グーグルがトラッキングクッキー廃止を2023年後半まで延期

アドテックの巨人Google(グーグル)は、長らく計画していたサードパーティー製トラッキングクッキーの非推奨化の延期に傾いているようだ。

この計画は、Chromeのサードパーティー製クッキーを非推奨にするなど、オンラインマーケターや広告主がウェブユーザーを追跡することを困難にする長期的な取り組み発表した2019年にさかのぼる
2020年1月に同社は、2年以内に移行すると発表した。つまり、2022年までにということだ。

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TechCrunchが独自の情報源からの情報を確認するためにGoogleに連絡したところ、同社は英国時間6月24日午後17時(日本時間6月25日午前1時)に予定されているプライバシーサンドボックスの発表があることをTechCrunchに確認しました。

Googleの新しい公式スケジュールでは、2023年に実施されるという。

しかし大手企業の広報担当者は、直接の確認を避け「近日中に『アップデート』がある」と曖昧な表現をした。

担当者は「本日の発表で、プライバシーサンドボックスのアップデートについて、いくつかの情報を提供します」とも述べている。
Googleに対するプライバシーサンドボックスの実装を2023年に延期することの確認とそれに関連する声明をTechCrunchは求めたが、広報担当者は肯定的な回答(yep)をしたため、延期の可能性は高いと思われる。Googleがこの点に関して、どのように説明するかは、後に行われるプライバシーサンドボックスの時期発表でわかるだろう。

Googleは以前、2022年までにサードパーティーCookieのサポートを廃止するとしたが、当然ながらこのことは、プライバシーサンドボックスに関連する幅広いアドテックも導入する必要があるということを意味している。

2021年初めには、2022年のタイムラインにやや制限を設け、同年までにはいかなる変更もしないと1月には述べている

Googleにとっての問題は、その計画に対する規制当局の監視は強化されたことだ。これは、インターネットユーザーの追跡とターゲット設定の方法が大きく変わったことを受けて、アドテック業界から反トラスト法違反の苦情が寄せられたことを受けた措置となる。

欧州では、英国の競争・市場庁(CMA)が英国個人情報保護監督機関(ICO)と協力して、Googleが計画の競争とプライバシーへの影響を把握しようとしている。2021年6月初め、CMAはGoogleから提案されたコミットメントを受け入れる意向を表明しました。このコミットメントは、競争とプライバシーに適した方法でCookieの廃止を行うことができないと判断した場合、規制当局がCookieの廃止を阻止できるようにするというものだ。

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当時、TechCrunchはGoogleにCMAの関与が、プライバシーサンドボックスのスケジュールにどのような影響を与えるかを確認したが、同社はコメントを避けた。

ビッグテックに対する規制当局の監視が強化は、多くの影響をもたらす。最も明らかなのは、Googleのような巨大企業が「すばやく動き、破壊的に振る舞う」機会がなくなるということだ。

【更新】Googleは延期を確認し、ブログ記事でいわゆる「プライバシーサンドボックス」に関する英国の規制当局との取り組みにより、Chromeでトラッキングクッキーのサポートが段階的に廃止されるのは2023年後半になると述べた。

「私たちは今後もウェブコミュニティと協力して、広告測定、関連性の高い広告やコンテンツの配信、不正行為の検知など、主要な分野でよりプライベートなアプローチを構築していく予定です。現在、Chromeなどが30以上の提案を行っており、そのうち4つの提案はオリジントライアルで利用可能です」という。

「特にChromeについては、2022年後半までに主要な技術を導入し、開発者コミュニティがその導入を開始できるようにすることを目標としています。英国の競争・市場庁(CMA)との協議を経て、当社が提示したコミットメントに沿って、ChromeはサードパーティーCookieを2023年半ばから2023年末までの3カ月間で段階的に廃止する可能性があります」と述べている。

この延期により、アドテック業界は、トラッキングクッキー廃止後のオンライン領域に適応するための時間をより多く得ることになる。ただし、CMAがGoogleの大規模な再編成を許可した場合に限るが。

損失を被るのはインターネットユーザーだ。少なくとも今後数年間は第三者の追跡にさらされることになる(Chromeユーザーはそうなるが、他にもプライバシーに配慮したウェブブラウザはある)。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

スニーカーとストリートウェアの帝国「GOAT」がシリーズFで評価額が4103億円超に

スニーカーとストリートウェアの帝国GOAT(ゴート)が巨大な資金調達で評価額を倍増させた。

GOAT Groupは米国時間6月24日、シリーズFで1億9500万ドル(約216億円)を調達し、ファッション巨人の評価額が37億ドル(約4100億円)に達したことを発表した。ラウンドはPark West Asset Management、Franklin Templeton、Adage Capital Management、Ulysses Managementなど複数のヘッジファンドと未公開株式投資会社、およびT. Rowe Price Associatesが推薦したファンドと出資者がリードした。

GOATは、Amazon(アマゾン)の範囲外にあるファッション取引市場を精密に定義することで、ストリートウェアとスニーカーの幅広い消費者層に対するアピールを高めている。これでGOAT Groupの総調達金額は5億ドル(約554億円)近くになった。

このラウンドでは、2020年のシリーズEでGOAT Groupが到達した調達額の18億ドル(約1995億円)を2倍以上に増やした。他のマーケットプレイスと同じく、2020年GOATは購入、販売両方の利用者を増やし、スニーカー事業は対前年比で100%、新しいアパレル事業は対前年比500%成長した。

GOATは、同プラットフォームに約3000万人の「メンバー」と60万人の売り手がいることを発表した。プレスリリースで同社は、ピア・ツー・ピア・マーケットプレイスの売買規模が20億ドル(約2217億円)に達したと書いている。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルは検索広告で中国での売上増を狙う

Apple(アップル)の検索広告は米国では5年前に始まったが、今週から中国本土でも始まる。

Apple Search Adsと呼ばれるこの機能は、App Storeにおけるユーザーのキーワード検索に基づいて開発者が広告枠に入札できるというもので、Google(グーグル)の検索広告と同じ仕組みだ。JPMorganの推計によると、Appleの年間広告収入は2025年に110億ドル(約1兆2200億円)を超えるというが、検索広告事業が占める割合はわからない。

国際的なアプリの中国進出をサポートしているAppInChinaの発行者であるRich Bishop(リッチ・ビショップ)氏によると「中国における検索広告の立ち上げが遅れたのは、中国では広告事業に対して政府の規制があるためです。Appleはそれを迂回する方法を見つけたようですが、決済を外貨で行なうことと、検索タブの広告は提供できないという制限があります」という。

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Appleは、ユーザーがアプリによるデータトラッキングをオフにできるようにするなど、パーソナライズされた広告を抑制していますが、この動きは、第三者のデータに依存して広告を配信しているFacebook(フェイスブック)などのビジネスモデルを揺るがすことは必至だ。

これまで、中国はAppleにとって重要な市場だが、Huawei(ファーウェイ)といった地元企業の台頭により、iPhoneは同国におけるステータスシンボルとしての輝きを失いつつある。しかし、第1四半期には、Huaweiの売上が低迷したことやiPhone 12ファミリーの発売により、Appleのスマートフォン出荷台数は回復している。中国のApp Storeも、Appleにとって重要な収入源だ。

中国本土のユーザーに対して広告をターゲティングしたい開発者は、5ページのガイドラインでAppleが示している資格要件を満たさなければならない。広告主が取得する必要のある業界固有のライセンスが大量にあるため、AppInChinaのブログ記事では、外国企業が中国本土で広告を直接出稿することは実質的に不可能と述べている。

中国で検索広告に入札するには、政府の承認をすべて得ている地元のパートナーを見つける必要がある。

例えば中国に品物を輸入するアプリの要件は、インターネット上の付加価値事業を行なうための一般的なライセンスだけでなく、貿易や関税に関するさまざまな政府機関への登録が必要だ。AppInChinaによると、アプリを中国でリリースするだけでも、Appleはそういった許可を申請しなければならないかもしれない。以前のゲームアプリの取り締まりの例にも見られるように、Appleは今後も中国政府のルールを強制し続けるのだろう。

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SalesforceとAWSがパートナーシップの拡大を発表、さらなる双方向の統合を実現

Salesforce(セールスフォース)とAWSは、それぞれのカテゴリーで最も成功しているクラウド企業だ。ここ数年、2つの巨大なクラウド企業は発展的なパートナーシップを築いてきた。両社は米国時間6月23日、データの共有と2つのプラットフォームを横断するアプリケーションの構築を容易にするための、新たな統合機能の計画を発表した。

Salesforceのプラットフォーム担当EVP兼GMであるPatrick Stokes(パトリック・ストーク)氏は「両社はこれまでにも、2つのサービス間での安全な共有などの機能を提供するために協力してきましたが、 顧客からはさらに踏み込んだサービスを望む声が寄せられていました。本日の発表はその実現に向けた第一歩です」と話した。

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「(パートナーシップの初期段階は)本当に大成功でした。Salesforceの製品群とAmazon(アマゾン)の製品群の両方で、2つのソリューションがお互いにうまく補完し合うようにするため、顧客がどのようなことを実現したいのか、お互いから、そして共通の顧客から多くのことを学んでいます。そして、顧客からはさらなる要望が寄せられており、パートナーシップの次の段階に進めることをうれしく思っています」とストークス氏は説明した。

さらに「目標は、両社のプラットフォームを統合し、AmazonのサービスとSalesforceのプラットフォームのすべての力を融合させることです」と述べた。今回の機能は、それを実現するための次のステップになるかもしれない。

この機能には、プラットフォーム側とアプリケーション側の両方の開発者を支援するために両社が取り組んでいるいくつかの新機能が含まれている。まず、開発者は、AmazonのデータをSalesforce内で仮想化することができ、そのためのコーディングを手作業で行う必要がない。

「具体的には、Salesforceプラットフォーム内でAmazonのデータを仮想化します。S3バケットやAmazon RDSなど、何を扱っていても、データを仮想化して、Salesforceプラットフォーム上のネイティブデータと同じように表示させることができます」とストークス氏はいう。

同様に、Amazon上でアプリケーションを構築する開発者は、Salesforceのデータにアクセスし、それをAmazon上でネイティブに表示できるようになる。このために、2つのシステム間のコネクターを提供して、データがスムーズに流れるようにする必要があり、そのためには多くのコーディングが必要になる。

また、両社はイベント共有機能も発表しており、AmazonとSalesforceの両方の顧客が、両プラットフォームを横断するマイクロサービスベースのアプリケーションを簡単に構築できるようになる。

「SalesforceとAmazonのプラットフォームのサービスを横断するマイクロサービス指向のアーキテクチャーを、やはりコードを書くことなく開発することができます。そのために、すぐに使えるコネクターを開発しており、必要なイベントをクリック&ドラッグすることができます」。

また、アイデンティティおよびアクセス管理の観点から、ガイド付きのセットアップでプラットフォームにアクセスできるようにする計画も発表した。さらに両社は、Amazon ChimeコミュニケーションツールをService Cloudやその他のSalesforceサービスに組み込み、AWSの機械学習技術を利用してバーチャルコールセンターなどを構築するアプリケーションに取り組んでいる。

Amazonのグローバルマーケティング担当副社長であるRachel Thorton(レイチェル・ソートン)氏は、2つの巨大なクラウドがこのように連携することで、開発者は2つのプラットフォームにまたがるソリューションを簡単に作成できるようになると話す。「開発者がより速く、より革新的になれば、企業にとってもチャンスが広がり、より良い顧客体験を生み出すことができると思います」とソートン氏は述べた。

Salesforceが、Microsoft AzureGoogle Cloud Platformなど、他のクラウドプロバイダーとも広範なパートナーシップを結んでいることは注目に値する。

Salesforceの発表ではよくあることだが、これらの機能はすべて本日発表されたもので、まだ開発段階であり、ベータテストの開始は2021年後半、GA (General Availability)は2022年中を見込んでいる。両社は、2021年後半に開催されるカスタマーカンファレンス「Dreamforce」および「re:Invent」で、このパートナーシップに関する詳細を発表する予定だ。

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タグ:SalesforceAWS

画像クレジット:sefa ozel / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Instagramがデスクトップブラウザから投稿できる機能をテスト中

モバイルプロダクトだけに何年も注力してきたのちに、Instagram(インスタグラム)はようやくユーザーがコンピューターから投稿できるようにすることを検討している。多くのTwitterユーザーが、テスト機能が米国時間6月24日に使えるようになったことを指摘し、InstagramはTechCrunchにテストを展開していることを認めた。

「多くの人がコンピューターからInstagramにアクセスしていることに気づいています」とInstagramの広報担当は述べた。「そのエクスペリエンスを向上させるために、当社はデスクトップブラウザからInstagram上でフィード投稿ができる機能をテストしています」。

なぜ、今なのか。明らかにパンデミックの間にスマートフォンからではなくコンピューターからInstagramを利用する人が増えた。

テストが使えるかどうかをチェックするには、ブラウザでInstagramにいき、新しい「プラス」のアイコンが右上のアイコントレイにあるかどうかを確認する。テストはすべての人に提供されているわけではなく、またメインフィードへの投稿が作成できるだけだ。

新しいテストはInstagramのデスクトップに関する最新の動きだ。Instagramは2017年にウェブでStoriesを閲覧できるようにし、2020年後半にデスクトップにダイレクトメッセージ機能を加えた

「Instagramデスクトップウェブのエクスペリエンスがネイティブアプリの使用を減らすという証拠は見つかっていません」とInstagramのデータサイエンティストはウェブメッセージ機能の立ち上げ時に述べた。

「実際はまったく逆です。どちらのインターフェースも使うユーザーは、どちらかのインターフェースだけを使うユーザーよりも、それぞれのインターフェースでより多くの時間を費やします」。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

日本の商品を安く海外に届ける共同購入型越境ECサービス「DOUZO」のdouzoが総額1億円を調達

共同購入型越境ECサービス「DOUZO」(Android版iOS版)を提供するdouzoは6月23日、J-KISS型新株予約権による資金調達および金融機関の融資により総額1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、エニグモ、Branding Engineer、ライフタイムベンチャーズ、East Ventures、複数の個人投資家。調達した資金は、サービス拡大に向けた人材採用と、東南アジアでの販路拡大のためのマーケティングにあてる予定。

DOUZOは、日本の商品を安く海外に届けるという共同購入型越境ECサービス。共同購入型ECは、「買いたい」と思ったユーザーが多ければ多いほど安く商品を購入できる、規模の経済性を活用した新しい購買体験を指す。また越境ECは、海外の商品を購入できるECサイトのこと。これら共同購入型ECと越境ECを組み合わせることで、商品価格を安くするだけでなく、通常の越境ECで課題となる国際輸送コストを大幅に削減できるとしている。

DOUZOは、タイを皮切りに東南アジア、そして世界へ順次事業を拡大予定としている。douzoは、企業でも個人でもない「グループでの貿易」は、国境を超えたモノの移動を活性化し、世界の消費者が気軽に欲しいモノに手が届く時代を築く、「新しい貿易の形」となると考えているという。

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SaaS事業者向けカスタマーサクセスクラウドを手がける「openpage」が1億円調達

SaaS事業者向けカスタマーサクセスクラウド「openpage」を運営するopenpageは6月23日、1億円の資金調達を実施した。引受先は伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)。調達した資金は製品開発に投資し、米国製品に対抗できる機能開発を行う。あわせて、先端SaaS企業やカスタマーサポート支援企業との協調開発を視野に入れ、海外でも戦えるサービスを開発する。

カスタマーサクセスとは、顧客の潜在的な悩みに対し積極的にアプローチし、解決すること。顧客からの問い合わせを待つ受動的なカスタマーサポートとは異なり、カスタマーサクセスでは能動的に対応・支援を行う。openpageは、カスタマーサクセスにおいて顧客に伝えるべき情報を整理・共有し、コミュニケーションのデータ化と顧客理解を促進するクラウドサービスとなっている。

同社代表取締役の藤島誓也氏は、アドテクノロジーやデジタルマーケティング、またビズリーチにおいてはカスタマーサクセスマネジメント(CSM)チームの立ち上げなどの経験を有しており、「日本市場のカスタマーサクセスの発展に貢献したい」という思いから、2020年1月よりプロダクト作成を開始したという。

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タグ:openpage(企業・サービス)カスタマーサクセス(用語)SaaS(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

3500社超が導入、属人化し蓄積されていない社内ナレッジを整理・検索できる情報共有クラウド「Qast」が1.5億円調達

社内向けのストック型情報共有クラウド「Qast」を運営するanyは6月23日、第三者割当増資ならびに金融機関によるデット・ファイナンスを通して、総額約1億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はアーキタイプベンチャーズ、グローバル・ブレイン 、HENNGE。

今回のラウンドのリード投資家はアーキタイプベンチャーズが務め、グローバル・ブレイン、HENNGEは前回ラウンド(2020年4月)に続くフォローオンでの投資となる。調達した資金は、プロダクト開発体制の強化・ナレッジ経営コンサルタントの強化・ナレッジ経営の普及活動など、顧客への提供価値向上にあてる。

Qastは、Q&A形式とWiki(ウィキ)形式の機能を備えた、社内向けのストック型情報共有サービス。属人化していてチーム内で蓄積されていないノウハウやナレッジ、毎回同じような質問が繰り返されているナレッジなどをQ&Aやメモを通じて1カ所にまとめて整理でき、いつでも検索できる状態になる。「テレワーク導入後、情報共有がうまくいかない」「新入社員が入る度に何度も同じ質問が発生。回答者の大きな負担になっている」「既存の情報共有ツールでは、一部の人しか情報発信しない」などの課題を解決するという。

Qastはリリースからまもなく3年を迎え、導入社数は3500社を越えた。anyは今後、より一層ナレッジ経営やチームシップが根付いた世の中になるよう事業を拡大するとしている。

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起業家と投資家が自分の時間の都合に合わせてつながれる非同期ピッチ動画プラットフォーム「GoToPitch」がリリース

起業家と投資家が自分の時間の都合に合わせてつながれる非同期ピッチ動画プラットフォーム「GoToPitch」をScientistPageがリリース

「アカデミックの隠れた情報を可視化する」研究成果専門の動画プラットフォーム「ScientistPage」(サイエンティストペイジ)を展開するScientistPageは6月24日、スタートアップの投資活性化を目指したピッチ動画プラットフォーム「GoToPitch」(ゴートゥーピッチ)のリリースを発表した。

同サービスは、ピッチ動画の作成と録画機能にマッチング機能を組み合わせたもの。登録制のクローズド動画プラットフォームで、全世界の起業家と投資家を対象にしている。大きな特徴は次の3つ。

動画で伝える
スタートアップが投資家に初めて連絡する際は、テキストと添付資料を送るのが一般的だが、動画をメインに使うことで「起業家のリアルな声や表情を通して、テキストだけでは伝わりきらない人柄や熱量をそのまま伝える」ことができる。

ピッチ動画に特化した独自の録画機能
余計なものや音が入り込まないよう、決められたフォーマットで「起業家本人とピッチ資料のみを同時に映しながら、自身の声と合わせて簡単に録画」できるため、録画後の編集の手間も省ける。

マッチング機能
起業家はピッチ動画を公開し、目指す投資家にアポイント申請を行える。投資家は、スタートアップのピッチ動画を検索・視聴し、気になったスタートアップに個別にメッセージを出せる。

スタートアップが資金調達を行うには、多くの投資家と面談する必要があり、その都度、時間調整・アポイントメント・資料の提示、そしてピッチを各投資家の前で行わなければならなず、その時間と労力は本業を圧迫しかねない。GoToPitchを使えば時間的・金銭的コストを大幅に効率化でき、投資家も投資先を探し回る労力を削減できるとしている。

ScientistPageは、大学などの研究機関にも積極的に展開し、大学発スタートアップを支援したいと話している。

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クラウド電話の仏Aircallがユニコーンに、リモートワークの普及が追い風

Aircallが、Goldman Sachs Asset Managementが率いるシリーズCラウンドで1億2000万ドル(約133億円)を調達し、評価額が10億ドル(約1100億円)を超えるユニコーンのステータスを獲得した。フランスで16番目のユニコーンとなる。

同社は、企業のコールセンターや電話サポート、営業チームなどのためにクラウドベースの電話システムを開発、現在ではSalesforceやHubSpot、Zendesk、Slack、Intercom、そして広く使われているCRMやサポート、コミュニケーションシステムに統合されている。

Aircallの顧客は独自の番号を作り、音声による対話的な応答ディレクトリをセットアップする。同社のサービスは顧客に代わって起呼のキューを管理し、顧客側のユーザーはインバウンドの通話への応答を開始できる。ユーザーは通話を転送したり、顧客を待たせたりできる。アドミンはアナリティクスを見たり、通話をモニタしたり、各ユーザーが今、何を行っているのかを確認できる。

Goldman Sachs Asset Managementの他に、これまでの投資家であるDTCPやeFounders、Draper Esprit、Adam Street Partners、NextWorldCap、Gaiaなどが再度、今回のラウンドに参加した。

クラウドベースのソフトウェアであるため、Aircallはリモートやハイブリッド(リモート+リアル)のチームが便利に使える。2020年は世界中各地でロックダウンになり、企業は新しい電話システムを求めた。そしてAircallは、そんな顧客増加の波に乗った。

数字を挙げると、2020年に新規登録が65%増え、その中にはCaudalieやOpenClassrooms、Too Good To Goなどがいる。Aircallの顧客はおよそ8500社だが、その15%がフランス、35%が米国、そして50%がその他の国々となる。

新たな資金で同社は、プロダクト開発を継続してサードパーティツールの統合をもっと増やしたい、特に各業界固有のツールを統合の対象にしたい、と述べている。またロンドンとベルリンに新しくオフィスを開き、ニューヨークやパリ、シドニー、マドリッドなど既存のオフィスでは社員数を増やしたいという。

さらに同社技術基盤の拡大強化により、既存の通信企業とのコラボレーションの実現、通話の書き起こしや感情分析など、新しい機能も加えていきたいとのことだ。

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画像クレジット:Aircall

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TwitterでツイートをInstagramストーリーに直接シェア可能に

それは小さなことだが、味わい深い変更だ。

あなたがスクリーンショットのツイートや再シェアされたTikTok(ティックトック)でごちゃまぜになったInstagram(インスタグラム)フィードに飽き飽きしているなら、それがなくなることはないが、もうすぐ見た目はぐっとよくなる。

Twitter(ツイッター)はツイートを直接Instagram Stories(ストーリー)にシェアする機能を追加し、クロスプラットフォーム体験を改善した。ツイートをタップしてTwitterに飛ぶことはできないが、見た目はよい。Androidユーザーには残念なことだが、今のところiOSのみだ。

新しいクロスプラットフォーム機能は、停滞気味な同社を非難し、CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏追放を計画した投資家たちからの度重なる圧力の結果、最近Twitterが次々と打ち出している改善作業の一環だ。また同社は、ユーザーが自分のツイートを収益化するための主要機能を2つ追加した。「Super Follows」(スーパーフォロー)と呼ばれる有料サブスクリプションとチケット制のイベントだ。

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Twitterユーザーは長年、生活の質を向上させる数々のちょっとした変更の実現を待ち望んできた。未だにツイートの編集ができないことに対するジャーナリスト界全体からの苦情としてしばしば表面化している現象だ。しかし、このまま行けばTwitterはついに実行するかもしれない。

それっていいと思わない?

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タグ:TwitterInstagramSNS

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

最も楽しく過ごせる人たちとのつながりを強くするソーシャルアプリ「Squad」、ボイスメッセージ好きならきっと気に入る

Squadは共通の関心ごとがある人をつなぎ、実際に会うためのアプリだった。ところが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広がった。ソーシャルアプリの多くはこの状況下で成功した。人々は以前よりもデジタルでのつながりを渇望したからだ。しかしSquadはうまくいかなかった。

創業者のIsa Watson(アイサ・ワトソン)氏には、世界がいつまで活動を止めることになるのかわからなかった。同氏は、以前の世界に戻るのを待つのではなくアプリの機能を完全に変えることにした。

米国時間6月22日、Squadはすでに友達である少数の人たちと関係を深めるオーディオベースのソーシャルアプリとして再出発した。Squadはオーディオのみのアプリだが、第2のClubhouseを目指すわけではない。親しい友達から発信されたボイスメッセージのニュースフィードのようなもので、メッセージは24時間後に消える。

最大12人の友達を自分の「スクワッド」(チーム、部隊の意)に追加でき、新しいボイスメッセージを投稿するとスクワッドのメンバーは絵文字で反応したり個人的にボイスメッセージを返したりすることができる。個人的なボイスメッセージも24時間で消えるため、率直に話しやすい。Squadは近々通話もサポートする予定だが、今のところグループ通話やグループオーディオメッセージの機能はない。しかし通話にタイトルをつけられるため、ユーザーにとっては一般的な通話よりもSquad経由で話す方が好ましいかもしれない。タイトルをつければ、スクワッドのメンバーは通話に出る前にあなたが何について話したがっているかを知ることができる。

画像クレジット:Squad

ワトソン氏は「ソーシャルの状況には大きな空白部分があります。ソーシャルのツールの大半は発見し、ブロードキャストし、個人をブランディングするプラットフォームだからです。我々は最も楽しく過ごせる人たちとの強いつながりを維持できるようにしようと考えており、大きなチャンスがあります」と述べた。

Instagramの厳選された写真やFacebookの作り込まれた近況よりも、音声で近況を投稿する方が信頼できる感じがする(そしてFacebookはZ世代やミレニアル世代にとって明らかにクールではない)。Dispoなどのアプリの人気に表れているように、若い世代はそのとき限りでリアルなソーシャルメディアエクスペリエンスに対する反応が良い。とはいえ、オーディオだけのメディアをWhatsAppやiMessageでボイスメッセージを送ったことのない人々に売り込むのは難しいかもしれない。Squadは最初に米国内のみで公開するが、このようなアプリはボイスメッセージの人気が高い他の国で成功する可能性がある。

ワトソン氏は「テキストメッセージで交わされる会話の多くが、非同期のオーディオメッセージになりつつあります。この傾向は習慣として今後もさらに浸透していくものと我々は期待しています」と補足した。

ワトソン氏は2019年にシードラウンドで350万ドル(約3億8800万円)を調達し、TechCrunchでは非白人女性がシリコンバレーでベンチャー投資を獲得した秘訣の記事で同氏を取り上げた。アプリの方向性は変わったが、 Harrison MetalのMichael Dearing(マイケル・ ディアリング)氏、BoxのAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏、StichFixのKatrina Lake(カトリーナ・レイク)氏、AwayのJen Rubio(ジェン・ルビオ)氏、SlackのStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏などの投資家は引き続きワトソン氏を支援する。ワトソン氏はシードラウンドの後、さらに100万ドル(約1億1100万円)を調達し、これまでにSquadが調達した資金の合計は450万ドル(約4億9900万円)となっている。

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ワトソン氏はこう語る。「私は(投資家たちから)『アイサ、あなたはソーシャルに関するこうした変化について何年も話していたけど、みんながあなたにクレージーだと言っていたよね、ソーシャルのことはすっかり理解されていて今後は何も起きない、って』と言われていました。しかし今、人々は変化を認めています」。

画像クレジット:Squad

SquadがClubhouseの競合ではないにしても、オーディオ専用メディアの台頭は飽和したソーシャルマーケットに風穴を開けることができるという良い徴候だ(だから多くのソーシャルアプリがClubhouseに挑んでいる。出会い系アプリのTinderのようなオーディオアプリがまだ出てきていないのは驚きだ)。Squadのベータテストでは、ユーザーの87.5%がオンボーディングのプロセスを完了した。ただしClubhouseや多くのClubhouseクローンが悩まされているアクセシビリティの問題は、Squadでも同様だ。これまでのところSquadにキャプションを付ける機能はないが、ワトソン氏によれば現在検討中で将来的には実装したいとのことだ。キャプションを付けられるようになればSquadの利用者が増えるだけでなく、iMessageやWhatsAppといったメッセージング大手のアプリと大きく差をつけることができるかもしれない。

グループチャットにボイスメッセージを送るのが好きな人は、自分の友達をSquadに誘いたいと考えるだろう。現在のところこのアプリは招待制で、登録を受け付けている。自分の順番が回ってきたら、友達を3人招待できる。5日連続で投稿すると、さらに3人招待できる。招待した人がサインアップすると、さらに2人招待できる。自分のスクワッドのメンバーが12人になるまで、このルールで増えていく。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

TikTokの好敵手Kuaishouが全世界でMAU10億人突破、東京オリンピックの放映権獲得

TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるKuaishou(クアイショウ、快手)にとって、現地時間6月23日は特別な日となった。海外では動画アプリ「Kwai」で知られる中国のショートビデオ企業は、月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を突破したと発表した。

それはどのくらいの規模なのか?FacebookのMAUは2021年3月時点で28.5億人だった。TikTokは2021年中に12億MAUを超えると予測されており、その中国版Douyin(抖音)は2020年9月にすでに6億人のデイリーユーザー(DAU)を獲得したと発表している。つまり、Kuaishouにはまだ追いつく余地があるということだ。

中国はKuaishouの主要な市場であり続ける。同社の海外のMAUは第1四半期に1億人を突破し、その間に「南米や東南アジアでの戦略を進めた」ことで、2021年4月には1億5000万人にまで急増したと、同社は決算説明会で述べている。

香港に上場しているKuaishouの株価は、6月23日に6%以上も上昇して1株あたり200香港ドル(約2860円)近くになり、時価総額は約8300億香港ドル(約11兆8640億円)に達したが、それでも2021年2月のピーク時の415香港ドル(約5930円)を大きく下回っている。

Kuaishouの世界進出は、海外市場で躍進している中国のインターネット企業はByteDance(バイトダンス)だけではないことを思い出させてくれる。中国のJoyy(ジョイ)が所有するBigoはインドで非常に人気のあるライブビデオアプリだったが、現地政府によって禁止されてしまった

Kuaishouの創業者兼CEOのSu Hua(宿华)氏は23日の記者会見で「Kuaishouは2011年からパイオニアとして、世界中のインターネットユーザーに自分のライフストーリーを記録し、共有する機会を提供してきました」と述べるとともに、同アプリが東京2020オリンピックの公式放映権を獲得したことを発表した。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

新たなテックに懐疑的なFTCがアマゾンのMGM買収を審査するとの報道

Amazon(アマゾン)によるMGMの買収は、Amazonに対する批判で有名なLina Khan(リナ・カーン)氏が新たに委員長となったFTC(米連邦取引委員会)の精査を通過しなければならないとThe Wall Street Journalが報じた。84億5000万ドル(約9300億円)の合併は止められそうにないが、今回のような買収で複数の業界を統合する巨大企業に対するアプローチを、FTCがどのように見直すかを示す初期の指標になるかもしれない。

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この買収案は2021年5月に発表された。MGMの4000本の映画と1万7000本の番組がAmazonのライブラリーに加わることは、プライム・ビデオにとって強力な加勢となりそうだ。プライム・ビデオは、Amazonの店先と同様、顧客がオンデマンドメディアを利用する際のデフォルトの手段となることを目指している。

権利が持ち札を変え、企業が戦術を変えると、ストリーミングを取り巻く状況も刻々と変化する。Netflix(ネットフリックス)がオリジナルコンテンツに注力し(Amazonも負けてはいない)、Disney(ディズニー)が独自の定番作品を持つ中で、他の企業は番組や映画のコレクションをバラバラに入手し始め、それがストリーミング業界における収益性の高いロングテールを形成している。

しかし、規制当局の間では、MGMのようなコンテンツ会社がAmazonのようなプラットフォームに所有されるべきかどうかという正当な疑問がある。映画やテレビの独立したプロデューサーであるMGMは、独自のライセンス契約を結ぶことができ、同種の企業と直接競合することができる。しかし、Amazonの子会社になると、おそらくかなりの部分で小売・ウェブの大手企業の社内制作会社になり、製品の良し悪しによってではなく、複数の業界にまたがる帝国の一部として競争に臨むことになる。

先に任命されたばかりのFTC委員長リナ・カーン氏は、後者のビジネスモデルを先頭に立って批判してきた人物だ。同氏の有名な論文「Amazonの独占禁止の逆説」によると、Amazonは、ウェブホスティングにおけるAWSのようなある業界での優位性を利用して、まだ始まったばかりの配送サービスのようなあまり成功していない他の部門を補強していると主張している。前者の支えがなければ後者が失敗してしまうのであれば、Amazonは市場支配力によって可能となる反競争的行為を行っている可能性がある、というのが(大まかな)主張だ。

そうした市場での力と行為が異なる分野に存在するために、最近の反トラスト法の教義の下では(消費者にとって価格が上昇しない限り)Amazonに言い訳の余地があったが、カーン氏はこの論文でその教義に挑戦することを目指した。そして今、国内で最も強力な規制当局の1つとして、同氏はその形を直接変える機会を与えられている。

このような大規模な取引は常に連邦当局が審査するが、今回はFTCが担当すると言われている。おそらくFTCが別件でAmazonに対する反トラスト調査の役割をすでに担っているからだ。FTCはまた長年にわたって何度も揉めてきたFacebook(フェイスブック)も担当しており、FTCの執行パートナーである司法省はGoogle(グーグル)とApple(アップル)の調査を担当している。FTCはコメントを控え、調査の有無については明らかにしないとしている。

今回のケースでは、AmazonによるMGMの買収が阻止される可能性は低いと思わる。この分野では実際に競争が行われており、MGMは独自の道を歩むことができていないため、売却はほぼ避けられないだろう。しかし、それでも審査は行われ、FTCがこの種の合併に対するアプローチをどのように変えるのかが明らかになると思われる。

今回の取引が軽いタッチで承認されたとしても、新しい教義が適用される機会となることは十分に考えられる。例えば、表向きは無関係な市場におけるAmazonの独占的な地位が、これまでのFTCの監督下においてよりも大きな役割を果たすことになるかもしれない。これは、今後のより包括的で積極的な審査の舞台となるかもしれない。また、カーン委員長が明確な可能性として述べているように、過去に承認された合併をひっくり返すことになるかもしれない。

関連記事:テック業界に対するリナ・カーン氏の時宜を得た懐疑論はFTCの承認公聴会を新鮮かつ友好的な方向に導くものだ

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウド名刺管理のSansanがオフラインイベントの非接触受付を可能にする無人名刺受付システム「Smart 受付」提供

クラウド名刺管理サービス「Sansan」や名刺アプリ「Eight」などを運営するSansanは6月22日、法人向けセミナー管理システム「Sansan Seminar Manager」のオプション機能として、無人名刺受付システム「Smart 受付」の提供を開始した。提供内容はiPad、iPad設置台・撮影用マット・ワイヤーロック・専用バッグ・(希望者のみ)モバイルルーターで、料金は月額2万円(税別)または年間24万円(税別)となる。

コロナ禍の拡大に伴い、展示会各社やイベント主催企業は、オフラインでのセミナー・展示会の開催規模の縮小やイベント自体を中止するなど、従来通りの開催が難しくなった。しかしSansanは、対面での効率的・効果的なコミュニケーションや、一度で多くの情報を得られる点など、オフラインイベント・展示会ならではの価値があるため、来場者・主催企業双方が非接触をはじめ安全性を担保した開催が必要と考えているそうだ。

特に、受付および受付スタッフでは、来場者が提出した紙の名刺を来場者リストと照合の上で来場者カードを付与するなど、人の接触を前提としたアナログな業務が数多くある。このため同社は、非接触で受付を済ますことができ、かつ、イベント運営業務を効率的・効果的にする受付システムが必要と考え、開発に取り組んできたという。

Smart 受付は、名刺に記載されているメールアドレスの正確なデジタル化を実現した独自OCR技術「DSOC OCR」を、受付業務に転用することで開発した無人名刺受付システム。Sansanが「Smart 受付アプリ」インストール済み専用端末と設置台をセット提供するため、ユーザー企業はイベント受付に設置するだけで非接触環境の構築が完了するという。

Smart 受付では、イベント来場者が名刺を専用端末にかざすと、名刺情報の自動スキャンおよび正確なデジタル化を行い、ウェブ申し込み登録時のデータと即時照合する。そのため、来場者は受付スタッフと接触することなく、受付を自動的に完了させられるとしている。事前登録がなくても、受付対応が可能な機能も搭載しており、イベント主催企業の用途に合わせて設定できるそうだ。

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ツイッターがクリエイターのための収益化ツール「Super Follows」「Ticketed Spaces」を導入

Clubhouse(クラブハウス)からPatreon(パトレオン)に至るまで、一歩リードしている競合相手へのTwitter(ツイッター)の最新の対抗措置として、同社は米国時間6月22日、Super Follows、Ticketed Spacesへの申し込みの受付を開始すると発表した。

TwitterはSuper Follows機能の一部を2月のAnalyst Dayイベントで紹介していた。Super FollowsではTwitterのクリエイターはフォローしている人に月2.99ドル(約330円)、4.99ドル(約550円)、9.99ドル(約1100円)で有料コンテンツを提供して毎月収益を生み出すことができる。18才以上のユーザーで、フォロワー1万人超を抱え、過去30日に少なくとも25ツイートしていることが利用要件だ。

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Twitterは、アプリ内購入手数料を引かれた後のクリエイターの売上高の3%を徴収する。しかしApp StoreとGoogle Playではアプリ購入手数料は30%で、つまりクリエイターにとってはフォロワーが支払う額の3分の2が実入りとなる。Twitterでの生涯収入が5万ドル(約550万円)を超えると、Twitterは「手数料を引かれた後の将来の収入の20%」を徴収する。アプリ内購入手数料の30%と合わせると、クリエイターの手元に残るのはフォロワーが払った額の半分だ。一方、Patreonはクリエイターの売上の5〜12%を取っている(ウェブベースのプラットフォームなのでアプリ内購入手数料を回避している)。主にTwitterで自身のオーディエンスに関わっているクリエイターはフォロワーを他のアプリに誘導することなしに収益を上げる方法を持つというメリットを享受する一方、支払いにおける違いは明白だ。クリエイターはSuper Followsのために既存のPatreonシステムを見捨てることはないが、控えめにいうとこれは補足的な収入源となるかもしれない。

「当社のゴールはTwitterで会話しようという気持ちにさせ、お金を稼げるようサポートすることです」とシニアプロダクトマネジャーのEsther Crawford(エッシャー・クロフォード)氏は話した。「Twitterでいかに新たな声をサポートできるかについての検討に時間をかけた後、当社は収益配分率を改訂しました」。

Ticketed Spacesは、ClubhouseやSpotify Greenroom、他の競合サービスが似たようなオプションをまだ提供していないことから、より有望なようだ(DiscordはStage Discoveryポータルで有料のオーディオイベントをテストしているが、まだ正式展開はしていない)。Ticketed Spacesを通じてユーザーは1〜999ドル(約110円〜11万円)の間でチケット価格を設定できる。クリエイターはチケットの販売枚数を制限でき、これはセレブとの1対1の会話のために999ドルというチケット価格を実際に使うよう誰かにインセンティブを与えるかもしれない。Twitterはプッシュ通知とアプリ内の通知でTicketed Spacesが開催されていることを出席者にリマインドする。過去30日以内に3つのSpacesをホストした18歳以上のユーザーがTicketed Spacesへのアクセスを申し込める。

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ClubhouseとInstagramはライブオーディオスペースでリスナーがスピーカーにチップをあげたりバッジを贈ったりできる機能を展開しているが、前売り券の販売は不可だ。トップクリエイターがこうしたアプリで収益をあげる別の方法は、Creator Fundsを通じてだ。Spotify GreenroomClubhouseはいずれもCreator Fundsの計画を発表したが、TwitterでのTicketed Spacesへのアクセス販売に比べてどれくらい稼げるのかはまだ不明だ。

今回のTwitterのアップデートの前には、アクティビストシェアホルダー(物言う株主)が2020年、CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏を追放しようと試みた。ここへきて、Twitterは急速に新機能を追加しRevue(ニュースプラットフォーム)やUeno(クリエーティブ・エージェンシー)、Breaker(ソーシャルポッドキャスティングプラットフォーム)といった企業を買収している。

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Super FollowsとTicketed Spacesはモバイルでのみ(なのでアプリ内購入手数料の回避はない)、米国居住者だけが利用できる。現在Super Followsへの申し込みはiOSユーザーだけだが、Ticketed Spacesへの申し込みはiOSとAndroidの両方でできる。Twitterは新しいMonetization(現金化)ボタンをアプリのサイドバーに加えていて、そこでユーザーはこうした機能のためのテストグループへの参加を申し込めるかチェックできる。新機能は数カ月以内により広範に利用できるようになる。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブックがネットショッピングに関連する4つの新機能を発表

Facebook(フェイスブック)は、高校時代の同級生が飼っていた犬の写真を見て商品を購入するようなことが、さらに簡単にできるように、ショッピング関連の新機能をいくつか導入する。もちろん、Instagram Shops(インスタグラム ショップ)や「Facebook Marketplace(フェイスブック マーケットプレイス)」は、すでにアプリの下部ナビゲーションタブに大きく表示されている。しかし今回、その他のアップデートとともに、WhatsApp(ワッツアップ)でもショッピングができるようになった。

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Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは米国時間6月22日、Facebookの音声チャット「Live Audio Room(ライブオーディオルーム)」で、同社のプラットフォームに新たに導入されるeコマース機能を発表した。「Shops on WhatsApp(ショップ・オン・ワッツアップ)」「Shops on Marketplace(ショップ・オン・マーケットプレイス)」「Shops Ads(ショップ・アド)」そして「Instagram Visual Search(インスタグラム・ビジュアル・サーチ)」の4つだ。

ザッカーバーグ氏はFacebookの投稿で「毎月10億人以上の人がMarketplaceを利用しています。そこで私たちは、企業が自分たちのShops(Facebookショップ)をもっと多くの人に利用してもらえるように、Marketplaceに導入できるようにします」と書いている。また、企業はWhatsAppでもFacebookショップを表示させることが可能になり、ユーザーは商品を購入する前にその企業とチャットできるようになる。

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2021年6月初めに開催された「F8 Refresh(F8リフレッシュ)」の基調講演で、FacebookはWhatsApp Business(ワッツアップ・ビジネス)のアップデートを発表した。それまで、ビジネスアカウントの開設には数週間を要していたが、今ではわずか数分で登録できるようになった。WhatsAppには全世界で20億人以上のユーザーがいるが、カスタマーサポートなどのためにWhatsApp Businessアカウントで毎日メッセージを送っている人は約1億7500万人ほどしかいない。FacebookはInstagramなどのプラットフォームでeコマース向け機能の強化を推進しているため、この取り組みをWhatsAppにも拡大しようとするのは理に適っている。

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Shops on WhatsAppは間もなく導入が開始される予定で、Shops on Marketplaceはすでに米国ではオンサイトチェックアウトが可能になっている。

3つ目の機能であるShops Adsは、人々のそれぞれの買い物の傾向に基づき、より個人に合わせたショッピング体験を提供することを目的としている。「人々の買い物の行動に基づいて、企業が買い物客を最も購入する可能性の高い場所に送り込むことができる機能の提供を開始します」と、ザッカーバーグ氏は述べている。米国ではAR Dynamic Ads(ARダイナミック広告)の導入が始まっており、Huda Beauty(フーダ ビューティー)やLaura Mercier(ローラ メルシエ)などの企業は、この広告を利用して、顧客が購入する前にARで口紅の色合いを試せるようにしている。このようなAR試着体験は、Modiface(モディフェイス)やPerfect Corp(パーフェクト、玩美移動)とのAPI統合によって提供されるものだ。2021年初めには、Pinterest(ピンタレスト)がModiFaceと協力して、アイシャドウのAR試着を始めている。

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そして4つ目として、Instagramでは今後数カ月以内に、AIを活用したVisual Search機能のテスト導入を開始する。

「ショッピングディスカバリーは、多くの場合、ビジュアルディスカバリーから始まりますよね。良いなと思うものを見かけたら、同じような商品を他にも見たいと思ったり、その商品を手に入れる方法を知りたいと思ったりするでしょう」と、ザッカーバーグ氏は説明する。「そんな問題の解決を、AIが助けてくれるのです」。

このAIを使えば、人々は自分で写真をアップロードして(Instagramに投稿していない写真でもOK)、似たようなアイテムを見つけることができるようになる。この技術を採用したのはFacebookが初めてというわけではない。例えば、CadeeraDonde SearchStye.aiなどではすでに活用されている。しかし、Instagramのようなメジャーなプラットフォームにこの技術が導入されたら、我々の買い物の仕方が変わるかもしれない。それこそが、Facebookの現在の目標であるようだ。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インド政府が「不正行為の蔓延」の苦情に対処するためより厳しい電子商取引ルールを提案

インドは現地時間6月21日に提案したeコマースプラットフォーム上のフラッシュセールに対する禁止令により、そのアフィリエイトをセラー(売り手)として掲げることができなくなる。これにより、この南アジア(インド)の市場はルールがより厳しくなり、AmazonやWalmartのFlipkartの、世界で2番目に大きい市場における今後の見通しが危うくなった。

インドの消費者問題・食料・公共配給省が公開したその提案が登場した「今」というタイミングは、実店舗で営業しているインドの小売業者が不平の声を高め、AmazonとFlipkartのこの国における拡張策にともなう操業が公正でない、とする懸念を表明した時期と一致する。

同省は提案の中で、eコマース企業がインドでフラッシュセールを開催することを認めるべきではないとしている。このフラッシュセールは、米国のブラックフライデーやサイバーマンデーのようなもので、インドの祝祭日シーズンに非常に人気がある。フラッシュセールの期間中は、ブランドが商品を大幅に値引きするため、eコマース企業は伝統的に顧客の注文が最も急増する。

「一部のeコマース事業者は、『バック・トゥ・バック』や『フラッシュ』販売に手を染め、消費者の選択を制限している。これは、プラットフォーム上で販売するある販売者が在庫や注文の履行能力を持たず、プラットフォームが管理する別の販売者に『フラッシュまたはバック・トゥー・バック』注文を出すだけのものだ。このような行為は、公平な競争を妨げ、最終的には消費者の選択を制限し、価格を上昇させることになる」と同省は声明で述べている。

またインド政府は最近のITに関するルールで、コンプライアンス最高責任者(CCO)の任命と、1日24時間1週7日の警察との連絡担当を置くことを提案している。もちろんその下にはコンプライアンス担当の社員たちがいて注文のコンプライアンスを確保し、また苦情受付担当部門が、eコマースプラットフォームに対する消費者の苦情に対処しなければならない。

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「これにより、法律および規則の規定の効果的な遵守が確保され、電子商取引事業者の苦情処理メカニズムが強化される」とした上で、新たな提案では、すべてのeコマース事業者に対して「身元確認のため、または施行中の法律に基づく犯罪の防止、発見、調査、起訴のため、あるいはサイバーセキュリティインシデントのため」に、72時間以内に政府機関に情報を提供するよう求めていると同省は述べている。

新たな提案では、AmazonやFlipkartといったeコマース企業が自社 / プライベートブランドを運営することも禁止にする可能性がある。新提案では、eコマース企業に対し、顧客に直接販売する販売業者として、自社のプラットフォーム上に関連当事者や関連当事者を一切掲載しないようにすることを求めている。「eコマースの主体が自ら行うことができないようなことが、関連当事者や関連企業によって行われないようにする」と提案書には書かれている。

インドでは、eコマース企業が在庫を持ったり、商品を直接消費者に販売したりすることは認められていない。これを回避するために、eコマース企業は在庫を保有する現地企業との合弁事業を行っている。

インドの事業に65億ドル(約7200億円)以上を投資しているAmazonは、提案されているポリシーを検討していると述べたが、Walmartが160億ドル(約1兆7700億円)で手に入れたFlipkartからはコメントがない。

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現地時間6月21日の法廷審問において、Flipkartの弁護士は、販売者が製品価格を下げた場合、プラットフォーム上で販売者が商品価格を下げれば料金を下げると提案することには何の問題もないと述べた。

消費者問題・食料・公共配給省は「電子商取引のエコシステムにおいて、不正行為や不公正な取引方法が蔓延しているとの苦情が複数寄せられている」ことを受けて、今回の提案を行い、今後15日間にわたって業界からのフィードバックを求める予定であると述べている。

さらに新たな提案では、eコマース企業に対して、プラットフォーム上の商品を原産国に基づいて識別する仕組みを導入し、「国産品への公平な機会を確保する」ための代替案を出すよう求めている。

この発表とほぼ同時期にFlipkartは、30億ドル(約3300億円)という巨額な調達と上場の検討を進めている。AmazonとFlipkartの両社はまた、インドにおける反トラストの調査の対象になっている。

これはインド政府が近年行った2度目の大規模な修正提案だ。2018年にもインド政府はeコマース企業に対するより厳しいルールを提案し、それが2019年に施行されたときには、AmazonとFlipkartは大急ぎで数十万の商品を彼らの店頭から外し、アフィリエイト企業への投資をさらに間接的にした。

本日の提案の数カ月前には、ロイター通信が企業の文書を引用して、Amazonはインドで少数のセラーを特に優遇し、それらのセラーとの結びつきを不正に表現し、彼らを使ってこの国の外国投資の規則を迂回していると報じた

この時点で、インドの数千万にもおよぶ実店舗の業界団体であるThe Confederation of All India Tradersがインド政府に、インドにおけるAmazonの全面的禁止を陳情した。これとほぼ同時期に、インド商業省はこの問題を検討中だと発表している。

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画像クレジット:NOAH SEELAM/AFP Photo/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルのトラッキングクッキーのサポート終了は英国の競争規制当局が同意しない限り実現しない

大きな決定だ。Google(グーグル)がサードパーティークッキーのサポート終了に向けて動く中、英国の競争規制当局はこれを阻止できるサイドブレーキを手にする模様だ。Cookieは現在オンライン上のターゲティング広告に使用されているテクノロジーで、進行中の廃止計画によって競争に悪影響が及ぶとされている。

今回の出来事は、Google独自の「プライバシーサンドボックス」について、2021年初めに競争・市場庁(CMA)が行った調査を受けてのものだ。

規制当局は、GoogleがChrome(クローム)上でサポートしているCookieを削除しようとした場合に、少なくとも60日間この動きを停止するよう命じる権限を持つことになる。そのためには、規制当局はGoogleが提示した法的拘束力のあるいくつかの契約に同意する必要があるが、当局は現地時間6月11日、契約に応じる意思を示す通知を発表した。

また、Googleにトラッキングクッキーの廃止を停止するよう命じた段階で状況が思わしくない場合、競争・市場庁は全面的な調査を再開することもできるという。

その上、競争に悪影響を及ぼさない形でGoogleの「プライバシーサンドバッグ」テクノロジーに移行することはできないと規制当局が判断した場合、規制当局はこの広範なテクノロジーの移行を全面的にブロックする権限も有する。しかし、競争・市場庁は本日の発表で、競争に関するこの計画の懸念点はGoogleが提示した一連の契約によって暫定的に解消されたとの見方を示している。

現在は協議委員会が設けられ、業界が同意するかどうかのフィードバックを7月8日まで受け付けている。

競争・市場庁のAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)主席常任委員は、声明で次のようにコメントしている。

Googleをはじめとする巨大なテクノロジー企業の台頭により、世界各国の競合規制当局は新しいアプローチを必要とする新たな課題に直面している。

そのため、競争・市場庁は世界をけん引して強大なテクノロジー企業と連携し、消費者の利益のためにこれら企業の行動を方向づけ、競争を保護する取り組みを進めている。

Googleから受け取った契約に同意した場合、これらの契約には法的拘束力が生じるため、デジタル市場での競争を促進し、ユーザーのプライバシーを保護しながら、広告を通じてオンライン上のパブリッシャーが売上を確保する権利を保護する助けとなるだろう。

Googleが契約内容を概説したブログ記事には「Consultation and collaboration(話し合いとコラボレーション)」「No data advantage for Google advertising products(Googleの広告製品にデータのアドバンテージはなし)」、そして「No self-preferencing(自社に対するひいきはなし)」という3つの大筋の副見出しが並んでいる。この記事の中で、Googleは競争・市場庁が契約に同意した場合はこれを「世界中で適用する」としており、英国の介入を顕著に示すことになる。

英国のEU離脱によって生じた少々意外な変化の1つは、世界のデジタル広告の規則に関して英国が主な決定を下す立場となった点だろう(欧州連合も大手プラットフォームの運営に関する新しい規則の制定に動いているが、プライバシーサンドボックスに対する競争・市場庁の介入に匹敵するほどの動きは、まだ欧州連合本部からは見られていない)。

Googleが英国の競争介入を世界的に適用するとした決定は、非常に興味深いものだ。もしかすると、競争・市場庁を世界の模範のように見せることで、当庁に提示内容を承諾してもらおうというごますり的な要素もあるのかもしれない。

同時に、ビジネスが求めるのは運営の確実さだ。Googleが(そこそこ)大きな英国市場で認められる規則を最終的にまとめられるのであれば、英国内の監督機関と共同で規則を策定し、それを世界中に展開する形となるため、これは将来他の規制当局が強制措置を取るような事態を回避する近道となる可能性がある。

そのため、Googleは今回の件について、アドテック事業をポストCookieの未来へ移行させる上での、よりスムーズな道のりと捉えているのかもしれない。もちろん、全面的な停止を命じられる事態を避けたいという思いもあるだろう(いや、どうだろうか?どちらの結果でも、Googleにはプラスとなるだろう)。

さらに広く見れば、テンポの速い英国の規制当局と連携することは、Googleにとって政治的なこう着状態やリスクを回避するための戦略とも考えられる。実際、他の市場ではデジタル規制に関する議論でこのような事態が見られているからだ(特に本拠地の米国では、巨大なテクノロジー企業を解体しようとする声が大きくなっている他、実際にGoogleは現在独占禁止法に基づく調査複数受けている)。

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Googleが求めているのは、規制当局の認可を受けた「準拠」のハンコをもらい、自社が築いた広告の帝国を解体する必要はないと証拠で示すことなのかもしれない(あるいは、プライバシー重視の変更を行ってはいけないと規制当局から命令を受けることかもしれない)。

Googleが提示した契約からは、巨大テクノロジー企業の力に立ち向かおうと最もスピーディーに動いた規制当局が、世界中のウェブユーザーに適用される基準と条件の定義づけを支援する立場となることが如実に表れている。少なくとも、より極端な介入が巨大テクノロジーになされない限りはそうだろう。

プライバシーサンドボックスとは

プライバシーサンドボックスは、(ユーザーのプライバシー面で最悪という見方の多い)現行の広告トラッキング手法を代替インフラストラクチャに置き換えるものとして提案されたインターロッキング技術の集合体だ。Googleはこれについて、個人のプライバシー保護の観点ではるかにすぐれていながら、アドテック業界やパブリッシング業界が(Google曰く、今までとほぼ同じように)ウェブユーザーのコーホート(オンラインで閲覧するコンテンツに基づいて「似た興味関心のボックス」別に分類)ごとにターゲティング広告を表示させることで、収益を生み出せるインフラストラクチャだという。

関連記事:グーグルはCookieに代わるターゲット方式による広告収入はほぼ変わらないと主張するもプライバシー面は不透明

本提案(これには、Googleが提案する、協調機械学習により生成されたコーホートに基づいた新しい広告IDのFLoCや、Turtledoveを拡張したGoogleの新しい広告提供テクノロジー、Fledgeなどが含まれている)の完全な詳細は、まだ確定されていない。

とはいえ、Googleは2020年1月の時点で、2年以内にサードパーティークッキーのサポートを終了するつもりであることを発表しているため、この厳しいタイムフレームが反対の声を呼び寄せたと思われる。アドテック業界や(いくつかの)パブリッシャーからは、業界レベルの広告ターゲティングが失われると広告の収益に甚大な被害が及ぶおそれがあるとして抵抗の声が上がっている。

競争・市場庁は、Googleが考案した新しいインフラストラクチャへの移行はGoogleの市場権力を増大させるものにすぎないと苦情が上がったことを踏まえ、Googleが計画しているトラッキングクッキーの廃止について調査を開始した。これらの苦情では、サードパーティーが広告ターゲティング用にインターネットユーザーを追跡できないようサードパーティーを締め出しておきながら、Googleは(消費者ウェブサービスを独占しているため)膨大なファーストパーティーデータにアクセスでき、オンラインでのユーザーの挙動を高レベルで把握できるという点が指摘された。

競争・市場庁が本日発表した通知書のエグゼクティブサマリーには、規制当局による適切な監督がない場合、プライバシーサンドボックスが以下の影響を生じさせる可能性があると懸念が示されている。

  • サードパーティーに対してユーザートラッキングに関連する機能を制限しながらもGoogle側の機能を保持することで、広告インベントリを提供する市場、さらには広告テクノロジーサービスを提供する市場の競争をゆがめる。
  • Google独自の広告製品やサービス、さらにはGoogleが所有および運用する広告インベントリをひいきすることで、競争をゆがめる。
  • 個人データをターゲティングや広告提供の目的でどのように用いるかという点で、クロームウェブの各ユーザーが幅広く選択する権利を拒否することで、Googleが持つ明らかに独占的な地位を不当に利用することを容認する。

一方、インターネットユーザーへの広告トラッキングやターゲティングに対するプライバシー面での懸念から、Googleは間違いなくクローム(当たり前だが、ウェブブラウザの市場シェアを独占している)を一新するよう圧力を受けている。他のウェブブラウザが何年もの間トラッカーをブロックするなどしてユーザーをオンライン監視の目から保護する取り組みを自発的にしていることも、この圧力の理由だ。

ウェブユーザーは、不快な広告を非常に嫌がる。彼らがこぞって広告ブロッカーを使うのもそのためだ。データにまつわる数えきれないほどの大スキャンダルも、プライバシーやセキュリティに関する認知度を高めてきた。その上、ヨーロッパをはじめとする国では、ここ数年の間にデジタルプライバシー規制が強化されたり、新たに導入されたりしている。つまり、広告事業がオンラインで行うアクションの「許容ライン」が変わってきているということだ。

しかし、ここでの主な問題は、プライバシーと競争規制がどのように互いに作用(あるいは衝突)するかという点だ。考えが足りず、切れ味の鈍い状態で競争介入が行われた場合、ウェブユーザーのプライバシー侵害を根本的に固定化させてしまうリスクはその顕著な例である。つまり、オンラインプライバシー規制の実施が緩やかな場合、インターネットユーザーに対して同意のない過剰な広告トラッキングやターゲティングを行う事業が利益を拡大する事態を許容することになり、本来の目的が失われてしまうということである。

禁止令発令の権力を振りかざす競争規制当局と、緩やかなプライバシー規制の実施というコンビネーションは、ウェブユーザーの権利を保護する上で理想的とは言えないだろう。

一方、この状況を楽観視するには注意が必要だ。

先月、競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関(ICO)は共同声明を発表し、デジタル市場における競争とデータの保護の重要性について述べたが、ここで競争・市場庁によるGoogleプライバシーサンドボックスの調査が、きめ細かな共同作業を必要とするケースの好例として取り上げられているのだ。

共同声明の内容はこうだ。「競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関は、Googleやその他の市場参入者と連携してGoogleの提案に関する共通理解を醸成するとともに、提案の詳細が明らかになる過程でプライバシーと競争に関する懸念を払拭できるよう徹底的に取り組む」。

英国個人情報保護監督機関が過去に権利を踏みにじるアドテックに対して実施した措置は、はっきりいうと存在しない。当機関がアドテック業界のロビー活動に対して規制の不履行を選ぶ傾向にあることを踏まえると、英国のプライバシーおよび競争を監督する規制当局が「共同作業」すると述べた事実は、ほんの小さな楽観的要素も打ち消す力があるだろう。

(対して競争・市場庁は英国のEU離脱後に今までより大きな調査権限を手にして以来、デジタル領域に関して非常に積極的に取り組んでいる。ここ数年の間にデジタル広告市場の競争実態が明らかになってきたこともあり、当庁が有する知識は膨大だ。また、当庁は競争重視の制度を監督する新たな機関の立ち上げも進めており、英国はこの機関を通じて大手テック企業の行動を制限する意思を明言している)

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Googleが同意した契約とは

競争・市場庁はGoogleがプライバシーサンドボックスについて「大規模かつ幅広い」契約を提示したとし、その一部として以下を開示している。

  • 競争のゆがみ、またクロームユーザーにとって不公平な規約の強制を回避する形で提案を策定し、実施する義務を負う。目標を確実に達成するため、これには提案の策定時に競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関を関与させる義務が含まれる。
  • Googleが提案内容の実施を進める際には、その方法と時期、さらには評価の基準を公表することでGoogleの透明性を向上させる。これには、代替テクノロジーの有効性に関する試験結果を一般に開示する義務が含まれる。
  • サードパーティークッキーの削除後、Googleがデジタル広告の目的で使用または組み合わせる個人のユーザーデータの範囲を大幅に制限する。
  • Googleがサードパーティークッキーの代替となるテクノロジーを設計および運用する上で、競合他社に対し、自社の広告およびアドテック事業に有利になるような不公平な取り扱いをしてはならない。
  • Googleがサードパーティークッキーの削除に着手する際には、着手前の少なくとも60日間を休止期間とする。これは、顕著な懸念事項をGoogleが解消できなかった場合に競争・市場庁が調査を再開し、競争への悪影響を回避すべく、必要であればあらゆる暫定措置を課す機会を確保するためである。

Googleはこのようにも述べている。「この過程で、私たちは競争・市場庁や業界とオープンかつ建設的で継続的な対話を続けていきます。その一環として、競争・市場庁および広範なエコシステムに対し、プライバシーサンドボックス案の開発に関するタイムライン、変更、および試験について積極的に情報を共有し、今まで行ってきた透明性確保のアプローチを踏襲していきます」。

Googleの声明はこのように続く。「競争・市場庁が英国個人情報保護監督機関から直接意見を取り入れる過程で、Googleは競争・市場庁と協力し、新しい提案に関する懸念事項を解消するとともに、試験に用いる評価基準を共同で策定していきます」。

Googleの契約は、競争に直接関連する複数の領域を網羅している。自社へのひいきや、差別撤廃、さらにはサードパーティーと比較して自社のアドバンテージになる可能性のある特定のソースからはユーザーデータを組み合わせないといった規定だ。

一方、競争に関する検討事項の中にはプライバシーも明示的に織り込まれており、競争・市場庁はこれらの契約によって(私たち側に)以下が実現されると述べている。

Googleの提案を計画、実施、および評価する際に考慮に入れる基準を策定する。これは、プライバシーサンドボックス案に関する以下の影響を含めた基準とする。データ保護の原則と照らし合わせた際のプライバシー保護の実態とコンプライアンス。デジタル広告における競争と、とりわけGoogleとその他の市場参入者との競争のゆがみが生じるリスク。パブリッシャーが広告インベントリから収益を生み出す可能性。ユーザーエクスペリエンスとユーザーデータの使用に関する管理権。

英国個人情報保護監督機関の報道官はまた、競争・市場庁の介入を受けてGoogleから受け取った契約のうち、最初に受け取ったものの1つが「プライバシーおよびデータの保護に注力したもの」だったとしきりに述べている。

声明の中で、データ規制当局は次のように補足している。

私たちが受け取った契約は、プライバシーサンドボックス案の評価に際する重要な節目と言える。これらの契約からわかるのは、デジタル市場における消費者の権利を最もよい形で守るには競争とプライバシーの両分野を合わせて考慮する必要があるということだ。

競争・市場庁との最近の共同声明で概説したように、私たちは消費者のデータを合法的かつ責任を持って使用し、デジタルイノベーションと競争を促進することが消費者の利益になると確信している。私たちは引き続き競争・市場庁との建設的かつ密接な関係を強化し、提案を評価する過程で消費者の権益を確実に保護していく。

競争・市場庁の調査に関するこの進展は大小さまざまな疑問を呼んでいるが、そのほとんどは将来の主要ウェブインフラストラクチャについて、またGoogleと英国の規制機関との間でまとめられた変更事項が、世界中のインターネットユーザーにどのような影響を及ぼすのかという疑問だ。

ここでのカギとなる問題は、1つの巨大テクノロジー企業が消費者向けデジタルサービスとアドテックの両業界を複占していることで生じた市場権力の不均衡を修正する上で、監督機関との「共同策定」が本当に最適な方法なのかという点である。

また別の人は、Googleと消費者向けテクノロジーとGoogleのアドテックを解体する他権力乱用を修正する方法はない、それ以外の方法は非常に何もしないのと同じだ、というだろう。

例えばGoogleは、実施前の議論や微調整がいくらあったとしても、結局は変更事項の提案そのものを統括する立場にある。結局船を操縦しているのはGoogleのため、オープンウェブに関してこのような管理モデルを導入するのは許容できないと考える人は山ほど存在している。

しかし競争・市場庁は、せめて今のところはGoogleに全面的に任せたいようだ。

と同時に、注目すべきなのは英国政府と競争・市場庁がより広範な競争重視制度を打ち出そうと動いていることだ。これはGoogleやその他の巨大プラットフォームの今後の運営方法について、より大規模な調査の実施につながるかもしれない。さらなる調査の発生は、まず確実だろう。

とはいえ、今のところGoogleは英国の規制当局と協力状態にあることに喜んでいるようだ。Googleが思いのままに(あるいはしかたなく)細かな変更を重ね、監督機関の気を紛らわせることができるのなら、事業解体を命じられる(実際、競争・市場庁は以前解体に関する意見を募集している)よりも、Googleははるかに安心して状況を見渡せるだろう。

私たちは、Googleに対しプライバシーサンドボックス契約に関するいくつかの質問を提出した(更新:以下にいくつかの回答を記載)。

英国インターネット広告局(IAB)のCEOであるJon Mew(ジョン・ミュー)氏は、進展を受けて発表した声明の中で次のように述べている。

インターネット広告局は、サードパーティークッキーの段階廃止について、広告で賄われるウェブを根本的に改善する機会だと以前から明白に述べてきたため、今回一般的なユーザーIDソリューションすべてが遵守すべきと考える明確な原則を策定した。私は、プライバシーサンドボックスに関する競争・市場庁の調査、加えて競争に与えかねない影響の懸念事項を対処するためのGoogleの契約は、この過程において重要かつ価値のある動きと考える。

これらの契約により、幅広い業界がGoogleの提案について、競争とプライバシーの両面での方針を考慮に入れ、競争・市場庁による規制監督を経て策定されているとの確信を得ることができる。サードパーティークッキーの段階廃止はデジタル広告業界が経験してきた変化の中で最も重大なものであり、この分野における計画が適切な精査を受けるべきなのは当然である。

より広範囲な質問

私たちの質問を受け、Googleからいくつかの追加の背景情報を得ることができた。これらの補足では、Googleはプライバシーサンドボックスのいかなる「共同設計」の提案も拒否すること、そしてこの契約はあくまで競争・市場庁による監督と当庁との連携に関するものだとしている。とはいえ、これはGoogleの屁理屈に過ぎないかもしれない。

Googleはまた、提示した(設計および試験に関する)契約にはプライバシーサンドボックスで提案されているすべてのテクノロジーが記載されていることを認めている。つまり、これは明らかにトラッキングクッキーに限定された契約ではなく、それを置き換える(あるいは置き換えない)すべてのテクノロジーに適用されるということだ。

さらに、Googleはこの契約が正式に合意に至った場合、英国の競争・市場庁に対する契約を世界的に適用すると認めている。

競争・市場庁がトラッキングクッキーを廃止してはいけないと命令した場合、代替案はあるのか、あるいはそうした命令はそのままプライバシーサンドボックスの死を意味するのかという質問に対しては、Googleは明言を避けた。

しかしながら、Googleはプライバシーに関するユーザーの期待に応えなければウェブを危険にさらしてしまうと確信していること、そしてプライバシーサンドボックスプロジェクトの進行に向けて全力で取り組んでいくことを約束した他、競争・市場庁との連携が、移行計画に関する業界の懸念を和らげる助けとなることを願うと述べている。

また、競争・市場庁の議論の結果を待って作業を中断するのではなく、今後もプロジェクトの進行を続けていくとしている。

ただし、規制当局による介入によってプライバシーサンドボックスの本来の実装タイムラインに(遅延などの)変更が生じているかという質問に対しては、回答が拒否された。

プライバシーサンドボックスの管理モデルについて、またGoogleがウェブインフラストラクチャのこれほど核となる部分を再設計するのは公平かどうかという質問については、Googleはワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)などのフォーラムを通じ、業界と連携して進めていると主張した。

しかし、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムグループには、Googleの決定に影響を及ぼす力はない。そのため、実際にはGoogleがオンライン業界全体に適用される大規模な再設計を一方的に進めていながら「見せかけのコラボレーション」を行っているのではないかという懸念が一部で上がっているのだ。そして、英国の規制当局を提案の議論に引き込み、アウトリーチを広げる目的で連携を進めていながらも、提案と決定権を持っているのは結局のところGoogleである。

管理面については、独立した立場にあるプライバシーおよびサイバーセキュリティ研究員・コンサルタントのLukasz Olejnik(ルカス・オレイニク)博士(プライバシー保護システムの管理についての著書あり)からTechCrunchに次のような所見が寄せられた。「Googleは確かに最善を尽くしてコラボレーションを進め、さまざまな関係者からの意見を聞こうとしているようだ。例えば、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムグループの会場ではこのような場面が見られている。プライバシーサンドボックスに関する管理モデルがあるのかどうか、現時点でははっきりとは分からないが、私には存在しないように思われる。ここでの問題点は、契約の細かな点だ」。

「問題なのは、実装された変更や修正に関して同意する際のプロセスがなければならないという点だ。ふさわしい提案が出されたとして、それが本当に実装される保証はあるだろうか。また、提案に関する今後の維持管理や開発がどうなるのかも不透明だ。これを正当化していいのだろうか」。

「当然、Googleは自社のみが一方的に決定を下せるとは主張しない。その真偽についても、おそらく議論したくはないだろう。私が提案するのは、ユーザーやパブリッシャー、ユーザーエージェント、広告主、そしてプライバシーに関する専門家および研究員といった関係者から意見を受け付けたり、それを代表したりする準公式の管理構造だ。プライバシーを保護する広告システムの導入は今回が初めての試みとなるため、将来にも対応できるシステムにすることが重要だろう」。

他にも、TechCrunchはGoogleに対し、プライバシーサンドボックス案の広告配信について、そして提案されたアーキテクチャがどのようにユーザーのプライバシーを保護すると確信しているかについて伺った。

Googleからは詳しい回答は得られなかったが、トラッキングクッキーを使用した現行のシステム(個人レベルでのターゲティング)と比べ、タートルダヴ案ではプライバシー保護を強化できるとの示唆があった。タートルダヴでは、広告主が1つまたは複数の興味関心グループに基づいて広告を配信し、興味関心グループをユーザーのその他の情報とは組み合わせない仕組みとなっている。

また、この提案で述べられたフレッジはタートルダヴを基盤としており、信頼できるサードパーティーサーバーを導入することで、ブラウザ内に情報を保管することへの懸念に対応するとしている。

Googleは、プライバシーサンドボックスに関して競争・市場庁と協力する過程で、両方のテクノロジー提案の開発および試験についても積極的に連携していくとし、この過程で競争規制当局が英国個人情報保護監督機関から直接意見を取り入れることを補足した。つまり、繰り返しになるが、英国の規制当局は変更案が議論される際にはテーブルの最前列を確保できるということだ。

その上で、提示した契約が市場を安心させる大きな一歩であるとの確信が述べられている。

この「コラボレーション」がプライバシーサンドボックスの「競争重視」の面を促進しながらもユーザーのプライバシーを悪化させることになるのか、今後に注目だ。

そうなれば、競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関が主張する(「プライバシーと競争に関する懸念を払拭」するための)共同作業は大きな失敗となってしまう。とはいえ、壮絶なロビー活動を行うアドテックの影響力を前に、ユーザーの権利が今までことごとくプライバシー規制当局に無視されてきたのは事実だ。

それでも、競争規制当局をこの議論に引き入れようとしていることから、アドテック企業は少なくとも主要な問題においては規制当局による措置を実行に移すかもしれない。ヨーロッパの他の地域では、プライバシーの侵害は競争の問題ともみなされている。どのような結末を望むのか、決定には注意が必要だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleCookieイギリス競争・市場庁 / CMA広告プライバシー

画像クレジット:Tekke / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

成熟が進むスニーカーコミュニティ、SoleSavyはE2Eの独自プラットフォーム構築を目指す

新型コロナウイルス感染流行時には、コレクター向け収集品がブームとなった。NBA Top Shot(NBAトップショット)のようなNFT(非代替性トークン)デジタルカードゲームが、新たな消費者の物欲を掻き立て爆発的に売れた一方で、スニーカーの世界はさらに成熟し、愛好家たちは趣味、情熱、こだわり、代替資産に特化したコミュニティに深く入り込んでいった。

バンクーバーに拠点を置くSoleSavy(ソールサヴィ)は、靴の世界をナビゲートするためにキュレーションされた場所をファンに提供することを目的としたスニーカーコミュニティだ。同社は200万ドル(約2億2000万円)の資金を調達したシードラウンドからわずか数カ月後、シリーズAラウンドで1250万ドル(約13億8000万円)を調達し、垂直特化型のプレミアムなソーシャル体験に、投資家が熱い視線を注いでいることを示した。今回のラウンドは、Bedrock Capital(ベッドロック・キャピタル)が主導し、Dapper Labs(ダッパーラボ)のCEOであるRoham Gharegozlou(ロハム・ガーレゴズルー)氏や、Diplo(ディプロ)、Bessemer Ventures(ベッセマー・ベンチャーズ)、Turner Novak(ターナー・ノバック)氏のBanana Capital(バナナ・キャピタル)などが参加した。

SoleSavyのDejan Pralica(デヤン・プラリカ)CEOによると、2020年末にシード資金を調達して以来、同社のユーザー数は3倍に増加し、同時に従業員も10人から37人に増えたという。

現在、SoleSavyのコミュニティは、ユーザーがあらゆることを話し合えるSlack(スラック)のグループによるネットワークを中心に構成されている。今のところ、SoleSavyのチャットコミュニティはSlack上で運営されているものの、将来的にはメンバーのための独自のチャットハブを構築し、アプリやウェブサイトそしてオンライン上の会話を、さらに結びつけることができると、同社では考えている。より近い将来の目標は、このコミュニティを信頼できる買い手と売り手のハブに成長させ、ピア・ツー・ピアの会員制マーケットプレイスとして成功させることだ。SoleSavyは、特定の分野に特化したコミュニティが、包括的なプラットフォームに集まって成長していくという、新世代のソーシャルインターネットマーケットプレイスの最前線にいる企業と言えるだろう。

「私が構想しているのは、非常に統合されたエンド・ツー・エンドのプラットフォームです」と、プラリカ氏はTechCrunchに語った。「私はもう一度スニーカーの楽しさを盛り上げ、スニーカーに情熱を持っている人たちに楽しんでもらえるようにしたいのです」。

自由参加型のチャットグループでは、その楽しさの一部が損なわれてしまう恐れがある。不快な発言が急速に蔓延したり、司会進行役が私利私欲のためにネットワークを利用するようになることがあるからだ。SoleSavyは、よりキュレートされたアプローチを取ることで、そうなることを回避できると期待している。

筆者の上司であり、TC編集部のスニーカーヘッズであるMatthew(マシュー)は、2021年初めに行われたSoleSavyのシード資金調達を報じる記事の中で次のように述べている。

このポジティブなコミュニティの雰囲気こそが、SoleSavyの長期的な焦点であり、米国とカナダに住む4000人のメンバーに、毎日のようにグループと交流したいと思わせるSoleSavyの差別化要因であると、プラリカ氏は語っている。【略】私はこれまで、製品が発売されると大量に購入して転売することを目的とした十数種類のグループに参加してきたが、その多くは婉曲的に言えば騒々しく、率直にいうと不快だ。SoleSavyでは、そのような環境になることを避けたかったとプラリカ氏はいう。そうではなく、靴を買って履きたい人、交換したい人、そして最終的には個人的な所蔵品を転売して別の貴重な品を手に入れたいと思う人も、集まる場所になることを、SoleSavyは目指しているのだ。

同社の大規模なシリーズA資金調達は、多くの投資家がソーシャルコミュニティを中心に構築された垂直型マーケットプレイスのアイデアに興味を持っていることを示している。プラリカ氏は今回の資金調達について、今後しばらくの間は資金のことを考えずに、スニーカー市場における新たな機会を見極めながら「未来に向けた構築」に集中できるチャンスだと考えている。

SoleSavyは、これまで北米のスニーカーユーザーを中心に事業を展開してきたが、今回の多額なシリーズA資金を活用し、オーストラリア、ニュージーランド、英国、シンガポール、日本、欧州全域など、新たな市場への参入も視野に入れている。また、この資金によってポッドキャストや特集記事、オリジナルビデオ、メンバーイベントによる独自ネットワークを構築することも計画している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:スニーカーコレクションSoleSavy資金調達SNS

画像クレジット:Kwangmoozaa / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)