倉庫業務の自動化を手がけるNimble Roboticsが約54.6億円調達

倉庫の自動化を手がけるNimble Robotics(ニンブル・ロボティクス)は米国時間3月11日、シリーズA資金調達ラウンドで5000万ドル(約54億6000万円)を調達したと発表した。

DNS Capital(DNSキャピタル)とGSR Ventures(GSRベンチャーズ)が主導し、 Accel(アクセル)とReinvent Capital(リインヴェント・キャピタル)が参加したこのラウンドで調達した資金は、同社が2021年中に従業員数を倍増させるために使われる予定だ。

スタンフォード大学の博士課程に在籍していたSimon Kalouche(サイモン・カルーシュ)氏が設立した同社のシステムは、深層模倣学習を利用している。これはロボット工学の研究では一般的な概念で、システムが模倣によってマッピングされ、改善されていく仕組みだ。

「研究室に5年間置いておき、このロボットのアプリケーションを作り上げてから最終的に現実世界で展開するのではなく、私たちは今日、展開しています」と、カルーシュ氏は語る。「これは完全な自律型ではなく、現時点では90〜95%程度の自律型です。残りの5~10%は人間のオペレーターが遠隔操作でサポートしますが、初日から信頼性が高く、1万日後も信頼性が高いと思います」。

Nimble Roboticsは、新型コロナウイルス感染流行による追い風を受けたロボット企業の1つだ。ウイルスの流行は、電子商取引の爆発的な成長と自動化に対する関心の高まりを引き起こし、倉庫のフルフィルメント業務に関するテクノロジーが著しく盛り上がる要因となった。Nimbleは、自社のシステムを迅速に展開したことからも利を得ている。

「私たちは、独自のロボットによる荷物の選別、配置、梱包を手がけた最初の企業というわけではありませんが、当社は急速に成長し、多くのロボットを現場に配備しています」と、カルーシュ氏はTechCrunchに語った。「多くの人は、ロボットを倉庫の隅に置いています。今、私たちは大量のロボットを導入しており、その数は急速に増えています。これらのロボットは現場で、それぞれのお客様のために、毎日何万もの実際の注文を処理しています」。

同社は今回、大規模な資金調達に加えて、取締役会に2人の目覚ましい人物を迎えた。スタンフォード大学でコンピュータサイエンスのセコイアプロフェッサーという地位に就くFei-Fei Li(李飛飛)氏と、Udacity(ユダシティ)の共同設立者でKitty Hawk(キティホーク)のCEOでもあるSebastian Thrun(セバスチアン・スラン)氏だ。

シード投資家でもある李氏は、このニュースに関連したリリースの中で、次のように述べている。「Nimbleは、信頼性と統合性の問題をどちらも解決します。同社のロボットは、いくつかの世界最大級の小売業者のために、1年以上にわたって、現場で信頼性の高い大規模なピッキング業務を行っています。彼らが開発しているAIを搭載した製品は、顧客である小売業者のために迅速で摩擦のない統合を実現します」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Nimble Robotics資金調達倉庫

画像クレジット:Nimble Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新たな1歩を踏み出すロボティクススタートアップたち

ロボティクス業界が2月最終週にSPACの世界への第一歩を踏み出した。Berkshire Greyが第2四半期までに株式を公開する計画を発表したのだ。これまで何度も議論してきた逆合併ルートを利用した場合の大きな問題点はさておき、さまざまな理由から同社は次の大きな一歩を踏み出すには理想的な候補といえる。

関連記事:ピックアンドプレースロボットBerkshire GreyがSPACを通じての上場を発表

第1にBerkshire Greyは高い実績を持ち、また注目度も高い。2020年、まだ全国がロックダウンに見舞われる前、筆者は同社の本社を訪れたのだが、同社の計画はすでにかなり積極的で、当時調達したばかりの2億6300万ドル(約281億円)のシリーズBの追い風も受けていた。どこの小売業者もAmazonという強敵に対する競争力を維持する方法としてすでに自動化に目を向けている。

Amazonはすでに世界中のフルフィルメントセンターに莫大な数のロボットを展開している。最近耳にした数字は20万台だが、それは2020年初頭の数字のため、それ以降間違いなく増えていることだろう。Locus RoboticsのCEOであるRick Faulk(リック・フォーク)氏によると「Amazonという名の企業以外なら誰にでも投資して、競争できるよう支援をしたいと考えている投資家が複数存在する」とのことで、昨今、「Amazon対世界」というかたちは普遍的な考え方になっているようだ。

画像クレジット:Berkshire Grey

巨額の資金を調達するという得意技はさておき、Berkshire Greyは工場をゼロから自動化したいと考えている企業にとって頼れる味方である。同社によると現在の倉庫の自動化状況は5%程度だという。これは以前に筆者も目にしたことのある数字であり、確かに多くのチャンスを示唆している。同社のサービスは完全自動化の提供ではないが、かなりフル機能のソリューションとなっている。

シリーズEで1億5000万ドル(約160億円)を調達したばかりのLocus Roboticsは、それとは真逆のアプローチで勝負している。Fetchのような企業と同様、同社は自動化へのプラグ・アンド・プレイ(PnP)アプローチを提供しており、顧客は初期投資が少なくすむため導入へのハードルが低い。また、テクノロジーの実装のために長期間倉庫を閉鎖する必要がないため、契約ベースの顧客や季節的なニーズにはより適切なソリューションである。

関連記事:フレキシブルな倉庫自動化ソリューションのLocus Roboticsが欧州、アジア進出に向け約159億円調達

Locus RoboticsはRaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)モデルを採用して技術を展開している。これは最近業界でもよく耳にするようになった名前だが、HaaS(「H」はハードウェア)モデルと同様、同社は超高額なマシンをそのまま販売するのではなく、基本的には貸し出しを行っている。これもまた導入へのハードルを下げるための方法であり、またロボット企業には継続的なサービスアップグレードを提供する機会を与えるものだ。

画像クレジット:Future Acres

これは、ふいに姿を現した南カリフォルニアのアグテックスタートアップFuture Acresが模索しているモデルである。Wavemaker Partners(これは食品向けロボット会社Misoも立ち上げた企業だ)からスピンアウトした同社はまだ初期段階にあるが、同社はシードインベストとしてクラウドファンディングによる資金調達も目指している。このようなルートを取るロボット企業はあまり見たことがないので、今後の展開が気になるところだ。

関連記事:Future Acresがブドウ収穫を助ける自律農作物運搬ロボット「Carry」を発表し起ち上げ

ロジスティクスと同様に、アグテックはロボット投資におけるかなり巨大なカテゴリーになってきているようだ。FarmWiseは2019年に1450万ドル(約15億5000万円)のラウンドを発表し、他社の一歩先を行っていた(総額2000万ドル超え)。ベイエリアを拠点とする同スタートアップは同週、草取りロボットに農薬散布機能を追加している。

関連記事:全自動除草ロボットサービスのFarmWiseが薬物散布機能を追加

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAの火星探査機「Perseverance」は今週、ロボティクス界で大きく取り上げられたが、ジェット推進研究所(JPL)のモットーである「Dare mighty things(偉大なものに挑戦する)」が書かれたパラシュートで着陸した探査機は、これまでで最も美しい火星の画像を見せつけてくれた。

一方、MSCHFのライブストリームはこれとはやや異なるものとなった。しかし、幾度にもわたるフィードの中断を除けば、40回目ともなる同社の試みは期待通りの結果に終わったと言えるのではないだろうか。Spotの後部にリモートコントロール式のペイントボールガンを搭載すると発表する前に、Boston Dynamicsはこの動きを非難する声明を発表している。

弊社の使命は、社会にインスピレーションや喜び、ポジティブなインパクトを与える、驚くべき能力を持つロボットを創造し、提供することです。弊社はお客様がロボットを合法的に使用する意思があるかどうかを確認するため細心の注意を払っており、販売を許可する前にすべての購入依頼を米国政府の拒否者リストと照合しています。

画像クレジット:MSCHF

MSCHFは社名が明かされる前から注目を浴びていたようだ。少なくともロボット工学の未来についての会話に火をつけたという点で、今回の行為は成功したと言えるだろう。Boston Dynamicsは同社のロボットが時に人々をゾッとさせていることを分かっている。さまざまなロボットがコントゥアーズの音楽に合わせて踊る様子を撮影した動画は、当然バイラル動画となって世間を騒がせた。

Boston Dynamicsはとりわけ「Black Mirror(ブラック・ミラー)」のような番組のディストピア的な見方に対して否定的である。もちろんペイントボールガンは凶器ではないものの、現時点では世論もまた重要だ。同社の担当者によると「お化け屋敷でSpotを使いたいというお客様の申し出もお断りしました。弊社のテクノロジーを使って人々を怖がらせるということは、弊社の利用規約には含まれていません。同製品が人々にとって有益なものとなるということがこのケースでは想定できなかったため、販売はお断りしました」という。

アメリカ自由人権協会(ACLU)は2020年、マサチューセッツ州警察が現場でSpotを使用している様子が公開された後、こういったケースに対しての懸念を示している。そして今週、ニューヨーク市警はブロンクスの家宅侵入事件の現場で再びSpotロボットを配備した(新しい塗装と「Digidog」という名前の理由は言うまでもない)。警察にどういった感情を抱いているかによって、この行為に対する捉え方や意見は違うものとなるだろう。

関連記事:Boston Dynamicsのロボットの警察演習映像に関し市民団体が情報請求

確かに警察は何十年も前から爆弾処理のためにロボティクスを活用しており、ロボット業界の多くの企業と同様に、Boston Dynamicsが国防高等研究計画局(DARPA)から初期資金提供を受けたのも事実である。現在のSpotは戦争用マシンというほどのものではないものの、ロボット進化の現段階でこのようなトピックは話し合われるべきものなのではないだろうか。なんと言っても世界には軍用ドローンが10年以上も前から存在しているのだ。

これは非常に重要な倫理的トピックである。ロボットが世に出た後のロボットメーカーの責任も当然重要だ。Boston Dynamicsはロボットを販売する際にデューデリジェンスを行っているが、ロボットを販売した後も責任を負うのだろうか?その質問にすぐ答えてくれる人は現在どこにも存在しない。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:SPAC

画像クレジット:Locus Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

海底マッピングロボティクスのBedrockが8.7億円調達、洋上風力発電に注力

「誰も海洋のためのSpaceXのような企業を設立していなかったというのはかなり奇妙に思えます」とAnthony DiMare(アンソニー・ディマレ)氏はTechCrunchに語った。「この分野に取り組む大手の現代テクノロジー企業はまだありません」。

ディマレ氏は2020年Bedrock Ocean Exploration(ベッドロック・オーシャン・エクスプロレーション)をCharles Chiau(チャールズ・チャウ)氏と共同で創業した。チャウ氏はこの分野に専門のロボティクスを持ち込み、一方でディマレ氏は海洋分野での経験を持っている。船隊のロジスティック計画を専門とする同氏の前の会社Nautilus Labは2019年にシリーズAで1100万ドル(約11億9000万円)を調達している。

同スタートアップを退職した後、サンフランシスコでの夕食でチャウ氏と出会った、とディマレ氏は話す。2人は海底マッピングにおける課題と機会について話し合った。そして米国時間3月11日、BedrockはEniac Ventures、Primary Venture Partners、Quiet Capital、R7がリードするシードラウンドで800万ドル(約8億7000万円)を調達したと発表した。

海洋の80%超がまだマップ化されていない、とBedrockは指摘する。そしてマップ化されたものは往々にしてかなり低解像度だ。資金調達に関するプレスリリースの中で、CEOは「月や火星の表面の方が、海底よりもマップ化され、研究されている」と述べた。

調達した資金は提携の締結、それから同社のロボティクスとクラウドプラットフォームの構築に充てられる。現在のBedrockのチームには、ShellがスポンサーとなっているX prize海底コンペティションからの参加者も含まれているが、資金でチームも増強する予定だ。

Bedrockのテクノロジーの活用法の1つが、海底ケーブルの設置だ。「今のところ、海底ケーブル設置は基本的に1回限りです」とディマレ氏は話す。「もし米国と中国の間にケーブルを敷設する必要があるなら、最も効率的なルートを推測で見積もり、そのエリアを調査し、ケーブル敷設に必要な情報が得られることを祈ります。しかし何かあれば、経路変更する必要があります」。

洋上風力発電もBedrockにとって潜在的な主要成長分野だ。「現在、石油企業とは働いていません。石油業界の方に向かう必要があるかどうかわかっていませんでした。ありがたいことに、洋上風力発電がまさに爆発的に拡大しています。文字どおり当社がフォーカスできるこの洋上風力分野でなすべき多くのことがあります」とディマレ氏は話した。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Bedrock Ocean Exploration資金調達

画像クレジット:Bedrock

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

眼科手術ロボットスタートアップForSightが約11億円を調達

イスラエルを拠点とするForSight Roboticsは米国時間3月9日、メガシードラウンドとして1000万ドル(約11億円)を調達したこと発表した。Eclipse VenturesとMithril Capitalが主導するこのラウンドは、ロボット手術プラットフォームのローンチに必要な各種規制当局の承認を得られるまでの間、同社のサービスを国際市場に提供するための人員と世界的なリーチの拡大に向けられる。

ForSightの手術プラットフォームは特に眼科の手術用に設計されており、非常に高い精度が要求される分野だ。また、非常に需要の高い製品でもある。同社はBritish Journal of Ophthalmologyの最近の研究を引用して、資格のある眼科医の数は先進国では100万人あたり約72人だが、一方発展途上国では先進国では100万人あたりわずか3.7人だとしている。

「これは当社が開発した独自技術です。ロボット工学、視覚化、機械学習が利用されています」と共同ファウンダー兼CEOのDaniel Glozman(ダニエル・グロズマン)氏はTechCrunchに語っている。「これを組み合わせることで、医師は手術を民主化することができるようになります。世界中のすべての医師がこの手順を完成させ、より均一な方法で眼科手術を行うことができるようになるのです」。

ForSightは初期段階のスタートアップとしては、すばらしい実績がある。注目すべきは、Intuitive SurgicalとAuris Healthの共同創設者であるFred Moll(フレッド・モール)博士が、Mako SurgicalのRony Abovitz(ロニー・アボビッツ)氏とMithrilのAjay Royan(アジェイ・ロヤン)氏とともに、同社の戦略顧問委員会に参加していることだ。くわえて、6人の眼科医も臨床諮問委員会のメンバーとなっている。

2020年に指摘したように、医療・外科系のスタートアップはVCにとってホットなカテゴリーであり、特にシードステージでは資金調達総額の約4分の1を占めている。約600〜700社が2019年に資金を調達しており、ForSightはそれに見合うだけの関心を持たれているようだ。同社の目標はその技術をさまざまな市場に提供し、質の高い眼科手術を受けるための競争条件を平等にすることだ。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ForSight資金調達医療

画像クレジット:ForSight Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

自転車レーンや車道を走行し高速移動が可能なラストマイル配達ロボットのRefraction AIが約4.6億円を調達

米国時間3月8日、ミシガン大学のあるアナーバーを拠点とするRefraction AIがシードラウンドで420万ドル(約4億6000万円)を調達したと発表した。同社を創業したのはミシガン大学の教員でCTOのMatthew Johnson-Roberson(マシュー・ジョンソン – ロバーソン)氏と同大学教員のRam Vasudevan(ラム・バスデバン)氏で、多くの配達ロボットが引き起こすさまざまな問題を解決しようとしている。同社は2019年のTechCrunch Sessions:Mobility stageに登場した

同社が自転車をベースに作った初期プロトタイプのREV-1ロボットは、よくあるように歩道を移動するロボットではなく、自転車レーンや車道を走行する設計になっている。このように他とは異なるアプローチをとることで高速移動が可能となり(最速で時速15マイル、約24km)、歩道を移動する際に歩行者をよけるという厄介な問題が減る(代わりに、狭いレーンを自転車と共有するという新たな問題は発生するが)。

Refraction AIは現在、地元のアナーバーで少数のロボットをテストしている。Pillar VCが主導したシードラウンドの資金はR&D、サービス範囲の拡大、顧客の獲得に使われる予定で、食料品店とレストランの配達を扱う。Pillar VC以外にはeLab Ventures、Osage Venture Partners、Trucks Venture Capital、Alumni Ventures Group、Chad Laurans(チャド・ローランズ)氏、Invest Michiganが投資した。

他との違いとしてもう1つ、LiDARではなくカメラを使っている点が挙げられる。技術的なトレードオフはあるが、価格が安くロボットを短期間に増やせる利点がある。制限はあるものの、米国北中西部の気象条件にも左右されにくい。あなたが悪天候の中を歩きたくないならロボットもおそらく歩きたくないでしょう、と同社は言っている。

同社CEOのLuke Schneider(ルーク・シュナイダー)氏は資金調達に関するリリースの中で「我々のプラットフォームは既存のテクノロジーを革新的に用いて、必要なものを必要なときに必要とする人々のいる場所で提供します。企業が支払うコストを削減し、道路の混雑を緩和し、二酸化炭素排出量を減らしながらこれを実現します」と述べている。

今回調達した資金で地元アナーバー以外にも運用を広げる計画だが、どこでテストをするかは発表されていない。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Refraction AI物流ロボット配達

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

ロボット構造の硬度を変化させる自然現象の影響を受けた新たなケーブル技術

ソフトロボティクスというサブカテゴリーは、この分野に対する多くの人々の考え方を変えた。自然現象の影響を強く受けたこの技術は、ロボットを論じるときに従来考えられていたような硬い構造とはまったく異なるアプローチを提供する。

ソフトなロボットのデザインには、製造業およびフルフィルメント分野においてすでに多くの実世界での応用例を含む、多くの利点がある。しかしより剛性の高いロボットと同様に、柔軟なロボットにも限界がある。そのため設計者は通常、与えられた仕事のためにどちらか一方を選択するか、あるいはよくて部品交換が可能な設計をすることになる。

関連記事:MITがソフトロボティクスの制御を最適化する新手法を開発

マサチューセッツ工科大学(MIT)のCSAILラボのチームは、そのトレードオフを少なくする技術を研究している。このプロジェクトは2017年から始まっているが、まだプロジェクトは初期段階にあり、詳細は新しい論文で概要が説明されているものの、大部分はコンピュータシミュレーションの領域である。

「これは私たちが両方の世界の良いところを得ることができるかどうかを試す、最初のステップです」と、CSAILのJames Bern(ジェームズ・バーン)博士研究員はリリースで述べている。

プロジェクトでは(シミュレーション版ではあるが)ロボットは、一連のケーブルによって制御される。適切な組み合わせでそれらを引っ張ると、ソフトな構造がハードな構造に変わる。チームは「正しい筋肉を屈曲させれば、効果的に位置を固定することができます」と、人間の腕を制御する一連の筋肉に例えた。

チームは2021年4月の会議で、発見内容を発表する予定だ。同チームは現在のところ、実際の環境でどのように動作するかを示すプロトタイプの開発に取り組んでいる。この2つの分野を組み合わせることで、人間の労働者と共同で働くより安全な作業ロボットの開発に向けた道が開けるかもしれない。

関連記事:安価な市販素材でMITがソフトロボットの皮膚となる触覚センサーを開発

カテゴリー:ロボティクス
タグ:MIT

画像クレジット:MIT CSAIL

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

建機の遠隔操作や自動操縦で建設現場のDXを進める東大発スタートアップARAVがシードラウンドで6300万円を調達

建設現場のDXを進めるARAV(画像は同社HPより)

建設現場のDXを進めるARAV(画像は同社HPより)

建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAVは3月8日、シードラウンドにおいて第三者割当増資による6300万円の資金調達を行ったと発表した。引受先は東京大学協創プラットフォーム開発(IPC)となる。今回の資金調達で建機の遠隔操作システムパッケージ化などを進めていく考えだ。

ARAVは2020年4月に設立し、ロボット工学を用いて建機の遠隔操作や自動操縦に取り組み、既存の重機に後づけするプロダクトを開発している。建設現場のDXを促進し、研究・開発・実証実験を通じて収集・解析したビッグデータを活用することで、建設現場が抱える課題の解決を目指す。

会社設立から1年経たずにARAVは事業を大きく拡大する。

2020年4月に設立して以来、同社は国土交通省の「建設現場の生産性を向上する革新的技術」に選定されたほか、伊藤忠TC建機と建設機械の遠隔操作実用化に関する開発業務委託契約も結んでいる。

伊藤忠TC建機とは、ARAVの建設機械遠隔操作装置技術をベースに災害対策用遠隔建設機械操作システムの早期実用化を目指す。今後、実際の救助や普及作業を行う消防組織、地方自治体、災害救助犬組織とも連携し、実証実験を行う予定だ。また、現在10社以上の建機メーカーらと遠隔および自動化の共同開発を行っているという。

今回の調達資金では事業投資と採用活動の強化していく。特に遠隔操作システムのパッケージ化や自動制御システム開発を行う方向だ。

遠隔操作では、災害時や製鉄所といった過酷な労働環境下における対応を進め、実用化を目指す。一方、自動制御システムは単純な反復作業がともなう現場を改善していくため、開発に注力していく。

この他にもARAVは、建機メーカーだけでなく建機のリース会社とも提携して、特殊な建機を購入せずに遠隔操作や自動運転できる建機を日本中で利用できる環境を整備していく。

ARAVの白久レイエス樹代表は東大IPCからの資金調達について「取引先企業様と実証実験した成果を踏まえた量産化準備に向け、β版の生産体制を構築するための人材採用を強化し、ベンチャー企業としてさらなるDXソリューションを提供できるよう取り組んでいく」とコメントした。

日本生産性本部の調査によると、建設業界は年間60兆円という市場規模を持ちながら、1990年代以降の労働生産性は横ばいとなっている。労働時間は他産業と比べて年間300時間も多く、過酷な労働環境は若年層の定着率低下を招く一因となっている。しかし、国交省によると、業界内の労働人口における高齢者(60歳以上)は全体で4分の1以上を占めるなど、人手不足の改善、生産性向上が大きな課題となっている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ARAV建設DX日本資金調達

Ankiの秀作トイロボットCozmoとVectorが2021年にグローバル市場で再起予定

優れたロボットは死なない。その価値に対してより高い値を付けた者に、持ち主が変わるだけだ。2019年にAnkiが早すぎる自壊をしたときは、Digital Dream LabsがそのIPを拾い集めた。このピッツバーグのEdTech企業は当初、VectorとCozmoを2020年のどこかの時点で再起させようとして、2020年3月にKickstarterキャンペーンを立ち上げた。

クラウドファンディングで最終的に180万ドル(約2億円)を調達した同社は米国時間3月5日、懸案とんなっていた再起をグローバルな流通企業の力を借りて行う、と発表した。

CEOのJacob Hanchar(ジェイコブ・ハンチャー)氏は「このロボットは、今でも需要が極めて大きい。これまでもCozmoとVectorの再起に備えて努力を積み重ねてきたが、今回は流通とのパートナーシップにより条件が整い、ホリデーシーズンにはお店の棚に並ぶことになるだろう」と語る。

このロボットは、今でも欲しい人がたくさんいることは確実だ。特に人気が高かったのはCozmoで、かなり売れたし、Ankiは巨額の資金を獲得したが、同社も多くのロボットスタートアップを襲った宿命から逃れられなかった。

これらのマシンが市場に再登場したら、何が起きるか楽しみだ。Ankiは彼らを生むために大量のリソースを投じており、その中にはPixarとDreamWorksの元スタッフたちもいる。ロボットを本当に生きてるような感じにするために、彼らが起用された。またロボットに個性を持たせるためにも工夫が施され、Vectorの一部のオーナーはそのロボットをオープンソースにしている。一方Cozmoは、発売後に同社のアプリでプログラマブルな機能を持つ予定だった。

Spheroなどの企業が、ロボットを初めいろいろな製品で挑戦しているSTEM市場にも、おもしろい効果が生まれるだろう。かなり混雑した市場だが、Ankiの新しいオーナーであるDigital Dream Labsには、魅力的で複雑な感情表現のできるトイロボットという、前任者たちが作った堅固な事業基盤がすでにある。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Digital Dream Labs

画像クレジット:Veanne Cao

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

遠隔操作ロボでの商品配達テストをグローサリー大手Albertsonsが開始、店舗から約4.8km以内の顧客が対象

Safeway(セーフウェイ)やJewel-Osco(ジュエル・オスコ)を展開するグローサリー大手のAlbertsons Companies(アルバートソンズ・カンパニーズ)は、シリコンバレースタートアップTortoise(トートイズ)が開発したリモート操作の配達ロボットを使ったグローサリー配達パイロットプログラムを立ち上げた。

配達試験は北カリフォルニアにあるSafeway2店舗で開始するが、もし成功すれば他の店舗にも拡大し、西海岸全域で試験を行うかもしれない、とTortoiseの共同創業者で会長のDmitry Shevelenko(ドミトリー・シェべレンコ)氏は述べている。

Tortoiseのセンサーとソフトウェアを搭載するSafewayブランドの配達カートは店舗から3マイル(約4.8km)内の顧客に商品を届けることができる。何千マイルも離れたところから遠隔操作するオペレーターが配達カートを目的地まで誘導する。

ロック可能な4つのコンテナに最大120ポンド(約54kg)のグローサリーを載せることができる配達カートは、まずは人間のエスコートつきで展開される。試験がうまくいけば、そうしたガイドを排除することを目指す。配達ロボットが到着すると、顧客は外に出てグローサリーをピックアップするようテキストメッセージを受け取る。

今回の試験は大規模小売店が顧客により早く商品を届けようとテクノロジーを導入する最新の事例だ。Amazon(アマゾン)、Kroger(クローガー)、Walmart(ウォルマート)なども配達ロボットを実験し、また顧客への配達あるいは配送ネットワーク内で商品を動かすのに自動走行車両を使っている。

「当社のチームは、顧客にさらなる利便性を提供できる革新的なテクノロジーを試すことに夢中です」と副社長で最高顧客・デジタル担当責任者のChris Rupp(クリス・ラップ)氏は声明で述べた。「業界で最も簡単で便利な買い物エクスペリエンスを提供すべく、画期的なイノベーションをすばやくテストして学習し、導入することに前向きです」。

この配達試験はまた、Tortoiseの配達カートへの参入の証でもある。同社が1年弱前に参入した分野だ。

「4月までこうした考えはありませんでした」とシェべレンコ氏は最近のインタビューで話した。同氏によると、2020年10月にロサンゼルスで最初の配達カートを立ち上げた

関連記事:遠隔操縦宅配カートがロサンゼルスの食料品店で活躍中

Tortoiseは、遠くにいる遠隔オペレーターが電動スクーターやバイクをライダーの元へと動かしたり、正しい駐輪スポットに戻したりできるよう、電動スクーターにカメラやエレクトロニクス、ファームウェアを装備して事業を開始した。2020年春、新型コロナウイルスパンデミックによって配達サービス需要が生まれ、Tortoiseは同社のテクノロジーをグローサリー運搬カートに適用した。

「Amazon Primeのサービス開始後、多くの人が2日での配達を期待するようになった後では、7日というのは『一生』のように感じられます」。現在、同日配達が期待されるようになり、2日での配達も「一生」のように感じてしまいます、ともシェべレンコ氏は付け加えた。

Tortoiseはまず、オンライングローサリープラットフォームとの提携を通じて近所の店や専門ブランド店にフォーカスした。シェべレンコ氏の戦略は、小規模で独立した店舗にリーチできるオンラインコマースプラットフォームとの提携を維持しながら大手小売店と提携を結ぶというものだ。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:AlbertsonsTortoise

画像クレジット:Tortoise/Albertsons

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Preferred Networksと鹿島建設が建築現場用ロボ向けAI搭載自律移動システム開発、GNSS計測不可の屋内も対応

Preferred Networksと鹿島建設が建築現場用ロボ向けにAI搭載自律移動システムを開発

鹿島建設Preferred Networks(PFN)は3月4日、建築現場で使用するロボットが現場内を自律移動するためのシステム「iNoh」(アイノー)を共同開発したと発表した。

同システムを搭載することで、GNSS(全球測位衛星システム)や人による事前設定がない状態でも、各種ロボットがリアルタイムに自己位置や周辺環境を認識し、日々刻々と状況が変化する現場内を安全かつ確実に移動できるようになる。また、iNohを初搭載したAI清掃ロボット「raccoon」(ラクーン)を開発し、首都圏の現場に導入を開始した。

今後、raccoonを鹿島の建築現場に順次展開していく。あわせて、iNohを巡回ロボットや資材搬送ロボットなどに搭載し、建築現場へのロボットの普及・展開を促進するという。さらには、自律移動が求められる他産業ロボットへの展開も視野に入れて、iNohのさらなる機能向上に取り組む。

現在鹿島は、生産性向上や働き方改革の実現に向けて、建築現場でのロボット活用を進めているという。一方PFNは、自動運転やロボットの自律移動に必要な深層学習による高度な物体認識・制御等の技術を有しており、その実用化を目指し、建設業界向けには鹿島と共同研究に取り組んできたそうだ。

建築現場は、工事の進捗に応じて作業場所や周辺状況が刻々と変化すると同時に、屋内での作業が多くGNSSによる位置計測が行えない。このため、建築現場内におけるロボットの自律移動の実現には、そのような状況下でも開口部、資機材、高所作業車などの移動物や障害物、立入禁止エリア、さらには作業員を安全かつ確実に回避できる必要があり、実用化には多くの技術的課題があるという。

両社は、これらの課題解決に取り組む共同研究を2018年に開始。その後、現場の画像、3Dデータ、図面情報の収集および深層学習、コストを含めた実用的なセンサー構成の検討、現場での試行実験を積み重ね、iNohの開発に至った。今後、さらにデータを蓄積し、環境認識精度を継続的に向上させる予定としている。

Preferred Networksと鹿島建設が建築現場用ロボ向けにAI搭載自律移動システムを開発

自律移動システム「iNoh」のイメージ図

iNohの主な機能

  • マルチセンサーによる自己位置推定および3次元空間マッピング(SLAM技術):魚眼カメラ、LiDAR(レーザー照射による測距装置)、IMU(慣性計測装置)など複数センサーを統合することで、変化の激しい非GNSS環境においても自己位置の正確な推定が可能。また、得られたデータから3次元空間をマッピング
  • 深層学習による高度な周辺環境認識:深層学習技術を用いて現場の膨大な画像データを学習することにより、障害物や高所作業車などの移動物、立入禁止エリア、作業員などを正確に、かつ安定して認識可能
  • リアルタイムナビゲーション:ロボットが自己位置や周辺環境を認識し、障害物を回避した作業ルートをリアルタイムに自動生成するため、作業範囲を限定するマーカー類の設置など、人による事前設定が不要であり、現場納入後、即座に利用可能

また両社は、iNohを初実装した建築現場用のAI清掃ロボット「raccoon」を共同開発した。raccoonはふたつの清掃モードを搭載しており、本体の操作画面から最短3タッチの指示で、コンクリート床面にあるゴミや粉塵を自律移動しながら清掃する。raccoonを首都圏の複数現場に試験導入したところ、100分の連続稼働で約500㎡のエリアを清掃できるなど、iNohの実用性を確認できたそうだ。

Preferred Networksと鹿島建設が建築現場用ロボ向けにAI搭載自律移動システムを開発

raccoonに搭載された各種センサー

Preferred Networksと鹿島建設が建築現場用ロボ向けにAI搭載自律移動システムを開発

おまかせ清掃モード(raccoonの操作画面)。現場内の地図や作業員の指示がなくても、自ら清掃可能エリアを探索しながら自律清掃する

Preferred Networksと鹿島建設が建築現場用ロボ向けにAI搭載自律移動システムを開発

領域清掃モード(raccoonの操作画面)。清掃可能エリアの地図を自動作成後、連携する施工図面上から清掃領域の指定が可能

関連記事
Preferred NetworksがAI・高度IT人材育成に向け機械学習・深層学習コンテンツ4種を公開
Preferred Networksが教育事業に参入、独自のプログラミング教材「Playgram」を開発
トヨタがAIスタートアップのPreferred Networksと提携 支援サービスロボット開発へ
宇宙で活躍するロボット労働力の供給を目指す日本のGITAIが18億円の資金調達を完了
Preferred Networksが中外製薬と東京エレクトロンから9億円を調達、深層学習技術を用いた共同研究へ

カテゴリー:ロボティクス
タグ:AI / 人工知能(用語)鹿島建設(企業)Preferred Networks(企業)LiDAR(用語)日本(国・地域)

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

農業用自動収穫ロボットの開発を行う、宮崎県拠点のAGRISTは3月3日、第三者割当増資による資金調達を発表した。調達額は非公開。引受先は、ドーガン・ベータおよび宮崎太陽キャピタルがそれぞれ運営する投資事業組合、ENEOSイノベーションパートナーズ、宮銀ベンチャーキャピタル、ジャフコ グループおよびインキュベイトファンドがそれぞれ運営する投資事業組合。

同社は今後、ピーマンの生産地として知られる茨城県神栖市でピーマン自動収穫ロボットの実証実験を開始する。また埼玉県深谷市主催の「DEEP VALLEY Agritech Award」(ディープバレーアグリテックアワード)で最優秀賞を受賞しており、深谷市できゅうり自動収穫ロボット導入を予定。2021年春には関東にオフィスを開設し、2021年末までに合計25名のエンジニアを宮崎県と首都圏で採用予定としている。

代表取締役兼最高経営責任者の齋藤潤一氏によると、この人材募集について、外資系含め大手企業出身の方からの問い合わせもあるという。最大年収を2000万円としており、スタートアップだから給与が安い、地方企業だから安いということはなく、本気で世界を目指す人を採用したいと明かした。

テクノロジーこそが、地域・地方という壁を越えて勝負できる強みに

AGRISTは、「テクノロジーで農業課題を解決する」をミッションに掲げるスタートアップ。齋藤氏は、2017年から宮崎県新富町の農家と勉強会を開催し、その中で現場の農家からロボットの必要性、DXの必要性に関する声を聞き続けてきたという。取締役・最高技術責任者の秦裕貴氏との出会いの後2019年に試作機を開発し、地域金融機関やベンチャーキャピタルなどから資金調達を実施した。

2020年には、国のスマート農業実証実験で6台のロボットを農研機構に販売したそうだ。また、国内のビジネスプランコンテストで8つの賞を受賞。2021年からは、宮崎県から全国に販路を拡大し、地方から世界の農業課題を解決するグローバルベンチャーへと成長し、同社ビジョンである「100年先も続く持続可能な農業」を実現するという。

齋藤氏は、「人口1万7000人の町から上場企業を生み出したい」「地方を元気にしたい」と考えており、また「テクノロジーこそが地域・地方という壁を越えてオールフラットで勝負できる強みになると証明したい」と明かした。

農家の声を徹底的に聞く「アジャイル型のロボット開発」でシンプルさを追及した自動収穫ロボット

同社の農業用自動収穫ロボット「L」は、ビニールハウス内で自分の位置を把握しつつ、ワイヤーから吊り下がった状態で移動する方式を採用している(露地栽培は不可)。有線で電力を供給し、モーターにより駆動する。

地面にはレールなどを敷設する必要はなく、ワイヤーも一般的な農業資材の鋼線を利用しているという。この吊り下げ式については、世界展開を想定し国際特許(PCT国際特許)を出願しているそうだ。

また、カメラ画像からピーマンとサイズを認識し、画像データを蓄積しながら深層学習を行うようにしており、利用頻度と並行しロボットの能力が向上するという。ハウス内の現在位置を基にハウス各所の収量分布データ化も実施している。

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達収穫時には、アームにより野菜(ピーマン)を収穫。アームは上下・奥行き方向に伸縮、ピーマンの茎を巻き取りながら切断する。切り取ったピーマンは、本体のリザーブタンクで一時保管し、ある程度溜まったらコンテナに放出する。収穫を行うアームのハンド部分は2段切りという手法を採用しており、こちらも国際特許を出願している。

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

農業用自動収穫ロボットは、ハウス内の20%を8時間で収穫可能で、年間累計で一般的なパート以上の収穫を実現できるという。一般的なパートと比較した場合、時間あたりの収量は落ちるものの、夜間・休日も作業可能なため、年間累計収穫量はパート水準を上回るそうだ。またこの点については、24時間対応を目指しているという。

齋藤氏によると、他にも収穫ロボットはあるものの、同社ロボットは機能性や究極のシンプルさを追求しているという。

同社は、農家のハウスを実証実験の場として借り、その隣に開発拠点を設けて、農家の声を徹底的に聞くことにこだわり続けている。顧客である農家の課題解決を目指す「顧客ドリブン」により、道具のようなシンプルさにたどり着いたそうだ。

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

軽トラ奥が開発ラボという

最初から完璧さを目指すのではなく、プロトタイプを出して農家の反応を確認し改良を繰り返すという、いわば「アジャイル型のロボット開発」を行った。

またロボットのソフトウェア面も、オープンソースソフトウェアのROS(Robot Operating System)を採用することでソフトウェア構成のシンプルさを追及しているという。

さらに「agris」(アグリス)というOSの開発も進めており、将来的には、ロボットが収集した野菜のデータを集積・活用し、病害虫の早期発見サービスなどのビジネスも手がけ、データドリブンの企業として世界展開することを考えているとした。セールスフォースなどのCRMソリューションのアグリ版といったイメージだ。

そういったテクノロジーをフル活用することで、小さな町からでもアフリカやアジアなどへの進出も狙えると考え、事業を展開しているとしていた。

関連記事
果菜類の植物工場および完全自動栽培の実現を目指すHarvestXが5000万円を調達
米の銘柄判定をAI搭載スマホアプリで実現する「RiceTagプロジェクト」の実証実験が成功
水田向けスマート農業サービス「paditch」開発・運営を手がける笑農和が1億円を調達
個人農家向け栽培管理アプリ「アグリハブ」がJA全農「Z-GIS」向けサービス開始
農業×AIにより独自の農産物栽培方法を確立し農家支援を行うHappy Qualityが資金調達
産業用リモートセンシングのスカイマティクスが日本初のAI米粒等級解析アプリ「らいす」公開
農業用土壌水分センサー・灌水制御・ビニールハウスソリューションのSenSproutが資金調達
自動野菜収穫ロボのinahoが実証事業・補助金プロジェクト3種類に採択
プロ農家の栽培技術を動画で継承するAGRI SMILEが4000万円調達、JA蒲郡市で導入へ

カテゴリー:ロボティクス
タグ:農業 / アグリテック(用語)資金調達(用語)食品(用語)日本(国・地域)

Uberが配達ロボット事業を独立会社Serve Roboticsとしてスピンアウト

Uber(ウーバー)が2020年に26億5000万ドル(約2830億円)で買収したオンデマンド配達スタートアップのロボティクス部門Postmates Xが正式にServe Robotics(サーブロボティクス)という会社としてスピンアウトした。

TechCrunchはディールが投資家に密かに示されたと2021年1月に報じている。

関連記事
UberがフードデリバリーPostmatesの買収を完了
UberがフードデリバリーPostmatesの自律型宅配ロボット部門のスピンアウトを計画中

Postmates Xが開発し、パイロット運用した歩道を自動走行するロボットにちなんだ社名のServe RoboticsはベンチャーキャピタルファームNeoがリードしたラウンドでシード資金を調達した。本ラウンドに参加した投資家はUber、Lee Jacobs(リー・ジェイコブス)氏とCyan Banister(シアン・バニスター)氏のLong Journey Ventures、Western Technology Investment、Scott Banister(スコット・バニスター)氏、Farhad Mohit(ファルハド・モヒット)氏、そしてPostmatesの共同創業者Bastian Lehmann(バスティアン・レーマン)氏とSean Plaice(ショーン・プレイス)氏だ。

Serve Roboticsは、まだクローズしていないシリーズAとなる本ラウンドを認めただけで具体的な内容は明らかにしなかった。スピンアウトの資金調達は最初のトランシェは立ち上げ時に、残りはIPが移行したときに、と段階を踏んで行わることがある。

新会社はPostmates Xを率いていたAli Kashani(アリ・カシャニ)氏が運営する。他の共同創業者にはPostmates時にServeのチームに加わった最初のエンジニアであるDmitry Demeshchuk(ドミトリー・デメシュチュク)氏、元Ankiプロダクト責任者でServeでプロダクト戦略を率いてきたMJ Chun(MJ・チュン)氏がいる。Serve Roboticsの従業員は60人で、本社をサンフランシスコに置き、ロサンゼルスとカナダ・バンクーバーにもオフィスを構える。

画像クレジット:Serve Robotics

「自動運転車がドライバーを不要にした一方で、ロボット配達はクルマそのものを不要にし、配達を持続可能なものに、そしてすべての人がアクセスしやすいものにします」と共同創業者でCEOのカシャニ氏は話した。「次の20年で新しいモビリティロボットはまずは食品の配達、それからその他のものへと我々の暮らしのあらゆるところに入ってきます」。

Postmatesの歩道配達ロボットへの参入は、カシャニ氏のスタートアップLox Incをひっそりと買収した後の2017年に本格的に始まった。Postmates Xのトップとしてカシャニ氏は「なぜ重さ2ポンド(907グラム)のブリトーを重量2トンもあるクルマで運ぶのか」という疑問に答えようと試みた。Postmatesは初のServe自動走行配達ロボを2018年12月に発表した。デザインはほぼ同じだが異なるLiDARセンサーを搭載し、他にもいくつかアップグレードされている第2世代は、ロサンゼルスでの商業立ち上げ前の2019年夏に登場した。

事業拡大に目を向けているとはいえ、歩道の自動走行を専門とする配達ロボットをデザイン・開発・運用するという同社のミッションは続いている。Serveはロサンゼルスでの配達事業を継続する。そしてサンフランシスコ・ベイエリアでのR&Dを強化し、新たな提携を通じてマーケットリーチを拡大する。

スピンアウトは、採算性に向け配車と配達の事業に焦点を絞るというUberの目的に適うものだ。この戦略はUberが2019年5月に上場した後に具体化し、新型コロナウイルスパンデミックが同社にプレッシャーをかけた2020年加速した。2年前、Uberは配車からマイクロモビリティ、ロジスティック、公共交通機関、フードデリバリー、そして自動運転車やエアタクシーといった未来的なものに至るまで、交通全般に会社を持っていた。CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は会社の収益化を追求していて、何でもかんでも解体するというアプローチを取っている。

2020年にUberはLimeとの複雑な取引でスクーター・自転車シェアリング部門のJumpを切り離し、ロジスティックスピンオフUber Freightの5億ドル(約534億円)分の株式を売却した。そして自動運転車部門Uber ATGとエアタクシー部門Uber Elevateを切り離した。Auroraが、JumpとLime間の取引と同じような構造のディールでUber ATGを買収した。AuroraはUber ATG買収を現金で行わなかった。代わりにUberがATGの株式を引き渡し、そしてAuroraに4億ドル(約427億円)投資し、これによって合併会社の持分26%を得た。同様に細工されたディールでUber Elevateは2020年12月にJoby Aviationに売却されている。

関連記事
Uberが貨物運送事業で優先株を発行して約530億円を調達、キャッシュ確保の一環
Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Serve RoboticsUber資金調達

画像クレジット:Serve Robotics

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

軌道走行と自律走行のハイブリッドであらゆる現場に対応、自動搬送ロボットを開発するLexxPlussが資金調達

新型コロナの影響もあり、EC需要が高まりを受け、物流倉庫での人手不足が問題になっている。物流倉庫での作業の効率化を図るのに注目を集めているのが、人の代わりに荷物を運搬する自動搬送ロボットだ。

3月3日、倉庫や製造工場向けに自動搬送ロボットを開発するLexxPlussは、インキュベイトファンド、SOSV Investments LLC、住友商事を引受先とする第三者割当増資を実施したことを発表した。具体的な調達額は非公開なものの、億単位であるそうだ。

自動搬送ロボットと言えばAmazonを思い浮かべる人も多いかもしれない。Amazonの物流倉庫では、作業員がわざわざ商品を取りに行かなくて済むよう、棚ごとロボットが動かせる仕組みを導入している。

ただ、日本の物流会社がどこもAmazonと同じように倉庫の自動化に投資ができるかというと、そうではないだろう。それにAmazonの場合、ロボットの作業場は基本的に人が作業していない無人の空間を想定しているが、日本の物流倉庫では敷地面積などの関係から、人が作業している空間も多い。LexxPlussは作業する人がいても柔軟に走行できる自動運搬ロボットを提供することで、今ある現場の動きを妨げずに、ロボットに任せられる作業は自動化できるようにしたい考えだ。

LexxPlussの自動搬送ロボット

自動搬送ロボットには大きく分けると、床に敷いた誘導線上に沿って軌道走行するAGV(Automatic Guided Vehicle)と、誘導線を必要とせず自動運転技術を搭載し、自律的に走行するAMR(Autonomous Mobile Robot)とがある。LexxPlussのロボットは、この2つを組み合わせた「ハイブリッド制御技術」を実装しているのが特徴だ。これにより、狭い通路や決まった位置を走って欲しい時は軌道走行に、人や物を迂回する必要がある場所を走行するときは自律走行に設定することで、その現場に合った使い方ができるというわけだ。

LexxPlussの提供する自動搬送ロボットのサイズは60cm×60cmで、これは他社製品と比べると小型と同社は説明している。積載の場合は300kgまで、牽引は500kgまで可能だ。

ビジネスモデルとしては、自動搬送ロボットを原価に近い価格で提供し、運用管理を月額のサブスクリプションで提供するRaaS(Robot as a Service)だ。通常、自動搬送ロボットは買うと1台500万円ほどするそうなので、サブスクリプションモデルにすることにより、中規模の物流倉庫でも導入しやすくしたい考えだ。

LexxPluss代表取締役の阿蘓将也氏

国内外で自動搬送ロボットに取り組んでいる会社はそれなりにある。競合は多そうだが、まだ現場のニーズを汲み取れているプロダクトはないように感じているとLexxPlussの代表取締役を務める阿蘓将也氏は話す。

「お客さんと話をすると『ロボットはいっぱいあるけれど、全然導入できない』という話を聞きます。プロダクトはあっても、ロボットがこうなので現場がそれに合わせてくださいと言われてしまう。現場の課題に合ったプロダクトがなくて、プロダクト・マーケット・フィットしているものはまだありません。競合は多くあるように見えますが、ブルーオーシャンい近い領域だと思っています」。

LexxPlussの自動搬送ロボットは2021年秋頃から一般販売する予定だ。現在は、複数の大手事業者と導入に向けた実証実験を行っている。今回調達した資金はプロダクト開発と人材採用に充てる予定という。

関連記事
Amazonが倉庫用新型ロボット2種を発表
「Incubate Camp 13th」の総合1位は、次世代の経営管理クラウドサービスを開発するログラス

カテゴリー:ロボティクス
タグ:LexxPluss資金調達物流日本

画像クレジット:LexxPluss

宇宙で活躍するロボット労働力の供給を目指す日本のGITAIが18億円の資金調達を完了

日本の宇宙ロボットスタートアップ企業GITAI(ギタイ)はシリーズBラウンドとして総額18億円の資金調達を完了したと発表した。今回の調達で得た資金は雇用に充てられる他、同社のロボット技術が宇宙空間における衛星サービス業務で有効であることを示すための、軌道上実証ミッションに向けた開発と実験に使われる。このミッションは2023年に実施される予定だ。

GITAIは特に米国で人員を増強し、米国市場進出によるビジネス拡大も目指している。

「日本市場では順調に進んでおり、我々はすでにいくつかの日本企業からミッションを請け負っていますが、米国市場にはまだ進出していません」と、GITAIの創業者でCEOを務める中ノ瀬翔氏は、インタビューで説明している。「そのため、まずは下請けとして、米国の民間宇宙企業からミッションを受注したいと考えています。私たちは特に軌道上でのサービスに関心があり、米国の軌道サービスプロバイダーに汎用ロボットのソリューションを提供したいと考えています」。

中ノ瀬氏によると、GITAIは軌道上の人工衛星にハードウェアを取り付けることができるロボットを開発した経験が豊富で、既存の人工衛星や衛星コンステレーションに新たな機能を付加するアップグレードを施したり、電池を交換して人工衛星の寿命を延ばしたり、人工衛星が故障したときに修理したりするのに役立つ可能性があるとのこと。

しかし、GITAIが注目しているのは、宇宙という真空における船外活動だけではない。同社は国際宇宙ステーションに初めて常設された商業用商業エアロックモジュール「Bishop(ビショップ)」を使って、NanoRacks(ナノラック)社と共同でロボットによる汎用作業遂行技術実証も行っている。

GITAIが開発した「S1」は、地球上の産業用ロボットのようなアーム型ロボットで、制御盤の操作やケーブルの交換など、さまざまな能力を披露している。

長期的には、軌道上だけでなく月や火星にも基地やコロニーを建設することを支援できるロボット労働力を作ることが、GITAIの目標だ。NASAは月の地表や月の軌道上にも恒久的な研究拠点を構築する計画を立てており、最終的には火星に到達することを目指している。SpaceX(スペースエックス)やBlue Origin(ブルーオリジン)のような民間企業は、商業活動を視野に入れ、火星に恒久的なコロニーを建設したり、人間を収容する大規模な宇宙空間のハビタットを作り上げることにも目を向けている。ゆえに、低コストで効率的なロボット労働力の必要性は、特に人間の生命が危険な環境において、大いに高まる可能性があると、中ノ瀬氏は考えているという。

中ノ瀬氏は母親を亡くした後、実際にGITAIを起ち上げたと筆者に話してくれた。この不幸な死は、ロボットの介入があれば回避できたと彼は確信しているという。中ノ瀬氏は人間の能力を拡張・増強できるロボットの開発に着手し、この技術が商業的な観点から最も有用で必要とされているアプリケーションは何かを研究した。その結果、宇宙こそが新しいロボット工学スタートアップにとって最良の長期的な好機になると中ノ瀬氏は結論づけ、GITAIが誕生した。

今回の資金調達は、SPARX Innovation for the Future Co. Ltd(スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社)が主導し、DCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合、第一生命保険株式会社、EP-GB投資事業有限責任組合(エプソンのベンチャー投資部門)からも出資を受けている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:GITAI資金調達宇宙

画像クレジット:GITAI

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ピックアンドプレースロボットBerkshire GreyがSPACを通じての上場を発表

資金調達に関して、Berkshire Grey(バークシャー・グレイ)はかなり良い状態にある。2020年、同社がシリーズBで2億6300万ドル(約279億円)もの巨額を調達した後、マサチューセッツ州にある本社を筆者が訪問した際には、非常に意欲的な成長計画について語っていた。しかし、それは新型コロナウイルス感染流行が米国に本格的に上陸する前のことだ。

むしろ、新型コロナウイルスは自動化への関心を加速させた。企業が将来的な感染流行による避けられない影響から身を守る手段を探し始めたからだ。Berkshire Greyは米国時間2月24日、SPAC(特別買収目的会社)によって株式公開する最新のハイテク企業となることを発表した。Revolution Acceleration Acquisition Corp.(レボリューション・アクセラレーション・アクイジション)と合併することで、同社の価値は最大27億ドル(約2859億円)となる見込みだ。

Berkshire Greyはこのニュースに関連したリリースの中で、現在、自動化されている倉庫は5%と記している。この業界に関する議論でよく耳にする数字だ。それはフルフィルメントやロジスティクスを合理化しようとしている小売業者の間で大きな成長の可能性を示すものである。彼らの多くは、Kiva Systems(キヴァ・システムズ)の買収などによって独自のロボティクスの取り組みを大幅に強化してきたAmazonのような企業に対する競争力を保つ手段を探しているからだ。

Berkshire Greyは、完全自動化に近いグランドアップ・ソリューションを提供している。この技術は、Locus(ローカス)やFetch Robotics(フェッチ・ロボティクス)のようなプラグアンドプレイの自動化ソリューションとは一線を画すものだ。これらの会社が提供するものは、企業の自動化をより速く、より安価に行うことに焦点を当てている。Berkshire Greyのエコシステムには、ピッキングやグリッピングから画像センシングまで、さまざまなロボット技術が含まれており、この分野では300件以上の特許を取得している。

関連記事:フレキシブルな倉庫自動化ソリューションのLocus Roboticsが欧州、アジア進出に向け約159億円調達

「消費者の期待は変化しており、適切な商品を適切な場所に適切な時間に、可能な限り効率的に届けなければならないというサプライチェーン業務へのプレッシャーが高まっています」と、Berkshire GreyのTom Wagner(トム・ワグナー)CEOはこのニュースと関連したリリースで述べている。「この12カ月間、新型コロナウイルス感染流行はすでに高い変革へのプレッシャーを増幅させてきましたが、今日では企業が変革するかどうかではなく、どのくらいのスピードで変革するかが問題となっています。私たちは今度の取引について非常に興奮しています。これによってBerkshire Greyは成長を加速させ、当社の最先端のロボットソリューションを新規および既存の顧客に提供していくことができます」。

この買収により、Berkshire Greyには最大4億1300万ドル(約438億円)の現金がもたらされることになる。この資金を使って、顧客のバックログに対処し、国際的なプレゼンスを確立することを計画していると、同社では述べている。この件は第2四半期には完了する見込みだ。

関連記事:激化する小売業向けロボティクス競争の中、Berkshire Greyが289億円調達

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Berkshire GreySPAC

画像クレジット:Berkshire Grey

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIスタートアップSymbioがトヨタ、日産と組立ロボットの効率化に取り組む

ベイエリアを拠点とするAIスタートアップのSymbioは米国時間2月24日、「正式なローンチ」を発表した。総額3000万ドル(約32億円)の資金調達に支えられ、同社は日産とトヨタ自動車の両社と契約を結び、米国の工場に同社のソフトウェアを導入している。

Symbioによると、同社のSymbioDCS技術は組立ライン上のロボットの自動化を飛躍的に高めることができるという。

「エンドユーザーにとって、提案は非常にシンプルです」と、CEO兼共同ファウンダーのMax Reynolds(マックス・レイノルズ)氏はTechCrunchに語った。「私たちは自動化の効率を改善しています。高レベルの目標では工場の能力を向上させ、多くの製品をより迅速に、より柔軟に製造できるようにすることです」。

Symbioは2020年12月にシリーズBで1500万ドル(約15億9000億円)を調達している。これは1200万ドル(約12億7000万円)の2018年のシリーズA、250万ドル(約2億6000万円)のシード、50万ドル(約5300万円)のプレシードに追加される。今回のラウンドはACME Capitalが主導し、既存投資家であるAndreessen Horowitz、Eclipse Ventures、The House Fundが参加した。

UCバークレー校のAnca Dragan(アンカ・ドラガン)教授はこのニュースに関連した声明の中で、「Symbioは自動化ソリューションだけを提供するのではなく、製造業に携わる開発者や専門家が独自の自動化ソリューションを作成し、それらを新しいタスクに容易に組み込むことを可能にするツールも設計しています」と述べた。「そのために、AIの強みと人間の洞察力を共生的に活用した製品を開発しています」。

2014年に設立されたSymbioは、主にカリフォルニア州に拠点を置くエンジニアを中心に約40人を雇用している。レイノルズ氏によれば、現在の自動車の自動化製造のレベルは、実際には予想よりもはるかに低いという。「アセンブリの自動化は、全体的に見ても5%未満です。この中核的な業種であっても、成長の余地と機会は十分にあります」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Symbioトヨタ日産

画像クレジット:Symbio

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Future Acresがブドウ収穫を助ける自律農作物運搬ロボット「Carry」を発表し起ち上げ

今後、最も成長が見込まれるロボット分野は何かと聞かれると、私はしばしば農業を挙げる。この技術は倉庫業務やロジスティクスのような場ですでに強力な足がかりを持っているが、アメリカの、そして世界の農業コミュニティを見れば、ヒューマンアシスト・オートメーションの数多くの可能性を想像せずにはいられない。

カテゴリーとしてはまだかなりオープンな印象があるが、関心を欠いているわけではない。このカテゴリーでニッチを切り開いている大小の企業は数多くある。少なくとも今の時点では、多くの異なるプレーヤーが参入する余地があるように思える。結局のところ、ニーズは農場や農作物によって大きく異なるからだ。

サンタモニカに拠点を置くFuture Acresは米国時間2月23日、ブドウの収穫に取り組む計画で立ち上げられた。同社はハンバーガーをひっくり返し調理するロボット、Flippyで知られるMiso Roboticsを立ち上げたWavemaker Partnersから派生したスタートアップで、ローンチと同時に最初のロボット、Carryを発表した。

画像クレジット:Future Acres

TechCrunchの取材に対し、CEOのSuma Reddy(スーマ・レディ)氏はこう語った。「当社はCarryを農業従事者のための収穫の助手のようなものだと考えています。これは自律的な収穫コンパニオンです。現実世界で可能なこととして、あらゆる地形や天候で最大500ポンド(約227キロ)の作物を運ぶことができます。これは生産効率を最大30%向上させることができ、わずか80日で採算が取れることを意味しています」。

Carryは、手摘みで収穫された作物の輸送にAIを利用しており、デリケートな摘み取り作業を完全に代替しようとするのではなく、人間と一緒に作業を行う。同社は、農場が複数の機械を購入し、連動して作業を高速化し、手作業で作物を移動させる人間の負担を軽減することを期待している。

画像クレジット:Future Acres

同社はまだ初期段階で、Carryのプロトタイプを開発したところだ。また、開発のためにパートナーシップを模索している。システムの初期費用は1万ドル(約105万円)から1万5千ドル(約158万円)だが、同社によると、コストを先送りする方法として、RaaS(robotics as a service)モデルを検討しているという。

農業用ロボットへの関心は、健康上の懸念や労働問題などを背景に、パンデミックの最中にますます高まってきた。同社はその関心レベルを踏まえ、Wavemakerがすでに提供している資金に加えるべく、300万ドル(約3億2000万円)の資金調達を目指してSeedInvestでキャンペーンを開始している。

関連記事:全自動除草ロボット・サービスのFarmWiseが薬物散布機能を追加

カテゴリー:ロボティクス
タグ:農業

[原文へ]

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

全自動除草ロボット・サービスのFarmWiseが薬物散布機能を追加

農業におけるロボット革命は、作物栽培を自動化するFarmWise(ファームワイズ)が同社の無人農業機器に新たな機能を追加しようとしていることで、さらに進化が進む。

サンフランシスコ拠点の同社は、殺菌剤と殺虫剤を条播(すじまき)作物に散布する機能を、同社の全自動除草ロボットの追加機能として現在テストしている、と同社のCEO、Sébastien Boyer氏が語った。

これは農業のロボット化における最新の進歩だ。農業は、サポートロボットのCarryを今日発表したFuture Acresや、Alphabet(Googleの親会社)からのスピンアウトで 作物分析を行うMeneralなどの新規参入によって益々競争が激しくなっている市場だ。

関連記事:
グーグルの最新のムーンショットは野外を移動する植物検査ロボバギー

農家にロボットそのものを販売する代わりに、FarmWiseは農家にロボティクス・サービスを販売し、検査・除草した面積1エーカー(4047平方メートル)当たり約200ドルを請求する。「私たちは会社の担当者が会社の機材を持って農地に出向きます」とBoyer氏は言った。

このビジネスモデルは、Playground Globalなどの企業から、2400万ドルの外部資金を呼び込み、さらに同社は目標2000万ドルの調達ラウンドを年内に計画している、とBoyer氏は言った。

関連記事:
FarmWiseの全自動除草ロボットが脱プロトタイプに向けて15億円を調達

Boyer氏は、カリフォルニア州サリナスの有力栽培者の半数がすでに同社の顧客になっていると言った。彼らはDole(ドール)などの大規模農業製品企業の契約農家だ。

FarmWiseが期待しているのは、失われた労働力の穴埋めをすることだとBoyer氏は言う。共同ファウンダーのThomas Palomare氏と共に、Boyer氏は、農家が減少する労働力に対応しながら生産高を維持しなければならない状況を認識した。「農業をやる意志のある人たちが減っていく中で農家が生産高を維持する手助けをするが大切なのです」と彼は言った。

ロボットの利用は農家の収益に有効なだけではない、とBoyer氏は語った。ロボットは農場で使用する肥料と農薬の量も減少させ、これは環境に優しく、より持続可能な食物連鎖をつくるためにも役立つ、と彼は言った。

「私は大規模な持続可能問題に取り組むことに惹かれたのです」とBoyer氏は語った。

関連記事:
Future Acres launches with the arrival of crop-transporting robot, Carry

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:FarmWise

[原文へ]

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フレキシブルな倉庫自動化ソリューションのLocus Roboticsが欧州、アジア進出に向け約159億円調達

マサチューセッツ拠点のLocus Robotics(ローカス・ロボティクス)は米国時間2月17日、1億5000万ドル(約159億円)のシリーズEを発表した。Tiger Global ManagementとBondがリードした本ラウンドによってLocus Roboticsの累計調達額は2億5000万ドル(約265億円)、バリュエーションは10億ドル(約1059億円)となった。Locusは競合他社(Berkshire Greyなど)よりもフレキシブルな、倉庫自動化のためのモジュラー式ソリューションを提供することで知られている。Locusは主にロジスティック自動化のためのロボティック車両リースしている。

関連記事:激化する小売業向けロボティクス競争の中、Berkshire Greyが289億円調達

「当社は飛行機が飛んでいる間に翼を交換できます」とCEOのRick Faulk(リック・フォーク)氏は話す。基本的には他社にはそんなことはできない。企業はフレキシブルな自動化を欲している。もしあなたがサードパーティのロジスティック企業経営者なら、2年、3年あるいは4年の契約を結んでいる場合、最も避けたいのは大がかりなソリューションを購入するために2500万〜5000万ドル(約26〜52億円)を投資、設置し、その前払い費用で首が回らなくなることだ。

Locusは現在80カ所の施設にロボット4000基を展開している。そのおおよそ80%が米国内で、残り20%が欧州だ。今回調達した巨額資金の一部は海外での展開に充てられる。ここには欧州でのさらなる拡大、そして同社がほとんど手をつけていないAPAC(アジア太平洋)地域への進出が含まれる。

LocusはまたR&D、営業、マーケティングにも投資し、従業員数も来年には現在の165人から75人増やす。

パンデミックは明らかに、現在「自動化」に向けられている関心の原動力であり、多くの企業がロボティクス活用を模索している。

「間違いなく新型コロナウイルスはオンライン注文の成長を後押しし、おそらくこれは4〜5年分の飛躍となります」とフォーク氏は話す。「eコマースのトレンドに目をやると、堅調な増加傾向が見られます。2020年は11%の成長でしたが、新型コロナのため16〜17%に押し上げられました。この傾向はしばらくこのまま続くでしょう」。

今回の資金調達はまた、Kiva SystemsがAmazon Roboticsに取り込まれたような、大手による買収をLocusが望んでいないことを示している。

「当社は買収されることに興味はありません」とフォーク氏は話す。「当社は独立して操業することで最大の価値を生み出すことができると確信しています。Amazonと競合するとされていない企業をサポートするために投資したいという投資家はいます」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Locus Robotics資金調達倉庫物流

画像クレジット:Locus Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

米国の研究チームが「ワームブロブ」を研究してロボットの動きに応用しようとしている

ワームブロブ(worm blob)って何?ときっとあなたは思っただろう。そう、もちろん、ワーム(ミミズなどのような細長い虫)のブロブ(塊)だ。もっと具体的にいうと、カリフォルニアブラックワーム(学名Lumbriculus variegatus)の塊だ。群れでも集会でも学校でもない。この虫がぐにゃぐにゃとした大きな塊になり、全体が1つであるかのように動く。

ロボット研究者は長年、自然からヒントを得てきた。このほど発表されたのはジョージア工科大学の研究チームが前述のワームブロブの不思議な動き方から知見を得ようとした研究だ。チームは研究成果を応用してロボットの動きを見直そうと考えている。

研究チームは2月初めに成果を学術誌で公表した。研究によると、10匹〜5万匹で構成される塊は温度変化などに適応して生き残るための一種のメカニズムだという。一部の個体でグループを動かすことが可能で、2〜3匹で15匹のグループを動かせる。

研究チームは2本のアームと2つの光センサーを備えたロボットを3Dプリンタで6台作った。アームに取りつけられたメッシュとピンでロボット同士をからませることができる。

研究者のYasemin Ozkan-Aydin(ヤセミン・オズカン – アイディン)氏はこのニュースに関するリリースで「光の強さに応じて、ロボットは光から遠ざかろうとします」と述べている。ロボット間で直接通信はしないが、1つのグループとして効果的に動作した。「ロボットは、ワームで観察されたのと似た行動を起こします」(同氏)。

画像クレジット:Georgia Tech

研究チームは、このような集団行動を個々のロボットを協調的でまとまりのあるユニットにすることに応用できると考えている。Daniel Goldman(ダニエル・ゴールドマン)教授は研究について「ロボットの集団に特定のことをさせようと考えがちですが、ロボットは散らかっていない環境、シンプルな状況で動作する傾向があります。重要なポイントは、ブロブは個体間の物理的な相互作用のみで動くということです。これはロボティクスに取り入れるには興味深い要素です」と述べている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ジョージア工科大学学術研究

画像クレジット:ジョージア工科大学

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)