不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

HERBIO(ハービオ)は4月2日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)が実施した、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」(NEDO STS。最大7000万円の助成金)にかかる第3回公募において採択されたと発表した。

HERBIOは、直腸温(深部体温)と臍部周辺温度の相関性を確認し、同社開発中のウェアラブルデバイスで取得したデータを基に、体温変動の研究・解析を実施する研究開発型スタートアップ。

妊娠を望んでいる女性・将来的に妊娠を望む女性は、妊活の第一歩として基礎体温の継続的な計測を行う必要がある。ただし毎朝安静状態で計測する必要があり、社会進出が進み、様々なライフスタイルの中で生きる女性にとって難しい状況にある。

HERBIOは、独自技術を活用したウェアラブルデバイスにより、取得した体温の変動データを研究することで、より精度高く妊活に貢献できるサービスの提供を目指している。また、研究により体内時計や現代女性の生活様式に適した行動変容システムをあわせて開発し、早期の社会実装を加速させる。

HERBIOは、研究開発型スタートアップとして、2017年の創立以来「体温」を軸とした事業展開を行い、ウェアラブルデバイスの開発、体温データの変動に関する研究・解析を進めている。従来取得が難しかったデータを同社独自技術を活用することで、現在製薬会社との治験や、教育機関との共同研究がスタートしているという。

同社は、「生きるに寄り添うテクノロジー」というミッションを掲げ、今までにない発見と課題の解決手法を確立し、研究成果による社会課題の解決を目指す。また、世界中の誰もが安心して医療を受けることができ、医療と健康に隔たりがなく健やかに生きることができる状態を実現するとしている。

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AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

創薬および再生医療高品質化の研究開発を行うナレッジパレットは3月29日、シリーズAにおいて、第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家の未来創生2号ファンド(スパークス・グループ)、きぼう投資事業有限責任組合(横浜キャピタル)、既存株主のANRI。創業以来の累計調達額は約7億円となった。

ナレッジパレットのミッションは、遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)からなる細胞ビッグデータを「正確に・速く」取得する技術で細胞を診断し、製薬・再生医療業界の課題「開発・製造の困難さ」を解決するというもの。

人体を構成する基本要素である「ヒトの細胞」の状態について、同社の技術を基にした遺伝子発現プロファイルにより取得・診断し、「病因は何か」「薬の効果はあるか」「製造された細胞の品質」を特定。AI創薬により「開発効率の低さ」の解決、またAI再生医療による「製造の困難さ」の解決を目指している。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

調達した資金は、研究開発および人材採用にあて、さらなる技術開発と各領域における共同研究を加速し、より多くの難病に対処できる創薬・再生医療プラットフォームを構築する。

また今後2年間は、シリーズAで調達した資金をベースに業容を拡大。2023年にシリーズB調達の実施を目指しており、2025年にIPOを計画している。中長期的には、他社との協業のほかに、AI創薬事業、AI再生医療事業において自社での研究開発を進め、最終的には構築したデータベースを基とした新薬や再生医療プロダクトを他社にライセンスするなども目指すとした。

遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)というビッグデータ

ヒトは約37兆個の細胞で構成されており、細胞1個は30億文字に相当するDNAを持つ。さらにその中に3万カ所の「遺伝子領域」があり「RNA」として転写され、細胞の構成物質であるタンパク質を作るもととなる。

一口に「細胞」といっても心臓や肝臓など臓器の違いが生まれる理由は、この遺伝子の種類・状態により3万種類の遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)が存在していることによる。同様に、病気による違い、化合物(薬)の効果の違いなども遺伝子発現プロファイルとして現れるという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

ナレッジパレットは、この遺伝子発現プロファイルを正確・高速・大量にとらえる技術を有しており、これを基にビッグデータとして分析・診断結果を蓄積し創薬・再生医療に活用するという。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得したコア技術

同社のコア技術は、共同創業者兼代表取締役CEO 團野宏樹氏が理化学研究所在籍時に開発した「シングルセル・トランスクリプトーム解析技術」だ。このコア技術は、国際ベンチマーキングの精度指標(遺伝子検出性能・マーカー遺伝子同定性能)と総合スコアにおいて1位を獲得しており、トップ学術誌Nature Biotechnologyに掲載されている(2020年4月)。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

同技術は、精密な分子生物学実験術とAI技術を組み合わせて、1細胞レベルで全遺伝子発現プロファイルを取得するというもので、実験室で行う精密実験プロセス「精密分子生物学実験」と、コンピューター上で行う計算科学技術「AIによる大規模バイオインフォマティクス」により構成されている。

精密分子生物学実験では、解析対象となる細胞から多段階の分子生物学実験によりRNAを抽出し、次世代シーケンス技術により全遺伝子発現プロファイルを取得する。さらにAI科学計算・二次元マッピングといったバイオインフォマティクスを介し、どのような細胞がどの程度含まれているのか、また細胞に含まれる希少かつ重要な細胞(間葉系幹細胞など)も含めて、網羅的・高精度に細胞の状態を診断するという。

製薬会社と協業が進むAI創薬事業

近年、医薬品の開発現場では、薬のターゲットとなる体内物質(創薬標的)が枯渇しており(開発が容易な新薬・疾病はあらかた手が付けられている)、難病になるほど新薬開発の難易度が上昇、開発コストが急速に肥大化しているという。このため、新薬の開発効率を高める新たな創薬技術が必要となっている。

そこでナレッジパレットは、製薬会社との連携・協業の下、様々な病気の細胞や薬剤を投与した細胞の遺伝子発現データベースを構築し、これを活用したAI解析により新薬の開発を進めている。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

同社コア技術では、数多くの「微量な細胞サンプル」に対して、従来技術と比較して10~100倍のスループットで、どの化合物(薬品)が特定の細胞に効果が高く毒性が低いのかを選び出す「全遺伝子表現型スクリーニング」が可能という。

製薬会社では、薬剤の基となる数多くの化合物をまとめたライブラリーを持っており、対象の(かつ微量の)培養細胞などに対してそれぞれ処理を行い解析を行うことで、実際にどういった病気や細胞に効果があるのか特定する。ナレッジパレットは、これら大量の化合物サンプルと微量の細胞サンプルといった組み合わせでも、高精度・高速に遺伝子発現プロファイルの変化を捉えられる。これにより、従来技術と比べ1/10から数十分の1のコストで、大規模な全遺伝子表現型スクリーニングを可能としているという。

再生医療に関する3つの課題

現在の医薬品は、化合物合成で低分子化合物の製造を行う「低分子医薬品」、細胞の中でタンパク質を合成・製造する「バイオ医薬品」、ヒト由来の細胞を細胞培養により利用し機能の修復を行う「再生医療」に大別される。

再生医療では、「生きた細胞」をどう制御するかが医薬品として製造する上で大きなカギとなっているという。細胞のコントロールでは、大きく分けて「品質にバラツキが生じる」「培養液の未確立」「高い製造コスト」という3点の課題が存在しているそうだ。

品質のバラツキという点では、そもそも生きた細胞であることから個性が現れ、性質の制御が難しい。例えば同じ条件で培養した細胞、また違う研究機関が再現しようとしたところ別の細胞ができてしまったなどが起こりうるという。患者に移植予定の細胞シートが離職試験で剥がせず、移植に失敗するということもあるそうだ。

また、細胞を育てる培養液(培地)については、細胞の性質や増殖の機能を決定する生育環境にあたるものの、どのような化合物をどの程度の濃度で組み合わせると、特定の細胞に最適なのか、グローバルスタンダードが存在していない状況を挙げた。その理由として、細胞ごとに最適な生育環境を生み出すための培地調液は、高度なノウハウと手作業、多段階の実験プロセスが必要なため、試作可能なパターンが1年あたり約200種類と少なく、最適な培養液にたどり着けていないという。

これら品質のバラツキや培養液の課題が製造コストの高騰に結びついており、採算が取れない状況になっているそうだ。

同社は3つの課題の原因として、細胞がどのような性質を持っているのかという「細胞の診断技術」がなかった点を指摘。培養・製造の評価指標が不十分で、製造コストを下げられていないとした。

コア技術活用の「培養最適化」に基づく再生医療

ナレッジパレットは、コア技術(シングルセル・トランスクリプトーム解析技術)を用いることで、非常に多くの種類の培養条件で培養された細胞について、高速に全遺伝子レベルで診断することで、最適化された培養液を開発できる(培養最適化)という。

製造改善が必要な再生医療用細胞に対して、CTOの福田氏による独自のチューンナップを施した自動分注機・ロボットで多種類の培養液を作成。コア技術である遺伝子発現解析・分析により、どのような条件で培養された細胞がどのような性質を持つのか網羅的・高速に培養性能を評価しその情報を蓄積する。このデータベースとAIにより、最適な培養条件を選択できるようにするという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

この取り組みにより、バラツキのない再現性の高い細胞製造をはじめ、さらに従来増殖が難しかった細胞についても10~100倍の収量を実現するといった生産性向上、製造コストの削減が可能になるという。再生医療を「製品」として確立させ、難病の治療に役立つものにするとした。

再生医療・細胞治療に関し、日本は国際的なトップランナー

創薬・再生医療領域において日本で起業したスタートアップというと、残念ながら耳にする機会はあまりない。TechCrunch Japanでも資金調達などの掲載例は数少ない状況にある。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得(後述)という同社の技術力を考えると、海外での起業もあり得たのではないか。そう尋ねたところ、CEOの團野氏は、国内の製薬業界自体がそもそもグローバルに通じている点を挙げた。また同氏が理化学研究所においてバイオテクノロジーとAIの融合研究に従事したという経歴・人脈が、優れた人材をスピーディに採用する際に強みになると考えているそうだ。

また再生医療領域は、日本が力を入れている分野でもある。京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥氏が2012年のノーベル医学生理学賞を共同受賞したことから国として推している点が追い風となっており、民間企業やアカデミアが取り組むなか日本で起業する価値は高いという。

共同創業者兼代表取締役CTO 福田雅和氏は、日本では再生医療に関する新法が制定され、規制改革が大胆に行われた点を挙げた。法整備面では日本は進んでおり、海外から日本に参入する傾向も見受けられるという。再生医療・細胞治療に関しては日本は国際的なトップランナーといえるとした。

ナレッジパレットの技術、ナレッジパレットの事業で停滞を吹き飛ばし前進する

一方で團野氏は、「製薬の開発がすごく大変だという点は痛感しています。同時に、この領域が加速すると多くの方の幸せにつながると信じています。再生医療も同様です。再生医療だからこそ治る病気が多くあると期待されているにもかかわらず、日本では追い風があるにもかかわらず、承認された製品がまだまだ少ない状況です」と指摘。「私達の技術、私達の事業であれば、この停滞を吹き飛ばして前に進むことができると、強い気持ちで運営しています」と明かした。

福田氏は、「身近な人を治せるように、再生医療がそれが実現できるように、この領域でトップになることを決意して起業し、がんばっています」と続けていた。


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薬を使わない便秘治療ピルを開発したイスラエルのVibrantが8.2億円調達

慢性的な便秘の治療のために使い捨て振動ピルを開発した医療テクノロジー企業Vibrant(ビブラント)は米国時間3月26日、750万ドル(約8億2000万円)のシリーズEラウンドを発表した。同社はテルアビブに拠点を置き、スタートアップのベテランLior Ben-Tsur(リオール・ベン−ツール)氏が率いている。2007年の創業以来、同社は累計2500万ドル(約27億4000万円)を調達した。今回のラウンドはUnorthodox Venturesがリードし、Sequoiaが参加した。

3回目で最終となる米食品医薬品局(FDA)の試験を実施中の同社は、2022年に米国で事業を立ち上げる計画だ。カプセルはマルチビタミンのサイズだとベン−ツール氏は話した。

「患者は毎日毎日薬を服用するのに慣れています。なのでそうした意味ではこのピルは異なる体験にはなりません。しかしピルは薬を一切含んでいません」と同氏は述べた。同氏は創業者ではないが、CEOとして10年前に同社に加わった。

American Gastroenterological Associationに掲載された論文によると、米国の成人の約16%が便秘に悩まされており、60〜101歳に限ってみるとこの割合は33.5%に増える。また、便秘は女性の方に多く、男性の1.5倍だ。

便秘の対処法として最も一般的なのが店頭で販売されている薬または処方薬の服用で、これらの薬は排便を促す大腸の神経をターゲットとする。しかしVibrant Capsuleは「一度飲み込むと、化学物質を使うことなしに腸壁の自然の活動電位を促進し、リラックスさせ、通じをよくします」と同社は声明で述べた。

同社によると、薬不要であるのに加えて、下剤を上回るVibrantの価値は排便がコントロールされることだ。一方の下剤は予期せぬ下痢や長期の副作用を引き起こす。また、下剤は日常的に服用するようになっているが、使い捨てのカプセルは週2〜5回でいい。カプセルは、服用したときに自動的に記録するアプリとつながっている。そして患者は排便があればアプリに記録し、月次レポートを医師に送る。そうすることで治療をモニターし、必要に応じて治療のプロトコルを調整することができる。

Vibrantが2019年に実施した臨床試験では、患者250人がダブルブラインドテストに参加した(133人がVibrant Capsule、117人が偽薬を服用)。結果は、Vibrant Capsuleを服用した患者の方に3時間以内に排便を経験した人が多かった。試験と結果はジャーナルNeurogastroenterology and Motilityに掲載された。

数年前に医師とエンジニアのグループが生きている豚の結腸でテストを行い、誤って結腸壁を挟んでしまった。その結果、豚はすぐに排便したことに気づいた。テストは実際には便秘とはまったく関係のないものについてで、偶然の発見だった。効果を再現するために、チームは3時間装着したときに排便を引き起こす振動ベルトを作った。

「問題は、排便を得るために誰も3時間揺さぶられたくないということでした」とベン−ツール氏は話した。そのことを念頭に、似たような結果をもたらしつつ振動は感じられない、人間の便秘の治療開発に着手した。Smart Pillなど、メカニカルカプセルはすでにマーケットに存在する。Smart Pillは消化管を通過しながら消化管全体の動きをレポートし、医師が消化管運動異常を診断できるようにする診断カプセルだ。なのでVibrantのチームは人々が安全にカプセルを飲み込んで排泄することができるとわかっていた。

ベン−ツール氏によると、過去20年、便秘の治療はほとんど変わっていない。治療プロトコルはずっと薬の服用にフォーカスしてきた。マーケットの規模、この分野におけるイノベーションの欠如、そして将来性を認識したとき、同氏はVibrantを率いたいと思った。

Vibrantは今回調達した資金を、初のマーケットとなる米国でのカプセル提供に使う計画だ。同社は現在、カプセルが立ち上げ当初から保険でカバーされるよう、ヘルスケアプロバイダー、そして保険会社と協議している。診断テストにしか使われないSmart Pillはまだ保険でカバーされておらず、患者が負担するコストは平均で約1400ドル(約15万3000円)だ。ベン−ツール氏とチームはアクセスしやすいプロダクトの提供を目指している。「当初から我々は既存の薬よりも高価になりそうなものは作らないことを使命としてきました」と同氏は述べた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Vibrant医療資金調達

画像クレジット:Vibrant

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nariko Mizoguchi

コロナ禍で苦しむ製薬会社のDXを進める、業界特化型デジタルマーケのフラジェリンが1.5億円調達

長引くコロナ禍を背景に、医療従事者を顧客とする製薬会社は苦境に立たされている。一般市民よりもはるかに厳しい感染拡大対策を行う医療機関では、MR(医薬情報担当者)による訪問営業を受け入れないケースが増えてきているからだ。

そんななか、製薬・医療関係企業向けのデジタルマーケティングツール「Shaperon(シャペロン)」を手がけるフラジェリンが順調に歩を進めつつある。同社はALL STAR SAAS FUNDを引受先とする第三者割当増資によって1億5000万円を調達したことをTechCrunch Japanの取材で明かした。

シャペロンは製薬会社がもつ医療従事者(顧客)の情報を集約・蓄積し、営業やマーケティング活動の生産性向上とデジタル化をサポートするサービスだ。具体的な機能としては、医療従事者とのコミュニケーションのデータ化と顧客管理、OutlookとGmailの連携によるメールの送受信の集約、メール開封やファイル閲覧履歴のトラッキングなどがある。

製薬業界には、顧客のメールアドレスがMR個人の資産となっていて企業として活用できないことや、業界特有のルールやコンプライアンスの制約から、他の汎用マーケティングツールを導入しにくいなどの課題がある。フラジェリン代表の阪本怜氏はそこに目をつけ、自身も薬剤師であり、製薬メーカーのグラクソ・スミスクラインでマーケティング戦略立案やデータ解析に携わった経験を活かし、業界の課題を解決するためにシャペロンを開発した。

フラジェリンにとってコロナ禍も追い風だった。阪本氏によれば、製薬業界はこれまでにも営業・マーケティングのDXで遅れをとっていることを課題として認識していた。しかし従来のアナログなやり方でも長い間ビジネスが成り立っていたことから、その改革の優先順位は低いままだった。そんななか、新型コロナウイルスの感染拡大により、訪問営業の自粛や患者の受診控えによる薬の需要減などの逆風を受けた製薬業界は改革を迫られ、DX推進の優先順位が一気に上がったという。

フラジェリンは2019年9月にシャペロンをリリース。翌10月には上場製薬会社の持田製薬への全社導入が決まった。その他にも、大手製薬会社1社(名称非公開)への導入もすでに進んでいるという。フラジェリンは収益の数字を公表していないが、同社が公表する「シャペロンによるプロモーションメールの配信数」は大きく伸びている。

阪本氏は今後予想される製薬業界の変化について、「MRによる訪問営業が主流だった従来のやり方から、MR活動のデジタル化とインサイド(リモート)セールス部隊によるより多角的な方法へと進化すると予想している。インサイドセールスがリモートで幅広い顧客にアプローチしつつ、詳細を求める医療機関にはMRが直接訪問するなど、製薬業界の営業とマーケティングのあり方は変わっていくだろう」と話す。

フラジェリンはそれを見越し、今後インサイドセールス向けのマーケティングオートメーションツールのリリースを検討するほか、外部の顧客管理システムとのサービス連携などにより、MR活動のデジタル化を1つのツールで実現できるようにシャペロンの機能を拡充していく予定だ。

関連記事:山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達 日本 医療

山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

固形がんに対するCAR-T細胞療法の研究開発を行うノイルイミューン・バイオテックは3月22日、シリーズCラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約23億8000万円の資金調達を発表した。

引受先は、新規引受先の第一生命、Binex Holdings、澁谷工業、ヘルスケア・イノベーション投資事業有限責任組合、KD Bio Investment Fund 4、また既存株主のBinex、BiGEN。

ノイルイミューン・バイオテックは、山口大学および国立がん研究センター発スタートアップとして2015年に設立。同社のコア技術PRIME(proliferation inducing and migration enhancing)を利用したCAR-Tを主とする遺伝子改変免疫細胞療法の自社パイプライン事業および共同パイプライン事業を推進してきた。今回調達した資金により、自社パイプライン事業におけるリードパイプラインNIB-101の臨床開発を促進する。

NIB-101は、特定のがん細胞の表面に存在する糖脂質の一種であるGM2を標的としたPRIME CAR-T細胞であり、現在、年内の臨床試験開始を目指して準備を進めているという。

山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

CAR-T細胞とは、遺伝子を導入する技術を用いて作製する細胞で、がんを高感度に見つけ出し、かつ強力に攻撃する能力を持つという。白血球の一種T細胞を血液から取り出して、そこにキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor: CAR)と呼ばれるがん細胞を見つけるアンテナの役割をもつ人工的な遺伝子を導入し、1~2週間程度体外で培養して増やした後に患者に投与する。すると、CAR遺伝子を導入されたCAR-T細胞は、がん細胞の目印となるがん抗原を認識し、これを標的として攻撃する。

ただ、CAR-T細胞療法はがんに対する有効な治療法となる可能性が示されているものの、血液がん以外の固形がんに関しては優れた治療効果を示せていないという。固形がんを標的としたCAR-T細胞療法は各国の研究機関や製薬企業において開発が進められているが、いまだ承認されたものはないそうだ。固形がんと血液がんでは特徴が異なる点があり、固形がん局所へのCAR-T細胞の送達性および固形がんの不均一性 (tumor heterogeneity)が課題となっているという。

この解決策として、ノイルイミューン・バイオテックはPRIME (Proliferation-inducing and migration-enhancing) 技術の研究開発を実施。CAR-T細胞およびその他の免疫細胞のがん局所への送達性を向上させ、生体内において宿主の免疫システムを活性化することにで、多様ながん抗原に対する免疫応答を誘導して固形がんの不均一性に対応するとしている。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:医療(用語)がん / がん治療(用語)国立がん研究センター(組織)資金調達(用語)ノイルイミューン・バイオテック(企業)山口大学(組織)日本(国・地域)

ITでがん治療を支援するフランスの意欲的なスタートアップ「Resilience」

新しいスタートアップのResilience(リジリエンス)は、がん治療施設とがん患者を、治療のあらゆる段階で手助けしたいと考えている。これはフランスの有名な起業家2人が立ち上げた意欲的なプロジェクトだ。彼らは自分たちのIT技術をこの新たな医療スタートアップに活用したいと思っている。

Céline Lazorthes(セリーヌ・ラゾルテス)氏とJonathan Benhamou(ジョナサン・ベンハモウ)氏の2人が共同CEOを務める。Nicolas Helleringer(ニコラス・ヘレリンジャー)氏とMatthieu Pozza(マシュー・ポッツァ)氏が残り2人の共同ファウンダーで、それぞれCTO(最高技術責任者)とCPO(最高人事責任者)に就いている。ラゾルテス氏は以前、フランスで有数の「Money Pot(個人がお金を集める仕組み)」の会社であるLeetchiを共同設立した。さら、スピンアウト企業としてマーケットプレイス決済ソリューションのMangoPayも立ち上げている。どちらの企業もCrédit Mutuel Arkéa(クレディ・ミュチュエル・アルケア)に買収された。

ベンハモウ氏は、クラウドベースの人事サービスPeopleDocを共同設立した。2018年、同社はUltimate Softwareに買収されている。同氏は、買収後も上場企業である同社の幹部を務めた。その直後、非上場株式投資会社のHellman & Friedman Capital PartnersがUlitimate Softwareを買収した。

2020年、2人はかなりの時間を割いてProtegeTonSoignantという非営利団体で一緒に仕事をした。140名の人々とともに、同組織は740万ユーロ(約9億6000万円)の寄付を集め、個人防護具を購入して必要としている病院に届けた。寄付金集めと物流面、両方の挑戦だった。

医療専門家と長い時間話す機会を得た2人は「少なくとも次の10年を命を救う人たちに自らを捧げる」決心をした、とラゾルテス氏はいう。

それは野心的な挑戦と思われ、彼らもそれを知っていた。「医療に関しては何も知りません、人事や金融のことを知らないのと同じように。私たちは非常に規制の厳しい市場に参入しようとしています」。

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だから彼らは1つの分野、がん治療に特化しようと決めた。研究機関が過去数年間に著しい進歩を遂げてきた結果、がん治療はますま複雑化している。例えば次の3年間に300種類の新たな治療法が出てくる、とベンハモウ氏は推測する。治療は広域療法から標的療法へと徐々に移りつつある。

現在、がん治療施設は3つの課題に直面している。第1に「人間の脳はこの全データを吸収できません」とベンハモウ氏はいう。第2に、平均余命が伸びるにつれ、がん症例は毎年増えている。腫瘍委員会は個々の患者の治療方針の決定に1分半から2分間費やすことになる。

第3に、前の2つの問題の結果、患者は自己裁量に任されることになる。例えば治療における投与量の調節がなされなかったために副作用に苦しむ患者もいる。

画像クレジット:Resilience

Resilienceは、医療チームと患者療法のためのがん治療の多面的ソリューションになることを目指している。開業医に対しては、Resilienceが治療決定を支援する「サービスとしてのソフトウェア」ソリューションになる。同社は科学文献を分類し、機械学習を利用して過去の症例との類似性を調べ、さまざまな条件に基づく臨床試験を見つけ出す。

患者に対しては、自分のがんに関するコンテンツや情報をアクセスできるウェブとモバイルアプリを提供する。具体的に、例えばResilienceは患者が副作用を理解して治療する手助けをする。

「私たちのゴールは、このアプリが患者のクオリティ・オブ・ライフを改善できると証明することです」とラゾルテス氏はいう。Resilienceはアプリを使って質問をして、治療を改善するためのデータを集めることも考えている。

すでに同社はデータサイエンスチームを結成している。そこでは自然言語処理を使って科学文献を解析する。さらに、医療チームと協力してあらゆる部分を二重チェックする。

患者間の類似性を見つけるために、同社は複数の病院と提携して過去の症例データを入手する予定だ。

Resilienceは、調達ラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した。元AlvenのパートナーであるRaffi Kamber(ラフィ・カンバー)氏とJérémy Uzan(ジェレミー・ウザン)氏が設立したVCのSingularがラウンドをリードした。テックビジネスのエンジェル投資家であるLa RedouteのNathalie Balla(ナタリーバラ)氏、Xavier Niel(グザビエ・ニール)氏、AlanのJean-Charles Samuelian(ジャン-シャルル・サミュリアン)氏、Sation FのRoxanne Varza(ロクサーヌ・バルザ)氏らも参加した。

同日の調達ラウンドには、医療投資家であるAstraZenecaのCharles Ferté(チャールズ・フェルテ)氏、BioclinicのPhilippe Dabi(フィリップ・ダビ)氏、OwkinのThomas Clozel(トーマス・クローゼル)氏などの名前もあった。

Resilienceはミッションに向かって行動する会社だ。同社は科学委員会、患者委員会と提携を結んでいる。世界有数のがん研究施設であるGustave Roussy(グスタフ・ルッシー)がん研究所もResilienceの共同ファウンダーに名を連ねている。

かなりの数の利害関係者がいるが、これは医療会社を作るためには正しい行動だ。Resilienceは今、自分たちのプロダクトを洗練し、がん治療を実際に改善する可能性のあるプロダクトを展開するために最適な抑制と均衡のシステムを手に入れた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Resilienceがん医療

画像クレジット:Resilience

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行う、大阪大学発スタートアップ「クオリプス」は3月16日、総額約20億円の第三者割当増資に関する契約を締結したと発表した。引受先は、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JICベンチャー・グロース・インベストメンツ)、ジャフコSV6投資事業有限責任組合、ジャフコSV6-S投資事業有限責任組合(ジャフコ グループ)、京大ベンチャーNVCC2号投資事業有限責任組合、阪大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合(日本ベンチャーキャピタル)、富士フイルム、セルソース他。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートとは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞(iPS心筋)を主成分とした他家細胞治療薬で、シート状に加工したものを心臓に移植するという(他家とは、第三者提供のiPS細胞から作った細胞を使うことを指す)。有効な治療法がない重症心不全の患者を対象とし、心機能の改善や心不全状態からの回復等の治療効果が期待されている。

今回調達した資金により、同社はこの同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの実用化を一層加速化させ、様々な細胞製品の培養・加工を通じ、画期的な細胞治療薬の創生に貢献するとしている。

富士フイルムは、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた心筋再生医療研究開発の促進を、またセルソースは、同種由来間葉系幹細胞および同種由来iPS細胞由来エクソソームの利活用を通じた再生医療分野での協業を期待し資本参加したという。

クオリプスは、大阪大学の技術・研究成果をベースに、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行うことを目的とする、2017年3月設立の大阪大学発スタートアップ。同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの製造方法に関する研究開発を推進し、さらに効率的な生産技術を確立して、世界に先駆けて再生医療等製品として製造販売承認を取得することを目指す。

同社は2020年夏、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの早期実用化を進めるべく、現在大阪大学で実施中の医師主導治験を支援するとともに、同製品の製造・供給体制を構築するため商業用細胞培養加工施設を大阪府箕面市において稼働させている。

また今後、3年後の上市に向けて、研究開発の加速化や商業用細胞製造施設の安定稼働を図り、事業化体制を構築するとともに、海外展開のための準備、第2、第3プロジェクトの探索研究を推進するため、第三者割当増資の実施に至ったという。

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Apple Watchで心不全の悪化を検知できるか、トロントの研究病院グループが調査開始

トロント市にある研究病院グループUniversity Health Network(UHN)で実施している新しい研究により、ますます関心が高まっている健康分野の治療方法が変わる可能性がある。Heather Ross(ヘザー・ロス)博士が主導するこの研究では、心不全を発症した患者の健康状態が悪化する可能性をApple Watchで早期に警告できるかどうかを調査する。

この研究では、最終的に約200人の患者を対象に調査することを目指しており、すでに25歳から90歳という幅広い年齢層の参加者が多数登録している。研究では、Apple Watch Series 6とその内蔵センサーを使って、心拍数、血中酸素濃度、一般的な活動レベル、6分間歩行試験時の全体的なパフォーマンスといった信号を監視する。ロス博士率いる研究者たちは、このデータを、より正式な臨床試験から得られた測定値と比較する。この測定値は、通常の定期健診時に心不全患者の回復状況を観察するために医師が現在使用しているものだ。

ロス博士とそのチームが期待しているのは、Apple Watchのデータから見える兆候と、実証済みの医療診断および監視装置から収集された情報の相関関係を特定できることだ。Apple Watchが心不全患者の健康状態を正確に検知できることを検証できれば、Apple Watchは治療とケアの面で大きな可能性を秘めていることになる。

「米国には心不全を抱える成人がおよそ650万人います」とロス博士はインタビューの中で話した。「北米では40歳以上の5人に1人が心不全を発症します。そして心不全発症後の平均余命は2.1年ほどで、生活の質にも大きな影響が出ます」。

この統計は心不全が「蔓延しつつある疫病」であることを示しており、ロス博士がいうには、医療制度に「米国では現在1年間に約300億ドル(約3兆1877億円)」の費用がかかっているとのことだ。その大部分は、予防可能な原因によって生じる健康状態の悪化により、必要となる治療費用だ。こうした原因は、適切なタイミングで患者の行動を変えさえすれば回避できる。ロス博士によると、現在、心不全患者の治療法は「断続的」なものである。つまり患者は、3カ月から6カ月おきに通院し、診断看護師のような訓練を受けた専門家の監視下で、高額な機器を使用してさまざまなテストを受ける必要がある。

「治療法についてある程度考えてみると、私たちはそれを逆向きに捉えていました」とロス博士はいう。「私たちは、比較的自然な方法で患者を継続的に監視するにはどうすれば良いかということを考えています。継続的に監視すれば、患者が実際に入院する前に患者の状態変化を検知できます。これはApple(アップル)にとって大きなチャンスです」。

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ロス博士によると、現在の推定では、処方された薬の正しい服用、症状の正確な監視、食事摂取の監視といった適切なセルフケアを含め、患者が取る対策によって入院の半数近くを完全に回避できるということだ。アップルのヘルスケア担当副社長であるSumbul Desai(サンブル・デサイ)博士は、治療の水準を高め、良好な長期の治療成績を得るための重要な要素の1つは先を見越した行動である、という見方に同意している。

「医療の世界において、多くの治療では、状態に対する事後対応に焦点が当てられていました」と同氏はインタビューの中で語っている。「自分の健康にもう少し積極的に取り組むべきだという考えは、私たちを本当に力づけますし、その考えから生まれる成果を想像するとワクワクします。私たちは、まず、こうした研究から科学の基礎を身に付けることが非常に重要だと考えていますが、その可能性に取り組むことを心から楽しみにしています」。

デサイ博士は、約4年の間、アップルのヘルスイニシアティブを率い、それ以前もキャリアの大部分を、スタンフォード大学(現在も准教授として在籍)で学術的な取り組みと臨床的な取り組みの両方に費やした。継続的な治療の価値を直接知っている同氏は「この研究は、個人の日常的な健康管理においてApple Watchが果たす役割の中に可能性が見いだされたことを示している」と述べた。

「日常生活を送っている個人のある時点の記録を得ることができるのは非常に便利です」と同氏はいう。「医師であれば、診察の際に『日常生活でお変わりありませんでしたか?』と聞くこともあるでしょう。日常のデータが手元にあり、それを会話に盛り込むことができれば、患者との関わりが非常に強くなります。私たちはこれまでにない方法でインサイトを提供できると信じており、この特定分野でさらにどんな情報が得られるかを考えると本当にワクワクします。私たちはユーザーである患者と医師の両方から、そのようなデータがどれほど価値のあるものかをすでに聞いて知っています」。

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ロス博士とデサイ博士の両氏は、Apple Watchについて、設定と学習が簡単で、健康とフィットネス以外のさまざまな目的に適うことや、継続的な治療法における主要な要素であることに触れ、消費者が手軽に使えるデバイスとしての価値を強調している。

「私たちは、人々が自分の健康管理において、より積極的な役割を担うべきであると強く信じています。そして、Apple Watchは強力なヘルスケアツールであると自信を持って言えます。大切な人とつながったり、メッセージをチェックしたりできるデバイスで、安全をサポートしたり、もっと体を動かして健康を維持することを促したり、全般的な健康に関する重要な情報を提供したりできるからです」とデサイ氏はいう。

「Apple Watchは、デサイ博士が述べたようなすべての機能を必要とする人のための、デバイスに組み込まれた強力なヘルスケアツールです」とロス博士は付け加えた。「しかし、これは強力な診断ツールでもあります。このヘルスケアツールを正しく評価できれば、Apple Watchは無限の可能性を秘めたツールになります。このパートナーシップでは、まさにその評価を行っています」。

この研究では、前述のように200人の参加者を対象としているが、登録者数は毎日増えている。3カ月にわたり積極的なモニタリングを実施した後、患者の転帰に関連して収集されるデータを2年間継続して調査する予定である。収集されたデータはすべて完全に暗号化された形式で格納される(ロス博士は、アップルをパートナーにするもう1つの利点として、アップルのプライバシーに関する実績を挙げた)。そして登録者は参加後でも、調査の途中でいつでもやめることができる。

結果が出たとしても、それは大規模な検証プロセスの第一歩にすぎない。しかしロス博士は、心不全と治療についての基本的な考え方を変えることによって、最終的には「治療法が改善され、公平なケアを受けられるようになる」ことを期待していると述べた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療AppleApple Watchコラム

画像クレジット:Apple

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

医師が処方する保険適用「ニコチン依存症治療アプリ」など研究開発のCureAppが21億円調達

医師が処方する保険適用「ニコチン依存症治療アプリ」など研究開発のCureAppが21億円調達

CureApp(キュア・アップ)は3月12日、第三者割当増資および融資による約21億円の資金調達を発表した。引受先は、ジャパン・コインベスト3号投資事業有限責任組合や既存株主をはじめとする10社。借入先は商工組合中央金庫。累計調達額は約64億円となった。

調達した資金により、2020年より販売を開始したニコチン依存症治療アプリの社会浸透をさらに促進する。また、現在治験中の高血圧治療アプリ、臨床試験中のNASH(非アルコール性脂肪肝炎)治療アプリ、アルコール依存症治療アプリとがん患者支援治療アプリの研究開発や薬事手続、その他新規領域におけるパイプライン拡大を加速させる。

健康保険組合や企業、自治体を主な顧客とする民間向けヘルスケア事業に関しても、引き続き拡大を目指すとしている。

CureApp「治療アプリ」の現在の状況

  • ニコチン依存症治療アプリ:慶應義塾大学医学部呼吸器内科との共同開発。2019年5月、日本初となる治療用アプリの大規模RCT(ランダム化比較試験)を終了。2020年8月に薬事承認を取得、同年12月に保険適用を受け禁煙外来での処方開始
  • 高血圧治療アプリ:自治医科大学循環器内科学部門との共同開発。2019年12月より治験を開始。2021年中の薬事申請を予定
  • NASH(非アルコール性脂肪肝炎)治療アプリ:東京大学医学部附属病院との共同研究。2016年10月より臨床研究、2018年4月より多施設での臨床試験を開始
  • アルコール依存症治療アプリ:国立病院機構 久里浜医療センターと2020年6月より臨床研究を開始
  • がん患者支援治療アプリ:第一三共と2020年11月より共同開発を開始

2014年7月設立のCureAppは、アプリそのものが病気を治療する治療法(デジタル療法)として「治療アプリ」の研究開発・販売を行っているスタートアップ。2020年8月には国内初の治療用アプリ「CureApp SC」の薬事承認、2020年12月に保険適用を受けた。すでに、医療機関において治療アプリを用いたデジタル療法が開始されているという。

また現在、4疾患を対象に治療アプリの研究開発を進め、これら医療機関向け「治療アプリ」の開発で蓄積した知見を活用した民間法人向けモバイルヘルスプログラム「ascure卒煙プログラム」も提供している。「日本発のデジタルヘルスソリューション」として、順次グローバルにも展開予定という。

ascure卒煙プログラムでは、医師開発アプリと医療資格を有する禁煙指導員のオンラインカウンセリングを組み合わせ、6カ月に渡って禁煙支援を提供。2017年4月の提供開始以来200超の法人で導入が進んでいるほか、特定保健指導に対応したプログラムも提供している。

治療用アプリは、海外ではDTx(Digital Therapeutics。デジタルセラピューティクス)と呼ばれ、従来の治療法では治療が難しかった疾患を治す可能性を秘めた最新治療として、国内外で研究開発を進められているという。

DTxは、医薬品と比べても遜色のない治療効果を有し、開発コストの低さ、スマートフォンを持っていれば誰でも平等に受けられるという特徴がある。

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眼科手術ロボットスタートアップForSightが約11億円を調達

イスラエルを拠点とするForSight Roboticsは米国時間3月9日、メガシードラウンドとして1000万ドル(約11億円)を調達したこと発表した。Eclipse VenturesとMithril Capitalが主導するこのラウンドは、ロボット手術プラットフォームのローンチに必要な各種規制当局の承認を得られるまでの間、同社のサービスを国際市場に提供するための人員と世界的なリーチの拡大に向けられる。

ForSightの手術プラットフォームは特に眼科の手術用に設計されており、非常に高い精度が要求される分野だ。また、非常に需要の高い製品でもある。同社はBritish Journal of Ophthalmologyの最近の研究を引用して、資格のある眼科医の数は先進国では100万人あたり約72人だが、一方発展途上国では先進国では100万人あたりわずか3.7人だとしている。

「これは当社が開発した独自技術です。ロボット工学、視覚化、機械学習が利用されています」と共同ファウンダー兼CEOのDaniel Glozman(ダニエル・グロズマン)氏はTechCrunchに語っている。「これを組み合わせることで、医師は手術を民主化することができるようになります。世界中のすべての医師がこの手順を完成させ、より均一な方法で眼科手術を行うことができるようになるのです」。

ForSightは初期段階のスタートアップとしては、すばらしい実績がある。注目すべきは、Intuitive SurgicalとAuris Healthの共同創設者であるFred Moll(フレッド・モール)博士が、Mako SurgicalのRony Abovitz(ロニー・アボビッツ)氏とMithrilのAjay Royan(アジェイ・ロヤン)氏とともに、同社の戦略顧問委員会に参加していることだ。くわえて、6人の眼科医も臨床諮問委員会のメンバーとなっている。

2020年に指摘したように、医療・外科系のスタートアップはVCにとってホットなカテゴリーであり、特にシードステージでは資金調達総額の約4分の1を占めている。約600〜700社が2019年に資金を調達しており、ForSightはそれに見合うだけの関心を持たれているようだ。同社の目標はその技術をさまざまな市場に提供し、質の高い眼科手術を受けるための競争条件を平等にすることだ。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ForSight資金調達医療

画像クレジット:ForSight Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発

NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発人の体内のほとんどの細胞は数十億の塩基対を核に押し込んだDNAの完全なコピーを持っています。そして身体の個々の細胞は、タンパク質の中に埋まっているDNAから必要な部分だけを外部からアクセスしやすくして、たとえば臓器、たとえば血液、たとえば皮膚など、異なる機能を持つ細胞になるための遺伝子を活性化します。

NVIDIAとハーバード大学の研究者らは、仮にサンプルデータにノイズが多く含まれていても(がんなどの遺伝性疾患の早期発見によくあるケース)、DNAのアクセス可能な部分を研究しやすくするためのAIツールキット「AtacWorks」を開発しました。

このツールは、健康な細胞と病気の細胞についてゲノム内の開かれたエリアを見つけるためのATAC-seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin with high-throughput sequencing)法と呼ばれるスクリーニング的アプローチをNVIDIAのTensor Core GPUで実行し、32コアCPUのシステムなら15時間ほどかかるゲノム全体の推論をたったの30分で完了するとのこと。

またATAC-seqは通常なら数万個の細胞を分析する必要がありますが、AtacWorksをATAC-seqに適用すれば、ディープラーニングで鍛えたAIによって数十の細胞だけで同じ品質の分析結果を得ることができます。たとえば研究チームは、赤血球と白血球を作る幹細胞を、わずか50個のサンプルセットを分析するだけで、DNAのなかのそれぞれの産生に関連する個別の部分を識別できました。

ゲノムの解析にかかる時間とコストを削減できるようになる効果から、AtacWorksは特定の疾患につながる細胞の病変やバイオマーカーの特定に貢献することが考えられます。また細胞の数が少なくてもゲノム解析ができるとなれば、非常に稀な種類の細胞におけるDNAの違いを識別するといった研究も可能になり、データ集積のコストを削減し、診断分野だけでなく新薬の開発においても、開発機関の短縮など新たな可能性をもたらすことが期待されます。

(Source:Nature Communications、via:NVIDIAEngadget日本版より転載)

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タグ:医療(用語)AI / 人工知能(用語)NVIDIA(企業)NVIDIA Tensor Core(製品・サービス)オーダメイド医療がん / がん治療(用語)ゲノム医療ゲノム解析DNA / 遺伝子(用語)ハーバード大学(組織)Python(製品・サービス)

CRISPR-Cas3技術を応用したバクテリオファージを開発するLocus Biosciences

抗生物質耐性は、全世界の健康にとって今日最大の脅威である。しかし、Locus Biosciences(ローカス・バイオサイエンス)は同社のテクノロジーであるcrPhageが新たな解決策を提供すると期待している。

ノースカロライナ州のResearch Triangle(リサーチ・トライアングル)に拠点を置く同社は、CRISPR-Cas3-enhancedバクテリオファージの大腸菌に起因する尿路感染治療への利用に関する臨床試験がフェーズ1bで有望な結果を得られたことを発表した。元Patheon(パセオン)の幹部で現在LocusのCEOであるPaul Garofolo(ポール・ガロフォロ)氏らの指揮の下、同スタートアップは2015年、CRISPR技術のあまり知られていない応用による、増大する抗菌薬耐性への取り組みを目標に設立された。

CRISPR-Cas3技術は、よく知られているCRISPR-Cas9とは機序が大きく異なる。Cas9酵素にはDNAをはさみのようにきれいに切り離す能力があるのに対し、Cas3はどちらかというとパックマンのように、ストランドに沿って動きながらDNAを切り刻んでいく、とガロフォロ氏は説明する。

「これまで使われていたほとんどの編集プラットフォームでは、これを使うことができません」と彼は述べ、それはCas3を巡る競争があまりないという意味だと付け加えた。「だからしばらくの間保護されていて、秘密にしておくことができると知っていました」。

ガロフォロ氏率いるチームは、CRISPR-Cas3を人体内の有害バクテリアの編集に使うのではなく、破壊するために使いたいと思っている。そのために、Cas3のDNA破断機構に注目し、他の細菌を攻撃して破壊するウイルスであるバクテリオファージを強化するために使った。共同ファウンダーで最高科学責任者のDave Ousterout(デイブ・オウスターアウト)氏(デューク大学で生物医学の博士号を取得している)も、このテクノロジーがバクテリアを破壊する著しく直接的で目標を定めた方法をもたらすと考えている。

「大腸菌を攻撃するこのCas3システムと、その結果得られる二重の作用機序で強化することによって、私たちはバクテリオファージを、実質的に大腸菌のみを除去する極めて強力な手段に作り上げました」。

その特異性は、抗生物質に欠けているものの1つだ。抗生物質は体内の有害な細菌だけを標的とするのではなく、出会った細菌すべてを死滅させる。「私たちは抗生物質を服用する際、良い細菌の影響を受けている体の別の部分について考えていませんでした」とガロフォロ氏は語った。しかしLocus BioscienceのcrPhage技術の精度の高さは、標的となる細菌のみが消滅し、人体の正常機能に必要な細菌は影響を受けないことを意味している。

この特異性の高いアプローチが病原体やあらゆる細菌による疾患に有効であるばかりでなく、ガロフォロ氏らは自分たち方法が極めて安全なのではないかと感じている。細菌にとっては致命的だが通常バクテリオファージは人体には無害だ。体内でのCRISPRの安全性もすでに確立している。

「それが私たちの秘伝のソースです」とガロフォロ氏は述べた。「これで、置き換えようとしている抗生物質よりも強力な薬品を作ることが可能になり、しかもファージという人体に何かを投与する方法として世界一安全とも言えるものを使うのです」。

この新技術が病原体や感染症の治療に役立つことは間違いないが、ガロフォロ氏は、免疫学、腫瘍学、神経学なども恩恵を受けることを願っている。「 ある種の細菌が胃腸のがんや炎症を促進することがわかってきました」と彼は語った。もし、研究者が症状の根本原因である細菌を特定できれば、crPhage技術が効果的治療法になる可能性がある、とガロフォロ氏とオウスターアウト氏は考えている。

「もしこの件について私たちが正しければ、感染症や抗菌薬耐性だけでなく、がんの克服や認知症の発病遅延にも役立てることができます」とガロフォロ氏はいう。「私たちが生きるために細菌がどのように役立っているかという考えが変わろうとしています」。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Locus BiosciencesCRISPR医療

画像クレジット:KATERYNA KON/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Sophie Burkholder、翻訳:Nob Takahashi / facebook

医療現場の情報共有を促進する重症患者管理システム「iBSEN」開発のCROSS SYNCが1.5億円調達

医療現場の情報共有を促進する重症患者管理システム「iBSEN」開発のCROSS SYNCが1.5億円調達

横浜市立大学発のスタートアップCROSS SYNCは3月8日、第三者割当増資による総額約1億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、ファインデックス、日本政策投資銀行、豊田通商、コニカミノルタら。

これまでCROSS SYNCは、同社設立前に横浜市立大学において研究開発を行った技術を基に、医療現場における経験や専門知識に依存しない情報共有を加速する重症患者管理システム「iBSEN」(イプセン)を開発してきた。逼迫する集中治療の医療体制を支援するサービスの開発および提供体制の拡充が急務として、調達した資金はiBSENの開発および採用・組織体制の強化にあてる予定。

今後はiBSENの医療現場への実導入を推進し、幅広い現場のニーズや課題に対応できる製品に発展させることや、リアルワールドデータを活用したAIモデルによるユースケースの拡大、他の先端研究機関との連携、海外でのサービス展開へ向けた検証などを実現していく。

これにより、欧米諸国のみでも約90万人にも及ぶ防ぎ得た患者の死亡事例をなくすとともに、医療現場におけるDXによる働き方改革を推進する。

iBSENは、AIを活用した画像解析などにより高度な患者モニタリングや情報共有を行うシステム。医療現場に散在する医療情報を集約・解析・可視化することで、医療従事者が経験や知識に依存せず患者に対して高品質な見守りと評価をいつでも、どこからでも、どんなデバイスからでも提供できるとしている。

医療資源が優先的に投下されるべき状態にある患者をいち早く判断できるようにすることで、防ぎ得た急変や死亡をを減らせるようにできるほか、重症系病床の効率的な稼働、また、医療従事者の労務軽減にも資するという。

CROSS SYNCは、「ICU Anywhere」をビジョンに掲げる「横浜市立大学発」のスタートアップ。2019年10月、横浜市立大学附属病院の集中治療部部長を務める集中治療専門医の髙木医師らが設立した。「防ぎ得た患者様の急変や死亡をなくしたい」という思いを端緒に、「テクノロジー力で、医療現場の専門性をアシストする」をミッションに掲げ、AIをコア技術とする重症患者管理システム「iBSEN」を開発・提供している。

医療現場にあふれる医療情報の利活用を促進し、経験や専門知識に依存しない医療現場での情報共有を可能にすることで、新興感染症の拡大に対応した新たな医療体制の構築や超高齢化に伴う医療の需給バランスの崩壊といった社会課題の解決に鋭意取り組んでいく。

※ CROSS SYNCが、Leapfrog GroupおよびJohns Hopkins Armstrong Institute for Patient Safety and Quality「Lives Lost, Lives Saved: An Updated Comparative Analysis of Avoidable Deaths at Hospitals Graded by The Leaffrog Group」、eurostat「Avoidable deaths in 2016 – For people under 75, two deaths out of three in the EU could have been avoided」より算出

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)AI / 人工知能(用語)資金調達(用語)CROSS SYNC(企業)横浜市立大学(組織)日本(国・地域)

Rani Therapeuticsのロボットカプセルは皮下注射治療をどう変えるか

新しい自動注射カプセルがまもなく皮下注射治療の代わりになるかもしれない。

このいわゆるロボットカプセル(ロボットピル)のアイデアは、ライフサイエンスラボであるInCube Labsの研究プロジェクトから生まれた。同ラボは約8年前にラトガーズ大学で電気・生物医学工学の学位を取得したRani Therapeuticsの会長兼CEOであるMir Imran(ミール・イムラン)氏が運営する。ライフサイエンス分野のイノベーションで有名なイムラン氏は、20以上の医療機器会社を設立し、世界初の植込み型除細動器の開発を支援してきた。

サンノゼを拠点とするRani Therapeuticsがその基盤となる技術に取り組んでいるとき、イムラン氏と同氏のチームは、皮下(または皮膚の下の)注射による痛みをともなう副作用を軽減すると同時に、治療の有効性を改善する方法を見つけたいと考えた。「技術自体は非常にシンプルな仮説から始まりました」とイムラン氏はインタビューで述べた。「患者が飲み込む生物学的薬剤を内包するカプセルを作れないのはなぜだろうと考えました。腸に到達するとカプセル自体が変形し、痛みなく注射を行います」。

Rani Therapeuticsのアプローチは、消化管固有の特性に基づいている。カプセルの注射メカニズムは、患者の胃から小腸に移動するときに溶けるpH感受性コーティングで覆われている。これにより、カプセルが適切な場所に適切なタイミングで確実に薬を注射することができる。目的地に到達すると、反応体が混ざり二酸化炭素を生成する。二酸化炭素が小さなバルーンを膨らませ、圧力差を生じさせて、薬物を充填した針を腸壁に入れる。「つまり、一連の出来事が本当にタイミング良く起こることにより針が目的地に届きます」とイムラン氏は話した。

機械的ともいえる手順にもかかわらず、カプセル自体には金属やバネは含まれていないため、体内の炎症反応の可能性が低くなる。代わりに、針やその他のコンポーネントは注射可能なグレードのポリマーでできており、イムラン氏によると他の医療機器にも使用されている。小腸の上部に注射を行う場合、胃酸と肝臓からの胆汁の広がりが細菌の繁殖を妨げるため、感染のリスクはほとんどない。

カプセルに関するイムラン氏の優先事項の1つは、皮下注射による痛みをともなう副作用を排除することだった。「それを痛みをともなう別の注射に置き換えても意味がありません」と同氏はいう。「しかし、生物学が私たちに味方しました。腸には皮膚にあるような痛みのセンサーがありません」。さらに、小腸の高度に血管新生された壁に注射を投与すると、通常は脂肪組織に薬を入れる皮下注射よりも効率的に働く。

イムラン氏と同氏のチームは、成長ホルモン障害先端巨大症、糖尿病、骨粗鬆症など、さまざまな適応症にカプセルを使用する計画を立てている。先端巨大症治療薬であるオクトレオチドは2020年1月、1次臨床試験で安全性と持続的なバイオアベイラビリティの両方を実証した。彼らは他の適応症について臨床試験を将来続けることを望んでいるが、最初は先端巨大症を優先することを選択した。先端巨大症に対し確立されている治療薬は「非常な痛みをともなう注射」が必要だとイムラン氏は述べた。

Rani Therapeuticsは2020年末、プラットフォームのさらなる開発とテストのために6900万ドル(約75億円)の新規資金を調達した。「これが今後数年間私たちに資金を提供してくれるでしょう」とイムラン氏はいう。「私たちのビジネスへのアプローチは、テクノロジーを非常に堅牢で製造可能なものにすることです」。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Rani Therapeutics医療

画像クレジット:Rani Therapeutics

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(文:Sophie Burkholder、翻訳:Nariko Mizoguchi

入退院調整をリアルタイムで可視化する医療機関・介護施設向け業務支援SaaSの3Sunnyが3.2億円調達

入退院調整をリアルタイムに可視化する医療機関・介護施設向け業務支援SaaSの3Sunnyが3.2億円調達

医療機関・介護施設向け業務支援SaaSを開発・提供する3Sunny(スリーサニー)は3月4日、第三者割当増資による総額約3億2000万円の資金調達を発表した。引受先は、メディカルノート、メディアスホールディングス、帝人、ANRI、ANOBAKA、個人投資家。これにより累積資金調達額は約4億円となった。

今後はプロダクト開発や人材採用を強化することで医療介護業界のデジタル推進に取り組む。また医療介護業界の業務のDXに貢献するべく、親和性の高い周辺領域で事業展開しているサービスとの連携を進める。

入退院調整をリアルタイムに可視化する医療機関・介護施設向け業務支援SaaSの3Sunnyが3.2億円調達

2016年7月操業の3Sunnyが手がける医療機関向け業務支援SaaS「Carebook」(ケアブック)は、リリースから約2年で都内を中心に大学病院や大規模医療グループなど全国で230超の医療機関に導入されているという。病院に所属する医療ソーシャルワーカー・退院調整看護師が日々行っている事務作業を効率化し、患者に向き合うことにフォーカスできる仕組みを提供している。

医療機関では治療後、高齢者など病院から退院しても継続的ケアが必要な患者に対して、病院所属の医療ソーシャルワーカー・退院調整看護師が次の退院先・転院先のサポートや調整業務を行っているという。

年間の入退院患者数がのべ約1500万人発生し今後も増加が見込まれる中、限られた病床数を有効活用するために、患者・家族の納得度を高度に保ちつつスムーズな入退院調整を行うことが求められている。

しかし病院や施設間で利用するシステムが異なるなどの理由で、コミュニケーション手法が電話やFAXに依存することが多く、常に受電に追われる・調整状況がリアルタイムに可視化されないなどの課題が起きているそうだ。

これらの課題の解決を目指すべく同社はCAREBOOKを開発・提供し、医療介護従事者が本来の専門領域に集中できる環境作りをサポートするとしている。

3Sunnyは、「医療介護のあらゆるシーンを、技術と仕組みで支え続ける」をミッションに掲げ、医療介護業界における「三方晴れやかな未来」を目指す。

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タグ:医療(用語)介護(用語)資金調達(用語)3Sunny(企業)日本(国・地域)

AIが「細胞を見分ける」新技術でがんの超早期発見などを目指すCYBO、6000万円調達

AIに細胞の高速解析・処理技術を開発するCYBOは3月1日、インキュベイトファンドを引受先とした第三者割当を実施し、6000万円を調達したと発表した。また、インキュベイトファンドのジェネラルパートナーである村田祐介氏が社外取締役に就任することも併せて発表した。

2018年に設立されたCYBOは、多数の細胞集団の中から特定の細胞を分離する「インテリジェント画像活性セルソーター(以下、画像活性セルソーター)」を基盤技術として、細胞解析に関する研究開発とサービス提供を行うスタートアップだ。

画像活性セルソーターは、細胞を超高速で画像化し、AIがその画像を選別、特定の細胞を分取するという技術だ。東京大学大学院の合田圭介教授が率いる研究グループが発表した新技術で、CYBO代表の新田尚氏は同グループのプログラムマネージャー補佐を務め2018年に同社を設立した。

既存の細胞識別技術には「蛍光活性セルソーター(FACS)」がある。これは、蛍光抗体で染色した細胞が発する「光の強度」を指標として、細胞を識別・分取するというものだ。国内ではソニーなどが製品化を行っている。このFACSに比べ、AIが画像を解析する画像活性セルソーターでは、光の強度に加えて、細胞の形、細胞内の分子の分布なども測ることができ、結果的に従来よりも精度の高い診断が可能となるという。

画像活性セルソーターの製品化プロジェクト「ENMA」のデザインイメージ

当たり前のように聞こえるだろうが、この領域では「精度」はとても重要だ。精度が高ければ、偽陰性のリスクも減らせるし、偽陽性によって患者に無駄な心理的・金銭的負担を強いることもなくなる。

また、例えばがんの早期発見のためには、患者への負担が低い(低侵襲)ために多くの人を高い頻度で検査でき、かつ精度も高いという2つの特徴を兼ね備えた検査方法が求められる。血液生検のみでがん等を診断できる低侵襲な検査技術「リキッドバイオプシー」に画像活性セルソーターの技術を応用すれば、低侵襲でかつ従来よりも精度が高いという、上記の2つの特徴を持った検査方法が確立できるということになる。

このような理由から、画像活性セルソーターはFACSに取って代わる可能性がある新技術として、開発と実用化が期待されており、米国ではAIベースの細胞識別技術をもつdeepcellがシリーズAで2000万ドル(約21億円)を調達するなどしている

CYBOは今回調達した資金をもとに、がん研有明病院と精度の高い子宮頸がん検診の実現を目指した共同研究を行うほか、オンコリスバイオファーマと共同で開発する「血中循環がん細胞検査(血液中を循環するがん細胞を検出する検査)」の実用化を推進していくという。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:医療

プレシジョンが一般向け医学情報サイト公開、診療所向けにAI診療支援システムも期間限定で無償提供

プレシジョンが一般向け医学情報サイト公開、診療所向けにAI診療支援システムも期間限定で無償提供

プレシジョンは2月17日、2000名の著名医師による医学情報データベースを活用し、一般向け医学情報サイト「お医者さんオンライン」として無償公開した。また診療所向けのAI診療支援システムについて、2022年3月末まで月額利用料を無償化し提供すると発表した。

医学情報サイト「お医者さんオンライン」

お医者さんオンラインは、気になる病気や検査・治療について調べられる資料集。体調に不安を感じても病院を受診しづらいコロナ禍において、専門医が監修する信頼度の高い情報が参考になればとサイトを開設したという。

プレシジョンが医療機関に提供している医学情報データベース「Current Decision Support」(CDS)の情報と同一の内容で、これまで診察後に説明資料として医師から患者に印刷して渡すなどの形で使用されていたものを活用している。

お医者さんオンラインの情報内容については、国を代表する著名医師7名からなる総合編集委員会を中心に、各診療科22領域23名の権威ある医師を監修者とし大学教授など信頼のおける約500名の医師を選定。約700の疾患についてイラスト付きで症状や原因・治療の流れなどの解説を閲覧できる。

例えば、新型コロナウイルス感染症に関する説明ページの著書は国立国際医療研究センター 国際感染症センター総合感染症科の忽那賢志先生で、監修は国立国際医療研究センター 国際感染症センター長の大曲貴夫先生が担当している。

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医学情報データベース「Current Decision Support」とAI問診票「今日の問診票」

プレシジョンでは、CDSとAI問診票「今日の問診票」アプリを組み合わせ、国内初のAIを用いた本格診療支援システムを開発。東京大学工学院工学系研究科の松尾豊教授がAIアドバイザーを務めている。

また、2020年4月から提供を開始しており、これまで全国35の医療機関が導入を決めているそうだ。

CDSは、総合編集委員計14名、監修41名、2000名の著名医師が作成・更新。3000疾患700病状の所見、全処方薬情報を掲載する「次世代診療マニュアル」にあたり、国内最大級の情報量となっているという。

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今日の問診票は、診療録作成から教科書検索までをサポートする、タブレットやスマートフォン用問診票アプリ。タブレット入力やお薬手帳のOCRで、初診カルテ作成にかかる時間を1/3に削減するという。

患者が診察を受ける前に今日の問診票アプリの約30の質問に答えると、AIが自然文で電子カルテの下書きおよび検索単語の候補を作成。その検索単語により、著名医師が記載する電子教科書の診療マニュアルを検索できる。また診療マニュアルには、著名医師が考える病気の候補と、検査例、処方例が記載されている。

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タグ:医療(用語)AI / 人工知能(用語)新型コロナウイルス(用語)日本(国・地域)

腕に貼ったセンサーにスマホをかざすだけで血糖値を確認できる「FreeStyleリブレLink」アプリ

アボットジャパンが「FreeStyleリブレLink」アプリ(iOS版)の国内提供を開始しました。

「FreeStyleリブレLink」は、上腕に貼ることで最長14日間血糖値を計測する「FreeStyleリブレ」センサーと連携するスマホアプリです。センサーに服の上などからスマートフォンをかざすことで、現在のグルコース値や直近8時間の血糖変動を確認できます。

「FreeStyleリブレLink」に保存される最長90日間のデータは、クラウドベースの糖尿病管理システム「リブレView」と連携した場合、自動的にアップロードされ、医師と共有可能。指先穿刺によって得られるピンポイントでの値と比べ、詳細な血糖データや過去の履歴、傾向などが把握できるため、オンライン診療においても役立ちます。

アプリは現時点でiPhone(iPhone 7以上、iOS 13.2以上)に対応。Android版も近日公開されます、同アプリは海外ではすでに公開されていましたが、ようやくの国内提供となった形です。

腕に貼ったセンサーにスマホをかざすだけで血糖値を確認できる「FreeStyleリブレLink」アプリ

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:アプリ / モバイルアプリ(用語)アボット医療(用語)血糖値糖尿病日本(国・地域)

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

個人・法人向けにメンタルヘルスサービスを提供する313は2月4日、シードラウンドにおいて資金調達を実施したと発表した。金額は非公開。引受先はW venturesおよびEast Venturesなど。また、オンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」の提供を開始した。

マイシェルパは、精神医学および心理学の膨大な知見を基盤とし、確かな経験を持つ医師の監督の下、心の悩みを持つすべての者に信頼できるカウンセリングを届けるプラットフォーム。

マイシェルパを提供する313は医療博士・精神科専門医が運営しており、実際のカウンセリングも臨床心理士や公認心理師などプロフェッショナルが対応。また予約からカウンセリングまですべてオンラインで完結するため、好きな時に好きな場所でカウンセリングを受けられる。カウンセリング1回(50分)あたりの料金は、税込み6600円。追加で費用が発生することはない。

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

カウンセリング予約の際は、まず予約サイトで臨床心理士や公認心理師の資格を持つカウンセラーを選択する。担当者を選ばず、おまかせ予約とすることも可能。最後に、カウンセリング希望日の2日前までの日付で、スケジュールを選択する。

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

313によると、有病率から、何らかの精神疾患ないしメンタルヘルス不調を抱えている潜在的な人数を試算すると、日本では1386万人に上るという(「アメリカ精神医学界データ」から同社試算)。しかし、実際の通院者数は約350万人にとどまっており、その背景としては、既存メンタルクリニックの予約が常に困難なことや、メンタルクリニックを受診することへの心理的のハードルが高さが考えられるとしている。

また、日本の寿命・健康ロスの10%は、精神疾患(認知症を除く)によるものとされ、10代〜30代で見ると自殺が死因のトップとなっており、社会的な損失が大きいことが問題視されている(厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」:第7表 死亡数・死亡率(人口10万人対)、性・年齢(5歳階級)・死因順位別 )。

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タグ:医療(用語)自殺予防 / 自殺防止資金調達(用語)メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

患者の負担を軽減する液体生検を用いた白血病遺伝子検査提供のLiquid Mineが資金調達

患者の負担を軽減する液体生検を用いた白血病遺伝子検査提供のLiquid Mineが資金調達

Plug and Play Japanは2月3日、東京大学医科学研究所発のスタートアップLiquid Mineへの出資を発表した。

Liquid Mineは、「最先端の遺伝子解析により、より多くのがん患者一人ひとりに最適な治療環境を提供する。」をミッションに、リキッドバイオプシー(液体生検。Liquid Biopsy)を用いたゲノム検査「MyRD」を提供する東京大学医科学研究所発のスタートアップ。患者個人に合わせたテーラーメイド医療(オーダメイド医療)を通じて、白血病患者の長期生存率向上、がんの克服を目指している。

白血病の検査としては、骨髄生検という手法が一般的なものの、非常に強い痛みを伴うため患者の肉体的・精神的・経済的負担が大きいという課題がある。一方Liquid Mineの提供するソリューションは、患者モニタリング期の骨髄生検を侵襲性の低いリキッドバイオプシーに代替することで、これら患者の負担軽減に貢献するという。

市場展開として、日本のみならず海外でもがん検査の新たなスタンダードとなる可能性を持つことから、世界に事業展開できるスタートアップに投資しているPlug and Play Venturesは、同社が目指すがんゲノム医療のポテンシャルを感じ、出資を決定した。

Plug and Playの投資部門Plug and Play Venturesは、世界にビジネスを拡大していく可能性を持つ日本のスタートアップに対し、事業領域を問わず投資を行っている。投資件数において世界で最も活発なベンチャーキャピタルのひとつでもあり、DropboxやPaypal、Lending Clubなど多数のユニコーン企業を輩出してきた。

2020年は162社のスタートアップに投資を実施したほか、ポートフォリオ企業から12社がExitを果たし、新たに4社がユニコーンとなった。

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