MovesはギグワーカーにUber、Lyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供しようと取り組む

トロントを拠点とするギグエコノミーフィンテックのスタートアップMovesは、ギグワーカーらが所属する企業の株式を、ギグワーカーへの報酬として提供できるようにしたいと考えている。Moves Collectiveと名付けられた同サービス。第一弾として木曜日にはUberの株式を提供し、その後すぐにLyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供する予定だとMovesのCEOであるMatt Spoke(マット・スポーク)氏は話している。

ギグワーカーたちが株主になれば、彼らが働くプラットフォームと彼ら自身の経済的なつながりをより強く感じてもらうことができるかもしれない、というのがMovesの考えである。さらにMoves Collectiveを通じて十分な数の労働者がこれら企業の株式を保有すれば、将来的には議決権を持つ集団を形成して企業の意思決定に実際に影響を与えることができるかもしれないと考えているのである。Movesによると、Moves Collectiveはすでにこれらの企業の「かなりの株式」を保有しており、そのすべてが議決権付きの普通株式だという。

この1年間、ギグエコノミーワーカーの劣悪な労働条件が労働者の抗議行動を引き起こし、カリフォルニア州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州ではギグワーカーを従業員として見直し、ヘルスケアや休暇手当、有給病気休暇などの基本的な権利を与えようとする試みが行われてきた。Uber、Lyft、DoorDash、Instacartなどの企業は、カリフォルニア州で進行中の「Proposition(プロポジション) 22」をめぐる騒動に反撃し、マサチューセッツ州ではギグワーカーを独立した契約者として分類する提案を2022年11月の投票にかけるための連合体を結成している。

「ギグワーカーはギグエコノミーに膨大な価値をもたらしていますが、貢献した結果としての経済的リターンはまったく得られていません。私たちが解決しようとしているのは、ギグワーカーのみなさんが働いている企業の成功には、彼らが経済的に関与しているのだと感じられるようにすることです」とスポーク氏はTechCrunchに話している。

すでに同社のプラットフォームを利用しているギグワーカーは、Collectiveに登録して株式という形で報酬を受け取ることが可能だ(ギグワーカーはさまざまな企業からの金を追跡および管理し、毎月の支出口座や最大1000ドル(約11万4000円)までの即時ビジネスキャッシングを利用できる)。「3人の友人を紹介する」や「ユーザーアンケートに参加する」など一連のタスクをこなすことで、ギグワーカーは無料の株式や株式の一部を受け取ることができ、その株式はMovesが開設したユーザー自身の証券口座に入るという仕組みになっている。

「Moves Collective」という名の通り、長期的には莫大な数のギグワーカーを結集させて企業のガバナンス決定に反映させられるだけの声を生み出すことを目的としている同社。ギグワーカーの利益を確実に反映させるために、これら大手プラットフォームの年次株主総会で委任状資料の提出を提案する予定だとスポーク氏は話している。

ギグワーカーがMovesカードを使って買い物をするたびに蓄積されるインターチェンジレートがMovesの主な収益源となっており、またその収益がMovesからワーカーに還元される株式の原資となっている。

「新規顧客を獲得し、その顧客を維持するために、収益を効率的にトレードしていると言えるでしょう。ギグワーカーの当座預金の利用で我々が得た収益を商品に還元し、株式建ての報酬の資金を調達しているのです」とスポーク氏は説明する。

現時点では同プログラムは招待制になっており、株式報酬プログラムであるBumped Financialとの提携により株が蓄積されている。スポーク氏によるとMovesはInstacartの株購入を見据えて同社のIPOにも注目しているという。またFlexの配達員にはAmazonの株を、Shiptの作業員にはTargetの株をサポートすることも検討しているという。

アプリを使ったギグエコノミー企業はどこも「同じ問題」を抱えているとスポーク氏はいう。「ドライバーや作業員の離職率が非常に高く、作業をしてくれる人が定着しないのです。彼らは他のギグアプリに移るか、ギグエコノミーから完全に離れてしまうため、これらの企業は何千万ドル、何億ドルもの費用をかけて常に労働者を入れ替えているのです」。

参考:Uberがドライバーを取り戻すためにインセンティブとして2億5千万ドル(約285億円)を費やした結果、第2四半期に大規模な損失が発生

UberとLyftは株式公開前、ドライバーの定着率を高めて、労働者のロイヤルティを生み出す仕組みとしてドライバーに株式を発行することを検討したものの、規制上の問題が両社の真摯な取り組みを阻んだ。最終的に両社は一部のより活動的なドライバーに対して一度限りの現金を支給し、株式を購入するオプションを与えることにした。Uberはドライバーに向けて全体の3%にあたる普通株540万株を用意したが、ドライバーによって買い占められなかった場合は一般に提供すると伝えている。

参考までに書くが、株式公開時に8.6%の株式を保有していたUberの創業者兼CEOのTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏は、その持ち株で約50億ドル(約5691億円)を得ている。また5.2%の株式を保有していたAlphabetは約32億ドル(約3643億円)を獲得。当時、米国を拠点とするドライバーは、最大1万ドル(約114万円)相当の自社株を購入できる現金ボーナスを利用することができたのである。

ギグエコノミーに依存している企業が労働者にストックオプションを提供する際の規制は、非常に厳しいものとなっている。SEC Rule 701は、企業が従業員、コンサルタント、アドバイザーに報酬としての株式を発行する際に、詳細な財務記録を提出する必要がないことを認めているが、ギグカンパニーにはこの適用除外がうまく当てはまらない。2018年、SECは働き方の変化に適応するためにルールを拡張するとした場合の、可能な方法についてコメントを要求した。Uberは締め切り日を過ぎたものの回答を提出し「パートナーに会社の成長を共有することで、パートナーとその先の世代の収入と貯蓄の機会を強化」できようにするためにSECがルールを改定するよう要求している。

現在の法律では、UberやLyftがドライバーに株式でインセンティブを与えようとすれば、雇用者のテリトリーを侵害することになりかねない。しかし、UberやLyftのこれまでの姿勢を見ると、このようなサービスは将来的に外部に委託することになるのではないだろうか。

「Uber、Lyft、DoorDash、Instacartの4社がProp 22のような課題で一致団結し、新たな規制に反対するロビー活動を行っていることもあり、彼らはこれが業界にとって全般的にプラスになるとは考えていないでしょう」とスポーク氏。「最終的に我々は彼らと経済効果を共有する方法を模索することになると思います。1年後、2年後には、弊社が提供できる具体的な利益についてUberと話し合い、『Uber株を発行されたドライバーは、より長く働く可能性がX%高いためこの資金調達に一部参加すべきだ』などと提案することになるでしょう」。

Movesによると、現在全米50州で約1万人のユーザーが同社のプラットフォームを利用しているという。ライドヘイリング業界がパンデミックで大打撃を受ける直前の2020年2月に設立され、2021年4月から市場に進出した同社。来年前半には再び資金調達を開始する予定だが、スポーク氏によるとMovesは事業のシナリオにおけるユニットエコノミクスを洗練させ、Moves Collectiveのユースケースが出来上がるまでは、資金調達を行いたくないと考えている。

「Uberがドライバーを大切にしていないわけではないのですが、ドライバーは彼らの主要なステークホルダーではありません」とスポーク氏。「Uberの主なステークホルダーは消費者です。彼らは消費者側の市場価値を革新するために全力を尽くしており、労働者は後回しにされていることが多いのです」。

画像クレジット:Moves

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

オランダ裁判所がUberドライバーは従業員と判断、Uberは控訴の意向

Uber(ウーバー)がドライバーの雇用ステータスをめぐる欧州での裁判でまたも敗訴した。オランダのアムステルダム裁判所は、Uberドライバーは自営の請負業者ではなく従業員であるとの判断を示した。

アムステルダム裁判所はまた、ドライバーにはオランダの既存の労働協約が適用されるとの見解も示した。この労働協約はタクシードライバーに関係するもので、賃金要件を定め、傷病手当などの福利厚生をカバーしていて、この協約を満たすためにUberがコストの増大に直面することを意味している(一部のケースでは過去にさかのぼってドライバーに給与を払う責任が生じるかもしれない)。

裁判所はUberに費用の5万ユーロ(約650万円)の支払いも命じた。

配車サービス大手のUberは、アムステルダムで4000人のドライバーを同社プラットフォームに抱える。

乗客とタクシーサービス提供者を結びつけるテクノロジープラットフォームにすぎず、ドライバーは「書面上」自営業者だというUberの慣習的な主張をアムステルダム裁判所は却下した。

裁判官は、ドライバーによって提供されるサービスの性質と、ドライバーがどのように働き、稼ぐのかについてUberがアプリとアルゴリズムを通じてコントロールしている点を強調した。

欧州の最高裁判所は2017年に、Uberは輸送サービス事業者であり、地域の運送法を遵守しなければならない、と裁定した。なので、あなたが今回デジャブ感に陥るのはもっともだろう。

関連記事:ヨーロッパのUberに打撃、EUの最上級審が交通サービスだと裁定

オランダでの訴訟は2020年に全国労働組合センターFNVがおこし、6月末に審問が始まった。

9月13日の声明文で、FNVのバイスプレジデント、Zakaria Boufangacha(ザカリア・ボウファンガチャ)氏は次のように述べた。「判決には我々が何年もの間主張してきたことが書かれています。Uberは雇用主であり、ドライバーは従業員です。ですので、Uberはタクシー業界の労働協約に従わなければなりません。また、こうした種の事業運営は不法であり、ゆえに法律が強制されなければならないという国際司法裁判所へのメッセージでもあります」。

Uberには今回の判決に対するコメントを求めている。記事執筆時点で返事はなかったが、ロイターによると、Uberは控訴する意向であり「オランダでドライバーを雇用する計画はない」と述べた。

【更新】Uberは控訴することを認め、広報担当は「控訴によってアプリを使うドライバーへの影響はありません」としている。

Uberの欧州北部事業を担当するゼネラルマネジャーであるMaurits Schönfeld(マウリッツ・ショーンフェルド)氏は次のように述べた。「ドライバーの圧倒的多数が独立事業者であることを望んでいて、今回の判決に失望しています。ドライバーは、働くかどうか、いつ、どこで働くかを選ぶ自由を手放したくはありません。ドライバーの利益のために当社は控訴し、その間、引き続きオランダでのプラットフォーム労働を改善させます」。

Uberは英国で、何年にもわたる雇用分類をめぐる一連の裁判で敗訴してきた。そして2021年2月、最高裁判所で同社の敗訴が確定した。

判決を受け、英国ではドライバーを労働者として待遇するとUberは述べたが、論争は続いている(労働時間の定義などをめぐって)。5月に同社は、英国の労働組合を認めると初めて述べた。

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しかしながら欧州のあちこちでUberは雇用訴訟を続けていて、プラットフォーム労働の規制緩和を求めて欧州連合の議員らにロビー活動を行っている

プラットフォーム労働を改善する方法を見つけたい、とEUは述べている。ただ、汎EU「改革」がどのようなものになるかはまだ判然としていない。

欧州委員会はプラットフォーム労働の代表者に質問してきた。

「ロビー活動に巨額を投じていること、EUレベルでさらに多くのリソースを投入していることは明白で、デジタル労働プラットフォームは明らかに懸念されるものです。Uberももちろん含まれますが、こうした企業はプラットフォーム労働に関する政策への影響を及ぼすためにロビー活動しているグループへの新たな基金の設置で協力しています」とアムステルダム大学でデータ権を研究しているJill Toh(ジル・トー)氏は判決後にTechCrunchに語った。

「Uberはカリフォルニア州でのProp 22キャンペーンで巧みに法律を修正し、欧州では他の企業とともに同じことをしようと企てています。プラットフォーム労働者規則に関係する2つの協議で委員会はテック企業とだけ話していて、労働組合や他のプラットフォーム労働の代表者と会合を持っていません」。

「こうしたことは非常に問題があり、ECの協議がプラットフォーム労働について方向を示す結果になれば特に懸念されるものです。全体としては、勝訴は労働者にとって重要ですが、欧州委員会に及ぼす企業パワーや影響力、こうした判決への公的執行の欠如の問題は残っています」とトー氏は付け加えた。

【更新】欧州委員会の広報担当はTechCrunchに対し、デジタル労働プラットフォームを通じて働いている人のための労働条件をどのように改善するかについての第2ステージの協議はまだ継続中(9月15日まで)だと述べた。

「協議の結果次第で委員会は2021年末までに提案を進める意向です」と広報担当は付け加えた。

「協議第2ステージの目的は、欧州でのデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長をサポートしつつ、プラットフォームを通じて働いている人々がどのようにしてまともな労働条件を確保するか、ソーシャルパートナーの意見を集めることです。こうした意味で、ソーシャルパートナーは、雇用ステータス分類の促進や、労働と社会保護の権利へのアクセスといった分野で、EUレベルのイニシアチブとなる可能性のある内容について意見を求められます」。

広報担当者はまた、欧州委員会が加盟国での動きを注視しており、加盟国の分析作業を考慮している、とも付け加えた。画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

マサチューセッツ州司法長官がUber、Lyftらが支持するギグワーカー法案にゴーサイン

マサチューセッツ州のMaura Healey(マウラ・ヒーリー)司法長官は、Uber(ウーバー)、Lyft(リフト)らが率いるアプリ利用サービス提供者の連合が、ドライバーを従業員ではなく個人事業主として分類する投票法案を提出するために必要な署名活動を開始することを了承した。

マサチューセッツ州版Proposition 22ともいうべき法案の支持者らは、2022年11月の投票に法案を提出するために万単位の署名を集める必要がある。ヒーリー氏は2020年、ドライバーは個人事業主であり、病気休暇や時間外手当、最低賃金などの対象にならないとするUberとLyftの主張に異を唱える訴訟を提起したにもかかわらず、米国時間9月1日、司法長官として同法案が憲法の要求を満たしていることを認定した。

このニュースの2週間ほど前、最高裁判所は2020年に採択されたカリフォルニア州のProposion 22を違憲とする裁定を下した。労働組合が支持しているCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は、同じ理由で同法案に反対する訴訟を検討しているとReuters(ロイター)に伝えた。

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Uber、Lyft,DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)らが所属する団体、Massachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)は、2021年8月この住民投票を申請した。Uber CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏はこれを「正しい行動」であると主張している。この提案では、2023年にドライバーの最低時給を18ドル(チップを含まない)とし、週15時間以上働いた人には健康保険を提供する。さらにドライバーは車両の維持と燃料のために1マイル当たり26セント(約29円)以上の経費が保証される。

連合は12月1日までに有権者から8万239名分の署名を集める必要がある。期日に間に合わなかった場合は、2022年7月6日までにさらに1万3374名の署名を集めることができる。

関連記事:ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策
画像クレジット:Al Seib / Los Angeles Times / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

UberやLyftなどギグワーカーを軸とする企業に米国時間8月20日の夜遅くショックが訪れた。高等裁判所の判事が、2020年に成立してギグワーカーの雇用ステータスに対する論争の多かったAB-5法を、否定する目的で成立させたカリフォルニア州第22条令(Prop 22)は州の憲法に違反していると裁定した。

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オークランドやバークリーなどイーストベイの多くをカバーするアラミダ郡の高裁判事Frank Roesch(フランク・ローシュ)氏は「その法(Prop 22)が、将来の議会がギグワーカーの雇用ステータスを定義する力を制限する」と裁定した。この訴訟は2021年1月にService Employees International Union(SEIU)(サービス業被雇用者国際組合)が起こし、同様の訴訟がフォルニア州最高裁で却下されてから下級審へ回されたものだ。

この法廷の決定はほぼ確実に控訴されるであろうし、今後の法的議論が当然あるだろう。

しかしSEIUのカリフォルニア州評議会の議長Bob Schoonover(ボブ・スクーノーバー)氏は、声明で次のように述べている。「ローシュ判事によるProp 22を無効とする本日の裁定は極めて明確である。ギグ業界が金で買った住民投票は憲法違反であり、したがって施行不可能である。2年にわたりドライバーたちは、民主主義は金で買えないと言い続けてきた。そして本日の判決は、彼らが正しかったことを示している」。

高裁の判決は、UberやDoorDashのようにギグワーカーに大きく依存している企業と、労働者を代表する組合や活動家との間の戦いの、勝ちと敗けの長い々々列の最新のひとコマにすぎない。その議論の中心にあるのは、フリーランサーと従業員との法的な区別であり、それぞれのワーカーに対して企業はどの程度の福利厚生の責任を負うか、という点だ。

その区別がビッグビジネスになっている。UberやLyftなどの企業は2020年Prop 22を勝ち取るために、総額で2億ドル(約220億円)あまりを費消した。カリフォルニアの有権者はその条例を、ほぼ59%対41%で通過させたが、それはギグワーカープラットフォームの大勝利と多くの人びとが受け止めている。

しかしこのような戦いはシリコンバレーの本拠地である州だけの現象ではない。2021年初めに英国では、Uberが従業員の位置づけをめぐる法廷闘争で負けて、その数万人のドライバーが労働者と見なされた。そしてその判決により彼らには、それまで保証されなかった多様な福利厚生が提供された。

画像クレジット:ejs9 / Getty Images / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策

LyftやUber、Doordash、Instacartなど、アプリによるライドシェアやデリバリーのサービスを提供している企業の連合が、住民投票でギグエコノミーの労働者を独立の契約業者と認めるよう、マサチューセッツ州に請願を提出した。これまで同業界は、カリフォルニア州で同様の住民投票を主導して、勝った経験がある。

その連合の正式名であるMassachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)が今回住民投票を提案したその約1年前には、労働者の権利を擁護する団体とギグエコノミーの企業が対立し、業界側が数百万ドル(数億円)を投じた高価な宣伝活動により、カリフォルニアの有権者は、Proposition 22と呼ばれる同様の住民投票により、業界の主張を認めた

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LyftやUberなどからなるこの連合のメンバーには、地元各地の商工会議所も含まれ、彼らは米国時間8月3日に、2022年11月に行われる州政府選挙に住民投票の可否が含まれることを要求した。投票にかけられる質問は司法の審査を要し、また住民投票が政府選挙に含めること自体も、有権者の十分な数の賛成票を要する。

8月3日に行われたLyftの決算報告で、共同創業者のJohn Zimmer(ジョン・ジマー)氏は次のように述べている。「私たちの第1目標は、マサチューセッツ州で合法的な解決を見出すことです。私たちが一貫して主張してきたことは、圧倒的多数のドライバーが求めていることでもあり、それは私たちのプラットフォームが提供してきた柔軟性のある所得機会、それ加えて福利厚生です。また私たちは住民投票という方法を求めるだけでなく、マサチューセッツ州議会と緊密に協力して、法律に基づく解決も求めていきたい」。

同連合によると、提案されている住民投票の質問は、アプリを用いるライドシェアやデリバリーのワーカーを独立の契約労働者としながらも、健康保険料の給付など、新たな福利厚生を提供するものになっている。

連合の提案の中には、ドライバーやデリバリー労働者の最低賃金をマサチューセッツ州の最低賃金(同種のアプリベースの労働に対し2023年に、チップを除き時給18ドル、約1960円)の120%であったり、週の労働時間が15時間以上のドライバーへの健康保険料給付などがある。これらの計算にチップは含まれず、チップは全額ドライバーのものになる。また車の維持費や燃料費として走行距離1マイルにつき0.26ドル(約28.35円)以上が保証される。

労働運動家たちは、早くも反発している。NAACPニューイングランド支部やマイノリティ近隣社会組合、マサチューセッツ州移民難民連合など、さまざまな団体からなるCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は8月3日に、住民投票方式には労働者を傷つける問題の文言があると反論した。

同団体によると、それらの文言には抜け穴が多いため実質賃金が最低賃金を下回ることが可能であり、また健康保険の内容が極めて貧弱である。さらにまた、反差別主義者に対する保護が取り去られたり、労働者の補償規則が排除されたり、また企業が何億項にものぼる州の失業対策をごまかすこともありうるという。

UberやLyftを軸とするこの幅広い連合は、労働者の独立契約業者化に関して、住民投票や法制化をロビー活動しているが、同時にまた、2020年提出された訴訟にも直面している。その原告であるマサチューセッツ州司法長官Maura Healey(マウラ・ヒーリー)氏は、賃金と労働時間に関する複数の州法に基づき、UberとLyftのドライバーは会社の従業員(被雇用者)である、と主張した。

州の司法長官事務所によると、UberとLyftは、ドライバーを独立の契約業者と認めるために必要な、州法が定める3つの要件を満たしていない。1つは、独立の契約事業者であるためには労働者は会社の指示やコントロールから自由でなければならない。ビジネスの通常のコースから外れたサービスでも実行できる。そして、同様の仕事を自分自身でやっていてもよい。

Uberは2020年以来、カリフォルニア州のProposition 22に似た州法をマサチューセッツ州でも成立させたい、と匂わせていた。UberのCEO、Dara Khosrowshahi氏は2020年の11月の決算報告で、アナリストたちとともに、同社は「Prop22のような法律を強力に推していく」と言明した。その後彼は「米国と世界のすべての政府と協力してこれを実現したい」と付言した。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:マサチューセッツギグワーカーギグエコノミー労働LyftUberDoordashInstacartProposition 22

画像クレジット:Al Seib/Los Angeles Times/Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

「街の電動化」を目指すRevelが50台のテスラ車で全電動配車サービスを開始予定

Revel(レベル)は2018年、ニューヨーク市ブルックリン区でドックレス方式による電動モペットのシェアサービスを開始した。後にそれは、クイーンズ区、マンハッタン区、ブロンクス区、さらに米国内の他の都市にも拡大された。2021年になり、同社はニューヨーク市内で電動自転車の月間サブスクリプションサービスを立ち上げ、同時にブルックリン区のベッドフォード・スタイベサント地区に電動車両用充電ハブを建設する計画を発表した。そして今、Revelは全電動、全Tesla(テスラ)の配車サービスをマンハッタン区に展開しようとしている。

かつては、方向性が定まらず、いろいろな形態の交通手段に場当たり的に手を出しているように思えたRevelだが、ニューヨーク市を手始めに、各都市に独自の電動化インフラを展開するという、計算された戦略がようやく見えてきた。これは、創設者でCEOのFrank Reig(フランク・レイグ)氏が当初から力強く宣言していたことだった。

「創設初日から、我々のミッションは街の電動化でした」とレイグ氏はTechCrunchに語った。「そのために私たちは、都市で必要とされる電動交通手段を提供し、その実現に必要となる電動車両インフラの構築を行ってきました」。

50台のRevelブランドのTesla Model Yを使って2021年5月末に開始を予定している新配車サービスは「都市内の移動をことごとく電動化する」という目標への次なるステップとしては、ごく自然な流れだとレイグ氏は話す。利用者は、電動モペットの予約に使うアプリで、そのまま配車サービスも受けられる。同社によれば、開始当初はマンハッタン42番街より南の地区で展開され、第1フェーズの需要とデータを見ながら、次第に対象地区を広げていくという。

Revelの配車サービスの立ち上げは、3年前に電動モペットのシェアサービスを開始したときと似たアプローチをとっている。共同創設者のPaul Suhey(ポール・スーイ)氏の話によれば、それはまずは小さい地域から始めて、街全体をカバーするという最終目標に向けて徐々に広げてゆくというものだ。

同社はまだ、ニューヨーク市タクシー・リムジン委員会に認可事業者の申請を出しているところだ。Revelは第一の認可は得たものの、正式な許可証を取得するまでには、まだいくつかの手続きが残されている。

「正式な許可証が交付されて準備万端整うのを待たずに、この段階で計画を公表した理由に、ドライバーの募集があります」とスーイ氏はTechCrunchに話した。「ドライバーを雇い入れるには、まず情報を広めなければなりません。私たちは今の時点で、ドライバーを雇って確保しておきたいのです」。

Revelの対顧客相場は、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)と同等になる予定だとレイグ氏は話すが、ドライバーはギグワーカーに頼ることはせず、全員を雇用するという。

「同じ料金で、私たちは完全な電動化を実現し、同時にニューヨーカーを雇用することで、ぎりぎりの生活費でやっているニューヨーク市民に保険リスクと資産減価償却のすべてを押し付けるようなことはしません」とレイグ氏。

給料で支払うかたちは、Revelの利他主義によるものだけではない。ドライバーを雇用することが、TeslaにRevel向け仕様の車両を製造させる大きな条件になるため、理に適っているのだ。Revel向けModel Yは「Revelブルー」で塗装され、室内の温度や音楽をコントロールできる客席用のタッチスクリーンが装備される。助手席は新型コロナの社会的距離ガイドラインに従うためと、後席の乗客が脚を伸ばせるように取り外される。

だが、もっと重要なこととして、カリフォルニア州のProposition 22(住民立法案22号)の問題がある。Uber、Lyft、Postmates(ポストメイツ)といった企業は2億ドル(約217億円)のキャンペーンを展開してカリフォルニア市民に賛成の投票を呼びかけた。この法案とは、アプリベースの企業は労働者を福利厚生が受けられる従業員として扱わなくてよいとするものだ。法案は通過した。しかしレイグ氏には、その金があれば、幻滅したドライバーが抜けた欠員を埋めるために常に人材募集し続ける必要はなくなり、堅実な働き手を惹きつけ確保できたはずだとの持論を掲げている。

「車両に関して言えば、それが安全対策にもなります」とレイグ氏。「私たちが車両を保有しているため、加速、速度、ブレーキングなど、車の詳細な情報を常に把握できるのです。私たちが雇用し訓練したドライバーには、各シフトの終わりに安全スコアが示されるので、運転技術を磨くことができます。さらに、保険費用と保険責任を減らすことにもつながります」。

Revelは、街の電動化を進めつつ、そのビジネスモデルをその先の展開の足場にしようと考えている。配車サービスの提供は、新しい事業の構築という意味に留まらない。これは同社の充電事業の創設を加速する意味も持つ。Revelは、電気自動車のニワトリとタマゴの問題を解決して、独占的な電動化事業を確立を目指している。ニワトリとタマゴとはつまり、電気自動車の潜在的購入者は充電スタンドが拡充されたなら買いたいと考えている一方で、充電スタンドの展開を計画する企業は、電気自動車がもっと売れたなら建設できると考えているという問題だ。

「私たちが企業として行っているのは、都市における電気自動車の導入推進と、利用できる電動交通手段の拡大に尽きます」とスーイ氏。「それが電気自動車、電動自転車、電動モペットであれ、いろいろな形での利用を人々は願っています。私たちは、都市の電動化を、もっと幅広いものとして考えているのです」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:RevelTesla配車サービスProposition 22電気自動車ギグワーカー

画像クレジット:Revel

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

UberがEUで「Prop 22」スタイルのギグワーク基準を求めロビー活動を展開

Uber(ウーバー)は、ギグワーカーの労働条件を改善する新しい規則が必要かどうか判断するためにギグプラットフォームの労働条件の精査に乗り出したEUの議員に接触している。

配車サービスとオンデマンドのフードデリバリーの巨人は現地時間2月15日、白書を発表し、プラットフォーム業務の「新しい基準」と称するものに関して、欧州の政策立案者に対しロビー活動を展開している。

白書の中でUberは、ギグワーカーが得るメリットの一部を拡大する必要性を説き、ドライバーとライダーが労働者・従業員として再分類された場合、労働者としての権利のフルスイートに資金を供給しなければならないという (Uberにとっての)悪夢のシナリオを回避しようとしている。

Uberはまた、団体交渉の問題を切り離して、政策の議論の方向性を誘導しようとしている。白書では、アプリベースの労働者がより「意味のある」代表権を必要としているという考え方を提案し、その代表は、Uberのいう多様な(つまり個別化された)ニーズを反映するために必要であり、プラットフォームと労働者の間の継続的なエンゲージメントのさまざまなチャンネルを介して実現できることを示唆している。

Uberの白書は、タイトルの「A Better Deal(より良い取引)」を基軸に構成されている。アプリベースの労働者にとってより公平な取引を確保するために新しい法律が必要かどうかを議員が検討しているため、配車サービスの巨人は紛れもなく、自社のビジネスにとって可能な限り最善の取引を引き出そうとしている。

EUの議員が今後数カ月の間に注意を払う必要があるのは、プラットフォームで働く労働者がどのような取引をしているのか、そして大手テクノロジー企業の詳細かつ基調的なPR文書を掘り下げていく中で、欧州お得意の社会契約を損なうことなく、大勢の「契約社員」の条件を改善するための法的枠組みを作る必要があるのか、作るならどのように作るのかという点だ。

Uberは2020年、同社の専門領域に属するギグワーカーを再分類しようとする法案の打破に成功した後、カリフォルニア州の「Prop 22(プロポジション22)」がもたらした成果を世界的に推し進めていくと述べている。

しかし、欧州の法的、社会的な状況は米国とは大きく異なっている。欧州では、多くのプラットフォーム企業が雇用分類の問題で訴訟に直面しており、裁判所は労働者に有利な判決を下すことが多い。

金曜日(2月19日)には、英国最高裁判所が、元Uberドライバーらのグループによる、Uberの自営業者としての分類に関わる長期の係争に対して判決を下すと予想されている。つまりUberは、欧州の裁判所における、これまでで最大の試練に直面しているということだ(英国は現在EU圏外にあるが、この訴訟の結果は欧州全体の裁判に影響を与える可能性が高い)。

既存の雇用法をより明確にし、施行することは、社会を犠牲にし(税収の損失)、安定した雇用(とそれに付随する権利)を奪われた個々の労働者の労働力から利益を得るために、アルゴリズムによるマイクロマネジメントという利己的な分類を利用して法制度の隙間をハイテクハッキングしてきた大手プラットフォームを、欧州の政策立案者が取り締まるための方法になり得る、と批判的な人々はいう。

同時に、オンデマンド空間での統合化が進むことにより、大手ギグ企業の力がさらに強くなっている。では、ひと握りのメガプラットフォームが競争相手との統合を急ぎ、改善の可能性が閉ざされていく中で、労働者を守るための法の介入がなければ、プラットフォームの労働者は「意味のある」代表権や「改善された」条件をどのように期待できるのだろうか。

2月15日、Uberの白書に付随するブログ記事の中で、CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は、ギグワーカーの権利に関する大手テクノロジー企業の好ましい「新しい基準」は「ドライバーや宅配業者が最も重要だという原則に基づいていることであり、その原則とは、働きたいときに、働きたい場所で働ける柔軟性とコントロール、適正な賃金を得ること、適切な福利厚生と保護を受けること、そして意味のある代表権を得ること」であると繰り返し述べている。

「実質的な変化をもたらすためには、改革は業界全体を対象としたものでなければならず、すべてのプラットフォーム企業は、どのアプリを使っていても労働者が保護されるように、業界全体で標準化された福利厚生と保護を提供することが求められる」とコスロシャヒ氏は続ける。

プラットフォームの福利厚生に関する普遍的な基準は進歩的に聞こえるかもしれないが、ギグワーカーのための「妥当な」福利厚生という概念は、合意された雇用基準をはるかに下回る水準にこの労働力を固定してしまい、アルゴリズムによって永続的な管理の対象となる労働者にとって、より良い取引の可能性を閉ざす危険性がある。

このような業界全体の基準は、ギグプラットフォームが労働者へのより良い取引の提供をめぐってお互いに競争する必要性を損なうことにもなりかねない。そのため、政策立案者は、支援されるべき労働者にとって不利な取引が固定化されることのないように、慎重に事を進める必要がある。

Uberの白書は、労働者のための詳細な「取引」モデルを定義するのではなく、現時点ではいくつかの主要な原則を提唱し、利害関係者と協議して推し進める必要があると同社は述べている。

また同社は、プラットフォームが依然としてEU各国の寄せ集め規則の影響下に置かれる可能性が高いことも認識しているという。また、欧州委員会が法制化を決定したとしても、そのような法律が施行されるまでには何年もかかるため、判例が非常に重要であることに変わりはない。しかし、加盟国がギグワークの分野に関して取るアプローチや適用する政策に対してトップダウンの圧力となり得る包括的なEUガイダンスを、Uberが自社に有利になるように誘導しようとしていることは明らかだ。

大手プラットフォームは長い間、雇用の分類を「柔軟性と利益」の問題に落とし込もうとしてきた。労働者は何よりも柔軟性(プラットフォーム各社は「いつ働くかを選択できる能力」を意味すると定義している)を重視していると主張しているものの、同時にデータフィケーションやトラッキングを駆使して非雇用労働力のハイテクなマイクロマネジメントによる個人のサービス提供を管理している。

実際には、確かにそのようなプラットフォームにログオンして「好きな時に」働くことはできるが、強制最低賃金のような法的保護がなければ、ギグワークの「柔軟性」が個人の生活を支えるだけの収入になる保証はない。見方を変えれば、頼れる他の収入源がない限り、プラットフォームの労働者には、いつ、どのように働くかを選択する柔軟性や自由は、事実上ないかもしれないことを意味する。

そのため、プラットフォーム各社はしばしば「故意に搾取するように設計されている」と非難されているビジネスモデルの逆説的な防衛を推進している。批判的な労働組合はそれを人間の労働力の搾取や抽出だと指摘し従来型の雇用によってもたらされる社会契約と安定性を蔑ろにするプラットフォームを非難している。

Uberの白書の中で「雇用はプラットフォームの労働者が求める答えではない」と主張を展開するセクションでは、このテクノロジー界の巨人は「柔軟性」がそのてがかりだと述べている。つまり、そのモデルは「ドライバーには、需要に応えるためアプリに接続する自由や、望めばより静かな時間を過ごす選択権がある」ことを意味するという。しかし、ギグワークで収入を得て生計を立てる必要がある人たちは、より静かな時間を過ごす「選択」はできないかもしれない。そんなことをすれば収入が減ってしまう。ではUberは、実際にどの程度の柔軟性(つまり良識的な賃金)を提供しているのだろうか。

(関連する点として、これらの大手ギグ企業の多くは、自動化技術の開発推進のために多額の資金を投入してきた。雇用にともなう税金を払わないことで節約したお金が、完全に人間の労働者に取って代わろうとすることに注ぎ込まれているということだ。そのような所に尊厳はあるのだろうか)

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決断を迫られるギグエコノミー

2019年12月の雇用委員会委員へのミッションレターで、欧州委員会のUrsula Von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、Nicolas Schmit(ニコラス・シュミット)氏に、現行法の執行が機能していることを確認することを含め、プラットフォーム労働者の労働条件を改善する方法を検討するように依頼した。またレターには「尊厳があり、透明性があり予測可能な労働条件は、EUの経済モデルにとって不可欠である」とも書かれている。

シュミット氏は指示を受けてすぐに、プラットフォーム(利益)VS労働者(権利)という構図の論争について、Euractiv(ユーラクティブ)に「プラットフォームに反対しているわけではない」と、バランスのとれた見方を語り、プラットフォームを「EUの新しい経済の一部」とみなし「ギグエコノミーでの優位性を失わないことが欧州にとって重要である」とも主張した。

しかし同氏はまた、ハイテクツールが、新たな「恵まれない」下級労働者を固定化するために使用されることをEUは許してはならないと警告し「19世紀に存在していたような労働条件で21世紀の経済を実現するわけにはいかない」と述べている。

欧州委員会が、不明確なプラットフォーム業務の「改善」のループをどのように政策の中に組み入れていくのかは、まだまったく分からない。しかし、フォン・デア・ライエン委員長が指示を出してからは、ここで良い仕事をしなければならないという責務が増しただけだ。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、プラットフォーム労働者のための適切な社会的セーフティーネットの欠如がもたらす個人的および社会的なリスクに容赦なくスポットライトを当てているが、同時にその副作用として、オンデマンドのプラットフォーム業務(特に食品や食料雑貨の配達のような分野)は、活況を呈している。

Uberの白書では「独立請負人が最も必要としているときに、福利厚生と保護を確実に受けられるようにする」と記しているように、パンデミックの問題とプラットフォーム事業者が労働者を支援するために「さらに進んで」いく必要性について繰り返し述べている。しかしその一方、同社は、雇用のすべての権利と利益を提供することに反対するロビー活動を行っている。

国際的な法律事務所Taylor Wessing(テイラー・ウェッシング)の雇用グループのシニアアソシエイトであるJoe Aiston(ジョー・エイストン)氏は、Uberが白書の中で、ギグワークの「新しい基準」を求めてロビー活動を行っていることについて「同社が最低基準の福利厚生を求めるのは理に適っている」と話す。そして「適当かつ最低限の保護であれば、ビジネスモデルに大きな影響を与えずに容易に提供できる」と続ける。

「全員を従業員や労働者として再分類することを強いられれば、ビジネスモデルは大きく混乱することになり、ビジネスの面では当然、相当のコストアップにつながるだろう。最低賃金や休日出勤手当のような直接的な影響だけでなく、税金の観点でも、間接的に波及的影響を受けるはずだ」。

そして、労働者の状況分析によってギグワーカーが自動的に税務上の目的で従業員として分類されるわけではないが、エイストン氏は、判断基準は「かなり類似している」という。したがって、雇用の分類をめぐる訴訟は、Uberの税務上の立場、ひいてはその(潜在的な)収益性に明らかなリスクをもたらす。

ギグワークをどのように改善するかという問題について、欧州委員会は2020年9月にプラットフォーム業務に関する会議を開催するなど、最善の進め方を模索しながら情報を集めてきた。しかし2021年、EUの議員には大きな決断の時が迫りつつある。

今月末、欧州委員会は労働者と雇用主の代表者による正式な協議を開始する予定だ。そして、Uberの白書は、明らかにそのプロセスを対象としているため、プラットフォームの労働条件の「改善」に影響を与えようと、いくつもの私利的な画策が本格的に始まることになるだろう。

政策的に何が行われるのか、確かなことはまだ明らかになっていない。しかし、2020年3月、欧州委員会は285ページに及ぶ調査結果を発表し、プラットフォーム労働者の労働条件に関して特定された「主な」課題として以下のようなものを挙げた。雇用の状況、労働条件について労働者が利用できる情報、紛争解決、集団的権利および差別禁止などだ(つまり、考えられるほぼすべての課題が挙げられたということだ)。

実際に研究結果を掘り下げてみると、低報酬と不安定な収入についても、非常に詳細に議論され、それらはプラットフォーム労働者にとっての「重要なストレス要因」とされている。

賃金は、確かに議論の重要な争点として提起されているようだ。特に、フォン・デア・ライエン委員長はシュミット氏への指示の中で「EUのすべての労働者が公正な最低賃金を確保できるよう」法的手段の提案を求めていた。

収入が労働者の法定最低賃金を下回る可能性があるというのは、プラットフォーム業務に対するよくある批判である(ギグワークによる賃金は、通常、ギグの注文や商品の受け取りを待つために費やしたダウンタイムすべてが対象となるのではなく、仕事をしている間や配達の完了時にのみ収益が上がるためだ)。したがって、EUの公正な最低賃金の対象となる「すべての労働者」が「プラットフォーム労働者を除く」という意味に終われば、欧州委員会はテクノロジーを利用した「恵まれない」労働者層を固定化してしまうことになる(シュミット氏が、そうなってはいけないと言ったことに反して)。

白書での賃金問題に対するUberのアプローチは、プラットフォーム労働者の「公正で透明性のある収益」(または「適正な」賃金)についてのみ語ることで、最低賃金の問題を回避している。

このテクノロジー界の巨人はまた「プラットフォーム労働者の報酬のあり方における変革を提言し業界をリードする準備がある」と述べている。しかし、業界全体で利用できる(「すべてのプラットフォーム企業が独立請負人に提供しなければならない業界全体の福利厚生と保護を備えた柔軟な収入の機会のための」)枠組みが求められていない限り、報酬については譲歩しないことを明らかにしている。

「これには、最近カリフォルニア州で導入されたProposition 22法のような普遍的な基準が含まれるかもしれない。または、プラットフォーム労働者、政策立案者、業界の代表者が協力し合い、業界のために報酬の原則を設定するという、社会的対話の欧州モデルに基づいたものかもしれない」とUberは示唆している。

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Uberは次のように述べている。「例えば、イタリアでは、フードデリバリー業界と一般労働組合が、配送の自営業者の地位を確認する合意に署名する一方、業界に対して、収入、傷害、第三者保険、訓練に関する規定を含む配送業者の労働基準を提供することを要求している」。

Uberはさらにこう付け加えている。「重要なことは、どのような報酬モデルであっても、どのプラットフォームで働くことを選択したとしても、すべての独立請負人に一貫した収益のベースラインを保証するために、業界全体に渡る公平な競争の場に基づいていなければならない」。

そして、この問題があらゆる面で大きな賭けであることは明らかだ。ギグワーカーの権利、大手プラットフォームの利益、そして社会的に進歩的なアジェンダを主張するEUの議員の信頼性がかかっている。

しかし、現時点でEUが法案を提出するかどうかについても100%確証があるわけではない。欧州委員会の広報担当者は、プラットフォームと労働者がこの不明確な労働における「より良い」労働形態のあり方について合意に達することができれば、政策決定は見送られる可能性があると示唆した(しかし、まあ、本当にそうなるのかどうかは運次第だ)。

2021年2月後半の開始が予定されている「社会的パートナー」の正式な協議は、欧州委員会の広報担当者によると、2つの段階で構成されている。

「第1段階では、プラットフォームを介して働く人々の労働条件を改善するためのEUイニシアチブの必要性について意見を求める。第二段階では、そのようなイニシアチブの内容について協議される」と同報道官は述べ、欧州委員会は「社会的パートナーの回答を慎重に評価する」と指摘した。

「社会的パートナーが、協定の交渉を行うことを決定しなければ、欧州委員会は2021年末までに立法的なイニシアチブを打ち出す予定だ」と同報道官は付け加えた。

報道官は、課題が特定され「改善が必要かもしれない」政策分野には「不明確な労働条件、契約の約定の透明性と予測可能性、安全衛生上の課題、社会保護への適切な利用機会」が含まれていることを確認した。

「不明確な労働条件」に低く不安定な報酬が含まれるかどうか尋ねられた同報道官は「申し訳ないが、このイニシアチブに関して、現段階で私たちが言えることは[前述のリスト]だけだ」と言って、明確な回答を避けた。

雇用形態

欧州委員会が主導したギグワーカーの状況に関する調査の最後にまとめられた、いくつかの政策的考察の中には、雇用形態が依然として中核的な課題であるとの記述がある。

「一部のプラットフォームは、自営業者と従業員の狭間で運営され、明確に雇用主の責任を負わず、プラットフォームの労働者を最大限にコントロールすべく業務形態を調整しているようだ」と報告書は所見を述べ、雇用分類の境界がどこにあるのかを明確にする判例の(緩慢な)ペースと「プラットフォーム業務を特徴づける急速に変化するビジネス慣行」との間にギャップがあることを指摘している。

「加盟国が[法律や判例を通じて]従業員の概念を拡大するか、プラットフォーム労働者の雇用形態に関する反証を許す推定を導入しない限り、プラットフォームは、自営業者の労働力への依存を継続または拡大する可能性が高い」と続けている。

「個々のケースでの再分類は、EU法や国内法に基づいて行われる可能性があるが、それが主要な動向を劇的に変える可能性は低い」。

また「プラットフォームに経済的に依存している自営業のプラットフォーム労働者の保護を目的とした措置は、『労働条件』に関する最低基準を確保することが望ましいと思われる」と報告書は付け加えている。さらに、関連する「政策的含意」は、EUと加盟国が「どのプラットフォームの業務形態が自営業のプラットフォーム労働者に適合しないか明確にすることを検討すべきである」と示唆している。

自営業審査の明確化、あるいは審査で不合格とすべき業務形態の明確化は、EU全体の政策立案者が取り掛かるべき法案の1つだ。とはいえ、この件についても、ギグエコノミーに関するフィードバックを受けて欧州委員会がどのアイデアを支持するかは、今後の動向を見守る必要がある。

雇用分類の判例の面では、まもなく英国で、Uberの配車サービス事業に関連する大きな判決が下される。Uberのドライバーを自営業者として分類することに関して2016年に始まった雇用法廷での係争が2月19日に最終判決を迎えるのだ。英国最高裁は、Uberが過去5年間に何度も控訴しては敗訴してきたこの種の訴訟に対して判決を下す。

最高裁の判決は、ロンドンのプラットフォーム上で営業しているとUberがいう約4万5000人のドライバーのみならず、英国全体にも影響を及ぼす可能性が高い。

また、EUの政策立案者がギグワーカーの労働条件の改善に積極的に取り組んでいることを考えると、この判決の影響はそれ以上に波及する可能性もある。

2020年、フランスの終審裁判所は、元Uberの運転手を自営業のパートナーではなく従業員とみなすべきだとの判決を下した。この判決では、会社とドライバーの間に従属関係があることを認め、ドライバーは、価格設定、顧客基盤の構築、業務の遂行方法に関する選択の権限がないなどの問題が指摘された。そして「ドライバーは管理された輸送サービスに参加しており、Uberは一方的に運営条件を定義している」と書かれている。

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しかし、Uberは、2017年に提訴されて以来、ドライバーがUberの利用方法をコントロールできる範囲が広がり、今では「より強力な社会的保護」(無料の傷害保険など)を受けることができるようになったことを挙げて、自社の業務形態に多くの変更を加えてきたと主張し、この事例が前例となることを否定した。

この事例は、苦情ベースの判例に頼るだけでは複数のプラットフォーム労働者に対応する首尾一貫した成果を得ることは難しいことを浮き彫りにしている。

このような係争において、最終的な判決が下されるまでに時間がかかることは、プラットフォームにとっては、少なくとも対象となる争点はもはや適用されないと主張できるよう、業務形態を再構成するのに十分な時間を得ることにもなる。

そのため、ギグワーカーの労働条件の改善を確定するための法整備が確かに必要かもしれない。

エイストン氏は、そのような状況において、結局のところ要求される変更はUberにとって「受け入れられる」ものではないかもしれないとしつつも「状況が変わる可能性があるのは事実だ。もしUberが『最高裁の判決』を受けてビジネスモデルを機能させる方法を大幅に変更した場合、同社はドライバーの定義を再び都合の良いように変えてくる可能性がある」と語る。

「我々は、最高裁がどの争点についてどのような措置を命じる判決を下すか見守る必要があるが、Uberはビジネスモデルにおいて、業務の機能に重大な影響を与える恐れがある変更を加えることが有効かどうかの判断をしなければならないだろう」と同氏は続け「私は、Uberが、おそらく判決に備えて、ビジネスモデルが機能する変更をすでに整備しているのではないかと見ている」と付け加えた。

「つまり、判例は背景に特化しているので、非常に特殊な判例に頼るのではなく、実際の法律と具体的な定義が鍵を握っていると言えるのではないだろうか」と同氏は語った。

委員会の調査では、この分野での政策立案を阻むいくつかの課題にも言及されている。そこには、プラットフォーム業務の明確な定義や、エビデンスに基づいた政策立案のための十分かつ包括的なデータ収集など、基本的なことも含まれている。

エイストン氏は「一旦、誰かが独立請負人ではなく労働者として分類されると、労働者の能力と団体交渉の権利を強化させる可能性が生じる。そのため、最高裁の判決がUberに不利なものとなった場合、それは別の潜在的波及効果をもたらす」と述べ「ドライバーやライダーの団体交渉能力の向上につながる可能性があるため、関連する組合が強い関心を示していることでもある」と続ける。

一方、欧州では、国レベルでの規制や法制化の試みが始まっている。例えばスペインでは、政府が数年前から「falsos autonomos(不当な自営業者扱い)」を受けている労働者を利用するプラットフォームの厳重な取り締まりを目指しており、プラットフォーム業務に適用し摘発するための労働法の改革を進めているところだ。

最近の報道によると、そうした国家的な労働改革プロセスは、配送労働者の雇用をプラットフォームに対して義務化する結果となる可能性がある。そのような動きがあるため、大手プラットフォームは、EU全体に適用される「もっと柔軟な」規制を求めて、欧州委員会へのロビー活動をさらに熱心に行うようになっている。少なくとも国内法が別のEU加盟国の規制に及ぼす影響の範囲を制限し、プラットフォームのビジネスモデルへの潜在的なダメージを限定することを狙っているのだ。

英国政府もまた、法制化が近づいていることを示唆している。政府は2017年まで遡り、ギグワークの調査を含め、近年の労働慣行に関する大規模な調査を実施した。Taylor Review(テイラー・レビュー)と呼ばれるこの調査は、ギグワークをより適切に反映させるために、現在の(英国の)「労働者」の法的分類を更新すべきだと提言している。また、同調査の報告書は「従属契約者」がより適切な枠組みであることを示唆しており、プラットフォームが労働者に対して行使するコントロールに、より大きな焦点を当てるべきとしている。

テイラー・レビューは華々しく公開され、労働者の権利を強化するための政府の計画につながった。しかし、2018年末に発表された改革パッケージ「Good Work Plan(良質な労働計画)」は、貧弱で実体を欠いていると労働組合によって即座に却下された(対して政府はこの計画を労働者の権利の大規模な拡大として宣伝している)。今のところ、ギグワークの問題について具体的に取り組むために多くを成し遂げたようには見えない。

英国政府が2018年に計画の一環として発表した「現代の雇用関係の現実を反映させる」ために雇用形態審査の明確性の向上を目的とした法整備を進めるという公約は、まだ何も実現していない

計画されていた立法がパンデミックの影響で遅れている可能性はある。エイストン氏はまた、Uberの裁判で最高裁が判決を下すまで、政府が方針の公表を控えている可能性もあると示唆している。したがって、政策決定に影響を与えようとUberがEUに対して行っている巧妙なPRにもかかわらず、欧州の判例や世論が下す判断に比べれば、Uberはこの問題について大した口出しはできないかもしれない。

「最高裁が、ドライバーは労働者だとする『Uber』に不利な判決を下した場合、同社にとっては、少なくとも今より少し困難な状況になるだろう。なぜなら、同社は、少なくとも英国では、すべてのドライバーが労働者であることを受け入れるか、判決の根拠を精査し、その根拠から逃れられるようにビジネスモデルを調整するかのどちらかを決定しなければならないからだ」とエイストン氏は話す。

「Uberは明らかにドライバーを労働者ではなく自営業者として扱い続けたいと考えているので、後者を検討しているかもしれないが、PRの観点から考えると、それは同社にとって良いことではないと思う。ドライバーが労働者であると判断されたら、今はそれを受け入れ、ドライバーがその権利を持っていることを認めて先に進む必要があるというのも1つの考え方だ」。

同氏は、ギグエコノミー企業の典型例として、Uberは欧州でドライバーやライダー向けの無料または低価格の保険などの福利厚生パッケージを整備し「良い」会社であり、人を大切にする姿勢を示すことで「自営業」の請負業者が労働者として再分類されるリスクの「芽を事前に摘み取ろうとしている」と指摘している。

このような取り組みでは、再分類されたプラットフォーム労働者が得るであろう権利を網羅することはできず、配車サービスの利用者を味方につける必要もあるため、ここでさらに動きがあるかもしれない。

「ギグエコノミー企業は極端なことは避け、ドライバーが労働者であることは認める、だから最低賃金や休憩時間などの権利があることも認める、という傾向がある。ギグエコノミーのビジネスにも気を配る必要がある。そういった観点から見ると、競争は激化するなるだろう」とエイストン氏は示唆する。

「人々が労働者であることを認めるかどうかは別として、ギグエコノミービジネスは、人々を大切にする義務があることを認識し始めているのだろう。明らかにそれは、人々がいくらかの利益を得ることにもつながるが、同時に、PRの面や会社の企業イメージの観点でもプラスに働く」。

また、注目すべき点は、英国の雇用法がいくつかの国の雇用法よりもニュアンスに富むものということだ。それは、英国ではすでに「労働者」(すなわち、従業員でも自営業者でもない)の概念を持っているからだ。一方、エイストン氏は、他の欧州諸国(そして米国も)での分類は、より限定されている(つまり、被雇用者または自営業者の分類のみ)と指摘する。

「欧州の裁判所は、英国の最高裁判決などに注目するだろう。その判決に縛られるわけではないが、その行方は欧州全域で同様の判決の方向性に少なくとも何らかの波及効果を及ぼすことは想像に難くない」と同氏は示唆する。「留意すべき興味深い点は、英国には労働者の中間的な分類があるということだ。一方、ほとんどの欧州諸国では、自営の請負業者か従業員のいずれかしかない。つまり、欧州の他の国ではもっと大きな二分法になる」。

「英国には、この中間的な定義があるため、ある意味ではより良い状況にある。そのため、英国の裁判所は再分類を命じやすい立場にあるという意見もあるかもしれない。最高裁が[Uberの雇用裁判の係争に関して]ドライバーは事実上労働者であるという控訴裁判所と同様な判決を下した場合、最高裁による判決と控訴裁判所による件の判決との間に相違があるかどうかを見きわめることが重要だ」と同氏は付け加える。

「英国の場合は、上記のような背景があるため、裁判所がドライバーを、一部の保護が適用されるこの中間のカテゴリーに当てはめるべきだという判断を下すのが、他国よりも容易だった」と同氏は説明する。

EUの政策立案者が「労働者」に似たEU全体の基準を策定することを決定した場合、そのような決定はUberなどに大きなチャンスとリスクをもたらすことになるだろう。雇用訴訟が業界の中核的なビジネスモデルに与える脅威を軽減する手段として、利益に関する主要なパラメータに効果を及ぼす(そして、税負担の増加を回避する)チャンスがある。

ギグワーカーに提供される保護レベルの拡大には明らかにコストがかかるだろう。しかし、大手テクノロジー企業にとっての問題は、これらのコストをどれだけ削減できるか、つまり欧州全域で営業を行う際に「問題に直結する」最低限の基準は何か、ということになる。

あるいは、EUの議員は、適切に「公正な」運用上の雇用の制限を確立する方法として、プラットフォームの労働者に対する「やるべきこと」と「やってはいけないこと」のリストを規定し施行することを試みることもできるだろう。これは逆に、その利益(多くの場合、この時点ではまだ理論的なものである)が、従業員ではないとされる多くの人々から提供される豊富で低コストの労働力に依存している大手オンデマンド企業のビジネスモデルを破壊する可能性がある。

プラットフォームに対する具体的な運用要件のリストを設定することは、欧州委員会が12月にEUの議員らによって策定された包括的なプラットフォーム規制(デジタル市場法)の中で提案していることとまったく同じであり、他のビジネスとの公正な取引(およびデジタル競争の促進)を推進するために最も市場力のあるプラットフォームに介入することを目的としている。

ギグプラットフォームについても、労働者のために公正な取引の確保を目的とした同様の介入が考えられる。

Uberなどにとっては、何十万人ものオンデマンド労働者を従業員名簿に載せることを法的に要求されることに比べれば、確かに望ましいことだろう。しかし、それは、これらの大手企業が規模拡大のために利用してきた、ドライバー労働力のタダ乗りともいうべき手法に終止符を打つことにもなるだろう。

今回の件で欧州におけるプラットフォーム経済が終わりを迎えることはないだろうが、調整にかなりの時間がかかることは避けられないように見える。ビジネスモデルは雇用法の変化(および、またはより良い施行)に適応する必要があるだろう。

価格など、コントロール可能な条件を減らしつつ従業員や労働者とは別の業務形態を維持しようとするのか、あるいは人々が労働者であることを受け入れ、それに応じてビジネスモデルと価格構造を適応させるのか(例えば、ライバルのプラットフォームで働く権利を制限するなど)、ギグエコノミー企業はビジネスモデルを調整することの長所と短所を秤にかけなければならないだろう、とエイストン氏は語った。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Postmatesの元グローバル公共ポリシー担当副社長が語るギグワーカーの将来

現在は「元」が付くPostmates(ポストメイツ)のグローバル公共ポリシーおよび戦略的コミュニケーション担当副社長であるVikrum Aiyer(ビクラム・エイヤー)氏は、元同僚たちと、ギグエコノミーの利害関係者たちに宛てて、この業界が次に必要としているものに関する彼の考えをまとめた意見書を送った

その中でエイヤー氏はこう述べている。「雇用者の分類を微調整したり、1つの州が住民投票を行っただけで、米国人が本当に不安に感じている問題、つまり雇用機会、家族の面倒、将来への不安に抜本的に対処し、堅実な道筋を築けると考えているようでは、過ちを犯します」。

彼はさらに、テックプラットフォームも労働者擁護者も出資者も「それぞれのモデルを改変したり、寸分たりとも動かすことを望んでいない」と指摘する。つまり「臨時雇用にも社会的セイフティーネットにも進歩は期待できない」という。エイヤー氏は「労働者と資本家、テクノロジーと労働組合、保守とリベラルという、この無意味な戦い」を終わらせたいと考えている。

この文書でエイヤー氏は、臨時職員に頼るテック企業にいくつか提言を行っている。たとえば企業は「正規職員と個人事業主との間の待遇の差を縮める」ことに繋がる、取締役会への投票権を持つかたちでの労働者の参加、継続可能な福利厚生の支給を提案し、ギグワーカーの部門別交渉については、次のように考えている。

個人事業主のための部門別交渉は、個人事業主の分類を維持したままで、収入と福利厚生の部門全体にわたる最低基準の革新的な改善に繋がります。一部の組織化された労働者は、分類に関わらず、すべての労働者の交渉権の拡大を主張しています。それを業界が完全に退けてしまわないうちに、またこれは米国では前例のないものであるために、連邦議会、米国政府説明責任局、または大学の労働研究センターが厳格な審査を行う理由は十分にあり、交渉参加希望者の署名入りカードを回収して労組結成を認める制度、反トラスト法、連邦法の優先制度がどのように機能するかを調査すべきです。理想としては、それが労働者に力を与え、誠実性に欠ける企業が底辺への競争で優位になることを阻止できます。

エイヤー氏は、PostmatesとUber(ウーバー)と並んで、ギグワーカーを不法に個人事業主として分類するカリフォルニア州住民立法案(Proposition 22)の提案者ではあるが、まったく同じ法律を米国全土に適用すべきとは考えていないと話す。

「Proposition 22は、テック企業は勤務形態に柔軟性を持たせることで個人事業主の条件をさらに優位な方向へ調整すべきという議論においては、一歩前進でした。しかし、今後に向けて対処しておくべき問題が2つあります」と彼はTechCrunchに語った。

1つめは、こうした種類の勤務形態は、特に新型コロナウイルスのパンデミックにより米国中で数百万もの人々が職を失っこともあり、むしろますます好まれる傾向にあるという点。2つめは、他の地域や連邦レベルで施行されている似たような法律を推進したい企業は、労働者の声を聞くことが重要になるという点だ。

エイヤー氏は、ロサンゼルスとニューヨークとではPostmatesの配達員に大きな違いがあるという。ロサンゼルスでは、Postmatesの配達員の多くはクルマを利用している。それに対してニューヨークでは自転車を使う人が多い。Proposition 22は、保険に関して新しい最低基準を設けたが、「自転車を使っている人が、同じ補償内容を求めるとは限らない」とエイヤー氏は話す。

「Proposition 22は、カリフォルニアでの最低基準を定めましたが、広い意味でのセイフティーネットの改良に上限を設けるものではなく、国全体に押し広めるべきポリシーというわけでもないのです」と彼はいう。

しかし一部のギグワーカーは、優遇措置があったとしても個人事業主にはなりたくないと主張し続けている。企業に雇用され、正規職員とまったく同じ待遇がほしいと訴える人たちもいる。

結論としてエイヤー氏は、福利厚生を受けられる従業員と、受けられない個人事業主が存在する現在の二元的社会には、間違った対立があると考えている。

「フルタイムの正規職員の待遇と、個人事業主の福利厚生のレベルの向上の両方を手に入れられたらどうでしょう」とエイヤー氏。「しかしそれを、労働者と労組を推進する人たちとに分け隔てなく実現するには、ギグワーカー法成立以来、本格的に行われてこなかった議論を最後まで進める必要があります」。

エイヤー氏は、2020年1月初めの、Uber傘下のPostmatesを去る最後の日、彼の意見書によって、この分野での立場の違う利害関係者たちの対話が再び活性化されることを願うと私に伝えた。彼自身の今後については、公益的な仕事に就くことになるとのことだ。

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:金井哲夫)

カリフォルニア最高裁がギグワーカーを個人事業主に分類するProp 22を違憲とする訴訟を棄却

カリフォルニア州最高裁判所は米国時間2月3日、同州のライドシェアドライバーのグループとService Employees International Union(国際サービス従業員労働組合)が提出した、Proposition 22を違憲とする訴訟を棄却した。

「私たちの声を聞かなかった最高裁判所の決定に失望しています。しかし、生きるための賃金と基本的人権を勝ち取るための私たちの戦いを止めることはできません」と原告の1人であるHector Castellanos(エクトル・カステリャノス)氏が声明で語った。「私たちは、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)のように自身の利益を改善するために、民主主義を覆し私たちの権利を侵害する会社から、カリフォルニアの労働者を守るためにあらゆる手段を講じるつもりです」。

本訴訟は、Prop 22は州議会がギグワーカーのための労働補償制度を制定、施行することを困難にしていると主張している。さらに、Prop 22は投票法案は単一争点に限るという規則に違反していること、および何を法案の修正条項とするかを憲法に反して定義していることも主張している。現在Proposition 22の修正には、議会の7 / 8という圧倒的多数を必要だ。

「私たちはカリフォルニア最高裁判所がこのメリットのない訴訟を却下したことを喜んでいますが、驚いてはいません」とProp 22を支持し「Yes on 22」キャンペーンに協力したライドシェアドライバーのJim Pyatt(ジム・パイアット)氏は声明で語った。「私たちはこの判決が、ドライバーを圧倒的に支持してProp 22を通過させた有権者の意志を無にしようとするグループに対して、行動を中止するよう強い信号を送ることを望んでいます。この投票提案はカリフォルニア州の政治的立場を越える60%近い有権者から支持されたものであり、そこには何十万人ものライドシェアドライバーも含まれています。今こそ、カリフォルニア有権者の大多数を、そしてProp 22に最も影響を受けるドライバーたちを尊重するときです。

一方、Uber、Lyftをはじめとする各社はProp 22と同じような法案を他州でも推進する考えだ。UberとLyftのアンチ「ギグワーカーは従業員」のスタンスを考えると、UberとLyftが個別に、他の州や世界で同様の法案を推し進めるといったのも驚きではない。

たとえばLyftは独立請負人としての分類を推進する外部団体を複数設立した。Illinoisans for Independent WorkNew Yorkers for Independent Workがそのうちの2つだ。前者は2020年6月に設立されLyftが120万ドル(約1億3000万円)の資金を提供している。提出資料による。同団体の表明された目的 は「本組織の思想と独立した仕事の価値を共有する立候補者を支援すること」となっている。

しかし本誌が以前報じたように、Prop 22の実現は一部のギグワーカーが従業員の地位を得ようとする戦いの終わりを意味していない。協調した取り組みは2021年も進められており、来たるべき次の立法バトルに備えて準備を続けている。

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ギグワーカーと労働組合がギグワーカーを個人事業主に分類するProp22を州憲法違反として提訴

カリフォルニア州の配車サービスのドライバー団体と、サービス従業員国際連合(SEIU)は、米国時間1月12日、同州住民立法案Proposition 22を、カリフォルニア州の州憲法に違反するとして提訴した。この訴訟の目標は、カリフォルニア州のギグワーカーを個人事業主に分類することを決めたProp 22の撤廃だ。

カリフォルニア州最高裁判所に起こされたこの訴訟は、同州議会によるギグワーカーのための補償制度の立法化と施行が、Prop 22によって阻害されると訴えている。またProp 22は、住民投票は1つの問題に限定することを定めた法令に違反し、州憲法に違反して規定された法令の修正条項であると主張している。現状では、Prop 22の修正には立法府の8分の7という圧倒的多数の賛成を必要とする。

「私のような配車サービスのドライバーは、毎日家計のやりくりに苦労しています。Uber(ウーバー)やLyft(リフト)といった企業が、我々の幸福よりも自社の利益を優先させているからです」とこの訴訟の原告であるサオリ・オオカワ氏は声明の中で述べている。「Prop 22によって、彼らは我々の健康と安全をないがしろにしているばかりか、私たちの州憲法も踏みにじっています。私は、この問題が、我々の労働から利益を得ている裕福な企業幹部ではなく、法律を作ってもらおうと私たちがが選出した人たちに懸かっていると思い、この訴訟に参加しました。裁判所はProp 22が企業の権力掌握のためだけのものであることを認め、Prop 8やProp 187と同様、Prop 22が憲法違反の法令という汚名を着ることになると信じています」

この訴訟は、ギグワーカーとテック企業との間で続けられてきた長い戦いの中の新たな一戦だ。その間、UberとLyftは、Prop 22と同等の法律を他の地域にも求めてきた。UberもLyftも、ギグワーカーは従業員ではないというスタンスを保っているため、両社がそれぞれ個別に、同様の法律が他の地域や他の国でも施行されることを望むと語ったところで、驚くにはあたらない。

Uber、Lyft、DoorDash(ドアダッシュ)からは、すぐにコメントは得られなかった。だが、Prop 22を支持するYes on 22キャンペーン、またはProtect App Based Jobs & Services(アプリベースの仕事とサービスを守れ)運動の支援者が、TechCrunchに以下の声明を送ってくれた。

「アプリベースのドライバーの大半を含む1000万人近いカリフォルニアの有権者は、歴史的にも新しい保護が受けられ、ドライバーの独立が保てるProp 22を通過させました」と、Prop 22を支持するUberドライバーJim Pyatt(ジム・パイアット)氏は述べている。「政治的な立場を超えて多くの有権者たちが明確な主張を繰り広げ、Prop 22を圧倒的大差で承認しました。疑いようのない民主主義による人々の意志をむしばもうとする無意味な訴訟は、法廷の審議を耐え抜くことはできません」。

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(翻訳:金井哲夫)