Rent the RunwayのiOSチームがアプリのリリースサイクルを管理するRunwayを開発

ドレスレンタルのRent the Runwayの他、ClassPassやKickstarterなどの企業からモバイルアプリのエンジニアやデザイナーが集まってスタートアップのRunwayを立ち上げ、モバイルアプリのリリースサイクルに関して体験した共通の問題点を解決しようとしている。Runwayと既存のツールを接続すると、アプリのリリースに関する進捗を追跡管理し、リリースの過程で発生する手作業の多くを自動化し、関係者のコミュニケーションを円滑にすることができる。

Runwayの共同創業者であるGabriel Savit(ガブリエル・サビット)氏は「モバイルアプリのリリースは不可能に近い作業だと我々はしばしば口にします。さまざまなツールにわたってたくさんの物事が動きバラバラになっています」と説明する。サビット氏はRent the Runwayの初のモバイルアプリチームの同僚として、現在はRunwayの共同創業者となったIsabel Barrera(イザベル・バレラ)氏、David Filion(デビッド・フィリオン)氏、Matt Varghese(マット・バルギース)氏と出会った。

サビット氏は「リリースの準備を確実に整えるのに時間がかかる、時間が無駄になる、Slackでのやりとりが多いといった問題が発生します」という。

一般にエンジニア、プロダクト、マーケティング、デザイン、QAなどが関わるチームは、スプレッドシートや共有ドキュメント、そしてSlackなどを使ってアプリの最新の進捗状況をお互いに把握する。

一方、リリースの準備のために発生する実作業はGitHub、JIRA、Trello、Bitrise、CircleCIなど、さまざまな別々のツールで管理されている。

画像クレジット:Runway

Runwayはチームのツールをすべて統合するレイヤーとして動作するように設計されている。シンプルなOAuthの認証フローでツールをRunwayと接続した後、どのようなブランチ戦略か、リリースブランチをどう作るか、リリースにどのようにタグづけするかなど、チーム独自のワークフローをRunwayに理解させる設定をする。

つまり、Runwayをトレーニングして運営方法を理解させる。自分たちのプロセスややり方を変えてRunwayに合わせる必要はない。

セットアップが完了すると、Runwayはさまざまな統合ポイントから情報を読み取り、解釈して、アクションを起こす。チーム全員がウェブのインターフェイスからRunwayにログインし、自分たちがリリースサイクルのどこにいるか、これから何をしなくてはいけないかを正確に把握できる。

「我々が開発する接着剤で動いている部分とツールをすべてまとめた結合組織を作り、全員が参照して同期したり集まったりすることのできる正しい情報源にしようとしています。これによりコラボレーションが円滑になって向上し、関係者が共通認識を持てるようになります」。サビット氏はそう語る。

画像クレジット:Runway

仕事を進めていくと、例えばJIRAのタグがないなどの問題をRunwayが見つける。そして自動でタグを補う。不適切なビルドが申請用として選択されているなどのミスも防ぐ。

他には、Slackのコミュニケーションも自動化する。Runwayは誰が何に責任を持っているかを理解した上で、Slackの通知やアップデートをチームの特定のメンバーに送る。これによりSlackのチャンネルのノイズを減らすと同時に、全員が自分のするべきことを把握できる。

現在、Runwayはモバイルアプリのキックオフから、申請してアプリストアでリリースするまでのサイクル全体に集中している。近々バグレポートやベータテストのプラットフォームなども接続して統合の範囲を広げる予定だ。長期的にはデスクトップなど他のプラットフォームのアプリにも同社のワークフローを広げていきたいと考えている。

画像クレジット:Runway

Runwayは現在、ClassPass、Kickstarter、Capsuleなど少数の初期カスタマーとともにパイロットテストを実施している。初期カスタマーがすべて料金を支払っているわけではないが、すでに40種類以上のアプリで本番のリリースサイクルにこのシステムが使われている。

費用は1カ月、1アプリあたり400ドル(約4万3000円)から。リリースマネージャーとアプリは無制限で、統合をすべて利用でき、iOSとAndroidをサポートしている。ハイレベルのカスタマーサポートとコンサルティングサービスを希望する場合の費用は応相談となる。

Runwayがいつ正式に公開されるかは未定だ。現時点では利用企業ごとにオンボーディングの対応をして、各社に固有に統合のニーズを解決すべく緊密に連携しているためだ。現在RunwayはApp Store、Google Play、GitHub、JIRA、Slack、Circle、fastlane、GitLab、Bitrise、Linear、Jenkinsなどとの統合に対応しているが、利用企業の要望に応じてさらに追加されるかもしれない。

Runwayの4人のメンバーは主にニューヨークを拠点としている。現在はY Combinatorの2021年冬学期バーチャルプログラムに参加中だ。シードラウンドの資金調達はまだ実施していない。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Runwayアプリ

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Istioのオープンソースアプリネットワーキングプロジェクトから生まれたTetrateが43.4億調達

複数のアプリケーション間で容易にデータの共有ができるようにするオープンソースのネットワーキングプロジェクトを商用化するTetrateが、4000万ドル(約43億4000万円)の資金を調達した。

Sapphire Venturesが主導した今回のラウンドは、Istioプロジェクトの重要性と、クロスプラットフォームのデータ共有を促進する重要なサービスがいかになっているかを強調している。

新たな投資家としてScale Venture PartnersNTTVCが、既存投資家としてDell Technologies CapitalIntel Capital 8VCSamsung NEXTなども参加している。

Tetrateによると、今回の資金は、同社のハイブリッドクラウドアプリケーションのネットワーキングを支えるプラットフォーム開発の継続と、アプリケーションのサービスメッシュをより使いやすくするIstioをベースとする新しいプロダクトのサポートに充てるという。また、ラテンアメリカとヨーロッパ、アジアへの業務拡大も、資用途の1つとして計画しているとのことだ(個人的には、そのお金をすべて紙幣にして、スクルージ・マクダックのように泳いでみたい)。いっそ全額を1ドル紙幣にして、その中でスクルージ・マクダックのように泳ぐのはどうだろう。

Tetrateの取締役会に加わる大型VCであるSapphireのパートナーで社長のJai Das(ジャイダス)氏は、次のように述べている。「マイクロサービス革命が進展する中で重要なのは、マイクロサービスで構築されコンテナでデプロイされるアプリケーションをIstioを使って管理することだ。Tetrateはプロダクトと創業チームの経歴が一流であるため、Istioをエンタープライズのメインストリームに育てていくことができると確信している。プロダクトとチームの両方で、マルチクラウドでハイブリッドなクラウド環境における管理とデプロイが極めて容易になる。我々が日常使用するアプリケーションは、バックグラウンドの仕事量が膨大だが、TetrateはIstioベースのサービスメッシュ技術でそれらを支え、マイクロサービス間のトラフィックを管理し、可視性を加え、セキュリティを強化する」。

2018に創業したTetrateは、2019年に公式ローンチし、その際の1250万ドル(約13億6000万円)のラウンドが同社のプロフィールを高め、オープンソースのIstioとEnvoy Proxyによるサービスの商用化とプロフェッショナル化の道を拓いた。

米国防総省をはじめ、多くの大物顧客がTetrateのサービスを現在利用している。Tetrateは軍向けにDevSecOpsのプラットフォームPlatform Oneで使われている。

米空軍のソフトウェア最高責任者であるNicolas Chaillan(ニコラス・チャイラン)氏が声明で次のように述べている。「Platform Oneの運用をIstioで安全かつ円滑にするためにTetrateと提携した。Platform Oneは国防総省全体の重要性の極めて高いシステムで使われている。Tetrateのチームは、ワールドクラスの専門技術を提供し、我々のチームの要員を訓練し、プラットフォームのアーキテクチャと構成を精査してデバッグとアップグレードをサポートした。我々は優れたプロダクションサポートを得てプラットフォームを円滑に運用し、また、我々のスタックの重要なレイヤーに関して彼らとそのプラットフォームを頼りにしている」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Tetrate資金調達

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デモ構築プラットフォームのDemostackが18.8億円の調達を発表

企業がソフトウェアのデモを簡単に作れるようにすることを目指す、アーリーステージスタートアップのDemostack(デモスタック)が、米国時間3月9日、1730万ドル(約18億8000万円)の資金調達を発表した。同時にステルス状態からの脱却も発表された。

実際にはこの調達の内容は、Bessemer Venture Partnersが主導しGTM Fundと複数の個人投資家が参加した1330万ドル(約14億5000万円)のシリーズAラウンドと、Amiti Venturesが主導しOperator Collective、Cerca Partners、その他多くの個人投資家が参加して昨年12月に行われた400万ドル(約4億3000万円)のシードラウンドによる2つのラウンドだ。Demostackによれば、シードラウンドに参加した全投資家がAラウンドにも参加したという。

現在あらゆるタイプのソフトウェア企業が、実際の顧客情報を使うことなく、合理的かつリアルな方法で、すべての機能を示すことのできる、高品質なデモを作成する課題に直面している。前職でこの問題を経験した共同創業者でCEOのJonathan Friedman(ジョナサン・フリードマン)氏は、それを何とかしたいと考えていた。

「私たちが開発しているのは、パーフェクトなデモ環境です。つまり、営業やマーケティング担当者が自由にできるものという意味です[…]エンジニアが介入する必要がなく、デフォルトで見込み客ごとにカスタマイズされるようなものです」とフリードマン氏は説明する。

彼は、デモが上手く行かないのではないかとか、想定外のデータをうっかり見せてしまうのではないかといった不安を、この製品が取り除くのだという。「デモに対して感じる不安は深刻です。PII(個人を特定できる情報)を気にしなければならないので、本番環境の中にログインして入ってもらい、そこで何かを作るという手段は受け入れることができませんでした」と彼はいう。

フリードマン氏はその状況を変えるためにDemostackを創業した。彼らは、環境の録画から始まる完全なデモ構築ツールを提供しているので、それはまるで実際の製品のようにみえる。また特定の見込み客向けにデモを作成する際に、顧客名のような変数を使ってCRMツールから情報を引き出し、自動的にカスタマイズを行うことができる。

このソリューションが、リード投資家Bessemer Venture PartnersのパートナーであるAdam Fisher(アダム・フィッシャー)氏の目に留まった。彼は声明の中で「Demostackは、あらゆるソフトウェアビジネスに強力な競争上の優位性を与え、昔ながらの気まぐれなデモを排除して、見込み客のエンゲージメントを向上させます」と語っている。

Demostackは、すでに20人の従業員を抱えており、今年中にはその数を3倍にする予定だ。フィッシャー氏は、同社の初期従業員はすでに多様な構成となっていて、それが重要な要素だと捉えているという。

フリードマン氏はいう「私たちが早い段階からそのことに注意を払っている主な理由は、多様性のある企業というのはおまけとして目指すものではないからです、『ああ、そうしておくと世間で評判がいいからやっておこう』という感じではありません。色々な立場のひとが、どのように現実を見ているのかを理解することはできません。ひとは皆、現実の違う断片を見ているのです。それを押さえておくことができなければ、成功する会社を作ることはできません」。

同社は昨年9月にローンチし、この2月にはその早期版をリリースした。本日(米国時間3月9日)Demostack社は会社の内容を公開したが、完全な製品の配布が始まるのは今年の中頃の予定だ。

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

アドビがAppleシリコンMac用ネイティブPhotoshopとディテールを損なわずに画像を拡大する機能を提供

Adobe(アドビ)は、同社の画像処理ソフトウェアが、Apple(アップル)の新しいMac用内製プロセッサAppleシリコン(M1)上でネイティブに動作するように、画像処理ソフトウェアのアップデートを急ピッチで進めている。M1プロセッサの搭載は、2020年末に発売されたMacBook ProとMacBook Airを皮切りに始まっている。LightroomとCamera RawのM1ネイティブ版を出荷した後、今度はAppleシリコンに最適化されたバージョンのPhotoshopのリリースを行おうとしている。このバージョンはAppleのRosetta 2ソフトウェアエミュレーションレイヤー上で動作するIntel版と比較して、大きなパフォーマンスの向上が実現されている。

どれくらい速くなったのだろう?Adobeの内部テストでは、エミュレート版で行われる同じタスクと比較して、Photoshopで提供されている多くの異なる機能で、最大1.5倍のパフォーマンスの向上が見られるとのことだ。しかし、これはほんの始まりに過ぎない。Adobeは、Appleとの協力の下で、Appleシリコン上のソフトウェアから時間をかけてさらなる性能向上を引き出すことを続けていくと述べている。M1フレンドリーな追加機能には「クラウドドキュメント編集への招待」や「プリセット同期」オプションなど、まだ欠けている機能もあるが、そうした機能は将来のバージョンで移植されていく予定だ。

Appleシリコン版のPhotoshopに加えて、Adobeは同梱されるCamera Rawのプラグイン(後でLightroom用にもリリース予定)に、新しいSuper Resolution(超解像度)機能をリリースしている。これは、大規模な画像データセットで訓練された機械学習を使用して、細部を維持したまま写真を巨大なサイズに拡大する機能だ。Adobeは以前、複数の露出を組み合わせて解像度を上げる超解像度オプションを提供していたが、今回の機能は1枚の写真で効果を発揮する。

関連記事:Adobe CTO says AI will ‘democratize’ creative tools

それは古典的な「コンピューター、解像度を上げて」式のSF機能を現実のものにした。この機能は、以前Photoshopが導入した「Enhance details(ディテールの強化)」機能の上に構築されている。もしAdobe信者でなければ、おそらくPixelmator Pro(ピクセルメーター・プロ)の「ML Super Resolution」機能を知っているかもしれない。この機能は異なるMLモデルとトレーニングデータセットを使用しているが、ほとんど同じように動作する。

AdobeのSuper Resolutionの動作例(右側)

肝心な点は、AdobeのSuper Resolutionは、水平解像度で2倍、垂直解像度で2倍の画像を出力するということだ。すなわち合計では4倍の画素数となる。このことは、ディテールとシャープネスを維持しながら行われる。つまり、これまではそのような拡大に耐えられなかった画像から大きなプリントを作成することができるようになるということだ。また、今まではぼやけてしまって残念な結果になっていた要素の明瞭な映像を取り出すために、コレクション内の写真をトリミングするのにも最適だ。

この機能は、CoreMLやWindows MLなどをはじめとする、機械学習(ML)ジョブに最適化されたGPUの恩恵を受けている。AppleのM1チップには「Neural Engine」(ニューラルエンジン)と呼ばれるML処理専用エリアが組み込まれているので、こうした用途にはぴったりなのだ。同様に、NVIDIA(エヌビディア)のGPUであるRTXシリーズとそのTensorCores(テンソルコア)もこうしたタスクに適している。

またAdobeは「Photoshop for iPad」についても、同社のクラウドドキュメント非ローカルストレージ用のバージョン履歴などの、いくつかのメジャーアップデートを公開している。またクラウドドキュメントのバージョンをオフラインで保存し、デバイス上でローカルに編集することも可能になった。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AdobeAdobe PhotoshopApple M1Appleシリコン画像編集

画像クレジット:Adobe

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)

Beaconsが「リンクインバイオ」のモバイルウェブサイトビルダーを発表、クリエイターの収益化を支援

現在、ソーシャルメディアのプロフィールから専用のランディングページにファンを導こうと試みるクリエイター向けのウェブサイトビルダーは数多く存在する。TikTokやInstagramを利用したことがある人なら、例えばLinktreeがホストしているような、シンプルな「Link In Bio(リンクインバイオ)」スタイルのウェブサイトを目にしたことがあるだろう。Beaconsという新しいスタートアップがこの市場に参入し「リンクインバイオ」のウェブサイトをさらに強力にすることを目指している。同社のウェブサイトビルダーは、寄付、販売、有料リクエスト、アフィリエイトショッピングなど、コミュニティを収益化するための拡張されたツールセットをクリエイターに提供するものである。

サービス登録後、Beaconsはそのほとんどが「イエス」か「ノー」で答えられる一連の質問をユーザーに投げかける。例えば寄付を受け入れたいか、フォロワーのメールを集めたいか、TikTokやYouTubeの動画を作っているか、またそれはどのカテゴリーに属しているかなどをコンテンツの観点から尋ねてくる。

この情報は、Beaconsが「ブロック」と呼ぶ、適切なコンテンツセクションを含んだBeaconsのランディングページをセットアップするために使用される。ローンチ時点でBeaconsは、電子メールやSMSのコレクションモジュール、TikTokやYouTubeのクリエイターのための動画埋め込みブロック、トラックやアルバムを埋め込むための音楽ブロック、ツイートやTwitterプロフィールを埋め込むためのTwitterブロック、Linktreeのようなリンクブロックなど、設定可能なさまざまなブロックを用意している。

現代版Myspace Top 8のような「フレンズ」ブロックもあり、Beacons、Instagram、Twitter、TikTokのいずれかで友達をリンクすることも可能だ。

しかし、Beaconsが他の「リンクインバイオ」のウェブサイトビルダーから差別化する分野は「収益化」ブロックのセットである。現在、同社はオンラインプレゼンスからの収益を上げたいクリエイター向けに4つのツールを提供している。その1つはCameoに似ており、パーソナライズされたコンテンツに対するファンのリクエストを受け付けるオプションのメニューをクリエイターが設定できるようになっている。例えばファンはフィットネスインフルエンサーに自分のルーティンを批評してもらうこともできるし、支払うことで憧れの人に質問に答えてもらうこともできる。クリエイターは、公開または非公開のいずれかでパーソナライズされた応答を送信できる。

他の収益化ブロックでは、クリエイターが寄付を受け入れたり、電子書籍や有料ビデオコンテンツなどのデジタルダウンロードを販売したりすることも可能だ。

画像クレジット:Beacons

第4の、そしておそらく最も興味深い収益化ブロックは、TikTokショッピング機能である。クリエイターは商品をおすすめするTikTokビデオをBeaconsのウェブサイトに直接貼り付けることができ、ここから対象製品にアフィリエイトリンクを追加して、ファンがその製品を購入したときに直接収益を上げることができる。

この機能の登場は実に絶好のタイミングである。TikTokは現在、eコマースに関する計画を正式化し始めたばかりだ。マーケターへの最近のプレゼンテーションで同社は、ブランドがより直接的にTikTokの若いオーディエンスにリーチできるようにする新しいオンラインショッピングツールをローンチする計画について話している。TikTokはソーシャルコマースでもShopifyと提携しており、Walmart主催のホリデーイベントを含め、ライブビデオショッピングを実験している。

関連記事:ウォールマートがTikTokでのライブストリーミング販売をテスト、若年層への販売拡大を狙う

しかし、TikTokのクリエイターたちはすでにファッション美容インテリア家庭用品玩具などのカテゴリーを横断してショッピングトレンドを牽引してきており「TikTokに買わされた」という言葉がTikTokのバイラルなコンテンツから生じる衝動買いの言い訳となっているほどだ。クリエイターがこうしたトレンドからより直接的かつ金銭的に利益を得られるようにすることは、論理的なステップといえるだろう。

画像クレジット:Beacons

Beaconsのアイデアは、共同創設者のNeal Jean(ニール・ジーン)氏、Jesse Zhang(ジェシー・チャン)氏、Greg Luppescu(グレッグ・ルペスク)氏、David Zeng(デイビッド・ツェン)氏によるものだ。ジーン氏、チャン氏、ツェン氏はスタンフォード大学の博士課程で機械学習やAIなどの研究分野を学んでいたときに出会い、ルペスク氏はスタンフォード大学で修士号を取得した後、Apple Watchチームで働いた経験を持つ。

Beaconsとしてチームを組んだジーン氏、チャン氏、ツェン氏は、Y Combinator Summer 2019のバッチに参加。さまざまなアイデアを繰り返しながらプロダクトを何度も方向転換した。例えばクリエイターと販売ブランドを結びつけるShopifyの統合などもアイデアの1つだが、こうした初期のコンセプトの一部はいずれ復活するかもしれない。

しかし、より広範な視点では、クリエイターの収益化を支援することに常にフォーカスしてきたとジーン氏はいう。

「現在の製品が登場する前から、私たちはクリエイターの収益化への課題を解決する助けとなることに注力していました」と同氏は説明する。「Linktreeのような製品へと若干方向転換した際に、クリエイターが実際に収益を生み出せる機能を構築することを思いつきました。Linktreeやこの分野の既存企業は考えていなかったことだと思います。今でもLinktreeで収益を上げることはできません」。

もちろん、Linktreeは今日市場に出回っている多くの「リンクインバイオ」ウェブサイトの1つに過ぎず、これはBeaconsが依然としてかなりの数の競合に対峙していることを意味する。他のライバルとしてはLinkin.bioLnk.bioShorbyTap.bioFeedlink.ioLink in ProfileMilkshakeCampsitebio.fmurl.biobiolinks.meなどが挙げられる。

競合他社の一部とは異なり、Beaconsはツールを無料で提供し、その代わりにクリエイターが独自のカスタムドメインを使用できる月額10ドル(約1090円)のプレミアムプランで収益化を図っている。また、リクエストや販売ブロックの売り上げに対して無料プランでは9%、有料プランでは5%を受け取ることでも利益を得ている。この収益分配では、大した額を稼ぐことはできていないが(「数百ドル(数万円)」程度だという)、同スタートアップが成長し、大きなユーザーベースを獲得していけば拡大できるとチームは確信している。

「私たちの戦略は【略】クリエイターのために、こうしたさまざまな種類の収入源を増やし続けていくことです」とジーン氏はいう。「そうすることで、売買による収益の割合は、サブスクリプションによる収益と比較して現在よりも高くなっていくでしょう」。

2020年9月にプライベートベータを開始して以来、Beaconsは9万人の登録者を有し、現在2万人以上がこのプロダクトのアクティブユーザーだと考えられている。そのほとんどは新機能が展開され始めた過去数カ月の間に獲得したユーザーである。新規ユーザーの約77%が他のユーザーのプロフィールを見てBeaconsを訪れているため、今のところBeaconsは有料マーケティングを一切行っていないという。

同チームはYC後の小規模なエンジェルラウンドで約60万ドル(約6520万円)を集めたが、将来的には資金調達を予定している。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Beaconsリンクインバイオ

画像クレジット:Beacons

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

アップルのプライバシー対策にフランスのスタートアップのロビー団体が苦情

Apple(アップル)は欧州でまたもやプライバシーに関する苦情に直面している。スタートアップのロビー団体であるFrance Digitale(フランスデジタル)は、EUの規則に違反している疑いについて、同国のデータ保護監視機関調査を依頼した。

Politico(ポリティコ)が報じたこの苦情は、EUのプライバシー保護活動団体「noyb」が2020年、ドイツとスペインで訴えた2つの苦情に続くものだ。

これらの苦情はすべて、(直接および間接的に)Appleの「IDFA」と呼ばれる広告主のためのモバイルデバイス識別子を標的にしている。noybはAppleがその独自の識別子(その目的は、名前が示すように、広告ターゲティングのためにデバイスの追跡を有効化すること)をデバイスに割り当てる前に、ユーザーから同意を得るべきだったと主張している。

一方、France Digitaleによる訴えは、近々行われるAppleのプライバシーポリシー変更が、競争を阻害するという懸念を提起するものだ。この変更が実施されれば、サードパーティーのアプリ開発者は、ユーザーに追跡の許可を得なければならなくなるが、それと対照的に、Appleがユーザーを追跡することができるiOSの「パーソナライズされた広告」設定は、初期状態で有効になっていることをFrance Digitaleは指摘している。

関連記事:アップルのフェデリギ氏はユーザーデータ保護強化でのアドテック業界との対決姿勢を鮮明に

初期状態では、EUの法規(GDPR、EU一般データ保護規則)で求める要件に反しているのではないかと、France Digitaleは提言しているわけだ。

France Digitaleの苦情はまた、Appleが広告ターゲティングに利用するデータアクセスのレベルについての疑問も浮かび上がらせた。Appleは、提供されているiOSユーザーのデータは「一般的なデータ(出生年、性別、場所)」だけで、完全なターゲティングデータではないと述べている。

訴状に対応する声明の中で、Appleの広報担当者は次のように述べている。

この訴状における主張は、明らかに事実に反しており、ユーザーを追跡している人たちが、自分たちの行動から目をそらし、規制当局や政策立案者を誤解させようとする粗末な企てのように思われます。

ユーザーのための透明性と規制は、当社のプライバシー哲学の基本的な柱であり、Appleを含むすべての開発者に、等しく「AppTrackingTransparency(アプリのユーザー追跡の透明性)」を適用するようにしたのはそのためです。プライバシーは我々がプラットフォーム上で販売する広告に組み込まれており、ユーザーを追跡することはありません。

パーソナライズ広告のためのデータの使用は、ファーストパーティであるAppleに限定されており、ユーザーがこれをオフにすることができるようにすることで、より高い基準を維持しています。

CNIL(フランスの「情報処理と自由に関する国家委員会」)にも、この訴えについてコメントを求めているところだ。

今回のAppleに対するIDFA関連の苦情は、プライバシー保護団体によるものではなく、スタートアップのロビー団体からのものという点で少々珍しい。

しかし、サードパーティーのトラッキングをiOSユーザーが許可する必要があるように(「許可しない」を選ぶことができるようにしたのではなく)変更したAppleの決定が、強い反発を招いていることは明らかだ(この動きは、2020年フランスでパブリッシャーのロビー団体が不公正な競争を訴える事態にもつながった)。このあまりにも微妙な意味合いを含んだ行為によって、Appleは偽善という非難を受けている。

France Digitaleに、Appleに対してプライバシーに関する苦情を訴えた理由を尋ねると、広報担当者は次のようにTechCrunchに答えた。「スタートアップはルールに基づいて事業を行っています。世界最大のハイテク企業もそうであることを我々は期待します。競争の場に公平な規制がなければ、どんなに事業を拡大しても繁栄はないと、我々は信じています」。

「我々はCNILに法の執行を求めているに過ぎません。個人情報保護の番人は、私たちスタートアップのメンバーを常に調査しています。彼らの専門知識を、もっと大きな企業にも適用させようということです」と、彼は続けた。

同グループのCNILに対する訴えが急速に注目を集めている一方で、GDPRのワンストップショップのメカニズムの下、この問題はEU内でAppleのデータ運用を監督するアイルランドのデータ保護委員会による参照が必要だ。その後、調査するかどうかについての決定が下されることになる。

だから、この問題に何らかの迅速な規制措置が取られる可能性は低い。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleフランスGDPRデータ保護プライバシー広告

画像クレジット:Apple (livestream

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

iPhone用通話録音アプリのバグで数千件の通話記録が流出

人気のiPhone通話録音アプリのセキュリティ脆弱性により、何千人ものユーザーの会話の録音が流出した。

この脆弱性は、セキュリティ研究者でPingSafe AIの創設者であるAnand Prakash(アナンド・プラカシュ)氏によって発見された。プラカシュ氏はCall Recorderという適当な名前のアプリで、電話番号を知っていれば誰でも他のユーザーの通話記録にアクセスできることを発見した。

Burp Suiteのような簡単に入手できるプロキシツールを使えば、アプリのネットワークトラフィックを見たり変更したりできるので、アプリに登録されている自分の電話番号を別のアプリユーザーの電話番号に置き換えて、自分のスマートフォンでその録音にアクセスすることができたとプラカシュ氏は報告している。

TechCrunchは専用アカウントの予備スマートフォンを使って、プラカシュ氏の発見を検証した。

Call Recorderはユーザーの通話録音をAmazon Web Services上のクラウドストレージのバケットに保存している。これは公開されており、内部のファイルが一覧表示されていたが、ファイルにアクセスしたりダウンロードしたりすることはできなかった。バケットは報道までに閉鎖されていた。

記事執筆時点では、クラウドストレージのバケットには13万件以上に相当する約300GBのオーディオ録音データが入っていた。Call Recorderによると、現在までに100万件以上のアプリのダウンロードがあるという。

TechCrunchはアプリ開発者に連絡を取り、脆弱性が修正されるまでこの記事の公開を保留した。アプリの新バージョンは米国時間3月5日にApp Storeに提出されている。リリースノートによると、アプリのアップデートは「セキュリティレポートの内容にパッチを当てる」ものだという。

セキュリティの問題を通知する米TechCrunchの最初のメールに簡単な回答があったにもかかわらず、アプリ開発者のArun Nair(アルン・ネア)氏は、いくつかのコメント要請に応じていない。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:データ漏洩iOSiPhoneCall Recorder

画像クレジット:Дмитрий Ларичев / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:塚本直樹 / Twitter

AI利用のリアルタイム英語音声文字起こし「Otter. ai」とNTTドコモが日本向け法人プラン独占販売契約

AI利用のリアルタイム英語音声文字起こし「Otter.ai」が日本上陸、NTTドコモが法人向けプラン独占販売

NTTドコモ(ドコモ)は、英語音声を自動で文字起こしをする音声認識AIサービス「Otter」(Android版iOS版)のBusinessプラン販売について、日本における2年間の独占販売契約をOtter.aiと締結し、販売を開始したと発表した。Otter Businessプランを利用したい企業は、ドコモを通じて契約することで日本円での請求書払いが選択可能となる。利用料金は、1アカウント税込3万3000円/年(年間契約のみ)。

また同社は、100%子会社NTTドコモ・ベンチャーズを通じ、Otter.aiに2021年3月に追加出資すると明らかにした。

Otter Businessプランでは、無料プランで提供する主要機能に加え、機能を使用できる。

  • Zoomミーティング/ウェビナーではアプリ間連携により、参加者全員の音声文字起こしが可能(Zoomミーティング/ウェビナーでアプリ連携をする場合、Zoom Proプラン以上の契約が必須)
  • 会話録音データの一元管理が可能
  • チーム内での固有名詞/人名単語登録、およびその共有が可能
  • チーム内でユーザーの音声識別情報を相互共有、およびその情報に基づく話者分類が可能
  • 使用状況に関する統計レポートの確認が可能
  • SSO認証の適応が可能(適応条件:使用者数100名以上)

今後は、自動翻訳アプリ「はなして翻訳」で培った音声翻訳のノウハウを持つドコモ、精度の高い文字起こし技術を持つOtter.aiに加え、TOEIC960点相当の機械翻訳サービス「Mirai Translator」を提供するみらい翻訳の3社で連携し、より高度なサービス提供に向けた検討を進めるとしている。

ドコモとドコモ・ベンチャーズは、今回の契約を足がかりに、Otter.aiと協力して日本市場における文字起こしの新規マーケット開拓、サービス開発、様々なパートナーとの連携強化を推進する。

AI利用のリアルタイム英語音声文字起こし「Otter.ai」が日本上陸、NTTドコモが法人向けプラン独占販売

Otterは、AI技術を活用し、PCやスマートフォンで録音した英語音声をリアルタイムでテキスト化するサービス。前後の文脈に合わせて文章を自動修正しながらリアルタイムかつ精度の高い文字起こしを行えるほか、発話者の音声識別、複数の発話者と内容をセットでデータ化することなども可能。

英語での会議や講演会、インタビューなどの議事録やレポートの作成時間を大幅に削減でき、さらに録音した会話やそのテキストを用いた振り返りなども行える。

主な機能

  • 前後の文脈に合わせて文章を自動修正しながらリアルタイムに精度の高い文字起こしが可能
  • リッチノート機能により、画像挿入、文字編集、ハイライト操作が可能
  • ユーザーの音声をAIが学習して話し手を明確に識別し、ラベリングして記録
  • 直感的な操作による議事録(会話音声)データの共有が可能

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AI / 人工知能(用語)NTTドコモ(企業)NTTドコモ・ベンチャーズ(企業)Otter.ai(企業・サービス)音声認識 / Voice Recognition(用語)みらい翻訳(企業)文字起こし / Transcribe(用語)自然言語処理(用語)日本(国・地域)

ノーコードの自動化ツールZapierがノーコード教育サービスとコミュニティのMakerpadを初めての企業買収で合併

ノーコードの自動化ツールで知られるZapier(ザピアー)は、ノーコード教育サービスとコミュニティのMakerpad(メイカーパッド)を買収した。取り引きの条件については公表されていない。

TechCrunchでは、その誕生以来ずっとZapierを追いかけてきた。2012年の最初にして唯一の資金調達であった、BessemerやDFJが参加した120万ドル(約1億3000万円)のラウンドもそうだ。それ以来、同社はサービスに高額なプランを追加し、チーム作業向けの機能を構築し、最近ではリモートのみで運用するチームの拡大についてExtra Crunchに語っている。

米国時間3月8日にTechCrunchが行ったインタビューで、ZapierのCEOであるWade Foster(ウェイド・フォスター)氏は、現在同社には400人の従業員が在籍し、2020年夏には、ARR(年間経常収益)が1億ドル(約10億9000万円)のラインを超えたと話した。

Makerpadの合併は、同社にとって初めての企業買収だ。TechCrunchはMakerpadの創設者であるBen Tossell(ベン・トッセル)氏に今回の取り引きの構成について尋ねたところ、新たな親会社の下で「スタンドアローン」部門として運営することになると電子メールで答えてくれた。

今回の取り引きでは、この小さなスタートアップが契約前から取り組んできた事業をひっくり返すようなことは想定されていないようだ。トッセル氏は「Makerpadの究極のビジョンは、できるだけ多くの人に、コードを書かずにソフトウェアが構築できる力を教えること」だ話している。

フォスター氏は、その方向性に異議はないようだ。編集ガイドラインには沿ってもらうが、大幅な独立性をMakerpadには与えるつもりだとTechCrunchに語った。

TechCrunchはトッセル氏に、会社の売却がなぜ今なのかを尋ねた。すると彼は、合併することで、単独では成し得ないノーコードの世界の拡大が可能になるからだと答えた。しかもこの取り引きなら「ベンチャー投資などの別の方法」に比べて「頭を悩ませずに済む」からだとも話していた。

今回の買収は、たった1つのツイートから始まったとも言える。このツイートだ(訳注:Makerpadの会員が最も多く使っているツールの1位がAirtableで2位がZapireというツイートに対するWalter Chen[ウォルター・チェン]氏のリツイート。AirtableとZapierがMakerpadの中心的ユーティリティーになるとチェン氏は話している)。トッセル氏によれば、これを読んだZapierのCEOから接触があり、話が進んで契約に至ったという。フォスター氏は、電話取材の中でこの話を膨らませてくれた。彼はずっと前からトッセル氏の仕事に注目していて、以前にも夕食をともにしたことがあったそうだ。このツイートは彼のSlack(スラック)に場所を変え、トッセル氏とつながると、一気に契約まで進んだという。

両社とも、最近の四半期で急速な成長を遂げている。フォスター氏は、新型コロナ後の世界でスモールビジネスの同社のサービスへの依存度が次第に高まっていることについて詳しく説明してくれた。パンデミックに襲われた後、Zapierには中小企業からの力強い引き合いがあったという。デジタル変革が加速する中、その傾向はしばらく勢いを保つだろう。トッセル氏がTechCrunchに話したところによれば、ノーコードはすでに「想像以上に大きく成長している」とのこと。彼の会社では、ユーザー数は2020年だけでも4倍に増えた。

Zapierは、ノーコードワールドともいえるこの広範なテック系製品の一帯の中で、最も大きな成功を収めた企業だろう。それが現在、コミュニティを引き寄せ、同社サービスにユーザーを直接招き入れることが可能になるだろう。また、おそらく間接的にも、ノーコーダーの集団を時間とともに大きくしていくはずだ。

ここ数カ月間、ノーコード分野は活気に満ちている。その兄弟であるニッチ市場のローコード分野も同じだ。ローコードでは9桁のラウンドも現れている。一部の企業では、ローコードで社内用ソフトウェアを迅速に開発できるようにもなった。ノーコードも、Zapierの9桁の収益に見られるように、独自の成功を収めている。

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今後の買収についてTechCrunchが尋ねると、フォスター氏は、ドアを閉ざすことはないが、同時に大きく開くわけでもないと、中立的な立場を示した。SPACの可能性を尋ねると、フォスター氏の答えはやや明確になった。「ノー」だ。

この数カ月間で、ノーコード界の重要人物ローコード界の企業創設者と投資家に話を聞いてきた結果として、さらに大きなビジネス市場が、ローコードサービスと、ノーコードツールをいち早く採り入れた小さな企業の周辺に近づいて来るのは確かなようだ。ローコードツールが次第にコーディングから独立し、ノーコードツールの機能性が高まると、この2つの兄弟カテゴリーは融合することになるだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Zapierノーコード買収

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:金井哲夫)

SaaSの購買サービスで成長するVendrがシリーズAで約65.5億円の大型資金調達

米国時間3月8日、Vendrが6000万ドル(約65億4600万円)の大型シリーズAラウンドを発表した。このラウンドを主導したのはTiger Globalで、他にY Combinator、Sound Ventures、Craft Ventures、F-Prime Capital、Garage Capitalが参加した。

Vendrは2020年6月にシードラウンドで400万ドル(約4億3600万円)を調達し、その際にTechCrunchは同社が収益を上げていることを報じた。今回の大型シリーズAはそれに続く資金調達となる。Vendrは今回のシリーズAより前に600万ドル(約6億5400万円)以上を調達していた。

TechCrunchにはいくつか疑問があった。まず、Vendrはどのようにしてこれほど多額の資金を短期間で集めたのか。CEOのRyan Neu(ライアン・ノイ)氏がインタビューで答えたところによると、Vendrは2020年に5倍弱の成長を遂げ、同年のキャッシュフローも黒字だった。同社のビジネスモデルはSaaSの売り手と買い手の間に立ち、取引を迅速化しつつコストを抑えるもので、ソフトウェア依存の高まりとコスト管理の重視という2020年の2つのトレンドにうまくフィットしたようだ。

次の疑問は、どのようにしてこれほど大きく成長しているのかということだ。Vendrは顧客に対しソフトウェアに支払う代金の1〜5%を請求しており、これを積み上げて増やしていくことができる。ノイ氏はTechCrunchに対し、従業員500人の標準的な企業はソフトウェアに年間200万〜350万ドル(約2億1800万円〜3億8000万円)を支払うと述べており、計算してみると最小の1%の場合にVendrは2万〜3万5000ドル(約218万〜380万円)を受け取ることになる。パーセンテージの中間である2.5%なら、5万〜8万7500ドル(約545万〜955万円)を受け取る。

このような価格体系でVendrは年間の売上を短期間で増やすことができる。それではなぜVendrの顧客はソフトウェアの費用を処理するためにVendrに支払いをするのか。それは節約に有効だからだ。Vendrに支払う費用以上に節約できるなら、企業は得をする。さらに、企業は購入にかかる時間を節約できるとVendrが主張するとおり、Vendrの顧客はツールの確保にかかる時間を削減することができる。

誰にとっても良いことのように見えるが、例外はソフトウェアの売り手だ。売り手にとっては、あまり詳しくない買い手が自分たちのコードに高い費用を払ってくれるチャンスを失っているのではないか。しかしノイ氏は、Vendrのモデルは売り手企業にとってもそれほど悪くないという。迅速に、高確率で契約が成立するからだ。売り手企業はセールスチームの時間を節約することができ、差額とのバランスがとれるかもしれない。

現在、買い手を中心としているVendrはソフトウェア市場の売り手に対して何ができるかをさらに尋ねたが、ノイ氏は今後の計画を明らかにしなかった。

資金調達ラウンドに話を戻すと、新規の外部資金なしでうまくやっていたのならVendrはなぜ資金を調達したのか。同社はTechCrunchに対し、1年前は10人だった従業員を60人に増やしたことと、バランスシートをもっと強化したかったことを挙げた。なるほど。Tiger Globalからこれほど多額の小切手を用意されて受け取らないスタートアップは滅多にないだろう。評価額の上昇がVendrにとって何を意味するかを考えれば、謎を解くのはそれほど難しくない。

TechCrunchはここ数週間、ソフトウェア市場のとてつもない深さを探ってきた。ソフトウェアのTAM(Total Addressable Market、実現可能な最大の市場規模)を考えると、Vendrは投資家が今回のラウンドで期待を示したハイパーな成長を維持できるかもしれない。2021年のVendrの動向に注目しよう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:SaaSVendr資金調達

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Kaori Koyama)

グーグルがFlutterツールキットをバージョン2に、デストップとウェブアプリをサポート

Googleはオンラインイベントでモバイルアプリ構築のためオープンソースUIツールキットのリニューアルを発表した。Flutterは2年前にモバイル分野をターゲットとしてスタートしたが、今回のバージョン2ではウェブとデスクトップのアプリをサポートするようになった。これにより、FlutterのユーザーはiOS、Android、Windows、MacOS、Linuxに加えてウェブでも同じコードベースでアプリを構築できることとなった。

Flutterの開発責任者であるTim Sneath(ティム・スニース)氏は私のインタビューに対してこう述べている。

バージョン番号が2にアップしたわけですが、これはウェブとデスクトップがサポートされるというピボットに対応したものです。1つのジャンルで確立しているプロダクトがこのように大きな機能追加をすることは滅多にありません。

 

画像クレジット:Google

スニース氏は「オープンソースであるということから、Flutterはコミュニティによってしばらく前からウェブとデスクトップのサポートが開発されていたので、こうしたエンドポイントが今回正式に追加されたことは驚くべきものではありません」と述べている。2.0のリリースでは新しいプラットフォームにおけるパフォーマンスを従来のものと同等にするためには困難な作業が多数あった。

しかしFlutterのデスクトップサポートで注意すべきなのは、これがまだ安定版ではないという点だ。公式リリースチャンネルではデスクトップサポートにはアーリーリリースのフラグが立っている。Googleのエンジニアは「ベータ版のスナップショット」的機能と考えてもらいたいとしている。一方、ウェブサポートはベータ版から安定版に移行しており、Flutterを使ってアプリを構築するための正式なターゲットになっている。

画像クレジット:Google

スニース氏はウェブプラットフォームについて「チームは標準化を強く意識して伝統的なDOMベースのアプローチで開発を始めました」と述べた。それは正常に作動したがパフォーマンス、特に高度な機能のパフォーマンスが大きく低下した。そこでの1年ほど前からチームはCanvas Kitの開発を始めた。これはバイナリにコンパイル可能なWebAssemblyをベースにしたプロジェクトで、AndroidやChrome自体を動かすのと同じSkiaグラフィックエンジンを採用し、ウェブアプリから利用できるようにした。スニース氏はこういう。

簡単にいえばウェブアプリがHTMLをバイパスできるようになったということです。HTMLはウェブアプリの中でテキスト処理を中心とする部分です。WebAssemblyを利用してさまざまなテキスト処理、入力の自動補完、パスワード、認証などインターネット独特のさまざまな作業が従来どおりできます。

画像クレジット:Google

デスクトップでは、GoogleはCanonicalがFlutterを全面的に支持し、今後のデスクトップおよびモバイルアプリのデフォルトの選択肢としてFlutterを採用することを発表した。

MicrosoftもFlutterのサポートを拡大し、Googleと協力してWindowsの Flutterサポートを進めていいる。MicrosoftがAndroidに強い関心を寄せていることを考えればこれは驚きではない。実際、MicrosoftはAndroidが折りたたみ可能なデバイスをサポートするためのFlutterエンジンへの貢献を発表している。

GoogleによればAmazon、Microsoft、Adobe、Huawei、Alibaba、eBay、Squareなどの主要テクノロジー企業からFlutterとDart用のパッケージが1万5000以上提供されているという。

通常どおり、2.0へのアップデートにはマイナーな修正や改良が多数加えられている。

スニース氏は、Flutterチームは組み込みデバイスやその他のやや伝統的ではないプラットフォームのフレームワークとして、Flutterにもっと多くの時間を割く予定だと述べている。また、Flutterがアンビエントコンピューティング体験の強化にどのように役立つかにも興味を持っていると述べた。

将来の展望についてスニース氏は「Flutterチームは、組込みデバイスその他の主流からやや外れるプラットフォームのフレームワークとしてFlutterを拡張するために時間を割く予定です」と述べている。またFlutterがユーザーが操作を意識することなく実行できるアンビエントコンピューティングの強化にFlutterが役立つかのではないかとしている。

スニース氏はこう説明している。

アンビエントコンピューティングの世界の背景にはいくつなの条件があると思います。アプリは簡単に検索できるか?作ったアプリで金を稼げるか、それらが責任ある方法でできるかなどです。我々は、アンビエントサービスへのサポートも構築しています。アナリティクス、広告のフレームワーク、FirebaseやGoogle Cloudなどへの接続性なども改良し、Flutterの機能を利用するだけでなく、Googleが提供する幅広いエコシステム全体が利用できるようにしていきたいと考えています。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleオープンソースFlutter

画像クレジット:Google

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:滑川海彦@Facebook

旧来の保険代理店にテクノロジーを提供するInsurGridがプレシード投資で約1.4億円を調達

保険代理店は、事務処理や電話による顧客情報の収集に何時間も費やしている。シードステージの新しいスタートアップであるInsurGrid(インシュアグリッド)は、そのような作業の負担を軽減し、もっと容易に代理店が既存の顧客にサービスを提供したり、新たな顧客を獲得できるようにするソフトウェアソリューションを開発した。

InsurGridは、保険代理店に顧客の生年月日、運転免許証情報、保険証券申告書などの情報を収集するためのパーソナライズされたプラットフォームを提供する。このプラットフォームは、代理店の従業員が長い時間電話したり、何度もeメールのやり取りをしなくても、すべての顧客の異なる情報を1カ所で理解できるようにするものだ。これは不動産や損害保険の管理から始まっている。

InsurGridは85の保険会社と統合しており、プロバイダーの代わりにソフトウェアレイヤーを提供する。InsurGridのプラットフォームを使用して、保険会社は顧客に情報をアップロードするように依頼するだけで、数秒で契約者として登録できる。これは本質的に、保険会社が顧客の情報にアクセスし、より迅速に見積もりを提供するために使用できる「生きた名刺ホルダー」となる。

画像クレジット:InsurGrid

より良いサービスを提供することは金銭的な利益になる。InsurGridを利用しているEden Insurance(エデン保険)によれば、プラットフォームを介して情報を提出した人々は、そうでない人よりも、82%高い率で成約に至るという。エデン保険代理店オーナーのJeremy Eden(ジェレミー・エデン)氏は、既存のレートよりも保険料が300ドル(約3万2500円)安いプランを提示できるようになったと述べている。

InsurGridの中心にあるのは、旧来の保険代理店が行き詰まっているという創業チームの主張である。同社の共同創業者で最高経営責任者を務めるChase Beach(チェイス・ビーチ)氏は、米国の年間損害保険料6840億ドル(約74兆1500億円)の大部分が、1万6000の保険会社で働く約80万人の代理業者に分配されていると指摘している。これまでのところ、InsurGridはこれらのうち150以上の代理店と提携している。

インシュアテック企業大手のHippo(ヒッポ)やLemonade(レモネード)、Root(ルート)と同様に、InsurGridに独自の保険を提供する計画があったかと訊かれると、ビーチ氏は今のところ販売周りのプロセスを革新することのみに取り組んでいると答えた。最近株式を公開したかあるいは公開を計画しているこれらの大企業は、まだ成功するために代理店に依存していると、ビーチ氏は語る。

「私たちが保険代理店に取って代わるのではなく、Hippoや大手キャリアと同じレベルのテクノロジーを代理店に提供したらどうでしょうか」と、ビーチ氏はいう。「そして、2021年に競争できるようにデジタル体験を提供したらどうでしょう」。

時間が経つにつれて、保険代理店はファイナンシャルアドバイザーや不動産業者のように「専門家として、プロセスに大いに関わる」役割を担うようになると、ビーチ氏は見ている。

この分野に進出した他のスタートアップには、Gabi(ガビ)、Trellis(トレリス)、Canopy Connect(キャノピー・コネクト)などがあるが、その中でInsurGridを差別化する要因は、ビーチ氏が144年の歴史がある旧来の保険出身であることだと、チームは見ている。この経歴はビーチ氏に、成功に導く効果的なやり方で代理店に販売する方法について、重要な洞察力を与えた。InsurGridは販売から始めているが、将来的には保険に関わるプロセスの他の部分にも拡大していくようだ。

新旧のスタートアップ企業に対抗するため、InsurGridは最近、プレシード投資で130万ドル(約1億4100万円)を調達した。この資金は同社の「弱者のための弱者」になるという目標を達成するために使われると、ビーチ氏は述べている。その投資家には、Engineering Capital(エンジニアリング・キャピタル)、Hustle Fund(ハッスル・ファンド)、Vess Capital(ベス・キャピタル)、Sahil Lavingia(サヒル・ラビンギア)氏、Trevor Kienzle(トレバー・キンツレ)氏などが名を連ねている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:InsurGrid保険資金調達

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Zoomでの会話を自動で文字起こしする難聴者の新しいスタートアップ「Scribe」

Optimizely(オプティマイズリー)の共同創業者Dan Siroker(ダン・シロカー)氏は、自身の新しいスタートアップScribe(スクライブ)のアイデアはいくつかの個人的な体験に端を発していると話した。そして、Scribeの初のプロダクトはZoom(ズーム)にフォーカスしているが、そうした個人的な体験はまったくZoomに関連していなかったとも述べた。

シロカー氏は、耳が聞こえなくなり始め、補聴器を装着した時に初めて「ひらめき」を得て、失うだろうと思っていた聴覚が回復したことを回想した。

「それは本当に、体が自然に失うものを増強するための機会について考えさせる閃光でした」と話した。

また同氏は、特に自身がアファンタジア(頭の中に視覚的イメージを描けないこと)を抱えていて、それは「特定の物事を記憶しておくことを難しく」するため、記憶は明らかな増強するものの候補だったと付け加えた。

シロカー氏が2010年にPete Koomen(ピート・クーメン)氏とOptimizelyを設立し、2017年にCEO職から退き、そして同スタートアップが2020年Episerverに買収されたと書くと、思い出す人もいるかもいるかもしれない(そしていまEpiserverそのものがOptimizelyにブランド変更されている)。

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早送りして現在に目を向けると、シロカー氏はいまScribeのCEOだ。同社は初のプロダクトのサインアップを受け付けている。そのプロダクトをZoomミーティングに統合すると、ミーティングを検索可能なものに、そして筆記録をシェアできるものに変える。

シロカー氏は筆者とのZoomコールの際にそれをデモンストレートしてみせてくれた。Scribeはミーティングに追加の参加者として現れ、リアルタイムの筆記録を作成しながら録画と録音をする。ミーティングの間、あるいは終了後にユーザーは筆記録を編集したり、録画の関連する部分を視聴したり、重要な箇所にハイライトをつけたりできる。

テクノロジー的な視点からいうと、これらはすべて飛躍的な前進ではなさそうだ。しかし筆者はエクスペリエンスのシームレスさに感激した。追加の参加者を加えるだけで、フル録画でき、後にそしてこの記事を書く間にも確認するのに使える検索可能な会話の筆記録を手にすることができた。

画像クレジット:Scribe

Scribeはミーティングを録画するが、テープレコーダーというよりノート取りの代わりであって欲しいとシロカー氏は話した。

「あなたと私がミーティングにいて、私がペンと紙を持ってそのミーティングに参加し、あなたが言っていることを紙に書きます。それは完全に社会的に受け入れられることです。ある意味、相手を喜ばせるものでもあります。その代わり、テープレコーダーを持ち込んであなたの前にどすっと置いて録音を始めると、もしかするとこうした経験を持っているかもしれませんが、それはかなり異なるもののように感じます」。

シロカー氏の主張の要点は、Scribeのレコーディングと筆記録は編集でき、いつでも個々の構成要素をオンにしたりオフにしたりできるということだ。

「これは永久記録ではありません。ミーティングを持つ時のように作る、ちょうどGoogle Docのような共有アーティファクトで、いつでも戻って変更を加えられます」。

とはいえ、Scribeが恥ずかしいコメントを録音することは可能で、録音はミーティング参加者をトラブルに陥れる事態を引き起こすかもしれない(結局、リークされた企業のミーティング録音は数多くの刺激的なニュースになってきた)。シロカー氏はそれが「一般的ではない」ことを望んでいるが、もし時々起こるとすればある種のさらなる透明性と責任を生み出すかもしれないと主張する。

ScribeはOpenAIのCEO、Sam Altman(サム・アルトマン)氏がリードしたラウンド、そしてFirst Round Capitalがリードしたラウンドで計500万ドル(約5億4000万円)を調達した。

画像クレジット:Scribe

シロカー氏は、ZoomをScribeにとって単に「上陸拠点」としてとらえていると筆者に語った。次に同社はGoogle MeetやMicrosoft Teamsのようなプロダクトのサポートを追加する。ゆくゆくは、組織のための新たな「集合精神」の構築を同氏は望んでいる。そこでは、会話や知識が検索可能なためにみんなが「よりスマートで向上している」。

「どこで考えるかに本当に左右されるものを追求するところでは、我々は最大のポジティブな影響を人々の暮らしにもたらすことができます」と同氏は述べた。「配偶者と交わす個人的な会話に適用するのは難しいですが、価値とプライバシーとコントロールの正しいバランスを求めれば、実際にはウィンウィンの方法でこれを人々に浸透させることができるかもしれません」。

そしてもしScribeが幅広いコンテクストにある情報を我々が記録したり思い起こしたりするのをサポートするというミッションを実際に達成すれば、我々の物事を記憶するという自然な能力に影響を及ぼすのではないか。

「イエスというのが答えで、それはオーケーだと思います」とシロカー氏は答えた。「あなたの脳のエネルギーは限られています。何週間か前に誰かが言ったことを覚えておくことは、コンピューターでもできることです。それを行うのになぜあなたの大事な脳のサイクルを無駄遣いするのでしょうか」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Scribeビデオ会議Zoom文字起こし資金調達

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nariko Mizoguchi

好決算にもかかわらずウォール街の怒りを買ったエンタープライズ向け企業のSnowflake

今週、Snowflakeが発表した業績は好調のようで、売上高は前年比で2倍以上に伸びている。

しかし、同社の第4四半期の収益は117%増加し1億9050万ドル(約206億5000万円)となったものの、それはおそらく投資家たちを満足させることはできなかったようだ。なにしろ米国時間3月3日にその発表が行われた後、株価は急落したのだ。

この反応は、2月第4週にSalesforce(セールスフォース)が、好調な業績報告を発表した後にウォール街から受けた反応に似ている。Snowflakeの株価は米国時間3月5日、4%ほどの下落で引けたが、日中みられた最大12%程度の下落からは戻した。

関連記事:好調な四半期決算にもかかわらずSalesforceの株価は6.3%下落

株価が下落する理由は何だろう。ウォール街の収益報告に対する反応は、ある企業が直近に何をしたかではなく、次に何をするかに着目していることが多い。しかし、Snowflakeの今四半期の収益予想は、アナリストの予想に沿った数字の、1億9500万ドル(約211億4000万円)から2億ドル(約216億8000万円)というもので、再び力強い数字になるように思えた。

良さそうなのだが……?どうやらある特定の企業に関していえば、アナリストの予想に沿っているだけでは、投資家にとっては十分ではないようなのだ。つまり、公表されていた期待を上回っていなかったので、失望を招いたのだろう。期待に応えることが失敗とみなされるほどのものなのかはよくわからないが、目の前の現実はそうなっている。

もちろん、2021年は、現時点まではテック株の価格が下がってきているという事実は押さえておく価値があるだろう。同僚のAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)記者が米国時間3月5日の朝に記事にしたように、その傾向は今週さらに悪化した。テック系の多いNASDAQが過去52週の最高値から11.4%下落していることを考えると、おそらく投資家はすべてに鞭を打っていて、Snowflakeは単にそのとばっちりを受けているだけなのだろう。

SnowflakeのCEOであるFrank Slootman(フランク・スルートマン)氏は、3月第1週の業績説明会で、Snowflakeのポジションは良好であると指摘したが、これは同社がオンプレミスインフラストラクチャのデータ制限を取り除いたという事実によってある程度証明されている。クラウドの良さはリソースが無限であるという点にあり、そのことから同社は、使用可能量ではなく、実消費量の管理を支援するように促されてきた。これはSnowflakeにとって有利に働く進化となった。

「大きなパラダイム変化が起きています。これまでは歴史的にみればオンプレミスのデータセンターでは、ユーザーは容量を管理しなければなりませんでした。それが今では、もはや容量管理ではなく、消費量管理が必要になってきたのです。そしてそれは、全員ではありませんが多くのユーザーにとって、そしてパブリッククラウドを利用しているユーザーにとって新しいことなのです。もちろん私は消費量という概念に馴染んできていました、なぜならそれはインフラストラクチャクラウドにも同じように適用されるからです」とスルートマン氏は業績報告会で述べている。

Snowflake は、期待を管理する必要がある。同社によれば10社以上の顧客がこの先12カ月ベースで、毎月500万ドル(約5億4000万円)以上の支払いを行うのである。どう考えても大金である。また、クラウドへの明らかな移行傾向があるとはいえ、実際に移行されたデータ量が企業のワークロード全体に占める割合はまだ小さい。すなわちSnowflakeには多くの成長機会が残されていることを意味している。

さらにSnowflakeの幹部たちは、顧客が実際に利用開始する前に、データをSnowflakeのデータレイクに移動させるために必要な時間が増えていると指摘している。つまり、新規顧客が開始するのには時間がかかるとしても、顧客がSnowflakeのプラットフォームにデータを移行し続ける限り、時間が経つにつれてより多くの支払いが行われることになる。

では、なぜSnowflakeの四半期の成長率が伸びないのか?まあ、企業がSnowflake位の規模になると、大数の法則が働き始めて、その派手な成長率の数字を維持するのが難しくなる。

私はウォール街の投資家たちに仕事のやり方を教えるためにいるのではないし、彼らに私の仕事のやり方を教えて欲しいとも思っていない。しかし、同社の全体的な財務状況、未開拓のクラウドの可能性、そしてSnowflakeの課金に対するアプローチの特性を見た場合、短期的な投資家の反応に関わらず、同社の見通しを肯定的に捉えずにはいられない。

関連記事:好調な四半期決算にもかかわらずSalesforceの株価は6.3%下落

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Snowflakeクラウドコンピューティング決算発表

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

グーグルがChromeのリリースサイクルを6週から4週に短縮

米国時間3月4日、GoogleはChromeブラウザーのリリースサイクルを現在の6週間間隔(+隔週のセキュリティパッチ)から4週間に短縮すると発表した。それはシンギュラリティを速める1つの方法かもしれないが、Mozillaも2020年、4週間サイクルに移行している。

「Chromeのテストとリリースの工程を改善し、隔週のセキュリティアップデートによってパッチのギャップも解決したため、リリースサイクルを短縮して新機能をより早くお届けできることが確実になった」とChromeの開発チームは説明している。

しかしGoogleは、誰もがこれだけの早さを望んでいるわけでないことも承知している。特に、エンタープライズの世界では。そのためGoogleはエンタープライズ向けにExtended Stableオプション(延長安定版)を提供し、8週ごとのアップデートを届けるという。これを利用できるのはエンタープライズのアドミンとChromiumを組み込み用に使っているユーザーたちだ。そのユーザーたちも隔週のセキュリティは受け取るが、Googleは「これらのアップデートには4週オプションにある新しい機能やセキュリティフィックスはない」と注記している。

新たな4週サイクルが始まるのは、2021第3四半期のChrome 94からだ。これだけ速くなると、Chrome 100の安定版が出るのは2022年の3月29日になる。記念のケーキを期待したいところだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleGoogle Chrome

画像クレジット:Jaap Arriens/NurPhoto/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Microsoft Edgeの起動が高速に、バーティカルタブが利用可能に

Microsoftは1年前に、同社のEdgeブラウザーにバーティカルタブ(垂直タブ)を実装すると発表したが、ついに米国時間3月4日、Edgeのバーティカルタブの一般公開を発表した

さらにEdgeチームは、ブラウザーの起動を大幅に高速化する内部変更も発表している(Microsoftの予備テストによれば、正確には最大41%高速化)。Microsoftはハードドライブの速度を上げたり、Edgeを大幅に縮小したりすることはできないため、チームは実現のために、サインイン時にブラウザーをバックグラウンドでロードし、すべてのブラウザーのウィンドウを閉じても実行を継続している。これが気に入らない場合は、いつでもこの機能をオフもできる。

バーティカルタブはすぐ利用できるが、ブラウザーの起動に関する改良は2021年3月中に展開される予定だ。

画像クレジット:Microsoft

バーティカルタブは、もちろん新しいものではない。他のブラウザーでは、デフォルト機能やエクステンション(拡張機能)として以前からサポートしている。それでも、ついにEdgeで利用できるようになったのはうれしい。

本日の発表声明でMicrosoftのMichele McDanel(ミケーレ・マクダネル)氏は次のように述べている。「多くのウェブサイトは慣習的な格子形状で、ページの両端に空白が多くの残っている。私たちがユーザーとの協力の中で見つけたのは、この垂直の空白をタブのスペースとして使うということだ。タブのリストは必ずしも、従来のように上部に横に並ばなくてもよい。バーティカルタブは新しいコンセプトではないが、ブラウザー体験をより良いものにする機会として、いくつかのプロトタイプをユーザーとテストしてきた」。

画像クレジット:Microsoft

その結果わかったのは、バーティカルタブを好むユーザーは、通常の水平タブと切り換えながら使うのが好きだということだった。そこで、希望者はどちらのタブも常時見られるようにした。また、画面を広く使いたいユーザーもいるため、サイドバーをたたむ機能も搭載している。

他にもMicrosoftは、同社の検索エンジンであるBingにいくつかの新しい機能を追加した。例えば新設のレシピービューは、いつものように夕飯の献立が思いつかないとき利用する。また、画像検索の結果表示もきれいになり、サイドバーの情報ボックスを改善してインフォグラフィック的になっている。しかしながら、残念なことにあなたはおそらくBingを使っていない。もし使っているのならば、ここでアップデートの詳細を確認しよう。

関連記事:Microsoft Edgeにスマートコピー、バーティカルタブなどの新機能が追加

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft Edgeウェブブラウザー

画像クレジット:Microsoft

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドアイデンティティ管理のOktaが同業のスタートアップAuth0を約7000億円で買収

アイデンティティ管理のOktaは米国時間3月3日、取引終了後に決算報告を発表し、また、同社はクラウドアイデンティティスタートアップのAuth0を65億ドル(約7020億円)の巨額で買収することも公表した。Auth0は2020年の7月にSalesforce Venturesのリードで1億2000万ドル(約130億円)を調達したときの評価額が19億2000万ドル(約2070億円)だった

Auth0によりOktaはクラウドアイデンティティ企業を取得して、開発者がアプリケーションにアイデンティティ管理を埋め込めるようにする。同社のアイデンティティプラットフォームにとってそれは、新しい次元が加わることになる。Oktaの共同創業者でCEOのTodd McKinnon(トッド・マッキノン)氏によると、買収によって彼の企業はアイデンティティの分野をさらに広くカバーできることになり、また同時にアイデンティティが、インフラストラクチャや、コラボレーション、CRMなどのエンタープライズソフトウェアと並ぶファーストクラスのクラウドカテゴリーに格上げされることになる。

「アイデンティティも、クラウドソフトウェアの主要カテゴリーであるべきだ。アイデンティティがそうなるには、ワークフォースやカスタマーなどすべてのユースケースをカバーしなければならない。私たちのプロダクトは、伝統的にワークフォース(従業員対象)だが、新たにカスタマー(一般ユーザー対象)にもなる」とマッキノン氏はいう。

カスタマーの場合は、それは単に企業の認証システムではなくて、顧客がOkta、Auth0をバックエンドで使ってユーザーをプラットフォームに登録する。買収によりこの両方をカバーできることをマッキノン氏は喜んでいる。

Auth0の共同創業者でCEOのEugenio Pace(エウジェニオ・ペース)氏は、彼の企業とOktaとの合併がアイデンティティ管理分野における強力な組み合わせであり、これは誇張ではないと念を押し、次のように述べている。「両者が一緒になって、顧客のワークフォースとカスタマー両方のアイデンティティソリューションを提供することには、他に類のないスピードと単純性とセキュリティと信頼性とスケーラビリティがある。両者が力を合わせれば、顧客はイノベーションを加速でき、至るところで消費者と企業と従業員たちの要求に応じられるようになる」。

ペース氏と共同創業者のMatias Woloski(マティアス・ウォロスキ)氏はともにMicrosoftに在籍し、2013年にAuth0を立ち上げた。マッキノン氏は、Auth0が社員数800名の大企業である点を指摘する。2021年の売上は、2億ドル(約220億円)と予想されている。

「彼らには、柔軟性に富みAPI駆動のサービスと、開発者が求める拡張性とカスタマイズ性のある優れたデベロッパーツールを開発してきたという自負がある。思いつきでではなく、最初からの体質としてその能力がある」とマッキノン氏は考えている。

マッキノン氏によると一部重複する顧客もあるが、お互いにとって新しい顧客も多いため、それぞれに対してAuth0、Oktaを売っていくことができるという。両社の組み合わせはアイデンティティ管理のフルコースを提供できるものだと、という。

Auth0のデベロッパー重視の姿勢は、本誌のZack Whittakerが2019年に書いた記事にも現れている。

「再投資と高成長の維持を優先しているため、利益は計上しない。しかし、効率は日に日に良くなっている。顧客の獲得も、彼らへのサービスも、設計のアップデートと実装もすべて効率を上げている」。

Oktaの下で、Auth0はどう変わるのだろうか。マッキノン氏は、統合の進め方は数カ月かけて検討するが、Auth0はOktaの中の独立のユニットのように操業を続けると述べている。Auth0のユーザーは、ほっとするだろう。しかも同氏によると、2人の創業者は数年前からの仲なので、お互いに信頼関係があるとのことだ。

この間、Oktaの四半期も好調で、前年同期比で40%増の2億3470ドル(約220億円)の売上を計上したが、ウォール街はこの買収を歓迎せず、時間外で株価は6.9%下がった。

Auth0は2013年に創業され、これまで3億ドル(約320億円)ほど調達している。主な投資家はSalesforce Venturesに加え、Sapphire VenturesやBessemer Venture PartnersそしてMeritech Capital Partnersなどだ。

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タグ:OktaAuth0買収

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルがiOS 14.5で「デフォルト」の音楽サービスは設定できないと明言

Apple(アップル)は、iOS 14.5 betaが一部で言われているようなデフォルトのミュージックサービスを選ぶことを許しているわけではないことを明言した。2021年2月にこのベータ版が公開されて以来、Siriに音楽の再生を依頼した時、どのミュージックサービスを使うかをSiriが尋ねることに多くのベータテスターが気づいた。しかしAppleは、この機能を「デフォルトの設定」とは考えていない。メールとブラウザーのアプリについては最近デフォルトの選択ができるようになった。

実際には、学習機能のあるSiriが、ユーザーの音楽を聞く習慣をより深く理解するためだという。

例えばSiriに楽曲やアルバムやアーティストを演奏するよう依頼すると、Siriはこの種のコンテンツを聴くのにどのサービスを使いたいかを尋ねる。しかし、ユーザーのSiriに対する返答によってそのサービスが「デフォルト」になるわけではない、とAppleは言っている。事実、Siriは後で同じ質問をすることがある。自分の好みがすでに設定されていると思っていたユーザーにとっては混乱を招く要求だ。

画像クレジット:iOS 14.5のスクリーンショット

さらにAppleは、iOSの設定の中にはメールやブラウザーのような「デフォルト」のミュージックサービスを指定する部分がないことも指摘した。これまでにも多くの報道がこの違いを記載していたが、それでもこの機能を「デフォルトの設定」と書いており、それは厳密には誤りである。

もう少し具体的にいうと、これはユーザーが異なるタイプのオーディオコンテンツ(音楽に限らない)を利用する際に使いたいアプリをSiriが学習するのを手助けする仕組みだ。音楽を聴くときにSpotify(スポティファイ)を使う人でも、ポッドキャストはApple Podcastsやサードパーティーのポッドキャストアプリを使いたいかもしれない。さらにオーディオブックはまた別のアプリで聴きたいかもしれない。

このようなオーディオに関するリクエストにどのサービスを使いたいかをユーザーに尋ねる時、Siriはインストールされているオーディオアプリのリストを提示してそこから選ばせる。

画像クレジット:iOS 14.5のスクリーンショット

Siriがユーザーの習慣を(ユーザーの返答や選択に基づいて)理解することに加えて、アプリ開発者は自分のアプリでユーザーが何をなぜ聴いているかについての情報を、APIを通じてSiriに伝えることができる。これによってSiriはユーザーのリクエストに対してより正確に答えることができる。なお、一連の処理はすべてデバイス上で行われる。

このオーディオ選択機能は、普段の好みとは違う特定のサービスを使うようユーザーがリクエストすることを妨げるものではもちろんない。

たとえばユーザーは「スムーズジャズのラジオをPandora(パンドラ)で流して」と言って希望のアプリを使うことができる。ただし、もしその後も音楽のリクエストにPandoraの名前を出し続けると、Siriが最初に尋ねた時にApple MusicやSpotifyなどのサービスを指定していた場合でも、次にサービスを指定せずに音楽再生をリクエストすると、Siriは再度サービスを選ぶようにと尋ねることがある。

画像クレジット:iOS 14.5のスクリーンショット

この明確化は些細なことのように思えるかもしれないが、App Storeとアプリエコシステムを巡ってこのところAppleに向けられている規制当局の監視を踏まえると、大きな意味を持っている。中でもSpotifyは、Appleが反競争的な行動をとっていると告発しており、たとえばAppleが競合する音楽サービスを運営していながらSpotifyのアプリ内購入に手数料を要求しているのは不当な先行者利益だと指摘している。

このオーディオ選択機能が最初登場したのはiOS 14.5 beta 1だったが、beta 2で削除された。それがbeta 3で復活して注目を集め見出しを賑わせ、さらにAppleの反応を呼び起こした。

厳密には「デフォルト」の設定を可能にするものではないとしても、Siriのこの新機能は、一貫したリスニング傾向を持つユーザーにとって、いずれは同じ意味になるかもしれない。こうしてiPhoneは、使いたくないときにはApple自身のアプリを使うことを強制されることなく、あなたの聴きたいものをどうやってプレイするかについてさらに賢くなっていくだろう。

関連記事:アップルがiOS、iPad OSでデフォルトのメールやブラウザアプリの変更を許可

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiOSSiri音楽

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

マイクロソフトが会議で文字起こしや翻訳を行うアプリ「Group Transcribe」を発表

Microsoft(マイクロソフト)の社内インキュベーターであるMicrosoft Garage(マイクロソフト ガレージ)から、会議の文字起こしに使える新たなプロジェクトが発表された。

現在、リアルタイムで文字起こしが行えるスマートフォン用アプリはいくつかある。例えば「Otter.ai(オッターエーアイ)」や、Google(グーグル)のPixel(ピクセル)デバイス向け「Recorder(レコーダー)」などだ。だが、Microsoftが新たに発表した「Group Transcribe(グループ トランスクライブ)」は、会議の文字起こしを共同作業的なプロセスとして再構築し、全員が同時に自分のデバイスで会議を記録することで、精度を高めるというものだ。このアプリは、80以上の異なる地域で話されている言語をリアルタイムで翻訳する機能も備わる。

アプリを使用するには、まず1人が自分のデバイスで会議を開始する。続いてBluetooth、スキャン可能なQRコード、またはリンクを共有することで、他の出席者に参加を呼びかける。他の出席者が参加して会議が始まると、各人はリアルタイムで文字起こしされる会議の記録を自分のデバイスで見ることができる。

画像クレジット:Microsoft

AI音声言語技術を搭載したこのアプリは、会議で使用されている各人の携帯電話のマイクが捉えた話し手の声量に基づいて、より精度の高い書き起こしと話し手の識別を行うことができるという。

各出席者の声量レベルを比較することで、どの端末が話し手に最も近いか、そしてその話し手が好む言語を、クラウドサービスが判断する。つまり、このアプリでは、誰が話したのかというラベルづけも正確に行うことができる。これは1人しか記録していない他の文字起こしアプリが不得意とすることだ。

さらに、会議の参加者が自分の母国語で話したい場合は、このアプリが他の参加者のデバイスに、各人の言語に翻訳して文字化したものを提供することも可能だ。

画像クレジット:Microsoft

Microsoftによると、このアプリはアクセシビリティも考慮して設計されており、聴覚障害者や難聴者、非ネイティブスピーカーの人でも、リアルタイムの文字化や翻訳を通して、より積極的に会議に参加することが容易になるという。

このプロジェクト自体が、全員合わせると十数種類のさまざまな言語や方言を話すMicrosoftの従業員たちによって構築されたものだ。

「これはコミュニケーションのためのすばらしいツールになり得ます。私が是非とも確かめたいことは、このアプリが異なる言語を話す人々の間にある壁を打ち破るためのものであるということです」と、主任開発責任者のFranklin Munoz(フランクリン・ムノス)氏は、このプロジェクトを発表する際に語っている。

多くのクラウドベースの文字起こしサービスと同様、このアプリは機密性の高い会議には使用するべきではない。しかし、Microsoftはこのデータとプライバシーコントロールをグラニュラ(粒状)化し、ユーザーは会話データを共有したい相手や時間を決めることができる。

画像クレジット:Microsoft

収集された音声とテキストの入力データは、機能を実行するためにMicrosoftのオンライン音声認識および翻訳技術に送られるが、本名ではなくランダムに生成された識別子が使用される。

Microsoftが会議の文字起こしデータや音声記録を保存することはないが(ユーザーのデバイスに保存される)、サービス改善のために参加者が会議の記録をMicrosoftに「寄与」することを、このアプリは奨励している。

会議の参加者全員が同意した場合、Microsoftは音声と音声認識で生成されたテキストの文字起こしを保持することができる。Microsoftはこのデータを見直すことで、音声認識と話者属性の機能を時間をかけて改善していくことを目指していると言っている。ユーザーデータはその後、Microsoftの従業員やMicrosoft社に勤務する他社の契約社員が、秘密保持契約の下でアクセスできるようになるが、発言者のアカウント情報は一切含まれない。

レビュアーがアクセスできるのはランダムな音声の断片のみで、完全な録音ではない。また、Microsoftによると、例えばクレジットカード番号や電話番号などを表す長い数字の文字列は削除することで、会議の録音を「非識別化」しているとのこと。ユーザーは過去に共有した録音をいつでも削除することができるが、それ以外の場合は暗号化されたサーバーに最大2年間保存されると、Microsoftは述べている。

企業で使用する場合、管理者レベルですべてのユーザーを「寄与」に設定したりブロックしたりする方法はないので、このようなサービスの利点とリスクを慎重に検討する必要があるだろう。また、これはMicrosoft Garageのプロジェクトであり、つまり実験的なものであって、いつでも閉鎖される可能性がある。

現在、このGroup TranscribeアプリはiOSのみで利用可能だ。

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タグ:Microsoftアプリ機械翻訳文字起こし

画像クレジット:Microsoft

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルが「Cookie廃止後、それに代わる他のユーザー追跡技術を採用するつもりはない」と発言

これまでTechCrunchでは、複数のウェブサイトにわたるユーザーを追跡するCookie(クッキー)に代わるものを構築する試みについて何度か記事にしてきた。しかし、Google(グーグル)はそのような道をたどるつもりはないと述べている。

関連記事:米広告業界団体がCookieに代わるユーザー追跡方式を提案

この検索の巨大企業は、すでに同社のブラウザ「Chrome(クローム)」でサードパーティ製Cookieのサポートを段階的に廃止することを発表している。米国時間3月3日、Googleはさらにその先の方針を明らかにした。同社の製品管理ディレクターで広告のプライバシーと信頼を担当するDavid Temkin(デイビッド・テムキン)氏は「サードパーティのCookieが段階的に廃止された後、それに代わってウェブをブラウズする個人を追跡する識別子を我々が構築するつもりはありません。また、そのようなものを我々の製品で使用するつもりはありません」と、ブログ記事に書いている。

関連記事:グーグルはChromeでのサードパーティCookieのサポートを2年以内に段階的に廃止

「他のプロバイダーがウェブ上の広告トラッキングのために、例えばeメールアドレスをベースにしたユーザー識別情報のような、当社が提供しないレベルの(ユーザー識別)機能を提供する可能性があることはわかっています」と、テムキン氏は続けている。「私たちはこれらのソリューションが、ますます高まりつつある消費者のプライバシーに対する要望に合致するとは思いませんし、急速に進化しつつある規制に対応できるとも思えません。そのため、長期的に持続可能な投資ではないと考えます」。

これは、Googleが個人をターゲットにした広告を一切行わないという意味ではない。代わりに「集計、匿名化、オンデバイス処理、その他のプライバシー保護技術の進歩」のおかげで「デジタル広告の利点となるパフォーマンスを得るために、もはやウェブ上で個々の消費者を追跡する必要はない」とテムキン氏は主張する。

例としてテムキン氏は、現在Googleによってテストされている「コホートの連合学習(FLoC)」と呼ばれる新しいアプローチを提示した。これは共通の関心に基づくユーザーの大規模なグループをターゲットにした広告を可能にする。テムキン氏によれば、Googleは2021年の第2四半期に、広告主とFLoCのテストを開始する予定だという。

テムキン氏はまた、これらの変更はサードパーティのデータを対象とするもので、パブリッシャーが自サイトの訪問者を追跡してターゲティングする能力には影響しないと述べている。「私たちはパートナー企業がその顧客と直接関係を持てるように、我々の広告プラットフォームで、引き続きファーストパーティとの関係をサポートしていきます」。

しかし、そのFLoCについて、電子フロンティア財団が「プライバシー保護技術の対極」と表現し「行動的信用スコア」と比較していることは注目に値する。

関連記事:グーグルはCookieに代わるターゲット方式による広告収入はほぼ変わらないと主張するもプライバシー面は不透明

Cookieは業界全体で段階的に廃止されているが、英国の競争・市場庁は現在、独占禁止法上の懸念を理由にGoogleのクッキー廃止計画に関する調査を進めている。Googleが市場力を高めるために口実としてプライバシーを利用していると批判する声があるからだ。同様の批判は、近々施されるiOSのプライバシー変更をめぐりApple(アップル)に対しても寄せられている

関連記事:アップルのApp Tracking Transparency機能はデフォルトで有効に、早春にiOSで実装

カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleCookieプライバシー

画像クレジット: Ana Maria Serrano / Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)