クリエイターが所有するデジタルコミック、ニュースレター、IP管理プラットフォーム「Zestworld」

コミック界はインターネットが誕生して以来、デジタル革命を待ち望んでいたように思われる。2007 年に立ち上げられたComiXology(コミクソロジー)は、コミックスというメディアにそうした動きをもたらすのに最も近い存在であったため、当然ながらAmazon(アマゾン)はこのサービスを買収して台無しにした。その最新の変更はサブスクライバーを置き去りにし、その結果、同ブランドは「統合プロセスはシームレスとは程遠い」と認め、ユーザーからのフィードバックに対応することを約束した。

これはKickstarterが2021年末、ブロックチェーンに関する重大発表の後に受けた反動と似ていなくもない。同サービスは長年クリエイターの間で人気があったが、その層が最近の発表で疎外感を覚えたのだ。最近では、Substack(サブスタック)がコミック分野に参入し、Grant Morrison(グラント・モリソン)やChip Zdarsky(チップ・ズダースキー)などの大物を起用しているが、このサービスにも賛否両論がないわけでもない。

2021年に発表されたZestworldは、独自のカスタムビルドプラットフォームでこの媒体に挑戦しようとしている。コミックメディアに特化して設計されたこのサービスは、すでにReddit(レディット)の共同創業者であるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏やTwitch(ツイッチ)の共同創業者として知られるKevin Lin(ケビン・リン)氏など、著名な支援者を獲得している。

オハニアン氏はリリースで「コミッククリエイターが作品をデジタルで公開し、ファンとつながるための現在の状況はひどいものです」と述べている。「Zestworldは、コミッククリエイターのビジネスとコミュニティのあらゆる側面を1つの集中型プラットフォームに集約し、コミッククリエイターがIPを公開し所有する方法を破壊すると同時に、ファンがまったく新しい方法でクリエイターと直接つながることを可能にしています」。

オハニアン氏とリン氏はともに、General Catalystが主導する937万ドル(約11億3000万円)のシリーズAラウンドに参加した。この資金は、クリエイターにコミックに最適化されたニュースレタープラットフォームとIP管理ツールを提供するという同サービスの計画を実現するために使われる予定だ。もちろん、IPは長い間、主流のコミック業界の飯の種として機能してきた。最高レベルでコミックを売って生計はなんとか立てられるが、正直なところ、この業界で本当に儲かる部分はライセンシングだ。

「クリエイター主導のプラットフォームを見つけることはコミックにおける真のチャレンジであり、Zestworldが提供するものは新鮮で透明性があります」と、この立ち上げに関わった作家の1人であるAlex Segura(アレックス・セグラ)氏は述べている。「Zestworldは、私のようなクリエイターが自分のスケジュールに合わせて作品を公開し、特典やクリエイティブチームと私が読者と交流する方法をカスタマイズできるようにし、プラットフォームを通じて公開するすべての作品の知的財産権を維持することを可能にします。これほどすばらしいことはありません」。

セグラ氏は、Amanda Conner(アマンダ・コナー)氏、Jimmy Palmiotti(ジミー・パルミオッティ)氏、Peter J. Tomasi(ピーター・J・トマシ)氏、Eric Canete(エリック・カネテ)氏、Phil Jimenez(フィル・ヒメネス)氏らとともに同プラットフォームに参加する。その他、コミュニティ管理や「NFT / メタバースイベント」などの機能も約束されている。2022年にサービスを開始するには、それらを抜きにしては語れないからだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

中国で危ぶまれるKindleの将来、Amazon.cnからKindle端末が消える

約9年前に中国でKindle(キンドル)の出荷が始まって以来、電子書籍の巨人は同国で忠実なファンを獲得してきた。だが、デジタルコンテンツに関する規制のため、その道のりは決して平坦ではなかった。最近、同国におけるAmazon(アマゾン)傘下の電子書籍事業が一部縮小される兆しがある。

Alibaba(アリババ)のオンラインショッピングモールTmall内のKindleの公式ストアが10月に閉鎖された。Kindle中国版は、Amazonの中国向けサイトであるAmazon.cnで現在、在庫なしとなっている。JD.com(JDドットコム)の公式ストアは引き続きオープンしているが、ほとんどの端末がやはり在庫切れとなっている。WeChat(ウィーチャット)の公式ストアでは、まだ一部の機種が販売されている。

Amazonの広報担当者はTechCrunchへの声明で、Kindleの一部のモデルは「現在、中国では売り切れ」だが、消費者は「サードパーティのオンラインおよびオフライン小売店」で購入できると述べた。同社は、Alibabaストアが閉鎖された理由や、中国でKindleの在庫がない理由については言及を避けた。

「我々は中国の消費者への奉仕に専念しています」と広報担当者は述べた。「質の高いカスタマーサービスと保証を提供するというAmazonのコミットメントに変わりはありません」。

TechCrunchはAlibabaとJD.comにコメントを求めている。

国有Beijing News(新京報)の子会社であるBK Economyの記者によるソーシャルメディアへの投稿によると、Amazonは11月に中国でKindleのデバイスチームを解散させたと伝えられている。Amazon China(アマゾン・チャイナ)は、解雇の疑いについてコメントを拒否した。

デバイスチームの解雇は、この電子書籍のローカル版ハードウェアの終わりを意味する。iPhone同様、Kindleは中国版の端末を提供している。機能は米国版と同じだが、中国におけるアフターサービスが付いている。ハードウェア部門の閉鎖は、サードパーティーの業者による中国の消費者への販売が、Kindleの海外モデル輸入に制限されることも意味する。

重要だが難しい市場

2017年の時点で、中国はKindleにとって最大の市場であり、2桁の成長を遂げているとAmazon Devices(アマゾン・デバイス)の上級副社長David Limp(デビッド・リンプ)氏は当時述べている。とはいえ、中国の電子書籍市場は、当初から他の地域とは明らかに異なっていた。

「世界の9割の国のベストセラーリストを見ると、電子書籍は、少なくともリストの上位に関しては、従来型書籍の電子化版と同等です。しかし中国では、従来型書籍は、従来型のテレビや映画などの長編映像コンテンツと同様、その大半が国有出版社やコンテンツハウスから出版され、扱えるテーマに制約があるため、あまりおもしろくありません」と、中国の電子書籍業界のベテランは匿名で述べた。

最近の中国におけるKindleの状況やTmallストアの閉鎖を決定するに至った経緯は不明だ。しかし、Kindleが中国市場に存在していた期間と販売されたハードウェアの量を考えれば、当然、AmazonのKindle電子書籍ストアから従来型電子書籍を購入して読んでいる中国のKindle所有者が依然として多数存在しているはずだ。

Kindleの中国版電子書籍ストアはまだ利用できるため、現在、中国でKindleを所有している人は影響を受けない。中国版はグローバル版とは別物で、英語版の書籍はかなり少ない。

Amazonは長年にわたり、中国で衰退しつつあるいくつかの事業を縮小する一方、芽生えつつある事業は強化してきた。2019年には、中国の買い手と売り手をつなぐオンラインマーケットプレイスを閉鎖した。オンラインマーケットプレイスは、Alibabaのような中国の巨人と競合する事業だった。他方、同国での輸出事業に力を入れ、中国の販売業者が世界中の顧客を見つける手助けをしている。

ロイター通信が2021年12月に、Amazonが中国政府から認可された書籍を掲載するポータルを作成したと報じたことで、同社は批判にさらされている。このプロジェクトは、中国における電子書籍のライセンス問題解決に一役買っていた。

画像クレジット:Amazon

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

米大型書店Barnes & Nobleが新型電子書籍リーダー「Nook GlowLight 4」を発表、約1万7000円

正直にいおう。電子書籍リーダー市場はかつてのようなものではない。Amazon(アマゾン)は長らく市場を支配し、Kobo(コボ)は相変わらず。だが、それでも両者から新しいデバイスが登場すると、いつも予想外の驚きが感じられる。市場の力が画期的なイノベーションを引き起こしているわけではない。

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一方、Barnes & Noble(バーンズ&ノーブル)も、まだコツコツと頑張っている、らしい。実際、同社は先日、2021年2台目となる「Nook(ヌーク)」デバイスを発表したばかりだ。Lenovo(レノボ)がデザインした10インチのタブレット(NOOK 10″ HD Tablet Designed with Lenovo)に加わったのは、2017年に発売された「GlowLight 3(グローライト3)」の後継機種である。

Amazonが待望のUSB-Cポートを「Kindle Paperwhite(キンドル・ペーパーホワイト)」に加えてから1カ月あまり、Barnes & Nobleは「GlowLight 4(グローライト4)」で同じことをやり、さらに内蔵ストレージを8GBから32GBへと4倍に増やした。

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ページめくりの物理的ボタンはそのままだが、ソフトタッチの筐体と同一平面に埋め込まれたことで、少しだけすっきりしたように見える。全体的には先代モデルよりも小さく軽くなっている。とはいえ、来週の発売を前に、同社はまだ、詳細な寸法や重量の数値は明らかにしていないけれど。画面は6インチ、300dpiと、先代モデルと変わらない。バッテリーも同様で、1回の充電で約1カ月間の使用が可能だ。

B&Nが継続的に事業を行っているという事実以外、特に興奮するようなことは何もない。当然ながら、Amazonの製品に代わるものを探している人にとっては、確かに1番の選択だろう。

同社のCEOも妙に元気づいたようで、リリースで次のように述べている。「Barnes & Nobleは現在、当社のNOOK製品群にかなりの投資を行っています。GlowLight 4は、2021年発売される2台目のNOOKデバイスです。私たちはお客様にデバイスの新しいファミリーをお届けすると同時に、今後数カ月から数年の間にNOOKを再活性化していきます。チームは新しいNOOK製品の開発にしっかりと取り組んでおり、私たちは2022年に向けたイノベーションの強力なパイプラインを目にすることができ、大変うれしく思っています」。

そうなのだ。2022年はNOOKの年だ。初めて聞いたかもしれないが。それはともかく、GlowLight 4は12月8日に発売される。価格は150ドル(約1万7000円)。レノボのタブレットより20ドル(約2260円)高い。20ドルのケースも用意されている。新型コロナウイルス流行中には、誰も彼もが「読書をしていた」と主張していたが、それで電子書籍リーダー市場は再び活性化するだろうか?まあ、おそらくそうはならないだろう。しかし、Barnes & Nobleは、今にもそうなりそうでウズウズしているというのであった。

画像クレジット:Barnes & Noble

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】 Kobo SageとLibra 2、デザインが犠牲になっているがディスプレイは向上

Koboは最近2つのeリーダーを発売した。これらのeリーダーには、控えめではあるもののディスプレイ、スタイラス対応、そしてオーディオブックを聞くためのBluetoothなど確かな改善が見られる。しかし、すばらしかったFormaと比べると製造品質の面でやや劣っていると言わざるを得ない。ただ、新しい機能はアップグレードの価値があり、特にLibra 2は魅力的な小型のeリーダーになっている。

今回発売になったのは、FormaとLibra H2Oの後継機種である。私はお気に入りだったBoox Poke 3を壊してしまって以来、毎日Formaにお世話になってきた。2つのリーダーの主な違いはサイズであり、その他の機能はほぼ同じだ。SageLibra 2はそれぞれ260ドル(約2万9000円)と180ドル(約2万円)と安くはないが、 eリーダーを日常的に使用し、オーディオブックやPockerを好む人なら、特にLibra 2は購入を検討する価値があると思う。

最も目立つ新機能はスクリーンで、最新のCarta 1200 eインクディスプレイになっている。どちらのeリーダーも300ppiを備えており、これだけあれば文字の表示は十分シャープだ。FormaをSage(材質が非常に似ているため)と比べると、新しい画面のせいで大きな違いが生まれていることに驚きを感じるほどだ。コントラストが目に見えて向上しており、並べて見るとFormaの字はややグレーで、Sageの字はこれよりずっと濃い。誤解のないように言えば、どちらも素晴らしくはある。しかし、この新しい画面は大きな改善と言えるだろう。

操作については以前のデバイスとほとんど同じだが、内部がアップグレードされたおかげで起動、ナビゲート、デバイスを動かした時の画面の向きの変更をすばやく行うことができる。ページをめくるのにかかる時間は古いデバイスと同じで、2、3ページスキップしたとしても、ほとんど時間はかからない。しかし、本を新しく読み込む時は、古いFormaのほうが早いようだ。これは大きな問題ではないし、iPadのようなスムーズさをこれら(他のeリーダー全般に対しても)に求めるべきではないだろう。

画像クレジット:Kobo

オーディオブックはKoboにとっては新しいものである。今回出た新しいデバイスにはスピーカはないがBluetooth接続があり、オーディオブックを聞くことができるようになっている。Bluetoothを使ったデバイスの同期は他のデバイスを同期させるのと同じくらい簡単で、Koboストアの本(現在のところは、自分の本は読む込むことができない)をちょっと聞いてみたところ、ほぼ期待どおりだった。スピードアップ、スピードダウン、再生、前へのスキップ、後ろへのスキップも可能で、接続を切ったり、シャットダウンした場合でも、再度接続した時に、元いたカ所から音声を聞くことができる。加速再生で生じるごくあたりまえのわずかな問題を除けば、音声の質も良かった。

関連記事:【レビュー】大型化し手書きメモもできる電子書籍リーダー「Kobo Elipsa」

このサイズのデバイスでスタイラスを使用するのは、私には実用的に思えないが、編集者や本に印を付けるのが好きな人には、確かに役に立つかもしれない。Elipsaでの使い勝手はどうだったかというと……まあ使える感じではあった。ファンシーと言えるようなものではなく、ただ直接本や書類に印をつけるいくつかの方法というのに過ぎない。後で参照できるようメモにシンボルや注釈ベースの表記法が追加できれば便利だが(ソニーの星のように)、これはまだ始まったばかりの機能である。いずれにせよ、スタイラスは問題なく使える。しかし、しまう場所がないので、すぐに紛失してしまう恐れがある。

画像クレジット:Kobo

どちらのデバイスも、それぞれの先行デバイスより厚みが増しているが、これは、新しいハードウェアとスタイラス検出レイヤーが組み込まれているためと思われる。私の意見では、これは改善ではない。これらのデバイスはFormaよりも安っぽく、LibraH20より程度は低いと感じられる。外見も、Formaを気の利いたものにしていた思い切った角度や溝を取り払ってしまったこともあり、工夫を凝らした造形というよりは、成形プラスチックのように見える。そもそも先行デバイスも軽量機種ではなかったが、新しいリーダーは更に重くなっている。

今まで、Koboのボタンが優秀なものだったことは一度もなかったが、今回も例外ではない。特にSageのページめくりボタンは柔らかく、決定力に欠ける。その埋め込み式の電源ボタンは、Formaの側面にあったものよりは改善されているが、それでもすばらしいとは言えない。小さいLibra2の方のボタンはややクリック感があってよいが、しかし、もっとしっかりしたクリック感があってもよい。

画像クレジット:Kobo

私はこれらの変更をよいとは思わないものの、これらはすべてをぶち壊しにしてしまうようなものではない。しかし、これは明らかに後退といえる部分なので、Koboには次世代のデバイスであのプレミアム感を取り戻してもらいたいと思う。

SleepCover

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

どちらの機種にも推奨されているのが、40ドル(約4600円)のスリープカバーまたはパワーカバーだ。これらの革のような(本当の革か合皮かはわからないが、手触りはよい)二つ折りカバーは、しっかりデバイスに取り付けることができ、他の競合他社の製品と同様、開けたり閉じたりすると、リーダーを起動したり、スリープモードにしたりできる。新しいデバイスのカバーは、折り紙のような折りたたみ式で、デバイスを斜めの角度をつけて立たせることができる。

私はそもそもeリーダーにカバーを付けないで使用する方が好きなので、これらのカバーを好きになるとは思っていなかったのだが、やはりSageの場合、すでに大きめなので、ケースに入れるとさらに大きくなってしまい、好ましいと思わなかった。ケースは少し緩すぎるように感じたし、電源ボタンを覆ってしまっていた。カバーはやや豪華なのだが、 それも良いとは思わなかった。しかし、カバーがなければ、Sageは無防備で精細を欠くように見えた。

けれども、小さめのLibra 2のカバーはかなり良いと思った 。プラスチックっぽいデバイスだがカバーを付けることで、はるかにプレミアム感が出るし、赤い色がとても魅力的である(それに電源ボタンにもアクセスできる)。それだけでなく、カバーは、eリーダーを置くにも立たせるにもとても役に立つ。立たせる時には、ちょうどペーパーバックの前半分を折り返したような形になる。スクリーンが凹型になっているので(私は平らなフラッシュ型が好きだが)汚れも付きずらい。Booxの超コンパクト、超スムーズなデザインが私の好みではあるが、場所の心配をしなくてよいなら、Libra 2のデザインが二番目のお気に入りである。

もう少し値段の高いカバーで「パワーカバー」もある。しかし、お持ちのデバイスがすでに数週間充電なしで行けているなら、なにもパワーカバーによる重さやかさばりを我慢してまで、もう数週間その期間を引き伸ばす必要もないだろう。

私が最終的にお薦めするのは、Sageとパワーカバーは購入しないことである。大型のeリーダーが欲しいなら、ElipsaかreMarkableがよいし、Koboでオーディオブックを聞きたいなら、Libra 2とスリープカバーのセットが良いだろう(これはきっと気に入っていただけるはずだ)。オーディオブックが必要ないなら、 Formaがやっぱりお薦めである。これらのデイバイスとアクセサリーは現在すべて購入できるようになっている。

画像クレジット:Kobo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

地元の独立系書店を支えるBookshop.orgでの売上好調、Amazonとの競う未来を見据える

もしグーテンベルクが生きていたら、多忙なエンジェル投資家になっていただろう。

2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)によるロックダウンの最中に書籍の売り上げが急増したことを受けて、この控えめな書き言葉が突如としてVCや創業者たちの間で脚光を浴びるようになった。アルゴリズムを使ったレコメンデーションエンジンのBingeBooks、ブッククラブスタートアップLiteratiやその名のとおりのBookClub、ストリーミングサービスのLitnerdなど、新規プロダクトや資金調達の途切れのない華麗な行進を私たちは目にしてきた。またGloseLitChartsEpicなども、イグジットを果たしたか、そのポテンシャルを有している。

しかし、多くの読者の想像力を捉えたのはBookshop.orgであり、オンラインストアを構築してAmazonのジャガーノート(絶対的な力)に対抗するための、地元の独立系書店にとって頼りになるプラットフォームとなっている。新型コロナのパンデミックが広がり始めた2020年1月にデビューを果たした同社は、読書エコシステムに深い愛情を持つ勤勉なパブリッシャーである創業者のAndy Hunter(アンディ・ハンター)氏のヘッドラインとプロフィールを急速に蓄積していった。

1年半が過ぎた今、状況はどうなっているだろうか。幸いなことに、書店を含む小売店に顧客が戻ってきているにもかかわらず、Bookshopは低迷していない。ハンター氏によると、8月の売り上げは7月に比べて10%増加しており、2021年は2020年と同程度の売り上げを達成する見込みだという。同氏は5月のBookshopの売り上げが前年同月比で130%増加していることを挙げ、その予測値を説明した。「当社の売り上げは加法的であることが示されています」と同氏は述べている。

Bookshopのプラットフォーム上には現在1100のストアがあり、3万以上のアフィリエイトが本のレコメンデーションをキュレートしている。これらのリストはBookshopのオファリングの中心となっている。「こうしたレコメンデーションリストは、書店だけでなく、文学雑誌、文学団体、本愛好家、図書館員などからも得られています」とハンター氏はいう。

公益法人であるBookshopは、すべてのeコマース事業と同様、在庫を移動することで収益を上げている。しかし差別化要因として、アフィリエイトやプラットフォームセラープログラムに参加している書店への支払いがかなりリベラルであることが挙げられる。アフィリエイトには売り上げの10%が支払われ、書店自身はプラットフォームを通じて得た売り上げからカバー価格の30%を受け取る。さらに、Bookshopのアフィリエイトと直販の10%が利益分配プールに入れられ、それが加盟書店と共有される。同社のウェブサイトによると、Bookshopはローンチ以来、書店に1580万ドル(約17億2700万円)を支払っている。

同社は最初の1年半で多くの開発を行ってきたが、次の展開はどのようなものになるのだろうか。ハンター氏にとって鍵となるのは、可能な限りシンプルな方法で顧客と書店の両方を魅了し続けるプロダクトを構築することだ。「オッカムの剃刀(『必要なしに多くのものを定立してはならない』という原則)を堅持します」と同氏は自身のプロダクト哲学について語っている。すべての機能について「エクスペリエンスへの付加が行われますが、顧客を混乱させることはありません」。

もちろん、言うは易く行うは難しではある。「私にとって目下の課題は、顧客に対して圧倒的な魅力を放ちながら、書店が当社に求めていることすべてを実現するようなプラットフォームを作り、最高のオンライン書籍購入および販売エクスペリエンスを創出することです」とハンター氏。このことが実際的に意味するものとしては、(書店での買い物のような)プロダクトの「人間味」を維持しつつ、書店がオンライン上での優位性を最大化するのを支援する、というものであろう。

Bookshop.orgのCEOで創業者のアンディ・ハンター氏(画像クレジット:Idris Solomon)

例えば、同社は書店と協力して、検索エンジン発見のためのレコメンデーションリストの最適化に努めているとハンター氏は説明する。SEOは、従来の小売業界で身につけるようなスキルではないが、オンラインで競争力を維持する上では欠かせないものだ。「Googleで第1位にランクインするような本のレコメンデーションを生み出すブックリストを当社のストアたちはいまや有しています」と同氏はいう。「2年前であれば、こうしたリンクはすべてAmazonのリンクだったでしょう」。ハンター氏によると、同社はEメールマーケティング、顧客とのコミュニケーション、そしてプラットフォーム上でのコンバージョン率の最適化に関するベストプラクティスも積み重ねているという。

Bookshop.orgは何万ものリストを提供しており、アルゴリズムによるレコメンデーションよりも「人間的」なアプローチで本を探すことができる

顧客に向けては、Bookshopは今後、シリコンバレーのトップ企業の間で人気のアルゴリズムによるレコメンデーションモデルを避け、それよりもはるかに人間味のあるキュレーションのエクスペリエンスを提供しようとしている。何万ものアフィリエイトを擁していることから「活気あふれるミツバチの巣のような一大拠点です【略】本を取り巻く多様なエコシステムを構成する機関や小売業者も存在しています」とハンター氏。「彼らは皆それぞれの個性を持ってますので、それを発揮してもらいたいと考えています」。

やるべきことはたくさんあるが、暗い雲が地平線を脅かさないということでもない。

Amazonはもちろん、同社にとって最大の課題だ。Kindleデバイスの人気は非常に高く、これによりAmazonは物理的な販売では得られない強固な囲い込みを手に入れたとハンター氏は指摘する。「DRMおよびパブリッシャーとの契約がありますので、電子書籍を販売してそれをKindleで読めるようにすることは非常に困難です」と同氏は述べ、その結びつきをMicrosoftがWindowsにInternet Explorerをバンドルしたことになぞらえた。「法廷に持ち込まれることになるでしょう」。人々がKindleを好んでいることは事実だが「Amazonを気に入っているとしても【略】健康的ではないことを認識する必要があると思います」。

著者はハンター氏に、本の分野で資金提供を受けるスタートアップの数や、その資金がBookshopを締め出す可能性について懸念しているかどうかを尋ねた。「ブッククラブスタートアップは、本、そして本に関する会話を最大のオーディエンスの前に置くことで成功を収める」とハンター氏は考えている。「そうすれば誰もが成功するでしょう」。しかし「破壊」へのフォーカスに憂慮を示し「既存の独立系書店やコミュニティのメンバーと提携する形で成功することを願っています」と語った。

結局のところ、ハンター氏の戦略的な懸案事項は競合他社に向けられたものではなく、本が廃れているかどうか(廃れてはいない)という問題でもない。より具体的な課題は、現在のパブリッシングエコシステムが、一握りの本だけが成功することを保証しているという点にある。

「ミッドリスト問題」とも呼ばれるが、ハンター氏は最近の本の大ベストセラー体質を案じている。「1冊の本がほとんどの酸素を吸い取り、話題やトップ20の本の大半を吸い上げてしまう一方、若い作家や多様性のある声による優れた革新的な作品は、それに値する注目を集めることができません」と同氏は述べている。常に読者を最大の勝者に押しつけるレコメンデーションアルゴリズムではなく、リストによる人間的なキュレーションがより活気ある本のエコシステムの維持に役立つことを、Bookshopは期待している。

Bookshopが創業3年目を迎えるにあたり、人間に焦点を当て、店舗での豊富なブラウジングエクスペリエンスをオンラインの世界にもたらしていきたいと、ハンター氏は考えている。究極的には、それは志向性に関するものである。「どこで、どのように買い物をするかについての小さな決断のすべてを伴いながら、私たちは自分たちが生きる未来を創造しているのだということ、そしてそうした決断をどのように熟考するかについて、強く意識し続けるべきだということを、人々に理解してもらいたいと心から願っています」と同氏は語る。「Bookshopが単なる市民的な義務を果たす場所ではなく、楽しく買い物ができる場所であることを私は望んでいます」。

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Kindle Paperwhiteシグニチャーエディション、充実した読書のためのすてきな機能を追加

筆者はiPhoneをワイヤレス充電器から外し、新しいKindleを載せた。正直なところ、こんな一文を書くことになるとは思っていなかった。心が躍らないことはわかっているし、2021年時点では間違いなくそうだ。だが、冷静に考えてみれば、電子書籍リーダーのイノベーションのペースは、他の業界に比べるとまさに氷河の動きなのだ。


理由の1つは、競争相手が減少していることだ。Sony(ソニー)のようなかつての大企業はとうの昔に撤退し、Barnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)は表向きにはまだNook(ヌーク)事業を続けているが、かつての栄光の日々はとっくに終わっている。ビッグプレイヤーといえば、まだ健在のKobo(コボ)と、そしてもちろんAmazon(アマゾン)だ。

現実的に考えて、米国での規模と存在感という点ではAmazonに軍配が上がる。他の分野でもいえることだが、この巨大小売企業がこの分野を支配している。出版業界での圧倒的な存在感と、同社のホームページに持つ世界有数の、オンラインの広告塔が寄与している。そして見逃せないのは、同社が総じて優れた電子書籍端末を製造しているという事実だ。

この分野で競争が少ないということは、メーカー同士の激しい競争は二度と起こらないということでもある。つまり、スマートフォンのような競争、あるいは10年前のような競争は起こらないと思われる。

だからこそ、新しいKindleが登場すると、純粋にワクワクする。このカテゴリーにはまだ生命力があるように感じられる。Kindleは、EchoやFire TVの陰に回って久しいが、良い年には1年に1台のペースで新しいKindleが発表される。

2021年9月末に発表された新しいPaperwhiteは、ハイエンドのOasisとの違いを曖昧にするいくつかの機能、そしていくつかの純粋な驚きをもたらした。その中でも、ワイヤレス充電とUSB-Cは、後者のカテゴリーだ(ただし、いずれも「シグニチャーエディションのみで利用可能な機能。同モデルはスタンダードモデルより50ドル[日本では5000円]高い)。これまで何世代にもわたってmicroUSBを採用してきたこのデバイスの底部に、新たなポートが搭載されているのは、正直なところ、単純に不思議な感じだ。

USB-Cの採用により、充電時間が短縮され、約2.5時間(ワイヤレスの場合は約3.5時間)で本体を充電できる。とはいえ、筆者にとっての最大のメリットは、旅先で持ち歩くケーブルが1本減ることだ。Kindleは、私が普段使っている中で、microUSBを使う最後のデバイスの1つだった。もちろん、バッテリー駆動時間を考えると、その点はもう意味を持たない。新しいPaperwhiteは現在、10週間のバッテリー駆動が可能とされているからだ(ワイヤレスをオフにし、1日30分の読書をした場合)。

従来の6週間からさらに長くなったわけだが、ガジェット用のバッテリーとしては、6週間でも非常に良い。数日や数時間ではなく、数週間使える数少ない消費者向けデバイスの1つだ。このことは、一般的な、ある奇妙な点に光を当てる。こうしたデバイスでアップデートされる機能の多くが、バッテリーと充電に集中しているという事実だ。確かに、Bluetoothオーディオを使ったオーディオブックなどは、通常の読書よりもバッテリーに負担がかかる。

新しいPaperwhiteは、一見すると前世代とほぼ同じように見える。Oasisと同様、平らになったベゼル(ディスプレイを囲む縁の部分)とディスプレイが、すでに強固な躯体に加わる。しかし、250ドル(日本では8GB広告付きで税込2万9980円)のOasisのような高級感はない。Oasisには背面が金属製で物理的なページボタンがついているが、Paperwhiteにはそのような贅沢な部品はない。

興味深いことに、スクリーンに大きな違いはない。どちらも解像度は300ppi(前世代と同じ)で、標準的なKindleの167を大幅に上回った。サイズは6.6インチから新モデルの6.8インチへとわずかに大きくなった。Oasisの7インチよりわずかに小さい。また、両モデルともにIPX8規格の防水機能を備え、プールやバスタブなど水のあるところで読書をしたい人にはうれしい仕様となっている。

フロントライトは、Paperwhiteの17個に対してOasisは25個と、Oasisが勝っている(Paperwhiteの方が画面が小さいということはある)。ライトは均一で、暗いところで読むときにもいい仕事をしてくれる。システムは、2019年のOasisで導入された色調調節機能を備える。睡眠パターンに悪影響を及ぼす可能性のある青い光をスケジュールに沿って減らすものだ。明るさを調整するアンビエントライトセンサーは、シグニチャー・エディションにのみ搭載されている。

搭載されているストレージも標準版のPaperwhiteとシグニチャーエディションの大きな違いで、前者の8GBに対し、後者は32GBと大きい。ワイヤレス充電は、ほとんどの人が電子書籍リーダーを使用する際には不要なものであり、140ドル(日本では1万4980円)と190ドル(日本では1万9980円)の価格差を正当化するほどのものではないと思う。30ドル(日本では3480円)のワイヤレス充電スタンドが別売りであることを考えれば、なおさらだ(筆者のAnkerの充電器は問題なく動作しているため遠慮する)。

概して、歓迎すべき追加機能がたくさんある。2018年版のPaperwhiteを持っている人には、アップグレードする価値がないかもしれないが、充実した電子書籍端末を探している人にはお勧めだ。新機能は、上位モデルのOasisとの境界線を曖昧にした。250ドル(日本では8GB広告付きで2万9980円)のOasisはより高級な外観だが、大多数の読者にとっては新しいPaperwhiteの方がずっと理に適っている。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

Koboが電子書籍リーダーの新モデル2種類発表、Bluetoothヘッドフォンでオーディオブックを聴ける

Koboの新しい電子書籍リーダーとして「Sage」と「Libra 2」の2モデルが登場した。同社電子書籍リーダーのうちサイズが大きめのモデルでおなじみになった左右非対称のデザインで、新たにBluetooth接続でオーディオブックを聴けるようになった。Sageはスタイラスに対応している。従来のモデルでは数週間おきに充電が必要だが、Sageにはバッテリー内蔵のカバーが用意されたため、これを使えば電源に接続するのは数カ月おきで済む。

今回発表された2モデルのうちハイエンドの方がSageで、以前にレビューしたFormaの進化型だ。Formaと同じ8インチ、300 ppiの、色を調整できるスクリーンで、リーディングエクスペリエンスが向上しているようだ。Libra 2はLibra H2Oの後継で(H2Oは終了するが、Libra 2も防水だ)、7インチでライトも同じタイプのディスプレイだ(もっと小さいデバイスを好む人には、今後もClaraが最適だろう)。

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両モデルともBluetoothオーディオに対応し、Koboのオーディオブックをワイヤレスのヘッドセットに送信できる。新機能が追加されるのはいつでも楽しいものだが、Koboがこの機能を自社サービスのみに制限したのはちょっと驚きだ。同社はこれまで他のフォーマットやサービスに対して全般に極めてオープンな姿勢を示し、さまざまなフォーマットのドキュメントをKoboのリーダーで読むことができた。だからKoboのオーディオブックだけという限定的なアプローチには驚きを感じる。他のサービスとの連携(Koboデバイスで人気のPocket連携など)は簡単にできるだろう。どちらも内蔵ストレージは32GBで、このような容量を食う機能にも対応できる。

画像クレジット:Kobo

Koboは10.3インチスクリーンの大型モデルであるElipsaで初めてスタイラスペンに対応したが、Sageもスタイラスペン対応だ。スタイラスペンが便利なのは、画面が大きくなってスケッチをしたりメモをとったりするスペースができたからだ。この便利さがElipsaより小さいSage(とは言っても電子書籍リーダーとしては大きい方だが)に引き継がれるかどうかは予測が難しい。いずれレビューの際に評価したい。

両モデルとも残念ながらサイズと重量はやや増している。FormaとLibra H2Oは「サイドのあご」とも呼ばれるようにベゼルの1辺だけが広くなっているデザインが特徴で、リーダーを片手で持って操作できるようになっている。筆者は基本的には左右対称の方が好きだが、新モデルのフォームファクター(先駆けとなったのはAmazonのOasisだろう)には興味をひかれた。デバイスのスクリーン部分が薄いので未来的に感じられるし、もちろん場所もほとんどとらないからだ。

Sage(上)とForma(下)を横から見たところ。実際には、筆者が前述したほどの違いではないようだ。

新しいSageとLibra 2は、画面部分に薄いカ所がなく全体が同じ厚みになっているのでずっしりとした感じがある。すっきりとしたデザインでおそらく持ちやすいと思われるが、ポケットにおさめるのが難しいことはFormaですでにわかっている。そして両モデルとも約20%重くなっている。厳密には数十グラム、3〜4ミリ増えただけだが、電子書籍リーダーの魅力の1つは薄くて軽いことだ。

ケースを取り付けてしまえば、この違いは大したことではなくなる。Sage用としてスリープカバーが進化してカバーを開け閉めすると自動でデバイスがオン / オフするパワーカバーが登場し、閉まっている間にデバイスを充電できる。もちろん、これを取り付けるとさらに数百グラム重くなるわけだが。

デザインやサイズ、重さが若干変更されたことを辛口に書いてきたが、スクリーンとフロントライトは依然としてクラス最高レベルだし、Koboのソフトウェアは読みやすい。今後レビューする機会を得られたら、旧モデルとの比較を紹介するつもりだ。

Kobo Sageは260ドル(約2万9000円)、Libra 2は180ドル(約2万円)で、10月19日から出荷が開始される(訳注:日本語版記事作成時点で、日本での価格や販売予定は未発表)。

画像クレジット:Kobo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Kaori Koyama)

アマゾンの新Kindle Paperwhiteが大画面、USB-C、ワイヤレス充電を採用

業界のビッグネームたちが大きなイベントを開催して、ハードウェアのシーズンに突入した。Amazon(アマゾン)はすでに多くの新しいFire TV(ファイアTV)を発表しており、1週間後には(おそらくEcho[エコー]に焦点を当てた)大きなイベントを計画している。そうした中でアマゾンは、新しいKindle Paperwhite(キンドル・ペーパーホワイト)の形で、私たちに大きな衝撃をもたらした。

私が「衝撃」だというのは、Kindleハードウェア部門全体が、ここしばらく静かだったからだ。私たちは、Paperwhiteが2018年に最後のメジャーアップグレードを行ったときに「The Voyage(ザ・ボイジャー)は終わったのかもしれないが、Kindleラインにはまだ生き残りがいる」と書いている。なぜなら、現実を直視するなら、専用電子書籍リーダー市場全体が必ずしも活気に満ちてはいないからだ。確かにKobo(コボ)はまだ息をしているが、最近のアマゾンはモノリスのごとく事実上この市場に1人で踏みとどまっている。

画像クレジット:Amazon

しかし、本日のニュースへとつながる、製品ラインのUIアップデートを含むいくつかの噂や、リーク情報があった。その結果、Kindleの中級機としては過去最大のアップデートとなる新型Paperwhiteが登場したのだ。

今回のアップデートの目玉は、待望されていた6インチから6.8インチへのディスプレイの大型化であり、330PPIの画素密度は維持されたままだ。これによって、7インチで300PPIのKindle Oasis(キンドル・オアシス)に近づいている。Oasisと同様に、ベゼルは本体と同じ高さに揃えられているが、フットプリントを維持するために、前世代からは12%削られて10.2mmになっている。

画像クレジット:Amazon

正直なところ、最もエキサイティングなのは、USB-Cによる充電だ。少しバカげているように聞こえるかもしれないが、KindleシリーズはmicroUSBの最後の生き残りであり、私がそのためのケーブルを持ち歩く数少ない理由の1つなのだ。私は、高額なOasisが新しい(というかより新しい)コネクタを採用する最初のデバイスになると思っていたが、そうするためには、アマゾンは新しいOasisをリリースしなければならなかっただろう。

充電はより速くなって、ゼロからフルになるまで2.5時間だ。また、バッテリー自体も改良され、1回の充電で従来の6週間から10週間もつようになった。4週間の違いは大きい。バッテリーに関するもう1つのサプライズは、ワイヤレス充電の登場だ。これは、新しいPaperwhiteシグニチャーエディションに搭載されており、このエディションではストレージも8GBから32GBにアップしている。また、アマゾンは別売り30ドル(日本のストアでは税込3480円)の充電ドックも発売するが、標準的なQiパッドも使えるはずだ。

画像クレジット:Amazon

ディスプレイの最大輝度は10%上昇し、周囲の明るさに応じて輝度を自動調整する機能も搭載した。Oasisと同様に、就寝時間に近づくと暖色系の光に調整され、目を保護する。プロセッサーは前世代から改良されており(現時点では詳細は不明)、ページめくりが20%速くなっているという。このデバイスは、消費者からリサイクルしたプラスチックを60%、再生マグネシウムを70%使用している。

新しいPaperwhiteの価格は、スタンダードが140ドル(日本では税込1万4980円)、シグニチャーエディションが190ドル(日本では税込1万9980円)だ。Kindle Unlimitedが4カ月間無料で利用でき、すでに事前予約可能となっている。また、本機では初となるキッズモデルも予約受付中だ。Kindle Paperwhiteキッズモデルは、子ども向けのカバー、1年間のAmazon Kids+(アマゾン・キッズプラス)がついて、保証は2年間だ。こちらの価格は160ドル(日本では税込1万6980円)だ。

関連記事:米アマゾンがAlexa搭載の初の自社ブランドテレビ2種発売へ

画像クレジット:Amazon

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

アマゾンがようやくKindleソフトウェアを大幅にアップデート、より読書しやすいデザインに

それが「本当の本」なら、アップデートは必要ないし、本を読むソフトウェアも変わる必要がない。しかし、現在、私たちが頼りにしているKindleは、本であるだけでなく、Wi-Fiに接続されるデジタルデバイスであるため、変わることができる。Amazon(アマゾン)は、Kindleが登場してから数年になる米国時間9月13日、初めてとなるその重要な設計変更をようやく発表した。

今回のリニューアルでは、ホーム画面の下部に2つのタブバーを追加され、「ホーム」と「ライブラリ」の画面を簡単に切り替えることができるようになっている。よく使う機能にアクセスするために、Kindleは画面上部に矢印を導入している。この矢印をタップすると、機内モード、Bluetooth、ダークモード、同期、その他の設定メニューにアクセスするためのボタンが表示される。また、明るさを調節するスライダーもある。

画像クレジット:Amazon

Amazonは米国時間9月11日に、アップデートについて数週間後に展開すると通知しているが、特定のモデル、Kindle(8世代以降)、Kindle Paperwhite(7世代以降)、Kindle Oasisユーザーの多くはすでにこのアップグレードをダウンロードしている。自分の機種がよくわからない人は、ここで調べよう。ただし2015年以降に購入したモデルであれば、おそらく大丈夫だ。KindleをWi-Fiに接続しているユーザーはアップデートが自動的にインストールされるが、ここで手作業でダウンロードしてもいい。

同社によると、ホームとライブラリ表示の改良を年内は続けていくとのこと。ホーム画面で左にスワイプすると、ライブラリから最近読んだ本が表示されるようになる。また、ライブラリ画面には、新しいフィルターやソートメニュー、新しいコレクション表示、インタラクティブなスクロールバーが導入される。

画像クレジット:Amazon

これは、Kindleが2016年頃にリリースしてから最大のデザイン的なアップデートになる。もしあなたが今年の夏の読書を終えたときに、ユーザーインターフェースが古くなったと感じていたのであれば、Amazonも同じ気持ちだったということだ。

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画像クレジット:Amazon

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

マーベルの定額コミック読み放題アプリ「Marvel Unlimited」がアップデート

Marvel(マーベル)が定額制コミックアプリ「Marvel Unlimited(マーベル・アンリミテッド)」の新バージョンをリリースした。今回のアップデートでは、スマートフォンやタブレット端末の画面に合わせてデザインされた高解像度の縦型コミック「Infinity Comics(インフィニティ・コミックス)」の配信が始まている。当初は27作品のInfinity Comicsが提供されているが、年内には100作品以上が読めるようになる予定だ。その中には「X-Men Unlimited(エックスメン・アンリミテッド)」「Captain America(キャプテン・アメリカ)」「Black Widow(ブラック・ウィドウ)」「Deadpool(デッドプール)」「Shang-Chi(シャン・チー)」「Venom / Carnage(ヴェノム / カーネイジ)」などのシリーズが含まれる。

すべてが新しく、すべてが違うMarvelUnlimitedを体験せよ。

マーベルコミックを読むために必要なものがすべて揃ったアプリ! マーベル・ユニバースに飛び込むためのアップデートされた機能をご紹介します。

マーベル・エンターテインメント

Disney Media & Entertainment Distribution(ディズニー・メディア&エンターテインメント・ディストリビューション)の協力を得て一から作り直されたこのアプリでは、コミックをオフラインで読むための無制限のダウンロードが可能になり、コンテンツを別の場所で共有することができるようになった。他にもマーベルは、合理化されたデザイン、安定性の向上「クラス最高のスピードと検索ツール」、自分の好みに基づいてカスタマイズされる読書ガイドなどの改良を約束している。また、Marvel Insider(マーベル・インサイダー)のメンバーは、このアプリを利用することでポイントを貯めることもできる。

月額プランは10ドル(約1100円) / 月、標準年間プランは69ドル(約7600円) / 年。年間99ドル(約1万900円)の「アニュアル・プラス」プランは、月額プランや標準年間プランの特典に加え、メンバーシップキット、イベントへの招待、shopDisney(ショップディズニー)での割引などが含まれる。

Marvel Unlimitedには現在、2万9000冊以上のコミックが登録されており、毎週追加されていく。しかし、紙のコミックが店頭に並んでから作品がアプリに反映させるまでには、少なくとも3カ月のギャップがある。

今回のアップデートは、とっくに更新されるべき時期が過ぎたと思われていたアプリにとって、歓迎すべきものだ。Disney+(ディズニープラス)でマーベルの「What If…?(ホワット・イフ…?)」シリーズを観ていて、あるいはMarvel Cinematic Universe(マーベル・シネマティック・ユニバース)で他の作品を観ていて、コミックも読んでみたいと思っていた人は、この機会にMarvel Unlimitedを試してみてはいかがだろうか。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Marvel

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】Booxタブレットは拡大する電子書籍リーダー市場で歓迎される選択肢

電子ペーパーデバイスに関して言えば、Kindleはもちろん人々が最初に思い浮かべるブランドだが、筆者はKoboやreMarkableのゴスペルも広めるよう全力を尽くしてきた。中国の電子書籍端末メーカーBooxは、この分野への比較的新しい参入者であり、そのデバイスは実験的だが、モノクロタブレットというニッチ市場では有用な選択肢だ。実際、筆者のお気に入りの小型デバイスが作られている。

関連記事:あらゆる面で初代を上回りニッチを貫くE Inkタブレット「reMarkable 2」

親会社のOnyxのブランドであるBooxは、ポケットサイズから中型サイズの電子書籍リーダー、A4サイズのタブレットまで、あまりにも幅が広すぎるという人もいるかもしれないが、さまざまなデバイスを提供している。そのブランディングは特に記憶に残るものではなく、わずかにアップデートされたバージョンがかなり定期的に出てくる。筆者が試してみたいと思っていたデバイスが、実際にはこの記事を執筆するまでの間に置き換わっていた。

統合された側面はOSで、Android 10の修正版であり、読み込みと生産性のための専用アプリがいくつか搭載されている。中国の消費者を念頭に置いて作られたこのサービスは、おそらくTechCrunch読者の方でも聞いたことのないものになるだろう。

Booxのいくつかのデバイスを試したが、最もシンプルなのは電子書籍リーダーPoke 3、より大きく複雑なNote 2、そしてスリムなNote Airと巨大なMax Lumiという具合だ。最近筆者は、eインクの最新カラースクリーンKaleido Plusを採用したNova 3 Colorに注目している。

実際には、電源を入れていないと、おそらくこれらのデバイスがすべて同じ会社のものであることはわからないだろう。ハードウェアスタイルはかなり異なるが、もちろん、グレーがかった色味でスクリーンを囲んでいる黒いタブレットには、表現の余地があまりない。

小さいながら大物

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

最もシンプルでなじみのある6インチの電子書籍リーダーから始めよう。このカテゴリーにはKindle PaperwhiteとKobo Clara HDがあり、前者はおそらくAmazonが作っている最高の製品だが、筆者は正直なところ、品質は劣るものの後者の方が好みだ。

この分野でBooxは、(数ある中で)取り立ててキャッチーな名前というほどではないPoke 3を持っているが、フォームファクターでそれを補っている。このような小さなリーダーにとってはかなりプラトン的に理想的だ。とても気に入ったので別のレビューにまとめているが、基本的なことをここで紹介しよう。

6インチ、300ppiのスクリーンはKindleやKoboと同等の品質で、Clara HDと同様にフロントライトの色温度調節が可能だ。デバイスの前面は完全に平らになっており、筆者の好みにぴったり合っている。ベゼルの幅も広すぎず狭すぎず、持ちやすい。ポケットに入れて持ち運べるシームレスなデザインで、粉粒や水こぼれにも強い(耐水性は主張していない)。上部に電源ボタン(ありがとう)、下部にUSB-Cポートが1つある。

ハードウェアに関しては、まったく批判はない。それはもっと薄くなるかもしれないが、その寸法は、人間工学に悪影響を与えることなしにこれより小さくすることはできなかったのだと思う。その厚さを1ミリ削ることも考えられるが、そうしてもほとんど気づかないだろう。

OSはAndroidの高度にカスタマイズされたバージョンで、付属するすべての長所と短所が備わっている。筆者はKoboのインターフェースのシンプルさの恩恵を常に享受してきたが、それを複雑にしようとしているかのようだ。BooxのOSはパワフルだが、入り組み過ぎていて、どのオプションを利用可能にし、ユーザーにとってわかりやすくするかを決めるのが難しい。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

リーダーアプリのNeoReaderは、膨大なファイルフォーマットをサポートしており、ビューの変更、ブックやPDFのハイライトやメモなどを行うための巨大なコントロールセットを備えている。これは、フォントの調整やその他の基本的なことしか必要としない小型のデバイスよりも、大型のデバイスに適している。

すでに自分のコンピューター上に置かれている電子書籍を読むだけなら、デバイスのストレージ上の「Books」フォルダにドラッグするだけで済む。このタブはデバイスの電源を入れると表示され、いつでも簡単にアクセスできる。米国では利用できないが、すべてのタブに対応したビルトインストアがあり、ディレクトリを検索するためのファイルマネージャータブと、アプリと設定のためのタブがある。

アプリは別のカスタム状況だ。これは中国のデバイスであり、最近では何と呼ばれているかはともかく、一般的なGoogle認証のあるアプリストアはない。その代わり、PocketやGoodReader、KoboやKindleアプリなど、最も利用されている多数のリーディングアプリを独自のストアで提供している。しかし、これらは本質的にサイドロードされている。例えば、Kindleアプリは数カ月古い。これは決して大問題というわけではないが、このデバイスをそのまま使うには、Booxとそのプロキシアプリストアにある程度の信頼を置く必要がある。

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もちろん、設定でGoogle Playサービスを有効にすることもでき、そこに公式ストアが追加される。しかしほとんどの人にとって、これはすでに過度の作業だ。私たちは電子書籍リーダーの選択において、一般的にシンプルで極めて簡単に使える、という点で甘やかされていると同時に恵まれていない。Androidに詳しくない人は、このデバイスを使ってKoboやKindle、おそらく後者の中から読むものを選ぶだろう。

それでも思い切った行動を取ることを望む人々にとっては可能性が豊富にある。筆者としては、Poke 3のフォームファクターが非常に気に入っているので、どのOSを使っても構わない。それに、普通は時間の99%が本の中のことに費やされるだろうから、その部分がうまく機能すれば、残りは単にケーキの上にアイシングするようなものである。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

6インチのスケールでは、それはあまりにも多すぎるように思える。ただしBooxの大型デバイスでは、柔軟性はより意味を持ち始める。Note 2(現在は3)、Note Air、Max Lumiのアイデアは、Androidタブレットのほぼすべての機能を、電子ペーパースクリーンの利点とともに提供することだ。そのため、レーシングゲームをするのは簡単ではないが、iPadよりもreMarkableを使っている人にとっては魅力的だろう。

関連記事:色温度を調整可能なE Inkディスプレイ搭載Androidタブ「BOOX Note 2」

多くの文書を読む場合、明るいタブレットスクリーンで読むのは、あるいはもっと言えば暗いスクリーンで読むのはいただけない。電子ペーパーのスクリーンの方が作業には適しているが、それに向けた最良のデバイスであるreMarkableは、会社の哲学全体がフォーカスを中心に回っていることから、達成できることが極めて意図的に制限されている。そのため、電子ペーパーのように読みやすいAndroid端末の機能を求める人がいるのは間違いない。いずれにせよ、Booxはそう考えている。

Note 2とMax Lumiは関連しているように見える。印象的な大きさの目立たない黒いタブレットであり、筆者の限られたハードウェアの探求の中では優れた品質だと思われた。Note Airは特筆すべきものではないと言わざるを得ず、実際にそれを見たとき、reMarkable 2のクローンだと思ってしまった。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

その第一印象は、筆者にとってあまり寛容なものではなかった。この2つはいくつかの重要なデザイン要素を共有しているが、実際にはかなり異なっており、Boox自身の他のデバイスを作る能力が疑わしい点を好意的に解釈するように導いてくれた。青とオレンジのモチーフは秀逸というほどではないが、他のデバイスとの違いを際立たせるのに効果的で、すべてのデバイス(特にAir)は薄くてよくデザインされている。

すべてのタブレットにはフロントライトが搭載されており、このような大きなスクリーンで実現できるかどうかについて懐疑的な見方をしていたが、それは不要なことだった。Poke 3と同様、ライトは明るさと色温度の両方を調節できる(少々微妙ではあるが)。

カラー電子ペーパーは依然として十分とはいえない

画像クレジット:Devin Coldewey

Nova 3 Colorは、eインクの最新カラー電子ペーパー技術を採用した7.8インチスクリーンを搭載している。筆者は常にこの技術の可能性に期待してきたが、カラー電子ペーパースクリーンのコントラストの悪さ、リフレッシュ速度の低さ、ゴーストなどの欠点に悩まされてきた。今回の最新版は、修正に向けてある程度の動きを見せているが(ソフトウェアのアップデートもそれを後押ししている)、残念ながら妥協点は多すぎる。

ハードウェアは他のBooxデバイスと似ており、しっかりしていて控えめだ。違いはすべてスクリーンにあり、デバイスがオフのときでもカラーで表示されている。カラー電子ペーパーは、画像を形成する微小な白黒のビーズと、変更可能なカラーフィルターの層を組み合わせることで機能する。これは他のものと同様にフロントライトが付いていて、色をポップにするのに大いに役立つ。

まだゴーストの問題は残っているが、例えばコミックを読んでいるときは、すべてのページをリフレッシュするように設定することで(ほんの数秒しかかからない)問題は解消される。ウェブページのような動的なコンテンツを使ってこれを行うのは容易なことではないが、もちろん電子リーダー上でウェブをナビゲートすることはすでに目新しいものだ。

カラー電子ペーパーは、コントラストとは言わないまでも彩度が不足している(画像クレジット:Devin Coldewey)

さらに気になるのは、カラーレイヤーがもたらすコントラストの低下と解像度の顕著な低下である。カラーコンテンツを表示すると、通常のLCDエイリアシングとは異なるが、依然として視認可能な明確なスクリーンドア効果が現れる。グレースケールのコンテンツでは、モアレなどの干渉パターンが中間調になることがある。

ブックは問題ないように見えるが、普通のモノクロeインクディスプレイほど鮮明ではないスクリーンドア効果が常に存在し、コントラストが低下している。それでもかなり読みやすいが、安価なデバイスの方がうまく機能するなら、これを正当化するのは難しい。

カラースクリーンのテキストは、モノクロスクリーンのテキストよりも鮮明さとコントラストが低い(画像クレジット:Devin Coldewey)

Booxがeインクの最新スクリーンを提供してくれたことには感謝しているし、電子書籍リーダーにもう少しタブレットのDNAを入れたい人には有益かもしれない(現時点では2つのカテゴリーはあまり区別されていない)。しかし、カラーはほとんどの場合、十分に加算されず、過度に減算されてしまう。

それですべてか、それとも薄く引き伸ばしすぎか

OSは筆者の知る限り、これらすべてで同じだが、これらのデバイスでは単に読むだけでなくインタラクティブ性に焦点が移っている。BooxはWacomのようなペンを作っていて、それを使って大きなタブレットの表面に文字を書くことができるが、reMarkableのような応答性や精度には遠く及ばない。

とはいえ、スケッチやライティングの最終的な仕上がりは満足のいくものだった。ただしOSが追いついてその文字にアンチエイリアスを施すまでには少し時間がかかるだろう。特にブラシについてはグラデーションに優れていると感じた。

Booxタブレットが他の同種のタブレット(つまりreMarkable、旧Sony Digital Paper Tabletおよびその他いくつかのニッチなデバイス)の上に持っているものの1つは、PDF処理に関するものだ。Booxデバイスでは、PDFを簡単にナビゲートしてマークアップすることができ、元のファイルは単に落書きやメモが追加されたような状態で保存される。reMarkableで書類をマークアップするのは簡単だが、やや使いにくいアプリのために共有やソートが少々面倒になっている。筆者は、元のファイル(常にどこかにコピーがある)を修正して、デバイスから直接メールするというシンプルなアプローチを好む。Booxデバイスはまさにそのようなシンプルさだ。

リーダーやノートブックの他にも、タブレットユーザーにとって便利なアプリがいくつか含まれている。期待通りの機能を備えたブラウザがある。Chromiumベースで、レンダリングは良好だが、ゴーストはひどい。そしてボイスレコーダー、ミュージックプレイヤー、カレンダーなど、もちろんGoogleアプリストアやビルトインストアからもダウンロードできるものも他にたくさんある。もし望むのであれば、こうしたとても包括的なデバイスを作ることもできる。

この種の電子ペーパータブレットの市場がどれだけ大きいのか、筆者にはよくわからない。しかし、これらのデバイスは何か興味深くてユニークなものを提供していると感じている、とはいえ、iPadが大型のBooxタブレットの半分の価格で手に入り、ほとんど同じことができる、という事実を回避するのは難しいだろうと思うが。

ただし、これらの電子ペーパーデバイスにはそれなりの魅力があり、長い文書を読んだり、校正したりするつもりなら、いくつかの理由からiPadよりもこれらのデバイスの方が優れている。Booxのラインナップにはこれまで以上に多くの選択肢が用意されており、それは間違いなく良いことである。

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画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

スマートニュース子会社スローニュースがノンフィクション特化のサブスク型サービス「SlowNews」で立花隆作品配信

スマートニュース子会社スローニュースがノンフィクション特化のサブスク型サービス「SlowNews」で立花隆作品配信

スマートニュースの子会社スローニュースは8月16日、ノンフィクションや調査報道に特化したサブスクリプション型サービス「SlowNews」において、2021年4月に亡くなった作家、立花隆の講談社文庫収録作品の配信を開始したことを発表した。配信作品は「田中角栄研究全記録」(上・下)、「日本共産党の研究」(一〜三)、「中核vs革マル」(上・下)、「青春漂流」の計4作品。

スマートニュース子会社スローニュースがノンフィクション特化のサブスク型サービス「SlowNews」で立花隆作品配信

SlowNewsは、国内外のノンフィクションを中心とした作品が月額1650円(税込)のサブスクリプションで読み放題になるサービス。岩波書店、KADOKAWA、講談社、光文社、新潮社、東洋経済新報社、文藝春秋の7社の書籍、270冊以上が読める。この他、The New York Times、ProPublica、The Guardianなどの海外メディアの調査報道や翻訳記事、さらに「調査報道に取り組むジャーナリストへ取材費用の支援などを行う『調査報道支援プログラム』の参加者が提供する記事」もオリジナルコンテンツとして配信されている。このサービスの一部は「調査報道支援プログラム」に使われている。

配信される立花隆作品

  • 田中角栄研究全記録(上)田中角栄研究全記録(下):「文藝春秋」昭和49年(1974年)11月号掲載の「田中角栄研究──その金脈と人脈」から「ロッキード事件」までを収録。首相の座が金で買われ、政治が金で動かされていった戦後保守支配体制下最大の構造的腐敗の暗部を、厖大な取材データの分析で実証する著者執念の記録
  • 日本共産党の研究(一)日本共産党の研究(二)日本共産党の研究(三):戦前の共産党の実態から戦時下の弾圧による党崩壊までの記録した、生きた人間研究としての初の本格的な通史。戦前の共産党の実態はどうだったか。その成立のいきさつ、コミンテルンによる支配、資金の出所、組織、相次ぐ転向者など、戦時下の弾圧による党崩壊までの激動の歴史を実証的に追い、当時の関係者の証言を記録
  • 中核vs革マル(上)中核vs革マル(下):高い理想を掲げた「革命」運動が、両党派間の内ゲバ殺人に転化していった悲惨な歴史のドキュメント
  • 青春漂流:11人の若者と夜を徹して人生について語り合った人間ドキュメント

スローニュースは2019年2月、スマートニュースの子会社として設立。ジャーナリズムの最も重要な役割を担う「調査報道」を次の時代にどのように残すのか、この難題に取り組むべく始動したという。調査報道を継続的に生み出すエコシステムの創出を目指し、SlowNewsを2021年2月にスタートした。

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マンガを独自技術でローカライズし短時間で世界中の読者に配信するシンガポールのINKR

デジタルコミックのプラットフォーム「INKR」のチーム(画像クレジット:INKR)

INKR(インカー)は、独自のローカリゼーション技術を用いることで、クリエイターが文化や言語の壁を越えて世界中の読者にリーチできるデジタルコミックのプラットフォームだ。これまで自己資金のみで運営してきた同社だが、米国時間7月28日、プレシリーズAの資金調達を行い、310万ドル(約3億4000万円)を調達したことを発表した。今回の資金調達はMonk’s Hill Ventures(モンクス・ヒル・ベンチャーズ)が主導し、マンガ配信会社TOKYOPOP(トーキョーポップ)の創業者兼CEOであるStu Levy(ストゥ・レヴィ)氏が参加した。

シンガポールに本社を置き、ホーチミンにもオフィスを構えるINKRは、2019年にKen Luong(ケン・ルオン)氏、Khoa Nguyen(コア・グエン)氏、Hieu Tran(ヒュー・トラン)氏によって設立された。同社によると、2020年10月に運営を開始して以来、月間平均ユーザー数は200%増加しているという。現在はFanFan(ファンファン)、Image Comics(イメージ・コミックス)、Kodansha USA(講談社USA)、Kuaikan(快看)、Mr. Blue(ミスター・ブルー)、SB Creative(SBクリエイティブ)、TOKYOPOP、Toon’s Family(トゥーンズ・ファミリー)など、70以上のコンテンツクリエイターや出版社と提携しており、これまでにマンガ、ウェブトゥーン、グラフィックノベルなど、800以上の作品を読者に提供している。

INKRのルオンCEOは、TechCrunchの取材に対し、このプラットフォームはまず、世界的なトップ出版社の翻訳コミックから力を入れていくものの、2022年には小規模な出版社やインディーズのクリエイターにも開放する計画があると語った。

INKRのプラットフォームの核になっているのは、独自のローカリゼーション技術だ。これによって、異なる市場に向けてコミックを準備するために必要な時間を、数日から数時間に短縮することができるという。

「コミックのローカリゼーションは、単に翻訳するだけではありません。ファイル処理、転写、翻訳、植字、効果音、品質管理など、多くの人が関わる多くの段階が必要な、時間のかかるプロセスです」とルオンCEOは語る。

INKRが配信している作品の一部(画像クレジット:INKR)

漫画の出版には、言語の違いだけでなく、日本の漫画、中国の漫画(manhua)、韓国の漫画(manhwa)、米国のコミックなど、世界各国のコミックスタイルの違いも考慮する必要がある。例えば、漫画には1ページずつレイアウトされているものもあれば、縦にスクロールして読み進めるものもある。左から右へ読む言語もあれば、右から左へ読む言語もある。

ルオン氏によると、INKRが独自に開発したAIエンジン「INKR Comics Vision(インカー・コミックス・ビジョン)」は、テキスト、セリフ、キャラクター、表情、背景、コマなど、コミックページ上のさまざまなフォーマットや要素を認識することができるという。また、人間の翻訳者のためのツール「INKR Localize(インカー・ローカライズ)」は、テキストの書き起こし、語彙の提案、タイプセットなどの作業を自動化することによって、正確な翻訳をより早く提供するために役立つ。

ローカライズ作業は、世界各地の異なる場所にいる人たちのチームによって行われるため、INKRはブラウザベースのコラボレーションソフトウェアを提供している。このプラットフォームは現在、日英、韓英、中英の翻訳に対応しており、今後も言語の追加が予定されている。快看漫画やMr.Blueなどの出版社では、中国語や韓国語で書かれた何千話もの漫画を英語に翻訳するためにINKRを使用している。

INKRはコンテンツ制作者に、広告サポート、購読料、各話ごとの支払いなど、収益化する手段の選択肢をいくつか提供している。ルオン氏によると、同社のプラットフォームはコンテンツを分析し、どの方法が収益を最大化できるかを判断してパブリッシャーに知らせ、得られた収益の一定割合を分配するという。

INKRと競って注目を集めているデジタルコミックプラットフォームには、他にもAmazon(アマゾン)が運営するComixology(コミクソロジー)や、韓国のNaver Corporation(ネイバー株式会社)が運営する出版ポータルのWebtoon(ウェブトゥーン)などがある。

ルオン氏は、INKRの競争力の強みとして、提供するコミックの多様性と価格の手頃さを挙げている。また、同社が起ち上げ前にデータとAIベースの技術に投資したことも、読者と出版社の両方に向けた強みとなっている。これによってユーザーは自分の読書活動に基づいてパーソナライズされた「おすすめ」作品を受け取ることができ、出版社は分析ツールを利用して消費傾向に基づく作品のパフォーマンスを追跡することができる。

Monk’s Hill VenturesのジェネラルパートナーであるJustin Nguyen(ジャスティン・グエン)氏は声明の中で、INKRの「独自のAIを活用したプラットフォームは、デジタル化とグローバル化を必要とするクリエイターやパブリッシャーの痛点に対応できます。多くの言語に、迅速かつ優れたコスト効率でローカライズすることが可能であり、それと同時に、分析ツールやパーソナライズされたインテリジェントなフィードによって、リーチと読者数の向上を支援します。私たちは、世界中の翻訳コミックに対する大きな需要に応えるために、彼らとパートナーシップを組めることを楽しみにしています」と述べている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:INKRデジタルコミック電子書籍ローカライズ翻訳シンガポール資金調達人工知能

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

古いAmazon Kindleはもうすぐ3Gネットワーク接続できなくなる

もしあなたが、3Gインターネット接続のAmazon Kindle(アマゾン・キンドル)のユーザーなら、12月以降はネットワーク経由で新しいコンテンツをダウンロードできなくなる。The Verge(ザ・バージ)の報道によると、Amazonは旧型Kindleの持ち主にメールを送り、通信事業者が2G / 3Gネットワークから4G / 5Gに移行した後、これらの前世代デバイスがインターネットアクセスを失うことを通知した。

eコマースの巨人は、影響を受ける端末の具体的名前を同社のits FAQページに掲載している。第1、第2世代KindleおよびKindle DXは、Wi-Fi機能をもたないためインターネット接続がまったくできなくなると同社は注記している。リストにあるその他の端末、Kindle Keyboard(第3世代)、Kindle Touch(第4世代)、Kindle Paperwhite(第5、第6、第7世代)、Kindle Voyage(第7世代)およびKindle Oasis(第8世代)はいずれもWi-Fi機能を内蔵している。

旧端末上にある書籍を読んだり、有線接続で転送することは今後も可能だ。4GあるいはWi-FiのみのKindleは一切影響を受けない。Amazonはそのメールに、Kindle PaperwhiteまたはOasisの購入に使える50ドル(約5470円)のクーポンと、電子書籍の15ドル(約1640円)のクーポンを載せている。アップグレードを考えていた人はメールボックスを確認するとよいだろう。

編集部注:本稿(原文)の初出はEngadgetに掲載されている。著者のMariella Moon(マリエラ・ムーン)氏はEngadget)の共同編集者。

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾンが購入したトークンで1話ずつ読み進めていく連載小説プラットフォーム「Kindle Vella」を米国で開始

Amazon(アマゾン)は2021年6月に約束したとおり、アプリ内課金で連載小説の各話を読み進めていく「Kindle Vella(キンドル・ヴェラ)」ストアを起ち上げた。この新しいプラットフォームは、読者が新しい小説を発見するための方法であると同時に、作家がKindle Direct Publishing(Kindle ダイレクト・パブリッシング)サービスから収益を得るための新しい方法でもある。

Kindle Vellaは、その名前から想像するのとは違い、アマゾンの電子書籍端末「Kindle(キンドル)」では利用できない。ウェブブラウザでAmazon.comにアクセスするか、KindleのiOSアプリ(Androidアプリは今のところ対応していない)でのみ利用可能だ。当初は、英語で物語を出版している米国在住の作家のみに限定される。

1話(エピソード)あたりの語数は600〜5000語程度で、最初の3話は無料で読むことができる。それ以降の話を読み進めるためには「トークン」を支払わなければならない。トークンの価格は、200トークンで2ドル(約220円)、1700トークンで15ドル(約1650円)。後者で約34本程度のエピソードを読むことができるが、1話を読むために必要なトークンの数は語数によって異なり、語数が多ければ多いほど費用がかかる。

一方、著者は収益の50%と、アプリのソーシャルメディア的な機能による人気度に応じたボーナスを受け取ることができる。読者は作品をフォローして新しいエピソードの公開時に通知を受けたり、気に入ったエピソードに「いいね」をつけたり、その週の好きな作品に「Fave(お気に入り)」を付けたり(トークンを購入して読み進めた作品に限る)、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアで共有したりすることができる。読者とのつながりを高めるために、著者はエピソードの最後に読者に直接語りかけて「ストーリーの洞察や舞台裏のコンテンツを共有することができます」と、アマゾンは書いている。

アマゾンは、3カ月前にVellaを作家たちにオープンして以来「何千人もの作家」が「数十にわたるジャンルで、何万本ものエピソードを」公開しているという。作家たちも興味を持っているようだ。ベストセラー作家のAudrey Carlan(オードリー・カーラン)氏は「私はこれまで30冊近くの小説を出版してきましたが、この新しいフォーマットで『The Marriage Auction(結婚オークション)』を書くという冒険を楽しんでいます」と、声明の中で述べている。このフォーマットが流行るかどうかは読者次第だが、あなたも試しにここからVellaにアクセスしてみてはいかがだろうか。

【編集部注】本記事はEngadgetに掲載されたもの。著者Steve Dent(スティーブ・デント)は、Engadgetの編集者。

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画像クレジット:Amazon

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(文:Steve Dent、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】大型化し手書きメモもできる電子書籍リーダー「Kobo Elipsa」

Kobo ElipsaはAmazonのライバルである電子書籍リーダーの最新モデルで、大型の製品だ。iPadに匹敵する大きさの10.3インチ電子ペーパーディスプレイが採用され、reMarkableやBooxの直接の競合となる。Elipsaは読書がしやすく、メモをとったり絵を描いたりすることができるが、汎用性にはやや欠ける。

Koboはここ数年、高価格帯の市場に少しずつ進出してきた。筆者は低価格のClara HD(税込1万5180円、以下カッコ内は日本での販売価格)が今もおすすめだと考えているが、Forma(税込3万4980円)やLibra H2O(税込2万5080円)はKindleのラインナップのライバルと言える。400ドル(税込4万6990円)のElipsaはサイズ、機能、価格が大きくアップしていて、いずれも妥当だ。ただし気をつけなくてはならない点がいくつかある。

Elipsaはよくできているが派手さはない。FormaとLibraは筐体の1辺のベゼルだけ幅と厚みがあるが、Elipsaでは1辺だけ幅が広く厚みは変わらない。1辺だけが広いデザインは筆者はあまり気にならないし、競合製品の多くも非対称だ(ちなみに筆者のお気に入りはBooxの超小型デバイスでフロントライト付きのPoke 3だ)。

10.3インチディスプレイの解像度は1404×1872で、227dpiだ。300dpiのClaraやFormaよりは低く、注意深く見れば文字のギザギザがわかる。しかしそれがわかるほど近づいて見ることはないだろう。Elipsaはデバイスが大きいので目から離して見るし、おそらく文字サイズも大きくして読むと思われるからだ。筆者は申し分なく読みやすいと感じた。227dpiは最高ではないが、悪くない。

フロントライト内蔵で、画面左側で指先を上下にスライドして簡単に調整できる。しかしKoboの他のデバイスとは異なり、色温度を変えることはできない。筆者は色温度を変えられるデバイスにすっかり慣れて、以前に長年付き合ってきたデフォルトのクールグレイでは快適に感じられなくなってしまった。周囲が暖色系の照明のときは特にそうだ。重要なのは画面全体の明るさが一貫していることと暗く調整できることで、筆者の目はそれで大いに助かっている。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

Elipsaにはアクセサリがいくつか付属していて、それがない状態はちょっと考えづらい。実際「スリープカバー」とスタイラスペンなしでElipsaだけを購入することはできない。カバーとペンが揃って完全なパッケージとなる。かなり重くてかさばるが。Elipsaだけなら標準的なiPadより軽く小さく感じるが、カバーを装着し、驚くほど重いスタイラスペンを収納すると、重くて大きなものになる。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

カバーは、少し硬いかもしれないが良いデザインで、デバイスが壊れないように確実に保護されるだろう。カバーは本体下部に磁石で取り付け、ノートのページをめくるようにデバイスの背面にもっていくと反対側の端も磁石で固定される。カバーの途中の部分を2カ所折ると、折ったところも磁石で固定され、低くてしっかりとした使いやすいスタンドになる。カバーの外側は滑りにくいフェイクレザーで、内側は柔らかいマイクロファイバーになっている。

カバーを開けるとデバイスの電源がオンになり、閉じるとオフになるが、ここでちょっとした問題がある。電源ボタン、充電ポート、幅の広いベゼルがどうしても右側になってしまうのだ。Elipsaからカバーをはずせば、1辺が厚いタイプと同様に好きな向きで置くことができ、コンテンツはそれに応じて即座に回転する。しかしカバーを取り付けるとほぼ右利きモードに固定されてしまう。これが気になることかどうかはわからないが、念のためお伝えしておく。

左がForma、中央がElipsa、右がreMarkable 2(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

上述の点以外は、読書の使い心地はKoboの他のデバイスとほぼ同じだ。最近利用したコンテンツが表示される比較的すっきりとしたインターフェイスでとまどうことはないが、広告は依然としてうんざりするほど多数表示される(「次に読むすばらしい本を見つけよう」のような)。無料や有料の電子書籍がよく表示されるが、そのようなものを大きな画面で読むのはまったく筆者の好みではない。筆者は、画面の大きい電子書籍リーダーは横向きに置いてページを見開き表示できるようにして欲しいと心から願っている。そのほうが本っぽいでしょう?

Pocket経由で同期したウェブの記事は見やすく、この形で読むのは楽しい。オンライン版で読むのに適した雑誌のページのようだ。シンプルで見やすく、よく統合されている。

Kobo初の手書きメモ機能

新機能は「ノート」だ。箇条書き、落書き、授業のメモなどのノートブックを作成し、スタイラスペンを使って書く。

書き心地は十分満足できる。筆者が使い慣れているreMarkable 2はタイムラグの短さと高い精度を誇り、表現力も豊かだ。KoboはreMarkable 2にはまだ届かず、機能は基本的なものでタイムラグが気になるが、精度は高い。

ペン先、線の幅、線の濃さがそれぞれ5種類ずつあり、どれも使いやすい。スタイラスペンは適度な重さがあるが、もっとグリップ感のある素材だと良いと思う。ペンにボタンが2つあり、現在のペンと、ハイライトまたは消しゴムをすばやく切り替えることができる。消しゴムはストロークを消すか、ブラシモードがある。通常のノートには方眼、点線、罫線、無地があり、ページ数は無制限だが、拡大や縮小はできない(絵を描く人には向いていないだろう)。

手書き文字認識などの機能を利用したい場合は「多機能ノート」を作成する。多機能ノートに引かれているガイドラインに従って書き、ダブルタップすると即座にテキストして認識される。多機能ノートの所定のエリアに図を描いたり数式を書いて計算したりすることもできる。

手書きのアップ(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

手書き文字認識は高速でざっと書き留めるには十分だが、そのまま他の人に送れるほどではない。図形のツールも同様で、手書きの図形やラベルをフローチャートのような図に仕上げることができるが、ガタガタした図よりはましではあるもののラフな下書き程度のものだ。よく考えられたショートカットやジェスチャーで余白の追加や削除など頻繁に使う操作ができるようになっていて、Elipsaを使ううちにすぐに慣れることができるだろう。

「スマート」なノートブック上でのページの移動や上下の動きはきびきびとしていているが、iPadのデザインソフトやアート用ソフトの流れるような動きではない。しかしでしゃばった動作ではなく、パームブロッキングも効いていて、アクションは快適だ。書くときのタイムラグは確かに弱点だが、書いた結果が多少雑になっても気にしないのであれば慣れると思う。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

電子書籍をマークアップすることもできる。ハイライトは便利だが、単にテキストを選択するよりもはるかに優れているというわけではない。またスタイラスペンの制限により、周囲の余白には書けない。

メモの書き出しには、DropboxのアカウントをリンクするかUSB接続を利用する。ここでもreMarkableのほうが優位だ。アプリに若干の制限はあるもののリアルタイムで同期されるので、reMarkableのシステム内にある限りはバージョンの違いを気にする必要がない。Koboのほうが方式が古い。

reMarkableとは異なりKoboは日々の読書が簡単にできるプラットフォームなので、読書がメインで落書きやメモをオプションとして考えている人にとっては良い選択だ。一方、スタイラスペンを重視するタブレットでもっと良いものをと考えているなら、他の製品を探した方がいい。文字や図を書くことについては、市場にある他の製品よりもreMarkableのほうが優れている。そしてBooxのタブレットなどと比べると、Elipsaのほうがシンプルで焦点が絞られているが、Androidのアプリやゲームを追加することはできない。

400ドル(税込4万6990円)という価格は、カバーとスタイラスペンがセットになった価格であるとはいえ結構な投資で、間違いなく汎用性が高いデバイスであるiPadとあまり変わらない。しかし筆者はiPadでは記事や書籍をあまり楽しめず、メモをとるときもシンプルな電子書籍リーダーの方が集中できる。電子書籍リーダーは違う目的を持つ違うデバイスであり、万人向けではない。

しかし複雑で高価なオプションもある「大型電子書籍リーダー」の沼に足を踏み入れるなら、現時点ではおそらくElipsaが最適だろう。

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画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Kaori Koyama)