Zoomが会議でのリアルタイム翻訳を実現するためにドイツのスタートアップを買収

企業が世界に展開し、Zoom(ズーム)のようなツールでオンライン会議を行うようになると、言葉の壁が仕事を進める上での大きな障害となる。Zoomは、ドイツのスタートアップ企業であるKarlsruhe Information Technology Solutions(カールスルーエ・インフォメーション・テクノロジー・ソリューションズ、略称Kites[カイツ])を買収し、機械学習を利用したリアルタイム翻訳機能をプラットフォームに導入するつもりであることを発表した。

両社は取引の条件を明らかにしていないが、Kitesを買収することで、Zoomはトップレベルの研究者のチームを手に入れて、同社の機械学習翻訳の知識を強化することができる。「Kitesの12名の優秀な研究チームは、Zoomのエンジニアリングチームを助けて機械翻訳の分野を進化させ、Zoomユーザーに多言語翻訳機能を提供して、会議の生産性と効率を向上させる予定です」と同社は声明で述べている。

今回の買収は実際には、この12人の研究者をZoomエンジニアリンググループに迎えるための、買収という名の人材獲得(acquihire)となるようだ。このチームはドイツに残し、機械学習翻訳の研究開発センターを開設する予定で、この分野にリソースを投入するに従い、時間をかけて追加で採用を進めていく予定だ。

Kitesのウェブサイトでは住所以外の情報はほとんど明かされていないが、LinkedIn(リンクトイン)にある会社概要ページによれば、このスタートアップは2015年に、カーネギーメロン大学とカールスルーエ工科大学で教鞭をとっていた2人の研究者が、機械学習による翻訳ツールの開発を目的として創業したものだ。

「Kitesのミッションは、言語の壁を取り払い、シームレスな異言語交流を日常生活の中で実現することです」とLinkedInの概要では述べられている。Google(グーグル)やMicrosoft(マイクロソフト)を含む数少ない企業と並んで「最先端の音声認識・翻訳技術」を開発したと謳っていることから、Zoomはいくつかの重要な技術を獲得したと考えられる。

同社は商用製品を持っていたわけではないようだが、このサイトによると、機械学習による翻訳プラットフォームを持ち、アカデミアや政府で使用されているようだ。とはいえ、この会社の研究成果は、今後はZoomのものになる。

関連記事
Zoomの会議を自動で文字起こしできるOtter.aiの新しいアシスタント機能
Zoomなどウェブ会議含め日程調整をワンストップで行うカレンダープラットフォーム「Spir」が2億円調達
NFLのスター、トム・ブレイディらも投資するZoom対応のオンライン学習スタートアップ「Class」

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Zoomビデオ会議翻訳ドイツ買収

画像クレジット:SurfUpVector / Getty Images

原文へ

(文: Ron Miller、翻訳:sako)

iPhoneの「天気」アプリで大気の質を表示するBreezoMeterが約33.2億円を調達

Ran Korber(ラン・コーバー)氏は、喘息持ちで妊娠中の妻と一緒に、イスラエルに家を買おうとしていた。環境エンジニアである同氏は、大気汚染が早死の最大の原因であること、早産の原因になること、その他の呼吸器系の病気の原因になることを知っていた。コーバー氏はイスラエルで最も汚染の少ない都市を探し始めたが、そのような情報は存在しないことに気づいた。そこで感じた不満から、花粉、大気汚染、山火事、天候のカテゴリーで40種類の汚染物質を予測するツール、現在の「BreezoMeter(ブリゾメーター)」を作った。

同社は米国時間6月28日、Fortissimo Capital(フォルティシモ・キャピタル)が主導するシリーズCラウンドで、3000万ドル(約33億2000万円)を調達したと発表。これまでに同社が調達した資金の総額は4500万ドル(約49億8000万円)に達した。イスラエルに拠点を置くこの会社は、コーバー氏が妻と家を探していた時から約2年後の2014年に設立された。

BreezoMeterの共同創業者で、現在CEOを務めるコーバー氏は「多くの国では、人々は自分の周りの空気について何も知りません」と、TechCrunchに語った。

BreezoMeterは、AIと機械学習を活用して、世界中に設置されている4万7000基以上のセンサーを含む複数のソースからデータを収集・把握し、100カ国以上の街頭レベルの大気質データ(5メートル間隔)と、花粉、汚染物質、火災のデータを提供している。

Apple WatchやiPhoneを持っている人でも知らなかったかもしれないが、どちらもApple(アップル)の「天気」アプリにBreezoMeterが組み込まれている。どこの都市の天気でも、下にスクロールすると、BreezoMeterによる大気質の指標が表示される。米国のAQI(大気汚染指数)は、0から500のスケールで表示され、0が最もクリーンな状態。ここマイアミの空気の質は、昨日は36(良い)、今日は51(中程度)だった。それに比べてニューヨークの空気は、今日は34(良い)で、マイアミよりも良好だ。

BreezoMeterは、現在の空気の質を測定するだけでなく、予測することも可能なので、自分の感受性に合わせて準備しておくことができる。

コーバー氏は「花粉の飛散時期がいつから始まるのかを予測し、2つの異なる場所の間で花粉がどのように移動するのかを予測することができます」と語っている。

自分の感受性がよくわからなくても、自分がいる場所の空気の質を知っていれば、少なくとも症状に用心することができるだろう。

「空気中の汚染物質の種類によって、BreezoMeterはそれが引き起こす症状を教えてくれます」と、コーバー氏はいう。

問題は、汚染そのものだけでなく、大気質について大きな情報格差があることだ。環境保護庁(EPA)によると、米国では約1億2000万人の人々が、大気汚染のモニタリングが行われていない地域に住んでいるという。

「BreezoMeterが作られる以前は、誰もが同じセンサーのデータを使用していましたが、今ではそれらのセンサーに加えて、交通量、山火事、衛星、ローカルセンサーなどのデータを収集し、花粉については土地利用も考慮しています」と、コーバー氏は語る。

センサーが簡単に破壊されてしまうのは、山火事の時だ。「センサーは文字通り燃えてしまうのです」と、コーバー氏はいう。この問題を回避するために、BreezoMeterは衛星からのデータを含む、他の多数のセンサーを頼っている。

「毎日3億人以上の人々が当社のプラットフォームを利用して、環境上の危険を回避するための情報に基づいた意思決定を行っています」とコーバー氏は述べているが、誰もがアップルの天気アプリのみを利用しているわけではない。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息を持つ人であれば、Resmed(レスメド)傘下のPropeller製品に組み込まれたBreezoMeterの恩恵を受けているかもしれない。Propellerは、空気質に応じて、窓を閉めたり、吸入器を使用したりなど、健康状態を改善するために何をすべきかを患者に伝えるデバイスを製造している。

BreezoMeterによると、PropellerがBreezoMeterを製品に組み込んで以来、Propellerの患者は、喘息発作が約50%減少し、ER訪問も減ったという。

BreezoMeterは今回調達した資金を、より多くの製品カテゴリーの開発や、チームを3倍の約120人に増やすことに充てる予定だ。

関連記事:オフィスの新型コロナ対策を支援する空気品質監視プラットフォームのOpenSensorsが4.1億円調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:BreezoMeter空気監視iPhone資金調達イスラエルアプリ

画像クレジット:BreezoMeter

原文へ

(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロソフトがWindows 11のファーストプレビュー公開

米国時間6月28日、Microsoft(マイクロソフト)はWindows 11のファーストプレビューを、同社のWindows Insiderプログラム内のDev Channelで公開した。Insiderプログラムに参加している人は、Microsoftの新オペレーティング・システムの新しい(少々複雑な)システム要件を満たしていれば、まもなく入手できるはずだ。

ファーストプレビューには、新しいルック・アンド・フィール、テーマ、ウィジェット、新しいスナップレイアウト、さらには改訂されたファイル・エクスプローラなどMicrosoftがWindows 11で約束している新機能の大部分が入っている。しかし、このファーストリリースに間に合っていない機能もいくつかある。たとえばAndroidアプリへの対応、Teams統合のビルトイン対応などは後のリリースに入る予定だ。新しいWindows Storeのプレビューはすでに公開されている。

それ以外は、新しいスタートメニューから試してみることができる(中央に置かれたスタートボタンが気に入らない人は左下に移動できるのでご心配なく。ただしタスクバー全体を画面の別のに辺に移すことはできない)。ちなみにスタートメニューはWindows体験の象徴的部分の1つではあるが、ほとんどのパワーユーザーはめったに使うことがなく、代わりにアプリの99%をキーボードかタスクバーを使ってスタートするだろう。Microsoftは、新しい「recommended(おすすめ)」セクションに新しくインストールしたアプリや最近使ったファイルを並べて何かか違うことをやろうとしている。

画像クレジット:Microsoft

もう1つ、すぐに目につく新機能が新しいファイルエクスプローラーだ。フラットなルックスに代えてリボンスタイルのメニュー(Microsoftは「command bar」[コマンドバー]と呼んでいる)を採用している他、全体的に新しい見た目のアイコンが使われている。ルックスは良いが、変更にともなって失われた機能がないかは試してみないとわからない。

ファイルエクスプローラーは、Windows 11のその他のアプリと同じく、Microsoftの新しいスナップレイアウトを採用している。「スナップ」ジェスチャーやショートカットキーでウィンドウを画面のどの辺にも固定できる既存の機能を最大化ボタンに集約した。全体としての機能は新しくないが、多くのWindowsユーザーはこの機能自体の存在を知らなかったに違いないので、今回の新機能によってウィンドウのスナップ(固定)機能が多くのユーザーに知られることになるだろう。

画像クレジット:Microsoft

新しいウィジェットも、タスクバーの目立つ位置に表示される。現在あるのはカレンダー、天気、交通情報、Microsoft To Do、および株価のウィジェットで、OneDriveから最近の写真を表示したり、スポーツやeスポーツのニュースも好きに表示させられる。パーソナライズされたニュースフィードもある。

最後に紹介するべきなのが、新しい設定メニューだ。残念だったWindows 8以来、Windowsには事実上2つの設定メニューが存在している(コントロールパネルと設定)。どうやらこの混乱の日々はまだ終わらないようだが、設定メニューは少なくとも現在のWindows 10よりずっとすっきりした見た目になっている。

画像クレジット:Microsoft

もちろんWindows 11には他にも多くの変更がある。これは半年に1度の小さなUI変更をともなうWindows 10アップデートとは明らかに別物だ。今後は、これがリアルワールドでどう使われていくかを見なくてはならないが、今はまだ早期リリースであることを覚えておいて欲しい。プレビューはInsiderプログラムメンバーに公開され始めたので、実際どう動くのかは近々わかるだろう。TechCrunchも今後各機能を試していく予定だ。

関連記事
マイクロソフトがWindows 11を正式発表、アマゾンと驚きの提携でAndroidアプリも利用可能に、年末商戦までに一般発売
MSはコミュニケーション重視、Teamsのチャット機能が「Windows 11」に直接組み込まれる
AndroidアプリがAmazonアプリストア経由でWindows 11に登場、ウィンドウとして動作

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftWindows 11WindowsOS

画像クレジット:Microsoft

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

サムスンとグーグルが次期Galaxy Watchの発売に向けウェアラブルプラットフォームをプレビュー

Samsung(サムスン)のMobile World Congress(MWC)でのプレス発表は、今回もウェアラブルにフォーカスしていた。中央ヨーロッパ時間6月28日のイベントでの大きなニュースは、同社のGalaxy Watch(ギャラクシーウォッチ)シリーズの一新されたインターフェイスをこれまでで最もよく見られたことだった。

One UI Watchは、Galaxyモバイルのインターフェイスから名前を取ったもので、そのデザイン言語はGalaxyシリーズスマートフォンと共通している。このOne UI Watchは、2021年夏の終わりに開催されるUnpackedイベントで発表され、新しいUIと、SamsungとGoogle(グーグル)の共同プラットフォームが搭載される予定だ。

画像クレジット:Samsung/Google

これら2社のテック大手がウェアラブルプロジェクトで提携すると発表されたのは、2021年5月に開催されたI/Oでのことだった。しかし、実際の名称を含め、このプロジェクトについての情報はまだほとんど明かされていない。

関連記事:グーグルの「Wear OS」とサムスンの「Tizen」が統合、アップルのwatchOSに対抗

当初この提携は、GoogleのWear OSと、Samsungが自社のスマートウォッチに長年採用しているオープンソースOSであるTizenの両方に対応した単一のアプリケーションを開発できるようにする「統一されたプラットフォーム」として発表された。当時TechCrunchが指摘したように、Apple(アップル)のウェアラブル分野における優位性に対抗するためには、サードパーティによるアプリ開発が両社にとってかなりのハードルとなっていた。

今回の提携により、接続されているスマートフォンにウォッチ対応アプリが一旦ダウンロードされると、ウォッチにもダウンロードされるようになる。GoogleマップやYouTube MusicのようなGoogleのファーストパーティアプリに加え、(当然ながら)Spotify、Calm、Strava、Adidas Running、Sleep Cycleなどがリストに含まれている。

画像クレジット:Samsung/Google

GoogleのSVPであるSameer Samat(サミール・サマット)氏は、このニュースに関連したリリースの中でこう述べた。「SamsungとGoogleは長い協力関係の歴史があり、協力するたびに、コンシューマーエクスペリエンスは誰にとっても劇的に向上してきました。それは、Samsungの新しいGalaxy Watchで初めて提供される、この新しい統合プラットフォームにも当てはまります。Samsungとのコラボレーションにより、バッテリー駆動時間の延長、パフォーマンスの向上、そしてGoogleのアプリを含む幅広いアプリを、まったく新しいウェアラブル体験に提供できることをうれしく思います」。

このようなパートナーシップは、一見すると奇妙に思える。Samsungは以前、GoogleのウェアラブルOSを用いず、独自に大幅にカスタマイズしたTizenを採用していた。しかし最終的には、世界市場の40%前後のシェアを持つAppleという一枚岩に対抗するために2社は団結したようだ。Samsungは2位につけているが、Fitbit(フィットビット)を傘下に収めたことを計算に入れてもGoogleの道のりはまだ長い。

また、Samsungは、このプラットフォーム向けにウォッチフェイスなどを簡単に作成できるように改良された開発ツールも紹介する予定だ。

関連記事
カメラ内蔵のApple Watch用バンドを発売するWristcam、求められている「手首にカメラ」機能
グーグルがWear OSの大規模アップデートを発表、Fitbitの「健康」関連機能も導入
OnePlusがミニマルなスマートウォッチ「OnePlus Watch」発表、Wear OSは採用せず

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MWCMWC 2021SamsungGoogleウェアラブルデバイススマートウォッチWear OSTizen

画像クレジット:Samsung/Google

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

企業のクラウドへのデプロイをインフラストラクチャ・アズ・コードでサポートするEnv0

企業がコードをより速く提供するためには、コードを提供するために使用されているクラウドリソースを何らかの形でコントロールし、管理するためのツールが必要となる。Env0は、そのような企業を支援するスタートアップで、米国時間6月24日、1700万ドル(約18億9000万円)のシリーズAを発表した。

MicrosoftのベンチャーファンドであるM12がこのラウンドを仕切り、これに、以前の投資家であるBoldstart VenturesとGrove Ventures、そしてCrescendo Venturesが参加した。TechCrunchが報じたように、同社は2020年4月のシードラウンドで330万ドル(約3億7000万円)を調達し、その後夏には、事前の発表のなかった350万ドル(約3億9000万円)の追加投資を獲得した。今回のラウンドで、同社の総調達額は2380万ドル(約26億4000万円)になる。

関連記事:クラウドの自由にIaCによるガバナンスを結びつけるEnv0が創業1年半で公開ベータへ

同社のサービスは、企業がクラウドのコストをコントロールすると同時に、開発者がコストを制限しながらクラウドにデプロイする能力を提供する。また、開発サイクルを経てデプロイに至るまでのコードに対して、一定のガバナンスを提供する。

2020年4月の同社のシードラウンドのときは、同社のプロダクトはベータに入ったばかりだったが、現在はすでに一般公開から4カ月経ち、同社共同創業者でCEOのOhad Maislish(オハッド・マイスリッシュ)氏によると機能も大幅に増えている。

「前回お話したときは、手動によるセルフサービスと、非本番環境の開発者の能力向上に焦点を当てていました。現在では、Infrastructure as Codeによる自動化、チームとガバナンスにより、基本的にユーザーのためにすべてのクラウド展開を管理しています」とマイスリッシュ氏は説明する。

2021年にプロダクトの一般販売を開始して以来、同社には数十社の有料顧客がおり、収益を上げているという。顧客にはJFrog、Varonis、BigIDなどが含まれている。

従業員数は2020年4月の7名から17名に増えたが、新たに得た資金でいろいろなことを行うようになると、今後1年半以内には50名に増えるだろう、という。マイスリッシュ氏によると、ダイバーシティに十分配慮することで、会社の成長といろいろな角度から問題を解決していくことが可能になるとのこと。「文化や育ちがさまざまに異なる人びとがいることで、多角的な考え方ができるようになる」。

現在、本社はイスラエルだが、米国にオフィスを開く計画がある。マイスリッシュ氏によると、カリフォルニアへ移る計画はパンデミックで保留になったが、秋にはサニーベールにオフィスを開きたいとのことだ。

イスラエルのオフィスは現在、出勤が最低2日、在宅が3日以上で、その具体的な組み合わせは社員の自由だ。彼の計画では、彼自身の米国での生活が落ち着いたら、米国のオフィスで新たに雇用し、また全体として、在宅の方が合理的と考えられる仕事はリモートで行ってもらう予定になっている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Env 0資金調達イスラエル

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Kayakの共同創業者がポッドキャスト発見アプリ「Moonbeam」をリリース

ポッドキャストのダウンロードは昨年、空前のブームとなった。そしてKayak(カヤック)の共同創業者でテック起業家のPaul English(ポール・イングリッシュ)氏は毎日聴く熱心なリスナーになった。しかしポッドキャストを愛する人は、ポッドキャストを探すのが難しいものであることを知っている。Apple PodcastsやSpotifyのような人気のストリーミングアプリすら使える発見ツールを欠いている。そうしたことから、先週Spotifyがポッドキャスト発見アプリのPodz(ポッズ)を買収したのは、この業界における新しいコンテンツを発見する簡単な方法に対する需要が次第に増している事実を示すものとなった。

イングリッシュ氏は6月24日、パーソナライズされたレコメンデーションを提示するのに機械学習と人間によるキュレーションをミックスさせたポッドキャスト発見アプリMoonbeamを立ち上げた。ユーザーが好きそうなニュースフィードスタイルのコンテンツストリームを作るという、Podzが提供しているものと似ているように聞こえるかもしれない。しかしMoonbeamは、ポッドキャストホストがMoonbeamで特集する自身の番組のクリップを選べるようにしているクリエイターフレンドリーなプラットフォームを作ることで賭けに出ている。Moonbeamはまた、ファンが番組を気に入った場合、そのクリエイターにチップを送れるようにもしている(Moonbeamは手数料を取らないが、ポッドキャスターが考慮に入れなければならないアプリ内購入手数料はある)。

「Podzは発見のための1つのアプローチですが、多くの人がこの問題に取り組むべきニーズがあると考えています」とイングリッシュ氏はTechCrunchに語った。「MoonbeamがPodzと異なる点は、人間のエディターがいることです」

イングリッシュ氏は、部分的には洗練された発見アルゴリズムのお陰でユビキタスな存在になったTikTokに感化された。エンジニアとして、同氏は楽しみでInstagramやTwitterなどのアプリをよく再設計する。しかしポッドキャスティングに興味を持つようになるにつれ、同氏はTikTokのように機能しつつ新しいポッドキャストを見つけるのを手伝うアプリを作りたくなった。TikTokでいうとFor Youページに相当するBeamセクションでは、長さ数分のクリップをユーザーに提供する。そうしたクリップにどのように反応するかに基づき、アルゴリズムはあなたがどういう種のポッドキャストを視聴したいかを学習する。

「機械学習はあなたの友人よりもあなたにうってつけのコンテンツを探すことができます。あなたが持っているのと同じような面白いユーモアのセンスを持っている人をドイツで発見するかもしれません。あなたの最も親しい友人とは少し違うかもしれません」とイングリッシュ氏は話した。「機械学習はユーザークラスタリングをします。あなたが好きなものと似たようなものを好むユーザーを見つけると、Moonbeamでそうしたユーザーが聴いている番組を共有できます」

しかしMoonbeamのようなアプリで注意が必要なのは、多くの人がアプリを使うほどに、さらに機能するようになることだ。公正に言うと、アプリは6月24日にリリースされたが、初期段階ではポッドキャストレコメンデーションの多くは比較的よく知られた番組から選ばれる。しかしすでに多くのポッドキャストがあることから(全ての番組がNPRによって制作されているわけではない!)、問題は「This American Life」を発見することではないということだ。大手制作スタジオのサポートがなければポッドキャスト業界で試みようとしないような新出のクリエイターを探している。クチコミにより一晩でセンセーションを起こすことが十分可能であり、これはクリエイターにとってTikTokを価値あるものにしている要素だ。ポッドキャスター向けに同じような価値を生み出すアプリがあったらどうだろう?

Moonbeamは2週間ごとにソフトウェアをアップデートする計画だ。アップデートではリスナーがお気に入りのポッドキャストを制作したチームとやり取りできるようにする一連のツールを導入する見込みだ。こうした機能の最初のものとなるチップはすでにアプリに導入されている。間もなく、ファンとポッドキャスターはMoonbeamでシェアするために自前のクリップを作ることができるようになる。Moonbeamのウェブサイトに誘導するポッドキャストのホストは現在、自身の番組を宣伝し、そのクリップを作ることができる。Headlinerのようなアプリよりもナビゲートするのはややスムーズではないが、機能的だ。

「リスナーとホストの間にかなりのツールを追加するつもりです」とイングリッシュ氏は話した。「関係構築はとても重要です。我々はそれを直接プレイヤーの中でしたいと考えています。Facebookや他のサイトに行く必要はないようにしたいのです」

Moonbeamではアプリでエピソード全てを聴いたり、特定の番組を検索したりできるため(たとえBeamに表示されなくても)ポッドキャッチャーとしても機能するが、ポッドキャッチャーはたくさんある一方で発見アプリはそうではない。Moonbeamがそうした状況を変えることを期待したい。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット: Moonbeam

[原文へ]

(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトのナデラCEOがアップルに「Windows版iMessageを歓迎する」と呼びかけ

マイクロソフトのナデラCEOがアップルに「Windows版iMessageを歓迎する」と呼びかけ

ymgerman via Getty Images

マイクロソフトは本日未明に次世代OS「Windows 11」を正式発表し、それとともにAndroidアプリもWindows上で動く上にMicrosoft Storeアプリから入手できる見通しも明らかにしました。

その後MSのサティア・ナデラCEOはThe Wall Street Journalのインタビューにて、アップルのiMessage(日本名は「メッセージ」)をWindowsに迎え入れることを歓迎するなどを語っています。

ナデラCEOいわく、Windows 11の大きな目標の1つは「サードパーティ製アプリ市場への開放」であり、Microsoft Storeの枠を超えて創造性の中心になるということ。その上で「すべてのアプリ」が参加するよう招かれていると述べています。

その上で順調とは言えないのが、iPhoneとWindowsの連携です。WindowsとAndroidデバイスとは「スマホ同期(Your Phone)」から密に連携し、ついにAndroidアプリがWindows上で動くにいたりましたが、iPhoneとはそうではありません。この点につきナデラCEOは「もっと上手くいくようにしたい」と語っています。

さらにナデラCEOは、他の企業と同じくアップルがWindows上でやりたいことを行うのは歓迎されると述べ、その1つとしてWindows版iMessageの可能性にも言及したという流れです。

iMessageは(少なくとも米国では)アップル製品を代表するアプリであり、iPhoneやiPad、Macに共通で搭載されているものです。アップルは今年(2021年)秋にビデオ通話アプリFaceTimeをAndroidやWindowsにも部分的に解放すると発表済みですが、iMessageについてアップル製品の独占であることに変更はありません。

なぜ、アップルはiMessageを他のプラットフォームに解放しようとしないのか。先日のEpic Gamesとの訴訟のなかで、裁判資料として提出された社内メールからは、アップルが一度はAndroid版iMessageを検討しながらも、幹部らが「iPhoneユーザーが子供にAndroidスマホを買い与える際の障害を取り除くことになる」つまりAndroidに顧客を奪われることを懸念して、結局は取りやめにされたことが明らかとなっていました

おそらくナデラCEOもその資料には目を通していて、アップルの意図は織りこみ済みのはず。Windows 11とともに発表されたストアの刷新では、MSの決済システムを使う必要もない、MSに手数料を支払わなくても良いとされていますが、これは正にアップルがApp Storeの30%手数料を一部を除いて守り続け、自社システム以外の独自購入方法を認めないことと真逆と言えます。

MSはアップルに表向きはWindows版iMessageの歓迎を呼びかけることで、実は挑発しているのかもしれません。

Windows 11: Microsoft CEO Satya Nadella on the New ‘Start’ of the PC (Exclusive) | WSJ

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

関連記事
マイクロソフトがWindows 11を正式発表、アマゾンと驚きの提携でAndroidアプリも利用可能に、年末商戦までに一般発売
MSはコミュニケーション重視、Teamsのチャット機能が「Windows 11」に直接組み込まれる
AndroidアプリがAmazonアプリストア経由でWindows 11に登場、ウィンドウとして動作
アップルがiOS 15発表、「つながり続ける」「集中する」といった4つの柱を掲げFaceTime、通知などの新機能満載
アップルがFaceTimeのアップデートを発表、Androidユーザーも利用可能に
マイクロソフトのナデラCEOがBuild 2021で「自らテストしてきた」次世代Windowsに言及

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:iMessage(製品・サービス)App Store(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Amazon / アマゾン(企業)Android(製品・サービス)Satya Nadella / サティア・ナデラWindows(製品・サービス)Windows 11(製品・サービス)OS / オペレーティングシステム(用語)FaceTime(製品・サービス)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Store(製品・サービス)Microsoft Teams(製品・サービス)

AndroidアプリがAmazonアプリストア経由でWindows 11に登場、ウィンドウとして動作

エコシステムは奇妙な仲間を生む。米国時間6月24日に行われた「Windows 11」イベントでは、最近記憶する中でもっとも奇妙な、そしてもっとも予想外だったニュースの1つが発表された。Microsoft(マイクロソフト)は、次のメジャーバージョンのOSでAndroidアプリを利用可能にする。

チーフプロダクトオフィサーであるPanos Panay(パノス・パネイ)氏は、この追加を「もう1つだけ小さなサプライズ」と呼び、モバイルアプリはスタートメニューやタスクバーに統合できると述べた。また、OSの新しいアプリ配置UIの一部として、タイル状に整列させたり「ウィンドウ」になったりする。

画像クレジット:Microsoft

これらのAndroidアプリは、Amazonアプリストアを経由してMicrosoft Store上で提供される。同社は、OSのデモで動作するTikTok(ティックトック)を紹介した。同アプリはモバイルファーストのデザインから予想されるように、縦長のポートレートで表示されている。

Androidアプリは185万種類あるので、現在のところ、これはMicrosoftのアプリストアに新しいコンテンツを大量に流し込み、最新の人気モバイルアプリをいきなりプラットフォーム上で利用できるようにする方法だ。しかし(Intel Bridge上に構築された)この体験が最終的にどれほど良いものかは、時が経ってみないとわからない。

Windows 11は2021年の年末ホリデーシーズンにリリースされる。

関連記事
マイクロソフトがWindows 11を正式発表、アマゾンと驚きの提携でAndroidアプリも利用可能に、年末商戦までに一般発売
MSはコミュニケーション重視、Teamsのチャット機能が「Windows 11」に直接組み込まれる

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftWindows 11WindowsOSパソコンノートパソコンAndroidアプリAmazon

画像クレジット:Microsoft

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

MSはコミュニケーション重視、Teamsのチャット機能が「Windows 11」に直接組み込まれる

ハッピー「Windows 11」デー。Microsoft(マイクロソフト)は2021年末に発売予定の次期OSについて、これまでで最も詳しい情報を提供してくれている。対人コミュニケーションの大半がPCや携帯の画面を介して行われた1年を経て、同社はコミュニケーションソフトウェアを前面に打ち出している。

Windows 11ではMicrosoft Teamsがプリインストールされ、Apple(アップル)のFaceTimeのようなコミュニケーションプラットフォームとより直接的に競合することを目指している。FaceTimeと同様に、ここではクロスデバイスの統合が鍵となり、人々がデスクトップからモバイルへ、そしてまたデスクトップへと動く際に、よりハードウェアにとらわれないサービスを提供する。

画像クレジット:Microsoft

これだけ多くのビデオチャットプラットフォームが溢れている時代に、マイクロソフトが2011年に85億ドル(約9425億円)で買収した、かつての強者「Skype(スカイプ)」の棺に最後の釘が打たれるのではないかという気がしてならない。Skypeでも試みたように、マイクロソフトはこのプラットフォームでコンシューマーとプロフェッショナルの間の境界線を曖昧にしようとしている。

新しいOSではすべてのバージョンにおいて、タスクバーに「Teams Chat」ボタンが直接組み込まれる。

関連記事:マイクロソフトがWindows 11を正式発表、アマゾンと驚きの提携でAndroidアプリも利用可能に、年末商戦までに一般発売

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftWindows 11WindowsMicrosoft Teamsビデオチャット

画像クレジット:Microsoft

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

マイクロソフトがWindows 11を正式発表、アマゾンと驚きの提携でAndroidアプリも利用可能に、年末商戦までに一般発売

数週間にわたるリーク情報と前宣伝を経て、Microsoft(マイクロソフト)は米国時間6月24日、デスクトップOSの次期バージョンである「Windows 11」を正式に発表した。同社はかつて「Windows 10」がWindowsの最後のバージョンであると述べ、年2回の定期的なアップグレードを行い大規模な製品のローンチは見送ってきたが、今回のアップデートでの変更点、特にUIの一新は、新しいバージョン番号に値すると明確に考えたようだ。

マイクロソフトは年末商戦までにWindows 11を一般ユーザーにリリースすることを計画しているため、発売は2021年11月下旬頃になると思われる。その前に、おそらく来週から多くのパブリックベータ版が公開されるだろう。Windows 11は既存のWindows 10ユーザーであれば、無料アップグレードとなる。

Windows 10Xの開発と最終的な廃止を見守ってきた方には、デュアルスクリーンおよび(ひいては)シングルスクリーンのノートPC向けにUIを簡素化したマイクロソフトのOSや、再設計されたスタートメニューに至るまで、ここで挙げるものの多くは見覚えがあるだろう。実際、Windows 11のスクリーンショットとWindows 10Xの初期プレビューを見せられたら、見分けるのは難しいのではないだろうか。

画像クレジット:Microsoft

MicrosoftのチーフプロダクトオフィサーであるPanos Panay(パノス・パネイ)氏が24日の発表で述べたところによると、デザインの全体的なアイデアはユーザーに「驚くほどの静寂感」を感じさせることだそうだが、同時にWindowsチームは高速化にも取り組んできた。例えばWindowsアップデートは40%高速化されることになっているが、パネイ氏はマシンの起動やブラウジングさえもはるかに速く感じられるはずだと述べた。

画像クレジット:Microsoft

ここでの驚きは、Windows上でAndroidアプリを実行できるようになったことだ。Androidアプリは、例えばタスクバーに組み込むことができるネイティブアプリのように動作するという。これらのアプリは、デザインを一新したMicrosoft Store上で、なんと……Amazonアプリストアを経由して提供される。いったい誰がこの展開を予想できただろうか?

画像クレジット:Microsoft

タッチスクリーンユーザーのための新機能や、半透明の質感や影を多用した新しいUI要素の他に、新UIのコア機能の1つに、マイクロソフトが「Snap Layouts(スナップレイアウト)」と呼ぶものがある。これは、ウィンドウを最大化するアイコンにカーソルを合わせると小さなウィジェットがポップアップし、これまではウィンドウを画面の隅にドラッグして移動させていたものを(複数のディスプレイを使用している場合は大変なことが多かった)、テンプレートに合わせて任意のコーナーに簡単に配置できるようにする機能だ。

画像クレジット:Microsoft

もう1つの大きな新機能は、Windows 11には最初からTeamsが統合されていることだ。MicrosoftがTeamsに関して強気であることは周知の事実だ。最近コンシューマー版のTeamsを発表したばかりの同社が、Windows 11にもTeamsを組み込むことは理に適っている。マイクロソフトがWindowsにSkypeを導入したことはなかったので、その点これはかなりの変化だが、基本的にTeamsはマイクロソフトのFacetimeになる。

画像クレジット:Microsoft

Windows 11のリーク情報をご覧になった方は、ウェブウィジェットが目を引く新機能の1つであることをご存知だと思う。「Windowsウィジェットは、AIを搭載した新しくパーソナライズされたフィードで、厳選されたコンテンツを提供します」とパナイ氏は述べている。もちろんウィジェットは新しいものではないが、多くの点で、スタートメニューからライブタイルが削除されたことを補っている。また開発者にとっては、アプリケーションからの情報を表示するための新しいキャンバスとなる。

画像クレジット:Microsoft

もちろん、マイクロソフトがゲームについて語らなければ、新しいWindowsとはいえない。同社は、Windows 11が「最高のPCゲーム体験を提供する」と主張しているが、それ以外に何か言えるわけもない。

画像クレジット:Microsoft

マイクロソフトはXboxで先行導入されているAuto HDRにより、より優れたグラフィックを約束している。同社によると、Windows 11では何千ものゲームのビジュアルが自動的にAuto HDRで向上するとのこと。さらに、Windows 11の新しいストレージAPIのおかげで、CPUに負担をかけずにゲームアセットをすばやくロードできるようになるとしている(ただし、そのためには互換性のあるPCが必要)。また、マイクロソフトのGame PassサービスもXboxアプリとともにWindows 11に組み込まれている。

画像クレジット:Microsoft

予想通り、Microsoft Storeもリニューアルされる。パナイ氏によると、Microsoft Storeはスピードを重視して一から作られたという(ユーザーの不満はスピードだったのだろうか)。同氏は、マイクロソフトは開発者がより多くのアプリをストアに投入できるように支援したいと主張している。マイクロソフトがApple(アップル)との違いを明らかに打ち出そうとしているエリアの1つは、開発者が自分のアプリケーションで独自のコマースエンジンを使用することを認め、マイクロソフトはそこから一切の利益を得ないという部分だ。

画像クレジット:Microsoft

実際、マイクロソフトのSatya Nadella(サティア・ナデラ)CEOは、Windows 11上で開発者が独自プラットフォームを構築する機会を得て欲しいと語っている。「Windowsは、世界の創造の舞台です。この新しいバージョンのWindowsは、私たち1人ひとりに内在するイノベーションと創意工夫を解き放つものです。【略】今日、世界はよりオープンなプラットフォームを必要としています。つまり、アプリがそれ独自のプラットフォームになり得る場所です。Windowsは、Webのように、Windowsよりもさらに大きなものが生まれることができるプラットフォームです。それが、当社がWindows 11で目指すところです」。

画像クレジット:Microsoft

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

データベースクラスタリングのPlanetScaleはシンプルで使いやすい開発者体験を実現

YouTubeで最初に開発されたMySQL用のオープンソースのデータベースクラスタリングシステムVitessを提供するPlanetScaleは米国時間6月23日、Insight Partnersが率いるシリーズBのラウンドで3000万ドル(約33億円)を調達したことを発表した。その他にもa16zとSignalFireが参加している。Crunchbaseによると、これで同社の調達総額は5500万ドル(約61億円)になる。

今回の発表のわずか数週間前には、PlanetScaleは同社自身がホストする新たなデータベースプラットフォームを立ち上げ、それを同じくPlanetScaleと呼んだ。これまでVitessはホストしていたが、同社はこの新サービスで一歩前進し、同社のいう「デベロッパーファーストのデータベース」を提供していく。それは、すべてのインフラストラクチャを抽象化して、デベロッパーがクラウドのゾーンとかクラスターのサイズなどインフラの細部を気にしなくても良いようにする。

PlanetScaleのCEOで共同創業者のJiten Vaidya(ジテン・ヴァイディヤ)氏は、初期のプロダクトの限界について極めて率直に語る。「実のところ、2020年私たちが開発したものは、ホストされるVitessと呼んでもいいものです。今では多くのクラウドプロバイダーが自分のところでデータベースをホストしていますが、それと変わりないものです。つまりこれまでの私たちのプロダクトには、今日のデベロッパーが求める使いやすさやエレガンス、最先端のUXなどがまったく組み込まれていませんでした」。

しかし数カ月前に同社は、元GitHubのエンジニアリング担当副社長Sam Lambert(サム・ランバート)氏を同社のCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)に迎えた。ヴァイディヤ氏によると、ランバート氏はPlanetScaleにデベロッパーの共感をどっさりと盛り込み、この新製品の立ち上げを助けた。

そのランバート氏は次のように語る。「多くの人ががここに来るのは、彼らがデータベースのエキスパートだからではありません。彼らはデータを抱え、そして問題を抱えているのです。しかし、あまりにも多くの企業、中でもデータベースの世界は、我々のような開発者ユーザーの日常について考えたことすらない。ユーザーが実際にやってることの一から十までを、データベースの人たちは考えないのです。大切なことは、顧客に価値を届けることです。しかしデータベースの人間が関心を持つのはデータの保存や取り出しであり、60年代からそればっかりやってきました。そろそろ違うことをやってもいいのでしょう」。

現在、同社のユーザーにはSlackやFigma、GitHub、Squareなどがいて、多くのユーザーに価値を提供していることは事実だ。ランバート氏によると、今のPlanetScaleは、ユーザーにシンプルで使いやすいプロダクトを提供しようとしている。「使いやすいとかシンプルとか美しいという評価は、それが劣っているという意味ではありません。何かが欠けていることを意味しているのでもありません。むしろ他のプロダクトの方が、インフラストラクチャプロダクトに加えられる詩や美という付加的要素を欠いているのです」とランバード氏はいう。

PlanetScaleは今回の新しい資金でチームをグローバルに大きくし、同プラットフォームの採用を加速させたいと考えている。Insight PartnersのマネージングディレクターであるNikhil Sachdev(ニキル・サチデブ)氏が同社の取締役会に加わり、同社のマネージングディレクターであるPraveen Akkiraju(プラビーン・アッキラジュ)氏も、取締役会のオブザーバーとして参加する。

「PlanetScaleは、サーバーレスの現代において、クラウドベースのデータベースの単純性とパフォーマンスとスケーラビリティのバーを高くしました。データベースのデベロッパー体験は、あまりにも長く苦痛を感じるものでした。PlanetScaleは、その鎖を切ろうとしています。スケーラビリティと信頼性における長年の問題を、同社は極めてエレガントで趣味が良く便利な方法で解決しています」とサチデブ氏はいう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:VitessPlanetScale資金調達

画像クレジット:PM Images/Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ライブ会場の再開に合わせてMixhaloが対面式ライブイベント用音声ストリーミングの新技術を発表

全米各地のライブ会場が再開される中、Mixhalo(ミックスヘイロー)は、その対面式ライブイベント用のオーディオストリーミングプラットフォームに「Mixhalo Over Cellular(ミックスヘイロー・オーバー・セルラー)」と「Mixhalo Rodeo(ミックスヘイロー・ロデオ)」と呼ばれる2つの新機能を追加することを発表した。

1つ目の機能は、その名の通り。Wi-Fiに頼る代わりに5Gを活用する。これはMixhaloの初期のWi-Fi製品で魅力とされていた「超低遅延」を提供できると、同社では述べている。

Mixhaloはこの機能を展開するために、携帯電話会社と協力しているが、その社名は明らかにしていない。ただし、この機能はLTEでも利用できるものの、明らかな理由により、5Gの方が低遅延を実現できる機会が多いと言及している。

もう一方の「Rodeo」は、既存の会場の無線ネットワークと連動するように設計されているため、追加のオーバーレイシステムを導入する必要がない。

「Rodeoシステムでは、既存のアクセスポイントがMixhaloのトラフィックを認識し、それに応じてネットワークデータの準備やバッファリングを行うことができるため、実際にネットワークの負担を軽減することができます」と、CEOのJohn Vars(ジョン・ヴァース)氏はTechCrunchに語った。「2015年以降にワイヤレスシステムを導入した会場であれば、Rodeoをサポートするために必要なハードウェアを備えている可能性が高いです。会場のサーバールームにサーバーを設置する必要がありますが、これがRodeoの唯一のハードウェアコンポーネントです」。

画像クレジット:Mixhalo

Incubus(インキュバス)のギタリストであるMike Einziger(マイク・アインジガー)氏らが共同で設立したMixhaloは、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)氏の協力も得て、Disrupt 2017(ディスラプト2017)のステージでプロダクトを発表し、その超低遅延のストリーミング技術でライブイベントのサウンドを観客に届けることを約束した。

当然のことながら、2020年と2021年前半は、ライブイベントと結びついたスタートアップ企業にとって非常に大きな苦難の時となった。新型コロナウイルス感染流行の初期には、契約終了にともない人員削減を余儀なくされたとヴァース氏はTechCrunchに語ったが、その後は多くのパートナーシップのお陰もあり、なんとか成長していると付け加えた。

(左から)ファレル・ウィリアムス、Mixhaloの創業者でCEOのマイク・アインジガー、TechCrunchシニアライターのAnthony Ha。2017年5月17日にニューヨーク市のPier 36で開催されたTechCrunch Disrupt NY 2017 – Day 3のステージにて(画像クレジット:Noam Galai/Getty Images for TechCrunch)

「このような状況の中で明るい兆しが見られたのは、一歩下がって中核製品の改善に集中する機会が得られたからです」と、ヴァース氏は語る。「これらの改善には、今回発表したMixhalo RodeoやMixhalo over Cellularの他、会場内の物理的な位置に基づいて遅延を動的に調整する機能などが含まれています。新型コロナウイルス感染流行前のビジネスに全力投球していた中では、これらの改善に取り組む時間や機会が得られなかったかもしれません。これらの新機能により、スポーツ界のパートナーからの関心が高まり、Mixhaloの使用例が本格的に飛躍することを期待しています」。

関連記事:

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Mixhaloライブストリーミングイベント音楽音楽ストリーミングエンターテインメント5Gアプリ

画像クレジット:WIN-Initiative

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Androidスマホで「Googleが繰り返し停止しています」エラー多発、Google Japanが「不具合を修正中」として解決策を試すよう呼びかけ

Androidスマホで「Googleが繰り返し停止しています」エラー多発、Google Japanが「不具合を修正中」として解決策を試すよう呼びかけ

Androidスマートフォンで「Googleが繰り返し停止しています」というエラーが表示されるとの報告がSNSで相次いでいます。

筆者の手元のスマートフォン(Galaxy S21 Ultra)でも同様のエラーを確認しており、一時Googleアプリが開けなくなっていましたが、現在(15時21分)は開けるようになっています。(更新:15:32)再びGoogleアプリが開けなくなりました。

また、NTTドコモも公式Twitterアカウントで、一部のGoogleアプリが利用しづらい状況にあることを案内しています。

このエラーは、同社が配信したGoogeアプリの最新バージョン「12.23.16.23.arm64」に起因している模様。ストアで更新をアンインストールするか、設定からGoogleアプリを無効にするといった対処方法がSNSで紹介されています。

同様のエラーは日本のみならず、全世界で報告されています。

Androidスマートフォンでは、今年3月にもGoogle PlayやGmailなど一部のアプリが起動できなくなる不具合が発生しています。その際はシステムアプリの不具合が原因とされていました。

Google Japanは「不具合を修正中」とツイートしたうえで、問題が発生した場合、下記解決策を試すよう呼びかけています。

  1. Androidの設定アプリを起動
  2. アプリと通知をタップ
  3. 〇〇個のアプリをすべて表示をタップ
  4. アプリのリストから、Googleを探してタップ(あるいは右上の検索ボタンでGoogleを検索
  5. ストレージとキャッシュをタップ
  6. 「ストレージを消去」または「容量を管理」をタップ
  7. 「データを全て消去」をタップ

注:これにより、Google アシスタント の設定を含む、Google アプリの設定のいくつかが初期化されます。設定を変更していた場合は、再度見直して頂くようお願いいたします。

Engadget日本版より転載)

関連記事
iPhoneのWi-Fi機能にバグ、特定の名前を持つWi-Fiスポットに繋ぐとすべてのWi-Fi機能が無効化(回避策あり)
Android版「Googleアプリ」にセキュリティバグ、検索履歴などほぼすべての個人情報が危険に晒されていた
サムスンのプリインストール済み純正アプリに7つのセキュリティ上の欠陥

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アプリ / モバイルアプリ(用語)Android(製品・サービス)Google / グーグル(企業)バグ / 脆弱性(用語)

【インタビュー】アップル幹部が語る次期iPad OSのメンタルモデルとマルチタスクの強化

2021年のWWDCカンファレンスで発表されたiPadの新しいソフトウェアに、非常に大きな期待が寄せられている。iPadのラインナップ、特に大型のiPad Proでは、ここ数年、驚異的なペースでハードウェアのイノベーションが行われてきた。その一方、iPadのソフトウェア、特に複数のアプリを同時に使用できる機能や、プロのソフトウェア開発者向けのプロセスで使用できる機能のイノベーションが明らかに遅いことに、厳しい視線が注がれている。

そのような意見に反論しようとするかのように、iOS 15とiPadOS 15に関する2021年の発表では、マルチタスク機能の使い勝手が大幅に改善されていることや、システム全体に関する機能のほぼすべてに開発者向けAPIが塔載されていることが紹介された。筆者は、Apple(アップル)のワールドワイド製品マーケティング担当VPのBob Borchers(ボブ・ボーチャーズ)氏と、Appleのインテリジェントシステムエクスペリエンス担当VPのSebastien(Seb)Marineau-Mes(セバスティアン[セブ]・マリノー・メス)氏に、iPadOS 15のリリースについて話を聞き、これらのさまざまな改善点について意見を交わす機会を得た。

マリノー・メス氏は、Appleのソフトウェア担当SVPであるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏のチームメンバーであり、今回の新バージョンの開発において中心的な役割を果たした人物だ。

iPadには、SharePlay、Live Text、Focuses、Universal Control、オンデバイスのSiri処理、プロトタイプ作成ツールとして設計された新しいSwift Playgroundsなど、多くの新しいコア機能が搭載されている。ただし、iPad Proユーザーが最も期待しているのは、Appleのマルチタスクシステムの改善だ。

iPadOSに関するTechCrunchの記事を読んだことがある読者なら、ジェスチャーを重視したマルチタスクインターフェイスを批判する声があることをご存知だろう。筆者もその1人だ。条件さえそろえば便利かもしれないが、ジェスチャーシステムは見つけにくく、さまざまな種類のアプリを組み合わせた階層構造が複雑であるため、初心者はおろか、上級ユーザーでも、ジェスチャーを正しく使うことは少し難しかった。

関連記事:最新iPad Proは旧モデルから乗り換えるほどではないが、マウスとキーボードは快適で便利

iPadが市場で唯一成功したタブレット端末であることから、Appleは、業界でどのようなパラダイムが標準として確立されるかを左右する唯一無二の立場にある。このようなデバイスで作業したらこのように感じられるようにすべきだ、このように見えるようにすべきだと言える立場にある企業はそうそうない。

そこでボーチャーズ氏とマリノー・メス氏にマルチタスクについて少し話を伺った。具体的には、iPadOS 15のマルチタスクの設計におけるAppleの哲学と、旧バージョンからのアップデートについてである。旧バージョンでは、指のアクロバティックな動きと、画面の端から飛び出す物体に対する強い空間認識が必要だった。

私が空間的な動きについて話すと、ボーチャーズ氏は次のように言った。「その通りだと思います。しかし私たちが考えているのは、一歩前進して、マルチタスク化により見つけやすさ、使いやすさ、高性能化を実現することです。これまでマルチタスクは上級者が利用していた機能ですが、もっと普及させたいと考えています。なぜならマルチタスクは多くの人々に役立つと思うからです。だからこそ見つけやすさや使いやすさが重要なのです」。

「空間モデルに関するあなたの指摘は、非常に核心をついています。私たちの目標の1つは、エクスペリエンスにおける空間モデルをより明確にすることでした」とマリノー・メス氏は語る。「明確な空間モデルでは、例えば分割表示にして、ウィンドウの1つを交換する場合、カーテンを開けて、別のアプリを横に押し込むと、そのアプリを見ることができます。これは隠れたメンタルモデルではなく、非常に明示的なモデルです」。

マリノー・メス氏はこう続ける。「もう1つの好事例は、スイッチャーアプリを使用してウィンドウを再構成する際に、分割表示の並べ替えやアプリの削除などをドラッグ&ドロップで行うことです。つまり「隠された」メンタルモデルではありません。ユーザーにとって明示的なモデルを使い、あらゆるアニメーションやアフォーダンスを通じて空間モデルを強化することを目指しています」。

マリノー・メス氏によると、Appleの今回の目標は、マルチタスクが選択肢の1つであることをユーザーに理解してもらうために、アフォーダンスを加えることだった。アフォーダンスはすべてのアプリとウィンドウの上部にある一連の小さな点であり、利用可能な構成を明示的に選べるためのものだ。これまではアプリをドックに追加して切り替えていた。同氏は続けて、このバージョンのOSでは一貫性が重要な指標だったと述べている。例えば、Slide Overアプリは、他のすべてのアプリと同じようにスイッチャービューに表示される。つまりボタンを使ってアプリの設定を選択しても、スイッチャーでドラッグ&ドロップしても同じ結果が得られるということだ。

マリノー・メス氏によると、ダッシュボードでは「実行しているすべてのアプリをひと目で見ることができる他、iPadのインターフェイスを使ってアプリをどのように操作しているかを示す完全なモデルが表示される」という。

この「ひと目でわかる」システムマップは、上級ユーザーにとっては歓迎すべきものだ。非常に積極的なプロのユーザーである筆者でさえ、開いているウィンドウの数と使用するタイミングを把握できないSlide Overアプリは、何よりも厄介だった。スイッチャー自体にSlide Overアプリを組み込む機能は、Appleが何年も前からOSに塔載したいと考えていた機能の1つであるが、今回ようやくiPadに塔載されることになった。組織の粘り強さこそが、取り組むべき重要な課題だったのだ。

「私たちは、強い信念を持って、iPadのどこに何があるかがわかるようなメンタルモデルを構築しています。そして粘り強さに関しては、あなたのおっしゃる通りです。例えばホーム画面についても粘り強く取り組む必要があると思っています。ユーザーはホーム画面や設定したすべてのアプリのどこに何があるかについて、非常に強いメンタルモデルを持っています。だからこそ、そうしたメンタルモデルをしっかりと維持しつつも、ユーザーがスイッチャーでアプリを再編成できるようにしているのです」。

マリノー・メス氏は、アプリが起動しているすべてのインスタンスやウィンドウを表示する新しい「シェルフ」機能についても言及した。同氏がいうには、シェルフ機能をシステム全体の機能ではなくアプリごとの機能として実装したのは、シェルフを特定のアプリと関連づけるほうが、構築しようとしている全体的なメンタルモデルに合致するからだ。2021年後半には、1つのプロジェクト中に多くの文書やウィンドウを一度に開いてアクティブにできる、より専門的なアプリがリリースされる。その時、このシェルフの価値をさらに強く実感できるかもしれない。

iPadOS 15では、上級者の要望に応えて、システム全体で使える豊富なキーボードショートカットも提供されている。インターフェイスが矢印キーで操作できるようになった他、多くの高度なコマンドも用意されている。ゲームコントローラを使ってiPadを操作することも可能だ。

「2021年の主な目標の1つが、システム内のあらゆるものを基本的にキーボードを使って操作できるようにすることでした」とマリノー・メス氏は述べ、次のように続けた。「そのため、キーボードから手を放したくなければ、放す必要はないのです。新しいマルチタスクのアフォーダンスと機能は、すべてキーボードショートカットで操作できます。新しいキーボードショートカットメニューバーには、利用できるすべてのショートカットが表示されるため、非常に発見しやすい環境が実現しています。ショートカットを検索することもできます。またこれは細かいことですが、MacとiPadOSのショートカットの合理化には、かなり意識的に取り組みました。そのため、例えばユニバーサルコントロールを使用している場合、ある環境から別の環境にシームレスに移動することができます。どの場所でも一貫性を確保することを目指しています」。

一方でジェスチャーも、ジェスチャーに慣れている既存のユーザーに配慮し、一貫性を保つために残される。

筆者がより興味深く便利だと感じた改善点の1つは、Center Window(センターウィンドウ)とそれに付随するAPIの導入である。メール、メモ、メッセージなどのいくつかのAppleアプリは、重なり合うウィンドウにアイテムをポップアウトできるようになった。

この新しい要素を加えたことについて、マリノー・メス氏は次のように語る。「非常に慎重に決断しました。フローティングウィンドウを使用できることで、新たなレベルの生産性がもたらされます。フローティングウィンドウの後ろにコンテンツを表示できるため、シームレスなカット&ペーストが可能になります。これは、従来のiPadOSモデルではできないことでした。またセンターウィンドウが分割表示ウィンドウの1つ、または全画面表示になり、その後センターウィンドウに戻ることができるようにして、他のマルチタスク機能との一貫性を保つことも目指しています。私たちはこれをすばらしい追加機能だと考えており、サードパーティーがこの機能を採用してくれることを楽しみにしています」。

最も強力なクリエイティブアプリの多くはサードパーティーによって構築されており、これらのアプリを真に役立つものにするには、こうした技術を採用しなければならない。そう仮定すると、Appleが発表したiPadOS 15の新機能の早期導入には不安要素がある。しかしボーチャーズ氏によると、Appleは、これらの新しいパラダイムや技術がプロ向けアプリにできるだけ多く採用されるように懸命に取り組んでいるという。その結果、2021年秋頃になれば、iPadは、プロが望む高度な作業を行うための快適なホストとして認識されるだろう、とのことだ。

iPadが存在するこのマルチモーダルな世界を可能にしているものの1つがユニバーサルコントロールだ。この新機能では、Bluetooth信号、ピア・ツー・ピアWiFi、iPadのタッチパッドのサポートを利用し、デバイスを互いに近づけ、マウスを画面の端にスライドして、MacやiPadにシームレスに接続することができる。ユーザーの意図を読みとって巧みに活用している事例だ。

カリフォルニア州クパチーノ。2021年6月7日、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長クレイグ・フェデリギ氏が、Apple Parkで開催されたAppleのWorldwide Developers Conferenceの基調講演ビデオの中で、ユニバーサルコントロールの使いやすさを紹介している(画像クレジット:Apple Inc.)

「プロユーザーかどうかに関わらず、1人でMac、iPad、他のiPhoneを持っているユーザーが多いということに気づきました。そして私たちは、これらを連携することが強力なパワーを発揮すると信じています」とボーチャーズ氏は言い、続けて次のように述べた。「AppleのContinuityモデルを拡張して、iPadOSというすばらしいプラットフォームを利用しながら、その隣でMacを操作できるようにするのは、当然だと感じました。大きな課題は、魔法のようなシンプルな方法でそれをどう実現するかでした。そしてセブ氏とそのチームがそれを成し遂げたのです」。

「これはContinuity機能とSidecarで築いた基盤の上に成り立っています」とマリノー・メス氏は付け加えた。「私たちはセットアップを可能な限りシームレスにする方法や、デバイスが隣り合っていることを検出する方法について、検討に検討を重ねました」。

「もう1つ考えたことは、人々が求めているワークフローとは何か、そのワークフローに不可欠な機能は何かという点でした。私たちは、プラットフォーム間でコンテンツをシームレスにドラッグしたり、カット&ペーストしたりする機能などが非常に重要だと思いました。それこそが体験に魔法をかけるものだと考えたからです」。

ボーチャーズ氏は「これによりすべてのContinuity機能がより見つけやすくなる」と付け加えた。例えば、Continuity機能の共有クリップボードは常に機能しているが、目に見えない。それをマウス駆動型の視覚的なモデルに拡張することは理に適っていると言える。

「当然ながら、プラットフォームのどこにでもコンテンツをドラッグできます」とボーチャーズ氏はいう。

「ボブ、あなたは『当然』と言いましたよね」とマリノー・メス氏は笑いながら言った。「しかし長年プラットフォームに取り組んできた私たちにとって、『当然』を実現するのは技術的に非常に難しく、まったく当然なことではないのです」。

iPadOS 15の有望な拡張機能が見られるもう1つの分野は「アプリ内」という考えを脱却した、システム全体に関わるアクティビティだ。例えば、アプリに埋め込まれるレコメンデーション機能、ビデオ通話が見つかると表示されるShareplay、あらゆる写真を、キーボードで検索可能なインデックス付きアーカイブに変えるLive Textなどである。

もう1つのシステム拡張機能はQuick Noteである。システムのどこからでも画面の下隅からスワイプして使用できる。

「Quick Noteではいくつかおもしろいことができます。1つはリンクです。SafariやYelpなどのアプリで作業しているときに、表示しているコンテンツへのリンクをすばやくQuick Noteに追加することができます。あなたはどうか知りませんが、私は調べものをするときに頻繁にこの動作をしています」とマリノー・メス氏はいう。

「以前は、カット&ペーストしたり、おそらくスクリーンショットを取ったり、メモを取ったりしていたことでしょう。それが今では、システム全体で非常にシームレスに、流れを止めずに行うことができるようになりました。逆に、Safariを起動中に、Safari内のそのページについて記載したメモがあれば、画面の右下隅にサムネイルとして表示されます。私たちは、このメモ体験をシステム全体に適用し、どこからでも簡単にアクセスできるようにしようと本当に努力しました」。

AppleがiPadOS 15とiOS 15に導入しているシステム全体にわたる機能の多くは、開発者が利用できるAPIを備えている。AppleのAPIは長い間、アプリを強化する手段として開発者に提供されるものではなく、多くの場合、フレームワークの一覧のプライベートセクションに存在していた。しかし最新のAPIは必ずしもそうではない。ボーチャーズ氏によると、これはシステム全体に「より広範なインテリジェンスの基盤」を提供する意図的な動きである。

この広範なインテリジェンスには、Siriが大量のコマンドをローカルスコープに移動させることも含まれる。そのために、Appleの音声認識の大部分を新しいOSのデバイス上の構成に移す必要があった。ボーチャーズ氏曰く、その結果、毎日のSiri体験が大幅に改善され、多くの一般的なコマンドが要求に応じてすぐに実行されるようになった。これまでは一か八かの勝負をしているようだった。Siriには、クラウドに届いたコマンドは決して戻ってこないという悪い評判がある。そうした風評をなくすことで、Siriの有用性に対する公共認識が改善する可能性がある。

Apple Neural Engine(ANE)がもたらすインテリジェンスをデバイスに導入することにより、システム全体、過去、現在、その瞬間のあらゆる写真に含まれるテキストをインデックス化することも可能だ。

「Live Text機能を使用できるのはカメラと写真だけでしたが、私たちは、Safariやクイックルックなど、画像があるところならどこでも、Live Textを使用できるようにしたかったのです」とマリノー・メス氏は語った。「私がLive Textのデモで気に入っているのが、Wi-Fi接続用の長く複雑なパスワードを入力するフィールドでLive Textを使用するデモです。キーボードでパスワードを表示して写真を撮り、写真の中のテキストをコピーしてフィールドに貼り付けるだけです。まさに魔法のようです」。

iPadOS 15の開発者向けサービスに関しては、筆者はSwift Playgroundsについて具体的に話を聞いた。Swift Playgroundsには、アプリを記述し、コンパイルし、App Storeでリリースできる機能が追加されている。iPadで初めての機能である。これは開発者が望んでいたネイティブのXcodeではない。しかしボーチャーズ氏によるとSwift Playgroundsは「単にプログラミングを教える」ためのものでから「多くの開発者が実務で使用する」ものへと進化しているという。

「ここで得られた有用な知見の1つは、多くのプロの開発者がSwift Playgroundsをプロトタイプ用プラットフォームとして利用していることです。何かを試してみたいとき、それがバスの中であろうが公園であろうが、場所を問わずに非常に簡単に使えるため、『コードを学びたい』ときに非常に便利です」。

「開発者であれば、作業しているデバイス上でアプリを実行できると優れた忠実性を得られるため、生産性が上がります。またプロジェクト形式がオープンであるため、XcodeとPlaygroundsの間を行き来できます。ボブがいうように、私たちが想定しているのは、他の開発環境を持ち歩かなくても、Playgroundsを使用して外出先で多くのラピッドプロトタイピングを実行できることです。そのためPlaygroundsは、2021年開発ツールに追加された本当に強力な機能になると考えています」と、マリノー・メス氏は付け加えた。

2018年に、筆者はAppleの新しいチームを紹介した。このチームは、(当時は明かされていなかった)新しいMac Pro、iMac、MacBook、iPadなどのマシンが関連するプロセスがうまく進むように、Appleが実世界のユースケースに対応していることを確認できるテスト装置を構築していた。当時注目を集めたデモの1つが、Logicなどの音楽アプリと緊密に連携することによってiPadの入力モデルがコアアプリを補完できるようにするものだった。タッチインターフェイスを使用して、より直感的にパッド上でリズムを刻んだり、色や音声を調整したりできるようにした。最近のAppleの取り組みの多くは、ユーザーがさまざまなコンピューティングプラットフォームをシームレスに行き来し、それぞれの強み(元々ある能力、携帯性、タッチなど)を活かしてワークフローを補完することを目的としているようだ。iPadOS 15の多くは、このような方向性を持っていると思われる。

「ソフトウェアが原因で十分に力を発揮できない作業デバイス」というiPadのイメージをiPadOS 15が覆せるかどうかの判断は、2021年後半にiPadOS 15がリリースされるまで保留にしたい。しかし筆者は、短期的には慎重ながら楽観的な見方をしており「アプリの枠」を超えた一連の機能強化、単一アプリの内外でマルチタスクを実行するためのより明確なアフォーダンス、そしてAPIサポートへの献身的な取り組みは、拡張を推進しようとするiPadソフトウェアチームの精神の表れだと感じている。概して良い兆候だと思う。

関連記事
マルチタスクが改善されたiPadOS 15、新Swift Playgroundsでアプリ作成から公開まで可能に
iOSアプリ内でそれぞれのサブスクの管理や返金が可能に、アップルがStoreKit 2を発表
iOS 15でSpotlightが大幅強化、アプリのインストールも可能に
iOS 15ではさらにセキュリティとプライバシー保護機能が充実
AppleマップがiOS 15アップグレードでより詳細な地図、交通機関ナビ、ARビューなど追加

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDC2021iPadOS 15iPadiPadOSインタビュー

画像クレジット:

原文へ

(文:Matthew Panzarino、翻訳:Dragonfly)

「音声認識AIの競争に対する懸念が高まっている」とEUが発表

欧州連合はおよそ1年にわたり、AIを使用した音声アシスタントおよびテクノロジーと連携したモノのインターネット(IoT)に関連する競争の影響を調査してきた。今回紹介する1回目の報告では、EU委員会の立案者が表明する潜在的な懸念が、今後の幅広いデジタル法案決定への情報提供に役立つかどうかという点が扱われる。

2020年末に提出されたEUの法案の大部分は、その地域で実行中のいわゆる「ゲートキーパー」プラットフォームに対する法規の事前適用に向けて、すでに準備が整っている。EU全土に適用されるデジタルサービス法にまとめられた、仲介を行う強力なプラットフォームに当てはまるビジネス規範「命令事項および禁止事項」のリストも含まれている。

しかしもちろん、テクノロジーを活用する流れが止まることはない。競争政策を担当するMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステガー)氏はこれまで、音声認識AIテクノロジーに注目してきた。自分の部門で「データへのアクセスがどのようにマーケットプレイスを変えるのか探っている」と彼女が述べた2019年には、ユーザーの選択に対して引き起こされる課題に関する懸念を表明していた。

関連記事:EU競争政策担当委員の提言「巨大ハイテク企業を分割してはいけない、データアクセスを規制せよ」

委員会は2020年の7月に、IoT関連の競争に関する懸念について精査するため、セクターごとの調査を発表し、確かな一歩を踏み出した。

これは、コンシューマー向けのIoT製品やサービスに関連する市場で(ヨーロッパ、アジア、米国で)事業を展開する200以上の企業を対象とした調査に基づき、現在、暫定報告書として公開されている。さらに、最終報告が来年の前期に発表される前に、(9月1日までの)調査結果に対するさらなるフィードバックを要請している。

競争に関して明らかになった潜在的な懸念のうち、主な分野には、同じスマートデバイスで異なる音声アシスタントを使用しにくくする音声アシスタントおよび手法に関連した、独占行為または結託行為がある。また、ユーザー、さまざまなデバイス、サービスの市場との間で、音声アシスタントおよびモバイルOSが担う仲介的な役割も懸念となっている。この場合の懸念は、プラットフォーム音声AIのオーナーが、ユーザーの関係性を管理することで、競合他社のIoTサービスが発見される可能性や可視性に影響を与える可能性があるという点である。

データへの(不平等な)アクセスに関連した懸念もある。調査の参加者は、プラットフォームと音声アシスタントのオペレーターが、ユーザーのデータに対して広範囲にアクセスできると述べた。これには、サードパーティーのスマートデバイスやコンシューマー向けのIoTサービスと通信した内容が、仲介的な音声AIを使用することで取得されてしまう可能性も含まれる。

委員会のプレスリリースには「セクター調査に協力した人々は、データへのアクセスと集積された膨大なデータにより、音声アシスタントを提供する側は、汎用音声アシスタントの改善や市場優位性に関連した利点を得られるだけでなく、関連する業界にも容易に応用することが可能になると考えている」と記されている。

第三者の業者が保有するデータを、Amazonが使用しているという点に関するEU独占禁止法の調査(現在進行中)にも、同じような懸念が表れている。このデータとは、Amazonが電子商取引マーケットプレイスから取得できるデータ(委員会によると、オンライン取引市場で競争を妨害する違法行為になり得ると考えられている)のことである。

その報告で注意が喚起されている別の懸念は、コンシューマー向けのIoTセクターにおける相互運用性の欠如である。「特に、音声アシスタントとOSを提供するひと握りのプロバイダーが、一方的に相互運用性と統合プロセスを管理しているため、自社のサービスと比較して、サードパーティーのスマートデバイスおよびコンシューマー向けのIoTサービスの機能を制限することが可能である」とのことである。

上記の点は特に驚くことではないだろう。しかし、該当する地域で音声アシスタントAIの普及率が低い現段階で、委員会が競争上のリスクに対処しようと努めており、採用できそうな対策を思案し始めているのは注目に値する。

委員会はこのプレスリリースで、音声アシスタントテクノロジーの使用率は世界的に高まっており、2020年から2024年で2倍になる(音声AIの数が42~84億個になる)との予想を発表している。とはいえ、Eurostat data(ユーロスタット・データ)の引用によれば、2020年の調査対象で、すでに音声アシスタントを使用したことがあるEU市民は11%のみであった。

EU委員会の立案者は、デジタル開発の現状に精通し、巨大テック企業の最初の波を抑制する上で、競争政策に関連する最近の失敗から学んだはずである。これらの巨大テック企業は、Amazon Alexa(アマゾンアレクサ)、Googleアシスタント、Apple(アップル)のSiri(シリ)を使って、現在の音声AI市場を間違いなく独占し続けるであろう。競争が脅かされていることは明白であり、過去の間違いを繰り返すことがないように、委員会は目を光らせている。

しかし、ユーザーが利用しやすいウェブサイト、プッシュボタン、ブランド化された利便性をUSPとしている音声AIに対して、政策立案者が競争に関する法整備にどう取り組んでいくのか、これから明らかになっていく点も多いだろう。

相互運用性を強制すると複雑になる可能性があるため、使いやすさという点では好ましくない。また、ユーザーデータのプライバシーなど、他の懸念が浮上する可能性もある。

コンシューマー向けのテクノロジーについてユーザーが意見を述べ、テクノロジーを管理できるようにするのは良いアイデアだが、少なくともまず、選択できるプラットフォームの在り方そのものが操作されるまた搾取されるものであってはならない。

IoTと競争に関する問題が数多くあるのは確かだか、独占プラットフォームがすべての基準をもう一度定めることがないように規制措置を事前に講じることができれば、スタートアップや小規模企業にもチャンスが訪れる可能性がある。

ベステガー氏は声明に対するコメントとして「このセクター調査を開始した時点では、このセクターでのゲートキーパーのリスクが新たに高まっているのではないかと懸念していました。大企業の持つ影響力により、新興ビジネスやコンシューマーに損害をもたらすほど競争が妨げられることを心配していました。現在発表されている最初の報告から、セクター内の多くの関係者が同じ懸念を抱いていることは明らかです。コンシューマーの毎日の生活において、モノのインターネットのすばらしい可能性を最大限に引き出すには、公平な競争が必要です。この分析結果は、今後の法案施行と規制措置に役立ちます。関係する利害関係者すべてから、今後何カ月間でさらにフィードバックを受け取ることを楽しみにしています」と述べた。

セクターごとの報告は、ここからすべて閲覧できる。

【更新】ベステガー氏は調査結果に関するスピーチで、いくつかの行為については、将来的に新たな競争防止違反の訴訟につながる可能性もあると述べた。しかし、そうなるのはまだ先のことであると彼女は強調し、委員会には「懸念の範囲を的確に把握する」必要があるとも述べた。

「これまでのセクター調査の結果により、異なるスマートデバイスとサービスをつなぐオペレーティングシステムと音声アシスタントの主な役割がはっきりしました。この役割により、オペレーティングシステムおよび音声アシスタントのプロバイダーが、競争にマイナスとなる影響を与える可能性があると、回答者は注意を喚起しています。EUでは、Googleアシスタント、Amazon Alexa、AppleのSiriが音声アシスタントの分野で優位に立っています。加えて、グーグル、アマゾン、アップルには、 スマートホームやウェアラブルデバイスのオペレーティングシステムがあり、それぞれデジタルサービスを提供し、スマートデバイスを生産しています」とも語った。

「異なるデバイスとサービスでの通信や相互運用性はほとんどの場合、このような企業に依存しています。加えて、音声アシスタントはユーザーについて多くのことを学習します。スマートデバイスとモノのインターネットサービスは、家にいる時のユーザーの活動に関する大量のデータを生成します」。

「データへのアクセス、ユーザーへのアクセス、切り替えの難しさなど、現時点で明らかになった課題の多くは、デジタルマーケットで法を施行する場合と同じような課題です。実際、デジタルマーケット法に関連して委員会が提案する命令事項および禁止事項について、調査機能によって数多くのケースが報告されています。現段階での事前調査結果と、今後何カ月かの取り組みにより、デジタルマーケット法の対象に関する討議に、セクター調査が寄与することは間違いありません」と付け加えた。

「競争の強化と補完的法的措置によって、すべての人が恩恵を受けられるデジタル経済を作り上げることが目標です。その目標を実現するには、コンシューマー向けのモノのインターネットを含むデジタルマーケットが、どんな規模のビジネスでも参入して成長できる場となり、コンシューマーにとってオープンかつ公平であるかどうかを確かめていく必要があります」。

【更新】委員会の報告に対して、Amazonから送られた声明は以下のとおりである。

スマートホーム分野においては、多くの企業による競争が激化しています。1社だけが勝者となることはなく、勝者となるべきでもありません。弊社では当初からのこの認識に基づいて、アレクサを設計しました。現時点で、アレクサには14万個以上のスマートホーム製品と互換性があるため、デバイスを生産する企業が独自の商品とアレクサを簡単に統合できます。また、1台のデバイスから複数の音声サービスにアクセスできるように、お客様が柔軟に選択できる取り組みとして、音声相互運用イニシアチブ(現在80社が参加中)にも出資しています。

関連記事:グーグルがEUの圧力を受けAndroid検索エンジンの選択画面オークションを廃止、無料化へ

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:音声アシスタントAIIoTEUAmazon AlexaGoogleアシスタントSiri

画像クレジット:Joby Sessions/T3 Magazine / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

プライバシー重視を追い風に快進撃中の検索エンジン「DuckDuckGo」がブラウザとしても使えるデスクトップアプリ開発

テクノロジーとプライバシーの保護をめぐる話題が沸騰を続けている。そこで、ユーザーを追跡しないことでかねてから評価の高い検索エンジンのDuckDuckGo(DDG)がこのほど、2020年末に既存および新たな投資家の混成グループから、主に「二次的投資」で1億ドル(約110億円)あまりのバランスシートの底上げを達成したことを明らかにした。

同社のブログで名が挙がっている投資家はOmers Ventures、Thrive、GP Bullhound、Impact America Fund、そしてWhatsAppの創業者Brian Acton(ブライアン・アクトン)氏、「world wide web」を発明したTim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)氏、VCでダイバーシティの活動家Freada Kapor Klein(フレーダ・ケイパー・クライン)氏、そして起業家のMitch Kapor(ミッチ・ケイパー)氏などだ。そうそうたる顔ぶれである。

DuckDuckGoによると、二次的投資であることによって、初期の社員や投資家の一部がその財務状態を強化するとともに、株式の一部を現金化できた。

しかし同社はこうも言っている。すなわち2014年以降ずっと利益が出ている同社は「繁昌」しており、1億ドル以上の年商を各年に報告している。したがって今同社は、外部投資家の鍋で煮られ続ける必要がない。

同社の最後のVCからの調達は2018年で、それは、Omers Venturesからしつこく迫られた1000万ドル(約11億円)のラウンドだった。Omersは、今そのい金があれば目標とする成長、とりわけ国際化を達成できる、と口説いた。

DDGには、他にも発表すべき数値がある。同社によると、そのアプリは過去12カ月で5000万回以上ダウンロードされた。それまでのすべての年を合わせたよりも多い。

また月間の検索トラフィックは55%増加し、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど一部の国ではモバイルの検索エンジンのナンバー2の地位を獲得した(StatCounter/Wikipediaによる)。

上のデータは「我々はユーザーを追跡しないのでその数を挙げることはできないが、マーケットシェアの推計とダウンロード数および各国のアンケート調査などによるとDuckDuckGoのユーザーは7000万から1億と思われる」、と言っている。

ヨーロッパでは、GoogleのAndroid選択画面の変更が迫っている。そこでは、規制当局からの強制により、Googleは同社のOSが動くモバイルデバイスのユーザーに、彼らがデフォルトの検索エンジンを設定するとき競合他社の製品も提示しなければならない。これによってDuckDuckGoの各地での運は、大吉に向かうと思われる。

関連記事:グーグルがEUの圧力を受けAndroid検索エンジンの選択画面オークションを廃止、無料化へ

Googleは、他の検索エンジン企業が、自分がAndroidの選択画面に表示される権利をオークションへの入札で買うという悪習をやめる予定だから、プライバシーなど独自の価値命題を持つライバルで、しかもDuckDuckGoのようにブランド知名度もある企業には、Googleのマーケットシェアを奪うチャンスだ。

DuckDuckGoはブログで、ヨーロッパやその他の地域でマーケティング活動を強化すると確約している。

そのブログ記事は「また弊社の好調なビジネスは弊社に、今すぐにでも使える、オンラインのプライバシーのためのシンプルなソリューションがあることを多くの人びとに伝えるためのリソースを与えている。2021年5月は弊社は、全米の屋外広告やラジオ、テレビなどの広告を駆使し、175の大都市圏でこのことを宣伝してきた。ヨーロッパや世界中のその他の国にも、この努力を広げていきたい」と述べている。

……なのでDDGの二次資金の多くの部分が、同社のグロースマーケティングに投じられるだろう。同社は今、オンラインのプライバシーや、ユーザー追跡、そして長年のデータスキャンダルを背景とする、まるで自分のことが知られているかのような気持ち悪い広告に対する人びとの関心が盛り上がっている今を、好機として利用したいのだ。

Appleが最近iOSユーザーにサードパーティのアプリ追跡とそれを無効にする方法を教えるようになったことも、これらの問題への一般大衆の気がかりを高めている。Appleは下の例のような、Apple自身の良く出来た広告によって、人びとの関心を惹こうとしている。

関連記事:ついにアップルが導入開始した「アプリのトラッキングの透明性」について知っておくべきこと

シンプルで説得力のあるマーケティングメッセージでプライバシーを語ることは容易ではない、と言っても過言ではないだろう。それを考えると今のプライバシー技術は使いやすさとアクセシビリティーの両方でかなり進歩した、と言ってよい。

というわけでDuckDuckGoのビジネスは確かに、ウェブの進化における現在の重大局面にぴったりはまっているようにも見える。同社のブログは「シンプルなプライバシー保護を言い表す代名詞のようなものになりたい」と言っている。ということは、もはや対象はニッチではなく全世界だ。

「あまりにも長く、オンラインのプライバシーに関する議論は懐疑論者たちが支配してきた。もちろんプライバシーは気になるが、でも彼らには何もできないと。今こそ、この悪質な定説を葬り去るべきだ」、とDDGのブログは言っている。

プライバシー追究歴13年のこのベテラン企業には、今後の製品の計画もいろいろある。

同社はすでに2018年に追跡ブロックを検索エンジンに導入したが、今後の計画では、もっと総合的なプライバシー保護機能「何でもありのプライバシー集大成」を展開したい。そこには検索とは一見無縁なメール用の保護ツールもあり、数週間後にベータでローンチできる。そしてそれは「新しい受信トレイを作らなくてもプライバシーを強化できる」そうだ。

ブログ記事はさらに続く。「この夏の終わりごろには、アプリのトラッカーブロックがAndroidデバイスでベータで使えるようになる。ユーザーはアプリトラッカーをブロックできるようになり、自分のデバイスの楽屋裏で起きていることへの透明性が増す。そして年内には、今のモバイルアプリの完全に新しいデスクトップバージョンをリリースする。それはメインのブラウザーとしても使えるもので、我々のシンプルでシームレスな総合的プライバシー機能により、弊社のプロダクトのビジョンである『シンプルになったプライバシー』を現実にしたい」。

それは、今私たちが目にしているプライバシー技術の、もう1つのトレンドだ。検索エンジンなら検索エンジンという特定の一種類のツールで、注意深く、信頼を損なわないようにして堅固な評判を構築してきた者が、ユーザーの成長とともに、さまざまなアプリを取り揃え、完全に総合的なプライバシー保護システムを提供していく。

たとえばメールアプリのProtonMailはプライバシー企業Protonに姿を変えて、エンド・ツー・エンドの暗号化メールだけでなく、クラウドストレージやカレンダー、それにVPNまで揃えて、それらすべてが同社のプライバシー重視の傘の下に整然と収まっている。

プライバシー技術は今後ますます開発が加速度的に進み、これまでのついでの技術からメインストリームの技術へと変貌を遂げるだろう。

関連記事:プライバシー重視の検索エンジン「DuckDuckGo」、カナダの年金基金VCから1000万ドルを調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:DuckDuckGoアプリプライバシー検索エンジン

画像クレジット:Frank Vassen/Flickr CC BY 2.0のライセンスによる

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Vivaldi 4.0がメール・カレンダー・RSSフィード機能を引っ提げてリリース

Chromiumベースのブラウザの中でも特に関心を集めていたVivaldi(ヴィヴァルディ)。プライバシー重視のパッケージで、パワーユーザーのために構築されたツールであること、ざっくばらんな性格で有名なOperaの元CEOであるJon von Tetzchner(ヨン・フォン・テッツナー)氏が共同設立者かつCEOであるという血筋がその理由だ。現地時間6月9日、Vivaldiチームは、Vivaldiブラウザのバージョン4.0を発表した。その中には、メール、カレンダー、RSSクライアントのベータ版をはじめ、プライバシーに配慮したLingvanex(リングヴァネックス)エンジンの翻訳サービス「Vivaldi Translate(Vivaldi翻訳)」の提供開始などが含まれる。

Vivaldiは以前からウェブメールサービスを提供しているため、メールクライアントとしてのVivaldiは新しい会社ではない。しかし、ブラウザに組み込まれたオフラインのメールクライアントやカレンダークライアントは、これらの組み込み機能がほぼ標準であったNetscape NavigatorやOperaのような初期の時代のブラウザに戻ったような感じがする。フォン・テッツナー氏は、多くのブラウザベンダーはユーザーを特定の方向(自社のウェブメールクライアントなど)に誘導するためにこれらの組み込み機能を廃止した、と主張する。

フォン・テッツナー氏は次のように話す。「私たちは、『ビジネスモデルが私たちの行動を決めるのではなく、ユーザーが何を求めているのかに焦点を当てよう 』と考えました。(内蔵のメールクライアントには)大きな価値があると考えています。私たちのほとんどは電子メールを使用します。メールを頻繁に使う人も、あまり使わない人もいますが、基本的に誰もが1つ以上のメールアカウントを持っています」「だからこそ、優れたメールクライアントを提供したいと考えました。Operaにこのような機能の多くがあったのはご存じのとおりですが、存在しない機能もありました。VivaldiはOperaのギャップを埋め、さらに多くのことを達成しています。(たとえば)Operaにはカレンダークライアント機能はありませんでした」。

画像クレジット:Vivaldi

Vivaldiメールとカレンダーに関する多くの決定は、Vivaldiチームの趣向に基づいて行われたようだ。例えばVivaldiのメールクライアントでは、Outlookのような通常のフォルダ構造ではなく、フィルタリングシステムによってメッセージを複数のビューに表示することができる。Vivaldiはユーザーによるカスタマイズを重視しているので、従来型の水平表示とワイド表示から自分が使いやすい方を選択することができる。切り替えボタンでメーリングリストやカスタムフォルダにあるメールをデフォルトのビューから除外して、見たいメッセージをコントロールできるのも良い機能だ。また、未開封のメールと未読メールを区別して表示してくれる点も良い。

VivaldiのCEOヨン・フォン・テッツナー氏(画像クレジット:Vivaldi)

IMAPとPOPプロトコルをサポートするほぼすべてのメールプロバイダに対応しているのは予想通りだが、Gmailにも対応する。

新しいビルトインカレンダーも、GoogleカレンダーやiCloudなど、標準的なカレンダープロバイダのほとんどをサポートしている。デザイン上の工夫としては、イベントごとに1~2行表示するのではなく、そのイベントのすべてのデータがカレンダーに表示される。フォン・テッツナー氏自身の好みだそうだ。

「これまでとは違うやり方をしているとは思います。ユーザーの反応を注視していきます」「私がカレンダーに求めていたことの1つは、すべてのコンテンツを見られるようにすることでした。現在一般的なカレンダーでは、テキストを表示するスペースはグリッドの大きさで制限されます。でも、そうする必要はありません。グリッドの大きさが揃っている方が見栄えがしますが、機能的には、テキストがより多く表示される方が使いやすいのです」とフォン・テッツナー氏。

フォン・テッツナー氏は、ユーザーをGoogleやMicrosoftから引き抜きたいのは当然だが、代わりの機能を提供するだけでは十分ではなく、もっと優れた機能を提供しなければならないと考えていると話す。

画像クレジット:Vivaldi

RSSリーダーはまだ基本的な段階で、たとえばフィードのリストをインポート / エクスポートする機能は提供されていない。ここでのアイデアは、エコーチャンバー化(「反響室」のような狭いコミュニティでのコミュニケーションを繰り返すことによって、特定の信念が増幅または強化されてしまう状況)を防ぎ、ユーザーごとにカスタマイズされたニュースの配信を行うニュースリーダーを避けることにある。全体的にフィードリーダーは非常にうまく実装されていて、ローカルのフィードリーダーに必要な機能をほぼすべて提供している。ネットサーフィン中はブラウザがRSSフィードを識別し、URLバーにハイライト表示するので、新しいフィードの購読はとても簡単だ。また、YouTubeをフィード(チャンネル)ごとに購読することもできる(YouTubeではあまり強調されていないが、すべてのYouTubeチャンネルはフィードとして提供されている)。

フォン・テッツナー氏は「フィードでは、(データ)収集を避けることも重要です」と話す。「今のニュースサービスは、ユーザーにより関連性の高いニュースを配信すると理屈をこねながら、あなたが何を読んだかを見て、あなたのプロフィールを構築しています。しかし、私の意見では、ユーザーが特定のチャンネルを購読しているという情報だけで十分だと思っています。私たちが目指しているのは、ユーザーが自分の読んでいるものや購読しているものをコントロールできるようにすることであり、ユーザーの習慣や好みを知ることではありません。私たちには関係のないことです」。

これらはすべて、広告に振り回されないビジネスモデルというVivaldiの基本理念に帰結する。「ユーザーのデータを集める必要も興味もありません」とフォン・テッツナー氏は語る(ただし、ユーザー数や大まかな所在地など、基本的な集計データは集めている)。実際、彼は、ユーザーに関して詳細な遠隔測定を行っても、平々凡々なユーザー製品が仕上がるだけだという信念を持っている。

新しい翻訳機能もその一環で、データはVivaldiのサーバーでホストされ、いずれのサードパーティーサービスとも共有されない。Vivaldi翻訳はLingvanexテクノロジーを使用しているが、それを自社のサーバーでホストしている。結果はかなり良好で、おおむねGoogle翻訳と同等のレベルだ(微妙な差があることもあり、その場合、Google翻訳の方がより正確な翻訳を返すことが多い)。

Vivaldiの新しいオンボーディングフローでは、ユーザーが3つのデフォルトレイアウトから選択できる。ChromeやEdgeのような使用感だけを求めるユーザーのための基本的な「ベーシック」、パネルやステータスバーのようなブラウザの高度な機能を使いたいユーザー向けの「ノーマル」、すべてのツールを使ってみたいユーザーのための「アドバンス」だ。ブラウザに求める要件がユーザーごとに異なることを尊重する機能で、パワーユーザーではないユーザーにVivaldiの導入を促すことにもつながるかもしれない。「アドバンス」ではVivaldi の新しいメール、フィードリーダー、カレンダーの機能がデフォルトで有効になっている。

今のところVivaldiでは利益が出ていない。プリインストールされたブックマークや、検索エンジンとのパートナーシップから多少の収益を得ているが、フォン・テッツナー氏は、Vivaldiが持続可能な企業になるためには、ユーザー数をもう少し増やす必要があると話す。彼はこの考えに満足しているようで、ユーザー1人当たりの収益が比較的低いことにも納得している。「私たちには経験があり、成功したこともあります。当社のような会社の成長には時間がかかります」「私たちが構築しているものをユーザーが気に入ってくれることを願っています。多分気に入ってもらえていると思います。そしてゆっくりと、支払いに必要なだけのユーザーを獲得し、さらに発展させていきたいと考えています」。

関連記事:Vivaldiブラウザーがトラッキングブロッカーを内蔵、Android版も正式版に

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Vivaldiウェブブラウザ

画像クレジット:Vivaldi

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Dragonfly)

バーチャルイベントにネットワーキング機能を追加するためにtwineが3.6億円調達、ビデオチャットアプリから方針転換

パンデミックの中で「新しい人たちと出会うためのZoom」的なものとして立ち上げられたビデオチャットのスタートアップtwine(トゥワイン)は、その焦点をオンラインイベントに移し、その結果シード資金として、330万ドル(約3億6400万円)を調達した。現在までに、twineのイベント顧客には、Microsoft(マイクロソフト)、Amazon(アマゾン)、Forrester(フォレスター)などの名前が挙がっており、同社によればこのサービスは2021年には100万ドル(約1億1018万円)分の予約を行う予定だという。

関連記事:深い会話で孤独感を解消するビデオチャットアプリtwine

今回のラウンドは、Moment Venturesが主導し、Coelius Capital、AltaIR Capital、Mentors Fund、Rosecliff Ventures、AltaClub、Bloom Venture Partnersが参加した。Momentの創業パートナーであるClint Chao(クリント・チャオ)氏は、今回のラウンド終了後、twineの取締役会に参加する。

twineの共同創業者のLawrence Coburn(ローレンス・コバーン)氏、Diana Rau(ダイアナ・ラウ)氏、Taylor McLoughlin(テイラー・マクラフリン)氏らが、2019年にCvent(シーベント)が買収したモバイルイベントテクノロジープロバイダーのDoubleDutch(ダブルダッチ)の出身者であることを考えると、オンラインイベントの分野へのシフトは理に適っていると言える。

DoubleDutchのCEOであったコバーン氏は、買収した会社と2020年12月まで競業禁止義務を負っており、それがイベント分野への復帰を最初に試みなかった理由の1つだ。

twineチームの当初のアイデアは、新型コロナウイルスによるロックダウンの下で社会的なつながりを失った人びとが、他の人との出会いやオンラインチャットの方法を見つけられるようにすることだった。この初期バージョンのtwineは、わずかながらも支持を得て、10%のユーザーがお金を払うようになった。しかし、それ以上に多くの人は、ネット上の見知らぬ人とつながることに不安を感じていることが、twineの調べで判明した。

画像クレジット:twine

そこで同社は、よく知るイベント分野に焦点をシフトした。特にパンデミックで人気が高まったオンラインイベントを、その中心に据えることにした。多くのオンラインイベントでは、ライブストリームやテキストチャット、Q&Aなどを設定することは可能だが、一方かつては対面で行われていたようなカジュアルで予期せぬネットワーキングは欠けている。

「これまではエレベーターやバー、ロビーで交わされていた会話のような、ネットワーキングやセレンディピティ(偶然の発見)をバーチャルイベントに持ち込むことは、とても難しいことでした」とコバーン氏は説明し「そこで私たちは、自分たちで新しいコミュニティを作ろうとするのではなく、既存のコミュニティにtwineを導入する形で、グループスペース版twineのテストを始めたのです。それは、より多くの可能性を見せてくれました」と語る。

2021年1月には、イベントに特化した新バージョンのtwineが稼働し、イベントオーナー向けにプロフェッショナルなネットワークツールを提供し始めた。Twineは、一対多や少数対多数のビデオ放送とは異なり、twineは少人数同士をつなぎ、より親密な会話をすることを可能にする。

「私たちは、お客様やユーザーのみなさまに対して多くの調査を行いました。その結果(会話に加わる人数が)5人を超えると、それはウェビナーになるのです」とコバーン氏は、twineのビデオチャットの制限について指摘した。twineでは、少数の人々がビデオチャットに参加していたが、ここではネット上のランダムな他人が参加するものではない。登場するのは同じイベントに参加している仲間なのだ。こうすることで、一般にユーザーの行動はプロフェッショナルなものになり、会話も生産的なものになる。

イベント主催者は、30人までの小規模なイベントであれば、twineのウェブサイトから無料で製品を使用することができるが、それ以上の規模に対応するためにはライセンスが必要だ。twineは参加者ごとに課金を行い、顧客(イベント主催者)はSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)モデルで参加者パックを購入する。

顧客はtwineを自分のウェブサイトに直接埋め込んだり、twineのウェブサイトを別のブラウザタブで開くようなリンクを追加することができる。

twineは大企業のイベントプログラムに最適な場所を見つけたのだと、コバーン氏は語る。現在同社の顧客数は約25社だが、その中には、最初に小規模なイベントで試した後、すでに10〜15件のイベントでtwineを使用している顧客もいる。

「現在私たちは、世界最大クラスの大企業5、6社と一緒に仕事をしています」とコバーン氏はいう。

画像クレジット:twine

マッチングはデジタルに行われるため、twineは「デジタル名刺」交換や、イベントの主催者と参加者のための分析やレポートなど、他のツールも提供することができる。

通常の状態に戻ることが米国では慎重に行われているために、対面式のイベントの復活は1年後になるかもしれないが、twineはそれでもオンラインイベントにはまだ未来があると考えている。パンデミックの影響は長期にわたるため、企業は今後、イベントにハイブリッドなアプローチを採用していく可能性が高い。

「イベント業界がここまで経験したような15カ月を、かつて経験した産業は、これまで存在しなかったと思います」とコバーン氏はいう。「こうした企業は収益を失い、中には数億ドル(数百億円)レベルからゼロに転落した企業もありました。つまり、これまで世界が経験したことのないようなデジタルトランスフォーメーションが起きたのです」と彼は付け加えた。

今では、テックイベントやオンラインイベントを得意とするイベントプランナーが何万社もいる。そして彼らは、バーチャル参加者ならこれまでより4〜5倍の動員が望めるオンラインに可能性を見出したのだ、とコバーン氏は指摘する。

彼は仮想会議技術事業のための最近の資金調達について言及し「LinkedInがHopin(ホーピン)に5000万ドル(約55億850万円)を投じたのはこのためです」と語った(実際の買収額は5000万ドル以下だったと言われている)。「だからこそ、HoppinやBizzabo(ビザボ)、Hubilo(ハビロ)などへの資金調達ラウンドが続いているのです。ここはUber(ウーバー)登場以前のタクシー市場なのです」。

もちろん、対面での体験が可能になれば、バーチャルイベント自身ではソーシャル機能にはこだわらないことになるかもしれない。また、オンラインイベントを開催したいと考えている側は、たとえばZoom+twineよりも広い範囲のソリューションを求めるかもしれない。

しかし、twineにはこれから実現したいさまざまなアイデアがある。たとえばその1つが非同期型のマッチメイキングだ。これは現在オンラインになっている人だけに限定されないため、より良いマッチングにつながる可能性があり、より価値のあるものになるだろう。

今回の調達資金を使って、twineは営業とカスタマーサクセス要員の採用、アクセシビリティの改善、プラットフォームの拡張を行う。現在までに、twineは470万ドル(約5億2000万円)を調達している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:バーチャルイベントtwine資金調達ビデオ会議イベント

画像クレジット:twine

原文へ

(文: Sarah Perez、翻訳:sako)

アマゾンがアプリストアの手数料引き下げとAWSクレジットで小規模開発者を支援

Apple(アップル)やGoogle(グーグル)といった大手アプリストアに続き、Amazon(アマゾン)がアプリ開発者を支援する「Amazon Appstore Small Business Accelerator Program」を間もなく開始すると、米国時間6月15日に発表した。この新しいプログラムは、対象となる売上の少ないアプリ開発者からアマゾンが受け取る手数料を削減するというもの。これまでAmazonアプリストアでは、アプリ内課金を含む収益の30%が手数料として徴収されていたが、今回のプログラムが開始になると、前年の収益が100万ドル(約1億1000万円)以下だった開発者は手数料が20%に引き下げられ、さらにAWS(アマゾン ウェブ サービス)のクレジットが提供される。

このプログラムの仕組みは、2020年末に発表されたアップルの「App Store Small Business Program」と似たものだ。アップルのプログラムでは、年間の収益が100万ドル以内であればアップルから差し引かれる手数料が15%に引き下げられ、100万ドルを超えると標準の30%に移行する。この手数料率は翌年に入っても継続される。一方、2021年になってからGoogleが取った方針はやや異なり、Google Playストアを通じて得た収益が毎年100万ドル分までは手数料が15%に引き下げられるというものだった。

関連記事
AppleがApp Store手数料率を15%に削減、年間収益約1億円以内の小規模事業者対象
Google Playの手数料が30%から15%に値下げ、2020年のAppleに倣って

アマゾンが徴収する手数料はそれでも20%と、アップルやGoogleより依然として大きいが、これは開発者にAWSクレジットという別の特典を提供するためだ。

同社によると、1暦年におけるAmazonアプリストアからの収益が100万ドルに満たない開発者は、収益の10%をAWSサービスのプロモーションクレジットとして受け取ることができるという。これによって開発者が利用できるAWSサービスには、コンピューティング、ストレージ、データベースなどのインフラストラクチャー技術から、機械学習や人工知能、データレイクやアナリティクス、IoT(モノのインターネット)などの新興技術まで含まれると、アマゾンは述べている。このAWSのクレジットに手数料の減額を合わせると、開発者は最大で収益の90%相当を受け取ることができると、アマゾンは主張する。

開発者の収益が当年中に100万ドルを超えると、標準手数料率に戻り、年内はAWSクレジットを受け取れなくなる。

翌年以降に開発者の収益が再び100万ドルを下回った場合は、その次の暦年には再びプログラムの対象となる。

「私たちは、クレジットを通じて小規模な事業者がAWSを使い始められるように支援し、そのアプリビジネスを容易に構築・成長させることができるようにしたいと考えています」と、AmazonアプリストアのディレクターであるPalanidaran Chidambaram(パラニダラン・チダンバラム)氏は発表の中で述べ「AWSを使うことで、開発者は幅広い技術に簡単にアクセスでき、革新を加速させ、想像できるほとんどすべてのものを構築できるようになります」と続けている。

アプリストアの手数料を引き下げる動きの背景には、大手テック企業のビジネスの性質に対して、Basecamp(ベースキャンプ)、Spotify(スポティファイ)、Epic Games(エピック・ゲームズ)などの大規模なアプリパブリッシャーが反競争的であると主張し、規制当局からの圧力が強まっているという現況がある。Epic Gamesはアプリストアの手数料をめぐってアップルを提訴しており、この裁判の結果が前例となる可能性もある。このような状況に対応し、アップルとGoogleは善意の表れとして、自社のアプリストアプラットフォームの収益に大きな影響を与えない範囲で、小規模事業者から徴収する手数料を引き下げることにしたのだ。

アマゾンによると、この新しいプログラムは2021年第4四半期に開始となる予定で、参加方法についての詳細はその時に発表されるという。

関連記事
フォートナイトのEpic Games創設者、Appleとの闘争を公民権運動に例えて語る
対Apple訴訟でEpicは優越的地位の乱用による反トラスト法違反を強く主張

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Amazonアプリ

画像クレジット:Amazon

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Androidに今夏導入される6つの新機能、安全性やアクセシビリティも向上

Android(アンドロイド)に2021年夏から導入される6つの新機能についての情報が、米国時間6月15日に公開された。それらの中には、テキストメッセージにスターを付けて後で簡単に探せるようになる機能や、入力中の言葉に応じて最適なEmoji Kitchen(絵文字キッチン)の候補を表示する機能など、単に「生活の質」を向上させるものもある。しかし、今回のアップデートにおけるそれ以外の面では、セキュリティ、安全性、アクセシビリティが強調されている。

関連記事
GoogleのGboardキーボードのEmoji Kitchenで絵文字のマッシュアップができる
グーグルがAndroidスマホを地震計にする技術を発表、世界最大の地震検知ネットワークを作り出す

2020年の夏、Google(グーグル)はAndroidに、スマートフォンを地震計として活用することで「世界最大の地震検知ネットワーク」を構築する機能を追加した。このシステムは無料で、カリフォルニアで試験運用が行われた後、ニュージーランドやギリシャにも導入されている。Googleは今回、この機能をトルコ、フィリピン、カザフスタン、キルギス共和国、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンでも提供を開始すると発表。同社によると、2021年は地震のリスクが高い国を優先して、この機能の拡大を続けていくという。

画像クレジット:Google

Googleは2020年、Google Assistant(Google アシスタント)の音声コマンドを各種Androidアプリに対応させるアップデートを導入したが、こちらも今回、さらに拡張される。最初のアップデートでは、Spotify(スポティファイ)、Snapchat(スナップチャット)、Twitter(ツイッター)、Walmart(ウォールマート)、Discord(ディスコード)、Etsy(エッツィ)、MyFitnessPal(マイフィットネスパル)、Mint(ミント)、Nike Adapt(ナイキ・アダプト)、Nike Run Club(ナイキ・ラン・クラブ)、Kroger(クローガー)、Postmates(ポストメイツ)、Wayfair(ウェイフェア)といったアプリがサポートされていたが、今回のアップデートでは、eBay(イーベイ)、Yahoo!Finance(ヤフーファイナンス)、Strava(ストラバ)、Capital One(キャピタル・ワン)などのアプリが言及されている。これは、Apple(アップル)のSiriでiOSアプリを起動させたり、タスクを実行したり、カスタムコマンドを記録したりできる機能と似たものだ。

関連記事:GoogleアシスタントからAndroidアプリを操作可能に

画像クレジット:Google

アクセシビリティの面では、現在ベータ版として提供されている視線検出機能が強化される。この視線検出機能によって、ユーザーは画面を見ているときだけVoice Access(ボイス・アクセス)が反応するように設定できるので、スマートフォンへの指示と友人との会話を自然に切り替えることができる。Voice Accessでは、パスワードの入力も強化される。パスワードの入力欄を自動検知すると、例えば「大文字のP」とか「ドル記号」ということで、文字や数字、記号を入力できるようになるので、ユーザーはこの機密情報をよりすばやく入力できる。2020年10月、Google アシスタントは視線操作デバイスで利用できるようになり、同月にGoogleの研究者は、ビデオ会議で手話を使う人を「アクティブスピーカー」として識別できるようにするデモを公開した。アップルは2017年にアイトラッキング企業のSensoMotoric Instruments(センソモトリック・インスツルメンツ)を買収したものの、まだこれに匹敵するような視線検出機能を普及させていない。Googleが改良を続けているように、アップルでも同様のアクセシビリティ機能が開発されていることを期待したいところだ。

関連記事
Googleアシスタントが視線操作のデバイスにも対応
グーグルの研究者がビデオ通話で手話を認識して画面を切り替える技術を披露

今回発表されたAndroidのアップデートでは、Android Auto(アンドロイド・オート)のユーザーがより多くのカスタマイズを行えるようになる。例えば、スマートフォンからAndroid Autoのランチャー画面を設定したり、ダークモードを手動で設定したり、A-Zスクロールバーや「トップに戻る」ボタンを使ってメディアアプリのコンテンツをより簡単に探せるようになった。また、WhatsAppやMessages(メッセージ)などのメッセージアプリが、ランチャー画面から直接アクセス可能になり、簡単に新しいメッセージを読んだり送信したりできるようになる……が、運転中に注意散漫にならないように気をつけて欲しい。さらに、EVの充電ステーション検索や駐車場予約、ナビゲーションなどのサードパーティ製アプリが、Android Autoで使用できるようにもなる。車載システムの操作性や利便性は大幅に向上するばずだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleAndroidGoogleアシスタントAndroid Autoアイトラッキング地震

画像クレジット:Google

原文へ

(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)