなトラッキング検索エンジンで得られるユーザー体験には遠く及ばない傾向にある、とXaynは主張する。

簡単に言うと、求めている具体的な結果を「DuckDuckGo検索」や「Qwant検索」 で得るには、おそらくGoogle検索より多くの時間がかかる、つまり、Web検索時のプライバシー保護に関連する便益コストが発生するということだ。

Xaynの主張によると、「仮想的な隠れみの」を被ったまま(身元を隠したまま)オンライン検索をする第三のスマートな方法がある。この方法では、デバイス上で学習し、プライバシーを保護しながら組み合わせることができるAIモデルを実装する。そうすることで、人々のデータを危険にさらすことなく、結果をパーソナライズできる。

ルンドベーク氏はXaynチームが取り組んでいる、AIを利用した分散型・エッジコンピューティングのアプローチについてこう説明する。 「最も重視するのはプライバシーだ。つまり他のプライバシー対策と同様に、当社は何も追跡せず、何もサーバーに送信しない。もちろん何も保存しないし、何があっても追跡はしない。また、これは言うまでもないが、検索時の接続はどんな場合も基本的に安全性が確保されており、トラッキングを一切許可しない設計になっている」。

オンデバイスでの再ランキング

ルンドベーク氏によると、Xaynは、Microsoft(マイクロソフト)のBing(ビング)を含む(ただしこれに限定されない)数々の検索インデックスソースを利用しており、(独自のウェブクロールボットを持つ)DuckDuckGo(DDG)に「比較的似ている」という。

大きな違いは、Xaynではプライバシーに配慮したパーソナライズされた検索結果を生成するために、独自の再ランキングアルゴリズムも適用していることだ。一方、DDGはコンテクスト広告ベースのビジネスモデルを採用している。このモデルでは、位置情報や検索キーワードなどの単純なシグナルを見て広告のターゲティングを行うため、ユーザーをプロファイリングする必要がない。

ルンドベーク氏によると、この種のアプローチの欠点は、広告がユーザーに押し寄せる可能性があることだ。ターゲティングをよりシンプルにした結果、企業はクリックの機会を増やそうと、より多くの広告を提供する。また、検索結果に大量の広告が表示されたからといって、優れた検索体験を得られないことは明らかだ。

「Xaynではデバイスレベルで多くの結果を得ることができるが、アドホックなインデックス作成も行っており、デバイスレベルとインデックスレベルで検索機能を構築している。このアドホックなインデックスを使用すると、検索アルゴリズムを適用して結果をフィルタリングし、関連性の高いものだけを表示し、それ以外はすべて除外できる。また、基本的に機能は少し落ちます。しかし、当社は最新の機能を常に探究し続けようと努めています。Xaynの検索結果は関連性が著しく高いものではないかもしれません。しかし、ユーザーがフィルターバブルにとらわれて何も見えない状態に陥ることを防止します」。

Xaynは、フェデレーションラーニング(FL)の分野にも取り組んでいる。Googleも近年、FLに取り組んでおり、サードパーティーのトラッキングクッキーを置き換えるための「プライバシー保護」提案を推進している。しかし、Googleがデータ事業に高い関心を示しており、たとえ検索にFLを適用したとしても、Google自体がユーザーデータパイプへのアクセスを単純に遮断するわけではない、とXaynは主張する。

一方、ドイツを拠点とするプライバシー重視の小規模なスタートアップとしてのXaynの関心はまったく異なるところにある。同社が長年にわたって構築してきたプライバシー保護テクノロジーErgoは、人々のデータの保護に重きを置いている、というのがXaynの主張である。

「Googleでは、実際にフェデレーションラーニングに取り組んでいる人の数が当社のチームよりも少ない」とルンドベーク氏は言う。そして「当社はTFF(Googleが設計したTensorFlow Federated)をさんざん批判してきた。TFFはフェデレーションラーニングだが、実際にはまったく暗号化されていない。しかもGoogleのTFFには多くのバックドアがある」と付け加えた。

ルンドベーク氏はさらに次のように説明する。「ユーザーは、GoogleがTFFで実際に何をしたいのかを理解する必要がある。Googleは、トラッキングクッキー、特にユーザーに同意を求めるというような煩わしい処理を置き換えたいと考えている。もちろんGoogleがユーザーのデータを求めていることに変わりはない。Googleは、ユーザーにこれ以上プライバシーを与えたくないのである。そして最終的にはユーザーのデータをもっと簡単に手に入れたいと考えている。純粋なフェデレーションラーニングでは、実際にプライバシーを保護するソリューションを構築することはできない」 。

「プライバシーを保護するには、やるべきことが多くある。純粋なTFFは、確かにプライバシーを保護するものではない。そのためGoogleは、基本的にユーザー体験に関するあらゆることに、例えばCookieなどのテクノロジーを使うことになる。しかし、もしGoogleがCookieを検索に直接使うとしたら、私は非常に驚くだろう。たとえそうなっても、Googleのシステムには多くのバックドアがあるため、実際にはTFFを使用して非常に簡単にデータを取得できる。そのため、TFFはGoogleにとって都合のいい回避策なのである」。

「データは基本的に、Googleの基盤となるビジネスモデルである。Googleが何をするにしても、もちろん正しい方向への良い一歩だと私は確信している。Googleは、度が過ぎない程度に行動するという、非常に賢明な動き方をしていると思う」。

ところで、Xaynの再ランキングアルゴリズムはどのように機能するのだろうか。

アプリはデバイスごとに4つのAIモデルを実行し、それぞれのデバイスの暗号化されたAIモデルを、準同型暗号を使用して非同期に集合モデルに結合する。2番目のステップでは、この集合モデルを個々のデバイスにフィードバックして、提供されたコンテンツをパーソナライズするようだ。

デバイス上で実行される4つのAIモデルはそれぞれ、自然言語処理、関心のグループ化、ドメイン設定の分析、コンテキストの計算を実行する。

「ナレッジは維持管理されるが、データは基本的にデバイスレベルで保持される」と、ルンドベーク氏は説明する。

「スマートフォン上で多種多様なAIモデルをトレーニングすることにより、例えば、このナレッジの一部を組み合わせるかどうか、ナレッジをデバイス上にも維持するかどうか、といった点をを決められるようになる」。

ルンドベーク氏は、「Xaynは4つの異なるAIモデルが連携して動作する非常に複雑なソリューションを開発た」と述べ、このAIモデルでは、各ユーザーの「興味の中心と嫌悪の中心」を、これもまた彼が言うところの「非常に効率的でなければならない」スワイプに基づいて設定できること、そしてAIモデルは基本的に長い時間をかけて、ユーザーの興味に基づいて機能すべきものであることに言及した。

ユーザーがXaynを使えば使うほど、デバイス上での学習の結果、パーソナライゼーションエンジンの精度が増す。さらに、スワイプして好き・嫌いのフィードバックを与えることで、積極的に関与できるユーザーの層が厚くなる。

Xaynのパーソナライゼーションは個人に高度に特化しており、ルンドベーク氏はこれを「ハイパーパーソナライゼーション」と呼んでいる。XaynのパーソナライゼーションはGoogleのような追跡検索エンジンよりも高度である。ルンドベーク氏によると、Googleはユーザー間のパターンを比較し、どの結果を提供するかを判断しているという。Xaynではこのようなことは絶対にない。

ビッグデータではなくスモールデータ

「Xaynは個々のユーザーに集中しなければならないため、ビッグデータの問題ではなく『スモールデータ』の問題を抱えている。そのため、非常に速いスピードで学習しなければならない。8から20のやりとりだけで、ユーザーの多くを理解する必要があるためだ。ここで重要なのは、このような迅速な学習を行う場合には、いつも以上にフィルターバブルに注意を払う必要があるということである。検索エンジンがある種の偏った方向に進むのを防がなければならない」とルンドベーク氏は説明する。

このエコーチャンバーまたはフィルターバブルの影響を避けるために、Xaynチームはエンジンを、切り替え可能な2つの異なるフェーズで機能するように設計した。「探索」と呼ばれるフェーズと「搾取」といういうフェーズだ(「搾取」というのは残念な言い方だが、「エンジンはユーザーに関する何らかの情報を既に持っているため、かなり関連性の高いものを提供できる」という意味である)。

「我々は、常に新しい情報を取り入れ、探求を続けなければならない」とルンドベーク氏は語る。それが4つのAIうちの1つ(コンテキストを計算するための動的コンテキスト多腕バンディット強化学習アルゴリズム)を開発した理由である。

Xaynは、このアプリのインフラストラクチャがユーザーのプライバシーをネイティブに保護するよう設計されていること以外にも、多くの利点があると主張している。たとえば個人から非常に明確な興味の兆候を引き出せたり、追跡サービスのせいでユーザーが委縮する効果(将来の結果に影響を与えることを避けるために、特定の検索を行わないようになる)を回避できることなどがある。

「ユーザーは、スワイプするだけで、もっと詳しい検索結果を表示させるかどうか、つまりアルゴリズムに学習させるかどうかを決めることができる。操作は非常に簡単で、システムを手軽にトレーニングできる」とルンドベーク氏は説明する。

しかし、アルゴリズムが(オンの場合に)デフォルトで何らかの学習を行うと仮定すると(すなわち、ユーザーが好き/嫌いのシグナルを発しない場合)、このアプローチには若干のマイナス面もあるかもしれない。

なぜなら、Xaynから最良の検索結果を得るために、(フィードバックをスワイプして)やりとりするという負荷がユーザーにかかることになるからだ。スワイプはユーザーに対する積極的な要求であり、Webユーザーが慣れ親しんでいる、Googleのようなテック大手が提供する一般的な受動的なバックグラウンドデータマイニングやプロファイリング(プライバシーに関しては恐ろしい機能)とは異なる。

つまり、Xaynアプリを使うため、少なくとも最も関連性の高い結果を引き出すためには「継続的な」 やり取りという形の「コスト」が発生するということだ。例えば、山ほどのオーガニック検索結果がまったく役に立たず、関連性も低い場合に、最後までスクロールしながら見ることはお勧めしない。

Xaynアプリがその利便性を最大化するには、最終的には各項目を慎重に重み付けし、有用性の判定をAIに提供する必要があるだろう(オンラインの利便性に関する競争においては、少しのデジタルフリクションでも足枷になる)。

この点について具体的にルンドベーク氏に尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。「スワイプしなければ、AIは、嫌いなものではなく非常に関心度の低い好みのみに基づいて学習する。そのため、(AIをオンにすると)学習は行われるが、学習量は非常にわずかで、大きな効果はない。これらの条件は非常に動的であるため、ウェブサイトにアクセスした後に何かを気に入ると、その経験からパターンが学習される。また、4つのAIモデルのうち1つだけ(ドメイン学習モデル)が純粋なクリックから学習する。残りの3つのモデルはこの学習は行わない」。

Xaynは、スワイプの仕組みがアプリの操作性を悪くしてしまうリスクを認識しているようだ。ルンドベーク氏によると、チームは将来的に「何らかのゲーミフィケーションの側面」を追加し、スワイプのメカニズムを単なるなフリクションから「何か楽しいこと」へと変えたいと考えている。Xaynが具体的にどんな方法でそれを実現するのかはまだ不明だ。

Xaynの使用には、Googleに比べて少しばかりのタイムラグが伴う。Xaynの場合は、オンデバイスAIのトレーニングを行わなければならないからだ(一方Googleは、ユーザーのデータをクラウドに集め、特注のチップセットを搭載した専用のコンピューティングハードウェアを使って超高速で処理する)。

「当社はこのプロジェクトに1年以上取り組んできました。最も優先してきたのは、Xaynを市場に出すこと、Xaynがユーザーの役に立つことを示すことだった。もちろん、XaynはGoogleよりも遅い」とルンドベーク氏は認めている。

「Googleは、デバイス上の処理を行う必要はない。そればかりか独自のハードウェアまで開発し、さらにこの種のモデルを処理するためにTPUを開発した。この種のハードウェアと比較して考えると、当社がスマートフォンでもXaynのオンデバイスAI処理を提供できたのは素晴らしいことだと思う。もちろんGoogleよりも遅いですが」とルンドベーク氏は続けた。

ルンドベーク氏によると、チームはXaynのスピードアップに取り組んでおり、この種の最適化にさらに注力することで、現在のバージョンよりも40倍高速になり、ユーザーにさらなるメリットがもたらされることを期待しているという。

ルンドベーク氏は次のように説明する。「Xaynが最終的に40倍高速になるわけではない。なぜなら、より広い視野を提供するために、分析するコンテンツが今後さらに増えるためだ。しかし時間の経過とともに速度は向上する」。

検索結果の精度についてGoogleと比較した場合、エッジAIが「スモールデータ」を適切に操作して獲得できる検索結果を考えると、Xaynが、Googleのネットワーク効果の競争上の優位性(より多くのユーザーを擁していることで得られる検索結果の再ランキングのメリット)に太刀打ちできないわけではない。

しかし、繰り返しになるが、今のところは検索のスタンダードであるGoogleの背中を追いかけている状況であることに変わりはない。

他の検索エンジンとのベンチマークの結果について尋ねると、ルンドベーク氏は次のように答えた。「現在当社は、XaynをBingやDuckDuckGoなどと比較しており、明らかに、Googleと比較した場合よりもかなり良い結果を得ている。しかし言うまでもなく、Googleはマーケットリーダーであり、非常に強力なパーソナライゼーションを使用してる」。

「しかし興味深いのは、Googleはパーソナライゼーションだけでなく、ネットワーク効果の一種も利用していることだ。PageRank(ページランク)は正真正銘のネットワーク効果である。PageRankはユーザーが何かをクリックする頻度を追跡し、ユーザーが多ければ結果の精度が向上する」。

「現在、例えば当社が使っているようなAIテクノロジーによって、ネットワーク効果が徐々に重要性を失っている、という興味深い現象が生じている。つまり、純粋なAIテクノロジーと本当に勝負したいのであれば、ネットワーク効果はもはや実質的に存在しないと言える。そのため、当社は今でも、Googleと同程度に関連性の高い結果を得られる。また、やがてはさらに優れた結果や、Googleと競り合える結果を、Googleとは違う方法で得ることができるようになるはずだ」。

ベータ版アプリを(簡単に)テストした際、シンプルな検索では、Xaynの検索結果は大きく期待を裏切るものではなかった(おそらく使用しているうちに改善されるだろう)。ただしこの場合も、通常の検索では、わずかな読み込みの遅れで多少のフリクションが発生することがすぐに明らかになった。

これもアリだろう。検索で期待されるパフォーマンスを実現するのは簡単ではないことに改めて気づくきっかけになる(たとえCookieを使用しないと断言できたとしても)。

競争のチャンスはあるか

「Googleにはこれまで、ネットワーク効果という強みがあったが、このネットワーク効果の優位性が徐々に弱まっており。Googleに代わるものがすでに次々と現れている」とルンドベーク氏は主張し、プライバシーへの懸念が、検索分野における競争を活発化させていることを示唆した。

「Facebookなどのように、誰もが1つのネットワークに所属しなければならないという考え方はもう通用しない。競争は技術革新にとっても、さまざまな顧客のニーズを満たすためにも有益なので、現在の状況は実にすばらしいと思う」とルンドベーク氏は語る。

もちろん、(欧州では90%を超える市場シェアを獲得している)Google検索に対抗しようとする企業の最大の課題は、Googleユーザー(の一部)をいかにして引き抜くかということだ。

ルンドベーク氏は、現時点ではマーケティングに数百万ドル(数億円)を投入する計画はないと言っている。実際、早期利用者の「緊密なコミュニティ」とともに製品を「一歩一歩」進化させていくことを目指しており、プライバシー保護技術分野の他者によるクロスプロモーションや、関連するインフルエンサーへの働きかけにより、持続的に利用を拡大させていきたい、と同氏は述べている。

ルンドベーク氏はまた、主流メディアはプライバシーの話題に興味があるため、ある程度はXaynの製品を後押ししてくれるのではないかと考えている。

「特に今の時代、当社にはとても重要な使命があると思っている。当社は、検索でプライバシー保護を実現できることを自身のためだけに示したいのではなく、どんな場合でもプライバシー保護を実現できるという優れた実例を示したいと考えている」とルンドベーク氏は言う。

「ユーザーのデータを当然のようにすべて取得してプロファイルを作成する、米国のいわゆる『最大手』企業は、ユーザーから必ずしも必要とされているわけではない。一方でユーザーは、小規模で魅力的なプライバシー保護ソリューションを利用できるが、そのようなソリューションはユーザーのデータを使用しない代わりに、ユーザー体験は良くない。だからこそ当社は現状で満足することなく、欧州の価値観に基づいた代替手段の構築を開始すべきだということを示したい」とルンドベーク氏は語る。

確かに最近、EUの議員たちがテクノロジーの主権について熱心に議論しているが、欧州の消費者のほとんどが大規模な(米国の)テクノロジーを受け入れ続けている。

もっと具体的に言えば、欧州地域のデータ保護要件により、米国ベースのサービスを利用してデータの処理を行うことがますます困難になっている。企業が考慮すべきもう1つの要素には、GDPRというデータ保護の枠組みへの準拠がある。そのため「プライバシー保護」テクノロジーに注目が集まっている。

ルンドベーク氏によると、Xaynのチームは、B2B側のビジネスを成長させることで、プライバシー保護の信条を一般ユーザーにも広めたいと考えている。そのため、最新のスマートフォン(および自分のデバイスを職場に持ち込む人々)を原動力としていた企業のコンシューマライゼーションの傾向を少し逆行させる形で、従業員が職場を通して便利なプライベート検索に慣れてくれれば、ある程度、家庭での利用が増えるのではないかと期待している。

「Xaynはこうした戦略をコミュニティ内で着実に実践して、評判を広げることができると思う。そのため、より多くのユーザーを獲得するために、マーケティングキャンペーンに何百万ユーロ(数億円)も費やす必要はない」とルンドベーク氏は付け加えた。

Xaynの市場投入第一弾としてモバイルアプリのリリースを目指してきたが、来年の第1四半期にはデスクトップ版をリリースすることも計画中だ。

課題は、このアプリをブラウザーの拡張機能として使用できるようにすることだ。チームは明らかに、Xaynを動作させる独自のブラウザーを構築することは避けたいと思っている。Google検索との競争は登り甲斐のある山である。Chrome(やFireFoxなど)を目指そうとする必要はない。

「当社は、安全な言語であるRustでAI全体を開発した。そしてセキュリティと安全性を非常に重視している。素晴らしい点は、Xaynは組み込みシステムからモバイルシステムまでどこでも動作することだ。またWebアセンブリにコンパイルできるため、あらゆる種類のブラウザのブラウザ拡張子としても動作する」とルンドベーク氏は語り、「もちろんInternet Explorerは除きますがね」と付け加えた。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:プライバシー 検索エンジン

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