散らばりがちな作業の指示や会社からのメッセージをまとめたコピー作成を支援、スムーズな共同作業を実現するDitto

パンデミックでリモートソフトウェアがブームになり、一部のワークフローは専用ツールの恩恵を享受したが、チームのその他のメンバーは自分の生産性をばらばらにされたまま放置されている。そんな状態で、会社のメッセージをカプセル化してまとめたり、ユーザーに指示をするためのコピーを作る社員たちのことは、忘れられてしまう。Dittoは、コピーに関する「たった1つの真実の源泉」を見つけるソフトウェアを作っている若きスタートアップだ。

同社はY Combinatorの2020年冬季に参加し、そのときTechCrunchも同社をそのジャンルのお気に入りに選んだが、創業者たちによると同社はその後GreycroftやY Combinator、Soma Capital、Decent Capital、Twenty Two VC、Holly Liu(ホリー・リウ)氏、Scott Tong(スコット・トン)氏などから150万ドル(約1億6000万円)のシード資金を調達した。

コピーのワークフローは、デザインと実装において特に厄介で、よくまとまったチームでもメールの迷路のようなスレッドや、スクリーンショットのダンプ、互いに無関係なチームのSlackのDMなどをかき集めることになる。Dittoの創業者たちが望むのは、彼らのソフトウェアがコピーのチームに、あらゆるものをまとめて、複数のプロジェクトやアプリケーションにまたがって同期する、コピーという仕事のホームを与えることだ。そこには最終的で確定的な言葉があり、その時が来たら配布などもできる状態になっている。

同社の創業者であるJessica Ouyang(ジェシカ・オウヤン)氏とJolena Ma(ジョレナ・マ)氏はスタンフォードのルームメートで、正しい優先順のコピーを作るようなツールセットを作る機会を自分たちの専門にしたいという思いを、ずっと抱えていた。

「テキストとそれがどこにあるかを結びつけるのはとても簡単で、多くのライターがデザインのためのツールセットの中でそれを管理しなければならないとか、あるいはすでに開発の一部だと思っているかもしれないため、ライターはコードベースに入って、コンテンツデザイナーであってもJSONをコード化したり管理したりする方法を考えなければなりません」とオウヤン氏はTechCrunchの取材に対して語った。

最初からDittoはFigma向けに開発されたため、ユーザーはテキストブロックをアプリ内のデザインから簡単にエクスポートして、Dittoのウェブアプリの中で変更し、そのアップデートをデザインそのものを調べることなくプッシュできる。創業者たちによると、彼らは現在、SketchやAdobe XDの統合にも取り組んでいる。Dittoのウェブアプリ内でユーザーはチェンジログにアクセスして、プロジェクト内の特定のテキスト片のステータスを、常に確実に承認されるようにアップデートできる。

「コピーを作業されているすべての場所に統合することで、より多くの機会が得られることがわかりました。開発者との統合や、A/Bテスト、国際化、ローカリゼーション、その他のワークフローなど、コピーが使われるすべての場所との統合をさらに進めていきたいと考えています」とマ氏はいう。

コピー開発には多くの関係者がいるため、チームはその関係者に応じた価格設定を設けようとしている。現在のところ、Teamsプランでは、ユーザーをエディターとコメンテーターに分け、それぞれ月額15ドル(約1640円)と10ドル(約1100円、年間利用料)を支払っている。Dittoには、2人チーム向けの無料版と、大企業向けの料金プランがある。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Ditto資金調達Y Combinator

画像クレジット:Ditto

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ラボ育ちの和牛、ヘラジカ、バイソンに投資家が殺到、billion Bioが5.4億円調達

Orbillion Bioは実験室で高級肉を製造する計画を立てており、投資家たちは同社のキャップテーブルに座るために列をなしている。

シリコンバレーに拠点を置くOrbillion Bioは高級ラムのロース肉、エルクのステーキ、バイソンのハンバーガーなどを提供する会社として、著名なY Combinatorのアクセラレータプログラムを開始してからわずか数週間で500万ドル(約5億4000万円)の資金調達に成功した。

関連記事:和牛、ヘラジカ、羊の細胞株で培養肉を高級化するY Combinatorスタートアップ「Orbillion Bio」

Orbillion Bioを率いるのはPatricia Bubner(パトリシア・ブブナー)、Gabrial Levesque Tremblay(ガブリアル・レヴェスク・トレンブレイ)、Samet Yidrim(サメット・イドリム)の3人で、彼らはバイオプロセスやバイオ医薬品業界で30年以上の経験がある。

1カ月ほど前にOrbillion Bioは初の試食会を開催し、エルク、ビーフ、ヒツジなどの肉をペトリ皿からテーブルに並べた。

今回の500万ドルのラウンドには、以下の投資家が参加した。Finless FoodsやWild Earthを支援しているAt One Ventures、Metaplanet Holdings、ヨーロッパの投資会社k16 ventures、SpaceX(スペースX)にも出資しているFoundersX Ventures、Mission BarnsやTurtle Tree Labsを支援しているPrithi Ventures、Hanmi PharmaceuticalsのCEOであるJonghoon Lim(ジョンフン・リム)氏、Kris Corzine(クリス・コルジン)氏、初のバイオPBCであるPerlaraのCEOであるEthan Perlstein(イーサン・パールスタイン)氏などのエンジェル投資家、そして有名な大学の基金などだ。

「Orbillion Bioがラム、ヘラジカ、和牛、バイソンなど、高級で風味豊かかつ入手困難な肉に焦点を当てていること、科学やビジネス、エンジニアリングの分野で優れた経歴を持っていること、そして文字どおりマスターブッチャーをアドバイザリーボードに迎えているほど風味にこだわっていることに、私たちはすぐに衝撃を受けました」と、Outset CapitalのGPであるAli Rohde(アリ・ローデ)氏は述べている。「ラボで育てられた肉は未来であり、Orbillion Bioはすでにその道を切り開いています」。

Orbillion Bioはこの資金を、最初の製品である和牛の試験生産に充てるとしている。

カテゴリー:フードテック
タグ:Y Combinator培養肉Orbillion Bio資金調達

画像クレジット:RJ Sangosti/The Denver Post via Getty Images / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

和牛、ヘラジカ、羊の細胞株で培養肉を高級化するY Combinatorスタートアップ「Orbillion Bio」

先に、20名の選ばれた従業員とゲストがサンフランシスコ湾のイベントスペースに集まり、ベイブリッジを眺めながら厳選されたヘラジカのソーセージ、和牛のミートローフ、羊肉のハンバーガーを楽しんだ。これらの肉はすべてシャーレで培養されたものだ。

この夕食会は、Y Combinator(Yコンビネーター)の最新デモデイに参加する新しいスタートアップOrbillion Bio(オルビリオン・バイオ)のお披露目パーティーだ。同社はスーパーマーケットではなく、高級精肉専門店で売られるような培養肉の普及を目指している。

Orbillionでは豚肉や鶏肉、牛肉の代わりに、前述のヘラジカ、羊、和牛といったいわゆるヘリテージミートを取り扱う。

Orbillionはより高級な食材に焦点を当てており、培養肉市場の他の企業ほど劇的なコスト削減のプレッシャーはない。

だがその技術は、高級な和牛や選り抜きのヘラジカ、風味のいい羊肉にとどまらない。

「Orbillionでは、小さな組織サンプルを作りだす独自の加速開発プロセスを使い、 最適な組織と培地の組み合わせを常に探しています」とHolly Jacobus(ホリー・ジャコバス)氏。同氏の企業Joyance Partners(ジョイアンスパートナーズ)はOrbillionの初期の投資企業だ。「これは従来の方法よりもはるかに安価で効率的であり、すでに実感している目覚ましい需要に迅速に対応できるようになります」と言及している。

同社では、小型のバイオリアクターシステムを通じて複数の細胞株を培養している。それをハイスループットスクリーニングと機械学習ソフトウェアシステムと結び付け、最適な組織と培地の組み合わせのデータベースを作成している。ジャコバス氏は「培養肉を大規模に生産するうえでのカギは、最も効率的な方法で培養する正しい細胞を選ぶことです」と記している。

Orbillionは、ドイツの製薬大手Boehringer Ingelheim(ベーリンガーインゲルハイム)の研究員であったPatricia Bubner(パトリシア・バブナー)氏が率いる高度な技術と経験豊富な経営陣によって共同創業した。バブナー氏に参加したのは、American Institute of Chemical Engineers(アメリカン・インスティテュート・オブ・ケミカル・エンジニアズ)の元ディレクターGabriel Levesque-Tremblay(ガブリエル・ラベスク・トレンブレイ)氏だ。同氏はバブナー氏とともにバークレーで博士号を取得しており、同社の最高テクノロジー責任者を務めている。そして経営陣を締めくくるのは、最高業務責任者のSamet Yildirim(サメット・ユルドゥルム)氏だ。同氏はBoehringer Ingelheimの役員でバブナー氏の上司であった。

Orbillion Bio共同創業者でCTOのガブリエル・レべスク・トレンブレイ氏、CEOのパトリシア・バブナー氏、COOのサメット・ユルドゥルム氏()(画像クレジット:Orbillion Bio)

バブナー氏のヘリテージミートへのこだわりは、経済的な理由もさることながら、オーストリアの田舎で育った同氏のバックグラウンドが大きく影響している。長年、食通でオタクであることを自称しているバブナー氏は、科学を食品ビジネスに適用したいと思い化学の道に進んだ。同氏はOrbillionでただの肉ではなく、本当に美味しい肉を作りたいと考えている。

これは他の多くの企業が新しいテクノロジーの商品化を検討する際に、市場にアプローチする方法でもある。高価格帯の製品や、ユニークな生産技術で作られた独自の特徴を持つ製品は、一般的な製品と競合するよりも商業的に成功する可能性が高いのだ。はるかにおいしい動物の品種に焦点を当てることができるのに、なぜアンガスビーフに焦点を合わせる必要があるのだろうか?

バブナー氏は、単に豚肉の代替を作るのではなく、最もおいしい豚肉の代わりを作りたいのだ。

「食料の生産方法をより効率的に変えることができるようになると思うと、とてもワクワクします。私たちは今その変わり目にいます。私はオタク的であり、食べ物が大好きなので、私の技術や知識を生かして変革を起こし、食に影響を与えることができるグループの一員になりたかったのです。私はこの先、食べ物の大半が代替タンパク質、つまり植物ベース、発酵品、培養肉になると思っています」と同氏は語る。

バブナー氏にとってBoehringer Ingelheimへの入社は、巨大なバイオプロセスの世界に土台を作り、培養肉に着手するための準備であったという。

「私たちは製品をつくる会社で、最もおいしいステーキを作ることが目標です。最初の製品は塊のステーキ肉ではありません。最初の製品は和牛で、2023年の発売を予定しています」と同氏。「ミンチ肉のような製品で、和牛の刺身みたいな感じでしょうか」。

市場に参入するにあたり、バブナー氏は選択した肉の培養をするための新しいアプローチだけでなく、従来の肉のような大きな切り身を作るために必要な組織のスキャホールド(足場)や、肉の細胞と組み合わせる風味付けのための脂肪など、他の要素を培養する新たな方法の必要性についても認識している。

ということは、Future Fields(フューチャーフィールズ)、Matrix Meats(マトリックスミーツ)、Turtle Tree Scientific(タートルツリー・サイエンティフィック)などの企業にとって、最終的なブランド製品に組み込まれる要素を提供するチャンスがまだあるということだ。

またバブナー氏は製造プロセスにおいて、直接の潜在的なパートナーを超えたサプライチェーンについて考慮している。「私の家族には農家と建設業者がいます。また他にも土木技師や建築家もいます。私は農家を尊敬していますが、耕作や畜産を行う人々は、その仕事が十分に認められていないと感じます」。

同氏は、細胞株を生み出す動物の所有者が、その普及と幅広い商業生産において報酬を得られるようにできる一種のライセンス契約を通じて、農家や畜産家と協力することを想定している。

関連記事:ビル・ゲイツ氏が勧める合成肉の開発に取り組むオランダのMeatableが約51億円調達

またこれは、大規模な農業関連産業や、畜産や家畜の飼育にともなう温室効果ガス排出量を大幅に抑えるというミッションにも貢献する。食肉を生産するための動物が少なくて済むのであれば、農場の環境負荷がそれほど大きくなることはない。

「量産するだけのために動物を畜産するという、私たちが過去に犯した過ちを今後犯さないようにしなければなりません」とバブナー氏はいう。

同社はまだ始まったばかりだが、すでにサンフランシスコで最も有名な精肉店の1つと意向書を交わしている。「肉屋のガイ」として知られるGuy Crims(ガイ・クリムズ)氏は自身の店でOrbillion Bioの和牛培養肉を仕入れる契約内示書に署名している。「クリムズ氏は培養肉の熱心な支持者です」とバブナー氏はいう。

初期段階の技術が実証された今、Orbillionは迅速な拡大を目指している。同社が2022年末までにパイロットプラントを稼働させるには約350万ドル(約3億8000万円)が必要だ。これは、同社がJoyant(ジョイアント)やVentureSouq(ベンチャースーク)などの企業から調達した140万ドル(約1億5000万円)のシードラウンドに加えて必要になる額である。

「私の考える今後の統合モデルは、農家が培養肉用の動物のブリーダーになることです。これにより地球上の牛の数を数十万頭にまで減らすことができます」とバブナー氏は最終目標について語った。「培養肉の需要が増えれば、農家の仕事がなくなるといった話をよく聞きますが、すぐに畜産業が消滅するといったことにはなりません」。

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カテゴリー:フードテック
タグ:Y Combinator培養肉Orbillion Bio

画像クレジット:RJ Sangosti/The Denver Post via Getty Images / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

EdTechが勢いを拡大したY Combinatorの最新バッチ

Y Combinatorが教育関連企業への出資を徐々に増加させている。リモートで学習する人々からの新たな需要によって教育分野が拡大しているためだ。同アクセラレーターの最新バッチでは、EdTechのスタートアップ企業数が14社とこれまでで最も多く、教師の収益化アプリや宿題アプリ、ソフトウェアエンジニアを安く養成する方法など、あらゆる分野に取り組む企業が世界中から参加している。

Y Combinatorはアーリーステージのスタートアップの成功例をひも解くための情報源としては使えないが(実際にデモデイの後には敗退を祝うディナーが開催されている)、ある瞬間に起業家たちが特定の分野についてどう考えているかを示すのには十分な役割を果たしている。マネージングディレクターのMichael Seibel(マイケル・セイベル)氏によると、各セクターのスタートアップの数はY Combinatorが決めるわけではなく、各セクターの応募者の数に合わせたものだという。つまり、より多くのEdTech企業が応募したため、YCもより多くのEdTech企業を支援したということだ。

注目すべき点は、このバッチに含まれる14社のEdTechスタートアップのうち、女性の創業者によるものはUPchieveとDegrees of Freedom(の2社のみであるということだ。Y Combinatorによると、W21に参加している企業の19%が女性の創業者を擁しており、バッチ全体の創業者の10%が女性である。前回のバッチからわずかに上昇しているものの、大きな上昇とは言えない。

この記事では今回参加したEdTech企業を取り上げ、初期段階の創業者の目に映る教育の未来を紐解いていきたいと思う。

進む国際化

現在のYCバッチでは、スタートアップの50%が米国外に拠点を置いており、これは同アクセラレーターとしては初めてのことである。Y Combinatorの国際化がEdTech企業の増加の一因になっているのかもしれない。世界で最も価値のあるEdTech企業の1つである、インドのByju’sのような企業の成長が示しているとおり、教育企業への消費者支出は目覚ましいものであり、世界中の初期段階のEdTechスタートアップがこれに注目しているのは明らかである。

Y CombinatorのEdTech投資のうちわずか2社のみが米国の企業となっており、残りの企業は南米とインドに集中している。

  • Manara:中東の人材を技術系の仕事に結びつけるためのマーケットプレイス。
  • Prendea:スペイン語を話す子供たちにライブでオンラインの放課後クラスを提供するペルー発のスタートアップ。
  • Avion School:フィリピンの学生を対象に、世界各地でリモートソフトウェアエンジニアとして活躍してもらうための教育を行うスタートアップ。
  • Poliglota:ラテンアメリカ向けの語学学校。

B2Bよりも消費者を重視

現在のEdTechバッチでは、ほとんどのスタートアップが機関や企業ではなく、消費者を対象にサービスを提供している。形式的な手続きの多い公立学校よりも、子供の親を説得する方がはるかに簡単なため、機関ではなく個人の消費者をターゲットにするというのは昔から珍しいことではない。ベンチャーが要求する規模に到達するためには消費者を扱うほうが簡単であり、それが常にEdTechの真理でもある。

  • Kidato:アフリカの中間層をターゲットにした、幼稚園児から高校生までを対象としたオンラインスクール。質の高さと手頃な価格に重点を置いている。
  • Codingal:インドの子供たちがコーディングを学ぶためのアフタースクールプログラム。

しかし、パンデミックによって教育機関がEdTechサービスへの投資を強化し始めているにもかかわらず、あまり実験的なビジネスモデルが試されていないというのも事実である。

こういった企業が直面するハードルの1つはやはりコスト面である。サービスを利用するのに費用がかかる場合、特定の所得層の人々にしか教育を提供することができない。その結果誕生したのがISA(所得分配契約)である。今回のバッチでは特に存在感を放っていたISAだが、これは学生が就職するまで教育費の支払いを保留でき、就職後は借金の返済を完了するまで収入の一定割合を企業に提供するというものだ。このモデルには賛否両論あるものの、YCの卒業生であるLambda School(ラムダ・スクール)が普及させたこのシステムは、学費の前払いを普及させるための方法として確立されている。

  • Pragmatic Leaders:より費用対効果の高いMBAを構築。学生が大学院卒業後に採用されるまでコースを無料で提供している。
  • Awari:サンパウロを拠点とする同スタートアップは、ISAを利用してブラジルの学生が技術教育を受けられるよう支援している。コースはデータ分析から製品UX、グロースマーケティングまで多岐にわたる。

後述するAcadpalは、インドの学校を対象としている異例の企業である。次のセクションに移る前に、ビジネスモデルにおける最も野心的な賭けを体現している2つのスタートアップを紹介したい。

  • UPchieve:低所得家庭の高校生が24時間365日無料で利用できるバーチャルチューターを提供する非営利団体。
  • Degrees of Freedom:柔軟性があり、コミュニティを重視した低コストの高等教育を提供したいと考えているスタートアップ。受講料は約9000ドル(約100万円)

Zoom大学の継続

「Zoom大学」の苦戦は続いているものの、それでもEdTech創業者らは教育の未来がオンラインコースにあると確信している。この事実こそが、この分野のすべての企業を結びつける1本の糸だったと言えるだろう。こういった企業に賭けるということは、リモート教育が一般化することに賭けるということなのだ。

前述のとおり、多くのスタートアップが特定の層向けにオンラインコーディングプラットフォームを提供している。著者の受信トレイには「XX向けのラムダスクール」と標題されたスタートアップからのメールが常に届くため、似たようなスタートアップが次々と現れても必ずしもエキサイティングとは思えない。しかし、今回のパンデミックによって、コミュニティやネットワークがいかに学校生活を豊かにするかということが明らかになったため、こういったオンラインスクールが、雇用者や卒業生との強力なパートナーシップを築くことができれば、そこには大きなチャンスがあるのかもしれない。

  • Turing College:リトアニアを拠点とするオンラインデータサイエンススクールで、 ISAを利用して教育を手軽に提供できるよう試みている。
  • Coderhouse:アルゼンチンを拠点とするスタートアップで、世界中のスペイン語圏の人々のためにライブのオンライン技術教育を構築することを目指している。

とはいえ、大きなチャンスがあるところには多くの競争相手が存在する。スタートアップはどうにかして差別化する方法を見つけなければならない。下記はその良い例だ。

  • Unschool:高等教育と雇用結果を結びつけるため、インターンシップを保証することでインドでの修了率を高めるプラットフォームを構築している。

コースの作成から終了まで、オンラインコースがどのように行われるかというインフラに注目する企業もある。

  • Pensil:インド国内のYouTube講師による講座の収益化を支援するプラットフォーム。
  • Acadpal:インドの教師が宿題を作成、共有し、学生が課題をこなして議論するための学習アプリ。
  • CreatorOS – Questbook(クリエーターOS – クエストブック):教師がオンラインコースでより簡単に教えられるようにするため、コースをすぐに開始できるようにするための簡単なツールの提供を目指す。

結論

現在YCバッチに参加しているEdTechスタートアップは、競争相手というよりもお互いに補完し合う関係にあるのではないだろうか。Acadpalのような宿題プラットフォームが成功するには、アフタースクールでの学習をオンライン化するCodingalのような企業が資金を得ることができれば都合が良い。また高等教育と雇用を結びつけるUnschoolにとって、Degrees of Freedomのような企業は、低所得者層の学生のための重要なパートナーとなり得る可能性がある。

EdTechは急速に成長しているため、さまざまな動きの細分化はある程度予想範囲内である。このバッチの本番はまだこれからだが、初期段階の起業家たちが今どこに将来性を見出しているのか、これを知るのは非常に興味深いことである。

カテゴリー:EdTech
タグ:Y Combinatorオンライン学習

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

バイオテック関連スタートアップのY Combinatorが次世代の治療法とツールを開発中

先に開催されたY Combinator(Yコンビネータ)のデモデイでは医療分野とバイオテック分野が登場し、その中で10社近くの企業が筆者の目を引いた。最近のスタートアップはこの分野で特筆すべき実績をあげているため、来年のトップニュースでいくつかの企業について報道されても不思議ではない。

スタートアップが大手製薬会社に挑む

Atom Bioworks(アトム・バイオワークス)は、とても短いスケジュールで非常に大きな可能性を見せている企業の1つである。筆者がデモデイに登場した注目企業に関する2番目の記事で書いたように、同社はDNAのプログラミングが可能な解析装置の実現にかなり近づいているようだ。これは、生化学における究極の目標の1つでもある。このようなツールによって分子を実質的に「コード化」して特定の物質や細胞型に密着させることで、さまざまなフォローアップが可能となる。

一例として、あるDNA解析装置は、新型コロナウイルス感染症のウイルスに取りついて感染を示す化学信号を出してから、ウイルスを除去できる。がん細胞やバクテリアにも同じ原理を適用できるというわけだ。

アトムの創業者は、その技術の詳細をNature Chemistry(ネイチャーケミストリー)誌で発表している。新型コロナウイルス感染症の検査に加え、コロナウイルスやその他の疾患に対する治療法にも取り組み、同社では今のところ9桁台の売上を見込んでいるという。

LiliumX(リリアムX)も、このような方向性を持つ企業の1つである。リリアムXは、プレハブ式のDNA解析装置のような「二重特異的抗体」を目指している。ヒトの抗体は学習できるため、さまざまな病原体や老廃物、体内で不要な物を標的にできる。カスタマイズした抗体を注射すると、がん細胞にも同様のことが可能だ。

関連記事:Serimmuneが新型コロナ向けに新しい免疫反応マッピングサービスを開始

リリアムXは、効果がありそうな抗体の構造を生成するのに、アルゴリズム的アプローチを採用している。これはAIに精通したバイオテック企業が採用する手法と同じだ。同社では、ロボットによる試験装置を使って抗体を間引きながら試験管で結果を出すことで、有望な候補を選び出している。見込み客を獲得するというのは困難だが、このような活動で同社の価値はさらに高まっている。

Entelexo(エンテレクソ)はその先を行っており、自己免疫疾患の治療に活用できるエクソソームという有望な治療法の開発に取り組んでいる。この小さな小胞(細胞間でやり取りするパッケージのようなもの)は、あらゆる種類の物質(他の細胞の挙動を変えられるカスタマイズされたmRNAなど)を運ぶことができる。

細胞の挙動を系統的に変更することにより、多発性硬化症のような疾患を軽減できる可能性があるが、その厳密なメカニズムに関する詳しい説明を同社は発表していない。簡潔に説明できるような内容ではないだろう。同社はすでに動物実験に入っている。スタートアップとしては驚くべきことだ。

さらに進んでいる企業をあえてもう1社挙げるとすれば、Nuntius Therapeutics(ヌンティウス・セラピューティクス)だ。同社は細胞特異的(骨格筋や腎細胞など)なDNA、RNA、CRISPRに基づく治療を提供する方法に取り組んでいるが、こうした最先端の治療には課題がある。このような治療法で標的とする細胞型と接触できれば的確に処理できるが、その細胞に治療薬が到達するかどうかは確実ではない。住所を知らない救急車の運転手のように、治療薬が目標とする細胞を見つけられなければ効果を発揮することはない。

関連記事:「遺伝子編集技術CRISPRは新型コロナ治療に欠かせない」とUCバークレー校ダウドナ教授は語る

ヌンティウスは、多岐にわたる標的細胞に対して遺伝子治療のペイロードを届ける確実な方法を考案したと主張している。だとすれば、Moderna(モデルナ)のような大手製薬会社が開発した技術を上回る。同社は独自に薬の開発とライセンス供与も行っているため、この技術をヒトにも活用できれば、ある意味で遺伝子治療の包括的なソリューションを提供できる。

同社は治療薬だけでなく、人工臓器の分野でも成長を遂げている。生体適合性材料を使用しても拒絶反応のリスクがともなう場合があるため、人工臓器は実験段階にとどまっている状態だ。Trestle Biotherapeutics(トレッスル・バイオセラピューティック)は腎不全という特定の疾患に取り組んでおり、実験室で培養された移植可能な腎組織を使用して、腎不全の患者が透析を回避できるように支援している。

腎置換療法を開発することが最終的な計画ではあるが、腎不全の患者にとっての1週間や1カ月という時間はとても貴重である。透析を受けていれば、ドナーが見つかる可能性や待機リストの順位が繰り上がる可能性は高くなるが、誰も好んで定期的に透析に行っているわけではない。透析しなくてもよくなるのであれば、非常に多くの患者は喜ぶだろう。

幹細胞科学と組織工学に関する豊富な経験を持つチームから、今回のYale(エール大学)とHarvard(ハーバード大学)の協力関係が生まれた。共同で実施されたヒト組織の3Dプリントも、間違いなくこのアプローチの一環である。

治療以外の取り組み

YCバッチでは、さまざまな疾患に対処するための技術だけでなく、そのような疾患や技術を研究して理解するプロセスの改善にも、かなりの力を注いだ。

多くの業界では、Google Docs(グーグル・ドックス)のようなクラウドベースのドキュメントプラットフォームを利用して、共有やコラボレーションを進めている。コピーライターや営業担当者の場合は、おそらく標準のオフィススイートで十分である。だが、科学者には専門分野で固有の文書やフォーマットを使用する必要があるため、このようなツールが使えるとは限らない。

Curvenote(カーブノート)は、そのような分野に従事するユーザーのために構築された、共有ドキュメントプラットフォームである。Jupyter(ジュピター)、SaturnCloud(サターン・クラウド)、Sagemaker(セージメーカー)と連携し、さまざまな読み込み・書き出しオプションに対応している。さらに、Plotly(プロットリー)のような可視化できるプラグインを統合し、Gitでバージョンを管理している。あとは自分の部署の責任者に、お金を払う価値があることを納得だけだ。

画像クレジット:Curvenote

Pipe | bio(パイプ|ビオ)にアクセスすると、専門分野にさらに特化したクラウドツールを入手可能だ。パイプ|ビオはリリアムXと同じように、抗体薬物を開発するためのバイオインフォマティクスに取り組んでいる。バイオテック企業のコンピューティングおよびデータベースのニーズは非常に特殊であることに加え、すべての企業にバイオインフォマティクスの専門家が揃っているわけではないため、ここで詳しく説明するのは難しい。

データサイエンスが専門の大学院生に研究室で夜勤してもらう代わりに、お金を払うだけで使えるツールがあるというのは望ましいことだ(会社名に特殊文字を使わないのも望ましいのだが、これは実現しないだろう)。

専門分野に特化したツールはPCだけでなく作業台でも使用できる。これから紹介する企業はしっかりと現状を見据えている。

Forcyte(フォーサイト)もまた、デモデイで登場したお気に入り企業のニュースで紹介した企業の1つだ。この企業では、化学や分子生物学というより、細胞で発生する実際の物理現象を扱っている。この現象は体系的に観察するのが困難だが、重要な分野と言えるさまざまな理由がある。

同社では、非常に細かくパターン化された表面で細胞を個別に観察し、収縮やその他の形状変化を特に注視している。細胞の物理的な収縮や弛緩は、いくつかの主要な疾患とその治療における重要な要素であるため、その変化を観察・追跡できれば、研究者が有用な情報を入手できる。

フォーサイトはこうした細胞の特性に作用する薬剤の実験を大規模に実施できる企業として自社を位置づけており、すでに肺線維症に有効な化合物を発見したと主張している。同社のチームはNature(ネイチャー)誌に掲載され、NIHから250万ドル(約2億7500万円)のSBIR賞を受賞した。これは非常に珍しいことだ。

画像クレジット:Kilobaser

Kilobaser(キロベイサー)は、成長を続けるDNA合成の分野に参入することを目指している。企業は多くの場合、DNA合成に特化した研究所と契約してカスタムのDNA分子群を作成するが、作成する量が少ない場合は社内で作業したほうが効率が良い。

技術的な知識がない従業員でも、キロベイサーの卓上型マシンをコピー機のように簡単に使うことができる。アルゴン、試薬供給、ミクロ流体チップ(同社がもちろん販売している)があれば、デジタル形式で送信したDNAを2時間以内に複製できる。これにより、別の施設に依頼することで制約があった小規模ラボでの検査スピードを速めることができる。同社はすでに、1台につき15000ユーロ(約194万円)のマシンを15台販売したが、かみそりの替え刃にコストがかかるように、実際のコストは材料などを補充する際に発生する。

画像クレジット:Reshape Biotech

Reshape Biotech(リシェイプ・バイオテック)の取り組みは、おそらく最もわかりやすいと言えるだろう。研究室での一般的な作業を自動化するために、それぞれの作業に合わせたロボットを作成するというアプローチだけに特化している。口でいうほど簡単でないことは明らかだが、レイアウトと設備が類似している研究室が多いことを考えると、カスタムのロボットサンプラーや高圧滅菌器が多くの研究室で採用される可能性がある。定時制の大学院生を雇う必要がなくなるわけだ。

バイオテック分野と医療分野で注目すべき企業は他にもある。すべての企業を1つずつ紹介できるスペースが紙面にはないが、ハードルが高いために参入しにくかった分野でも、技術やソフトウェアの進歩により、スタートアップが参入しやすくなっているということを最後に付け加えておこう。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Y Combinator新型コロナウイルス

画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

クレイジーな1週間だった

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

クレイジーな1週間だった

私が歳をとってしまったのかもしれないが、技術ニュースの勢いがトップギアに入りっぱなしになってしまったみたいだ。正気じゃないね。WeWork(ウィーワーク)がSPACで上場するというニュースが、どれだけ小さな扱いになってしまったかを考えて欲しい。この7日間に私たちをなぎ倒していったさまざまなニュースの中では、それは小さな出来事でしかなかった。

さて、Y Combinator(Yコンビネーター)のデモデイが行われてから、何週間も経ってしまったようにさえ思えるのに、実はあれは先週の出来事だったのだ。それでも、今回はそのことを読者と一緒に振り返ってみたい。アーリーステージのお披露目としてはおもしろかったといえるだろう。

1日限りのデモデイラッシュでは、数百のスタートアップたちが、自分たちのやっていることを1枚のスライドに凝縮して披露した。TechCrunchでもいくつかの お気に入り取り上げたものの、記事にできずに棚上げにしてしまったスタートアップの方がはるかに多かった。ということで、いくつかの名前をここに追加させて欲しいと思う。

フィンテック関連では、私が視聴できた時間帯では、いくつかの名前が目に留まった。Alinea(アリネア)は、Z世代向けのトレーディングアプリを作ろうとしている。Z世代は他のどの世代よりもはるかにクールだと思うので、私はそのアイデアを気に入っている。彼らには、彼らの世代特性に合わせたネイティブな投資体験をしてもらうべきではないだろうか?

Hapi(ハピ)のアイデアも似たようなものだが、対象はラテンアメリカだ。繰り返しになるが、私はそれを気に入っている。最近目にすることが多く、好ましいと思っている傾向は、米国で成功したスタートアップのモデルを新しい市場に適用し、地域に合わせた調整を加えて、より多くの人々に提供することだ。投資は長い間、不自然に高価なものだった。ここでの動きは、それをもっと低コストで行えるようにするものだ。

Atrato(アトラト)も、Affirm(アファーム)スタイルのBNPL(Buy Now、Pay Later:先渡し、後払い)モデルをラテンアメリカで展開している。個人的には、消費者向け貯蓄アプリに比べて消費者向けクレジットアプリは好きではないが、AffirmやKlarna(クラーナ)などが成長していることから考えると、そうした製品には実際の需要があるのだろう。Atratoが何を見せてくれるかが楽しみだ。

ラテンアメリカから東南アジアに目を向けてみよう。OctiFi(オクティファイ)は、同地域市場向けのBNPL製品を開発している。Demo Dayで見たスタートアップの中で、この地域で活動していたのは同社だけではない、BrioHR(ブリオHR)もその1つだ。

Bueno Finance(ブエノ・ファイナンス)は、欧米以外の市場向けのフィンテックというテーマによくフィットする会社だ。同社は「Chime for India」(インド向けChime)という製品を開発している。もしChimeやその他のネオバンクが、一般的に、裕福でない消費者たちに、低コストで質の高い銀行サービスを提供できるのなら、問題はない。もちろんほとんどのスタートアップは失敗するが、私は彼らが焦点を当てている場所は気に入っている(NextPayはフィリピンの中小企業向けデジタルバンキングに取り組んでいるし、その他にもいろいろある)。

私が注目しているもう1つのテーマは、自社のソフトウェアをマネージドサービスとしてではなく、API経由で提供するスタートアップだ。昔からThe Exchangeでも取り上げてきた。今回のデモデイの中では、Dyte(ダイト、ライブビデオのためのStripe)、Pibit.ai(パイビットAI、データの構造化を支援するAPI)、Dayra(デイラ、エジプト人のためのAPI利用の金融サービス)、enode(イノード、エネルギープロバイダーと電気自動車をつなぐAPI)などの名前が挙げられる。

他には、非ネット型中小企業向けのサービスに取り組んでいるスタートアップがいくつかあった。The Third Place(ザ・サード・プレイス)は中小企業向けのサブスクリプションサービスを開発しているし、Per Diem(パー・ディエム)はAmazon以外の企業たちに迅速な配送手段を提供したいと考えている。

他にもすてきな会社がたくさんあった(GimBooksRecoverWaspAxiom.ai!)、とても書き切れない。さて、これからの半年間で最も成長するのはどれかを、じっくりと見届けたい。しかし、私はこのデモデイを終えて、世界のスタートアップたちの活動に大きな希望を抱くことができた。3月23日の締めくくりは悪くなかった。

後期ステージのいろいろ

IPOやSPACのニュース(もしあまりご存知ないなら、これとかこれとか)の中に、私たちの時間を割く価値のある大きなラウンドがいくつもあった。そのうちの2つはインシュアテック分野からのもので、Pie(パイ、労災保険)が1億1800万ドル(約129億4000万円)、Snapsheet(スナップシート、請求管理)が3000万ドル(約32億9000万円)を調達した。

ServiceTitan(サービスタイタン)は、4倍となった評価額83億ドル(約9102億6000万円)で、5億ドル(約548億4000万円)を調達したことを、Forbesが報じている。約2年の間に、まるまると太った評価額となった。来年は彼らのIPOを取材することになると思う。また、会計に特化したPilot(パイロット)は、12億ドル(約1316億円)の評価額で1億ドル(約109億7000万円)を調達した。2021年のユニコーン誕生のペースは、決してスローではないと感じる。

また、UiPathのIPO申請書は、同社がいかにして恐ろしい損失を合理的な経済性に変えたかを示したという点で、非常に興味深いものとなっていると言わざるを得ない。少なくともGAAP的な意味で、Snowflakeの再現になろうと動いているように見える。

今月のニュースだけに絞って、さらに17段落を追加しても、数十億円、数百億円規模のラウンド全部についてはご紹介できない。正気じゃないね!確かに、2021年第1四半期のベンチャーキャピタルの数字は、ホットで刺激的なものになりそうだ。詳しくはデータを入手し次第、ご報告しよう。

その他のことなど

とはいえ、私はただマイルドな食べ物を提供するために来たわけではない。近い将来には、私の好きなスポーツと自分の仕事を絡めたストーリーの芽が出てきている。正確にいうならF1(カーレース)と技術のことだ。

最近、Cognizant(コグニザント)がAston Martin(アストン・マーチン)F1チームのスポンサーになった。Splunk(スプランク)はMcLaren(マクラーレン)と提携している。Microsoft(マイクロソフト)はRenault(ルノー)のAlpine(アルパイン)ブランドにちなんだ名前のチームと契約している。Epson(エプソン)、Bose(ボーズ)、Hewlett Packard Enterprise(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)の3社は、Mercedes (メルセデス)・レーシング・チームのスポンサーだ。そしてOracle(オラクル)はRed Bull(レッドブル・レーシング)のスポンサーだ。このリストはまだまだ続く!

そして先週、Zoom(ズーム)がF1ゲームにも参加することを発表した。これは私にとって楽しみであるだけでなく、ある希望にもつながっている。一部のハイテク企業が、F1チームを業界内競争の手段として利用し始めていることが明らかになってきた。だとすると、今まさに書いているように、仕事でF1について書くこともできるし、業績発表会の場で、なぜ貴社のチームは速くないのかという質問で責められるテック系のCEOも増えるだろう。すでに、SplunkのCEOであるDouglas Merritt(ダグラス・メリット)氏は、彼のオレンジ色のチーム(McLarenのこと)についての私からの質問にうんざりしていることだろう。もちろん、質問をやめるつもりはない。

ということで、私はこれから、もしあなたがテック系のCEOで、その会社がF1チームのスポンサーになっていないなら、あなたの会社は小さすぎて重要ではない企業か、もしくは退屈すぎて楽しくない企業だと考えることにする(というのは、ほぼ冗談だけどね)。

カテゴリー: VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeY Combinator

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

話題のヘッドレス通販の触媒を目指すY/Cが支援するVue Storefront

「ヘッドレスコマース」は最近よく使われる言葉だ。実は私自身、すでにヘッドレスコマースについて記事を書いているVue StorefrontのCEOであるPatrick Friday(パトリック・フライデー)氏は、このコンセプトを使ってコマースエコシステム全体の中での自社の位置づけを明確にしようとししている。

「Vue Storefrontは、ヘッドレスコマースに頭となるフロントエンドを提供します」とフライデー氏は説明する。

つまり通常のヘッドレスコマース企業は消費者から「頭」が見えない部分、つまりバックエンドのインフラ構築に注力する。これに対してVueは消費者が実際に接するフロントエンドを高度なウェブアプリとして提供する。同社は自らを「ヘッドレスコマースのための稲妻のように高速なフロントエンドプラットフォーム」だと表現している。

フライデー氏とCTOのFilip Rakowski(フィリップ・ラコウスキー)氏は、eコマース企業のDivanteで働いていたときにオープンソースプロジェクトとしてVue Storefrontテクノロジーを構築し、2020年に新しいスタートアップとしてスピンアウトしたという。同社はシリコンバレーのアクセラレーターのパイオニア、Y Combinatorの最新のクラスに参加しており、SMOK Ventures、Movens VCがリードしたラウンドでシード資金150万ドル(約1億6000万円)を調達している。

「我々が会社を立ち上げたのも、資金を調達したのも、エージェントを説得したのも新型コロナウイルスによるパンデミックの最中でした」とフライデー氏は述べている。2020年12月初旬のある朝に投資家との契約にサインし、その夜さっそくYCombinatorの面接に臨んだこという。

フライデー氏をはじめとするチームは、オープンソースのテクノロジーをコアとしてビジネスを立ち上げたとき単に新しいウェブアプリを構築する以上のことができることに気づいた。つまりVueを利用すればMagentoやShopifyなどのeコマースプラットフォームをContentstackやContentfulなどのヘッドレス・バックエンド・システムに接続し、さらにPayPal、Stripeなどの支払サービスを含むサードパーティのシステムとの統合することが可能だった。

画像クレジット:Vue Storefront

フライデー氏によれば、ユーザーから「Vue Storefrontは接着剤のような存在だ。ヘッドレスアプリは複雑で使うのが難しかったが、Vueが接着剤となって多様なサービスを統合してくれた」と感謝されたという。

Vueのプラットフォームを使用して解説されているオンライン店舗は世界中で300以上となる。フライデー氏によれば、パンデミックとロックダウンにともなうeコマースの急拡大により、企業が「4、5年前のフレームワークやテクノロジー使ったプラットフォームがすでにレガシーになっている」と気づいたため、Vueの採用が加速したという。一方、ラコウスキー氏はこう説明する。

レガシーシステムを新しいプラットフォームに更新しようとすとき、Vue Storefrontが乗り換えを容易にすると考えて我々のところに相談に来るユーザーが多数います。Vueのテクノロジーを使えばバックエンドと独立にユーザーと対話するフロントエンドのコードを書くことができるのでプラットフォームのアップデートが極めて容易、迅速になります。

投資家から資金を調達した直後だったため、Vue Storefrontのチームは前回のYCデモデーには参加していない。ただし次回のデモデーには参加するという。なおVue自身は米国時間4月20日にオンラインでVue Storefront Summitを開催する予定だ。

関連記事:新型コロナを追い風に米国のeコマース売上高は2022年までに109兆円超えか

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Vue StorefronteコマースヘッドレスコマースY Combinator資金調達

画像クレジット:Vue Storefront

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(文:Anthony Ha、翻訳:滑川海彦@Facebook

アフリカへの送金サービスを提供するAfriexがシード資金1.3億円を調達

米国からナイジェリアに送金するのは厄介な作業だ。Western Union(ウェスタン・ユニオン)のような送金サービスを使うと、送金手数料が必要で米国のデビットカードから送ったお金がナイジェリアの銀行口座に届くまでには1~5営業日かかる。

この国境を越えた支払いの問題を、時間と手数料を減らすことで解決しようと登場したのが仮想通貨送金プラットフォームだ。つい米国時間3月22日、本誌は現在Y Combinator 2021年冬組にいてこの問題を解決しようとしているFlux(フラックス)というナイジェリアのフィンテックを取り上げた。そして本日、3月23日にこれもYC出身のスタートアップ(こちらは2020年夏組)、Afriex(アフリークス)が1200万ドル(約13億円)のシードラウンドを完了した。

同社はTope Alabi(トープ・アラビ)氏とJohn Obirije(ジョン・オビリエ)氏が2019年に設立し、母国や離れ離れのアフリカ人たちに手数料無料の即時送金サービスを提供している。ユーザーはアプリで現金を入金し、別のユーザーの銀行口座に送金したり、登録した銀行やデビットカードに出金することができる。

仮想通貨送金プラットフォームと同じく、Afriexは自社ビジネスを米ドルとの交換レートが決められているステーブルコインに基づいて事業を構築した。要するにこの会社は仮想通貨をどこかの国で買い、レートの良い別の国で売っている。よく知られているWestern UnionやWiseのように伝統的銀行システムを使っているプラットフォームとは対照的だ。

2020年YCを卒業した時点で、このスタートアップは30か国以上にわたって月間約50万ドル(約5400万円)の手数料を稼いでいた。当時Afriexはナイジェリアと米国のみでサービスを提供していた。そしてガーナ、ケニア、ウガンダで事業を開始して以来、Afriexは毎月数百万ドル(数億円)を処理しているという。ただし同社ウェブサイトでAfriexは、利用者はナイジェリア、ガーナ、ケニア、カナダおよび米国の各国間のみで送金できると書いている。

新たな投資によってナイジェリア、ラゴスとサンフランシスコに拠点を持つ同社は、チームを拡大し、他の市場に進出することが事業規模の成長を目指している。

汎アフリカのVC会社であるLaunch Africaがシードラウンドをリードした。他に、Y Combinator、SoftBank Opportunity Fund、Future Africa、Brightstone VC、Processus Capital、Uncommon Ventures、A$AP Capital、Precursor VenturesおよびIvernet Holdingsが出資した。エンジェル投資家のRussel Smith(ラッセル・スミス)氏、Mandela Schumacher-Hodge Dixon(マンデラ・シューマッハ-ホッジ・ディクソン)氏、Furqan Rydhan(フルカン・リダン)氏およびAndrea Vaccari(アンドレア・ヴァッカリ)氏も参加した。

SoftBank Opportunity FundはSoftBankグループの子会社で、米国の有色人種ファウンダーをターゲットにしている。2020年6月の設立以来、22社のスタートアップに投資しており、Afriexは米国と他の大陸のユーザーを対象とした唯一の会社のようだ。

これはアラビ氏が移民の子として両方の世界を知っているという生い立ちによる。ナイジェリアへの送金は困難であり、Consensysでのブロックチェーン開発者としての経験から、自分なら問題を解決できると気がついた。

「当時私たちは2年毎に国に帰っていて、私はその頃から何が欠けていて、何が改善できるかを書き留めていました。あるとき、海外での出費を米国の銀行口座にあるお金で支払わなくてはいけないことに気づきました」とアラビ氏はいう。「伝統的送金会社は非常に遅い上に手数料が高く、仮想通貨でもっとうまくできることを知っていました。送金は最高かつ最重要仮想通貨の利用方法です。私たちの目標は世界最大の送金会社を作ることであり、新興国から始めます」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Afriexアフリカナイジェリア資金調達Y Combinator

画像クレジット:Afriex

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブラジルの工場用機器監視技術TractianがY Combinatorの承認を取得

Igor Marinelli(イゴール・マリネッリ)氏とGabriel Lameirinhas(ガブリエル・ラメイリーニャス)氏は製造工場の周辺で育った。マリネッリ氏の父親はサンパウロ郊外のInternational Paperの工場で働き、ラメイリーニャス氏の父親はセメント工場で働いていた。

2人は自分たちの両親が工場の稼働に欠かせない重機のメンテナンスや監視が不十分だと訴えているのをずっと聞いていた。

そこで2人は、後にTractianの原型となる技術の開発に着手した。

サンパウロ大学時代からの友人であるマリネッリ氏とラメイリーニャス氏は、マリネッリ氏が米国で起業家としてのキャリアを積んだ後も連絡を取り合っていたが、同氏が立ち上げようとしていた慢性疾患の予測サービスBlueAIが破綻したことをきっかけに、ブラジルで再会した。

マリネッリ氏はしばらくの間、製紙工場で働き、その施設のソフトウェアエンジニアになった。そこで彼は、産業用監視ツールが置かれている粗末な状況を目の当たりにした。

そのため、ラメイリーニャス氏と一緒にもっと良い方法があるはずだと考えたのだ。ブラジルの工場には、、Siemens(シーメンス)やSchneider Electric(シュナイダー・エレクトリック)などの最新ソリューションで必要とされるWi-Fiやゲートウェイなどのネットワーク技術が備わっていない。マリネッリ氏によると、SAPなどの既存のエンタープライズリソースプランニングソフトウェアとの統合も、頭痛の種だという。

「巨大な資本を持つ企業でなければ、そのようなことはできません」とマリネッリ氏は語る。

Tractianのセンサーは、振動、温度、エネルギー消費量、機械の稼働時間時間を計測するホロメーターの4つを計測する。またセンサーから出力されるデータを分析して、マシンのメンテナンスが必要になる時期を予測するソフトウェアも開発した。

Y Combinatorは、このソフトウェアとハードウェアのパッケージに魅力を感じ、Soma Capital、Norte Ventures、Alan Rutledge、Immad Akhundなどのエンジェル投資家も同様に評価している。

Tractianの技術はセンサーに90ドル(約9800円)で、分析とソフトウェアはセンサーごとに月額60ドル(約6500円)かかる。マリネッリ氏によると、このサービスは2カ月未満で収益化できるという。同社はすでにAB InBevを最初の顧客として契約しており、合計約30人のバイヤーがTractianのセンサーを使用している。

カテゴリー:その他
タグ:TractianブラジルY Combinator

画像クレジット:Paolo Bona Shutterstock

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

食品科学業界念願の健康的な砂糖代替品をスタートアップがついに発見か

3年ほど前、カリフォルニア州マウンテンビューのComputer Science Museum(コンピューターサイエンスミュージアム)で、会社を起業して間もない英国のケンブリッジ出身の創設者が、Y Combinator(Yコンビネーター)の8月のDemo Dayで、著名人、投資家、起業家を集めて講演し、食品科学の大革命を宣言した。

このイベントは数年の間に、テクノロジー系投資家や業界関係の億万長者に向けて、将来的に莫大な利益を生み出す可能性を秘めた企業直後のビジネスを紹介する、比較的ローテクで低予算な発表会となってきた。

他のイノベーション志向の新進起業家らと共同でプロジェクトを進めるケンブリッジの科学者らは、砂糖の味だけでなく、カラメル化や粘質までも模倣した甘味料を製造できるテクノロジーを自信をもって発表した。パッケージ食品の約74%には何らかの甘味料が含まれているが、その中でも砂糖を主力の添加物にしている特性が、カラメル化や粘質だ。その科学者たちが設立したCambridge Glycoscience(ケンブリッジ・グリコサイエンス)という会社は、少なくとも1000億ドル(約10兆7000億円)に相当する巨大なマーケットシェアを獲得するだろうと豪語する。

現在、同社は社名をSupplant(サプラント)に変更し、さまざまな植物の廃棄物を原料とした砂糖の代替となる商品を低コストで展開するために、ベンチャーキャピタルから2400万ドル(約25億7000万円)の資金を調達している。

甘い食材の苦い歴史

砂糖の起源はニューギニア、台湾、中国などを原産とするサトウキビを人類が食生活に取り入れた約1万年前にさかのぼる。その後2000年かけて、これらの地域からサトウキビがマダガスカルに広がり、最終的には紀元前500年頃にインドに渡り、そこで初めて精製されるなど、地域に根づいた。

そこからこの甘味料はご存じのように全世界へと広がった。紀元後1世紀までには、ギリシャやローマの学者がその薬効について文献に記し、十字軍後の中世に欧州全体で砂糖の消費が広まった。

当時のヨーロッパで好まれていた甘味料である蜂蜜や、ローマ人が使っていた致死量に迫る鉛が含まれている初期の人工甘味料の代替品として、砂糖が好んで使われるようになった。

ヨーロッパ北部の非常に寒い気候ではサトウキビを栽培することが困難なため、温暖な南部やヨーロッパ南部に位置する島々で栽培されるようになった。

これらの地域を起点に、砂糖貿易の副産物である農業奴隷制度の試みが初めてヨーロッパで行われ、砂糖生産の産業的成長がアメリカ大陸に広がったことで、何世紀にもわたってアメリカ先住民やアフリカの人々の労働力を国際的に搾取する原因となった。

当初アメリカ大陸では、ヨーロッパから季節労働を強いられた奴隷が送りこまれ、奴隷にされた先住民とともに砂糖生産の原動力となっていたが、欧州から持ち込まれた伝染病、大量虐殺、過酷な労働が原因で先住民の人口が減少すると、奴隷がアフリカから新しい植民地であるアメリカ大陸に連れてこられ、砂糖を生産するために畑や精製所で働くようになった。

砂糖の後遺症

奴隷制度が残した爪痕は砂糖産業の最も忌まわしい遺産かもしれないが、人類が甘味料を渇望することによって引き起こされた問題はこれだけではない。

気候変動が脅威となっている中で砂糖の需要が世界的に高いため、原生林を他の産業に転換するよう促すブラジルの新政策により、森林伐採が増加する恐れがある

「サトウキビから砂糖を精製する従来の方法では、水を大量に消費する」とサプラントの共同設立者であるTom Simmons(トム・シモンズ)はインタビューで語った。水は気候変動が悪化することで影響を受ける可能性がある資源であるため、水の問題は砂糖が環境に影響を及ぼすもう1つの問題だ。加えて、種の絶滅も大きな問題となっている。

「WWF(世界自然保護基金)によると、世界的に失われている生物の多様性に最も影響を与えているのは、砂糖を生産しているサトウキビプランテーションだ。砂糖の生産には大量の水が必要だが、当社の事業は持続可能性の面で大きな訴求力がある。原料は現在流通している農産物だ」とシモンズ氏はいう。

米国で砂糖の代替品が求められるようになり、ぶどう糖果糖液糖(異性化糖)が米国でさまざまな製品に使われるようになった結果、関連する健康面のコストがかさむようになってきている。ぶどう糖果糖液糖は1957年に発明され、砂糖の代わりとして一般的に使用される甘味料の1つであるが、消費者の健康に世界的に極めて深刻な影響を与えると考えられている。

糖尿病、肥満、脂肪肝疾患の有病率が世界的に増加していることは、ぶどう糖果糖液糖の使用量と相関があると確認されている。

オーストラリア、メルボルン、4月8日。この写真は、2016年4月8日のオーストラリア、メルボルンで、糖分を多く含む商品がスーパーマーケットに陳列されている様子を映している。WHO(世界保健機関)が初めて発表した、糖尿病に関する世界的な調査の報告書によると、発展途上国を中心とする4億2200万人の成人が、糖尿病を患いながらの生活を強いられていることが明らかになった。オーストラリアの糖尿病専門家は、拡大する問題に対処するため、砂糖税導入の検討を連邦政府に求めている(画像クレジット:Luis Ascui/Getty Images)

健康的な代替品への期待

サプラントは砂糖に代わる主要な代替品を投資家とともに提供することを目指すことにより、同じように代替品を提供しようとする他社たちと競合することになった。

実用可能で毒性のない化学合成に由来する砂糖の代替品は、18世紀後半にドイツの化学者によって初めて発見された。サッカリンと名づけられたその代替品は、第一次世界大戦にともなってともなって砂糖が不足したことを受けて普及し、1960年から70年にわたる健康ブームで需要が大きく増加した。

ピンクの小袋のSweet’N Low(スイートンロー)やその他の製品でサッカリンが使用されているが、今ではアスパルテーム(Equalやダイエットコークのような飲料で砂糖の代替品として商業的に認知されている)によって継承され、アスパルテームはスクラロースに取って代わられた。スクラロースはSplenda(スプレンダ)のブランドで知られている。

化学合成由来のこのような甘味料は、何十年も市場で一般的になっている。しかし、化学由来ではなく天然由来の代替品を求める声も高く、砂糖が食材として持つ機能的特性の模倣の失敗もあり、優れた砂糖代替品の需要がかつてないほど高まっている。

競合他社の先をいく

「私たちが支援しているものすべてが世界を変えるわけではないが、これは根底から変えることができる」と、サプラントを強力にサポートする支援者の1人であるAydin Senkut(アイディン・センクット)氏はいう。彼は、Felicis Ventures(フェリシスベンチャーズ)というベンチャー企業の創設者兼マネージングパートナーだ。

サプラントの甘味料がヨーロッパでFDA(米国食品医薬品局)にあたるEUの規制当局からすでに仮承認を得ているため、センクット氏はサポートを買って出たのだ。この承認は、サプラント製品の甘味料としての販売を承認するだけでなく、具体的な健康上の効用を持つプロバイオティクス製品としても承認していることになると同氏はいう。

つまりサプラント製品は創業者らが主張するように、間違いなくより良い代替品であり、砂糖の代替品として使えるだけでなく、消費者が定期的に使用することで食物繊維を多く摂取できるという健康上のメリットがある、とセンクット氏は語る。

「欧州のFDAは米国のFDAよりもさらに厳しいが、厳しい基準があるなかで仮承認を取得することができた」とセンクット氏はいう。

Yコンビネーターで行われたケンブリッジ・グリコサイエンスのプレゼンテーション直後に、センクット氏のフェリシスベンチャーズはすかさず同社に投資した。

「私たちはシードラウンドで最大の投資家となった」とセンクット氏はいう。

サプラント製品のセールスポイントは、グリセミック指数が非常に低いことと、植物の廃繊維から製造できることであり、最終的には低コストで製造できるとセンクット氏は述べた。

競合他社との差別化

その他の重要な点でもサプラントは競合他社と異なると、同社の共同創業者であるTom Simmons(トム・シモンズ)氏は述べている。

イスラエルのスタートアップDouxMatok(ドゥーマトック)やコロラド州のMycoTechnology(マイコテクノロジー)、ウィスコンシン州のSensient(センシエント)のような企業は、菌類や木の根、さらには樹皮から砂糖の甘みを強化する添加物の開発に取り組んでいる一方で、サプラントは甘味料を作るために代替糖を使用している、と同氏は語る。

「他社との根本的な違いは、他社がキビ砂糖を使っていることだ。当社のセールスポイントは食物繊維から砂糖を作ることであるため、キビ砂糖を使う必要はない」とシモンズ氏は述べる。

シモンズ氏は、他のスタートアップが間違った方向から問題にアプローチしているという。「彼らがテクノロジーを使って取り組んでいる食感、膨らみ、カラメル化、結晶化などの問題は、業界が抱えている問題ではない。私たちはテクノロジーを駆使して、グラム単位で同じ甘さにできる」と述べている。

糖質には、カロリーが異なる6種類の糖分があるとシモンズ氏は説明する。牛乳に含まれる乳糖、サトウキビやサトウダイコンから取れるショ糖、小麦や大麦などの穀物に含まれる麦芽糖、果物や蜂蜜に含まれる果糖、特に炭水化物を含有する野菜、果物、穀物などに含まれるブドウ糖、乳糖が分解されることで生成される単糖のガラクトースだ。

シモンズ氏いわく、同氏の会社の砂糖代替品は1つの化合物だけを使って生成されるのではなく、食物繊維を構成するさまざまな成分に由来している。食物繊維を使用するため、体がその化合物を食物繊維として認識し、消化管内で食物繊維と同じように処理されることになる。一方で製品は砂糖のような味がして、食品中で砂糖と同じような作用をするという。「食物繊維由来の糖類は糖類に分類されるが、カロリーが高い糖類ではない」とシモンズ氏は説明する。

ニューヨーク、12月6日。2004年12月6日のニューヨークで販売されている人気の砂糖代替品「スプレンダ」のパッケージ。ノンカロリー甘味料の主要成分であるスクラロースのメーカーは、需要が非常に高いため、2006年に生産量を倍増させないと米国の新規顧客に対応できないという。スプレンダは低糖質のアトキンスダイエットの人気もあり、売り上げを伸ばしている(画像クレジット:Mario Tama/Getty Images)

プロセスの信頼性

サプラントは、テクノロジーを駆使して酵素を使い、さまざまな繊維を分解した上で細分化する。「繊維が分解されていくと分子的にはショ糖やキビ砂糖のように変化し、キビ砂糖のような成分になる」とシモンズ氏は語る。

この技術は、ケンブリッジ大学で始められた長年の研究の成果だと同氏がいう。「私がケンブリッジに来たの教授になるのが目的で、ビジネスを始めるつもりはなかった。科学の研究や発明、なによりも世界に届けられるようなものに興味があった。そのためには教授になるのが一番だと思っていた」

やがてシモンズ氏は博士号を取得し、サプラントに生かされる研究をポスドク研究として開始した後、会社を設立する必要があることに気付いた。「何かインパクトのあることをするためには、大学を辞めなければならなかった」と同氏は語る。

サプラントはある意味で、シモンズ氏が関心を持つ健康、栄養、持続可能性のすべてが融合して運営されている。そして、さまざまな消費者製品に加工テクノロジーを徐々に応用することを同社で計画しているが、現状では1000億ドル(約10兆7000億円)規模の砂糖代替品市場に重点を置き続けるとシモンズ氏はいう。

「それぞれの分野で核となる部分に科学的にアプローチしている部分というのは、ほんの一握りしかない。例えば、パーソナルケアやホームケアに使用される製品や、その分野で使われる化学物質がそうだ。業界が実現に向けて取り組んでいることとして、シャンプーに含まれる化学物質を肌に優しくかつ洗浄力の高いものにするという動きがあるが、それを持続可能な方法で実現しなければならない。つまり、製品が持続可能な原材料から作られ、生物分解が可能な製品であるということが必要だ」と同氏は語る。

関連記事:Y Combinatorデモデー1日目の注目10チームを紹介する

次の一手

サプラントは今、Manta Ray(マンタレイ)、Khosla Ventures(コースラベンチャーズ)、フェリシスベンチャーズ、Soma Capital(ソーマキャピタル)、Yコンビネーターなどの投資家から調達した資金で、ターゲットを細かく絞ったいくつかの実験でその製品価値を証明しようとしている【注】。シモンズ氏はあえて詳しく説明しなかったが、第1弾は著名なシェフと大々的に実験を仕かける。

センクット氏によると、同社の展開はImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)が市場に参入してきた方法に似ているとのことだ。まず高級レストランや高級食品で何回か試した後に、消費者市場に進出するという手法だ。

サプラントが生産する砂糖代替品の原材料はサトウキビの絞りかすと小麦であり、醸造業界の加工用設備を使用している。この手法は将来的に、同社が米国にオフィスを構え、大きな製造拠点を築く上でメリットとして働くだろう。

「当社は既知の科学を利用し、市場として魅力のある食品業界にその科学を応用している。新しい酵素やいろいろなプロセスを発明しているわけではない。使っているもの自体は新しいものではない。生成に使用している糖がうまく機能し、キビ砂糖の代わりになるということが発見なのだ。これは、今まで誰も実現できなかったことだ。砂糖の代替品はほとんどの場合、キビ砂糖のような成分にはならない。乾燥しすぎていたり、湿っていたり、硬すぎたり、柔らかすぎたりする」とシモンズ氏はいう。

何よりも大切なことだが、シモンズ氏と20人のチームは、この消費者向け製品を作るという使命をしっかりと共有している。「私たちは、世界中で生み出されている膨大な量の再生可能資源を利用するつもりだ」と同氏はいう。

【注】この記事は、マンタレイとコースラベンチャーズがサプラントへの投資に参加したことを受けて更新された。

カテゴリー:フードテック
タグ:SupplantY Combinator砂糖

画像クレジット:Luis Ascui / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

機械学習でエネルギー需要を予測し分配を最適化するInBarance Research

マサチューセッツ州のケンブリッジと、英国のケンブリッジにまたがり拠点を構えるinBalance Research(インバランス・リサーチ)は、Y Combinator(ワイコンビネーター)に参加し、現在行っている独立系電力供給業者、電力会社、証券会社に「お告げ」を与える事業を加速させる狙いだ。

Delphi(デルファイ)と呼ばれるサービスを販売するこの極めてアーリーステージのスタートアップは、電力供給業者や電力会社に、エネルギー市場の需要予測に関する分析情報を提供したいと考えている。

この10年間で「100年に1度」の嵐に2度も襲われ電力網に壊滅的な被害を受けたテキサス州の事例もあり、電力会社にとっては、米国全域にわたる電力網の負荷の総合的な調整が差し迫った問題になっている。

関連記事:悪天候や停電が示す米国の電力網最大の問題は再生可能エネルギーではなくインフラそのものにある

「長期的なソリューションを求めるならば、それは2部構造のソリューションとなります」と、inBalanceの共同創設者にして最高責任者のThomas Marge(トーマス・マージ)氏はいう。「それはハードウェアとソフトウェアの組み合わせです。オンライン上の適切なアセットと適切なソフトウェアがあって初めて、極端なショックに襲われたときにも市場を確実に機能させることができます」。

電気の価格は15分ごとに変化し、ときには激しい変動を見せる。テキサスの電力網を破壊し、いくつもの企業を廃業に追い込んだような気象災害がなかったとしても、ほんの1時間で価格が倍になることもあると、inBalanceは話している。

だからこそ、予測ツールが重要になるのだと同社はいう。価格が高騰するにつれ、アセットの調達が柔軟に行えない水力発電や蓄電業者のアセット管理者は、市場に供給する価値をいつ増やすべきかの判断を迫られる。電力供給が早すぎたり遅すぎたりすれば、そのクリーンな発電による収益は下がり、消費者に高いピーク時価格を強いることになる。

同社によれば、蓄電によるものや断続的な再生可能電力が同時に供給されると、状況はさらに難しくなるという。それが、蓄電電力と再生可能電力の両方の価格を押し下げる圧力となり、それと引き換えに、いずれこれらのクリーンな電力の供給量が落ちたとき、化石燃料による発電量が増加する恐れが生じる。

そうした圧力の予測を行うソフトウェアの提供を行うのがinBalanceだと、同社は主張する。マージ氏とその共同創設者であるRajan Troll(ラジャン・トロル)氏とEdwin Fennell(エドウィン・フェンネル)氏は、以前からビッグデータとエネルギーに関連する問題に関心を寄せていた。

マージ氏の場合、 マサチューセッツ州レキシントンで風力発電の最適化プロジェクトに携わっていたころにその関心が芽生えた。

「基本的に、私たちはデータサイエンスソリューションなのです」とマージ氏。「北米における個々のあらゆる市場の、個々のあらゆるアセットに影響を及ぼす要素を認識し統合することです。それらのアセットがどのように働き出すか、その兆候を1日から1時間前に把握できます」。

現在のところ、北米で同社のソフトウェアを利用しているある電力会社は、二酸化炭素排出量を0.2%削減することに成功した。再生可能エネルギーを重視するinBalanceは、この市場で他のサービスに予測ツールを利用している3000の業者でも、大幅な排出量削減ができると期待している。inBalanceが進めている、同ソフトウェアのもう1つの応用先に、尖頭負荷発電所がある。再生可能電力の間欠性を補完するのが目的だ。

ニューイングランド地区では、2020年12月に同地域の電力会社との協力を開始したばかりであるにも関わらず、二酸化炭素排出量の削減に目覚ましい結果が出ている。予測ツールのお陰で、同社は、その時々で最も価値が高いアセットを示すことができる。そうしたアセットには、天然ガス尖頭負荷発電所、水力発電所、揚水型水力発電所(基本的にこれは蓄電技術)、バッテリーまたはフライホイール・バッテリー計画、さらに価格表示によって企業や消費者が電力消費を抑えるように促すデマンドレスポンス技術などが考えられると、マージ氏は話す。

すでに、6社の企業がDelphiソフトウェアを見に来て、初期ユーザーになっている。マージ氏によれば、そこには国際的な再生可能アセット管理会社や米国でトップ10に入る電力会社などが含まれているという。

「私たちは、数テラバイトに上る公共および独自のデータを用いて、機械学習により電力価格を正確に予測しています。日々の電力システムの安定のために求められるソリューションは、ハードウェア(蓄電や電気自動車の充電など)と、それを最適に利用するためのソフトウェアで成り立ちます。inBalanceの存在意義は、そのソフトウェアソリューションにあります」と同社は声明の中で述べている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:InBarance Research電力網Y Combinator

画像クレジット:Stuart Kinlough

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリ構築に力を入れるコートジボアールのDjamo

フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリを手がけるDjamoは、コートジボワールのスタートアップとしては初めてY Combinatorの支援を受ける企業である。

アフリカではここ数年で膨大な数の金融サービスが出現しているが、Djamoの使命は、フランス語圏アフリカにおいてサービスが極めて不足しているという特定のギャップを埋めることにある。

この地域で銀行口座を持つ成人は25%にも満たず、銀行のターゲットは富裕層の上位10〜20%に留まっている。残りは約1億2000万人の市場の巨大なセグメントであるが、収益性があるとは認識されていない。しかし銀行が変わらぬ中、同地域の電話通信会社からのモバイルマネーがそのギャップを埋めた。過去10年で人口の60%以上がモバイルマネーを使用しており、何百万人ものフランス語を母国語とする人々が金融サービスに飢えていたことを証明している。今日、このモバイルマネーのインフラとリーチによりスタートアップは既存の支払いインフラを利用してさまざまなアプリケーションを通じたアクセスを民主化することができる。

Djamoはこの機会を利用し、手頃でシームレスな銀行取引をこの地域に提供することを目指している。

Hassan Bourgi(ハッサン・ブージ)氏は「2度目の創設者」で、ラテンアメリカを拠点とする自身のかつてのスタートアップBusportalからNaspers傘下のredBusに移った後、2019年にコートジボワールに戻った。そこで同氏は、アフリカ最大の電話会社の1つであるMTNで複数のモバイルマネープロジェクトを率いていたRégis Bamba(レジス・バンバ)氏に出会った。

両氏をはじめ多くのミレニアル世代が直面している銀行業界の不愉快な経験にフラストレーションを感じ、ブージ氏とバンバ氏は2020年、銀行業界の現状に挑戦するためにDjamoを立ち上げた。

「この地域では銀行サービスへのアクセスが非常に難しく、私たちはこれを大きなチャンスだと捉えました」とDjamoのCEOであるブージ氏はTechCrunchに語った。「設立当初から私たちは一般消費者に浸透できるモバイルファーストのプラットフォームを設計したいと考えていました。Djamoをローンチするためには、一般消費者向けの製品を開発する私たちの複合的な経験が非常に重要でした」。

ブージ氏によると、同国のミレニアル世代はテクノロジー企業と関係を築き、通常とは異なるサービスを受けようとしている。そのため、Djamoはこうした顧客に対して、より優れたフロントエンドのエクスペリエンスと迅速なカスタマーサービスの提供を進めることにした。

画像クレジット:Djamo

同社は画一的なアプローチでサービスを提供するのではなく、異なる層のさまざまなユーザーニーズに合わせて提供することに注力した。Amazon、Alibaba、Netflixなどのオンラインサービスへの支払いを可能にすることから、Visaデビットカードをタイムリーに提供することまで、Djamoは独自のカスタマイズされたアプローチにより口コミを通じて有機的に成長してきた。

両CEOによると、Djamoが登場する前はカードを受け取ったり、あるいはクレジットカードを発行したりするために銀行の支店で長い列に並ぶ必要があったという。Djamoはそのストレスを解消し、さらには幅広いサービスにおいて手数料ゼロでカードを利用することができるようにしたのだ。

「一定の限度額まで継続的に手数料がかからないゼロ料金のカードを提供することは、当社にとって重要なことでした。それ以降は、取引手数料として支払うことになります。ユーザーがより高い限度額まで取引できる月額約4ドル(約420円)のプレミアムプランがあります」とブージ氏。

現在Djamoは約9万人の登録ユーザーを擁し、毎月5万件以上の取引を処理しているという。しかしここに到達するまでに同社はさまざまな苦労と工夫を重ねてきた。

FlutterwaveやPaystackのような確立された決済インフラ企業があるナイジェリアとは異なり、コートジボワールにはそのような著名な企業は存在しない。

「プロバイダーが数社ありますが、そのほとんどは信頼性に欠けています。しかしそれはエンドユーザーに関係なく、何らかの方法でうまく機能させる必要があります」と同社のCPO兼CTOであるバンバ氏は説明する。

より優れたオプションがないため、Djamoでは運用を継続するためにプロバイダーを適宜切り替えている。同社はアフリカのフィンテック系スタートアップの多くに共通する懐疑的な見られ方にも直面してきた。Djamoの場合、創設者たちはプラットフォームがオンボーディング、KYC、取引に使用しても安全であることを銀行や顧客に長期にわたって証明しなければならなかった。

CEOのハッサン・ブージ氏とCPO兼CTOのレジス・バンバ氏(画像クレジット:Djamo)

顧客へのサービス提供を開始する際にも、同社のVisaカードの配送をどのように行うかという特有の問題に直面した。ブージ氏によると、アフリカ大陸の他の先進国とは異なり、コートジボワールで効率的な配達や物流サービスを利用することは至難の業であるという。そこで同社は、この目的のために独自の配送エージェントを使った配送アプリを作ったのだ。「私たちの顧客向けの目標は、登録完了の翌日に顧客がタイムリーにカードを受け取れるようにするということです」とブージ氏は説明する。

MVPが発表される前にも、Djamoはすでに製品の金銭的な評価を受けていた。2019年6月にプライベート投資家から35万ドル(約3700万円)のプレシード投資を調達しており、これは現段階ではフランス語圏で最大規模となる。少なくともフランス語圏のアフリカにおいては、同社のソリューションの創意工夫と創設者の実績こそがDjamoがラウンドを完了させる上で重要だったとブージ氏はいう。

フランス語圏のアフリカは、新進のスタートアップシーンの出現を示す兆候があるにもかかわらず、長い間国際投資家から過小評価されてきた。これには、言語の障壁の他、南アフリカを除く英語圏諸国がサハラ以南アフリカの平均GDPの47%を占めている一方でフランス語圏諸国のGDPはわずか19%しか占めていないという地域のGDPと1人当たりの所得が関係している。

しかし、世界銀行は2021年までに同地域がアフリカで最も急速に成長している経済の62.5%を占めるようになると予測しており、今後数年間の成長について明るい見通しを示している。

多くの未開発の事業機会に恵まれ、フランス語圏アフリカのように十分に認知されていない地域に変革の機が熟している。投資家はこのことを認識しており、彼らの評価は依然として英語圏のアフリカ向けに偏ってはいるものの、セネガルのエネルギースタートアップOoluとカメルーンのヘルステックスタートアップHealthlaneの2020年の100万ドル(約1億500万円)の資金調達が、市場に対する彼らの興味の大きさを物語っている。

両スタートアップもDjamo同様にYCの支援を受けたフランス語圏のスタートアップだ。しかし2021年この冬のバッチにより、Djamoは同地域初のフィンテック系スタートアップとなる。また2020年のHealthlaneに続いて、フランス語圏のアフリカ企業が連続して代表者を持つことも初めてとなる。

創設者たちにとってYCの支援は、フランス語圏アフリカ地域全体の金融サービスの流通がアプリケーションへと根本的に変化を遂げているというDjamoの前提を評価するものである。

「コートジボワールでは銀行業界は複雑すぎて対処できないという声が常に聞かれます。しかし私たちはこれを大きなチャンスとみなし、取り組むべき業界であると捉えていました。フラストレーションを感じたり、顧客が苦しんだりしているところには、ビジネスが成功し、向上するチャンスがあります」とバンバ氏は語っている。

3月23日のデモ・デーで締めくくられる3カ月間のプログラムに参加した後、Djamoはフィンテック大手のネットワークを活用して新しい決済体験を提供できるようにする、VisaのFintech Fast Track Programにも参加する予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:DjamoアフリカコートジボアールY Combinator

画像クレジット:Djamo

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

AtlassianがY Combinator出身のデータ視覚化プラットフォームChartioを買収

Atlassianはエンタープライズの運営とコミュニケーションに関するサービスを提供するプラットフォームだ。同社は2020年秋、機械学習レイヤーのAtlassian Smartsを立ち上げた。これは機械学習を利用して膨大な情報を検索して会社内外の共同作業を効率化するサービスだ。同社はChartioを買収すると発表したが、これはファミリーのプロダクトに新しくデータ分析および視覚化のコンポーネントを追加するためだ。買収金額は明らかになっていない。

同社はソフトウェアの開発、運用のクラウドJiraをはじめとするプラットフォーム全体にChartioテクノロジーを組み込む計画だ。買収以前にChartioのプラットフォームには28万人のユーザーに利用されており、54万種類のダッシュボード上で10万を超えるデータソースから1050万種のグラフが作成されていたという。

Atlassianはプラットフォームにデータの可視化コンポーネントを導入し、プラットフォーム内のデータをダイナミックに活用するためにChartioを利用する計画だ。同社のプラットフォームプロダクトエクスペリエンスの責任者であるZoe Ghani(ゾーイ・ガーニ)氏は、今回の買収を発表したブログ記事の中で「我々のプラットフォームはデータの宝庫です。そこで私たちの目標は、データのの潜在的力をフルに利用し、ユーザーがありきたりのレポートの体裁を超えて、組織のニーズに合わせてカスタマイズされた強力なアナリティクスを生成きるようにすることです」と述べている。

関連記事:Atlassianの2年にわたるクラウドへの旅 ―― AWSへの大幅な移行

Chartio の共同ファウンダーでCEOのDave Fowler(デイブ・ファウラー)氏は自分のサイトのブログ記事で「我々は2020年末から話し合いを始め、今日の発表に至った」と書いている。こうした買収の説明として標準的だがファウラー氏は「我々はスタンドアローンで運営を続けるよりも膨大なリソースを持つAtlassianのような大規模な組織のメンバーになったほうが良い結果が得られる」と考えたと述べている。

私たちは長年独立企業として運営されてきましたが、巨大なプラットフォームと膨大なリーチを持つAtlassianと協力できる機会が得られた信じられない幸運でした。プロダクトを重視した市場戦略、ユーザーニーズ、教育訓練を重視したマーケティングはChartioにとっても常にインスピレーションの源でした。

ただしChartioのユーザーにとっては残念なことに同社のプロダクトは2021年をもって終了する。まだ十分な時間があるし、他のツールにデータをエクスポートすることは可能であり同社のサイトにはその方法が詳しく記されている

Chartio2010年に創立され、Y Combinatorの2010年夏のクラスを卒業している。Pitchbookのデータによると調達した資金は総額で803万ドル(約8億6000万円)とささやかなものだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AtlassianY Combinator機械学習買収

画像クレジット:Chartio

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(文:Ron Miller 翻訳:滑川海彦@Facebook

遠隔医療従事者にオンデマンド在宅検査を提供するAxle Health

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック期間中に遠隔医療サービスの利用が急増しているが、診断検査のために医療従事者が近くにいなくてはならない場面もある。現在Y Combinatorに在籍しているAxle Healthは、遠隔医療会社と協力してバーチャルと対面のギャップを埋めようとしている。

「自宅に派遣する医療従事者は瀉血専門医、メディカルアシスタント(MA)、准看護師、および看護師です」とAxleの共同創業者であるConnor Hailey(コナー・ヘイリー)氏は語った。

悲しい現状を反映して、会社が受ける電話のほとんどが新型コロナ関連だとヘイリー氏はいう。

また、現在同社は健康保険を受けつけていないが、ヘイリー氏によると、同プラットフォーム上の多くの会社が、患者には自己負担分を請求し、その後保険会社から払い戻しを受けている。

「現金で支払っている患者はほとんどいません。私たちの在宅向けサービスは自己負担なのです」とヘイリー氏はいう。料金は訪問する医療従事者の免許資格によって変わる。

同社の最大のパートナーであるSameday Healthは、在宅PCR検査の料金は250ドル(約2万6300円)で、保険適用はなく自己負担だとヘイリー氏は言った。ヘイリー氏とSamedayは、近々保険適用の在宅PCR検査を100ドル(約1万500円)の往診料金でできるよう計画している。

Axle Healthは2021年1月末にこのサービスを開始し、治療の範囲を新型コロナウイルス感染症検査以外にも広げる考えだが、現在は市場の要求に答えているだけだという。

ヘイリー氏は、ZocDocで数年働き、Uberにしばらく在籍した後この会社を立ち上げた。ヘイリー氏と共同ファウンダーのAdam Stansell(アダム・スタンセル)氏を突き動かしたのは、同じようなコンセルジュサービスを幅広い患者に低価格で提供したいという思いだった。

「裕福な人々は在宅医療を利用できます。私たちはこれを低価格にして誰でも使えるようにします」

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Axle Health遠隔医療新型コロナウイルスY Combinator

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

東南アジアの金融インフラ構築を進めるシンガポールのFinantierがY Combinatorから支援を獲得

「underbanked」であることは、金融サービスへのアクセスがない人を意味するわけではない。その代わり、従来の銀行口座やクレジットカードを持たないことを往々にして指す。しかしインドネシアのようなマーケットでは、多くの人がデジタルウォレットやeコマースプラットフォームを使っている。これは運転資本や他の財務ツールを確保するのに役立つユーザーデータの別のソースになっている。シンガポール拠点のオープンファイナンススタートアップFinantier(ファイナンティア)は、ユーザーデータへの金融サービスアクセスを提供する1つのAPIでそうしたデータを合理化したいと考えている。ここにはクレジットスコアやKYC(与信審査)の認証を可能にする機械学習ベースの分析も含まれる。

20超のクライアントを抱え、現在ベータ版を展開しているFinantierは正式立ち上げに向けた準備で忙しい。同社は米国時間12月22日、Y Combinatorの2021年冬季スタートアップとして受け入れられたと発表した。同社はまた、額は非公開ながらこのほどプレシードの資金を調達した。本ラウンドはEast Venturesがリードし、AC Ventures、Genesia Ventures、Two Culture Capitalなどが参加した。

Finantierは2020年初めにDiego Rojas(ディエゴ・ロハス)氏、Keng Low(ケン・ロウ)氏、Edwin Kusuma(エドウィン・クスマ)氏によって設立された。3人とも新興マーケットでオープンファイナンスを可能にすることを目的としたフィンテック企業向けのプロダクト構築の経験がある。

オープンファイナンスは、オープンバンキングから生まれた。PlaidとTinkが構築されたのと同じフレームワークだ。これは、ユーザーの金融データを銀行や他の機関の中に格納する代わりにユーザーがよりコントロールできるようにすることを意図している。ユーザーは自身の銀行口座やクレジットカード、デジタルウォレットなどを含むオンライン口座の情報へのアクセス権をアプリやウェブサイトに付与するかどうかを決定できる。オープンバンキングは主に決済アカウントと称されるが、その一方でFinantierが専門とするオープンファイナンスは商業融資、住宅ローン、保険引受などを含むさまざまなサービスをカバーする。

Finantierはまずシンガポールとインドネシアに注力するが、他の国にもサービスを拡大し、Plaidのようなグローバルフィンテック企業になる計画だ。すでにベトナムとフィリピンに目をつけていて、ブリュッセルで提携も結んだ。

Finantierを興す前にロハス氏はP2Pの融資プラットフォームLending ClubやDianrong向けのプロダクトに取り組み、東南アジアのいくつかのフィンテックスタートアップでCTOを務めた。同氏は多くの企業が他のプラットフォームや銀行からのフェッチデータを統合したり、異なるプロバイダーからデータを購入したりするのに苦戦していることに気づいた。

「人々はオープンバンキングや埋め込み型金融などについて話し合っていました」とFinantierのCEOであるロハス氏はTechCrunchに語った。「しかしそれらはもっと大きなもの、すなわちオープンファイナンスの構成要素です。特に大人の60〜70%が銀行口座を持たない東南アジアのような地域では、消費者や事業所が複数のプラットフォームに持っているデータを駆使するのをサポートしていると確信しています。それは絶対に銀行口座である必要はなく、デジタルウォレットやeコマースプラットフォーム、その他のサービスプロバイダーだったりします」。

消費者にとって意味するところは、クレジットカードを持っていなくても、たとえばeコマースプラットフォームでの完了した決済のデータを共有することで信用力を構築できるということだ。ギグエコノミー労働者は、毎日の乗車や他のアプリを通じてしている仕事についてのデータを提供することで、より多くの金融サービスやディールにアクセスできる。

東南アジアの金融インフラを構築する

東南アジアに注力している他のオープンバンキングスタートアップにはBrankasやBrickがある。ロハス氏はFinantierがオープンファイナンスに特化していること、エンドユーザー向けのサービスを構築するために金融機関向けのインフラを作っていることで差異化を図っていると述べた。

金融機関にとってのオープンファイナンスのメリットは、より消費者に適したプロダクトを作ることができ、売上高共有モデルの機会を得られることだ。これは東南アジアでは銀行口座などをもたず、さもなくば金融サービスへのアクセスがない人々にリーチできることを意味する。

Y Combinatorのアクセラレータープログラムに参加する一方で、Finantierはインドネシア金融サービス庁の規制緩和制度にも参加する。このプログラムを終了したら、大手機関を含むインドネシアのさらに多くのフィンテック企業と提携することが可能になる。

インドネシアには、銀行口座を持たないなど金融サービスを十分に利用できていない大人が1億3900万人いる、とEast Venturesの共同創業者でマネジングパートナーのWilson Cuaca(ウィルソン・クアカ)氏は話した。

インドネシアを専門とする同社はEast Ventures Digital Competitiveness Indexという年次調査を行うが、金融排除が現在存在する最大の格差の1つだと指摘した。ジャカルタが立地するジャワのような人口の多い島で利用できる金融サービスの数と、他の島々のものとではかなりの差がある。

金融インクルージョンを促進し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済影響を軽減するために、政府は1000万の零細・中小企業が年末までにデジタルに移行するという目標を打ち出した。オンラインで販売する零細・中小企業は現在800万で、インドネシアの零細・中小企業のわずか13%にすぎない。

Finantierに出資するというEast Venturesの決定について、クアカ氏は「金融サービスへの平等なアクセスを提供することは、インドネシア経済に乗数効果を及ぼすことができます」とTechCrunchに語った。「現在、金融サービスを多くの人に提供するために何百という企業が独自のソリューションに取り組んでいます。そうした企業がより多くのプロダクトやサービスを、金融サービスを活用できていない人々に提供するのをFinantierがサポートすると確信しています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:FinantierY Combinator資金調達東南アジアシンガポール

画像クレジット:Finantier

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(翻訳:Mizoguchi

気象災害に備える企業にAIを組み合わせた天気予報分析を提供するAtom

「地球上のほぼすべてのビジネスは天候の影響を受けています」と、投資家で連続起業家のAlexander Levy(アレクサンダー・レビー)氏はいう。同氏の最新の会社は、新しい天気予報スタートアップのAtmoだ。

2020年初めにY Combinatorを卒業した同社は、予測ソフトウェアのためにSignia Venture PartnersとSound Venturesから200万ドル(約2億800万円)を調達した。時にビジネスでは、ボブ・ディランの歌とは違って、風向きを知るために天気予報士が必要になることもあるからだ。

Atmoは元Google Xの社員で、Project Loon(プロジェクト・ルーン)に携わっていたJohan Mathe(ヨハン・マテ)氏によって設立された。Project Loonとは、新興国市場でワイヤレスネットワークを構築するために、気球を使ったインターネット接続を提供することに注力した事業部門だ。

「私は天候に取り組むことに多くの時間を費やしました」とマテ氏はいう。彼の仕事は、様々な地域で気球をナビゲートする方法を見つけることだった。そのナビゲーションの多くは、気象パターンによって複雑だった、と彼は語った。

「天候と膨大な量のデータが非常に複雑に絡み合う中で、私はそれを構築しなければなりませんでした」と、マテ氏はいう。「そこで私は考えたのです、天気とAIの交差点を、もっと誰もが利用できるようにするために、何かを構築しなければならないと」。

これが4年間におよぶ旅の始まりだった。やがてそれは、Atmo (以前はFroglabs.aiとして知られていた)というカリフォルニア州バークレーを拠点とするスタートアップに結実した。同社は現在、再生可能エネルギーからアイスクリームショップまで、さまざまなビジネスに天気予報分析を提供している。

創薬会社Atomwiseの共同創業者であるレビー氏は、マテ氏を社会的に知っており、彼の会社がまだアイデアだけの時に最初に投資した。しかし、気象データに価値を見出したレビー氏は、投資家やアドバイザーから共同創業者へと跳躍することにした。

現在、マテ氏とレビー氏そして最高技術責任者のJeremy Lequeux(ジェレミー・ルキュー)氏は、バークレーにあるレビー氏の家で、ソフトウェアを開発し、会社を次のレベルに引き上げるために働いている。

そして最近の出来事が同社のサービスの必要性を十分に明らかにしている。全米海洋大気庁がまとめたデータによると、2019年以降、気候関連の出来事は米国におよそ890億ドル(約9兆2500億円)ものコストをかけているという。

「すべてのビジネスは、天候に左右されます」とレビー氏はいう。「たとえばアイスクリームを販売する場所について考えてみましょう。気温が1度、高くなるか低くなるかによって、売り上げは10%も影響を受けます。私たちは汎用的な予測システムの作成に向けて取り組んできましたが、気象データを使用する一方で、世界中から集めた過去の天気のデータも用います。この2つを比較して、主要なビジネス指標のすべてが天候によってどのように影響を受けるかを分析します」。

レビー氏によると、同社はすでに、再生可能エネルギーやeコマース、物流業界の20億ドル(約2000億円)規模の企業を含む半ダースほどの顧客を抱えているという。

「私たちが取り組んでいる分野の1つに、リスクと異常気象があります。たとえばほとんど人間が介入できない異常気象を、どうやって予測するのかということです」とレビー氏はいう。「私たちは、このような予測を、比較的正常な状態にあるときに最適化する方法とは切り離して行っています」。

このような異常気象が増えるにつれ、需要は増加する一方だ。政府や企業はこれらの破局的な状況に耐え、適応する能力を向上させる方法を模索しているからだ。

「ニーズはあります。最近では、誰もがレジリエンス(回復力)について話しているからです」とレビー氏は語る。「Atmoは、現在そんな問題について不安を抱えている大企業に、これらの洞察を提供する会社だと、私は考えています」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Atmo天気Y Combinator資金調達

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

データサイエンスを活用し、インドのユニクロを目指すYCスタートアップSockSoho

SockSoho(ソックソーホー)は、「インドのユニクロ」になることを目指すD2Cブランドだ。同社は10か月前に男性用靴下の販売を開始し、最近Y Combinator(Yコンビネータ)のSummer 2020プログラムを終えたばかりだ。TripAdvisor(トリップアドバイザー)などの企業で勤務経験のあるデータサイエンティストPritika Mehta(プリティカ・メータ)氏とグロースマーケターのSimarpreet Singh(シマープリート・シン)氏が創業したソックソーホーの顧客は現在3万人以上を超えており、今後はメンズウェアに特化したバーティカルECの新規立ち上げを計画している。

メータ氏とシン氏は、ソックソーホーを立ち上げる以前はテクノロジーおよびコンテンツIPプロバイダーのMindBatteries(マインドバッテリーズ)で一緒に働いていた。同社の法人顧客には、The Times of India(ザ・タイムズ・オブ・インディア)、The Economic Times(エコノミックタイムズ)、Mercedes(メルセデス)、Infosys(インフォシス)、世界経済フォーラム、Uber(ウーバー)などが名を連ねる。

両氏は、インドが世界最大級にして急激に成長しているeコマース市場の1つであること、そして、事業の拡大に伴いチャットボットやAIベースのレコメンドエンジンなどを導入する独自の技術に、ソックソーホーの成長を賭けている。

ソックソーホーは、独自サイトとeコマースプラットフォームを使って販売するマルチプラットフォーム配信戦略でローンチしたが、主に売上を伸ばしているのは、ユーザー数が4億人以上にのぼるインドで最も人気の高いメッセージングアプリWhatsApp(ワッツアップ)だ。ソックソーホーの売上の約70%がWhatsAppを通じたもので、A/B製品テストにもこのアプリを使用している。

Y Combinatorパートナーであり、ソックソーホーに投資しているEric Migicovsky(エリック・ミジコフスキ―)氏はTechCrunchへのメールで、「ソックソーホーは表向きはファッションブランドに見えますが、運営はテック企業のように行われています。製品とeコマースの経路におけるあらゆる側面でA/Bテストを実施しているのです。これは、すべてのファッションブランドが行っていることではありません」と語ってくれた。

また、「ソックソーホーが成功に至った戦略はWhatsAppだと思います。WhatsAppを通じて独占的に顧客を獲得し、サービスを提供する方法を見つけたのです」とも述べている。

メータ氏はソックソーホーを立ち上げる前、バッファロー大学で人工知能を専門にコンピューターサイエンスの修士号を取得した。その後、トリップアドバイザーなどのテック企業に勤めながら数年間を米国で過ごしたが、母国であるインドには常に目を向けていた。

「インド市場の成長を見た時は、目を見張りました。人口がとても多く、データは安くなっていましたから。オンラインで買い物する人も圧倒的に増えていました。その時思ったのです。インドがこんなに盛り上がってるのに、私は米国で一体何をしているんだろうと」」とTechCrunchに話してくれた。

インドのオンラインファッションブランドの大半は女性向けの製品を中心に扱っているため、メータ氏とシン氏はメンズウェア業界への参入を決めた。インド都市部には、およそ2億人の男性がいるとされ、80億ドル(約8500億円)の潜在市場がある。両氏は消費者調査を行う前に、最初に販売する製品の候補として80個のアイテムをリストに書き出した。そして、サイズが合わせやすく発送が簡単で、販売利益が高く返品率の低い靴下を選んだ。

ソックソーホーでは、新しい靴下を販売する前にWhatsAppを通じて独自のA/Bテストを行っている。製造注文を行う前に、デザインのアイデアを顧客に送り、先行予約で顧客の関心を読み取っているのだ。

多くのD2C企業における課題となっているマーケティングコストの削減と顧客獲得には、データ分析がカギとなる。

「私たちは基本的にデータポイントを収集して、お客様の行動と消費のパターンを理解しています。こうしたインサイトによって、デザインからマーケティング、在庫計画、今後進出していくバーティカル分野まで、あらゆるものを絞り込むことができます」とメータ氏は述べている。

データ分析によって、すでにいくつかのサプライズがあった。たとえば、ソックソーホーでは顧客のほぼ全員が男性であると予測していたが、購入全体の約30%は女性によるギフト購入だったのだ。また、購入者のほとんどがデリー、ムンバイ、バンガロールといった主要都市に住んでいると仮定していたが、データではより小さな地方都市が成長の主力となっていたことが分かった。「こうしたインサイトはすべてデータから明らかになりました」とシン氏は語っている。

過去6か月で、ソックソーホーの顧客の58%がリピート購入しており、売上は3月からインドで始まった新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンの最中に増大している。

「新型コロナウイルスによって、人々のオンラインショッピングへの移行が加速しています。たとえば私の父はオンラインショッピングなんてしたことがありませんでしたが、コロナ禍により、今では歯磨き粉までオンラインで買っています。これはとても大きな変化です」とシン氏は言う。

ただし従来のリテールブランドの多くが、まだオンラインでのショッピングエクスペリエンスをものにできていない、とメータ氏は付け加えた。

「eコマースは、製品を売るだけのものではありません」とメータ氏は言う。

ソックソーホーでは、顧客をつなぎとめておくためにWhatsAppを使い、新製品や顧客の写真を共有しているが、そうしたレベルの個々のエンゲージメントは、ブランドが成長するにつれ、より困難になってくる。

そこで登場するのが、ソックソーホーが開発中の独占技術だ。これには商品交換などシンプルな質問に対応できるAIベースのチャットボットが含まれている。たとえば、間違ったアイテムを受け取った顧客は、その写真をアップロードすれば交換品が送られるようになる。より複雑な問題にはフラグが付けられ、カスタマーサービス担当者に引き継がれる。

「私たちは、有人対応の経験を実際に複製できる独自ソフトウェアを社内開発しています。言語、データ、お客様が求めるエクスペリエンスの種類を理解するために、お客様との現在のやり取りなどすべてのデータを収集しているのです」とメータ氏は語っている。

またソックソーホーでは、独自のAIベースのレコメンドエンジンを開発している。これは顧客のブラウジングやショッピングの傾向に基づき、関心がありそうな製品を顧客に勧めるものだ。同社は次に拡大を進めるバーティカル分野を明らかにはしていないが、すでに次の製品ラインに向けたA/Bテストを行っている。

「テックスタックと全体的なサプライチェーンを作り、靴下で確かな成功を達成できたら、ほかのバーティカル分野にも手を広げ、いずれインドのユニクロになることはとても簡単でしょう」とシン氏は述べている。

関連記事:D2C・オンラインブランド専門の卸仕入れサイト「orosy」のベータ版が登場、アカウント審査なしですぐに利用可能に

カテゴリー:ネットサービス

タグ:インド ファッション Y Combinator

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(翻訳:Dragonfly)

インドのミレニアル世代向けの投資アプリGrowwが31.8億円を調達

インドでは毎月1億5000万人以上がデジタル決済アプリを使用しているが、投資信託や株式に投資しているのは約2000万人にすぎない。その状況をミレニアル世代に訴求することで変えようとしているスタートアップが、大きな資金を得た。

バンガロールを拠点とするGroww(グロウ)はインド時間9月10日、シリーズCラウンドで3000万ドル(約31億8000万円)を調達したことを発表した。Y Combinatorの成長ステージ投資ファンドであるYC Continuityがこのラウンドを主導し、既存の投資家であるSequoia India、Ribbit Capital、Propel Venturesが参加した。今回のラウンドによって、創業3年のスタートアップGrowwの調達総額は5900万ドル(62億5000万円)になった(未訳記事)。

Growwを使えば、ユーザーは体系的投資計画(SIP)や 株式連動型貯蓄などを含む投資信託に投資することができる(未訳記事)。このアプリは非常に簡素化されたユーザーインターフェイスを採用することで、主にミレニアル世代を中心とした顧客層に、投資の世界を理解しやすいものとする。なお現在インドで利用可能なすべてのファンドを提供している。

Growwの共同創業者で最高経営責任者のLalit Keshre(ラリット・ケシュレ)氏はTechCrunchのインタビューの中で、この数か月間、同スタートアップは、ユーザーがインド企業の株やデジタルゴールド(現物に裏打ちされた金の所有権)を購入できるようにサービスを拡大してきたと語った。ケシュレ氏とGrowwの他の3人の共同創業者たちは、自分たちのスタートアップを立ち上げる前は、Flipkart(フリップカート)で働いていた。

Growwは、投資信託の提供によって800万人を超える登録ユーザーを集め、20万人以上のユーザーがプラットフォーム上で株式を購入したとケシュレ氏は語る。新しい資金により、Growwは国内でのリーチをさらに拡大し、新製品の導入も行うことができると彼はいう。

そうした新製品の1つは、ユーザーが米国上場企業の株式とデリバティブを購入できるようにする機能だという。ケシュレ氏によれば、スタートアップはすでに一部のユーザーで、この機能をテストしているという。

YC ContinuityのパートナーであるAnu Hariharan(アヌ・ハリハラン)氏は声明の中でこう述べている「Growwはインドで最大の、消費者向け仲介会社になりつつあると思います。まだ会社が単なるアイデアだった時期に、創業メンバーたちとYCで出会いました。彼らは世界レベルでもトップクラスのプロダクト開発者たちだと思います。私たちは世界最大の小売金融プラットフォームの1つとなるGrowwとパートナーであることに感謝しています」。

ケシュレ氏によると、Growwのユーザーの60%以上がインドの小さな都市や町の住人で、さらにその60%が、これまでにこうした投資を行った経験がない人たちだという。スタートアップは、投資の世界について人びとを教育するために、いくつかの小さな都市でワークショップを行っている。そしてそこにこそ成長の機会が転がっている。

Sequoia Capital Indiaの代表であるAshish Agrawal(アシシ・アグラワル)氏は声明の中で、「インドでは金融市場への個人投資家の参加が増加しています、前四半期だけで200万人の新しい株式市場投資家が生まれました」と述べている。

現在Zerodha、ETMoney、INDWealth、Cube Wealthといった数多くのスタートアップがインドで登場し、拡大して、同国内で増加するインターネット人口に資産管理プラットフォームを提供している。Paytmなどを含む多くの既存の金融会社たちも、投資信託への投資を含めるように提供内容を拡大している。ここ数カ月、インドで金融サービスのカタログを積極的に拡大した(未訳記事)したAmazon(アマゾン)も、デジタルゴールドをインド国内で販売している。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:sako)

セールスデモプラットフォームの開発のDemodeskが8.5億円調達、新型コロナでオンライン商談のニーズ高まる

2020年の新型コロナウイルスの大流行に伴い、対面でのミーティングが廃れてきていることは明らかです。それでも営業チームは、見込み客、特にSaaSベンダーに向けて製品をデモする方法を必要としている。そんな中、アーリーステージスタートアップであり、Y Combinator Winter 2019の卒業生でもあるDemodeskは、オンラインセールスデモプラットフォームを構築している。

同社は米国時間9月3日、Balderton Capitalが主導し、Target Globalが参加した800万ドル(約8億5000万円)のシリーズA調達ラウンドを発表した。同社はこれで昨年発表したシードラウンドを含め、合計1030万ドル(約11億円)を手にしている。

Demodeskは、多忙な営業マンがより自動化された方法で会議を設定できるように、知性を駆使してオンラインで営業デモをリモート配信するプラットフォームを構築した。このスタートアップは来年まで資金調達を考えていなかったにもかかわらず「新型コロナウイルスの感染蔓延がこのようなツールの市場での必要性を加速させた」とCEO兼共同創業者のVeronika Riederle(ベロニカ・リーデル)氏は語る。

「当初は来年の初めごろに次のラウンドの資金調達を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染蔓延が起きたことで、より早く資金調達ができました。市場での需要が非常に高いため、基本的には今より少し早く成長し、より早くツールを構築することが可能になりました」と続ける。

「新型コロナウイルスの感染蔓延の中でも、営業チームは顧客と会う必要があります。Demodeskはそのための方法を提供しています」と同氏。Demodeskは、Zoom、WebEx、GoToMeetingなどの一般的なミーティングソフトウェアとは大きく異なります。「一般的なミーティングソフトウェアは画面共有が可能ですが、DemoDeskには異なる点があります」と同氏は強調する。

DemoDeskは、デスクトップのライブバージョンや、2人が同じものを見ているような録画ではなく、クラウド上に仮想デスクトップを構築し、顧客にはプレゼンテーションやデモを見せながら、営業担当者は顧客が見ることのできないメモやその他の情報も参照できるのだ。この仮想的なアプローチにより、企業はデモに関するデータを取得し、何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのかを営業チームが理解するのに役立つ。

さらに同社は今年、顧客と営業チームが空き時間を共有できる新しいスケジューリングツールを製品に追加した。「顧客は自分の都合のいい時間を選択し、いくつかのデータを入力するだけで自動的にカレンダーの招待状を送信して営業担当者のカレンダーに入れ、リマインダーを送信することができます。そのため、スケジュールの調整からミーティングの準備、そしてミーティング中のサポートまでをすべてDemodeskに任せられます」とリーデル氏。会議終了後は、会議のメモをSalesforceや他のCRMツールと自動的に共有することも可能だ。

同社の現在の従業員数は22名だが、来年末までに50名に増やすことを目標としている。「会社を成長させるには、多様性と包括性が重要な考慮事項」とリーデル氏。実際、多様性は同社の5つのコアバリューの一部だ。「国際的な企業として多様性の重要度は増しているが、それだけでない」と同氏は説明する。「チーム内に多様性があれば、より創造的であるため、よりよいアイデアを生み出すことができます。さまざまな方法で考え、より興味深い議論をすることができます」と続ける。

2017年創業の同社は、150社の顧客を持つまでに成長した。これまでは顧客はほとんどがソフトウェア企業だった。同氏によると、最近では他業界でもこのプラットフォームを利用し始めているという。新型コロナウイルスの感染蔓延の前に戸別訪問を行っていた太陽光パネル会社などは、顧客を直接訪問できなくなったが、このツールを利用することでビジネスの継続に役立っているそうだ。

リーデル氏は、オンラインデモのほうが効率的でコストがかからず、会議に出向く必要がないため環境にもいいと考えている。

画像クレジット:Ada Yokota / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:TechCrunch Japan)