850万人の大規模検査後、インドの州政府サイトが新型コロナ検査結果を外部閲覧可能な状態に

インドの西ベンガル州政府が運営するウェブサイトのセキュリティ上の欠陥により、新型コロナウイルス感染症検査を受けた少なくとも数十万人の住民の検査結果が誤って公開された。影響を受けた人数はおそらく数百万人にのぼると思われる。

このサイトは、西ベンガル州政府の大規模新型コロナウイルス検査プログラムの一部として運営されていた。新型コロナウイルス感染症の検査結果が出ると、州政府は患者に検査結果が記載された同サイトへのリンクをテキストメッセージで送る。

しかし、セキュリティ研究者のSourajeet Majumder(ソウラジート・マジュムダー)氏は、患者の固有の検査ID番号を含むリンクが、オンラインツールを使って簡単に変換できるbase64エンコード方式でスクランブルされていることを発見した。ID番号は増加していく連続番号だったため、このウェブサイトのバグにより、誰でもブラウザのアドレスバーでその番号を変更して、他の患者の検査結果を閲覧できるようになっていた。

検査結果には患者の名前、性別、年齢、住所、そして患者の新型コロナ検査結果が陽性、陰性、または決定的ではなかったかどうかが含まれている。

マジュムダー氏はTechCrunchに、悪意のある攻撃者がサイトをスクレイピングしてデータを販売することを懸念していると語った。「誰かが私の個人情報にアクセスした場合、これはプライバシーの侵害になります」。

西ベンガル州政府のウェブサイトにセキュリティ上の脆弱性があったことにより、新型コロナ検査の結果が露出された2件の例(スクリーンショット:TechCrunch)

マジュムダー氏がインドのサイバーセキュリティ緊急対応チーム(Indian Computer Emergency Response Team、CERT-In)に脆弱性を報告したところ、CERTはメールで問題を認めたという。同氏は西ベンガル州政府のウェブサイト管理者にも連絡したが、返答は得られなかった。TechCrunchは独自に脆弱性を確認し、ウェブサイトをオフラインにした西ベンガル政府にも連絡を試みたが、同州政府はコメントを差し控えた。

TechCrunchは脆弱性が修正されるか、リスクがなくなるまで報道を控えた。この記事の公開時点では、影響を受けたウェブサイトはオフライン状態が続いている。

このセキュリティ過失により、いったい何人の新型コロナ検査結果が公開されたのか、またマジュムダー氏以外の人物が脆弱性を発見したのかは不明だ。2021年2月末にウェブサイトがオフラインになった時点で、州政府は850万人以上の住民を対象に検査を実施していた。

西ベンガル州はインドで最も人口の多い州の1つで、約9000万人が同州に住んでいる。パンデミックが始まって以来、州政府は1万人以上の新型コロナウイルスによる死者を記録している。

今回のニュースは、ここ数カ月の間にインドと同国政府のパンデミック対策を襲ったいくつかのセキュリティ事件の最新のものだ。

2020年5月、インド最大の携帯電話ネットワークであるJioは、数カ月前に同社が立ち上げた新型コロナウイルス症状チェッカーを含むデータベースをセキュリティ研究者が発見したことを受け、セキュリティ過失を認めた

関連記事:Facebookも巨額出資するJio、新型コロナ症状チェッカーの結果を漏洩

2020年10月には、臨床検査会社のDr Lal PathLabsが、新型コロナウイルス検査を含む数百万件の患者の予約記録を含む数百枚のスプレッドシートを、パスワードで保護されていない公開ストレージサーバーに放置していたことをセキュリティ研究者が発見し、誰でも機密性の高い患者データにアクセスできるようになっていたことが判明した。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:インドデータ漏洩コラム

画像クレジット:Diptendu Dutta / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

全世界9割の航空会社が使う旅客システム企業SITAがサイバー攻撃を受けて乗客データ流出

世界的な航空輸送データ企業であるSITA(Société International de Télécommunications Aéronautiques)は、乗客データを含むデータ漏洩が起こったことを認めた。

同社は中央ヨーロッパ時間3月4日、短い声明でSITAが「サイバー攻撃の犠牲者」となり、米国にある同社のサーバーに保存されていた一部の乗客データが流出したと発表した。2月24日にサイバー攻撃が確認された後、同社は影響を受けた航空会社に速やかに連絡したという。

SITAは世界最大級の航空IT企業で、世界の航空会社の約90%にサービスを提供していると言われており、それらの航空会社は同社の旅客サービスシステム「Horizon」を利用して予約、発券、航空機の出発を管理している。

しかし、どのようなデータがアクセスされたりもしくは盗まれたのか、正確には明らかにされていない。

TechCrunchの取材に対し、SITAの広報担当者であるEdna Aime-Yahil(エドナ・エイメ・ヤヒル)氏は、調査が現在進行中であることを理由に、具体的にどのようなデータが流出したかについての発言を控えた。同社は、このインシデントは「米国だけでなく、世界中のさまざまな航空会社に影響を与える」と述べている。

SITAはマレーシア航空、フィンエアー、シンガポール航空、および韓国のチェジュ航空など、すでにデータ漏洩についての声明を出しているいくつかの航空会社に通知したことを確認したが、影響を受けた他の航空会社の名前を挙げることは辞退した。

TechCrunchが入手した、シンガポール航空が影響を受けた顧客に向け送ったメールでは、同社はSITAの運営するHorizon旅客サービスシステムの顧客ではないが、約50万人のマイレージサービス会員に関して、会員番号とステータス情報が不正アクセスを受けたと述べている。同エアラインは、この種のデータの伝達は「会員のティアステータスの確認を可能にし、旅行中にメンバー航空会社の顧客に関連する特典を提供するために必要である」としている。

シンガポール航空は乗客の旅程、予約、発券およびパスポートデータは影響を受けなかったと述べた。

SITAはSabre(セーバー)やAmadeus(アマデウス)と並び、航空市場で乗客の発券および予約システムを航空会社に提供するひと握りの会社の1つだ。

Sabreは2017年半ばに、ハッカーが100万枚以上の顧客クレジットカードをスクレイピングした後、同社のホテル予約システムに影響を与える大規模なデータ流出を報告した。米国を拠点とする同社は漏洩を受けて2020年12月に240万ドル(約2億6000万円)の和解金と、サイバーセキュリティポリシーを変更することに合意した。

2019年には、エールフランスやブリティッシュ・エアウェイズ、カンタスなどが利用しているAmadeusの旅客予約システムに脆弱性があることがセキュリティ研究者によって発見され、旅行者の記録に簡単にアクセスしたり、改ざんすることが可能になっていたと判明した。

関連記事:データ漏洩通知は行間を読め、本当の意味を解読する方法

カテゴリー:セキュリティ
タグ:SITAデータ漏洩

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

Shopifyのお店とお客がSMSで対話できるサービスPostscriptが35億円を調達

Shopifyのお店は、Postscriptを利用して、顧客との接触をSMSで維持できる。顧客の関心分野に集中し、法に触れず、スパムに邪魔されないコミュニケーションが可能だ。同社は2019年に450万ドルを調達したが、今朝(米国時間3/3)はシリーズBの3500万ドルを発表した。

昨年の同社は好調に伸びて、2019年の12月時点の社員数14名、顧客数530から、それぞれ61名3500社強に成長した。

プロダクトのビジョンも昨年はやや大きくなった。最初はShopifyのストアが既存の顧客に「新しい靴が入ったわよ!」などと一方通行的にブロードキャストするだけだったが、今では双方向の対話ができるようになり、再注文や追加注文、サブスクの管理、SMSからのレビューなどが可能だ。

これまでと同じく、PostscriptはShopifyのストアしか利用できないが、APIを使ってShopifyの他のプラグインとのより深い統合を構築できる。でも、それもまだShopifyのお店限定だ。

Postscriptの共同創業者であるAlex Beller氏は、こう語る: 「今だにShopify限定なのは、そこに秘密のソースがあるからだ。私たちは、データとエコシステムを重視している。そこには、小さなアドバンテージの累積という利点がある。また、eコマースの世界で最速成長しているプラットホームでもあるから、ここにいた方が良い」。

関連記事: Postscript raises $4.5M to help Shopify shops stay connected with customers over SMS(未訳)

同社の2019年の資金調達はシードラウンドだったが、共同創業者のAdam Turner氏によると、ラウンドのサイズと最近の同社の売上から見て、ラウンドAをスキップし、今回をいきなりシリーズBにした。

このラウンドをリードしたのはGreylockで、YCと1984vc、Ali Capital、Elephant VC、そしてLarry Fitzgerald氏が参加した。投資の一環としてGreylockのパートナーであるSarah Guo氏とMike Duboe氏がPostscriptの取締役会に入る。

(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット: Postscript

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

今週の記事ランキング(2021.2.21〜2.25)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「MSが永続ライセンス版次期「Office」発表、本音はクラウド対応Microsoft 365に乗り換えて欲しい」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

フォックスコンが次期EV製造で米Fiskerと提携に暫定合意、年25万台超を生産へ

Apple(アップル)の主要サプライヤーであるFoxconn Technology Group(フォックスコン、鴻海科技集団)は、電気自動車(EV)のスタートアップが転じSPACにより上場したFisker(フィスカー)と、北米、ヨーロッパ、中国、インドで販売されるEVを開発し、最終的には製造することで暫定的な合意に達した。

FiskerとFoxconnは中国時間2月24日、覚書(memorandum of understanding、MOU)に基づく合意が締結されたと発表した。両社間の協議は今後も継続され、2021年の第2四半期中に正式なパートナーシップ契約が締結される見込みだ。

合意によると、Foxconnは2023年の第4四半期に生産を開始し、25万台超を生産の生産台数を見込んでいる。この電気自動車はFiskerブランドの製品となる。

Foxconn Technology GroupのYoung-way Liu(劉揚偉、ヤンウェィ・リュー)会長は、同社の垂直統合されたグローバルサプライチェーンと蓄積されたエンジニアリング能力を強調し、それらはEVの主要要素である電動モーター、電気制御モジュール、バッテリーの開発・製造において、同社に2つの大きな優位性を与えていると指摘した。

Foxconnが生産目標を達成したいのであれば、このサプライチェーンとエンジニアリングの迅速なスケールアップ能力は非常に重要になる。

「両社の協力により、研究開発から生産まで、わずか24カ月でFiskerの次期モデルを生産することが可能になり、新しい車両を市場に投入するのに必要な時間を従来の半分に短縮できます」とリュー会長は声明で述べた。

Fiskerによると、同社の初のEVであり、受託製造メーカーのMagna(マグナ)が製造するとされるSUV「Ocean(オーシャン)」の生産は2022年の第4四半期に開始されるという。同社は、2021年後半にはOceanの生産段階のプロトタイプを発表する予定だと述べている。

Foxconnが電気自動車製造に参戦するのは、これが初めてではない。

Foxconnは2020年1月、Fiat Chrysler Automobiles(FCA、フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と合弁会社を設立し、中国で電気自動車を製造することを発表した。その契約の下で、各当事者はベンチャーの50%を所有し、電気自動車の開発と製造を行い、Foxconnの親会社であるHon Hai(鴻海)が「クルマのインターネット(Internet of vehicles、IOV)」と呼ぶ事業に従事する。

そして2021年1月、Foxconnと中国の自動車メーカーであるZhejiang Geely Holding Group(浙江吉利控股集団、チョーチアン・ギーリー・ホールディング・グループ)は、自動車メーカー向けの受託製造に特化した合弁会社を設立することで合意している。

関連記事:フォックスコンと中国Geelyが提携、次のテスラを目指し自動車メーカー向けに電気自動車、自動運転車、シェアリング車を開発

FoxconnとGeelyの合弁会社は、自動車メーカーやライドシェア企業に対して、車両全体、部品、インテリジェントドライブシステムなどの、自動車エコシステムプラットフォームに関するコンサルティングサービスを提供していく。Geelyは自動車分野での設計、エンジニアリング、研究開発、インテリジェント製造、サプライチェーンマネジメント、品質管理などの経験を提供し、一方Foxconnは製造とICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)のノウハウを提供するという。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Foxconn Technology Group電気自動車Fisker

画像クレジット:Fisker Inc.

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

コネクテッドカーからデータ収集、匿名化するサービスのOtonomoがSPAC経由で上場へ

インターネットに緊密に統合されたいわゆるコネクテッドカーのデータを取得して収益化するビジネスを支援するOtonomoは株式上場を準備中だ。 同社はイスラエルを拠点とするクラウド・サービスのスタートアップで、評価額は14億ドルで上場のための特別目的会社(SPAC)Software Acquisition Group Inc.IIとの合併に合意したことを発表した。

自動車関連でも従来の上場方法の煩雑さを嫌ってSPACないしブランク・チェック・カンパニーとの合併による上場を狙うスタートアップが増加中だ。OtonomoもSPACによる上場のブームに加わった。過去数か月間でSPACとの合併を発表または完了した自動車関連スタートアップには、Arrival、Canoo、Lordstown Motors、Luminar、ChargePoint、Lion Electric、Proterraなどがある。

株式市場からの資本調達は、自動車メーカーになろうとするなど資本集約的な目標を抱えている企業にも成長を加速させたい企業には非常に魅力的だ。Otonomonoは後者のグループに属する。

OtonomoはPIPE(限定的私募)により1億7250万ドルを調達したと発表した。投資家にはFidelity Management&Research Company LLC、BNP Paribas Asset Management Energy Transition Fund、Senvest Management LLCなどが含まれ、また戦略的投資企業のDell Technologies Capital、Hearstの支援を受けた。現在のOtonoo株主は合併完了時に所有権の過半数を所有する。この際Otonomoの保有キャッシュは3億700万ドル以上となる。

Otonomoは調達した資金は企業規模拡大と新しいマーケット、ユースケースへの参入のために利用する計画だと語った。

Otonomoは2015年に車両からのデータを取得して匿名化するクラウドベースのソフトウェアプラットフォームとして創立された。このプラットフォームは、電気自動車の管理、位置把握、各種有料サービスの提供、駐車場、利用距離従量型保険、 トラフィック管理、メディア、緊急サービスなどを提供するアプリに利用できる。 Otonomoによれば同社のプラットフォームは自動車メーカーや大量の自動車運用社16社、サービスプロバイダー100社以上に利用されている。

同社はコネクテッドカーを介して実行されているあらゆるオペレーションを企業が収益化するのを支援できるとするプロモーションで数十社のユーザーの獲得に成功している。Otonomoはデータを安全に収集しデータを匿名化して企業が運用車フリート、スマートシティ、個人向けアプリやサービスの開発に利用できるようにする。GDPR、CCPA、その他のプライバシー規制をクリアできる個人別データ、集計データを総合したソリューションも提供される。

Otonomoの企業規模は、少なくとも1つの方法として、同社のサービスを利用して収集されるデータポイントの数で推定することができる。1年前同社は、自動車メーカー、フリート、農業・建設メーカーとの提携により、1日あたり2000万台以上の車両から26億種類のデータを収集していると発表した。現在、同社のプラットフォームは世界の4000万台以上のコネクテッドカーから1日あたり40億以上のデータを取得しているという。

上場に向けたSPACとの合併は2021年の第2四半期に完了する予定だ。上場先はNASDAQでCEOは引き続き Ben Volkow(ベン・ヴォルコウ)氏が務める。

画像:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec 翻訳:滑川海彦@Facebook

今週の記事ランキング(2021.2.14〜2.18)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「YouTubeが大規模なアップデート予定を発表、動画内ショッピング機能などを2021年中に展開」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

米国では未成年への電子タバコ「VAPE」販売にTikTokが使われている

TikTokは電子タバコVAPE(ベイプ)をめぐる問題に直面している。2019年に米国の法律で21歳未満の顧客への電子タバコの販売が禁止されたにも関わらず、使い捨て電子タバコやVAPE(フレーバーつき電子タバコ)の宣伝動画がTikTokアプリ内で今でも比較的簡単に探し出せる。ノリの良い人気の音楽が流れ、現在は(米国で)販売が禁止されているフルーツフレーバーやミントフレーバーなどの香りや味つきカートリッジを宣伝しているそれらの動画が、10代をターゲットにしていることは明らかだ。いくつかの販売業者は「用心深い」梱包サービスをウリにしている。彼らが購入者へ出荷するVAPE製品は、保護者による監視の目をすり抜けられるように詰め物の下に隠されたり、化粧ポーチやふわふわのスリッパなど、他の製品の内部に梱包されていたりする。

とりわけ未成年や若年層への訴求力が高いフレーバーつきの使い捨てVAPEへの関心が高まり、それがFDA(米国食品医薬品局)によるJuul(ジュール)取り締まりへの引き金となった

2020年2月、FDAは未成年者をターゲットにしている製品やタバコとメンソール味以外のフレーバーを提供する製品を含む、違法販売された電子タバコに対して、最初の執行措置を取った。Juulを取り締まる目的があったのは明らかだ。

その結果、バブルガムやピーチ、ストロベリーといったフレーバーを欲する若者たちはPuff Bar(パフバー)のような使い捨てVAPEへと走った。使い捨てVAPEは安価で簡単に見つけることができ、コンビニエンスストアやガソリンスタンドでも継続して合法的に販売されていた

それだけでなはい。TikTokにも使い捨てVAPEが溢れており、支払いさえできれば、誰でもすぐに手に入れられる。

もっといえば、それらの違法コンテンツがTikTokに報告されても、すべてが削除されるとは限らない。

TechCrunchは、TikTokでVAPEを販売している業者たちが顧客と連絡を取るのにアプリ内の動画とコメントの両方を活用していることに気づいた。さらに彼らは、TikTokの閲覧者を違法運営と思われるウェブサイトに誘導している。また、彼らのTikTok動画には、未成年者が好むフレーバーつきPuff Barのような使い捨てVAPEをはじめとするVAPE製品の在庫状況が頻繁に表示される。

要するに、販売業者たちはFDA規制の執行後もVAPEへの興味を失わなかった若年層の観客に対してVAPEを宣伝するための無料かつ効果的な広告手段として、TikTokを利用しているのだ。

タバコに関する規制のための非営利団体Truth Initiative(トゥルース・イニシアティブ)の最新調査によると、2019年から2020年にかけてJuulの使用量は減少したが、それでも10年生から12年生のVAPE愛用者の41%がJuulを好み、この年代が最も好む電子タバコブランドとなっている。調査結果から、同時期にPuff Bar(8%)やSmok(スモック、13.1%)といった使い捨て製品の売り上げが伸びているのが見て取れる。

2020年9月にTruth Initiativeは次のような声明を出している。「2020年のNational Youth Tobacco Survey(NYTS。全米若者のタバコ使用に関する調査)新しい電子タバコの売上統計データを合わせて見ると、現行の連邦法によってミント味の製品が市場で禁止された際に、若者たちがすばやくメンソールの電子タバコ(特にJuulのメンソールポッド)へ移行したこと、そして、Puff Barのような低価格のフレーバーつき使い捨て電子タバコの人気が急騰したことは明らかだ」。

同団体によると「綿菓子やバナナアイスのように子どもたちが思わず手を出したくなるような名称を使うことにより、使い捨て電子タバコ市場は2019年8月から2020年5月までのわずか10カ月間で2倍に成長した」という。

さらに、TikTokがこの問題に大きく加担している。

Statista(スタティスタ)に発表された第三者機関による推定によると、現在、米国内のアクティブなTikTokユーザーのうち32.5%は10代の若者が使用するアカウントだと想定される。また、TikTokが2020年公表した数字によると、米国にはTikTokの月間アクティブユーザーは約1億人いる。

一方、VAPEや電子タバコの人気ブランド名や関連するキーワードがタグづけされたTikTok動画は数億回のビュー数を稼いでいる。

たとえばVAPEブランドの代名詞であるJuulのハッシュタグ「#juul」がつけられたTikTok動画のビュー数は、本記事の執筆時点で6億2390万回に上っている。

中国初の使い切りVAPE製品メーカーであるPuff Barのハッシュタグ「#puffbar」がつけられた動画のビュー数は4億4980万回だ。他のブランドも多くのビュー数を獲得している。たとえば「#njoy」は5530万回、「#smok」は4010万回、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「#Vuse」は500万回のビュー数となっている。

これらのビュー数はあくまで単語1つのハッシュタグに対するビュー数なので、その単語が別の単語と組み合わされたハッシュタグが無数に存在する。たとえば「#puffbars」「#puffbarplus」「#puffbardealer」などのハッシュタグがあり、順にそれぞれのタグが6680万回、960万回、890万回のビュー数に達している。

これらのハッシュタグがすべてVAPE製品や電子タバコの販売業者に結びついているわけではないが、電子タバコに関連するかなりの量のコンテンツがTikTokアプリ内に存在していることは確かだ。例を挙げるなら、「#juulgang」(ビュー数5億9040万回)のようなタグは、VAPE関連のコンテンツに対抗するハッシュタグとしてVAPE嫌煙家のコンテンツ作成者たちが愛用している。

このようなトレンドは憂慮すべきものだ。TikTokを使用する若年層の多さを考えると、特にそうだといえる。実際のところ、米国のTikTokユーザーの3分の1はおそらく14歳以下だと思われる。

米国のApp StoreではTikTokの使用に際する年齢制限を12歳以上、Google PlayではTikTokのコンテンツに対する推奨年齢を「Teen(13歳以上)」としている。TikTokは若年層アカウントのプライバシーに関するデフォルト設定を変更し、過去に物議を醸し出したハッシュタグ(米大統領選での陰謀論のような)などはすばやく排除したが、その反面、VAPE製品に関するコンテンツへのアクセスはまったく制限されていない。

TikTokにおける電子タバコ喫煙に関するハッシュタクの普及に加えて、多数のVAPE販売者が「@puffsonthelow」や「@PuffUniverse」「@Puffbarcafe」などのわかりやすいアカウント名を販売時に使用していることをTechCrunchは突き止めた。それらのアカウントのページには、大胆にも現在販売している在庫一覧を含むVAPE関連動画が並び、「#puffbarchallenge」「#puffplus」「#vaperticks」といったVAPE関連用語でタグづけされている。

あろうことか、動画に「#kids」やその他のトレンドタグをつけていたVAPE販売者もいた。

ターゲット層の大部分が10代のVAPE愛好家であることを熟知しているため、販売者が投稿した動画の多くに、保護者に見つからないよう他の製品の中にVAPEを同梱する映像や、詰め物で隠して包装した状態で配送できることを伝える描写が含まれていた。キャンディの下、化粧ポーチの中、靴下の中、他の大きい製品の下などにVAPEを隠して梱包している動画がいくつも見つかった。

アカウントのプロフィールで公表されているリンクや、動画上に表示されるリンクを通して、TikTokのユーザーは販売者のウェブサイトや、ポップアップでの年齢確認のみで済むDiscordのチャンネルへ、自動的に転送されてしまう。

多くの場合、製品を買い物かごへ追加し、そのまま支払い手続きをすることによってすぐに購入できる。大半の販売者は、通常のクレジットカード支払いの代わりに、PayPal(ペイパル)やVenmo(ベンモ)またはCash Appなどを使って決済するよう顧客を誘導している。

米国で、特に若者の喫煙を減らす運動をしている非営利団体として有名なCampaign for Tobacco Free Kidsによると、これらの行為はすべて違法である。

Campaign for Tobacco Free Kidsの代表者であるMatt Myers(マット・マイヤーズ)氏はTechCrunchに次のように語った。「21歳未満の未成年に電子タバコ関連製品の販売をすることはもちろん、ダイレクトに訴求する行為も違法です。そして、年齢確認をせずに実際の販売手続きを行うことも違法行為です」。

画像クレジット:TikTokのスクリーンショット

さらに、マイヤーズ氏は、ウェブサイトで「私は21歳以上です」というボタンをクリックするだけでは、電子タバコ製品を販売する際の法的に有効な年齢確認にならないことをつけ加える。

FDAは未だにオンライン販売に際しての具体的なガイダンスを発表していないが、未成年者への販売を防止するため、小売業者による販売時の身分証明書(ID)確認が必須であることは、法律で明確に定められている

FDAはまた、オンラインの小売販売者からの電子タバコやその他タバコ製品の購入を減らす目的で、米郵便公社や他の宅配業者を通してこれらの製品を配送することについて米国議会が最近、新しい規制を制定したことを、TechCrunchに思い起こさせてくれた。

だが、マイヤーズ氏は現行のFDAガイドラインのせいで、「ソーシャルメディアを通した」VAPE販売を取り締まることが必要以上に難しくなった、と指摘する。

「ソーシャルメディアでVAPE販売のために使用される画像、インフルエンサーの使用、販売広告はFDAによって連邦基準に沿って統制されます。しかし、FDAの連邦基準は非常に広範で概括的です。FDAは、明確かつ具体的なガイドラインを提示していません。そのために、すべての人がまるで常に『もぐら叩き』ゲームをしているような状態です」とマイヤーズ氏は語る。

大抵の場合、FDAによる介入があって初めて取り締まりが行われるが、マイヤーズ氏によると、そのような介入は「非常に稀」だという。

「現在見られる態度、行為、製品すべてが、電子タバコに関する前述の法律に違反しています。それにも関わらず、先の政権下で導入された取り締まり体制は嘆かわしいほどに弱く、不十分です」とマイヤーズ氏はいう。

画像クレジット:TikTokのスクリーンショット

事態を複雑にしている別の要因として、Campaign for Tobacco Free Kidsのような公共的な健康支援団体が、他のソーシャルネットワークとの間で築けている適切な関係を、TikTokとは築けていないことがある。

過去数年にわたり、100以上の公共的な健康支援団体が団結してFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)、Snapchat(スナップチャット)などの代表的なソーシャルネットワークに対し、タバコに関連したコンテンツや販売においてインフルエンサーを利用することを厳しく取り締まるよう依頼してきた。そのような努力が実を結び、FacebookやInstagramは、ソーシャルメディアのインフルエンサーたちがタバコ関連製品を宣伝することや、それらのコンテンツを抽出するアルゴリズムの開発を禁止する新しいルールを制定した。

全体的には、健康支援団体は代表的なソーシャルメディアのプラットフォーム上でのタバコやVAPE関連コンテンツが減少したと発表しているが、TikTokはまだその中に含まれていない。

TikTokは比較的新しいアプリであるため、Campaign for Tobacco Free KidsはTikTokに関する包括的な調査ができていないことをマイヤーズ氏は認めている。だが、同団体がこれまで観察してきたところによると、TikTokに対する懸念は高まり続けている。

「インフルエンサーを起用する、TikTokに惹きつけられる若年層に対して直接販売を持ちかけるなど、TikTokには、今まで見た中でもかなり悪質な販売手法があふれています。そして、TikTok側がそれらの行為に対して何らかの措置を講じた形跡は確認できていません」とマイヤーズ氏は続けた。

TikTokが、この問題を認識していなかったと主張することはできない。

画像クレジット:TikTokのスクリーンショット

あるVAPE販売者が「身分証明書(ID)確認不要」と恥知らずにも宣伝したことがアプリ内の報告システムによって検知された際、TikTokのコンテンツモデレートチームは、「このコンテンツはTikTokのガイドラインに反していない」と述べた。別のVAPE販売者が報告された時も、同様の対応が取られている(下記参照)。

TikTokは、このようなことは起きてはならないと主張する。同社は、VAPEや電子タバコのコンテンツを掲載しているアカウントは見つけ次第削除し、タバコやVAPE関連の外部ウェブサイトへリンクするアカウントのプロフィールをリセットするとTechCrunchに述べた。

TikTokはまた、TikTokコミュニティガイドラインで、未成年によるタバコの保持または消費を提案、描写、模倣、推奨するコンテンツや、未成年を対象としたタバコの売買、や交換方法に関するコンテンツを禁止しているという。そして、同ガイドラインではタバコの広告も許可されていない。

画像クレジット:TikTokレポートのスクリーンショット

TikTokに関するこの問題を認識しているかどうかについてFDAのコメントを求めたところ、FDAの広報担当者は、コンプライアンスや法執行に関する具体的な措置は検討していないと回答した。

ただし、FDAは小売業者、製造業者、輸入業者、販売代理店による連邦タバコ規制のコンプライアンス遵守を厳重に監視し、違反が起きた際には是正処置を取ると述べた。加えてFDAは、インターネット上のものも含め、タバコのラベルや広告、その他の販促活動に対して常時モニタリングと監視を行っていると続けた。

事態をさらに複雑にしているのが、フレーバーつきVAPEの販売許可申請をFDAが受けつけていることだ。Puff Barなのか、別の会社なのか、どの会社が申請中なのかは公表されていない。つまり、健康支援団体はFDAがどの製品の販売許可を検討中なのかわからないのだ。

だがFDAは、販売許可申請書を提出したかどうかに関係なく、どの製品もその製造会社が「若年層がその製品を利用できないようにするための適切な方策を取っていない」場合は販売を許可することはないと、TechCrunchに述べた。

それならば、オンラインのPuff Bar小売店やTickTokでの販売活動も含まれるということだ。

FDAは先に、Puff Barに対して具体的な行動を取ったことをつけ加えた。

販売許可を受けるに達していない、低品質で不正表示された製品を販売していたことについて、FDAは2020年7月にCool Clouds(クール・クラウズ。正式名はCool Clouds Distribution, Inc. d/b/a Puff Bar)に対して警告を発している。

2021年1月には、FDAと米国税関国境保護局が、Puff XXLやPuff FlowをなどのPuff Barブランドに似た使い捨てのフレーバーつき電子タバコカートリッジを含む3万3681箱の電子タバコ関連製品を差し押さえたという。

TikTokはTechCrunchがこの記事に記してきたような行為がTikTokのガイドラインやポリシーに違反していると追認したが、ポリシーがあるのにそれを実践できていない理由については説明しなかった。

TikTokの広報担当者はTechCrunchに次のように語った。「私たちはTikTokコミュニティの安全性と健全性に対して責任があります。未成年者のタバコやドラックの保有、消費を誘発するもしくは描写するコンテンツは厳重に禁止しています。VAPE製品の販売促進に使用されていると確認できたアカウントは排除しますし、VAPE製品の広告は許可しません」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTokVAPEアメリカSNSFDA

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

話題の次世代写真SNS「Dispo」創業者デビッド・ドブリック氏インタビュー、完璧な世界から抜け出して今を楽しもう

【Japan編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説する「Off Topic」の投稿の転載だ。Off Topicでは、最新テックニュースの解説やスタートアップについてポッドキャストYouTubeも配信している。ぜひチェックしてみてほしい。

はじめに

米国時間2月12日あたりからシリコンバレーや米国のテック業界でバズり始めた次世代写真SNSアプリ「Dispo(ディスポ)」のベータ版だが、2月14日、日本からの大きな関心が集まりTestflightの利用可能人数である上限の1万人を超えてしまった。

今回は、Off Topicの宮武がDispoのCEOであるDaniel Liss(ダニエル・リス)氏とChief Fun OfficerのDavid Dobrik(デビッド・ドブリック)氏に直接Zoom上でDispoの創業物語、サービスが描いているカルチャー、そして日本に対しての思いについて話を伺った(Testflight版ではアプリのスクリーンショットの共有をしないようにユーザーにお願いしているが、今回は特別に許可を得てスクリーンショットを共有している)。

デビッド・ドブリックとは何者か?

Dispoを理解するにはまず人気YouTuberでDispo創業者のデビッド・ドブリック氏を理解しなければいけない。彼は元々Vineで人気になり、上手にYouTubeへ移行し、Vlog形式で現代版のシットコムを作った。メインチャネルだけで1880万人の登録者がいるが、コロナの影響で2020年4月25日以降、YouTubeに投稿していない。デビッド氏の動画スタイルは外に行って友達の人生を見せることでもあるため、新型コロナ期間中は動画を出せないと発表している。

しかし、彼の魅力はYouTube動画の制作だけではない。Off Topicでもたびたび「クリエイターが次世代ブランドである」と発言しているが、デビッド氏はこの仮説の理想的な事例である。デビッド氏は、YouTube動画以外にもInstagram、TikTok、Twitch、ポッドキャストなどのSNS以外にも、グッズ販売、テレビ番組の司会者、香水ブランドの立ち上げ、パズル商品の開発、ピザ屋、そしてアプリ開発の展開をするというマルチビジネスを行うクリエイターだ。

そんな中、デビッド氏は2019年6月から使い捨てカメラだけで写真を撮るInstagramアカウントを立ち上げた。

画像クレジット:davidsdisposable Instagram

この使い捨てカメラを使う理由は、後ほどDispoのアプリ展開に繋がるストーリーだとデビッド氏は語る。

LAのパーティーで使った使い捨てカメラ、「この瞬間を楽しむこと」の重要性

新型コロナ前にLAの友達のパーティーによく参加していたデビッド氏(Vlog撮影のため)は、ある行動が頻繁に行われていることに気づいた。それは、パーティーの途中にInstagram好きの女の子たちが50個ぐらいの使い捨てカメラを持って、「写真をとりあえずたくさん撮って!明日の朝に集めに行くね」とパーティー参加者に伝えてた。みんな飲んでワイワイして、翌日の朝に女性たちがいろんな場所に置いてある使い捨てカメラを回収して、その写真を参加者全員に送る流れがあった。

デビッド氏はこの話をしているときに、特に強調したのはパーティー中の使い捨てカメラの使われ方だ。スマホのカメラだとどのフィルターを使うか、ライティングの調整、顔の角度などを気にする人たちが、使い捨てカメラだと確認できないので撮ってすぐにみんながワイワイしている現場に戻ってくる。これは、彼が言う「Living in the moment(この瞬間を生きる)」が本当に実現されている瞬間だった。この瞬間、友達との楽しい時間を満足できるのはすぐに映えた写真が撮れるスマホではなく、使い捨てカメラなんだと気づいた。

同時に、映画「The Hangover(ハングオーバー!)』のエンディングで主人公たちが1つのデジタルカメラの周りに集まって、その日の夜の写真を一緒に振り返るシーンがデビッド氏の頭に残っており、その結果、この非同期の写真現像コンセプトが生まれたという。

デビッド氏は仮説として、写真を撮った瞬間その写真を見て「Instant gratification(瞬間的な満足)」よりも「Delayed gratification(待ってからのお楽しみ)」の方が強い感情を抱けるのかと考えた。そして「今」を失わない、邪魔しないことが大事だと話した。そこで生まれたのがアプリ「Dispo」だ。

「Dispo Beta」リリースまでの道のりとチーム体制

2019年末にリリースした「David’s Disposables(後にDispo)」はソーシャルアプリではなく、使い捨てカメラアプリだった。UIとしては使い捨てカメラと同じで、小さいカメラレンズ、常に点灯するフラッシュ、そして自撮りをするためのフロントカメラへの切り替えが使えないようになっている。特定のフィルターしか使えず、写真は使い捨てカメラっぽく少しレトロで色合いが粗くなる設定になっている。さらに使い捨てカメラと同じく、その瞬間では写真を見れず、次の日の朝9時に写真ができ上がるのを待たなければいけない仕組みとなっている。

画像クレジット:Tubefilter

ローンチしてからすでに260万回ダウンロードされたアプリだったが、デビッド氏はアプリを進化させたいと考え、アプリをSNS化できるチームと資金調達を行うことを決めた。

2020年10月初旬に新しい体制と400万ドル(約4億2000万円)の資金調達をWall Street Journalなどで発表した。デビッド氏と彼のアシスタントのNatalie Mariduena(ナタリー・マリドゥエナ)氏を含めて6名体制のチームは、元VCファンドを立ち上げFabFitFunのCo-CEOのコンサルを行っていたDispo CEOのダニエル・リス氏、写真編集ツールのAdobe Lightroomの作ったデザイナーの1人であるBriana Hokanson(ブリアナ・ホカンソン)氏(通称、Bhoka)元Twitterの機械学習エンジニアのRegynald Augustin(レジーナルド・オーガスティン)氏、そして動画系のスタートアップで経験があるiOSエンジニアのマローン・ヘッジズ氏となる。デビッド氏は「Chief Fun Officer」として加わり、アシスタントのナタリー氏は「Treasurer」の役割だ。

チームの写真もDispoらしく、少しレトロなイヤーブックっぽい写真にした。

画像クレジット:Business Insider

そして、ショート動画SNSプラットフォームのByteの創業デザイナーであるMichael S.(マイケル)氏もジョイン。

Dispoの400万ドルの資金調達は、元Reddit創業者で現在、Seven Seven Sixファンドを運営しているAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏がリードした。その出資額を活用して既存のDispoアプリにソーシャル機能を追加した結果、今回の「Dispo Beta」が誕生した。

そのため現在、Appleのアプリストアには「Dispo」というアプリは存在するが、このアプリはソーシャル機能が搭載されていない以前のカメラアプリとなる。今回、シリコンバレーや日本で話題になったのは、ベータ版を簡単にユーザーに試してもらえる招待制の「Dispo Beta」というアプリとなる。

Dispo Betaの使い方

アプリを開くと元のバージョンと同じくカメラ機能の画面が表示される。Dispo Betaでは、アプリ外で撮った写真以外をアップロードすることはできず、Dispo Betaカメラで撮影した写真だけがプラットフォーム内で使うことができる。

写真を撮ると、Dispoのオリジナルアプリと同じく、次の日の朝9時まで待たなければいけない。


プロフィールを開くと、下のような画面となる。ここで重要なのは、写真を単体ではなくRoll(アルバム)で表示していること。Dispoのダニエル氏とデビッド氏いわく、何かしらのテーマやイベントをRollとしてグルーピングして、そのテーマやイベントに参加している仲間たちを特定のRollに入れて、お互いRollに写真を追加する「共同アルバム機能」がRollとなるという。

このRoll機能は、Dispo Betaの最も象徴的な機能だ。Rollsを作った人がRollのモデレーターとなり、アルバムに参加している人や写真を取り除くことができる。Public(公開)Rollの場合は参加しているメンバーは誰でも他の人にそのRollに参加する招待を送ることができる。Private Rollの場合は。Rollを作った本人のみが招待を送ることができる。

Rollは、デビッド氏がLAのパーティーや「ハングオーバー!」のエンディングをアプリで再現しようとしている機能だ。友達同士が1つのイベントに対していろいろな角度や思い出を投稿し、それをみんな次の日の朝9時まで待って、同時にすべての写真を見ることができる。離れていても一緒の時間帯で写真を見るということは、今までにない強い体験でもあり、当事者全員を同じ時間軸とタイムラインに合わせる役割を果たしている。全員で一斉に開くからこそ、ダニエル氏とデビッド氏はこの瞬間を「クリスマスプレゼントを開ける時」に似ていると発言している。

さらにRoll内には。ソーシャル機能がある。それが「Scoreboard(スコアボード)」。スコアボードでは、各Rollのスコアボードで誰が最も写真を撮ったのかがわかる。


そのほかのRollについての質問や招待枠についての質問は、こちらのスレッドをご覧いただきたい。

イースターエッグが隠されてる楽しいUI/UX

このように、Dispoは「今、この瞬間を生きる想い」と「楽しく、良い人であること」を抱えながら「ある程度のスピードを持って開発する」という3つが同社のモットーとなっている。

画像クレジット:Dispo Notion

特に最初の棒線が引いてある2つ、「Don’t be evil」と「Move fast and break things」はGoogleとFacebookのモットーであり、Dispoは今までの「硬い、魂のない」大手企業とは真逆の楽しいUI/UXの設計を考えている。実際にDispoのアプリを見ると、いろいろな小さな評価されるべきUIやイースターエッグが隠されている。

まずはDispo Betaアプリを立ち上げた時のこのアニメーション。

また便利な機能として、自分のプロフィール概要欄に「Twitter」や「Instagram」の後にユーザー名を入れるだけでDispo Betaが自動的にアカウントへリンクしてくれるというものもある。


さらに、まだ知られていない機能もある。上記写真の「 」はSnapchat内で連続で特定の友達とSnapを送り合う機能と似ているとダニエル氏は話すが、どう計算されているかは教えてくれなかった。すべてのアイコンや機能がわからないのがアプリのおもしろさでもあるという。

Off Topicとして一番気に入ったイースターエッグは、アプリの設定画面を開くと「Baby Animals」というタブがあり、それをタップすると癒される、かわいい動物の写真が待ち構えているというものだ。


まだ見つけられていない機能やイースターエッグが隠されているとダニエル氏は言う。それを見つける楽しみも含めて、Dispo Betaは今までとは違う、若手層に合ったポジティブなメッセージやサプライズを組み込んだアプリ設計をしている。

日本市場への思いとリスペクト

ダニエル氏とデビッド氏に聞くと、アプリデザインへのこだわりは日本を参考にしているとのこと。デビッド氏は元々富士フイルムのカメラを愛用していることもあって、昔から日本が好きだという。オンボーディングで評判の高かったアニメーション自体も日本のモノやデザインからインスピレーションを受けたとダニエル氏は語る。

日本に対するリスペクトがあったものの、今回の日本からの需要にはかなりびっくりしたと2人とも話していた。LA時間の朝1時から2時の間に大量の日本ユーザーが入ってきてビックリした、と。ただ、それは非常にうれしいもので、今後も日本のユーザーがアプリをどう使うか気にしているという。2人は、日本は文化、デザイン、そしてSNSの力が強いと認識しているため、日本ユーザーへの期待値は高いとのことだ。

Off Topicからの感想

ダニエル氏は他社との比較はしたくないと語っていたが、個人的にはDispo Betaは今のZ世代とミレニアル世代にピッタリなサービスに見える。Instagram美学が求める理想的な世界からバーンアウトしているミレニアル世代に対して、少し昔を思い浮かばせるような使い捨てカメラを提供することによって、Dispo Betaはより自分らしい表現の仕方、友達とのプライベートな時間(世の中からの評価を受けなくていい)、そしてノスタルジアが組み込まれたアプリになっている。

Z世代では、「完璧な世界」を壊す動きがすでにTikTokやYouTube上で行われている。TikTokは変わった自分を表現しバズれるプラットフォームであり、YouTubeではスッピンでリアルな自分を見せるEmma Chamberlain(エマ・チェンバレン)氏が流行っているのは、このトレンドを証明している。だからこそ、Off TopicではDispo Betaのようなサービスを「次世代版Instagram」と呼んでもいいのかと感じる。

フェイク、ありえない映え、フォロワー集めではなく、友達や知り合いと一緒に何か1つの体験やイベントに没頭しながら、後で一緒に思い出を振り返るアプリこそ今流のSNS。プライベートとパブリックをうまく組み合わせて、リアルな自分をポジティブな面で見せられる。Dispo Betaはまだ新しいアプリだからこそいろいろなユースケースが生まれる。元々予想されていた何かのイベントや家族ディナーでの写真をまとめたRollもあれば、学生同士が学校のプロジェクトのメモを集めるユースケースもある。ダニエル氏いわく、インターンの採用もDispo Betaで決まったらしい。

Dispo Betaにはまだたくさんの課題があり、これからどうスケールするか、どう進化するかは定かではない。ソーシャルグラフやディスカバリー機能もまだ改善できるポイントではあるし、同じフィルターがどこまで流行るのかは疑問点としてある。ただ、新型コロナ後でも十分伸びることができる、ミレニアル世代とZ世代にフィットするアプリであることは間違いない。SNS上で大量のコンテンツを目にする中、今、この瞬間を楽しむことをプッシュするDispo Betaは特にZ世代の思いに響くはず。そしてDispo Betaは、何よりVine、YouTube、TikTok、Twitchなど数々のSNSプラットフォームを理解したZ世代のデビッド・ドブリック流のアプリである。彼は過去2〜3年ほど、Z世代の中で好きなオンラインのパーソナリティーの調査をすると、必ず1位になる人でもある。

画像クレジット:Piper Sandler

Off Topicは、今後もDispo Betaがどのように使われて、どう成長するかをウォッチしていきたいと想う。

最後に

ダニエルさん、デビッド氏、本当にインタビューさせていただき、ありがとうございます。サービスが進化するのを楽しみにしています!

Fortune favors the brave.

Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikikusano)

カテゴリー:ネットサービス
タグ:コラムDispo BetaSNS

(文:Tetsuro / @tmiyatake1、Miki / @mikikusano

今週の記事ランキング(2021.2.7〜2.11)

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「ヘッドレス」eコマースプラットフォームFabricが早くもシリーズAで約45億円調達

FabricはGNCやABC Carpet、Homeなどの企業にeコマース機能を提供している。同社はこのほど、シリーズAで4300万ドル(約45億円)を調達した。

Fabricはこの発表からわずか4カ月前に、950万ドル(約9億9000万円)のシードラウンドを発表している。CEOのFaisal Masud(ファイサル・マスウド)氏によると、ここまで早く資金を調達するつもりはなかったが、成長と投資家の関心を見るかぎり「成長を遅らせるよりは、今行けるところまで行く」という積極路線を選ばざるをえなかったという。

というわけで、本誌のこの記事もある。ラウンドをリードしたのはNorwest Venture Partnersで、NorwestのScott Beechuk(スコット・ビーチク)氏がFabricの取締役会に加わる。他にRedpoint VenturesとSierra Venturesも投資に参加した。

ビーチク氏の説明によると「Fabricはドラッグ&ドロップで簡単に構成できて、しかもリッチでモダンな顧客体験を大きな開発チームがなくても作れる唯一のヘッドレスコマースプラットフォームだ。しかし最も重要なのは、CEOのファイサル(・マスウド)氏と共同創業者のRyan Bartley(ライアン・バートリー)氏が、AmazonやeBay、Staples、Grouponなどで経験を積んだeコマースの優秀なベテランであることだ。彼らは顧客の気持ちがよくわかり、既存のプロダクトよりもはるかに優れたプロダクトで、eコマースの市場を変革することができる」。

eコマースはパンデミックの間に急成長し、ネットショップを持たない「ヘッドレス」なプラットフォームも増えた。マスウド氏のブログで説明されているが、ヘッドレスではショッピング体験のフロントエンド(ネット店舗)とバックエンド(ショップの経営)が別になる。

しかしマスウド氏によると「今日の市場ではギャップがまだ大きい」という。D2Cであっても、B2Bであっても、特に大きな成長ブランドをサポートするのが難しい、とマスウド氏は語る。

画像クレジット:Fabric

「よく言うことだが、私たちを高速道路だとすると、Shopify PlusはオンランプでSalesforce Commerce Cloudがオフランプとなる。つまりFabricのサービスが合う企業は『Shopify Plusという服は小さすぎてもう合わないが、Salesforce Commerce Cloudはまだ贅沢すぎる』というレベルの企業となる」とマスウド氏はいう。

そんな顧客にサービスを提供するためにFabricには、既存のeコマースツールと統合して使うアプリケーションが32ある。それらのアプリケーションは、顧客体験やプロダクトの情報、注文の管理など、さまざまなタスクを引き受ける。

マスウド氏の主張によると、ヘッドレスのeコマースプラットフォームを自称しているプロダクトの多くは、粗末な作りのサイトであるため、ヘッドレスと自称しているだけだという。

「それらが作られたのは2007年ごろで、柔軟性、自由度がなく、モジュール構造になってない」とマスウド氏はいう。そんな古いプラットフォームに大きな顧客を乗せようとすると工事には18カ月かかるが、Fabricなら数週間で済むという。

また同社によると、顧客はAmazonなど既存のマーケットプレースに出店していてもよいという。しかし以前、AmazonベーシックとAmazonウェアハウスのディレクターを務めていたマスウド氏によると、彼らだって独自に差別化されたショッピング体験を構築した方がいいし、顧客との直接的な関係を築くべきだという。

「私はAmazonベーシック作りましたが、Fabricはそれぞれの顧客のためのAmazonベーシックです。だからこそ、しっかりと差別化してほしいし、自分のマーケットプレイスとしての道を進み、顧客との直接的なビジネスを築いてほしい」とマスウド氏は語る。

Fabricは今回の資金で、営業とマーケティングのチームを拡大し、プロダクトの改良も継続したいという。現在、マスウド氏は大企業や小企業にはあまり関心がなく、むしろ「副操縦士のようなアプリケーションを提供して成長を一層支援できる」ような中規模の企業に関心があり、オーダーのロジスティクスやフルフィルメントの部分を補強するアプリケーションを提供などを考えているという。

関連記事:Amazon出品よりも高速で優れた自社ECサイトで勝負したいブランドを支援するShogunが約37億円を調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Fabric資金調達eコマース

画像クレジット:Christina Reichl Photography/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

今週の記事ランキング(2021.1.31〜2.4)

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モバイルファーストの住宅ローンサービスプラットフォームValonが約52.5億円調達

あなたが住宅ローンを申し込んだことがあるなら、それが最も苦痛をともなう手続きの1つであることは知っているはずだ。ローンの間、遅延することなく支払いし、顧客サービスに対応することはいずれもピクニックのようなものではない。

なのでこのプロセスをより簡単なものに、そしてデジタル化して透明性のあるものにするという目標の下に、この分野に大金が注ぎ込まれるのは驚きではない。

そのためにテックを駆使した住宅ローンサービスのValon Mortgage(バロン・モーゲッジ)は米国時間2月2日にシリーズAラウンドで5000万ドル(約52億5000万円)を調達したと発表した。今日の基準においてこのステージでの規模としては大きい。

以前Peach Streetという社名だったニューヨーク拠点のValonの本ラウンドはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がリードした。既存投資家の中からJefferies Financial Group、Fortress Investment Group LLC傘下のNew Residential Investment Corporation 、166 2nd LLC(WeWorkの共同創業者Adam Neumann[アダム・ニューマン]氏のファミリーオフィス)もラウンドに参加した。

Valonはこれまでに連続起業家Kevin Ryan(ケビン・ライアン)氏のAlley Corp、Soros、Kairos、Zigg Capitalといったシード投資家から320万ドル(約3億4000万円)を調達していている。

Andrew Wang(アンドリュー・ワン)氏、Eric Chiang(エリック・チャン)氏、Jon Hsu(ジョン・スー)氏は、米国の住宅ローンの半分以上を支配している「最大のローンサービスソフトウェア企業」による「マーケットの寡占」なるものを打破しようと、2019年6月にValonを創業した。

「我々は、2008年に匹敵する住宅ローン差し押さえ危機の境界線にいます。そしてローンの支払いに苦しんでいる住宅所有者の大半は、自身が持つ選択肢に気づいていません」とValonのCEOであるワン氏は話した。「この締め付けは過去10年で250%近くのサービスコストアップにつながりました。そして手数料は直接借り手に跳ね返ってきます」。

資金調達と時期を同じくして、 Valonは最近、Fannie Mae(ファニーメイ、連邦住宅抵当公庫)から政府支援の住宅ローン扱いの許可を受けた(知らない人のために説明すると、ローンの提供は貸し手に代わって支払いを回収するようなことを意味する)。ワン氏によると、許可はValonが引き続き急成長するのに貢献する。

「1年で契約ゼロから100億ドル(約1兆500億円)の住宅ローンを扱うまでに成長しました」とワン氏はTechCrunchに話した。

Valonは49州でサービスを提供しており、2021年ニュヨークにも進出する。

住宅ローンサービス業界の元投資家として、ワン氏は他のローン回収業者が提供する「サービスの欠如」が不満だった。そして同氏はValonを立ち上げるために、Google(グーグル)、Twilio(トゥイリオ)でプロダクトとエンジニアリングの経験があったチャン氏、スー氏とチームを組んだ。

Valonのクラウドネイティブのプラットフォームは借り手志向のエクスペリエンスと表するものを提供するのが目的だ。貸し手もまた借り手のパフォーマンスを閲覧したりトランザクションデータを照合したりするのにリアルタイムのAPIデータフィードへのアクセスを要望できる。

借り手に金を貸すローン原債権者と異なり、ローン回収業者は15年から30年の間となるローン期間について借り手と話し合う。

「貸し手の代理としてのローン回収、そしてストレスのかかるときに借り手へのサポートとガイダンスの提供のようなものも含まれます」とワン氏は述べた。「従来の住宅ローン回収業者は時代遅れのテクノロジーを使っていて、借り手にそれほど良くないサービスを提供しています。Valonは住宅所有者に透明性とフルサービス能力を提供することでその点を大幅に変えようとしています」。

同社のテクノロジーは全プロセスの垂直統合によりローンサービスコストを最大50%削減する可能性がある、と同社は主張する。同社のプラットフォームは、暗号のデフォルトや侵入感知などの機能を備えるなどセキュリティを「第一原則」としてGoogle Cloud上で構築されている、と同社は述べた。

何百万という米国人が2020年に新型コロナウイルスパンデミックの経済負担のために住宅ローン支払いを停止した。これは支払猶予の要望と抵当物件差し押さえの一時停止につながった。

「パンデミックはマーケットにあるストレスを際立たせ、新時代のローン回収業者の必要性を大幅に加速させました」とワン氏は述べた。「住宅所有者はかなりの経済ストレスに直面し、正しい選択と既存サービスからのサポートを得るのに苦労しました。既存サービスの時代遅れのテクノロジーとリクエスト処理能力のなさのためです。2021年に支払猶予と差し押さえ免除が終わると、ニーズはより差し迫ったものになります」。

2020年半ばにValonの役員会に加わったAndreessen HorowitzのゼネラルパートナーであるAngela Strange(アンジェラ・ストランジ)氏は、Valonがモバイルファーストのローン回収サービスをゼロから立ち上げたと話す。

「住宅所有者は騒々しいウェブサイト、コールセンター、そして往々にして誤情報に直面します。Valonはクリアで透明性のある法規制に則った情報を提供できるソフトウェア駆動の信頼できるアドバイザーを抱えています。電話をかける必要はありません」と同氏は声明文で述べた。

ファニーメイの許可は、Valonが構築したプラットフォームにお墨付きを与えた、と同氏は付け加えた。

Valonは調達した資金を従業員の増加にあて、年末までに3倍の100人にするつもりだ。また、より多くのサービシング権利(MSR)契約を獲得するのにも資金を注入する。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Valon Mortgage住宅ローン資金調達

画像クレジット:Valon Mortgage

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi)

2021年は誰もが「15分間の富」を得る

2月2日、悪名高きRedditの標的にされた株式と商品相場が大打撃を受け、GameStop(ゲームストップ)は52.7%、AMC Entertainmentは42.7%暴落し、銀相場もひっくり返った。大虐殺をその目で見たい人のために、CNBCが長いリストを掲載している。

常に起きそうなことが起きるというこの驚き。

WallStreetBetsがカルト集団から一夜にしてインターネット・ヒーローになって多くの新人トレーダーが呼び込まれ(株取引アプリのPublicが急成長し、Robinhoodはアプリストアのランキングでトップに躍り出た)、プロの投資家たちと戦うのを見るのは正直実に楽しいが、結果は必ずこうなる。必ず。

なぜか? それはRedditの大勢のトレーダーが持ち上げると決めた会社は、つまるところ価格弾力性以外に選ばれた理由がないからだ。GameStopが選ばれたのは、トレーダーたちが空売りを懲らしめられると思ったからであり、ビデオゲーム配信に革命を起こすからではない。Steamが正確に80億年前にやったような。

関連記事:
GameStop, meme stocks, and the revenge of the retail trader

わかりやすいように比較してみよう。

Tesla株は今日(2月2日)3.7%上がり、米国株式市場全体も同様だ。Teslaが上がったのは公正に評価されたからだけではなく、少なくともこの会社は成長していて、利益を上げ、将来の見通しについて説得力ある主張をもっているからだ。永続的なものに基づくアイデアは容易に揺るがない。

Teslaの状況をGameStopと比較してみよう。ほとんど関連がない。

物理的ゲームを売る会社には下落する余地がまだまだある。パンデミックに苦しむ映画館チェーンも同様だ。しかし、伝統にとらわれないトレーダーは十分好調だ。Redditの代表的トレーダーであるDeepFuckingValueは、きのうも2800%プラスだった。たぶん今日はもっと下がっているだろう、彼が売り出さなければ。

心配なのは、きのうDeepFuckingValueが壮大な取引で世界を変えたあとトレーダーを続けると約束していた愚か者たちが、全員今日焼き払われることだ。

あの連中はたぶん2800%プラスではなかっただろう。

Redditトレードで大損する人たちのほとんどは、ふつうの人たちだ。私の友達やあなたの兄弟。一方プロフェッショナルは乱高下に乗じて金を稼ぐ。

それが世の中のしくみだ。重力は現実であり、スマホ片手に鏡に向かって何回stonksと泣き叫んでも変わらないので、愚か者を持ち上げたままにしておくことは難しい。

2021年、私たちが「15分間の名声」を得ることはたぶんないだろう。世の中にはあまりにも多くのソーシャルプラットフォームが存在し、15分間の名声という〈概念〉そのものが時代遅れだ。集められる視聴者数よりも枠の方が多い。そうではなく、ふつうの人が本当に欲しいのは15分間の富だと思う。安全と安心、そして近代社会が少数の金持ちのために用意している成功を手にしたフィーリングだ。

それは株式市場が先週多くの人々に与えたものだ。そして今週それを奪っていく。

15分間の名声という概念はアンディ・ウォーホルが元だと一般に信じられている。しかし本日、われらがRon Miller記者が新たなバリエーションを提唱し、親切にも私がこの記事で使うことを許してくれた。

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画像クレジット:Ancella Simoes / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロゴなどのデザイナーとデザインをDIYで選べるDesignCrowdとBrandCrowdがIPO目前

DesignCrowdが今日(米国時間2/1)、IPO前の資金調達として1000万豪ドル(米ドルで約760万ドル)を獲得した。この資金は新規雇用と製品開発に使われ、同社のDIYプラットホームBrandCrowdの成長加速を目標とする。

この新たな投資は、DesignCrowdがオーストラリア証券取引所における近い将来のIPOを準備しているときに訪れた。主な投資家はPerennial Value Management、Alium Capital、Ellerston Capital、Regal Funds Management、およびCVCで、以前からの投資家であるStarfish VenturesとAirTree Venturesも参加した。これでDesignCrowdの調達総額は2200万豪ドルあまりとなる(約1700万USD)。

2007年にオーストラリアのシドニーで創業したDesignCrowdは、デザインをクラウドソーシングするプラットホームとして評判になった。ユーザーは、世界中のデザイナーからデザインの案をもらえる。BrandCrowdはDesignCrowdのクラウドソーシングでマーケットプレースのようなモデルを補完するもので、ユーザーベースを広げ、99designsやFiverrのようなデザイナーを見つけるための他のサイトとの差別化を狙っている。

大小さまざまな企業がデザイナーを見つけて、ロゴなどを作ってもらえるサイトには、Design HillやCanva、Tailor Brandsなどいろいろあるが、BrandCrowdにはDesignCrowd傘下の80万以上のデザイナーにアクセスできる有利性がある。そのライブラリから好きなものを選んでもよい、と共同創業者でCEOのAlec Lynch氏は言っている。BrandCrowdで好きなデザインを見つけたら、使用料を払う。そうすると、そのデザインはライブラリから削除される。

関連記事: DesignCrowd Raises $6M To Grow Its Creative Marketplace In The West(未訳)

BrandCrowdでは、ロゴなどのデザインをダウンロードするのに一回かぎりの料金を払うだけでなく、月額ないし年額の料金でサブスクライブもできる。Lynch氏によると、両方のプラットホーム(DesignCrowdとBrandCrowd)を使っているユーザーが多いそうだ。

Lynch氏はこう語る: 「たとえば、小企業がDesignCrowdのデザイナーにロゴのデザインをもらったら、そのロゴをBrandCrowdのDIYツールを使って、名刺やInstagramのポスト、メールのシグネチャなど、いろんなものに応用できる。ロゴのエディターツールもあるから、デザインに変更を加えることもできる」。

企業としてのDesignCrowdの年商は2020年に前年比で54%伸びたが、それは主にBrandCrowdのおかげだ。同社によると、BrandCrowdの登録ユーザー数は過去12か月で500万を超えた。その売上の半分以上は米国からだ。

新型コロナウイルスで2020年の3月と4月には逆風を経験したが、しかしLynch氏によると、オンラインデザインに対するグローバルな需要はその後回復して増加傾向に転じた。

それについて、氏は次のように述べている: 「あくまでも仮説だが、パンデミックによって2020年の後半には起業する人が増えて、その結果、ロゴなどのデザインの需要も増えたのだろう。また、起業ブームと並ぶもう一つのブームは、デザインをデザイナーに実際に会ってオフラインで依頼する人が減り、オンラインで探す人や企業が増えたことだろう」。

(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット: DesignCrowd

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

今週の記事ランキング(2021.1.24〜1.28)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「人気の次世代音声SNS「Clubhouse」がクリエイターへの支払い計画を発表、Andreessen Horowitz主導の新ラウンド準備中」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

Shopifyを利用するオンラインショップを助ける専門家のマーケットプレイスStoretaskerがプロダクトを一新

StoretaskerはShopifyのマーチャントをデベロッパーやビジネスの成長を助けるエキスパートと結びつけることに焦点を当てたオンラインマーケットプレイスだ。

このプロダクトは、以前Loremとして知られていたスタートアップが所有している。協同創業者でCOOのCharlie Fogarty(チャーリー・フォガティ)氏によると、Lorem本来のミッションは、中小企業とデベロッパをつなぐことだったという。「Shopifyとeコマースが我々の主な顧客であることに気づきました。そのため私たちにとって主要な競合相手であるStoretaskerを買収し、2つのビジネスを合併し、社名をStoretaskerにしました」。

この買収(Storetaskerのプロダクトとエキスパートネットワークが主でチームは含まれていなかった)は実際には2020年に行われており、フォガティ氏によると「我々はこの10カ月、基本的にプロダクトを一から作り直してきました。私たちは何年もかけて学んできたことをリブランド化し、新製品やエンド・ツー・エンドの新しい顧客体験に結びつけました」という。

しかしメインの事業は以前と同じだ。ShopifyのマーチャントがStoretaskerを訪れて簡単な言葉で彼らのプロジェクトを説明すると、Storetaskerは数時間以内に同社のネットワークにいる専門家の1人とマッチングさせる。その後は顧客は、専門家と直接仕事をすることができる。

Storetaskerはこれまで、Shopify上の30000あまりのお店が利用している。それらの中には、Boll & Branch、Chubbies、Aisle、Alpha Industries、Truff Hot Sauce、Branch Furnitureなどの有名店もある。Fogarty氏によると、プロジェクトの平均サイズは工賃が300ドルぐらいで、Shopifyのストアにカスタムデザインやユニークな機能を加えるものが多い。

StoretaskerはすでにShopifyのBoll&Branch、Chubbies、Aisle、Alpha Industries、Truff Hot Sauce、Branch Furnitureといった3万以上のブランドで利用されている。フォガティ氏によると、プロジェクトの平均規模はわずか300ドル(約3万1400円)で、通常はShopifyのストアにカスタムデザインやユニークな機能を追加する必要があるという。

画像クレジット:Storetasker

UpworkやFiverrのような一般的なマーケットプレイスを利用してフリーランスの開発者を見つけることもできるが、Storetaskerはその才能を吟味するために5000回以上のインタビューを行い、それぞれの顧客に適した専門家を選び出している。フォガティ氏によると、他のプラットフォームでは「未審査の人材をふるいにかけなければならない【略】採用の負担は顧客にかかる」という。

さらにフォガティ氏は、顧客はStoretaskerを開発支援だけでなく、コンバージョンや「電子商取引のあらゆる側面」の専門家を見つけるためにも使うことができると指摘している。

買収後のプロダクト刷新と並んでStoretaskerは2020年に、FlybridgeやFounder Collective、FJ LabsからシリーズAで320万ドル(約3億3000万円)を調達している。フォガティ氏によると、成長の余地はとても大きく、Shopifyのエコシステムだけで手一杯だそうだとのこと。今やShopifyを利用してeコマースをやっているストアは100万店以上あり、その総売上は2000億ドル(約20兆9000億円)に達している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Storetasker資金調達

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Tula Micは、USB-Cマイクとしても使用できるパワフルなポータブルレコーダーだ

Tula(トゥーラ)は、音声取り込みのための使いやすいハードウェアとソフトウェアを開発することを目的に設立された新しい会社だ。昨年行われたクラウドファンディングの成功を受けて、最初の製品であるTula Mic(トゥーラ・マイク)が出荷された。Tula Micは、パソコンやモバイル機器用のUSB-Cマイクであると同時に、ストレージを内蔵した専用レコーダーでもあり、最大14時間の連続使用が可能な専用バッテリーを搭載している。それは魅力的な価格帯で多くのユーザーのニーズに適合できる、力強い初製品だ。

基本

Tula Micは小型の製品だ。一組のトランプ程度の体積や面積であることを考えると、まさに「ハンドヘルド」と表現するのがふさわしい。物理的なデザインとしては、上部にマイクユニット、両側にコントロールボタン、そしてハードの背面中央にUSB-C充電ポートを備えている。また、左上側面には標準の3.5mmポートジャック装備していて、モニターや再生用のヘッドフォンだけでなく、ラベリアマイク(ピンマイク)の入力にも対応しており、Tulaを効果的に身に付ける機材にすることができる。

Tula Micの、録音ユニットが入っている上部の網目部分のすぐ下には、2つのライトが付いている。それらはゲイン/ピーキングインジケーターと録音インジケーターで、シンプルだがわかりやすいビジュアルフィードバックが提供される。内蔵メモリは8GBで、内蔵の充電式バッテリーは最大14時間の連続録音を提供する。内蔵される録音ユニットは1つではなく2つだ。1つはカーディオイド型の単一指向性で、マイクに向かって喋る人の声を捕らえる。そしてもう1つは無指向性で室内の音を捕らえるもので、イベントやインタビューの使用に最適だ。

Tula Micにはスタンドが付属しており、持ち運びに便利なように折り畳んで本体にマグネットで固定することができる。また、取り外しも可能で、標準的なマイクロフォンスタンド向けのネジ式アタッチメントに交換することができる。シンプルでエレガントなデザインは、アクティブな使用には非常に便利だが、独自のマウント方法を採用しているため、アクセサリーを万一紛失してしまった場合には、例えば標準的な三脚用ネジ穴を使っている場合のように一般的なものを使うことはできない。

デザインと性能

Tula Micのデザインからは間違いなくレトロな美学が伝わってくる、平べったく楕円形の側面形状はすぐに目を引き、一目でそれと分かるようになっている。独特の外見は、手によるホールド性にも優れているが、スタンドモードで使用すると、ユーザーが使用時にどのようにマイクを扱うべきかがすぐにわかる。フリップダウン式のスタンドはエレガントで、重量感のある金属製の構造によって、マイクをしっかりと固定する。

Tula Mic の左右の側面にあるコントロールボタンにはそれぞれラベルが付けられているが、それぞれが何をするのものかを覚えるまでには、付属のユーザーガイドを何度も参照しなければならなかった。アイコンは役に立つが、必ずしもすぐに直感的に使えるとは限らない。だが、タッチ式のパネルや入力スクリーンではなく物理的なコントロールがあるのはよいことだ。

Tula Micの性能で特筆すべき最も重要な点は、有線USB-Cでもスタンドアロンのレコーダーモードでも、素晴らしい音を実現できるということだ。また、無指向性と単一指向性の集音パターンを切り替えることができることから、1本で多様な用途に使えるという意味でもとても有用だ。ポッドキャスティング、授業や講義の録音、対面インタビューの録音などで、変わらず簡単に高品質の結果を得ることができる。

そして、Tulaにはローカルノイズキャンセルアルゴリズムが内蔵されていて、室内の背景音を少し録音するだけで、自動的に続く録音からその音を消去してくれる。これは非常に扱いやすく驚くほど効果的な機能で、後に録音したものをOtter.ai(オッターAI)のような文字起しサービスに与える際に大きなメリットを発揮する。

まとめ

Tula Micの199ドル(2万円強)という価格は、市場をリードする USB マイクの多くと似たような価格設定だ。それがフル機能を備えたスタンドアロンのデジタルレコーダーでもあるという事実は、別途デジタルレコーダーを買う場合には同じくらいの支払いが必要であることを考えると、コンパクトなパッケージで柔軟なポータブル録音の手段を探しているひとにとっては明らかな選択肢となる。

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(翻訳:sako)

Facebook Newsが英国でサービスを開始、キュレーションニュースポータルを初めて国際市場へ展開

英国が、大手テック企業をどのように規制すべきかの準備を整える中、Facebook(フェイスブック)は、英国の一般市民にメディアを提示する際の役割や、同国のメディア業界との連携方法について、大きなステップアップをとろうとしている。

英国時間1月25日、Facebookが、専用キュレーションニュースポータルのFacebook News(フェイスブック・ニュース)を英国でローンチした。米国以外では初のこととなるが、米国版と同様にAndroidまたはiOSのアプリメニューからアクセスすることになる。

ポータルは、多数のローカルメディアや、Channel 4 News(チャンネル4ニュース)、Daily Mail Group(デイリー・メール)、DC Thomson(DCトムソン)、Financial Times(ファイナンシャル・タイムズ)、Sky News(スカイ・ニュース)、Telegraph Media Group(テレグラフ・メディア)などの全国メディアを含む形でローンチする。昨年の早い時期に発表されたパートナーリストには、The Economist(エコノミスト)、The Guardian(ガーディアン)、The Independent(インデペンデント)、 STV、そしてArchant(アーチャント)、Iliffe(イリフ)、JPI Media(JPIメディア)、 Midlands News Association(ミッドランド・ニュース・アソシエーション) 、Reach(リーチ)といったローカルニュースサイト、そしてGQ、Cosmopolitan(コスモポリタン)、Glamour(グラマー)、Vogue(ヴォーグ)その他の「ライフスタイル」タイトルが含まれていた。

これも米国版と同様に、ユーザーにはその日のキュレーショントップストーリーリスト、すでにユーザーがフォローしているニュースソースや興味のあるニュースソースに基くパーソナライズされたストーリーのリスト(まだ自分がフォローしていないソースからのものも含まれる)、スポーツ、エンターテイメント、健康、科学、技術のための専用ニュースセクションが提供される。ユーザーは、ニュースを読みたいときや隠したい場合を指示することで、アルゴリズムをより良く訓練することができる。

Facebookは、Newsに表示されるストーリーをキュレーションするために、Upday(アップデイ)というサービスと連携することを認めた。「このプロダクトが提供するのは、キュレーションされたトップストーリーと、アルゴリズムによって選ばれたパーソナライズされたリンクのミックスです」と広報担当者は述べている。 Upday は、ドイツの出版社 Axel Springer(アクセル・スプリンガー)とSamsung(サムスン)による共同事業のようだ。Samsungはその事業によるニュースサービスを、自社のスマートフォンの上でも提供している

FacebookとUpdayの間に取り交わされた財務条件がどのようなものであるかははっきりしない。だが伝えられるところでは、FacebookがNewsに出版社のコンテンツを配置するためにライセンスする額は合計数千万ポンド(数十億円)に及ぶということで、最大の出版社が契約によって得る額は、1年で数百万ポンド(数億円)にも及ぶという。こうした数字は、Facebookが世界的な広告収入で稼いでいる額(四半期ごとに数百億ドル(数兆円)に達する)には及ばないかもしれないが、苦境にあえぐ英国のメディア業界にとってはかなりの金額となる。

人びとは長い間、Facebookや他のソーシャルサイトのニュースフィードを使用してニュースを読みながら、友人やグループ、フォローしているページからの投稿を閲覧してきた。Facebook Newsが目指すのは、それを一歩進めて、その時々の最新ニュースを、モバイルアプリユーザーが、国内の何百もの出版物からのキュレーションリンクや注目ニュースを、一箇所で読むことができる場所として提供することだ。

ソーシャルメディアは、消費者にとっての主要なニュースソースであり続けているが、私たちが気付いているように、そうした目的のためには、非常に偏って欠陥のあるソースだ。

Facebookは、そうした文脈の中におけるFacebook Newsの意図は、ユーザーの興味に合わせた調整を行いながらも、個人のニュースフィードでたまたま出会う可能性のあるものを超えて、よりバランスのとれた専用ニュースミックスを人びとに提供することだと述べている。

Facebook Newsはまた、個人のニュースフィードに飽きてきた人たちのために、ビデオや、エンターテインメントコンテンツ、 メンタリングや就職活動、近隣型コミュニティリスティング、ピアツーピア販売といった多様化を進めてきたFacebookを、また別の形で助けることになるだろう。これからは、ユーザーがニュースを読むためにFacebookアプリを開いてくれるようになるのだ。

とはいえ、この機能の国際展開には長い時間がかかった。Facebook Newsの米国でのテスト運用が始まったのは1年以上前の2019年10月であり、全米のユーザーに展開されたのは昨年6月のことだった

米国版Facebook Newsが、どれ位の数のユーザーを集めているのかに関してはFacebookからのコメントは得られていない。ただ広報担当者によれば、それは「着実に増加している」とのことだ。

米国での最初の取り組みから今日の英国でのローンチまでに、なぜこのような長い期間が必要だったのかは明らかではないが、Facebookはこの市場で展開を行うためのライセンス契約の確保に加えて、さらに多くのことを行ってきた。

Facebookが欧州での規制当局の標的にされていることを考えると、出版社を「助ける」ためにデザインされているというメッセージが添えられた新しいニュースポータルの立ち上げは、新たな次元へと踏み込むものだ。規制当局は大規模なハイテク企業の社会的な影響を精査するための長期的な使命を負っている。英国の場合、その動きは、FacebookやGoogleのような企業が広告やメディアなどで果たす役割を再検討する、新しい「競争推進型」Digital Market Unit(デジタルマーケットユニット)の形を取りつつある。

こうした規制の動きが、どのようにFacebook Newsのようなサービスに影響するのか、あるいは収益や利用データの、ニュースパートナーとの共有にどのような影響を与えるのかは、まだわからない。

一方で、それはさらなるスケーリングのために猛スピードで進んでいる。Facebookは昨年、ブラジル、フランス、ドイツ、インドなどを含む、国際的なFacebook News拡大のための、長期的な計画を持っていることを認めている。最新のブログ記事では、Facebookの欧州ニュースパートナーシップディレクターのJesper Doub(ジェスパー・ダブ)氏が、Facebook Newsの次のローンチは、期日は未定であるものの、フランスとドイツであることを発表している。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch
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(翻訳:sako)

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