電気自動車の駆動用などで需要が高まるネオジム磁石、NIMSが最小限の実験と機械学習による最適な製作条件の予測に成功

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は11月15日、永久磁石では最強とされる希土類磁石(レアアース磁石)、ネオジム磁石の製作条件を変えて得たデータを機械学習させることで、最小限の実験回数で磁石特性を最大化できることを実証したと発表した

電気自動車の駆動用などで需要が高まっているネオジム磁石だが、原料合金の組成や温度管理など、その製造工程や加工条件は複雑で、用途に合わせた特性を得るには、これらの無数の組み合わせを考慮し、実験を重ねて最適化しなければならない。

NIMSでは、ネオジム磁石の製作条件と特性のデータを機械学習させ、優れた磁気特性が表れると思われる製作条件を予測した。その予測に従い実際に製作したところ、磁石の特性が効率的に最大化できたとのことだ。この機械学習は、18点という少ない初期データからスタートしている。アクティブラーニングによる特性予測と製作実験を繰り返すと、40回ほどの追加実験で磁気特性が大きく向上したという。

今後は、用途に応じて望みどおりの特性を持つネオジム磁石が素早く開発できるよう、合金組成や磁気特性などのデータの蓄積を進め、アクティブラーニングを活用し、製作条件の効率的な予測を可能にする手法の開発を目指すとのことだ。

EVメーカーCanooのバッテリーサプライヤーにパナソニックを選択、施設拡大計画も発表

2020年に上場を果たした電気自動車メーカーのCanoo(カヌー)は米国の施設を拡大中で、Walmart(ウォルマート)で有名なアーカンソー州ベントンビルに本社と別の施設を設置する計画だ。

2021年11月15日に行われた第3四半期決算発表ではまた、パナソニックをバッテリーサプライヤーとすることや他の施設拡大計画についても発表した。施設拡大には、アーカンソー州フェイエットビルでの研究開発センター設立、同社の米国初のオクラホマ工場でのオペレーション拡大などが含まれる。さらに同社は、ライフスタイル車両の生産開始時期を2023年初頭から2022年第4四半期以前に前倒しすることも発表した。

2021年初め、同社は製造に関する2つの発表を行った。同社は、ライフスタイル車両の生産委託先として、オランダのVDL Nedcarを指名した。VDL Nedcarは、Canooが米国にメガマイクロファクトリーを建設している間、米国およびEU市場向けの車両を生産する。Canooはこれまで、VDL Nedcarの工場で2022年に米国および欧州市場向けに最大1000台の生産を想定し、2023年には1万5000台を生産することを目標としていた。CEO兼会長のTony Aquila(トニー・アクイラ)氏は8月に、2023年の生産台数を2万5000台に引き上げた。

Canooは6月、オクラホマ州に最初の工場を建設する計画を発表した。その際、オクラホマ州は、この施設と製造のフェーズ2を支援するために、3億ドル(約342億円)の非希釈型金融インセンティブを約束した。アクイラ氏は11月15日、オクラホマ州がさらに1億ドル(約114億円)のインセンティブを追加し、合計4億ドル(約456億円)としたと発表した。

「我々は引き続き、『Big News or No News』をモットーにしています。ですので、米国での高度な生産を加速させて2022年第4四半期の前に開始します」とアクイラ氏は声明で述べ、施設がある州や大学から約1億ドルの車両注文を目標にしていると付け加えた。

オクラホマ州の工場には今後、研究開発、ソフトウェア開発、カスタマーサポート、ファイナンスの各センターが設置される予定だ。

第3四半期決算は純損失が8090万ドル(約92億円)となり、前年同期の2340万ドル(約26億円)から約4倍に拡大した。

画像クレジット:Canoo

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラがEV充電施設にスターリンク衛星インターネットアンテナを配備

Tesla(テスラ)のEV充電網Supercharger(スーパーチャージャー)で番組をストリーミングで観たいが、Premium Connectivityにはお金を払っていない、という人も絶望しないで欲しい。公式な代替手段があるかもしれない。Electrekによると、Teslaの電気自動車(EV)のオーナーがSuperchargerステーションでStarlink衛星インターネットアンテナを見つけた。その数や、ドライバーがアクセスできるかどうかはまだ明らかになっていないが、少なくともフロリダには配備されている。

Teslaはこの展開についてコメントしておらず、広報チームも解散したとみられている。

SuperchargerでのStarlinkのブロードバンドは、複数の用途が考えられる。少なくとも、支払いや充電器の状態などの基本的な処理を行う既存の接続を代替または補完することができる。実際に活用すれば、Superchargerをより早く、より多くの遠隔地に設置するのにつながるかもしれない。Tesla以外のEVの充電を可能にし、ステーションネットワークの規模を3倍にしたいと考えている同社にとって、これは重要なことだ。

とはいえ、取引を処理するだけならそれほどの帯域幅は必要なく(米国のStarlink接続の中央値は約97Mbps)、TeslaがSupercharger利用者にWi-Fiを提供するために衛星接続を利用しても不思議ではない。通常、車を充電するのにはテレビ番組を見られるほどの時間がかかる。Premium Connectivityをサブスクしたり、携帯電話をホットスポットとして使用したりしなくても、テレビ番組をストリーミングすることができるかもしれない。充電器の使用が多い場合にはネットワークの混雑が問題になるかもしれないが、便利になり、自宅でStarlinkサービスを利用する顧客が増える可能性もある。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Tesla

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンがEVメーカーRivianの株を買い増し

Rivian(リビアン)が新規株式公開の際に提出したForm S-1証券登録届出書には、このEV企業の「礎となる複数の投資家」が、IPO価格で最大50億ドル(約5700億円)相当の同社の株を購入することに「興味を示している」という記述があった。その投資家の中にはAmazon(アマゾン)も含まれていたが、この電子商取引の巨大企業は米国時間11月12日午後にその引き金を引いたようだ。

最近提出されたForm 4書類によると、AmazonはRivianの株式を1株あたり78ドル(約8900円)のIPO価格で約2億ドル(約228億円)分購入したとのこと。この買い付けは、合計で256万4102株となり、目標金額である2億ドルちょうどをほんの少しだけ下回るものだった。

これでAmazonは現在、Rivianの株式を1億5836万3834株所有していることになる。これは同日の終値である1株あたり129.95ドル(約1万4800円)で計算すると、205億7938万228.3ドル(約2兆3446億円)の価値がある。Amazonは今回、Rivianの株式を購入するために、1株あたりわずか78ドルを支払っただけなので、同社はこの買い付けによってすでに1億3300万ドル(151億5000万円)以上のアップサイドを得たことになる。

直近にAmazonがIPO価格で購入したRivianの株は、IPO前に保有していたさまざまな株式やワラントが、上場後にクラスA株に変換されたことを考慮すると、アマゾンが保有するRivianの総株式数のわずか1.6%に過ぎない。IPO前の所有権も含めると、Amazonは現在、Rivianの約22%を所有していることになる。

RivianのIPOは、このEV企業にとって大規模な資金調達となり、その時価総額を成層圏まで押し上げる大成功のイベントとなった。例えば、Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)によると、先週の取引終了時点で、Rivianの時価総額は1270億ドル(約14兆4700億円)を超えている。

第3四半期にRivianが製造した電気自動車の台数がわずか12台であったことを考えると、同社には製造台数あたり100億ドル以上の価値があることになる。今後はこの比率も下がるだろうが、しかしこのことは、Rivianの評価が過去の実績ではなく、いかに将来の成果に基づくものであるかを強調している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EVバッテリー交換ビジネスのAmpleが34.2億円調達、ヨーロッパ進出を目指す

電気自動車のバッテリー交換技術を開発するスタートアップ、Ample(アンプル)は、The Blackstonre Groupとスペインの多国籍金融サービス会社、Banco Santanderから3000万ドル(約34億2000万円)の資金を追加調達した。

サンフランシスコ拠点の同社は、ユニコーンに近い地位にあるはずで、PitchBookによる8月の評価額は8億9000万ドル(約1016億7000万円)だった。ユニコーンとは、評価額10億ドル以上の会社を指す。

本ラウンドの大部分は2500万ドル(約28億6000万円)を出資したThe Blackstone Groupによるもので、残りをBancoが受け持った。Ampleはこれまでに総額2億6000万ドル(約297億円)を調達している。

Ampleのコンセプトは比較的シンプルだ。EVのパワーを蓄えるために充電ステーションに繋ぐ代わりに、AmpleのモジュラーバッテリーパックをEVに装着し、専用ステーションで交換する。

2021年、AmpleはUberと提携して、ベイエリアのいくつかの場所をバッテリー交換ステーションとして使えるようにした。両社はヨーロッパへの拡大にも合意しており、Uberはヨーロッパで7つの首都、ロンドン、アムステルダム、ブリュッセル、ベルリン、パリ、マドリッド、およびリスボンで、2025年までに乗車の半分を電動化する目標を掲げている。

Ampleの共同ファウンダーであるJohn de Souza(ジョン・デ・スーザ)氏はTechCrunch宛の声明で、新たな資金は事業の規模拡大に使うと語った。「近い将来数万台の車両を展開するために、生産、配置、サポートの機能を拡大する必要があります」と同氏は言った。「地理的には2022年、ヨーロッパに進出します。スケーリングの必要性は、市場の要求とCOP 26で明確に強調されたEVへの移行の緊急性の両方によるものです。

Ampleは、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴの各都市にバッテリー交換サービスを展開するために、ニューヨーク市拠点のEVレンタル会社、Sally(サリー)とも提携した。

UberとSallyという最初の2つの提携相手を見ると、EVバッテリーの充電に無駄な時間を費やしている輸送会社に対するAmpleの力の入れ方が反映されている。Ampleはバッテリー交換方式を、個人利用者にとっても優れたソリューションであり、アパート居住者のように信頼できる夜間充電方法をもたない人々には特に有効だと考えている、と以前TechCrunchに語っていた。

画像クレジット:Ample

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォックスコンがLordstownのオハイオ工場を約262億円で買収

電動小型トラックメーカーのLordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)は、オハイオ州ローズタウンにある広さ620万平方フィート(約57万平方メートル)の工場を、Apple(アップル)のiPhoneの製造で知られる台湾のハードウェアメーカーFoxconn(フォックスコン)に正式に売却した。Lordstownの発表によると、この2億3000万ドル(約262億円)の取引は、2022年4月末までに完了する予定だ。

取引の条件は、両社が9月30日に締結した基本合意に沿ったもので、締結後にFoxconnは早速5000万ドル(約57億円)分の普通株を1株あたり6.8983ドル(約787円)でLordstownから直接購入した。Foxconnは11月18日までに1億ドル(約114億円)の頭金を、その後2022年2月と4月に5000万ドル(約57億円)を支払い、4月30日の手続き完了を目指している。

Lordstownの発表文によると、Foxconnは苦境にあるLordstownのピックアップトラック「Endurance」の製造を支援することにも合意した。両社はまた、北米および海外市場向けの商用車プログラムを共同で設計・開発する合弁会社も設立する。最後に、この取引が完了すると、Foxconnは今後3年間、1株あたり10.50ドル(約1200円)でLordstownの普通株式を購入できる170万のワラントを得る。Lordstownは、電気モーターの生産ライン、バッテリーモジュールとバッテリーパックの組み立てラインを維持する。

Foxconnは2021年初め、電気自動車スタートアップのFisker(フィスカー)と、FiskerのPEARプログラムに基づく新型車を北米で共同開発・製造する契約を締結した。その後、Lordstownが2019年にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)から購入したオハイオ州の工場でも、Fiskerの車両を生産することをFoxconnは示唆していた。今回の工場購入により、Foxconnは初の自動車工場を手に入れ、スマホやノートPCの製造以外の分野へ躍進することになる。

調査会社がEVトラックの予約台数を偽装していると告発したことで、米証券取引委員会と米司法省の両方から調査を受けているLordstownは、財政難に加えて、11月10日朝に辞任した社長のRich Schmidt(リッチ・シュミット)氏をはじめとする多くの幹部の逸失に直面している。Foxconnとの取引により、Lordstownは原材料や部品のコストを削減することができそうだ。Foxconnは、生産コストの削減や不安定なサプライチェーンに対応するために必要な強力なサプライチェーンネットワーク、ロジスティック能力、購買力を持っている。また、同社は電気自動車にとって非常に重要な、ソフトウェアとハードウェアの統合のエキスパートでもある。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMがHummer EVをベースにした軍用車両を計画、しかし軍導入の保証なし

Hummer H1は軍用トラックをベースにしていたが、いまGM(ゼネラル・モーターズ)はその恩返しをする準備ができているようだ。GM Defenseの社長Steve duMont(スティーブ・デュモント)氏がCNBCに語ったところによると、同社は間もなく展開されるHummer EVをベースにした軍用車両のプロトタイプの製造を計画している。eLRV(電動軽装甲車)では、Hummerのフレーム、モーター、Ultiumバッテリーを米軍の要件に合わせて改造する。

プロトタイプは2022年中に完成する予定だ。しかし、米軍がこのeLRVを使用するという保証はない。陸軍はまだこのようなEVの可能性を模索しており、もしあればの話だが、GMは(ライバルメーカーとともに)正式な要求を待たなけれなならない。選択は2020年代半ばに行われる見込みだ。

軍用のEVは、少なくとも前線で活躍する車両には物流面での課題がある。まず、戦場で充電ステーションを見つけることはできず、電力網に依存しない輸送可能な充電システムが必要となる。デュモント氏は、GMが燃焼式の充電システムを提供できるかもしれないと述べた。また、気温がEVの航続距離に大きく影響することや、迅速な方向転換や修理のために重要な取り替え可能なバッテリーがまだ初期段階にあることも付け加えたい。

軍のEV導入にはメリットがあるかもしれない。燃焼式充電器の必要性がその利点を部分的に相殺するとしても、全体的な二酸化炭素排出量を改善できそうだ。EVは可動部品が少ないため、一般的にメンテナンスが少なくて済む。また、従来の車両では音が大きすぎるような偵察やステルス任務には、EVの静かな動作が非常に役立つはずだ。課題は、これらの利点を最大限に活用しながら、運用スピードを低下させるような欠点を最小限に抑えることだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Steve Fecht for GM Defense

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

電気自動車メーカーRivianが上場、2021年最大のIPOに

Rivian(リビアン)は米国時間11月10日、上場会社としてデビューした。106.75ドル(約1万2000円)の初値をつけ、同社を取り巻く高揚感は一気に高まった。

これが定着すれば、Rivianの評価額は900億ドル(約10兆2400億円)に達する。初値は、IPO価格の78ドル(約8870円)を37%近く上回った。この絶対的に目を見張る数字は、Rivianを米国史上最大のIPO企業の1つにし、同社の時価総額はGM(ゼネラル・モーターズ)や同社の出資者であるFord(フォード)を上回る。GMの時価総額は863億1000万ドル(約9兆8190億円)、Fordの時価総額は782億ドル(約8兆8990億円)だ。

Rivianの株価は10日午後1時の取引開始後も上昇を続け、119ドル(約1万3500円)の高値をつけた後、112ドル(約1万2700円)ほどまで下落した。

創業者兼CEOのRJ Scaringe(RJ・スカーリンジ)氏には、RivianのIPOが歴史的な規模であることの意味がわかる。しかし、予想されたことかもしれないが、スカーリンジ氏はEVの将来性について強気であり、最近のインタビューで、毎年販売されている9000万台から1億台の自動車は、今後10〜20年の間に電気自動車に移行するだろう、と話している。

「結局、投資家がこの分野に注目するのは、未来がどうなるかを評価するためです。とスカーリンジ氏は話す。「そう遠くない将来、100%が電気自動車になるでしょう」。

また、車両とその発売という点ではRivianは非常に初期段階にあるが、投資家は将来の可能性にも基づいて当社を評価している、と同氏は語る。

「彼らが純粋に今日のP&L(損益計算書)だけで当社を評価しているとしたら、会社のポイントを見逃していると思います。彼らはもちろん、Rivianが時間をかけて達成できると考えているものを見ているのです」と話した。

Rivianが何を達成できるのかは、まだ証明されていない。投資家、顧客、業界関係者はすぐにそれを知ることになる。しかし、同社の将来計画は確かに野心的であり、消費者向けの最初の2つのモデル(ピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」)や、2024年までに10万台の電動商用配送バンを生産するというAmazon(アマゾン)との提携をはるかに超えるものだ。特許文書やスカーリンジ氏のTechCrunchへのコメントによると、Rivianは消費者用および商業用のさまざまな製品を発売する計画だ。

また、Rivianが垂直統合を推進し、長期的には独自のバッテリーセルを開発する計画であることから、投資家は同社が技術的なリーダーとなることに賭けているのかもしれない。

スカーリンジ氏は「我々が中核技術スタックと考えているもの、つまり車両のすべての電子機器、完全なソフトウェアスタック、車両の推進部分を制御し、垂直統合することが本当に重要です。これらの中で最も重要なのは、ソフトウェアと電子機器でしょう」と話した。

ワイルドなIPOの旅

Rivianが2021年10月にIPO申請書を公開して以来、ワイルドな旅が続いていた(IPO申請は8月に内密に行われた)。この申請書は、Rivianの財務状況、リスク、およびチャンスに関する詳細な全体像で、電気自動車の設計、開発、生産、および販売という資本集約的なタスクに取り組むために現金をつぎ込んで状況を示している。

同社は1億3500万株を57~62ドル(約6480〜7050円)で発行することを計画していた。引受人はまた、2025万株まで追加購入できるオプションを持っていた。

投資家の需要が熱狂的だったというのは、2021年の控えめな表現かもしれない。11月9日夜遅くに公開された当局への書類によると、Rivianは目標株価を2回引き上げ、最終的に1株78ドルで新規株式を売りに出しただけでなく、さらに追加で普通株式1億5300万株を加えた。また、Rivianは引受人にさらに2295万株を購入するオプションを与え、この数字は以前の想定よりも多い。

今回のIPOの規模は、大口出資者にもメリットがある。Amazon(アマゾン)は20%、Fordは12%のRivianの株式を保有している。

Rivianの株価が上昇したのには、いくつかの理由がある。例えば、同社はいま、毎年何百万台もの自動車を生産・販売している既存の自動車メーカーよりも評価が高い。

一方、Rivianは収益が少なく、費用が多い。

同社は、イリノイ州ノーマルにある工場をはじめ、複数の施設で数千人の従業員を雇用している。スカーリンジ氏は11月9日夜、現在9000人超の従業員を抱えているとTechCrunchとのインタビューで答えた。

スカーリンジ氏の垂直統合へのこだわりは、研究開発費を押し上げることにもなった(同社は2020年にR&Dに7億6600万ドル=約871億円=を投じた。2021年上半期には、R&Dに6億8300万ドル=約777億円=を費やしている)。

その結果、ピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」の生産準備に伴い、純損失が拡大した。同社は2021年上半期だけで9億9400万ドル(約1130億円)の純損失を計上し、2020年同期に同社が計上した純損失3億7700万ドル(約428億円)の2倍をはるかに超える。

一方で、2021年10月から始まった顧客への「R1T」の納車が本格化するにつれ、売上は徐々に増加している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Rivianはアマゾンとの「独占契約」を超えて他社とのEVデリバリーバンのフリート事業に進出

電気自動車のスタートアップRivianは、Amazon(アマゾン)だけでなく一般に対してもフリート事業を始めることになった。同社はAmazonが20%の株式を保有しているが、その電動デリバリーバンの一般からの受注を2022年に開始し、納車は2023年以降になるとRivianのウェブサイトに登場したページで述べている。

デリバリーバンのAmazonへの10万台の納車とそのための生産は2024年までかかるとされ、2021年内には最初の10台を納車できるだけだ。RivianのIPO関連文書によるとその契約は一般販売契約ではなく独占契約とされているが、新たな情報によると、同社は2024年以前でも一般販売を行なうとなっているため、Amazonとの契約にはやや余裕があるということだろう。この件に関して、AmazonもRivianもコメントはない。

数名のRivian社員が、米国時間11月5日にアップされたウェブページをツイートしている。その中で、顧客は2021年初頭から、Rivianのネット上の構成計画書に記入してオーダーできる、納車はさらにその翌年からとある。

この量産・量販の対象になるのは電動ピックアップR1Tと電動SUV R1Sの量販車であり、これによりRivianが狙っていた一般消費者のドライブだけでなく、より広い層が顧客になり、RivianはFordの全電動ピックアップトラックなどとまともに競合するようになる。後者はすでに、商用車として一般的に発売されている。そのウェブサイトでは、今回のフリートビジネスと関連した他のプロダクトとして、FleetOSと呼ばれる管理プラットフォームや充電のインフラについても触れられている。

Rivian、そしてAmazonは販売網をより大きく広げることによる利益増を狙っている。「私たちの事業における成功は、大量の顧客を吸引し保持することにかかっている。それができなければ、収益を達成できない」とRivianのIPO文書では述べられている。しかしR1Tの生産を開始したばかりのRivianにとって、一般顧客の獲得に関して、リスクと未知数の両方がある。

イリノイ州ノーマルのRivianの工場は現在、年間最大15万台の生産能力がある。その内約6万5000台はR1ピックアップとSUV、8万5000台がRCVと呼ばれる商用のデリバリーバンだ。ただしそれは、Rivianがその生産能力をひと晩で達成できるという意味ではない。IPO文書の修正でRivianは、現在予想される生産能力では、2023年の終わりまでに消化できる受注残はおよそ5万5400台のR1だという。

Rivianのフリートビジネスへの参入は、同社の上場数日前に発表された。RivianはそのIPOで650億ドル(約7兆3360億円)の時価総額を予想されていたが、一部の投資家はそれほど楽観的ではない。フリートビジネスの発表数日前の投資調査ソフトウェア企業New Constructsの記事によると、Rivianの株は過大評価されているので、今週同社が上場しても投資家はそれを買うべきではないという。

「 Rivianはまだ有意な台数を生産していないので、資金状態の良い電気自動車のスタートアップや既存メーカーと競合する立場にない。特にGMやBMWのような競合他社には、EVの生産を拡大することができるだけの数十年におよぶ経験と数十〜数百億ドル(数千億〜数兆円)レベルの資本力がある」と記事にある

そうであるにもかかわらず、多くの投資家はこの新興企業とその将来性に強気だ。今回の最新情報は、これまで懐疑的だった投資家に、Rivianが以前考えられていたよりも柔軟性とパワーがあることを示唆する可能性がある。

画像クレジット:Jordan Stead / Amazon

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(文:Rebecca Bellan, Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

EVトラック開発Nikolaが米証券取引委への制裁金支払いに142億円を準備

EVトラック開発のNikola(ニコラ)は、米証券取引委員会(SEC)と、1億2500万ドル(約142億円)の民事制裁金支払いに関して協議中だと第3四半期決算発表で明らかにした。SECは、同社が投資家をミスリードしたかどうかを調査中で、制裁金はその一環だ。

同社は第3四半期決算発表で、支払いは分割して行う予定であり、解決を見越して資金を確保していたと述べた。

2021年10月にSECとの協議が進んだことを踏まえ、同社は「2021年9月30日において発生済みの偶発債務の最善の見積もりとして、1億2500万ドルの損失を計上した」と決算発表で明らかにした。

一方、苦境に立たされている創業者のTrevor Milton(トレバー・ミルトン)氏は、自身の刑事訴訟の防戦に忙しい。同氏は異なる2件の告発に直面している。1つは証券取引法違反の疑いでSECから、もう1つは証券詐欺2件、通信詐欺1件の刑事訴訟で米連邦検事局からだ。

Nikolaは引き続きミルトン氏の弁護士費用を負担しており、2021年9カ月間で約1260万ドル(約14億円)に上る。同社は同氏に対し「政府および規制当局の調査に関連した費用および損害」の弁済を求めると述べた。9月末時点で、同氏は同社の株式を約16%保有している。

当会計年度は、同社にとって苦難の連続だったと言っても過言ではない。2020年9月にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)と20億ドル(約2240億円)の戦略的提携を発表したときには、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。提携の内容には、当時スタートアップだったNikolaにGMが11%を出資することと、Nikolaの燃料電池トラックの生産条件が含まれていた(この燃料電池トラックはその後つぶれた)。しかし、そのわずか1カ月後、空売り投資家であるHindenburg Research(ヒンデンブルク・リサーチ)の報告を受け、SECが調査を開始した。その後、GMは契約を解消した

SECに1億2500万ドルを支払う決定は、まず規制当局の承認を得なければならない、とNikolaは投資家に述べた。

画像クレジット:Nikola Motor Company

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Fiskerがデビューモデルとなる電動SUV「Ocean」の2022年11月発売を目指す

Fisker(フィスカー)は、米国時間11月3日に行われた第3四半期決算説明会で、電気自動車製造事業の立ち上げについて明るい見通しを示し、Foxconn(フォックスコン)との製造パートナーシップ、中国のバッテリー大手CATLとのバッテリー供給契約の確保、そしてデビューモデルであるSUV「Ocean」の生産準備が順調に進んでいることを強調した。

CEOのHenrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)氏は、2022年11月に自動車製造受託メーカーのMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)と提携してOceanの生産を開始し、同年第1四半期までに1日2台の生産を行うと投資家向け説明会で述べた。また、2022年後半には米国および欧州で納車が始まる見込みだ。

これらの期限を守るために、Fiskerは支出のペースを上げている。直近の四半期では、一般管理費が数百万ドル増の1030万ドル(約11億7000万円)と控えめに増加した一方で(2021年6月30日までの3カ月間では790万ドル=約9億円=だった)、その他の費用は急激に増加した。Fiskerの重要な研究開発項目(同社はまだ自動車を製造・販売する準備をしているため、現在は研究開発モードであることを思い出して欲しい)は、2021年第2四半期の4530万ドル(約51億円)から第3四半期では9930万ドル(約112億円)へと100%以上増加した。この増加は、従業員を増やし、プロトタイプの開発に費用をかけた結果であると幹部は話した。

R&D費の驚くべき増加は、Fiskerがここ数週間で大量の現金を銀行口座に追加した理由を物語っている。車両をマーケットに投入し、最終的にドライバーに届けるには多額の資金が必要だ。

FiskerとCATL

FiskerとCATLのバッテリー契約は大きなニュースだ。中国企業CATLは、2025年まで年間5ギガワット時以上の初期容量を供給し、量を増やすオプションが付いている。Fisker Oceanには2種類のバッテリーパックが用意され、2022年にプロトタイプができる。基本のバッテリーパックには、低コストだがエネルギー密度の低いリン酸鉄リチウム(LFP)を使用する。もう1つのバッテリーには、エネルギー密度が高く航続距離も長いニッケルマンガンコバルト(NMC)を使用するが、それに伴いコストも上昇する。

「これにより、同じような価格帯のSUVでは世界最長の航続距離を実現することができます」とフィスカー氏は話す。2つのバッテリーパックの航続距離に関する詳細は、来週開催されるLAオートショーで明らかにされるという。LFP電池は、Tesla(テスラ)をはじめ、企業の間で低コストの選択肢として普及している。Teslaは、全世界の標準Model 3にLFP電池を採用すると発表した。

「なぜ我々が競合他社に先んじるのでしょうか? 我々は2021年、この技術を採用しました。ですから、12カ月後にFisker Oceanを手に入れたとき、あなたの技術は最新中の最新です。来年、他の車を買うとしたら、その技術はおそらく3年前に選択されたものでしょう」とフィスカー氏は述べた。

また、Fiskerは中国の顧客からの予約を受け付けるために、中国法人を設立している最中だが、来年の初めまでに手続きは完了しない可能性が高いとフィスカー氏は話した。現在、Fiskerに入っている予約の約80〜85%は米国からのものだ。

業績

さて、次は決算を取り上げる。明らかに、収益を上げる前の会社であるFiskerの決算で重要なことは通常の財務情報とは少し異なる。Fiskerが第3四半期の業績を発表した後、同社の株価は時間外取引で1%強上昇している。予想通り、同社の収益はつつましく、赤字だった。

市場では、同社が1株当たり0.35ドル(約39円)の損失を計上すると予想されていた。1株当たり0.37ドル(約42円)の損失は、換算すると約1億980万ドル(約125億円)の純損失に相当する。売上高は1万5000ドル(約170万円)にとどまり、これにより1000ドル(約11万3000円)の赤字となった。

Fiskerは最近、社債を発行して現金を14億ドル(約1591億円)に増やしたが、これは2021年6月30日の四半期末に発表した9億6200万ドル(約1093億円)から大幅に増加している。同社は、利回り2.5%の6億7750万ドル(約770億円)相当の転換社債を発行し、最終的な自動車生産に先立って資金を確保した。

現在、Fiskerはまだ収益を上げていないが、投資家はこうした状態が急速に変わることを期待している。Yahoo Financeのデータによると、2021年にはわずかだった売上高が、2022年には2億6420万ドル(約300億円)になると、アナリストは予想している。Fiskerが調達した現金は、一般市場の投資家からの無限に厳しい収益要求に応える際に役立つものとなりそうだ。

画像クレジット:Fisker Inc.

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(文:Aria Alamalhodaei、Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードがクラシックカーを電気自動車化するためのモーターキットを約44万円で発売

ヴィンテージカーを電動化するためにアフターマーケットのEVモーターを販売しているのはChevy(シボレー)だけではない。Ford(フォード)が米国時間11月2日に発表した「F-100 Eluminator(F-100イルミネーター)」と呼ばれるコンセプトトラックは、1978年型の古いピックアップトラックに、同社が新たに「Eluminator」の名前で発売するクレート(単体売り)モーターを車体の前後に搭載してアップグレードした車両だ。

このパワープラントは、2021年型の電気自動車「Mustang Mach-E GT Performance Edition(マスタング・マックE GTパフォーマンス・エディション)」に搭載されているものと共通で、最高出力480馬力と最大トルク860Nmを、旧いF-100ピックアップ・トラックに与えることになる。フォードはその加速性能や航続距離などの詳細な数値を明らかにしていないものの、これだけのパワーがあれば、いくつものスポーツカーを置き去りにできると考えていいだろう。

Ford Performance(フォード・パフォーマンス)がショーケースとして製作したこのトラックには、モーター以外にも、Mach-Eの縦型センタースタックタッチスクリーンを取り付けるなどの改造が施されている。足元にはForgeline(フォージライン)社製のカスタムアルミホイール、インテリアにはJJR Fabrication(JJRファブリケーション)社製のビレットアルミダッシュ、MDM Upholstery(MDMアップホールスタリー)社製のアボカドタンニングレザーなどのカスタマイズも見られる。外観はクラシックなトラックでも、中身もそうであるとは限らない。

ご想像どおり、このコンセプトトラックを購入することはできない。代わりにフォードは、このEluminatorモーターを3900ドル(約44万円)で販売し、自分のクルマを改造する人に利用してもらいたいと考えている。最終的にはバッテリーやコントローラー、トラクションインバーターなど、EV化の改造に必要なものをすべて提供することを計画しているというが、現時点でモーターを購入したいと思う人は、残りのパズルを自分で完成させるだけのリソースが用意できる場合のみだろう。しかしこれは、我々の愛する多くの内燃機関の自動車が、EV化によって第二の人生を得るという未来を垣間見せてくれる。

画像クレジット:Ford

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Jon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Ford

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラ車がソフトウェアの最新パッチでドライバープロフィールをクラウドと同期可能に

Tesla(テスラ)は、レンタルか個人保有かを問わず、ユーザーのドライバープロフィールの車歴と設定データ内に、あらゆる車種を加えるようだ。同社は最新のソフトウェアでCloud Profilesというセクションを設け、「Enable Vehicle Sync」オプションでドライバーのプロフィールTesla Software Updates reportsをバックアップする。以前、Elon Musk(イーロン・マスク)氏はクラウドと同期するプロフィールを開発中と述べていたため、このニュースに大きな意外性はない。

Teslaのようなテクノロジー指向の自動車企業が顧客に、自分の過去と現在の複数のクルマのセッティングを簡単に調べることができる方法を提供することは、理に適っている。特にHertsがレンタカーとして10万台のTesla車を購入すると発表して以来、現実味を帯びてきている。マスク氏はすぐ、まだ受注していないと指摘しているが、Tesla車を誰でも簡単にレンタルできる世界を想像することは困難ではなくなった。Tesla車はガソリン車に比べてメンテナンスが容易だろうし、Model 3はすでに、多くのラグジュアリーカーより安価だ。

本当の上級者は、クラウド上のプロフィールによって複数の車両の設定を容易に同期することができる。Tesla Software Updatesによると、同期できる設定はディスプレイの輝度や、オートパイロットとナビゲーションのオプションなどとなる。さらにStopping Modeも同期すると、Tesla車のブレーキ機能の変化にも対応できるだろう。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のDevindra HardawarはEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Tesla

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(文:Devindra Hardawar、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フォードの電動ピックアップトラック「F-150 Lightning」の予約が16万台突破

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、全電動ピックアップトラック「F-150 Lightning」の予約が16万台を突破したことを明らかにした。

同社はF-150 Lightning発表以降、返金可能な前金100ドル(約1万1000円)での予約を受け付けている。予約開始初日には2万件を受け付け、その数は2日目には4万4千件となった。6月末までに12万件の予約が入り、同社は消費者の関心の高さを目の当たりにした。

6月に行われた第2四半期決算説明会で、CEOのJim Farley(ジム・ファーリー)氏は、そうした予約の75%近くが新規顧客だと述べた。

また、内燃機関搭載のトラックを下取りに出す予定の人が約40%いたことから「フルサイズトラック(バッテリー搭載の電気自動車)への移行が、我々の楽観的な想定よりも少し早く進むことを示しています」と述べた。

こうした予約状況を受けて、Lightningの年間生産能力を向上させるために、2億5000万ドル(約285億円)を追加で投入し、450人の人員増強を行うと発表した。Lightningは2022年春に販売される予定だ。

Lightningは4種類のモデルが用意されており、車両の大部分を電気自動車に移行するという同社の戦略において重要な役割を果たす。9月にR1Tトラックの生産を開始したRivian(リビアン)のような新規参入企業と同様、Fordはピックアップトラック部門に狙いを定めている。F-150は、米国で最も売れているトラックだ。同社は2020年に78万7422台のFシリーズトラックを販売したと明らかにした。Lightningの基本バージョンは3万9974ドル(約455万円)から、ミッドシリーズのXLTモデルは5万2974ドル(約603万円)からだ。

関連記事:【レビュー】Rivianから待望の電動トラック、2022 Rivian R1Tにはたくさんのお気に入り機能と工夫が溢れている

画像クレジット:Ford

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

持ち運びも簡単なスーツケースサイズの電気自動車用パワーバンク「ZipCharge Go」

ZipCharge(ジップチャージ)は、航続距離で不安を感じている人にガソリン車から電気自動車(EV)への乗り換えを納得させることができるかもしれない新しいタイプのEV用充電プロダクトを発表した。英国のスタートアップZipChargeは、Cop26気候サミットでZipCharge GoというEV用のパワーバンクを披露した。ZipCharge Goは、スーツケースほどの大きさで、重さは約50ポンド(約22キロ)。車輪と格納式ハンドルが付いているので、ユーザーはトランクに入れておいて、充電したいときには簡単に取り出すことができる。

同社によると、車にGoを30分間つなげると、最大20マイル(約32キロ)の走行が可能になる。さらに容量を増やしたバージョンでは、最大40マイル(約64キロ)走行分を給電できる。このデバイスは、タイプ2のソケットを備えたプラグインハイブリッド車とEVに対応し、30分から1時間で車をフル充電することができる。デバイスそのものの充電はコンセントに差し込むだけで簡単に行うことができる。また、ユーザーはアプリを使ってデバイスの操作やモニタリングを行い、充電をオフピークの時間帯に予約して電気代を安く抑えられることができる。

航続距離への不安は最近ではあまり問題にならなくなっているが、それでもまだEVへの乗り換えに踏み出せないでいる人がいる。この問題を解決するために、Gogoro(ゴゴロ)はスクーター用の交換可能なバッテリー技術を開発したが、EVのバッテリーは通常、交換できない。SparkCharge(スパークチャージ)にはRoadieというポータブルEV充電システムがあるが、Goのように持ち運びは簡単ではない。

とはいえ、ZipCharge Goはまだ発売されていない。InsideEVsによると、ZipChargeは、4kWhと8kWhのバージョンをリリースし、2022年の第4四半期に発送を開始する予定だという。最低月額49ポンド(約7600円)でリースすることができるが、1台分のお金を払うことを気にしないEV所有者や、充電設備を設置していないホテルなどの事業者は購入することもできる。ZipChargeはまだ価格を明らかにしていないが、The Sunday TimesのDrivingセクションによると、7.2kWの家庭用充電ポート設置と同程度の価格での販売を目指しているとのことだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:ZipCharge

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏、Hertzが実際にはまだテスラEV10万台を発注していないとツイート

米国時間10月25日のHertz(ハーツ)のプレスリリースによると、同レンタカー大手はレンタル用にTesla(テスラ)Model 3を10万台発注したとのことだった。しかし11月1日、イーロン・マスク氏は「まだ契約は結ばれていない」と述べ、注文が確定したとは言い難いことをツイートしたと米Gizmodoが報じた。

Hertzの発表では、次のように述べられていた。「北米最大のEVレンタルフリートを提供るための重要な投資を行いました…【略】これには、2022年末までに10万台のTesla車を初期発注することが含まれています」。この発表とBloombergの報道は、欧州での販売に関する他の良いニュースと相まって、投資家のモチベーションを高め、Teslaの価値を1兆ドル(約113兆円)の大台に押し上げたかもしれない。

Hertzはつい4カ月前に、不良債権処理会社のKnighthead Capital Managementなどに60億ドル(約6800億円)で買収され、破産を脱したばかりだ。そのため、約42億ドル(約4780億円)相当のEV10万台を購入するという発表は、明らかに人々を驚かせた。

しかし、Gizmodoが指摘するように、Hertzは厳密には車両の契約書や発注書に署名したとは言っていない。「2022年末までに10万台のTesla車を初期発注」という表現は、2022年末までに車両の納入ではなく、発注そのものを意味するとも考えられる。Tesla自体は、この最初のニュースに関しては何もコメントしていなかった。

マスク氏のツイートは、ツイッターユーザー「Tesla Silicon Valley Club」に返信する形で投稿されたもの。元の投稿は、最近のTeslaの株価上昇に感謝していた。しかし、マスク氏は、Hertzとの契約が同社の売上や収益に影響を与えることはないと述べ、誇大広告を抑えようとしているように見えた。

「Teslaは生産台数よりも需要の方がはるかに多いため、Hertzに対しては消費者向けと同じマージンでしかクルマを販売しません。Hertzとの取引が、当社の経済力に与える影響はゼロです」と同氏は述べた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Tesla

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

テスラが初めてスーパーチャージャーネットワークを他のEVに開放

Tesla(テスラ)は、オランダで10カ所のSupercharger(スーパーチャージャー)をTesla車以外の電気自動車(EV)に初めて開放するパイロットプログラムを展開中だ。

Tesla以外のEVユーザーがスーパーチャージャーを利用するには、まずTeslaのアプリをダウンロードしてアカウントを作成する必要がある。Teslaのオランダのウェブサイトによると、そこから「Charge Your Non-Tesla」を選択し、場所を検索して支払い方法を追加すれば充電することができる。

Tesla以外のEVを運転するドライバーは、完全シームレスな充電体験ができるわけではない。Teslaドライバーはプラグを差し込んだり外したりするだけでよいが、Tesla以外のドライバーは、充電の開始と停止をアプリで指示する必要がある。また、Teslaドライバーは電気料金が変わらない一方で、Tesla以外のドライバーには「多数の異なる車への充電に対応し、他ブランドの車に適するようにするための追加コスト」が発生するという。

このパイロットプログラムに参加できるのは、CCS規格接続のEVのみだ。米国では、Teslaのスーパーチャージャーは独自のコネクタを使用しているが、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は7月の第2四半期決算説明会で、北米の充電拠点でアダプターを販売・提供し、これにより米国でネットワークがオープンになる可能性を示唆していた。

今回の試験運用で「経験を積み、ローダーでの流れを監視し、ユーザーからのフィードバックを収集する」とTeslaはウェブサイトで述べた。同社は、ドライバーに10カ所の拠点を通常通り利用するよう呼びかけているが、これは同社のメーンユーザーがどのような影響を受けるか、適切なデータを得られるようにするためだと思われる。また、Tesla以外の車がテスラ車よりも遅く充電される場合、充電時間が遅くなることの影響も今回の試験では測定するようだ。

マスク氏は以前から、同社が「Non-Tesla’s Supercharger Pilot」と呼んでいるこのようなプログラムをいずれ導入する可能性を示唆していた。7月には、年内にTesla以外のユーザーにもネットワークを開放することを認めており、今回のパイロットはまだ始まったばかりのようだ。同社はウェブサイトで「近い将来」プログラムに参加する国を追加する、と述べている。

Teslaのスーパーチャージャーネットワークは2万5000台以上の急速充電器を有し、自動車メーカーが所有・運営するネットワークとしては世界最大だ。

「より多くのドライバーにEVへの乗り換えを促すために、スーパーチャージャーネットワークをTesla以外のEVにも開放することを常に目指してきました」とTeslaは話す。

同社のパワートレイン・エネルギーエンジニアリング担当上級副社長のAndrew Baglino(アンドリュー・バグリーノ)氏は7月の決算説明会で、Tesla以外のEVにスーパーチャージャーネットワークを開放することで、全体的に電気代が安くなるかもしれない、と説明した。

「ネットワークの利用率を高めることでコストが削減され、顧客のために充電料金を下げることができます。そして、ネットワークの収益性が高まり、ネットワークをより早く拡大することができます」と述べた。「何としてでも、ネットワークのキャパシティを引き続き積極的に拡大し、充電速度を向上させ、イーロンが述べたようにダイナミック・プライシング(変動料金制)を用いて充電施設の混雑を防ぐための旅行計画ツールを改善していきます」。

画像クレジット:Tesla

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンがEVメーカーRivianのIPOを前に20%の同社株式保有を公表

米国時間10月29日、Amazon(アマゾン)が2021年10月初初旬にIPOを申請した電気自動車メーカーRivianの株の20%を保有していることを公表した。

9月30日の時点でこのeコマース巨大企業は、約20%の所有権を表すRivianの優先株を含む非公開株投資を行っていたことが、文書に示されている。その持ち株の「簿価」は38億ドル(約4329億8000万円)で、2020年12月31日現在の27億ドル(約3076億4000万円)から上がっていた。

その公表は規制当局への提出文書により明らかとなり、Rivianの将来がAmazonと密接に結びついていることがうかがわれる。RivianのIPO文書によると、Amazonは同社に13億4500万ドル(約1532億5000億円)を投資している。Amazonはまた最近、Rivianの4億9000万ドル(約558億3000万円)の転換社債を購入し、それは一定の価格規定によりIPO後にクラスAの株式に転換される。

Amazonは、Rivianの投資者であるだけでなく顧客でもある。2019年9月の協定によりRivianはAmazonに、10万台の電動デリバリーバン(配達車)を供給する。2021年10月初めにRivianは、2021年12月に少なくとも10台を納車する予定であることを公表した。残りの9万9990台は2025年までに納車される。

RivianのIPO文書により、AmazonがRivianという宇宙の大きな部分であることが明らかとなった。たとえばRivianのS-1文書には、Amazonの名が81カ所で言及されている。投資家でもあり顧客でもあるというAmazonの二重性格により、登場機会が多くなっている。

その時点ではAmazonはRivianの少なくとも5%を保有していると思われたが、最終的な数字はまだ得られていない。Amazonからの公表によると、同社の保有株はもっと多いようだ。

TechCrunchが以前報じたように、Amazonとの強い結びつきはRivianにとって好機とリスクの両方である。RivianのS-1のリスク要因の部分には、こう書かれている。

弊社の初期の売上の大きな部分が、弊社の主要株主の1つに関連する1つの顧客に由来する。弊社がこの関係を維持できなかったり、この顧客の購入が現在弊社が予期するより相当少ないか、皆無であれば弊社の事業と将来性と財務状況と操業の結果およびキャッシュフローは著しく悪化するだろう。

画像クレジット:撮影ROBYN BECK/AFP/Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラとHertzの契約で切り開かれるEVメーカーの新境地

レンタカー大手のHertz(ハーツ)は今週、伝えられたところによると42億ドル(約4785億円)でTesla(テスラ)車10万台を購入するというニュースを発表し、倒産からの復活を市場に強くアピールした。その2日後、HertzはUber(ウーバー)がその注文の最大半分を自社のドライバーに貸し出すことを約束したと発表し、再び話題となった。

しかし、この取引で最大の勝者となるのは、結局のところTeslaかもしれない。Teslaは、レンタル市場での先発的な優位性と、他の自動車メーカーが直面している在庫の制約を利用して、増えつつあるEV(電気自動車)に興味を持つドライバーを取り込めるかもしれない。

Edmunds.comの自動車アナリストIvan Drury(イヴァン・ドラリー)氏は、今回の契約の規模について次のように説明する。「レンタカー会社は、EVを大量に購入しているわけではありません。従来の車両注文のような大量発注の話ではありません」(Hertz、Enterprise Holdings、Avis Budget Groupの3社は、自社の車両に占めるEVの割合を公表していない)。

「Hertzが10万台のTesla車を購入し、さらに5万台をUberのドライバーに向けるというのは、これまでのレンタカー会社とはまったく異なる動きです」とドラリー氏は付け加えた。

TeslaのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は認めたが、今回の車両販売は明らかに定価でのものであり、同社が2022年末までにModel 3の大規模注文に応える準備ができていることを示す明確な指標でもある。一方、従来の自動車メーカーは、新規顧客向けのEV予約の未処理に悩まされているのではないかとCox Automotiveのアナリスト、Michelle Krebs(ミッシェル・クレブス)氏は話す。「自動車メーカーは、パンデミックとそれにともなうチップや車両の在庫不足の間、レンタカー会社への販売を行わず、一般消費者への小売販売に注力してきました」と述べた。

大規模な「買う前に試す」

メリットは金銭的なものだけではない。Enterprise Rent-A-Car、National Car Rental、Alamo Rent A Carの親会社であるEnterprise Holdingsが2015年に実施した調査によると、回答者の約62%が特定のモデルのレンタル体験が良かったことで、自分でも購入を検討するようになった、と答えた。

従来のレンタカー市場では、EVはこのような潜在的な消費者の関心に応えることができていなかった。これまでは、EVをレンタルして旅行を楽しみたい人々のために、スタートアップがそのギャップを埋める役割を果たしてきた。ドイツのNextmoveとFuture.renは、EVのみを扱うレンタカーサービスを提供しており、米国のP2P(ピア・ツー・ピア)レンタカー市場であるTuroはEVと内燃機関のモデルを組み合わせてサービスを提供している。

少なくとも、P2Pレンタル・マーケットプレイスのTuroによれば、需要はあるとのことだ。Turoでレンタル用にリストアップされているTesla車両の数は、過去5年間で爆発的に増えているという。2014年にTuroのマーケットプレイスに掲載されていたTesla車は67台だったが、2021年はこれまでのところ2万1599台に急増している。EV全体では、同時期に196台から2万6956台に増加している。

Turoに車を登録している人の多くは、自分のTesla車を旅行用ではなく、長期の試乗用として貸し出しているという。Turoの広報担当者は「多くの人にとって、(試乗のために)Tesla車に乗るのに1時間では十分ではありません」と話す。「購入を検討している人の中には、航続距離に不安があり、Tesla車で長距離の移動を試してみたい人もいます。多くのホストは、ゲストが車両を長期間所有できるようTuroでTeslaを試していると話しています」。

HertzによるTesla車レンタル市場には、旅行中のTesla車オーナーだけでなく、Tesla車に試乗してみたいと思っている消費者や「EVに興味がある」消費者も含まれるとクレブス氏は話す。

「広告を買わないTeslaにとって、これはすばらしいマーケティング状況です」と同氏は付け加えた。「その代わり、Hertzはスーパーボウルで7回優勝しているTom Brady(トム・ブレイディ)氏を使って広告を出しており、Teslaはその尻尾に乗っているのです」。もちろん、Teslaはクルマを販売するのに伝統的な広告を使っているわけではく、マスク氏はツイッターで5400万人のフォロワーを抱え、自分(と会社)の名前を売り込むのに長けていることは注目に値する。

ドラリー氏はまた、自動車メーカーがレンタカー会社を、最も高機能なクルマを売り込むためのマーケティング手段として利用することが多いと指摘する。「ですのでTeslaにとっては、レンタカー会社が試乗センターになるのです」

反レンタル偏見のリスク

もちろん、濡れ手で粟ではない。ドラリー氏によると、Teslaにとっての主なリスクは、Model 3がレンタカーや、場合によってはUberの乗車に使用されるクルマは、非レンタカーのクルマよりも価値が低いという認識の犠牲になることだ。「レンタルの汚名を着せられてしまうのでしょうか、それとも、今回の取引でそれが払拭されるのでしょうか」。

Hertzは、TeslaのEVに対して「プレミアムで差別化されたレンタル体験」を提供するとしており、レンタル価格はHertzの既存のラグジュアリーセグメントに匹敵するものになるとして、プレミアムなイメージを維持できる可能性を示唆している。Uberで予約したTesla車は、プレミアムサービスであるUber Blackに限定されず、UberXで予約した人も利用できるようになる。

また、最終的には、中古市場での販売台数が増えれば、Tesla車のリスクになる可能性もある。Edmundsの2017年のレポートによると、レンタカーとして使われた中古車は、そうでないものに比べて中古市場での販売価格が9%低くなっている。これはTeslaにとって重要なことだ。というのも、Hertzに販売される10万台のModel 3は、最終的にオークション(またはHertzとの新たな契約によりCarvana)にかけられ、中古車市場が飽和してブランドや特定のモデルの価値が下がってしまう危険性があるからだ。今回の注文は、そのような事態を招くほどの台数ではなさそうだが、それでもTesla Model 3と中古車市場の間に、これまでにはなかった新たな力学が生まれる

一般的な認識がどうなるかは別にして、今後、大手自動車メーカーがトラックやSUVなどセダン以外の部門の生産台数を増やすにつれて、そうした車両のEVを注文する際に同様の取引が行われる可能性がある。

画像クレジット:Hertz

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタの新型EV「bZ4X」はスバルとの共同開発、一充電走行距離460kmでルーフソーラーパネルも選択可能

2021年4月、トヨタ自動車は、2025年までに発売する7台の「Beyond Zero(ビヨンド・ゼロ)」完全電気自動車の第1弾であるbZ4X(ビー・ズィー・フォー・エックス)を発表した。その際、スバルと共同でSUVを開発していることや、次期パワートレイン「e-TNGA」を搭載することを明らかにした以外、同社はbZ4Xの詳細については多くを語らなかった。しかし、金曜日、トヨタはその状況を一変させ、その市販車版を発表した。

bZ4Xには、FWD(前輪駆動)とAWD(全輪駆動)の2種類のモデルがある。前者は、150kWの出力を持ち、8.4秒でゼロから100km/hまで加速することができる。また、WLTC基準では、71.4kWhのバッテリーを搭載したFWDモデルの1回の充電での走行距離は約500kmとされている。なお、この数値は、米国環境保護庁によるテストが行われた後に減少することが予想される。なお、この数値は日本仕様のものであり、トヨタが米国で発売するモデルとは異なる仕様になる可能性がある。

画像クレジット:Toyota

このバッテリーは150kWのDC急速充電に対応しており、約30分の充電で充電切れの状態から80%まで回復することができる。AWDモデルでは、80kWのモーターを2つ搭載し、それぞれの車軸に1つずつ、合計で160kWの出力を実現する。ゼロから時速100kmまで7.7秒で加速することができる。トヨタは、AWDモデルの1回の充電での走行距離として、460kmを想定している。両モデルとも、バッテリーをシャーシに内蔵することで、低重心化とシャーシ剛性の向上を図っている。

また、bZ4Xには、いくつかの便利な機能を搭載する予定だ。その1つがルーフソーラーパネルで、約1120マイル(約1800km)分の電力を無料で供給できるという。また、ステアリングホイールと前輪の間のメカニカルな結合のないステアバイワイヤシステムも搭載する。これらの機能は一部のモデルに搭載される予定だ。

bZ4Xは、2022年半ばに米国およびその他の市場でデビューする。

画像クレジット:Toyota

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Yuta Kaminishi)