ロボティクス業界が2月最終週にSPACの世界への第一歩を踏み出した。Berkshire Greyが第2四半期までに株式を公開する計画を発表したのだ。これまで何度も議論してきた逆合併ルートを利用した場合の大きな問題点はさておき、さまざまな理由から同社は次の大きな一歩を踏み出すには理想的な候補といえる。
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第1にBerkshire Greyは高い実績を持ち、また注目度も高い。2020年、まだ全国がロックダウンに見舞われる前、筆者は同社の本社を訪れたのだが、同社の計画はすでにかなり積極的で、当時調達したばかりの2億6300万ドル(約281億円)のシリーズBの追い風も受けていた。どこの小売業者もAmazonという強敵に対する競争力を維持する方法としてすでに自動化に目を向けている。
Amazonはすでに世界中のフルフィルメントセンターに莫大な数のロボットを展開している。最近耳にした数字は20万台だが、それは2020年初頭の数字のため、それ以降間違いなく増えていることだろう。Locus RoboticsのCEOであるRick Faulk(リック・フォーク)氏によると「Amazonという名の企業以外なら誰にでも投資して、競争できるよう支援をしたいと考えている投資家が複数存在する」とのことで、昨今、「Amazon対世界」というかたちは普遍的な考え方になっているようだ。
画像クレジット:Berkshire Grey
巨額の資金を調達するという得意技はさておき、Berkshire Greyは工場をゼロから自動化したいと考えている企業にとって頼れる味方である。同社によると現在の倉庫の自動化状況は5%程度だという。これは以前に筆者も目にしたことのある数字であり、確かに多くのチャンスを示唆している。同社のサービスは完全自動化の提供ではないが、かなりフル機能のソリューションとなっている。
シリーズEで1億5000万ドル(約160億円)を調達したばかりのLocus Roboticsは、それとは真逆のアプローチで勝負している。Fetchのような企業と同様、同社は自動化へのプラグ・アンド・プレイ(PnP)アプローチを提供しており、顧客は初期投資が少なくすむため導入へのハードルが低い。また、テクノロジーの実装のために長期間倉庫を閉鎖する必要がないため、契約ベースの顧客や季節的なニーズにはより適切なソリューションである。
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Locus RoboticsはRaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)モデルを採用して技術を展開している。これは最近業界でもよく耳にするようになった名前だが、HaaS(「H」はハードウェア)モデルと同様、同社は超高額なマシンをそのまま販売するのではなく、基本的には貸し出しを行っている。これもまた導入へのハードルを下げるための方法であり、またロボット企業には継続的なサービスアップグレードを提供する機会を与えるものだ。
画像クレジット:Future Acres
これは、ふいに姿を現した南カリフォルニアのアグテックスタートアップFuture Acresが模索しているモデルである。Wavemaker Partners(これは食品向けロボット会社Misoも立ち上げた企業だ)からスピンアウトした同社はまだ初期段階にあるが、同社はシードインベストとしてクラウドファンディングによる資金調達も目指している。このようなルートを取るロボット企業はあまり見たことがないので、今後の展開が気になるところだ。
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ロジスティクスと同様に、アグテックはロボット投資におけるかなり巨大なカテゴリーになってきているようだ。FarmWiseは2019年に1450万ドル(約15億5000万円)のラウンドを発表し、他社の一歩先を行っていた(総額2000万ドル超え)。ベイエリアを拠点とする同スタートアップは同週、草取りロボットに農薬散布機能を追加している。
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画像クレジット:NASA/JPL-Caltech
NASAの火星探査機「Perseverance」は今週、ロボティクス界で大きく取り上げられたが、ジェット推進研究所(JPL)のモットーである「Dare mighty things(偉大なものに挑戦する)」が書かれたパラシュートで着陸した探査機は、これまでで最も美しい火星の画像を見せつけてくれた。
一方、MSCHFのライブストリームはこれとはやや異なるものとなった。しかし、幾度にもわたるフィードの中断を除けば、40回目ともなる同社の試みは期待通りの結果に終わったと言えるのではないだろうか。Spotの後部にリモートコントロール式のペイントボールガンを搭載すると発表する前に、Boston Dynamicsはこの動きを非難する声明を発表している。
弊社の使命は、社会にインスピレーションや喜び、ポジティブなインパクトを与える、驚くべき能力を持つロボットを創造し、提供することです。弊社はお客様がロボットを合法的に使用する意思があるかどうかを確認するため細心の注意を払っており、販売を許可する前にすべての購入依頼を米国政府の拒否者リストと照合しています。
画像クレジット:MSCHF
MSCHFは社名が明かされる前から注目を浴びていたようだ。少なくともロボット工学の未来についての会話に火をつけたという点で、今回の行為は成功したと言えるだろう。Boston Dynamicsは同社のロボットが時に人々をゾッとさせていることを分かっている。さまざまなロボットがコントゥアーズの音楽に合わせて踊る様子を撮影した動画は、当然バイラル動画となって世間を騒がせた。
Boston Dynamicsはとりわけ「Black Mirror(ブラック・ミラー)」のような番組のディストピア的な見方に対して否定的である。もちろんペイントボールガンは凶器ではないものの、現時点では世論もまた重要だ。同社の担当者によると「お化け屋敷でSpotを使いたいというお客様の申し出もお断りしました。弊社のテクノロジーを使って人々を怖がらせるということは、弊社の利用規約には含まれていません。同製品が人々にとって有益なものとなるということがこのケースでは想定できなかったため、販売はお断りしました」という。
アメリカ自由人権協会(ACLU)は2020年、マサチューセッツ州警察が現場でSpotを使用している様子が公開された後、こういったケースに対しての懸念を示している。そして今週、ニューヨーク市警はブロンクスの家宅侵入事件の現場で再びSpotロボットを配備した(新しい塗装と「Digidog」という名前の理由は言うまでもない)。警察にどういった感情を抱いているかによって、この行為に対する捉え方や意見は違うものとなるだろう。
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確かに警察は何十年も前から爆弾処理のためにロボティクスを活用しており、ロボット業界の多くの企業と同様に、Boston Dynamicsが国防高等研究計画局(DARPA)から初期資金提供を受けたのも事実である。現在のSpotは戦争用マシンというほどのものではないものの、ロボット進化の現段階でこのようなトピックは話し合われるべきものなのではないだろうか。なんと言っても世界には軍用ドローンが10年以上も前から存在しているのだ。
これは非常に重要な倫理的トピックである。ロボットが世に出た後のロボットメーカーの責任も当然重要だ。Boston Dynamicsはロボットを販売する際にデューデリジェンスを行っているが、ロボットを販売した後も責任を負うのだろうか?その質問にすぐ答えてくれる人は現在どこにも存在しない。
画像クレジット:Locus Robotics
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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)