オバマ大統領の音楽ストリーミングのお気に入りはSpotify―ホワイトハウスがプレイリスト2種類を公開

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この週末、合衆国大統領は音楽ストリーミング・サービスのユーザーであることを明らかにした。ホワイトハウスはオバマ大統領本人が選んだという2種類のプレイリストを公開した。

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そのプレイリストはどのサービスのものだっただろうか? Appleミュージック?

ノー。

Tidal?

でもなかった。

「大統領のこの夏のプレイリスト」は2種類あり、ひとつは昼、もうひとつは のバージョンだ。サービスは他ならぬSpotifyだった。

この発表は大統領がマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島での恒例の夏休みを取っている間に行われた。ホワイトハウスの広報スタッフは、選曲をリラックスした(フローレンス・アンド・ザ・マシーンの曲が入っている)安全な曲(ダイ・アントワードは入っていない)にするよう気を配ったようだ。おかげで世界の人々はアメリカの大統領が世間から隔絶した1200万ドルの豪邸でどんな音楽を聞いてつかのまの休暇を楽しんでいるのか知ることができるようになった。

プレイリストの内容だが、のんびりした夏休みのお供としてはなかなかよく考えられている。もっとも私としては自由世界の指導者ともあろうものが貴重な休息時間にザ・ルミニアーズやジャスティン・ティンバーレイクのPusher Love Girlなどを聞いているなどとは信じたくない。しかしそれを除けば、ジョニ・ミッチェル、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、ジョン・コルトレーンなどの名曲ぞろいだ。

オバマ大統領はTidalのプレイリストは公開しなかったが、ビヨンセの曲は入れている。さてオバマ大統領もストリーミングのユーザーに加わったわけだが、ストリーミングに断固反対しているニール・ヤングはどう考えただろう?

PonoMusicはお気の毒。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

テイラー効果広がる―プリンスもストリーミング条件に反発してSpotify他から楽曲を引き上げ

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テイラー効果と呼ぶべきだろうか?  著名アーティストが音楽ストリーミングの現状を厳しく批判する事態が続いている。Prince はSpotify、Rdio、Deezerから楽曲を引き上げることに決めた。この記事を書いている時点ではDeezerではまだストリーミングが配信されているが、われわれの取材に対して「Princeから配信停止の通告を受けており、停止の手続き中だ」と確認した。

ただしGoogle Music All AccessとTidalではストリーミングが続いている。これはハイレゾのストリーミング・サービスで、今年3月にラッパーのJay-ZとSoftbank他の投資家によって買収された。

どうやらPrinceは無料の音楽ストリーミングから楽曲を引き上げることにしたようだ。

SpotifyはPrinceのアーティスト・ページに「Princeのレコード・レーベルはすべてのストリーミング・サービスに対してカタログの削除を求めてきた。われわれはこの要請に従う。できるだけ早い時期にPrinceの楽曲のストリーミングが再開できることを願っている」と書き込んだ。Rdioもわれわれの取材に対して「要請にしたがって楽曲を削除した」と確認した(RdioのPrinceのページは空白)。

Googleにも取材したが、「現在までにそのような通告は受けていないのでストリーミングを継続中だ」という。

われわれの問い合わせに対してTidalからは回答がない(Princeからもコメントはない)。

一方、Apple MusicはBeatlesと並んでPrinceは始めから参加していない

TwitterでPrinceをフォローしていたファンはこういう事態になることを予期していたようだ。

6月26日にPrinceはテイラー・スウィフトは新しいPrinceだというThe Daily Beastの記事をリツイートしていた。この記事はテイラーに先立ってPrinceがメジャー・レーベルを始めとする音楽産業に対して抗議する活動を続けていることを詳しく報じた。Spotifyなどのストリーミング・サービスがアーティストに対してアンフェアであるというPrinceのコメントが記事に引用されたが、Prince自身がその部分をリツイートした。

「レコード・レーベルはSpotifyの20%の大株主だ。音楽ストリーミングというのはレーベルにとっては楽曲のセールスを補完する二重取りであるのに対して、アーティストに対する支払は1ドルの売上に対して数セントという現状を1ドルに対して1セントの何分の1に引き下げるという改悪となっている」とPrinceは批判している。 Spotifyはアーティストに対する支払額を定期的に発表しているが、全員が満足しているわけではないようだ。

Princeのワーナー・ミュージックに対する以前の戦いはThe Daily Beastの記事にも詳しく報じられているが、Princeは単なる金銭的条件以上に、アーティストは作品が聴き手に届けられるプロセス全体に強い権限を持つべきだと主張し、活動してきた。Princeは司法省がデジタル音楽のライセンスに関する条項を見直しているBillboardの記事もリツイートしている。

Prince他のデジタル・サービスにおけるアーティストの権利も強く主張している。昨年11月にPrinceはTwitterとFacebookのアカウントを停止し、YouTubeから公式トラックの大部分を引き上げた。〔現在はTwitterに復帰している〕この点から考えると、Google Music All Accessには単に取り下げ通告が届くのが遅れているだけではないかと思う。

これまでもPrinceは海賊版サービスや海賊版を拡散するユーザーに対して厳しい態度を取ってきた。2014年1月には、コンサートを録音した海賊版に対するリンクを公開した22人のファンに対しそれぞれ100万ドルの損害賠償訴訟を起こしている。2010年にはデジタル音楽産業を手厳しく批判するインタビューがイギリスのDaily Mirrorに掲載された(一読の価値あり)。

【後略】

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Apple Musicはメインストリームを狙う―ターゲットは「何を聞いたらいいかわからない」カジュアルな音楽ファン

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音楽ファンのすべてがDJレベルの知識があるわけではない。その点が音楽ストリーミングで最大の問題だった。なるほど検索窓は設けられているが、その向こうにあるのがレコード音楽の歴史のすべてでは一般の音楽ファンは戸惑ってしまう。次に何を聞いたらいいかどうやって知ったらいいのだろう? 

この点に着目したのが先ほど公開されたApple Musicのたいへんに巧妙なところだと思う。

Apple Musicはユーザーに次に何を聞いたらいいか教えてくれるのだ。

Appleは複雑なテクノロジーを誰でも簡単に使えるようにする能力で並ぶものがない。 使いにくいMP3プレイヤーを洗練されたiPodにした。スマートフォンをiPhoneで実現した。今回もAppleは使いにくい検索窓に代るスマートな推薦手段を用意することで音楽ストリーミングを万人が楽しめるものにしようとしている。

Apple Music For You

Apple Musicには次のような機能がある。

  • それぞれのユーザー向けにカスタマイズされたお勧めの“For You”
  • 新着やトップチャートを集めた“New”
  • さまざまな好み、場面、気分に合わせて専門家が編集する多彩なプレイリスト
  • ユーザーの既存のiTunesコレクションと同期する“My Music”
  • 著名アーティストがホストするBeats 1ラジオ
  • TアーティストやジャンルでカスタマイズできるPandoraスタイルのラジオ
  • 独自のコンテンツがアーティストから直接配信される“Connect”

こうした機能を活用すればユーザーは次に何を聞いたらよいかと空白の検索窓をにらんで悩む必要がなくなる。

つまりApple Musicは音楽の好みを尋ねられて「ああ、音楽は好きだよ。カントリー以外ならなんでも聞くね」などと答える一般的な音楽ファンを想定している。壁一面にCDのカセットが並んでいたり、何箱ものレコードを収集していたりするような熱狂的なファンではなく、通勤の車の中で音楽ファンの友達が作ったミックスCDを何千回もかけるような平均的な人々のためのサービスだ。

Appleがストリーミング・サービスを始めるにあたってもっとも重要な課題は、ユーザーを無料トライアル期間終了後も月額料金を払い続けたいと思う気にさせる点にある。それに失敗すればユーザーはSpotifyやYouTubeのような広告ベースの無料サービスに行ってしまうだろう。

ファン vs 友達ネットワーク

Apple MusicはSpotifyから熱狂的な音楽ファンを奪う試みではない。だからこそAppleはBeats 1もConnectもApple Musicの会員でなくても無料で利用できるようにしている。Spotifyのユーザーは長年かかって作り上げたカスタマイズやソーシャルグラフを捨てることはしないだろう。

Streaming Social

左側のApple MusicのConnectはファンがアーティストをフォローする。右側のSpotifyではユーザーが友達をフォローする。

6000万の登録ユーザー、2000万の有料ユーザーを擁する音楽ストリーミングの王者、SpotifyとAppleの新サービスの本当の違いはソーシャルな側面にある。Apple MusicはConnectを通じてユーザーをアーティストに結びつけようとする。ファンはアーティストの投稿する記事を読んだり、Connect独占で提供されるビデオや楽曲を楽しんだりする。これに対してSpotifyでは友達同士のネットワークが重要だ。好みの合う友達が何を聞いているかを知り、そのプレイリストを利用させてもらったりする。

Apple Music New

こうした差別化は双方にとってきわめて理にかなっている。Apple Musicが「次に何を聞いたらいいかわからない」カジュアルな音楽ファンを主としてターゲットにするのであれば、その友達も大した知識を持っていないに違いない。それなら友達同士でフォローしあってもあまり役に立たないだろう。これに対してSpotifyはもっと深い音楽経験を持ち、十分に知識があるファンが対象だ。こういうファンは別にプレイリストのキュレーターやアーティストから次に何を聞くべきかいちいち教えてもらう必要はない。それよりも好みの似た他のユーザーの動向をモニタできる方が有益だ。

これはAppleにとって賢明な戦略だろう。一般ユーザーの大部分はストリーミング・サービスに馴染みがなく、いきなり膨大な選択肢を与えられても戸惑うばかりだ。Appleはストリーミング・サービスのアーリー・アダプターである熱狂的な音楽ファンに訴えることには重きを置いていない。FM局やPandoraラジオのリスナーで、iTunesで時折曲を買ったりするユーザー、つまり膨大な人数のカジュアルな音楽ファンが対象なのだ。Spotifyの6000万のユーザーも数十億台に上るiOSデバイス、何億人というiTunesのユーザー数とは比べものにならない。

Appleはニッチを狙わない。Apple Musicは単なる音楽ストリーミングではない。メインストリームの音楽ストリーミングたらんとしているのだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

電通デジタル・ホールディングス、定額音楽配信サービスのSpotifyに出資

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AppleがWWDCでサブスクリプション(定額)型の音楽配信サービス「Apple Music」を発表したが、それと前後して、サイバーエージェントエイベックスの「AWA」、LINEとエイベックス、ソニー・ミュージックの「LINE MUSIC」と、国内で利用できる音楽配信サービスがローンチした。

一方、海外で先行する音楽配信サービスの「Spotify」は、日本でのサービスインについてまだアナウンスをしていない。そんなSpotifyについて、電通グループが出資したことが明らかになった。

電通デジタル・ホールディングス(DDH)は6月15日、同社が運用する投資ファンド「電通デジタル投資事業有限責任組合」を通じてスウェーデンのSpotify Technology S.A.(Spotify)への出資を行ったと発表した。

出資額や出資比率は非公開。DDHによると、すでに電通グループとSpotifyは40カ国以上で取引実績があるという。

Spotifyこれに先駆けては6月10日に5億2600万ドルの資金調達を実施した(バリュエーションは85億3000万円)ことを明らかにしている。同社が発表したところによると、Spotifyの有料ユーザーは2000万人。全ユーザーは7500万人にのぼるという。

LINE MUSICは「シェア」と「価格」で音楽ビジネスを再構築する

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サイバーエージェントとエイベックスが5月27日にスタートした「AWA」、日本は未確定ながらも6月30日に世界150カ国で開始する「Apple Music」と、国内でも定額制音楽配信サービスがにわかに盛り上がりつつある。そして、紆余曲折を経て「LINE MUSIC」がついにベールを脱いだ。

LINE MUSICはどのようなサービスなのか? 一言でいえば、LINEは「シェア」という仕組みと、若者を意識した「価格体系」を武器に、音楽ビジネスを本気で再構築しようとしているように思える。スタートまでの紆余曲折を紹介した前回の記事に引き続き、LINE MUSICの舛田淳社長と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長に狙いを聞いた。

二段階+学割で「若者の音楽離れを止めたい」

LINE MUSICの特徴は、まず「価格」だ(表参照)。時間にも機能にも制限のない「プレミアム」の価格は、業界の標準ともいえる価格帯だが、機能制限はなく20時間まで聞ける「ベーシック」が用意されていること、さらに双方に「学割」が用意されているところが特徴だ。

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舛田氏(以下敬称略):私どもの思いとして、若者の音楽離れを止めたい、というものがあります。ですから「学割」を用意します。二つの価格帯双方に用意し、1000円が600円、500円が300円になります。これによってエントリーのハードルを下げて音楽に触れていただき、音楽を好きになってもらいたいのです。

サービスの発表から開始まで時間がかかりましたが、この価格帯を実現するために時間がかかった、というところに近いです。世界が「ストリーミング・ミュージックは1000円だ」と言っているさなかで、我々は「もっとエントリーポイントを下げましょう」という話をさせていただいたわけです。

渡辺氏(以下敬称略):重要なのは、「でも、フリーではない」ということです。

舛田:まさに。フリーではない。フリーは(音楽ビジネス側から見ると)機会損失が大きい。ものすごい数の機会損失を生んでいるんです。実際、(無料の)ストリーミングとダウンロードで収支のバランスが取れているかというと、そうではありません。ですから無料はやるべきではない、と判断しました。その上で、プロモーションのために無料にしたい、というアーティストがいれば、それはそれで、プラスアルファの設計をすればいいだけです。なので、今回は2つの価格帯です。

LINE MUSICの舛田淳社長

LINE MUSICの舛田淳社長

LINEならではの音楽「シェア」機能とは

サービスは有料なのだが、「無料」で打ち出すところもある。それが、音楽の「シェア」である。

舛田:もうひとつは、会員登録がなくても、各曲30秒の試聴用の音楽だけは聴ける、ということです。トークルームとかタイムラインに好きな曲を送り合えます。LINEのスタンプはコミュニケーションの中に溶け込みますよね? それと同じように、音楽を送り合えるような設計にしています。プレイヤーから「シェア」を選べば、LINEのトークとタイムライン、その他TwitterやFacebookに送れます。(注:LINE以外のサービス経由で試聴する場合には、LINE MUSICアプリのダウンロードが必要。会員登録は不要)

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LINE MUSICにはiPhoneとAndroid向けに専用のスマホアプリが用意され、会員は通常そちらで音楽を楽しむ。

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だが、音楽がLINEでシェアされた場合には、LINE MUSICのアプリは必要ない。LINEのスタンプのように、最小限の機能を持った音楽プレイヤーと音楽が一緒に送られてくるので、それをタップすれば楽曲が聴ける。

会員なら曲全体が聴けるが、会員でない場合には、各曲30秒間は無料で聴ける。サブスクリプション型なので、会員側はスタート時150万曲以上というカタログから何曲、どれを選んでも追加料金はかからない。シェアされる側も負担はない。

ネット時代の「音楽を語り合う放課後」を作ろう

音楽の「シェア」は、LINE MUSICのサービス設計の根幹をなす部分である。そこには舛田氏を初めとする、LINE MUSIC開発陣の強い思いがあった。

舛田:例えば、グループトークをしている時に、「BGMはこれだよね」みたいにシェアできますし、「ハッピーバースデー」ミュージックみたいなこともできます。そうですね……告白ミュージック的なものもできますね(笑)。生活の中のコミュニケーションというか、感情を伝える手段として使えるわけです。

昔、彼女にカセットテープを作って送ったりしたじゃないですか。それと同じ環境をどうやって作るか、そしてデジタルの時代に応じて進化させるか、というのが我々のテーマでした。

音楽に出会うポイントって、年齢を重ねる毎に減るんですよ。先日は、33歳で新しい音楽との出会いは止まる、なんていう記事もありましたよね。

学生時代が一番音楽を聴いていて、放課後はひたすら音楽について話し込んだりしていたじゃないですか。そういう世界を、30になろうが40になろうが60になろうが、続けられるような世界を作りたかった。「ずっと放課後」を作りたかったんですよ。

音楽をコミュニケーションアイテムに

音楽レーベルと連携したのも、こうした新しい聴き方が、音楽市場拡大につながるのではないか、という発想からだった。

舛田:結果、音楽の楽しみ方が、次のステージに行けるかもしれません。音楽は一人で聴くもの、という感覚が強いのですが、そうじゃなくて、みんなでコミュニケーションアイテムとして使う、という新しい価値を提供することで、今音楽から離れようとしているユーザー達に、「音楽って素晴らしいよね」と伝えられるかもしれない。

アーティストの方々から見ても、新しい表現手段だと思います。もしかすると、トークに合った楽曲を作っていただけるかもしれない。それがヒットするかもしれない。

新譜と違い旧譜って、出会うきっかけがないじゃないですか。でもコミュニケーションの中で、「このシーンならこの曲でしょ」「このトークの流れなら、この曲が鉄板でしょ」というものを見つけてきて流すこともあるかもしれない。そういうコミュニケーションがLINEらしさです。

ラジオ型ではなくオンデマンド型サービスを選んだ理由

サブスクリプション・ミュージックには、楽曲を1つずつ再生する「オンデマンド型」と、ラジオや有線放送のように流しっぱなしにする「ラジオ型」がある。LINE MUSICはオンデマンド型だが、それを選らんだのも、シェアをやりたいがゆえだった。

舛田:なぜオンデマンド型サービスにこだわったかというと、コミュニケーションの要素を入れるためでした。ラジオのチャンネル1つをシェアされても、困る。コミュニケーションにはならないんです。コミュニケーションにストーリー性を持たせるのであれば、一曲一曲である方がいいだろう、という判断です。ラジオ型はオンデマンドではないので、一曲一曲のシェアが難しいんです。

正直この辺は、かなり社内でも検討しました。楽曲の配信許可許諾については、ラジオ型の方が料金も安くなりますし、簡単です。ラジオとオンデマンド配信では文化が異なっているため、そのような慣習になっています。

しかし今回は、あえて茨の道を行きました。各社と調整し、口説き落としながら進めていったんです。「未来はこっちですよ」と。

「着うた」と「LINE MUSIC」の類似点

ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺氏は、そうした新しい要素と「着うた」の類似性を指摘する。

渡辺:着うたは、他の国々にはなかった日本のデジタルならではの盛り上がりで、すごくユーザーにも支持されたものです。一つの時代を作ったサービスだったな、と思います。特に、若い世代が音楽に触れるための道具としてワークしました。

着うたは、一種のアイデンティティです。ガラケーの中で、自分のテーマソングを決めるようなところがありました。その中での遊びだったと思います。

しかし今回のサ−ビスは、スマホになってLINEさんと組むことで、考えられる以上の遊びが考えられます。そこがまた音楽を盛り上げるきっかけになると思います。

着うたの時もユニークなユーザーが、最盛期には約2000万人くらいいました。LINE MUSICをはじめとしたストリーミング・ミュージックが2000万人くらいのユーザーに楽しんでもらえるようになれば……と思います。非常に大きなデジタルでの音楽マーケットができるのではないか、と期待しています。

2000万人に楽しんでもらえるような市場になれば、アーティストへの分配も、着うた時代以上に可能になるでしょう。新しいサービスがユーザーに支持されれば、着うた時代のように対価を払うことになんら抵抗がない、その分楽しんでいただけることになる。ストリーミング・ビジネスに対する懐疑論については、「2000万ユーザー」といった数字になってくれば、状況がまったく異なってくる、と期待しています。

そうなると、音楽ファンからアーティストファンへの移行もあるでしょうし、「所有」するような商品への需要も広がるでしょうし、ライブに行ってアーティストに触れるビジネスも広がります。ベースがあれば、その先はいくらでも計算できます。音楽ファンのベースを作るのが優先で、そこからつなげていけます。

ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長

ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長

前回の記事にて、「アーティストのファン向けのビジネスから、音楽ファンのビジネスへ」という、渡辺氏のコメントをご紹介した。これは、シェア機能の存在を前提にしている。無料でシェアできるよう広げていくことで、音楽を使ったコミュニケーションで「遊ぶ」人々が増え、結果、人々が音楽に触れる裾野が広がることを期待しているわけだ。

「LINEが旨味を独占するわけではない」

一方、こうした仕組みを「LINEが旨味を独り占めする」ととられたくはない、と舛田氏は話す。

舛田:実は私、LINE MUSICという名前から「LINE」を外すことも検討したんですよ。このビジネスをやるのは「この座組だから」であって、音楽業界全体のプラットフォームになれたら、と思っているんです。LINEという冠があると狭く思われてしまうのではないか、と。

でもみなさん「いやいや、LINEでしょ」と(笑)

思いとしては、LINEの中に止めるつもりはないんです。プレイリスト機能などについては、LINEの中以外に公開できるようにすべきだと思います。まずはLINEのタイムラインの中とか、公式アカウントを持っているアーティストがオフィシャルブログや公式アカウントでプレイリストを公開する、というところから始めますが。しかし、TwitterやFacebookでもいいですし、プレイリスト用のAPIを公開して、キュレーションメディアのようなものを作れる……といったところまでやるべきだと考えています。

LINEの他のサービスとも連携して広げていくべきだと考えています。

カタログの量と「サービスとしての完成度」は前提条件

LINE MUSICの魅力が「シェア」にあるのは間違いない。しかし、それは支持されるサービスになる一つの要素である。舛田氏は「通常のオンデマンド型サブスクリプション・サービスとして、素晴らしいものでなくてはならない、ということが大前提」と話す。

舛田:まずは音楽ファンを満足させるものでなくてはなりません。やはりカタログ数が重要です。主要なレーベルにご参加いただきました。第一弾として、二十数レーベルに参加していただき、新しい楽曲も出していただきます。カタログ数は今後も増やしていきますが、要はありとあらゆる楽曲を用意するつもりでやります。インディーズも含めてです。最初の段階では、日本の主要な楽曲は入っているのではないかな、と思います。

まずはスマホアプリですが、BGMとして、作業しながら聴く、ということはあると思いますので、ちょっと遅れることにはなりますが、PC版も用意します。

そして次に重要なのが価格です。こちらはいうまでもありません。音楽との出会いは人それぞれです。トップページで見つける方もいれば、専門家が作るプレイリストみたいなものを聴いていただくこともあるでしょうし、一般の方が作ったもので出会うこともあるでしょう。データによるレコメンドもあります。ユーザー同士のコンテンツ共有もあります。

プレイリストのイメージ

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音楽と出会うためにすべての手を打つ

舛田:これ、すべてがないとダメだと思うんです。そうでないと浅くなります。私は元々検索をやっていた人間で、検索には限界があると思って「NAVERまとめ」を作ったんです。かといってNAVERまとめですべてが完結できるわけではないです。そこは、すべてがハイブリッドでなくてはいけないです。現在は「音楽と出会うきっかけがない」のが問題なのですから。考えられるすべての手を打ちます。

いくら楽園があっても、そこへ到達できなければ意味がないんです。ですから、ユーザー間のシェアを大切にします。メーカーやアーティストが自分で情報発信していけるようにもなります。そうすれば、タッチポイントは必ず増えていきます。

今年、2015年は多数のストリーミング・ミュージックサービスがスタートするとみられています。まさにダムが決壊するがごとく、この2015年というのが、日本の音楽市場にとってターニングポイントになるのではないか、と。いや、そう「したい」と思っているんです。

その中で我々がどういう地位を占めたいか、というと、当然多くのユーザーに使っていただきたいと思っています。そしてその時は私たち(LINE)だけでなく、音楽業界全体のプラットフォームになっていきたい。それが目指すべき方向です。コミュニケーションと音楽を結びつけるというのが、私たちがやるべきこと。若い人達に音楽を聴いてもらって、感動してもらうのが、私たちがやるべきことです。

定額制音楽配信サービスの勝者は?

LINE MUSICがスタートした背景には、各種ストリーミング・ミュージックがこの時期に向けてスタートの準備を進めており、同様の条件交渉が必要なLINE MUSICについても、結果的に同じようなタイミングになった……という部分があるようだ。ライバルが増えることになるが、舛田氏は悲観していない。むしろ「今がチャンス」とみている。

海外のネット事情に詳しい人や、熱心な洋楽ファンにとっては、ストリーミング・ミュージックは「日常」であってなんら珍しいものでもない。だが日本では、舛田氏の言うとおり、多くの人が「本物のストリーミング・ミュージックを体験してない」状態であり、市場開拓はこれから。短期的には、競い合って認知度が高まることが望ましい。

一方、どのサービスが本命になるかは、読むのが難しい。

集客の点では、現在公称会員数300万人で、トップシェアであるNTTドコモの「dヒッツ」と、LINE MUSICが有利だ。dヒッツは、NTTドコモのスマートフォン販売戦略と連携しており、店頭での拡販が強み。一方LINEは、メッセージングサービスとしての圧倒的認知度がある。

Apple Musicは、音楽ファンには一番注目度が高い。ダウンロード販売では強いiTunes Storeとの連携が強く、「すでに持っているライブラリとの統合」は魅力的だ。Androidでの展開は秋になるものの、iOS機器に加え、PCやMacでもスタート時点から使えるため、「マルチデバイス展開」でも一歩先を行っている。海外では当たり前である水準をきちんとカバーしており、システムとしての完成度は一番高そうな印象を受ける。

価格面でも、上記2サービスは強い。LINE MUSICは「学割」をはじめとした施策でハードルを下げているし、dヒッツは税込み540円で、視聴時間制限がない。自分がまだ学生だと想定すると、毎月1000円近い金額が「音楽のためだけに出て行く」のは確かにちょっとつらい。だから、500円まででの戦いが主流になるのではないか、という予想もできる。一方、Apple Musicは1人向けのディスカウントはしないものの、「家族6人までが14.99ドルで使える」という、ファミリーアカウント制度を用意する。親に支払ってもらう想定ならば、実質的にはかなり競争力がある。

そうなると競争軸は、「音楽との出会いのプロセス」になるだろう。LINE MUSICのように「シェア」を軸に、友人との関係から利用者を広げる手法もあるだろう。Apple Musicは、国内で楽曲調達やiTunes Storeの「店舗設計」を日夜担当している音楽の目利きが、プレイリスト作成や楽曲提案の中心になる。「音楽がわかる人々からの伝播」という、ある意味古典的な「ラジオから流れる音楽」と同じモデルだ。他のサービスは、「シェア」「音楽発見」について凡庸な印象で、特徴が薄い。

「無料で音楽を楽しむ人々」を引きつけることが本命の条件だとすれば、「聴ける」以上の要素がカギになる。だからこそ、「Spotifyなどが日本への参入を果たしていない」という前提に立てば、LINE MusicとApple Musicの対決になるのでは……というのが、筆者の見立てある。どちらにしろまず、目の前にある「無料モデルからの脱却」が最大のハードルであり、「どこが勝つか」はその先にしかないのだが。

「本物の定額制音楽サービスを見せる」 LINE MUSIC仕掛け人、狙いを語る

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

いよいよ「LINE MUSIC」が始まる。5月28日にティザーサイトを開設し、近日中にサービスを開始することを公表した。音楽配信を主体とする事業会社、LINE MUSICに共同出資するエイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージックの音楽レーベル3社と共同でビジネスを開始する。

LINE MUSICのティザーサイト

LINE MUSICのティザーサイト

それにしても、スタートまでに紆余曲折があったものである。LINEは幾度も音楽配信への参入宣言をしているが、具体的な動きをなかなか出せずにいた。そもそも定額制音楽サービスは、日本では芽が出ていない。海外大手「Spotify」も近日中の日本参入を公表しつつも具体的な動きが見えない状況にある。きょう未明には、Appleが月額9.99ドルの「Apple Music」を世界100カ国で6月30日に開始すると発表。日本でもまもなく登場することが予想される。

今回LINEはようやくサービス開始にこぎつけたわけだが、スタートが難航した理由はなんだったのか。そしてLINE MUSICは、どうやって日本に定額制音楽配信を根付かせようとしているのか。LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役 CSMO 最高戦略・マーケティング責任者である舛田淳氏と、音楽レーベル側の代表として、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長に話を聞いた。

残念ながら、この記事が公開される段階では、LINE MUSICのサービスは開始されていないため、料金体系を含めたサービスの詳細は明かすことができない。そのため、ビジネス状況や戦略を中心に説明していただいた。サービスの詳細を含めた戦略と展開については、別途近日中にインタビューの第二弾を公開する予定である。

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

4度目の正直だったLINE MUSIC

――LINEは音楽事業への参入にかなりこだわってきたように見えます。LINE MUSICはなかなかスタートできなかった。これまでの経緯を教えてください。

舛田氏(以下敬称略):LINEがまだ生まれる前のネイバージャパンの時代……2010年頃に検索サービスを日本で立ち上げた時代から、「検索と音楽」であったり「まとめと音楽」であったりというものが何かないかと考え、「NAVER MUSIC」という企画を立てました。「まとめ」というキュレーションメディアにストリーミングをくっつけたり、検索にストリーミングメディアをくっつけたりというモデルをしたかったんです。

その時、企画書をもって色んな音楽メーカー・レーベルを回らせていただいたのですが、一言でいえば「ダメ」でした。市場の環境がまったく整っていなかった上に、私どもも「検索サービス」という意味ではパワーがまったく足りませんでした。「NAVERまとめ」も成長の過程にあった状態でしたし、この企画自身はなくなりました

さらにそれ以降、本日に至るまで3回くらい、過去に「LINEは音楽をやります」と宣言してきました。第一弾は2012年のカンファレンスにて、話をさせていただいて、その時は大手音楽配信サービスとのパートナーシップを検討していました。しかしこれも、私たちが思い描くサービスができそうになかった。サービスとして十分ではないものは出さない、という判断をして、企画をまた白紙にしました。

次は私どもが単独で、2013年に「LINE MUSIC」を立ち上げて、そこに対して、各メーカー・レーベルさんに参画いただく、という形で準備を進めました。我々は「LINE MUSIC 1.0」と呼んでいるんですが、これは予定日の1週間前になって、サービスのローンチを止めました。ちょうど1年前でしたが、アプリマーケットの審査も通しましたし、記者会見の場所すら押さえていたんです(笑)。

でも「1.0」はアプリごとつぶし、ゼロにしました。そして、それを経て出来上がったのが、今のLINE MUSICです。

「腹をくくって一緒にやろう」

――ローンチ直前まで進んでいた「1.0」を捨てた理由は? どんなきっかけがあったのですか?

linemusic04舛田:今、思い返せば、実は私も迷いながら、GOを出そうとしていたんです。市場環境が整わないなら、まず出してみて、そこから変えていこうと。

日本において「ユーザーの音楽体験を変える」「海外と同じように、ダウンロードからストリーミングに変えていく」には、いくつかの条件があると思っているんです。それは「主要メーカーが参加しているか」や「豊富な楽曲数」であるとか「新譜があるか」であるとか、「手に入りやすい価格帯か」「オンデマンドであるか」「ユーザーにデリバリーする仕組みとして特徴があるか」、あとは「アーティストから見てプロモーション力があるか」といったところでしょうか。こういったところが、「LINE MUSIC 1.0」は、高いレベルになかった。

ローンチ前の段階でも、楽曲をご提供いただくことについて、最後の最後の段階で返事をいただけていなかったレーベルさんもいたんです。ソニー・ミュージックさんなんですが(笑)「前向きなようだが、まだGOは出ていない」という話だったので、ある種の直談判ということで、ソニー・ミュージックさんを訪ねていったんです。

日本の音楽市場の未来、問題点、アーティストのモノ作りへの想い、LINEとしての構想など、お互いに素直に話をさせていただいたのですが、その時に、ソニー・ミュージックの村松(俊亮社長)さんに思ってもみない言葉を言われました。「今よりも、もっと腹くくって一緒にやらないか?」と。

——渡辺さんにおうかがいします。ソニー・ミュージックはなぜ「腹をくくって一緒にやろう」とLINE側に言ったのですか?

渡辺:レコード会社は、音源を作り、ユーザーに届けるのが仕事です。当時も今も大きいのは「パッケージメディア」。特に日本はパッケージの売り上げが多いのが特徴です。ですからビジネスプランもそこが中心になります。

その一方で現在は、映画業界のように「ウィンドウ」的にサブスクリプションを捉えていかなくてはいけない時代です。ファースト・ウィンドウはパッケージとダウンロードで、どちらかといえばアーティストのファンに向けて売っていく。その後にウィンドウをつけてサブスクリプションに持っていく……というプランが、当時の構想でした。

ただ僕たちが重要だと思ったことがあります。アーティストのファンはもちろん大切なんですが、やはり「音楽ファン」に広くアプローチして、そこからアーティストのファンになっていただきたい。そういうやり方はウィンドウ戦略とはまた違うものです。

そういう発想でいくと、やっぱり一番一緒にやりたいのはLINEだよね、と社内で話していたのですが、そこにLINEからサブスクリプション型の提案がきていました。ならば、僕たち側からも逆提案しよう、という形になったんです。

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舛田:LINE MUSICを立ち上げる前に、ユーザーアンケートをとりました。「音楽は好きですか?」「音楽は聴きますか?」という問いに対しては、9割以上の方々が「聴きます」「好きです」と答えるんです。音楽はいつの時代も皆が好きで、魅力的なコンテンツなんです。

ただ、今の市場環境としては、パッケージ販売が落ちてきています。ある種、世界の中で希有な存在とされてきた日本のパッケージ市場ですら、ダウントレンドに入ってきた。それを埋めるはずのダウンロードも世界ではダウントレンドに入ったと言われています。

音楽は好きだが、そこにお金を払う、という状況から離れ始めた、というのが今の状況です。

日本のユーザーの多くは「本物のサブスクリプション・サービス」を知らない

――LINE MUSIC 1.0は、音楽レーベルとLINEの双方で「これじゃない」という思いがあったようですが、具体的に何が足りなかったんでしょうか。

舛田:今の時点に至るまで、日本のユーザーの多くは「本物のサブスクリプション・サービス」を知らないんですよ。カタログが揃っている、と言える状態には一回もなったことがない。なおかつ、手に入りやすい価格でもなかった。いままでもいくつか出てはいますが、多くのユーザーを熱狂させるものには、なれていなかった。

LINEが「1.0」として出そうとしていたものも、「業界標準価格の1メニューだけで、メジャーレーベルも参加せず、カタログも不十分」という形でした。その当時の判断として、これでは熱狂させる「本物のサブスクリプション」にはなっていない、という判断をしました。

逆にいえば「カタログが揃っている」「手に入りやすい価格である」のが、これからスタートするLINE MUSICである、と言えます。

フリーミアムモデルは音楽市場の成長につながらない

――海外のストリーミングサービスは、無料の機能制限版+広告の無料会員と、月額10ドル程度の有料会員の2階建ての「フリーミアムモデル」が主流です。LINE MUSICはどのような料金体系なのでしょうか?

舛田:まだ詳細はお伝えできませんが、日本のLINE MUSICに関していえば、一般的なフリーミアムモデルを採用しません。海外でフリーミアムのストリーミングはここ数年伸びていますが、今年に入り「本当に大丈夫?」という声もアーティスト側から聞こえてきています。市場を本当に成長させてくれるの? という疑問が出てきていますね。テイラー・スウィフトがフリーミアムサービスには楽曲を提供しないと発言したのは印象的でしたね。今後世界でのフリーミアムモデルの環境変化には、注目しています。

――フリーミアムモデルは無料で音楽を聴く人が増えすぎて消耗戦に陥っている、との批判があります。音楽業界側からは無料型ではなく「有料型」で、という意見が強いのですが、LINE MUSICもそれに倣うということでしょうか。

舛田:日本のユーザーは素晴らしい。これまでも音楽に価値を認め、お金をお支払いいただいているわけです。グローバルでフリーミアムが流行っているからといってそれを闇雲に日本のサービスに持ち込むべきでない、という部分は、コンテンツ側からの要請ではなく、私自身も「そうすべきだ」と思っているからです。コンテンツ、国、市場によって、それぞれ最適なモデルにしていくべきです。

linemusic08

コミュニケーションに音楽を取り込む

舛田:昔はレコード店で楽曲を買いました。情報はテレビ・ラジオなどのマスメディアで仕入れる。それがデジタル化し、次は「検索」や「ポータル」で知るようになりました。今はさらに時代が変わり、「ソーシャルメディア」で知るようになりました。ソーシャルメディア・サービスが人のコンテンツとの出会いを演出するメディアになったんです。

しかし一方、一般的なSNSは密接なクローズドなコミュニケーションの中には入り切れていません。我々が目指すところであり、求められていることは、LINEが担っているリアルな人間関係の中のリアルなコミュニケーションの中に音楽の話題を入れていくことです。

学生時代は、とにかくたくさん、友人と音楽のことを話していたはずです。でも今はそんなにしなくなっている。「好きなのに」「聴くのに」です。

そこに矛盾が生まれ始めている。ユーザーにとっても、提供するプラットフォーム側にとっても、音楽を提供する側にとっても、です。今回は、我々のコミュニケーションプラットフォーム上に音楽コンテンツを置くことで、コミュニケーションの中でもう一回音楽を採り上げていただく環境を作る、ということが、一つの大きな方向性です。

「着うた」以上の巨大市場を期待するレコード会社

――音楽レーベルとしては、LINE MUSICでどのくらいのユーザー数を獲得したいと考えていますか?

linemusic02渡辺:着うたの時もユニークなユーザーが、最盛期には約2000万人くらいいました。LINE MUSICをはじめとしたストリーミング・ミュージック全体で、2000万人くらいのユーザーに楽しんでもらえるようになれば……と思います。非常に大きなデジタルでの音楽マーケットができるのではないか、と期待しています。

2000万人に楽しんでもらえるような市場になれば、アーティストへの分配も、着うた時代以上に可能になるでしょう。特に日本においては、フリーミアムによる広告モデルでのレベニューシェアでは、そうした規模のビジネスは非常に難しいと思います。

日本で定額音楽配信サービスはブレイクするか?

定額制音楽配信の多くは、音楽をPCやスマートフォンなどにダウンロードせず、ストリーミング形式で再生する。すでに海外では、CDやダウンロードをしのぐ勢いである。アメリカ・レコード協会(RIAA)の発表によれば、2014年のアメリカの音楽事業では、ストリーミング・ミュージックの売り上げは18億7000万ドル。ついに、CDの売り上げ(18億5000万ドル)を越えてきた。

しかし、日本ではどうも伸びない。日本でも「KKBOX」や「レコチョク Best」、「dヒッツ」などの先行サービスはあるものの、ブレイクするには至っていない。海外の大物を含め、「本命」と呼べるサービスが不在であるから……ともいえる。

5月27日には、エイベックスとサイバーエージェントが共同出資する「AWA」がスタートして話題になったが、メッセージングの分野で圧倒的なシェアを持つLINEが参入するとなれば、注目されるのも当然といえる。

LINEとしてはもちろん、定額制音楽配信の中でトップを狙う。競合となるサービスも今年中に続々スタートするとみられており、舛田氏は「2015年というのが、日本の音楽市場にとってターニングポイントになるのではないか。いや、そう”したい”」と意気込みを語る。

では、具体的にどのようなサービスになるのか? それはどういう狙いで組み立てられたものなのか? そうした点は、サービスがスタートした段階で改めて解説していくこととしたい。

Spotify、無料ユーザーはビデオ広告を見れば30分間広告なしで聴取可能に

音楽ストリーミングサービスSpotifyの広告部門(かつ、有料購読者以外からの収入源の一つ)、Spotify for Brandsは、無料Spotifyユーザーに見せる新しいビデオ広告を2種類スタートする。

1つ目のモバイルオンリー版では、Spotify Freeのユーザーが15~30秒のスポンサー付きビデオ ― 名称は”Sponsored Session” ― を見る見返りとして、30分間広告無しで音楽を聞くことができる。現在、3000万人以上いると言われる無料Spotifyユーザー ― 対して、月間購読料を払って広告のないプレミアムサービスを利用しているユーザーは1000万人 ― は、ラジオCMに似たオーディオ広告によって、音楽を中断されている。これはリスナーにとってかなり煩わしいが、Spotifyが無料音楽ストリーミングを維持していくためには不可欠だ。

その意味で、新しいSponsored Session広告は、ブランドがSpotifyの熱心なリスナー ― 同社によると平均的ユーザーは毎日146分サービスを利用している(ただし、これにはプレミアムユーザーが含まれている可能性が高い) ― に近づく機会を与えるだけでなく、無料ユーザーは事前に広告を見ることと引き換えに、不快感少なく音楽サービスを利用する手段を得られる。どこまでメッセージが届くかは、新しい広告枠をどんな広告主が利用するか、またこれらの広告がSpotifyのタダ乗りリスナーにうまくターゲットできるかによる。

もう一つのデストップ版は、デスクトップユーザーのみがターゲットで、ブランドはSpotifyが “Video Takeover” と呼ぶビデオ広告スポットのスポンサーになる。基本的にこれはリスニング体験を中断させるビデオ広告で、Spotifyの既存のオーディオ広告のビデオ版だ。

新ビデオ広告を発表したブログ記事によると、新フォーマットの初期パートナーとして、Coca-Cola、Ford、McDonald’s、NBC Universal Pictures、Kraft/Mondelez、Nike、Sprint、Target、およびWells Fargoが参加している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook


アメリカのオンデマンド音楽ストリーミング、対前年比42%アップ―ダウンロード販売は衰退へ

2014年上半期のNielsen音楽市場レポートが発表された。これによると、デジタル音楽の消費チャンネルはダウンロードからオンデマンド・ストリーミングに急速にシフトしつつある。オンデマンド・ストリーミングは対前年同期(上半期)比で42%のアップとなっている。2014年上半期には700億曲がストリーミング再生された。逆に、デジタル楽曲のダウンロードは13%ダウンして5億9360万曲に、アルバムのダウンロードは11.6%ダウンして5380万枚となった。

Nielsenのレポートを読むと、AppleがBeatsを買収したのは賢明だったと思えてくる。つまりiTunesのダウンロード販売モデルは急速に衰退しつつあるからだ。楽曲のオンライン、オフライン販売が低調だったため、ストリーミングを含む音楽産業全体の売上も3.3%ダウンした。

一方、独自の趣味を持った若い層の影響だろうが、アナログ・レコードの販売が対前年比で40%もアップし、400万枚となった。販売を伸ばした物理的媒体はこれだけだった。

アルバムには平均10曲が含まれるとする標準的な換算法を用いると、2014年上半期には11億3100万曲が販売されたことになる。これは2013年同期比で12%のダウン。

これまで長い間YouTubeの音楽ビデオが音楽ストリーミングの主要なチャンネルだったが、Spotifyなどのオンデマンド・オーディオ・ストリーミングの登場で、音楽ストリーミングの成長は50%以上となり、ビデオの35%を大きく上回った。音楽ストリーミングに関してオーディオとビデオはほぼ同規模となり、2014年上半期にはオーディオが336億5000万曲、ビデオが366億4000万曲がストリーミングされた。この成長率が続けば、2014年末にはオーディオ・ストリーミングが音楽ビデオのストリーミングを追い越すことは確実だ。

こちらにNielsenのレポート全文をエンベッドした。

【中略】

この15年で音楽ビジネスはCD販売、Napsterによる海賊天国、iTunesのダウンロード販売、Pandoraのインターネット・ラジオ、YouTubeの音楽ビデオ・ストリーミングを経て、Spotifyのオーディオ・ストリーミング時代を迎えた。合法的なストリーミングが普及したことによって、近くレコードレーベルもこれまでの頑な態度を改め、各種の音楽ディスカバリー・アプリを許可するだろう。誰でも好みの音楽を自由に聞くことができる時代がついに実現しそうだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Spotifyでこれまでに一度も聴かれていない曲だけを聴けるForgotify

インディーミュージックだって? 終わったよ。今のインディーって、かぎりなくメジャーに近いだろ、な? ほんとにクールなガキたちがやってる音楽は、誰も一度も聴いたことのないのばかりさ。

そこでForgotifyの出番だ。ForgotifyはSpotifyを調べて、再生回数ゼロの曲を取り出し、その、誰もがまだ聴いたことのない曲だけを聴かせる。

そんなに多くないだろ、って?

きみは、間違ってる。Spotifyが10月に発表したデータによると、同サイトの2000万あまりの曲のうち、その80%は一度以上聴かれている。残りの20%は、一度も聴かれていない。つまり再生回数ゼロの曲は400万曲ある。

もちろん、一度も聴かれないのには、それなりのわけがあるのだろう。Sptifyは必ずしも敷居が高くない“局”だから、XXXXの曲をKidzBopがカバーしたのをアマチュアがさらにカバーしたのとか、しかもそのXXXXは原曲の録音がどこにもなくて、昔一度だけ聴いたことのある誰かのうろ覚えの曲だったとか、そんな粗悪な音源が多いのだろう。

でも、中には本当にいい曲もある。そんなレアな宝石を見つけたときには、全宇宙サイズの満足感に浸れる。きみは、ノイズの中で溺死しそうになっていたシグナルを救出したのだ。

しかし、きみがその曲をForgotifyで聴いたら、再生カウントがゼロでなくなるから、もう二度とこのサイトでは聴けなくなる(のだろう)。つまり、その曲は、誰かが一度聴いたら終わりだ。Snapchatの写真みたいに。

でもそれなら、Forgotifyそのものも短命に終わるかもしれない。Forgotifyで聴かれる曲数の方が、Spotifyの新曲登録数よりも多ければ、Forgotifyは自分を食い尽くして終わりになる。

Forgotfyはここだが、曲を聴くためにはSpotifyのアカウントが必要だ。

[ところで、今朝ぼくの部屋のラジオではLordeの"Royals"が87回も鳴っていた。]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


日本上陸間近? Spotifyがソーシャルメディアウィークにやってくる

2月17日から5日間、東京を含む世界8都市で「ソーシャルメディアウィーク」が開催される。東京で3度目の開催となる今回は、初の試みとしてハッカソンを実施。そこでは、数年前から「日本上陸間近」と言われている定額制音楽配信サービス「Spotify」がAPIを提供するとともに、イベントスポンサーにも名を連ねている。Spotifyの一部UIはすでに日本語対応していることもあり、いよいよ立ち上げ準備が最終段階に入ったのかもしれない。

Spotifyのイメージ

Spotifyは2008年10月にスウェーデンでサービスを開始。Sony Music EntertainmentやEMI、Warner Music、Universal Musicといった主要音楽レーベルと提携し、2000万曲を配信している。一定間隔で広告を配信するかわりに無料で聴けるFree版と、広告がなくオフラインでも聴ける月額9.99ドルのPremium版がある。2013年12月時点では欧米など55カ国に展開し、月間アクティブユーザー数は2400万人、うち600万人が有料会員だという。

そのSpotifyがソーシャルメディアウィークでAPIを提供するのは「Music Hackday」と題するハッカソン。アーティストやデザイナー、プログラマー、デベロッパーが集まり、SpotifyのほかGracenoteやThe Echo NestなどのAPIをもとに、ソフトウェア、ハードウェア、モバイル、ウェブ、楽器、アートなど、音楽が関係していれば何を作ってもアリというイベントだ。東京・原宿の会場で2月22日から夜通し24時間ハックに打ち込める環境を用意している。一度帰宅して2日目に再参加することも可能だ。

日本でSpotifyの立ち上げ準備を進めているハネス・グレー氏は、Music HackdayでAPIを提供するにあたって、TechCrunchからの取材に対して次のようにコメントしている。「日本の音楽産業は活気に満ちていて、テクノロジーコミュニティも賑わっている。ハッキングの精神で音楽と技術を組み合わせるのは心が踊る。Spotifyはさまざまな音楽体験を可能にするAPIをいくつか用意しているので、Music Hackdayでお会いしましょう」。

ハッカソンはこのほか、エンジニアやマーケター、デザイナーでチームを組み、サービスが成長段階で持つ課題を解決することを目的とした「Social Media Week TOKYO 2014 グローサソン」を2月18日に、記者やエンジニア、アナリスト、ウェブデザイナーが1つのチームとなり、社会問題をデータに基づいて分析し、わかりやすいビジュアルで伝える「データジャーナリズム・ハッカソン」を2月20日に開催する。


2013年インターネット上のヒット曲はこれだ(アメリカの音楽サイト)

【注記: 日本からはアクセスできないサイトもあるので、記事中の曲名やアーチスト名をYouTubeなどでご利用ください。】

2013年もあと数歩で終わりだから、窓の外を見つめ、なんだか感傷的になりながら、今年のヒット曲をマッシュアップして聴くのも良いかもしれない。今年は良い年だったけど、良かったのはOne Directionが香水を発売したことだけじゃない。もっと、いろいろある。というわけで、インターネットの上のいろんな音楽サービスを訪ねて、今年どんな曲に人気があったか調べ、みなさんとお祝いをしよう。

Gizmodoの昨日の記事によると、ミュージシャンにギャラ(薄謝)を払うことにしたSpotifyが、2013年にもっとも多く再生された曲トップ100のプレイリストを作った。まず、グローバルでもUSでも、Macklemoreが”Can’t Hold Us”と”Thrift Shop”でトップファイブを独占。Imagine Dragonsの苦悩のシャウト”Radioactive”とDaft Punk and Pharrellの”Get Lucky”がそこに同席している。今年分かったのは、単純な繰り返しの多い曲が好まれること。”We’re up all night to get lu-cky”のループなんて、わざわざ5分も聴く必要ないよね。

iHeartRadio

歌のカテゴリーで今年多くの局(ユーザ作成局)が使ったのは、”Thrift Shop”だ。9月~11月では、Katy Perryの”Roar”がいちばん多く使われた。Bruno Marsの”When I Was Your Man”は、今年いちばん多く‘親指が立った’曲だが、たぶん10~12月では”Roar”がいちばん親指を稼ぐだろう。

アーチストのカテゴリーでは、局作りに最大の貢献をしたのがDrakeで、Bruno Marsは上で述べたように、親指でトップ。

iHeartRadioで人気最大のライブ局は102.7 KIIS-FM Los Angeles、カスタムではDrakeだ。個人的にどうしても名前を挙げておきたいMiley Cyrusは、人気59位から4位へジャンプした。

まとめ: あの傷心でベビーフェースのBruno Marsがやってるように、誰もが、スポットライトを浴びてシャウトするときには元カレ元カノを美化する。“I was wrooo-ooo-oooong”(ぼく/私は間違っていたぁぁぁ)って。

Songza

Songzaで最大のプレイリストは(降順で): Today’s Biggest Hits、Today’s Happy Pop、The Rap Report、Today’s Country Hits、Drop-a-Beat Workout、Blogged 50。

Songzaのチームによると、今年ニッチ的にブレークしたのはI’m A Boss(オープンカーの屋根をたたんで手の中指をまっすぐ伸ばしてハンドルを握ってぶっ飛ばすときに聴く曲)、Every Summer Dance PartyAt A ’90s School DanceThe Twerk TapeVodka Escapades: Ladies Be Pre-Gaming、そしてUp All Nightだ。

なお、Twerk TapeはTwitterとFacebookの上では、これまでの1年半あまり、トップ人気のプレイリストだ。Mileyのせいではないね。

まとめ: 人間の本性は誰もが考えるとおり。

8tracks

iHeartRadioやSongzaはポップスやヒット曲が中心だが、8tracksの2013年のトップ曲はインディーやフォーク系が多い。ここで一番多くプレイされ、三番目に多くLike(いいね!)されたのが”The last indie playlist you’ll ever need”(あなたが絶対に必要としないインディープレイリスト)だから、それも当然。このサービスのトップテンは:

1. Passenger, “Let Her Go”
2. The Neighborhood, “Sweater Weather”
3. Birdy, “Skinny Love”
4. Ed Sheeran, “Kiss Me”
5. Ed Sheeran, “Give Me Love”
6. Icona Pop, “I Love It”
7. Imagine Dragons, “Radioactive”
8. Imagine Dragons, “On Top Of The World”
9. Avicii, “Wake Me Up”
10. The 1975, “Chocolate”

まとめ: Death Cab For Cutieの “I’ll Follow You Into The Dark” が21位だ。これのリリースは、2006年。

[画像出典: Getty; Flickr: San Francisco Foghorn, Dominic Simpson, Steve Hunt]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


合衆国の音楽の売上は全般的にダウン, しかしストリーミングは24%伸びて半年で510億曲

Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスからアーチストはどうやって収入を得るのか、今の状況を改善するために彼らには何ができるのか、という疑問が依然として渦巻いている中で今日(米国時間7/19)Nielsenが発表した数字は、音楽の売上が下降する中でストリーミングが伸びていることを実証している。2013年の前半では、音楽ストリーミングは24%伸びて提供総数が510億ストリームだったが、アルバムや曲は同期間に前年比4.6%減少し、2億1000万ユニットとなった。しかも、ストリーミングでHarlem Shakeが大差でトップであることは、ビデオの役割が大きいことを物語っている。Baauerのこのトラックはヴァイラルな無料ビデオの広がりを生み、だれもかれも、彼らのお母さんたちもが、自分のバージョンをYouTubeに投稿し、ミームを肥大させた。

6月30日までの6か月で、Harlem Shakeは4億3800万回ストリーミングされ、次位のThrift Shop(Macklemore and Ryan Lewis)の1億8700万を大きく引き離した。総数510億の中で上位がせいぜい億のオーダーだから、これらの数字は音楽ストリーミングがきわめてロングテールであることも示している。

音楽と消費者のマインドシェアがストリーミングへと傾く中で、デジタル音楽も健闘し、それとは対照的にCDの売上は落ち込んでいる。CDの売上は14.2%ダウンして7820万ユニットだったが、デジタル(MP3ダウンロードなど)の売上は6.3%伸びて6080万ユニットとなった。これらの半期レポートを制作提供しているNielsen SoundScanとNielsen BDSによれば、今ではアルバムの全売上の43%がデジタルアルバムである…前年同期では38%だった。ただし2012年の後半に関しては、デジタルのシェアが56%と大きかった。

ストリーミングの影響をいちばん大きく受けているのは、シングルのデジタルダウンロードだろう。Appleのようなダウンロード主体だった企業がこのところストリーミングに傾斜しているのも、そのためだ。シングルのダウンロードは2.3%減少して6億8200万だった(同期間にストリーミングは510億だったことをお忘れなく)。

“2013年前半は売上全体がやや減少したが、その中でデジタルアルバムの売上が伸びたことは同分野の堅調ぶりを物語っている”、Nielsen EntertainmentのSVP David Bakulaがこう書いている。しかし物理メディアの中にも、伸びているものが一つある…それはレコードだ。現時点ではニッチな珍品扱いだが、レコードではアルバムが290万売れて、前年同期比33.5%の増となった。

Nielsenの数字を細かく見ると、デジタルを買う人とCDを買う人とでは、人気曲や人気アルバムにやや違いがある。しかし一方、レーベル(レコード会社)別に見ると、全体的な傾向はどこもほぼ同じだ。どのカテゴリーでもトップであるUniversal Musicに関してNielsenは詳しく分析しているが、同社のマーケットシェアはデジタルでも物理メディアでも35%以上で、Sonyと苦戦していた1年前に比べて業界における立場がより強くなったようだ。

しかし、ストリーミングの人気者が売上でも上位、とはいかない。ヴァイラルなビデオの氾濫でHarlem Shakeはストリーミングの人気トップになったが、シングルの売上ではトップテンに入っていない。売上トップはストリーミングで二位のThrift Shopだ。この曲はラジオの放送でも五位に入っている(ラジオが売上に貢献したとは思えないが)。さらにこれは、デジタルアルバムで三位、物理アルバムで七位だ。

Justin Timberlakeは、アルバムの全カテゴリ(デジタルと物理)でトップだったが、Jay-Zと共演したSuit & Tieはデジタルシングルで七位、ストリーミングではトップテン入りしなかった。今年前半、MySpaceの上では出ずっぱりだったにもかかわらず。

レポートの全文を、下に埋め込んだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))