モノに触れずにつかめるロボ用超音波グリッパー

ロボットが、病院やスマホ修理店などで仕事を手伝う場合、少なくともそっとモノに触れる必要がある。まったく何にも触れずに手伝うということは可能なのだろうか? 超音波を利用して物体を空中に浮遊させて支えるグリッパーを開発した研究者がいる。非常にデリケートな作業にも適用できるものだ。

画像クレジット:Stefan Weiss/ETH Zurich

これは、極めて精緻に制御された周波数と音量で音波を発生する小さなスピーカーの配列で実現されている。それらが、ある種の定在圧力波を発生し、物体を持ち上げる。また、さまざまな方向から圧力をかけることで、その場に静止させたり、動き回らせることも可能だ。

このような「音響浮遊」自体は、そういう言葉もあるように、まったく新しいものではない。あちこちで奇術の類として使われてきた。しかしこれまでは、これといった実用的な用途はなかった。しかし、ETHZürichのマーセル・シャック(Marcel Schuck)氏と彼のチームは、このようなポータブルなデバイスが、小さな物体を非常に優しく保持する必要があるような作業に使えそうなことを示した。

たとえば、小さな電気部品、腕時計やマイクロロボット用の油を塗布した微小なギアやベアリングは、物理的な接触なしに保持するのが理想的。接触すれば静電気を伝えたり、汚れを付着させてしまうことがあるからだ。そのため、そうした作業に使うロボグリッパーは、清浄な状態に保ち、隔離しておく必要がある。しかし、音響による操作なら、汚濁の可能性は大幅に低くできる。

ちょっと不気味な見た目の別のプロトタイプ

問題は、対象の物体を空中に浮遊させるのに、どのような周波数と振幅の組み合わせが適切なのかが、必ずしも自明ではないこと。そのため、この仕事の大部分は、新たな物体に対して、それを扱えるよう簡単に調整できるソフトウェアを開発することだった。それには、回転させたり、ひっくり返したり、ユーザーが意図したように自由に物体を動かせるようプログラムする機能も含まれる。

実際に動作するプロトタイプも完成した。シャック氏は、さまざまな業界にアンケートを実施して、そのようなデバイスが実際に役立ちそうか、役立つとすればどのような用途に使えるのか、調査することにしている。スイスでは、もちろん腕時計の製造は重要な産業であり、部品は小さく、接触に弱い。「たとえば歯車は、まず潤滑油でコーティングされ、その潤滑油の皮膜の厚さが測定されます。ほんのちょっと触れただけでも、その被膜にダメージを与えてしまうことになるのです」と、ETHZのニュースリリースで、同氏は指摘している。

腕時計職人は、そのようなロボアームをうまく活用できるのだろうか? マイクロロボットの設計者はどうだろう? または生化学者の役にも立つのだろうか? 潜在能力があるのは間違いないが、必ずしも用途は明確になっていない。同氏は幸い、そのような疑問を調査するための特別研究予算をいくらか持っている。もしその結果、実を結びそうな用途が見つかれば、来年あたりスタートアップとしてスピンオフしたいと考えている。

(関連記事:傷つきやすい海洋生物を捕獲できる「超優しい」ロボットハンド

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

1mmのダビデ像を3Dプリンターで出力、ミクロ・アンジェロだ!

3Dプリンティングはもうあらゆる産業分野で利用されているので、いまさらデモをしなくも誰もがその有用性を知っている。しかし、だからといってデモがなくなるわけではない。そのほとんどは「またか」というものだが、中には驚かされるケースもある。その1つが高さ1ミリメートルのダビデ像だ。ミケランジェロの有名な彫刻を、新しいテクノロジーを用いて銅で出力したのだという。

タイニー・ダビデと名づけられたミニ彫刻は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のスピンオフ企業、Cytosurge(サイトサージ)からさらにスピンオフしたExaddon(エクサドン)が製作した。幅は1ミリメートルの数分の1、重量は0.002ミリグラム(2マイクログラム)しかない。

用いられた3プリンターはCERESと呼ばれ、イオン化された液状の銅の微粒子を噴霧する。噴霧量は1秒あたりフェムトリットル(1000兆分の1リットル)のレベルだという。直径が1000分の1ミリメートル程度の物体まで出力可能で、タイニー・ダビデのプリントには12時間かかった。もっと簡単な構造の物体であれば、もちろんずっと速くできたはずだ。

出力された像のディテールは驚くべきものだ。当然、ミケランジェロの傑作をこのサイズで100%表現するのは不可能だが、髪の毛や筋肉まで見事に再現されている。仕上げのバフがけや外部の支持構造などはいっさい必要としなかった。

もちろん高度なリソグラフィーの技術を使えば、ナノメートル級の微細な構造を作ることはできるが、これは半導体チップ製造でもわかるとおり、途方もなく金のかかる大掛かりな設備を専門家が細心の注意を払って操作しなければならない。3Dプリンターなら、データさえ与えれば任意の形状の3Dプリントを、室温で数時間のうちに出力できる。

CERES 3Dプリンター

もっともExaddonの専門家によれば、やはりノウハウが必要だったようだ。

ExaddonのGiorgio Ercolano(ジョルジオ・エルコラーノ)氏のブログ記事によれば「タイニー・ダビデは、ミケランジェロの傑作の単なるミニチュアではない。製作に使う3Dコンピュータモデルの元データにはオープンソースのCADファイルを利用したが、3D出力が可能なマシンコードに変換には、3Dプリンティングのプロセスに関する深い理解が不可欠だった。我々は元データを微少部分へとスライスしたが、ここにCERESの積層マイクロ製造システムの核心部分がある」という。

もちろん縮小化にも限界があり、マイクロメートルのサイズでは、ダビデ像は子供用の色粘土で作ったヘビのように見える。しかし、いずれはこうしたサイズでも3D出力できるようになるのだろう。

Exaddonのテクノロジーは Micromachinesに詳細が発表されている。最初に開発されたのは数年前だが、改良を重ねて当時よりはるかに進歩しているということだ。

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滑川海彦@Facebook

四足ロボットANYmalがチューリッヒの地下の下水路を冒険旅行する

CheetahbotやSpotのような複数脚のロボットの多様な用途については、すでに多くが語られてきたが、でも実際にそれらが実現するためには、分野ごとに多くの困難がある。そして、下水道の点検という重要な仕事の訓練のために、このスイス製の四足ロボットは地下深くへと下(お)りていった。今後の実際の仕事には、人命救助もありうるだろう。

ETH Zurich / Daniel Winkler

このロボットはANYmalと呼ばれ、スイス国立工科大学、略称ETH Zurichと、そこからのスピンオフANYboticsの長期的なコラボレーションだ。その最新の冒険は、大学のあるチューリッヒ市の地下にある下水道の旅で、最終的には、検査や修理の自動化を目指している。

多くのロボットプラットホームと同様、ANYmalも長年の開発史を抱えている。でもカメラや、ライダーのようなセンサー類が小型化高性能化したのはごく最近のことなので、暗闇の中での作業も可能になり、第一候補として下水管という汚い場所でテストされることになった。

多くの都市が延々と長い々々地下構造を抱えており、しかもそれらの点検は専門家にしかできない。危険でかったるい仕事だから、自動化の最右翼候補だ。人間がやると1年に1度しかできない点検を、ロボットなら楽々、一週間に一度できる、としたらどうだろう。おかしい箇所を見つけたときだけ、人間を呼べばよい。災害で人が行けなくなった場所や、小さすぎて人が入れない場所でも、活躍してくれるだろう。

関連記事: MIT’s Cheetah 3 robot is built to save lives(未訳)

しかしもちろん、ロボット軍団が(前に何かで見たように)下水路に住めるためには、その環境を経験し学習しなければならない。最初は最小限の自動化にとどめ、徐々にやれることを増やしていくのだ。

ANYboticsの協同ファウンダーPeter Fankhauserが、ETHZのストーリーでこう言っている: “研究室でうまくいっても、現実世界でうまくいくとは限らない”。

ロボットのセンサーやスキルを現実世界の状況でテストすると、エンジニアたちが取り組むべき新しい知見と大量のデータが得られる。たとえば、完全に暗い環境でもレーザーを利用する画像タスクなら行えるが、大量の水蒸気や煙が充満していたらどうか? ANYmalは、そんな環境でも正しい感知能力を発揮できなければならない。それが、最初からの設計目標だった。

ETH Zurich / Daniel Winkler

彼らはまず、脚にセンサーを付ける方式を試した。良い結果とまずい結果の両方が得られた。次に試したのが、ANYmalが手のひらを壁に触れてボタンを見つけたり、温湿度や壁の質感を得る方法だ。この方法は、操縦者の即興や機転が必要で、完全自動化にはほど遠かった。まず、ロボットにやらせることを、リストアップしよう!。

下のビデオで、チューリッヒの地下を旅する下水道検査官ANYmalをウォッチできる。

画像クレジット: ETH Zurich

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

お天気の視覚化は目的別分野別に多様であるべき、と主張するスイスの大学のプロジェクト

空の雲を見て、“犬”や“綿毛”を連想する人もいる。あるいは、“あれは衰退中の積雲で、羽毛のようなエッジは北からの高気圧が上昇気流によって終わりつつあることを示唆しているが、そのためにたぶん乱気流が生じるだろう。それに、ちょっと犬にも似ているな”、と思う人もいる。天候データの複雑で美しい視覚化は、後者の人びとが作っているのだ。

ETH Zürich(スイス連邦工科大学チューリッヒ校, ETHZ)のMarkus Grossが率いるプロジェクトは、天候データの視覚化はその利用目的や利用分野によって多様であるべき、と考えている。そこで彼のチームは、大量の天候データと格闘しながら、テレビ局や各種の研究所など、いろんなところにいるいろんな気象学者たちのための、それらのデータの正しい表現方法を模索してきた。

“われわれの視覚化の科学的価値は、既存のツールでは見ることができなかったものを見えるようにできるところにある”、とチームの一人、学部学生のNoël RimensbergerがETHZのニューズリリースで述べている。天候を、“比較的シンプルなわかりやすい方法で表現できる”、とも言っている。

問題のデータはすべて、2013年4月26日の夜のものだ。そのときは、ある大規模な気象学のプロジェクトにより、複数の研究機関が協力して大量のデータを集めたのだ。チームはそのデータを視覚化するためのさまざまな方法を作り出した。

たとえば、ひとつの郡全体を見るときには、雲に生じる小さな波動に注目することに意味があるだろうか? 必要なのはもっと大きな傾向であり、寒冷前線の生成や雨になりそうな領域など、重要なデータポイントを見つける方法だ。

  1. flights

  2. vorticity

  3. updrafts

  4. drafts

  5. clouds

しかし、局所的な雲の生成について知りたいときは、そんなマクロなデータは役に立たない。たとえばそこだけは、台風の風雨が異様に激しいかもしれない。

あるいは、あなたが小型飛行機のパイロットだったらどうか。ちょっとした雨や雲は気にならないかもしれないが、どこかに乱気流が起きそうなパターンがあって、それが今後どっち方向へどれぐらいの速さで動いていくのか知りたいときはどうする? または、先日墜落事故起きた、その場所の今の気象状況を知りたいときは?。

視覚化のこれら複数の例は、大量のデータ集合を解釈し表示する方法が、いろんな目的によってさまざまであることを、示している。

このプロジェクトにおけるRimensbergerの指導教官Tobias Güntherによると、膨大なデータを解釈してシミュレーションを作りだすために今使っているアルゴリズムが、とても遅すぎる。今は、その改良に取り組んでいるところだ。でも、時間条件がゆるい利用目的なら、現状でも十分使える、と。

彼らがETH Zürichの視覚化コンテストのために作成したペーパーの全文が、同大学のWebサイトにある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

マグネシウム製の食べられる温度センサーが食品の鮮度を保つ

生鮮食品の温度を輸送時に適温にキープすることは意外と難しいが、スイスの人たちはそれに取り組んでいる。この前彼らは本物の果物の荷の中に混ぜ込むロボットフルーツを発明したが、今度は別のチームが、食品に貼り付ける生分解性の温度センサーを作った。そのセンサーは、食品の出荷地からあなたの口の中胃の中まで旅をする。

食品の現在の温度を目視で、あるいは手作業で確認するのは困難だが、温度をコンスタントにかつワイヤレスでモニタできるなら、時間と労力の大きな節約になる。

これまでもRFIDタグなどを使えばそれはできたが、金属製のタグを誤飲したりしたら、それが毒物である可能性もある。今回ETH Zurich(チューリッヒ工科大学)のGiovanni Salvatoreが考えたのは、人間が安全に消化できる素材を使って、超薄型のセンサーを作ることだ。

彼と彼のチームによるその研究は、Advanced Functional Materials誌に載っている。彼らが作ったセンサーは厚さがわずか16マイクロメートルで(人間の髪の毛の太さは100マイクロメートルぐらい)、マグネシウムでできている。ETH Zurichのニュースリリースによると、マグネシウムは人体の必須栄養素のひとつだ。たしかに、それはそうだ。

酸化シリコンと窒化シリコンも使っているが、こちらも無害だ。そしてチップの全体をコーンとポテトのでんぷんで作った分解性のポリマーが包んでいる。曲げたり伸ばしたりできるし、くしゃくしゃになっても機能は生きている(ただし食べ物自体の状況も確認しよう)。

ケースの中のごく一部のリンゴや魚やバナナなどにこれを貼り付けて、船やトラックに積む。すると冷蔵室の外からでも、食品の温度(気温ではない)を知ることができる。そして、それが行きつくべきところへ行き着けば、あとは体内で分解される。

もちろん、電源やワイヤレスの部位は生分解性ではない。それらは外部にあって、同じく必須栄養素のひとつである亜鉛のケーブルで接続する計画だが、この難問が解決するまでは、まだ完全解ではない。でもセンサー部分が完成しただけでも、すごい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

コバルトのナノドットで磁気RAMができる、しかも高集積・超高速の

磁気ストレージといえば、主にテープやディスクのことだが、安くて安定性が良いので長期保存に適している。そこが、固体〔主にシリコントランジスタ〕ドライブや揮発性メモリと違う。それらは高速だが高価で、一時的保存に適している。でも新しい研究が、両者の良いとこ取りを可能にするかもしれない。

磁気ストレージの主な問題は、データを書き込む==磁化の向きを変えるためには、帯電したコイルをディスクやテープ上の目的の場所に物理的に移動しなければならないことだ。固体ストレージは、ファイルシステムが何ギガバイトものデータをどこにでも瞬間的に書き込むことができる。両者の違いは、誰かの住所を書く〔だけでよい〕ことと、実際にその場所へドライブすることの違いに似ている。

しかし、磁気ストレージに、アドレシングのできるセルがあったら、書き込みは速くなり、しかもその1や0の状態を永遠に維持するだろう。スイスのETH Zurichの研究者たちは、それをトライして成功した。ただし、たった一つのセルで。

X線銃とコバルトドット

コイルが磁気媒体に触れる方式の代わりに、直径500ナノメーターの小さなコバルトのドットがプラチナ製のワイヤの近くにある。ワイヤに電気が流れると、コバルトとは逆のスピンの漂遊電子が縁(エッジ)に集積し、最後にはドット全体の磁気の方向を逆転する。

チームはこれを2011年にデモしたが、今回新たなペーパーを発表して、それがきわめて速く起きることを示した。その観察には顕微鏡的なX線マシンで照射〜スキャンする方法を用いた(そのことがすごい!)。そしてビットの反転過程が1ナノ秒未満で起きることが分かった。

ドットの磁気モーメントの反転が1ナノ秒未満で起きる

それだけでなく、彼らは毎秒200万回で反転を1兆回(!)繰り返し、効果が弱まる兆候や信頼性が劣化する傾向を見出さなかった。

彼らは、さらなる高速化と低電流化、そしてドットの形を変えることを目指している。彼らの知見では、円よりも矩形の方が速いと思われるからだ。でも彼らは、いちばん難しい部分を先延ばししているのではないか。それは、何十億個ものこれらを、大きな、アドレシング可能な配列に収めることだ。一つだけの0/1は役に立たないし、コインが一枚あればぼくにもできる。

最終的には、このような技術によって、瞬間的にライト(write)できるけど永続性があって、データの無傷な保存のために電力を要しないストレージが可能かもしれない。十分に安価であれば、RAMと長期保存の両方に使えるだろう。そこが、彼らの課題だ。

この研究の詳細は、Nature Nanotechnologyの最新号に載っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

3Dプリントで作ったソフトな人工心臓は本物そっくりに動く

人工装具の科学技術はここ数年飛躍的な進歩を遂げ、それを補完するソフトロボティクスの研究が特に際立っている。本物のように柔軟に曲がるロボットアームの技術を、もっと複雑な臓器 ―― 例えば心臓 ―― にも応用できることをスイスの研究者らが示した

人工心臓の問題の一つは、金属とプラスチックでできた機構を組織に同化させることが難しく、不自然な動きのために血液を損傷する恐れがあることだ。

スイス、チューリッヒ工科大学で博士課程の学生、Nicholas Cohrsが率いる少人数のチームが作ったのは、全体がソフトな初めての人工心臓と彼らが呼ぶもので、ポンプ機能はシリコン製の心室を本物の心臓と同じように動かすことで実現している。

いや、正確には本物と同じではない ―― 心室と心室の間は単なる壁ではなく部屋になっていて、膨らんだりしぼんだりすることでポンプ動作を実現している。それでも、かなり本物に近い。

この心臓を作るのに使用した3Dプリント方式では、ソフトでしなやかな材料を使って、複雑な内部構造を作ることができる。全体が一つの構造(「モノブロック」)からなるため、様々な内部構造がどう収まるかを心配する必要がない( 血液が入って出るための入出力ポートとの接続部分を除く)。

人工心臓のテストは順調で、血液に似た液体を、人体に似た圧力に対して押し返した。ただし、もちろん裏がある。

この心臓は概念実証であり、実際の移植のためのものではない ―― このため使用している材質は数千回の心拍にしか耐えられない。心拍数にもよるが、約30分に相当する(新品の慣らし運転での心拍数はかなり高いに違いない)。もちろん、チームの目標は材料と設計を工夫してもっと長く使えるようにすることだ。

「機械技術者として、柔らかな心臓をこの手でつかむことなど想像もしていなかった」と、テストの責任者で大学院生のAnastasios Petrouが大学のニュースリリースで言った。「この研究には大いに魅了されたので、是非これからも人工心臓の開発を進めていきたい」。

研究チームの成果は今週論文誌 “Artificial Organs”[人工臓器] (当然)に掲載された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

VarCityは、オンラインで集めた画像から都市の3Dマップを作る

今や世界中の主要都市では、いつでもあらゆる角度から写真やビデオが撮影されている。理論的には、十分な数が集まれば道路や建物の配置がわかる ―― 待て、理論的に? いや実際に、だ。VarCityというプロジェクトがスイスのチューリッヒを再現するデモを見せてくれた。

複数年にわたるこの取り組みは、数多くのオンライン資源 ―― ソーシャルメディア、公開ウェブカメラ、車載カメラ、空中写真など ―― から得た画像を収集・分析して都市の3Dマップを作っている。ある意味でGoogleストリートビューの逆だ。地図を写真で図解するのではなく、写真に基づいて地図自体を作る。

このためVarCityのデータは非常に濃密だ。街路を見下ろすウェブカムは交通の流れや人々の歩く時間からいつ照明が消えるかまで時間を追って記録している。同じ建物を異なる角度から撮影した写真からは、大きな窓や壁の表面の正確なサイズを知ることができる。

チューリッヒ工科大学のチームが何年もかけて調整してきたアルゴリズムは、歩道と車道、芝生などの違いを見分けることができる。画像の見た目は粗いが、膨らんだ縁やぼやけた自動車は容易に認識して高精度で再構築することができる。

重要なのは、一連のアルゴリズムを別のデータの山に適用することによって、自分でデータを集めることなく、同じようにリッチな地図データを作れることだ。

「もっと多くの画像やビデオをシステムが分析できるようになればモデルはもっと正確になる」とプロジェクトメンバーで博士研究員のKenneth Vanhoeyがチューリッヒ工科大学のニュースリリースで言う。「プロジェクトの目的は3D都市モデルのアルゴリズムを開発することであり、今後手に入る画像やビデオの量が劇的に増えていくことを前提にしている」。

このプロジェクトからいくつかのスタートアップがすでに生まれている。SpetandoとCasalvaは、バーチャル建築検査と損傷分析を提供している。Parqueryは、都市の3D情報を使って駐車スペースをリアルタイムで監視する。方向はやや異なるが、UniqFEEDは公開ゲームを監視して、フィードに表示された時間を広告主やプレーヤーに知らせるサービスを行っている。

上のビデオは研究内容を要約したもので、データやモデルを詳しく説明した長編のビデオは今週中に公開される予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

15万RPMで回る小型モーターが人工衛星の姿勢を保つ

femtosat-6

ASUのFemtosatのような小さな衛星の設計において空きスペースはとても貴重である。

これからの宇宙で必要なのは小さいことだ:トースターサイズのCubesatsや1インチのFemtosats混雑する宇宙を飛ぶさまを想像して欲しい。新しく発明された小さくて強力なモーターはそのビジョンとしっかり手を取り合い、燃料を使うことなく自身の位置制御を行うことができる小さな宇宙船を作ることを可能にする。

さてまずは、少々エンジニアリングのレッスンを。科学の時間だ!

高速モーターを製作中のTüysüz(写真手前)

高速モーターを製作中のTüysüz(写真手前)

人工衛星や探査機のようなユニットのうち、特に小さくて長距離の宇宙飛行ミッションを遂行するものにとって、クリティカルな加速や操作以外の目的に燃料を利用することは実際的ではない。結局のところ、ヒドラジン(燃料)が不足したからといってNew Horizons(NASAが運用している太陽系外縁天体の探査を行う無人探査機)に再び給油することはできないのだ。そこで宇宙船の姿勢の微調整を行うためには、しばしばリアクションホイールが利用されている。

基本的に、それは衛星の内部に取り付けられて一定の速度で回転するフライホイールである − そしてその速度を調節することによって(例えばY軸の周りの反時計方向の速度を落とすことによって)、衛星からの反力が生じる。全ての作用には反作用(リアクション)があるということを覚えているだろうか?この場合反作用は、どれくらいホイールの速度が変化したかに比例して、衛星を重心の周りに回転させる。

とても速く回転するものの例に倣い、リアクションホイールは、ボールベアリングを使用している。しかし、これらのベアリングは、時間の経過により磨耗するし、ダメージを与えるかもしれないものを取り除いて真空を保ちながら慎重に密封されなければならない。ハッブル宇宙望遠鏡では2つのホイールが交換されたし、探査機ケプラーの場合は姿勢制御ホイールの故障によって機能が失われてしまった。それだけではない、たとえ予定通りのオペレーション下でも、それぞれのベアリングのわずかな歪みの集積が、搭載科学機器に干渉し得る振動を発生させるのだ。

これは解くべき課題である 。

チューリッヒ工科大学(ETH)のArda Tüysüzと大学からスピンオフしたCeleroton社の彼の仲間たちは、もっと良い手段があるべきだと考えた。そして、それはあったのだ!実際、その解決法はとてもシンプルで、どうして何年も前からそうしなかったのかと不思議に思うほどなのだ:それはベアリングの代わりに磁石を利用するやりかただ。

「それについては特に新しいものは何もありません。電気工学、磁気軸受、基本的な物理的原理の理解 − すでにすべてがあったのです」と Tüysüzはチューリッヒ工科大学のニュースリリースで述べている

ホイールを磁気で浮揚させることで、あらゆる種類の問題が回避され、新たな可能性の扉が開いた。例えばそのひとつとして、ベアリングをなくすことにより、真空にした領域や、潤滑その他のことが不要になることが挙げられる。振動はなく、交換する必要もない。そしてもちろん浮遊するローターは摩擦や機械的磨耗にはほとんど影響を受けないため、これまでのリアクションホイールに比べて速く回転させることができるのだ、それもはるかに高速に。

Tüysüzが説明した、システムの初期のプロトタイプ。

Tüysüzが説明した、システムの初期のプロトタイプ。

ベアリングを使うホイールが一般的には数1000RPMで回るのに比べて、この浮遊ホイールは驚くべきことに最大15万RPMもの速さで回ることが可能である。このことが意味することは、同じサイズのベアリング式モーターに比べて10から20倍もの増幅したパワーを発揮することができるということだ。しかしより重要なことは、同じレベルのパワーを既存のものの10分の1のサイズで得ることができることを意味していることだ。

小さな宇宙船にとってこれはとても素晴らしいことである:コンパクトで、効率的で、決して磨耗しない強力な回転モーター。ほんの数立方インチを節約できるだけで、あらゆるミッションのために巨大な恩恵がもたらされるのである – その空間は他の機器やバッテリーや燃料などに使用することもできるし、打ち上げ重量を減らすために空のままにしておくこともできる。

欧州宇宙機関が、たとえ現在モーターがプロトタイプ段階であったとしても、このシステムに興味を持ったとしても不思議ではない。

TüysüzとETHの同僚たち、そしてCelerotonは共同で、その開発の詳細をカプリ島での会議で発表された論文の中で公開している。

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(翻訳:Sako)

四足で歩くこともできるクアッドコプターをスイスの大学が開発…協働するロボットチームの研究の一環として

quadcopter_with_quadruped_or_quadruped_with_quadcopter

スイスのチューリッヒ連邦工科大学の自律システム研究所が、究極の組み合わせロボットを作った。四足歩行ができること。大丈夫。クアッドコプター(四翼ヘリ)でもあること。それもOK。両方の機能を同時に使って床(ゆか)の上をはね回らせたい。朝飯前。

この二人組ロボットは、複数のロボットをチームとして協働させ、お互いを仮想的につなぎ合わせる、という例だ。クアッドコプターを小さなかわいいプラットホームから離陸させると、そこらを歩きまわって、要所に来たら飛行して上空から調査をする、といった仕事ができる。しかもこれは、最近見たロボットビデオの中では、いちばんかわいいと思うね。

出典: Spectrum

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa