LinkedInもClubhouse類似機能を開発中

Clubhouse(クラブハウス)の競争相手は増え続けている。このたびLinkedIn(リンクトイン)も、クリエイターたちがネットワーク上でコミュニティでつながる仕かけとして、そのアプリ内でソーシャルオーディオ体験をテストしていることを認めた。現在、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)が開発しているClubhouseライバル機能とは異なり、LinkedInは、そのオーディオネットワーキング機能が、ユーザーの単なるソーシャルプロフィールではなく、プロフェッショナルなアイデンティティと結びつくという点で、差別化できると考えている。同社はすでにクリエイターコミュニティを支援するプラットフォームを構築しており、現在はストーリーズLinkedInライブビデオニュースレターなどのツールを利用できるようになっている。

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そして米国時間3月30日より、LinkedInはこうした一連の動きを新しい「クリエイター」モードとして正式提供を始めた。このモードを使うことで、クリエイターは自分のプロフィールの更新情報、たとえばストーリーズやLinkedInライブビデオなどをフォローしてもらえるようになる。

このようにクリエイターに焦点を当てたことで、LinkedInは、現在音声ベースのネットワーク機能を現在さまざまなレベルで開発しているFacebook、Twitter、Telegram(テレグラム)、Discord(ディスコード)といった企業たちと比べて、独自のClubhouse機能の拡大という点で競争力を持つことになる。

Twitterが開発中の、ClubhouseライバルであるTwitter Spaces(ツイッター・スペース)は、すでにベータテストが開始されているが、まだクリエイターのための完全なツールは揃っていない。実際Twitterが、たとえば新しい「スーパーフォロー」機能などを通じて、より大規模なクリエイター向けサブスクリプションプラットフォームの計画を発表したのは、2020年2月になってからだ。そして、買収によってニュースレター分野にやっと参入したのも、2021年になってからだ。一方、Facebookはこれまでクリエイター向けの機能を数多く提供してきたが、最近ではニュースレターのようなツールにも力を入れている。

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LinkedInは、メンバーやクリエイターから、そのプラットフォーム上でのより多くのコミュニケーション手段を求める声が寄せられていたことから、音声ベースのネットワーク機能を開発することにしたのだという。

LinkedInの広報担当者であるSuzi Owens(スージー・オウエンス)氏は、オーディオ機能の開発を認めた際に「LinkedInでの50%近くの会話の増加は、ストーリー、ビデオ共有、プラットフォーム上の投稿などにに反映されています」と語った。また「プロフェッショナルアイデンティティと結びついたユニークな音声体験を実現するために、いくつかの初期テストを行っている最中です。イベントやグループなど、LinkedInの他の部分にもオーディオを導入し、メンバーがコミュニティとつながる方法をさらに増やすことができるようにすることを検討しています」と述べている。

クリエイターからの関心の高まりを受けて、同社はルーム内のスピーカーを並べるステージと、その下にリスナーを配置する機能をいち早く開発した。また、リバースエンジニアのAlessandro Paluzzi(アレッサンドロ・ポルッツィ)氏が、LinkedInのAndroidアプリ内で発見したインターフェースのスクリーンショットをみると、ルームへの参加や離脱、コメントへの反応、発言のリクエストなどのツールも用意されている。

ポルッツィ氏は、ユーザーインターフェースに自分のプロフィールアイコンを表示しした画像をツイートしたが、これはLinkedInによるものではない。その代わりにLinkedInは、ルームでの体験に関する概念的なUXを示す独自のモックアップをTechCrunchに示した。このモックアップは、この機能がローンチされたときにどのようなものになるかについての、より具体的な例を示している。

画像クレジット:LinkedIn

LinkedInは、この音声エクスペリエンスが、ユーザーの職業上のアイデンティティと結びついていることで、ユーザーは安心してコンテンツについて話したり、コメントしたり、その他の方法で関わることができる、とTechCrunchに語っている。また、LinkedInライブなどの他の機能のために、すでに提供されているモデレーションツールを活用して、すでにClubhouse悩ませ始めている不適切もしくは有害な議論に対する懸念に対処することができる。

「私たちの優先事項は、参加者が安全だと感じ、生産性を高めることができる、信頼できるコミュニティを構築することです」とオウエンス氏はいう。「私たちのメンバーは、現実世界の人びとと、敬意を持って建設的な会話をするためにLinkedInに集まっています。私たちそのための安全な環境を確保することに注力しています」と彼女はいう。

さらにLinkedInは、音声ネットワーキングは、グループやイベントなどの他の分野の自然な延長線上にあるとしている。こうしたネットワーキング分野は成長を続けているが、特にパンデミックの中ではその傾向が著しい。

2020年には、約2100万人がLinkedInでのイベントに参加し、LinkedIn全体のセッション数は前年比で30%増加した。全世界に広がる7億4000万人のLinkedInメンバーも、2020年は48億回の接続を行い、コミュニティを形成し、会話を交わし、知識を共有している。

パンデミックによって活況となった多くの企業と同様に、LinkedInは、パンデミックによって、オンラインネットワーキング、リモートワーク、バーチャルイベントへの自然な流れが加速されただけだと考えている。そもそもこれらはロックダウン以前から行われていたものだ。例えば、LinkedInは、パンデミック前はリモートワークを行うメンバーは8%だったが、2020年末までにはそれが60%以上になっているという。パンデミックが収束した後も、世界の労働人口の半数以上が、少なくともある程度の期間は自宅で仕事をすると予想されることから、LinkedInはこの変化は定着すると考えている。

そのため、音声エクスペリエンスなどの、新しい形のオンラインネットワーキングが成長する余地があるのだ。

LinkedInは、この音声ネットワーク機能の開始時期を正確には決定していないが、まもなくベータテストを開始すると表明している。

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タグ:LinkedInClubhouse音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

SpotifyもClubhouseに負けじとライブオーディオに参入

SpotifyがライブオーディオのLocker Roomを運営するBetty Labsを買収すると発表したことを受けて、米国時間3月30日朝にSpotifyの株価が若干上がった。Crunchbaseのデータによると、この発表より前にBetty Labsは900万ドル(約9億9000万円)以上を調達していた。

Spotifyは音楽ストリーミング事業が最も有名だが、コアの市場における競争力、そして価格面の支配力を生み出す手段の両方を探しながら新しいオーディオフォーマットに進出してきた。

近年、同社はポッドキャストに多額の資金を投入し、プラットフォーム上で人気番組を独占的に提供してきた。自社のオーディオの世界をできる限り差別化することで、将来的に同社は課金を増やして成長していけるかもしれない。

Spotifyは自社ブログでBetty Labsを買収する目的について「スポーツ、音楽、カルチャーのさまざまなプログラムや、クリエイターがリアルタイムでオーディエンスとつながることのできる多くのインタラクティブ機能」などが今後登場し「これまで以上に幅広いクリエイターとファンに向けてLocker Roomのライブオーディオエクスペリエンスが進化し広がります」と堂々と書いている。

ラジオとClubhouseを融合させたようなものになるのだろうか。TechCrunchはここ数週間でClubhouseや、Clubhouseに似ているTwitterのSpacesについて掲載したが、これと同様に今後わかり次第取り上げていく。

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Clubhouseは現在のオーディオブームを盛り上げて、有力な支援者と多くの初期ファンを獲得した。しかしAppAnnieのデータによると最近の数週間ではオーディエンス数の減少が見られ、おそらくSpotifyなどのオーディオ関連企業が参入してClubhouseを脅かす余地はあるだろう。

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Spotifyにはオーディオの新しいカテゴリーに参入して成功してきた歴史がある。3月の初めにTechCrunchで報じたとおり、eMarketerのデータによると「2021年にSpotifyでポッドキャストを聴く米国のリスナーは1カ月2820万人以上、Appleのポッドキャストリスナーは2800万人となり、SpotifyがAppleを初めて上回ると予測されている」。

費用がかかっていることは確かだが、Spotifyはオーディオのあらゆるカテゴリーでトップに立ちたいようだ。Clubhouseの領域に進出しようとしているSpotifyの動きは、この分野のスタートアップにとって心配の種に違いない。

Spotifyはすべてのプラットフォームに対応し巨大なインストールベースを持っているので、展開していく上での優位性がある。この優位性を活かしてオーディオの世界で新しい分野を獲得しようとする取り組みがどうなるかは2021年中にわかるだろう。それまでは、iOSデバイスを持っていれば引き続きClubhouseで楽しめる。

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タグ:Spotify買収Clubhouse音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Kaori Koyama)

フェイスブックがClubhouseクローンのライブ音声SNS機能を開発中

2021年2月に入ってNew York Timesは「FacebookがClubhouseのライバルを準備している」と報じた。しかしそのプロダクトがどのようなものになるのか、具体的な機能といった詳細は不明だったが、Alessandro Paluzzi(アレッサンドロ・パルッツィ)氏が開発中のFacebookのオーディオSNSのものと思われるスクリーンショットをTwitterで公開した。印象としてはスタンドアロンのアプリというより既存のMessenger Roomsの強化、拡大版のように見える。ライブでの音声ストリーミングと思われる機能も写っていた。

FacebookはTechCrunchに対し、この画像が同社の「音声配信サービス分野での実験的な取り組み」のものであることを確認したが、同時に「現時点では現実のプロダクトにはなっていない」と注意した。

同社では「この画像からプロダクトの機能の詳細を導き出そうとしても不正確になる」と述べた。もちろん、実際のプロダクトが開発中のものと大きく異なるものとなることはよくある。今後の正式リリースまでにどんな変化もあり得る。

しかし、この画像はFacebookがライブオーディオについてどのように考えているかをある程度明らかにする。また同社のソーシャル体験のどの部分に配置されるかを示しており、詳しく検討する価値がある。

リバースエンジニアリングは、コードを詳しく調べてさまざまな開発段階にある未発表のプロダクトを発見する。この写真を公開したパルッツィ氏はモバイルアプリ開発者で、リバースエンジニアリングの専門家だ。FacebookのAndroidアプリのコードを解析していてライブオーディオ機能やそのユーザーインターフェイスが実験されているのを見つけた。これまでパルッツィ氏が発見したコードの中には、廃棄されて日の目を見なかったものもあれば、最終的に配信されたものもある。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

今回共有された画像にはZoomのライバルとなるべく2020年5月にスタートしたFacebook Roomsのライブオーディオ機能も写っている。当時人々はビデオチャット機能を熱烈に求めていた。しかしパンデミックとともにZoomビデオが隅々まで浸透するにつれ、我々は「Zoom疲れ」を起こしてしまった。現在、人々は動画スクリーンを消して音声のみのClubhouseに熱中し始めている。

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現在、FacebookユーザーはMessengerまたはFacebook本体からMessenger Roomsを作成できるが、これは簡単にいえばグループビデオチャットだ。つまり友人、家族がリモートで時間を共有したり、Facebookの動画を共同視聴したりできる。しかしFacebook Roomの参加者は最大50人という制限があり、YouTubeライブのような大規模なストリーミングプロジェクトはできない。

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新しいスクリーンショットではRoomsの機能が拡張されている。Roomsには3つの異なるタイプがあり、現在と同様のプライベートビデオルーム、パブリックビデオルーム、プライベートオーディオルームのいずれかを選択できる。プライベートオーディオルームは友人グループとボイスチャットをするための場所であり、ライブオーディオルームは、大勢のリスナーに向けていわばラジオ放送を公開することができる。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

ライブオーディオルームには専用のリンクが与えられ、参加者はMessenger、Facebookタイムライン、Facebookグループなど、Facebookのあらゆるソーシャルメディアやウェブにリンクを貼って宣伝することができる。

一方、ライブオーディオルーム(パルッツィ氏はザッカーバーグ氏の顔写真をダミーに使ってUIのモックアップを作った)はとてもClubhouseに似ている。発言者はルームの上部に、大きな丸いプロフィール写真で表示される。ルームのリスナーはその下に表示されます。また「スピーカーによってフォローされている」という セクションがオーディエンスセクションの先頭に表示されるが、これもClubhouseと同様だ。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

パルッツィ氏によれば、現在開発中のライブオーディオルームでは、Facebook上の登録者なら誰でも参加できるルームを作ることができるようになるはずだという。ルームにはFacebook本体からアクセスできる。フルスクリーンに展開されない状態ではもルームのタイトル、スピーカーの数、リスナーの総数が表示されルームの人気度を知ることができる。

いうまでもなくパルッツィ氏が目にしたは最終製品ではない。プログラム中に隠された単なるユーザーインターフェイスのダミーに過ぎず、バックエンドは何も実装されていない。Facebookは、前述のように、この画像は単なる実験だと強調している。

しかし、この画像自体は現実にFacebookのエンジニアが開発したものであり同社がどういった方向を目指しているかを示している。Facebookの否定にもかかわらず重要性を無視することはできない。

Facebookの広報担当はパルッツィ氏の画像について「Facebookはこれまで長年にわたって、オーディオとビデオで人々を密接に繋いできた。今後もこうしたテクノロジーを進歩させていく」とコメントしている。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

FacebookのファウンダーでCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が音声SNSに強い期待を寄せていることはよく知られている。実際、ザッカーバーグ氏はすでに何度かClubhouseにに登場しており、最近では、TechCrunchの元ライターで現在はSignalFireの投資家であるJosh Consttin(ジョシュ・コンスティン)氏がホストを務めた先週のClubhouse Roomではソーシャルオーディオに大きな可能性があると強調した。その際、ザッカーバーグ氏は会議を多数主催してきた経験から、オーディオには他のフォーマットにはない利点が多数あることを強調してこう述べた。

(メリットの1つは)念入りな準備の必要がないことです。ポッドキャストやClubhouseなどの音声の場合はスタート前に身だしなみを整える必要がなくて済みます。話ながら自由に歩き回れますし、ディスプレイを見なくても、他のことをしながらでも参加でできます

ザッカーバーグ氏はClubhouseを賞賛して「ライブオーディオというフォーマットは将来のSNSにおいて欠かせないモデルとなるでしょう」と述べた。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

つまり、FacebookはClubhouseを「コピー可能な機能の1つ」と考えているようだ。ザッカーバーグ氏は過去にもSnapchatのStoriesのコンセプトをInstagramに借用したし、最近ではTikTokをInstagram Reelsに再現している。Clubhouseというライバルがいかに手強くてもFacebookは新しいアプリを立ち上げる必要はない。人々はすでにFacebookの上にいるのでオーディオを利用できる場所を立ち上げればよい。そしてClubhouseに登場してClubhouseを賞賛すると同時にエンジニアにデッドコピーを構築させていると示唆してた。ザッカーバーグ氏はこう述べている。

Facebookでは音声に関するユーザーの多様なニーズを考慮し、それら網羅するような方法で音声が活用できるよう、さまざなツールを構築中です。私はリリースをとても楽しみにしています。

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タグ:FacebookClubhouse音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:TechCrunch

画像:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:滑川海彦@Facebook

ClubhouseのAndroid版リリースは2、3カ月先

ソーシャルオーディオアプリの「Clubhouse」(クラブハウス)は、先月Android(アンドロイド)ソフトウェア開発者を採用したことに続き、期待されているAndroid版のリリース時期を発表した。Clubhouseの共同創業者であるPaul Davison(ポール・デイヴィソン)氏が、米国時間3月21日に行われたタウンホール(Townhall)イベントで、同社はAndroidに参入するために「真剣かつ懸命に」努力しているが、その実現には「2、3ヵ月かかる」と発言したのだ。すなわちその時期は、2021年の晩春から初夏にかけてになると思われる。

Clubhouseは1月下旬のブログで、Android版の開発を「すぐに」開始すると述べていたが、そのバージョンを公開できる時期についてはまだ何も約束していなかった。時期を述べる代わりに、Androidに関する発言のほとんどは、Androidユーザーをサポートすることの重要性や、自社アプリをより多くの顧客に利用してもらえるようにするといった、曖昧な表現になっていた。

一方、Clubhouseの最大のライバルであるTwitter Spaces(ツイッター・スペース)は、Clubhouseの遅れに乗じて、かなりの数のAndroidユーザーも含むかたちで、プラットフォームを横断し多くの人に急速に展開を行っている。例えば2021年3月にはTwitter SpacesはAndroidのユーザーにも開放され(ルームの作成は一部のユーザーに限られている)、Androidユーザーなら誰でもライブオーディオルームに参加して会話をすることができるようになった。その直後にTwitterは、2021年4月にはTwitter Spacesを一般公開する予定であると発表した。Clubhouseが開発を加速し、今後数週間のうちに招待制を解除しない限り、Twitter SpacesがClubhouseを大きく先行することになる。

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3月21日に開催されたClubhouseタウンホールでは、共同創業者のデイヴィソン氏が、Androidユーザーが参加するような大きな市場にスケールアップするための同社のアプローチについて、より多くのユーザーにアクセスを開放するためには、ゆっくりとしたペースが必要であると説明した。そしてClubhouseが成長するときには、その結果アプリ内での発見体験に悪影響が及ぶ可能性があると指摘した。例えば最近のユーザーは、フィードに外国語のグループが多く表示されるようになって、友人たちや一部の優れたコンテンツを見つけるのに苦労しているという。

こうした課題に対処するため、Clubhouseはいくつかの変更を予定している。その中には、アプリのアクティビティフィードの調整、ユーザーがプッシュ通知をより制御できるようにするツール、アプリを最初に開いたときに画面に個人向けおすすめのroomのリストを表示するといったパーソナライズ機能の提供などがある。同社はこのような改善が、たとえClubhouseアプリがより多くのユーザーに向けて拡大できた場合にも、成功するためには必要だと考えている。

一方で、Clubhouseの招待制を止めることについてデイヴィソン氏は「今後数カ月のうちに」と話している。彼は「他の場所では視聴者を獲得されているのに、Clubhouseにはまだ登録なさっていない、すばらしいクリエイターの方ががたくさんいらっしゃる」ことから、アプリを誰にでも開放したいと考えている。

「誰にでも開放することが、とても重要になってきます」とデイヴィソン氏はいう。「Androidは本当に重要なものになるでしょう。ローカライズが非常に重要になるのは明らかです」。そして、Clubhouseをより利用しやすくすることも重要だったと彼はいう。

ClubhouseのAndroid版がないことで、同社はすでにいくつかの複雑な問題を抱えている。

多くのAndroidアプリ開発者が、市場に空いた穴を利用して独自の「Clubhouseガイド」を販売している。このガイドは、同じアプリアイコンを使用してClubhouseを探しているAndroidユーザーを意図的に混乱させることを目的としている(Googleはこのような価値の低い、あるいは侵害的なコンテンツをPlayストアから排除する気はないようだ)。

最近では、サイバー犯罪者もこの活動に参加するようになった。彼らは、ユーザーを騙して自分たちの悪意あるアプリをダウンロードさせるために、Clubhouseの偽バージョンを作成し、Clubhouseのウェブサイトのよくできた複製サイトへ導くことさえある。こうしたのアプリの中には、Facebook、Twitter、Amazonなどを含む450以上のサービスのユーザーのログイン認証情報を盗む、マルウェアBlackRock(ブラックロック)を拡散するものがあることが判明している

デイヴィソン氏はタウンホールでこの問題を取り上げ、AndroidでClubhouseになりすまそうとしているアプリをみかけたら「有害な可能性があるので」使わないようにとユーザーに警告した。

彼は「それが本物のClubhouseではないことは確かです。PCの場合でも同じです。ClubhouseにはPC用のアプリはありません」と述べ、デスクトップ版Clubhouseは同社にとって優先度の高いものではないと付け加えた。

タウンホールではその他にもさまざまな発表があったが、特に注目すべきは、クリエイター向けのツールを充実させる計画だった。これらは、クリエイターが自分の番組の視聴者を増やし、さらには、直接支払い、購読、ブランドスポンサー、さらには 「有料イベント」などの手段で自身のイベントを収益化することに重点を置いている。Clubhouseは、メンバーシップの管理や、リスナーやリテンション(継続率)に関する指標を把握するためのツールも提供する予定だが、具体的なツールの内容や提供時期については詳細にはなっていない。

タウンホールイベントでの発言内容についての詳細なコメントを問い合わせたが、Clubhouseはまだ応じていない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ClubhouseAndroid音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

ドイツに続き仏プライバシー監視当局も苦情・嘆願書を受けてClubhouseの調査開始

シリコンバレーのテック系知識層に人気のある招待制のソーシャルオーディオアプリClubhouse(クラブハウス)が、フランスのプライバシー監視機関によって調査されている。

CNIL(Commission Nationale de l’Informatique et des Libertés)は中央ヨーロッパ標準時3月17日、苦情を受けてClubhouseの調査を開始し、アプリを開発した米国のAlpha Exploration Co.から初期回答を得たことを発表した。

またCNILは、規制当局の介入を求める1万人以上の署名を集めた請願書がフランスで出回っていることも指摘している。

同規制当局によると、Clubhouseの所有者が欧州連合内のどこにも設立されていないことを確認したという。これは、EU市民のデータに関して苦情を受けたり、独自の懸念を抱いているDPA(データ保護当局)であればEUのどの国でも、同アプリを調査できることを意味する。

2021年2月にはハンブルグのプライバシー規制当局もClubhouseに懸念を示し、欧州のユーザーとその連絡先のプライバシーをどのように保護しているかについて、アプリに詳細な情報を求めたと述べている。

EUでは通常、テック巨人が関与する国境を越えたデータ保護のケースでは、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、GDPR)には苦情を主管データ監督機関、つまりEU内でその企業が事業を確立している国の機関に送る仕組みがあるため、このようなシナリオは避けられる。

この「ワンストップショップ(one-stop shop、OSS)」メカニズムは、アイルランドに地域本部を設置しているFacebookのようなテック巨人に対するGDPRの施行を遅らせる側面もあった。もしこのOSSが、Clubhouseのような新規参入企業(現在はOSSの対象外)に対する一方的なプライバシー保護の迅速な実施と組み合わされた場合、規制の堀の効果によって「ビッグテック」が有利になるリスクはさらに高まる。

フランスの監視当局は、Google(グーグル)やAmazon(アマゾン)のような巨大企業がOSSの影響を受けていない場合には、迅速に規則を施行する姿勢を示してきた。例えば最近では、Cookie(クッキー)の同意問題で1億6000万ドル(約174億2000万円)を超える罰金を科している。また、Googleが地域ユーザーの管轄をアイルランドに移す前の2019年には、同社に5700万ドル(約62億円)のGDPR罰金を科した。

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よってCNILがClubhouseを調査する際にも、同様にすばやく動かない理由はない(ただし17日のプレスリリースでは、欧州各国のDPAが「情報を交換し、GDPRの一貫した適用を確保するために、この問題について互いに連絡を取り合っている」と書かれている)。

Clubhouseは、ユーザーの電話帳に入っている連絡先データをアップロードし、取得した電話番号を使って利用状況のグラフを作成し、ユーザーがサービスに招待する連絡先を選択する際に非ユーザーの同アプリ上での「友達」の数を表示することができるなど、プライバシーに関わる問題を抱えていた。

また、CNILへの嘆願書は、Clubhouseが保有するユーザーの連絡先に関する「秘密のデータベース」が第三者に販売される可能性があるとしている。

嘆願書の著者はこう書いている。「政治家たちは長年、私たちのデータを吸い上げているFacebook(フェイスブック)を攻撃する勇気がありませんでした。今日、私たちの民主主義は大きな代償を払っています。Clubhouseは、私たちがFacebookのやり方から何も学んでいないこと、そして同社の疑わしい行為に気づかないことを願っています。しかし、ドイツのプライバシー保護機関は、すでに同社がEU法に違反していると非難しています。これから他の国の規制当局も追随し、Clubhouseに圧力をかける必要があります」。

「何千人ものみなさんがCNILに法律の施行を求めれば、私たちの私生活に対するこのあからさまな侵害に終止符を打つことができます。これはまた、巨大テック企業に「我々のデータは我々のものであり、他の誰のものでもない」という強いメッセージを送る機会でもあります」。

Clubhouseの開発元はプライバシーポリシーの中で「当社はお客様の個人データを販売することはありません」と書いているが、ユーザーデータを第三者と「共有」する理由として「広告およびマーケティングサービス」をはじめ、可能性のある幅広い理由を列挙している。

Clubhouseにコメントを求めたが、現時点で返答はない。

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タグ:Clubhouseフランスプライバシー

画像クレジット:Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Aya Nakazato)

Clubhouseがクリエイター向けアクセラレータープログラム開始、スポンサー紹介もしくは月54.6万円の収入を保証

Twitter Spaces(ツイッター・スペース)をはじめとする新規参入者の激しい追撃を受ける中、人気オーディオスタートアップのClubhouse(クラブハウス)は、自社ネットワークでより高品質なコンテンツを提供するための行動を起こした。同社はアクセラレータープログラムを立ち上げた。米国時間3月14日に行われた毎週恒例のタウンホールイベントで、同社は「Clubhouse Creator First(クラブハウス・クリエイター・ファースト)」と名づけた初のアクセラレーターの詳細を説明した。最初は20人前後のクリエイターを集め、作品制作を手助けする。そのためにClubhouseは、クリエイターが作業を始めるために必要なものはすべて提供する。iPhone、AirpPods、iRigなどの機器から、プロモーション支援、ゲストのブッキング、さらにはベビーシッターまで。何より重要なのは、参加したクリエイターにClubhouseが何らかの収益を約束していることだ。

イベント中ClubhouseのCEOであるPaul Davison(ポール・デイヴィソン)氏は、アクセラレーターで最も大切なのはクリエーターが自分の仕事で収入を得るのを支援することだと語った。そのためにClubhouseは、クリエイターをブランドスポンサーと引き合わせる、とデイヴィソン氏は語った。すでにClubhouseにアプローチして参入機会をうかがってブランドがいるのでそれが可能だと、同社は信じている。

特定のショーをスポンサーするブランドをClubhouseが見つけられなかったときは、会社が基本収入として月額5000ドル(約54万6000円)を、クリエイターがプログラムに参加している3カ月間保証する。

おそらくこの緩和策は、他のプロジェクトからClubhouseのショーに人を動かす有力な要因になるだろう。同時に視聴者を増やし、ブランドとの関係を築いてショーを長期にわたって継続することに繋がるだろう。

さらにClubhouseは、アクセラレーター参加者の番組制作を直接手伝うこともある、と私は理解している。

Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が支援するこのソーシャルオーディオアプリは、同VCの新ゼネラルパートナーであるSriram Krishnan(シュリラーム・クリシュナン)氏が共同ホストを務めるThe Good Time Show(ザ・グッド・タイム・ショー)という人気テックショーを成功に導いている。番組には、Clubhouseに投資しているか、同社と何らかのつながりをもっているゲストと共同ホストが定期的に登場し、Elon Musk(イーロン・マスク)氏やMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏といったClubhouse最大のセレブ・ゲストの出演にもこのショーで実現した。

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この形式は繰り返すことができるようだ。デイヴィソン氏がタウンホールミーティングで語っていたように、同社はショーのためにクリエイターとゲストをマッチングする役割も請け負う。つまり、番組プロデュースにも協力するということだ。

デイヴィソン氏は、Clubhouseはアクセラレーター参加者に、何がうまくいくのか、いかないのかや「深く掘り下げたコンセプト開発」に関する意見など、方向性を示すフィードバックを行うことも話した。クリエイターのショーが放送準備完了になったら、Clubhouseはクリエイターをクリエイティブサービスとつないで、プロモーション素材のデザインなどClubhouse外へのマーケティングを支援する。ショーの初期オーディエンスを集めるために、クリエイターが潜在リスナーを招待するための支援も行うかもしれない。

もちろんClubhouseは、これまでもこの種の取り組みを陰で行っていただろうが、アクセラレーターを作ることでさまざまなアレンジが正式なものになり、より多くの有望なクリエーターに専用リソースを割り当てることができる。

しかし、これによってClubhouseは、未解決の議論運営問題に関して、不安定な立場に置かれる可能性がある。

概してブランドは、問題になるコンテンツや有害なコンテンツに自ら関わることを嫌がり、問題が起きるとクリエイターとの契約を解除する。過去には、コンテンツ管理の失敗が原因でトップソーシャルメディアで広告主の集団脱出が起こったこともある。例えばYouTubeで数年前に不適切なコメントを巡って主要ブランドが撤退し、その結果YouTubeの広告ネットワークで許されるビデオの見直しが行われた。そして2020年Facebookは、 同社史上最大の企業ボイコットに直面した。ヘイトスピーチと誤情報の拡散を適切に防ぐことに失敗したFacebookをブランドが非難したためだ。

それらと比べると規模は小さいが(App Annieによると全世界で1200万ダウンロード)、Clubhouseもすでに、女性嫌悪、反ユダヤ主義新型コロナウイルスに関する誤情報などが、それらを禁止するルールがあるにも関わらず許容されていることを非難されている。言葉による虐待を許容した例もあり、一部のユーザーは今もClubhouseのルームで中傷や嫌がらせにあっている(TechCrunchはこうした事例をユーザーから直接聴いているが、許可なく名前を公表することはしない)。

直近では、ニセの専門家がClubhouseのルームを占有し無責任な発言を繰り返していることへの懸念が増大している。多くの自称「エキスパート」がアプリ内で気前よくアドバイスを与えるが、ひと度メンタルヘルスなどの領域にたどり着くと、有害な誤情報を撒き散らし、人々に深刻な被害を与える。

会話管理の方法を改善して悪役を排除し、プラットフォームをブランドにとって安全な場所にすることができなければ、一連の問題はいずれClubhouseを大々的に襲うことになりかねない。

米国時間3月15日から、興味を持ったクリエイターはClubhouse Creator Firstに申し込むことができる。締め切りは2021年3月31日だ。

新しいアクセラレータープログラム以外にも、3月14日のタウンホールでいくつかのニュースが発表された。

同社は、Netflix(ネットフリックス)、OWNおよびHarpo Productions出身のMaya Watson(マヤ・ワトソン)氏をグローバルマーケティングの新たな責任者として招いたことを発表した他、いくつかのプロダクトアップデートについても紹介した。

またその中の1つに、ユーザーは電話番号だけで友達を招待できるようになるというものもある。これで、アドレス帳すべてをアップロードする必要がなくなる。さらに、自分のユーザープロフィールやClubページヘのリンクをシェアできるようになり、roomのリストを表示する際、ユーザーの言語設定をきちんと覚えるようになった。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Clobhouse音声ソーシャルネットワークアクセラレータープログラム

画像クレジット:Freepik / Kristina Astakhova

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

音声SNS「Clubhouse」が「連絡先をすべて吸い上げる」仕様を廃止、プライバシー侵害の指摘で

音声SNS「Clubhouse」が「連絡先を全部吸い上げる」仕様を廃止、プライバシー侵害の指摘で

aap Arriens/NurPhoto via Getty Images

すでに日本では最初のブームは過ぎた感もある、音声チャットサービスのClubhouse。専用アプリをインストールしてログインしようとすると連絡先へのアクセス許可が求められる、つまり連絡先データを全て吸い上げることがプライバシー保護的に問題視されていましたが、これを改めたと発表しました。

Clubhouse公式アカウントは、専用アプリの最新アップデートにて連絡先へのアクセス許可が必要なくなり、招待したい相手の電話番号を手動で入力できるようになったと報告しています。アプリの実験的機能を独自の方法で探し出すことで知られるJane Manchun Wong氏も、それが事実だと確認した上で、プライバシー保護が改善されて良かったと述べています。

これまでClubhouseがユーザーから提供された連絡先のデータをどう扱っているのかは不透明として、テック系ニュースメディアのOneZeroなどは注意を呼びかけていましたが、ようやく対応されたかたちです。

またClubhouse共同創業者のポール・デイビッドソン氏もThe Vergeに対して、ユーザーは前にアップロードした連絡先を削除するよう会社に連絡でき、手動で連絡先を削除できるツールもまもなく提供すると述べています。

ほか(こちらが本来Clubhouseとしては主題ですが)Clubhouseに参加するクリエイターが充実したトークを主催し、聴衆を集め、収益化を支援する「Clubhouse Creator First」プログラムも発表しています。3月31日までの期限付きで、20人のクリエイターを募集中です。

YouTubeが人気YouTuberで盛況となり莫大な収益を上げているように、才能あるクリエイターはSNSに多くのユーザーを集め、市場規模を拡大する原動力になります。日本でもClubhouseが提供が始まった当初は芸能人らが一斉に参加し、すぐに潮が引くように姿を消しているのは「いずれ収入源となると見越して、拠点を築いておくため」との憶測もありましたが、収益化が本格的になればまた戻ってくるのかもしれません。

(Source:Clubhouse(Twitter)、via:The VergeEngadget日本版より転載)

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ソーシャルオーディオアプリClubhouseが800万ダウンロード超え、2021年2月前半に急増
「Clubhouse」の音声データが中国当局に漏れる可能性が浮上、開発元はセキュリティ強化を実施
中国で人気が出すぎたClubhouseがつかの間の検閲回避を経て利用禁止に
Clubhouseと中国、ライバルアプリや生まれつつあるクローンそして政府による情報管理

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Clubhouse(製品・サービス)SNS / ソーシャル・ネットワーキング・サービス(用語)プライバシー(用語)

Clubhouseのリバースエンジニアリング競争で高まるセキュリティ上の懸念

ライブオーディオアプリClubhouse(クラブハウス)の人気が世界中で高まるにつれ、同アプリのデータ運用に関する懸念も増大している。

Clubhouseは現在iOSでのみ利用可能で、一部のデベロッパーは競ってAndroid版、Windows版、Mac版を開発しようとしている。こうした努力は悪意あるものではないだろうが、プログラマーがリバースエンジニアリングをし、オリジナルのコードに基づいて新たなソフトウェアを作成するのに困らないという事実は、同アプリのセキュリティに関し警報を発している。

こうした非公式のアプリの共通目的は、現在のところClubhouseオーディオフィードを、iPhoneを持っていないためにアプリにアクセスできなユーザーにリアルタイムにブロードキャストすることだ。そうした取り組みの1例がOpen Clubhouseで、自らを「Clubhouseの音声を再生するためのフラスクベースのサードパーティーウェブアプリケーション」と謳っている。デベロッパーは、サービス立ち上げから5日後にClubhouseが説明なしにブロックしたことをTechCrunchに認めた。

「(Clubhouseは)ユーザーに多くの情報を求め、それらデータを分析し、乱用さえしました。一方でClubhouseは人々がどのようにアプリを使うかを制限し、ユーザーが本来持つべき権利を与えていません。私からすれば、これは独占と搾取です」。AiXというニックネームのOpen Clubhouseのデベロッパーはこう話した。

この件についてClubhouseに連絡を取ったが、すぐにコメントは得られなかった。

AiXは「楽しみのため」にプログラムを書き、より多くの人がClubhouseにアクセスできるようにしたかった。「Zhuowei Zhang」という名前のデベロッパーも同様のことをした。同氏は招待されていない人がルームやユーザーをブラウズできるようにし、招待されている人が発言はできなくてもリスナーとしてルームに参加できるようにするHipster Houseを作った。Clubhouseは現在のところ招待制だ。ただ、Zhang氏はより良い選択肢に気づき、プロジェクトの開発を中止した

悪意がないにもかかわらず、こうしたサードパーティーのサービスは監視目的で悪用され得ると、リバースエンジニアリングを通じて人気アプリが近く公開する予定の機能を見つけることで知られている研究者Jane Manchun Wong(ジェーン・マンチュン・ウォン)氏はツイートの中で指摘している

同氏はClubhouseの公開roomからのオーディオデータを再ルーティングしているウェブサイトに言及し、「ウェブページの意図が非iOSユーザーにClubhouseを提供することだとしても、セーフガードがなければ、悪用される恐れがあります」と指摘した。

Clubhouseは、ユーザーが公開チャットルームを作れるようにしている。roomが最大収容人数に達するまであらゆるユーザーが参加できるというもので、一方のプライベートroomはホストとホストに承認されたユーザーのみがアクセスできる。

しかしすべてのユーザーがClubhouseの公開ルームの開けっ広げの性質を認識しているわけではない。中国で利用が可能だった短い期間に、Clubhouseは台湾から新疆ウイグル自治区に至るまで政治的にセンシティブな問題の議論で溢れた。こうした話題は中国のネット上では厳しく検閲されている。一部の用心深い中国人ユーザーはセンシティブな発言を理由に警察の職質を受ける可能性について考えをめぐらせた。そうした事態は公には報告されていないが、中国当局は2月8日からClubhouseを禁止している

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Clubhouseのデザインは、達成しようと目指しているコミュニケーションの状態と本質的に対立している。Clubhouseはユーザーに、本当のIDを使うよう推奨している。登録するには電話番号と既存ユーザーの招待が必要だ。ルーム内では、参加者を誰でも確認できる。こうしたセットアップはユーザーがネットワーキングイベントで話しているように語るとき、信頼と快適さをユーザーに植えつける。

しかしClubhouseのオーディオフィードを抽出することができるサードパーティのアプリは、アプリが半公開ですらなく、完全に公開されていることを示している。

さらに厄介なのは、デベロッパーのZerforschungが発見したようにユーザーが「ゴースト視聴」できることだ。つまり、ユーザーはroomの参加者に自らのプロフィールを表示することなくroomの会話を聴くことができる。Clubhouseが雇っているサービスプロバイダーAgoraと直接コミュニケーションを確立することで盗聴が可能となっている。複数のセキュリティ研究者が発見したように、ClubhouseはAgoraのリアルタイムオーディオコミュニケーションのテクノロジーに頼っている。情報筋はまたTechCrunchに提携を認めた

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ここで少しテクニカルな説明が必要だろう。Stanford Internet Observatoryが発見したように、ユーザーがClubhouseでチャットルームに参加するときにAgoraのインフラにリクエストが送られる。リクエストでは、ユーザーの電話番号はClubhouseのアプリケーションプログラミングインターフェース(API)にコントタクトし、その後「トークン」を作る。アプリのオーディオトラフィックのためのコミュニケーション通路を確立するための、アクションを認証するプログラミングの構成単位だ。

テクノロジーアナリストDaniel Sinclair(ダニエル・シンクレア)氏が指摘したように、そこにある問題はClubhouseとAgoraの間が切断状態になり、オーディオデータを送信するAgoraエンドがアクティブな間に、ユーザーのプロフィールを管理しているClubhouseエンドが動かなくなるというものだ。だからこそユーザーはプロフィールをroom参加者に示すことなくroomを盗聴できる。

Agoraとの提携は他の心配のタネにもなっている。主に米国と中国から運営しているAgoraは、IPO目論見書にデータが中国のサイバーセキュリティ法の対象となるかもしれないと記した。同法律では、中国で事業展開するネットワークオペレーターに警察の捜査に協力するよう求めている。Stanford Internet Observatoryが指摘しているように、Clubhouseがデータを中国に保存しているかどうか、その可能性は不確かだ。

ClubhouseのAPIが中国で禁止された一方で、AgoraのAPIはブロックされていないようだ。TechCrunchによるテストでは、ユーザーは現在ルームに参加するにはVPNが必要で、これはClubhouseによる措置のようだが、VPNオフでもルームの会話を聴くことができる。こちらはAgoraによるものだ。公式には存在すべきではないことを踏まえると、中国のユーザーがClubhouseアプリにアクセスする最も安全な方法はどういうものだろうか。中国政府が禁止する前からClubhouseは中国のApp Storeでは利用できず、中国のユーザーは回避策を通じてアプリをダウンロードしていた。

Clubhouseチームはここ数日、データに関する疑問でてんてこまいかもしれない。しかし研究者やハッカーらによるこうした初期観察によりClubhouseはすぐに脆弱性を修正し、数百万人のユーザー以上の成長と評価額10億ドル(約1050億円)につながるかもしれない。

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タグ:Clubhouse

画像クレジット:Thomas Trutschel / Contributor

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

韓国の丁首相が話題のソーシャルオーディオアプリClubhouseに参加

現在は招待制ながらすでに推定800万回のダウンロードがあったClubhouse(クラウブハウス)の人気は世界中で、そしてもともとClubhouseが使われていたテックにフォーカスしたシードコミュニティの外でも続いている。

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Clubhouseに関する最新のニュースがアジアから届いた。韓国のメディアは米国時間2月20日朝、同国の丁世均(チョン・セギュン)首相がユーザーネーム@gyunvelyで公式にソーシャルオーディオアプリClubhouseに加わったと報じている。急成長中の同アプリに参加した世界で最高位の政治リーダーとなった。丁首相のアカウントはバレンタインデー(2月14日)に作られ、「TJ Park」という名前を使っているユーザーによって「ノミネート」された(Clubhouseはプロフィールを認証していない)。

Clubhouseで今週末の丁世均首相(画像クレジット:Danny Crichton、スクリーンショット)

これまでのところ、丁首相は500人弱のフォロワーを獲得し、200弱のアカウントをフォローしており、おそらく世界で最もモバイルでつながっているデジタル経済国の1つである同国でのClubhouseの浸透状況を示している。丁首相のClubhouseでのプロフィールには「あの黄色いジャケット男」とある。これは韓国の政治家が危機時(たとえば新型コロナウイルスパンデミック)に着用する民間防衛ユニフォームのことで、イラストのプロフィール画像の丁首相も着用している。

韓国の政治家は国家危機のときに民間防衛ユニフォームを往々にして着用する(画像クレジット:韓国青瓦台 via Getty Images)

現地の報道によると、丁首相は1時間以上にわたってClubhouseのルームで共に民主党の党員Jung Cheong-rae(鄭清来、チョン・チョンレ)氏と話した。2月19日のFacebook(フェイスブック)への投稿の中で、丁首相は「このアプリが最近『人気』だと聞き、夜の散歩として挑戦しました」と述べている。

丁首相はさらに「予期せぬ質問と反応に少し驚きましたが、新しい体験は楽しいものでした。今後も時々参加すると思います」と述べた。また丁首相は「音声のみであり、誰もがリザーブなしで会話できるという事実によって、他のソーシャルメディアプラットフォームよりも優れたコミュニケーションツールだと考えています。特に、現在我々は顔を合わせないコミュニケーションの時代に生きているからです」と語った。

Clubhouseのroomでの議論には、「実際に本人なのか?」という質問から、不動産価格の高さやスポーツ界の身体的いじめ、暮らしにかかわる政策問題に至るまで、さまざまなトピックがあった。スポーツ界でのいじめはこのところ韓国メディアの見出しを独占している。

Clubhouseはテック専門家やハッスルカルチャーの目利きに定着した一方で、他のソーシャルネットワークではあまり知られていない政治の世界へと著しく進出してきた。

マイアミのFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)市長はマイアミ市の可能性をテック業界に売り込むためにClubhouseを活用している。サンフランシスコ地方検事のChesa Boudin(チェサ・ブーダン)氏はサンフランシスコの未来についてのプラットフォームで「議論」に参加し、ニューヨーク市長を目指しているUBIオタクのAndrew Yang(アンドリュー・ヤン)氏は自身についての議論に参加した。一方、Bitcoin(ビットコイン)の熱烈なファンでTesla(テスラ)を率いるElon Musk(イーロン・マスク)氏はロシアのVladimir Putin(ウラジミール・プーチン)大統領に座談会のためにClubhouseに登場してもらうことを提案さえした

Clubhouseはグローバルで拡大しているが、もしモデレートされた会話がより厳重な調査を受けることになれば、開かれた自由なプラットフォームにとって課題となる。中国では、会話が検閲されなかったわずかな期間を経て現在Clubhouseは禁止されている

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中国で人気が出すぎたClubhouseがつかの間の検閲回避を経て利用禁止に

Clubhouseはメインストリームの正当性と関心を集め続けるのにともない、どうやってクリエイターに対価を支払い、世界が新型コロナ危機から脱したときいかに成長を続けるのかなど、今後の成功に関する疑問も広がり続ける。

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画像クレジット:Jean Chung/Bloomberg / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソーシャルオーディオアプリClubhouseが800万ダウンロード超え、2021年2月前半に急増

ソーシャルオーディオアプリClubhouse(クラウブハウス)はまだ正式リリース前で現在は招待制であるにもかかわらず、世界のダウンロード数が800万回を超えた。モバイルデータ分析会社App Annieが2月18日に発表した新たなデータで明らかになった。推定によると、Clubhouseの世界のダウンロード数は2021年2月1日時点で350万回だったが、2月16日には810万回に達した。この急激な増加は、Tesla(テスラ)とSpaceX(スペースエックス)の創業者Elon Musk(イーロン・マスク)氏やFacebook(フェイスブック)のCEO、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏など何人かの有名人がゲスト登場したことによるものだ。

App Annieはまた、260万回超のインストールが米国でのものだったと推定している。この数字はClubhouseが世界にアピールしていることを強調するものだ。

画像クレジット:App Annie

一方、Clubhouseは公式のダウンロード数や登録ユーザー数を公開していないが、CEOのPaul Davison(ポール・ダビソン)氏は2021年1月にClubhouseの週アクティブユーザー数が200万人に成長したと明らかにした。つまり、月間アクティブユーザー数や登録ユーザー総数はそれよりも多いことを意味する。Clubhouseの登録ユーザー数は600万〜1000万人という推定もある。

App AnnieのレポートについてClubhouseにコメントを求めたが、ユーザー数は公開しなかった。

アプリのインストール数は通常、登録ユーザー数を表すものではない。多くの人が往々にしてダウンロードしたアプリを立ち上げたりサインアップしたりしないからだ。しかしClubhouseの場合、アプリをインストールする人は参加する気があり、この2つの数字はかなり近い。Clubhouseは一般公開されていないため、アプリをインストールしようとしているユーザーはClubhouseの招待を受けているか、すでに利用している友達か親しい人から招待されることを目指しているかだ。

レポートはまた、Clubhouse現象がアプリエコシステム全般に対して、いかに影響をおよぼしているかも指摘した。独自のソーシャルオーディオ体験を提供しているClubhouseの各地域のライバルたちのダウンロード数もこのところ増えている。ライバルには中国、米国、エジプト、サウジアラビア、トルコでユーザーを引きつけているDizhua、Tiya、Yallaなどがある。

たとえばDizhuaは17万4000回のダウンロードがあり、Tiyaは600万回、Yallaは3450万回だったとレポートにある。なかでもYallaは2016年からサービスを展開しており、Clubhouseの人気がYallaのダウンロード数を押し上げている。

これらひと握りのライバルだけでなく、SonarLocker RoomQuiltYoni CircleRoadtripSpaceCapiche.fmYacCappuccinoなどのアプリを含め、ソーシャルオーディオ体験は爆発的に増えている。一方、TwitterはSpacesというClubhouseのライバルを構築中で、同社は米国時間2021年2月17日に3月までにAndroidにサービスを拡大すると明らかにした。FacebookもClubhouseのライバルとなるものを計画しているとの報道もある

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そして現在、みんなの心に浮かぶ疑問は、この成長がどれくらい持続可能なのかということだ。Clubhouseは「長々と話すことで会話を独占する傾向がある人に合う」「そうした会話の多くは退屈なだけ」「Clubhouseは取り憑かれた『ハッスルカルチャー』をサポートするもの」といった懐疑論者は指摘する。また一部の人は、ソーシャルオーディオアプリが新型コロナウイルス後の世界でどのくらいやっていけるのかを疑問視している。コロナ禍後はやることが多くあり、そこには従来のネットワーキングイベントの復活も含まれる。

しかしこうした懸念は、ソーシャルオーディオが、ポッドキャストの視聴やオーディオブックといったモバイルでの話し言葉によるオーディオアクティビティに取って代わることでマーケットを開拓する可能性があることを考慮していない。もちろん、まだパンデミックは続いており、そしてアプリが完全に一般公開されていないことからClubhouseの未来についての疑問の答えを得るのは時期尚早だ。

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画像クレジット:Freepik / Kristina Astakhova / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」のメンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」メンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

「若い才能が活躍する入り口となる」ことを目指すシードVCの「THE SEED」は2月18日、上場企業経営の実績を持つエグゼクティブが「インターン」のメンターとして参画するプログラム「#THESEEDハウス」を開始したと発表した。Clubhouseにおいて、毎週月・水・金11時から30分間開催している。

THE SEEDは、次世代を担う才能が集う場をオンラインで設けるために、「#THESEEDハウス」を開始したという。オープンなチャネルとして開催し、質問や話が気軽にできる場としていくそうだ。

#THESEEDハウスには、上場企業の経営実績や士業としての実績を持つ方が「インターン」のメンターとして参画。フラッと立ち寄って、「VCやエンジェル投資家との投資面談」「同世代起業家との接点」「創業者探し」「メンター発見」などが起こる機会を提供していくとしている。

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」メンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

  • 須田仁之氏(弁護士ドットコム、グッドパッチ監査役。毎回参加予定)
  • 中林紀彦氏(ヤマトホールディングス執行役員)
  • 西尾公伸氏(第二東京弁護士会)
  • 原田明典氏(DeNA 常務執行役員)

THE SEEDは、廣澤太紀氏が前職East Venturesから独立し、シードラウンド向けとして2018年に立ち上げたファンド。若い才能が活躍する入り口となり、大きな挑戦の後押しをするとしている。1000万円前後の出資を行い、その後シリーズAで資金調達を達成するための支援として、同世代起業家のネットワーク提供や、ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家の紹介などを行っている。

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「Clubhouse」の音声データが中国当局に漏れる可能性が浮上、開発元はセキュリティ強化を実施

「Clubhouse」の音声データが中国当局に漏れる可能性が浮上、開発元はセキュリティ強化を実施

Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

日本でもにわかに話題となり、あっという間に一部の人々に浸透した感のある音声チャットサービスClubhouseですが、その会話データが中国政府に流れている可能性が浮上し、セキュリティ対策の強化が行われています。

問題を発見したスタンフォード大学の研究者によれば、Clubhouseの開発者Alpha Explorationはサービス提供のために上海を拠点とするソフトウェア企業Agoraのサーバーをバックエンドとして利用しており、さらにユーザーごとにユニークなClubhouse IDとチャットルームIDが平文でやりとりされることから、Agoraが生の音声データにアクセス、保管できる可能性が高いことがわかったとのこと。

IDが平文で流れているということは、Clubhouseのトラフィックを眺めていれば、どのチャットルームに誰が集まっているかを簡単に知ることができます。また会話のメタデータがすべて中国に流れてから中継されていることで、中国当局がこれを国家安全保障上の脅威だと見なせば、中国の法により音声データを含むすべてを複製し政府に提供させることができてしまいます。

当然ながらAgora側はこの報告を否定し、データを保存することもなければ、音声データそのものが米国内にあれば中国政府がそれを入手することもできないと反論しました。Alpha Explorationもサービスを開始の際「プライバシーの取り扱いに関する事情を考慮し、中国ではサービス提供をしないことを決めた」と説明しています。

しかし、中国国内のユーザーがClubhouseアプリの入手方法を見つけ出し、中国政府が先週、アプリの使用を禁止したことは、それが中国でも利用できていたことを意味します。

音声データが仮に中国国内の他の企業を介していたとすれば、当局がそれを手に入れることもできるはずです。ただ、研究者らはAlpha ExplorationがAgora以外の中国企業を利用しているとの証拠はないとしており、いまのところ中国政府には会話内容が渡るようなことはない模様です。

ただ、Alpha Explorationは中国国内でのサービス使用に成功したユーザーについても保護するとしており、「アプリが中国国内のサーバーに情報を送信しないよう、暗号化措置を追加する」と述べました。暗号化はサードパーティーの企業に依頼し72時間ほどで完了するとしており、中国からユーザーに関する情報やデータを取得することは難しくなるはずです。

ただ、サービスを提供していない中国国内でそれを利用できたユーザーは、おそらく都心部に住む富裕層と考えられ、中国当局の監視の標的になる可能性があります。いまはまだ招待制で、端末が比較的高価なiPhone向けにしかリリースされていない状況ですが、サービスが収益化を見据えて成長を続け、あらゆる人が安心して利用できるようにするためには、暗号化対策を追加し安全性の高さをユーザーにアピールするのは重要なことです。

(Source:Stanford Internet ObservatoryEngadget日本版より転載)

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ClubhouseのリンクをSNSで見栄え良くシェアするツール「ClubLink」

人気の音声チャットプラットフォームClubhouse(クラブハウス)には、集会やイベントの情報をソーシャルメディアで共有する方法が用意されているが、表示されるリンクはおよそおもしろくない。そんなときは、新しいリンク共有ツールのClubLink(クラブリンク)が助けてくれる。このツールを使うと、ホストはルームの名前や参加者、日時(ホストの時間帯による)、さらにはホスト自身のプロフィールアイコンの入った画像を、ソーシャルメディアのプレビューに載せることができる。

作ったのはドイツ在住のオンラインマーケターである Jens Polomski(イェンス・ポロムスキー)氏とプログラマー、デジタル・マーケターのPeter Thaleikis(ピーター・タレイキス)氏という2人だ。

ポロムスキー氏は、TwitterにシェアされたClubhouseのリンクを見ながら、どうにも見栄えが良くないと思ったことから、2021年1月このアイデアを思いついたと語った。

「多くの人たちが、特にTwitterでシェアしているのを目にしました、なぜならClubhouseにこの共有機能があるからです」と彼はいう。「でも、このプレビュー画像はできが悪くて重要な情報が入っていません」。

ポロムスキー氏はタレイキス氏に声をかけ、もっといいものを作るのを手伝ってくれるよう説得した。

その結果、誕生したClubLinkの使い方は簡単だ。ClubhouseイベントのリンクをClubLinkのウェブサイトに貼り付けるだけで、自動的にClubLinkができ上がる。手順はtinyurl.comのようなURL短縮サイトと似ている。

画像クレジット:ClubLink

しかもClubLinkは、ただ短縮URLを返すだけではない。ツールは貼りつけられたClubhouseリンクを訪れ、スクリーンショットを撮って画像の作成に使う。ただし、Clubhouseのデータをスクレイピングしているのではない、とポロムスキー氏はいう。作成する画像のファイル名にはホストの名前を入れて見つけやすくする。おそらく、将来の検索エンジン最適化にも役立つだろう。

実際、ツールが開発されたとき、ClubLink URLのSEOは考慮されていた。これは作者たちがデジタルマーケティングの経験があることからも想像できる。

「私たちはリンクのSEO要素をできる限り良くするよう注意しています。それはClubhouseが今やっていないことです」とポロムスキー氏はいう。しかし、こうした努力がどこまで有効かを判断するにはまだ早すぎる、なぜならClubLinkのURLが作られたのは先週が最初で、Googleにインデックスされたのはまだわずかだからだと彼は語った。

ClubLinkウェブサイトでリンクを作ると、TwitterかFacebookかLinkedInで今すぐシェアできるページが表示される。

自分のルームを事前に公表しておくことは、このオーディオベースのソーシャルネットワークでフォロワーを獲得する重要な方法なので、多くのホストがこの新ツールを使い始めるに違いない。

ClubLinkを利用すると以下のようになる。

 

もちろん、roomにいる時にリンクをシェアするのも有。すばらしいルームを見つけてみんなに知らせたいと思った時は特にそうだ。Clubhouseは最新のアップデートで、ルームにいる時に 「+」 をタップするとソーシャルメディアに投稿できるリンクが得られるようになった。残念ながらこの「room」リンクはClubLinkツールではまだ使うことができないが、解決方法をすでに検討中だと彼らはいう。

ClubLinkは、最近いくつか登場しているClubhouseパワーユーザー向けの拡張機能や新機能を提供するツールの一例だ。

clubhousebio.xyzにあるClubhouse Bio Creatorは、プロフィールの略歴をデスクトップで作ってからスマホのClubhouseに貼り付けることができる。プロフィール写真を目立たせるためのツールには、ほかにClubhouse GlowClubhouse Avatar MakerThriveepicのCanvaテンプレートなどがある。

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タグ:ClubLinkClubhouse

画像クレジット:Thomas Trutschel / Contributor

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国で人気が出すぎたClubhouseがつかの間の検閲回避を経て利用禁止に

人々が1週間の旧正月休暇を迎える準備をしていた中国では、現地時間2月8日夜、数千人におよぶユーザーがに突然Clubhouse(クラブハウス)にアクセスできなくなったことに気づいた。WeChatグループ内では、Clubhouseのユーザーが慌てて状況を報告し、最新のライブオーディオアプリにまたアクセスする方法を求めて助け合おうとした。

ドロップイン音声チャットのスタートアップClubhouseは、このところ中国で急速に勢いを増しており、早い段階から多くのユーザーがさまざまなトピックについての会話をしていた。しかしこのアプリは、他の米国ベースのアプリやサービスと同じ運命をたどる可能性が高いと思われる。それは、当局による禁止だ。2月8日の時点で、Clubhouseが直面しているのは確かにその状況だとTechCrunchは確認した。アプリのウェブサイトはブロックされていないままだが、中国のユーザーは、Clubhouseアプリにアクセスできなくなった。中国のインターネット規制に準拠するためにアプリのモデルをどれだけ変更しなければならないか考えると、アプリが同国に戻ってくる可能性は低い。

現地時間2月8日夜、中国のユーザーがClubhouseにアクセスしようとすると通知が出て、アクセスできなくなった

Clubhouseは本拠地の米国でも、効果的なモデレーションと虐待防止が実践されていないという批判に直面してきた。それを考えると、政府が不適切と判断した情報の拡散を抑止するための措置をより厳格に実施している中国の法に触れたことは、さほど驚くことではない。同アプリはまた、正式にApple(アップル)の中国のApp Storeを介して利用可能ではなかった。しかし、ユーザーが自分のデバイスにアプリをインストールしていた場合、アプリとそのオーディオルームへのアクセスは、これまではVPNを使用することなく自由に利用可能だった。

以前、TechCrunchが報じたように、同アプリは9月のグローバルローンチ後、中国のApp Storeでも短期間利用可能だったが、10月に削除された。その際Clubhouseがアプリを削除したのか、Appleが削除したのかは不明だ。

関連記事:Clubhouseと中国、ライバルアプリや生まれつつあるクローンそして政府による情報管理

中国で検閲を監視する団体であるGreatFire.orgのキャンペーンとアドボカシーディレクターであるBenjamin Ismail(ベンジャミン・イスマイル)氏はこう語っている。「これはAppleのやっていることではありませんが、彼らはおそらく板挟みの窮地を脱して喜んでいるんじゃないでしょうか。Appleの関与によるApp Storeからの削除から、当局によるサーバーのブロッキングへと議論が移りますから」。

Clubhouseは中国のApp Storeに掲載されていなかったため、中国本土からどれだけの人数がプラットフォームを利用していたのかは不明だ。中国ではタブー視されている1989年の親民主化運動「天安門 事件」を議論するルームでは、禁止前の2月8日の午後、参加者数が最大5000人に達した。同じトピックに焦点を当てた別のルームには、2000人以上のユーザーが集まった。

北京時間の2月8日午後7時頃には、ClubhouseのAPIがブロックされたとGreatfire.orgがTechCrunchに伝えた。一部のユーザーはWeChatグループ内で、中国の電話番号で検証コードを取得できなくなったと報告しており、障害のレベルに手がかりを加えている。中国の多くのユーザーは中国の電話番号を使ってサインアップしており、これは国から発行される実在のIDとリンクしているため、警察が彼らを特定するのが容易になる可能性がある。

過去2週間で、Clubhouseは中国本土のいくつかのコミュニティ内で人気が急上昇し、スタートアップ、投資、アカデミック、または海外体験のバックグラウンドを持つ人々などがそれに含まれていた。彼らの多くは、無料で政治的な議論がプラットフォーム上で頻繁に行われていることを考えると、同アプリは中国で長く続かないだろうと認識していた。「Clubhouseは中国でどのくらい続くのか」、または「Clubhouseを利用しているために、お茶を飲みましょうと誘われたことがあるか」というタイトルのClubhouseルームは、多くのユーザーを引きつけていた。「お茶を飲む」というのは、取り調べを受けるために警察に連行されることを意味する隠語だ。

禁止される数時間前、中国の国営新聞であるGlobal Timesは「Clubhouseは『言論の自由がある天国』ではないと中国本土のユーザーは語る」という記事を掲載し、このアプリを「反中国」コメントが盛り上がっているプラットフォームだと説明するユーザーの言葉を引用した。

TechCrunchが米国時間2月6日に報じたように、今回の禁止に先立つClubhouseの初期の成功は、すでにドロップイン音声SNSを中心に設計された多くの国産の代替アプリの誕生を促している。しかし、オリジナルのアプリ自体が国内でアクセスできなくなったのと同じ理由で、これらの似たような取り組みが、中国でのClubhouseの人気を再現するのは難しいかもしれない。

TechCrunchの得た情報によると、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)のようなグレート・ファイアウォール(GFW)の迂回ツールを使って、中国本土の一部のユーザーはClubhouseへのアクセスを取り戻すことに成功したという。一部の機能では、VPN経由でルームに入っている限り、VPNをオフにした状態でも音声を聞いたり話したりできるようになっている。TechCrunchは以前、米国と中国を拠点とするAgoraが、Clubhouseのライブオーディオインタラクションが利用するSDKを提供していると報じている。

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画像クレジット:Thomas Trutschel / Contributor

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(文:Darrell Etherington、Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

Clubhouseは中国でも流行るのか?ライバルアプリや生まれつつあるクローンそして政府による情報管理

中国時間2月5日になったばかりの真夜中過ぎに、私は中国のスタートアップコミュニティで有名な、Feng Dahui(フェン・ダーウェイ)氏が主催するClubhouse(クラブハウス)のroomを偶然見つけた。0時半頃だったが、まだ500人近くのリスナーがいて、その多くは中国のエンジニア、プロダクトマネージャー、起業家だった。

その場の議論の中心となっていたのは、仮想ルームの音声チャットに気軽に参加できるアプリClubhouseが、中国で成功するかどうかということだった。その問いは、ここ数週間私も自問していたものだ。現在シリコンバレーで、オーディオソーシャルネットワークに関する誇大広告が渦巻いていることを考えると、中国の知識豊富で技術に精通したユーザーたちが、このプラットフォームに群がり始めるのは当然のことだ。中国ではアプリ招待への需要が高まっていて、人々は最高100ドル(約1万500円)ほどを払って転売屋から招待を購入している。

私が話した多くのユーザーは、このアプリは中国でその可能性を完全に発揮することはなく、またプロダクトマーケットフィットが行われることもないままに禁止されるだろうと信じている。実際、多くの人が参加しているいくつかの中国語ルームでは、仮想通貨取引から香港での抗議活動に至る、中国では通常検閲されている話題が触れられている。

慰めになるかどうかもしれないが、Clubhouseのクローンや派生商品は中国の中ですでに開発されつつある。Herockというニックネームで通っている起業家でブロガーの中国人は、似たようなことに取り組んでいる「少なくとも数十の国内チーム」を知っていると私に教えてくれた。さらに中国では、音声ベースのネットワーキングは、異なる形態ではあるものの、何年も前から存在している。もしClubhouseがブロックされた場合、いずれかの代替アプリは成功するのだろうか?

情報管理

Clubhouseの直接的なクローンは、おそらく中国では使えるようにはならないだろう。

10億人近くのインターネットユーザーを抱えるこの国では、いくつかの要因がその見通しを暗いものにしている。Clubhouseの主要な魅力は、リアルタイムで会話が有機的に流れることだ。しかし名前を出すことは拒否したある中国のオーディオアプリの創業者は「中国政府がコントロールなしに、自由な議論が起こり広がることを許すことがあり得るでしょうか」と反語的に問いかけた。たとえば中国でのビデオライブストリーミングは、誰が話すことができて何をいうことができるかを制限する厳しい規制監督下にある。

そして匿名創業者は、2011年に行われた有名なネット上の抗議運動を引用した。多数の小規模業者たちが、料金値上げ案を巡ってAlibaba(アリババ)のオンラインモールへのサイバー攻撃を開始したのだ。彼らがお互いの行動の調整に使っていたのはYYというツールで、最初はゲーマー向けの音声チャットソフトとしてスタートし、後に動画ライブ配信で知られるようになった。

「当局はリアルタイム音声通信の威力を恐れています」と創業者は付け加えた。

Clubhouseがすでに検閲の対象になっている兆候がある。Clubhouseは中国内で仮想プライベートネットワーク(VPN)やその他の検閲迂回ツールを使うことなく完全に機能するが(少なくとも今のところは)、iOS専用のアプリは中国のApp Storeでは利用できない。Clubhouseは、2020年9月下旬に世界リリースされた直後にストアから削除されたと、アプリ分析会社のSensor Tower(センサータワー)は述べている。

現在中国のユーザーがClubhouseをインストールするためには、他国のApp Storeに切り替えてアプリをインストールする必要があり、ユーザーへのリーチがさらに制限されている。

Apple(アップル)が、政府のアクションを見越して先制的にClubhouseをストアから削除したのかどうかは不明だ。主要な海外アプリの削除が遅れることで検閲側から非難されることは予想される。あるいは、リアルタイム放送は、いかなる形であっても中国の規制当局によってチェックされないことはないということを知って、Clubhouseがアプリ自体を自主的に削除したのかも知れないが、これは必然的にユーザーエクスペリエンスを損なうことになる。

Clubhouse自身の中国進出の優先度は、他の地域で受け入れられつつあることを考えると、かなり下がっているだろう。Sensor Towerの推計によれば、Clubhouseアプリはこれまでのところ、世界で約360万件のインストールを数えている。このアプリのインストール数の大部分は米国を起点としており、新規のダウンロード数は約200万回、次いで日本とドイツが合わせて40万回以上のダウンロード数を記録している。

Clubhouseのエリートたち

中国スタートアップ界の重鎮、フェン・ダーウェイ氏が主催するClubhouseルーム(画像クレジット:TechCrunch)

中国のインターネット上で検閲なしでオープンな議論を行うことは難しそうだということが、市場にまだ独自のClubhouseがない理由なのかもしれない。しかし、たとえClubhouseのようなアプリが中国で存在を許されたとしても、Douyin(ドウイン、抖音。TikTokの中国語版)やWeChat(ウィーチャット)のようには全国的で大規模なものにはならないかもしれない。

このアプリは「エリート主義的」で、音声版Twitter(ツイッター)のようなものだと、NASDAQ(ナスダック)に上場する中国の音声プラットフォームLizhi(リージー、荔枝)の、CEOで創業者のMarco Lai(マルコ・ライ)氏は語った。これまでのところ、Clubhouseの招待制モデルは、米国のユーザーに関しては主にテック、アート、セレブリティ業界に限定されている。Herock氏の観察では、中国国内のユーザー層もこの傾向を反映しており、特に金融、スタートアップ、プロダクトマネジメント、暗号通貨トレーダーなどの分野に集中している。

しかしこのようなユーザーの中にも、自由に使える時間の問題がある。先日の夜は、深夜にByteDance(バイトダンス)社員たちの会話を立ち聞きした。私はほとんどの場合には、仕事が終わった後の深夜近くにClubhouseに入っている。実際それが、中国でのユーザー活動がピークを迎える時間帯だからだ。中国のプロフェッショナル向けネットワーキングコミュニティRaimaker(レインメーカー)の創業者であるZhou Lingyu(チョウ・リンユー)氏は、Clubhouseは中国で多くのユーザーを引きつけることができるだろうかという私の問いかけに、「中国に、そんなに十分な時間を持つ人はいるのでしょうか?」と答えた。

彼女の発言はすべての人には当てはまらないかもしれないが、Clubhouseがターゲットにしているように見える、あるいは少なくとも惹きつけているように見える中国のハイテク中心の高学歴層は、中国のハイテク企業で一般的にみられる悪名高い「996」スケジュール(9amから9pmまで週6日働く)で働いている可能性が高い層でもある。Clubhouseが奨励する「有意義な会話」は望ましいものだが、アプリの持つリアルタイムで自然発生的な会話の性質は、より効率的で管理しやすい時間の使い方を好む可能性の高い996ワーカーたちにも多くの負担を求めることになる。

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モデレーターが活動的であり続けるためには、他の人間とつながるという純粋な情熱とは別に、物質的なインセンティブも必要かもしれない。1つの可能性のある解は、質の高い会話をポッドキャストのエピソードに変えることだ。「Clubhouseは、1回限りのカジュアルな会話のための場所です。質の高いコンテンツを制作している人は、会話を録音して、後で繰り返し聞くことができるようにしたいと思うでしょう」とチョウ氏は述べている。

中国内の対応品

中国では、オーディオネットワークは少し違うかたちで使われてきた。一部の企業は、ゲーミフィケーションを重視し、アプリに遊び心のあるインタラクティブな機能を満載にしている。

たとえばLizhiのソーシャルポッドキャストアプリはただ聞くだけではない。アプリではそれに加えて、リスナーがホストにメッセージを送ったり、バーチャルギフトを使ってチップを渡したり、詩を読んでいるホストを聞きながら自分の声を録音したり、オンラインカラオケコンテストで競い合ったりといったことを行うこともできる。

ホストとリスナーの間の交流は、Lizhiの運営スタッフがキャンペーンをデザインし、コンテンツの品質とユーザーのエンゲージメントを確保するために舞台裏でコンテンツ制作者と協力しているため、比較的整然と行われている。それに比べてClubhouseの成長は、より有機的なものになっている。

「中国のプロダクトは、現実の生活の中での自然な社会的行動をプロダクトの中に再現することよりも、観戦やパフォーマンスに重点を置いています。Clubhouseの機能はシンプルです。どちらかというと喫茶店に近いですね」とライ氏はいう。

Lizhiのもう1つの音声製品であるTiya(タイヤ)は、Clubhouseに近いものと考えられるが、Tiyaのユーザーは15歳から22歳の若者が多く、ゲームやスポーツ観戦をしながら音声でチャットができるエンターテイメント性に重点が置かれている。それもまた、交友関係の必要性をあおる。

2019年にサービスを開始したDizhua(ディシュア)も、Clubhouseと比較されている中国製のアプリだ。ルーム発見のために、人びとの既存のネットワークを利用するClubhouseとは異なり、Dizhuaは匿名のユーザーを彼らが登録した関心事項に基づいてマッチングする。Clubhouseでの会話は、気軽に始めたり終えたりすることができる。Dizhuaはユーザーに、テーマを選んで留まり続けることを奨励している。

「Clubhouseは純粋なオーディオアプリで、タイムラインもコメントといったものもありません」と、中国のベンチャーキャピタル企業内専門家であるArmin Li(アーミン・リー)氏は述べている。「それはぶらぶら歩きや、ながら作業のように、ユーザーの目的が明確でないようなシナリオ向けの、カジュアルで一時的なスタイルなのです【略】その高いコミュニティ参加率、コンテンツの質、ユーザーの質は、中国の音声プロダクトには見られないものです」。

要点は、中国のプラットフォーム上で行われる会話は、コンテンツ監査人によって監視されているということだ。中国のネットプラットフォームでユーザー登録を行う際には実名確認が必要なので、ネット上には本当の匿名性は存在しない。ユーザーが議論できるトピックは限られており、多くの場合、楽しくて無害なものに傾きがちだ。

にもかかわらず中国の人がClubhouseに参加する理由は何だろう?私のようにFOMO(時代遅れになることへの恐れ)から参加した人もいる。起業家たちは常に次の市場機会を探し求めているし、インターネットの巨人のプロダクトマネージャーたちは、Clubhouseで学んだことの1つ2つでも自社の製品に応用できることを期待している。一方、Bitcoinのトレーダーや活動家は、Clubhouseを中国の規制当局の権限外にある避難所と見なしている。

テクニカルサポート

Clubhouseに関して印象的な点は、中国内でとてもスムーズに動いていることだ。海外のアプリは、たとえ中国内で禁止されていない場合でも、サーバーが中国から離れているために読み込みが遅くなることが多い。

Clubhouseは、ときには何千人もの参加者が集まる巨大なチャットグループをサポートする技術を、実際に自社で開発しているわけではない。その代わりに、Agora(アゴラ)社のリアルタイムオーディオSDKを使用しているのだと2つの情報ソースが教えてくれた。また、South China Morning Post(サウスチャイナ・モーニング・ポスト)紙もそのことを報じている。AgoraのCEOであるTony Zhao(トニー・ジャオ)氏にパートナーシップの有無を確認したところ、彼は電子メールで、自社とClubhouseとの関係に関しては肯定も否定もできないと返信してきた。

その代わりに彼は、世界中の200カ所以上の共同データセンターで稼働し、インターネットを覆っているAgoraの「仮想ネットワーク」を強調した。そこで同社は、アルゴリズムを使用してトラフィックを計画し、ルーティングを最適化している。

注目すべきは、Agoraの運営チームは主に中国と米国にいるということで、必然的にClubhouseのデータが中国の規制の範囲内にあるかどうかについて疑問が生じる。その可能性については同社がIPO目論見書の中で触れている。

Agoraのようなリアルタイム音声技術プロバイダーを利用すれば、機を見るに敏な者なら低コストでClubhouseのクローンを迅速に構築することができる、とHerock氏は述べている。現地の規制上の課題やユーザーの行動が異なるため、中国の起業家がClubhouseを直接コピーすることはないだろう。しかし彼らは、Clubhouseまわりの過剰ともいえる人気が消えてしまう前に、音声ネットワーキングを使った独自の解釈を生み出すために競争をすることになるだろう。

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

イーロン・マスク氏がClubhouseに登場、ファンがYouTubeへライブストリーム、途中からRobinhood CEOへのインタビューに

米国時間2月1日の深夜、今、シリコンバレーで最もホットな音声SNS「Clubhouse」にElon Musk(イーロン・マスク)氏が現れた。その様子は現在(日本時間2月1日20時)でも、ここここで聞くことができる。

Clubhouseでのやりとりを要約すると、マスク氏はClubhouseを利用し、宇宙旅行や火星のコロニー、Bitcoinなどした暗号通貨など「彼のベース」となるものについて話をした。いくつかのテーマにおいてマスク氏は、彼の「オリタナティブ」な見解に関するいくつかの神話を覆すことができた。時折、いつもはミームで煽るTwitterのフィードよりもはるかにニュアンスのある発言をしたが、これはマスク氏がまじめだったからではなく、単にフォロワーと楽しんでいただけなのかもしれない。彼はほぼ「私は救世主ではない、ただのいたずらっ子だ」と言っているようだった。

これまで行われてきた火星での生活の可能性に関する説明とは対照的に、マスク氏はそれに対するバラ色のビジョンは描いていなかった。人類が火星で生存し続けることに価値はあるが、そこでの生活は厳しいと語った。

また、マスク氏はAIから新型コロナウイルスワクチンに至るまで、多くのテーマについて話した。

最後の4分の1になり、RobinhoodのCEOであるVlad Tenev(ウラジミール・テネフ)氏がステージに上がった時に、話は大きく転換した(明らかにマスク氏によるものだが、裏で調整が行われた気配があった)。

マスク氏は突然、インタビューアーになり、テネフ氏に人気株取引掲示板のWallStreetBetsの騒動で、最後に何が起こったのかを明らかにさせた。

その後、Clubhouseのroomは、Robinhoodに大口投資家であるa16zによる大規模なPR行為と呼ばれるものに変わった。5000人の参加者、何百人ものジャーナリスト、そしてYouTubeのライブストリームの視聴者は期待の熱いイベントに集まった。テクロノジーに関する公の議論の中でジャーナリストたちのの間に割って入ろうとするa16zの新しいメディア「定刻」が広がり始めている姿を私たちは目の当たりにすることができた。

【TechCrunch Japan編集部】
Clubhouseにおけるイーロン・マスク氏の発言やRobinhoodのCEOであるウラジミール・テネフ氏へのそれぞれ質問は、US記事で読むことができる。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Katsuyuki Yasui)

人気の次世代音声SNS「Clubhouse」がクリエイターへの支払い計画を発表、Andreessen Horowitz主導の新ラウンド準備中

音声によるライブチャットを利用したSNSであるClubhouseは新しい資金調達ラウンドを準備していることを確認した。ただし具体的な金額は明らかにされなかった。シリーズBラウンドをリードするのはAndreessen HorowitzでパートナーのAndrew Chen(アンドリュー・チャン)氏が担当する。この発表の直前にThe Informationが「Clubhouseは評価額10億ドル(1038億円)で資金調達中」という記事を公開していた。TechCrunchは今回のラウンドの評価額、調達予定額を確認しようとしている。それと別に我々は、Cubhouseがサブスクリプション、チップ、チケット販売などにより、クリエイターがプラットフォームで収入を得る機能を導入する計画を確認している。

シリーズBラウンドによる資金はこの「クリエイター助成プログラム(Creator Grant Program)」にも充てられる。Clubhouseブログによればのプログラム「プラットフォーム上で人気を得つつあるクリエーターをサポートする」ための仕組みだという。Clubhouseのモバイルアプリはセレブや政治家などをクリエイターとして引きつけることに驚異的な成果を挙げている。クリエーターが収入を得られるようにすることは現在のクリエーターの関心を持続化させると同時に、新たな関心を刺激してメンバーへの参加を促すのに役立つことは間違いない。YouTubeやTikTokでインフルエンサーのようになれるというのは魅力的な可能性だ。

もちろん、ユーザーの収益化と同時にClubhouse自身の収益化も追求されるはずだ。今のところ、このプラットフォームはすべてのユーザーに無料で提供されており、ユーザーに課金するプラン、方法はまだない。広告もサポートされていない。メンバーがクリエーターに支払いを行う方法が追加されれば、Clubhouse自身がその一部を手数料として保持する機会が得られるはずだ。

クリエイターのための収益化機能の開発スケジュールは、現時点ではまだ十分に厳密に決定されていないようだ。Clubhouseは3つの分野(チップ、チケット、サブスクリプション)について「この数カ月間 」に最初のテストを開始すると述べている。YouTubeなどのクリエーターに収益化の機会を提供するPatreonのような機能をClubhouseプラットフォームに組み込むことを考えているのかもしれない。この中で「チケット」は独特で、座談会形式のClubhouseイベントと相性の良いオプションだ。チケットの導入は バーチャルイベントを開催したい企業などがClubhouseを利用することを後押しする可能性がある。

同社のアプリは今のところiOS版のみだが、Android版の開発を開始し、ニーズの急増に対応できるようバックエンドのスケーリングにも投資する。人材の獲得、不正利用を検出し排除するためのツールの開発にも力を入れていくと発表した。Clubhouseは、過去に悪用の防止に関して失敗があったと批判されたことがあったので開発のこの側面には各方面の関心が集まるだろう。同社はまたユーザーグループ(アプリの用語では「クラブ」)を検索、表示する方法の改良も行う。

Clubhouseがホストしている公開のクラブ「タウンホール」でファウンダー、CEOのPaul Davison(ポール・デビッソン)氏は同社には週あたり200万人のアクティブユーザーがいることを明らかにした。また現在同社の投資家は180を超えるとと述べていることも注目だ。シリーズB段階のスタートアップにしては大きな数だが、その多くは小規模な独立投資家で投資も少額だろうと思われる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

シリコンバレーに広がる冷笑主義に対抗する方法はSubstack、Clubhouseそしてマイアミ脱出だ

映画「Field of Dreams(フィールド・オブ・ドリームス)」ではないが「それを作れば人はやってくる」というのがスタートアップの信念だ。しかし残念ながら本当に人が来るまでの道のりには、何もかも否定しようとするシニシズム(冷笑主義)が満ちることになる。

今年だけでもテクノロジービジネスでは何百万回ものギャンブルがあった。そうした賭けの一部にはベンチャーキャピタルの投資の決断も含まれていた。また地域を選ぶ賭けもあった。サンフランシスコの未来に賭けるのがいいだろうか?それとも他のテクノロジーハブの成長に賭けるべきか?プロダクトに新機能をリリースするべきか、既存機能のブラッシュアップに時間を割くべきか?今の会社に賭けるか、新しい会社を探すか?

2020年の締めくくりとして、こうした賭けの結果について成績表を作ってみよう。このビジネス全体を通してその未来に熱狂な支持を集めることに成功したのは「メディア、特にオーディオメディア、米国のある有名大都市」の3つだけだった。

具体的にいえば、ニュースレター配信のSubstack、ソーシャルメディアのClubhouse、そして新興テクノロジーハブのマイアミだ。もちろんまだ先物買いではある。どれも夢を実現するまでにはまだまだ距離がある。Substackは、テキストベースのジャーナリズムを再建しようと試みている。Clubhouseは、対話可能な音声ベースのソーシャルプラットフォームとしてラジオを活性化するつもりだ。マイアミはこれまでスタートアップ育成の巨大なエコシステムがなかった場所にもサンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンに匹敵するテクノロジーハブを建設できるという賭けだ。

こうしたオプティミズム(楽観主義)は脅威、失敗、障害の可能性を仔細にいい立てる人々からあらゆる否定を浴びている。

現在のテクノロジー業界を覆う否定的な空気は、パンデミックを筆頭に業界を絶え間なく襲った悪いニュースに疲れたための一時的な倦怠感に過ぎないといいいたいところだ。しかしここに底流するシニシズムは新型コロナウイルスがトレンドトピック入りするはるか以前から業界に深く浸透していた。

今までにないほど、多くのスタートアップが資金を調達している(評価額も上昇を続けている!)し、買収や上場によって「出口」を得たスタートアップの数も2020年12月初めの時点で過去数年間で最高だ。

それでも悲観的分析は根強い。そのほとんどをは、テクノロジー業界を覆うある種の不安から生じている。Substackはテクノロジーの不安とメディアの不安が重なる部分に位置するので特に目立つ。テクノロジー側からの批判は、「あんなものはただのメールサービスだ!」と要約できる。誰もがSubstackのようなサービスならこの10年、誰でも構築できたはずだ。そう思えるだけにSubstackの単純さと巨大な評価額は脅威だ。

事実、もともとのコンセプトが単純なだけにSubstack的な試みは何度もあった。しかし単純さは他の多くの成功した消費者向けスタートアップに共通するDNAだ。なるほどSubstackのテクノロジーの本質は電子メールだ。StripeにCMSエディターをプラスしたメール配信サービスともいえる。有能なエンジニアはコンセプト版でよいなら1日で書ける。ところが誰もやらなかった。そこでスタートアップの世界では疑いと不安が始まる。

メディアの観点からはどうだろう?ニュースも出版も過去数年間はひどい状態だった。当然のことながら、マスコミのシニシズムはひどく強いものとなっている(もともとジャーナリストというのは楽観的なことを口にしない人種だ)。マスコミ側の批判の大部分は「Substackは数年前からあったのにマスコミの崩壊を止めるのに少しも役立たたなかった」と要約される。

そのうちに助けになるかもしれないが、大きな影響を与えるようなサービスが出現するには時間がかかる。スタートしたばかりの企業がマスコミを完全に再構築する可能性さえあると見られるているという事実が、まさにSubstack(や類似のスタートアップ)を賭けるべき対象として魅力あるものにしているのだ。Substackは今すぐに解雇された数万人のジャーナリストに再び職を与えたり、ニュース報道や出版ビジネス内の不平等を是正したり、フェイクニュースを追放したりすることはできない。しかしこのペースで成長し機能の構築が続くとしたら、10年後にはできるかもしれない。

現在すでに完璧でないといって対象を否定するシニシズムは、2020年のスタートアップビジネスに流れる奇妙な動きの1つだ。1人か多くて数人の起業家と少数の社員のスタートアップが、創立初日に完璧なプロダクトをリリースし、欠点が表面化する以前にそれを是正しているなどと期待するのは道理に合わない。スタートアップが提供するプロダクトが過早にもてはやされ、プロダクトの真価を理解している少数が理解しない多数の渦の中に飲み込まれているという方が実際に近いだろう。

このパターンはClubhouseの場合にもはっきりしている。幸いにしてTechCrunchでは、おおむね避けるのに成功してきたシニシズムの側面があらわになっている。Clubhouseは新しいダイナミクスを備えた新しいソーシャルプラットフォームだ。もちろん数年先にどうなっているかは誰に断言はできない。投資家、ユーザーはもちろん、(彼なりのビジョンはあるだろうが)創立したPaul Davison(ポール・デイヴィソン)でさえ確たることはいえないだろう。先週、Clubhouseが主催した「Lion King(ライオン・キング)」のライブミュージカルイベントには数千人が参加した。Clubhouseがそうした存在になるとは誰ひとり予想していなかったはずだ。

SubstackにもClubhouseにも解決すべき課題は多々ある。当然だ。しかし創立後日が浅いスタートアップとしてとしては、市場の地形を探り、プラットフォームにユーザーを引き込むために決定的となる機能を発見し、最終的には成長の方程式を見つけねばならない。コンテンツがユーザー投稿であるということは特に安全性と信頼性における問題を生む。成長の過程で問題を発見しなかったスタートアップなど、これまで設立されていない。重要な質問は「このスタートアップには問題が発見されたときにそれを即座に修正することができるリーダーシップを持っているか?」だ。私の見たところ(現実のお金を投じてはいないが、これも賭けだが)答えはイエスだ。

リーダーシップについて語るならマイアミのFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)市長を抜きにするわけにはいかない。スアレズ市長の「マイアミはスタートアップを手助けする用意がある」というツイートはシリコンバレー信者はの愛好家や根っからの悲観主義者の間に途方ないばかげた騒動を引き起こした。

Keith Rabois(キース・ラボイス)氏をはじめとする何人かのベンチャーキャピタリストや起業家はサンフランシスコから脱出してマイアミに移れというトレンドのパイオニアとなっている。地元のビジネスと連携して、それまでになかったより良いエコシステムを構築しようとしている。ここで賭けられているのは場所だ。スタートアップとテクノロジーのハブをシニシズムに覆われた既存の場所の外に明るく楽観的な場所を見つけることができるという賭けだ。

マイアミに対するシニシズムは、10年前よりもさらに正当化されにくくなっている。サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンとそれらの周辺はもちろん米国のハイテクスタートアップのメッカだ。しかしシアトルはもちろん、この10年でソルトレイク、ポートランド、シカゴ、オースティン、デンバー、フィラデルフィアなどの都市が着々と得点を挙げている。マイアミは550万人が暮らす大都市であり、米国最大の経済圏の1つだ。マイアミも成功するかもしれないと考えるのは的外れではない。改革のきっかけとしては、たとえばラボイス氏のようなベンチャーキャピタリストの移住が十分だったかもしれない。

シニシズムから意味あるものが生まれた例はない。「そんなことできっこない」という態度がスタートアップを作った試しはない。こういうシニシズムへの反発が人を起業家にするきっかけとなったことならあるかもしれない。

意味のあるもの作るには、時間がかかる。最初のプロダクトを手にしてから育て上げてるに時間が必要だ。スタートアップのエコシステムを構築し自立したものにするにももちろん時間がかかる。重要なことは、成功のためには個人の力では不十分だという点だ。人々のチーム、コミュニティとメンバーの並外れた努力が必要だ。未来というのは決定論的に固定されたものではない。努力によって変化する可塑性に富んだ存在だ。賭けの報酬は大きい。我々は後ろ向きにあれこれの問題や欠陥を指摘するのを止めて「どんな未来を作りたいのか?」と自問すべきだろう。私は何に賭けたいのかが一番重要なポイントだ。

関連記事:米国スタートアップ界で話題の次世代SNS「Clubhouse」になぜ100億円以上も時価総額がつくのか?

カテゴリー:その他
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画像クレジット:John Coletti / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook