ソフトバンクとWeWorkがEmergeアクセラレータの最初のスタートアップ14社を選定

ソフトバンクグループのベンチャーキャピタル、SoftBank Investment AdvisersWeWork Labsは共同でEmergeの最初のチーム14社を選定したことを発表した。Emergeは価値を過小評価されているスタートアップのファウンダーを支援するアクセラレータプログラム。

両社のプレスリリースによれば、Emergeは「ソフトバンクがWeWork Labsのサポートを得て立ち上げた」ものと述べている。WeWork Labsは「グローバルイノベーションの促進」を目的としたWeWorkのアクセラレータだ。

これは株式取得を求めない8週間のワークショップで、両社の関係者がメンターとなってアドバイスを行う。またソフトバンクのトップとのセッションも用意される。こうした準備の後、投資家、ソフトバンクのパートナー向けのデモやイベントでクライマックスとなる仕組みだ。

Emergeのサイトによれば、このプログラムはカリフォルニア州サンマテオを拠点としているが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行のため、セッションを含めてすべのプログラムはオンラインで実施される。

SoftBank Investment Advisersのマネージングパートナーで最高人事責任者であるCatherine Lenson(キャサリン・レンソン)氏は声明に次のようにう書いている。

「ソフトバンクにとって、過小評価されている起業家とスタートアップを支援することは最優先事項だ。テクノロジー・エコシステム全般で、スタートアップに多様性を確保したい。この分野ではダイバーシティが不十分であり、欠けており、われわれにはなすべきことが多数ある。これがEmergeをスタートさせた理由だ。優れたファウンダーたちのインスピレーションがテクノロジー・コミュニティに多くのプラスの影響を与えることになるだろうと期待している」。

現在、WeWorkがソフトバンクグループを訴えるなど両社は法的、財務的に緊張した関係にあるが、一方では依然として緊密な協力も続いているわけだ。

Emergeの第1陣として選定されたスタートアップ14社は以下のとおり。

  • Aquagenuity:水質を分析し、環境をリアルタイムでモニターできるスマートデバイス
  • Bridge to College:学生の大学選択を助けるデータの提供と分析
  • Caldo:レストランチェーン各店舗にカスタマイズ可能な自動化とモバイル機能を提供する
  • GameJolt: 10万以上のゲームをフォローできるゲーマー向けプラットフォーム(開発中)
  • Koniku:呼気を分析して疾患を診断する
  • Mogul:雇用主が多様な人材を発見するのを助ける
  • Moment AI:AIがドライバーをモニタし運転の安全性を向上させる
  • Node:ユニークなキット部品から実際の家を組み立てる
  • OjaExpress:移民が出身国の食材を扱う近隣の食品店を探せるマーケットプレイス
  • Proven:MITの2018年の人工知能賞を受賞したThe Skin Genome Projectが提供する個人向けにカスタマイズできるスキンケア製品
  • Rebellyous Foods:植物性の肉を使った各種プロダクト
  • ScriptHealth:処方薬の購入を助けるサービス
  • Shyft:IoTデバイスとソフトウェアにより分散型エネルギー資源のインテリジェント管理ネットワークを構築する
  • SPS:米国の主要州とカナダから国際支払いをサポートする決済サービス

画像:WeWork

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクが「Vision Fundは1.8兆円の損失」と予測、本体もWeWorkとOneWeb投資が痛手

日本の巨大テクノロジー企業グループ、ソフトバンクは2019年度の損益見通しを発表した。これによれば、Vision Fundの損失は1.8兆円という巨額に上るという。

またソフトバンク本体の投資でも、シェアリングエコノミーのブームを代表したオフィススペース賃貸のWeWork、衛星通信のOneWebに対する投資の失敗が痛手となった。 投資先のテクノロジースタートアップのビジネスの失敗により、グループ全体での損失も7500億円となる予想だ。

この2年間、ソフトバンクとファウンダーの孫正義氏は、Vision Fundの数十億ドルの資金(大半は外部投資家のカネだったが)をスタートアップに投じてきた。機械学習、ロボティクス、次世代テレコムへの投資はやがて数千億ドルの利益を生むという見通しに賭けたものだった。

ともかく孫氏が投資家に売り込んだビジョンはそうだった。しかし実態は、WeWork、OpenDoor、Compassなどへの数十億ドルは要するに不動産投資だった。消費者向けビジネスではBrandlessは事業閉鎖 犬を散歩させるWagでは持ち分売却を余儀なくされた。食品配達のDoorDashへの投資も成功とはいえないだろう。これに加えて大口の投資を行ったホテルチェーンのOyoが苦境に陥っていることでVision Fundの「先見の明」に大きな疑問符がついている。

2019年はこうした投資先がいくつも暗礁に乗り上げた。見事なまでの崩壊をみせたのは、我々も繰り返し報じてきたがWeWorkだ。会社評価額は一時の400億ドル(約4兆3000億円)以上から約80億ドル(約8600億円)に急落した。

Brandlessは2020年初めに廃業した。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの発生により、ホテルのOyoに加えて不動産投資ではCompassも打撃を受けている。

もっともソフトバンクのVision Fundの投資先に失敗企業が続出しているのは事実だが、失敗の多くは経済全体に逆風が吹いている結果だ。またすべての投資が行き詰まっているわけではない。例えばVision Fundは上場前のSlackに巨額の投資をしている。しかも新型コロナウイルスによる否応ないリモートワーク化はSlackの強い追い風となっている。

ソフトバンクの投資の中で最も遠大なビジョンがあったのは(皮肉にもこれはVision Fundからの投資ではなかったが)衛星ネットワークのOneWebだったに違いない。しかし世界のいたるところに高速のインターネット接続サービスを提供するというビジョンは優れていたが、あまりに多額の資本を必要としたためその重みで自壊した。ピザのロボット配達サービス、Zumeも失敗している。

しかしこうしたギャンブルが軒並み失敗に終わってもソフトバンク自体が倒れない理由は、なんといっても大量のアリババ株という金庫を抱えているからだ。またコアビジネスのテレコム事業や傘下の半導体事業も堅調だ。

ソフトバンクは発表で次のように述べている。

「上記に加え、(2019年度比較して2020年度の)税引前利益の減少は、主として営業外損失の計上が予測されることによる。 2019年度における(Vision Fund外の)投資関連の損失総額は8000億円となる。これはAlibaba株式のPVF(プリペイド・バリアブル・フォワード)契約(による売却)から生じる利益によって部分的に相殺される。2019会計年度第1四半期に計上され、Alibaba株保有分の希薄化によって生じた利益は2019年度第3四半期に計上されている。またAlibaba株式関連の投資については対前年比での利益の増大があると予測される」。

結局のところ、孫氏は大胆かつ優れたビジョンを持つ投資家だという神話に自縄自縛となったのではないだろうか。この神話は外部の株主、投資家に損害を与えるものとなったようだ。

4月13日に、Bloombergはop-edコラムで次のように書いている

「(多額の投資をすることで)スタートアップをファウンダーが考えているより早く成長させ、予想以上の収益を上げさせることができる」という孫氏の主張は今や重荷となっている。これはVision Fundやソフトバンク本体への投資家にとって利益より損失を生むリスクをもたらしている。

多額のキャッシュをばらまいたために多数のスタートアップが財政規律を維持することを忘れ、金を使うことに夢中になってしまった。何年もの間、これは賢明な戦略のように見えた。ソフトバンクの投資を受けたスタートアップはライバルよりも多額のキャッシュをユーザー獲得のインセンティブや広告に支出し、、能力の高い人材を惹きつけることができた。これは市場市場シェアを得るために役立った。

現在、ソフトバンクはUber、WeWork、Grab.、Oyoなどの市場リーダーの大株主だ。 しかしナンバーワンになることと、利益を上げることはまったく別の話だ。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクがWeWork株3210億円買い戻しの約束に尻込みか

Wall Street Journalによると、SoftBank(ソフトバンク)は、WeWorkの既存株主から30億ドル(約3210億円)相当の株を買い取る約束を回避する手段として、規制当局の捜査を利用している。

WeWorkの華々しいIPOの失敗は、数十億ドルの価値がある後期ステージ投資を行った人々にとって良い時間に終わりがくる前兆だった。そして株式の買取りプランは、ソフトバンクの数ある投資先の中で最も問題を抱える高額高価値の非上場スタートアップの問題を、少しでも軽減しようとする取り組みの一部だった。

買い戻し計画から外れることになる1人は、元CEOのAdam Neumann(アダム・ニューマン氏)で、自身のWeWorkの持ち株に対して9.7億ドル(約1040億円)を受け取ることになっていた。

Wall Street JournalはWeWork株主宛の通知を引用し、もしソフトバンクが買い戻し行わなければ、WeWorkに命綱の50億ドル(約5350億円)を与えるという同社の約束を守ることもなくなるだろうと報じた。

WSJの記事によると、株式買い戻しの契約自体は取り消されておらず、新型コロナウィルス・パンデミックによる世界経済の減速を鑑みて再交渉することになるとみられている。

これまでのところSEC(証券取引委員会)と米司法省、およびニューヨーク州議会はソフトバンクに対して、WeWorkのビジネス慣行および投資家との意思疎通に関する情報を提供するよう求めている。

画像クレジット:Theo Wargo / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WeWorkの新CEO米国最大のモール運営不動産会社の元トップ

予定していた株式上場を撤回するなど波乱を経験中のWeWorkは、シェアリングエコノミーのスタートアップという企業イメージを捨て、むしろオフィス賃貸の世界的巨大企業という方向に転じたいなら不動産業出身のトップを選ぶべきだろう。

実はそれがまさに実現するという。 Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)のスクープ記事によれば、WeWorkはSandeep Mathrani(サンディープ・マトラニ)氏を新しいCEOに指名した。

マトラニ氏はこの1年半、大手不動産会社のBrookfield Properties(ブルックフィールド・プロパティ)のCEOと同グループの副会長を務めてきた。それ以前にはシカゴの大手不動産会社であるGeneral Growth Properties(ジェネラル・グロース・プロパティ)でCEOを8年間務めている。同社はBrookfieldが2018年に92億5000万ドル(約1兆円)で買収するまで米国最大のショッピングモール運営会社だった。それ以前の8年間、上場不動産会社のVornado Realty Trust(ボルネード・リアリティ・トラスト)でエグゼクティブバイスプレジデントだった。同社の時価総額は125億ドル(約1兆3544億円)で、Brookfieldは80億ドル前後(約8668億円)だった。

同氏はマイアミ在住だが、WeWorkのCEO就任に伴ってニューヨークに移るという。公開されている登記書類によれば、同氏は昨年ニューヨークに高層アパートメントを、少なくとも1区画購入している。

マトラニ氏はソフトバンクグループの副社長であるMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏の指揮下に入る。クラウレ氏は昨年10月にWeWorkのエグゼクティブチェアマンに就任し、同氏自身「185億ドルのギャンブル」と呼ぶソフトバンクの投資の収拾に当たっている。

同氏氏は就任直後、不安が広がる社員の全員集会で「185億ドルという投資額は1100万人が住む私の母国(ボリビア)のGDPより大きい」と述べてWeWorkに対するソフトバンクのコミットメントを強調した。

クラウレ氏は以前、ソフトバンク傘下のSprintのCEOを務めており、このときT-MobileのCEOであるJohn Legere(ジョン・レジャー)氏をWeWorkのトップにスカウトしようとしたと伝えられる。 レジャー氏はその後メディアに「T-Mobileを離れる予定は一切ない」と述べたものの、数日もたたないうちに 2012年以来CEOを務めていたT-MobileのCEOを辞任した。ただしその後も同社の会長には留まっている(Vergeによるとこの契約は4月30日に満了となるという)。

SprintとT-Mobileは司法省から合併の承認を得ているが、ニューヨーク州、カリフォルニア州の司法長官を始めとする13州の司法長官が合併を阻止しようと裁判闘争を続けている。

いずれにせよ、マトラニ氏はWeWorkの共同創業者でCEOだったAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏とは正反対の人物だ。 ニューマン氏のハイテクシェアリングオフィスのビジョンと会社運営は投資家から著しい不信の目を向けられて退陣を余儀なくされている。

ただしソフトバンク自身も、過去の投資ラウンドのたびにWeWorkに途方もない会社評価額を与えてきた。最後には470億ドル(約5兆930億円)に達し、これは一般投資家の眉をひそめさせるのに十分な額だった。にもかかわらず、WeWorkが株式上場の計画を発表するとただちにWeWorkの経営、会社統治の内容、そして何より会社の価値について確実な情報を求める声が市場から出た。

株式上場のためのS-1申請書を検討すると、それまで知られていなかった赤字の累積、ニューマン氏の会社運営の実態が明らかになった。これを機にリーダーシップの欠如を報じるウォールストリート・ジャーナルの記事をはじめ、内情を暴露する批判的報道が相次き、同社は上場計画の撤回に追い込まれた。

WeWorkのリストラ計画には2400人の人員削減も含まれていた。レイオフは米国の感謝祭の直前に実行され、またニューマン氏が買収したもののコア事業に無関係と判断されたいくつかの企業が売却された。マトラニ新CEOの最大の任務はこの上場計画を復活させることなのは間違いない。ウォールストリート・ジャーナルの記事によれば、ソフトバンクはWeWorkの5年計画の再建プランを策定しており、来年にはキャッシュフローを黒字化する予定だという。

WeWorkは、多少ペースは落ちるにしても、新しいオフィススペースの買収を取りやめるつもりはないと報じられている。

画像:Associated Press / GGP Inc.

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

SEOとコンテンツマーケティングの事業を展開するConductorがWeWorkから自社を買い戻す

WeWorkが、SEOとコンテンツマーケティングの会社であるConductorの買収を発表してから2年も経っていない。しかしその2年は、控えめに言っても波乱の日々だった。

画像クレジット:WeWork

手短に言えば、親会社のWe Companyが株式公開に失敗した結果、CEOのAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏が追放されIPOが無期限に延期され、We Companyは、Meetup、Managed by Q、さらにConductorといった子会社の売却を検討していると伝えられた。

というわけで実のところ、Conductorが別の会社ではなく、CEO兼共同創立者のSeth Besmertnik(セス・ベスメルトニク)氏、COOのSelina Eizik(セリーナ・エイジク)氏、そしてThe Finger Groupの管理パートナーであり、Seamlessの創立者でもある投資家のJason Finger(ジェイソン・フィンガー)氏に売却されようとしていることには、まったく驚きはない。

「WeWorkとともに過ごした時間に感謝しています。その間、研究開発に積極的に投資することができました。世界クラスの人材を採用することでチームの規模を倍増させ、顧客が毎日のように成功を収められるようになりました」と、ベスメルトニク氏は声明で述べている。「人々はもはや広告を見せられたり、売り込まれたりしたくありません。当社のソリューションにより、ブランドは有用で価値のあるマーケティングを簡単に提供できるようになりました。消費者が実際に求めているのはマーケティングなのです」。

同社によれば、Conductorの従業員には創立者優先株と呼ぶ新しいカテゴリの株式が与えられ、取締役会の代表者の任命権を持つ「250人の従業員共同創立者」になるという。これにより、Conductorが今後向かう方向について、より大きな利害を共有し、より大きな発言権が与えられるはずだ。

実際にベスメルトニク氏は、今回の買い戻し前には彼自身を含むConductorのチームは会社の10%未満しか所有していなかったのに対し、新しい体制では従業員は「最初に会社を売却したときの4倍以上」を所有することになると強調した。そして、ベスメルトニク氏とエイジク氏の持ち分を合計すれば、会社の過半数の株式を保有することになる。

「私たちの所有権モデルは、私達のミッションとビジョンに適用することで、本当により献身的で情熱的な人々のグループを生み出すのです」と彼は述べている。

Conductorは当初、マーケティング担当者が検索用にウェブサイトを最適化することを支援することに重点を置いていた。その後、検索されたコンテンツを作成するためのツールの分野に手を拡げた。買収されてからは、WeWorkの子会社として運営されており、現在、Visa、Casper、Slackなどを含めて、400以上の企業と仕事をしている。

金銭面の条件は明らかにされていないものの、Conductorによれば、今回の買い戻しの後は、The We Companyからは完全に独立するという。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

WeWork騒動が続々と映像化、TVシリーズ・映画・ドキュメンタリー

WeWork(ウィーワーク)とその元CEOのAdam Neuman氏(アダム・ニューマン)についてはすでに大量の記事が書かれている。だが、Hollywood Reporterの報道によると、その一連の騒動について、Chernin EntertainmentとEndeavor ContentがTVシリーズ化を進めているという。

HollyWood Reporterによると、CherninとEndeavorはWall Street Journalの記者、Maureen Farrell氏とEliot Brown氏が刊行する予定のWeWorkに関する本のテレビ放送権を取得しており、脚本はその本がベースになると考えられる。そして、ニューマン役はHBOの「Succession」にも出演したNicholas Braun氏が努めるようだ。同記事によると、CherninとEndeavorはドキュメンタリー化も考えている。

WeWorkの騒動については、これまでにも映画化やドキュメンタリー化についての話が報道されている。Hollywood Reporterによると、UniversalとBlumhouse Productionsが進めている映画化については、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」でも知られるCharles Randolphが脚本を担当する。同記事によると、このドキュメンタリーは、Fast Companyなどで執筆を担当している記者のKatrina Brookerによる報道、そして刊行予定の孫正義氏とNeuman氏に関する本がベースとなる。Brooker氏はソフトバンクとWeWorkの関係者を多く取材してきたという。ドキュメンタリーの制作を進めているのはBusiness Insiderだ。

史上最大の詐欺スタートアップTheranos(セラノス)に関する映像作品も多く存在している。WeWorkはそんなTheranosに続き人気な題材となったスタートアップだ。

ニューヨーク州検事総長がWeWorkを捜査中との報道

WeWorkがニューヨーク州検事総長の捜査を受けていることが報道された。Reuters(ロイター)によると、同検事総長はWeWork創業者で前CEOのAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏が私的取引に関わったことも疑っている。

WeWorkの広報担当者はメールで、「当社はニューヨーク州検事総長事務所から問い合わせを受け、捜査に協力している」と語った。TechCrunchはニューヨーク州検事総長事務所にもコメントを求めた。WeWorkの本社はニューヨーク市にある。

本件は、WeWorkにIPO中止に関連する違法行為がなかったかを米国証券取引委員会(SEC)が取り調べているとBloomberg(ブルームバーグ)が報じてから1週間もたたないうちに起きた。

WeWorkの親会社であるThe We Companyは、ニューマン氏がCEOを辞任した後の9月30日、新規株式公開のためのS-1書類申請を取り下げることを 発表した。同社の財務状態に対する疑惑に加え、捜査員らはニューマン氏が、自ら所有するWeWork株を担保に融資を受けたことや、所有物件を会社にリースバック(売却後に賃借)したことも疑っている。

ニューマン氏は「We」という単語の使用権を590万ドル(約6億4000万円)で同社に売却したが、世間の批判を受け、その後契約の破棄を会社に申し入れ、金銭を返却した。

出資者であるソフトバンクから命綱を渡されたWeWorkは、現在大規模なコスト削減の最中にあり、同社が2017年に2億ドルで買収したMeetup社でレイオフも実施した。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンクはWeWorkを「壊れたので買わざるを得なかった」

ソフトバンクグループやWeWork、WeWorkの共同創業者である元CEOのアダム・ニューマンについてはすでに大量の記事が書かれている。それでもまだいろいろわからない点が多い。

WeWorkが上場を申請し、そして撤回してからの大騒動はあまりに込み入っているので、多くの読者は見出しをちらりと見ただけで記事の中身を読む気が失せたかもしれない。

それでもこれほどマスコミの評判になっているのはニューマンの奇矯さがほとんどマンガの悪漢レベルに達していたからだ。突飛な振る舞いでは(Twitterの)ジャック・ドーシー以上、学生寮の大学生ぽさが抜けない点では(Snapchatの)エヴァン・スピーゲル以上、「世界を変える」という幻想を振りまいた点では(Theranosの)エリザベス・ホームズ以上だった。上場のS-1申請書を提出する前からWeWorkは批判者にこと欠かなかった。

それでも有名ベンチャーキャピタルのトップは創業者を応援するという立場を取っていた。ニューマン氏には、世界最大のベンチャーファンドのパートナーたちを自分の意に従わせ、追従させるカリスマ性があったのだろう。

だが今やWeWorkはベンチャーキャピタルが後期段階のスタートアップに対して行う投資方法そのものに対する疑問の例となっており、追従どころではなくなっている。WeWorkの問題が本格的に露わになり始めたタイミングで185億ドル(約2兆円)にものぼる2回目の投資を行ったソフトバンクは最も大きなトラブルを抱えこんだ。

資金供給し続けていたソフトバンクは、WeWorkという大穴が空けばその投資は期待を大幅に下回る運用成績となる。シリコンバレーの投資家の多くは直感で巨額の資金を動かしたりしない冷静で伝統的な投資家を望んでいる。しかしソフトバンクのファンドから供給される資金が命綱となっているユニコーン(10億ドル級スタートアップ)は多い。こうした企業はソフトバンクからの資金が途絶えれば干上がってしまう危険に直面している。

ソフトバンクはすでに投入してしまった資金がサンクコスト(回収ができなくなった投資費用)となり、ポーカーゲームでいえば手持ち資金を全額賭ける「オールイン」をするしかない状態だ。現在ソフトバンクに残された道は、ニューマンなしでWeWorkを再建する以外ない。ニューマンを作り出したのはソフトバンクだったが、今度はニューマンを追い払った後で大惨事を大成功に一変させるための方法を探っているところだ。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

米名門VCの共同創業者・ベン・ホロウィッツがWeWorkやUber、企業文化について語る

シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同創業者である ベン・ホロウィッツ氏の新しい本が来週に出る。同氏は著書「What You Do is Who You Are」(やってきたことがその人自身)で企業文化とその作り方について語っている。

言い古された言葉だが、その意味を捉え常に実行するとなると非常に難しい。ホロウィッツ氏はこのことをCEOとして直接体験してきた。同氏は前著「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」に欠けていたのが企業文化に関する分析だったことに気づき、フォローアップを書くことにしたという。自身の経験に加えて他の経営者や組織のリーダーの行動、体験を詳しく観察して取り入れている。ハイチ独立の父で史上初めて黒人による共和国を作ったトゥーサン・ルベルチュールからモンゴル帝国の基礎を築いたチンギス・ハーン、殺人罪で有罪となり20年近く服役した後、著作家、大学講師となり人間の更生の可能性を説くシャカ・センゴアまで幅広く取り上げている。

これらの人々のストーリーは大いに参考になるし、歴史ファンなら特にそうだろう。我々は先日のTechCrunch取材のDisrupt SFイベントにホロウィッツを招き、本書について話を聞くことができた。またこれに関連して最も注目され、社会的にも大きな影響を与えているスタートアップであるUberとWeWorkについても尋ねた。

以下の抜粋は簡明化のために若干編集してある。

TC:あなたの企業文化に関する本が出たとき、ちょうどWeWorkの企業文化について多くの疑問が質問が出された。いったいどういうことが起きたのだろう?

BH:(WeWorkの共同創業者である)アダム・ニューマン氏には、確かにある種の文化があった。同時に彼の人格には大きな穴が空いていた。能力も桁外れだったが欠陥も桁外れだった。こういうことは時折起きる。ある部分で非常に優れていると、自分は必要なものがすべて手に入る人間だと錯覚しやすい。ところが実際は別の部分で非常に無能なのだ。

アダムは驚くべき才能がある。あれだけの巨額を資金を集める力があったことを考えてみるといい。未来に対する素晴らしいビジョンを持っていた。人々がそれを信じたからこそ資金も優秀な人材も集まった。しかしそこまでオプティミスティックな場合、周囲に本当のことを言ってくれる人間、悪いニュースであっても告げてくれる人間を置く企業文化が必須となる。たとえば資金が流出して手がつけられないなどだ。

TC:Uberの創業者で元CEOのトラビス・カラニック氏についても企業文化が非難されていた。これに対してWeWorkのアダム・ニューマン氏は非常にオープンは会社運営をしていた。彼がどういう人間であるかは誰もが知っていたと思うが。

BH:実のところ、トラビスがどのように会社を運営していたかは誰もが知っていた。シリコンバレーでは誰もが知っていたし、もちろん取締役会のメンバーはなおさらだ。企業文化は公開されていた。この記事を読むといいが、当時のUberの企業文化が詳しく説明されている。

トラビスは非常に説得力ある企業文化を創造し、その価値を確信していたし、文章を公開していた。しかし見逃しているものがあり、その結果は誰もが知るとおり(の失脚)だった。つまりトラビスの欠点に対する世間の圧力が耐え難くなってきたと取締役会が判断したわけだ。

TC:こうした例から得られる教訓は?

BH:我々はLyftに(6000万ドルを)投資しているので当然ライバルのUberについてもよく知っている。あれは非常に微妙な問題だった。いってみればトラビスは非常にすぐれたアプリだったが隠れたバグがあった。

トラビスが(社員の)悪い行動を奨励したように報じられがちだ。そんなことは決してなかったと私は見ている。彼に問題があっとすれば、倫理性、合法性は競争に勝つことより決定的に重要だということを周知させることに失敗した点だ。その結果、とにかくUberのような会社では機能は広く分散するので、その一部では人々が暴走することになったのだと思う。

しかもトラビスのおかげで関係者はみな大金を稼いだ。Uberはとてつもない急成長を続けていたから、私のみるところ取締役会も「これだけ儲かっているなら多少のことをとやかく言うまい」という気持ちになっていたのだろう。

最後に誰も責任を取らなかったのは不公平というしかない。 トラビスに落ち度はあった。しかし彼を責めるなら、見て見ぬふりをした人間にも責任はある。ごく控え目に言ってもそうだと私は思う。

いかにして企業文化を確立すべきかという本を私が書いた理由は、スタートアップを立ち上げたCEOにしてみたら、企業文化なんて小さい問題だと思えるかもしれない。しかしやがて大問題に発展するのだ。倫理問題というのはセキュリティ問題に似たところがある。あまりにも本質的な問題なので実際に問題が起きるまでは問題だと気づかない。

TC:なぜこの問題に興味を持つようになったのか?

BH:いくつかあるが、第一にこれが CEOとして体験した中で最も困難で解決にいちばん時間がかかる問題だったからだ。 なるほど誰もがこれは重要だと助言してくれた。「ベン、企業文化に注意しろよ。これがカギになるぞ」というので「オーケー、じゃどうしたらいい?」と尋ねると「ああ、そうだな、会議で検討したらいいんじゃないか?」といった話になって要領を得ない。誰も問題の本質はどこにあり、具体的に何をすればいいか教えてくれない。それなら、ここに私の知識の穴があるのだろうと考えるようになった。

もう1つ、今何をしていようと文化を作ること以上に重要なことはない。 社員たちに常々言っているのだが、10年後、20年後、30年後に振り返ったときに個々の取引で勝ったとか負けたとか、どれだけ儲けたとか覚えている人はいない。覚えているのは、ここで働いていたときの気分、我々とビジネスをしたときの気持ちや印象、我々が周囲に与えた影響だ。つまりそれが企業文化であり、誰もここから逃げることはできない。これはどんな企業にも当てはまることだと思う。

加えて、シリコンバレーの企業は非常に急速に成長し強力になってきたのでこの文化について厳しい批判が出ている。一部はもっともだ。しかし解決策の提案となると、はっきり言って奇妙なものが多い。そこで単に批判や非難をするのではなく、具体的どうすればいいのかまとめてみる必要があると感じるようになった。

TC:先ほどUberの話が出たが、こうした急成長企業の多くは高度に分散的な環境であることが多い。本書ではこうしたリモートワークの場合ついてあまり触れられていないように感じる。広く分散した職場で働く社員についてはどのように考えているだろうか?

BH:確かにこの本ではリモートワークについては触れていないが、もちろん非常に重要な分野だ。ただその環境を支えるテクノロジーが急激に発達しており、リモートワークは進化中だ。以前はコミュニケーションその他のシステムが不十分だったためにエンジニアリングを中心とする組織がリモートワークで機能を発揮するのはほぼ不可能だった。だからMicrosoft(マイクロソフト)は(本社が所在する)レドモンドに移転できるスタートアップだけを買収していた。

しかし最近はSlackやTandemなどがのサービスが普及し、環境は大きく改善されている。企業文化を作ることもこうしたツールの発達によってリモート化可能だろう。ただ、ミーティングで顔を合わせたり廊下でつかまえたりした社員に直接に企業文化を普及させるのに比べて、電子メディアを通じて文化の伝達を図るのはかなり難しいだろう。

実際、最近もメールでいろいろやったし、電子的ツールにはもちろん文化的価値がある。私は起業家をあれこれ批判したくはない。そのアイディアがばかばかしく見えようと問題ではない。起業家はゼロから何かを作ろうとしている。夢に賭けているわけだ。だから我々は彼らをサポートする。以上だ。

(Benchmarkの著名ベンチャーキャピタリストである)ビル・ガーリー氏ばりにTwitterに「あんなクソ会社、1ドルだって儲けていないじゃないか」などと書き込むと誰もが読むことになり会社をクビになるだろう。我々のポッドキャストにはニュース部門があるが「WeWorkの失敗の教訓」といった安易な話はしたくない。そんなことは他の連中がやればいい。企業文化的の問題で教訓などを書きたい人間はいくらでもいる。

つまりリモートで企業文化を構築しようとすることは可能だが、慎重にやる必要がある。また誰がそれを読むのか考えなければならない。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクグループCOOでWeWork新会長のクラウレ氏が全力支援を確約

米国時間10月24日、WeWorkの社員集会で不安気な聴衆の前にソフトバンクグループのCOO(最高業務責任者)であるMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)新会長が登壇し「もう心配はいらない」と断言したという。Recodeのスクープによれば同ブログはリークされた録音を入手できた。

ソフトバンクグループの投資額を合計するのを忘れていたら、あるいは同社の株式を持っていたら発言の内容にショックを受けたかもしれない。録音によれば、クラウレ氏はこう語った。

「ソフトバンクはこれまでもWeWorkの将来を保証してきた。しかし一番重要なことは、今や我々は将来を直接この手に取り戻すしたという点だ。金策に駆け回る日々は終わった。投資家に対し、 WeWorkは素晴らしい将来性があるビジネスだと懸命に納得させようとしなくてもいい。ソフトバンクのWeWorkに対するコミットメントは総額185億ドル(約2兆円)だ。わかりやすくいえば、私の母国であるボリビアのGDPより大きい。ちなみにボリビアの人口は 1100万人だ」。

危機に陥っていたコワーキングスペースの最大手WeWorkをソフトバンクグループが救済する一環として、ボリビア出身のクラウレ氏が会長に任命された。クラウレ氏は過去5年間ソフトバンクグループのトップの一員だった。現在はソフトバンクグループのCOOに加えてソフトバンク・インターナショナル、ソフトバンク・ラテンアメリカのCEO(最高業務責任者)を務めている。

クラウレ氏によれば、ソフトバンク創業者の孫正義氏と初めて会ったのは 2013年に自身のスタートアップであるBrightstar(ブライトスター)の57%をソフトバンクに売却したときだったという。同社は米国で携帯電話を再販しており、会社評価額は22億ドルだった。その後ソフトバンクは低価格帯のスマートフォンの再販業に見切りをつけ同社を10億ドルで売りに出した。

クラウレ氏は2014年にはソフトバンクが買収した米国キャリアであるSprint(スプリント)のCEOに任命された。その間株価が大きく下がったことで批判されたものの、Sprintの株価はクラウレ氏が指揮を取り始める前から下がり始めており、昨年T-MobileとSprintの合併が合意されてやっと止まった。

TechchCrunchが報じたように、この合併は司法省に加えて連邦通信委員会の承認を受けた。しかしいくつかの州の司法省長官は「消費者の利益を損なう」として取引の実現をブロックしようと試みている。

WeWorkの社員集会でクラウレ氏は自分の経歴についても. 「マサ(孫正義氏)は私にキミは素晴らしい起業家だと言ってくれた。ゼロから会社を作り上げて成功させ、Sprint問題も解決した」と強気の発言をしたという。

不安を鎮めようと、クラウレ氏はこれまでソフトバンクが困難なチャレンジに打ち勝ってきたと繰り返し述べた。クラウレ氏によれば、「マサと私はWeWorkについて次に何をなすべきか数えきれないほど眠れぬ夜を過ごしてきた。正直に言えば、外からの助言の99%までは損切りして逃げろというものだった。しかしマサはWeWorkのビジョンと使命に絶対の確信を抱いていた」という。

「『なぜそうまで確信を持てたのか』という疑問が湧くだろう。実際、逃げるほうがはるかに簡単だ。我々はこうした巨額の投資を強制されたわけではない。そういった義務は一切なかった。しかし我々はソフトバンクの将来、ソフトバンクの評判を賭けた。WeWorkが成功するという結末に我々はすべてを賭けているのだ。我々に今必要なのはこの決断が失敗ではないと考える人々だ。この決断は天才的なものだ。マサと私は何夜にもわたって議論をし尽くした。WeWorkのビジネスについて深く考えれば考えるほど好きになった。会社のマネージャーたちにも会った。そして知るほどにこの事業がさらに好きになった」。

クラウレ氏によれば、WeWorkを救うために何をすべきなのか、それはまだ明確ではないという。

「次の30日の私の任務はアーティー(・ミンソン氏)、セバスチャン(・ガニンガム氏)をはじめとする素晴らしい経営陣に加わり、具体的なプランを策定することだ。このプランは非常に具体的なものとなる。我々は全員が何をなすべきかをはっきり認識するだろう。空約束のたぐいではない。達成すべき数値目標を決めるつもりだ。そして実行にあたっての責任も明確化させる」。

クラウレ氏が触れなかった問題点の1つは対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the U.S.)の動向だ。Bloomberg(ブルームバーグ)が10月23日夜報じたところではソフトバンクはCFIUSからWeWork取得についての承認を得ようとしているという。同委員会は過去に安全保障上の理由から米国におけるソフトバンクの事業をブロックしたことがある。

過去にCFIUSはソフトバンクのSprint支配に条件を課した。また2017年にはソフトバンクが子会社化したFortress Investment Groupの投資業務を運営することを制限した。Bloombergによれば数十億ドルをUberに投じたにもかかわらず、ソフトバンクは同社に2人の取締役を送り込むことをCFIUSに禁じられた。NYSEへの上場後、Uberはソフトバンクに対する義務のいくつかを解除することに成功しているという。

画像:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクがWeWorkの経営権を握る、評価額は8100億円程度と6分の1以下

いっとき470億ドルの評価額を得たコワーキングスペースのWeWorkだが、わずか75億ドル(約8100億円)の評価額でソフトバンクの支配下に入ることになったとCNBCが報じた

ソフトバンクは当初からのWeWorkへの投資家であり、CNBCによれば今後40億から50億ドル(約4300億円〜5400億円)を出資する見返りに新規および既存の株式を含め、所有権の8割近くを得るという。この契約は早ければ米国時間10月21日にも正式発表される。この資金はWeWorkが運営を続けるうえでの命綱となる。 同社はあと数週間で資金が枯渇する状態にあり、キャッシュの流出をわずかでも減らすために資産の一部の売却を図っていた。

WeWorkは報道に対してコメントを避けた。報道によれば、経営権を取得するのはソフトバンク・ビジョン・ファンドの親会社であるソフトバンクグループであり、同社の最高業務責任者のマルセロ・クラウレ氏がWeWork再建の指揮を取るという。

日本のテレコムの巨人であるソフトバンクは、WeWorkの共同創業者でCEOのアダム・ニューマン氏が事実上解任されてからきっかり4週間後に経営権取得の動きに出た。ニューマン氏は非常勤の会長といいう暫定的な役職に就いている。今回の動きはWeWorkが期待されていた株式上場を中止してから3週間後にあたる。WeWorkの副会長、Sebastian Gunningham(セバスチャン・ガニンガム)氏とプレジデント兼CEOのArtie Minson(アーティー・ミンソン)氏が現在同社の共同CEOを務めている。

こうした劇的な人事異動ではWeWorkでは最高コミュニケーション責任者のJimmy Asci(ジミー・アスキー)氏、最高マーケティング責任者のRobin Daniels(ロビン・ダニエルズ)氏他数名の幹部が会社を去っている。同時にWeWorkでは数百人をレイオフし、同社の起業家スクールのWeGrowも2020年に閉鎖すると決定した。

WeWorkは2020年に上場を図るものと期待されていたが、JPMorgan(JPモルガン)に最後の瞬間まで資金注入を求めて交渉を続けていた。いい教訓になる話かもしれないが、同社はこの後何カ月にもわたって途方もない大盤振る舞いの運営を縮小し資金の流出を防ぐ努力を続けていく必要があるだろう。

WeWorkは80億ドル(約8600億円)以上の資金を株式発行と借入によって調達 した後、8月にかなり普通でない上場目論見を明らかにした。 今年6月30までの半期で10億ドル(約1086億円)近い損失を記録しているにもかかわらず、同社は470億ドル(約5兆1044億円)という途方ない会社評価額を維持していたが、これはもっぱらニューマン氏のカリスマ的な資金調達能力が支えていた。

ニューマン氏はCEO辞任を認めた声明でこう述べている。「WeWorkの共同創業者として、過去10年でこの素晴らしい会社を築き上げたチームを誇りに思う。我々のグローバルプラットフォームは今や29カ国の111都市にまたがり、毎日52万7000人以上の会員が利用している。事業はかつてなく好調だが、ここ数週間私自身に向けられた調査がわが社にとって大きな障害となっていた。そのたCEOの職を退くことが社にとって最善との結論に至った。同僚、会員、パートナーであるスペースオーナー、投資家のみなさんにWeWorkの事業を信じていただいていることに感謝する」。

画像:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

WeWorkの共同創業者は会社の支配権を孫子の代まで受け継がせる計画だった

WeWorkの共同創業者のAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏は、家族による会社の支配を自分が死んでも終わらせず、ニューマン家の未来の世代にも引き継がせる計画だったとBusiness Insiderが報じた。

同紙によると、ニューマン氏は今年1月の社員向けスピーチで、WeWorkは「現在支配されているのではない。世代に渡って支配されている」と同紙が見たという動画で語っていた。妻のRebekah Neumann氏との間の子供5人は「会社を経営する必要はない」が「会社の道徳的指針にならなくてはいけない」とも語った。

Business Insider紙によれば、ニューマン氏は将来の孫たちについても言及した。「将来、おそらく100年後、あるいは300年後に私の玄孫が会社にやってきて、『ちょっと、私のこと知らない?この会社を支配しているのは私。あなた方のやっていることは、私たちの作りあげたものとはちがう』と言えることが大切だ」と同氏は話した。

突飛な発言に思えるかもしれないが、ニューマン氏にはドラマチックなことを言う才能がある。例を挙げると、今年Fast Company誌の取材に対しWeWorkを希少な宝石にたとえ「ダイヤモンドができるまでにどれだけ時間がかかるか知っていますか?」と話していた。

しかし、WeWorkが綻びを見せ始める前、同氏には自分のパワーを子孫たちに伝えられると信じる理由があった。上場企業の株主でも認識していない人は多いが、同氏を始めとする多くのIT企業の創業者は、デュアルクラス株と呼ばれる仕組みによって創業者らに一般株主より多くの議決権を与える仕組みを作っており、その権利は上場後の一定期間だけでなく生涯にわたる場合や子どもたちに受け継がせることができる場合さえある。

TechCrunchは先月この問題を仮説の1つとして取り上げ、SECの委員長で法律学教授でもあるRobert Jackson(ロバート・ジャクソン)氏の発言を紹介した。昨年同氏は、2004~2018年の間にデュアルクラス株を発行した上場企業の半数近くで、企業インサイダーらが「並外れた数の議決権を永久に」保持しているという現状を語った。

ジャクソン氏は「そうした企業は株主に対して、経営陣のビジネス判断を、5年、10年、50年でもなく、永久に信じることを求めている」と警告した。永久デュアルクラス株は「創業者の子供、子供の子供、さらには孫の子供たちのことも信用しろと言っている。これは、この国の上場企業もみんなの年金プランも、ごく少数のエリート企業インサイダーが永久に支配し、その権利は子孫へと受け継がれていくことを意味している。

そんなことを心配しなくてもWeWorkの例を見るように市場が答を出してくれると思うかもしれない。しかし、どの会社もあんな明らかなミスを犯すわけではないし、ニューマン氏だってもっとうまく立ち回れていたかもしれない。こうしたトレンドを誰かが止めることはできるのか、一般投資家はこうした状況に耐えられるのかが今後の問題だ。

同氏がそんなシナリオを描いたのは彼が異常だったからではない。かといって、正気だったわけでもない。上場後の一定期間、創業者に強い議決権を与えることは、デュアルクラス株擁護派が以前から挙げているさまざまな理由により、多くの人たちにとって理解することが可能だ。しかし、公開企業を支配する権力を子どもたちに与えることは、正気とは言えない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WeWorkがホルムアルデヒド発生で電話ボックス1600室を閉鎖

コワーキングの最大手で、かつては評価額が470億ドル(約5090億円)だったこともあるWeWorkは、上場中止やCEO辞任といったトラブルに続き新たな問題に直面している。

問題は米国とカナダでWeWorkのコワーキングスペースを利用しているユーザーに影響を与えるものだ。10月14日に同社は、WeWorkのスペースに設置された約1600室の電話ボックスで基準値を越えるホルムアルデヒドが検出されたと発表した。

電話ボックスの製造メーカーの責任だとWeWorkは表明している。問題の電話ボックスは、共有スペースが満杯のときに人に聞かれずに電話ができる場所として提供されている。

「利用者から異臭や目がひりひりするなどの連絡を受け、WeWorkは分析を行い、外部コンサルタントによるさまざまな試験を実施した。先週遅くに結果を受け取った後、影響を受ける可能性のある電話ボックスをすべて利用中止とした」と同社がメンバー宛てのメールに書いた。どのボックスが安全かを知りたいメンバーは、WeWorkの各ロケーションに連絡するよう同社はコメントしているWeWorkは、代わりに利用できる場所として会議室や未使用のオフィススペースなどを提供する予定とのこと。

ホルムアルデヒドは建造物のさまざまな材料に使われている薬品で、「高濃度のホルムアルデヒドを短時間吸入すると鼻、喉、呼吸器系に一時的な炎症が起き、咳や息切れを伴うこともある。こうした症状は一過性であることが多く、ホルムアルデヒドの発生源を除去することで鎮静されるのが普通だ」とWeWorkのメールに書かれている。「高濃度のホルムアルデヒドに長期間露出すると発がんの恐れがある。詳細情報は労働安全衛生局のFAQで読むことができる」。

メールには、健康に不安のあるWeWorkのメンバーは医者の診察を受けることが推奨されている。TechCrunchにメールをくれたある情報提供者は「焼けるような目の痛み」を経験したと訴え、
チームの他のメンバーも同じ問題を経験したと言っていた。WeWorkのスペースのうち問題の起きている場所がいくつかあるのかは現時点でわかっていない。

WeWorkは一部の電話ボックスが「数カ月間」設置されていたというだけで、メンバーがどれだけの期間、高濃度のホルムアルデヒドに接していたかの詳細情報は提供していない。「影響を与える可能性のあるボックスは過去数カ月間に設置されたが、正確な時期は場所によって異なる」とWeWorkは書いている。

また、ホルムアルデヒドへの露出レベルは、当然電話ボックスの利用頻度によって異なる。米国以外のWeWorkスペースがこの問題の影響を受けているかどうかについて質問したが、回答はまだ得られていない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンクがWeWorkの経営権取得へ

日本の巨大ITコングロマリットで投資企業のソフトバンクグループは、コワーキングオフィスを手掛ける不動産会社であるWeWorkの親会社The We Company(We Co.)の差し迫った崩壊を救うべく準備をはじめた。 The Wall Street Journalが報じた

予定していたIPOが中止となったThe We Companyは財政危機に直面している。同社は上場直後に、数十億ドルの資金を負債調達して運用資金に充てる計画だった。

上場の中止は、The We Companyの共同創業者であるAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏のトップとしての立場と、およそ10年前に共同設立したコワーキング・レンタル事業を脅威にさらしている。ソフトバンクグループが計画している新たな財政再建計画は、ニューマン氏を会社の経営・運用からさらに遠ざけるものになるだろうとWSJは報じている。

ソフトバンクグループの提案はThe We Companyにとって唯一の命綱ではない。WSJによると、JPMorgan Chase & Co.の指揮のもとで数十億ドルの負債金融による資金調達が計画されている。

「WeWorkは、ウォール街の大手金融機関による資金手当の道を確保した」とThe We Companyの広報担当者がメールに書いた。「およそ60社の資金提供者が守秘契約に署名し、当社経営陣および銀行と先週から今週にかけて交渉を進めている」

ソフトバンクグループは同社の3分の1をすでに保有しており、今回の提案は株式および負債あわせて数十億ドル規模になる見込みだ。

The We Companyの苦戦は、Uber、Slackといった上場企業への投資の不調と相まって、野心的ビジョンファンドの第2弾を控えたソフトバンクに打撃を与えた。2017年に設立された同ファンドは、意欲的なスタートアップ企業に投資することを目的とした1000億ドル(約10.8兆円)の投資ファンドだ。

しかし、ファンドの経過は芳しくない。そして足を引っ張っているのはSlackやUberなどの上場企業だけではない。消費者向けビジネスの Brandlessや、ロボティクス・ピザ配達のスタートアップのZumeも、ソフトバンクによる数億ドル単位の支援にもかかわらず、目標を達成していない。

ソフトバンクグループは、TechCrunchのコメント要求の問い合わせに返信していない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WeWorkが技術職500名を解雇へ

苦難の旅を続けるWeWorkは今週、500名もの技術者を解雇する可能性があると報じられた。
コワーキングビジネスのスタートアップは、変わり者のCEO Adam Neumann(アダム・ニューマン)氏が2週間前に辞任したばかりだが、近く350名の社員を解雇する計画があると The Informationが伝えた。当初の対象はソフトウェアエンジニアリング、プロダクトマネジメント、データサイエンスの各部門だ。

さらに、同社がいくつかの部門を売却することに伴い150名ぶんの職が消滅する可能性がある。Managed by Q、Teem、SpaceIQ、Conductor、Meetupの各部門だ。ニューヨーク拠点のWeWorkには、約1万5000名の社員が在籍し、記事によると最大2000名の解雇が予想されている。待望の上場を前にコストを削減し、申請書類を書き直すためだ。

WeWorkはS-1申請書類(間違いが多くずさんな内容だったとWall Street Journalが伝えた)を公開したが、ニューマン氏の辞任を受けてIPOの延期を決定し、前副会長のSebastian Gunningham(セバスチャン・カニンガム)氏と前社長兼COOのArtie Minson(アーティー・ミンソン)氏が共同CEOに就任した。

上場予定は2020年となり、評価額は100億ドルへと下がった。また複数の報道によると、WeWorkは延期されたIPOで獲得予定だった資金に代えて、急場の資金投入をJPMorgan(JPモルガン)と交渉している。今やその経営手法が教訓になりつつある同社は、ここ数週間赤字運営の天井知らずのコストを削減すべく複数の銀行と交渉を続けている。報道されている集団解雇は銀行の戦略の一部と言われている。

以前WeWorkは、6月末半期決算で10億ドル近い損失を出しながらも、470億ドルの企業価値を付けられていた。

関連記事:WeWorkのニューマンCEOが辞任、非常勤の会長職に

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WeWorkの共同創立者アダム・ノイマン氏は巨額の借金返済のため資産売却か

アダム・ノイマン氏は、WeWorkの日常業務からは離れたかもしれないが、一部の銀行家にとっては、相変わらず同社の精神的なトップに留まっているようだ。

Business Insiderの新たな記事によると、ノイマン氏は、JPMorgan(JPモルガン)、UBS、Credit Suisse(クレディ・スイス)と協議して、WeWorkが株式公開を申請する前にノイマン氏が借り受けた5億ドル(約535億円)の融資の返済期限の変更を検討中だという。WeWorkS-1ファイリングを延期したため、株式を公に売却して融資を返済することができなくなった。そこでノイマン氏は、自らの財産の一部、または他の私財を、その融資に対する担保として差し出さなければならなくなる可能性があると、Business Insiderの情報筋の一人は述べている。

「期限は設定されていません」と、ノイマン氏の広報担当者は語ったという。

これまでのレポートによれば、ノイマン氏は長年にわたって多くの住居、および商用の不動産を取得してきたため、もしそうした状況になれば、手放せるものも多いとされている。

同氏が取得したとされる資産としては、1050万ドル(約11億2000万円)のグリニッジビレッジのタウンハウス、ニューヨーク州ウエストチェスターの農場、先週CEOを辞任する前に家族を退避させたと伝えられるハンプトンの自宅、さらにベイエリアにあるギター型の部屋を備えた2100万ドル(約22億4500万円)の1万3000平方フィート(約1208平方メートル)の住宅などがある。

以前のWSJ(ウォールストリート・ジャーナル)のレポートによれば、ノイマン氏は投資家グループを通じていくつもの商用不動産を購入し、賃貸に出している。中にはWeWorkに貸している物件もあるという。

WeWorkとノイマン氏は、近年JPMorganと緊密な関係を築いてきた。NYTimes(ニューヨークタイムズ)が最近レポートしたところによれば、JPMorganは「値上がりした株を担保としてノイマン氏に個人的にお金を貸し、WeWorkには株式を提供して借金を引き受け、IPOに関するアドバイザーを務め、今や先行きの見えなくなってしまった株式公開のために、60億ドル(約6410億円)にもおよぶ資金の確保を請け負っていた」。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

WeWorkは全従業員の3分の1にもおよぶ大規模なレイオフ実施へ

WeWorkは、一時は470億ドル(約5兆182億円)の価値があると言われたコワーキングビジネスだが、今月にも大規模なレイオフを予定しているという。Bloomberg(ブルームバーグ)が報じた。これは、同社が最大5000人分の職を削減するつもりであるとの報道に続くもの。同社の全従業員の3分の1に相当する数だ。

WeWorkは現在、2020年に100億ドル(約1兆677億円)という低い評価額で上場すると予想されている。報道によれば、土壇場での現金注入についてJPMorgan(JPモルガン)と交渉中で、延期となってしまったIPOによって得られたはずの資金に代えようとしているという。今となっては教訓めいた話だが同社はこの数週間に渡り、銀行とも協力して損失を出し続けている事業の恐ろしく高額なコストを削減しようとしてきた。

レイオフの可能性があるというニュースは、共同創立者兼CEOのAdam Neumann(アダム・ノイマン)氏が辞任し、創業9年になる同社が、かなり期待の高かった新規株式公開を延期してから、ほぼ2週間後に届いた。ノイマン氏は現在、同社の非執行会長に退き、WeWorkの元の副会長のSebastian Gunningham(セバスチャン・ガニンガム)氏と、社長兼最高執行責任者のArtie Minson(アーティ・ミンソン)氏が経営を引き継いでいる。

こうして窮地に立たされている同社は、ウォール街の懐疑的な人々を満足させるのに、悪戦苦闘してきた経緯がある。ウォール街は、目の飛び出るような同社の高評価に困惑していたのだ。ニューマン氏の辞任以来、WeWorkはコスト削減のための取り組みをいくつか開始しており、これまでに買収した会社の売却も検討していると言われる。例えば、Managed by Q、Conductor、Meetupといった会社が、その対象として挙がっている。

レイオフは、収益性を確保するための明確な道筋を切り開こうとする企業にとって当然の手段であり、同社が2020年にIPOを目指すならもはや不可避だろう。今後、いつかの時点で浮上するためには、結局のところWeWork自らが言う「世界の意識を持ち上げる」ことが利益につながると証明する必要がある。

WeWorkは、8億ドル(約854億円)を上回る株式発行および借入による資金調達の後、異例なIPOの目論見書を8月に公開していた。6月30日までの6カ月間に、約10億ドル(約1068億円)もの損失を計上するような財務状況にもかかわらず、同社は470億ドル(約5兆182億円)という高い評価額まで積み上げることができていた。それも、ノイマン氏個人の資金調達能力の高さを示すものだった。

「WeWorkの共同創立者として、私はこのチームと、この10年で築いてきたとてつもなく素晴らしい会社を誇りに思っています」とノイマン氏は辞任を明らかにする際の声明で述べた。「当社のグローバルなプラットフォームは、現在世界29カ国の111都市に拡がり、毎日52万7000人以上のメンバーにサービスを提供しています。当社のビジネスは、かつてないほど強力なものになったものの、ここ数週間、私に向けられた監視の目が、大きな障害となってきました。そこで、最高経営責任者の職を辞することが、会社として最大の利益になると判断したのです。この偉大なビジネスを信じ続けてくれている私の同僚、私たちのメンバー、家主パートナー、投資家のみなさんに感謝します」。

WeWorkはコメントを拒否した。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

WeWorkが上場申請を撤回

WeWorkの運営会社、The We Companyは先ほど、米国証券取引委員会に提出していたS-1上場申請を撤回したことを発表した

コワーキングスペースとして驚異的な成長を遂げたWeWorkは8月に上場を申請したことが明らかになった頃から、大きな波乱を経験してきた。財務状況全般に加えて、共同創業者でCEOのAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏の行動や人格が問題となった。

その結果、ニューマン氏は先週CEOを辞任した(ただし業務執行権のない会長職には留まる)。また同社自体もコアビジネスであるコワーキングスペース運営を本格的に見直す。大規模なレイオフが予定されており、Managed by QConductorMeetupなどこの2、3年で買収した会社の一部を売却することも視野に入れているという。

当然We Company上場も大きく延期されるものと見られてきた。新しい共同CEOであるArtie Minson(アーティー・ミンソン)氏とSebastian Gunningham(セバスチャン・がニングハム)氏による以下のような声明はこの観測を公式に認めたものとなった。

当社はコアビジネスに集中するため、株式上場を延期すると決定した。ただし当社のファンダメンタルは健全であり、登録メンバーの個人、企業、不動産所有者その他顧客に対するサービスを引き続き提供していく。当社の社員、株主対するコミットメントも変わることはない。WeWorkを公開企業にしようとする我々の意図にも変更はない。我々の株式が市場において自由に売買できるようになる日が来ることを強く待望している。

WeWorkの波乱の本質を解説したTechCrunch記事はこちら

画像:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

WeWorkのクラッシュはベンチャーキャリズムが機能している証拠だ

WeWorkをめぐる波乱から我々は何を学ぶべきだろうか?

WeWorkはつい最近までシリコンバレーを代表する急成長スタートアップであり、ここ数年ベンチャー投資家の熱い視線を集めてきた。WeWorkの創業者/CEOは有力メディアのカバーストーリーにたびたび取り上げられ、TechCrunch Disruptを含めてテクノロジーカンファレンスではキーノートに登壇していた。ピーク時に同社の評価額は数百億ドルになった。衛星軌道に入ってGoogleやFacebookと肩を並べる世界的巨大企業になる日も近いかという勢いだった。

ところが文字どおり数日でWeWorkはクラッシュした。

創業者/CEOは事実上解任され、会社評価額75%以上暴落した。大量レイオフも間近だという。当然ながら外部投資家、社員含めて株主の損害は莫大だ。

キャピタリズム、ベンチャーキャリズムにとっては手痛い敗北であり、特に孫正義氏のソフトバンクは大きなダメージを受けただろう。WeWorkにはこれというファンダメンタルズ(基盤)が存在しなかったにも関わらずソフトバンクは同社を偏愛し、投資しすぎ、関与しすぎた。

では最初の疑問に戻ろう。WeWorkのクラッシュからわれわれは何が学べただろうか?ひと言でいえばゼロだ。別に何も学ぶものはない。

ベンチャーキャリズムというのは本質的にハイリスクなギャンブルだ。的中すれば途方もないリターンを手にすることができる。個別企業にせよベンチャーキャピタルのポートフォリオ全体にせよ、評価額の算定にはこのリスクがあらかじめ組み込まれている。ベンチャーキャピタリストは投資、つまりスタートアップの株式を買うにあたって、その会社のリスク要因を推計するだけでなく、ポートフォリオの収益が最大化されるよう全体の組み立てを考えねばならない。

WeWorkの場合、外部資金の大きな部分はソフトバンク・ビジョン・ファンドから出ていた。ソフトバンクはファンドへの大口出資者と争ってまで、WeWorkに繰り返し出資してきたが、その結果はごらんのとおりとなった。

しかしそれが賭けというものだ。

ベンチャーキャピタルの投資のほとんどは失敗に終わる。投資額の一部を失うこともあれば全額をすってしまうこともある。

しかしときおり大当たりを引き当てる。孫氏は中国の無名の通販会社に2000万ドルを投じた。今やソフトバンクが持つAlibaba(アリババ)の株式には1000億ドルの価がある。今年、ソフトバンクが数年前に110億ドルでアリババ株の一部を売却したことが明ららかになったが、それを別にしての話だ。

これがベンチャーキャピタルの数式だ。つまり 1110億÷2000万は5550倍だ。世界中のどんな金融資産を探しても1ドルが数千ドルに化けるような仕組みは存在しない。

WeWorkの失敗はこの数式の基本を変えるものではない。ビジョン・ファンドはオンデマンドで犬の散歩やケアを提供するスタートアップであるWagに3億ドルを投じたものの会社は苦境にある

そもそもどんな投資ポートフォリオであろうと損失は発生する。ベンチャー企業では利益に先立ってまず損失が発生するというJカーブ理論は健在であり、これに当てはまる実例は多い。

それにWeWorkは破たんしたわけではない。手持ち資金は残っているし再建は可能だろう。将来、史上最大の利益をもたらすスタートアップになる可能性もないとはいえない。もちろん清算まっしぐらということだってありえる。ビジョン・ファンドにとっての収支はどうなるだろうか?考慮すべき要因が無数にあり、それはら週、月、年単位で変化していく。

確実なことを予測するには早すぎる。私の見るところ、ビジョン・ファンドが野心を達成できるかどうか判斷するにはあと5年はかかると思う。

念のために断っておくが、私はベンチャーキャリズムを特に擁護しているのではなく、キャピタリズム全般を擁護しようとしている。

左派経済学者のMatt Stoller(マット・ストーラー)氏はWeWorkなどの巨大テクノロジー企業を偽の資本主義の典型と呼んでいる。つまりバズワード、トレンド、創業伝説、でっち上げのグラフなどによって中身のない成長を演出し、ベンチャーキャリズムが独占企業を作り出して競争を封殺するものだというのだ。

しかしこの説は資本主義と資本主義的投資の本質について完全に誤っていると思う。ベンチャーキャピタルが支援していようといまいと、創立の日から利益を上げられる企業など例外中の例外だ。ハイテク企業に限ったことではない。レストランを開業するにはまず店の賃貸契約を結び、設備を購入しなければならない。実際に客が店にやってくるようになるのははるか後だ。ソフトウェア企業も同じことだ。ユーザーが料金を払うようになる前にまずソフトウェアを書かねばならない。

投資はアイデアとその実現の間に架け渡される橋だ。

問題はスタートアップはどのくらいの期間、赤字を出し続けられるかだ。10年、20年前は企業が上場したければ黒字でなければならなかった。これは不合理だ。いったいなぜ上場という特定の時点を選んで成長を減速させるようなキャッシュフローの調整をする必要があるのか?黒字化のタイミングとしては上場前がいいこともあるだろうし、上場後が適していることもあるだろう。

この数年、少なからぬ投資家がキャッシュフローよりも成長速度に重点を置くようになっている。スタートアップが利益を出し始めるまでに数年待つことも珍しくない。言い換えれば、投資家は以前よりはるかに長期的な視点で物事を考えるようになっている。重要なのは最終的に目指すゴールだ。

WeWorkを黒字化する方法はある。最近新たに得た拠点を閉鎖し、大都市圏の物件だけに集中すれば短期間でキャッシュフロー・ポジティブを達成することは可能だろう。もちろんVビジョン・ファンドもこれは十分承知していると思う。しかし世界のオフィス供給を制覇する可能性があるというのに、なぜ目先の利益のために小さく固まらねばならないのか?

我々は大胆な賭けを応援すべきであり、足をひっぱるべきではない。もちろんWeWorkも結局は大失敗に終わる可能性はある。しかしたとえそうなっても「資本主義は機能しない」ということを意味しはしない。実際、その逆だ。キャピタリズム、特にベンチャーキャピタリズムは以前ににも増して未来に、つまり将来の成長に賭ける仕組みとなっているのだ。

画像:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

WeWorkのニューマンCEOが辞任、非常勤の会長職に

WeWorkは米国時間9月24日、同社の共同創業者Adam Neumann(アダム・ニューマン)氏がCEOを辞任した、と発表した。辞任に関しては、これより前にThe Wall Street Journal(WSJ)が報道していた。ニューマン氏は非常勤の会長となる。WeWorkの副会長であるSebastian Gunningham(セバスチャン・ガニングハム)氏と同社会長でCOOのArtie Minson(アーティー・ミンソン)氏が共同でCEOを務める。

ニューマン氏の一連の奇妙な行動の中でも、WSJがニューマン氏のドラッグ使用や、イスラエルの首相になるという願望を報道したあと、辞任要求のプレッシャーが高まっていた。

「WeWorkの共同創業者として、チームや過去10年で築き上げた素晴らしい会社を誇りに思う」とニューマン氏は発表文で述べている。「我々のグローバルプラットフォームは今や29カ国111都市にまたがり、毎日52万7000人超の会員が利用している。事業はかつてなく好調だが、ここ数週間私自身に向けられた精密な調査が大きな障害となっていた。そして私がCEO職を退くことが社にとって最善との結論に至った。同僚、会員、パートナーであるスペースオーナー、投資家のみなさんにWeWorkの事業を信じていただいていることに感謝する」。

ニューマン氏の妻でWeWork共同創業者のRebekah Neumann(レベッカ・ニューマン)氏も同様に役職から退いたとされている。レベッカ氏は過去数年、最高影響責任者や最高ブランド責任者などいくつかの役職を担っていて、最近ではWeWorkの自発的な起業家スクールであるWeGrowの共同創業者とCEOも務めていた。

コワーキング分野で輝かしい存在のWeWorkに数十億ドルもつぎ込んだ日本の投資家・ソフトバンクは、WeWorkが予定しているIPOを前にCEO職を辞任するようニューマン氏に促したとされている。WSJは、会長職への移行でニューマン氏は「自身が興した、米国で最も価値あるスタートアップのひとつである同社に居続けることになるが、と同時にWeWorkが経営陣を刷新し、さらなる成長を続けるために必要とする資金を調達できるかもしれないIPOを追い求めることができる」としている。

WeWorkは先月、エクイティとデットで80億ドル超(約8565億円)を調達した後に異例のIPO目論見書を公開した。ニューヨーク拠点の同社は、6月30日までの6カ月で10億ドル(約1070億円)近くもの損失が発生したもかかわらず、主にソフトバンクが数回にわたって投資したおかげでバリュエーションは470億ドル(約5兆315億円)と巨額になっていた。

ウォール街の投資家たちは驚くようなバリュエーションについて懐疑的だった。そのためWeWorkがバリュエーションを150億ドル(約1兆6080億円)に抑制することを模索するというレポートにつながり、これは世界で最も価値あるプライベート会社のひとつである同社にとって大きな敗北となった。結局、WeWorkは今年末までに上場するとして計画を延期した。

ウォール街の懸念を和らげるためのさらなる措置として、WeWorkはS-1書類を修正し、独立した同社初の女性役員となるFrances Frei(フランシズ・フライ)氏の指名を盛り込んだ。さらには、ニューマン氏が他の株主の20倍の議決権を持つことがないよう、クラスB株とクラスC株の権利を減らした。それから、同社の後継者計画からニューマン氏の妻を除外した。

最新のニュースによると、ニューマン氏の議決権付き株式は10対1から3対1に減らされる。

一方、WeWorkは赤字の営業コストを減らすために銀行と対策を練っている。The Informationは、WeWorkが最大で全社員の3分の1にあたる5000人を削減するかもしれないと報道している。

WeWorkのIPOに向けた動きは、否が応でもUberのIPO前の苦労を思い起こさせる。両社とも何年もの間、ニューマン氏とTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏という言いたい放題のトップに率いられてきた。早い話、2人とも数十億ドルを調達できるかもしれないIPOについて懸念を募らせた怒れる役員メンバーによって追い出された。

WeWorkの株式公開を実現するための苦戦ぶり、それから上場企業として低迷しているUberのパフォーマンスを考えた時、おそらくプライベートマーケットの投資家たちは、シリコンバレーの魔法の粉はウォール街では力を持たないことに気づくだろう。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)