UAEが三菱重工業のH-IIAロケットで初の火星探査機打ち上げに成功

アラブ首長国連邦(UAE)は三菱重工業のH-IIAロケットの打ち上げにより、初の火星探査ミッションの初期段階をクリアした。日本の種子島宇宙センターから7月20日に打ち上げられたロケットは、2021年2月までに火星に到達し軌道上で1年(地球では687日分)を過ごし大気圏のデータを収集するUAEの周回衛星「Al Amal(希望)」を搭載していた。

これは、7月中に予定されている3回の火星探査ミッションのうちの最初の打ち上げであり、中国からの火星探査衛星と着陸機の打ち上げが今週に、そしてNASAの探査車であるMars Perseveranceのミッションが7月30日に予定されている。

UAEのAl Amalは、火星大気の測定という科学ミッションを担う。これは火星が表面に液体の水を持つ温かい世界から、現在のように信じられないほど寒く、岩だらけで乾燥した惑星になった経緯を科学者がよりよく理解するためのものだ。打ち上げが成功した後、UAEは火星探査機と地上局との通信が成功し、数カ月間におよぶ飛行のスタートが良好であることを報告した。

これはUAEにとって初めての深宇宙探査への参入であり、2014年に宇宙機関を設立したばかりの国としては驚くべき成果だ。UAEはこれまでに2回人工衛星を打ち上げているが、今回が初の軌道外のミッションであり、探査機はコロラド大学ボルダー校の大気・宇宙物理学研究所を含む研究チームとの提携の下、わずか6年の歳月で開発された。

火星への探査機の打ち上げ時期が重なるのには、理由がある。このタイミングは、宇宙船が火星とランデブーするための相対的な距離が最短になるからだ。そしてこれは約2年に一度しか起こらないので、もし時期を逃せば次の打ち上げに機会まで長く待つ必要がある。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXが初めて2つのフェアリングの回収に成功、再利用で1回の打ち上げにつき約6.4億円節約に

SpaceX(スペースエックス)は、Falcon 9(ファルコンナイン)の打ち上げに使用された2つに分裂したフェアリングを両方とも回収したと、CEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は発表した(Twitter投稿)。フェアリングは、ロケットが地球の大気圏を抜けて宇宙に到達するまでの間、積荷を保護するためのカバーで2つに割れるようになっている。これまでSpaceXは、落ちてくるフェアリングを特別なネットを備えた2隻の船で回収しようと何度も試みていたが、成功したのは今回が初めて。しかも片方だけでなく、両方とも回収できた。

SpaceXは、できるだけ部品を再利用することで打ち上げコストを削減しようと努力を重ねている。逆噴射で地上に軟着陸するロケットの第1段(ブースター)を開発したのも、整備を行い、次の打ち上げにまた使えるようにするためだ。今ではこの方法は洗練され、信頼性もずいぶん上がってきた。SpaceXは、今回の打ち上げを含め、これまでに役割を果たしたブースターの着陸を57回成功させている。

しかしフェアリングの回収は、これまで失敗続きだった。海に落ちた片方だけを回収し、それを再利用することもできた。だが、これまで船で回収できたのは半分だけで、最初は2019年の6月のSTP-2ミッションで、もう1回は2020年1月のミッションでのことだった。

SpaceXは、フェアリングを回収して再利用すれば、1回の打ち上げにつき最大で600万ドル(約6億4000万円)を節約できると見積もっている。そうなれば、再利用型ブースターの上にさらに大きな節約分が上乗せされる。落下速度を制御しながら軟着水させたフェアリングを海中から回収する方法に比べて、ネットで捕まえる方法は、落ちてくるフェアリングを船のネットが確実にキャッチできた場合、時間、労力、コストそして人的な危険を大幅に削減可能で、フェアリングの再利用がずっと効率化される。

フェアリングには、Falcon 9のブースターのように着陸を制御できる推進装置は備わっておらず、パラシュートで落下速度を弱める仕組みになっている。そのため、行き先をコントロールできないフェアリングの落下地点を正確に予測して、船をそこに配置することが非常に重要になる。しかしマスク氏とSpaceXには、ロケットのフェアリングをどうしても正しく回収したい別の理由がある。マスク氏は以前、このフェアリング回収船を、地球に帰還したCrew Dragon(クルー・ドラゴン)のカプセルの回収に転用する可能性に触れていた。今は海に落下したカプセルを回収する方式をとっているが、船でキャッチできれば、宇宙飛行士と回収要員のリスクを低減することができる。

関連記事:SpaceXが韓国の通信衛星を7月21日6時から打ち上げ、NASAの宇宙飛行士を運んだブースターを使用

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画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:金井哲夫)

宇宙セクターへの投資は新型コロナパンデミックにも関わらず堅調な兆しを見せる

専門投資家のSpace Capitalからの最新の四半期レポートによれば、現在の新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに起因する明らかな影響にも関わらず、全体的にみれば宇宙スタートアップへの投資は予測されたほどは影響を受けなかったことが示されている。特に彼らが追跡している「アプリケーション」分野への関心が高まっている。これは宇宙での観測機器ならびに通信設備によって可能になるデータレイヤーを扱うソフトウェアを開発する企業たちが関わる分野だ。

Space Capitalの第2四半期のレポートでは、インフラストラクチャへの投資が第1四半期と比べて85%減少したと報告されている。実際、有名な衛星オペレーターであるOneWebの倒産と売却などをはじめとする、合併や倒産による撤退の事例も目にした。

レポートによれば、ソフトウェアレイヤーに対する良いニュースは、この四半期に関連企業に対して53億ドル(約5690億円)の投資が行われたことだ、この中には米国内での45億ドル(約4830億円)も含まれている。また、VCの資金調達額全体は、2020年上半期と2019年上半期を比べると、実際には前年比で4%増加している、と同社は指摘している。ただし第2四半期同士に比較では2019年に対して23%の減少となっている。

全体として、2020年の宇宙セクターは、これまでに112回のラウンドで株式ベースの投資が121億ドル(約1兆2980億円)に達している、またアーリーステージ企業へは67回のラウンドで合計3億300万ドル(約325億円)が投資されている。それらの多くがシードまたはシリーズAのラウンドだった。

Space Capitalによって追跡されるアプリケーションレイヤーには、基本的にそのソフトウェアがGPSとPNT(Positioning Navigating Timing system)ベースのナビゲーションに大きく依存している企業が含まれていることは指摘しておこう。例えばWaymo(ウェイモ)のような大企業は、自身の自動運転技術を活かすためにそうしたデータを必要としている。

GPSは間違いなく最大かつ最も成功した宇宙ベースのインフラ投資の1つであり、新しいビジネスの構築、およびレガシー産業の更新と破壊という側面で、かなりの成果を上げ続けている。宇宙へ向かう投資の多くがGPSの後継技術を求めている。必ずしも特定の機能というわけではなく、広く持続的な影響を持つ宇宙ベースの技術が求められているのだ。

Space Capitalからの完全なレポートは以下から読むことができる。

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画像クレジット:Aleksandar Georgiev / Getty Images

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(翻訳:sako)

SpaceXが韓国の通信衛星ANASIS-IIの打ち上げに成功、ブースター再利用間隔の新記録を達成

SpaceXがまた打ち上げに成功した。今回はロッキード・マーティンとその顧客である韓国のミッションだ。積荷は韓国初の専用軍事通信衛星のANASIS-IIで、同国が国家安全保障に用いる。

ANASIS-IIを載せたFalcon 9は米国東部夏時間7月20日午後5時30分(日本時間21日午前6時30分)にフロリダ州ケープカナベラルから離昇した。使用した第1段ブースターロケットはSpaceXが過去2カ月以内に使用したもので、その時のDemo-2ミッションではNASA宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏を国際宇宙ステーションに運んだ。これはブースターロケットを回収して再利用するまでの時間の新記録だ(これまでの記録は2020年2月のStarlink第4回打ち上げに使用したブースターの63日)。

本日のブースターは前回の飛行からわずか51日しか過ぎておらず、2週間近く記録を更新した。この第1段ブースターが初めて使われたのは、SpaceX史上最も重要ともいえる、初めて人を乗せて打ち上げた日であったことを思うと、この記録はさらに印象的だ。ほんの数年前まで、SpaceXは大型の積荷に向けてブースターを構成することが多かった。今後の有人飛行のために、ブースターをさらに修理調整することが考えられる。

この打ち上げミッションでは、ブースター再突入の試みが行われ、大気圏に戻った後に燃焼制御を行ってSpaceXの回収船への軟着陸を目指した。これも予定通り進行したため、2回のミッションで飛行したこのブースターが再び飛び立つ可能性がある。SpaceXにとってこれが57回目のブースター着陸の成功だった。

さらに本日のミッションでは、打ち上げの際に衛星を保護するために用いられ積荷が宇宙に到達したあと切り離されるフェアリングの回収も行われた。SpaceXはこの部分をライブ中継しなかったが、状況の詳細は後ほど提供される予定だ。

搭載されたANASIS-IIが目標軌道に無事到達したことも確認された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

オクスフォードと武漢の新型コロナワクチン候補の試験結果は良好、人体にも安全

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行拡大を防ぐために世界各国で努力が続けられているが、有望な結果が2つ現れている。1つはオクスフォード大学、他は国家重点研究開発計画の資金援助による武漢における研究だ。公表された情報によれば、初期段階の結果ではあるが双方のワクチン候補ともに新型コロナウイルス感染症を引き起こす原因となるウイルスに対する抗体値を高める結果を示している。これらのワクチン候補は人体に投与しても安全だったという。

オクスフォード大学の研究(The Lancet記事)は世界のワクチン開発の中でも最も重要であり、開発が進んでいるものの1つだ。研究対象の1077人は全員が過去にSARS-CoV-2との感染が確認されていない18歳から55歳までの健康な成人だった。この点は非常に重要だ。被験者は実験者側もどの薬剤が投与されているか知ることができないようにランダム化された二重盲検法とよばれる方法で試験を受けているためだ。プラセボ(偽薬)としては既存の髄膜炎ワクチンが用いられた。その結果、ワクチンの追加接種を受けたグループを含めて参加者の100%がウィルスを抑制する中和抗体反応を示した。

参加者の一部は「痛み、発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、倦怠感などの軽い副作用」を示した。いずれも深刻なものではなく、処方箋なしに薬局で購入できるアセトアミノフェンのような鎮痛剤によって緩和される程度のものだった。参加者の状態ははワクチン投与後28日間モニターされた。

この結果により、オックスフォードの研究者は参加者を拡大したフェーズ3の治験に進む 。これはワクチンの認可とこれにともなう大量生産、医療現場へ流通に進む前の重要なステップだ。従来のワクチン実用化は極めて時間のかかるプロセスだったが、今回のオクスフォード大学の開発は驚くほど迅速だった。

一方、中国における研究(The Lancet記事)では18歳以上の603名を対象とし、508名に絞り込んでワクチンないしプラセボを接種した 。報告によれば参加者は副作用を示さなかった。こちらのプログラムもフェーズ3の治験に進む可能性が高い。

2020年7月初め、米国の製薬企業であるModerna(モデルナ)はフェーズ1治験の結果を発表し、実用化を目指して進むと発表している。しかしこのテストは参加者が18歳から55歳までの45人と小規模であり、また今後の大規模な治験でモニターする必要がある重大な副作用の可能性も示されていた。規模が大きく深刻な副作用が報告されていない点でオックスフォードと中国のワクチン研究は非常に有望なようだ。

もちろんこれらは初期段階の治験であり、多くの推測をするには早すぎる。例えば、新型コロナに感染して回復した患者から採取した血清が抗体値のアップにどれほど役立つのかなどまだ研究は充分に進んでいない(NPR記事)。新型コロナウイルスに対する有効なワクチンの実用化まで、関連する人間の免疫システムの研究が今後も続けられる必要があるだろう。

画像クレジット:Pedro Vilela / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXが韓国の通信衛星をまもなく打ち上げ、NASAの宇宙飛行士を運んだブースターを使用

SpaceXは韓国初の軍事通信専用衛星を打ち上げる。発射予定日時は7月20日午後5時 EDT(日本時間21日午前6時)。打ち上げ時間枠は4時間近くにわたり、午後8時55分 EDT(日本時間21日午前9時55分)まで続くため、SpaceXが実際に打ち上げる可能性のある時刻の範囲はかなり広い。

このミッションに使用されるFalcon 9ロケットは、先ごろNASAのDemo-2ミッション(SpaceXのロケットが初めて宇宙飛行士を乗せた歴史的ミッション)に使われた第一段ブースターを搭載している。5月30日に実施されたその打ち上げでは、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)、Doug Hurley(ダグ・ハーリー)両宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)に無事送り届けられ、8月1日に予定されているDemo-2の帰還飛行の準備を進めている。

このミッションでは、第一段ロケットをSpaceXの回収船 “Just Read the Instructions”を使って大西洋で回収する予定だ。

ライブストリーム中継は発射約15分前に始まる予定なので、時間枠の開始時に打ち上げられれば午後4時45分 EDT(日本時間21日午前5時45分)頃にライブになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Espresso DisplayはMac・PCで使える素晴らしいポータブルディスプレイ

豪州に本拠を置くハードウェアスタートアップのEspresso Displays(エスプレッソディスプレイ)は、比較的目立たないが機能的な参入品が多く、デザインと品質の向上だけでなく追加機能もあり競合とは一線を画す。Espresso Displayはポータブルで使えるよう、簡易な収納性、マグネットマウンティング、最新のMacとも互換性のあるUSB-Cケーブルによる接続、内蔵スピーカー、2.5mmオーディオ出力を備え、さらにオプションでタッチ機能をつけられる。

基本機能

画像クレジット:Darrell Etherington

Espressoのディスプレイには、13.3インチモデルと15.6インチモデルの2つのサイズがある。ディスプレイ自体は非常に薄く軽量で、厚さは0.2インチ(約5ミリメートル)弱、重さは2ポンド(約0.9キログラム)未満だ。ディスプレイパネルはタッチセンシティビティーを備えており、Macにタッチ機能を有効にするドライバーをインストールすると連携して動く。

ディスプレイはガラスとアルミニウムでできており、非常に高品質に感じられ、MacBookとも合う。側面には2つのUSB-CポートとミニHDMIポートがあり、オーディオ出力用の2.5mmミニステレオジャックがある。USB-Cポートの1つは電源専用、もう1つはディスプレイ接続用で、最近のMacでは可能なケーブル接続のみによる電力供給もサポートしている。

Espressoは4K解像度で、オプションの折りたたみ式ディスプレイスタンドに固定する磁石を利用した独自の組み立てシステムを備える。従来のスタンドやマウンティングアームに取り付けるためのVESAマウントアダプターもある。運ぶときにディスプレイを保護するソフトケースも含まれている。

画像クレジット:Darrell Etherington

同社は現在、Indiegogo(インディーゴーゴー、クラウドファンドングサイト)でディスプレイ生産に必要な資金を調達しているが、大量生産に近づいており、テスト用に筆者に送られたユニットは間違いなく完成品のように感じられた。13インチバージョンは現在249ドル(約2万7000円)だが、一般販売時の小売価格は320ドル(約3万4000円)になる予定。ディスプレイ15の小売価格は350ドル(約3万7000円)となる予定だ。

デザインとパフォーマンス

Espresso Displayは、実際のパネルの画質と色だけでなく、筐体の品質と材料の両方に関しても競合他社より優れている。筆者は最近Amazon(アマゾン)で購入した15.6インチのポータブルディスプレイを使っている。場所を変えて作業したいときにデスクトップを拡張する満足度の高いソリューションではあるが、演色性とプラスチック製の筐体は明らかに平均以下だ。

Espressoのガラスと金属の組み合わせは、筆者のMacBook Proと相性が非常に良いと感じる。Apple(アップル)の出力に合わせて色を調整することはできないが、組み込みのプロファイルは概ね快適で、かなり正確な色が出せる。明るさも十分で、文字や画像を4K解像度と優れたコントラストで鮮明に映し出す。

画像クレジット:Darrell Etherington

また、筆者がAmazonで購入した一般的なディスプレイとは異なり、Espresso Displayの場合、MacBook Proを使うときコードは1本で足りる。一般的なディスプレイではUSB-C接続だけでは十分な電力が得られないため、アダプターを接続する必要がある。Espressoはこの点でも問題なく動作し、付属のUSB-Cケーブルを使用すれば、外出先でも本当にコード1本ですぐにつなげられる。

Espressoはタッチ機能も備えており、グラフィックス作業などに便利。小さなスタイラスが付いているが、単なるWacomの代替品だと考えないでほしい。ペン入力用ではなくマルチタッチ操作用のため筆圧感度は足りない。タッチ機能はマグネットスタンドの(物理的な)柔軟性によってさらに使いやすくなっている。マグネットスタンドは裏返しにして低角度のモードにすると、ディスプレイを使った作業が楽になる。スタンドを上げてiMacのような向きにしたり、文書やコーディングの際に縦向きにするのも簡単だ。

画像クレジット:Darrell Etherington

スタンドはEspresso Displayの魅力の大きな部分だ。どこでも柔軟に作業できる。携帯性のある優れたスタンドソリューションを備えたポータブルディスプレイは他にはまだない。折りたたむと、間違いなく薄いトーストよりも小さい。

4K、60Hzで、ディスプレイパネル自体のパフォーマンスは優れている。備え付けのスクリーンのみでは実現できない、はるかに広い画面を獲得する優れた方法を提供する。

結論

ポータブルディスプレイ市場はますます競合品が増えているが、Espresso Displayは高品質の素材と独自のマグネットマウンティングソリューションにより際立っている。既存の多くの製品は、影響度は異なるがそれなりに妥協やトレードオフを必要とする。Espresso Displayは薄く、軽く、耐久性があり、簡単で柔軟なマウンティングオプションと真のシングルケーブル接続により、優れた画像を提供する。

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カテゴリー:ハードウェア

タグ:ガジェット ディスプレイ レビュー

画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:Mizoguchi

SpaceXとNASAが宇宙飛行士を乗せたCrew DragonのISS出発を8月1日に予定

SpaceX(スペースX)のCrew Dragon(クルードラゴン)カプセルは、5月の歴史的な最初の有人打ち上げの後、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングされており、現在帰還準備中だ。NASAはISSでの作業の必要性に応じてISSに宇宙船と宇宙飛行士を滞在させる計画だったが、最初のCrew Dragonの有人宇宙飛行ミッションを帰還によって締めくくる時は近づいている。

NASAジョンソン宇宙センターの広報担当者であるKyle Herring(カイル・ヘリング)氏は8月2日を帰還予定日だとツイートしたが、確定するまでにすべきことはたくさんあると明らかにした。NASAはその後、8月1日出発、8月2日着水を予定していると公式に発表した。

宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏はISSに到着以来、数々の科学やメンテナンスの作業に参加した。ベンケン氏は4回の宇宙遊泳にも参加し、3回はすでに終了、残り1回は来週の予定だ。へリング氏は最後の1回を、具体的な帰還計画の前にやってくる重要な仕事だと語った。今回が最初となるCrew Dragonの有人飛行は実際にはまだデモミッションであり、ISSの正式なオペレーションによるクルーの打ち上げではないが、NASAはベンケン氏とハーレー氏が通常のステーションのオペレーションに関われるよう延長を要請した。

帰還はSpaceXとNASAのCommercial Crew(コマーシャルクルー)コラボレーションの全体的な成功にとって、5月の打ち上げと同じくらい重要だ。SpaceXの有人宇宙船が宇宙飛行士を確実に宇宙ステーションに運ぶだけでなく、再び安全に帰還できることの重要性は明らかだ。

帰還プロセスの中でCrew Dragonカプセルは、ベンケン氏とハーレー氏が搭乗した状態で、離脱と帰還時の飛行操縦を自動で行う。SpaceXが設計およびテストしたパラシュートシステムで地球の大気に突入し、降下を遅らせる。うまくいけば宇宙飛行士は大西洋にソフトランディングし、SpaceX専用の回収クルーが宇宙飛行士を回収する。

帰還のためには気象条件が整う必要がある。このDemo-2ミッションでは、風速の許容範囲がかなり厳しい。とはいえ、8月は着水予定地域の風が比較的穏やかになる傾向があるため、それが助けになるはずだ。

画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:Mizoguchi

Astraがアラスカ州での打ち上げを前に軌道ロケットの地上燃焼試験を完了

進行中の新型コロナウイルスによる数々の遅延に続き、少人数の打ち上げ会社が宇宙にロケットを送り込む能力を見せつけようとしている。Astra(アストラ)は軌道ロケット「Rocket 3.1」の地上燃焼試験を完了した。これによりアラスカ州へ旅立つ準備が整った。同州コディアック島では、軌道に向けたへ初めての飛行の打ち上げを予定している。

当初Astraは、DARPA(国防高等研究計画局)の打ち上げチャレンジに答えるためのゴールを目指す会社としてスタートした。そのチャレンジでは、互いに数週間以内の期間をおいて軌道に乗せられるロケットを作ることが各社に要求された。当初は別の射場からの予定だったが、後に宇宙基地の異なる打ち上げ台からとなった。チャレンジはAstroがバージョン3.0ロケットを軌道に乗せるのに失敗したあと終了し、賞金は得られなかった。

同社はその後、3世代のロケットの開発と試験、打ち上げを行ったが世間の注目を浴びることも情報公開することもなかった。このスタートアップは高さ約12mの小型ロケットを、カリフォルニア州アラメダの自社工場で作っている。DARPAチャレンジ前のTechCrunchのインタビューで、Astraの創業者兼CEOのChris Kemp(クリス・ケンプ)氏は「自分たちのアプローチは迅速かつ大規模な製造に焦点を当てており、ほかのロケット会社よりも失敗許容率が高い」(未訳記事)と説明した。

一種の大量生産的アプローチには明らかな利点があり、Astraの目指す打ち上げシステムは他社よりも移動が容易で世界中ほぼどこにでも展開できる。積荷を小さくすることで迅速な輸送が可能になり、失敗した時でも巨大のGPS静止衛星を失ったほどの大きな損失を負うことがない。

Rocket 3.1は、これまでの世代の本格的アップデートと異なりRocket 3.0のマイナーチェンジと思われる。AstraによるとRocket 3.1は現在コディアックに向かっており、現在同社は打ち上げ日時の最終決定を検討中で、次の大規模テストの日は来週早々にも確定する見込みだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロボティック外科手術を目指すActiv Surgicalが約16億円調達

ボストン拠点のスタートアップであるActiv Surgical(アクティブ・サージカル)は、ARTIS Venturesがリードしたベンチャー投資ラウンドで1500万ドル(約16億円)を調達した。本ラウンドにはLRVHealth、DNS Capital、GreatPoint Ventures、Tao Capital Partners、Rising Tide VCも参加した。この調達によりActiv Surgicalは5月にマーケット投入したソフトウェアプラットフォームを引き続き開発を続けて性能アップを図る。

Activ SurgicalのActivEdgeプラットフォームは、実際の手術中にリアルタイムでデータを集めるために同社が開発したセンサーを搭載した外科用手術具から収集されるデータを使っている。データはさらに、機械学習やAIベースの視覚化の開発に使われる。これらは術中ミスの発生を防ぎ、最終的に患者の術後を改善するのに役立つ。

同社の主な目的は、サージカルビジョンにテクノロジー的なイノベーションをもたらすことだ。サージカルビジョンはまだ、70年以上前から使用されている蛍光染料のような手法に主に頼っている。Activは外科医が自分の目では見ることができないものについてリアルタイムにビジュアルな知見を提供するためにコンピュータービジョンを活用したいと考えている。そして最終的にはそうしたビジュアル知見を、次世代のコラボレーティブな手術ロボットや、ゆくゆくは完全自動のロボ手術を可能にするために活用するという青写真を描いている。

ActivSightはActivEdgeプラットフォームが提供する同社初のプロダクトとなる。既存の腹腔鏡と関節鏡の手術器具に取り付けることができる、小型で接続している画像用器具だ。同社は現在、このハードウェアに関し今年第4四半期までにFDA(米食品医薬品局)から使用許可を取得することを目指して取り組んでいる。また、米国でのパイロット事業で8つの病院と協業している。

同社はこれまでに3200万ドル(約34億円)を調達した。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

レーザー照射による水中Wi-Fiシステムをサウジの研究チームが開発

サウジアラビアにあるキングアブドゥラ科学技術大学(KAUST)の研究チームが、水中で使用するる双方向ワイヤレスデータ接続(KAUSTウェブサイト)を開発した。確固としたワイヤレスデータ接続は、携帯電話サービスから家のWi-Fiネットワークまで、私たちの日常生活の中で基本的に当たり前のものになっているが、水のような媒体の中で高速のワイヤレス接続を実現するのはとてつもなく難しい。実現すれば、水中のデータセンターを常に地上のネットワークインフラと接続できる極めて価値の高いものになるだろう。

KUASTの研究チームは、モデムの役割を果たすRaspberry Piなどシンプルな既成のコンポーネントでこの難題に挑んだ。既存のIEEE802.11ワイヤレス規格との互換性も持たせたため、安定していて信頼性のある接続で広範囲のグローバルなインターネットに簡単に接続できた。

Raspberry Piは標準のワイヤレス信号をレーザーで光学的に送信できる信号に変換するために必要な計算をする。信号は空中から海面のブイに届き、Raspberry Piで変換されて、青色と緑色のレーザーで情報を送信する。水中にある光レシーバーに向けて送信され、実際の最高転送速度は20mの距離で2.11Mbpsだった。

研究チームはこのシステムを使ってSkypeの通話とファイルの送受信を実行した。しかし性能を大幅に超えるレーザーを使用したため、Raspberry Piが焼き切れてしまった。チームは、この問題は専用の光モデムに交換することで解決できるだろうと述べている。このいわゆるAqua-Fiネットワーク技術を使う際のさらに大きな問題は、海流や水の動きによって水中で発生する光の変化に対応することだ。

このような制約を乗り越えるために、研究チームは強力なデータ接続ができる進路を低出力のレーザーで示し接続に失敗したら方向を再調整する2レーザーシステムなど、多くのオプションを検討している。最新のネットワークハードウェアでMIMOのアンテナアレイが使われているのと同じように、複数のレシーバーを並べてレシーバーを大きくすることもできそうだ。

画像クレジット:KAUST/Xavier Pita

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(翻訳:Kaori Koyama)

SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」のベータテストに関する詳細

SpaceX(スペースX)は、今週、Starlink(スターリンク)サービスのベータテストの参加希望者として登録した人たちにアドレス情報を要求したことから、同サービスの開始は近いと推察される。現在、Starlinkサブレディット(Reddit)からの最初のリーク(Business Insider記事)によって、ベータテストがどのように行われるか、そしてSpaceXが求める参加条件について少しだけわかってきた。

ハードウェアについて

Starlinkサービスでは、Starlink衛星群とのデータの送受信に使用する専用のハードウェアに加えて、「北の空がよく見渡せる」環境が必要となる。上の写真に示されたハードウェアは、SpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が以前「棒の先にUFO」と表現した小型の衛星アンテナだ。写真からは、普通の衛星アンテナと変わりないように見えるが、Starlinkサービスが提供した画像からは、大きさまでは判別できない。

Starlinkは、これらのハードウェアをベータテスターに無料で提供することになっているが、設置は各自の責任で行わなければならない。キットには、パラボラアンテナ用の電源、テスターの住居に個別に対応できるようデザインされた設置器具が付属する。ウェブサイトでは、このキットを設置する際に外部の業者に依頼してはいけないと強く忠告している。FAQには「空を十分に見渡せる場所でなければ良好な通信状態が得られない」とも書かれている。

既存の衛星インターネット・サービスプロバイダーは、接続を可能にするために使用場所にアンテナを設置するようにしているが、通常は設置業者がユーザーに代わって取り付けている。Starlinkのベータテストの後はその方向に進むだろうが、ローンチ前のテスト期間中は、なるべく人の目に触れさせたくないという意図が明らかに見てとれる。

サービスについて

Starlinkのサービス品質は、適正に接続できれば「良好」となるはずだが、同社のFAQには「安定しない」とも書かれている。なぜならSpaceXは、テスト期間中にリモートでソフトウェアの更新やその他のネットワークの最適化を実施するからだ。そのため同サイトの記述によれば「ゲームや仕事を目的とした」ソリューションには向かない。

またStarlinkは、テスト期間中はネットワーク上のあらゆる活動をモニターするが、海賊版データの不正ダウンロードや不正保存といった「違法活動」は明確に禁止し、そうした活動を理由にベータテストの参加を「保留または取り消し」できる権利を同社は保有していると明示している。

ユーザーは、いつでもテストの参加をキャンセルできる。また機器の取り付けに関しては、設置場所が適切で、安全に設置作業ができる環境であることを推奨している(アパートなどの共同住宅では参加要件を満たさないことがある)。

ベータテスターの責任

ベータテスターは、参加の際の詳細、例えばネットワーク速度や品質など、秘密を厳守しなければならないとStarlinkは言っている。また参加者には「定期的なStarlinkサービスのテストと評価の提出」に1日30分から1時間を確保することが求められる。評価の提出には、「アンケート、電話、電子メールそのたの方法」が用いられる。

さらにベータテスターは、ベータテストが終了したとき、または要請されたときに、Starlinkキットを必ず返却するように求めている(返送はStarlink着払い)。さらに同社は、テスターにクレジットカードまたは銀行口座の情報の提出を求め、わずかな手数料を徴収する。金額は確定していないようだが、設置時に1ドルから3ドル、その後は毎月となりそうだ。これは「SpaceXの注文および支払いシステム」をテストする目的で行われる。だが、テスト期間中のStarlinkサービスの利用、さらにハードウェアの貸し出しは無料だと明記されている。

Starlinkは、ベータテスター参加希望者に向けて、プライベートベータテストはこの夏に開始されると電子メールを送っている。ということは、機器やその他の必要なものはすでにテスターの元に送られていて設置準備が整っていると考えてもおかしくない。すべてが順調にいけば、同社は最初のサービス対象地域となるアメリカ北部とカナダでのオープンベータテストに拡大したいと考えている。来年、さらに多くの衛星が打ち上げられれば、サービス対象地域も広げられる。

画像クレジット:Starlink

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(翻訳:金井哲夫)

三井物産傘下のSpaceflightが衛星ライドシェア打ち上げ用の軌道輸送機を発表

シアトルを拠点とする衛星ライドシェアサービスプロバイダーのSpaceflightは米国時間7月15日、次世代軌道輸送機のSherpa-FXを発表した。この新しい輸送機は衛星ライドシェアロケットの打ち上げで複合ペイロードを展開するための宇宙船として機能し、基本的にはロケットが結合されたペイロードを展開する地点から各衛星の実際の目標展開軌道まで、ラストマイルの輸送を提供する。

Sherpa-FXは2020年12月に予定されているSpaceX(スペースX)のライドシェア・ミッションでの初飛行を予定している。同機の初飛行では、NASAのや南フロリダ大学応用工学研究所向けを含む、多くの異なる企業や組織からなる16機の小型衛星を運ぶことになる。

これは、SpaceXのようなプロバイダーによる契約ロケットからの一次ペイロード展開から、ペイロードの展開と管理のための次世代技術の開発と展開に特化した、SpaceflightsのSherpa-NGプログラムから生まれた最初の輸送機だ。1機のロケットに複数ペイロードを搭載することは打ち上げコストの削減には最適だが、衛星が実際に運用される軌道に確実に到達するには理想的ではないことから、ライドシェアビジネスがペイロード運用者にとって確実に機能するための重要なステップである。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は専用のライドシェアモデルをメインビジネスに採用しているが、単一の顧客向けに大規模なペイロードを配備する事業者と同様に、独自の軌道上の移動手段を持っている。SpaceflightはスペースXやロケット・ラボのような企業に必要な技術とサービスを提供し、1回の打上げでより多くの衛星の展開をサポートするという点で、より柔軟性と最適化を提供することを事業の目標としている。

Spaceflightは日本の三井物産に今年買収されたが、ビジネスは変更せずに米国本社から独立して運営を続けている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXの衛星通信サービスStarlinkがベータテスト参加希望者に住所の提出を依頼

SpaceX(スペースX)が準備を進めている広帯域低遅延のブロードバンドインターネットサービスのStarlink(スターリンク)がこのほどベータテストの参加希望登録者にメールを送った。このメールでは以前要求していた郵便番号に代わり、具体的な住所をテスト参加者に要求している。ネットワークの利用可能地域を正確に知るするためだ。

このメールは、SpaceXのStarlinkプライベートベータがこの夏に開始され、その後に「公開ベータが続く」ことを意味している。サービスに興味があり最新情報を受け取るためにサインアンプした人たちは、「ベータテストの準備ができ次第」通知される、とSpaceXのメールに書かれている。

SpaceXはサービスの公式スタートに向けて衛星群を拡大すべく、打ち上げを続けてきた。これまでStarlinkを利用したインターネット接続を実際に使った人はごくわずかで、SpaceXのファインダー・CEO Elon Musk(イーロン・マスク)氏(当然)と早期のSpaceX投資家だったSteve Juvertson(スティーブ・ジャーベットソン)氏が知られている。

これまでに、SpaceXは540基のStarlink衛星を打ち上げたが、うちいくつかは軌道を外れたり停止したり故障しており、全体では現在アクティブなのは500を超える程度だ。同社は8月までにあと3回の打ち上げ計画が確認されており、6月から延期された1回は今月中に実施される予定だ。

SpaceXは並行して、運行のための規制要件を満たすべく準備中で、カナダの郊外に接続を提供するために 同国の通信業者ライセンスを申請したのもそのひとつだ。同社は米国内でブロードバンド格差を縮めることのできる企業に向けた基金を受給する資格も持っているが、国から多額の資金を受け取るために必要な低遅延の実証を今週末に迫った期限までに実施できそうにない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

3MとMITが新型コロナを数分で診断できる安価な検査を共同開発

産業界とアカデミズム科学の強力な提携が重要なタスクに注力している。そのタスクとは、低コストでその場で結果がわかる新型コロナウイルス(COVID-19)検査の開発だ。化学産業のリーダーである3M(スリーエム)は、扱いが簡単で、大量販売・使用向けに安くで大量生産できる新型コロナの診断ツールを開発するためにマサチューセッツ工科大学(MIT)と提携した。

検査は研究段階にあり、化学エンジニアリングを専門とするMITのHadley Sikes(ハドリー・サイクス)教授がチームを率いる。サイクス氏のラボはタンパク質テストの成績を高める技術の開発にフォーカスしていて、これはつまり迅速で正確な結果を提供することを意味する。

3Mは大量生産向けのプロダクト製造における経験とともに、正体材料と正体処理工学の専門性で貢献する。最終目標はウイルス抗原を検知するテストを作ることだ。新型コロナでの使用が5月初めにFDA(米食品医薬品局)によって初めて承認されたテストだ。このテストではPCRベースの分子テストよりも早く結果がわかる。しかし偽陰性を示す可能性も分子テストより高い。それでも、現場ですぐに実施して数分で結果が判明するという性能は検査能力を拡大するのにかなり貢献する。特に、症状を有していないものの、もしかすると無症状なだけでウイルスを他人にうつすかもしれないというケースで有用だ。

3MとMITの新たなプロジェクトは、米国立衛生研究所が米国の検査体制を拡大できる開発に資金を提供するRADxテックプログラムの一環だ。最初の資金50万ドル(約5400万円)が3MとMITのプログラムに提供され、開発の成果が出ればさらに資金提供を受けられる可能性がある。

画像クレジット:3M

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(翻訳:Mizoguchi

自律型ドローンのスタートアップSkydioが約107億円を調達、初の商用ドローン「X2」を発売

SkydioがシリーズCのラウンドで1億ドル(約107億円)を調達した。ラウンドをリードしたのはNext47で、新たな投資家としてLevitate CapitalとNTTドコモ・ベンチャーズが参加、また既存の投資家であるa16z、IVP、およびPlaygroundらも参加した。新たな資金は、製品開発の迅速化と消費者向けアプリケーションだけでなく企業や公共部門向けドローン技術に市場開拓に充当される。またSkydioは、米国時間7月13日に商用利用向けに設計されたドローンであるX2ファミリーを発表した。

2014年に創業されたSkydioは、これまでに総額1億7000万ドル(約182億円)を調達し、消費者向けドローンを2機種発売している。どちらも人工知能技術による自律的なナビゲーション機能を有している。これはドローンが人や物体を追跡するだけでなく、木や送電線といった障害物などを回避できるというものだ。それにより、プロの撮影クルーがヘリコプターから撮ったような映像を、一般消費者市場で1000ドル(約10万7000円)足らずで提供している。

2018年に登場した初代ドローンであるR1(未訳記事)は、2499ドル(約27万円)だった。そのインテリジェンスと追跡能力は印象的で、その後のソフトウェアのアップデートや2019年に発売された現在でも注文可能な第2世代のハードウェアによって改良は進んでいる。

Skydioの新しいドローンプラットフォーム「X2」は企業向けで、2020年の第4四半期に出荷される予定とのこと。X2ドローンは360度のスーパーズームカメラとFLIR 320×256解像度の赤外線サーマルカメラを搭載し、バッテリー駆動時間は35分、最大航続距離約10kmとなっている。またドローン用のSkydio Enterprise Controllerもありタッチスクリーン、ハードウェアコントロール、そしてまぶしさを防ぐ保護フードを避けるための日よけフードがある。

コンシューマーからエンタープライズへの移行は、Skydioにとってとても理に適ったものだ。まず、コンシューマーの世界で賞賛を受けてきた衝突回避や容易な操縦性は、エンタープライズでもそのまま使える。同社によると、その衝突回避機能は精度が高く、相当な近接撮影が可能なので、リモートでのインフラや機器装置類の点検に適しているという。人が乗ったヘリでは、危険すぎてそれだけの近接撮影はできないだろう。

X2は、自身の真上180度を撮影できるので、橋の下部のような頭上にある構造物をさまざまな角度から調べるのに適している。これは従来のドローンでは難しかった。また赤外線撮影を利用すれば昼夜連続の観察も可能であり、目的物のヒートマップを記録することもできる。

Skydioは今後もコンシューマー市場にもサービスを提供していくだろうが、同社の短い歴史の中での変化進歩は、投資家にとってとても魅力的なようだ。最初は高価だが高機能で、限られた人しか手を出せないコンシューマー製品から、その後、高度な機能のまま買いやすい価格の製品を出し、そして今度は同社がその技術で実現した経済性を、はるかに利益を生む可能性があるエンタープライズ向けハードウェアとソフトウェアへ転換しているようだ。

画像クレジット: Skydio

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAとJAXAがアルテミス有人月面探査における協力で正式合意

NASAと日本は新しい協定に調印した(NASAリリース)。両国はISS(国際宇宙ステーション)における現在の協力を継続すると同時に、NASAのアルテミス計画に日本の宇宙開発機関であるJAXAが協力していく。

日本時間7月11日にNASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官と日本の萩生田光一文科相がリモート会議でそれぞれ協定文書に署名した。 この文書は共同声明(JEDI)の形式で、 ロボットおよび有人の月面探査を含むアルテミスプロジェクトにおける両国の役割を具体的に定めるプラットフォームとなるものだ。

日本はNASAのルナゲートウェイ構想に参加した国際パートナーの最初の国の1つで、その発表は2019年10月にさかのぼる。 これ以降、カナダをはじめとする多くの国と機関が同様の意向を表明している。カナダはISSで使用されているロボットマニュピュレーターであるカナダアームの3番目のバージョンを開発する。また欧州宇宙機関(European Space Agency)も参加する。

今回の協定は、これまでの合意を文書の形で正式なものとした。今後、両国はプロジェクトにおける役割分担などさらに具体的な部分を検討していくことになる。

日本は火星の衛星の探査を計画しており、最大の衛星であるフォボスのサンプルをロボットで採取し、地球に持ち帰ろうとしている。打ち上げは2024年の予定だ。日本のJAXAはすでに探査衛星であるSELENE(かぐや)を月周回軌道に乗せて各種の調査を行うと同時に高度な姿勢制御技術をテストしている。JAXAではSLIM(Smart Lander for Investigating Moon)と呼ばれる小型月着陸実証機の打ち上げを2022年に計画している。 これはJAXAとして初の月着陸ミッションとなる。

画像クレジット:NASA

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滑川海彦@Facebook

リモートからも脳のイメージング装置を利用できる技術で神経科学の深化を目指すKernelが約53億円調達

ロサンゼルスに拠点を置くバイオサイエンスのスタートアップであるKernelがGeneral Catalyst、Khosla Ventures、Eldridge、Manta Ray Ventures、Tiny Blue Dotらの投資家たちから5300万ドル(約56億7000万円)を調達した。これはKernelにとって初めての外部資金となるが、それでもシリーズCなのは創業者でCEOのBryan Johnson(ブライアン・ジョンソン)氏がこれまで5400万ドル(約57億7000万円)の資金をKernelに投資してきたためだ。ジョンソン氏は最新のラウンドに外部投資家たちとともに参加した。

今回の資金調達は、同社の脳の活動を記録する生体に負担を与えない非侵襲的な技術への「オンデマンド」アクセスをさらに規模拡大するために使われる。同社の技術は主に2つのアプローチあり、Kernelはそれらを別のプロダクトとして区別している。Fluxは脳内の中性子の集団的活動によって生じる地場を検出するもので、Flowは脳内の血液を測定するものだ。これらはいずれも研究者や医療従事者が脳の働きをモニターするときの重要な信号だが、これまでは侵襲的で高価なハードウェアを使用せねばならず、脳の手術が必要になることもあった。

Kernelの目標はその技術を広く普及することであり、「サービスとしての神経科学(Neuroscience as a Service、NaaS)」を提供している。それにより有料クライアントがリモートからでも脳のイメージングデバイスにアクセスできるようになる。2020年初めにKernelは、このプラットフォームを一般的な顧客にも提供することを発表している。

SFのように思えるが、この技術は実際に、これまで密室のような環境で行われていた極めて高価で、専門的だが被検者にとって危険でもあった技術を、オンデマンドで誰にでも利用できるようにする試みだ。これは、多くのヒトゲノム企業がビジネスや研究コミュニティのために、ヒトのゲノム配列決定の速度と利用可能性の進歩を利用して、同じようなことをしようとしているのと似ている。

ジョンソン氏の長期目標は、神経科学の分野での理解をより深めることだ。

「意識的なものと潜在意識的なものを問わず思考と感情を定量化できれば、理解や健康、人間の向上につながる新しい時代が訪れる」とジョンソン氏はプレスリリースで述べている。

確かに脳内部の働きは、多くの研究者にとって今だにその大部分がわかっておらず、特にそれらの働きが私たちの認識や感覚に行動にどのように反映されているかという点では謎が多い。Kernelのプラットフォームのようなものがあれば、もっと多くの人が脳の働きの背後にある科学を研究することが可能になり、神経科学のまだ解明されていない領域の説明を提供できるようになるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

イーロン・マスクが脳コンピュータインターフェイス企業Neuralinkの最新情報を8月28日に発表

イーロン・マスク氏は今週、Twitterで自身が2016年に創業した脳コンピューターインターフェイス企業であるNeuralink(ニューラリンク)の最新状況に関する報告を8月28日に行うと発表した。Neuralinkのインターフェイスは、人間が高度な人工知能に歩調を合わせるのを助けるという明確な目的に向けて開発されている。最後にNeuralinkからの情報が発表されたのはおよそ1年前のことだ。そのとき発表されたのは、外科手術ロボットを使って極細の糸を人間の脳に埋め込んで、外部のコンピューターユニットへ接続し、最終的には両者の接続をワイヤレスにして最大限の自由度と柔軟性を提供したいというビジョンだった。

2019年7月には、マウスだけでなく類人猿さえも使ったそのテクノロジーのテストを成功裏に実行できたことを公表した。そして、もしそのときのことを覚えているなら、同時に翌年、つまり2020年、今年には、人間の最初の被験者を対象にテストを実施すると発表していた。

共同創業者でCEOであるJared Birchall(ジャレド・バーチャル)氏が率いるNeuralinkは、サンフランシスコに本社を置き、カリフォルニア大学デービス校と共同研究を進めている。同社の当初の目標は、この技術を利用して患者の運動や日常機能に影響を与えている神経障害を緩和することだが、最終的には、コンピューティングデバイスと、思考の速度で相互作用できるように、人間を本質的に「アップグレード」することも狙っている。

マスク氏は、キーボードやマウスなどの従来の手段を介して思考を入力に変換するやり方が、いかに「無駄の多い欠落的なもの」であるかを一貫して指摘し続けており、人とコンピューター間のより緊密でより高精度な結合が、高度なAIが人間の知能の能力を追い越してしまうリスクを減らすことができると信じている。マスク氏は、制御されず規制もされない高度な汎用人工知能が、人類の存亡に関わるリスクをもたらすと彼が考えていること、そしてNeuralinkはその脅威に対する保護手段となることを意図していることを繰り返し表明している。

マスク氏とNeuralinkが、2019年に行った最後のアップデート以後進めてきた進捗がどのようなものかはまだわからないが、できれば人間を使った臨床試験に関する計画についての何かを耳にしたいものだ。マスク氏はまた、同社による最新情報発表日程とともに、Neuralinkの「ミッションステートメント」と呼ぶものを発表した。それは「If you can’t beat em, join em.」(打ち倒せない相手とは仲間になってしまえ)というものだ。

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(翻訳:sako)

Karma AutomotiveがEVプラットフォームの他社再販へ約110億円を調達

Bloomberg(ブルームバーグ)が報じたところによると、Karma Automotiveは外部投資家から1億ドル(約110億円)の資金を調達した。同社は2014年にWanxiang Groupに買収される前に倒産に直面していたFisker Automotiveの生まれ変わりだ。

Karma Automotiveは2019年に最初の電動スポーツセダン 「Revero」 を約500台出荷するなど、以前のFiskerよりも大きな進歩を遂げており、小売価格が14万ドル(約1500万円)前後の 「Revero」 の販売を継続するほか、高馬力の 「GTE」 バージョンやさらに上位顧客向けのスーパーカーの追加を検討している。

Karma Automotiveはまた、商用配送トラックのパートナーと交渉中であり、年内にプロトタイプを開発する予定だという。UPSやFedExのように宅配業者向けの配送車を模索している企業は数多くあり、参入者が殺到しているにもかかわらず、Eコマースの普及により複数のプレーヤーががこの分野で成功するチャンスがある。

Karmaは新規投資を活用し、他の自動車メーカーやOEMにも同社のEVプラットフォームを展開し、最終的には純粋なEVからハイブリッド燃料車へも拡大していくという。要するに、Karmaはあらゆる方法で収益化への道を切り開こうとしているようだが、それが賢明な戦略なのか、あるいは散漫な自暴自棄なのかは、時がたてばわかるだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter