自己充電、電池寿命1000年以上を実現するNDBが主要テストを実施、初のベータ顧客も獲得

英国・プレザントンを拠点とするグリーンエネルギースタートアップのNDBは米国時間8月25日、ナノダイヤモンド電池(NDB)の2つの概念実証試験を完了し、重要なマイルストーンに到達した。そのうちの1つはローレンス・リバモア国立研究所、もう1つはケンブリッジ大学のキャベンディッシュ研究所で行われ、いずれでもNDBのバッテリー技術は40%の充電効率を達成し、これは標準的な市販ダイヤモンド電池の15%の充電効率(最大充電量に対するエネルギー損失率)を大幅に上回るものだった。

NDBのイノベーションは、バッテリーの製造に使用されるダイヤモンドからより効率的に電荷を抽出することを可能にする独自のナノダイヤモンド処理を開発したことにある。彼らの目標は最終的には最大2万8000年の寿命を持つ、炭素14の核廃棄物から作られた人工ダイヤモンドによる自己充電可能なバッテリーの製品化である。

このバッテリーは稼働中に二酸化炭素を排出せず、外気に触れるだけで作動する。技術的にはバッテリーではあるが、消費分が最終的には充電されるので、特定のデバイスや個々のユーザーの寿命よりもはるかに長い期間自ら充電し、実質的に充電不要のソリューションとなっている。

NDBは最終的に同社のバッテリーを航空機やEV、電車、スマートフォン、ウェアラブル、小さな産業用センサーなど、電力を消費するあらゆる用途のための実用的な電源にしたいと考えている。同社は現在、最初の商用バッテリーのプロトタイプを作成中で、年内には製品を発売する予定だ。

またNDBは最初のベータ版の顧客と契約したばかりで、彼らは実際に最初のプロトタイプを受け取り利用することになる。具体的な顧客の名前は明かされていないが、1社は「核燃料サイクル製品とサービスのリーダー」、もう1社は「世界的な航空宇宙・防衛・セキュリティ関連のリーディングカンパニー」だと述べている。明らかにこの種の技術はほぼすべての分野で魅力的だが、防衛と電力関連業者は最も潤沢な資金を投じることができるだろう。

カテゴリー:ハードウェア

タグ:NDB バッテリー

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

プライバシーを保護しながら、介護施設の利用者の行動をモニターできるMITのワイヤレスシステム

マサチューセッツ工科大学(MIT)のComputer Science and Artificial Intelligence Lab(CSAIL、計算機科学と人工知能研究室)の研究者は、完全にワイヤレスなシステムを使って、動きやバイタルサインを非接触で監視するだけでなく、ビデオを使用せずより強力にプライバシーを保護するやり方で活動を追跡する手法を開発した。このシステムは、長期介護施設や介護サービス付き住居で使用することが可能で、入居者のプライバシーを尊重しつつ、より高い水準のサポートを提供できる。

開発研究チームによって「RF-Diary(RFダイアリー)」と名付けられたこのシステムは、人の生活空間のマップと様々な動きのタイプを組み合わせることによって、対象者の睡眠、読書、料理、テレビ視聴などの活動を識別することができる。研究チームは、これらのスペースの中で、既知の動作を行う人間によって生成された無線信号でシステムをトレーニングした。そして、そのトレーニングを通じて得た知識を利用して、全く新しい場所で新しい人間が行う動作を識別できるようにすることができた。

研究者たちは、このRF-Diaryシステムがビデオベースのモニタリングよりもプライバシーをより効果的に保護できるだけでなく、実際にはより正確であることも発見した。つまり、対象者は暗い場所にいるときや、物陰で視覚的なチェックが行えないときでも、個人の活動内容ラベルを正確に識別できた。全体として研究者たちは、彼らのシステムが家庭内で行われる30の活動に対して、90%以上正確にその動作を識別できることを発見した。

このテクノロジーは、公共の介護施設だけでなく、エイジング・イン・プレイス(年齢・所得・能力に関係なく、自分の家や地域で安全・安心・快適に暮らしていくこと)に役立つ。なぜなら1人暮らしの高齢の親族をサポートしたいと考えている家族たちが、最新の状況を知るための手段として利用できるからだ。

バイタルサインや一般的な動きも監視できるため、MIT CSAILチームによって開発されたこのシステムは、リソースが限られている介護施設だけでなく、物理的距離の確保が安全で責任ある行動の前提条件となるCOVID-19時代の、介護支援と遠隔モニタリングにも役立つ包括的なソリューションになるかもしれない。現在、チームは、システムを一般販売にむけて商品化するためのステップとして、実際の現場で使えるように準備をしようとしている。

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カテゴリー:セキュリティ

タグ:MIT

画像クレジット:MIT CSAIL

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(翻訳:sako)

Rocket Labは驚異的な回復力で早ければ8月27日に商用打ち上げを再開

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、7月4日の打ち上げ失敗でペイロードを失ったものの、驚異的な復活を遂げ、わずか8週間で次なる商用専用ミッションの打ち上げウィンドウを設定した。ニュージーランド現地時間で8月27日午後3時5分から12日間となる。

7月末、Rocket Labは、1カ月にわたる内部調査と事故原因の特定を行った後、打ち上げ事業の再開に欠かせないFAA(米連邦航空局)の認可を得た(未訳記事)ことを明らかにした。原因は、それまで問題なく作動していたが、なぜか厳密かつ慎重なテストを受けていなかったひとつの部品にあった。Rocket Labの創設者でCEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、製造工程の比較的単純な変更によって問題は軽減でき、現在のElectron(エレクトロン)ロケットの部品の改良も可能になると話している。

Rocket Labがこの問題解決に迅速に対応し、打ち上げスケジュールを再開できた理由には、この問題の性質も関係している。エラーは早期に発生し、Electronロケットのエンジンを安全に停止させたことで、目標の軌道に到達できなかった。だが、ロケットは爆発を逃れ、いかなる危険な事態にも至らなかった。つまりそのことが、エンジン停止後も、失敗の原因となった問題のデータを楽に取り出せるようにしてくれたわけだ。

他社の場合、打ち上げ失敗から立ち直るまでには、もっと長い時間がかかる。SpaceX(スペースエックス)は、2016年、Facebook(フェイスブック)のインターネット衛星を搭載したのFalcon 9(ファルコン・ナイン)の打ち上げ直前の事故から、正常な打ち上げスケジュールに戻るまで4カ月を要した。ただし、先に説明したとおり、失敗の種類はまったく異なる。

とは言え今回の件は、お金を払ってくれた顧客に、苦い体験からわずか1カ月後にサービスを再開できるよう設定されたRocket Labのモデルの回復力と柔軟性を示した。この事故が、ブースター回収により部分的に再利用可能なロケットの開発を遅らせることにはならない。

画像クレジット:Rocket Lab

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(翻訳:金井哲夫)

月着陸船開発のispaceが30億円調達、新着陸船プラットフォームを公開

数年以内に民間月着陸船の月面投入を目指しているスタートアップのひとつ、ispace(アイスペース)は、シリーズBラウンドで30億円を調達した。2022年と2023年に計画している打ち上げまでに商用着陸船の開発資金の継続にあてる。資金調達の報告に伴い、この日本のスタートアップは、新たなデータプラットフォーム事業も発表した。これは、同社が月面で収集するデータを活用し、他の企業、宇宙機関、研究機関などに、それらが計画する独自の月面ミッションや、ゆくゆくは月の商用開発に役立つ情報に基づく基盤を提供するものだ。

280万ドルのシリーズB投資は、IF SPV1号投資事業組合(Incubate Fund運営)主導によるもので、宇宙フロンティアファンド(トヨタ、みずほ銀行などを含む同リミテッドパートナーによるファンド)、高砂熱学工業、三井住友海上火災保険からの資金も含まれる。現在までに同スタートアップは135億5000万円を調達した。この資金はまた、HAKUTO-R着陸船の大型版の開発にも使われる。これは、同社の3番目以降のミッションで使用される予定だ。

ispaceが進める月面データ事業は、「Blueprint Moon」(ブループリント・ムーン)と呼ばれ、月面や月周辺での人類の活動への投資の拡大を見越している。これまで、宇宙の商用化は地球の周回軌道環境に集中してきたが、NASAによる連続的な月ミッションの計画を始め、月周回軌道を巡る宇宙ステーションや恒久的な月面での有人活動計画により、世界中の他の宇宙機関の関心や投資が拡大している。

ispaceは、すでにその月着陸船計画の支援に数多くの戦略的民間パートナーを集めている。高砂熱学工業は、将来のミッションで独自の電気分解技術の月面テストを行う予定だ。三井住友海上火災保険は、月保険製品を開発し、将来の民間月ミッションの保険を引き受けることにしている。Blueprint Moonでは、将来月面で独自に収集する情報の他に、すでに公開されている月のデータも利用し、他の企業や政府機関が、将来、同様の事業の立ち上げ、研究、探査が行えるよう手助けする。同時にこれは、より意欲的な打ち上げに今後も集中できるよう、短期的な収益を同スタートアップにもたらすことにもなる。

画像クレジット:ispace

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(翻訳:金井哲夫)

Airbnbが全世界で「パーティー」を全面禁止、最大収容人数は16名に制限

Airbnb(エアビーアンドビー)は同プラットフォーム経由で登録した未承認のパーティー開催を制限する規約を準備していたが、米国時間8月20日の決定は最大限に厳しいものだった。全世界であらゆるパーティーやイベントが禁止される。これには、最大収容人数16名という制限も加えられ、新ルールは「直ちに発効し、別途通知するまで永久に有効」であると同社は説明している。

Airbnbは、これまでも「未承認のパーティー」は常にルール違反だったことを指摘した。ただしこれまでは家の大きさや近隣の状況に応じて、ホストが自身の判断でAirbnb経由で小規模なパーティーを開くことは許されていた。

Airbnbは規約変更を伝えるブログ記事で、新型コロナウイルスによる世界的パンデミックとソーシャルディスタンスの必要性が、グループの集まりに関わるルール変更に至った理由の一つであり、パーティー会場としての利用を推奨するフラグを検索機能から削除したことを説明した。同時に、ホスト宿泊者ともに、新型コロナウイルス予防のための地域保険機関によるガイドラインに従うことを要求するポリシーも追加された。ガイドラインは、「実質的にパーティーやイベントを禁止するのにちょうどよかった」と同社は言った。

Airbnbによると、責任ある安全な行動を推奨することで十分であると当時は考えられていたが、地域のガイドライン変更によって、同プラットフォーム上の一部の人々が、掲載リストをバーやクラブもどきに利用していることがわかった。このため新たな全世界でのパーティー禁止に至った。これは「地域住民の健康にとって最善の利益」を優先するものだ」。

具体的には、ガイドラインは今後の予約でパーティーを明示的に禁止するとともに、16名の収容人数制限を加えた。Airbnbは、同プラットフォームを利用して予約を受け付けているブティックホテルや類似の施設のために、何らかの例外措置を検討している。また、宿泊ユーザーに対しては、パーティールールの説明と、規則に違反した場合に法的措置をとる可能性があることついて通知する準備を進めている。

Airbnbは最近同プラットフォームを通じて予約された施設で起きた殺人事件については言及していない。2月にカナダ・トロントで3名が殺害(Global News記事)され、昨年のハロウィンに起きたカリフォルニアの銃撃事件では5人が死亡(USA Today記事)した。2019年10月のその事件がきっかけで当時Airbnbは「パーティーハウス」禁止を実行し、2月の事件がさらなる措置の要求を呼び起こしていた。

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タグ:Airbnb

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Blue Origin主導の開発チームが有人月着陸船の原寸大エンジニアリングモックをNASAに納入

Blue Origin(ブルー・オリジン)とその「ナショナルチーム」のメンバーであるLockheed Martin(ロッキード・マーチン)、Northrop Grumma(ノースロップ・グラマン)、Draper(ドレイパー)が、有人月着陸船のフルスケールエンジニアリングプロトタイプ(Blue Originプレスリリース)をNASAに納入した。NASAはこのプロトタイプの検査とレビューを進め、Artemis(アルテミス)計画の月ミッションに、最終的に利用する最終機体を作製するための準備を整える。

これによりBlue Originの有人着陸船は、テキサス州ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターでテストを受ける準備が整った。このモックアップは実際に機能するわけではないものの、例えばBlue Originが製造予定の下降モジュールやロッキード・マーチンが製造予定の上昇モジュールなど、計画されている着陸船システムのフルサイズのコンポーネントも組み込まれている。モックアップ全体の高さは40フィート(約12.2m)弱だ。

このモックアップにより、乗務員と相互作用するテストとシミュレーションを可能になる。テストとシミュレーションを早期に開始することで、Blue Originとそのパートナーは最終的に使われる着陸船を開発する際に計器とコンポーネントのレイアウト、キャビンからの窓越しの視認性、座席や出入り口などを含む、設計上のさまざな観点に対する貴重な洞察を得ることができる。

モックアップの設計を活用できるのと同時に、シミュレーションによって宇宙船の多くの要素の設計に役立つ情報を得られる。どちらもBlue Originとナショナルチームが手掛けていることで、宇宙船をあたかも使用しているような状況を生み出すことでのみ収集できる情報はたくさんある。コンピューターによるシミュレーションや過去の教訓だけから得られない情報も多いのだ。

Blue Originとそのナショナルチームは、NASAから最初の有人着陸システム(HLS)の契約を勝ち取った3社のうちの1つだ。今後も同チームは、このエンジニアリングモックアップの具体化を続け、開発が進むにつれて、最終的な生産モデルにさらに近付けるための要素を追加していく。最終的には、次の米国人男性と初の米国人女性を2024年までに月面に着陸させるという野心的な目標のために、NASAをサポートする。

画像クレジット: Blue Origin

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(翻訳:sako)

スコットランドの宇宙港を規制当局と政府が完全承認、年間12回の打ち上げが可能に

The Northern Times(ザ・ノーザン・タイムズ)の記事によると、スコットランドで初めて計画されていた宇宙港が完全に承認され、建設と運用が進められることになった。この施設は、サザーランドの北部、北大西洋に突き出た半島の上に作られる。ここは、英国初の再利用可能軌道ロケットの開発を目指すOrbex(オーベックス)のロケット打ち上げ施設となる。

この承認には、大量の書類を提出する必要だった。それには、地元規制当局とスコットランド政府に向けた完璧な環境アセスメントも含まれている。完全な承認とは、建設が開始でき、今後数年のうちにここからロケットを打ち上げられる道筋が出来たことを示す。

英国内からロケットを打ち上げられるようになれば、この地域で急速に発展しつつある民間宇宙産業の大幅な拡大が見込まれる。Orbexなどの地元サプライヤーによる小型衛星の打ち上げ事業が始まれば、英政府はロケット打ち上げ能力を手に入れるだけではない。先日、米国の打ち上げ企業が英国の施設を使ったロケットの打ち上げを認可する協定(未訳記事)を両国は取り交わしている。つまり、このスコットランドの発射場には、国際ミッションや大規模なグローバルビジネスを確保する可能性があるというわけだ。

The Space Hub Sutherland(ザ・スペース・ハブ・サザーランド)と呼ばれるこの宇宙港は、英宇宙局からの経済支援を受けることになっているが、比較的小さな施設で、打ち上げ台は1基、制御センター、2.5キロほどの道路を含めても、全体の広さは4ヘクタールほどだ。それでも、次世代の小型軌道ロケットには十分なスペースがある。小型ロケットは小型衛星の運用を専門に設計されているため、SpaceX(スペースエックス)のFalcon 9(ファルコン9)などの既存の民間ロケットのための発射場とは異なり、ずっと小さな施設で事足りるのだ。
画像クレジット:HIE
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(翻訳:金井哲夫)

米海洋大気庁が成層圏中の微粒子の調査にWorld Viewの高高度気球を利用

高高度の気球を上げるサービスを提供しているアリゾナ拠点のWorld Viewが、米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration、NOAA)とのパートナーシップで、地球の成層圏に関する研究データの収集を手伝うことになった。成層圏は地球の大気圏の第二の層で、地域にもよるが、地表からおよそ7〜19kmの範囲の高度にある。

NOAAは小型の計器を上空に送って、成層圏の大気中微粒子、いわゆるエアロゾルを測定する。それを調べることによって、成層圏の大気層とそこに含まれるオゾンの両方、およびそれらに人間が与える影響が紫外線放射の伝送に及ぼしている影響、そして、そこに起きている化学反応が地上の人間に与えるリスクなどを、より良く理解できるようになる。

World Viewの気球「Stratollites」は、これらの計器を1万7000m以上の上空で、数週間の調査期間中保持する。従来のNOAAの調査は、気象気球や航空機に乗せたセンサーを使うことが多く、今回のような長期的なデータ収集には向いていない。人工衛星もよく使われるが、成層圏に置いた計器から高精度のデータを得るには適していない。

NOAAがデータ収集にWorld Viewの気球を使うとどうなるのか。同庁によると、これまでの気象気球は1年の飛行でおよそ11日ぶんのデータを集められるが、World Viewの気球は1回の飛行で40日ぶんのデータが得られる。

World ViewとNOAAの最初の飛行は来年に実施され、集めたデータは6カ月後に研究用に一般公開される。それが同庁の標準的なスケジュールだ。

画像クレジット: WorldView

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Boston Dynamicsの四足歩行ロボの医療版「Dr. Spot」は新型コロナ患者のバイタルサイン測定に役立つ

新型コロナウイルスについて衛生機関が絶えず言ってきたアドバイスは「ウイルスにさらされた可能性のある人との接触を可能な限りなくす」というものだ。しかしこれは病院では難しい。医療関係者は適切な医療を提供するために一定の時間ごとに患者の体温や血圧などのバイタルを計測しなければならない。しかしマサチューセッツ工科大学(MIT)、ブリガム・ウイミンズ病院、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)などのコラボレーションによって、現場のヘルスケアワーカーが直接患者に接することなくこれらバイタル情報を計測できるようになるかもしれない。

発表された論文の中で、MITの研究者はBoston Dynamicsの四つ足イヌ型ロボットのカスタマイズバージョンである「Dr. Spot」を、コンタクトレスのバイタルサイン計測装備としてどのように開発したか説明している。Dr. Spotにはタブレット端末が取り付けられていて、医師や看護師は「フェイストゥーフェイス」で患者とやりとりしながら検査できる。この遠隔診療の超ローカル版は医療従事者の新型コロナ接触リスクを減らすだけでなく、個人用保護具の使用を大幅に減らして最も必要とされるときのためにとっておくのにも貢献する。

Dr. Spotは皮膚温、呼吸数、心拍、血中酸素飽和度などのバイタルサインを一度に測定できる。これらバイタルサインは患者の新型コロナ感染の進行状況を判断するときに医療者が追跡する重要な指標だ。研究目的でDr. Spotは病院に配備されたが、計測とセンサーの精度を証明するためにボランティアのいくつかの項目を測定しただけだ。

この取り組みはDr. Spotを実際に展開したり、あるいは臨床研究における似たようなシステムの可能性を証明するための研究にすぎない。しかし結果は有望だ。リモートでのバイタルモニタリングは新しい概念ではない。ただ、これを実現するための他のシステムの多くが、遠隔での患者のバイタルサイン測定を行う実際の場所を確保する必要がある。一方、Dr. Spotは現存する病院やクリニックにフレキシブルに展開できるかもしれない。

画像クレジット: MIT

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(翻訳:Mizoguchi

インド初の地球観測衛星スタートアップが5.3億円を調達、最初の打ち上げを2020年後半に予定

バンガロールを拠点とするPixxelが、2020年後半にインド初の地球観測衛星の打ち上げを目指している。ソユーズロケットが予定しているミッションに同乗する。創業後およそ1年半の同社の動きは速いが、インド時間8月19日に同社は、その動きをさらに加速するために500万ドル(約5億3000万円)のシードラウンドを発表した。ラウンドはBlume Ventures、Lightspeed India Partners、growX venturesが主導し、多数のエンジェル投資家が参加している。

これはPixxelの最初の外部資金調達ではない。2019年にはTechstarsやその他の投資家から、プレシード資金として70万ドル(約7400万円)を調達している。しかし、今回の調達はビジネスのためのかなり多額の資金を得ることになる。スタートアップはそれを使ってチームを成長させ、地球観測衛星群の開発に引き続き資金を投入することを計画している。

目標は、2022年までに30台の衛星で構成されるこの衛星群の配備を終えることだ。同社のすべての小型衛星が軌道に乗れば、Pixxelネットワークは世界中を相手にしたイメージング機能を、毎日提供できるようになるだろう。スタートアップは、自社のテクノロジーは既存の地球観測衛星と比較した場合、はるかに高い品質のデータを提供できること、そしてPIxxel独自のディープラーニングモデルによる分析を用いて、地球規模で起きる可能性のある大きな問題や現象の特定や、予測さえも可能になるように設計されていることを主張している。

Pixxelのテクノロジーは、非常に小さな衛星(基本的には大型冷蔵庫のサイズ)にも依存しているが、既存の大規模な画像衛星ネットワークでも配信が難しいような非常に高品質の画像を連続して提供する。スタートアップの創業者であるAwais Ahmed(アワイス・アーメド)氏とKshitij Khandelwal(シュディチ・カンデルワル)氏の2人は、学部最終年度の途中で会社を設立した。創業チームの2人は、2019年にロサンゼルスで、TechstarsのStarburst Space Accelerator(スターバースト・スペース・アクセラレーター)プログラムに参加している。

カテゴリー:宇宙

タグ:Pixxel インド

画像クレジット:Pixxel

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(翻訳:sako)

これなら買える、子どもサイズのテスラModel Yが約1万円で登場

あなたが私と同じように、投資の失敗続きでフルサイズのTesla(テスラ)を買うお金がないなら、Radio Flyerの新製品はまさにそんな私たちのためにある。新製品はModel Yの縮小版(全長66cm)で18歳以下の子ども用だが、小さい頃にかえってこれに乗り、子どもに負けないぐらいの声で「ブルルーン!」と叫ぶことは十分にできる。投資といえば、Fyre Festivalでは大損したが、そのうち絶対取り返すつもりだ。

「My First Model Y」と名づけられたこのモデルは、テスラのデザインスタジオとRadio Flyerのプロダクトチームのコラボによるもの。本物のModel Yにはないライドオンバージョンで、しかしクラクションはあるし、実車ではアップグレードオプションである黒いホイールがあり、機能的なステアリングホイールもある。お値段は99ドル(約1万400円)だ。トリムレベルは1つしかない。

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Radio Flyerとテスラの最初のコラボレーションはTesla Model S for Kidsだった。今回のModel Yには、そのときと違ってバッテリーがない。動力は、子どもが足で蹴ることだ。おかげでとても安くできたし、低年齢の子どもも遊べる。

自分の1998年型トヨタ・カムリのリアウィンドウに油性ペンで「Tesla」と落書きするぐらいなら、むしろこっちを買った方が楽しいだろうね。

カテゴリー:モビリティ

タグ:Tesla Radio Flyer

画像クレジット: Radio Flyer

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Skyroraがアイスランドの移動式発射場から小型デモロケットを打ち上げ

宇宙開発スタートアップのSkyrora(スカイローラ)は米国時間8月16日の日曜日、アイスランドからSkylark Microロケットのテスト打ち上げに成功し、ロケットは26.86kmの史上最高高度を達成した。約4メートルの準軌道ロケットは、数日前に設置されたアイスランドのランガネス半島の移動式発射場から離昇した。

Skylark Microは、2023年に打ち上げを開始する予定の軌道小型ペイロード打ち上げロケットであるSkyrora XLの準備のために利用されている。アイスランドにおける今回の打ち上げの目的は、同社の移動発射モデルの柔軟性を実証することに加えて、Skylark Microに搭載され最終的にはSkyrora XLにも搭載予定の電子機器や通信のテストを行うことだった。

Skyroraは2020年6月にも、スコットランド沖の小島からSkylark Microを打ち上げている。しかし、同ロケットは約6kmしか上昇しなかったため、今回の最高高度への挑戦は大きな成功だ。このミッションには2段式ロケットの両ステージの回収の試みも含まれており、分離してパラシュートを展開し海に落下したが、捜索中ではあるもののまだどちらのステージも見つけられていないと、同社は明かしている。

別の場所から迅速に打ち上げられる能力は、今回のテストのもう1つの重要なデモンストレーションである。これは多くの小型ペイロード打ち上げスタートアップ企業の需要に応える、大きなメリットとなる可能性がある。さらに政府や軍といった顧客が、即応性の高い打ち上げサービスプロバイダーに求めている重要な機能でもあるが、もちろんSkyroraが最終的に導入を望んでいるSkyrora XLのような大型ロケットを開発するためには、大幅にスケールアップする必要がある。

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カテゴリー:宇宙

タグ:Skyrora

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがこれまでで最大規模となる約2000億円を資金調達

米国時間8月18日に米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、SpaceX(スペースX)は新たに19億ドル(約2000億円)を調達した。最初にReutersが報じている。以前、SpaceXが資金調達中だとBloombergが報じており、今回の調達でSpaceXのポストマネーバリュエーションは460億ドル(約4兆8000億円)になると予想していた。

まだ未公開企業であるSpaceXにとって、今回のラウンドはさほど驚きに値するものではない。Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるこのロケット打ち上げ会社は2020年初めから資金調達を模索していた。しかし投資家たちからの強い需要を受けて資金調達の規模を拡大した、とBloombergは先週報じている。

今回、募集枠を上回る申し込みがあったようだが、ラウンド参加者については情報は明らかになっていない(Bloombergの報道ではFidelity Investmentsが最大の出資者とされているが未確認だ)。このところの一連の成功を考えると、SpaceXは投資家から巨額出資を引き出すのに絶好の状況にある。

一連の成功には、米国からの打ち上げとしては初となる民間企業による有人宇宙飛行ミッションが含まれる。宇宙飛行士が乗り込んだDemo-2が2020年5月にフロリダから打ち上げられ、国際宇宙ステーションに2カ月滞在したのち宇宙飛行士は今月初めに地球に帰還した。このミッションの成功は、SpaceXが地球と国際宇宙ステーションの間の輸送サービスを定期的に提供できることを意味する。そして民間ツーリストや研究者ら向けの商業宇宙フライトサービスの提供にもかなり近づいた。

また、同社の宇宙船開発も順調で、今月プロトタイプの短いテストフライトを成功させている。加えて、NASAと米政府から打ち上げサービスでいくつかの複数年契約を獲得している。

同社は現在多額の資金を必要とする時期にあり、今回のラウンドもそうした理由によるものだ。巨大な衛星コンステレーションStarlinkの展開にも取り組んでおり、Starlinkの運用が始まればインターネット接続が難しいエリアに住んでいる人々に商業・家庭用のブロードバンドインターネットサービスを提供する。ちょうど8月18日朝、SpaceXはStarlink衛星58基を打ち上げたが、世界中をカバーするという最終目標を達成するにはまだ多くの衛星を打ち上げる必要がある。

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SpaceXがStarlink衛星の打ち上げに成功、Falcon 9ロケットの再利用記録も達成

カテゴリー:宇宙

タグ:SpaceX イーロン・マスク Demo-2 NASA Starlink 資金調達

画像クレジット:NASA/Bill Ingalls / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Bluetooth SIGが新型コロナ濃厚接触者通知をスマートウオッチや健康トラッカーで利用可能にする仕様を策定中

アップルとグーグルが共同で作成したスマートフォンベースの新型コロナウイルス向けの接触者通知システム(ENS)は、世界中の保健機関による包括的な接触追跡の取り組みを支援する素晴らしい取り組みだ。しかし、新型コロナウイルの世界的な感染蔓延は、Bluetoothの仕組みが決められたときに誰もが想定していなかったものだった。そこでBluetooth Special Interest Group(SIG)は、ENS技術の利用範囲を拡大するため、ウェアラブルデバイスとスマートフォンを連動させることでENSを利用可能にする新しい仕様の作成に取り組んでいる。

具体的には、手首に装着したスマートウォッチや健康トラッカーのようなデバイスであっても潜在的な濃厚接触を追跡し、新型コロナウイルスに感染した可能性のある対象者に通知を提供する各種システムを利用できるようになる。Bluetooth SIGは、対象機器をウェアラブルに拡大することで、一般的にスマートフォンを所持していない人、つまり、幼い子供や児童、介護施設にいる高齢者などがENSによる通知を受けられることを目指す。

この新しい仕様が完成し、Bluetoothの標準仕様として組み込まれれば、それがどのように役立つかは容易に理解できるだろう。学校では、例えば体育の授業に戻ったときに潜在的な濃厚接触を追跡するために、シンプルで安価なBluetooth対応のウェアラブルの使用を義務付けることができるかもしれない。

この仕様がいつ、どのようにして策定・展開されるかはまだわからない。しかし、Bluetooth SIGによると新仕様の初期ドラフトを「今後数カ月のうちに」メンバーがレビューできるようにする予定とのこと。このグループには、アップル、マイクロソフト、インテルなどを含む強力なメンバーが名を連ねており、提案された技術は以下のインフォグラフィックに示されているように、個人のプライバシー保護を維持しながら、アップルとグーグルは既存の濃厚接触者追跡プラットフォームにウェアラブル端末を組み込めるようになる。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

SpaceXがStarlink衛星の打ち上げに成功、Falcon 9ロケットの再利用記録も達成


SpaceX(スペースX)は宇宙からのインターネット接続を目指すStarelink衛星の11回目の打ち上げに成功した。これにより58基のStarlink衛星を追加し、トータルの衛星数は600以上となっている。ペイロードには地球観測衛星Planet(プラネット)3基も含まれていた。またFalcon 9のブースターの再利用回数も6回目と新記録となった。

東部時間8月18日午前10時31時分にケープカナベラル空軍基地内のSpaceX発射施設から打ち上げられた。ブースターは洋上でSpaceXのドローン着陸船「Of Course I Still Love You」に無事着陸した(Twitter投稿)。回収の成功によりSpaceX は自らが持つ再利用記録を更新した。このブースターは今後さらに再利用回数を伸ばすかもしれない。

今回の打ち上げでは、4回目のStarlink衛星打ち上げで洋上回収されたフェアリングを整備して再利用している。全体としてSpaceは創設者でCEOである Elon Musk(イーロン・マスク)氏が目指す「ロケットシステム全体の再利用」という目標に大きく近づいたことになる。この目標が達成されれば衛星打ち上げコストは劇的に下がるはずだ。

Starlinkネットワークについても、2020年中に米国とカナダの一部地域でベータサービスを開始するという目標に向かって着実に前進している。最近のPCMagの記事によると、 インターネット接続速度テストサイトのOoklaがStarlinkサービスを計測したところ満足できる接続速度が出ていたという。これはおそらく既存の衛星を社内のみ利用モードでテストした結果だろう。

今回のミッションにはカーゴベイを覆うフェアリングの洋上回収も含まれ、SpaceXの回収船であるMs. ChiefとMs. Treeが用いられた。SpaceXのツイートによれば、Ms. Treeがフェアリングの一方をキャッチした(未訳記事)。2分割のフェアリングの他方は海中に沈んでしまったようだが、今後引き上げて再利用可能だ。

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SpaceXがStarlink衛星打ち上げでFalcon 9ロケットの再利用記録更新に挑戦
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SpaceXが初めて2つのフェアリングの回収に成功、再利用で1回の打ち上げにつき約6.4億円節約に

カテゴリー:宇宙

タグ:SpaceX Starlink Falcon 9

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXがStarlink衛星打ち上げでFalcon 9ロケットの再利用記録更新に挑戦

SpaceX(スペースX)は、米国時間8月19日火曜日の米国東部夏時間午前10時31分(日本時間8月19日午後11時31分)に最新のStarlink衛星を打ち上げる予定だ。これはStarlinkにとって11回目のミッションで、同社のブロードバンドインターネット衛星58機と、SpaceXの顧客であるPlanet(プラネット)のSkySats衛星3機が含まれる。

Starlinkのミッションはインターネットサービスがほとんどない、または劣悪な地域の顧客に、低遅延で高速なインターネット接続を提供するというもので、スペースXが取り組んできた計画の中でも重要なものだ。さらに今回のミッションは、スペースXのロケット再利用プログラムを推し進めるという点でも意義がある。

現在のミッションで飛行するFalcon 9の第1段ブースターは2018年に1回、2019年に2回、そして2020年にすでに2回と計5回飛行している。そして今回は、同ブースターにとって6回目の打ち上げとなる。これはSpaceXにとって、そして再利用可能なロケットにとっての新記録となる。また、大西洋に浮かぶ「Of Course I Still Love You」と名付けられたドローン着陸船を使って、ロケットステージを再び着陸させようとしている。

このFalcon 9ブースターが以前に飛行したミッションのうち、3回はStarlinkのものであり、これはスペースXが独自ミッションを行う際に再利用かどうかがいかに重要であるかを示している。衛星画像解析サービスなどを行うPlanetとのペイロードの共有は運用コストをある程度相殺されると考えられるが、Starlinkが実際に顧客に向けた有料サービスを開始し、収益を上げ始めるまで、現時点では大部分がSpaceXが負わなければならないコストとなる。

今回のミッションでは、以前のミッション(4回目のStarlinkの打ち上げ)で使用されたFalcon 9のフェアリング(ロケットの上部にあるペイロードを保護するノーズコーン)の再利用も含まれる。フェアリングの再利用はSpaceXがミッションのコストを軽減するためのもう1つの方法であり、これまでもその回収プロセスを進めてきた。なお、フェアリングのコストは約600万ドル(約6億3000万円)である。

打ち上げのライブ配信は、実際の打ち上げウィンドウの約15分前となる米国東部夏時間午前10時16分(日本時間午後11時16分)に開始される。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXは今週の打ち上げで「ロケット再利用6回」の記録更新を狙う

米国時間8月18日、SpaceX(スペースX)はStarlink(スターリンク)衛星の新たな打ち上げを行う。この通信衛星の量産バージョンにとって10回目の打ち上げだ。今回、Falcon 9(ファルコン9)のミッションには、58基のStarlink衛星に加え、地球観測衛星Planet(プラネット)3基を搭載する。これはこのブースターロケット自身6回目の飛行であり、SpaceXにとって従来の記録を破る歴史的な出来事だ。

今回のミッションに使用される第1段ブースターは、これまでにSpaceX Starlinkミッションを3回、およびSpaceXの顧客であるTelstar(テルスター)とIridioum(イリジウム)の衛星を運ぶ2回のミッションに使用された。さらにSpaceXは、今回もブースターを回収するために軟着陸させる予定であり、成功すればこれも同社にとって新記録となる実績だ。

SpaceXの目まぐるしいほどのStarlinkの打ち上げは、ロケット再利用を推進する素晴らしい機会を同社に与え、打ち上げコスト削減に役立つことが期待されている。StarlinkはSpaceX自身のプロジェクトであり、通信衛星の「星座」を作るための運用コストを下げるためにもコスト削減は特に重要だ。Starlinkが提供するブロードバンドインターネットサービスはベータテストが始まろうとしている段階であり、会社に収益をもたらすまでにはまだかなりの時間がかかる。

もう1つ、SpaceXが再利用の限界に挑戦しているのが「フェアリング」と呼ばれるロケット部品の回収だ。ロケットが搭載する貨物を保護する役目を果たすフェアリングの、2つに分裂した両方を船の甲板から伸びたネットを使って回収する。そして7月のStarlinkの打ち上げでは、初めて2つのフェアリングの回収に成功した。フェアリングを再利用することで、1回の打ち上げ当たり最大600万ドル(約6億3000万円)のコストを削減できる可能性がある。

このミッションでは、顧客であるPlanet社との貨物ライドシェアリングも行っており、これも自社衛星の打ち上げにかかる出費を軽減する手段の1つだ。Planetなどの顧客が、Starlink打ち上げの相乗りにどれだけの費用を負担しているのかSpaceXは明らかにしていないが、打ち上げにかかる費用全体のかなりの部分を削減できるに違いない。

今回のミッションは、SpaceXがStarlinkインターネットサービス開業というゴールに一歩近づき、ロケット再利用プログラムの新境地の開拓を継続するものであることに加え、同社にとって100回目の打ち上げ(Falcon 9は92回目)になる。これはそれ自体大きな節目であり、新記録ずくめで記念すべきSpaceXの1年を象徴している。

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画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

CRISPR遺伝子編集の発見者ダウドナ教授のスタートアップが新Casタンパク質の特許ライセンスを得た

遺伝子編集のスタートアップ、Mammoth BiosciencesがCRISPRテクノロジーを利用した新しいタンパク質に関する独占的ライセンスをカリフォルニア大学バークレー校から得た。

このライセンスは研究開発から商用化まで極めて幅広い分野をカバーしておりMammothにとって知的所有権のポートフォリオの極めて大きな拡大となる。ライセンスを取得したCasɸタンパク質はCas9と似た働きでサイズはほぼ半分にすぎない。Cas9はDNAのCRISPR座位付近にあり、CRISPRと共同して遺伝子切断タンパク質として機能する。CAS9の発見はバークレー校のCRISPR研究の本格化の出発点となった業績だった。

CRISPRではサイズは非常に大きな要素となる。サイズが小さいほど合成も容易で標的遺伝子への付着位置も正確になる。Casɸファミリーのタンパク質が優れていると考えられるのはそういう理由だ。遺伝子編集における切断位置の正確性、生体細胞への伝達効率、またmultiplex処理と組合わせて複数の標的配列を同時に切断する性能の向上などが期待されている。

7月にScienceに査読を経て掲載された論文がCasɸの発見とCRISPR遺伝子編集において期待される優秀性を述べている。 Casɸはバクテリオファージ中に発見されたタンパク質だが、バクテリオファージは細菌に感染して自らの複製を大量に作り出すある種のウィルスだ。「バクテリオファージ」というのはラテン語由来で「バクテリアを食べるもの」という意味だ。

CRISPRを利用した遺伝子編集テクノロジーにおいて正確性の向上は現在もっとも熱心に追求されている分野だ。Cas9をベースにした遺伝子編集では「失中」つまり意図しない遺伝子編集が起こる可能性があり、これを減少させるために様々なアイディアが提出され研究が続けられている

Mammoth Biosciencesの共同ファウンダーの一人はバークレー校のジェニファー・ダウドナ(Jennifer Doudna)教授だ。ダウドナ教授はCRISPRの共同発見者だ。MammothのIPポートフォリオにCasɸが追加されたことは将来の商用化を踏まえて同社のビジネスに非常に大きな意味を持つはずだ。

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滑川海彦@Facebook

NASAとSpaceXは公式有人宇宙飛行の初号機打ち上げを10月23日に定める

NASAとSpaceXは、SpaceXのCrew Dragon(クルー・ドラゴン)宇宙船を使った公式としては初の有人ミッションである「Crew-1」の具体的な日程を設定した。Crew-1は、Shannon Walker(シャノン・ウォーカー)氏、Victor Glover(ビクター・グローバー)氏、Mike Hopkins(マイク・ホプキンス)氏、野口聡一氏の4人の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ。これは、NASAによるCrew Dragon宇宙船の開発・試験プログラムが認証されたあとに、最初の定期的なミッションとなる。

Crew Dragonの最終テストは、5月30日にBob Behnken(ボブ・ベーケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏の二人の宇宙飛行士を乗せて打ち上げられたミッション「Demo-2」だった。両氏は今月初めに地球への帰還に成功してそのミッションを完了したが, 技術的にはまだCrew DragonとSpaceXのFalcon 9ロケットのための認証プロセスの一部だった。今回は正式に有人宇宙飛行の認定を受け、Crew-1から始まる通常ミッションの運用が始まるわけだ。

NASAは、9月下旬の時間枠を議論していたが、結局のところ10月下旬に目標を定めることになった。10月下旬には、ロシアからISSへ向かうソユーズ宇宙船の接近と、現在ISSに滞在しているクルーのローテーション終了による帰還が許可されるという。なお、Crew DragonとDemo-2ミッションのデータと認定基準の完全なレビューはまだ実際されていない。実際にはかなり計画どおりに氏進んだと思われるが、本当にそうであったことを確認するために、NASAとSpaceXのスタッフによって子細にチェックされる。

このデータのレビューがうまく進んで10月にCrew-1が飛ぶなら、Crew-2は来春に打ち上げられ、さらに4人の宇宙飛行士がCrew-1の宇宙飛​​行士とともに、鼈の科学と宇宙ステーションの運用のプロジェクトに備えることが可能になる。

画像クレジット:NASA

[<a target="_blank" href="https://techcrunch.com/2020/08/14/nasa-and-spacex-target-october-23-for-first-operational-astronaut-launch/“>原文へ]

(翻訳:TechCrunch Japan)

がんの標的治療の開発を改善するMission Bioが約75億円を調達して技術のスケールアップを目指す

カリフォルニアのMission Bioが、シリーズCで7000万ドル(約74億6000万円)を調達した。このラウンドはNovo Growthがリードし、Soleus Capitalと前からの投資家であるMayfield、Cota CapitalおよびAgilentが参加した。Mission Bioはこの資金を使って同社のTapestriプラットフォームを拡大していく。このプラットフォームは、単一細胞マルチオミクス解析の技術における同社の取り組みを利用して、標的化された精密ながん治療の最適化を支援している。

Mission Bioの単一細胞マルチオミクス解析プラットフォームは、治療産業の中でもユニークだ。臨床試験中のさまざまな治療を使用した場合の遺伝子型(完全に遺伝的なもの)と表現型(遺伝やその他の要因に由来する形質)両者への影響を観察できるという点で単一細胞に的を絞ることができる。Mission BioのTapestriは同一細胞内のDNAとタンパク質の変化の両方を検出可能で、バルク分析(細胞群をまたいだ分析)ではコントロール不能な他の要因の影響を除外することができるため、標的とする治療法の効果判定において重要だ。

2012年にUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)で行われていた研究からスピンアウトして創業されたMission Bioは、今日まで1億2000万ドル(約127億9000万円)の資金を調達している。同社の技術はAgios、LabCorp、Onconova Therapeuticsなどさまざまな大手製薬企業や治療技術企業で利用されてきた。またUCSFやスタンフォード、スローンケタリング記念がんセンターなどのがん研究センターでも利用されている。

Mission Bioの技術は、血液のがや腫瘍などの治療のための臨床試験の最適化を支援するだけでなく、ゲノム編集の検証にも利用できる。それは、CRISPRをベースとする治療アプリケーションの台頭により、次の数年間で大きな成長が見込まれる可能性の大きな市場だ。

画像クレジット: Mission Bio

カテゴリー:ヘルステック

タグ:Mission Bio がん治療 資金調達

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa