D2Cブランド向け保証サービスのMulberryが年間経常収益約11億円を視野に

Chinedu Eleanya(チネデュ・エレニャ)氏がMulberry(マルベリー)を消費者直販(D2C)ブランドの保証サービスとして創業してから2年でビジネスは急成長した。

あらゆる人にあらゆる商品を販売するスタートアップブランドの出現により、消費者行動が大きく変わった。この動きに乗じたMulberryは小売業者向けの保証サービスに求められていたひねりを加えた。小売業者は長年にわたり消費者に高額の買い物を快適にしてもらうために保証サービスに頼ってきた。同社の今年これまでのARR(年間経常収益)が1000万ドル(約11億円)に近づきつつあるのは、買い物がオンラインへシフトする傾向によるところが小さくない。

新型コロナウイルスが襲う前の2020年3月の段階で投資家が1000万ドル(約11億円)を同社に投資したがったのはそのためだ。今回のラウンドは、ニューヨークに拠点を置くアーリーステージを対象とする投資会社であるPace Capital(ペースキャピタル)がリードした。既存投資家からの参加者にはFounder Collective(ファウンダーコレクティブ)も含まれる。

その後パンデミックが襲った。エレニャ氏によると、新型コロナウイルスが買い物客(少なくともまだ買い物にお金が使える人)を店頭からオンラインに動かし、保証サービスの必要性が高まった。

エレニャ氏はナイジェリアからニューヨークに移り、Cognical(コグニカル)やZibby(ジビー)などの企業を創業したシリアルアントレプレナーだ。Mulberryとそのオンラインモデルで成功を収めた。

確かに、同社はeコマース保証に取り組む唯一のスタートアップというわけではない。同様のサービスを提供するClyde(クライド)は同じ時期に1400万ドル(約15億円)を調達した(未訳記事)。

だがこの種のオンラインサービス市場は依然として急速に成長しており、エレニャ氏は複数の勝者が生まれる余地があると考えている。「POSが財務にもたらした革新を考えると、延長保証の分野が最も興味深い」と同氏は述べた。

小売という観点からは融資も良いが、より大きくは顧客獲得コストが上昇し続けてしまうという話がある、とエレニャ氏は言う。同氏は、小売業者は顧客を維持することで長期的な価値を最大化する必要があり、その方法はサービスプログラムの提供だと主張する。

「当社は中小の小売業者がこの何でも高くつく環境でも競争できるようアクセスを民主化している」と同氏は語る。

Mulberryはすでに、スマートワークアウトミラーのMirror、コーヒーメーカーのBreville、Casperとはマットレスの競争相手であるNaspar Sleepなどの消費者向けブランドと提携している。

これまでのところMulberryのARRは約100万ドル(約11億円)だが、2020年のARRは1000万ドル(約11億円)に達するペースだとエレニャ氏は述べた。

画像クレジット:Vectomart / Shutterstock

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タイの食料サプライチェーン合理化のFreshketが約3.2億円を調達

バンコク拠点のFreshket(フレッシュケット)は新鮮な農産品を農場からテーブルに届けるプロセスを簡素化する。2017年に創業された同社はOpenspace Ventures(オープンスペース・ベンチャーズ)がリードするシリーズAラウンドで300万ドル(約3億2000万円)を調達した。

本ラウンドにはタイのプライベートエクイティファームECG-Research(ECGリサーチ)、Innospace(イノスペース)、そしてインドネシアの農業テクノロジースタートアップTaniHub(タニハブ)の創業者であるPamitra Wineka(パミトラ・ウィネカ)氏とIvan Sustiawan(イヴァン・サスティアワン)氏も参加した。また、既存投資家のフランス・シンガポールの食品複合企業Denis Asia Pacific(デニス・アジア・パシフィック)とタイのファミリーオフィスSeedersclub(シーダースクラブ)も出資した。

Freshketのテクノロジーには、農家や食品加工業者をレストランなどの事業者やタイ国内の消費者につなげるeコマースマーケットプレイスが含まれる。FreshketはCEOのPonglada Paniangwet(ポングラダ・パニアングウェット)氏とCMOのTuangploi Chiwalaksanangkoon(ツアンプロイ・チワラクサナンクーン)氏が共同で創業した。3年前にFreshketを設立する前はそれぞれマーケティング業界で働いていた。

パニアングウェット氏はTechCrunchに対し、彼女自身の家族が25年間農業に従事していたためにアグリテックに参入したかった、と話した。「この業界で上手くいったこと、上手くいかないことについて多くを学びながら育った」と同氏は述べた。「結局、この業界は退屈で、乱雑で、かなり手作業に頼っている」。

Freshketの目標は「食料サプライチェーン全体の後援者」になることだと同氏は付け加えた。

Freshketの前にパニアングウェット氏は、レストランや他の業者に届ける前に生鮮卸売市場で生鮮食品を仕入れ、カットして整える加工処理センターを始めた。同氏はサプライチェーンを簡素化し、農家の収入を増やし顧客が受け取る食品の質を上げるのにテクノロジーを活用することができると気づいた。

またマーケット機会も広がっていた。Euromonitor Internationalの2019年4月のレポートによると、タイにおける食品サービスマーケットはレストラン20万店超による年間購入額として77億ドル(約8180億円)の価値がある。

パニアングウェット氏の良き友だったチワラクサナンクーン氏はタイ最大の銀行の1つを辞めてFreshketを共同で創業した。同社のプラットフォームは、加工センターやサプライヤーを集約し、そうした業者を通常仲買人に頼る農家と直接つなげることでタイの細分化された農作物サプライチェーンをまとめた。Freshketはまた、作物の需要供給を予測するのに役立つデータをユーザーに提供している。

配達事業の運営費用、特に腐りやすい商品のものはかなり高くなる。費用対効果を確保するために、Freshketは生鮮食品を保管しない。その代わり、同社は農家を含むネットワークに需要に応えるためにどれくらいの商品を必要とするかを毎日伝え、サプライチェーンを計画できるようにしている。

パニアングウェット氏はまた、B2Bの食品配達事業は注文平均額が高く、ユニットエコノミクスを高めていると語った。Freshketの注文、倉庫、物流管理システムはすべてリンクしており、「このために当社は商品の流れを管理でき、追加の費用や人件費を抑え、コストベース全体を対処できるものにしている」と付け加えた。

FreshketのB2B業界における主なライバルは従来のサプライチェーン事業者だ。コンシューマー業界ではグローサリー配達スタートアップと競合する。Freshketはすでに合理化されたサプライチェーンを利用しており、同社は安い小売価格を提供する配達アプリと競争を展開している。B2B顧客に対するFreshketのセールスポイントは、正確な配達、豊富な品揃え、農産品の格付けだ。

Freshketが新たに調達した資金はサプライ管理テクノロジーを改善するのに使われる。将来的には融資や需要予測、価格マッチングなどのサービスにも手を広げたい、とパニアングウェット氏は話した。

東南アジアマーケットでは、さまざまな国の食品サプライチェーン合理化に注力しているスタートアップがいくつかあり、Freshketはそのうちの1社だ。他には、TaniHub(未訳記事)、インドネシアのEden Farm(未訳記事)、カンボジアのAgribuddy、シンガポール拠点のGlifeなどがある。

東南アジアのアーリーステージ企業を専門とするOpenspace Venturesにとって今回が3件目のアグリテック投資となる(他の2件はTaniHubと、シンガポールのグローサリープラットフォームRedMartだ)。

投資についての発表文の中で、Openspace VenturesのファンディングパートナーであるHian Goh(ヒアン・ゴー)氏は「高品質でイノベーティブなスタートアップにとってタイのマーケットは可能性を秘めていると我々は確信している。当社のタイにおける今年2件目の投資としてFreshketは我々の確信を反映している」。

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画像クレジット:Chonticha Vatpongpee / EyeEm / Getty Images

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東南アジアの大手オンライン不動産業者PropertyGuruがKKRとTPGから290億円獲得

東南アジア有数の上場不動産会社であるPropertyGuru(プロパティグル)は9月2日、2億2000万ドル(約230億円)の新規出資を確保し、この地域で大きな進歩を遂げると発表(PropertyGuruリリース)した。

PropertyGuruは既存投資家でありバイアウトの巨人であるKKRとTPGからの資金で、同社にとっての主要市場であるシンガポール、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアですでに意欲的に進めている事業を加速する。同社はそれぞれの国に特化した不動産ポータルを運営している。

今回の未公開市場からの資金調達の約1年前に、オンライン不動産業者である同社はオーストラリア証券取引所に上場する計画を撤回(THE KEN記事)した。2007年創業の同社は当時、最大2億7500万ドル(約290億円)の調達(ロイター記事)を目指していたという。同社がKKRから1億4400万ドル(約150億円)を調達した(未訳記事)ときから数えると2年近くになる。

PropertyGuruは2019年に前年比24%の増収と大きく成長し、自身の予想を上回った。同社は自らを東南アジア最大のプレーヤーと呼ぶが、手ごわい競争相手もいる。例えば99.coとiPropertyが昨年設立した合弁会社などだ。99.coには、Facebook(フェイスブック)の共同創業者であるEduardo Saverin(エデュアルロ・サベリン)氏、Sequoia Capital(セコイアキャピタル)、East Ventures(イーストベンチャーズ)などの著名な投資家が投資している。

オンライン不動産業者は東南アジアで積極的な拡大を続けている。この地域の比較的低い投資基準と高い賃貸利回りにあやかりたい不動産投資家にとって魅力的な目的地となっているためだ。その多くは、近年不動産投機が抑制されている近隣の中国の投資家だ(Bangkok Post記事)。

PropertyGuruの2020年はこれまでのところ多忙だ。シンガポールに住宅ローン市場を、また旅行が安全でなく実行も難しいこの時期に不動産開発業者や探索者のためのバーチャル内覧機能を立ち上げた。毎月、2450万人の不動産の探索者が同社のさまざまなプロダクトを利用して住宅を探している。登録されている住宅数は、最新の資金調達のニュースの時点で、地域全体で270万件に上る。

「過去数年間の強力な財務実績により、積極的かつスマートに投資し、今日の東南アジア市場でのユニークな機会に対応する差別化された統合テクノロジープラットフォームを構築することができた」とHari V. Krishnan(ハリ・V・クリシュナン)最高経営責任者は声明で述べた。

画像クレジット:PropertyGuru

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フランスが12.5兆円の経済刺激策を発表、デジタル分野に8790億円注入

フランス政府は現地時間9月3日、経済回復を促す1000億ユーロ(約12兆5500億円)の景気刺激策を発表した。この額はフランスのGDPの4%に相当する。刺激策の一環として、政府はかなりの額をスタートアップ投資、インフラ投資、デジタルトランスフォーメーションといったデジタル関係に注ぐ。

筆者は詳細を求めてフランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オ)氏にインタビューした。結論からいうと、フランスはデジタル投資に70億ユーロ(約8790億円)を充てる。これは今後2年間の新規投資計画だ。

2020年初めに展開された経済救済計画とは異なるものとなる。経済救済は、経済危機初期の急場しのぎのものだった。

「70億ユーロという額で、デジタル部門は環境部門を除く全部門の中で最も大きな投資を受けるということだ」とセドリック・オ氏は述べた。

フランスのデジタル相であるセドリック・オ氏。画像クレジット:Ludovic Marin / AFP / Getty Images

テックスタートアップへの投資

10年前、フランス政府は科学的研究からR&D支出に至るまで、イノベーションに焦点を当てた投資プログラムを立ち上げた。政府は4回目のプログラムを実施する。

これは110億ユーロ(約1兆4000億円)の投資計画で、多くの事業をカバーする。しかし8億ユーロ(約1000億円)近くは今後数年間のスタートアップへの国庫補助に充てられる。

「かなりの増加だ」とセドリック・オ氏は話した。「(公的投資銀行の)Bpifranceが管理するイノベーション補助をみると、60%増加している。スタートアップはすでにそうしたスキームが本当にいいものだと知っている。すぐさまインパクトが出てくるだろう」。

加えて、イノベーションプログラムの一環として、フランスは今後5年間で25億ユーロ(約3140億円)スタートアップに投資する。Bpifranceが従来のVCファームとして介在する。

直接投資戦略についての詳細は今後明らかになるが、サイバーセキュリティや量子コンピューティング、環境技術などへの垂直的な投資が予想される。

ファンド投資戦略の資金に関しては、最終目標は2つある。シードラウンドやシリーズAラウンドにフォーカスした小規模のVCファンドへの投資の維持と、レートステージファンドでのギャップの解消だ。

「危機はより多くの起業家が絡み、整理統合があり、そして機会がある移行期だ。フランスの企業が、外国企業に買収されるのではなく合併するようにしたい」とセドリック・オ氏は話した。

テックエコシステムへの現金の注入は、フランスのテック大企業がさらに多くの資金を得て中小企業を買収できることを意味する。政府によると、公共投資を通じての比較的大きなスタートアップのサポートは広範に渡ってテックエコシステムに恩恵をもたらしえる。そうでなければ、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)といったテック大企業が将来性のあるフランスのスタートアップを買収するだろう。

テック部門と経済全般のギャップを橋渡し

過去3年間、寛大な政策でフランスのスタートアップをサポートし、その一方で市民の大半が恩恵を受けられていないと多くの人がEmmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領を批判した。だからこそ、今回の刺激策はテックスタートアップだけに焦点を当てたものではない。

「将来のためにかなりの投資をし続けなければならない。しかしそうした投資からみんなが恩恵を受けるものにしなくてはならない」とセドリック・オ氏は述べた。

スタートアップは他の企業よりも多く雇用するが、往々にして探しているのはエンジニアやデータサイエンティスト、顧客サクセスマネジャーだ。多くの人が失業に直面することを考慮し、政府はテック部門の教育に3億ユーロ(約380億円)を充てる。

また、大半のフランス企業がテック企業ではないため、政府は中小企業のデジタルトランスフォーメーションに3億8500万ユーロ(約480億円)を注ぐ計画だ。

デジタルトランスフォーメーションというのは極めて広汎だ。デジタルインボイスの導入から、eコマース店の立ち上げ、工業生産のための最新設備の購入などまで広くカバーする。かなり細分化されたマーケットであり、刺激策で最も困難な部分となりそうだ。

「この計画の運用は我々が体験する大きな課題の1つとなるだろう。フランスには300万もの企業があり、うち半分の150万は中小企業だ。そうした企業にアクセスすることはこれまでは困難だった」とセドリック・オ氏は話した。

中小企業に加え、自動車メーカーと航空業界にはデジタルトランスフォーメーションで2億ユーロ(約250億円)が注がれる。

政府はまた、高齢者のサポートを行う公的機関のデジタルインクルージョンと、管理事務の簡素化に2億5000万ユーロ(約310億円)を充てる。フランスは過去にもデジタルインクルージョンに予算を組んだが、前回の規模はわずか1500万ユーロ(約19億円)だった。

他にインフラへの公的支出がある。ファイバーネットワークへの2億4000万ユーロ(約300億円)、広報システムの近代化に17億ユーロ(約2130億円)などだ。

全体的に刺激策は野心的な内容だ。スタートアップは何かしら新たな国庫補助や投資機会を利用する方法を見つけるだろう。従来の企業も同様に恩恵を受けることを望む。

関連記事:フランスが新型コロナで打撃を受けるスタートアップ救済に約4780億円注入

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画像クレジット: Ludovic Marin / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

セールスデモプラットフォームの開発のDemodeskが8.5億円調達、新型コロナでオンライン商談のニーズ高まる

2020年の新型コロナウイルスの大流行に伴い、対面でのミーティングが廃れてきていることは明らかです。それでも営業チームは、見込み客、特にSaaSベンダーに向けて製品をデモする方法を必要としている。そんな中、アーリーステージスタートアップであり、Y Combinator Winter 2019の卒業生でもあるDemodeskは、オンラインセールスデモプラットフォームを構築している。

同社は米国時間9月3日、Balderton Capitalが主導し、Target Globalが参加した800万ドル(約8億5000万円)のシリーズA調達ラウンドを発表した。同社はこれで昨年発表したシードラウンドを含め、合計1030万ドル(約11億円)を手にしている。

Demodeskは、多忙な営業マンがより自動化された方法で会議を設定できるように、知性を駆使してオンラインで営業デモをリモート配信するプラットフォームを構築した。このスタートアップは来年まで資金調達を考えていなかったにもかかわらず「新型コロナウイルスの感染蔓延がこのようなツールの市場での必要性を加速させた」とCEO兼共同創業者のVeronika Riederle(ベロニカ・リーデル)氏は語る。

「当初は来年の初めごろに次のラウンドの資金調達を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染蔓延が起きたことで、より早く資金調達ができました。市場での需要が非常に高いため、基本的には今より少し早く成長し、より早くツールを構築することが可能になりました」と続ける。

「新型コロナウイルスの感染蔓延の中でも、営業チームは顧客と会う必要があります。Demodeskはそのための方法を提供しています」と同氏。Demodeskは、Zoom、WebEx、GoToMeetingなどの一般的なミーティングソフトウェアとは大きく異なります。「一般的なミーティングソフトウェアは画面共有が可能ですが、DemoDeskには異なる点があります」と同氏は強調する。

DemoDeskは、デスクトップのライブバージョンや、2人が同じものを見ているような録画ではなく、クラウド上に仮想デスクトップを構築し、顧客にはプレゼンテーションやデモを見せながら、営業担当者は顧客が見ることのできないメモやその他の情報も参照できるのだ。この仮想的なアプローチにより、企業はデモに関するデータを取得し、何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのかを営業チームが理解するのに役立つ。

さらに同社は今年、顧客と営業チームが空き時間を共有できる新しいスケジューリングツールを製品に追加した。「顧客は自分の都合のいい時間を選択し、いくつかのデータを入力するだけで自動的にカレンダーの招待状を送信して営業担当者のカレンダーに入れ、リマインダーを送信することができます。そのため、スケジュールの調整からミーティングの準備、そしてミーティング中のサポートまでをすべてDemodeskに任せられます」とリーデル氏。会議終了後は、会議のメモをSalesforceや他のCRMツールと自動的に共有することも可能だ。

同社の現在の従業員数は22名だが、来年末までに50名に増やすことを目標としている。「会社を成長させるには、多様性と包括性が重要な考慮事項」とリーデル氏。実際、多様性は同社の5つのコアバリューの一部だ。「国際的な企業として多様性の重要度は増しているが、それだけでない」と同氏は説明する。「チーム内に多様性があれば、より創造的であるため、よりよいアイデアを生み出すことができます。さまざまな方法で考え、より興味深い議論をすることができます」と続ける。

2017年創業の同社は、150社の顧客を持つまでに成長した。これまでは顧客はほとんどがソフトウェア企業だった。同氏によると、最近では他業界でもこのプラットフォームを利用し始めているという。新型コロナウイルスの感染蔓延の前に戸別訪問を行っていた太陽光パネル会社などは、顧客を直接訪問できなくなったが、このツールを利用することでビジネスの継続に役立っているそうだ。

リーデル氏は、オンラインデモのほうが効率的でコストがかからず、会議に出向く必要がないため環境にもいいと考えている。

画像クレジット:Ada Yokota / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:TechCrunch Japan)

今週の記事ランキング(2020.8.30〜9.3)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「デルの新型32インチ4Kディスプレイ「U3219Q」はホームオフィスのアップグレードに最適だ」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

インドのフードデリバリーのZomatoがシンガポールの国家投資部門から65.9億円を調達

インドのフードデリバリースタートアップのZomato(ゾマト)が、当初は今年1月に完了する予定だった資金調達ラウンドを再開し、シンガポールのTemasek(テマセク)から6200万ドル(約65億9000万円)を調達した。

シンガポールの国家投資部門であるTemasekは、規制当局への提出書類に記載されている関係機関のMacRitchie Investmentsを通じて資本を投下した。ビジネスインテリジェンス企業のToflerが、この提出書類をTechCrunchと共有した。

インドのZomatoの広報担当者は米国時間9月2日の午後の時点でコメントの要求に応じていない。

Zomato新しい資金調達ラウンドを始めたのは、およそ1年前のことだと、この問題に詳しい人物がTechCrunchに伝えた。同社は複数の投資家と会談したが、交渉が実を結ぶことはなかった。

コロナウイルスの大流行にもかかわらず、直近の四半期の財務実績が改善(未訳記事)した、このフードデリバリースタートアップは、1月にAnt Financialが1億5000万ドル(約159億円)を提供することを約束したと発表していた。

しかし、7月下旬にZanatoの投資家Info Edgeは、Ant Financialはコミットした金額の3分の2をまだ提供していないと語っている。先月末のIPO目論見書の中で、Ant Financialは投資できない理由としてインドの国内規制の変更を挙げている。

今年の4月、インドは外資投資政策に変更を加えた。これは、近年数十億ドル(数千億円)をインドのスタートアップに投じている中国の投資家たちに対して、この先インドの会社に対して新しい小切手を切る前には政府からの承認を得るように要求するものだ。投資家が、コミットした資本金を何回かに分割して払い込むのは極めて一般的だ。

ロイター通信は先月、Alibaba Group (アリババ・グループ)とAnt Financialを含むその関連会社は、少なくとも6カ月間はインドのスタートアップに投資しないとレポートしている。

1月の時点で、Zomatoの最高経営責任者であるDeepinder Goyal(ディーピンダー・ゴイヤル)氏は、1月末までに最高6億ドル(約637億円)のラウンドを完了する予定だと語っていた。同じ月に、ZomatoはUber(ウーバー)のインド国内のフードデリバリー事業を買収している。4月初旬の時点で、彼はTechCrunchに対して、遅れをコロナウィルスの流行の影響だと言いつつ、5月中旬までにラウンドをクローズする予定だと語っていた。

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(翻訳:sako)

アップルが新型コロナ接触追跡の新ツールをiOS 13.7でリリース

Apple(アップル)とGoogle(グーグル)は新型コロナウイルスの接触追跡の取り組みを支援するため、計画していた接触通知技術の普及に引き続き力を入れている。両社は、公衆衛生当局が独自のアプリを開発・維持しなくても、デジタルの接触通知をより容易に導入できる新しいツールを発表した。アップルは9月1日のiOS 13.7システムアップデートから利用できるようにするが、グーグルはAndroid 6.0で自動生成されるアプリケーションから今月後半に導入する予定だ。グーグルのほうはシステムサービスとOSのアップデートを管理する方法が非常に異なるため、対応策が必要となっている。

テクノロジーの仕組みの変更により、ユーザーは管轄の公衆衛生当局(Public Health Authority、PHA)が作成した専用アプリを実際にダウンロード、インストールする必要がなくなる。代わりに地域の公衆衛生当局から、接触通知システムとその機能に関する通知が届く。ユーザーはそこでオプトインを選択できる。iOSではプロビジョニングプロファイル(App Store以外からiOS端末にアプリを配信するためのバイナリファイル)をインストールすることになるが、Androidでは地域のPHA用に自動生成されたアプリが作成され、Google Playストアからインストールされる。アップルとグーグルは、Exposure Notification Express(接触通知エクスプレス)が既存の専用PHAアプリを置き換えるものではなく、共存するものであることを明確にした。

Exposure Notifications Expressを利用するPHAはアップルとグーグルに対し、連絡先情報、ケアに関するガイダンス、注意事項、次のステップに関する推奨事項を伝える。PHAは、その名前、ロゴ、接触通知が発信される基準のほか、テクノロジーに詳しくない人でも簡単にシステムが利用できるよう接触が起きた場合の通知内容を提示する。

地域の保健当局は、ユーザーが受け取るテキストメッセージを自らカスタマイズする必要があるが、アップルとグーグル双方の技術に基づくデジタル接触通知システムを使って接触追跡のために独自のアプリケーションを開発・配布する必要はない。保健当局は接触リスクの計算方法決定にも責任も持つ。専用アプリなら備えていた機能だ。これは大きい。なぜなら、アップルとグーグルによると、世界で20カ国がすでにAPIに基づくアプリを導入し、そして米国の25の州がシステムの利用を「検討」しており、これまでに6つの州がアプリをリリースしたからだ。こうした現状から、今回のシステムは開発者や医療当局が採用する際の技術的参入障壁は低くなっており、普及を早めるのに役立つはずだ。

アップルとグーグルは、まずワシントンDC、メリーランド州、ネバダ州、バージニア州がExposure Notification Expressを導入し、他の州もそれに続くと予想していると述べた。両社はまた、U.S. Association of Public Health Laboratories(米国公衆衛生試験所協会)と全米の主要サーバーに関して協業しており、ユーザーが地元の医療当局の管轄外に移動する場合であっても州境を越えて効果的に接触追跡ができるよう取り組んでいると述べた。

接触追跡が有効に機能するためには60%以上の採用が必要だという誤った情報が広まっている。これは、今年初めに発表されたオックスフォードの研究が誤解されたことによる。研究に携わった研究者たちはその後、実際にはデジタル接触追跡をサポートするアプリによるあらゆるレベルの接触追跡が、新型コロナ拡散軽減とそれがもたらす死亡数の減少にプラスの効果がある(MIT Technotogy Preview記事)と明らかにした。

このシステムには、アップルとグーグルがこれまで提供してきたものと同じようにプライバシー保護が含まれている。つまり、個人の位置情報が収集されたり、接触通知と紐付けられることはない。代わりに、技術者はランダムに生成されたキーを使用して、あるデバイスがソフトウェアを利用する他のデバイスのBluetoothの検出範囲に入った時間と場所を追跡する。システムはランダムな識別子のログを保持し、確認・報告された診断結果(完全に匿名化されている)と照合して接触リスクの有無を判断する。その判断は、各地域を管轄する公衆衛生当局時間と距離に関してが定める接触の定義に基づき行われる。

【Japan編集部追記】iOS 13.7であっても日本で新型コロナウイルス感染者と濃厚したかどうかを確認するには「新型コロナウイルス接触確認アプリ」のインストールが必要だ。

画像クレジット:Apple / Google

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(翻訳:Mizoguchi

中国物流大手YTOが海外展開強化へアリババから1025億円調達

eコマースは過去10年で中国に物流ブームをもたらし、小さな町の配達業者を複数の国で事業を展開する会社に変えた。業界をリードする1社であるYTOは長年のパートナーかつ顧客であるAlibaba(アリババ)から66億人民元(約1025億円)を調達し、国際展開を積極的に進めようとしている。

設立20年のYTOは今週、3億7900万株を1株あたり17.4人民元(約270円)でAlibabaに売ると発表した。新規株の取得によりAlibabaの持ち分は10.5%から22.5%に増える。YTOの創業者2人の支配持ち分は41%となる。

発表によると、新たな投資によりAlibabaとYTOはグローバル展開を強化する野心的な取り組みの一環として、配達、航空貨物、グローバルネットワークとサプライチェーン、デジタルトランスフォーメーションなどで提携を深める。

Alibabaの広報担当は、顧客サービス能力をさらに高めるためにデジタル化とグローバリゼーションにフォーカスしたYTOとの戦略的提携をさらに強化できることを当社は喜んでいる、と述べた。

中国のエクスプレス配達マーケットで14%のシェアを占めているYTOは、5大物流会社の1社だ。これら5社は中国東部に位置する浙江省桐盧県で創業された。ライバルのSTO、ZT、 Best Express、Yundaと同様、YTOの興隆もAlibaba抜きには語れない。Alibabaは AmazonやJD.comと異なり、自前でインフラは構築せず、サードパーティーの物流サービスに頼っている。

eコマース大手のAlibabaはこれまで桐盧県にルーツを持つ物流大手5社にさまざまな額の出資を行い、グループの物流部門Cainiaoを介して関係を維持してきた。Cainiaoは年500億個の荷物をさばくためにベンダーと配達業者をマッチングしている。

YTOとCainiaoはすでに海外進出で提携していて、合弁会社が2018年に世界で最も貨物取扱量が多い香港国際空港にデジタルロジスティックセンターの建設を開始した。中国国営の航空会社、中国航空集団もまた合弁会社に出資していて、センターは早ければ2023年にもオペレーションを開始する見込みだ。

2019年の時点で、YTOは世界中に18法人と53のサービスステーションを置き、150カ国・地域で配達サービスを展開している。積極的な海外展開は、世界中に鉄道や通信ネットワーク、その他のインフラを構築するという中国の大きな計画、一帯一路により生み出され得るかなりの輸出チャンスを取り込むというさらに大きな目標に合致するものだ。

画像クレジット: Visual China Group / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

バーチャルヒューマン「imma」や「plusticboy」「Ria」のプロデュースを行うAwwは9月3日、シードラウンドにおいて1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はCoral Capital。

バーチャルヒューマンとは、フォトリアルな3D CGクオリティで制作されたキャラクター。バーチャル・ビーイング、デジタルヒューマンとも呼称される場合がある。

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

同社は、世界最高クオリティのバーチャルヒューマンをプロデュースするため、バーチャルヒューマンに最適化された基礎技術の結晶体「MASTER MODEL」を開発し、自社のバーチャルヒューマンだけではなく、パートナー企業や著名人とのバーチャルヒューマンプロデュースを積極的に行うとしている。

また、Epic GamesのMegaGrantプログラムのサポートを受け、同社Unreal Engineを用いた「リアルタイム3DCG」や「デジタルファッション」といった、「5G」「XR」「AI」「デジタルトランスフォーメーション」といったバーチャルヒューマンに関連する新規事業領域について、自社およびパートナーシップの双方から新規事業を推進。

具体的には、フォトリアルな3DCGをリアルタイムで動かすための「リアルタイム3D CG」の開発、デジタルファッション領域、また、AIや5Gを用いたバーチャルヒューマンの開発も行うとしている。

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

同社は、⽇本初のバーチャルヒューマンカンパニーとして、2018年より複数のバーチャルヒューマンをプロデュース。2018年展開開始の「imma」は、Porsche、SK-II、IKEA、Salvatorre Ferragamo、Valentino、Amazon Fashionなどの著名なグローバルブランドのキャンペーンに起用。2020年には、アイスクリームのグローバルブランド「Magnum」のTVCM中に登場し、中国全土で放映された。

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

 

フランス拠点のKlaxoonが投票やブレスト、サーベイなどビデオ会議用の新インタラクティブ製品を準備中

フランスのスタートアップKlaxoon(クラクスン) は、現在Board(ボード)という名の新製品をテストしている。Boardは、9月後半のある時点でローンチされる予定だ。Boardは、Microsoft Teams、Zoom、Google Meetなどのビデオ会議サービスに直接接続する新しいビジュアルインターフェースである。

Klaxoonという企業は、会議をより魅力的で、退屈の少ないものにしようと取り組んでいるスタートアップ。さまざまなユースケースに合わせて調整された一連のツール(Klaxoonサイト)を提供してきた。たとえば投票およびブレインストーミングモジュール、質問やサーベイなどを通じてフィードバックを収集できる複数の機能などがある。会議の主催者は、フィードバックを集めて、会議の分析を行うこともできる。

Klaxoonはすでに会議室用のインタラクティブホワイトボード(Klaxoonサイト)を提供しているが、おそらく現在実際の会議室にチームが集まれる機会はないだろう。これが、Klaxoonがロックダウンの最中にBoardの作業を開始した理由だ。それはスマートフォン、タブレット、パソコンからアクセスすることができる。

Boardは、一連のインタラクティブツールをビデオ通話の中にまとめたものだ。それは利用者がテキストを書いたり、画像やビデオを挿入するために使用できる空白のキャンバスを与えてくれる。テンプレートから始めて、通話中に記入していくこともできる。通話に参加しているほかの人たちは、いいね、投票、質問を使用して反応することができる。

起動した画面は以下のようなものだ。

Klaxoonがこれまで会議中に使用される付箋やその他のローテクソリューションを置き換えるために一生懸命取り組んできたことを考えると、同社は現在、有利な位置にあるように思える。多くの企業は、近い将来に物理的オフィスを再開する予定はないままだ。

Klaxoonは長い時間をかけて5500万ドル(約58億4000万円) を調達しており、現在の従業員数は240だ。Fortune 500企業の15%がそのサービスを利用している。

画像クレジット:Klaxoon

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(翻訳:sako)

スタートアップ創業者の「コミュニティへのイグジット」を目指す動きが高まっている

スタートアップの伝統的なロードマップは、次のようなイグジットの考え方を中心に形成されている。つまり多くの場合、スタートアップやベンチャーキャピタリストの心の中にある理想的なイグジットは、IPOか別の会社による買収の2つの方法のいずれかだ。

だがより広い範囲のステークホルダーにより多くの価値をもたらす可能性があるイグジットの方法がある。コロラド大学ボルダー校のMedia Enterprise Design Lab(メディア・エンタープライズ・デザイン・ラボ)とZebras Unite(ゼブラユナイト)が主導する共同作業プロジェクト「Exit to Community(E2C)」(コミュニティへのイグジット)は、スタートアップが投資家による所有からコミュニティによる所有へ移行する方法を模索している。コミュニティにはユーザー、顧客、従業員などすべてのステークホルダーを含む。プロジェクトグループは米国時間8月31日、Exit to Communityを紹介する目的でデザインされたデジタルと紙の雑誌(コロラド大学リリース)をリリースした。

「雑誌の目的は、考慮すべきすべての側面をおさえた最初のロードマップを提供すること。これがあれば、創業者は自分に合っていない物事に気づき、合っている物事を共同で探したり検証したりする手間を省くことができる。Zebras Uniteの共同創設者であり雑誌の共著者であるMara Zepeda(マーラ・ゼペタ)氏はTechCrunchにこう語った。「これは特効薬ではない。誰もが採用すべき完璧な解決策があるわけではない。私は、将来どうなるかを見極めるためにカンブリア爆発実験を行っていると説明している。1つのことだけに取り組んでいるわけではない。そこが、我々がやっていることに関して根本的に異なる点だ。時々、ニッチな製品や動きを突然思いついて『これが答えだ。だが今のところ、答えは1つではない』といった感じだ」。

E2Cの共同主催者であるNathan Schneider(ネイサン・シュナイダー)氏はTechCrunchに、そうした代替イグジットモデルは、他国の創業者にも扉を開く可能性があると語った。同氏はアフリカとアフリカ人のディアスポラに関して活動するtiphub(チップハブ)を例に挙げた。tiphubは、アフリカに巨大なM&A市場がないことを受け、創業者を支援する別の方法を探していた。

「欧州や米国のように金融市場にインフラが存在するためにVC業界が非常に活発な状況とは異なる」とtiphubのパートナーのChika Umeadi(チカ・ウメアディ)氏はTechCrunchに語る。「プライベートエクイティやM&Aの動きはそれほど多くない。我々は企業をいかに迅速に立ち上げるかについては強力な仮説を持っていると思うが、市場の反対側も構築する必要がある。価値のある企業は存在するが、今は別のイグジットの方法を考える必要がある」。

コミュニティへのイグジットの姿については、すでにいくつかの例がある。ソーシャルメディア管理プラットフォームであるBuffer(バッファー)は「VCからの資金調達にそぐわないことが明らかになった」ため、2018年に投資家から持ち分を買い戻した、とBufferのCEOであり共同創業者であるJoel Gascoigne(ジョエル・ガスコイン)氏は当時ブログ投稿で書いた(Bufferブログ)。

その後、2019年にコンテンツマーケティング会社であるConductor(コンダクター)がWeWork(ウィーワーク)から自社を買い戻した。 現在、同社の過半数は従業員が所有している。

「会社を所有し、すべての人々に巨額の所有権を分け与えることが常に夢だった。現在、会社はほぼ完全に従業員によって所有されている」とConductorのCEOであるSeth Besmertnik(セス・ベスメルトニク)氏は今年初めに筆者に話した(未訳記事)。「すべてを手にした今、ミッションを現実のものにしたい」。

テック業界以外の例として、E2Cはオレゴンに本拠を置く有機農産物の販売業者であるOrganically Grown Companyを挙げた。同社は従業員と食料品店が所有する事業からコミュニティが所有する事業へ移行した。

「こうした例を垣間見ることができるということはそれが可能であることを示している」とシュナイダー氏は述べている。

投資家はIPOと買収により高いリターンをたたき出すことができるが、ポートフォリオのすべてのスタートアップが候補になるわけではない。

「イグジットに関する投資家の現在の選択肢は、ポートフォリオ企業から得られるリターンや結果の幅に制限がある」とシュナイダー氏はいう。「スタートアップがIPOや買収の候補にならない場合でも、E2Cは投資家に対し資金を取り戻したり十分なリターンを得たりする支援ができる。また、社会的なリターンと金銭的なリターンに接点を見出そうとする投資家も存在しており、それを促すモデルを探している」。

次のステップは、雑誌を超えて、こうした選択肢を複数模索している創業者の研究会を作ることだ。将来的には、創業者が代替的な道を簡単に追求できるようスタートアップ向けの標準的なドキュメントを作成したいと考えている。

関連記事:SEOとコンテンツマーケティングの事業を展開するConductorがWeWorkから自社を買い戻す

カテゴリー:ニュース

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:Mizoguchi

CloudflareのMichelle Zatlyn氏、TechCrunch Disruptで大胆なアイディアを持つ企業の創設について語る

会社を立ち上げるとき、シンプルに進めたいと思うかもしれない。投資家や顧客が理解しやすいものを、と考える。その方が簡単かもしれないが、10 年前にCloudflareがTechCrunch Disruptでローンチしたときはそのような道は取らなかった。同社は、中途半端にやっても仕方がないと腹をくくり、より高速でより安全なインターネット環境を構築する新機軸のアイデアを掲げて進む決断をした。あまりプレッシャーをかけることなく。

同社は2010年に無料製品と有料ティアの提供を開始し、速度とセキュリティを提供するという当初の概念を、一連の製品とサービスに発展させた。それから10年後の現在、Cloudflareは時価総額約120億ドル(約1兆2800億円)の上場企業となっている。

TechCrunch Disrupt 2020では、同社の共同創設者でCOOのMichelle Zatlyn(ミッチェル・ザトリン)氏に1対1のインタビューを行い、初期段階の企業としてこうしたビジョンを実現するために必要なことについて話を聞く。彼らは当時、Akamaiのような大手企業の後を追っていた。世界中にデータセンターのネットワークを構築する必要があったが、ローンチ時は3つの大陸に5箇所のデータセンターという体制だった。

オペレーションの観点からこれらのことは容易ではなかったが、追加のハードウェアやソフトウェアを必要としない方法で、世界のウェブサイトをより速く、より安全な環境にできるという大胆な機軸を打ち出した。クラウドコンピューティングという概念の初期の支持者として、彼らは、その時点では最大手のインターネット企業にしか手の届かなかったことを顧客が実現できるようにし、今日では一般的だが当時は普及していなかった価値ある提案を行ったのだ。

どのようにしてこの初期の製品を構築し、製品セットを成長させ、世界中で200以上のデータセンターを稼働するまでに至ったのか。私たちはザトリン氏に、そのすべてを実現し、上場企業へと発展した軌跡について伺う予定だ。

このセッションは、Extra Crunchステージの全プログラムとともにDisruptステージで提供される。わずか345ドル(約3万6500円)のDigital Pro Passを購入すれば、CrunchMatchのネットワークを活用して、Digital Startup Alleyに出展する数百の初期段階の企業について知ることができる。学生と、政府や非営利組織の従業員には割引があり、Digital Startup Alley への出展を希望する初期段階の創設者には素晴らしいオファーがある。また、以下の特設ページを経由してチケットを購入すれば5%の割引が適用されるので、ぜひ活用いただきたい。

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(翻訳:Dragonfly)

ティアフォーが自動運転技術活用の自動車教習・運転技能検定システムを事業化に向け共同開発、9月28日に試乗会

自動運転OS開発のティアフォーがAIによる自動車教習・運転技能検定システムを来春事業化に向け共同開発

自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発を主導するティアフォー、自動運転用AI開発のブレインフォー、南福岡自動車学校を運営するミナミホールディングスは9月1日、自動運転技術を活用した運転技能検定システムおよび教習システム(AI教習システム)を共同開発し、事業化に向け協業すると発表した。

2021年春頃からの本格的なサービス開始に向けて同教習所構内で実証を重ね、システム改善を図る。サービス開始時期などの詳細は確定次第発表予定。

また2020年9月28日には、南福岡自動車学校(福岡県大野城市)において、AI教習システムを用いた試乗会を実施する予定。「運転技能検定」と「運転技能教習」を体験できる。

また各社は、AI教習システムの事業化に向け、以下2つのフェーズに分けて段階的に取り組みを進めていく。

  • フェーズI: 高齢者・ペーパードライバー向け教習や企業研修へAI教習システムを導入。教習所構内においてAIによる運転技能検定および教習を実施
  • フェーズII: フェーズIの実績およびティアフォーの公道における自動運転実証実験の経験を基に、教習所構外にも対応したAI評価モデル・システムへと発展

自動運転OS開発のティアフォーがAIによる自動車教習・運転技能検定システムを来春事業化に向け共同開発

自動車教習所は、人材不足による指導員の負担増加や、運転免許取得教習・高齢ドライバー向け運転技能検定の受入難などの社会課題に直面。これらの課題解決を目的としたAI教習システムの事業化に向け、ティアフォー、ブレインフォー、ミナミHDの3社は、知見や実績を集約し、システムを共同開発することに合意した。

AI教習システムは、ティアフォー創業者の加藤真平氏が東京大学 准教授として研究代表者を務めるJST CRESTの研究課題「完全自動運転における危険と異常の予測」の研究成果を活用。

AI教習システムでは、自動運転技術を用いて車両位置や周辺環境を正確に読み取ることができ、またドライバーの運転技能を指導員と同程度の精度で評価可能になるという。AI教習システムによる画一的な評価は、指導員の負担軽減を図るだけでなく、これまで担当指導員ごとに生じていた評価のばらつきの解消も期待できるとしている。

ティアフォーは、「創造と破壊」をミッションに掲げるディープテック企業。世界初のオープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発を主導し、様々な組織・個人が自動運転技術の発展に貢献できるエコシステムの構築を目指している。自動運転システムの開発、サブスクリプションモデルによる自動運転EVの提供、自動運転EVを用いた無人物流・旅客サービスなどに関するビジネスを展開している。

ブレインフォーは、自動運転用AIの開発を目的として設立された、学生によるスタートアップ企業。誰もが自動運転とAIを学び・作り・使えるような社会を目指している。自動運転・深層学習・信号処理技術に長けたメンバーとともに、自動運転用AI作成サービス「Automan」の開発や、大規模な運転データ変換システムの開発などを行ってきた。研究で得た知識の実社会応用を目指して、自動運転用AIおよび関連システムの開発に取り組んでいくとしている。

ミナミホールディングスは、福岡県最大規模の指定自動車教習所の南福岡自動車学校を中核事業に、オリジナル教材や経営分析システム、独自の事故防止理論「KM理論」の開発を手がけている。全国の教習所の経営改革を支援する「教習所サポート」を設立、200校の教習所ネットワークを持つほか、カンボジアとウガンダで教習所を設立・運営している。

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Salesforceはどのようにして200億ドルの年換算売上高を予定より早く達成したのか

Salesforce(セールスフォース)は1999年に創業し、後にSaaSやクラウドコンピューティングと呼ばれるものに早期に取り組んだ1社だ。8月25日に、SaaSの巨人の(四半期)売上高は50億ドル(約5250億円)を超え、年換算で初めて200億ドル(約2兆1000億円)に達し、大きな節目を迎えた。

Salesforceの売上高はこの数年堅調に推移しているが、2017年11月に売上高が100億ドル(約1兆500億円)に達したとき、CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏はすぐに200億ドル(約2兆1000億円)の目標を設定した。その後5年で、その目標をいとも簡単に達成した。同氏の当時の発言は以下の通りだ。

実際、これまでで最も急速に成長し100億ドルを達成した法人向けソフトウェア企業として、次は2022年度までにオーガニックで200億ドル以上に成長することを目標としている。これまでで最も速く200億ドルを達成する法人向けソフトウェア企業になる計画だ。

成功をもたらした要素は数多くある。Salesforceプラットフォームの進化と同時に、積極的な買収戦略を採用した。企業がこれまでになく迅速にクラウドに移行したことも寄与した。ただSalesforceが2017年に掲げた高い目標を早期に達成できたのは、パンデミックの中でも独自の責任ある資本主義を実践したからだ。

プラットフォーム戦略

同社の売上高の成長には多くの要因があるが、大きいのはプラットフォームだ。プラットフォームはCRM、マーケティングオートメーション、カスタマーサービスなどの一連のソフトウェアツールを提供するだけではない。顧客はSalesforceが構築した独自のソフトウェアスタックを利用して自身のニーズを満たすソリューションを開発することもできる。

Salesforceの社長兼最高執行責任者であるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、プラットフォームが会社の成功に大きな役割を果たしたと語る。「実際、当社のプラットフォームは、さまざまな形でSalesforceの推進力の大部分を支えている。1つは、社内でもよく話し合ったが、プラットフォームのテクノロジーの特徴そのものだ。つまり、ローコードで、価値を生みだすまでの時間が短い」

「ローコードプラットフォームとソリューションを迅速に立ち上げる能力がこれまで以上に必要とされる。我々の顧客はこれまで以上に迅速にビジネスの変化に対応する必要があるからだ」と付け加えた。

同氏は、Salesforceを基盤として構築され先月公開したnCinoを代表的な例として挙げた。同社はSalesforceを基盤としており、AppExchangeマーケットプレイスで入手できる。顧客となる銀行に対し、Salesforceが開発した機能をベースとしたオンラインビジネスを行うためのツールを提供する。

買収戦略

1999年に導入した中核のCRM製品に加え、同社はマーケティング、販売、サービスツールのセットを幅広く構築してきた。それらと同時に、同社の成功に貢献したもう1つの大きな要因は、 製品ロードマップに沿って多くの企業を買収したことだ。

買収の中でも最大のものは、約1年前に完了した157億ドル(約1兆6500億円)のTableau(タブロー)のディールだ。テイラー氏はデータがデジタル化を進めるとみており、それはパンデミック中に広く見られたことでもある。Tableauがその中で重要な役割を果たす。

「Tableauは非常に戦略的だ。収益面からも技術戦略面からも」と同氏は述べた。企業のデジタルシフトが進むにつれ、データを視覚化によって理解し、顧客のニーズを深く把握することがこれまで以上に重要になるからだ。

「基本的に企業がオールデジタルの世界で成功するために必要なのは、急速な変化に対応する能力だ。つまり、データを中心とした文化を作り出す必要がある」と同氏は語った。そうすれば企業は新しい顧客の要求やサプライチェーンの変化などに迅速に対応できる。

「すべてにデータが関わってくる。Tableauが前四半期に大きく成長した理由はデータを使った会話だと思う。会社全体が、あるいは経済全体がデジタル化されていくと、データがこれまで以上に戦略的になる」と同氏は語る。

この買収と、2018年に65億ドル(約6800億円)で買収したMuleSoftが、同社にデータを捉えて視覚化する方法をもたらした。データが企業のどこに存在するかを問わない。「MuleSoftとTableauの補完関係は強調する価値があると思う。MuleSoftは、レガシーシステム上であれ、モダンシステム上であれ、すべての法人データのロックを解除する。そしてTableauがデータの理解を可能にする。当社はデータを中心に完璧なソリューションを生み出すことができるため、全体として非常に戦略的な価値提案だと言える」とテイラー氏は述べた。

心ある資本主義

ベニオフ氏は、8月25日のMad Money(CNBCの番組)に出演した際、慈善事業とボランティア活動を会社の中核として位置付けているにもかかわらず、依然として株主に確かな利益をもたらしていることに喜びを感じていると述べた。Mad MoneyのホストであるJim Cramer(ジム・クラマー)氏に次のように語った。「これはステークホルダーキャピタリズムの勝利だ。上手くやりつつ善をなすことが可能なことを示している」。 これは同氏が過去にも頻繁に表明していることで、良き企業市民としてコミュニティに還元しながら、なおかつ金を稼ぐことができると主張している。

56グループの創設者・プリンシパルアナリストであり、CRM at the Speed of Light(邦訳「CRM 実践顧客戦略」)の著者であるPaul Greenberg(ポール・グリーンバーグ)氏は、この価値観が同社とその他大勢を分かつものだと述べる。「Salesforceの優れた能力に加え、私が同社の並外れた成長が深刻に減速しないと考えている理由の大部分は、同社がテクノロジービジネスを企業の社会的責任と一致させることに成功していることによる。それが同社を抜きん出た存在にしている」とグリーンバーグ氏はTechCrunchに語った。

昨日(8月25日)の数字は2021年第1四半期に続くものだ。同四半期後、同社は弱気の業績見込みを発表した。同社の一部の顧客がパンデミックの影響により財務的に苦しんでいたためだ。ふたを開けてみれば影響はなかったようで、第3四半期の見込みも順調に見える。同社によれば、第3四半期売上高の予想は52億4000万ドル~52億5000万ドル(約5500~5510億円)で、前年同期比約16%増だ。

ベニオフ氏はパンデミックが始まったときに90日間はレイオフをしないと約束した。90日はすでに経過しているが、The Wall Street Journal(ウォールストリートジャーナル)が8月25日、Salesforceが5万4000人の従業員のうち1000人の削減を計画していると報じたことは注目に値する。対象となった従業員には職探しのために60日間が与えられた。

200億ドルに到達する

確かに200億ドル(約2兆1000億円)の年換算売上高に到達したことは、その目標を達成した速度と同様に重要だ。しかしテイラー氏は、ベニオフ氏がその目標を設定した2017年とは異なる会社に進化していると見ている。

「当社が成長できた理由は、ビジョンを実際に実現するためのオーガニック成長、イノベーション、買収によるものだと思う。これらがかつてないほど重要になっていると思う」と同氏は言った。

プラットフォームの変化を見れば、1つの傘の下で異なるカスタマーエクスペリエンスを提供する機能を備え、顧客に対し開発に必要なツールを提供することが重要だったことがわかると同氏は述べた。

「当社は企業として、カスタマーリレーションシップマネジメントの意義を常に再定義してきたと思う。セールスチームが営業機会を管理することだけではない。カスタマーサービス、eコマース、デジタルマーケティング、B2B、B2Cといったものを含むすべてだ」と同氏は語った。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

フレッシュネスバーガー発売の「THE GOOD BURGER」が発芽大豆由来の植物肉を採用

フレッシュネスバーガー発売の「THE GOOD BURGER」が発芽大豆由来の植物肉を採用

発芽大豆由来の植物肉を開発・製造するスタートアップ「DAIZ」は8月31日、同社植物肉「ミラクルミート」が、フレッシュネスの「THE GOOD BURGER」のパティ原料として採用されたと発表した。THE GOOD BURGERは、全国のフレッシュネスバーガーにおいて、9月1日(全店アプリ会員限定先行発売)および10月1日(全店発売)から購入できる。価格は税込480円。

フレッシュネスが新メニューとして販売を開始する「THE GOOD BURGER」は、DAIZの植物肉を用いた大豆パティをテリヤキソースにからめ、低糖質バンズと野菜で挟んだハンバーガー。

動物性原料を使わず、環境にやさしい大豆パティと糖質約45%オフの低糖質バンズ(フレッシュネス、ゴマバンズ比較)を使用。日本ならではの醤油麹をベースにしたテリヤキソースで味付けしている。

8月12日より実施していた、首都圏の一部店舗における検証発売において想定を上回る売れ行きとなり、全国のフレッシュネスバーガーにて発売開始となったという。

(ミラクルミート)

これまでの植物肉に使用されてきた主原料は大豆搾油後の残渣物(脱脂加工大豆)であったため、味と食感に残る違和感、大豆特有の青臭さや油臭さ、肉に見劣りする機能性(栄養価)といった課題が残っており、本格的な普及の妨げとなっていた。

DAIZの植物肉は、原料に丸大豆を採用。オレイン酸リッチ大豆を使用することで、大豆特有の臭みを無くし、異風味を低減した。また独自の発芽技術によって、これまでの課題を解決する植物肉の開発に成功した。

また、味や機能性を自在にコントロールするコア技術「落合式ハイプレッシャー法」(特許第5722518号)で大豆を発芽させ、旨味や栄養価を増大。発芽大豆は、水を加えながら高温下でスクリューで圧力をかけ押し出すことにより混練・加工・成形・膨化・殺菌などを行うエクストルーダー(押出成形機)にかけ、膨化成形技術により肉のような弾力と食感を再現している。これらの独自技術により、異風味を低減した植物肉(ミラクルミート)を製造しているという。

フレッシュネスバーガー発売の「THE GOOD BURGER」が発芽大豆由来の植物肉を採用

フレッシュネスバーガー発売の「THE GOOD BURGER」が発芽大豆由来の植物肉を採用

発芽タンクを用いた独自の製造プロセスにより、原価低減を実現し、牛肉・豚肉・鶏肉に対し、価格競争力があるとしている。

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人種差別、がん、離婚などのトピックを扱う子ども向け書籍のスタートアップ、創業から現在に至るまでの歩み

企業家であり父親でもあるJelani Memory(ジェラニ・メモリー)氏は、長い間、子ども向けの本を書きたいと思っていた。同氏は、自分が経営するスタートアップであるCircle MediaのシリーズB投資ラウンド中に、燃え尽きたように感じ、もっとクリエイティブで充実した何かを始めたいと思い始めた。これが、A Kids Book Aboutを創業するきっかけとなった。A Kids Book Aboutは、親が子どもといっしょに難しいトピックや会話に挑むのを支援する書籍出版プラットフォームだ。最初に出版された本のタイトルは『A Kids Book About Racism』だった。

メモリー氏は次のように述べている。「私自身、父親として子どもたちと人種差別に関する会話をしようとしていた。子どもたちもこの本を気に入っていた。この本を読んだ後、子どもたちは新しい質問をいろいろとしてきた。人種差別という話題についてそんな質問を子どもたちから受けたことはそれまでなかった」。

メモリー氏がこの本を友人や同僚にも読んでもらったところ、他のトピックについても本を書いたらどうかと勧められた。

同氏は次のように語っている。「それがすべての始まりだった。朝起きたときも、夜寝る前も、日中仕事をしなければならない時間もそのことで頭がいっぱいだった。このような本が必要だ、少なくとも自分の子どもたちには絶対に必要だと直感的に感じていた。一部のトピックは、子どもたちとの会話で取り上げることがあまりに難しいと感じていたからだ。私は自分がオープンな父親で、子どもたちとさまざまなことを話していると思うが、中には取り上げにくいトピックもある。取り上げるつもりでいても、何と言ってよいかわからないこともある」。

これには多くの人たちが共感するのではないか。George Floyd(ジョージ・フロイド)氏が警官に殺された翌日、『A Kids Book About』シリーズは、その前の月全体と同じ冊数が1日で売れた。そして、その勢いは止まることがなかったそうだ。その翌日の売り上げは2倍、さらにその翌日も2倍になり、その後も安定した売り上げを記録した。10日という短い期間で、A Kids Book Aboutは100万ドル(約1億600万円)を超える収益を達成した。

メモリー氏はこう述べている。「正直なところ、あの時点の在庫で年末まで十分に持つだろうと思っていた。だが、2つのタイトルを除き、すべて売り切れてしまったのだ」。

6月のある時点で、入荷待ちは5万冊ほどになっていた。

メモリー氏は次のように語っている。「大人たちもやり方がわかってきて、子どもたちとこうした有意義な会話ができるようになっていった。人種差別に関する本が本当によく売れたが、読者の意欲は素晴らしく、がん、フェミニズム、共感、マインドフルネスといったテーマの本が瞬く間に売れていった。見ていて快感だったよ」。

A Kids Book Aboutは2019年に正式に創業し、同年10月には12タイトルが発売された。現在は25タイトルが販売されており、今後さらに増えていく予定だ。A Kids Book Aboutは直販ビジネスを主体とした「かなりユニークで新しい出版モデル」だとメモリー氏は説明する。

同社では、少人数の集中的なワークショップによって本をあっという間に書き上げてしまう。まず作家に声をかけ、会社のビジョンとミッションについて説明し、その作家と本を共同で執筆する。本を出した経験がない人を意図的に探しているが、以前に本を出した経験がある作家もいる。

メモリー氏は次のように説明している。「本を出した経験がある人となると、大抵は、同性愛者ではない白人の男性になってしまう。我々としては、個人的にさまざまな経験をしており、実体験を通してそのトピックの裏も表も知り尽くしている人を求めている」。

Image Credits: A Kids Book About

出版業務に話を移すと、A Kids Book Aboutでは、本の収益の10%以上を印税として作家に渡すという。従来の出版社の印税は6%程度だ。また、書店に並ぶまでの平均日数は45日と大変短い。従来の出版業界では18か月もかかるところだ。

新型コロナウィルス感染症のパンデミックが発生したとき、A Kids Book Aboutでは、このトピックを取り上げる必要があると考えた。そこですぐにゴーサインを出し、ある社会疫学者と協力して4日間で無償の電子ブックを作成した。書籍版は来月、先行予約を開始する。

フロイド氏の死によって火がついた大きな社会運動の最中、同社では、人種をテーマにした本を追加する必要があると考えた。

メモリー氏は次のように述べている。「私の書いた『A Kids Book About Racism』は人種差別についての会話を始める良いきっかけにはなると思うが、このテーマであと数冊は出す必要があると考えた。今、白人の特権に関する本を急いで執筆しており、今年の秋に出版する予定だ。また、人種差別シリーズの最後の分野として使えるよう、組織的人種差別についての本も執筆中だ」。

A Kids Book Aboutのビジネスのやり方で従来と異なる点がもう一つある。資金調達の方法だ。資金調達プロセスでは、投資家が自分を選ぶだけでなく、自分も投資家を選ぶ、とメモリー氏は言う。

メモリー氏はこう説明している。「これによって、多くの無益なやり取りを回避できる。もちろん、投資の申し出の一部を断る必要もあった。しかし、何よりも、視野を広げて、非白人の投資家を増やすことができるのだ」。

メモリー氏は、スタートアップに今まで投資したことがない投資家も探した。

「適格投資家からだけでなく、適格投資家以外の人からも資金を調達する余地を残しておくことがとても重要だった。富の連鎖がこのまま続くと、富める者だけがますます富むという結果になることがわかっていたからだ」と同氏は述べている。

A Kids Book Aboutは、Cascade Seed Fund、Color Capital、Black Founders Matterなどの一握りのシードファンドから100万ドル(約1億600万円)を調達した。

メモリー氏は次のように述べている。「がんや人種差別などのトピックを扱う子ども向け書籍の直販スタートアップなど、ベンチャーキャピタルにはあまり受けない。私が非白人の創業者であること、またこれが2度目の創業であることもあり、投資家に感銘を与える話をすべきだと何度も勧められた。そのたびに私は、『わかっていない。これは慈善事業じゃないんだ』と答えた。そうした人の投資はすぐに断った」。

メモリー氏によると、eコマースや消費者向けファンドを除けば、全体として、投資家たちの反応はとても良かったという。だが、出版業界について、また同氏のビジネスが今までにないものだということについて、よく分かっていない投資家だけになってしまうこともあったという。

メモリー氏は次のように語っている。「大半の投資家は自分のことを、恐れずにリスクを負う人間だと思っているようだが、私に言わせれば、彼らは地球上で最もリスクを嫌う人たちだ。資金調達とはつまり、自分のしていることを本当に理解してくれる真の支援者を見つけることだ。このビジネスのために100万ドル(約1億600万円)を調達できたことに今でも少し驚いている。しかも、その半分はパンデミックによるロックダウンの真っ只中に調達できたのだ。でも、素晴らしい結果を出していることを書いても、もう問題ないだろう。あの当時、すでに多くの人たちと話をしていたことも。数日で50万ドル(約5300万円)を売り上げるようになった頃には、自分たちとは考えが合わないか、単純に資金の割り当て先を確保できなかったという理由で、かなりの数の投資家たちの申し出を断るようになっていたことも」。

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カテゴリー:EdTech

タグ:A Kids Book About アントレプレナーシップ 差別

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(翻訳:Dragonfly)

IFAのエグゼクティブディレクターがコロナ禍でもリアルなテックイベントを続ける理由を語る

6月に全米民生技術協会(CTA、Consumer Technology Association)は、例年1月に開催する全米最大規模のコンシューマー・エレクトロニクス・ショーであるCES 2021を通常開催することを発表した。一時は、2年連続で新型コロナウイルスの感染蔓延の影響の辛うじて回避するするイベントになるはずだった。しかし1カ月後に主催者は方針を転換し、1月のCES がバーチャルになると発表した。失望したかもしれませんが、驚くべきことではないだろう。

過去5カ月間、MWCからE3、WWDC、Computex、そして初めてオンラインのみで開催されるTechCrunch取材のDisruptまで、次々とリアルイベントのショーの中止が発表されてきた。一方、ある主要な家電見本市では、この傾向を打破するために長い間計画きた。9月3日、IFAはドイツ・ベルリンでリアル
開催される。しかし、今年のイベントはこれまでとは劇的に異なるものになるだろう。

「通常、IFAは40以上のホールで開催されます。今年は、現時点ではステージと記者会見用のホールが2つ、展示ホール、プレスセンターホール、IFA NextとShift Mobility用のホールが1つあります」と、IFAのエグゼクティブ・ディレクターであるJens Heithecker(イェンス・ハイテッカー)氏はドイツからの電話で説明している。「出展社数は昨年の2300社に対し、170~180社程度になるだろう」とも語った。

ハイテッカー氏は、今年のショーについて語るとき声のトーンで憂鬱さを隠そうとしない。「少し詩的な表現をすると、例年の夏の終わりには、ベルリンには特別な空気があり、朝外に出ると、この空気を感じます」と同氏。「今年も同じような空気が流れていますが、ホールや展示会場のエリアを見るたびに、多かれ少なかれ空っぽになっています」と続けた。

私はこれまで何度かIFAに参加してきたが、いつもその組織的かつ混沌とした様子に心を打たれてきた。もちろん、どのテック系のトレードショーにもこのような要素はあるが、IFAは一般にも開放されており、メッセ・ベルリンのコンベンションセンターの迷路のようなホールは、業界の専門家や小さな子供を連れた地元の家族連れなど、独特な混在状況を生み出していた。A地点からB地点への移動にどれだけの時間を割くかによって、面白さと狂気が交互に現れるのだ。

今年のショーは「IFA 2020 Special Edition」と名付けられた。これは基本的には、過去数年に比べて大幅に規模が縮小されることを意味している。ハイテッカー氏によると、限定された招待者リストから約1100名のプレス関係者が登録しているという。私も招待リストに載っていたが、多くの人がそうであるように参加しないことを選んだ。率直に言って、ドイツに飛んで出展者や仲間のジャーナリストと一緒に会場内に立つというアイデアは、今回に限っては国内から追随するよりもはるかに魅力がないように思える。

私自身の安全意識が、新型コロナウイルスの感染蔓延に対する母国の対応の悪さに彩られているのは確かだ。しかし、世界では2450万人の感染者と83万3000人の死者が出ており、世界中で感染者数が増加し続けている。もちろん、ドイツは新型コロナウイルスへの対応には概ね成功しているが、それにも懸念がある。ノルウェーのようなほかのヨーロッパ諸国がドイツ人旅行者を検疫リストに追加している間、数が上昇しているので、国は再開計画を一時停止に入れている。

「3月の終わりまでに、私たちは自分たちで統計を作成し始めました」とハイテッカー氏。ドイツで増加している数字は、少なくともドイツ北部では主に検査を受けた人の数が2倍になっていることに起因しています。つまり、陽性検査を受けた人の割合は以前と同じです。だから我々は、状況によってより多くの人々を見つけるでしょう。一般的な状況は北部では悪化していません。ドイツ政府が今のところ南ヨーロッパ、特に南ヨーロッパでの休暇から戻ってくる人々を恐れているからです。それが今のところ、私たちが毎日のようにすべての数字を非常に近くに追っている主な理由です」と続けた。

限られたゲストリストという性質上、ASUS(エイスース)の最新ゲーム用ラップトップのよさを知ってもらうためにメディア関係者が小さな子供たちを押しのけていた過去数年間に比べて、参加者にとってソーシャルディスタンシングのほうがはるかに簡単に練習できるようになる。もちろん、単にスペースを増やすだけでは、ゲストがIFAに掲載されているマスクと社会的距離の1.5mの要件を守るとは限らない。

「参加者に気を配るためにマスクを着用する人が増えているので、距離を保つことになります」とハイテッカー氏は説明する。同氏は、このような社会的安全ルールを守ることを拒否した場合、参加者は施設から追い出されると付け加えているが、このような動きは当然ながら最後の手段である。

同組織はx「旅行規制が根強いため、アジアの企業がライブイベントに参加できない」として、ショーのグローバル・マーケット部分を取りやめることも決めた。2016年にOEM/ODM、小売業者、流通業者向けに開始されたこのイベントは、展示会の大部分とアジア諸国からの参加者を集めた。6月下旬、っサムスンは同イベントから撤退することを発表し、代わりにIFAの直前に独自のイベント「Unpacked」を選択した。

ハイテッカー氏は、サムスンの決定はハードウェア大手の英国オフィスからの言葉に基づいていると考えている。「2カ月、3カ月前、同社はどんなジャーナリストもIFAに参加するとは想像できなかった」と同氏はTechCrunchに語った。「また、あなたが『我々はIFAにすでに登録しています。必ず行きます』 と告げても信じなかった」とも語る。

同氏は、サムスンが本質的にIFAの存在感を利用して発表会を開催していると考えているが、サムスンが最終的にIFAに直接参加しなかったことを後悔するだろうと付け加えている。「サムスンは今年のIFAの前で記者会見を行い、業界のために、新製品のために、我々が醸成した注目度を利用していた。我々のショーの中ではなくても、IFAの力や活動を利用している」と同氏。「私たちはIFAを新しいプラットフォームで開催し、オンラインプレゼンテーションであっても、出席している人が誰でも、より大きなインパクトとはるかに多くの視聴者を、サムスンが自主開催するよりもはるかに多くの効果を得られる自信がありました」と続けた。

画像クレジット:Michele Tantussi / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

米アマゾンが初の大型スーパーAmazon FreshをLAにオープン、イリノイ州でも準備中

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでオンラインショッピングへの移行が加速したが、Amazon(アマゾン)は米国時間8月27日、実在店舗は消費者の買い物行動において引き続き重要な要素であるという考えを強調する大胆な動きに出た。eコマース大企業のアマゾンは同日、ロサンゼルスのウッドランドヒルズ地域に初のAmazon Freshスーパーマーケットを開店させた(Amazonリリース)。同社はAmazon Freshを今後次々に開店する計画だ。今後展開する地域としてはイリノイ州のオークローン、シャンバーグ、ネイパービル、カリフォルニア州のアーバイン、ノースハリウッドが明らかになっている。開店時期を含め、計画についてアマゾンはこれ以上コメントしなかった。

Amazon Fresh Storesの責任者Jeff Helbling(ジェフ・ヘルブリング)氏はブログ投稿で、店舗は差し当たって地域住民へ送る電子メールに基づく招待制で、営業時間は午前7時から午後10時、としている。営業時間やキャパシティなどについてのアップデートはこちらで案内される。

「アマゾンはすでにWhole Foodsや、小型店舗のAmazon Goをすでに展開しているではないか」と思っている人もいるかもしれないが、要はアマゾンは異なる顧客をターゲットに、新しいスーパー体験を一から構築したいのだろう。実際、これは消費者向けパッケージ商品と同じようなものだ。あらるゆ人向けの多様他種のブランドを抱えていて、消費者はそこにお気に入りのものを見つける。

また、米国の実在店舗を支配しているWalmart(ウォルマート)のようなライバルとの戦いを互角にするために、Amazon Freshの展開はアマゾンが描く戦略の重要な一部でもある。Statistaによると、米国のグローサリー販売は断片化されているが、Walmartのマーケットシェアは2017年に26%だった。アマゾンのWhole Foodsのシェアはわずか1.6%。ただ、オンラインを含む他のチャンネルを合わせるとシェアは4%近くだとアマゾンは推定している。それでも小さいことに変わりはない。

Whole Foodsは主にオーガニック食材や健康食品を取り扱っている(高価格であるために「Whole Paycheck」とのニックネームが付いている)。Goは小規模店で、AIやカメラを使った自動精算というアプローチをとり、新しいもの好きの人に軽食などを提供している。一方のAmazon Freshは、広く知られている主流の大手ブランドで、急成長中のAmazonレーベルの商品、豊富な調理済みアイテムなどを揃えている。

だからといってAmazon Freshがテックをたくさん使っていないというわけではない。店舗にはアマゾン Dash Cartという新機能が備わっている。店舗に行く前に、アマゾンのデバイスやAlexaアプリのAlexa Shopping Listsで買い物リストを作成できる。そして素早く買い物を済ませるためにDash Cartsを使う。目当ての商品を探す買い物客にアドバイスするために店舗にはEcho Showデバイスも設置される。

また、プライム会員には無料の配達も行う。Amazon Freshはこれまでオンラインのみでの展開で、実在店舗は幅広いAmazon Fresh展開の拠点となるだろう。

一からスーパーを構築することで、アマゾンはエクスペリエンスにより簡単に多くのテックを統合させることもできる。

実在店舗にとっては、新型コロナが引き続き拡大しているのは厄介だ。どこに住んでいるかによって、買い物するときに守らなけれなならない規則は異なる。マスクの着用が求められるところもあれば、店舗への入店や店舗内での行動が制限されているところもする。また、制限付きでの営業だったり、極端な場合は店舗閉鎖というのもある。

店舗の営業形態については、Whole Foodsのものをベースにしながら独自の基準を設ける(Amazonブログ)、とアマゾンは話している。従業員は毎日体温チェックを受ける。そして従業員、顧客ともにマスクを着用する。必要な人には無料の使い捨てマスクを提供する。そして店舗内の人数は最大50%に制限される。

LA店舗のオープンは、アマゾンの動きをフォローしていた人にとっては大きな驚きではないだろう。同社はしばらくの間、LAを含め大型小売店を設置する場所を時間をかけて選んでいた。しかし何よりも、人材採用によって多くの人がアマゾンの小売店舗設置を予想することになった。

同社はまた、米国外のマーケットでもスーパーの設置を検討していると報道されている。噂では、英国で何年も物色しているとのことだ。やや騒々しい英国マーケットも米国同様にかなり断片化されているが、シェアトップのTesco(テスコ)にアマゾンは目をつけてきた。Tescoは財政難に陥っているためだ。

皮肉にも、そうした小売チェーンの苦境は部分的にはアマゾンのようなサイトでのオンラインショッピングへの移行の結果だ。

関連記事:米アマゾンがプライム会員向けAmazon Fresh使用料を無料に

カテゴリー:ニュース

タグ:Amazon ネットショッピング

画像クレジット:Amazon Fresh

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(翻訳:Mizoguchi

Boxがデジタルトランスフォーメーションの恩恵を受けて成長予測を引き上げ

クラウドストレージサービスを提供するBox(ボックス)は、ウォールストリートにとって、そしておそらく一般的なエンタープライズソフトウェアとして、いつでもちょっと謎の存在だった。HR、CRM、ERPなどのクラウドツールに移行したベンダーたちとは異なり、Boxはクラウド内のコンテンツを管理する手段を開発している。他のエンタープライズソフトウェアよりも理解するのは多少難しいものの、ゆっくりと、しかし確実に、Boxはより利益を生み出す会社へと移行してきたと言えるだろう。

同社は米国時間8月26日に、2021年会計年度第2四半期(2020年4月1日〜7月31日)の決算報告(Boxリリース)を提出した。内容は堅調だった。実際、同社は1億9230万ドル(約204億3000万円)の収益を報告している。同社によれば、これは前年比11%の増加であり、アナリストの予想である1億8960万ドル(約201億5000万円)を上回っている。一方で年間を通しての収益予想も、7億6600万ドル〜7億6800万ドル(約814億1000万円〜約816億3000万円)の予想から、7億6700万〜7億7000万ドル(約815億2000万円〜約818億7000万円)の範囲に上方修正された。

こうした結果は、同社がその基盤を固めたことに伴って得られたものだ。忘れてはならないのは、Tartboard Valueが1年前に7.5%の株式を取得(未訳記事)したことだ。だがこの積極的な投資家がほぼ沈黙を守り続けてきた中で、新型コロナウイルスの感染蔓延が顧客をBoxの得意な方向でクラウドに迅速に移動させる強制力として機能したために、Boxは株主の忍耐に報いることができているようだ。

利益を出そう

BoxのCEOであるAaron Levie(アーロン・リービー)氏は、それまでの自分たちの努力を上回って、パンデミックがいかに企業の素早いクラウドへの移行を促したかについて(未訳記事)、あからさまに語ることにためらいがない。彼はデジタル企業として、従業員を在宅勤務へと移行させ、変わらない効率で働かせることができたという。なぜなら、Slack、Zoom、Oktaのようなツールがあったからであり、もちろんBoxもその役に立っている。

これらすべてが、パンデミックがもたらした非常に困難な時期を通じて(未訳記事)、ビジネスを継続し、さらには繁栄させるために役立っている。「この環境のなかで、そのように業務をできたことは幸運でした。これは、私たちが100%SaaSであり、ビジネスを遂行するための優れたデジタルエンジンを持っていることを助けてくれます」と彼は語った。

彼はさらに付け加えて、「同時に、お話してきましたように、私たちは利益率を向上させてきました。このため、ビジネスの効率性も劇的に向上し、結果として、全体として非常に力強い四半期となり、予想を上回る成長と予想を上回る利益率を実現できました。その結果、今年度後半の収益と利益の両方に対して目標を引き上げることができました」とリービー氏はTechCrunchに語った。

デジタル化しよう

Boxは、既存の顧客と新しい顧客が同じように、より迅速にクラウドに移行するのを観察しており、それが同社にとって有利に働いている。リービー氏は、企業たちが現在、短期および長期のデジタル戦略や、クラウドインフラストラクチャ、クラウドのセキュリティ、コンテンツなどを問わず、クラウドに移行すべき仕事を再評価していると考えている。

「お客さまは、最も重要なデータと最も重要なコンテンツをクラウドに移行できる方法を模索なさることになるでしょう。それが、私たちのお客さまの中で起きていることです」とリービー氏は述べている。

「クラウドにアクセスするかどうかを、もはや問題にする段階ではなく、今の問題は、どのクラウドにアクセスするかなのです。もちろん私たちは、現在目にしているような、データをクラウド環境に移動し、安全に管理し、ワークフローを推進し、アプリケーション間で統合できるようにしたい企業のみなさま向けに、私たちの主要なプラットフォームを構築することに、重点を置いてきました」と彼はいう。

この結果、この四半期で10万ドル(約1060万円)を超える大規模な取引の数が60%増加した。そして直近の四半期で、プラットフォームのユーザーは世界で10万を超えた。つまりこのアプローチは上手く行っているということだ。

作り続けよう

1世代前のSalesforce(セールスフォース)と同様に、Boxはサービスのプラットフォーム上に、自社製品セット(未訳記事)を開発することを決定した。これによって、顧客は暗号化、ワークフロー、メタデータといった基本サービスを利用して、独自のカスタマイズをおこなったり、Boxがすでに開発しているツールを利用して、フルセットのアプリケーションを構築することもできるようになった。

Salesforceの社長でCOOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が最近TechCrunchに語ったたように、プラットフォームアプローチは会社の成功の不可欠な部分(未訳記事)であり、リービー氏はBoxに対しても同様な考えを持ち、それを彼の会社の成功の基本とも呼んでいる。

「そのプラットフォーム戦略がなければ、私たちはここにいなかったでしょう」と彼は語る。「私たちはBoxをプラットフォームアーキテクチャとして考え、そのプラットフォームに次々に多くの機能を組み込んできたために、現在この戦略的優位性がもたらされているのです」と彼はいう。

これは、Boxを使用する顧客の役に立つだけでなく、Box自身が新機能をより迅速に開発するのにも役立っている(未訳記事)。これはパンデミックの中で急速に変化する顧客の要求に素早く対応しなればらななかった同社にとって、間違いなく本質的なことだった。

リービー氏は、BoxのCEOとして15年間在籍しているが、それでも会社も市場もまだ始まったばかりだとみなしている。「チャンスは大きくなる一方ですし、それは私たちの製品やプラットフォームでこれまで以上に対処可能なものなのです。なので、私たちはまだデジタルトランスフォーメーションのごく初期の段階にいると思っていますし、現代的なドキュメントおよびコンテンツ管理の仕組みについても、最も初期の段階だと思っています」。

関連記事:Aaron Levie: ‘We have way too many manual processes in businesses’(未訳記事)

画像クレジッド:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:sako)