さらに成長するインドのeコマースを動画やクリエイターの力でサポートするSimsimをYouTubeが買収

米国時間7月20日、GoogleがオーナーであるYouTubeは、ソーシャルコマースのスタートアップSimsimの買収を発表した。両社は買収の価額などを公表していないが、情報筋によると、買収に際してSimsimの評価額は7000万ドル(約77億円)ほどだった。

創業2年のSimsimは、本日の発表前までにおよそ1700万ドル(約18億7000万円)を調達し、2020年のシリーズBでは5010万ドル(約55億円)と評価されていた。

グルガオンに本社のある同社は、インドの小企業が、ビデオやクリエイターの力を活用してeコマースに移行する努力をサポートしている。その社名と同名のアプリは、プラットフォームとして各地の小企業や店舗、インフルエンサーと顧客を結びつける。

Simsimを初期から支援しているGood CapitalのRohan Malhotra(ロハン・マルホートラ)氏によると「特定のオーディエンスに的を絞って成長し、楽しい体験を提供して常連客になってもらい、信頼を築いて高額商品を買わせ、メッセージングを個人化してコンバージョンを促進するには、マイクロインフルエンサーの利用が最も効果的です。消費者対象のソーシャルプラットフォーム(Facebook、YouTube、Instagramなど)のような、広告を収益源とする経営がインドでは成り立ちにくいため、どうしても商取引を統合したプラットフォームになりがちです。インドで新たにインターネットユーザーになる人たちは、売り手が主導する対話的な体験を必要とし、この市場の慣行であるオフラインのコマースのネット版を求めることになります」という。

マルホートラ氏も買収の価額などは明かさず、またSimsimのCEOも米国時間7月19日に提出した買収に関する質問には応じなかった。

しかしSimsimの共同創業者であるAmit Bagaria(アミット・バガリア)氏とKunal Suri(クナル・スリ)氏、そしてSaurabh Vashishtha(サウラブ・ヴァシシュタ)氏は、共同声明で次のように述べている。「Simsimを始めたときのミッションは、インド中のユーザーがオンラインで簡単に買い物できるようにすることでした。そのためには、信頼されているインフルエンサーが作ったコンテンツのパワーにより、売り手やブランドが商品を展示し販売できなければなりません。今回、YouTubeとGoogleのエコシステムの一員になったことにより、Simsimのミッションをさらに強力に推進できます」。なお、バガリア氏とヴァシシュタ氏は以前、Paytmに在籍していた。

彼らによると「今後のSimsimを作っていく上で、技術や顧客へのリーチ、クリエイターのネットワーク、そして企業文化において、ここにまさるエコシステムは他にありません。YouTubeの一員になることが待ち遠しいし、世界で最も賞賛されているテクノロジー企業の中でSimsimを開発し続けていけるのは本当にうれしいことです」という。

YouTubeにとっては、このビデオストリーミングの巨人がインドの小企業と小売業を助けていくことにより、従来よりも強力な方法で新たな顧客にリーチできる。YouTubeのアジア太平洋担当副社長Gautam Anand(ゴータム・アナンド)氏が、ブログでそう述べている。

このビデオストリーミングサービスは、インドだけでも月間アクティブユーザーが4億5000万を超えるが、さしあたってSimsimを変える意図はなく、Simsimのアプリがそのまま使える状態を続ける。そしてアナンド氏によると「YouTubeのビューワーにSimsimをどのように見せていくか、そのやり方を検討したい」とのこと。

以前から、Googleはさまざまな形でインドに地歩を築く努力を続けているが、7月20日の発表はその最新の動きだ。これを含めてGoogleのインドへの投資は、向こう2年間で100億ドル(約1兆1000億円)に達する。Googleは他にも、インドのスタートアップGlanceとDailyHuntを支援しており、いずれもショートビデオのアプリだ。

「YouTubeには2500を超えるクリエイターがおり、サブスクライバーは100万を超えています。また、インドで最初にローンチしたYouTube Shortsの成功により、私たちはYouTubeの最良の部分をインドに持ち込むことにコミットしており、新世代のモバイルファーストのクリエイターたちがスタートしやすい環境を作って、クリエイターのコミュニティを大きくしていきたい」とアナンド氏はいう。

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画像クレジット:Simsim/YouTube

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クリエイターの作品発表を支援するnoteと「バーチャルマーケット」のHIKKYが提携、VRクリエイターの創作環境作りを加速

クリエイターの作品発表を支援するnoteと「バーチャルマーケット」のHIKKYが提携、VRクリエイターの創作環境作りを加速

「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションにクリエイターの創作活動を支えるメディアプラットフォーム「note」(Android版iOS版)を提供するnote(ノート)は7月20日、世界最大規模のVRイベント「バーチャルマーケット」を運営するHIKKY(ヒッキー)とのパートナーシップ締結を発表した。「両社がこれまで担ってきたことを連携させることで、VRクリエイターが創作をより一層楽しめる環境づくりに取り組みます」とのこと。

新型コロナの影響で直接人と接するコミュニケーションが減少する中、HIKKYのVRイベントは盛り上がりを見せ、2020年12月19日から2021年1月10日までの3週間開催された「バーチャルマーケット5」は、1000人規模のクリエイターが出展し、100万人を超える来場者数を記録した。

しかしその一方で、VRクリエイターがVR作品を作り、発表し、ファンと交流できるVR空間は不足している。そこで、クリエイターのコンテンツ発信の場として「創作の街」をインターネット上に展開してきたnoteは、「VRクリエイターの作品制作の背景やストーリーを発信する場としても利用しやすくする」ことでクリエイターとファンのつながりを深められると考えた。それがHIKKYの考え方と一致し、それぞれ共通の取り組みを加速する目的でパートナーシップ締結に至った。

このパートナーシップでの取り組みは、主に次の3つが挙げられている。

  • note proを利用した、HIKKY公式noteの開設:法人向けプラン「note pro」をHIKKYに無償提供し、HIKKYは「HIKKY公式note」を運営する。他の手段では語りきれないブランドメッセージの発信、企業の職務内容の紹介など、「noteでだからこそできるHIKKYの情報を発信」する
  • バーチャルマーケットとnoteの連動:バーチャルマーケット出展者紹介ページやブースに、クリエイターのnoteアカウントや個別記事をリンクさせ、背景やストーリーが伝わりやすい環境を作る。2021年8月14日から開催予定の「バーチャルマーケット6」から実施
  • VRクリエイター向け勉強会の開催:VRクリエイターを対象にnoteの活用法を紹介する勉強会を、両社で継続的に開催。第1回は7月30日20時からライブ配信

また、バーチャルマーケットの常設型ECモール「VketMall」で販売される商品を「note」の記事に埋め込めるようにして、商品とストーリーをシームレスにつなぐことなども検討している。

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フェイスブックがクリエイターを呼び込む約1100億円のボーナス報酬プログラムを発表

Facebook(フェイスブック)は、同社アプリのエコシステムにクリエイターを繋ぎ止めるための新たなボーナスプログラムを通じて、2022年末までに10億ドル(約1100億円)以上をコンテンツクリエイターに支払う計画を発表した。Facebookの創業者兼CEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、自身のFacebookページで「すばらしいコンテンツを提供してくれるクリエイターに報いる」ための新たな資金調達について初めて公表した。

同社は、FacebookとInstagram(インスタグラム)にまたがる一連の新しいボーナスプログラムを通じてクリエイターに報酬を支払う予定で、これらのプログラムは「季節ごとに変わり、時間をかけて進化、拡大していく」という。このボーナスプログラムは、2021年夏の後半にはInstagramアプリ内に、年内にはFacebookアプリ内に専用ハブが設置される予定だ。

Facebookは、Facebook上でインストリーム広告を有効にして動画を制作しているクリエイターに、最初の新ボーナスを提供する。また同社は、視聴者がストリーマーに投げ銭を送ってファン特典を得ることができる「Stars」システムによるボーナスも拡大していく。動画やゲームのライブストリーミングを行っているクリエイターは、2021年10月までの間、Starsを介して支払いを送った視聴者の数に応じて、毎月ボーナスを受け取ることができる。

なお、Instagramでは独自のボーナスを導入する予定だが、これは最初は招待制となっている。今後数週間のうちに、米国のクリエイターはIGTV広告を有効にすることで、1回きりのボーナスを受け取ることができる。その他のボーナスは、TikTok(ティックトック)の短編動画の成功に対するInstagramの回答であるReels(リール)の作成や、Instagram Live(インスタライブ)で特定のマイルストーンを達成したクリエイターに与えられる。

Facebookがクリエイターへの支払いに乗り出したのは、TikTokと競合するプロダクトを現金でジャンプスタートさせようとする最新の取り組みにすぎない。Snapchat(スナップチャット)は、同社の短編ビデオ製品「Spotlight」で最も人気のあるビデオに毎日100万ドル(約1億1000万円)支給している。YouTubeは、TikTokのクローンである「YouTube ショート」のために、独自に1億ドル(約110億円)の資金を用意している。

TikTok自体も2020年、2億ドル(約220億円)のクリエイターファンドを立ち上げているが、同アプリはあまり心配する必要はなさそうだ(今はまだ)。SensorTowerのデータによると、TikTokは全世界で30億ダウンロードを突破した。これまでこの数字を超えたアプリは、WhatsApp(ワッツアップ)、Messenger(メッセンジャー)、Facebook、Instagramなど、すべてFacebookが所有するアプリだけだった。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

最短90日で新製品誕生、ハードウェアスタートアップのモノづくりを支援するプラットフォーム「Gembah」

Gembah(ゲンバー)のミッションステートメントは、驚くほどシンプルだ。オースティンを拠点とするこの会社は「新製品を生み出すための参入障壁を大幅に下げ、製品イノベーションを民主化する」ことを目指しているという。少なくともその点では、クラウドファンディングからアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)まで、過去10年ほどの間に登場したさまざまなスタートアップの取り組みとそれほど違わない。

同社が提供するのは、製品づくりのプロセスを通してユーザーを手引きするために設計されたプラットフォーム / マーケットプレイスで「最短90日」で成果が出ることを約束している。このフォーラムは中小企業と工場、サプライチェーンの専門家、デザイナー、エンジニアなどを結びつけ、プロセスの迅速化を支援する。ハードウェアのスタートアップ企業を起ち上げようとした経験のある人なら誰でも知っていることだが、このように新たな製品を世に出すためのプロセスを手際よく運ぶことは非常に難しい。

Gembahはそのビジョンを加速させるために、シリーズAラウンドで1100万ドル(約12億1400万円)の資金を調達した。この投資ラウンドは、地元のアーリーステージ専門ベンチャーキャピタルであるATX Venture Partners(ATXベンチャー・パートナーズ)が主導し、Silverton(シルバートン)、Flexport(フレックスポート)、Brett Hurt(ブレット・ハート)氏、Jim Curry(ジム・カリー)氏、Dan Graham(ダン・グラハム)氏が参加した。

画像クレジット:Gembah

これは、2020年4月にSilvertonが主導して328万ドル(約3億6200万円)を調達したシードラウンドに続くもので、同社の資金調達総額は1475万ドル(約16億2800万円)に達している。

Gembahによると、昨今の新型コロナウイルス感染流行は、同社のビジネスモデルにとってむしろ好材料になったという。ハードウェアのスタートアップ企業が、従来の販売チャネルよりも自宅からアクセスしやすいオンライン販売モデルに目を向けるようになったからだ。同社によると、2020年には収益が500%増加し、2021年は3倍になる見込みだという。この1年半の間に業界に影響を与えたいくつかの大規模なサプライチェーンの問題に直面しながらも、見事な成長を遂げている。

現在、Gembahは300のアクティブな顧客を抱えているが、まだ収益性を達成できていないため、今回のラウンドによる資金調達を行った。「当社の顧客のほとんどがeコマース企業であるため、eコマースの加速的な成長の恩恵を受けています」と、同社の共同創業者でCEOを務めるHenrik Johansson(ヘンリック・ヨハンソン)氏は、TechCrunchに語っている。「サプライチェーンからの影響はある程度受けていますが、グローバルなサプライチェーンがより複雑になり、多くの企業が中国以外の国へ多角化を図ろうとすれば、その変化を乗り越えるための支援が必要になります。Gembahはその移行を支援することができます」。

今回のラウンドで調達した資金は、同社のエンジニアリングチームの増強に充てるという。Gembahは現在、米国で55名、アジアやメキシコなどその他の地域で19名の従業員を擁している。新たに増やす人員は、マーケットプレイス、サプライチェーンのワークフロー、機械学習能力の向上に重点的に取り組むことになる。また、同社はグローバルなネットワークを拡大し、マーケティングやUI / UXの分野でも雇用を進めていく予定だという。

「Gembahはグローバルなeコマースの成長を利用して企業を支援しようとする真のイノベーターです」と、ATX Venture PartnersのChris Shonk(クリス・ションク)氏は声明で述べている。「Gembahのマーケットプレイスは、まったく新しい血を持つクリエイターの市場参入を可能にすることで、実質的に限りない起業家精神の解放を約束するものです」。

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

TikTokが動画の長さを最大60秒から3分に拡大

TikTokに、より長い動画を投稿できるようになる。過去数カ月の間に多くのクリエイターを対象とするテストを行った結果、同社は最長3分間の動画を作成できるオプションを導入すると、米国時間7月1日に発表した。TikTokの動画の長さは、当初の15秒から60秒に拡大されたが、この60秒の動画フォーマットは「Snapchat Spotlight(スナップチャット・スポットライト)」や「YouTube Shorts(ユーチューブ・ショート)」など、TikTokの新たな競合製品に模倣されていた。

TikTokによると、クリエイターコミュニティから寄せられた意見に基づいて、同社は動画の最大時間を拡大することに決めたという。クリエイターたちは、ある種の動画を作成する際に、例えば料理の実演や、美容のチュートリアル、教育コンテンツ、コメディタッチの寸劇などの動画では、より多くの時間と柔軟性を求めていた。

TikTokのプロダクトマネージャーを務めるDrew Kirchhoff(ドリュー・キルヒホフ)氏は「より長い動画を投稿できるようになったことで、クリエイターは新しい、あるいは拡張された種類のコンテンツを、もう少し余裕を持って、柔軟に制作することができるようになります」と、同社の発表の中で説明している。

3分に拡大される以前、多くのクリエイターはTikTokの制限を回避するために、動画をパート1とパート2(あるいは3、4……)に分け、続きを見せるために視聴者に「いいね」や「フォロー」を促していた。フォロワーを増やすためには有効かもしれないが、視聴者の側には、最初に興味を持った動画の続きを見るためだけに、そのクリエイターの他の動画をわざわざスクロールしたくないという不満があった。またこれは、どれほど多くのTikTokクリエーターが、無意味で人為的な制限に対する解決策を見つける必要に迫られているかということも明らかにした。

動画の長さを拡大した今回の変更によって、TikTokはさらに強力なYouTubeの競争相手となる可能性もある。YouTubeはTikTokの成長を懸念して、自社のアプリに「YouTube ショート」というTikTokと直接競合する機能を導入した。しかし、TikTokは、自社のプラットフォームの優位性は、動画が短いことではなく、さまざまな特殊効果や、ARツール、音楽カタログ、そしてステッチやデュエットなどの特殊なツールを使ってクリエイター同士が生み出す対話など、豊富な機能の組み合わせにあることを理解している。

他のライバル企業も、TikTokの脅威に注目している。

今回のTikTokの発表の前日には、Instagram(インスタグラム)の責任者であるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏が、これまで写真の共有に特化していたこのFacebook傘下のアプリで、短くておもしろい動画を、よりInstagram体験の中心に据える実験を間もなく開始すると語ったばかりだ。Instagramでは「フルスクリーン、没入型、エンターテインメント性、モバイルファーストの動画」など、動画をより良く魅力的にするための新しい方法を試していくと、モセリ氏は約束している。

「率直に言って、今は非常に厳しい競争があります。TikTokは巨大です。YouTubeはさらに大きい」と、モセリ氏は言及した。

TikTokは、2020年末より3分間の動画のテストを始めていた。同社によると、より長い動画を撮影できるオプションは、今後数週間のうちに世界中のユーザーが利用できるようになるとのこと。アップデートが適用されたら、ユーザーに通知があるはずだ。

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タグ:TikTokクリエイター動画SNS

画像クレジット:Nur Photo / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ツイッターがクリエイターのための収益化ツール「Super Follows」「Ticketed Spaces」を導入

Clubhouse(クラブハウス)からPatreon(パトレオン)に至るまで、一歩リードしている競合相手へのTwitter(ツイッター)の最新の対抗措置として、同社は米国時間6月22日、Super Follows、Ticketed Spacesへの申し込みの受付を開始すると発表した。

TwitterはSuper Follows機能の一部を2月のAnalyst Dayイベントで紹介していた。Super FollowsではTwitterのクリエイターはフォローしている人に月2.99ドル(約330円)、4.99ドル(約550円)、9.99ドル(約1100円)で有料コンテンツを提供して毎月収益を生み出すことができる。18才以上のユーザーで、フォロワー1万人超を抱え、過去30日に少なくとも25ツイートしていることが利用要件だ。

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Twitterは、アプリ内購入手数料を引かれた後のクリエイターの売上高の3%を徴収する。しかしApp StoreとGoogle Playではアプリ購入手数料は30%で、つまりクリエイターにとってはフォロワーが支払う額の3分の2が実入りとなる。Twitterでの生涯収入が5万ドル(約550万円)を超えると、Twitterは「手数料を引かれた後の将来の収入の20%」を徴収する。アプリ内購入手数料の30%と合わせると、クリエイターの手元に残るのはフォロワーが払った額の半分だ。一方、Patreonはクリエイターの売上の5〜12%を取っている(ウェブベースのプラットフォームなのでアプリ内購入手数料を回避している)。主にTwitterで自身のオーディエンスに関わっているクリエイターはフォロワーを他のアプリに誘導することなしに収益を上げる方法を持つというメリットを享受する一方、支払いにおける違いは明白だ。クリエイターはSuper Followsのために既存のPatreonシステムを見捨てることはないが、控えめにいうとこれは補足的な収入源となるかもしれない。

「当社のゴールはTwitterで会話しようという気持ちにさせ、お金を稼げるようサポートすることです」とシニアプロダクトマネジャーのEsther Crawford(エッシャー・クロフォード)氏は話した。「Twitterでいかに新たな声をサポートできるかについての検討に時間をかけた後、当社は収益配分率を改訂しました」。

Ticketed Spacesは、ClubhouseやSpotify Greenroom、他の競合サービスが似たようなオプションをまだ提供していないことから、より有望なようだ(DiscordはStage Discoveryポータルで有料のオーディオイベントをテストしているが、まだ正式展開はしていない)。Ticketed Spacesを通じてユーザーは1〜999ドル(約110円〜11万円)の間でチケット価格を設定できる。クリエイターはチケットの販売枚数を制限でき、これはセレブとの1対1の会話のために999ドルというチケット価格を実際に使うよう誰かにインセンティブを与えるかもしれない。Twitterはプッシュ通知とアプリ内の通知でTicketed Spacesが開催されていることを出席者にリマインドする。過去30日以内に3つのSpacesをホストした18歳以上のユーザーがTicketed Spacesへのアクセスを申し込める。

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ClubhouseとInstagramはライブオーディオスペースでリスナーがスピーカーにチップをあげたりバッジを贈ったりできる機能を展開しているが、前売り券の販売は不可だ。トップクリエイターがこうしたアプリで収益をあげる別の方法は、Creator Fundsを通じてだ。Spotify GreenroomClubhouseはいずれもCreator Fundsの計画を発表したが、TwitterでのTicketed Spacesへのアクセス販売に比べてどれくらい稼げるのかはまだ不明だ。

今回のTwitterのアップデートの前には、アクティビストシェアホルダー(物言う株主)が2020年、CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏を追放しようと試みた。ここへきて、Twitterは急速に新機能を追加しRevue(ニュースプラットフォーム)やUeno(クリエーティブ・エージェンシー)、Breaker(ソーシャルポッドキャスティングプラットフォーム)といった企業を買収している。

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Super FollowsとTicketed Spacesはモバイルでのみ(なのでアプリ内購入手数料の回避はない)、米国居住者だけが利用できる。現在Super Followsへの申し込みはiOSユーザーだけだが、Ticketed Spacesへの申し込みはiOSとAndroidの両方でできる。Twitterは新しいMonetization(現金化)ボタンをアプリのサイドバーに加えていて、そこでユーザーはこうした機能のためのテストグループへの参加を申し込めるかチェックできる。新機能は数カ月以内により広範に利用できるようになる。

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タグ:Twitterクリエイター

画像クレジット:Twitter

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

Instagramはクリエイターの生活のためにアフィリエイトとショップ機能を導入

Apple(アップル)が例年のWWDCを開催しているこの時期、InstagramとFacebookは2021年初となるCreator Weekを試験的に開催した。その宣伝によると、この3日間のイベントは意欲的なもので、新進のデジタルクリエーターを対象とし、午前9時45分のバーチャルDJ大会に始まり「アルゴリズムの神話を打破する」をテーマとするパネルディスカッションや「日頃から関心のある非営利団体のための募金集会」などがある。

初日にMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、クリエイターの新しい収益化方法を紹介する発表を行った。それによると、Instagramは数カ月後に、ネイティブのアフィリエイトツールのテストを開始する。これによりクリエイターは、チェックアウト時に製品を推奨したり、フォロワーと共有したり、あるいは彼らのポスト(投稿)から生じた売り上げに手数料を徴収したりすることができる。クリエイターがそうした投稿を行うときには、スポンサーつきコンテンツのラベルの場合同様に、、ユーザー名の下に「手数料込み」という表示がでる。

今日から早くも利用可能になるのは、クリエイターが自分のビジネス用でなく個人用のプロフィールにショップのリンクを置ける機能だ。年内には、米国の一部のクリエイターはBravado/UMGやFanjoy、Represent、SpringなどInstagramのマーチャンダイズパートナーと提携して、アプリ上で限定商品を販売できるようになる。

Instagramのライブ動画では、視聴者がクリエイターにBadge(バッジ)を送り、彼らに0.99ドル(約08円)から4.99ドル(約547円)までのチップを渡すことができる。Facebook Gamingには、Starsという似たような機能があり、そこではStar(星)1つが0.01ドル(約1.1円)だ。クリエイターは今週から、他のアカウントと一緒にライブをするなど、何らかのチャレンジを達成したらボーナスを稼げる。たとえば宣伝の画像でFacebookは、Starを5000稼いだクリエイターに、本来の50ドル(約5476円)にプラスして150ドル(約1万6429円)のボーナスを提供している。

Facebookのポストでザッカーバーグ氏は次のように述べている。「私たちのプラットフォームでより多くのクリエイターの生活が成り立つようにするために、有料のオンラインイベントやファンのサブスクリプション、バッジ、近く立ち上げる独自のニュースプロダクトなどを2023年まで無料にします。私たちの売上のシェアは、Appleなどの他社が採用している30%に満たない比率にします」。

画像クレジット:Instagram

このようなアップデートは、アフィリエイトマーケティングとアプリ内ショッピングの導入を目指すInstagramの最新の戦術となる。2020年デビューしたばかりのInstagram ShopShopping in Reelsのデザイン変更も、その一環だ。

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「私たちの目標は、みなさんのようなクリエイターの生活が成り立つ最良のプラットフォームになることです。みなさんに世界と共有したいアイデアがあるとき、それを実際に作り、FacebookとInstagram上で簡単に発表できることが重要です。そしてもちろん、みなさんの作品でお金が得られることも重要です」とザッカーバーグ氏はCreator Weekで付け加えた。

こういうアフィリエイトやショップ機能の実験には、当分の間、Instagramがマージンをとらないため、クリエイターとして心惹かれるものがあるだろう。しかし、TikTokやYouTubeのようなプラットフォームには、eコマース以外の収益化方法がある。

2020年7月にTikTokは、総額2億ドル(約219億円)のTikTok Creator Fundを発表し、人気のある投稿者が自分の動画で稼げるようにした。その金額は明らかでないが、総視聴数やエンゲージ数などで決まるのだろう。2020年8月には、ユーチューバーからティクトッカーに転向したHank Green(ハンク・グリーン)氏が、1カ月のTikTokの視聴数2000万で約700ドル(約7万6649億円)稼げるだろう、という推定を述べた。視聴数1000(1000ビュー)に対して3.5セント(約4円)だ。

一方、TikTokに対抗するYouTube Shortsを立ち上げたYouTubeは、Shortsの上位クリエイターのために1億ドル(約109億円)のファンドを発表した。同社がコンテンツクリエイターに支払った額は、過去3年間で300億ドル(約3兆2847億円)だという。さらにSnapchatは、そのTikTok対抗馬Spotlightで、クリエイターに1日100万ドルか(約1億900万円)を支払っている。

フォロワーが何百万人もいないユーザーにとって、このようなクリエイターファンドは家賃の足しにもならない。しかしそれらが、eコマースや視聴者からのチップ以外の収入源であることは確かだ。今のところ、Instagramにはそれがない。

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カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:Instagram

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ポケットの中の音楽スタジオ、700万ユーザーを獲得した作曲アプリ「Rapcha」

YouTube、Snapchat、Twitter、TikTok、FacebookのInstagramは、映画やテレビの業界を根底から覆した。撮影監督やディレクター、俳優はテクノロジーの革新を活かして新しい作品を作り、それを何十億もの消費者に直接見てもらうというニューウェーブを起こしている。2021年4月末、ある新興企業が230万ドル(約2億5000万円)の資金調達を発表し、音楽の世界にも同様のインパクトをもたらそうとしている。

Rapchat(ラップチャット)は、ユーザーが(その名の通り、ラップやその他のジャンルの)音楽を作ることができるアプリで、ユーザーはクラウド上のビートにボーカルを乗せて楽しむことができる。

ソニー・ミュージックエンタテインメントとニューヨークのベンチャーキャピタル企業Adjacent(アジェイセント)が共同で主導した今回の資金調達は、2018年にRapchatが行った170万ドル(約1億9000万円)のシード資金調達ラウンドの延長線上にあり、CEOかつ共同創業者のSeth Miller(セス・ミラー)氏は、同社がより大きなシリーズAの準備を進める一環としての調達であると話す。

ミラー氏とPat Gibson(パット・ギブソン)氏が、2015年に大学在学中に副業として会社を構想した際に、(Snapchatの)chatという言葉をひっかけた言葉遊びを除けば、少なくとも今はRapchatとSnapchatにつながりはない。Rapchatはすでにかなりの規模に拡大している。

現在、Rapchatには約700万人の登録ユーザーがいて、プラットフォームでは毎月50万人のアクティブユーザーが、約10万曲のビートカタログを使って、約25万曲を作成しているという。ユーザーは1日平均35分アプリを利用していて、これは、楽曲を作るユーザーだけでなく、その楽曲を聴いたり共有したりするためにアプリを利用する人たちのソーシャルグラフ(人と人とのつながり)が形成され始めたことを意味する。

Rapchatは、今回の資金調達を利用して、Rapchatのコンペティション「Challenges」の賞金額を増やすなど、プラットフォーム上でできることを拡大していく予定だ。より多くのアーティスト、プロデューサー、業界のエグゼクティブからプラットフォーム上で指導を受けられるようにしたり、プラットフォームのリーチを拡大して、TikTok、Snapchat、Spotify、Apple Musicなど、クリエイターがすでに多くのコンテンツを制作していて、音楽が重要な役割を果たしているプラットフォームとより緊密に統合したりすることも検討している。

Rapchatの成長は、音楽を簡単に作れるようにしたいという同社の夢を実現しただけでなく、クリエイターエコノミー(クリエイターのマネタイズをプラットフォームやテクノロジーが後押しする経済)における貪欲さと歯がゆさを物語っている。世の中には広大な音楽制作の世界があり、自分が評価されるかどうかを知りたいと思う人が増加しているのだ。

巨大なクリエイターエコノミーにおける音楽クリエイターの存在を考えたのはRapchatだけではない。

Voiseyというアプリも類似のサービスを提供しているが、メインは音楽トラックではなく、短いクリップを作って録音し、それを他のプラットフォームで共有することに重点を置いていた。あまり普及はしなかったが、新しいアーティストへの注目を少し集めることに成功し、2020年Snapにひっそりと買収された(現在のところ、SnapはVoiseyのアプリを維持している)。

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TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)も、別の音楽作成アプリJukedeckの買収を行っている。Snapの買収と同様、この買収がどこでどのように行われているのか、今のところ完全には明らかになっていないが、うわさによると、TikTokは新しい音楽サービスを開発中で、より多くのコンテンツをTikTokの音楽レイヤーに接続することができるようになるらしい。

そして、このトレンドを最も裏づけることといえば、Facebook(フェイスブック)がRapchatの真似をしたことだろう。Facebookの社内部門であるNPE(新製品実験)チームは、2021年2月に「BARS」を発表。ユーザーはこのアプリで自分のラップミュージックを作ることができる。

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このような状況下、ミラー氏は(少なくとも今のところは)、新しいプレミアム機能のテストを含め、Rapchatの実績に非常に満足し、自信を持っている。現在アプリは無料で使用できるが、プレミアム機能では、クリエイターに、もっと多くの制作ツールや、作品を共有してマネタイズするためのより良い方法を提供する予定だ。その鍵となるのは、音楽のライセンス料を要求しないということ。Rapchatの価値は、クリエイターが音楽を制作し、それらのトラックのメタデータを使って音楽がどのように使用されたかを追跡することにあり、クリエイターはロイヤリティを維持することができる。

この控えめなアプローチは、Rapchatとその創業者たちが、スタートアップ企業の中ではやや異質な存在であることに由来する。このアプリのアイデアは、ミラー氏とギブソン氏がオハイオ大学(コロンバス)の学生だった2013年に生まれたという。

「大学生の誰もがSnapchatやInstagramなどのアプリを使っている時代でした」とミラー氏は話す。「私たちは、ビデオを撮るためにこれらのアプリを愛用していましたが、音楽を作るためのアプリはありませんでした。そこで私たちは、Startup Weekend(スタートアップウィークエンド)のコンペティションで、『Snapchatのような、ラップのためのスナップ 』というアイデアを提案しました。その際に誰かがRapchatと言ったのです」。

2015年、彼らはこのアプリを携えて500 Startups(ファイブハンドレットスタートアップ)に参加し、本格的にこのアイデアに取り組み始めたが、それでもビジネスを構築し、投資家の注目を集め、資金を調達するまでには何年もかかっている。その理由の1つは、音楽は扱いが難しいもので、ざっくりというならここ数年の流行は制作サービスではなく、ストリーミングだったからだ。

しかし、ミラー氏とギブソン氏は諦めなかった。「この市場が巨大であることを知っていたのは私にとってはとても意味のあることでした」とミラー氏は話す。「モバイルデバイスが登場し、Instagram、VSCO、Snapchatなどのアプリは人々をフォトグラファーや映像作家に変えました。Substackも人々を執筆者に変えています」。そして今、Rapchatがラッパーのための世界を開拓しようとしている。

AdjacentのリードインベスターであるNico Wittenborn(ニコ・ウィッテンボーン)氏は、声明の中で次のように述べる。「Rapchatはポケットの中の音楽スタジオです」「Rapchatで世界中の誰もが、どこにいても、スマートフォンから直接音楽を録音して公開できるようになります。ユーザーは創造性を最大限に活かすことができます。モバイルを活用したテクノロジーを誰にでも利用できるようにすることがAdjacentの目指すところであり、この次世代の音楽プラットフォームを構築するRapchatのチームをサポートできることを非常にうれしく思っています」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Rapchat音楽資金調達クリエイターアプリ

画像クレジット:Rapchat

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

Instagramのリールが新機能「Insights」でクリエイター待望のオーディエンス分析データ確認が可能に

2020年、InstagramはInstagram ShopShopping in Reelsなど、独立したクリエイターの生計を助けるための機能をたくさん追加した。そして米国時間5月24日、InstagramはProfessional Dashboardに、ReelsとLiveの「Insights」をローンチして、企業やクリエイターに彼らのコンテンツのリーチに関する重要なデータを提供する。Reelsはこれらのツールによって、すでにユーザーに詳細な分析データを提供しているライバルのTikTokに追いつくことになる。InstagramとTikTokのこのような追いかけっこが続くのは、収入をこれらのプラットフォームの利用に依存しているインフルエンサーや小企業にとってうれしいことだ。

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それまでInstagramのクリエイターたちは、視聴数やいいねの数、Reel上のコメントなど一般的に入手可能なデータを見ることしかできなかった。今後は、コンテンツが獲得したアカウント数や、自分のReelsの保存数や共有数などにアクセスできる。さらにInstagramは、Liveの動画の視聴者数をカウントする「同時に見ている視聴者数のピーク時の数」もシェアする。アプリのAccount Insights(アカウント詳細情報)では、自分のコンテンツがどのような種類のアカウントにリーチしているのか、そしてどのようなコンテンツが最も多くのエンゲージメントを獲得しているのかを知ることができる。

ソーシャルコマースの上でビジネスをしている起業家やコンテンツクリエイターにとって、このような分析はあまり重要ではないかもしれないが、プラットフォームの利用は確かに簡単になる。Reelsのショッピング機能でアプリ内販売が簡単にできるようになったが、これまで潜在的な顧客に確実にリーチするために動画などをカスタマイズする際に参照するデータが、ほぼなかった。一方、TikTokの分析はかなり前から動画の平均視聴時間や、トラフィックのソース(どっから来たのか)タイプ、場所(国など)による視聴数の違いといったデータをクリエイターに提供している。口コミで広まるこの動画アプリは2021年5月初めに、ストリートウェアのHypeなど特定のブランドと協力してアプリ内販売をテストする、と発表している。これでInstagramとの競争は激化するだろうが、本機能の一般公開スケジュールは未定だ。そこで、InstagramのInsightsによって、これまでのアプリ内ショッピングと組み合わせることでコンテンツクリエイターは、目的とするオーディエンスにもっと到達しやすく、収益化もしやすくなるための、強力な戦略を作り出せるようになる。

ロサンゼルスでハンドメイドのジュエリー工房KIKAYを経営しているQuinn Jones(クイン・ジョーンズ)氏は「Insights for Reelsがないのはおかしい、と前から思っていました。それがないと暗闇で銃を撃つようなものです」という。彼のショップは9万以上のInstagramとTikTokを合わせてフォロワーがあるが、一般的にZ世代のクリエイターはソーシャルメディアを利用してオーディエンスを広げ、売上を増やしている。KIKAYが口コミ的に利用しているのはTikTokだが、ジョーンズ氏は、小企業がフォロワーを獲得する方法としてはInstagramの方が良いという。

「Insightsは今後確実に便利なツールになるでしょう。これまでは、自分の動画がどのような人たちにリーチしているのか、まったくわかりませんでした。しかしInsightsがあれば、フィードバックに基づいてコンテンツを改良することができます」とジョーンズ氏は語る。

インフルエンサーにとっても、ブランドと協力してスポンサーつきコンテンツを作ったりする際、これらの分析が役に立つ。

LGBTQ+のコンテンツクリエイターで、マイクロインフルエンサーでもあるCara Cochran(カラ・コクラン)氏は「Insights for Reelsを随分長く待っていました。それまで視聴数といいねの数とコメントしか見れませんでした」という。彼女によると、Instagramがインタフェイスのデザインを変更してからは、クリエイターに頼んでReelsの動画を作らせるブランドが増え始めていたそうだ。

「これから分析も確認できるため、ブランドもInstagramに静的コンテンツをポストするだけでなく、Reelsにどんどん動画をポストするようになるでしょう。そうなれば、彼らのプロダクトも新鮮に見えるようになり、静的な広告ではなくコマーシャルのような効果を発揮するでしょう」とコクラン氏はいう。

Instagramは米国時間5月24日からInsightsを展開する。また数カ月後には、一定の期間内のエンゲージメントを計測できるようになり、さらにデスクトップでもInsightsをサポートするという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:InstagramInstagram ReelsクリエイターインフルエンサーSNS

画像クレジット:Instagram

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クリエイターの収益化を可能にする「リンクインバイオ」ホームページビルダーのBeaconsが6.5億円調達

モバイル用ランディングページビルダーを提供するBeacons(ビーコンズ)が、600万ドル(約6億5000万円)のシードラウンドを実施した。同社はクリエイターが自分のソーシャルメディアのプロフィール欄を通して収益を上げられるようにするというビジョンを提唱している。Neal Jean(ニール・ジーン)氏、Jesse Zhang(ジェシー・ゾン)氏、Greg Luppescu(グレッグ・ルペスク)氏、David Zeng(デビッド・ゼン)氏が共同で創業したこの会社は、ソーシャルメディアを利用する人が自分のフォロワーに表示することができる、モバイルに最適化された単一のリンクハブを提供する。

競合他社のLinktree(リンクツリー)同様に、Beaconsは、TikTok、Instagram、Twitterのプロフィール欄から他のサイトにリンクする方法を提供し、同時にフォロワーに対して寄付やアフィリエイトリンクなどを紹介する。こうしたリンクインバイオ(プロフィール欄のリンク)分野で競う企業には、他に Shorby(ショービー)Milkshake(ミルクシェイク)Tap.bio(タップバイオ)Link in Profile(リンクインプロフィール)bio.fm(バイオfm)、そしてCampsite(キャンプサイト)などがある。

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Beaconsは、Y Combinatorの2019年夏クラスに参加し、2020年9月にプライベートベータ版を開始した。Andreessen Horowitzがシードラウンドを主導し、Atelier VenturesThe ChainsmokersのMantis Fund、Night Media Ventures、ブラジルのeスポーツグループであるLOUDggが参加している。

Beaconsは、今回の600万ドルのシードラウンドをエンジェルラウンドで調達していた60万ドル(約6500万円)に加えることで、同社はエンジニアやデザイナーを採用し、初めて創業を経験した4人の小さなチームを成長させることができる。

Beaconsの共同創業者でCEOのニール・ジーン氏は、TechCrunchの取材に対して「当社がLinktreeと大きく異なる点は、クリエイターが自分のページを無料でカスタマイズでき、無料プランでもより多くのオプションを提供していることです」と語った。

「【略】クリエイターのみなさんは、自分のウェブサイトの見栄えをとても気にしていますので、このやり方はクリエイターのみなさんが望む機能を提供して、私たちの市場でのシェアを拡大するための良い方法だと思っています」。

ソーシャルメディア企業たちは、クリエイターを自社のプラットフォームや今後の収益化スキームに囲い込むため、特に個々のコンテンツへの埋め込みリンクにはあまり熱心に対応していない。また、ユーザーのプロフィールに掲載できるURLを1つに限定しているところも多く、クリエイターは1つのリンクの価値をを最大限に高める必要がある。当然ながらBeaconsは、多くのソーシャルプラットフォームの制限的なデザインが、クリエイターがコンテンツから簡単かつ柔軟に収益を上げる可能性を妨げていると主張している。

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ジーン氏は「まず手始めに、クリエイターが使えるさまざまな機能を開発していますが、長期的には、多くの人がその上で構築することができるプラットフォームやエコシステムにしていくことが、よりスケーラブルな方法だと考えています」という。

「現在は、コンテンツ制作者にとってのWix(ウィックス)やSquarespace(スクエアスペース)のような存在だと思いますが、将来的には、クリエイターにとってのShopify(ショッピファイ)のような存在になりたいと考えています」。

Beacons上での構築

Beaconsを使う際に、ユーザーは無料とプレミアムの2つのプランを選ぶことができる。月額10ドル(約1087円)の「アントレプレナー」(起業家)プランは、独自ドメインのサポートや、Beaconsページを構成するリンク、テキスト、画像のスロットである「ブロック」の追加オプションなど、検討に値する機能を提供している。

画像クレジット:Beacons

Beaconsは、プレミアム収入以外にも、マネタイズに特化したいくつかのブロックで売上の一部を受け取ることで収益を上げる。たとえばショッピングに対応したTikTokフィード、動画や電子書籍のデジタルストア、クリエイターが自分のフォロワーにカスタムコンテンツを直接販売できる「リクエスト」ブロックなどだ。Beaconsの無料プランでは取引に9%の手数料がかかるが、プレミアムプランでは5%に減額される。

Beaconsで構築されたランディングサイトは、高度なカスタマイズ性を持っていて、メディアリッチでキュレーションされたホームページがあったMyspace(マイスペース)の時代を彷彿とさせる。同社は最近「コミュニティブロック」と呼ぶブロックを追加した。これは、たとえばTikTokのようなコラボレーションが盛んなプラットフォームで頻繁にチームを組む可能性のあるコラボレーターたちに、スポットライトを当てるための特別な場所だ。現在、Sia(シーア)、Green Day(グリーン・デイ)、Russell Brand(ラッセル・ブランド)などの有名人が登録されている。

Beaconsはまた、メールやSMSによるモバイルマーケティングや、クリエイターがオーディエンスを知るための分析機能にも対応している。同社によると、2020年10月のローンチ以来、ユーザー数は毎月70%ずつ増加しているという。

「現在、コンテンツ制作者と消費者は、既存のソーシャルプラットフォームが提供するもの以上の、高度な期待を抱いています」とジーン氏は調達時の声明で語った。「【略】Beaconを使えば、クリエイターは、見た目が良く、共有可能で、最終的に収益を生むことのできるカスタムドメインにオンライントラフィックを誘導することで、自分の将来をコントロールすることができるのです」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Beaconsクリエイター収益化資金調達リンクインバイオ

画像クレジット:Beacons

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

ハリウッドの約半分が支持、クリエイターにTikTokで新たなユーザーやエンゲージメントを提供するPearpopが約17.3億円資金調達

ミュージシャン、職人、シェフ、ピエロ、日記作家、ダンサー、アーティスト、俳優、曲芸師、セレブ志望者、そして実際のセレブたちが集うソーシャルコラボレーションマーケットプレイスを展開するPearpopが、1600万ドル(約17億3000万円)を調達した。この資金調達は、ハリウッドの約半分に相当するとも思える支援を得ており、Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏のSeven Seven SixベンチャーファームとBessemer Venture Partnersも参加している。

資金の内訳は、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏とGuy Oseary(ガイ・オセアリー)氏のSound VenturesとSlow Venturesが共同で主導し、Atelier VenturesとChapter 1 Venturesが参加した600万ドル(約6億4900万円)のシードラウンドと、オハニアン氏のSeven Seven Sixが主導してBessemerが参加した1000万ドル(約11億円)の追加投資によるものだ。

TechCrunchが最初にPearpopを取り上げたのは2020年のことだが、このスタートアップが何かを成し遂げつつあることは間違いない。そのサービスは基本的に、Cameoのセレブマーケットプレイスでプライベートなシャウトアウトを手に入れるようなかたちをとっており、それを一般化したものだ。ソーシャルメディアのパーソナリティがお金を支払って、より人気のあるパーソナリティに彼らの投稿に対してシャウトアウトやデュエット、コメントを付けてもらうことで、フォロワーを増やすことを可能にする。

「クリエイターエコノミーがクリエイターに公平とは言えない結果をもたらしていることがずっと気になっていました。それが私がPerpopに投資した理由です。私は以前、クリエイターエコノミーにミドルクラスが欠けていることについて語っていますが、その考えが帰着するところです」と語るのは、Atelier Venturesの創設者で、クリエイターエコノミクスに関する記事「The creator economy needs a middle class」の寄稿者であるLi Jin(リー・ジン)氏だ。

「Pearpopに出会ったとき、クリエイティブミドルクラスのクリエイターにとって大きな可能性を秘めているように感じました。このメカニズムを導入することで、より多くのクリエイターが少数のクリエイターの助けになることができ、誰もがエコシステムの中の他の誰かに価値のあるものを提供することができるようになるのです」。

ジン氏はTechCrunchでPearpopを知ったという。「貴メディアの記事を読んで、Pearpopのチームに連絡を取りました」。

このアイデアは注目を集め、ミュージシャン、アスリート、俳優、エンターテイナーなどが数多く参加した。The WeekndのAbel Makkonen(エイベル・マッコネン)氏、Amy Schumer(エイミー・シューマー)氏、The Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)、Diddy(ディディ)、Gary Vaynerchuk(ギャリー・ヴァイナーチュック)氏、Griffin Johnson(グリフィン・ジョンソン)氏、Josh Richards(ジョシュ・リチャーズ)氏、Kevin Durant(ケビン・デュラント)氏(Thirty 5 Ventures)、Kevin Hart(ケヴィン・ハート)氏(HartBeat Ventures)、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Marshmello(マシュメロ)氏、Moe Shalizi(モエ・シャリジ)氏、Michael Gruen(マイケル・グルーエン)氏(Animal Capital)、MrBeast(ミスター・ビースト)氏(Night Media Ventures)、Rich Miner(リッチ・マイナー)氏(Androidの共同創業者)、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)氏が名を連ねている。

「Peapopには、新たなユーザーやエンゲージメントを提供し、同時にクリエイターに与えられる機会を平等にすることで、あらゆるソーシャルメディアプラットフォームに利益がある可能性があります」と、Seven Seven Sixの創設者であるアレクシス・オハニアン氏は語る。「同社は、ソーシャルメディアのマネタイズの再創造に繋がる、革新的かつ新しい市場モデルを生み出しました。ソーシャルメディアの創設者として、また投資家として、Pearpopの今後にはとても期待しています」。

すでにHeidi Klum(ハイディ・クルム)氏、Loren Gray(ローレン・グレイ)氏、スヌープ・ドッグ氏、Tony Hawk(トニー・ホーク)氏は、ソーシャルメディアのプラットフォーム「TikTok」上で、意欲的な投稿者の記事に登場することで報酬を得ている。

同プラットフォームの利用は比較的簡単だ。ソーシャルメディアユーザー(現在のところはTikTokのみ)は、フィードに存在する投稿を送信し、別のソーシャルメディアユーザーが何らかのかたちでこれにインタラクション(コメント、返信としての動画投稿、音の追加など)を持つようにリクエストを行う。リクエストに問題がない(あるいはブランドに一致している)ようであれば、リクエストを受けた人物は言われたアクションを実行する。

そのタスクを実行するソーシャルメディアユーザーは対価の75%を、Pearpopは25%を受け取る。

同社は収益の実数値には言及しなかったものの、2021年中に100万ドル(1億円)規模に達するだろうと語っている。

プラットフォーム上のユーザーが価格を設定し、契約者によるソーシャルメディアへの投稿を増やすために提供するサービスの種類を決定する。

ユーザーのフォローやリクエストのタイプによって、価格は5ドル(約540円)から1万ドル(約108万円)の範囲で決定される。現在、このマーケットプレイスで最もリクエストを受けているのは、TikTokスターのAnna Banana(アンナ・バナナ)氏だ。

こうした類いの取引にはインパクトがある。同社によると、同プラットフォームにおけるパーソナリティは、そのフォロワー数をこのサービスの利用によって増加させることができたという。例えば、Leah Svoboda(リア・スヴォボダ)氏は、 Anna Shumate(アンナ・シュメイト)氏とのポップデュエットによってフォロワー数が2万人から14万人以上に増えている。

まるでディストピアな世界観のSFみたいだ、すべてのやり取りが商品化されて、お金に換えられてしまっている、そんな風に感じるかもしれないが、そういう世界なのである

「Pearpopについて私が最も期待しているのは、クリエイターとしてのコントロールを得られるということです」とTikTokのインフルエンサーであるアンナ・シュメイト氏(@annabananaxdddd)はいう。「同プラットフォームにより、やりたいことをやりたいように投稿することが可能になりました。本当に私らしい投稿ができるので、フォロワーにも満足してもらっています。そこが他のソーシャルメディアとPearpopの違いです」。

タレントエージェントもこの動きに注目している。Talent XやGet Engaged、Next Step Talent、The Fuel Injectorなどのアーリーアダプターは、すべてのタレントをPearpopに追加した。その中にはKody Antle(コーディ・アントル)氏、Brooke Monk(ブルック・モンク)氏、Harry Raftus(ハリー・ラフタス)氏も含まれるという。

「最初のコンセプトは、ギャップからでした。両者にとって価値のあるシンプルかつ自分らしいコラボレーションによってマネタイズすることを、あらゆる規模のクリエイターに可能にできるようなマーケットプレイスがなかったのです」とPearpopのCEOであり共同創設者のCole Mason(コール・メイソン)氏は語っている。「これは人々が待ち望んでいたプロダクトなのだとすぐに分かりました。今では数千という人々が私たちのプラットフォームで、TikTokを皮切りに、ソーシャルメディアにおける自己資産を管理するようになっています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pearpopクリエイター資金調達ソーシャルメディアTikTok

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

NFTを利用してクリエイターが自分の知的財産を守るブロックチェーンのプラットフォーム「S!NG」

数年続いた暗号資産(仮想通貨)の冬の後に、NFTの春がきたが、爆発的な売れ行きの後に価格が落ち着くにつれて、、ブロックチェーンの創設者たちは、NFTへの投機的な関心が変化しても、時間をかけて成長できるような、より安定した機会を探している。

特に関心を集めているのが、NFTを利用してクリエイターをめぐる経済を変革し、作品をホストするプラットフォーム以上にアーティストの方が利益を得るようにすることだ。このような新しい取り組みの1つが最近立ち上げられたS!NG(「sing」と発音する)だ。S!NGは、ユーザーが自分のサーバーにファイルをアップロードし、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンの上でそれらのアップロードにタイムスタンプするというプラットフォームだ。非常にシンプルな仕組みで、野心的な枠組みを備えているため、アーティストは作品を制作する際に作品に対するクレジットを維持できるようにする。

このアプリを作ったチームは、アーティストが彼らの創作過程で自分の知財を自動保存できるプラットフォームを構想している。たとえば制作途上のメモや注記、簡単なデモなども保存できるため、それらの明確にタイムスタンプされたパンくず(ブレッドクラム)の足跡を見れば、権利をめぐる論争は起きないし、起きても簡単に片づく。アプリの名前からもわかるように、特にソングライターやミュージシャンをターゲットにしているが、同社の案内を見ると、写真家やライター、プログラマーなどさまざまなタイプのクリエイターを対象にしていることがわかる。

「非常に広範な目撃者と非常にプライベートなイベントの両方を対象にできる。コンテンツがそこらに漏れ広がることはないが、それが特定の時点に存在するという証明はとても広範なものになりうる」と同社CEOのGeoff Osler(ジェフ・オスラー)氏はいう。

iOSアプリそのものも、かなり単純明快だ。写真や動画、オーディオ、テキストファイルといったメディアをアップロードし、協力者などに関する注記も付けてそれらを提出し、ブロックチェーン上に登録する。ブロックチェーンがホストするハッシュによりファイルはプライベートであり、暗号化されたファイルはAWS上のS!NGのサーバーに保存されるため、初期の草稿であってもそれらが一般公開される恐れはない。アーリーアダプターはブロックチェーンのスタートアップがサーバーごと夜逃げしてしまったらどうなるのか、と心配するかもしれないが、それはNFTのメディアファイルを中央的なサーバーにバックアップしている多くのスタートアップの、すべてに対していえることだ。

画像クレジット:S!NG

クリエイティブの世界に人生の時間の大半を投じてきた人びとは、ぽっと出のアーティストのように作品がタダで見られたり聴かれたりすることではなく、著作権といった権利の問題を重視するだろう。作品が完成して一般公開されたら、公開されているリンクを辿ってオリジナルに行き着くことはできるが、S!NGが狙っているのは、公開が創作のもっと初期の段階で行われ、コラボレーション的な創作過程をサポートできることだ。以前は、アイデアの権利をめぐって法的な争いが起こりがちだった。

ミュージシャンでアドバイザーのRaine Maida(レイン・メイダ)氏が、次のように説明する。「何かを盗まれても、私を守ってくれるチームがあれば、どんな紛争でも解決し勝訴できるでしょう。でも16歳の子どもにはそれは無理なことであり、S!NGはそれに代わるものを提供します。争いに勝つということよりも、そもそも盗まれないようにするという点が大きい。コンテンツにはS!NGの透かしが入っているため、どこに保存し共有してもわかります。その子どもはブロックチェーンが何かを理解できなくても、S!NGが自分を守ってくれる会社であることはわかるでしょう」。

現状では、NFT(非代替性トークン)に基づく法的保護はまだ珍しいかもしれないが、S!NGのチームは、今後DocuSignなどの技術が受け入れられるのにともなって、ブロックチェーン由来の所有権証明は自然に判例の中に含まれてくるだろうと信じている。

同社がクリエイターたちの説得に成功して、S!NGのプラットフォームが彼らのツールに含まれるようになれば、今後、同社はさまざまな機会を通じて、ブロックチェーン上で信じられないほど多くの若いクリエイターたちをユーザーにできるだろう。現在のところ、NFTを金のための投機の一種と見ているアーティストが多いため、当面の間、同社の創業者たちは誇大な宣伝を避けることに注力していくようだ。

「率直にいって、何かが何兆億ドル(何百兆円)で売れたとか騒いでいるクレイジーな今のNFTブームにはまったく関心がありません。私に関心があるのは、ファンが1000人いる小さなアーティストたちが、自分のビジネスを維持するために15ドル(約1620円)の会費を払ってくれることだけです」とオスラー氏はいう。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFTS!NGクリエイターイーサリアム

画像クレジット:WIN-Initiative

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クリエイターが食べていくためのコミュニティ立ち上げと成長の場を提供するMighty Networkが約54億円調達

創設者およびCEOのジーナ・ビアンチニ氏(画像クレジット:Mighty Networks)

クリエイターやブランドにコミュニティの立ち上げと成長の場を提供するプラットフォームMighty Networks(マイティー・ネットワークス)は、Owl Venturesが主導するシリーズB投資ラウンドで5000万ドル(約54億円)を調達した。

このラウンドにはZiff Capital Partnersと LionTree Partnersも加わり、以前からの投資者であるIntel Capital、Marie Forleo(マリー・フォーレオ)氏、Gretchen Rubin(グレッチェン・ルービン)氏、Dan Rosensweig(ダン・ローゼンズヴァイク)氏、Reid Hoffman(リード・ギャレット・ホフマン)氏、BBG Ventures、Lucas Venture Groupも参加している。この投資により、パロアルトを拠点とするMighty Networksの2017年創設からの総調達額は、6700万ドル(約72億5000万円)となった。

Mighty Networksを、Tim Herby(ティム・ハービー)氏とThomas Aaron(トーマス・アーロン)氏とともに創設したCEOのGina Bianchini(ジーナ・ビアンチニ)氏は、 コミュニティ構築のための育成環境には前からよく通じていた。以前、Ning(ニング)を共同創設しCEOを務めていたビアンチニ氏は、3年間でNingで構築されるネットワークを300万件に拡大し、全世界で1億人のユーザーを擁するまでに成長させた。

Mighty Networksでビアンチニ氏は、会員制コミュニティ、イベント、ライブオンライン学習を基礎とする「クリエイター中流階級」の構築を目指す。

「基本的に私たちのプラットフォームでは、オンラインショップを開設するようにコミュニティを立ち上げることができます」と彼女はTechCrunchに話した。「つまり、Spotify(スポティファイ)が電子商取引に対して行っているように、私たちはコンテンツだけでなく、何かおもしろいことや重要なことも同時にマスターできるコミュニティを中心としたデジタルサブスクリプションとデジタル決済を行っているのです」。

同社の主力製品であるThe Business Plan(ザ・ビジネス・プラン)は、デジタルサブスクリプションを簡単に立ち上げられる方法を新米クリエイターに提供するものだとビアンチニ氏は話す。すでに確立されているブランド、団体、成功しているクリエイターは、同社のMighty Pro(マイティー・プロ)プランが使える。ここでは、独自ブランドのiOS、iPad、Androidアプリで、Mighty Networksが提供するあらゆるサービスが利用可能になる。

パンデミックはこの事業の追い風になった。おかげで2020年はライブイベントも立ち上げた。

「私たちはヨガスタジオ、企業幹部のスピーチ教室、コンサルティングなど、数多くの事業にオンライン上ですばやく行動するための手助けができました。世界が戻りつつある今、ユーザーは、プラットフォームに組み込まれたさまざまな機能を使って、身近なメンバー、イベント、グループの発掘、さらに、ウェブだけでなくモバイルアプリを通じてあらゆるものの制作が可能になります」とビアンチニ氏はいう。

同スタートアップのゴールの中には、クリエイターとして成功するために大量のフォロワー(たとえばTikTokで100万人とか)を集める必要はないこと人々に知らしめるというものがある。1人あたり年間1000ドル(約10万8000円)のサブスクリプション料を集めるクリエイターの場合、30人の会員がいれば年間3万ドル(約325万円)になる。大儲けとは言えないが、相当な金額ではある。それが、同社が構築を目指す「クリエイター中流階級」というわけだ。

Mighty Networksには、有料で利用しているクリエイター、ブランド、コーチが現在1万人いる。会員の中には、著名なYouTubeスターのAdriene Mishler(アドリーン・ミッシュラー)、Xprize(エックスプライズ)、シンギュラリティ大学創設者Peter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)、作家のLuvvie Ajayi Jones(ルービー・エイジェイ・ジョーンズ)、コメディアンのAmanda Seales(アマンダ・シールズ)、Girlboss(ガールボス)の創設者Sophia Amoruso(ソフィア・アモルーソ)、 そしてブランドでは、 TED(テッド)や健康管理プラットフォームMINDBODY(マインドボディー)などが名を連ねる。

「コンテンツのみではクリエイター経済は崩壊します」とビアンチニ氏。「活発なクリエイターのムーブメントは、コンテンツの作家が大手テック企業のプラットフォームからオーディエンスを借りるような、身を削る不公正な力学からは決して生まれません。そこでは、クリエイターはコンテンツを絶え間なく制作し続けるよう強要され、仮に報酬があったとしてもほんの小銭程度という世界です。クリエイターは、自分自身のコミュニティをインターネット上に持つべきです。そこでメンバー同士が集い、成果を上げて、改革が推進されます」。

Owl Venturesの専務取締役Amit Patel(エイミット・パテル)氏は、直接出会う以前から、 Mighty Networksには社として感銘を受けていたという。

「この業界で、彼らほど誠実で情熱的な信念を持つ企業はありません。Mighty Networksでクリエイターたちが有料会員制コミュニティを立ち上げ、たった30人の会員を相手にオンライン学習を提供している様子を初めて見たとき、そんなクリエイター中流階級の規模を100万人レベルに拡大する手助けをしたいと痛感しました」とパテル氏は声明で述べている。

同社は今回調達した資金を、数々のメディアタイプ、決済方式、新規市場への拡大に向けた製品開発にあてる予定だ。

2021年4月初め、オンラインクリエイターやメディア企業の収益化と顧客データ管理を支援するニューヨークのスタートアップPico(ピコ)が、プラットフォームのアップグレード版をローンチし、650万ドル(約7億円)の新たな資金調達を発表した。基本的に同社は、クリエイター市場のためのオペレーティングシステムと思われるものを開発している。

関連記事:収益化ツールを統合したクリエイター向けCRMのPicoが7.1億円調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Mighty Networks資金調達クリエイターオンライン学習プラットフォームコミュニティ

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:金井哲夫)

収益化ツールを統合したクリエイター向けCRMのPicoが7.1億円調達

ニューヨークのPicoは、オンラインのクリエイターやメディア企業がお金を稼げて顧客データを管理できるようにする。米国時間4月14日、同社はそのプラットフォームのアップグレードと、新たに650万ドル(約7億1000万円)を調達したことを発表した

共同創業者でCEOのNick Chen(ニック・チェン)氏は声明文の中で、Picoはクリエイターたちの2つの大きな問題、「どうすればもっと簡単にお金を稼ぐことができるか、どうすればオーディエンスをもっとよく知ることができるか」という問題を解決する手助けをすると同時に、彼らの最も重要な資産である「ブランドとオーディエンスとの関係」をコントロールできると述べている。

同社はランディングページ、メールアドレスを収集するためのポップアップ、有料ニュースレター、定期購読のペイウォール、階層型メンバーシッププログラム、定期的および1回限りの寄付、動画収益ツールなど、さまざまなツールを提供している。バージョン2.0では、これらすべての機能を統一されたデータ構造に統合し、ユーザーが「誰がどのコンテンツにお金を払っているのか、どこから来たのか」を1つのダッシュボードで確認できるようになったと同社は述べている。

共同創業者で社長のJason Bade(ジェイソン・ベード)氏(上の写真はチェン氏といっしょに写っているはメールで、最も重要なアップグレードは「私たちのCRMの力でクリエイターたちが、彼らのオーディエンスを理解できるようにすること」だと述べ、「Picoをクリエーター経済のオペレーティングシステムにすること」を示唆した。

画像クレジット:Pico

さらにベード氏は「クリエーターは適切なツールなしにビジネスを拡大することはできません。電子メールのキャプチャーは、オーディエンス開発の最初のステップです。その次は何でしょうか。それはデータとそれを処理するCRMが必要です。バージョン2.0は、Picoのすべての部分をアップグレードして、クリエーターエコノミーが求めるスケーラビリティと拡張性に合わせて再構築しました」という。

Picoはまた、プラットフォームのさまざまな部分との統合をサポートするAPIを近々公開する予定だと述べた。

The Colorado Sun、Defector Media、The Generalistなどの顧客により、同社の顧客数はこの1年間で5倍近く増加したようだ。そして最近、同社はYouTubeでパートナーセールス部門のグローバル責任者をはじめ、さまざまな役職を務めたRodolpheKödderitzsch(ロドルフ・ケドレツシュ)氏を最高収益責任者(chief revenue officer、CRO)に招いた。

今回の投資をリードしたのはBullpen CapitalのAnn Lai(アン・ライ)氏で、Picoの総調達額はこれで1000万ドル(約10億9000万円)になった。その他の投資家にはPrecursor VenturesやStripe、BloombergBeta、そしてVillage Globalなどがいる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:PicoCRMクリエイター資金調達

画像クレジット:Pico

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クリエイターと有料会員を結びつけビジネス構築をサポートするCircleが4.3億円調達

Clubhouseが注目を集めているが、個人で利用できる動画やオーディオのストリーミングプラットフォームの普及により、意欲的なユーザーはこれまでよるはるかに簡単にオーディエンスにリーチできるようになった。これによりクリエイターの活動がここ数年で爆発的に増加している。しかしクリエイター活動が持続可能なビジネスにするための鍵はなんといっても活動の規模による。十分な数の加入者を獲得すれば趣味やサイドビジネスとして始めた配信でも、あっという間にフルタイムの事業にできる可能性が十分ある。

Circleは約1年前、2020年1月にニューヨークを拠点として設立されたスタートアップで、クリエイターと有料サブスクライバーを結びつけ、できるかぎり簡単にビジネス構築ができるよう手助けする。2020年8月には150万ドル(約1億6000万円)のシード資金の調達に成功している。このときTechCrunchではCircleを取材してファウンダーのDNAがオンライン学習コースのTeachableに発していることを知った。以後、同社は非常に強力な初期段階の成長を示している。

同社は2021年1月に100万ドル(約1億500万円)以上の年間経常収益を達成した。現在の有料ユーザーは1000人以上で2000人に近づいている。同社によればエンゲージメントも急速に増加しており、DAU(1日あたりのアクティブユーザー)とMAU(1カ月あたりのアクティブユーザー)の双方で毎月40〜50%の成長を続けている。2021年1月にはiOSアプリをベータ版を終了し製品版をリリースしている。

共同ファウンダーでCEOのSid Yadav(シド・ヤダヴ)氏は、「我々はクリエイター運動、コミュニティ運動が活発化する適切なタイミングをうまくとらえました」と述べている。スタートアップの有料ユーザーは多くのYouTuberをはじめとして、学習コースのクリエイター、Twitchのストリーマー、Patreonのユーザーなどを中心としている。ヤダヴ氏は「プラットフォームのコミュニティの60%が個人クリエイター」と推定している。しかし、多くのブランドも興味を示し始めているという。

こうした有望な情報はすぐにベンチャーキャピタルの関心を集めることとなった。同社は4000万ドル(約42億3000万円)超の評価額で400万ドル(約4億2300万円)のシードラウンドを2020年末に完了したことを公式に発表した。先にプレシードラウンドをリードしたNotation Capitalが今回のラウンドもリードした。ただしNotation Capitalの出資額は4分の1だったという。

Circleのチームは世界各地からの20人に成長した(画像クレジット:Circle)

プレシードの投資の大きな部分はプラットフォームを利用している多数の起業家、クリエイターに割当られた。「もちろん一流企業から多数のオファーを受けましたが、我々はクリエイター向けプラットフォームであり、可能な限りこうしたユーザー自身に出資のチャンスを割り当てることが理に適っているので」とヤダヴ氏は述べている。同社によればラウンドの大部分はプラットフォームを利用しているエンジェル投資家とコミュニティビルダーに割り振られた。これにはAnne-Laure Le Cunff(アン-ローレ・ル・クンフ)氏、David Perell(デビッドペレル)氏、Tiago Forte(ティアゴ・フォルテ)氏、Nat Eliason(ナット・エリアソン)氏が含まれている。

会社が発展段階の早期にある点を考えると、プロダクト開発がなんといっても最優先事項だ。「私たちのアプローチは裁縫的です」とヤダヴ氏は述べた。Circleのコミュニティは「部品」を縫い合わせるページをレイアウトする。Circleサークルの主なモードは、コミュニティのメンバーがSpaceという場所で、お互いにトピックについて話し合うことができるスペースを介すことができるというものだ。Circleで構築されたコミュニティは、独自のドメインを利用できホワイトラベルとしてサードパーティが収益化できる。

Circleのコミュニティプラットフォームを利用することで、クリエイターはコンテンツを公開し、コミュニティに参加できる(画像クレジット:Circle)

Circleの最終的な目標は、ニュースレターやポッドキャストの公開から、動画ストリーミング、イベントチケット販売、商品通販、イベントカレンダーの設定まで、クリエイターがユーザーのニーズを満たすために必要なツールをすべて1つに統合することだ。しかもどのレイヤーであっても支払サービスができる。もちろん多くの機能は未実装で今後開発していかねばならない。しかも、ヤダヴ氏のチームはコア機能の大幅に拡大する野心も抱いている。

Circleのチームは現在20名。メンバーはヨーロッパ、インド、オーストラリア、および米国にいる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Circle資金調達クリエイター

画像クレジット:hobo_018 / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:滑川海彦@Facebook

クリエイターコミュニティのためのポジティブなプラットフォーム「Vibely」でDiscordに挑戦

クリエイター経済の世界では、公開したYouTube(ユーチューブ)動画が自分にとって最高のものだったとしても、次に公開するYouTube動画は、より大がかりで派手なものであることが要求される。

Vibely(バイブリー)は、Asana(アサナ)の元従業員であるTeri Yu(テリ・ユー)氏とTheresa Lee(テレサ・リー)氏が、共同で創業した新しいスタートアップだ。このスタートアップが生み出したのは、クリエイターが管理するプレミアムなコミュニティプラットフォームだ。そこではYouTubeやTikTok(ティックトック)で行えることを超えて、ファンが集まり、新しい方法でマネタイズを行うことを可能にする。

Vibelyのコアとなる部分は、クリエイターたちがファンが楽しめるようなチャレンジ(課題)を提供できることだ。創業者たちはこれによってユーザーが繰り返しプラットフォームに戻ってくることを期待している。たとえば思慮深い生活を触発させるブランドを持つクリエイターが、そのファンに対して自分の個人的成長を書き留めたり、毎日新年の抱負に関して何らかのアクションを取ることを促すことができる。あるいは、フィットネスインフルエンサーが、ファンたちに何日も続くスプリントワークアウトのモチベーションを与えることができる。

「クリエイター経済の中のほとんどの人は、すぐにマネタイズして金銭的満足を得るにはどうすればいいのかを考えています」とユー氏はいう。クリエイターたちがグッズを売ったり、Cameo(カメオ)プラットフォームに登録したりするのはそのためだ。「私たちが注力するのは、長期的な戦略的コミュニティです」。ユー氏は、彼女のスタートアップによる変化を、クリエイターとファンの単純な関係から、ファン、スーパーファン、新規ファン、クリエイターの間の多次元関係へのマインドセットへ変化させるものだと表現する。

画像クレジット:Vibely

Vibelyの売りは二本立てだ。ファンにとっては、このプラットフォームは世界中の他のファンとチャットするチャンスを与えてくれるものだ。また、ファンたちはコミュニティ内のチャレンジに参加することができ、メイクやダンスを愛する者同士が、仮想的な溜まり場を作って交流することができる。同時にこのスタートアップは、クリエイターたちが、計画の発表、アクションへの呼びかけ、アンバサダープログラムの作成をワンストップで行えるサービスを提供する。それが「クリエイターたちの時間を拡大し、彼らにかかわるコミュニティとの多次元の関係を育む」のだ。

特筆すべきは、Vibelyが、基本的にファンのための有料コンテンツ提供場所であるPatreon(パトレオン)やOnlyFans(オンリーファンズ)とは一線を画そうとしていることだ。Vibelyはクリエイターが多くのコンテンツを投稿する必要はなく、本人がプレミアムコミュニティに飛び込んできて、ファンと有意義に交流することが期待されているだけだ。

このスタートアップが取り上げるものは散発的な日常の出来事だ。クリエイターがコンテンツを投稿すると、YouTube、Instagram(インスタグラム)、TikTokに関するコメント欄が、意味あり気な髪のなびく様子から、後ろにあるポスターに隠されたメッセージにいたる想像できるあらゆるディテールについて、ファン同士の議論でにぎやかになる。クリエイターは、活発なスレッドや褒め言葉に反応して飛び込んでくることが多く、このことが、ファンにコンテンツセクションに群がり続ける動機を与えることになる。

スタートアップは顧客獲得にコストをほとんどかけておらず、口コミに大きく依存している。2020年12月にVibelyは、TikTokのトップクリエイターとそのフォロワーをペアにした、対面型で仮想型のクリエイターハウスを立ち上げ、話題を呼んでいる。2020年には、Vibelyの600以上のコミュニティで39万2000個のメッセージが飛び交い、3万7000のチャレンジが行われた。参加しているクリエイターには、YouTubeの登録者数130万人のLavendaire(ラベンデア)氏や52万人のRowena Tsai(ロウェナ・ツアイ)氏などがいる。

ユー氏は、Kim Kardashian(キム・カーダシアン)氏がプラットフォーム上でコミュニティを持つ日も来るかもしれないといいつつも、Vibelyを支える屋台骨は、真の関心や価値観、信念を表現してくれるクリエイターを探せる点にあるという。たとえばそれは、本のインフルエンサーであったり、宗教的なクリエイターであったりするだろう。

「(クリエイターたちが)自分の運命をコントロールできるのです」とユー氏はいう。「InstagramやFacebook(フェイスブック)では、クリエイターがコンテンツを作成しても、結局それがオーディエンスの目に止まるかどうかはアルゴリズムに決定されています。Vibelyを使えば、自分たちのコミュニティなのですから、それを完全にコントロールすることが可能になります」。スタートアップは、メンバーの支払う会費や、ソーシャル通貨や報酬のようなアプリ内の仕組みで収益化を行うことを計画している。

Vibelyの野心的目標は、世界中のゲーマーコミュニティが利用しているプラットフォームであるDiscord(ディスコード)よりも、ポジティブでサポートの手厚いプラットフォームになることだ。ユー氏は総ユーザー数についてはコメントを拒んだが、これまでのところ、他のユーザーによって「報告」を受けたVibelyのユーザーは0.1%未満だという。また、コミュニティを見守るユーザーを任命するアンバサダープログラムや、チームのグローバルコミュニティマネージャーを任命する機能もある。

「Discordのサポートの限界は、範囲がゲーマーに限られてしまうということです」と彼女はいう。「しかしクリエイターは、今すぐにでもブランドを守り、みなさんにポジティブな体験をしてもらいたいと考えているのです」。それが他の場所を求めている理由なのだという。

画像クレジット:Vibely

コミュニティ管理は今のところうまくいっているようだが、より多くのユーザーがこのプラットフォームに参加するようになれば、Vibelyは間違いなく問題に直面することになるだろう。こうしたチャレンジを促す世界では、狂信者が熱狂と誇大宣伝で煽る内容に、誰かが深く入り込み過ぎて問題が起こる可能性がある。Vibelyは、世界中の人と人がつながるために、審判不要な場所を目指しているものの、規模拡大にはそれを損なう独特な悲劇がつきまとう。消費者向けアプリの中には、積極的にスタッフ管理者を雇うことでこの現実に対応しているものもあるが、それでも過酷な作業になることがあり得る

事業に全力で取り組むために、Vibelyは米国時間2月1日、YouTubeの共同創業者であるSteve Chen(スティーブ・チェン)氏、Asanaの共同創業者でNetflix(ネットフリックス)のドキュメンタリー「Social Dilemma(監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影)」の共同制作者でもあるJustin Rosenstein(ジャスティン・ローゼンシュタイン)氏、Meetup(ミートアップ)の共同創業者のScott Heiferman(スコット・ハイファーマン)氏、元Geltの投資家であるTurner Novak(ターナー・ノバック)氏といった支援者たちから、200万ドル(約2億1000万円)のシード資金を調達したことを発表した。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Vibelyクリエイター

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:sako)