Verdagyの新技術がCO2を排出しない水素製造を加速させる

水素製造の先駆者であるVerdagy(ベルダジー、Verdeは「緑」、agyは「エネルギー」を意味する)は、エネルギー分野の戦略的投資家たちから2500万ドル(約29億円)を調達した。この資金は、複雑で環境に優しいとはいえない水素製造プロセスを、空気中に有害物質を排出しない工業的に拡張可能なソリューションに置き換えるために使用される。

工業用水素を製造する最も一般的な方法(米国で製造される水素の90%以上)は、水蒸気メタン改質(SMR)だ。つまり、メタンガス(CH4)に高圧の水蒸気(H2O)を吹き付けると、化学の神様が働いて大量の水素(ナイス!)とCO2を作り出してくれる。気候変動に関する知識があれば、CO2の排出は避けるべきものであることはご存知だろう。Toyota Mirai(トヨタ・ミライ)Honda Clarity(ホンダ・クラリティ)Hyundai Nexo(ヒュンダイ・ネクソ)のようなしゃれたクルマを、テールパイプからCO2の代わりに水を滴らせながら夕日に向かって走らせれば、独善的な気分になるのも無理はない。しかし、問題はある。その水素がどこから来たのかを知らなければ、CO2はクルマのテールパイプから捨てられる代わりに、どこかの大きな工場で排出されていることに気づいていない可能性があるということだ。おっと、それは困った。もちろん、CO2を回収して再利用する方法もあるが、そもそもCO2を出さない方が望ましいはずだ。そう、やはりそう思うだろう。

もう1つの主な水素の製造方法は、水の分子を分解することだ。水、つまり、H2Oは2つの水素と1つの酸素からできている。もし、この2つの原子を説得して、酸素(高校の生物化学では、酸素は良いものと習っただろう)と水素に平和的に別れさせることができれば、すばらしいことではないだろうか?ひと言でいえば、それがベルダジーのやろうとしていることだ。大型の電解槽に太陽光や風力などの再生可能エネルギーを(理想的に)接続すれば、大量の水素を作り出すことができる。水素燃料電池車のドライバーが「ドヤ顔」をするという、前述の生物学的害悪を除けば、副産物は排出されない。よりクリーンな環境にするという名目のもとであれば、筆者はその危険性を許容してもいい。

同社のイノベーションの核心は、アルカリ水電解(AWE)とプロトン交換膜(PEM)の電気分解プロセスの長所を取り入れながら、それぞれの固有の短所を排除することにある。ベルダジーは、高電流密度と広いダイナミックレンジでの動作を可能とする非常に大きな有効面積のセルを活用した、膜ベースの新しいアプローチを生み出した。それは、セルが最大効率の動作レンジを持ち、もしも大量の電気が余った場合(例えば、ソーラーアレイの発電量が産業用途や電力網で吸収できる量を超えてしまった場合など)、電気分解セルに電気を流して大量の水素を生成し、それを使用したり貯蔵したりすることができるというものだ。

アルカリ水電解(AWE)などでは隔膜を使用しており、使用できる電流密度には物理的な限界がある。当社が行っているセルと似たような素材や構造があるかもしれないが、その場合は隔膜によって高い電流密度での動作が制限される。(プロトン交換膜)PEMは、セルが使用できる有効領域が限られている」とベルダジーのCEOである(マーティ・ニーズ)氏は同社が特許出願している技術の概要を説明する。そして「当社のセルは非常に大きく、当社の技術を再現することは非常に困難だ。セルは単一要素構造をしており、陽極と陰極、そして中央に膜がある。セルの内部構造は、特許出願中の独自のものだ。セルが実際にどのように熱を放散し、気体や液体を循環させ、どのようにセル内の循環フローを管理するか、これが他社との違いだ」と同氏は語る。

支援の申し出が殺到し、2500万ドル(約29億円)を調達した今回のラウンドは、TDK Ventures(TDKベンチャー)主導のもと、多くの投資家が参加した。その中には、2021年ベルダジーがスピンアウトしたChemetry(ケメトリー)にも出資していたKhosla Ventures(コースラ・ベンチャー)も含まれる。その他の投資家としては、石油・ガス大手のShell Ventures(シェル・ベンチャー)、エネルギー・気候変動対策投資会社のDoral Energy-Tech Ventures(ドラルエナジー・テックベンチャー)、シンガポール政府系投資会社のTemasek(テマセク)、資材商品大手のBHP(ビー・エイチ・ピー)、石油・ガス・建設・農業大手のMexichem(メキシケム)の前身であるOrbia(オルビア)などがあり、さらに多くの投資家がいるが、そのうちの何社かはTechCrunchへの掲載を控えた。

ベルダジーがスピンアウトを発表してからわずか数カ月で、これほど豪華な戦略的投資家を集めて2500万ドル(約29億円)の資金を調達できたのは、同社が行っていることの重大さとチームの質の高さを物語っている。同社の新CEOであるマーティ・ニーズ氏は、Ballard Power Systems(バラード・パワー・システムズ、PEM燃料電池を製造)の取締役、および家庭用太陽光発電のパイオニアであるSunPower(サンパワー)のCOOを9年間務め、さらにアルミニウムとシリコンのリサイクル会社であるNuvosil(ヌボシル)の創業者であるなど、すばらしい経歴を誇る。

「TDK」は元々、東京電気化学工業株式会社(Tokyo Electric Chemical Industry Co., Ltd.)の日本名の頭文字をとったものだ。TDKベンチャーズの投資ディレクター、Anil Achyuta(アニル・アチュータ)氏は「(ベルダジーのような)電気化学系の企業に投資しないで、何に投資するのか」とジョークを交えて話す。「当社のビジョンは、TDK株式会社の将来の道筋を示す企業に投資することだ。そして、電気分解、特にグリーン水素のための電気分解は、社内で戦略的に推し進めている重要な分野の1つだ。TDKは世界中に110以上の工場を持っており、それぞれの工場を脱炭素化するだけでも、当社のカーボンフットプリントを減らすことができるため、非常にエキサイティングなことだ。これらの大きな石油化学工場施設や工業用化学施設の脱炭素化を考えるということは、世界の未来に投資するということだ」と同氏は語る。

水素燃料電池車に関する筆者のつまらないジョークはさておき、同社は主に、大規模な工業団地の一部として石油精製、肥料製造、食品加工、金属合金の製造など大規模な水素アプリケーションのために、水素を産業用に使用することを重点に置いているという。水素をオンプレミスで(少なくとも短いパイプラインで供給できる距離で)製造することは、これらすべての産業にとってメリットがある。そしてベルダジーは、現在のほとんどのソリューションよりも小さなカーボンフットプリントとはるかに環境に優しいテクノロジーで水素を製造することを約束している。

画像クレジット:Verdagy

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

水素燃料電池車によるオフロードレース「Extreme H」、2024年より開催予定

2024年には、水素燃料電池自動車を使ったオフロードレースシリーズが始まる見込みだ。この「Extreme H(エクストリームH)」と呼ばれるシリーズは、2021年初開催された電気自動車によるオフロードモータースポーツ「Extreme E(エクストリームE)」の姉妹大会となる。これら2つのシリーズは、同じ場所で、同じ日に、同じフォーマットでレースを開催することになる。シリーズの創設者兼CEOで、Formula E(フォーミュラE)の創設者でもあるAlejandro Agag(アレハンドロ・アガグ)氏によると、主催者は水素の統合に関して、合同レースと完全移行という2つの選択肢を検討しているという。

Extreme Hの競技用車両の開発は現在進行中で、計画では2023年初頭までにプロトタイプが完成することになっている。この車両には、Extreme Eで使用されているものと同じパワートレインとシャシーが使用される予定だが、主な違いは、中心となる動力源が、バッテリーではなく水素燃料電池になることだ。

Extreme Hの主催者によると、この燃料電池には水と太陽光発電で電気分解して作られるグリーン水素が使用されるとのこと。Extreme Eでも同様のプロセスでバッテリーを充電し、レース開催場所のパドックでは、バッテリーとグリーン水素を組み合わせて電力を供給している。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Extreme H

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

現代自動車グループが2028年までに全商用車に水素燃料電池モデルを投入へ

Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)は持続可能性のための最優先エネルギーソリューションとして水素を支持している。今後数年内に展開する新しい燃料電池システムで、韓国の自動車メーカーである現代自動車グループは2028年までに同社の全商用車に水素燃料電池バージョンを提供すると明らかにした。

同グループは米国時間9月7日、同社のHydrogen Waveカンファレンスのライブストリームで水素を活用した未来戦略を発表した。同グループの代表取締役副社長で燃料電池センター責任者のSaehoon Kim(セフン・キム)氏は、2030年までにEV(電気自動車)バッテリーに匹敵するコスト競争力を獲得するのが目標だ、と述べた。

同社はまた、高性能で後輪駆動の水素スポーツカーVision FKの詳細も明らかにした。Vision FKは停止した状態から時速100kmに達するまで4秒もかからない500kWの燃料電池システムを搭載し、航続距離は600kmだ。生産開始時期については明らかにしなかった。

大半の自動車メーカーが乗用車EVと商用車EVの展開を始めているが、水素タイプはまだニッチなマーケットだ。しかし欧州、中国、米国が野心的な二酸化炭素排出削減目標を設定したのに伴い、成長中のマーケットでもある。トヨタ自動車、BMW 、Daimler(ダイムラー)も程度の差こそあれ、EVの開発を続けながら燃料電池テクノロジーを受け入れ始めた。この点において、現代自動車の水素への傾倒はEVへの傾倒を阻んでいない。現在のような気候状況では、あらゆるソリューションが必要だ。最高の燃料が選ばれるといい。

イベントでキム氏はまた、2023年に2種の水素燃料電池パワートレインを立ち上げる、と発表した。同社は2040年までに水素を主流にしたいと考えている。現代自動車の水素燃料スタックの第3世代は、乗用車向けが出力100 kW、商用車向けは200kWとなる。

現代自動車、Kia(起亜自動車)、Genesis(ジェネシス)を傘下にもつ現代自動車グループは現在、燃料電池バス「Elec City Fuel Cellバス」を展開していて、韓国で115台が走っている。また燃料電池トラック「Xcient Hyundai」も展開中で、こちらは45台が2020年スイスで導入された。

現代自動車は燃料電池SUVの「NEXO」を誇っていて、水素で駆動する多目的車両モデルとともに次のモデルを2023年に投入する計画だ。同社はミュンヘンで開催中のIAAモビリティカンファレンスで、大型の燃料電池で走るSUVを2025年以降に発売し、2030年までにさらに4種の商用車を投入する、とも発表した。同社は緊急車両や船舶、貨物トラック、トラム、フォークリフト、その他にも産業で使用される車両など異なるユースケース向けに燃料電池テクノロジーを提供することを目指している。

「燃料電池は水素のメリットをさまざまな分野の世界中の人に届けることができる実証済みのテクノロジーです」とキム氏は述べた。「基本的に燃料電池はエンジンのような発電機です。電気を蓄えるバッテリーとは異なります。燃料電池システムは発電する燃料電池スタック、水素供給システム、空気供給システム、熱管理システムで構成されます。水素と酸素を合わせることで発電し、内燃機関車両のエンジンと似ていますが、二酸化炭素を排出しません」。

同氏は続けて、燃料電池システムが化学反応を通じてエネルギーを生み出し、受動的にエネルギーを蓄えるだけのバッテリーと違って水素燃料が供給される限りエネルギーを生み出し続ける、とも説明した。現代自動車は生産、貯蔵、燃料電池テクノロジー、インフラなど、水素分野で成功するために必要なエコシステムの構築に取り組んでいる、と述べた。インフラの多くは、水を酸素と「グリーン」な水素に分解するためのクリーンパワーを生み出すのに必要な再生可能エネルギーを生産する太陽光と風力の発電施設となる。

独自のR&Dに加えて、現代自動車グループはH2Proのような水素スタートアップにすでに投資していて、政府が協力的で再生可能エネルギーリソースが豊富な国でグリーンな水素インフラを確立する計画も発表している。

この分野における取り組みの多くは、2040年までに二酸化炭素排出レベルを2019年の75%以下に削減し、2045年までにカーボンニュートラルになるという発表に続くものだ。現代自動車グループは全車両の30%が2030年までにゼロエミッションになり、全車両の80%が2040年までにバッテリー電気自動車と燃料電池車になると見込んでいる。

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画像クレジット:Hyundai Motor Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動セミトラックメーカーのNikolaがボッシュと水素燃料電池モジュールの製造で提携

苦境に陥っている電動トラック開発会社のNikola Corp.(ニコラ)は、Bosch(ボッシュ)と水素燃料電池モジュールに関する新たな契約を結んだ。このモジュールは、Nikolaが開発した水素を燃料とする2台のセミトラック、短距離用の「Nikola Tre(ニコラ・トレ)と長距離用スリーパー「Nikola Two(ニコラ・トゥー)」の動力源として使用される。

「今回の発表は、ボッシュとの数年にわたる協力関係の結果です」と、NikolaのMark Russell(マーク・ラッセル)CEOは声明の中で述べている。「現存する最良の選択肢を徹底的に分析した結果、ボッシュとこの戦略的な関係を結ぶことができたことを、私たちは誇りに思います」。

このニュースは、これまで必ずしも順調ではなかった両社の関係に明るい兆しをもたらすものだ。2019年にボッシュは、この水素トラックの新興企業に少なくとも1億ドル(約110億円)を投資したが、翌年には保有する株式を減らしている。ボッシュは2020年、Nikolaの欧州事業に燃料電池を供給することも発表している。

Nikolaは、今回の提携の金銭的条件や燃料電池システムの生産規模に関する詳細を明らかにしなかった。Nikolaはアリゾナ州クーリッジにある同社の施設で、ボッシュからライセンスを受けた水素燃料電池のパワーモジュールを組み立てる。ボッシュはNikolaに、燃料電池スタックや電動エアコンプレッサー、コントロールユニットなどのキーコンポーネントと併せて、完全に組み立て済みのパワーモジュールも供給すると、米国時間9月2日に発表された声明で同社は述べている。パワーモジュールの組み立てをサポートするために、Nikolaは2023年までにアリゾナ州の施設を5万平方フィート(約4650平方メートル)拡張し、最大で50人の従業員を新たに雇用すると述べている。また、このトラックメーカーは、フェニックス近郊にある本社のエンジニアリングおよびテスト施設の拡張も計画している。

Nikolaの広報担当者によると、この新しい契約は、燃料電池システムおよびコンポーネントに関する他社との関係に影響を与えるものではないとのこと。その中には、2020年11月に発表したGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)のHydrotec「ハイドロテック」燃料電池システムに関する拘束力のないMOU(了解覚書)も含まれる。

Nikolaは2020年6月、特別買収目的会社であるVectoIQ Acquisition Corp.(ベクトIQ・アクイジション)との合併により上場を果たした。今月初め、同社は投資家に対し、年内に計画している電動セミトラックの生産台数の見通しを、50~100台から25~50台に減らすと発表したが、同社の幹部は、すでに5台のアルファ版と9台のベータ版を含む14台の試作車を製作したと述べている。

一方、Nikolaの元CEOで創業者のTrevor Milton(トレバー・ミルトン)氏は、証券詐欺と投資家を欺いた罪で裁かれるまで、同氏が所有するユタ州の牧場に居むことを刑事裁判所に約束している。

関連記事:Nikolaが電動セミトラックの納車見通しを下方修正、バラ色とはいえない予測は収益面でも続く
画像クレジット:Nikola Corp.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電動航空機用水素燃料電池システムの開発でHyPointとPiaseckiが提携

電動垂直離着陸機(eVTOL)で高い評価を得ている企業をざっと調べてみると、1つの共通点があることに気づく。それは、すべての企業がバッテリーを動力源とする航空機を開発しているということだ。しかし、リチウムイオン電池ではエネルギー密度に限界があると考え、代わりに水素燃料電池に目を向ける航空機会社も増えている。

そこで注目を浴びているのが、HyPoint(ハイポイント)という企業だ。創設2年目の同社は、ZeroAvia(ゼロアヴィア)をはじめとする多くのeVTOL企業と共同で、空冷式水素燃料電池システムを開発している。空冷式水素燃料電池は、従来の液冷式水素燃料電池と比べると、出力重量比が3倍になるという。そして今、この燃料電池開発会社は、Piasecki Aircraft Corporation(ピアセッキ・エアクラフト・コーポレーション)を新たにパートナー名簿に加えることになった。

両社の協力関係は、水素燃料電池システムの設計と認証に向けて、650万ドル(約7億1300万円)の多段階開発を共同で行うというものだ。この提携により、HyPoint社は、地上試験、デモフライト、認証プロセスのために、650キロワットの水素燃料電池システム5基を提供する。

その目標は、既存のリチウムイオン電池の4倍のエネルギー密度と、既存の水素燃料電池システムの2倍の比出力を持ち、タービン式回転翼機と比較して最大50%の運用コスト削減を実現するシステムを作り上げること。HyPointは3月にこの新技術の試作品を公開している。

画像クレジット:HyPoint

今回の提携により、Piasecki社にはこの技術が独占的にライセンス供与される。同社はこの技術を「PA-890」有人ヘリコプターに使用することを目指しており、これは市場で最初の水素を燃料とするヘリコプターになるという。ハイポイント社は、この燃料電池技術の独占的所有権を維持することになる。

両社は声明の中で、他のeVTOLメーカーにもこのシステムを提供していく考えがあると述べている。「Piasecki社は、Hypoint社とともに、他のeVTOLメーカーを支援する準備ができています」と、HyPointのAlex Ivanenko(アレックス・イワネンコ)CEOは、TechCrunchに語った。

この契約は実現可能性調査から始まったもので、そこでHyPointは、概念実証のために非常に小規模なプロトタイプを製作した。現在、同社は設計段階にあり、単体パワーモジュール(650キロワットのシステムは複数のパワーモジュールで構成される)の製造と、Piaseckiの航空機にシステムを統合するコンセプトに取り組んでいる。単体パワーモジュールは年内に準備が整い、2023年には最初の650キロワットシステムがPiaseckiに納入される予定となっている。商業的に利用可能な製品となるのは、2025年頃になる見込みだ。

画像クレジット:Piasecki Aircraft Corporation

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Hyzon Motorsが水素燃料電池を用いるトラックの販売を開始

水素を動力とする大型トラックの企業Hyzon Motorsの水曜日(米国時間8/11)の発表によると、同社はブランクチェック企業Decarbonization Plus Acquisition Corp.との合併を機に事業を拡大し、まず手始めに同社の最初のトラックをヨーロッパの顧客に販売する。

水曜日に第二四半期の決算報告を行った同社は、合衆国における最初の顧客の試乗を始める準備もしている。

特殊目的買収ファンドとの合併で上場したそのほかの運輸企業と同様、Hyzonにはまだ語るに足る売上はない。むしろHyzonがあてにしているのは、この取引から得られる巨額の資本注入だ。それは5億ドル以上とも言われていて、また受注の増大による上向きのキャッシュフローも期待している。

現状では同社は当四半期に940万ドルの純損失を計上し、それには350万ドルの研究開発費の支出も含まれている。調整後の利払い前税引前償却前利益(EBITDA)は、マイナス910万ドルである。同社の手中には5億1700万ドルのキャッシュがあり、それは追加の株式を売らなくても2024年までにはフリーキャッシュフローに達するに十分な額だ。第二四半期の決算報告でHyzonのCFO、Mark Gordon氏は、そう語った。

Hyzonは水素燃料電池のパワートレインを製造しているだけでなく、水素燃料を生産するハブにも投資している。それはこの技術の普及のために欠かせないインフラストラクチャのための、主要な部位だ。4月に同社は、最大で100の水素生産ハブを目指して、再利用可能燃料の企業Raven SRとのMOUに署名した。Gordon氏は、その最初の2つがベイエリアだと認めた。

関連記事: Hyzon Motorsは水素燃料電池車への意欲に米国の2つの工場を追加

彼によると、同社は年内に85台の燃料電池車を出荷できるので、次の四半期では初めての売上を計上できる。オーダーと契約のMOUは4月の5500万ドルから8300万ドルに増えているが、ただしMOUの多くは非拘束だ。オーストリアの食料品チェーンMRPEISとのトラック70台の契約も、そんな例の一つだ。また顧客の多くは燃料電池車を初めて見る人たちなので、採用にあたっては技術的なハードルもある。

CEOのCraig Knight氏は、決算報告でこう述べている: 「顧客の多くが燃料電池車に初めて触る人たちであり、それを見るのも今後の半年から1年が初めての経験になる。したがってそれは本格的な技術評価過程になり、顧客が自分たちのユースケースにおいて、車の機能性を快適と感じる必要がある」。

トラックの個々の受注台数は比較的少ないが、Knight氏によると納車から車隊の編成と稼働までの時間は、とくにヨーロッパの場合、短くなっているという。ヨーロッパはすでに、水素の可用性が相当大きいからだ。氏は曰く、「初期には、最初の燃料電池トラックを入手し試乗してから、実用車隊を動かすまで12か月から18か月を要した。しかし今では、もっと短いだろう」。

同社は主に、長距離輸送よりも、毎回基地に戻るタイプの運用を考えている。長距離輸送が一般化するためには、水素燃料を補給する広範なネットワークが必要だからだ。合衆国のロジスティクス企業Total Transport Services Inc.による顧客テストでは一日18-20時間という長時間使用を達成したが、その間の燃料補給はカリフォルニア州ウィルミントンの補給ステーションで1回行っただけだ。そこでKnight氏は曰く、「水素の利用の仕方としても優れているし、しかも国中を走り回って水素ステーションを探す面倒を、顧客に課していない」。

関連記事: Founders must learn how to build and maintain circles of trust with investors(未訳、有料記事)

関連記事: What’s fueling hydrogen tech?(未訳、有料記事)

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Hyzon Motors

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GMが排ガスを出さない商用車ラインナップにカーゴバンと中型トラックを追加すると発表

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は、配送業の「始点から終点まで」電動化するために設立した事業部門「BrightDrop(ブライトドロップ)」の商用車ラインナップに、新たに2台のゼロエミッション(無排出ガス)車を追加すると発表した。

1台目はChevrolet(シボレー)ブランドのバッテリー駆動カーゴバンで、人気の高いChevy Express Van(シボレー・エクスプレス・バン)に似たモデルになる予定だ。そして2台目は、Mary Barra(メアリー・バーラ)CEOが「EV用バッテリーのUltium(アルティウム)と水素燃料電池のHydrotec(ハイドロテック)の両方に対応する」と語る中型トラックだ。

GMが乗用車の電動化に多額の投資を行っていることはよく知られているが、それだけでなく、同社は商用車にゼロエミッション技術を導入することにも力を入れている。GMが注力している技術は、バッテリー式電気自動車と、大型車や長距離輸送向けとなる水素燃料電池の両方だ。

GMは2021年1月、トラックメーカーのNavistar(ナビスター)に水素燃料電池ユニット「Hydrotec Fuel Cell Power Cubes」(ハイドロテック・フューエルセル・パワーキューブ)を供給し、2024年に最初の水素燃料電池トラックの販売を開始すると発表した。また、米国の大手鉄道車両メーカーのWabtec(ワブテック)とは、機関車用の水素燃料電池とバッテリーを共同開発する契約を結んでいる。

GMは1月にBrightDropを起ち上げ、FedEx(フェデックス)との契約を皮切りに、電気自動車とコネクテッド技術を含むエコシステムを法人顧客に提供している。

BrightDropは、航続距離250マイル(約400キロメートル)の「EV600」と呼ばれる電動バンと「EP1」と名づけられたポッド型電動パレットという、2つの主要製品からスタートした。当時、BrightDropの幹部は、複数台のEP1電動パレットを輸送する中距離車両や、緊急配送用車両のコンセプトなど、他の製品にも取り組んでいることを示唆していた。

「これらの新型トラックから、BrightDrop、シボレーとGMCのEVピックアップ、そしてWabtecとの機関車や、Navistarとのセミトラックまで含めると、私たちは想像し得るほぼすべての牽引・運搬作業に対応する電動ソリューションを提供することができるようになります」と、バーラ氏は述べている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:GMトラック電気自動車水素燃料電池

画像クレジット:GM

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジャガー・ランドローバーがディフェンダーベースの水素燃料電池EVを開発へ

Jaguar Land Rover(JLR、ジャガー・ランドローバー)は、新型SUVであるDefender(ディフェンダー)をベースにした水素燃料電池車の開発を進めており、2022年にはプロトタイプのテストを開始する予定だ。

Project Zeus(プロジェクト・ゼウス)という名のこのプロトタイプ計画は、2036年までにエグゾーストパイプからの排出ガスをゼロにするというJLRの大きな目標の一部だ。またJLRは、2039年までにサプライチェーン、製品、事業全体での炭素排出量をゼロにすることを約束している。

Project Zeusは、英国政府が出資するAdvanced Propulsion Center(英国の低排出技術推進機構)からも一部資金提供を受けている。また、AVL、Delta Motorsport(デルタ・モータースポーツ)、Marelli Automotive Systems(マレリ・オートモーティブ・システム)、UK Battery Industrialization Center(UKバッテリー・インダストリアライゼーション・センター)とも協力して、プロトタイプの開発を進めている。このテストプログラムは、ランドローバーの顧客が期待する性能や能力(牽引やオフロードなど)を満たす水素パワートレインを、どうすれば開発することができるかを技術者が検討できるようにすることを目的としている。

燃料電池は、水素と酸素を組み合わせて、燃焼することなく電気を作ることができる。この水素から発生した電気は、電気モーターの電力として使われる。一部の自動車メーカーや研究者、政策担当者たちは、水素を燃料とするFCEV(燃料電池車)は、短時間で燃料を補給でき、エネルギー密度が高く、寒冷時にも航続距離が短くならないという特徴から、この技術を支持している。この組み合わせが実現するのは、より長い距離を移動できるEV(電気自動車)だ。

FCEVとも呼ばれる燃料電池車は、燃料補給所(水素ステーション)が少ないこともあり、現在はほとんど市場に出回っていない。トヨタのMIRAI(ミライ)はその少ない例の1つだ。

だが国際エネルギー機関(IEA)のデータや自動車メーカーたちの最近の取り組みを見ると、この状況は変わりつつあるのかもしれない。2021年5月、BMWのOliver Zipse(オリバー・ジプシー)会長は、2022年には水素燃料電池を搭載したX5 SUVを少数生産する予定であると述べている。

世界のFCEVの台数は、2019年には前年の約2倍となる2万5210台になったことがIEAの最新データで明らかになった。2019年には落ち込みがあったものの、販売台数では米国がずっとトップで、それに中国、日本、韓国が続いている。

日本は、2025年までに20万台のFCEVを路上で走らせることを目標としており、インフラ面でもリードしている。日本は2019年の時点で113カ所の水素ステーションを設置しており、これは米国の約2倍の数だ。

ジャガー・ランドローバーの水素・燃料電池部門責任者のRalph Clague(ラルフ・クラグ)氏は、声明の中で次のように述べている「私たちは、水素が輸送業界全体の将来のパワートレイン構成において、果たすべき役割を知っています。また、バッテリー式電気自動車とともに、ジャガー・ランドローバーのワールドクラスの車両ラインアップにふさわしい能力と要件を備えた、エグゾーストパイプ排出ゼロのソリューションを提供していきます」。

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パナソニックが世界で初めて純水素型燃料電池を活用したRE100化ソリューションの実証実験を開始
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カテゴリー:モビリティ
タグ:Jaguar Land RoverEV水素燃料電池水素

画像クレジット:Jaguar Land Rover

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

パナソニックが世界で初めて純水素型燃料電池を活用したRE100化ソリューションの実証実験を開始

パナソニックは5月24日、純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電によるRE100化ソリューションの実証に取り組むと発表した。工場の稼働電力のための自家発電燃料として水素を本格的に採り入れた実証実験としては、世界初の試みとなる。

RE100(Renewable Energy 100%)とは、事業活動の自然エネルギー100%化を推進する国際イニシアティブ。これに加盟するパナソニックは、滋賀県草津市で家庭用燃料電池エネファームを生産する同社工場に、500kWの純水素型燃料電池、約570kWの太陽電池を組み合わせた自家発電設備と、余剰電力を蓄える約1.1MWh(メガワット時)のリチウムイオン蓄電池を備えた大規模な実証施設を設置し、同工場の製造部門の全使用電力をこれでまかなうことにしている。また、これら3つの電池を連携させた最適な電力需給に関する技術開発と検証も行う。

一般に、RE100の実現方法には自家発電と外部調達の2つがあるが、外部調達の主力となるグリーン電力の購入も環境価格証明書の活用も価格が不安定などの短所がある。また自家発電の主力である太陽光発電も、事業に必要な電力を生み出すためには広大な敷地を必要とすることや、天候に左右されるという短所がある。そこでパナソニックは、3つの電池を組み合わせることで、工場の屋上などの限られたスペースでも、高効率で安定的に電力を供給できる方式を考案した。蓄電池を含めることで、需要に応じた適切なパワーマネージメントが可能になり、工場の非稼働日にも発電量を無駄にしないで済む。

この実証でパナソニックは、純水素型燃料電池の運用を含めたエネルギーマネージメントに関するノウハウの蓄積と実績構築、そして事業活動に必要な再生可能電力を自家発電でまかなう「RE100ソリューション」の事業化を目指す。

今回使用する水素は、再生可能エネルギー由来のグリーン水素ではないものの、ゆくゆくは環境価値証書の活用を含む再生可能エネルギーにて生成された水素を使用し、RE100に対応してゆく予定だ。

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